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  • 特許-漂流物移送装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】漂流物移送装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/00 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
E02B5/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019130146
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014728
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512261414
【氏名又は名称】エビスマリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】矢尾 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】増田 太
(72)【発明者】
【氏名】宮井 渉
(72)【発明者】
【氏名】原野 光雄
(72)【発明者】
【氏名】寺井 良治
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩康
(72)【発明者】
【氏名】尾口 陽軌
(72)【発明者】
【氏名】市野 悟
(72)【発明者】
【氏名】與島 健司
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-242159(JP,A)
【文献】特開2004-353293(JP,A)
【文献】特開2007-160154(JP,A)
【文献】特開2002-167732(JP,A)
【文献】特開2013-053448(JP,A)
【文献】実開平02-066827(JP,U)
【文献】実開昭64-010533(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を取水する取水口の周囲をカーテンウォールで囲んで該取水口側の取水領域と該取水領域の外側となる取水領域外との間を海水が流出入可能に区画した取水設備に設置される漂流物移送装置であって、
前記取水領域内に侵入して前記取水口側へ移動するクラゲを吸引口から吸引して前記取水領域外まで移送させる移送手段と、前記吸引口へクラゲを水流により移動させる水流発生手段と、を備え、
前記吸引口が、前記取水領域外と前記取水領域との間で流出入する海水の流れる方向に向かって開口され、前記水流発生手段により発生する水流の向きが、該水流の先端側ほど前記取水口側に位置するように前記海水の流れる方向に対して斜めに構成されていることを特徴とする漂流物移送装置。
【請求項2】
前記水流発生手段により移動するクラゲを前記吸引口まで案内するための網状のネットが、該水流発生手段よりも前記取水口側で、かつ、該水流発生手段により発生する水流の方向と略平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の漂流物移送装置。
【請求項3】
前記吸引口が、前記取水口の近傍に配置され、前記水流発生手段が、前記吸引口よりも前記取水口から離間するカーテンウォール側に配置され、かつ、前記水流発生手段により発生する水流の向きが前記吸引口に向けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の漂流物移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水領域内に侵入するクラゲを陸揚げせずに生きたまま取水領域外へ移送するための漂流物移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所では、海岸付近に冷却水用として用いる海水を取水するための取水口を設けている。この取水口には、クラゲが侵入しないように侵入防止用のネットが設けられている。クラゲによって取水口が閉塞されると、所定の海水量を確保できず発電停止に追い込まれるからである。また、前記ネットの下方に、多数の孔が形成された空気供給管を設けるとともに、ネットの横側方からネットの表面に向けて旋回流を供給する旋回流発生装置を設けている。したがって、ネットの表面に付着しているクラゲを、空気供給管からの上方へのエアの供給と旋回流発生装置からのネットの表面への旋回流の供給の両方によりネットから離脱させて、取水口から所定の海水量を確保できるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この取水口周辺ではクラゲが大量発生することがしばしば起こる。クラゲが大量発生した場合であって、上記のネットと旋回流発生装置の組合せでは所定の海水量を確保できない場合、従来の対策としては、1)人海戦術により網等でクラゲをすくい上げる。2)クラゲを死滅させる薬剤を散布する。3)取水管にクラゲ裁断手段を設けたクラゲ除去装置などでクラゲを裁断して取水領域外へ移送する手段などがある(例えば特許文献2参照)。
これらの方法は、例えば、1)の方法は膨大な人件費がかかる他、港湾での作業となる場合があり、特に夜間の場合は危険が伴う。更に、クラゲを陸揚げした場合や裁断した場合、自治体により対応は異なるが、そのクラゲは産業廃棄物となり膨大な処理コストと陸上処分する場合は広大な処分用地が必要となり、また異臭問題が発生する。さらにクラゲは海水を多く含むことからその処分用地においては塩害が発生する可能性が有る。2)の方法は周辺環境、特に近隣で漁業を営む者への悪影響が懸念される。3)の方法もクラゲを裁断することから産業廃棄物が発生し、1)の場合と同様に処理コスト、処分用地、塩害及び悪臭の懸念が発生するなどの問題点を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-242159号公報
【文献】特開2004-353293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成では、空気供給管からの上方へのエアの供給及び旋回流発生装置からのネットの表面への旋回流の供給によりネットからクラゲを離脱させることができる。しかし、クラゲが大量に発生してくると、上記特許文献1の構成の装置ではクラゲを取水領域外へ移送する能力が低いこともあり、取水領域内に大量のクラゲが滞留する。カーテンウォールにおける海水の流出入部は壁体の下部に形成されること及びクラゲは通常海面付近を浮遊するためである。その結果、ネットからのクラゲの離脱を十分に行うことができず、取水口から所望の海水量を確保することができない場合があった。そのため、発電が停止することになる。このように、クラゲが大量発生したときには、上記1)~3)の方法により緊急的にクラゲを除去する作業を行わなければならないことや、旋回流発生装置のプロペラによりクラゲが裁断され,産業廃棄物の発生や悪臭の発生などの問題を含んでいるため、装置そのものの改善改良が急務であった。
【0006】
そこで、本発明は、取水口から所望の海水量を確保できるように、クラゲを生きたまま且つ陸揚げ作業が発生せずに確実に移送することができる漂流物移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の漂流物移送装置は、海水を取水する取水口の周囲をカーテンウォールで囲んで該取水口側の取水領域と該取水領域の外側となる取水領域外との間を海水が流出入可能に区画した取水設備に設置される漂流物移送装置であって、前記取水領域内に侵入して前記取水口側へ移動するクラゲを吸引口から吸引して前記取水領域外まで移送させる移送手段と、前記吸引口へクラゲを水流により移動させる水流発生手段と、を備え、前記吸引口が、前記取水領域外と前記取水領域との間で流出入する海水の流れる方向に向かって開口され、前記水流発生手段により発生する水流の向きが、該水流の先端側ほど前記取水口側に位置するように前記海水の流れる方向に対して斜めに構成されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、海水の流れに乗って移送手段の吸引口まで移動してきたクラゲ及び水流発生手段からの水流により移送手段の吸引口まで移動してきたクラゲが、吸引口に吸い込まれて、取水領域外まで移送されるため、クラゲによって取水口が閉塞されることなく、所望の海水量を確保できる。また、水流発生手段により発生する水流の向きを、水流の先端側ほど取水口側に位置するように海水の流れる方向に対して斜めに構成することによって、水流発生手段により発生する水流の移動力が海水の流れによって打ち消されることが抑制される。よって、水流発生手段により発生する水流の移動力でクラゲを移送手段の吸引口まで確実に移送できる。
【0009】
また、本発明の漂流物移送装置は、前記水流発生手段により移動するクラゲを前記吸引口まで案内するための網状のネットが、該水流発生手段よりも前記取水口側で、かつ、該水流発生手段により発生する水流の方向と略平行に配置されていてもよい。
【0010】
上記のように、水流発生手段により移動するクラゲを、水流の方向と略平行に配置された網状のネットに沿って案内することによって、移送手段の吸引口まで効率よく移動させることができる。
【0011】
また、本発明の漂流物移送装置は、前記吸引口が、前記取水口の近傍に配置され、前記水流発生手段が、前記吸引口よりも前記取水口から離間するカーテンウォール側に配置され、かつ、水流の向きが前記吸引口に向けられていてもよい。
【0012】
上記のように、吸引口を取水口の近傍に配置することによって、取水口に移動しようとするクラゲを吸引口で吸引することができる。しかも、吸引口よりも取水口から離間するカーテンウォール側に配置された水流発生手段による水流で、吸引口から離れた位置に浮遊しているクラゲを吸引口へ効率よく移動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移送手段及び水流発生手段を設けることによって、取水口から所望の海水量を確保できるように、クラゲを陸揚げ作業を伴わないで生きたまま確実に移送することができる漂流物移送装置を提供することができる。上述した1)~3)が抱える問題も解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る漂流物移送装置の概要を示す平面図である。
図2】同漂流物移送装置に備える水流発生手段の水流と海水の流れとを示し、(a)は本発明を示し、(b)は比較例を示している。
図3】ネットの設置状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の漂流物移送装置の一例であるクラゲ移送装置の一実施形態について説明する。クラゲ移送装置は、取水領域内に侵入するクラゲ等を取水領域外へ陸揚げ作業を伴わないで生きたまま移送するための装置である。このクラゲ移送装置は、海水を取水する取水口1の周囲をカーテンウォール3で囲んで取水口1側の取水領域2と取水領域2の外側となる取水領域外4との間を海水が流出入可能に区画した取水設備に設けられる。
【0016】
クラゲ移送装置は、具体的には、図1に示すように、取水領域2内に侵入して取水口1側へ移動しようとするクラゲK1,K2を吸引口6Aから吸引して取水領域外(外海)4まで移送する移送手段5と、移送手段5から離れた位置に浮遊しているクラゲK2を移送手段5の吸引口6Aへ水流により移動させる水流発生手段7と、を備えている。
【0017】
カーテンウォール3は、取水口1に対向するように離岸方向に離れて設けられた前壁部と前壁部の左右両側に設けられた一対の横壁部とを備えた壁体3Aと、取水領域2と取水領域2の外側となる取水領域外(外海)4との間で海水を流出入可能な流出入部(図示せず)を備えている。壁体3Aは、海底から満潮時の海面よりも上方へ立ち上げられている。流出入部は、壁体3Aの下端部に形成され、海底付近の海水を取水領域2と取水領域外(外海)4との間で流出入させるために形成されている。この流出入部は、壁体3Aの周囲の下端部に間隔を置いて複数形成されている。取水口1へ取水するための取水部の長さR3が、例えば約84mに設定されている。
【0018】
取水口1は、岸から外海の方向(離岸方向)に向いて(開口されて)いて、カーテンウォール3の陸地側に設置され、取水口1から取水ポンプ(図示せず)により取水された海水が取水管(図示せず)を介して発電設備側へ送られる。また、取水口1から取り込んだ海水に含まれている漂流物を除去するための汎用の除塵機8を備えている。漂流物は、クラゲの他、ゴミや海藻等である。取水口1から取水された海水は、火力発電所や原子力発電所に送られ、冷却水として使用される。
【0019】
カーテンウォール3で形成される取水領域2内には、2つの取水領域、つまり第1取水領域2Aと第2取水領域2Bとに区画するための第1ネット9が設置されている。第2取水領域2B内に取水口1が存在する。第1ネット9は、例えば格子状のフェンスから構成され、第1取水領域2Aと第2取水領域2Bとの間の海水の移動は可能であるが、クラゲの移動は規制される。これは、移送手段5及び排出装置11により取水領域外4に吐出されたクラゲが比較的短時間の内に取水口1近辺に侵入し、再び移送手段5及び排出手段11により取水領域外4へ吐出するという同一個体に対しての繰り返しの排出作業を防ぐ為であり、移送対象となるクラゲの数を減らす効果を有する。
【0020】
移送手段5は、クラゲの他、ゴミや海藻等の漂流物を海水と一緒に吸い込むべく先端側ほど外拡がり状となる吸引口6Aが形成された筒状のノズル部6と、筒状のノズル部6の内部に設置された単数又は複数のノズルに駆動水(海水)を供給するポンプが吸引口6A及び筒状のノズル部6の上部浮力材(浮体)上に設置されており(図示せず)、駆動水は筒状のノズル部6周辺から吸引し筒状のノズル部6内部のノズル及び後述する排出装置内部のノズルへ供給する。さらに吸引口6Aから吸引された海水及びクラゲ等を取水領域外4まで案内するホース10と、を備えている。また、移送手段5は、浮力材(浮体)を備えており、筒状のノズル部6の中心軸が海面から予め設定された位置に位置するように構成されている。したがって、ノズル部6は、干潮時には、海面から海底までの間の中層に位置し、満潮時には、海面に近い表層に位置することになる。なお、ホース10の途中(図1では取水領域外4寄り)には、水流を発生させて取水領域外4へ海水と一緒にクラゲの他、ゴミや海藻等の漂流物を確実に排出させるための排出装置11が設けられている。前記ホース10は、筒状のノズル部6と排出装置11とを接続する第1ホース10Aと、排出装置11から排出されるクラゲの他、ゴミや海藻等の漂流物を取水領域外(外海)4まで移動させる第2ホース10Bと、を備えている。
【0021】
ポンプから供給された駆動水が筒状のノズル部6の内部のノズルから排出方向へ噴出されることによりエジェクタ効果が生まれ、吸引口6A周辺の海水を導入し合わせてクラゲやゴミ等も吸引する。海水やクラゲ等はホース10内部を通り、途中排出装置11を経由することにより勢いを維持したまま取水領域外4へ移動する。
【0022】
排出装置11の内部には、筒状のノズル部6内部のノズルと同様のノズルが単数又は複数設置されており、上述したポンプから供給された駆動水をホース10Bの出口方向へ噴出することでクラゲやゴミ等を勢いよく取水領域外4へ排出する。
【0023】
吸引口6Aは、取水口1とカーテンウォール3(の前壁部)との間に配置され、取水領域外4と取水領域2との間で流出入する海水の流れる方向に向かって、つまり海水の流れる方向に対向するように(離岸方向に向かって)開口されている。海水の流れで移動してくるクラゲK1やゴミや海藻等の漂流物及び水流発生手段7からの水流により移動してくるクラゲK2やゴミや海藻等の漂流物を海水の流れと筒状のノズル部内に設置された単数又は複数のノズルが駆動水を噴射することによって作り出されるエジェクタ効果を活かして吸い込むようにしている。
【0024】
また、吸引口6Aの左右幅方向一方側(左側)には、第2ネット12が設置され、吸引口6Aの左右幅方向他方側(右側)には、第3ネット13が設置されている。第2ネット12は、第1ネット9のカーテンウォール3側(図1では上側)端から吸引口6Aに向かって斜めに配置されている。第3ネット13は、カーテンウォール3側寄りから取水口1側に位置する吸引口6Aに向けて斜めに配置されている。第3ネット13は、水流発生手段7により発生する水流の向きと平行でかつ取水口1側に位置させて設置されており、水流発生手段7により発生する水流により移動するクラゲK2を吸引口6Aまで案内する案内部として機能する。図1にクラゲ移送装置によりクラゲを吸引して移送可能な装置有効範囲の第1長さR1を示し、その第1長さR1が、例えば約36mに設定されている。また、第1長さR1+第1ネット9から左右方向左側の壁体3Aまでの長さを加えた第2長さR2を示し、その第2長さR2が、例えば約55mに設定されている。
【0025】
第2ネット12及び第3ネット13の基本的構成は、いずれも同一であり、例えば図3に示すように構成されている。第2ネット12又は第3ネット13は、一端(上端)が複数の略球状の浮き14に取り付けられ、他端(下端)が単数又は複数の台形状の錘15に取り付けられている。したがって、錘15を海底16に載置することによって、第2ネット12又は第3ネット13が浮き14の浮力で縦向きに設置される。このように構成することによって、錘15の位置を変更するだけで第2ネット12又は第3ネット13の配置を調整する又は変更することができる。なお、図3は、満潮時の状態の第2ネット12又は第3ネット13の設置状態を示しており、満潮から干潮になるに従って、浮き14が下方に移動してしまい、第2ネット12又は第3ネット13が弛んだ状態になる。
【0026】
水流発生手段7は、吸引口6Aよりも離岸方向(カーテンウォール3側)に離れて配置されている。水流発生手段7は、具体的には、海水を吐出する吐出口17Aが形成された筒状のノズル部17と、筒状のノズル部17内部に設置された単数又は複数のノズルに駆動水(海水)を供給するポンプが筒状のノズル部17と吐出口17Aの上部浮力材(浮体)上に設置されている(図示せず)。ポンプを駆動することにより、筒状のノズル部内部の単数又は複数のノズルから駆動水が吐出口17Aの方向へ噴出されると同時にノズル部後方でエジェクタ効果を生じ、より多くの海水が筒状のノズル部に導入され、吐出口17Aから水流を発生させる。この水流により、クラゲK2やゴミや海藻等の漂流物を海水と一緒に吸引口6Aまで移動させるようにしている。また、水流発生手段7は、移送手段5と同様に、浮力材(浮体)を備えており、筒状のノズル部17の中心軸が海面から予め設定された位置に位置するように構成されている。したがって、ノズル部17は、干潮時には、海面から海底までの間の中層に位置し、満潮時には、海面に近い表層に位置することになる。また、吐出される水流は広がりを持つため、海面を浮遊するクラゲも吸引口6まで移動させることができる。
【0027】
水流発生手段7により発生する水流の向きが、水流の先端側ほど取水口1側に位置するように海水の流れる方向に対して斜めに構成されている。この水流の向きは、図2(a)に示すように、海水の流れる方向に対して略直交する方向18に対して取水口1側にθ角度傾けた向きである。又は、水流の向き7Aは、海水の流れる方向と略同一方向19に対して吸引口6A側に90度-θ角度傾けた向きである。θは、20度~65度の任意の角度に設定することが好ましいが、0度を越える角度から90度を越えない角度であってもよい。水流発生手段7により発生する水流の向きを前記のように構成することによって、水流発生手段7により発生する水流の移動力が海水の流れによって打ち消されることを抑制することができる。よって、水流発生手段7により発生する水流でクラゲを移送手段5の吸引口6Aまで確実に移送できる。
【0028】
ところで、満潮時(例えば潮位が2.44m)の海水の流速分布と干潮時(例えば潮位が1.23m)の海水の流速分布を比較してみると、取水口1に向かう流れは、満潮時は底側の底層が他の層よりも速い流速分布になっており、干潮時は表面側の表層が他の層よりも早い流速分布になっていることを本願発明者が見出した。そのため、前述したように、水流発生手段7により発生する水流の向きを、水流の先端側ほど取水口1側に位置するように海水の流れる方向に対して斜めに構成することによって、特に干潮時において中層に位置する水流発生手段7により発生する水流の移動力が、流速が速い表層側を流れる海水によって大きく打ち消されることを抑制することができる。よって、流速が速い海水が流れている状態であっても、水流発生手段7の能力を大きくしなくても、水流発生手段7により発生する水流でクラゲを移送手段5の吸引口6Aまで確実に移送できる。なお、本願発明との比較例として図2(b)に示している。つまり、水流発生手段7により発生する水流の向き(破線参照)を、海水の流れる方向に対して略直交する方向に設定した場合を示している。このように設定すると、前記のように干潮時において水流が海水の流れに衝突してしまい、水流が吸引口6Aに届かず、途中で取水口1側に曲がってしまっている状態である(実線参照)。なお、吸引口6Aに吸引することにより取水口1側へ流入する水流が発生し、この水流も海水の流れに加算され、図2(b)に示す不具合が増大される。
【0029】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、種々変更することができる。
【0030】
前記実施形態では、吸引口6Aの左右幅方向一方側(右側)に水流発生手段7を設けたが、吸引口6Aの左右幅方向他方側(左側)に水流発生手段7を設けてもよい。
【0031】
以上のとおり、本発明にかかる漂流物移送装置(ここではクラゲ移送装置)は、既存の装置(従来技術)の問題点を適切に解決しているため、産業上の利用可能性は高いと考えられる。
【符号の説明】
【0032】
1…取水口、2…取水領域、3…カーテンウォール、3A…壁体、4…取水領域外(外海)、5…移送手段、6…筒状のノズル部、6A…吸引口、7…水流発生手段、7A…水流の向き、8…除塵機、9…第1ネット、10…ホース、10A…第1ホース、10B…第2ホース、11…排出装置、12…第2ネット、13…第3ネット、14…浮き、15…錘、16…海底、17…筒状のノズル部、17A…吐出口、18…海水の流れる方向に対して略直交する方向、19…海水の流れる方向と略同一方向、K1,K2,K3…クラゲ
図1
図2
図3