IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 学校法人トヨタ学園の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20230509BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 21/337 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 29/808 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20230509BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L21/28 301B
H01L29/50 J
H01L29/44 S
H01L29/91 C
H01L29/91 F
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021577787
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005553
(87)【国際公開番号】W WO2021161448
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 知義
(72)【発明者】
【氏名】長里 喜隆
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直高
(72)【発明者】
【氏名】榊 裕之
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-149359(JP,A)
【文献】特開2019-117919(JP,A)
【文献】特開平5-136430(JP,A)
【文献】特開2019-57589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/337
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/41
H01L 29/861
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極と、を備え、
前記半導体基板は、
第1の半導体材料で構成された上層、中層及び下層と、
前記上層と前記中層との間に位置する第1チャネル形成層と、
前記中層と前記下層との間に位置する第2チャネル形成層と、を備え、
前記第1チャネル形成層と前記第2チャネル形成層との各々は、前記第1の半導体材料とバンドギャップが異なる第2の半導体材料で構成された一又は複数の異種材料層を有し、
前記一又は複数の異種材料層の各々の厚みは、前記中層の厚みよりも小さく、
前記第1チャネル形成層では、前記一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第1極性の二次元キャリアガスが生成され、
前記第2チャネル形成層では、前記一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第2極性の二次元キャリアガスが生成され、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記第1チャネル形成層と前記第2チャネル形成層との一方に接触しており、
前記ゲート電極は、前記第1チャネル形成層と前記第2チャネル形成層との他方に接触又は隣接している、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1チャネル形成層では、前記ヘテロ界面に沿って第1導電型の不純物が導入されており、
前記第2チャネル形成層では、前記ヘテロ界面に沿って第2導電型の不純物が導入されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の半導体材料のバンドギャップは、前記第2の半導体材料のバンドギャップよりも狭く、
前記第1チャネル形成層では、前記異種材料層内に前記第1導電型の不純物が導入されているとともに、前記異種材料層外に前記第1極性の二次元キャリアガスが生成され、
前記第2チャネル形成層では、前記異種材料層内に前記第2導電型の不純物が導入されているとともに、前記異種材料層外に前記第2極性の二次元キャリアガスが生成される、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の半導体材料は、ヒ化ガリウム(GaAs)であり、前記第2の半導体材料は、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)である、又は、
前記第1の半導体材料は、窒化ガリウム(GaN)であり、前記第2の半導体材料は、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の半導体材料のバンドギャップは、前記第2の半導体材料のバンドギャップよりも広く、
前記第1チャネル形成層では、前記異種材料層外に前記第1導電型の不純物が導入されているとともに、前記異種材料層内に前記第1極性の二次元キャリアガスが生成され、
前記第2チャネル形成層では、前記異種材料層外に前記第2導電型の不純物が導入されているとともに、前記異種材料層内に前記第2極性の二次元キャリアガスが生成される、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の半導体材料は、ヒ化ガリウム(GaAs)であり、前記第2の半導体材料は、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)である、又は、
前記第1の半導体材料は、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)であり、前記第2の半導体材料は、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)である、又は、
前記第1の半導体材料は、InAlGa1-x-yAs(0<x<0.3,0<y<0.5)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムであり、前記第2の半導体材料は、InAlGa1-a-bAs(a>x,y>b)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムである、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1チャネル形成層及び前記第2チャネル形成層の各々には、前記複数の異種材料層が設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1チャネル形成層及び前記第2チャネル形成層の各々では、互いに隣接する二つのヘテロ界面の距離が3nm以上20nm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1チャネル形成層では、前記第1極性の二次元キャリアガスが複数生成されるとともに、その複数の二次元キャリアガスでは、前記第2チャネル形成層までの距離が短い二次元キャリアガスほど大きなキャリア濃度を有し、
前記第2チャネル形成層では、前記第2極性の二次元キャリアガスが複数生成され、その複数の二次元キャリアガスでは、前記第1チャネル形成層までの距離が短い二次元キャリアガスほど大きなキャリア濃度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記第2チャネル形成層に接触しており、
前記ゲート電極は、前記第1チャネル形成層に接触している、請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記第2チャネル形成層に接触しており、
前記ゲート電極は、前記上層内に設けられており、前記上層の一部を介して前記第1チャネル形成層から隔離されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記第2チャネル形成層に接触しており、
前記ゲート電極は、前記上層から前記第1チャネル形成層を通過して前記中層まで延びており、
前記ゲート電極から前記第2チャネル形成層までの距離は、前記第1チャネル形成層から前記第2チャネル形成層までの距離よりも短い、請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2チャネル形成層では、前記第2極性の二次元キャリアガスが複数生成されるとともに、その複数の二次元キャリアガスでは、前記ゲート電極までの距離が短い二次元キャリアガスほど大きなキャリア濃度を有する、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2チャネル形成層に生成される前記一又は複数の二次元キャリアガスは、一又は複数の二次元電子ガスであり、
前記ゲート電極は、第1導電型の不純物が導入された半導体材料で構成されている、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板の上面には、前記上層を通過して前記中層に達する二つのリセスが設けられており、
前記ソース電極は、前記二つのリセスの一方の底面から、前記第2チャネル形成層まで延びており、
前記ドレイン電極は、前記二つのリセスの他方の底面から、前記第2チャネル形成層まで延びている、請求項10から14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記第1チャネル形成層に接触しており、
前記ゲート電極は、前記上層から前記第1チャネル形成層及び前記中層を通過して前記第2チャネル形成層まで延びているとともに、前記上層内で前記第1チャネル形成層と対向している、請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1チャネル形成層では、前記第1極性の二次元キャリアガスが複数生成されるとともに、その複数の二次元キャリアガスでは、上下の両側に位置する各二次元キャリアガスが、それらの間に位置する少なくとも一つの二次元キャリアガスよりも、大きなキャリア濃度を有する、請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記第1チャネル形成層に接触しており、
前記半導体基板の上面には、前記上層を通過して前記中層に達するリセスが設けられており、
前記ゲート電極は、前記リセスの底面から前記第2チャネル形成層に向けて延びている、請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記半導体基板は、
前記上層の上に位置するとともに絶縁性を有する上部バッファ層と、
前記上部バッファ層と前記上層との間に位置するとともに、1×1012/cm以上の界面準位濃度を有する上部電位固定層をさらに備える、請求項1から18のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記上部電位固定層は、炭素(C)、酸素(O)又は鉄(Fe)が導入されたIII-V族化合物半導体で構成されている、請求項19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記半導体基板は、
前記下層の下に位置するとともに絶縁性を有する下部バッファ層と、
前記下部バッファ層と前記下層との間に位置するとともに、1×1012/cm以上の界面準位濃度を有する下部電位固定層をさらに備える、請求項1から20のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項22】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた第1電極及び第2電極と、を備え、
前記半導体基板は、
第1の半導体で構成された上層、中層及び下層と、
前記上層と前記中層との間に位置する第1チャネル形成層と、
前記中層と前記下層との間に位置する第2チャネル形成層と、を備え、
前記第1チャネル形成層と前記第2チャネル形成層との各々は、第1の半導体材料とバンドギャップが異なる第2の半導体材料で構成された一又は複数の異種材料層を有し、
前記一又は複数の異種材料層の各々の厚みは、前記中層の厚みよりも小さく、
前記第1チャネル形成層では、前記一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第1極性の二次元キャリアガスが生成され、
前記第2チャネル形成層では、前記一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第2極性の二次元キャリアガスが生成され、
前記第1電極は、前記第1チャネル形成層に接触しており、
前記第2電極は、前記第2チャネル形成層に接触している、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、複数のヘテロ界面を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数のヘテロ界面を有する半導体装置が開示されている。この半導体装置では、二種類の半導体材料が交互に積層されることで、複数のヘテロ界面が形成されており、それらのヘテロ界面には、二次元電子ガスと二次元正孔ガスとが交互に生成される。このような構成によると、通電時における抵抗を低減しつつ、非通電時には優れた耐圧を発揮することができる。なお、本明細書では、二次元電子ガスと二次元正孔ガスとを総称して、二次元キャリアガスと表現することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-57589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した半導体装置では、ヘテロ界面の数、即ち、二次元電子ガスと二次元正孔ガスとの数を増加させることで、通電時における抵抗のさらなる低減を図ることができる。しかしながら、半導体基板のさらなる多層化が必要となることで、半導体基板の厚みが増大するという課題がある。特に、極性の異なる二次元正孔ガスと二次元電子ガスとの間には、ある程度の距離を与える必要がある。従って、二次元正孔ガスと二次元電子ガスとが交互に生成される構造であると、それぞれの層を比較的に厚く形成する必要があり、多層化によって半導体基板の厚みが比較的に大きく増大してしまう。
【0005】
上記を鑑み、本明細書は、複数のヘテロ界面を有する半導体装置において、半導体基板の厚みの増大を抑制しつつ、通電時の抵抗を低減し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、次の半導体装置に具現化される。この半導体装置は、半導体基板と、半導体基板に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極とを備える。半導体基板は、第1の半導体材料で構成された上層、中層及び下層と、上層と中層との間に位置する第1チャネル形成層と、中層と下層との間に位置する第2チャネル形成層とを備える。第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との各々は、第1の半導体材料とバンドギャップが異なる第2の半導体材料で構成された一又は複数の異種材料層を有し、その一又は複数の異種材料層の各々の厚みは、中層の厚みよりも小さい。第1チャネル形成層では、一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第1極性の二次元キャリアガス(即ち、二次元正孔ガスと二次元電子ガスの一方)が生成される。第2チャネル形成層では、一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第2極性の二次元キャリアガス(即ち、二次元正孔ガスと二次元電子ガスの他方)が生成される。ソース電極及びドレイン電極は、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との一方に接触している。そして、ゲート電極は、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との他方に接触又は隣接している。
【0007】
上記した半導体装置では、ゲート電極に与える電圧を調節することで、第1チャネル形成層及び第2チャネル形成層を空乏化させたり、それらに二次元キャリアガス(即ち、二次元正孔ガス又は二次元電子ガス)を生成させたりすることができる。第1チャネル形成層及び第2チャネル形成層に二次元キャリアガスが生成されると、ソース電極とドレイン電極との間が、第1チャネル形成層又は第2チャネル形成層を介して電気的に接続される。特に、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層とのそれぞれは、少なくとも一対(即ち、二以上の偶数)のヘテロ界面を有しており、それぞれのヘテロ界面に沿って二次元キャリアガスが生成される。これにより、ソース電極とドレイン電極との間は、比較的に低い抵抗で電気的に接続される。
【0008】
ここで、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層とのそれぞれでは、同一極性の二次元キャリアガスのみが生成されることから、隣り合う二次元キャリアガスの間に間隔を設ける必要がない。従って、半導体基板の厚みの増大を抑制しつつ、多くの二次元キャリアガスを生成させることによって、通電時の抵抗を小さくすることができる。その一方で、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との間には、比較的に厚い中層が存在することから、極性の異なる二次元キャリアガスの間には、十分な距離を与えることができる。これにより、半導体基板の厚みの増大を抑制しつつ、通電時の抵抗が低減された半導体装置を実現することができる。
【0009】
本明細書が開示する技術は、次の半導体装置にも具現化される。この半導体装置は、半導体基板と、半導体基板に設けられた第1電極及び第2電極とを備える。半導体基板は、第1の半導体材料で構成された上層、中層及び下層と、上層と中層との間に位置する第1チャネル形成層と、中層と下層との間に位置する第2チャネル形成層とを備える。第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との各々は、第1の半導体材料とバンドギャップが異なる第2の半導体材料で構成された一又は複数の異種材料層を有し、その一又は複数の異種材料層の各々の厚みは、中層の厚みよりも小さい。第1チャネル形成層では、一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第1極性の二次元キャリアガス(即ち、二次元正孔ガスと二次元電子ガスの一方)が生成される。第2チャネル形成層では、一又は複数の異種材料層の各々の両側に形成された一対のヘテロ界面に、第2極性の二次元キャリアガス(即ち、二次元正孔ガスと二次元電子ガスの他方)が生成される。第1電極は、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との一方に接触している。そして、第2電極は、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との他方に接触している。
【0010】
上記した半導体装置では、第1電極と第2電極との一方をアノードとし、第1電極と第2電極との他方をカソードとして、ダイオードとして機能することができる。例えば、第1チャネル形成層に二次元正孔ガスが生成され、第2チャネル形成層に二次元電子ガスが生成される構成であれば、第1電極はアノードとして機能し、第2電極はカソードとして機能する。一方、第1チャネル形成層に二次元電子ガスが生成され、第2チャネル形成層に二次元正孔ガスが生成される構成であれば、第1電極はカソードとして機能し、第2電極はアノードとして機能する。
【0011】
この半導体装置においても、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層とのそれぞれでは、同一極性の二次元キャリアガスのみが生成されることから、隣り合う二次元キャリアガスの間隔を比較的に小さくすることができる。従って、生成される二次元キャリアガスの数に対して、第1チャネル形成層及び第2チャネル形成層の厚みを、比較的に小さくすることができる。その一方で、第1チャネル形成層と第2チャネル形成層との間には、比較的に厚い中層が存在することから、極性の異なる二次元キャリアガスの間には、十分な距離を与えることができる。これにより、半導体基板の厚みの増大を抑制しつつ、通電時の抵抗が低減された半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の半導体装置10Aを模式的に示す平面図。
図2図1中のII-II線断面図であって、実施例1の半導体装置10Aの断面構造を模式的に示す。
図3】実施例2の半導体装置10Bを模式的に示す平面図。
図4図3中のII-II線断面図であって、実施例2の半導体装置10Bの断面構造を模式的に示す。
図5】実施例3の半導体装置10Cを模式的に示す平面図。
図6図5中のVI-VI線断面図であって、実施例3の半導体装置10Cの断面構造を模式的に示す平面図。
図7図5中のVII-VII線断面図であって、実施例3の半導体装置10Cの断面構造を模式的に示す。
図8】実施例4の半導体装置10Dを模式的に示す平面図。
図9図8中のIX-IX線断面図であって、実施例4の半導体装置10Dの断面構造を模式的に示す。
図10】実施例5の半導体装置10Eを模式的に示す平面図。
図11図10中のXI-XI線断面図であって、実施例5の半導体装置10Eの断面構造を模式的に示す。
図12図10中のXII-XII線断面図であって、実施例5の半導体装置10Eの断面構造を模式的に示す。
図13】実施例6の半導体装置10Fを模式的に示す平面図。
図14図13中のXIV-XIV線断面図であって、実施例6の半導体装置10Fの断面構造を模式的に示す。
図15】実施例7の半導体装置10Gを模式的に示す平面図。
図16図15中のXVI-XVI線断面図であって、実施例7の半導体装置10Gの断面構造を模式的に示す。
図17】実施例8の半導体装置10Hを模式的に示す平面図。
図18図17中のXVIII-XVIII線断面図であって、実施例8の半導体装置10Hの断面構造を模式的に示す平面図。
図19】実施例9の半導体装置10Iを模式的に示す平面図。
図20図19中のXX-XX線断面図であって、実施例9の半導体装置10Iの断面構造を模式的に示す。
図21】実施例10の半導体装置10Jを模式的に示す平面図。
図22図21中のXXII-XXII線断面図であって、実施例10の半導体装置10Jの断面構造を模式的に示す。
図23】実施例11の半導体装置10Kを模式的に示す平面図。
図24図23中のXXIV-XXIV線断面図であって、実施例11の半導体装置10Kの断面構造を模式的に示す。
図25】実施例12の半導体装置10Lを模式的に示す平面図。
図26図25中のXXVI-XXVI線断面図であって、実施例12の半導体装置10Lの断面構造を模式的に示す。
図27図25中のXXVII-XXVII線断面図であって、実施例12の半導体装置10Lの断面構造を模式的に示す。
図28】実施例13の半導体装置10Mを模式的に示す平面図。
図29図28中のXXIX-XXIX線断面図であって、実施例13の半導体装置10Mの断面構造を模式的に示す。
図30】実施例13において半導体基板12の厚み方向におけるエネルギーバンドを示すバンド図。線Ecは伝導帯の最低エネルギーを示し、線Evは価電子帯の最大エネルギーを示し、線Efはフェルミ準位のエネルギーを示す。
図31】実施例14の半導体装置10Nを模式的に示す平面図。
図32図31中のXXXII-XXXII線断面図であって、実施例14の半導体装置10Nの断面構造を模式的に示す。
図33】実施例15の半導体装置10Pを模式的に示す平面図。
図34図33中のXXXIV-XXXIV線断面図であって、実施例15の半導体装置10Pの断面構造を模式的に示す。
図35】実施例16の半導体装置10Qを模式的に示す平面図。
図36図35中のXXXVI-XXXVI線断面図であって、実施例16の半導体装置10Qの断面構造を模式的に示す。
図37図35中のXXXVII-XXXVII線断面図であって、実施例16の半導体装置10Qの断面構造を模式的に示す。
図38】実施例17の半導体装置10Rを模式的に示す平面図。
図39図38中のXXXIX-XXXIX線断面図であって、実施例17の半導体装置10Rの断面構造を模式的に示す。
図40】実施例18の半導体装置10Sを模式的に示す平面図。
図41図40中のXLI-XLI線断面図であって、実施例18の半導体装置10Sの断面構造を模式的に示す。
図42】実施例19の半導体装置10Tを模式的に示す平面図。
図43図42中のXLIII-XLIII線断面図であって、実施例19の半導体装置10Tの断面構造を模式的に示す。
図44】実施例20の半導体装置10Uを模式的に示す平面図。
図45図44中のXLV-XLV線断面図であって、実施例20の半導体装置10Uの断面構造を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本技術の一実施形態において、第1チャネル形成層では、ヘテロ界面に沿って第1導電型(即ち、p型又はn型の一方)の不純物が導入されていてもよい。加えて、第2チャネル形成層では、ヘテロ界面に沿って第2導電型(即ち、p型又はn型の他方)の不純物が導入されていてもよい。これにより、第1チャネル形成層及び/第2チャネル形成層に対して、二次元キャリアガスを生成するためのキャリア(正孔又は電子)を供給することができる。
【0014】
本技術の一実施形態において、第1の半導体材料のバンドギャップは、第2の半導体材料のバンドギャップよりも狭くてもよい。この場合、第1チャネル形成層では、異種材料層外に第1極性の二次元キャリアガスが生成されるので、特に限定されないが、異種材料層内に第1導電型の不純物が導入されているとよい。同様に、第2チャネル形成層では、異種材料層外に第2極性の二次元キャリアガスが形成されるので、異種材料層内に第2導電型の不純物が導入されているとよい。このような構成によると、二次元キャリアガスにおけるキャリアの移動が、不純物によって阻害されることを避けることができる。
【0015】
上記した実施形態において、第1の半導体材料は、ヒ化ガリウム(GaAs)であり、第2の半導体材料は、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)であってもよい。ヒ化ガリウムの結晶成長は比較的に容易なので、上層、中層及び下層を構成する第1の半導体材料には、ヒ化ガリウムを好適に採用することができる。但し、他の実施形態として、第1の半導体材料は、窒化ガリウム(GaN)であり、第2の半導体材料は、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)であってもよい。
【0016】
本技術の一実施形態において、第1の半導体材料のバンドギャップは、第2の半導体材料のバンドギャップよりも広くてもよい。この場合、第1チャネル形成層では、異種材料層内に第1極性の二次元キャリアガスが生成されるので、特に限定されないが、異種材料層外に第1導電型の不純物が導入されているとよい。同様に、第2チャネル形成層では、異種材料層内に第2極性の二次元キャリアガスが形成されるので、特に限定されないが、異種材料層外に第2導電型の不純物が導入されているとよい。このような構成によると、二次元キャリアガスにおけるキャリアの移動が、不純物によって阻害されることを避けることができる。
【0017】
上記した実施形態において、第1の半導体材料は、ヒ化ガリウム(GaAs)であり、第2の半導体材料は、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)であってもよい。あるいは、第1の半導体材料は、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)であり、第2の半導体材料は、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)であってもよい。あるいは、第1の半導体材料は、InAlGa1-x-yAs(0<x<0.3,0<y<0.5)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムであり、第2の半導体材料は、InAlGa1-a-bAs(a>x,y>b)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムであってもよい。
【0018】
本技術の一実施形態において、第1チャネル形成層及び第2チャネル形成層の各々には、複数の異種材料層が設けられていてもよい。この場合、複数の異種材料層の間には、第1の半導体材料で構成された層が介在してもよい。異種材料層の数が多くなるほど、多くの二次元キャリアガスが生成され、それによって通電時の抵抗はより低減される。
【0019】
本技術の一実施形態において、第1チャネル形成層及び第2チャネル形成層の各々では、互いに隣接する二つのヘテロ界面の距離が3nm以上20nm以下であってもよい。このような構造によると、隣接する二次元キャリアガスを少なくとも部分的に重畳させて、二次元キャリアガスにおけるキャリア濃度を高めることができる。これにより、キャリアの総数を維持しながら、第1チャネル形成層や第2チャネル形成層の厚みを小さくすることができる。
【0020】
本技術の一実施形態において、第1チャネル形成層では、第1極性の二次元キャリアガスが複数生成されてもよい。この場合、その複数の二次元キャリアガスでは、第2チャネル形成層までの距離が短い二次元キャリアガスほど、大きなキャリア濃度を有してもよい。同様に、第2チャネル形成層では、第2極性の二次元キャリアガスが複数生成されてもよい。この場合、その複数の二次元キャリアガスでは、第1チャネル形成層までの距離が短い二次元キャリアガスほど、大きなキャリア濃度を有してもよい。このような構成によると、第1チャネル形成層及び第2チャネル形成層の各々において、複数の二次元キャリアガスが空乏化されるときの時間差を抑制又は排除することができる。従って、半導体装置のスイッチング速度(スイッチングに要する時間)を向上することができる。
【0021】
本技術の一実施形態において、ソース電極及びドレイン電極は、第2チャネル形成層に接触していてもよい。この場合、ゲート電極は、第1チャネル形成層に接触していてもよい。あるいは、ゲート電極は、上層内に設けられており、上層の一部を介して第1チャネル形成層から隔離されていてもよい。後者の構成によると、ゲート電極を比較的に小型化することができ、その形成を容易に行うことができる。
【0022】
本技術の一実施形態において、ソース電極及びドレイン電極が、第2チャネル形成層に接触している場合、ゲート電極は、上層から第1チャネル形成層を通過して中層まで延びていてもよい。そして、ゲート電極から第2チャネル形成層までの距離が、第1チャネル形成層から第2チャネル形成層までの距離よりも短くてもよい。このような構成によると、例えば高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)におけるリセスゲート構造のように、ゲート電極に近接する位置では、二次元キャリアガスにおけるキャリア濃度を低下させることができる。これにより、しきい値電圧(電流を遮断するために必要なゲート電圧)を高くすることができ、ノーマリオフ型又はそれに近い半導体装置を実現することができる。
【0023】
上記した実施形態において、第2チャネル形成層では、第2極性の二次元キャリアガスが複数生成されてもよい。この場合、その複数の二次元キャリアガスでは、ゲート電極までの距離が短い二次元キャリアガスほど、大きなキャリア濃度を有してもよい。このような構成によると、ゲート電極に近接する位置において、複数の二次元キャリアガスの各キャリア濃度を均等に低下させることができ、しきい値電圧をより高くすることができる。
【0024】
上記した実施形態において、第2チャネル形成層に生成される一又は複数の二次元キャリアガスは、一又は複数の二次元電子ガスであってもよい。この場合、特に限定されないが、ゲート電極は、第1導電型の不純物が導入された半導体材料で構成されていてもよい。このような構成によると、p型であるゲート電極とn型である第2チャネル形成層との間で内蔵電界が形成され、その内蔵電界によってしきい値電圧をより高くすることができる。
【0025】
上記したいくつかの実施形態、特に、ソース電極及びドレイン電極が第2チャネル形成層に接触する実施形態では、半導体基板の上面に、上層を通過して中層に達する二つのリセスが設けられていてもよい。この場合、ソース電極は、二つのリセスの一方の底面から、第2チャネル形成層まで延びていてもよい。また、ドレイン電極は、二つのリセスの他方の底面から、第2チャネル形成層まで延びていてもよい。このような構成によると、比較的に簡素な構造によって、ソース電極及びドレイン電極のそれぞれを、第1チャネル形成層から電気的に絶縁しながら、第2チャネル形成層に電気的に接続させることができる。
【0026】
本技術の一実施形態において、ソース電極及びドレイン電極は、第1チャネル形成層に接触していてもよい。この場合、ゲート電極は、上層から第1チャネル形成層及び中層を通過して第2チャネル形成層まで延びているとともに、上層内で第1チャネル形成層と対向していてもよい。このような構成によると、ソース電極とドレイン電極との間を接続する第1チャネル形成層は、リセスゲート構造を有するゲート電極と、そのゲート電極に接続された第2チャネル形成層との間を通過する。これにより、第1チャネル形成層のキャリア濃度は、その通過する位置において有意に低下するので、しきい値電圧を高くすることによって、ノーマリオフ型又はそれに近い動作を実現することができる。
【0027】
上記した実施形態において、第1チャネル形成層では、第1極性の二次元キャリアガスが複数生成されてもよい。この場合、その複数の二次元キャリアガスでは、上下の両側に位置する各二次元キャリアガスが、それらの間に位置する少なくとも一つの二次元キャリアガスよりも、大きなキャリア濃度を有してもよい。このような構成によると、複数の二次元キャリアガスの各キャリア濃度を均等に低下させることができ、しきい値電圧をより高くすることができる。
【0028】
上記したいくつかの実施形態、特に、ソース電極及びドレイン電極が第1チャネル形成層に接触する実施形態では、半導体基板の上面に、上層を通過して中層に達するリセスが設けられていてもよい。この場合、ゲート電極は、リセスの底面から第2チャネル形成層に向けて延びていてもよい。このような構成によると、比較的に簡素な構造によって、ゲート電極を、第1チャネル形成層から電気的に絶縁しながら、第2チャネル形成層に接触又は近接させることができる。
【0029】
本技術の一実施形態において、半導体基板は、上層の上に位置するとともに絶縁性を有する上部バッファ層と、上部バッファ層と上層との間に位置するとともに、1×1012/cm以上の界面準位濃度を有する上部電位固定層をさらに備えてもよい。半導体基板が上部電位固定層を有していると、上部電位固定層よりも上方の構造にかかわらず、上層における電位(電界強度)を固定することができ、第1チャネル形成層のチャネル濃度(あるいは電位)が安定する。従って、上部電位固定層よりも上方には、例えば保護膜といった付加的な構造を自由に設けることができ、その際に第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層への影響を考慮する必要がない。
【0030】
上記した実施形態において、上部電位固定層は、炭素(C)、酸素(O)又は鉄(Fe)が導入されたIII-V族化合物半導体で構成されていてもよい。この場合、特に限定されないが、上部電位固定層は、1nm~10μmの厚みを有してもよい。但し、他の実施形態として、上部電位固定層の厚みは、例えば数原子層以下の厚みであってもよく、そこに任意の結晶欠陥が設けられてものであってもよい。
【0031】
上記した上部電位固定層に加えて、又は代えて、半導体基板は、下層の下に位置するとともに絶縁性を有する下部バッファ層と、下部バッファ層と下層との間に位置するとともに、1×1012/cm以上の界面準位濃度を有する下部電位固定層をさらに備えてもよい。このような構成によると、下部電位固定層よりも下方の構造にかかわらず、上層における電位(電界強度)を固定することができ、第2チャネル形成層のチャネル濃度(あるいは電位)が安定させることができる。従って、下部電位固定層よりも下方には、例えば支持基板といった付加的な構造を自由に設けることができ、その際に第1チャネル形成層及び第2チャネル形成層への影響を考慮する必要がない。
【0032】
下部電位固定層もまた、炭素(C)、酸素(O)又は鉄(Fe)が導入されたIII-V族化合物半導体で構成されていてもよい。この場合、特に限定されないが、下部電位固定層は、1nm~10μmの厚みを有してもよい。但し、他の実施形態として、上部電位固定層の厚みは、例えば一原子層以下の厚みであってもよく、そこに任意の結晶欠陥が設けられたものであってもよい。
【実施例
【0033】
(実施例1)図1図2を参照して、実施例1の半導体装置10Aについて説明する。本実施例の半導体装置10Aは、半導体基板12と、半導体基板12に設けられたソース電極14、ドレイン電極16及びゲート電極18とを備える。ソース電極14、ドレイン電極16及びゲート電極18は、特に限定されないが、半導体基板12の上面12aに形成されたトレンチ内に設けられている。ソース電極14、ドレイン電極16及びゲート電極18は、導電性を有する材料で形成されている。一例ではあるが、ソース電極14及びドレイン電極16は、n型半導体(例えばn-GaAs)で構成されてもよく、ゲート電極18は、p型半導体(例えばp-GaAs)で構成されてもよい。
【0034】
半導体基板12は、i型の半導体層である上層20、中層22及び下層24と、上層20と中層22との間に位置する第1チャネル形成層30と、中層22と下層24との間に位置する第2チャネル形成層40とを備える。上層20、中層22及び下層24は、第1の半導体材料で構成されている。上層20、中層22及び下層24の各厚みは、特に限定されないが、数10nm~1μmであってよい。また、第1の半導体材料は、III-V族化合物半導体又はその他の半導体材料であってよい。上層20の上方には、半導体基板12の上面12aを覆う保護膜2が設けられており、下層24の下方には、半絶縁性基板で構成された支持基板4が設けられている。
【0035】
第1チャネル形成層30は、一つの異種材料層32を有する。異種材料層32は、第1の半導体材料とバンドギャップが異なる第2の半導体材料で構成されている。異種材料層32の厚みは、例えば3nm~50nmであって、上層20、中層22及び下層24の各厚みよりも十分に小さい。異種材料層32は、上層20及び中層22のそれぞれに接しており、異種材料層32の両側に一対のヘテロ界面34が形成されている。そして、各々のヘテロ界面34に沿って、二次元正孔ガス2DHGが生成されている。ここで、第1チャネル形成層30の異種材料層32には、p型の不純物が導入されており、異種材料層32から二次元正孔ガス2DHGへ正孔が供給される。第2の半導体材料は、特に限定されないが、III-V族化合物半導体又はその他の半導体材料であってよい。
【0036】
第2チャネル形成層40は、一つの異種材料層42を有する。異種材料層42は、前述した第1チャネル形成層30と同じく、第2の半導体材料で構成されている。異種材料層42の厚みは、例えば3nm~50nmであって、上層20、中層22及び下層24の各厚みよりも小さい。異種材料層42は、中層22及び下層24のそれぞれに接しており、異種材料層42の両側に一対のヘテロ界面44が形成されている。そして、各々のヘテロ界面44に沿って、二次元電子ガス2DEGが生成されている。ここで、第2チャネル形成層40の異種材料層42にはn型の不純物が導入されており、異種材料層42から二次元電子ガス2DEGへ電子が供給される。
【0037】
一例ではあるが、本実施例の半導体装置10Aでは、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料に、ヒ化ガリウム(GaAs)が採用されており、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料に、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)が採用されている。従って、本実施例の半導体装置10Aでは、第1の半導体材料(GaAs)のバンドギャップは、第2の半導体材料(AlGaAs)のバンドギャップよりも狭くなっている。なお、第1の半導体材料及び第2の半導体材料は、これらの半導体材料に限定されない。例えば、第1の半導体材料が窒化ガリウム(GaN)であって、第2の半導体材料が窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)であってもよい。この場合でも、第1の半導体材料のバンドギャップは、第2の半導体材料のバンドギャップよりも狭くなる。
【0038】
上記したバンドギャップの大小関係により、第1チャネル形成層30では、異種材料層32の外側に、二次元正孔ガス2DHGが形成される。そのことから、第1チャネル形成層30では、不純物の存在によって正孔の移動が阻害されないように、異種材料層32の内側にp型の不純物が導入されている。同様に、第2チャネル形成層40でも、異種材料層42の外側に、二次元電子ガス2DEGが生成される。そのことから、第2チャネル形成層40では、不純物の存在によって電子の移動が阻害されないように、異種材料層42の内側にn型の不純物が導入されている。但し、第1チャネル形成層30では、各々のヘテロ界面34に沿ってp型の不純物が導入されていればよく、異種材料層32の外側にp型の不純物が導入されていてもよい。第2チャネル形成層40でも、各々のヘテロ界面44に沿ってn型の不純物が導入されていればよく、異種材料層42の外側にn型の不純物が導入されていてもよい。
【0039】
ソース電極14及びドレイン電極16の各々は、半導体基板12の上面12aから第2チャネル形成層40まで延びており、第2チャネル形成層40に接している。これにより、ソース電極14及びドレイン電極16は、第2チャネル形成層40の二次元電子ガス2DEGを介して、互いに電気的に接続される。一方、ゲート電極18は、半導体基板12の上面12aから第1チャネル形成層30まで延びており、第1チャネル形成層30に接している。これにより、ゲート電極18は、第1チャネル形成層30の二次元正孔ガス2DHGと電気的に接続される。
【0040】
ここで、半導体基板12の上面12aには、二つのリセス12bが設けられている。各々のリセス12bは、上層20を通過して中層22に達している。ソース電極14は、二つのリセス12bの一方の底面から、第2チャネル形成層40まで延びている。ドレイン電極16は、二つのリセス12bの他方の底面から、第2チャネル形成層40まで延びている。このような構成によると、比較的に簡素な構造によって、ソース電極14及びドレイン電極16のそれぞれを、第1チャネル形成層30から電気的に絶縁しながら、第2チャネル形成層40に電気的に接続させることができる。
【0041】
以上の構成により、本実施例の半導体装置10Aでは、ゲート電極18に与える電圧を調節することで、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40を空乏化させたり、それらに二次元正孔ガス2DHG及び二次元電子ガス2DEGを生成させたりすることができる。第2チャネル形成層40に二次元電子ガス2DEGが生成されると、ソース電極14とドレイン電極16との間が、第2チャネル形成層40を介して電気的に接続される。特に、第2チャネル形成層40は、一対(即ち、二つ)のヘテロ界面44を有しており、それぞれのヘテロ界面44に沿って二次元電子ガス2DEGが生成される。これにより、ソース電極14とドレイン電極16との間は、比較的に低い抵抗で電気的に接続される。
【0042】
一方、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40が空乏化されると、ソース電極14とドレイン電極16との間が電気的に絶縁される。ここで、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40とが対向する方向(図2における上下方向)は、ソース電極14とドレイン電極16とを結ぶ方向(図2における左右方向)に対して直交している。従って、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40が空乏化されたときに、それに起因する電界も、ソース電極14とドレイン電極16とが並ぶ方向に対して直交する方向に発生する。この場合、いわゆるスーパージャンクション構造と同様に、ソース電極14とドレイン電極16との間で電界強度が一様となることから、この半導体装置10Aは、高いオフ耐圧を実現することができる。
【0043】
ここで、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40とのそれぞれでは、同一極性の二次元キャリアガス(即ち、二次元正孔ガス2DHG又は二次元電子ガス2DEG)のみが生成される。従って、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40とのそれぞれでは、隣り合う二次元キャリアガスの間に間隔を設ける必要がない。そのことから、異種材料層32、42の厚みは、十分に小さくすることができる。これにより、半導体基板12の厚みを抑制しつつ、多くの二次元キャリアガス(2DHG又は2DEG)を生成させることによって、通電時の抵抗を低減することができる。
【0044】
本実施例の半導体装置10Aでは、上層20、中層22及び下層24がヒ化ガリウム(GaAs)で構成されており、異種材料層32、42がヒ化アルミニウムガリウム(GaAlAs)で構成されている。ここで、ヒ化アルミニウムガリウムは、ヒ化ガリウムと比較して、結晶成長させたときの不純物濃度が比較的に高いという問題がある。しかしながら、ヒ化アルミニウムガリウムで構成された異種材料層32、42が、ヒ化ガリウムで構成された上層20、中層22及び下層24よりも十分に薄いので、そのような不純物による影響を抑制することができる。これにより、例えば第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40におけるキャリア濃度の変動が抑制される。
【0045】
本実施例の半導体装置10Aでは、上述したように、ヒ化アルミニウムガリウムで構成された異種材料層32、42が、ヒ化ガリウムで構成された上層20、中層22及び下層24よりも十分に薄い。このような構成によると、二種類の半導体材料を交互に結晶成長させた場合でも、格子定数の違いに起因する歪の蓄積が抑制されるので、多層構造を有する半導体基板12を比較的に容易に製造することができる。
【0046】
(実施例2)図3図4を参照して、実施例2の半導体装置10Bについて説明する。本実施例の半導体装置10Bは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の構成が変更されている。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0047】
第1チャネル形成層30は、二つの異種材料層32を有する。各々の異種材料層32は、実施例1の半導体装置10Aと同じく、ヒ化アルミニウムガリウムで構成されており、かつ、p型の不純物が導入されている。二つの異種材料層32の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。即ち、第1チャネル形成層30は、第1の半導体材料と第2の半導体材料とが交互に積層された構造を有する。二つの異種材料層32の間隔は、異種材料層32の厚さと同程度であってよく、例えば3nm~50nmであってよい。各々の異種材料層32では、その両側に一対のヘテロ界面34が形成されている。従って、第1チャネル形成層30には、四つのヘテロ界面34が存在する。そして、各々のヘテロ界面34に沿って、二次元正孔ガス2DHGが生成される。ここで、二つの異種材料層32の間(即ち、隣接する二つのヘテロ界面34の間)では、二つの二次元正孔ガス2DHGが少なくとも部分的に重畳することで、見かけ上、一つの二次元正孔ガス2DHGが生成されてもよい。
【0048】
同様に、第2チャネル形成層40は、二つの異種材料層42を有する。各々の異種材料層42は、実施例1の半導体装置10Aと同じく、ヒ化アルミニウムガリウムで構成されており、かつ、n型の不純物が導入されている。二つの異種材料層42の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。即ち、第2チャネル形成層40についても、第1の半導体材料と第2の半導体材料とが交互に積層された構造を有する二つの異種材料層32の間隔は、異種材料層42の厚さと同程度であってよく、例えば3nm~50nmであってよい。各々の異種材料層42では、その両側に一対のヘテロ界面44が形成されている。従って、第2チャネル形成層40にも、四つのヘテロ界面44が存在する。そして、各々のヘテロ界面44に沿って、二次元電子ガス2DEGが生成される。ここで、二つの異種材料層42の間(即ち、隣接する二つのヘテロ界面44)の間では、二つの二次元電子ガス2DEGが少なくとも部分的に重畳することで、見かけ上、一つの二次元電子ガス2DEGが生成されてもよい。
【0049】
以上のように、本実施例の半導体装置10Bでは、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40との各々が、二つの異種材料層32、42を有しており、それによって多くの二次元正孔ガス2DHG又は二次元電子ガス2DEGが生成される。このような構成によると、ソース電極14とドレイン電極16との間が、多数の二次元電子ガス2DEGを介して接続されるので、通電時の抵抗がより低減される。なお、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40との各々は、三以上の異種材料層32、42を有してもよい。
【0050】
(実施例3)図5図7を参照して、実施例3の半導体装置10Cについて説明する。本実施例の半導体装置10Cは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、二次元正孔ガス2DHG及び二次元電子ガス2DEGの生成される位置が相違する。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0051】
第1チャネル形成層30では、異種材料層32にn型不純物が導入されており、この点において実施例1と相違する。従って、第1チャネル形成層30では、各々のヘテロ界面34に沿って二次元電子ガス2DEGが生成される。一方、第2チャネル形成層40では、異種材料層42にp型不純物が導入されている。従って、第2チャネル形成層40では、各々のヘテロ界面44に沿って二次元正孔ガス2DHGが生成される。
【0052】
ソース電極14及びドレイン電極16の各々は、半導体基板12の上面12aから第1チャネル形成層30まで延びており、第1チャネル形成層30に接している。これにより、ソース電極14及びドレイン電極16は、第1チャネル形成層30の二次元電子ガス2DEGを介して、互いに電気的に接続される。一方、ゲート電極18は、半導体基板12の上面12aから第1チャネル形成層30を通過して第2チャネル形成層40まで延びており、第2チャネル形成層40に接している。これにより、ゲート電極18は、第2チャネル形成層40の二次元正孔ガス2DHGと電気的に接続される。なお、ゲート電極18は、例えば絶縁領域19によって、第1チャネル形成層30から電気的に絶縁されている。
【0053】
特に限定されないが、図6図7に示すように、本実施例におけるゲート電極18は、リセスゲート部18Aと、ピラー部18Bとを有する。リセスゲート部18Aは、上層20内に設けられており、第1チャネル形成層30に対して平行に延びている。ピラー部18Bは、リセスゲート部18Aから第2チャネル形成層40まで延びており、第2チャネル形成層40と接している。即ち、ゲート電極18は、上層20から第1チャネル形成層30及び中層22を通過して第2チャネル形成層40まで延びており、かつ、上層20内で第1チャネル形成層30と対向している。このような構成によると、ソース電極14とドレイン電極16との間を接続する第1チャネル形成層30が、ゲート電極18のリセスゲート部18Aと、ゲート電極18に接続された第2チャネル形成層40との間を通過する。第1チャネル形成層30のキャリア濃度は、その通過する位置において有意に低下するので、半導体装置10Cのしきい値電圧が高くなる。これにより、半導体装置10Cは、ノーマリオフ型又はそれに近い動作を実現することができる。
【0054】
(実施例4)図8図9を参照して、実施例4の半導体装置10Dについて説明する。本実施例の半導体装置10Dは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料が変更されている。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0055】
本実施例の半導体装置10Dでは、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料に、i型のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(i-InGaAs)が採用されている。一方、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料については、実施例1と同じく、i型のヒ化ガリウム(i-GaAs)が採用されている。従って、本実施例の半導体装置10Dでは、第1の半導体材料(GaAs)のバンドギャップが、第2の半導体材料(InGaAs)のバンドギャップよりも広くなっている。
【0056】
上記したバンドギャップの大小関係によると、第1チャネル形成層30では、異種材料層32の内側に、二次元正孔ガス2DHGが形成される。そのことから、第1チャネル形成層30では、不純物の存在によって正孔の移動が阻害されないように、異種材料層32の外側にp型の不純物が導入されている。従って、異種材料層32の両側には、p型のヒ化ガリウム(p-GaAs)で構成された正孔供給層36が形成されている。同様に、第2チャネル形成層40でも、異種材料層42の内側に、二次元電子ガス2DEGが生成される。そのことから、第2チャネル形成層40では、不純物の存在によって電子の移動が阻害されないように、異種材料層42の外側にn型の不純物が導入されている。従って、異種材料層42の両側には、n型のヒ化ガリウム(n-GaAs)で構成された電子供給層46が形成されている。
【0057】
なお、第1の半導体材料及び第2の半導体材料は、上記の組み合わせに限定されない。例えば、第1の半導体材料は、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)であり、第2の半導体材料は、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)であってもよい。あるいは、第1の半導体材料は、InAlGa1-x-yAs(0<x<0.3,0<y<0.5)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムであり、第2の半導体材料は、InAlGa1-a-bAs(a>x,y>b)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムであってもよい。これらの組み合わせでも、第1の半導体材料のバンドギャップは、第2の半導体材料のバンドギャップよりも広くなる。
【0058】
本実施例の半導体装置10Dにおいても、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40との各々では、二以上の異種材料層32、42が、第1の半導体材料を介して積層されてもよい。また、実施例3の半導体装置10Cのように、第1チャネル形成層30に二次元電子ガス2DEGが生成され、第2チャネル形成層40に二次元正孔ガス2DHGが生成されるように構成されてもよい。また、上述した正孔供給層36や電子供給層46に加えて、又は代えて、異種材料層32、42にp型不純物又はn型不純物が導入されていてもよい。
【0059】
(実施例5)図10図12を参照して、実施例5の半導体装置10Eについて説明する。本実施例の半導体装置10Eは、実施例1の半導体装置10Aにおける構造、特に、上層20から下層24までの積層構造が、半導体基板12の厚み方向に沿って繰り返された構造を有する。このように、半導体装置10Eは、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40との組み合わせを、複数備えてもよい。この場合、ソース電極14及びドレイン電極16のそれぞれは、各々の第2チャネル形成層40に接するとともに、例えば絶縁領域15、17によって、各々の第1チャネル形成層30からは電気的に絶縁されるとよい。また、ゲート電極18は、各々の第1チャネル形成層30に接するとともに、例えば絶縁領域19によって、各々の第2チャネル形成層40からは電気的に絶縁されるとよい。
【0060】
本実施例の半導体装置10Eにおいて、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の具体的な構造は特に限定されない。第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40には、本明細書で開示される様々は構造を適宜に採用することができる。
【0061】
(実施例6)図13図14を参照して、実施例6の半導体装置10Fについて説明する。本実施例の半導体装置10Fは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の構成が変更されている。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0062】
第1チャネル形成層30は、一つの異種材料層32を有する。異種材料層32を構成する第2の半導体材料には、実施例1と同じく、ヒ化アルミニウムガリウムが採用されている。しかしながら、本実施例では、異種材料層32の内側にp型不純物が導入されておらず、異種材料層32の外側にp型不純物が導入されている。従って、異種材料層32は、i型のヒ化アルミニウムガリウム(i-AlGaAs)で構成されており、異種材料層32の両側に、p型のヒ化ガリウム(p-GaAs)で構成された正孔供給層36が形成されている。即ち、本実施例の第1チャネル形成層30では、異種材料層32の外側にp型不純物が導入されているとともに、異種材料層32の外側に二次元正孔ガス2DHGが生成される。なお、第1チャネル形成層30は、二以上の異種材料層32を有してもよい。
【0063】
同様に、第2チャネル形成層40は、一つの異種材料層42を有する。そして、異種材料層42は、i型のヒ化アルミニウムガリウム(i-AlGaAs)で構成されており、異種材料層42の両側に、n型のヒ化ガリウム(n-GaAs)で構成された電子供給層46が形成されている。即ち、第2チャネル形成層40においても、異種材料層42の外側にn型不純物が導入されているとともに、異種材料層32の外側に二次元電子ガス2DEGが生成される。第2チャネル形成層40についても、二以上の異種材料層42を有してもよい。
【0064】
(実施例7)図15図16を参照して、実施例7の半導体装置10Gについて説明する。本実施例の半導体装置10Gは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の構成が変更されている。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0065】
第1チャネル形成層30は、二つの異種材料層32を有する。各々の異種材料層32は、実施例1の半導体装置10Aと同じく、ヒ化アルミニウムガリウムで構成されており、かつ、p型の不純物が導入されている。隣接する二つの異種材料層32の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層32では、その両側に一対のヘテロ界面34が形成されており、第1チャネル形成層30には、四つのヘテロ界面34が存在する。そして、各々のヘテロ界面34に沿って、二次元正孔ガス2DHGが生成される。
【0066】
隣接する二つのヘテロ界面34の間隔は、3nm~20nmとなっており、比較的に小さい。このような構成によると、二つの異種材料層32の間(図中のX)では、二つの二次元正孔ガス2DHGが少なくとも部分的に重畳することで、キャリア濃度(即ち、正孔密度)の高い二次元正孔ガス2DHGが生成される。これにより、第1チャネル形成層30の優れた導電性(即ち、低抵抗)を維持しながら、第1チャネル形成層30の厚みを小さくすることができる。加えて、二つの異種材料層32の間(X)では、キャリア濃度の厚み方向における分布が均一化されるので、第1チャネル形成層30内に生じ得る最大電界強度が低減される。なお、第1チャネル形成層30は、三以上の異種材料層32を有してもよい。
【0067】
同様に、第2チャネル形成層40は、二つの異種材料層42を有する。各々の異種材料層42は、実施例1の半導体装置10Aと同じく、ヒ化アルミニウムガリウムで構成されており、かつ、n型の不純物が導入されている。隣接する二つの異種材料層42の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層42では、その両側に一対のヘテロ界面44が形成されており、第2チャネル形成層40には、四つのヘテロ界面44が存在する。そして、各々のヘテロ界面44に沿って、二次元電子ガス2DEGが生成される。
【0068】
隣接する二つのヘテロ界面44の間隔は、3nm~20nmとなっており、比較的に小さい。このような構成によると、二つの異種材料層42の間(図中のY)では、二つの二次元電子ガス2DEGが少なくとも部分的に重畳することで、キャリア濃度(即ち、電子密度)の高い二次元電子ガス2DEGが生成される。これにより、第2チャネル形成層40の優れた導電性(即ち、低抵抗)を維持しながら、第2チャネル形成層40の厚みを小さくすることができる。また、二つの異種材料層42の間(Y)では、キャリア濃度の厚み方向における分布が均一化されるので、第2チャネル形成層40内に生じ得る最大電界強度が低減される。第2チャネル形成層40もまた、三以上の異種材料層32を有してもよい。
【0069】
(実施例8)図17図18を参照して、実施例8の半導体装置10Hについて説明する。本実施例の半導体装置10Hは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の構成が変更されている。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0070】
第1チャネル形成層30は、二つの異種材料層32を有する。各々の異種材料層32は、i型のヒ化インジウムガリウム(i-InGaAs)で構成されている。隣接する二つの異種材料層32の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層32では、その両側に一対のヘテロ界面34が形成されており、第1チャネル形成層30には、四つのヘテロ界面34が存在する。そして、各々のヘテロ界面34に沿って、二次元正孔ガス2DHGが生成される。ここで、異種材料層32を構成するヒ化インジウムガリウムのバンドギャップは、上層20、中層22及び下層24等を構成する第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)のバンドギャップよりも狭い。従って、二次元正孔ガス2DHGは、異種材料層32の内側に生成される。なお、各々の異種材料層32の両側には、p型のヒ化ガリウム(p-GaAs)で構成された正孔供給層36が形成されている。なお、第1チャネル形成層30は、三以上の異種材料層32を有してもよい。
【0071】
各々の異種材料層32の厚み、即ち、隣接する二つのヘテロ界面34の間隔は、3nm~20nmとなっており、比較的に小さい。このような構成によると、異種材料層32の内側では、二つの二次元正孔ガス2DHGが少なくとも部分的に重畳することで、キャリア濃度(即ち、正孔密度)の高い二次元正孔ガス2DHGが生成される。これにより、第1チャネル形成層30の優れた導電性(即ち、低抵抗)を維持しながら、第1チャネル形成層30の厚みを小さくすることができる。また、全ての二次元正孔ガス2DHGにおいて、キャリア濃度が一様に高められることになるので、第1チャネル形成層30内に生じ得る最大電界強度をより低減することができる。その結果、半導体装置10Hの耐圧性が向上する。
【0072】
同様に、第2チャネル形成層40は、二つの異種材料層42を有する。各々の異種材料層42は、i型のヒ化インジウムガリウム(i-InGaAs)で構成されている。隣接する二つの異種材料層42の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層42では、その両側に一対のヘテロ界面44が形成されており、第2チャネル形成層40には、四つのヘテロ界面44が存在する。そして、各々のヘテロ界面44に沿って、二次元電子ガス2DEGが生成される。これらの二次元電子ガス2DEGは、異種材料層42の内側に生成される。なお、各々の異種材料層42の両側には、n型のヒ化ガリウム(n-GaAs)で構成された電子供給層46が形成されている。
【0073】
第2チャネル形成層40においても、各々の異種材料層32の厚み、即ち、隣接する二つのヘテロ界面44の間隔は、3nm~20nmとなっており、比較的に小さい。このような構成によると、異種材料層42の内側では、二つの二次元電子ガス2DEGが少なくとも部分的に重畳することで、キャリア濃度(即ち、電子密度)の高い二次元電子ガス2DEGが生成される。これにより、第2チャネル形成層40の優れた導電性(即ち、低抵抗)を維持しながら、第2チャネル形成層40の厚みを小さくすることができる。また、全ての二次元電子ガス2DEGにおいて、キャリア濃度が一様に高められることになるので、第2チャネル形成層40内に生じ得る最大電界強度をより低減することができる。その結果、半導体装置10Hの耐圧性が向上する。
【0074】
本実施例の半導体装置10Hにおいて、第1の半導体材料及び第2の半導体材料は、上記の組み合わせに限定されない。例えば、第1の半導体材料は、AlGa1-xAs(0<x<1)の組成式で表されるヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)であり、第2の半導体材料は、InGa1-yAs(0<y<0.5)の組成式で表されるヒ化インジウムガリウムであってもよい。あるいは、第1の半導体材料は、InAlGa1-x-yAs(0<x<0.3,0<y<0.5)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムであり、第2の半導体材料は、InAlGa1-a-bAs(a>x,y>b)の組成式で表されるヒ化インジウムアルミニウムガリウムであってもよい。これらの組み合わせでも、第1の半導体材料のバンドギャップは、第2の半導体材料のバンドギャップよりも広くなる。
【0075】
(実施例9)図19図20を参照して、実施例9の半導体装置10Iについて説明する。本実施例の半導体装置10Iは、実施例8の半導体装置10Hと比較して、ゲート電極18の構成が変更されている。以下では、実施例8との相違点を主に説明し、実施例8と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0076】
図20に示すように、本実施例の半導体装置10Iでは、ゲート電極18が上層20内に設けられており、上層20の一部を介して第1チャネル形成層30から隔離されている。このように、ゲート電極18は、第1チャネル形成層30(又は、第2チャネル形成層40)に必ずしも接する必要はない。ゲート電極18が第1チャネル形成層30から離れていても、ゲート電極18に電圧が印加されることでゲート電極18と第1チャネル形成層30とが電気的に結合され、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40を空乏化することができる。このようなゲート電極18の構成は、本明細書に記載された全ての実施例において採用することができる。
【0077】
(実施例10)図21図22を参照して、実施例10の半導体装置10Jについて説明する。本実施例の半導体装置10Jは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の構成が変更されている。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0078】
第1チャネル形成層30は、四つの異種材料層32を有する。各々の異種材料層32は、i型のヒ化インジウムガリウム(i-InGaAs)で構成されている。隣接する二つの異種材料層32の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層32では、その両側に一対のヘテロ界面34が形成されており、第1チャネル形成層30には、八つのヘテロ界面34が存在する。そして、各々のヘテロ界面34に沿って、二次元正孔ガス2DHGが生成される。ここで、異種材料層32を構成するヒ化インジウムガリウムのバンドギャップは、上層20、中層22及び下層24等を構成する第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)のバンドギャップよりも狭い。従って、二次元正孔ガス2DHGは、異種材料層32の内側に生成される。なお、各々の異種材料層32の両側には、p型のヒ化ガリウム(p-GaAs)で構成された正孔供給層36が形成されている。
【0079】
第1チャネル形成層30には、四つの二次元正孔ガス2DHGが生成される。その四つの二次元正孔ガス2DHGでは、第2チャネル形成層40までの距離が短い二次元正孔ガス2DHGほど、大きなキャリア濃度を有する。即ち、図22に示された四つの二次元正孔ガス2DHGでは、下方に位置する二次元正孔ガス2DHGほど、大きなキャリア濃度を有する。このようなキャリア濃度の分布を形成するためには、複数の正孔供給層36に対して不純物濃度に差を与えるとよい。二次元正孔ガス2DHGのキャリア濃度は、それに近接する正孔供給層36の不純物濃度に依存するので、第2チャネル形成層40までの距離が短い正孔供給層36ほど、その不純物濃度を大きくするとよい。
【0080】
同様に、第2チャネル形成層40は、四つの異種材料層42を有する。各々の異種材料層42は、i型のヒ化インジウムガリウム(i-InGaAs)で構成されている。隣接する二つの異種材料層42の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層42では、その両側に一対のヘテロ界面44が形成されており、第2チャネル形成層40には、八つのヘテロ界面44が存在する。そして、各々のヘテロ界面44に沿って、二次元電子ガス2DEGが生成される。これらの二次元電子ガス2DEGは、異種材料層42の内側に生成される。なお、各々の異種材料層42の両側には、n型のヒ化ガリウム(n-GaAs)で構成された電子供給層46が形成されている。
【0081】
第2チャネル形成層40においても、四つの二次元電子ガス2DEGが生成される。その四つの二次元電子ガス2DEGでは、第1チャネル形成層30までの距離が短い二次元電子ガス2DEGほど、大きなキャリア濃度を有する。即ち、図22に示された四つの二次元電子ガス2DEGでは、上方に位置する二次元電子ガス2DEGほど、大きなキャリア濃度を有する。このようなキャリア濃度の分布を形成するためには、複数の電子供給層46に対して不純物濃度に差を与えるとよい。二次元電子ガス2DEGのキャリア濃度のついては、それに近接する電子供給層46の不純物濃度に依存するので、第1チャネル形成層30までの距離が短い電子供給層46ほど、その不純物濃度を大きくするとよい。
【0082】
以上のように、本実施例の半導体装置10Jでは、複数の二次元正孔ガス2DHGと複数の二次元電子ガス2DEGとのそれぞれで、キャリア濃度に差が設けられている。このような構成によると、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の各々において、複数の二次元キャリアガスが空乏化されるときの時間差を抑制又は排除することができる。従って、半導体装置10Jのスイッチング速度(スイッチングに要する時間)を向上することができる。
【0083】
(実施例11)図23図24を参照して、実施例11の半導体装置10Kについて説明する。本実施例の半導体装置10Kは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、いくつかの点で変更されている。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0084】
本実施例の半導体装置10Kでは、第1の半導体材料に、i型のヒ化アルミニウムガリウム(i-AlGaAs)が採用されており、第2の半導体材料に、i型のヒ化ガリウム(i-GaAs)が採用されている。即ち、上層20、中層22及び下層24は、i型のヒ化ガリウムで構成されており、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の異種材料層32、42は、i型のヒ化アルミニウムガリウム(i-GaAs)で構成されている。第1チャネル形成層30では、異種材料層32の両側に沿って、一対の正孔供給層36が形成されている。各々の正孔供給層36は、p型不純物が導入された第1の半導体材料(即ち、p-AlGaAs)で構成されている。
【0085】
第2チャネル形成層40では、異種材料層42の両側に沿って、一対の電子供給層46が形成されている。各々の電子供給層46は、n型不純物が導入された第1の半導体材料(即ち、n-AlGaAs)で構成されている。ここで、一対の電子供給層46では、n型不純物の濃度が互いに相違する。詳しくは、ゲート電極18に近い方(即ち、図24において上側)の電子供給層46の方が、ゲート電極18に遠い方(即ち、図24において下側)の電子供給層46よりも、n型不純物が高くなっている。
【0086】
本実施例では、第1の半導体材料がヒ化アルミニウムガリウムであり、第2の半導体材料がヒ化ガリウムであるので、第1の半導体材料のバンドギャップが、第2の半導体材料のバンドギャップよりも広くなっている。従って、第1チャネル形成層30では、異種材料層32の両側に形成されたヘテロ界面34に沿って、二次元正孔ガス2DHGが異種材料層32の内側に形成される。同様に、第2チャネル形成層40では、異種材料層42の両側に形成されたヘテロ界面44に沿って、二次元電子ガス2DEGが異種材料層42の内側に形成される。なお、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の各々は、二以上の異種材料層32、42を有し、第1の半導体材料で構成された正孔供給層36又は電子供給層46と、第2の半導体材料で構成された異種材料層32、42とが交互に積層された構造を有してもよい。
【0087】
ゲート電極18は、上層20から第1チャネル形成層30を通過して、中層22まで延びている。これにより、ゲート電極18から第2チャネル形成層40までの距離が、第1チャネル形成層30から第2チャネル形成層40までの距離よりも短くなっている。このような構成によると、例えば高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)におけるリセスゲート構造のように、ゲート電極18に近接する位置(図24中のZ)では、二次元電子ガス2DEGにおけるキャリア濃度を低下させることができる。これにより、しきい値電圧(電流を遮断するために必要なゲート電圧)が高くなるので、半導体装置10Kは、ノーマリオフ型又はそれに近い動作を実現することができる。
【0088】
加えて、本実施例の第2チャネル形成層40では、前述したように、一対の電子供給層46においてn型不純物の濃度に差が設けられており、ゲート電極18までの距離が近い電子供給層46ほど、その不純物濃度が大きくなっている。このような構成によると、第2チャネル形成層40では、ゲート電極18までの距離が短い二次元電子ガス2DEGほど、大きなキャリア濃度を有するように、二つの二次元電子ガス2DEGが生成される。これにより、ゲート電極に近接する位置Zにおいて、複数の二次元電子ガス2DEGの各キャリア濃度を均等に低下させることができ、しきい値電圧をより高くすることができる。
【0089】
(実施例12)図25図27を参照して、実施例12の半導体装置10Lについて説明する。本実施例の半導体装置10Lは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、いくつかの点で相違する。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0090】
本実施例の半導体装置10Lでは、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料に、i型のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(i-InGaAs)が採用されている。一方、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料については、実施例1と同じく、i型のヒ化ガリウム(i-GaAs)が採用されている。従って、本実施例の半導体装置10Dでは、第1の半導体材料(GaAs)のバンドギャップは、第2の半導体材料(InGaAs)のバンドギャップよりも広くなっている。
【0091】
第1チャネル形成層30は、複数の異種材料層32を有する。隣接する二つの異種材料層32の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層32の両側には、n型不純物が導入された電子供給層36が形成されている。即ち、電子供給層36は、n型のヒ化ガリウム(n-GaAs)で構成されており、i型のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(i-InGaAs)で構成された異種材料層32に接している。従って、各々の異種材料層32では、その両側に一対のヘテロ界面34が形成され、各々のヘテロ界面34に沿って、二次元電子ガス2DEGが生成される。前述したように、ヒ化インジウムガリウムのバンドギャップは、ヒ化ガリウムのバンドギャップよりも狭いので、二次元電子ガス2DEGは異種材料層32の内側に生成される。
【0092】
同様に、第2チャネル形成層40は、複数の異種材料層42を有する。隣接する二つの異種材料層42の間には、第1の半導体材料(即ち、ヒ化ガリウム)で構成された層が介在している。各々の異種材料層42の両側には、p型不純物が導入された正孔供給層46が形成されている。即ち、正孔供給層46は、p型のヒ化ガリウム(p-GaAs)で構成されており、i型のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(i-InGaAs)で構成された異種材料層42に接している。従って、各々の異種材料層42では、その両側に一対のヘテロ界面44が形成され、各々のヘテロ界面44に沿って、二次元正孔ガス2DHGが生成される。この二次元正孔ガス2DHGについても、異種材料層42の内側に生成される。
【0093】
ソース電極14及びドレイン電極16の各々は、半導体基板12の上面12aから第1チャネル形成層30まで延びており、第1チャネル形成層30に接している。これにより、ソース電極14及びドレイン電極16は、第1チャネル形成層30の二次元電子ガス2DEGを介して、互いに電気的に接続される。一方、ゲート電極18は、半導体基板12の上面12aから第2チャネル形成層40まで延びており、第2チャネル形成層40に接している。これにより、ゲート電極18は、第2チャネル形成層40の二次元正孔ガス2DHGと電気的に接続される。なお、ゲート電極18は、例えば絶縁領域19によって、第1チャネル形成層30から電気的に絶縁されている。
【0094】
ここで、本実施例におけるゲート電極18は、リセスゲート部18Aと、ピラー部18Bとを有する。リセスゲート部18Aは、上層20内に設けられており、第1チャネル形成層30に対して平行に延びている。ピラー部18Bは、リセスゲート部18Aから第2チャネル形成層40まで延びており、第2チャネル形成層40と接している。即ち、ゲート電極18は、上層20から第1チャネル形成層30及び中層22を通過して第2チャネル形成層40まで延びており、かつ、上層20内で第1チャネル形成層30と対向している。このような構成によると、ソース電極14とドレイン電極16との間を接続する第1チャネル形成層30が、ゲート電極18のリセスゲート部18Aと、ゲート電極18に接続された第2チャネル形成層40との間を通過する。第1チャネル形成層30のキャリア濃度は、その通過する位置において有意に低下するので、半導体装置10Lのしきい値電圧が高くなる。これにより、半導体装置10Lは、ノーマリオフ型又はそれに近い動作を実現することができる。
【0095】
加えて、第1チャネル形成層30では、複数の二次元電子ガス2DEGにおいて、キャリア濃度に差を設けてもよい。詳しくは、上下の両側に位置する各二次元電子ガス2DEGが、それらの間に位置する少なくとも一つの二次元電子ガス2DEGよりも、大きなキャリア濃度を有してもよい。即ち、ゲート電極18又は第2チャネル形成層40までの距離が短い二次元電子ガス2DEGほど、大きなキャリア濃度を有してもよい。このような構成によると、複数の二次元電子ガス2DEGの各キャリア濃度を均等に低下させることができ、しきい値電圧をより高くすることができる。
【0096】
(実施例13)図28図30を参照して、実施例13の半導体装置10Mについて説明する。本実施例の半導体装置10Mは、実施例1の半導体装置10Aと比較して、上部バッファ層50、上部電位固定層52、下部バッファ層60及び下部電位固定層62をさらに備える。以下では、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0097】
上部バッファ層50は、半導体基板12において上層20の上に位置しており、上層20と保護膜2との間に介在している。上部バッファ層50は、絶縁性又は半絶縁性を有する材料で構成されている。上部バッファ層50を構成する材料は、特に限定されないが、例えばi型のヒ化ガリウム(即ち、第1の半導体材料)であってよい。上部電位固定層52は、上部バッファ層50と上層20との間に位置するとともに、1×1012/cm以上の界面準位濃度を有する。なお、上部電位固定層52の厚みは、例えば1nm~10um程度の厚みであってもよく、あるいは、数原子層以下の厚みであってもよい。
【0098】
半導体基板12が上部電位固定層52を有していると、上部電位固定層52よりも上方の構造にかかわらず、上層20における電位(電界強度)を固定することができる。これにより、第1チャネル形成層30におけるチャネル濃度を、所望の値で安定させることができる。従って、上部電位固定層52よりも上方には、例えば保護膜2といった付加的な構造を自由に設けることができ、その際に第1チャネル形成層30や第2チャネル形成層40への影響を考慮する必要がない。
【0099】
下部バッファ層60は、半導体基板12において下層24の下に位置しており、下層24と支持基板4との間に介在している。下部バッファ層60は、絶縁性又は半絶縁性を有する材料で構成されている。下部バッファ層60を構成する材料は、特に限定されないが、例えばi型のヒ化ガリウム(即ち、第1の半導体材料)であってよい。下部電位固定層62は、下部バッファ層60と下層24との間に位置するとともに、1×1012/cm以上の界面準位濃度を有する。なお、下部電位固定層62の厚みは、例えば1nm~10um程度の厚みであってもよく、あるいは、数原子層以下の厚みであってもよい。
【0100】
上述した上部電位固定層52と同様に、半導体基板12が下部電位固定層62を有していると、下部電位固定層62よりも下方の構造にかかわらず、下層24における電位(電界強度)を固定することができる(図30参照)。これにより、第2チャネル形成層40におけるチャネル濃度を、所望の値で安定させることができる。また、上部電位固定層52との組み合わせにより、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40との間でチャネル濃度をバランスさせることができる。従って、下部電位固定層62よりも下には、例えば支持基板4といった付加的な構造を自由に設けることができ、その際に第1チャネル形成層30や第2チャネル形成層40への影響を考慮する必要がない。
【0101】
上部電位固定層52及び下部電位固定層62の具体的な構成は、特に限定されない。例えば、上部電位固定層52及び下部電位固定層62の各々は、炭素(C)、酸素(O)又は鉄(Fe)等の不純物が導入されたIII-V族化合物半導体で構成されていてもよい。この場合、そのIII-V族化合物半導体としては、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、又は窒化ガリウムと窒化アルミニウムガリウムとの超格子層であってもよい。この場合、上部電位固定層52及び下部電位固定層62の厚みは、1nm~10um程度とすることができる。
【0102】
他の例として、上部電位固定層52及び下部電位固定層62の各々は、炭素、酸素又は鉄といった不純物が、デルタドーピングされたものであってもよい。あるいは、界面の凹凸といった、数原子層以下の結晶格子の乱れであってもよい。上記した界面準位濃度の数値的要件が満たされる限り、上部電位固定層52及び下部電位固定層62の構成は特に限定されず、例えば、酸化シリコン(SiO)で構成された保護膜2との界面であってもよい。上部電位固定層52及び下部電位固定層62の界面準位濃度は、半導体基板12の製造が完成した後に、外部から調整することもできる。例えば、界面準位濃度を上昇させるためには、半導体基板12に対して紫外線又はプラズマを照射するとよい。あるいは、界面準位濃度を低下させるためには、ランプアニールやレーザーアニールといった熱処理を行うとよい。
【0103】
(実施例14)図31図32を参照して、実施例14の半導体装置10Nについて説明する。本実施例の半導体装置10Nは、実施例13の半導体装置10Mと比較して、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の構成が変更されている。以下では、実施例13との相違点を主に説明し、実施例13と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0104】
本実施例の半導体装置10Nでは、本実施例の半導体装置10Nでは、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料に、ヒ化インジウムアルミニウムガリウム(InGaAs)が採用されている。一方、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料については、実施例13と同じく、i型のヒ化ガリウム(i-GaAs)が採用されている。従って、本実施例の半導体装置10Nでは、第1の半導体材料(GaAs)のバンドギャップが、第2の半導体材料(InGaAs)のバンドギャップよりも広くなっている。なお、第1チャネル形成層30の異種材料層32には、p型不純物が導入されており、p型のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(p-InGaAs)は、正孔を供給する正孔供給層としても機能する。また、第2チャネル形成層40の異種材料層42には、n型不純物が導入されており、n型のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(n-InGaAs)は、電子を供給する電子供給層としても機能する。
【0105】
上記した構成によると、第1チャネル形成層30では、一対のヘテロ界面34に沿って、二次元正孔ガス2DHGが異種材料層32の内側に生成される。このとき、異種材料層32の厚みが3~20nm程度であると、二つのヘテロ界面34に沿って生成された二つの二次元正孔ガス2DHGが、少なくとも部分的に重畳することによって、見かけ上、一つの二次元正孔ガス2DHGを形成する。同様に、第2チャネル形成層40では、一対のヘテロ界面44に沿って、二次元電子ガス2DEGが異種材料層42の内側に生成される。そして、異種材料層42の厚みが3~20nm程度であると、二つのヘテロ界面44に沿って形成された二つの二次元電子ガス2DEGが、少なくとも部分的に重畳することによって、見かけ上、一つの二次元電子ガス2DEGを生成する。
【0106】
(実施例15)図33図34を参照して、実施例15の半導体装置10Pについて説明する。本実施例の半導体装置10Pは、実施例13の半導体装置10Mと比較して、いくつかの点で相違する。以下では、実施例13との相違点を主に説明し、実施例13と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0107】
第1チャネル形成層30は、一つの異種材料層32を有する。異種材料層32を構成する第2の半導体材料には、実施例1と同じく、ヒ化アルミニウムガリウムが採用されている。但し、本実施例の第1チャネル形成層30では、異種材料層32にn型不純物が導入されており、各々のヘテロ界面34に沿って、二次元電子ガス2DEGが生成されるように構成されている。ゲート電極18は、第1チャネル形成層30に接しており、その二次元電子ガス2DEGと電気的に接続される。そのことから、ゲート電極18は、特に限定されないが、n型のヒ化ガリウム(n-GaAs)といった、n型半導体で構成されている。また、ゲート電極18は、例えば絶縁領域19によって、第1チャネル形成層30から電気的に絶縁されている。なお、第1チャネル形成層30は、二以上の異種材料層32を有してもよい。
【0108】
同様に、第2チャネル形成層40は、一つの異種材料層42を有する。この異種材料層42を構成する第2の半導体材料にも、ヒ化アルミニウムガリウムが採用されている。但し、本実施例の第2チャネル形成層40では、異種材料層42にp型不純物が導入されており、各々のヘテロ界面44に沿って、二次元正孔ガス2DHGが生成されるように構成されている。ソース電極14及びドレイン電極16は、第1チャネル形成層30に接しており、その二次元正孔ガス2DHGを介して互いに接続されている。そのことから、ソース電極14及びドレイン電極16は、特に限定されないが、p型のヒ化ガリウム(p-GaAs)といった、p型半導体で構成されている。なお、第2チャネル形成層40についても、二以上の異種材料層42を有してもよい。
【0109】
本実施例の半導体装置10Pでは、ソース電極14及びドレイン電極16が、第1チャネル形成層30の二次元電子ガス2DEGを介して、互いに電気的に接続される。一方、ゲート電極18は、第2チャネル形成層40の二次元正孔ガス2DHGと電気的に接続される。このような構成であっても、ゲート電極18に与える電圧を調節することで、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40を空乏化させたり、それらに二次元電子ガス2DEG及び二次元正孔ガス2DHGを生成させたりすることができる。これにより、ソース電極14とドレイン電極16との間を電気的に接続したり、遮断したりすることができる。なお、ソース電極14とドレイン電極16との間が、一又は複数の二次元正孔ガス2DHGを介して互いに接続される構成は、本明細書に開示された他の実施例においても同様に採用することができる。
【0110】
(実施例16)図35図37を参照して、実施例16の半導体装置10Qについて説明する。本実施例の半導体装置10Qは、実施例12の半導体装置10Lと比較して、上部バッファ層50、上部電位固定層52、下部バッファ層60及び下部電位固定層62をさらに備える。このように、上部電位固定層52及び下部電位固定層62は、本明細書に開示されたいずれの実施例においても付加することができる。なお、本実施例の半導体装置10Qでは、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の各々が、複数の異種材料層32、42を有している。しかしながら、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40の各々は、少なくとも一つの異種材料層32、42を有すればよい。
【0111】
(実施例17)図38図39を参照して、実施例17の半導体装置10Rについて説明する。本実施例の半導体装置10Rは、実施例13の半導体装置10Mと比較して、ソース電極14、ドレイン電極16及びゲート電極18の位置が変更されている。また、第1チャネル形成層30が、二次元電子ガス2DEGを生成し、第2チャネル形成層40が、二次元正孔ガス2DHGを生成するように構成されており、この点においても実施例13の半導体装置10Mと相違する。以下では、実施例13との相違点を主に説明し、実施例13と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0112】
第1チャネル形成層30では、異種材料層32にn型不純物が導入されており、この点において実施例13と相違する。従って、第1チャネル形成層30では、各々のヘテロ界面34に沿って二次元電子ガス2DEGが生成される。一方、第2チャネル形成層40では、異種材料層42にp型不純物が導入されている。従って、第2チャネル形成層40では、各々のヘテロ界面34に沿って二次元正孔ガス2DHGが生成される。なお、実施例1で説明したように、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料は、ヒ化ガリウム(GaAs)であり、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料は、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)である。
【0113】
ソース電極14及びドレイン電極16の各々は、半導体基板12の上面12aから第1チャネル形成層30まで延びており、第1チャネル形成層30に接している。これにより、ソース電極14及びドレイン電極16は、第1チャネル形成層30の二次元電子ガス2DEGを介して、互いに電気的に接続される。一方、ゲート電極18は、半導体基板12の上面12aに設けられたリセス12bに位置しており、当該リセス12bの底面から第2チャネル形成層40まで延びている。これにより、ゲート電極18は、第2チャネル形成層40の二次元正孔ガス2DHGと電気的に接続される。リセス12bは、上層20から中層22まで延びており、中層22を露出している。ゲート電極18をリセス12bに設けることで、ゲート電極18を第1チャネル形成層30から容易に絶縁することができる。
【0114】
なお、ゲート電極18をリセス12bに設ける構造は、本明細書に開示された他のいくつかの実施例においても、同様に採用することができる。また、リセス12b及びゲート電極18の数は、一つに限られず、それらが複数設けられてもよい。また、本実施例の半導体装置10Rにおいて、上部バッファ層50、上部電位固定層52、下部バッファ層60及び下部電位固定層62は必ずしも必要とされない。
【0115】
(実施例18)図40図41を参照して、実施例18の半導体装置10Sについて説明する。本実施例の半導体装置10Sは、実施例13の半導体装置10Mと比較して、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料が変更されている。以下では、実施例13との相違点を主に説明し、実施例13と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0116】
本実施例の半導体装置10Sでは、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料に、i型のヒ化インジウムアルミニウムガリウム(i-InGaAs)が採用されている。一方、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料については、実施例13と同じく、i型のヒ化ガリウム(i-GaAs)が採用されている。従って、本実施例の半導体装置10Sでは、第1の半導体材料(GaAs)のバンドギャップが、第2の半導体材料(InGaAs)のバンドギャップよりも広くなっている。
【0117】
上記したバンドギャップの大小関係によると、第1チャネル形成層30では、異種材料層32の内側に、二次元正孔ガス2DHGが形成される。そのことから、第1チャネル形成層30では、不純物の存在によって正孔の移動が阻害されないように、異種材料層32の外側にp型の不純物が導入されている。従って、異種材料層32の両側には、p型のヒ化ガリウム(p-GaAs)で構成された正孔供給層36が形成されている。同様に、第2チャネル形成層40でも、異種材料層42の内側に、二次元電子ガス2DEGが生成される。そのことから、第2チャネル形成層40では、不純物の存在によって電子の移動が阻害されないように、異種材料層42の外側にn型の不純物が導入されている。従って、異種材料層42の両側には、n型のヒ化ガリウム(n-GaAs)で構成された電子供給層46が形成されている。
【0118】
ここで、本実施例の半導体装置10Sは、実施例4の半導体装置10Dに対して、上部バッファ層50、上部電位固定層52、下部バッファ層60及び下部電位固定層62を付加したものでもある。実施例4で説明したように、本実施例の半導体装置10Sにおいても、第1の半導体材料及び第2の半導体材料は、上記した組み合わせに限定されない。
【0119】
(実施例19)図42図43を参照して、実施例19の半導体装置10Tについて説明する。本実施例の半導体装置10Tは、実施例13の半導体装置10Mと比較して、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料と、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料が、それぞれ変更されている。以下では、実施例13との相違点を主に説明し、実施例13と共通する構成については、同一の符号を付すことによって重複する説明を省略する。
【0120】
本実施例の半導体装置10Tでは、上層20、中層22及び下層24のそれぞれが、i型の窒化ガリウム(i-GaN)で構成されている。一方、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料には、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)が採用されている。窒化ガリウムのバンドギャップは、窒化アルミニウムガリウムのバンドギャップよりも狭い。従って、第1チャネル形成層30では、異種材料層32の外側に二次元正孔ガス2DHGが生成されるので、異種材料層32の内部にp型の不純物が導入されている。同様に、第2チャネル形成層40では、異種材料層42の外側に二次元電子ガス2DEGが生成されるので、異種材料層42の内部にn型の不純物が導入されている。また、支持基板4については、特に限定されないが、絶縁性を有する炭化ケイ素(SiC)の基板が採用されている。但し、支持基板4は、炭化ケイ素(SiC)の基板に限られず、シリコン(Si)又は窒化ガリウム(GaN)の基板であってもよい。
【0121】
(実施例20)図44図45を参照して、実施例19の半導体装置10Tについて説明する。本実施例の半導体装置10Tは、タイオードとして機能するものであり、この点において上述した実施例の半導体装置10A-10Sと相違する。
【0122】
図42図43に示すように、半導体装置10Tは、半導体基板12と、半導体基板12に設けられたアノード電極14’及びカソード電極16’とを備える。アノード電極14’及びカソード電極16’は、特に限定されないが、半導体基板12の上面12aに形成されたトレンチ内に設けられている。アノード電極14’及びカソード電極16’は、導電性を有する材料で形成されている。一例ではあるが、アノード電極14’は、p型半導体(例えばp-GaAs)で構成されてもよく、カソード電極16’は、n型半導体(例えばn-GaAs)で構成されてもよい。
【0123】
半導体基板12は、第1の半導体材料で構成された上層20、中層22及び下層24と、上層20と中層22との間に位置する第1チャネル形成層30と、中層22と下層24との間に位置する第2チャネル形成層40とを備える。上層20、中層22及び下層24は、i型の窒化ガリウム(i-GaN)で構成されている。なお、上層20、中層22及び下層24を構成する第1の半導体材料には、上述した様々な実施例から理解されるように、様々な半導体材料を採用することができる。
【0124】
第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40との各々は、一又は複数の異種材料層32、42を有してもよい。各々の異種材料層32、42は、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)で構成されている。なお、異種材料層32、42を構成する第2の半導体材料についても、上述した様々な実施例から理解されるように、様々な半導体材料を採用することができる。一又は複数の異種材料層32、42の各々の厚みは、上層20、中層22及び下層24の厚みよりも十分に小さい。第1チャネル形成層30では、一又は複数の異種材料層32の各々の両側に、一対のヘテロ界面34が形成されており、各々のヘテロ界面34に沿って二次元正孔ガス2DHGが生成される。第2チャネル形成層40では、一又は複数の異種材料層42の各々の両側に、一対のヘテロ界面44が形成されており、各々のヘテロ界面44に沿って二次元電子ガス2DEGが生成される。
【0125】
アノード電極14’は、第1チャネル形成層30に接触しており、第1チャネル形成層30内の二次元正孔ガス2DHGと電気的に接続される。カソード電極16’は、第2チャネル形成層40に接触しており、第2チャネル形成層40内の二次元電子ガス2DEGと電気的に接続される。ここで、カソード電極16’は、半導体基板12の上面12aに形成されたリセス12b内に位置しており、リセス12bの底面から第2チャネル形成層40まで延びている。
【0126】
以上の構成により、本実施例の半導体装置10Tでは、アノード電極14’とカソード電極16’との間に、PINダイオード(p-intrinsic-n diode)に類する構造が形成されている。従って、カソード電極16’に対してアノード電極14’に正電圧が印加されると、アノード電極14’とカソード電極16’との間が電気的に接続される。このとき、第1チャネル形成層30では二次元正孔ガス2DHGを正孔が高速で移動し、第2チャネル形成層40では二次元電子ガス2DEGを電子が高速で移動するので、通電時の抵抗が有意に抑制される。
【0127】
一方、カソード電極16’に対してアノード電極14’に負電圧が印加されると、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40が空乏化されることによって、カソード電極16’とアノード電極14’との間が電気的に絶縁される。ここで、第1チャネル形成層30と第2チャネル形成層40とが対向する方向(図45における上下方向)は、アノード電極14’とカソード電極16’とを結ぶ方向(図45における左右方向)に対して略直交している。従って、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40が空乏化されたときに、それに起因する電界も、アノード電極14’とカソード電極16’とが並ぶ方向に対して略直交する方向に発生する。この場合、いわゆるスーパージャンクション構造と同様に、アノード電極14’とカソード電極16’との間で電界強度が一様となることから、この半導体装置10Uは、高い耐圧を実現することができる。
【0128】
半導体装置10Uの構成は、様々に変更することができる。例えば、アノード電極14’が第2チャネル形成層40と接するとともに、カソード電極16’が第1チャネル形成層30と接するように構成されてもよい。この場合、第1チャネル形成層30は、二次元電子ガス2DEGが生成されるように構成するとよく、第2チャネル形成層40は、二次元正孔ガス2DHGが生成されるように構成するとよい。また、第1チャネル形成層30及び第2チャネル形成層40は、二以上の異種材料層32、42を有してもよい。本実施例における半導体基板12には、上述した実施例1-19における半導体基板12の構成を単独で、又は様々な組み合わせで採用することができる。
【0129】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0130】
2:保護膜
4:支持基板
10A-10U:半導体装置
12:半導体基板
14:ソース電極
14’:アノード電極
16:ドレイン電極
16’:カソード電極
18:ゲート電極
20:上層
22:中層
24:下層
30:第1チャネル形成層
32:第1チャネル形成層の異種材料層
34:第1チャネル形成層のヘテロ界面
36:第1チャネル形成層の正孔供給層又は電子供給層
40:第2チャネル形成層
42:第2チャネル形成層の異種材料層
44:第2チャネル形成層のヘテロ界面
46:第2チャネル形成層の正孔供給層又は電子供給層
50:上部バッファ層
52:上部電位固定層
60:下部バッファ層
62:下部電位固定層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45