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特許7274054スピッティングのない信頼性の高い補給が可能な充填ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】スピッティングのない信頼性の高い補給が可能な充填ヘッド
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20230508BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20230508BHJP
   B60K 15/04 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B60K13/04 A
B60K15/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022544379
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2021052077
(87)【国際公開番号】W WO2021152071
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】20154884.9
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶太
(72)【発明者】
【氏名】都竹 泰成
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/149824(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/149750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B60K 13/04
B60K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵システム(1)のための充填ヘッド(13)であって、重力方向(G)に対して充填方向(F)と称される所定の角度(α)だけ傾斜して取り付けられる本体(15)を備え、外装部(19)によって閉ざされることで形成されるキャビティ(20)内に分離装置(21)が収められた主部(17)を有し、前記充填ヘッド(13)は、前記充填方向(F)の周囲に延びる前記分離装置(21)の円筒壁(23)に、前記充填ヘッド(13)の過充填防止のための自動停止センサ(39a、39b)付きの流体の配給ノズルを受けるように構成され、前記充填ヘッド(13)は、流体タンク(3)の充填ライン(9)およびベントライン(11)に接続されるように構成され、前記分離装置(21)は、前記ベントライン(11)からの流れ(V)と前記充填ライン(9)に向かう流れ(F)との分割を改善するように配置され、前記分離装置(21)は、前記円筒壁(23)の外側面から横断方向に突出した少なくとも1つのフランジ(25)であって、前記円筒壁(23)内に受けられたときの前記ノズルの前記センサ(39a、39b)よりも前記充填方向(F)に関して上流側となる、前記キャビティ(20)内に取り付けられたフランジ(25)をさらに備え、これにより、前記センサ(39a、39b)の動作を妨げることなく、前記充填ヘッド(13)内の前記ノズルから出た流体が、前記充填ヘッド(13)から吹き返される可能性を確実に制限するようにされた、充填ヘッド(13)において、前記分離装置(21)の前記フランジ(25)が、前記本体(15)の後方部分(B)と、前記充填方向(F)に関して前記後方部分(B)とは反対方向に位置する前記本体(15)の前方部分(P)と、の間に取り付けられて、前記充填ヘッド(13)内にある流体の上面全体のほぼ上方に遮蔽を形成すること、および前記ベントライン(11)が前記本体(15)の前記後方部分(B)で前記充填ヘッド(13)と接続され、前記重力方向(G)に関して前記円筒壁(23)の下半分は、前記充填方向(F)に関して前記フランジ(25)の下流側には前記本体(15)の前記前方部分(P)と向かい合う外表面に貫通凹部を持たず、これにより、前記円筒壁(23)内に受けた前記ノズルからの前記充填ライン(9)に向かう流体の層流(F)を確保すること、を特徴とする充填ヘッド(13)。
【請求項2】
前記分離装置(21)の前記フランジ(25)が、前記本体(15)の前記前方部分(P)と前記円筒壁(23)との間に少なくとも1つの貫通穴(26、30b)を備え、これにより、前記フランジ(25)より上にある任意の流体が前記本体(15)の前記前方部分(P)と前記円筒壁(23)との間を重力(G)によって流れることができるようにする、請求項1に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項3】
前記外装部(19)が、前記配給ノズルを前記分離装置(21)に案内するための案内用突起要素(18)を備える、請求項1または2に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項4】
前記分離装置(21)内にノズルを受けていないときは、前記案内用突起要素(18)がキャップによって封止状態で閉ざされる、請求項3に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項5】
前記充填ヘッド(13)が、前記本体(15)の前記主部(17)と一体の緩衝空間(12)をさらに備え、これにより、前記ベントライン(11)からの流れ(V)を減速させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項6】
前記分離装置(21)が取外し可能であり、これにより交換可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項7】
前記円筒壁(23)が、前記ベントライン(11)からの流体の流れ(V)が前記円筒壁(23)を通過することにより、前記充填ヘッド(13)の外に放出されることを可能にする少なくとも1つの穴(31)をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項8】
前記外装部(19)が、溶接によって前記主部(17)に封止状態で固定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項9】
前記外装部(19)が、前記外装部(19)と前記主部(17)との間でシールリングをスナップ嵌めすることにより、前記主部(17)に封止状態で固定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の充填ヘッド(13)。
【請求項10】
流体タンク(3)であって、充填ヘッド(13)から前記タンク(3)への重力による流体の流れを案内するように構成された充填ライン(9)に接続された流体タンク(3)と、前記タンク(3)内の圧力変動を補償するように構成されたベントライン(11)と、を備える貯蔵システム(1)において、請求項1から9のいずれか一項に記載の充填ヘッド(13)をさらに備えることを特徴とする貯蔵システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車タンクなどの流体タンクに対するノズル(自動式または非自動式)による信頼性の高い補給を可能にする充填ヘッドであって、補給段階でスピッティングのない、すなわち充填ヘッドから流体が吹き返されることのない充填ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
車両およびトラックからの排出に関する法令では、とりわけ大気中への窒素酸化物NOxの放出削減が規定されている。この目的を達成する知られる方法の1つは、アンモニアなどの還元剤を排気ラインに注入することによって窒素酸化物を還元できるようにする「SCR」(用語「選択的触媒還元」の略)法を用いることである。SCRシステムは、一般に、尿素溶液などの添加剤水溶液の貯蔵のためのタンクと、添加剤水溶液を供給ラインで移送するためのポンプと、所望の量の添加剤水溶液を計量し、それを排気ラインに注入するための装置と、を備える。それにより、添加剤水溶液は正確に計量されて排気ガスのストリームに注入され、そこで加水分解された後、窒素酸化物(NOx)を窒素(N)と水(HO)に変換する。
【0003】
しばしばアドブルー(登録商標)と呼ばれる尿素溶液の配給は、トラックでは何年にもわたって知られている。トラッククラスではタンク容量が大きいため、燃料供給とは別に毎分40リットルの充填速度で、注入口が大径である尿素タンクをもつ配給システムが開発されている。
【0004】
乗用車の場合、市場で当初要求されたのは、ねじ込み式ボトルによる手動充填に対応する充填ヘッドを設計することだった。充填は重力によって行われ、通常は毎分3リットル前後とゆっくりした速度だった。しかし、汚染除去レベルが厳しくなって尿素溶液の消費量が増えたために、尿素溶液タンクの定期的な充填がより一般的になってきている。一方で、消費者らは自分たちにも最早トラック向けのディスペンサーが提供されてもよいはずであると考えるようになったため、想定されていたものとは異なる独自の供給速度を要求するようになった。
【0005】
そのため、今や自動車メーカーは、もともとヘビーデューティ用途に設計された自動充填技術に対しても、手動充填に対しても対応するSCRシステムの設計を要求している。既知の充填ヘッドとしては、特許文献1、特許文献2、および特許文献3の各文献に開示されているものがある。
【0006】
さらに、現時点では、ノズルに組み込まれたセンサ(ZVAノズルセンサ、HornノズルセンサまたはPIUSIノズルセンサ)に応じて3種類の自動充填技術が主に用いられている。どのセンサも(ZVAノズルのように)ノズルの先端に取り付けられているというわけではなく、(HornノズルセンサおよびPIUSIノズルセンサのように)先端から最大16mmまでのノズル上流方向に取り付けられるものもある。
【0007】
そのため、ノズルで使用されるセンサの種類にかかわらず、既存のねじ込み式ボトルは小径である一方、充填速度が最高毎分40リットルという速さであることなど、幾つもの相反する仕様が満たさなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2019/149750号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2013/306665号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/036533号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、補給段階で充填ヘッドからのスピッティングを起こすことなく、そうした相反する仕様を満たす充填ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、貯蔵システムのための充填ヘッドであって、重力方向に対して充填方向と称される所定の角度だけ傾斜して取り付けられる本体を備え、外装部によって閉ざされることで形成されるキャビティ内に分離装置が収められた主部を有し、充填ヘッドは、充填方向の周囲に延びる分離装置の円筒壁に、充填ヘッドの過充填防止のための自動停止センサ付きの流体の配給ノズルを受けるように構成され、充填ヘッドは、流体タンクの充填ラインおよびベントラインに接続されるように構成され、分離装置はベントラインからの流れと充填ラインに向かう流れとの分割を改善するように配置され、分離装置は、円筒壁の外側面から横断方向に突出した少なくとも1つのフランジであって、円筒壁内に受けられたときのノズルのセンサよりも充填方向に関して上流側となる、キャビティ内に取り付けられたフランジをさらに備える、これにより、センサの動作を妨げることなく、充填ヘッド内のノズルから出た流体が充填ヘッドから吹き返される可能性を確実に制限するようにされた、充填ヘッドにおいて、分離装置のフランジが、本体の後方部位と充填方向に関して後方部位と反対方向に位置する本体の前方部位との間に取り付けられて、充填ヘッド内にある流体の上面全体のほぼ上方に遮蔽を形成すること、およびベントラインが本体の後方部位で充填ヘッドと接続され、重力方向に関して円筒壁の下半分は、充填方向に関してフランジの下流側には本体の前方部位と向かい合う外表面に貫通凹部を持たず、これにより、円筒壁内に受けたノズルからの充填ラインに向かう流体の層流を確保すること、を特徴とする充填ヘッドに関する。
【0011】
本発明によれば、フランジはフランジと外装部の上部との間に死容積を形成して、仮に通過する流体があっても外装部の頂部に到達する前にそれを受けるようにする。つまり、この死容積は、ノズルの閉鎖前および閉鎖中に充填ヘッドからのスピッティングを防ぐために、フランジとの接触によって減速した流体を場合によって貯える追加的な空間を形成する。そのため、センサは、スピッティングなしに、充填ヘッド内の流体の圧力を迅速に検知できるため、ノズルの閉鎖は格段に改善される。このフランジの構成は死容積への流体の到達も一層困難にする。さらに、ノズルから出てくる流体は、重力により、また重力方向に対する本体の所定の角度のために、円筒壁の内径に沿って、凸部や凹部のような不整面に遭遇することなく充填ラインへと流れ、流体は充填ラインまで円滑に案内され得る。
【0012】
本発明は、以下の任意選択の機能のうちの1つ以上を単独で、または組合せにより含めることもできる。
【0013】
分離装置のフランジは、本体の前方部分と円筒壁との間に少なくとも1つの貫通穴を備えることができ、それによって、フランジより上にある流体が重力によって本体の前方部位と円筒壁との間を流れることができるようにする。つまり、死容積内に流体がある場合、その流体は重力により、また重力方向に対する本体の所定の角度のために、円筒壁と本体の前方部位との間でその貫通穴内を流れることができ、それによってセンサの外乱を回避することができる。
【0014】
外装部は、配給ノズルを分離装置に案内するための案内用突起要素を備えることができ、それによって円筒壁の機械的保護を高めることができる。分離装置内にノズルを受けていないときは、案内用突起要素はキャップによって封止状態で閉ざされることが好ましい。
【0015】
充填ヘッドは、本体の主部と一体の緩衝空間をさらに備えることができ、それによってベントラインからの流れを減速させることができる。この構成は、充填ヘッドからのスピッティング防止という目的に関してなお一層の改善を可能にする。
【0016】
分離装置は取外し可能であり、それによって交換可能であることが好ましい。それにより、分離装置は、別種または別寸法のノズルおよび/またはタンクに合うような異なる幾何学形状のものと交換することができる。
【0017】
円筒壁は、ベントラインからの空気の流れが円筒壁を通過することにより充填ヘッドの外に放出されるようにする少なくとも1つの穴をさらに備えることが好ましい。それによってタンクの空気を充填ヘッドの外にベントして、ノズルから出る流体を充填ラインを通してより自由にタンクへと流すことができ、より信頼性の高い補給が可能となる。
【0018】
第1の例によれば、外装部は溶接によって主部に封止状態で固定することができる。したがって、製造工程では、サイクル時間および関連コストの改善を可能にする独自の溶接法を用いる。
【0019】
第2の例によれば、外装部は、外装部と主部との間でシールリングをスナップ嵌めすることで主部に封止状態で固定することができる。したがって、製造工程での溶接ステップの利用を回避することができ、より容易な工程が可能となる。
【0020】
本発明は、充填ヘッドからタンクへの重力による流体の流れを案内するように構成された充填ラインに接続された流体タンクと、タンク内の圧力変動を補償するように構成されたベントラインと、を備える貯蔵システムにおいて、前述の実施形態のいずれか1つによる充填ヘッドをさらに備えることを特徴とする貯蔵システムに関する。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、限定的でない説明として、添付の図面を参照しながら行う以下の詳細な説明を読むことによってより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用できる車両の上面概略図である。
図2】本発明による充填ヘッドの斜視図である。
図3図2の面III-III沿いの断面図である。
図4】本発明による分離装置の斜視図である。
図5】本発明による分離装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
各図で同一または類似の要素に対しては、必要に応じて添字を付け加えた上で、同一の符号が与えられる。そのため、それぞれの構造および機能の説明を毎回繰り返すことはない。
【0024】
以下すべてにおいて、向きは自動車両の通常の向きである。とりわけ、「上」、「下」、「左」、「右」という用語は図の方向で上方、下方、前方、後方をいう。
【0025】
そうして使用された用語はしかるべき状況下では互いに入替え可能であり、ここに説明する本発明の実施形態はここに説明または図示する以外の向きで動作可能であるものと理解されたい。
【0026】
請求項で使用される「を備える」という用語は、その前に列挙された手段に制限されるものと解釈されるべきでなく、他の要素またはステップをそれによって除外するものではないことに留意されたい。したがって、この用語は、言及されているように、述べられた特徴、整数値、ステップまたは構成要素が存在することを示すものと解釈されたいが、それ以外の1つ以上の特徴、整数値、ステップもしくは構成要素またはそれらの集まりが存在するか、または追加されることを妨げない。したがって、「手段AおよびBを備える装置」という表現の範囲は構成要素AおよびBのみからなる装置に制限されるべきでない。これは、本発明に関して、装置の関係する構成要素がAとBのみであることを意味する。
【0027】
「タンク」という用語は、変わりやすく多様な環境上および使用上の条件のもとで流体を貯蔵することができる非浸透性のタンクのことをいうものと理解される。自動車両に燃料(ガソリン、軽油、水素など)を供給するための燃料タンクがその例である。用語「タンク」は尿素タンクまたは水タンクに対しても適用することができる。
【0028】
「SCRシステム」という表現は、液体添加剤の形の尿素水溶液などを用いて、車両のものであることが好ましい内燃機関の排気ガスに含まれるNOxを触媒還元するためのシステムのことをいうものと理解される。本発明は有利にはディーゼルエンジン、とりわけ乗用車または重量物運搬車のディーゼルエンジンに適用される。
【0029】
また、尿素配給ノズルは燃料充填ヘッドに導き入れることができる。そのため、配給ノズルが磁界によって作動するようにされた弁が開発されている。したがって、尿素タンクに適用する場合は、充填ヘッドはその弁を作動させて尿素の供給を可能にするための磁気要素を有していなければならない。
【0030】
ここで行う説明には幾つもの具体的詳細が示されている。しかし、本発明の実施形態はそうした具体的詳細がなくても実施できることがわかる。他の例では、公知の方法、構造および技術については、この説明に対する理解の妨げとなることのないよう、詳細には示さなかった。
【0031】
図1に示したように、本発明は、汚染除去システム45に接続されたパワートレイン43を装備する車両41に関する。より詳細には、汚染除去システム45は、排気装置47と、排気装置47における尿素溶液などの添加剤の注入装置49と、を備える。
【0032】
注入装置49は、添加剤水溶液を貯蔵するためのタンク3を含む貯蔵システム1を備える。また、注入装置49は、容量性効果型、超音波式もしくは機械式であることができるレベルセンサ、温度センサおよび/または品質センサなどの複数の浸漬センサを添加剤水溶液中に含むことも、含まないこともできる。
【0033】
注入装置49は、車両41の中央コンピュータに接続された処理ユニットによって管理される注入要素7と連動するポンプ5をさらに備える。処理ユニットは、コード化された命令が格納された記憶装置を具備する。コード化された命令が処理ユニットによって実行されると、SCR法などのステップが実施される。
【0034】
タンク3には、尿素溶液やアンモニア溶液のような添加剤水溶液が定期的に補給されなければならない。そのため、貯蔵システム1は充填ライン9、ベントライン11(リターンラインとも呼ばれる)、および充填ヘッド13を備える。充填ライン9は、充填ヘッド13からタンク3までの重力による流体の流れを案内するように構成される。ベントライン11は、充填ライン9からタンク3に送られてくる流体によって押されたタンク3内の流体(主にタンク3内の空気および場合によって液体の蒸気を含む気体)を充填ヘッド13から放出することで、補給中のタンク3内の圧力変動を補償するように構成される。
【0035】
最後に、充填ヘッド13は流体配給システムのノズル(図示略)を受けるように、さらに充填ライン9およびベントライン11に、好ましくは封止状態で、接続されるように構成される。それにより、充填ヘッド13は、補給の間を通して、ノズルから出る流体が充填ライン9を通してタンク3に流入することを可能にすると同時に、タンク3内の液体より上にある流体がベントライン11を通してタンク3から放出され、車両41の周りの周囲空気(外部雰囲気)へと逃れることを可能にする。
【0036】
本発明は、ノズルで使用されるセンサの種類にかかわらず、既存のねじ込み式ボトルは小径である一方、充填速度が最高毎分40リットルという速さであることなど、前述の相反する仕様を、補給段階で充填ヘッド13からのスピッティングを起こすことなしに満たす充填ヘッド13を提供することを目的とする。
【0037】
そのため、本発明による充填ヘッド13は、重力方向Gに対して以下では充填方向Fと呼ぶ(図3参照)所定の角度α(アルファ)で傾斜して取り付けられる本体15を備える。本発明によれば、この所定の角度α(アルファ)は重力方向Gに関してて0°から60°の間で成され得る。この角度範囲は、重力の働きによって良好な流れを可能にするものであると同時に、配給ノズル(図示略)を容易に充填ヘッド13に導き入れることができるものである。
【0038】
充填ヘッド13は、外装部19によって閉ざされることでキャビティ20を形成する主部17を備える。第1の例によれば、外装部19は溶接によって主部17に封止状態で固定することができる。したがって、製造工程では、サイクル時間および関連コストの改善を可能にする独自の溶接法を用いる。
【0039】
第2の例によれば、外装部19は、外装部19と主部17との間でシールリング(図示略)をスナップ嵌めすることで、主部17に封止状態で固定することができる。したがって、製造工程での溶接ステップの利用を回避することができ、より容易な工程が可能となる。
【0040】
外装部19は、配給ノズルを分離装置21(この先で説明)に案内するための案内用突起要素18を備えることができ、それによってその円筒壁23の機械的保護を高めることができる。好ましくは、案内用突起要素18は、分離装置21内にノズルを受けていないときは、キャップ(図示略)をねじ込むことによって封止状態で閉ざされる。
【0041】
図3に示されるように、外装部19は案内用突起要素18の周囲に磁石16を具備することができ、それにより、タンク3が尿素を供給できる尿素タイプである場合、磁界でノズルの弁を作動させる。
【0042】
主部17は複数のリブ14を具備しており、各々のリブ14の上端で分離装置21を受けることができる。そのため、分離装置21はキャビティ20から容易に取外し可能であり、それによって交換可能である。したがって、分離装置21は、別種または別寸法のノズルおよび/またはタンク3に合うような異なる幾何学形状のものと交換することができる。
【0043】
充填ヘッド13はさらに、主部17と一体の緩衝空間12を本体15の後方部位に備えることができ、それによってベントライン11からの流れVの速度を抑える。この構成は、充填ヘッドからのスピッティング防止という目的に関してなお一層の改善を可能にする。緩衝空間12は、センサのタイプに応じて、80mlから140mlの間、好ましくは90mlから130mlの間、より好ましくは94mlから129mlの間で成される。より詳細には、充填方向Fに関してノズルのセンサが上流側にあればあるほど、緩衝空間12は大きくなる。
【0044】
本発明によれば、本体15のキャビティ20内に吊るされることが好ましい分離装置21は、充填方向Fの周囲に延びるその円筒壁23の中に配給ノズルを受けるように構成される。分離装置21は、ベントライン11からの流れVと充填ライン9に向かう流れFとの分割が改善するように配置される。そのため、図3に示すように、ノズルの先端(ZVAノズルセンサの場合、面I)に取り付けられたセンサ39aは、充填方向Fに関してノズルの上流方向(HornおよびPIUSIノズルセンサの場合、面II)に取り付けられて、差し込まれ得るのが先端から最大16mmまでのセンサ39bよりも充填ヘッド13内で低い位置となる。
【0045】
本発明の第1の態様によれば、分離装置21は、円筒壁23の外側面から横断方向に突出した少なくとも1つのフランジ25であって、円筒壁23内に受けたときのノズルのセンサ39aまたはセンサ39bよりも充填方向Fに関して上流側となるキャビティ20内に取り付けられたフランジ25をさらに備える。フランジ25のこの構成は、センサ39aまたは39bの動作を妨げることなく、充填ヘッド13内のノズルから出た流体が充填ヘッド13から吹き返される可能性を確実に抑え込むようにするものである。
【0046】
本発明の第1の態様によれば、フランジ25はキャビティ20内のフランジ25と外装部19の上部との間に死容積を形成して、仮に通過する流体があっても外装部19の頂部に到達する前にそれを受けるようにする。つまり、この死容積は、ノズルの閉鎖前および閉鎖中に充填ヘッド13からのスピッティングを防ぐために、フランジ25との接触によって減速した流体を場合によって貯える追加的な空間を形成する。そのため、センサは充填ヘッド13内の流体の圧力をスピッティングなしに迅速に検知できるため、ノズルの閉鎖は格段に改善される。
【0047】
分離装置21のフランジ25は、本体15の後方部位Bと、充填方向Fに関して後方部位Bと反対方向に位置する本体15の前方部位Pと、の間に取り付けることができる。この構成は、充填ヘッド13内にある流体の上面全体のほぼ上方に遮蔽を形成することができる。つまり、それによってフランジ25の上方の死容積への流体の到達が一層困難になる。
【0048】
本発明の第2の態様では、ベントライン11は本体15の後方部位Bで充填ヘッド13と接続される。より詳細には、円筒壁23は、本体15の後方部位Bの緩衝空間12の開口部と向かい合う少なくとも1つの凹部31を備え、円筒壁23はノズルから出る流体を本体15の前方部位Pに沿って案内して、ノズルから出て本体15の前方部位Pの充填ライン9に向かう流体の層流Fと、ベントライン11から発して本体の後方部位Bの円筒壁23を通る流体の直接ベントVと、を確保する。それにより、この構成は補給段階での流体の供給遮断/ブレークダウンを抑え込むことができる。
【0049】
そこで、本発明の第2の態様によれば、緩衝空間12はタンク3からできるだけ遠ざけることができる。有利には、タンク3の容量および/または補給速度にかかわらず、ベントライン11からの流れVの速度が一段と低減され、緩衝空間12の壁沿いの気泡の破裂も一段と進む。さらに、分離装置21の働きにより、流れF、Vは、有利には、本体15のキャビティ20の前方部分P内のノズルから出た流体の流れFと、本体15のキャビティ20の後方部分B内のベントライン11からの流体の流れVと、の間のキャビティ20内での分割が向上し、それによってタンクが実際に満杯になるまで配給ノズルの停止機能が作動するのを防ぐ。
【0050】
好ましくは、分離装置21は、フランジ25の各々の側にそれぞれ向い合わせに取り付けられた上部フランジ27および下部フランジ29と、それぞれがフランジ25およびフランジ29と円筒壁23の外表面との間に取り付けられた横断方向プレート33aおよび横断方向プレート33bと、をさらに備える。横断方向プレート33aおよび横断方向プレート33bは本体15の前方部位Pと後方部位Bとの間の分割を向上させることができる。
【0051】
好ましくは、重力方向Gに関して円筒壁23の下半分、すなわち、充填方向Fと平行で、充填方向Fに対して垂直を成す角度にわたって横断方向プレート33aと横断方向プレート33bとの間に延びて本体15の前方部位Pと向かい合う円筒壁23のアーチ形表面は、フランジ25の下流側には貫通凹部をもたない。より一般的には、ノズルが充填方向Fに関して円筒壁23に完全に収まった状態で、すなわち、円筒壁23の内表面から突出したリブ24の上部に(面I付近で)ノズルの先端が当接するとき、円筒壁23の下半分は面IおよびII内に凹部をもたない。この構成は、円筒壁23内に充填ライン9に向けて受けたノズルからの流体の層流Fを確保するものである。つまり、ノズルから出る流体は、重力により、また重力方向Gに対する本体15の所定の角度のために、円筒壁23の内径に沿って、凸部や凹部のような不整面に遭遇することなく充填ラインへと流れ、流体は充填ラインまで円滑に案内され得る。
【0052】
分離装置21のフランジ25は、本体15の前方部分Pと円筒壁23の外表面との間に少なくとも1つの貫通穴26を備えることができ、それによって、フランジ25より上、すなわち死容積内に流体がある場合、その流体が重力によって本体15の前方部位Pと円筒壁23との間を流れることができるようにする。同様に、分離装置21の下部フランジ29も、本体15の前方部分Pと円筒壁23の外表面との間に少なくとも1つの貫通穴30bを備えることができ、それによって、貫通穴26から重力で流れる流体が本体15の前方部位Pと円筒壁23の下端との間をさらに流れることができるようにする。つまり、死容積内の流体は、重力により、また重力方向Gに対する本体15の所定の角度のために、円筒壁23と本体15の前方部位Pとの間でその貫通穴26、30b内を流れることができ、それによってセンサ39aまたは39bの外乱を回避することができる。
【0053】
ベントライン11からの流れVと充填ライン9に向かう流れFの分割をなお一層改善するために、円筒壁23は上部フランジ27とフランジ25との間に少なくとも1つの貫通凹部28をさらに備えることができる。
【0054】
最後に、下部フランジ29は、充填方向Fに関して穴30bと反対方向に位置する少なくとも1つの穴30aであって、本体15の後方部位Bの緩衝空間12の開口部と向かい合う穴30aをさらに備えることができ、それによって、ベントライン11から発して本体の後方部位Bの円筒壁23を通る流体の直接ベントVを改善する、つまり、緩衝空間12と円筒壁23との間の流れVの偏向を防止する。
【0055】
言うまでもなく、本発明はここに紹介した実施形態および変形形態だけに限定されるものではなく、当業者であれば自明となるであろう他の様々な実施形態および/または変形形態の対象となることができる。そのため、ここに説明した幾つかの実施形態は他の実施形態に含まれる幾つかの特徴を含みつつ、他の特徴は含まないが、異なる実施形態の特徴の組合せは本発明の範囲内であるものと意図され、異なる実施形態を形成するものであり、そのことは当業者によって理解されるであろう。たとえば、添付の請求項において、特許請求される実施形態のそれぞれはあらゆる組合せで用いることができる。
【0056】
とりわけ、具体的な用途によって、特にタンク3のタイプに応じて、形状および/または寸法を変更することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 貯蔵システム
3 タンク
5 ポンプ
7 注入要素
9 充填ライン
11 ベントライン
12 緩衝空間
13 充填ヘッド
14 リブ
15 本体
16 磁石
17 主部
18 案内用突起要素
19 外装部
20 キャビティ
21 分離装置
23 円筒壁
24 リブ
25 フランジ
26 貫通穴
27 上部フランジ
28 貫通凹部
29 下部フランジ
30a 穴
30b 貫通穴、穴
31 凹部
33a 横断方向プレート
33b 横断方向プレート
39a センサ
39b センサ
41 車両
43 パワートレイン
45 汚染除去システム
47 排気装置
49 注入装置
G 重力方向
P 前方部位、前方部分
B 後方部位、後方部分
F 流れ、充填方向、層流
V 流れ、直接ベント
I 面
II 面
図1
図2
図3
図4
図5