(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】化粧用の筆記具
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
A45D34/04 510C
A45D34/04 530
(21)【出願番号】P 2022128542
(22)【出願日】2022-08-11
(62)【分割の表示】P 2019031098の分割
【原出願日】2019-02-23
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018057144
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518101093
【氏名又は名称】赤對 浩美
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】赤對 浩美
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051267(JP,A)
【文献】特開2013-118871(JP,A)
【文献】特開2016-209437(JP,A)
【文献】実開昭61-130106(JP,U)
【文献】実開昭55-130610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B05C 17/00 - 17/12
B43K 8/20
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧用筆記用具であって、
使用者によって把持される把持部と、
前記使用者による操作に基づいて、前記把持部に対して相対的に回転可能な複数の筆記部と、
を備え、
前記把持部は、前記複数の筆記部の回転中心線の延長方向に設けられており、
前記複数の筆記部は、前記回転中心線に対する直交方向に筆記可能に設けられていることを特徴とする、化粧用筆記具。
【請求項2】
前記複数の筆記部の向きや角度を変えられるような自在手段を備える、請求項1に記載の化粧用筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用の筆記手段、例えば眉やアイライン、体毛などを描くのに使用する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
ペン軸は筆記面に対し鉛直に立っているため、鏡を見ながら化粧する場合に、ペン軸が邪魔になって肝心な化粧部位が見づらかったり、隠れてしまったり、化粧動作の妨げになるのが欠点である。また、回転構造の筆記ローラで筆記する構造も有るが、前記のようにペン軸が垂直に立っているので、使い辛いという欠点は避けられない。しかも、1本の線状の筆記に限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、従来の化粧用の筆記具は、化粧部位と筆記具の持ち手である軸が垂直になるため、本願発明はこのような不便を解消し、化粧部位が見えづらいという欠点を解決したい。また、1本の描線に限らず点や線、面状による接触で自由自在に筆記可能とする。さらに、火傷や闘病によるリハビリ、また介護社会を考慮した場合、介護する第三者からの化粧がし易いことも重要である。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、化粧部位が筆記具の持ち手などで隠れないように好みの部位に退避でき、更に安定良く精密な化粧ができ、また点や線、面といった自在な化粧ができる筆記具を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、インクを吸収して保持するインク保持部を合成樹脂から成る支持部で包囲し、楕円を含む円又は円の一部に外形を形成して成る筆記部を1以上有し、又は螺旋状に連続したインク出口を有する構造とし、前記インク保持部に接続したインク溜め部を有することを特徴とする筆記具である。インク保持部としては、例えば布や綿にインクをしみ込ませて保持することが可能であり、インク溜め部からインクが常に供給される繊維質が好適である。
【0006】
請求項2は、前記筆記部の楕円を含む円又は円の一部が回転できる構造として、前記インク溜め部を有する軸体を、円筒体から成る把持部に挿入してなることを特徴とする請求項1に記載の筆記具である。
【0007】
請求項3は、複数のインク保持部の外周に、インクを吸収して保持する面体を巻いて接続し、筆記部が面で接触して塗布する構成とし、又は前記筆記部の向きや角度を変えられるような自在手段を介在させてあることを特徴とする請求項1に記載の筆記具である。
【0008】
請求項4は、前記インク保持部の外周を閉鎖している密閉面は、互いに独立した複数の突起を有し、それぞれの突起の先端からインクが出るように前記インク保持部と接続していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の筆記具である。各突起の先端からインクが出るので、点描が可能である。
【0009】
請求項5は、インクの出口が螺旋状に連続した構造を製造するために、耐熱質の螺旋状芯の螺旋面を合成樹脂層で覆ってから前記耐熱芯を取り除き、螺旋状に形成された合成樹脂層の尖端を除去してインクの出口としたことを特徴とする螺旋状筆記部の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のように、インクを吸収して保持する機能を有する例えば布や綿にインクをしみ込ませたインク保持部を合成樹脂から成る支持板で包囲し、楕円を含む円又は円の一部に外形を形成して成る筆記部を1以上有しているので、一度に1以上の描線ができ、能率的である。なお、筆記部が単一の場合は、両支持板を軟質とした上で親指と人指し指で挟んで加圧すると、より細い線が描ける。又は、インク出口が螺旋状に平行しているので、斜めに複数の直線を同時に描ける。そして、前記インク保持部にインク溜め部が接続しているので、インク溜め部からインクが常時供給される。
【0011】
請求項2のように、前記筆記部の楕円を含む円又は円の一部が円滑に回転できる構造として、前記インク溜め部を有する軸体を、円筒体から成る把持部に挿入してなるので、円筒体を強く把持しても、インク溜め部を有する軸体が筆記部と一緒に円滑に回転できる。あるいは、前記筆記部の向きや角度を好みに応じて自由に変えられるように、自在手段を持ち手に介在させてあるので、化粧作業が容易になる。円の一部が回転する構造の場合は、円の欠けた部位を指先で押さえて筆記圧を加えながら、回転力を加えることもできる。
【0012】
請求項3のように、複数のインク保持部の外周に、インクを吸収して保持する面体を巻いて接続したので、筆記部が面で接触して塗布できる。自在手段としては、自由に変形できる柔軟材やゴム質を介在させたりボールジョイントで自在構造にしてもよい。その結果、
図1~
図3のT状の首部を曲げてT状以外に変形させたり角度や向きを自分の好きな任意に変えたりもできる。
【0013】
請求項4のように、前記インク保持部の外周を閉鎖している密閉面が、互いに独立した複数の突起を有し、それぞれの突起の先端からインクが出るように前記インク保持部と接続していて、前記各突起の尖端からインクが出るので、点描が容易である。
【0014】
請求項5のように、インクの出口が螺旋状に連続した構造を製造するために、耐熱質の螺旋状芯の螺旋面を合成樹脂層で覆ってから前記耐熱芯を取り除き、螺旋状に形成された合成樹脂層の尖端を除去してインクの出口とするので、螺旋状に連続した形状にインクの出口を形成できる。その結果、螺旋状に傾斜した複数の直線を同時に描ける。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による化粧用筆記具の平面図と正面図である。
【
図3】筆記部の外周に面体を巻いて接続した縦断面図である。
【
図4】螺旋構造の筆記部の製法を示す断面図である。
【
図5】螺旋構造の筆記部の完成状態を示す断面図である。
【
図6】点描が可能な筆記部の製法を示すで断面図である。
【
図7】点描が可能な筆記部の完成状態を示す断面図である。
【0016】
次に本発明による化粧用筆記具が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。
図1は本発明による化粧用筆記具の平面図と正面図であり、
図2はその縦断面図である。1は手で持つ持ち手であり、中はインク溜め2になっている。3がインクの出る筆記部であり、3組の円盤状31、32、33からなっている。各筆記部31、32、33はインクを吸収して保持するインク保持層41、42、43を合成樹脂板の支持層51、52、53で挟んでサンドイッチされ、インクの漏出を防いでいる。前記インク保持層41、42、43としては、例えば布地や綿のような繊維質などの材質が適している。各インク保持層41、42、43は、インク溜め2と供給路6で接続されていて、インクが常時補充される。
【0017】
各筆記部31、32、33の外形は円形又は円形に近い楕円形でもよい。要するに、回転し易い形状であればよい。持ち手1は、筆記部3との間に、指が入る程度の窪みなどから成るストッパー7が形成されている。なお、図示例では、円盤状の筆記部は3組であるが、単一でも足りる。
【0018】
今、窪み状のストッパー7に1本の指を挿入して筆記部3を軽く支持して安定させた状態で、筆記部3に持ち手1で回転力を与えると、3組の筆記部31、32、33が回転してインク保持層41、42、43の外周で3本の直線が描かれる。従って、筆記部3が2組であれば、同時に2本の直線が描かれる。前記窪み状のストッパー7の部分が塑性変形又はゴム質のように弾性変形する軟質な材質であると、窪み状のストッパー7を支点にして自由に好みの向きや角度に変えられるので、化粧作業が自由にかつ容易になる。この窪み状の数は任意であり、挿入する指の数に合わせる。
【0019】
強固に把持して正確に筆記部を回転させる必要が有る場合は、
図1のように、円筒体Cに前記インク溜め2の有る持ち手1を挿入すると、円筒体Cを強く把持しても、中の持ち手1は筆記部3と共に回転できる。さらに円滑かつ正確に回転させたい場合は、持ち手1の外径と円筒体Cの内径とが密に接すると共に間にオイルなどの潤滑材を塗布し、円筒体Cと持ち手1とが相対直線移動できないように前記持ち手1の両端にピンP、Pを挿通しておくだけで足りる。なお、相対移動をさらに少なくし、筆記部3の回転を円滑にしたい場合は、スラストベアリングを併用するとよい。
【0020】
図3は、筆記部をより広くする場合であり、図は三つ(隣接する二つ又は四つ以上でもよい)のインク保持層42、42、43の外周に、同じ材質の一定幅の帯布44を巻き付けて接着してあり、帯布44の面でインクを塗布し筆記できるので、広い面にインクを塗布できる。
【0021】
図4は以下は拡大して誇張した表現である。
図4は筆記部3を回転して点描ができる筆記部の製法を示す断面図であり、独立した金属山状12を形成した組立構造の金属筒13を、溶けた合成樹脂に浸漬してから引き上げると、合成樹脂の膜14ができる。最後に冷却して金属筒13、12を分解して除去すると、
図5のように合成樹脂の膜14が円筒状の空洞と成って残る。そして、治具Bで保持した状態で鎖線10の位置までグラインダーなどで研削して削ると、インクの出口15が点状に開くので、独立した各山状の中にインクをしみ込ませた綿や布を押し込んで前記インク保持部41、42、43の外周と接続する。そして、この合成樹脂筒の空洞膜14で、インク保持部の外周を密閉閉鎖するように接着剤で貼り付け固定すると、互いに独立した複数の突起14がランダムに配設された各尖端出口15からインクがドット状に出る。従って、筆記部を回転させると、点描が可能となる。
【0022】
次に、筆記部のインク出口が螺旋状に連続した構成の製法を図示する。
図6は断面図であり、先ず溶けた合成樹脂液の中に、加熱した金属製の螺旋状芯8を浸漬して螺旋状の外面に合成樹脂が付着して膜9が出来た状態で、持ち上げて冷ますと合成樹脂の膜9が出来る。金属の熱膨張率が大きいので、冷ますと金属の芯8が収縮して、容易に合成樹脂層9と分離でき、螺旋状の合成樹脂膜9のみが残る。その結果、合成樹脂の螺旋状の空洞ができるので、この空洞の所々に接着剤を塗布してバラバラに分解するのを阻止した状態で、円柱状の治具Bを挿入して保持した状態で回転させ、グラインダーで鎖線10の位置まで研削して削ると、螺旋状のインク出口11が開いた合成樹脂膜91ができる。従って、前記治具Bを抜き取って、最後に綿や布などを詰め込んでから、インクをしみ込ませて前記インク保持層41、42、43の外周に押圧させると完成である。従って、前記インク保持層41、42、43の外周の寸法より、螺旋状の内径の寸法が僅かに大きく、
図7の螺旋状の合成樹脂空洞膜91の中に
図1の円形のインク保持部41、42、43の外周が入る寸法である。
合成樹脂の円筒を
図6の金属芯8に被せて公知の手法で熱湯をかけ、合成樹脂円筒を熱収縮させてから冷ますと、金属芯8を分離除去した後に合成樹脂の空洞層91内の所々に接着剤を塗布してバラバラに分解するのを阻止した状態で、治具Bを挿通し保持して、
図7と同様に螺旋状の尖端を研削して除去し、インクの出口11を螺旋状に開けてもよい。
図4、
図5の複数の突起がランダムに配設された点描構造を製造する場合も同じ手法が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、化粧用の筆記部を回転可能な円形に形成し、1以上設けると、一度に1以上の線を描いたり、点を描いたり面を塗布したり、螺旋状に傾斜した線を描くこともできる。しかも、持ち手と直角に筆記部が形成されているので、筆記部位が手で隠れることは無く、また能率良く楽に、安定性の良い化粧操作ができる。
【符号の説明】
【0024】
1 持ち手
2 インク溜め
3 インクの出る筆記部
31、32、33 円盤状の筆記部
4 インク保持部
41、42、43 インク保持層
51、52、53 合成樹脂板から成る支持層
6 インク供給路
7 ストッパー
8 金属製の螺旋状芯
9 合成樹脂の膜
91 合成樹脂膜
11 螺旋状のインク出口
12 独立した山状
13 金属筒
14 独立した山状の合成樹脂膜
15 インクの出口尖端