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特許7274123プレキャストコンクリート部材の連結構造及び連結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材の連結構造及び連結方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20230509BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D21/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019064749
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165130
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一成
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-026004(JP,A)
【文献】特開2013-028954(JP,A)
【文献】特開2015-086594(JP,A)
【文献】特開2005-325518(JP,A)
【文献】特開2020-147913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並置された2つのプレキャストコンクリート部材と、該2つのプレキャストコンクリート部材のうち、一方のプレキャストコンクリート部材に隣り合うように他方のプレキャストコンクリート部材に形成された切り欠きに該他方のプレキャストコンクリート部材と連続一体となるように後打ちコンクリートで設けられた引張力伝達部と、一方の端部に取り付けられた定着手段が前記一方のプレキャストコンクリート部材に埋設され、他方の端部に取り付けられた定着手段前記切り欠きの内面から離間する形で前記引張力伝達部に埋設されてなるPC鋼材とを備えるとともに、前記2つのプレキャストコンクリート部材を、それらの対向面に互いに作用する圧縮力を反力とした前記PC鋼材の引張力によって互いに引き寄せたことを特徴とするプレキャストコンクリート部材の連結構造。
【請求項2】
互いに並置された2つのプレキャストコンクリート部材と、該2つのプレキャストコンクリート部材にそれぞれ互いに隣り合うように形成された2つの切り欠きに前記2つのプレキャストコンクリート部材とそれぞれ連続一体となるように後打ちコンクリートで設けられた2つの引張力伝達部と、該2つの引張力伝達部のうち、一方の引張力伝達部に一方の端部に取り付けられた定着手段前記2つの切り欠きの一方の内面から離間する形で埋設され、他方の引張力伝達部に他方の端部に取り付けられた定着手段前記2つの切り欠きの他方の内面から離間する形で埋設されてなるPC鋼材とを備えるとともに、前記2つのプレキャストコンクリート部材を、それらの対向面に互いに作用する圧縮力を反力とした前記PC鋼材の引張力によって互いに引き寄せたことを特徴とするプレキャストコンクリート部材の連結構造。
【請求項3】
前記2つのプレキャストコンクリート部材をプレストレストコンクリートとした請求項1又は請求項2記載のプレキャストコンクリート部材の連結構造。
【請求項4】
PC鋼材と、該PC鋼材に引張力を導入するための反力が前記PC鋼材の各端近傍に伝達されるように該PC鋼材と同軸に配置された反力部材と、該反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束することで前記反力を発生させるとともにその拘束状態を解除することで該反力を解放することができるようになっている反力発生解放機構とを備えた連結ユニットを用いて2つのプレキャストコンクリート部材を互いに連結するプレキャストコンクリート部材の連結方法であって、
前記反力部材の材軸方向変形が収縮状態に拘束されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材に引張力を導入し、
前記2つのプレキャストコンクリート部材のうち、一方のプレキャストコンクリート部材に前記PC鋼材の一方の端部を含む所定範囲が又は該一方の端部に取り付けられた定着手段が埋設される形で前記連結ユニットが前記一方のプレキャストコンクリート部材に配置されるように該一方のプレキャストコンクリート部材を製作するとともに、他方のプレキャストコンクリート部材に切り欠きが形成されるように該他方のプレキャストコンクリート部材を製作し、
前記2つのプレキャストコンクリート部材を、前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が前記切り欠き内に位置決めされるように並置し、
前記切り欠き内にコンクリートを打設することで前記他方のプレキャストコンクリート部材と連続一体化する引張力伝達部を該切り欠きに設けるとともに、前記引張力伝達部に前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段を埋設し、
前記引張力伝達部のコンクリート強度が発現した後、前記反力部材の収縮状態が解除されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材の引張力を解放するとともに、該引張力に対する反力としての圧縮力を前記2つのプレキャストコンクリート部材の対向面でとりながら、前記PC鋼材の引張力によって前記2つのプレキャストコンクリート部材を互いに引き寄せて連結することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の連結方法。
【請求項5】
PC鋼材と、該PC鋼材に引張力を導入するための反力が前記PC鋼材の各端近傍に伝達されるように該PC鋼材と同軸に配置された反力部材と、該反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束することで前記反力を発生させるとともにその拘束状態を解除することで該反力を解放することができるようになっている反力発生解放機構とを備えた連結ユニットを用いて2つのプレキャストコンクリート部材を互いに連結するプレキャストコンクリート部材の連結方法であって、
前記反力部材の材軸方向変形が収縮状態に拘束されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材に引張力を導入し、
前記PC鋼材への引張力導入工程と相前後して又は同時に、前記2つのプレキャストコンクリート部材にそれぞれ切り欠きが形成されるように該2つのプレキャストコンクリート部材を製作し、
前記2つのプレキャストコンクリート部材を前記各切り欠きが対向するように並置し、
前記連結ユニットを、前記PC鋼材の一方の端部を含む所定範囲が又は該一方の端部に取り付けられた定着手段が前記切り欠きのうち、一方に位置決めされ、他方の切り欠き内に前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が位置決めされるように配置し、
前記各切り欠き内にコンクリートをそれぞれ打設して、前記各切り欠きのうち、一方の切り欠きに該切り欠きが属するプレキャストコンクリート部材と連続一体化する引張力伝達部を、他方の切り欠きに該切り欠きが属するプレキャストコンクリート部材と連続一体化する引張力伝達部をそれぞれ設けることにより、前記PC鋼材の一方の端部を含む所定範囲を又は該一方の端部に取り付けられた定着手段を前記一方の切り欠きに設けられた引張力伝達部に埋設するとともに、前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲を又は該他方の端部に取り付けられた定着手段を前記他方の切り欠きに設けられた引張力伝達部に埋設し、
前記各引張力伝達部のコンクリート強度が発現した後、前記反力部材の収縮状態が解除されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材の引張力を解放するとともに、該引張力に対する反力としての圧縮力を前記2つのプレキャストコンクリート部材の対向面でとりながら、前記PC鋼材の引張力によって前記2つのプレキャストコンクリート部材を互いに引き寄せて連結することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の連結方法。
【請求項6】
前記反力部材を一対の筒状反力部材で構成して該一対の筒状反力部材の内部空間に前記PC鋼材を挿通するとともに、該PC鋼材の各端部に定着手段をそれぞれ取り付け、前記反力発生解放機構を前記一対の筒状反力部材に挟まれる形で該一対の筒状反力部材の間に設置した請求項4又は請求項5記載のプレキャストコンクリート部材の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材、特にプレキャストコンクリート床版を連結する際に用いられるプレキャストコンクリート部材の連結構造及び連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、鉄道、河川、港湾などの社会的経済基盤は、我が国においては、高度経済成長期に集中的に建設されており、その関係で、近年、老朽化が一斉に進行しつつあり、それらの維持管理あるいは更新が急務となっているが、道路や鉄道が敷設された橋梁の上部工においては、床版の損傷が顕著であれば、その架替えが必要になり、上部工が鋼桁の上にRC床版が架け渡されてなる桁の場合、該RC床版を、RC構造やPC構造のプレキャストコンクリート床版(以下、単にプレキャスト床版と呼ぶ)に架け替える対策が広く採用されている。
【0003】
プレキャスト床版を用いて床版の架替えを行うにあたっては、既存の床版を撤去した後、プレキャスト床版を橋軸方向に沿って並べ、しかる後、これらのプレキャスト床版にPC鋼材を挿通して引張力を導入することにより、該プレキャスト床版を互いに連結する工法が採用される(特許文献1)。
【0004】
一方、既存の床版を全面撤去するのではなく、例えば二車線の一方を通行可能にしつつ、他方を部分撤去して床版を架け替えるようにすれば、工事期間中の全面通行止めを回避することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-82496号公報
【文献】特開2016-98490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記部分撤去において、プレキャスト床版を橋軸直交方向に並置する場合だと、PC鋼材の挿入孔が上部工の両側方で開口することとなり、PC鋼材の挿入作業や該PC鋼材を介したプレストレスの導入作業のために足場を別途構築しなければならないという問題や、PC鋼材が長尺化するため、橋梁の規模によっては、プレストレスト床版への挿入作業性が悪くなるのみならず、運搬コストや保管コストの増大を招くという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、PC鋼材の挿入作業やプレストレス導入のための作業足場を不要にするとともに、PC鋼材の長尺化を防止することが可能なプレキャストコンクリート部材の連結構造及び連結方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造は請求項1に記載したように、互いに並置された2つのプレキャストコンクリート部材と、該2つのプレキャストコンクリート部材のうち、一方のプレキャストコンクリート部材に隣り合うように他方のプレキャストコンクリート部材に形成された切り欠きに該他方のプレキャストコンクリート部材と連続一体となるように後打ちコンクリートで設けられた引張力伝達部と、一方の端部に取り付けられた定着手段が前記一方のプレキャストコンクリート部材に埋設され、他方の端部に取り付けられた定着手段前記切り欠きの内面から離間する形で前記引張力伝達部に埋設されてなるPC鋼材とを備えるとともに、前記2つのプレキャストコンクリート部材を、それらの対向面に互いに作用する圧縮力を反力とした前記PC鋼材の引張力によって互いに引き寄せたものである。
【0009】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造は請求項2に記載したように、互いに並置された2つのプレキャストコンクリート部材と、該2つのプレキャストコンクリート部材にそれぞれ互いに隣り合うように形成された2つの切り欠きに前記2つのプレキャストコンクリート部材とそれぞれ連続一体となるように後打ちコンクリートで設けられた2つの引張力伝達部と、該2つの引張力伝達部のうち、一方の引張力伝達部に一方の端部に取り付けられた定着手段前記2つの切り欠きの一方の内面から離間する形で埋設され、他方の引張力伝達部に他方の端部に取り付けられた定着手段前記2つの切り欠きの他方の内面から離間する形で埋設されてなるPC鋼材とを備えるとともに、前記2つのプレキャストコンクリート部材を、それらの対向面に互いに作用する圧縮力を反力とした前記PC鋼材の引張力によって互いに引き寄せたものである。
【0010】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造は、前記2つのプレキャストコンクリート部材をプレストレストコンクリートとしたものである。
【0011】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法は請求項4に記載したように、PC鋼材と、該PC鋼材に引張力を導入するための反力が前記PC鋼材の各端近傍に伝達されるように該PC鋼材と同軸に配置された反力部材と、該反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束することで前記反力を発生させるとともにその拘束状態を解除することで該反力を解放することができるようになっている反力発生解放機構とを備えた連結ユニットを用いて2つのプレキャストコンクリート部材を互いに連結するプレキャストコンクリート部材の連結方法であって、
前記反力部材の材軸方向変形が収縮状態に拘束されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材に引張力を導入し、
前記2つのプレキャストコンクリート部材のうち、一方のプレキャストコンクリート部材に前記PC鋼材の一方の端部を含む所定範囲が又は該一方の端部に取り付けられた定着手段が埋設される形で前記連結ユニットが前記一方のプレキャストコンクリート部材に配置されるように該一方のプレキャストコンクリート部材を製作するとともに、他方のプレキャストコンクリート部材に切り欠きが形成されるように該他方のプレキャストコンクリート部材を製作し、
前記2つのプレキャストコンクリート部材を、前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が前記切り欠き内に位置決めされるように並置し、
前記切り欠き内にコンクリートを打設することで前記他方のプレキャストコンクリート部材と連続一体化する引張力伝達部を該切り欠きに設けるとともに、前記引張力伝達部に前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段を埋設し、
前記引張力伝達部のコンクリート強度が発現した後、前記反力部材の収縮状態が解除されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材の引張力を解放するとともに、該引張力に対する反力としての圧縮力を前記2つのプレキャストコンクリート部材の対向面でとりながら、前記PC鋼材の引張力によって前記2つのプレキャストコンクリート部材を互いに引き寄せて連結するものである。
【0012】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法は請求項5に記載したように、PC鋼材と、該PC鋼材に引張力を導入するための反力が前記PC鋼材の各端近傍に伝達されるように該PC鋼材と同軸に配置された反力部材と、該反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束することで前記反力を発生させるとともにその拘束状態を解除することで該反力を解放することができるようになっている反力発生解放機構とを備えた連結ユニットを用いて2つのプレキャストコンクリート部材を互いに連結するプレキャストコンクリート部材の連結方法であって、
前記反力部材の材軸方向変形が収縮状態に拘束されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材に引張力を導入し、
前記PC鋼材への引張力導入工程と相前後して又は同時に、前記2つのプレキャストコンクリート部材にそれぞれ切り欠きが形成されるように該2つのプレキャストコンクリート部材を製作し、
前記2つのプレキャストコンクリート部材を前記各切り欠きが対向するように並置し、
前記連結ユニットを、前記PC鋼材の一方の端部を含む所定範囲が又は該一方の端部に取り付けられた定着手段が前記切り欠きのうち、一方に位置決めされ、他方の切り欠き内に前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が位置決めされるように配置し、
前記各切り欠き内にコンクリートをそれぞれ打設して、前記各切り欠きのうち、一方の切り欠きに該切り欠きが属するプレキャストコンクリート部材と連続一体化する引張力伝達部を、他方の切り欠きに該切り欠きが属するプレキャストコンクリート部材と連続一体化する引張力伝達部をそれぞれ設けることにより、前記PC鋼材の一方の端部を含む所定範囲を又は該一方の端部に取り付けられた定着手段を前記一方の切り欠きに設けられた引張力伝達部に埋設するとともに、前記PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲を又は該他方の端部に取り付けられた定着手段を前記他方の切り欠きに設けられた引張力伝達部に埋設し、
前記各引張力伝達部のコンクリート強度が発現した後、前記反力部材の収縮状態が解除されるように前記反力発生解放機構を操作することで前記PC鋼材の引張力を解放するとともに、該引張力に対する反力としての圧縮力を前記2つのプレキャストコンクリート部材の対向面でとりながら、前記PC鋼材の引張力によって前記2つのプレキャストコンクリート部材を互いに引き寄せて連結するものである。
【0013】
また、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法は、前記反力部材を一対の筒状反力部材で構成して該一対の筒状反力部材の内部空間に前記PC鋼材を挿通するとともに、該PC鋼材の各端部に定着手段をそれぞれ取り付け、前記反力発生解放機構を前記一対の筒状反力部材に挟まれる形で該一対の筒状反力部材の間に設置したものである。
【0014】
2つのプレキャストコンクリート部材を連結するにあたり、従来技術においては、並置された2つのプレキャストコンクリート部材にPC鋼材を貫通させて該PC鋼材に引張力を導入し、その状態で該PC鋼材の各端部を定着させていたが、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造は、PC鋼材を2つのプレキャストコンクリート部材に貫通させるのではなく、該PC鋼材の各端部が露出しないように2つのプレキャストコンクリート部材にそれぞれ配置した構成としてある。
【0015】
すなわち、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造においては、2つのプレキャストコンクリート部材のうち、一方のプレキャストコンクリート部材にPC鋼材の一方の端部に取り付けられた定着手段を埋設するとともに、他方のプレキャストコンクリート部材の切り欠きに引張力伝達部を後打ちコンクリートで設けて該引張力伝達部にPC鋼材の他方の端部に取り付けられた定着手段を埋設し、あるいは2つのプレキャストコンクリート部材のそれぞれに形成された切り欠きに引張力伝達部を後打ちコンクリートで設けて該各引張力伝達部にPC鋼材の各端部に取り付けられた定着手段をそれぞれ埋設した構成とした上、該PC鋼材の引張力によって2つのプレキャストコンクリート部材を互いに引き寄せた構成としてある。
【0016】
このようにすると、長尺のPC鋼材を施工現場で2つのプレキャストコンクリート部材に挿通させる必要がなくなり、該挿通作業のための足場が不要になるとともに、PC鋼材の引張力については、工場等で予め導入されたものを施工現場で解放すればよいため、引張力解放のための足場も不要となる。
【0017】
ちなみに、本発明におけるPC鋼材の引張力解放は、それによってコンクリートに圧縮力というプレストレスを導入するという意味で、PC鋼材貫通型の従来の連結構成と同様であるが、本発明では、2つのプレキャストコンクリート部材の対向面近傍に拡がるコンクリート領域にのみ、つまりは引寄せのための反力として必要な領域にのみ圧縮力を発生させるものであり、プレキャストコンクリート部材全体に圧縮力を導入して該部材をプレストレストコンクリート構造とする従来の連結構成とは明確に異なる。
【0018】
PC鋼材の端部に取り付けられた定着手段をコンクリートに埋設する構成は上述したように、2つのプレキャストコンクリート部材のいずれか一つだけに切り欠きを形成する場合と、両方に切り欠きを形成する場合とで異なり、前者においては、切り欠きを設けていない側のプレキャストコンクリート部材(一方のプレキャストコンクリート部材)にPC鋼材の一方の端部に取り付けられた定着手段を埋設し、他方の端部に取り付けられた定着手段は、他方のプレキャストコンクリート部材と連続一体に後打ちコンクリートで設けられた引張力伝達部に埋設した構成とし、後者においては、各プレキャストコンクリート部材と連続一体となるように後打ちコンクリートでそれぞれ設けられた各引張力伝達部にPC鋼材の各端部に取り付けられた定着手段をそれぞれ埋設した構成とする。
【0019】
ここで、PC鋼材の引張力を周辺コンクリートの圧縮力とバランスさせるにあたり、PC鋼材の引張力を該PC鋼材の周面における付着を介して周辺コンクリートの圧縮力とバランスさせることも可能であるが、請求項1乃至請求項3に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造においては、各端部近傍に取り付けられた定着手段における支圧を介してPC鋼材の引張力を周辺コンクリートの圧縮力とバランスさせる場合に限るものとし、上記埋設構成は、一方の端部に取り付けられた定着手段と他方の端部に取り付けられた定着手段とをそれぞれ埋設するものとする。
【0020】
本発明におけるプレキャストコンクリート部材は、上述したように部材全体に圧縮力が導入されるものではないため、鉄筋コンクリート構造や繊維補強コンクリート構造からなるプレキャストコンクリート部材で本発明のプレキャストコンクリート部材を構成した場合には、PC鋼材の引張力解放後もプレストレストコンクリート構造とはならないが、耐久性向上その他の目的のため、プレストレストコンクリート構造として製作されたプレキャストコンクリート部材で本発明のプレキャストコンクリート部材を構成することはもちろん可能である。
【0021】
なお、プレキャストコンクリート部材は、床版、特に橋梁の床版として製作されるものを典型例とするが、壁、柱、梁といった他の部位を用途として製作されるものでもかまわないし、港湾その他の土木構造物をはじめ、建築構造物にも適用可能である。
【0022】
切り欠きは、一方のプレキャストコンクリート部材に隣り合うように、他方のプレキャストコンクリート部材に形成され、あるいは2つのプレキャストコンクリート部材に互いに隣り合うように、該各プレキャストコンクリート部材に形成されるものであって、引張力伝達部が未だ形成されていない状態では、開き側が一方のプレキャストコンクリート部材を向くように、あるいは開き側がそれぞれ互いのプレキャストコンクリート部材を向くように形成するものとする。
【0023】
後打ちコンクリートによって切り欠きに設けられる引張力伝達部は、他方のプレキャストコンクリート部材と連続一体となるように、又は2つのプレキャストコンクリート部材とそれぞれ連続一体となるように設けられる限り、鉄筋コンクリート、繊維補強コンクリートなど任意の構造で構成することが可能であり、連続一体性を確保するための構成についても、プレキャストコンクリート部材との境界に共通の鉄筋を跨ぐように配置するなど、公知の技術から適宜選択し採用すればよい。
【0024】
本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法は、PC鋼材と、該PC鋼材と同軸に配置された反力部材と、該反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束するとともにその拘束状態を解除可能な反力発生解放機構とを備えてなる連結ユニットの使用が前提となるが、かかる連結ユニットを、2つのプレキャストコンクリート部材のうち、いずれか一方に先付けしておくのか、それとも2つのプレキャストコンクリート部材とは別体として取り扱い、先行して設置された2つのプレキャストコンクリート部材に後工程で据え付けるのかで全体工程が異なり、前者の連結方法としては、まず、反力部材の材軸方向変形が収縮状態に拘束されるように反力発生解放機構を操作することで、PC鋼材に引張力を導入する。
【0025】
次に、2つのプレキャストコンクリート部材のうち、一方のプレキャストコンクリート部材にPC鋼材の一方の端部を含む所定範囲が又は該一方の端部に取り付けられた定着手段が埋設される形で連結ユニットが一方のプレキャストコンクリート部材に配置されるように、該一方のプレキャストコンクリート部材を製作するとともに、他方のプレキャストコンクリート部材に切り欠きが形成されるように該他方のプレキャストコンクリート部材を製作する。
【0026】
次に、製作場所が施工現場から離れている場合には、連結ユニットが先付けされたプレキャストコンクリート部材(一方のプレキャストコンクリート部材)と、切り欠きが形成されたプレキャストコンクリート部材(他方のプレキャストコンクリート部材)とを施工現場まで搬送する。
【0027】
次に、典型的には、他方のプレキャストコンクリート部材を先行して施工位置に設置した後、該他方のプレキャストコンクリート部材に形成された切り欠き内にPC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が位置決めされるように一方のプレキャストコンクリート部材を設置することで、2つのプレキャストコンクリート部材を施工位置に並置する。
【0028】
次に、切り欠き内にコンクリートを打設する。
【0029】
このようにすると、切り欠きには、他方のプレキャストコンクリート部材と連続一体化する形で引張力伝達部が設けられるとともに、該引張力伝達部には、PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が埋設される。
【0030】
次に、引張力伝達部のコンクリート強度が発現した後、反力部材の収縮状態が解除されるように反力発生解放機構を操作する。
【0031】
このようにすると、解放されたPC鋼材の引張力は、PC鋼材の周面における付着を介して、あるいは定着手段における支圧を介してコンクリートの圧縮力とバランスするとともに、該コンクリートの圧縮力は、2つのプレキャストコンクリート部材の対向面から受ける圧縮反力でそれぞれバランスし、かくして、2つのプレキャストコンクリート部材は、PC鋼材の引張力によって互いに引き寄せられ連結される。
【0032】
後者の連結方法としては、まず、上述した連結方法と同様、反力部材の材軸方向変形が収縮状態に拘束されるように反力発生解放機構を操作することで、PC鋼材に引張力を導入する。
【0033】
次に、PC鋼材への引張力導入工程と相前後して又は同時に、2つのプレキャストコンクリート部材にそれぞれ切り欠きが形成されるよう、該2つのプレキャストコンクリート部材を製作する。
【0034】
次に、製作場所が施工現場から離れている場合には、2つのプレキャストコンクリート部材を施工現場まで搬送した後、該2つのプレキャストコンクリート部材を、上述の各切り欠きが対向するように施工位置に並置する。
【0035】
次に、連結ユニットを2つのプレキャストコンクリート部材を跨ぐ形で設置するが、その際、該2つのプレキャストコンクリート部材の一方に形成された切り欠き内にPC鋼材の一方の端部を含む所定範囲が又は該一方の端部に取り付けられた定着手段が位置決めされ、他方に形成された切り欠き内に他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が位置決めされるように、連結ユニットを据え付ける。
【0036】
次に、各切り欠き内にコンクリートを打設する。
【0037】
このようにすると、各切り欠きには、2つのプレキャストコンクリート部材と連続一体化する形で引張力伝達部がそれぞれ設けられるとともに、該各引張力伝達部には、PC鋼材の一方の端部を含む所定範囲が又は該一方の端部に取り付けられた定着手段が埋設されるとともに、PC鋼材の他方の端部を含む残りの範囲が又は該他方の端部に取り付けられた定着手段が埋設される。
【0038】
次に、各引張力伝達部のコンクリート強度が発現した後、反力部材の収縮状態が解除されるように反力発生解放機構を操作する。
【0039】
このようにすると、解放されたPC鋼材の引張力は、PC鋼材の周面における付着を介して、あるいは定着手段における支圧を介してコンクリートの圧縮力とバランスするとともに、該コンクリートの圧縮力は、2つのプレキャストコンクリート部材の対向面から受ける圧縮反力でバランスし、かくして、2つのプレキャストコンクリート部材は、対向面での圧縮力を反力としたPC鋼材の引張力によって互いに引き寄せられ連結される。
【0040】
連結ユニットは、PC鋼材と、該PC鋼材に引張力を導入するための反力がPC鋼材の各端近傍に伝達されるように該PC鋼材と同軸に配置された反力部材と、該反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束することで上述の反力を発生させるとともにその拘束状態を解除することで該反力を解放することができるようになっている反力発生解放機構とを備えていて、解放されたPC鋼材の引張力を、PC鋼材の周面における付着を介して、あるいは定着手段における支圧を介して圧縮力としてコンクリートに伝達することができる限り、その構成は任意であり、例えば、PC鋼材を筒状に形成して該PC鋼材の内部空間に反力部材を挿通した構成や、逆に反力部材を一対の筒状反力部材で構成して該一対の筒状反力部材の内部空間にPC鋼材を挿通した構成を採用することができる。
【0041】
ここで、PC鋼材を筒状に形成して該PC鋼材の内部空間に反力部材を挿通した構成は、PC鋼材の引張力を、その周面における付着を介して圧縮力としてコンクリートに伝達するとともに、反力発生解放機構を反力部材の端部近傍に設置した形態が典型例となる。
【0042】
一方、反力部材を一対の筒状反力部材で構成して該一対の筒状反力部材の内部空間にPC鋼材を挿通した構成は、PC鋼材の引張力を、該PC鋼材の各端部にそれぞれ取り付けられた定着手段における支圧を介して圧縮力としてコンクリートに伝達するとともに、反力発生解放機構を、一対の筒状反力部材に挟まれる形で該一対の筒状反力部材の間に設置した形態が典型例となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造104を橋梁の床版101に適用した様子を示した図であり、(a)は平面図、(b)はC-C線方向から見た矢視図。
図2】第1実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造104を示した図であり、(a)は水平断面図、(b)はE-E線に沿った鉛直断面図。
図3】第1実施形態に用いる連結ユニット1の図であり、(a)は正面図、(b)は正面から見た組立図。
図4】連結ユニット1の組立斜視図。
図5】連結ユニット1を、一部を断面で示した矢視図であり、(a)はA-A線方向を見た矢視図、(b)はB-B線方向を見た矢視図。
図6】連結ユニット1のPC鋼棒2に引張力を導入する手順を示した図。
図7】第1実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法を用いて橋梁の床版を架け替える様子を示した図。
図8】引き続き橋梁の床版を架け替える様子を示した図であって、(a)は後打ちコンクリート打設を行う前、(b)は打設後の様子を示した平面図。
図9】引き続き橋梁の床版を架け替える様子を示した図であって、(a)は、PC鋼棒2の引張力を解放している様子を示した平面図、(b)は、解放されたPC鋼棒2の引張力によってプレキャストコンクリート部材103a,103bが互いに連結される様子を示した平面図。
図10】連結ユニット1の変形例を示した図。
図11】変形例に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法を示した平面図。
図12】第2実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造104を橋梁の床版141に適用した様子を示した図であり、(a)は平面図、(b)はD-D線方向から見た矢視図。
図13】第2実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造144を示した図であり、(a)は水平断面図、(b)はF-F線に沿った鉛直断面図。
図14】第2実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法を用いて橋梁の床版を架け替える様子を示した図であって、(a)は後打ちコンクリート打設を行う前、(b)は打設後の様子を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造及び連結方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0045】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造を橋梁の床版101に適用した様子を示した全体図であり、(a)は平面図、(b)はC-C線方向から見た矢視図である。
【0046】
同図に示すように、床版101は、矩形状のプレキャストコンクリート部材103a,103bを橋軸直交方向に互いに並置する形で橋梁の主桁102に架け渡してあるとともに、これらを橋軸方向に沿って列状に敷設して構成してあるが、プレキャストコンクリート部材103a,103bは、プレキャストコンクリート部材の連結構造104を用いて橋軸直交方向に互いに連結してある。
【0047】
プレキャストコンクリート部材の連結構造104は図2でよくわかるように、PC鋼材としてのPC鋼棒2の一方の端部に取り付けられた定着手段としての円板状の定着板3aをプレキャストコンクリート部材103aに、他方の端部に取り付けられた定着手段としての円板状の定着板3bを、プレキャストコンクリート部材103bと連続一体に設けられた引張力伝達部113にそれぞれ埋設してあり、定着板3a,3bにおける支圧を介してPC鋼棒2の引張力を周囲のコンクリートに生じる圧縮力とバランスさせ、さらにはプレキャストコンクリート部材103a,103bの対向面115a,115bから圧縮反力をとることで、該PC鋼棒の引張力でプレキャストコンクリート部材103a,103bを互いに引き寄せて連結してある。
【0048】
プレキャストコンクリート部材103a,103bは、プレストレストコンクリートで構成することにより、耐久性や強度の向上を図ることが可能である。
【0049】
引張力伝達部113は、プレキャストコンクリート部材103aに隣り合うようにプレキャストコンクリート部材103bに形成された切り欠き114に設けてあり、プレキャストコンクリート部材103a,103bの対向面115a,115bの間に拡がる接合部116と同様、後打ちコンクリートで構築してある。
【0050】
なお、PC鋼棒2及び定着板3a,3bは、後述する連結ユニットの構成要素の一部であって、該連結ユニットに属する他の構成要素も引張力伝達部113や接合部116に埋設されるが、かかる他の構成要素は、連結構造として特段の作用を発揮するものではないため、図2からは省略した。
【0051】
図3乃至図5は、プレキャストコンクリート部材の連結構造104に用いる連結ユニット1を示した図である。これらの図に示すように、連結ユニット1は、PC鋼棒2と、定着板3a,3bと、反力部材としての一対の筒状反力部材4a,4bと、反力発生解放機構としての一対の雌ネジ部材5a,5bとを備える。
【0052】
筒状反力部材4a,4bはそれぞれ中空円筒部材で構成してあり、PC鋼棒2に引張力を導入するための反力である圧縮力がPC鋼棒2の各端近傍に伝達されるように、かつPC鋼棒2が挿通される形で該PC鋼棒と同軸に配置してあり、本実施形態では、互いに反対側となる端部7a,7bを介して定着板3a,3bの対向面に上述の圧縮力を作用させることにより、PC鋼棒2に引張力を導入できるようになっている。
【0053】
雌ネジ部材5a,5bは、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bに形成された右ネジである雄ネジ9a,9bにそれぞれ螺合されるようになっており、該雄ネジに螺合された状態でそれぞれ左に回すことにより、後述する円環状滑り部材10を介して互いから材軸方向の反力をとりつつ、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bを押し拡げてそれらを離間させ、上述した圧縮力を発生させるとともに、反対方向(右回り)に回すことで、対向端部8a,8bを接近させて該圧縮力を解放することができるようになっている。
【0054】
本実施形態に係る連結ユニット1は図5でよくわかるように、対向端部8aの内周面とPC鋼棒2の外周面との間の環状空間に一端が、対向端部8bの内周面とPC鋼棒2の外周面との間の環状空間に他端がそれぞれ挿入できるように構成されてなる筒状の材端ガイド部材6を備えており、筒状反力部材4a,4bの伸縮に伴う対向端部8a,8bの材軸方向相対移動を許容しつつ、該各材軸に直交する方向への対向端部8a,8bの相対移動を拘束するようになっている。
【0055】
また、本実施形態に係る連結ユニット1は、一対の雌ネジ部材5a,5bに挟まれる形で該雌ネジ部材の間に円環状滑り部材10を配置してある。
【0056】
円環状滑り部材10は、材端ガイド部材6の周面から鍔状に突設されてなる中央板11と、その両側に配置され材端ガイド部材6を貫通させるための貫通孔13a,13bが形成された側板12a,12bとで構成してある。
【0057】
ここで、雌ネジ部材5a,5bを左回りに回転させると、中央板11と側板12a,12bとの当接面には、それらの間に作用する圧縮力の大きさに応じて摩擦力が発生するが、かかる摩擦力によって雌ネジ部材5a,5bの回転操作が阻害されないよう、換言すれば、中央板11と側板12a,12bとの当接面が滑り面となるように、中央板11は、適当な基材の両面にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を被覆して構成し、側板12a,12bは、それぞれステンレス鋼板で構成してある。
【0058】
かかる構成によれば、雌ネジ部材5a,5bは、円環状滑り部材10を介してそれらの材軸方向に互いから反力をとりつつ、それらの回転操作によって筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bを押し拡げて離間させるとともに、それに伴って筒状反力部材4a,4bに発生する圧縮力でPC鋼棒2に引張力を導入することが可能となる。
【0059】
側板12a,12bは、雌ネジ部材5a,5bからの圧縮力が中央板11の各面に均等に伝達するように構成するのが望ましい。
【0060】
次に、連結ユニット1を用いたプレキャストコンクリート部材103a,103bの連結方法を、橋梁の床版架替えに適用する場合について説明する。
【0061】
まず、筒状反力部材4a,4bの材軸方向変形が収縮状態に拘束されるように雌ネジ部材5a,5bを操作することで、PC鋼棒2に引張力を導入する。
【0062】
PC鋼棒2への引張力導入工程を具体的に説明すると、最初に、PC鋼棒2を、筒状反力部材4a、雌ネジ部材5a、円環状滑り部材10が取り付けられた材端ガイド部材6、雌ネジ部材5b、筒状反力部材4bに順次挿通する。このとき、材端ガイド部材6の一端が筒状反力部材4aの対向端部8aに、他端が筒状反力部材4bの対向端部8bにそれぞれ挿入されるようにする。
【0063】
次に、雌ネジ部材5a,5bを筒状反力部材4a,4bの雄ネジ9a,9bに螺合するとともに、雌ネジ部材5a,5bをそれぞれ右回りに回して該雌ネジ部材を対向端部8a,8bから定着板3a,3b側にいったん退避させておき、かかる状態でPC鋼棒2の各端に例えば螺着によって定着板3a,3bをそれぞれ取り付ける。
【0064】
次に、図6(a)に示すように、雌ネジ部材5a,5bをそれぞれ左回りに回してそれらの対向面を円環状滑り部材10の側板12a,12bにそれぞれ当接させ、この状態からさらに回転操作を継続する。
【0065】
このようにすると、雌ネジ部材5a,5bは同図に示すように、円環状滑り部材10を介して互いから材軸方向の反力をとりつつ、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bを押し拡げて該対向端部を離間させるとともに、それに伴って、筒状反力部材4a,4bには圧縮力が発生し、その圧縮力が反力となってPC鋼棒2に引張力が導入される。
【0066】
ここで、雌ネジ部材5a,5bを回転させていくと、図6(b)に示すように、該雌ネジ部材と共回りする側板12a,12bが中央板11の各面に当接した状態で、互いに逆方向、雌ネジ部材5a,5b側から見ればいずれも右回りに回転しようとするが、上述したように中央板11と側板12a,12bとの間で滑りが生じるように円環状滑り部材10を構成してあり、当接面に生じる摩擦力はわずかであるため、側板12a,12bは、中央板11の各面上を摺動し、雌ネジ部材5a,5bの回転操作が阻害されるおそれはない。
【0067】
なお、材端ガイド部材6は、筒状反力部材4a,4bの伸縮に伴う対向端部8a,8bの材軸方向相対移動を許容するようになっているので、筒状反力部材4a,4bの離間に伴う対向端部8a,8bでの材軸方向相対移動が材端ガイド部材6によって拘束されることはない。
【0068】
一方、雌ネジ部材5a,5bの回転操作が進むに伴い、筒状反力部材4a,4bに生じる圧縮力が大きくなって座屈が発生したり、円環状滑り部材10を構成する中央板11の各面に生じる摩擦力が周方向に不均一になったり、あるいは両面に作用する摩擦力のバランスが崩れたりといった理由で、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bが図6(c)に示すように横ずれを起こそうとする場合があるが、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bにおける材軸直交方向への相対移動が、材端ガイド部材6によって拘束されているので、横ずれを起こそうとする荷重が生じたとしても、該横ずれ荷重は、同図に示すように、対向端部8a,8bの内周面と材端ガイド部材6の外周面との間の荷重伝達を介して材端ガイド部材6で支持され、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bが横ずれを起こすおそれはない。
【0069】
連結ユニット1を構成するPC鋼棒2への引張力導入が完了したら、該連結ユニットの定着板3aがプレキャストコンクリート部材103aに埋設される形で連結ユニット1が該プレキャストコンクリート部材に配置されるように、プレキャストコンクリート部材103aを製作する。
【0070】
一方、連結ユニット1への引張力導入とは別工程で、プレキャストコンクリート部材103bに切り欠き114が形成されるように該プレキャストコンクリート部材を製作する。
【0071】
次に、連結ユニット1が先付けされたプレキャストコンクリート部材103aと、切り欠き114が形成されたプレキャストコンクリート部材103bとを搬送し、施工現場である橋梁の床版架替え現場に搬入する。
【0072】
橋梁の床版架替えは、例えば片側二車線の場合、そのうちの一車線のみ通行止めとし、残りの一車線の通行を許可するようにすれば、全面通行止めを回避して道路渋滞を避けることができるので、これを例とすると、まず、図7(a)に示すように、架替え対象となる既存床版121a,121bのうち、まずは既存床版121bだけを撤去し、次いで、同図(b)に示すように、その撤去箇所に切り欠き114が形成されたプレキャストコンクリート部材103bを設置する。
【0073】
次に、同図(c)に示すように既存床版121aを撤去した後、同図(d)に示すように、その撤去箇所に連結ユニット1が先付けされたプレキャストコンクリート部材103aを設置する。
【0074】
プレキャストコンクリート部材103a,103bを設置するにあたっては、図8(a)に示す通り、プレキャストコンクリート部材103bの切り欠き114内に定着板3bが位置決めされるよう、プレキャストコンクリート部材103a,103bを並置する。
【0075】
次に、同図(b)に示すように、切り欠き114内にコンクリートを打設するとともに、雌ネジ部材5a,5bを操作するための操作作業領域131を除いて、プレキャストコンクリート部材103a,103bの対向面115a,115bに拡がる空間にコンクリートを打設する。
【0076】
このようにすると、切り欠き114には、プレキャストコンクリート部材103bと連続一体化する形で引張力伝達部113が設けられるとともに、該引張力伝達部には、定着板3bが埋設される。
【0077】
また、プレキャストコンクリート部材103a,103bの対向面115a,115bに拡がる空間には、プレキャストコンクリート部材103a,103bと連続一体化する形で接合部116が設けられる。
【0078】
なお、プレキャストコンクリート部材103bに配筋された鉄筋(図示せず)を該プレキャストコンクリート部材から切り欠き114に適宜突出させることにより、プレキャストコンクリート部材103bと引張力伝達部113との連続一体化を高めるようにしておくとともに、プレキャストコンクリート部材103a,103bに配筋された鉄筋(図示せず)を該各プレキャストコンクリート部材から対向面115a,115bに拡がる空間に適宜突出させることにより、プレキャストコンクリート部材103a,103bと接合部116との連続一体化を高めるようにしておくのが望ましい。
【0079】
次に、引張力伝達部113や接合部116のコンクリート強度が発現した後、筒状反力部材4a,4bの収縮状態が解除されるように雌ネジ部材5a,5bを操作する。
【0080】
具体的には、図9(a)に示すように、雌ネジ部材5a,5bを右回りに回転させて筒状反力部材4a,4bを接近させる。
【0081】
なお、既に述べた通り、円環状滑り部材10を構成する側板12a,12bと中央板11との間で滑りが生じるように該円環状滑り部材を構成してあるので、雌ネジ部材5a,5bをスムーズに緩めることが可能である。
【0082】
このように雌ネジ部材5a,5bを操作すると、筒状反力部材4a,4bに生じていた圧縮力、ひいてはそれを反力としていたPC鋼棒2の引張力が解放されるとともに、解放されたPC鋼材2の引張力は、同図(b)に示すように、定着板3b,3aにおける支圧を介して周辺コンクリートにおける圧縮力とバランスするとともに、該コンクリートの圧縮力は、プレキャストコンクリート部材103a,103bの対向面115a,115bから受ける圧縮反力でそれぞれバランスし、かくして、2つのプレキャストコンクリート部材103a,103bは、接合部116を介してそれらの対向面115a,115bに互いに作用する圧縮力を反力としたPC鋼材2の引張力によって互いに引き寄せられ連結される。
【0083】
箱抜きされた操作作業領域131については、引張力解放後、コンクリートやモルタルを適宜充填すればよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造104及び連結方法によれば、プレキャストコンクリート部材103aにPC鋼棒2の一方の端部に取り付けられた定着板3aを埋設するとともに、他方の端部に取り付けられた定着板3bをプレキャストコンクリート部材103bと連続一体に設けられた引張力伝達部113に埋設した上、PC鋼棒2の引張力によってプレキャストコンクリート部材103a,103bを互いに引き寄せるようにしたので、2つのプレキャストコンクリート部材に挿通させねばならなかった関係で、PC鋼材の長尺化を余儀なくされていた従来構成に比べ、該PC鋼材を短尺化することが可能となり、搬送、搬入、据付けといった各作業性が大幅に向上するほか、PC鋼材を施工現場で2つのプレキャストコンクリート部材に挿通させる必要がなくなるため、該挿通作業のための足場が不要になるとともに、PC鋼棒2の引張力については、工場等で予め導入されたものを施工現場で解放すればよいため、引張力解放のための足場も不要となり、施工現場での引張力管理あるいは緊張力管理も不要になる。
【0085】
また、本実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法によれば、材端ガイド部材6が備えられた連結ユニット1を用いるようにしたので、雌ネジ部材5a,5bを回転操作する際、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bが互いに横ずれを起こす荷重が生じたとしても、かかる横ずれ荷重は、材端ガイド部材6によって支持され、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bが横ずれを起こすおそれがなくなる。
【0086】
そのため、雌ネジ部材5a,5bによる筒状反力部材4a,4bへの圧縮力発生及び解放、並びに該圧縮力を反力としたPC鋼棒2への引張力の導入及び解放を確実かつスムーズに行うことが可能となる。
【0087】
また、本実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結方法によれば、雌ネジ部材5a,5bの間に円環状滑り部材10が配置されてなる連結ユニット1を用いるようにしたので、反力発生やその解放の際、雌ネジ部材5a,5b間に摩擦力がほとんど発生しなくなり、かくして摩擦力に起因して雌ネジ部材5a,5bを回転させることができなくなるといった事態を未然に回避することができる。
【0088】
本実施形態では、プレキャストコンクリート部材103a,103bをプレストレストコンクリートで構成するようにしたが、これに代えて、鉄筋コンクリートや繊維補強コンクリートで構成してもかまわない。
【0089】
また、本実施形態では、プレキャストコンクリート部材103a,103bの間に接合部116を介在させたが、該接合部は、プレキャストコンクリート部材103a,103bの対向面115a,115bにおける凹凸を吸収して該対向面への荷重伝達をできるだけ均等にするための手段であって、対向面115a,115bを当接しても荷重伝達が不均一になるおそれがないのであれば、これを省略してもかまわない。
【0090】
また、本実施形態では、本発明の各定着手段を、単体である定着板3aと同じく単体である定着板3bでそれぞれ構成したが、これに代えて、該各定着手段を複数個からなる定着板でそれぞれ構成してもかまわない。
【0091】
また、本実施形態では、連結ユニット1において、中央板11と側板12a,12bとの当接面が滑り面となるように、中央板11を、適当な基材の両面にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を被覆して構成するとともに、側板12a,12bを、それぞれステンレス鋼板で構成するようにしたが、摩擦低減を図るための素材や材料の組み合わせは任意であって、実施形態で挙げたステンレス鋼板とPTFEが被膜された鋼板という組み合わせのほか、ステンレス鋼板と樹脂が被膜された鋼板、PTFEが被膜された鋼板同士、樹脂が被膜された鋼板同士、潤滑剤が塗布された鋼板同士といった構成が可能である。なお、雌ネジ部材5a,5bの形状や素材を適宜選定することにより、雌ネジ部材5a,5bを回転させる際に、それらの対向面が互いに当接した状況でも、該対向面で生じる摩擦力で回転操作が阻害されないのであれば、円環状滑り部材10を省略してもかまわない。
【0092】
また、本実施形態では、雌ネジ部材5a,5bを回転操作する際、筒状反力部材4a,4bの対向端部8a,8bが互いに横ずれを起こす荷重が生じることを前提としたが、かかる横ずれ荷重が起きるおそれがないのであれば、材端ガイド部材6を省略してもかまわない。
【0093】
また、本実施形態では、本発明の反力発生解放機構を、内周面に右ネジがそれぞれ形成されてなる雌ネジ部材5a,5bで構成したが、これに代えて、両方を左ネジとしてもかまわないし、さらには、一方を右ネジ、他方を左ネジとしてもかまわない。
【0094】
ここで、一対の雌ネジ部材のうち、一方を右ネジ、他方を左ネジとした上記変形例においては、反力発生及び解放の際、一対の雌ネジ部材が相対回転しないので、本発明の円環状滑り部材に相当する構成は不要であるとともに、図10に示すように、各端に左ネジと右ネジが形成されてなる反力発生解除機構としてのカプラー74で置換することが可能である。
【0095】
また、本実施形態では、連結ユニット1を、PC鋼棒2と、その各端部に取り付けられた定着板3a,3bと、PC鋼棒2に引張力を導入するための反力が該PC鋼棒の各端近傍に伝達されるようにPC鋼棒2が挿通される形で該PC鋼棒と同軸に配置された反力部材としての一対の筒状反力部材4a,4bと、該筒状反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束することで上述の反力を発生させるとともにその拘束状態を解除することで該反力を解放することができるようになっている反力発生解放機構としての雌ネジ部材5a,5bとを備える形で構成することにより、PC鋼棒2の引張力を定着板3a,3bにおける支圧を介して周辺コンクリートに解放するようにしたが、連結ユニット1に代えて、図11に示すように、筒状PC鋼棒81と、該筒状PC鋼棒に引張力を導入するための反力が該PC鋼棒の各端近傍に伝達されるようにその筒状PC鋼棒に挿通される形で該PC鋼棒と同軸に配置された棒状反力部材82と、該棒状反力部材の材軸方向変形を収縮状態に拘束することで上述の反力を発生させるとともにその拘束状態を解除することで該反力を解放することができるようになっている反力発生解放機構83とを備えてなる連結ユニット84を用いて、プレキャストコンクリート部材103a,103bを連結するようにしてもよい。
【0096】
かかる変形例においては、筒状PC鋼棒81のおよそ半分の長さ範囲(図11ではおよそ左半分)をプレキャストコンクリート部材103aに、残りの長さ範囲(同じく右半分)をプレキャストコンクリート部材103bと連続一体に設けられた引張力伝達部113にそれぞれ埋設してあり、筒状PC鋼棒81の引張力をその周面における付着を介して周辺コンクリートに解放するようになっているとともに、反力発生解放機構83が筒状PC鋼棒81の他方の端部に設けてあるが、これらの点を除けば、連結ユニット1を用いた場合と同様の連結工程であり、詳細な説明についてはこれを省略する。
【0097】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と実質同一の構成要素については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0098】
図12は、本発明に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造を橋梁の床版141に適用した様子を示した全体図であり、(a)は平面図、(b)はD-D線方向から見た矢視図である。
【0099】
同図に示すように、床版141は、矩形状のプレキャストコンクリート部材143a,143bを橋軸直交方向に互いに並置する形で橋梁の主桁102に架け渡してあるとともに、これらを橋軸方向に沿って列状に敷設して構成してあるが、プレキャストコンクリート部材143a,143bは、プレキャストコンクリート部材の連結構造144を用いて橋軸直交方向に互いに連結してある。
【0100】
プレキャストコンクリート部材の連結構造144は図13でよくわかるように、PC鋼棒2の一方の端部に取り付けられた定着板3aをプレキャストコンクリート部材143aと連続一体に設けられた引張力伝達部113aに、他方の端部に取り付けられた定着板3bを、プレキャストコンクリート部材143bと連続一体に設けられた引張力伝達部113bにそれぞれ埋設してあり、定着板3a,3bにおける支圧を介してPC鋼棒2の引張力を周囲のコンクリートに生じる圧縮力とバランスさせ、さらにはプレキャストコンクリート部材143a,143bの対向面115a,115bから圧縮反力をとることで、該PC鋼棒の引張力でプレキャストコンクリート部材143a,143bを互いに引き寄せて連結してある。なお、プレキャストコンクリート部材143bは、第1実施形態のプレキャストコンクリート部材103bと同一の構成であるが、便宜上、あらたな番号を付してある。
【0101】
プレキャストコンクリート部材143a,143bは、プレストレストコンクリートで構成することにより、耐久性や強度の向上を図ることが可能である。
【0102】
引張力伝達部113aは、プレキャストコンクリート部材143bに隣り合うように、プレキャストコンクリート部材143aに形成された切り欠き114aに設けてあるとともに、引張力伝達部113bは、プレキャストコンクリート部材143aに隣り合うように、プレキャストコンクリート部材143bに形成された切り欠き114bに設けてあり、プレキャストコンクリート部材143a,143bの対向面115a,115bの間に拡がる接合部116と同様、後打ちコンクリートで構築してある。
【0103】
なお、PC鋼棒2及び定着板3a,3bは、連結ユニット1の構成要素の一部であって、該連結ユニットに属する他の構成要素も引張力伝達部113a,113bや接合部116に埋設されるが、かかる他の構成要素は、連結構造として特段の作用を発揮するものではないため、図13からは省略した。
【0104】
次に、連結ユニット1を用いたプレキャストコンクリート部材143a,143bの連結方法を、橋梁の床版架替えに適用する場合について説明する。
【0105】
まず、第1実施形態と同様の手順で、PC鋼棒2に引張力を導入する。
【0106】
次に、2つのプレキャストコンクリート部材143a,143bにそれぞれ切り欠き114a,114bが形成されるよう、該2つのプレキャストコンクリート部材を製作する。かかるプレキャストコンクリート部材143a,143bの製作は、PC鋼棒2への引張力導入工程とどちらが先でもよいし、同時でもかまわない。
【0107】
次に、連結ユニット1及びプレキャストコンクリート部材143a,143bを、施工現場である橋梁の床版架替え現場に搬送搬入する。
【0108】
次に、第1実施形態の図7で説明したと同様、架替え対象となる既存床版121a,121bのうち、まずは既存床版121bだけを撤去して、その撤去箇所にプレキャストコンクリート部材143bを設置し、次いで、既存床版121aを撤去して、その撤去箇所にプレキャストコンクリート部材143aを設置することで、プレキャストコンクリート部材143a,143bを並置する。
【0109】
次に、連結ユニット1を2つのプレキャストコンクリート部材143a,143bを跨ぐ形で設置するが、その際、図14(a)に示すように、プレキャストコンクリート部材143aに形成された切り欠き114a内にPC鋼棒2の定着板3aが、プレキャストコンクリート部材143bに形成された切り欠き114b内にPC鋼棒2の定着板3bがそれぞれ位置決めされるように、連結ユニット1を据え付ける。
【0110】
次に、同図(b)に示すように、切り欠き114a,114b内にコンクリートを打設するとともに、雌ネジ部材5a,5bを操作するための操作作業領域151を除いて、プレキャストコンクリート部材143a,143bの対向面115a,115bに拡がる空間にコンクリートを打設する。
【0111】
このようにすると、切り欠き114aには、プレキャストコンクリート部材143aと連続一体化する形で引張力伝達部113aが設けられるとともに、該引張力伝達部には定着板3aが埋設される。同様に、切り欠き114bには、プレキャストコンクリート部材143bと連続一体化する形で引張力伝達部113bが設けられるとともに、該引張力伝達部には定着板3bが埋設される。
【0112】
また、プレキャストコンクリート部材143a,143bの対向面115a,115bに拡がる空間には、プレキャストコンクリート部材143a,143bと連続一体化する形で接合部116が設けられる。
【0113】
なお、プレキャストコンクリート部材143aに配筋された鉄筋(図示せず)を該プレキャストコンクリート部材から切り欠き114aに適宜突出させることにより、プレキャストコンクリート部材143aと引張力伝達部113aとの連続一体化を高めるようにしておくとともに、プレキャストコンクリート部材143bに配筋された鉄筋(図示せず)を該プレキャストコンクリート部材から切り欠き114bに適宜突出させることにより、プレキャストコンクリート部材143bと引張力伝達部113bとの連続一体化を高めるようにしておくのが望ましいし、プレキャストコンクリート部材143a,143bに配筋された鉄筋(図示せず)を該各プレキャストコンクリート部材から対向面115a,115bに拡がる空間に適宜突出させることにより、プレキャストコンクリート部材143a,143bと接合部116との連続一体化を高めるようにしておくのが望ましい。
【0114】
次に、引張力伝達部113a,11bや接合部116のコンクリート強度が発現した後、第1実施形態と同様にして、筒状反力部材4a,4bの収縮状態が解除されるように雌ネジ部材5a,5bを操作し、筒状反力部材4a,4bに生じていた圧縮力、ひいてはそれを反力としていたPC鋼棒2の引張力を解放する。
【0115】
このようにすると、解放されたPC鋼材2の引張力は、図9(b)で説明したと同様、定着板3b,3aにおける支圧を介して周辺コンクリートにおける圧縮力とバランスするとともに、該コンクリートの圧縮力は、プレキャストコンクリート部材143a,143bの対向面115a,115bから受ける圧縮反力でそれぞれバランスし、かくして、2つのプレキャストコンクリート部材143a,143bは、接合部116を介してそれらの対向面115a,115bに互いに作用する圧縮力を反力としたPC鋼材2の引張力によって互いに引き寄せられ連結される。
【0116】
箱抜きされた操作作業領域151については、引張力解放後、コンクリートやモルタルを適宜充填すればよい。
【0117】
以下、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の連結構造144及び連結方法の作用効果は、第1実施形態の作用効果とほぼ同様であるとともに、第1実施形態で述べた変形例については、本第2実施形態にも同様に適用し得るが、それらの詳細については、重複を避けるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0118】
1 連結ユニット
2 PC鋼棒(PC鋼材)
3a,3b 定着板(定着手段)
4a,4b 筒状反力部材
5a,5b 雌ネジ部材(反力発生解放機構)
74 カプラー(反力発生解放機構)
84 連結ユニット
103a,103b プレキャストコンクリート部材
104 プレキャストコンクリート部材の連結構造
113 引張力伝達部
114 切り欠き
115a,115b 対向面
143a,143b プレキャストコンクリート部材
113a,11b 引張力伝達部
114a,114b 切り欠き
144 プレキャストコンクリート部材の連結構造
図1
図2
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