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  • 特許-すべり止め具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】すべり止め具
(51)【国際特許分類】
   F16G 11/02 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
F16G11/02 Z
F16G11/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019070884
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020169677
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519118186
【氏名又は名称】株式会社F&S
(73)【特許権者】
【識別番号】519119024
【氏名又は名称】樋浦 リカ
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】樋浦 栄一
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-014172(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した筒状のワイヤー固定金具に取り付けられるすべり止め具であって、
前記ワイヤー固定金具に外嵌される本体部と、
前記ワイヤー固定金具の一方の開口を閉塞する閉塞部と、を有し、
前記閉塞部にワイヤーを挿通する挿通部が形成され、
前記本体部と前記閉塞部が弾性部材により形成され、
前記挿通部は前記ワイヤーの形状に合わせて弾性変形しながら前記ワイヤーを挿通可能に構成され、
前記本体部は前記ワイヤー固定金具の表面の一部を露出可能な状態で外嵌可能に構成されていることを特徴とするすべり止め具。
【請求項2】
前記挿通部は、複数の貫通孔からなることを特徴とする請求項1に記載のすべり止め具。
【請求項3】
前記挿通部は、スリットからなることを特徴とする請求項1に記載のすべり止め具。
【請求項4】
前記本体部と前記閉塞部が前記弾性部材により一体に形成されていることを特徴とする請求項に記載のすべり止め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端が開口した筒状のワイヤー固定金具に取り付けられるすべり止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述のワイヤー固定金具を用いたワイヤーの端末部によるループの形成方法として、ワイヤーの端末部を該ワイヤー固定金具に挿入させて引き出し、この引き出したワイヤーの端末部をループ状に折り返してその先端部分を再度ワイヤー固定金具に挿通させることにより、ワイヤーの端末部によるループを形成し、続いて、ワイヤー固定金具を工具で外方から押圧してワイヤー固定金具とワイヤーの重なり部分を圧着させて、端末部の抜け止めを防止した上でワイヤーを結束していた(特許文献1参照)。
【0003】
また、一対のケーブル通路にワイヤーを挿通して、ケーブル通路内のケーブルクランプクランチの進退によりワイヤーの抜け止めを行うものがあった(特許文献2参照)。
【0004】
さらに、孔にワイヤーを挿通して、孔内の楔状体の進退によりワイヤーの抜け止めを行うものがあった(特許文献3参照)。
【0005】
また、クリップ部とUボルトでワイヤーを挟持してUボルトにナットを締付けていくことでワイヤーの抜け止めを行うものがあった(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-92869号公報
【文献】特許第5425787号公報
【文献】特許第3220162号公報
【文献】特開2003-49908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、ワイヤーに挿通された状態のワイヤー固定金具は、ループ形成時や持ち運ぶ際に、意図せずに動くという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2又は特許文献3のように、ケーブルクランプクランチや楔状体の進退によりワイヤーの抜け止めを行うものは、ケーブルクランプクランチや楔状体によりワイヤーが破損してしまう虞があった。
【0009】
また、特許文献4のように、クリップ部とUボルトでワイヤーを挟持してUボルトにナットを締付けるような作業は、天井裏等の限られた作業スペースでの作業には適さないという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、簡単な構成で、ワイヤーを傷付けることなく、ワイヤーに挿通された状態のワイヤー固定金具の動きを規制するすべり止め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、両端が開口した筒状のワイヤー固定金具に取り付けられるすべり止め具であって、前記ワイヤー固定金具に外嵌される本体部と、前記ワイヤー固定金具の一方の開口を閉塞する閉塞部と、を有し、前記閉塞部にワイヤーを挿通する挿通部が形成され、前記本体部と前記閉塞部が弾性部材により形成され、前記挿通部は前記ワイヤーの形状に合わせて弾性変形しながら前記ワイヤーを挿通可能に構成され、前記本体部は前記ワイヤー固定金具の表面の一部を露出可能な状態で外嵌可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、前記挿通部は、複数の貫通孔からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、前記挿通部は、スリットからなることを特徴とする。
【0014】
請求項の発明は、前記本体部と前記閉塞部が前記弾性部材により一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、簡単な構成でワイヤー固定金具が前記ワイヤーに対して位置ずれするのを防止するためのすべり止め具を提供することができる。また、挿通部がワイヤーの形状に合わせて弾性変形するので、すべり止め効果を向上させることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、ワイヤーを複数の貫通孔にそれぞれ挿通させることで、ワイヤー同士がワイヤー固定金具内で重ならないように案内されており、圧着後のトルクが適正となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、ワイヤーの挿通作業が容易となる。
【0018】
請求項の発明によれば、すべり止め具を簡単な構成とすることで、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施例におけるすべり止め具の使用状態を示す斜視図である。
図2】同上、ワイヤー固定金具とすべり止め具の分解斜視図である。
図3】同上、すべり止め具の閉塞部側から見た斜視図である。
図4】同上、すべり止め具の開口側から見た斜視図である。
図5】同上、すべり止め具の断面図である。
図6】同上、すべり止め具の異なる使用状態を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施例におけるすべり止め具の使用状態を示す斜視図である。
図8】本発明の第3実施例におけるすべり止め具の使用状態を示す斜視図である。
図9】同上、ワイヤー固定金具とすべり止め具の分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0021】
図1図6は本発明の実施例1を示すものであり、図中の符号1に示すワイヤー固定金具は、ワイヤー2の端末部3をループ状に折り返し、端末部3とその途中部分とを結束して、ワイヤー2の端部に環状部4を形成するために用いる筒状の金具である。
【0022】
図2に示すようにワイヤー固定金具1は、2つの円筒状の筒状部5、6が並列した状態で一体形成されたアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、真鍮等の金属材料で形成されている。2つの筒状部5、6は同じ形状を有し、固定金具1の開口部7、8は2つの筒状部5、6の近接部分で連通した断面視略8字状を有している。
【0023】
図2図5に示すようにすべり止め具9は、ワイヤー固定金具1のどちらか一方の開口部7、8側から外嵌可能なキャップ状に形成されている。すべり止め具9は、シリコン等の難燃性の弾性材料からなる。
【0024】
図2図5に示すようにすべり止め具9の本体部10は、内部がワイヤー固定金具1の外形と同一又はわずかに小さく形成された断面略8字状の筒状に形成されている。本体部10は、ワイヤー固定金具1の軸方向の長さの約半分の長さに形成されている。本体部10には一方の開口部7を閉塞するための閉塞部11を一体的に備えており、閉塞部11にはワイヤー2が挿通可能な複数の貫通孔12、13を備えている。挿通孔12、13は、ワイヤー2の径と同一又はそれ以下の径に形成されている。また、図2に示すように貫通孔12、13は、筒状部5、6の軸心方向X1、X2と一致するように形成されている。
【0025】
以上の構成のワイヤー固定金具1とすべり止め具9の使用方法について説明する。まず、図1に示すようにワイヤー固定金具1にすべり止め具9を装着すると、すべり止め具9の閉塞部11はワイヤー固定金具1の一方の開口部7を閉塞した状態で、ワイヤー固定金具1の筒状部5、6は本体部10によって、一方の開口部7側から半分程度被覆された状態で外嵌される。
【0026】
図1に示すワイヤー2に環状部4を形成する方法について説明する。すべり止め具9が装着された状態のワイヤー固定金具1に対して、ワイヤー2の端末部3をワイヤー固定金具1の筒状部5とすべり止め具9の一方の貫通孔12を同時に貫通するように挿通させることで、ワイヤー2が弾性材料からなるすべり止め具9の貫通孔12に押し広げるように挿通されるのですべり止め具9がワイヤー2に引っ掛かり、ワイヤー2に対してワイヤー固定金具1が不用意に動くことが防止される。
【0027】
次に、ワイヤー2の端末部3をループ状に折り返してすべり止め具9の他方の貫通孔13からワイヤー固定金具1の筒状部6に挿通した状態で、所定の工具を用いて筒状部5、6の本体部10から露出した部分を外方から押圧して加締めて端末部3とその途中部分とを結束して、ワイヤー2に環状部4を形成する。
【0028】
以上のように本実施例のすべり止め具9は、両端が開口した筒状のワイヤー固定金具1に取り付けられるすべり止め具9であって、ワイヤー固定金具1に外嵌される本体部10と、ワイヤー固定金具1の一方の開口を閉塞する閉塞部11と、を有し、閉塞部11にワイヤー2を挿通する挿通部としての貫通部12、13が形成されている。
【0029】
この場合、簡単な構成でワイヤー固定金具1が前記ワイヤー2に対して位置ずれするのを防止するためのすべり止め具9を提供することができる。
【0030】
また、本実施例のすべり止め具9は、前記挿通部が複数の貫通孔12、13からなり、ワイヤー2を複数の貫通孔12、13にそれぞれ挿通させることで、ワイヤー2同士が筒状部5、6内で重ならないように案内されており、圧着後のトルクが適正となる。
【0031】
また、本実施例のすべり止め具9は、閉塞部11が弾性部材により形成されたことにより、挿通部がワイヤーの形状に合わせて弾性変形するので、すべり止め効果を向上させることができる。
【0032】
また、本実施例のすべり止め具9は、前記本体部10と前記閉塞部11が前記弾性部材により一体に形成されていることにより、すべり止め具9を簡単な構成とすることで、生産性の向上を図ることができる。
【0033】
また、本実施例のすべり止め具9は、本体部10がワイヤー固定金具1の表面の一部を露出可能な状態で外嵌可能に構成されており、ワイヤー固定金具1を工具で押圧して加締める際の加締め代を確保しておくことで、ワイヤー2の重なり部分を適切なトルクで圧着することができる。
【0034】
図6はワイヤー固定金具1とすべり止め具9について上述のワイヤー2に環状部4を形成する方法とは異なる方法を示しており、すべり止め具9が装着された状態のワイヤー固定金具1に対して、筒状部5に挿通された状態のワイヤー2の端末部3をループ状に折り返してワイヤー固定金具1の筒状部6からすべり止め具9の他方の貫通孔13の順に挿通した状態で、所定の工具を用いて筒状部5、6の本体部10から露出した部分を加締めて端末部3とその途中部分とを結束して、ワイヤー2に環状部4を形成する。
【0035】
この方法では、環状部4を形成の際に折り返したワイヤー2において、すべり止め具9側から露出したワイヤー2の端末部3とその途中部分とが重ならないため、ワイヤー2同士が筒状部5、6内で重ならないように案内されており、圧着後のトルクが適正となる。
【実施例2】
【0036】
図7は本発明の実施例2を示し、上記第1実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例のワイヤー固定金具1は、筒状部5と筒状部6とを連通した断面略長孔状の筒状の金具としている。
【0037】
また、本体部10は、内部がワイヤー固定金具1の外形と同一又はわずかに小さく形成された断面略長孔状の筒状に形成されている。
【0038】
本実施例のワイヤー固定金具1は、実施例1に記載の断面視略8字状の筒状からなるワイヤー固定金具1と比較して、断面略長孔状の筒状からなるワイヤー固定金具1の筒状部5、6にそれぞれ挿通されたワイヤー2が筒状部5、6内で重なり易い構成のため、ワイヤー2が貫通孔12、13にそれぞれ挿通された状態で筒状部5、6内に挿通されることで、ワイヤー2同士が筒状部5、6内で重ならないように案内されており、圧着後のトルクが適正となる。
【0039】
また、実施例1に記載の断面視略8字状の筒状からなるワイヤー固定金具1は、固定金具1の凹凸を有する外形に対応する専用の工具を用いて加締めるのに対して、本実施例のワイヤー固定金具1は外形がより単純な形状をしており、幅広い工具での加締めが可能となる。
【実施例3】
【0040】
図8及び図9は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例のすべり止め具9では、挿通部をスリット14としている。スリット14は筒状部5の軸心方向X1と筒状部6の軸心方向X2とを直交状態で結ぶように形成されている。
【0041】
本実施例では、挿通部をスリット14とすることで、ワイヤー2の挿通作業が容易となる。
【0042】
本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、ワイヤー固定金具1、すべり止め具9や挿通部の形状は適宜変更可能である。また、ワイヤー固定金具1とすべり止め具9に挿通されるワイヤー2の本数については、上記各実施例にある2本に限定されず、1本や3本以上でもよいものとし、挿通されるワイヤー2の本数に合わせて挿通部では貫通部の数やスリットの大きさを調整するものとする。また、挿通部である貫通孔の形状も円形以外の三角形や四角形などの多角形、星型多角形や楕円形、これらの形状とスリットを組み合わせた形態や、複数のスリットを交差して形成したものとしてもよいものとする。また、貫通孔が複数の場合、それぞれ異なる形状としてもよいものとする。また、スリット14の形状は、切端から切端にかけて線状に切り裂いた形状以外にも、切端から中間部分に向けて僅かに離間したような形状としてもよいものとする。また、本実施例のワイヤー固定金具1は複数のワイヤーの端末部をそれぞれ挿通した状態で加締めることで、複数のワイヤーを結束した状態で連結することにも使用可能である。また、閉塞部10のみ弾性材料からなるものとしてもよいものとする。また、すべり止め具9は弾性材料以外にも、ワイヤー固定金具1に外嵌され、かつ挿通部に挿通されたワイヤーが抵抗を受けるような構成であれば、硬質な合成樹脂材料やアルミニウム等の金属材料としてもよいものとする。
【符号の説明】
【0043】
1 ワイヤー固定金具
2 ワイヤー
9 すべり止め具
10 本体部
11 閉塞部
12、13 貫通孔(挿通部)
14 スリット(挿通部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9