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特許7274206アイソレーター装置、及びフィルター部を取り付ける方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】アイソレーター装置、及びフィルター部を取り付ける方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20220101AFI20230509BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20230509BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B01D46/00 C
B01L1/00 D
F24F7/06 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019121142
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006338
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000152181
【氏名又は名称】株式会社奈良機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌文
(72)【発明者】
【氏名】烝原 健一
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-013520(JP,U)
【文献】実開昭58-014929(JP,U)
【文献】特開平04-106283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0290120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-49/90
B01L 1/00
F24F 7/06
B25J 21/02
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、押し当て部材と、ボルトと、ボルト支持体とを有するフィルター収容部と、
前記フィルター収容部が天井部に取り付けられるアイソレーター本体とを備え、
前記ボルト支持体は、前記ケーシングに対して直接又は間接的に固定され、
前記ボルトは、先端部と、ネジ山が形成された軸部と、頭部とを有し、
前記ボルトは、前記ボルト支持体を貫通して前記ボルト支持体にネジ止め可能であり、
前記先端部は、前記押し当て部材の穴を遊貫し、
前記ボルト支持体に対して前記ボルトを締めることで、前記ボルトに設けられた押さえ部が、前記押し当て部材を介して、フィルター本体を含むフィルター部を押し上げ、前記ケーシング又はケーシング内の仕切り部材と前記押し当て部材によって前記フィルター部が挟持され、
前記ケーシングの内側には、前記フィルター部の位置決め部材が設けられ、
前記位置決め部材は、前記フィルター部を所定の位置に誘導する斜面を有し、
前記斜面は、前記フィルター部と対向することを特徴とするアイソレーター装置。
【請求項2】
前記押し当て部材は、断面が溝形の形状を有することを特徴とする請求項1に記載のアイソレーター装置。
【請求項3】
前記押し当て部材は、断面がリップ溝形の形状を有することを特徴とする請求項1に記載のアイソレーター装置。
【請求項4】
1つの前記押し当て部材が、1つの前記フィルター部を押し上げることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のアイソレーター装置。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記仕切り部材に取り付けられることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のアイソレーター装置。
【請求項6】
前記位置決め部材は、樹脂プレートであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のアイソレーター装置。
【請求項7】
前記位置決め部材を挟む位置関係で、複数の前記フィルター部が挟持されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のアイソレーター装置。
【請求項8】
前記押し当て部材は、棒状部材であり、前記押し当て部材の穴としての第1ダルマ穴と第2ダルマ穴を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のアイソレーター装置。
【請求項9】
前記第1ダルマ穴の脱着穴と締付穴が並べられる方向と、前記第2ダルマ穴の脱着穴と締付穴が並べられる方向は、略直交することを特徴とする請求項8に記載のアイソレーター装置。
【請求項10】
前記先端部は、先端皿部と先端円筒部とを有し、
前記先端皿部の直径は、前記第1ダルマ穴及び前記第2ダルマ穴の締付穴の直径よりも大きく、前記第1ダルマ穴及び前記第2ダルマ穴の脱着穴の直径よりも小さく、
前記先端円筒部の直径は、前記第1ダルマ穴及び前記第2ダルマ穴の締付穴の直径よりも小さいことを特徴とする請求項9に記載のアイソレーター装置。
【請求項11】
前記フィルター本体は、HEPAフィルターを含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のアイソレーター装置。
【請求項12】
前記押さえ部は、前記軸部の先端部側の端部、又前記軸部の先端部側の端部に設けられた部材であって、前記先端部に貫通され軸部の端部に配置された部材、若しくは前記軸部の先端部側の端部に設けられた部材であって、前記軸部の先端部側端部に一体的に形成された部材であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のアイソレーター装置。
【請求項13】
ケーシングと、押し当て部材と、ボルトと、ボルト支持体とを備えたフィルター収容部に、フィルター本体を含むフィルター部を取り付ける方法であって、
前記ボルト支持体は、前記ケーシングに対して直接又は間接的に固定され、
前記ボルトは、先端部と、ネジ山が形成された軸部と、頭部とを有し、
前記ボルトは、前記ボルト支持体を貫通して前記ボルト支持体にネジ止め可能であり、
前記先端部は、前記押し当て部材の穴を遊貫し、
前記フィルター収部は、アイソレーター本体の天井部に取り付けられ、
前記ケーシングの内側には、前記フィルター部の位置決め部材が設けられ、
前記ケーシング若しくは前記ケーシングに取り付けられた部材と、前記押し当て部材の間に、前記フィルター部を配置させる第1ステップと、
前記ボルト支持体に対して前記ボルトを締めることで、前記ボルトに設けられた押さえ部が、前記押し当て部材を介して、前記フィルター部を押し上げ、前記ケーシング又はケーシング内の仕切り部材と前記押し当て部材によって前記フィルター部が挟持される第2ステップとを備え、
前記位置決め部材は、前記第2ステップにおいて、前記フィルター部を所定の位置に誘導する斜面を有し、
前記斜面は、前記フィルター部と対向することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター収容部などに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品原薬をはじめとする高活性物質や毒性物質、又は放射性物質等の危険物質を取り扱う際、作業員の安全性を確保するために、各種の処理を行う装置を外界から隔離したボックス内に封じ込めて、計量、小分け、充填、分析から、粉砕、混合、造粒、乾燥などのあらゆるプロセスの作業が行われている。
【0003】
外界から隔離された状況下でも前述の作業が可能となるように、チャンバーの正面等に筒状のグローブポートを設け、グローブポートを通して、チャンバーの内部に手が入れられるように設計されたアイソレーター装置が用いられている。
【0004】
アイソレーター装置には、フィルター部を有する吸気系ユニットなどを設ける必要がある。フィルター部には高性能のHEPAフィルターが用いられるが、フィルターの濾過面積を確保するため、フィルター部は一定以上の大きさが必要である。
フィルター部は長期間使用すると目詰まりするので定期的に交換する必要がある。
【0005】
特許文献1は、吸気系ユニットを上方に設けたアイソレーター装置を開示している。しかしながら、特許文献1には吸気系ユニットのフィルター部の着脱に関する詳細は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-00576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、フィルター交換に関わる操作を片手で実行可能とすることで、設置場所を問わずに簡単にフィルター部の取り付けが可能なフィルター収容部などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフィルター収容部は、ケーシングと、押し当て部材と、ボルトと、ボルト支持体とを備える。ボルト支持体は、ケーシングに対して直接又は間接的に固定される。ボルト支持体は、ケーシングに対する配置が固定されていればよく、ケーシングの内壁やフランジに直接固定してもよいし、フランジ以外の被締結体(不図示)に固定してもよい。ボルトは、先端部と、ネジ山が形成された軸部と、頭部とを有する。ボルトは、ボルト支持体を貫通してボルト支持体にネジ止め可能である。先端部は、押し当て部材の穴を遊貫する。ボルト支持体に対してボルトを締めることで、ボルトに設けられた押さえ部が、押し当て部材を介して、フィルター本体を含むフィルター部を押し込み、ケーシング又はケーシング内に設けられた仕切り部材と押し当て部材によってフィルター部が挟持される。
【0009】
押さえ部は、(ア)軸部の先端部側の端部、又は(イ)軸部の先端部側端部に設けられた部材であって、先端部に貫通され軸部の端部に配置された部材、若しくは(ウ)軸部の先端部側端部に設けられた部材であって、軸部の先端部側端部に一体的に形成された部材のいずれかであって、押し当て部材を押し上げる。
(イ)及び(ウ)の場合、押さえ部はリング形状の押さえリングとしてもよい。
【0010】
ノブなどの頭部を取り付けたボルトの締め付けにより、押し当て部材を移動させて、フィルター部を挟持させるので、片手でもフィルター部の取り付けができる。
このため、作業者から見えにくい場所など設置場所を問わずに簡単にフィルター部の取り付けが可能になる。
【0011】
押し当て部材は、押し当て部材の穴を遊貫したボルト先端部がフィルター本体に直接接触しないように、略中空四角柱の外径を有する(一部が開口していてもよい)。
【0012】
好ましくは、押し当て部材は、断面が溝形の形状を有する。
また、好ましくは、押し当て部材は、断面がリップ溝形の形状を有する。
また、押し当て部材は、断面が四角状のパイプ形状としてもよい。
【0013】
押し当て部材が、フィルター部のフィルター本体と接触せずに、フィルター部の枠体に接触するので、押し当て部材がフィルター本体を傷つけずに、押し込むことが可能になる。
【0014】
さらに好ましくは、ケーシングの内側には、フィルター部の位置決め部材を有する。
【0015】
位置決め部材により、フィルター部が見えない箇所でも、所定の位置にフィルター部を誘導することが可能になる。
【0016】
さらに好ましくは、位置決め部材のフィルター部と対向する面は、フィルター部を所定の位置に誘導する。
【0017】
さらに好ましくは、位置決め部材は、樹脂プレートである。
【0018】
位置決め部材が樹脂で構成されることにより、フィルター部が接触する際に、ダメージを与えにくい。
【0019】
さらに好ましくは、位置決め部材を挟む位置関係で、複数のフィルター部が挟持される。
【0020】
複数のフィルター部を設けることにより、濾過面積を大きく出来る。
また、複数の押し当て部材の間のスペースを使って、フィルター部をフィルター収容部の内側に収納させることが出来る。
【0021】
さらに好ましくは、押し当て部材は、棒状部材であり、押し当て部材の穴としての第1ダルマ穴と第2ダルマ穴を有する。第1ダルマ穴の脱着穴と締付穴が並べられる方向と、第2ダルマ穴の脱着穴と締付穴が並べられる方向は、略直交する。
【0022】
略直交する2つのダルマ穴を使って、押し当て部材のボルトからの不必要な外れ防止と簡易着脱とが可能になる。
【0023】
さらに好ましくは、先端部は、先端皿部と先端円筒部とを有する。先端皿部の直径は、第1ダルマ穴及び第2ダルマ穴の締付穴の直径よりも大きく、第1ダルマ穴及び第2ダルマ穴の脱着穴の直径よりも小さい。先端円筒部の直径は、第1ダルマ穴及び第2ダルマ穴の締付穴の直径よりも小さい。
【0024】
さらに好ましくは、フィルター本体は、HEPAフィルターを含む。
【0025】
さらに好ましくは、フィルター収容部は、アイソレーター本体の天井部に設けられる。
【0026】
さらに好ましくは、押さえ部は、軸部の先端部と接する側、若しくは、先端部が貫通し軸部の先端部と接する側に取り付けられた部材、若しくは軸部の先端部と接する側に一体的に形成された部材である。
【0027】
本発明に係るアイソレーター装置は、ケーシングと、押し当て部材と、ボルトと、ボルト支持体とを有するフィルター収容部と、フィルター収容部が取り付けられるアイソレーター本体とを備える。ボルト支持体は、ケーシングに対して直接又は間接的に固定される。ボルトは、先端部と、ネジ山が形成された軸部と、頭部とを有する。ボルトは、ボルト支持体を貫通してボルト支持体にネジ止め可能である。先端部は、押し当て部材の穴を遊貫する。ボルト支持体に対してボルトを締めることで、ボルトに設けられた押さえ部が、押し当て部材を介して、フィルター本体を含むフィルター部を押し込み、ケーシング又はケーシング内に設けられた仕切り部材と押し当て部材によってフィルター部が挟持される。
【0028】
本発明に係る方法は、ケーシングと、押し当て部材と、ボルトと、ボルト支持体とを備えたフィルター収容部に、フィルター本体を含むフィルター部を取り付ける方法である。ボルト支持体は、ケーシングに対して直接又は間接的に固定される。ボルトは、先端部と、ネジ山が形成された軸部と、頭部とを有する。ボルトは、ボルト支持体を貫通してボルト支持体にネジ止め可能である。先端部は、押し当て部材の穴を遊貫する。本発明に係る方法は、ケーシング又はケーシング内に設けられた仕切り部材と、押し当て部材の間に、前フィルター部を配置させる第1ステップと、ボルト支持体に対してボルトを締めることで、ボルトに設けられた押さえ部が、押し当て部材を介して、フィルター部を押し込み、ケーシング又はケーシング内に設けられた仕切り部材と押し当て部材によってフィルター部が挟持される第2ステップとを備える。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によれば、設置場所を問わずに簡単にフィルター部の取り付けが可能なフィルター収容部などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態のアイソレーター装置の正面図である。
図2】アイソレーター装置の側面図である。
図3】ダクトとフィルター収容部とフィルター部の下方からの分解斜視図である。
図4】押し当て部材が取り付けられる前の状態を示すフィルター収容部の下方からの斜視図である。
図5】一方の押し当て部材が取り付け途中の状態で、他方の押し当て部材の取り付け完了した状態を示すフィルター収容部の下方からの斜視図である。
図6】押し当て部材にフィルター部が載置され、押し込みが行われる前の状態を示すフィルター収容部の下方からの斜視図である。
図7】押し当て部材によるフィルター部の押し込みが完了した状態を示すフィルター収容部の下方からの斜視図である。
図8】ケーシングのフランジにボルト支持体(ブラケット)が取り付けられ、ボルト支持体(ブラケット)にボルトが取り付けられた状態を示す、フィルター収容部のy方向後方の断面構成図である。
図9図8の状態から押さえ部(押さえリング)がボルトに取り付けられた状態を示す、断面構成図である。
図10図9の状態から押し当て部材がボルトに遊貫された状態を示す、断面構成図である。
図11図10の状態から、フィルター部が押し当て部材の一方に載置される途中の状態を示す、断面構成図である。
図12図11の状態から、フィルター部が押し当て部材の一方に載置され、別のフィルター部が押し当て部材の他方に載置される途中の状態を示す、断面構成図である。
図13図12の状態から、フィルター部が押し当て部材の一方に押し込まれた状態で、別のフィルター部が押し当て部材の他方に載置された状態を示す、断面構成図である。
図14図13の状態から、別のフィルター部が押し当て部材の他方に押し込まれた状態を示す、断面構成図である。
図15】ボルトの各部と、ボルト支持体(第2ブラケット)のネジ穴と、押さえ部(押さえリング)と、押し当て部材の第2締付穴及び第2脱着穴の寸法を示す上方からの分解斜視図である。
図16】2つのボルトと、ボルト支持体(第1ブラケット)と、ボルト支持体(第2ブラケット)と、2つの押さえリングと、押し当て部材の上方からの分解斜視図である。
図17】ボルト支持体(第1ブラケット)及びボルト支持体(第2ブラケット)にボルトが取り付けられた状態を示す上方からの斜視図である。
図18図17の状態から、押さえリングがボルトに取り付けられた状態を示す上方からの斜視図である。
図19図18の状態から、第1脱着穴にボルトの一方が挿入された状態を示す上方からの斜視図である。
図20図19の状態から、第1締付穴にボルトの一方が嵌合された状態を示す上方からの斜視図である。
図21図20の状態から、第2脱着穴にボルトの他方が挿入された状態を示す上方からの斜視図である。
図22図21の状態から、第2脱着穴にボルトの他方が嵌合された状態を示す上方からの斜視図である。
図23】押さえリングが押さえ部として機能する形態の、押さえリングとボルトをy方向から見た図である。
図24】軸部が押さえ部として機能する形態のボルトをy方向から見た図である。
図25】軸部が押さえ部として機能する形態で、先端皿部を省略したボルトをy方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する(図1図25参照)。
なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。また、各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが出来る。
【0032】
方向を説明するために、グローブポート33が並べられる水平方向(左右方向)をx方向とし、x方向と垂直な方向(前後方向)をy方向、x方向及びy方向に対して垂直な方向(上下方向)をz方向として説明する。
図3において、xyz軸のそれぞれの矢印が指し示す方向をそれぞれ左方向、前方向、上方向と定義する。
【0033】
図1図2は、アイソレーター装置1の全体図である。
図3図7は、フィルター収容部55とフィルター部57の下方から見た斜視図である。
図8図14は、フィルター収容部55とフィルター部57のy方向後方の断面構成図である。
図15図22は、押し当て部材55e、ボルト55f、ボルト支持体(ブラケット)55g、押さえリング55h1の上方から見た斜視図で、ボルト支持体(ブラケット)55gが取り付けられるケーシング55aのフランジ55a3の図示は省略している。
また、図17図18では、ボルト55fのボルト受け面55gcで隠れる部分を点線で示している。
図23図25は、ボルト55fをy方向から見た図で、押さえ部55hの構成の違いを示すものである。図1図22は、このうち、図23で示された押さえリング55h1が押さえ部55hとして機能する形態を説明する。ただし、後述するように、押さえリング55h1を用いずに、軸部55f3の先端部側が押さえ部55hとして機能する形態であってもよい。
【0034】
(アイソレーター装置1)
図1図2に示すように、本実施形態のアイソレーター装置1は、架台10、アイソレーター本体30、吸気系ユニット50を備える。
本実施形態では、アイソレーター装置1にフィルター収容部55が設けられる例を示すが、フィルター収容部55は、フィルター部57を用いる吸気系ユニットだけでなく排気系ユニットを含む他の装置に設けられてもよい。
【0035】
(架台10)
架台10は、アイソレーター本体30を保持する。
架台10の内部には、アイソレーター本体30内に設置した機械を駆動するための電機部品などが配置されてもよい。
【0036】
(アイソレーター本体30)
アイソレーター本体30は、架台10のz方向上方に設けられる。
アイソレーター本体30の内部には、小型の作業室としてのチャンバーが形成される。
アイソレーター本体30のチャンバーの前面には、透明の操作パネル31と、操作を行うための各種グローブポート33が設けられる。
作業者は、アイソレーター本体30のチャンバーの外部からグローブポート33を介して作業を行う。
アイソレーター本体30の上面35には、吸気用の開口35aが設けられ、吸気用の開口35aに、フィルター収容部55を含む吸気系ユニット50が連通する。
【0037】
(吸気系ユニット50)
図3図7に示すように、吸気系ユニット50は、ダクト51、フード53、フィルター収容部55、フィルター部57を有する。
吸気系ユニット50は、アイソレーター装置1が設置された部屋の外からの空気をアイソレーター装置1の内部に取り入れる(吸気する)ために使用される。
吸気は、アイソレーター装置1の内部が負圧になったときに自然により行われる形態であってもよいし、不図示のブロアなどにより強制的に吸引する形態であってもよい。
【0038】
なお、フィルター収容部55は、吸気系ユニット、排気系ユニットのいずれにも用いることができる。
【0039】
取り外したフィルター部57は、バグイン・バグアウト・ポート(不図示)から装置外に取り出すことができる。
【0040】
(ダクト51)
ダクト51の一方の端部は、アイソレーター装置1が設置された部屋の外部に配置される。
図1図7に示すように、ダクト51の他方の端部は、フード53の一方の端部と連通する。
ダクト51は、フェルールエルボ51aやフェルール51b又は複数の管を、クランプ51cと不図示のガスケットを介してつなぎ合わせて構成される。
ダクト51には、ダクト51の内部を流れる空気の流量を調整するためのバルブ51dが設けられる(図2参照)。
【0041】
(フード53)
図2図4に示すように、フード53は、略中空四角錐台の外形を有する。
フード53の略中空四角錐台の上面と下面は、z方向に並べられ、斜面の一対は、x方向に並べられ、斜面の他の一対はy方向に並べられる。
フード53の略中空四角錐台の上面と下面は開口する。
フード53は、一方の端部(略中空四角錐台の上面側)から他方の端部(略中空四角錐台の下面側)にかけて、xy断面の開口面積が大きくなるように形成される。
フード53の一方の端部は、ダクト51の他方の端部と連通する。
フード53の他方の端部は、フィルター収容部55のケーシング55aと連通する。
【0042】
(フィルター収容部55)
図3図7に示すように、フィルター収容部55は、ケーシング55a、ガスケット55b、仕切り部材55c、位置決め部材55d、押し当て部材55e、ボルト55f、ボルト支持体(ブラケット)55g、押さえリング55h1を有する。
フィルター収容部55は、図1図2に示すように、アイソレーター本体30の天井部に設けられる。
本実施形態の押し当て部材55eなどで保持した状態でフィルター部57を脱着させる構成は、アイソレーター本体30の天井部に配置された場合に効果的であるが、側部や下部にフィルター収容部55が設けられる形態であってもよい。
【0043】
(ケーシング55a)
図3図7に示すように、ケーシング55aは、略中空四角柱の外形を有する。
ケーシング55aの略中空四角柱の上面と下面は、z方向に並べられ、側面の一対は、x方向に並べられ、側面の他の一対はy方向に並べられる。
ケーシング55aの略中空四角柱の上面と下面は開口する。
ケーシング55aの略中空四角柱の上面の開口には、後述する仕切り部材55cにより、2つの開口(第1開口55a1、第2開口55a2)が形成される。
ケーシング55aは、一方の端部(略中空四角柱の上面側)から他方の端部(略中空四角柱の下面側)にかけて、xy断面の開口面積が略一定となるように形成される。
【0044】
ケーシング55aの略中空四角柱の下面、すなわちアイソレーター本体30の上面35の開口35aと対向する側には、z方向と直交する面を含むフランジ55a3が設けられる。
ケーシング55aの一方の端部は、フード53の他方の端部と連通する。
ケーシング55aの他方の端部は、アイソレーター本体30の上面35の開口35aと連通する。
具体的には、図8図14に示すように、ケーシング55aのフランジ55a3の上面が、ネジ止めなどにより、ガスケット55bを介して、アイソレーター本体30の上面35の下側に取り付けられる。
【0045】
(フード53とケーシング55a)
フード53とケーシング55aとは、別体で構成されてもよいし、一体で構成されてもよい。別体で構成された場合には、フード53がケーシング55aに取り付けられる。一体で構成される場合は、ケーシング55aがフード53を含む。
【0046】
(ガスケット55b)
図8図14に示すように、ガスケット55bは、ケーシング55aとアイソレーター本体30の上面との間を密閉するためのシール部材である。
【0047】
(仕切り部材55c)
図3図14に示すように、ケーシング55aの略中空四角柱の上面には、仕切り部材55cが設けられる。
仕切り部材55cは、ケーシング55aに取り付けられる。
仕切り部材55cは、略矩形形状の外形を有し、略矩形形状の開口部を含む。
【0048】
フィルターの通気は仕切り部材55cの開口部で行われる。開口部は複数設けてもよい。仕切り部材55cにx方向に並べられた2つの開口部を設け、それぞれの開口部に対して1つずつ、計2つのフィルター部57を収容してもよい。
仕切り部材55cはケーシング55aと別体で構成されてもよいし、ケーシング55aと一体で構成されてもよい。仕切り部材55cが、フード53又はケーシング55aと別体で構成される場合は、ケーシング55a側にスタッドボルトを設けてガスケットを介して、仕切り部材53cをナットで固定することで密閉性を確保する。仕切り部材55cをケーシング55aに溶接して、一体で構成することもできる。一体で構成される場合は、ケーシング55aが仕切り部材55cを含む。
【0049】
(位置決め部材55d)
図3図14に示すように、仕切り部材55cに、x方向に並べられた2つの開口部を設け、仕切り部材55cの下面側すなわち、アイソレーター本体30の上面35の開口35aに近い側の、2つの開口部の間に位置決め部材55dが設けられる。
位置決め部材55dは後述するフィルター部57を所定の位置に誘導するために使用される。
【0050】
位置決め部材55dは、略台形柱の外形を有する。特に、xz断面が等脚台形であるのが好ましい。
位置決め部材55dの略台形柱の上面すなわち平行する二面のうち面積が広い方は、仕切り部材55cに取り付けられる。
位置決め部材55dの略台形柱は、上面から下面にかけてxy断面積が小さくなり、x方向に並べられた1対の側面が、平面状若しくは曲面状の斜面になるように形成される。
位置決め部材55dの略台形柱の斜面は、フィルター部57と対向し、フィルター部57をケーシング55a内の所定の位置に誘導するために用いられる。
【0051】
位置決め部材55dにより、作業者から、フィルター部57が見えない場合でも、ケーシング55a内の所定の位置にフィルター部57を誘導することが可能になる。
位置決め部材を樹脂で構成される樹脂プレートとすることにより、フィルター部57の枠体57bが接触する際に、枠体57bにダメージを与えにくい。
【0052】
位置決め部材55dをx方向で挟む位置関係で、複数のフィルター部57がケーシング55a内に収容され、押し当て部材55eなどによって挟持される。
【0053】
複数のフィルター部57を設けることにより、濾過面積を大きく出来る。
【0054】
なお、フィルター部57を所定の位置に誘導する位置決め部材55dは、樹脂プレートに限るものではなく、フィルター部の枠体57bの材質よりも柔らかければ他の素材を用いてもよく、フィルター部57を所定の位置に誘導することが可能であれば、曲面形状等の他の形状で構成された位置決め部材55dであってもよい。
【0055】
(押し当て部材55e)
図3図7図15図16図19図22に示すように、押し当て部材55eは、フィルター部57を取り付けする際に、フィルター部57を保持するため、及びz方向上方に押し込むために使用される。
また、押し当て部材55eは、フィルター部57を取り外しする際に、フィルター部57を保持するために使用される。
【0056】
押し当て部材55eは、y方向に延びる棒状部材で、略中空四角柱の外形を有する。
押し当て部材55eの略中空四角柱の前面と後面は開口する。
押し当て部材55eのxz断面は、ロの字形状を有する、又はz方向上方が開口したコの字の溝形、若しくはリップ溝形の形状を有する。
本実施形態は、押し当て部材55eのxz断面は、z方向上方が開口したコの字形状を有する例を示す。
押し当て部材55eの内側には、後述するボルト55fの先端皿部55f1及び先端円筒部55f2が配置される。
【0057】
なお、押し当て部材55eは、上記の形状に限るものではなく、他の形状などを有する押し当て部材55eであってもよい。
【0058】
(押し当て部材55eのダルマ穴)
押し当て部材55eの下面、すなわち、フィルター部57と接する側と反対側の面には、ボルト55fの先端皿部55f1と先端円筒部55f2を通すためのダルマ穴(第1ダルマ穴55e1、第2ダルマ穴55e2)が設けられる。
【0059】
第1ダルマ穴55e1は、第1脱着穴h11と第1締付穴h12を有する。
第1脱着穴h11と第1締付穴h12は、押し当て部材55eの下面の長手方向、すなわちy方向に並べられた状態で連通する。
第1脱着穴h11は、第1締付穴h12よりも大きく、ボルト55fの先端皿部55f1や先端円筒部55f2を着脱させるために使用される。
第1締付穴h12は、先端円筒部55f2を遊貫させるために使用される。
【0060】
第2ダルマ穴55e2は、第2脱着穴h21と第2締付穴h22を有する。
第2脱着穴h21と第2締付穴h22は、押し当て部材55eの下面の短手方向、すなわちx方向に並べられた状態で連通する。
第2脱着穴h21は、第2締付穴h22よりも大きく、ボルト55fの先端皿部55f1や先端円筒部55f2を着脱させるために使用される。
第2締付穴h22は、先端円筒部55f2を遊貫させるために使用される。
【0061】
第1ダルマ穴55e1と第2ダルマ穴55e2は、押し当て部材55eの下面の長手方向、すなわちy方向に並べられる。
具体的には、第1ダルマ穴55e1の第1脱着穴h11と第1締付穴h12と、第2ダルマ穴55e2の第2締付穴h22は、押し当て部材55eの下面の長手方向、すなわちy方向に並べられる。
第1ダルマ穴55e1の第1脱着穴h11と第1締付穴h12が並べられる方向と、第2ダルマ穴55e2の第2脱着穴h21と第2締付穴h22が並べられる方向は、略直交する。
【0062】
略直交する2つのダルマ穴を使って、押し当て部材55eのボルト55fからの不必要な外れ防止と簡易着脱とが可能になる。
【0063】
(ボルト55f)
図15図22に示すように、ボルト55fは、ボルト支持体(ブラケット)55gのネジ穴55gdを貫通して、ネジ穴55gdの雌ネジと軸部55f3に設けられた雄ネジが螺合することで、軸部55f3の所定の位置で、ボルト支持体(ブラケット)55gに固定可能である。
図23図25に示すように、ボルト55fは、先端部55f0、軸部55f3、頭部55f4を有する。
先端部55f0は、押し当て部材55eの不必要な外れ防止のために、先端皿部55f1、先端円筒部55f2を有する。ただし、先端皿部55f1を省略し、先端円筒部55f2だけが先端部55f0を構成する形態であってもよい(図25参照)。
頭部55f4は軸部55f3の回転を容易にするもので、軸部55f3と一体としてもよく、軸部55f3と一体とした場合、頭部55f4にはネジ山を施さずにローレット加工を施すことが好ましい。
頭部55f4を軸部55f3と別体とし、雌ネジを設けた金属製のノブを頭部55f4として軸部55f3の端部に螺合してもよい。リーマで穴を空けた金属又は樹脂製のノブを頭部55f4として軸部55f3の端部に固定してもよい。
【0064】
先端皿部55f1の直径d1は、第1締付穴h12及び第2締付穴h22の直径dsよりも大きく、第1脱着穴h11及び第2脱着穴h21の直径dbよりも小さい(ds<d1<db、図16参照))。
先端円筒部55f2の直径d2は、第1締付穴h12及び第2締付穴h22の直径dsよりも小さい(d2<ds)。
先端皿部55f1と先端円筒部55f2を含む先端部55f0は、ボルト支持体(ブラケット)55gのネジ穴55gdを貫通し、押し当て部材55eの第1ダルマ穴55e1や第2ダルマ穴55e2に遊貫する。
【0065】
軸部55f3の表面外周にはネジ山が形成される。
軸部55f3のネジ山の谷の径d3は、第1脱着穴h11及び第2脱着穴h21の直径dbよりも大きく、ボルト支持体(ブラケット)55gのネジ穴55gd(雌ネジ)の内径di及び押さえリング55h1のネジ穴の内径dd1と同等である(db<d3=di=dd1)。
軸部55f3のネジ山は、ボルト受け面55gcのネジ穴55dg及び押さえリング55h1の内穴と螺合する。
【0066】
(ボルト支持体(ブラケット)55g)
図3図7に示すように、ボルト支持体(ブラケット)55gは、ブラケット(持送り)形状として、ケーシング55aのフランジ55a3にネジ止めなどにより取り付けられ、螺合されたボルト55fを保持する。
ボルト支持体(ブラケット)55gは、押し当て部材55eに対して少なくとも2つ設けられる。仕切り部材55cにx方向に並べられた2つの開口部を設け、2つのフィルター部57を収容する場合は、ボルト支持体(ブラケット)55gは、それぞれ、ケーシング55aのフランジ55a3の左前、左後ろ、右前、右後ろに取り付けられる。
【0067】
図15図22に示すように、ボルト支持体(ブラケット)55gは、ブラケット(持送り)形状とする場合は、x方向から見てクランク形状を有し、フランジ取付面55ga、腕部55gb、及びボルト受け面55gcを有する。
フランジ取付面55gaは、xy面に平行で、フランジ55a3に取り付けられる。
腕部55gbは、フランジ取付面55gaからz方向下方に延びる。
ボルト受け面55gcは、腕部55gbからy方向に延び、xy面に平行で、第1開口55a1若しくは第2開口55a2と対向する。フランジ取付面55gaとボルト受け面55gcは平行である。
ボルト受け面55gcには、ボルト55fと螺合するためのネジ穴55gdが設けられる。
また、ボルト受け面55gcには、切り欠き55geを設けてもよい。
【0068】
ボルト支持体55gは、ケーシング55aに対して直接又は間接的に固定される。すなわち、ボルト支持体55gは、ケーシング55aに対する配置が固定されていればよく、ケーシング55aの内壁に直接取り付けることもできる。図8図14に示されているようにフランジ55a3が装置上面35の内側に配置される場合は、フランジ55a3に直接固定してもよい。フランジ55a3が装置上面35の外側に配置された場合は、フランジ55a3と共に締結された被締結体、例えば装置上面35の一部や装置内側に配置された被締結体(ボルト及びナットで締結する枠体)(不図示)に固定してもよい。
また、ボルト55fをネジ止めで支持するボルト支持体55gは、ブラケット(持送り)形状に限るものではなく、他の形状などを有するボルト支持体55gであってもよい。
【0069】
(押さえ部55h、押さえリング55h1)
図15図22、及び図101に示すように、リング形状の押さえリング55h1は、押さえ部55hとして、ボルト支持体(ブラケット)55gと螺合して貫通したボルト55fの軸部55f3に固定される。
押さえ部55hを押さえリング55h1等の様なリング形状とすることで、押さえ部55hと押し当て部材55eとの接触面における圧力を低減することができ、押し当て部材55eの変形を防止することができる。
【0070】
押さえリング55h1は、軸部55f3の端部に配置され、押し当て部材55eを押し上げる。押さえリング55h1の内穴を軸部55f3の端部と嵌合する形状(不図示)とすることで、押さえリング55h1は、軸部55f3の端部に配置され、押し当て部材55eを押し上げることができる。
【0071】
押さえリング55h1とボルト55fの頭部55f4とが、ボルト受け面55gcをz方向で挟む位置関係で、押さえリング55h1の内穴は、ボルト55fの軸部55f3と螺合させてもよい。この場合、押さえリング55h1の内穴には、ボルト55fの軸部55f3と螺合するためのネジが切られている。
押さえリング55h1の外径dd2は、軸部55f3のネジ山の谷の径d3よりも大きい(dd2>d3、図15参照)。
【0072】
なお、ボルト55fの先端部側端部に設けられた押さえ部55hは、ボルト55fに着脱可能な押さえリング55h1に限るものではなく、他の形状などを有する押さえ部55hであってもよい。
【0073】
例えば、図24図25に示すように、軸部55f3の先端円筒部55f2側端部が、押さえ部55hとして機能する形態が考えられる。
この場合には、押さえリング55h1は用いられず、軸部55f3の先端円筒部55f2側の端部が、押さえ部55hとして、押し当て部材55eと接する。
この場合、押し当て部材55eの穴の直径(第1脱着穴h11の直径dbなど)よりも大きな直径d3を有する軸部55f3のz方向終端部が、押し当て部材55eと接する。
【0074】
また、例えば、切削加工等を用いて押さえリング55h1が軸部55f3と一体的に形成するなど、軸部55f3よりもxy断面が大きい部材を、軸部55f3の先端円筒部55f2と接する側に一体的に形成し、かかる部材が、押さえ部として機能する形態が考えられる。
この場合、z方向上方から軸部55f3をボルト受け面55gc取り付けた後に、頭部55f4を軸部55f3に螺合する。
【0075】
ボルト55fとボルト支持体(ブラケット)55gと押さえ部55h(押さえリング55h1)は、押し当て部材55eを保持するために使用される。
【0076】
(フィルター部57)
図3図6図7図11図14に示すように、フィルター部57は、フィルター本体57aと、枠体57bを有する。
フィルター本体57aは、外部から取り入れた空気からゴミや塵埃を取り除いて清浄化するために用いられ、HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を用いる。
枠体57bは、フィルター本体57aの角部を覆い、フィルター本体57aを保持する。
フィルター本体57aの角部は、フィルター本体57aの外形を形成する直方体の頂点及び辺を含む。
フィルター本体57aの上面は、枠体57bよりもz方向下方に凹んだ位置にあり、フィルター本体57aの下面は、枠体57bよりもz方向上方に凹んだ位置にある。
このため、後述する押し当て部材55eは、フィルター本体57aと接しない状態で、枠体57bと接して、フィルター部57をz方向上方に押し込む。
また、押し当て部材55eにz方向上方に押し込まれた際に、仕切り部材55cは、フィルター本体57aと接しない状態で、枠体57bと接する(図12図14参照)。
【0077】
(各部の寸法設定)
押さえリング55h1が押し当て部材55eと接する状態で、先端皿部55f1や先端円筒部55f2が押し当て部材55eの側面よりもz方向上方に突出しないように、先端皿部55f1などの各部の寸法が決定される(図10図14参照)。
【0078】
(取り付け手順1)
次に、ケーシング55aに押し当て部材55eを取り付ける手順を説明する。
まず、ボルト支持体(ブラケット)55g(4つ)が、ケーシング55aのフランジ55a3にネジ止めなどで取り付けられる。
次に、ボルト支持体(ブラケット)55gのボルト受け面55gcのネジ穴55gdに、z方向下方から、ボルト55fの先端皿部55f1と先端円筒部55f2が挿入され、ネジ穴55gdに軸部55f3が螺合される(図8図17参照)。
軸部55f3のネジ穴55gdへの螺合は、軸部55f3の端部が、ボルト受け面55gcからz方向上方に少なくとも押さえリング55h1の厚み分だけ突出する程度まで行われる。
【0079】
次に、押さえリング55h1の内穴が、ボルト55fの軸部55f3に螺合される(図4図9図18参照)。
軸部55f3の押さえリング55h1への螺合は、軸部55f3のz方向上方の端部が押さえリング55h1のz方向上方側の面(上面)よりもz方向上方に突出しない程度まで行われる。
軸部55f3のz方向上方の端部が押さえリング55h1のz方向上方側の面(上面)よりもz方向上方に突出しないように、押さえリング55h1に突出防止ストッパ(不図示)が設けられても良い。
【0080】
次に、押し当て部材55eをケーシング55a内に導入し、押し当て部材55eの第1ダルマ穴55e1の第1脱着穴h11に対して、第1ブラケット55g1に取り付けられたボルト55fの先端皿部55f1と先端円筒部55f2が、z方向下方から挿入されるように、押し当て部材55eを移動する(図19参照)。
ボルト55fの第1脱着穴h11への挿入は、先端円筒部55f2の一部が第1脱着穴h11に囲まれる位置関係になるように行われる。
次に、第1脱着穴h11に挿入された先端円筒部55f2の一部が、第1締付穴h12に囲まれる位置関係になるように、押し当て部材55eをxy平面上で移動させる(図20参照)。
【0081】
次に、第2ダルマ穴55e2の第2脱着穴h21が、第2ブラケット55g2に取り付けられたボルト55fの先端皿部55f1とz方向で対向する位置関係になるように、押し当て部材55eを、z軸周りに回転させる。
次に、押し当て部材55eの第2ダルマ穴55e2の第2脱着穴h21に、第2ブラケット55g2に取り付けられたボルト55fの先端皿部55f1と先端円筒部55f2が、z方向下方から挿入される。
次に、第2脱着穴h21に挿入された先端円筒部55f2の一部が、第2締付穴h22に囲まれる位置関係になるように、押し当て部材55eをxy平面上で移動させる(図21参照)。
【0082】
これにより、1つの押し当て部材55eが、2つのボルト55fなどによって、ケーシング55aに保持された状態になる。
この状態で、2つのボルト55fの頭部55f4を交互に回転させると、押さえリング55h1がz方向上方に持ち上げられ、これに伴って、押し当て部材55eがz方向上方に持ち上げられる(図22参照)。
1つの押し当て部材55eのケーシング55aへの取り付け後に、別の押し当て部材55eのケーシング55aへの取り付けが行われる(図10参照)。
【0083】
(取り付け手順2)
次に、フィルター部57を、フィルター収容部55に取り付ける手順を説明する。
【0084】
まず、ケーシング55a内に設けられた仕切り部材55cと押し当て部材55eとの間から、フィルター部57を挿入し、押し当て部材55e上に載置する(第1ステップ)。
【0085】
具体的には、図10の状態から、フィルター部57の一方が、2つの押し当て部材55eの間を通って、ケーシング55aの内側に持ち上げられ、押し当て部材55eの一方のz方向上方に載置される(図11図12参照)。
また、フィルター部57の他方が、2つの押し当て部材55eの間を通って、ケーシング55aの内側に持ち上げられ、押し当て部材55eの他方のz方向上方に載置される。
【0086】
次に、ボルト支持体(ブラケット)55gに対してボルト55fを締めることで、押さえリング55h1が、押し当て部材55eを介して、フィルター部57の枠体57bを押し上げる(第2ステップ)。
これにより、フィルター部57がz方向上方に移動し、フィルター部57の枠体57bがケーシング55a又は仕切り部材55cと接触したところで、ケーシング55a又は仕切り部材55cと押し当て部材55eによってフィルター部57が挟持される。
【0087】
具体的には、図12の状態から、フィルター部57の一方が載置された押し当て部材55eを保持する2つのボルト55fの頭部55f4を交互に回転させて、押さえリング55h1と共に押し当て部材55eをz方向上方に移動させる。これにより、フィルター部57の一方もz方向上方に移動せしめられ、フィルター部57の一方が第1開口55a1を塞ぐ(図13参照)。
図13の状態から、フィルター部57の他方が載置された押し当て部材55eを保持する2つのボルト55fの頭部55f4を交互に回転させて、押さえリング55h1と共に押し当て部材55eをz方向上方に移動させる。これにより、フィルター部57の他方もz方向上方に移動せしめられ、フィルター部57の他方が第2開口55a2を塞ぐ(図14参照)。
押し当て部材55eをz方向上方に持ち上げる際に、位置決め部材55dの斜面に誘導されて、フィルター部57が所定の位置(すなわち、第1開口55a1又は第2開口55a2とz方向に対向する位置)に移動せしめられる。このため、フィルター部57の押し当て部材55eへ載置する際に、細かく位置決めをする必要はない。
【0088】
(取り外し手順)
次に、フィルター部57を、フィルター収容部55から取り外す手順を説明する。
フィルター部57の一方が載置された押し当て部材55eを保持する2つのボルト55fの頭部55f4を交互に回転させて、押さえリング55h1をz方向下方に移動させる。これにより、押し当て部材55eがz方向下方に移動し、これに伴って、フィルター部57の一方もz方向下方に移動せしめられる(図13参照)。
フィルター部57の一方が、2つの押し当て部材55eの間を通って、ケーシング55aの内側から取り出される(図12参照)。
フィルター部57の他方が載置された押し当て部材55eを保持する2つのボルト55fの頭部55f4を交互に回転させて、押さえリング55h1をz方向下方に移動させる。これにより、押し当て部材55eがz方向下方に移動し、これに伴って、フィルター部57の他方もz方向下方に移動せしめられる。
フィルター部57の他方が、2つの押し当て部材55eの間を通って、ケーシング55aの内側から取り出される(図11参照)。
【0089】
頭部55f4を使ったボルト55fの締め付けにより、押し当て部材55eを移動させて、フィルター部57を挟持させるので、フィルター部57を他方の手で支えて保持する必要がなく、比較的重いHEPAフィルターを含むフィルター部57であっても、片手で取り付け、取り外しできる。
このため、作業者から見えにくい場所など設置場所を問わずに簡単にフィルター部57の取り付け、取り外しが可能になる。
【0090】
押し当て部材55eが、フィルター部57のフィルター本体57aと接触せずに、フィルター部57の枠体57bに接触するので、押し当て部材55eがフィルター本体57aを傷つけずに、押し込むことが可能になる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 アイソレーター装置
10 架台
30 アイソレーター本体
31 操作パネル
33 グローブポート
35 上面
35a 上面の開口
50 吸気系ユニット
51 ダクト
51a フェルールエルボ
51b フェルール
51c クランプ
51d バルブ
53 フード
55 フィルター収容部
55a ケーシング
55a1 第1開口
55a2 第2開口
55a3 フランジ
55b ガスケット
55c 仕切り部材
55d 位置決め部材
55e 押し当て部材
55e1 第1ダルマ穴
55e2 第2ダルマ穴
55f ボルト
55f0 先端部
55f1 先端皿部
55f2 先端円筒部
55f3 軸部
55f4 頭部
55g ボルト支持体(ブラケット)
55g1 第1ブラケット
55g2 第2ブラケット
55ga フランジ取付面
55gb 腕部
55gc ボルト受け面
55gd ネジ穴
55ge 切り欠き
55h 押さえ部
55h1 押さえリング
57 フィルター部
57a フィルター本体
57b 枠体
d1 先端皿部の直径
d2 先端円筒部の直径
d3 ねじ部の谷の径
ds 第1締付穴及び第2締付穴の直径
db 第1脱着穴及び第2脱着穴の直径
dd1 押さえリングの内穴の内径
dd2 押さえリングの外径
di ボルト支持体(ブラケット)のネジの内径
h11 第1脱着穴
h12 第1締付穴
h21 第2脱着穴
h22 第2締付穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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