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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/16 20060101AFI20230508BHJP
   B65D 25/02 20060101ALI20230508BHJP
   B65D 6/34 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
F17C1/16
B65D25/02 B
B65D6/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022524814
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020166
(87)【国際公開番号】W WO2021234921
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リチティ アラン
(72)【発明者】
【氏名】メイプルズ マシュー
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127123(JP,A)
【文献】特開2018-039413(JP,A)
【文献】特開2019-014292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0066737(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/16
B65D 25/02
B65D 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の燃料タンクであって、
内部に対向する壁部を有するタンク本体と、
前記対向する壁部に固定される両端部を有する内蔵支柱を備え、
前記内蔵支柱は、側面視において互いに隣接するように縦横に配列された複数の貫通孔を有するハニカム構造を有し、伸縮性を備えるように格子状を呈しており、
複数の前記貫通孔の軸方向は、当該内蔵支柱の軸方向に対して直交するように形成されている燃料タンク。
【請求項2】
前記貫通孔は、六角孔、三角孔、又は、円形孔である請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記内蔵支柱は、その両端部に前記壁部に溶着する円形状の溶着面部を有して略円柱形状を呈している請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記内蔵支柱は、2つ以上設けられ、隣接する内蔵支柱同士を連結する連結部が設けられている請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記連結部は、前記内蔵支柱の両端部から離れた位置に設けられている請求項4に記載の燃料タンク。
【請求項6】
前記連結部に、前記貫通孔と同方向に貫通し、前記内蔵支柱の軸方向に並列された複数の連結貫通孔が設けられている請求項5に記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の燃料タンクとして、タンク本体の内部で対向する壁部同士を内蔵支柱で支える技術が知られている。燃料タンクでは、内圧変動によりタンク本体の壁部が燃料タンクの外側あるいは内側に向けて変形することがある。このとき、内蔵支柱に伸縮性がないと、タンク本体と内蔵支柱との溶着部に応力が集中しやすく、場合によっては溶着部に亀裂が生じるおそれや内蔵支柱が座屈するおそれがある。
【0003】
この問題に対して、特許文献1には、内蔵支柱に、弾性変形を容易とする耳たぶ形状部(lobe)を設ける技術が記載されている。これによれば、タンク本体の壁部が燃料タンクの外側あるいは内側に向けて変形すると、耳たぶ形状部が撓むことでタンク本体の変形量を吸収する。これにより、溶着部への応力集中が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6338420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、弾性変形の容易な箇所を部分的に設けた場合、支柱としての剛性が不足しやすいという問題があり、伸縮性と剛性とがバランスよく高次元で両立する内蔵支柱が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様では、樹脂製の燃料タンクであって、内部に対向する壁部を有するタンク本体と、前記対向する壁部に固定される両端部を有する内蔵支柱を備え、前記内蔵支柱は、側面視において互いに隣接するように縦横に配列された複数の貫通孔を有するハニカム構造を有し、伸縮性を備えるように格子状を呈しており、複数の前記貫通孔の軸方向は、当該内蔵支柱の軸方向に対して直交するように形成されている。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、内蔵支柱は、側面視において互いに隣接するように配列された複数の貫通孔を有するハニカム構造を有し、格子状を呈していることにより、弾性変形の容易な箇所を部分的に設ける場合に比べ、内蔵支柱の剛性が高くなる。タンク本体の内圧変動によりタンク本体の壁部が外側あるいは内側に変形して、内蔵支柱を軸方向に引張あるいは圧縮する力が加わると、格子構造によって、各貫通孔周りが軸方向に撓む。これにより、本発明の内蔵支柱によれば、伸縮性と剛性とがバランスよく確保され、タンク本体と内蔵支柱との溶着部における応力集中が低減される。
【0008】
第2の態様では、前記貫通孔は、六角孔、三角孔、又は、円形孔である。
【0009】
第2の態様によれば、格子形状がハニカム形状となるので、内蔵支柱の高い剛性と良好な伸縮性の両立を図る。
【0010】
第3の態様では、前記内蔵支柱は、その両端部に前記壁部に溶着する円形状の溶着面部を有して略円柱形状を呈している。
【0011】
第3の態様によれば、内蔵支柱を、その両端部に円形状の溶着面部を有した略円柱形状とすれば、溶着部や内蔵支柱に加わる荷重を軸を中心として均一に分散する。これにより、内蔵支柱への無理な応力集中を低減する。
【0012】
第4の態様では、前記内蔵支柱は、2つ以上設けられ、隣接する内蔵支柱同士を連結する連結部が設けられている。
【0013】
第4の態様によれば、内蔵支柱同士を連結する連結部を設けることで、万一、一方の内蔵支柱に過分な力が加わった際に、その力を連結部を通して他方の内蔵支柱に分散させる。
【0014】
第5の態様では、前記連結部は、前記内蔵支柱の両端部から離れた位置に設けられている。
【0015】
第5の態様によれば、格子形状によって伸縮性に富んだ部位に連結部が設けられることとなり、連結部への応力集中を低減する。
【0016】
第6の態様では、前記連結部に、前記貫通孔と同方向に貫通し、前記内蔵支柱の軸方向に並列された複数の連結貫通孔が設けられている。
【0017】
第6の態様によれば、連結部自体の伸縮性を確保でき、内蔵支柱の伸縮動作に合わせて連結部を伸縮させる。これにより、連結部への応力集中を一層低減する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、タンク本体が変形した際のタンク本体と内蔵支柱との溶着部への応力集中を低減するにあたり、内蔵支柱に伸縮性と剛性とをバランスよく確保する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る燃料タンクの側断面図である。
図2】第1実施形態に係る内蔵支柱の側面図である。
図3】第1実施形態に係る内蔵支柱の外観斜視図である。
図4】第2実施形態に係る内蔵支柱の側面図である。
図5】第2実施形態に係る内蔵支柱の外観斜視図である。
図6】貫通孔が円形孔である内蔵支柱の側面図である。
図7】貫通孔が三角孔である内蔵支柱の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、燃料タンク1は、樹脂製のタンク本体2の内部で対向する壁部2A,2Bに両端部がそれぞれ固定される内蔵支柱3を備えている。タンク本体2の層構造は、例えば燃料の不透過性に優れた材質からなるバリア層を、タンク内面を形成する内側熱可塑性樹脂層と、タンク外面を形成する外側熱可塑性樹脂層とで挟んだ多層断面構造からなる。内側熱可塑性樹脂層および外側熱可塑性樹脂層の材質は、例えば熱溶融性や成形性に優れるPE(高密度ポリエチレン)である。内蔵支柱3の両端部は、壁部2A,2Bの内側熱可塑性樹脂層に熱溶着される。
【0021】
図2図3も参照して、内蔵支柱3は、側面視(内蔵支柱3の軸O方向と直交するP方向)において複数の貫通孔4が隣接して配列されるように格子状を呈している。また、複数の貫通孔4は、内蔵支柱3の縦断面(軸O方向及びP方向と直交する断面)においても隣接して配列されている。内蔵支柱3を格子形状とすることにより、従来のように伸縮部を部分的に設けた場合に比して、内蔵支柱3の剛性を高める。そして、例えばタンク本体2の内圧変動により壁部2A,2Bから、内蔵支柱3を軸O方向に引張あるいは圧縮する力が加わると、各貫通孔4周りの格子壁部5が軸O方向に撓む。これにより、内蔵支柱3は、無理な応力集中が生じることなく、軸O方向に弾性変形する。つまり、本発明の内蔵支柱3によれば、伸縮性と剛性とがバランスよく確保されることになり、タンク本体2と内蔵支柱3との溶着部における応力集中が低減される。また、内蔵支柱3が撓むことで、内蔵支柱3の座屈のおそれも低減される。
【0022】
以下、内蔵支柱3の好適な実施形態を説明する。
第1実施形態
図1ないし図3において、内蔵支柱3は、貫通孔4が設けられる柱中央部6と、柱中央部6の両端にそれぞれ柱端部7を介して形成される溶着面部8と、を備えており、全体として略円柱形状を呈している。内蔵支柱3は、樹脂製であり、柱中央部6と柱端部7と溶着面部8とは一体に成形されている。
【0023】
貫通孔4は、六角孔9からなる。つまり、内蔵支柱3の柱中央部6は、ハニカム構造を有する。六角孔9は、軸O方向に延びる3列状態で配列されている。隣接する3つの六角孔9の中心同士を結ぶ線が三角形の格子を形成するように、六角孔9は格子状に配置される。六角孔9が正六角形であると、隣接する3つの六角孔9の中心同士を結ぶ線は正三角形の格子を形成する。柱中央部6は、周面寄りの格子壁部5がアコーデオン状の平面10として形成されているものの、各六角孔9の開口端周りは、図3から判るように、軸O周りの円周方向に沿って円弧状に形成されていることで、全体として略円柱形状を呈している。
【0024】
溶着面部8は、円板形状に形成されている。溶着面部8には、複数の円弧リブ12が軸Oを中心として同心状に形成されている。同一円周線上の円弧リブ12には、切り込みが複数形成されている。このような円弧リブ12を設けることにより、熱溶着の際にタンク本体2の樹脂が円弧リブ12周りに回り込むので、タンク本体2と内蔵支柱3との溶着性が向上する。
【0025】
本実施形態によれば、貫通孔4が六角孔9から構成されることで、内蔵支柱3がハニカム構造を有することとなり、内蔵支柱3の高い剛性と良好な伸縮性の両立を図ることができる。内蔵支柱3を、その両端部に円形状の溶着面部8を有した略円柱形状とすれば、溶着部や内蔵支柱3に加わる荷重を軸Oを中心として均一に分散する。これにより、内蔵支柱3への無理な応力集中を低減する。
【0026】
第2実施形態
第2実施形態では、図4図5に示すように、2つの内蔵支柱3が連結部13で連結されている。各内蔵支柱3の構成は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。連結部13は、内蔵支柱3の両端部から離れた内蔵支柱3の中程の位置、具体的には柱中央部6に設けられている。連結部13は、各内蔵支柱3の平面10同士を連結する軸O方向視で矩形状の板状部から構成されている。この板状部は軸O方向に間隔を空けて複数設けられている。これにより、連結部13には、六角孔9と同方向に、つまりP方向に貫通し、内蔵支柱3の軸O方向に並列された複数の六角形状の連結貫通孔14が設けられる。
【0027】
内蔵支柱3同士を連結する連結部13を設けることで、万一、一方の内蔵支柱3に過分な力がかかった際に、その力を連結部13を通して他方の内蔵支柱3に分散させる。連結部13を内蔵支柱3の両端部から離れた内蔵支柱3の中程の位置に設けることで、格子形状によって伸縮性に富んだ部位に連結部13が設けられることとなり、連結部13への応力集中を低減する。また、連結部13に、六角孔9と同方向に貫通し、内蔵支柱3の軸O方向に並列された複数の連結貫通孔14を設けることで、連結部13自体の伸縮性を確保でき、内蔵支柱3の伸縮動作に合わせて連結部13を伸縮させる。これにより、連結部13周りの応力集中を一層低減する。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。貫通孔4は、六角孔9に限られることなく、格子状に配列されていれば、図6に示す円形孔15や図7に示す三角孔16等であってもよい。すなわち、図6に示す形態では、隣接する3つの円形孔15の中心同士を結ぶ線が正三角形の格子を形成するように、円形孔15は格子状に配置される。図7に示す形態では、隣接する6つの三角孔16の中心同士を結ぶ線が六角形の格子を形成するように、三角孔16は格子状に配置される。また、三角孔16が正三角形であると、隣接する6つの三角孔16の中心同士を結ぶ線は正六角形の格子を形成する。
また、第2実施形態において、内蔵支柱3は3つ以上あってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 燃料タンク
2 タンク本体
3 内蔵支柱
4 貫通孔
5 格子壁部
6 柱中央部
7 柱端部
8 溶着面部
9 六角孔
13 連結部
14 連結貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7