IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テーセェーテク スウェーデン アクチエボラグ(パブリーク)の特許一覧

特許7274215硬化板金製品を製造するための方法および装置
<>
  • 特許-硬化板金製品を製造するための方法および装置 図1
  • 特許-硬化板金製品を製造するための方法および装置 図2
  • 特許-硬化板金製品を製造するための方法および装置 図3
  • 特許-硬化板金製品を製造するための方法および装置 図4
  • 特許-硬化板金製品を製造するための方法および装置 図5
  • 特許-硬化板金製品を製造するための方法および装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】硬化板金製品を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20230509BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20230509BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B21D22/20 H
B21D22/20 Z
B21D24/00 M
H05B6/10 381
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019534949
(86)(22)【出願日】2018-01-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 SE2018050001
(87)【国際公開番号】W WO2018132053
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】1750017-4
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519225521
【氏名又は名称】テーセェーテク スウェーデン アクチエボラグ(パブリーク)
【氏名又は名称原語表記】TCTech Sweden AB(publ)
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヤーデルバリ,ヨーン
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,ヨルゲン
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-022995(JP,A)
【文献】特開2016-153237(JP,A)
【文献】特開2015-039719(JP,A)
【文献】特開2013-244510(JP,A)
【文献】特表2016-524043(JP,A)
【文献】国際公開第2015/197415(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20
B21D 24/00
C21D 9/00-9/52
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼の硬化板金製品を製造する方法であって、
鉄鋼の板金片(9)を加熱ステーション(3)に配置するステップと、
前記加熱ステーションにおいて前記板金片のパターンにおける選択された領域(11)を誘導加熱するステップであって、コイル(17)が、前記コイルの前側の前面金属層(9、25)に流れる電流を誘導し、前記前面金属層の対向する第1(33)および第2(35)の端部が、前記コイル(17)の後側を通る短絡構造(23)により相互接続され、前記短絡構造が、前記前面金属層よりも抵抗性が低い材料を具える、ステップと、
加熱された前記板金片を押圧ステーション(7)に移動させるステップと、
加熱された前記選択された領域(11)を冷却しながら、前記板金片(9)を押圧することにより、前記パターンに沿って異なる結晶構造を有するトレースを形成するステップと
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記前面金属層は、前記板金片(9)を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記前面金属層は、前記板金片(9)の直下に位置する固定加熱層(25)を具え、前記板金片が、前記固定加熱層から分離可能であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、インレイが前記前面金属層の直下に位置し、電磁流量または電流を伝えることにより、前記前面金属層においてその一部分の熱の発生を部分的に低減することを特徴とする方法。
【請求項5】
鉄鋼の硬化板金製品を製造する装置であって、
鉄鋼の板金片を受け入れるように構成された加熱ステーション(3)であって、前記加熱ステーションが、前記加熱ステーションにおける前記板金片のパターンにおける選択された領域を誘導加熱し、コイル(17)を具え、前記コイルが、前記コイルの前側の前面金属層(9、25)に流れる交流を誘電し、前記前面金属層の対向する第1および第2の端部が、前記コイルの後側を通る短絡構造(23)により相互接続され、前記短絡構造が、前記前面金属層より抵抗性が低い材料を具える、加熱ステーション(3)と、
押圧ステーション(7)と、
加熱された前記板金片を前記加熱ステーションから前記押圧ステーションに移動させるように構成された搬送装置(5)と、を具え、
前記押圧ステーション(7)は、加熱された前記選択された領域を冷却しながら、前記板金片を押圧することにより、前記パターンに沿って異なる結晶構造を有するトレースを形成するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記前面金属層は、加熱対象の前記板金片(9)により構成されることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5に記載の装置において、前記前面金属層は、前記板金片の直下に位置する固定加熱層(25)を具え、前記板金片は、前記固定加熱層から分離可能であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の装置において、インレイ(27,29)が前記前面金属層の直下に位置し、電磁流量または電流を伝えることにより、前記前面金属層の一部分において熱の発生を部分的に低減することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化板金製品を製造するための方法に関する。本開示は、更に、その方法を実施するように構成された装置およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
板金片の冶金的性質を変えるために、板金製品の硬化が行われる。従来、金属片を加熱炉で加熱して、例えば、水を用いて迅速に冷却することで硬化が行われる。近年は、高出力レーザを用いて、板金片を部分的に加熱することが提案されている。
【0003】
そのような工程における1つの問題点は、加熱が必要なトレース全体をレーザビームで掃引しなければならないため、工程がかなり遅いことである。言うまでもなく、複数のレーザを用いることである程度は改善するものの、コストがさらに高くなる。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の一目的は、より効率的な硬化方法を提供することである。この目的は、請求項1で定められるような方法により達成される。より具体的には、硬化板金製品を製造するための方法であって、板金片を加熱ステーションに配置するステップと、加熱ステーションにおいて板金片の選択された領域を誘導加熱するステップとを具える方法が提供される。加熱ステーションにおいて、コイルが、コイルの前側で前面金属層に流れる電流を誘電し、前面金属層の対向する第1および第2の端部が、コイルの後側を通る短絡構造により相互接続され、短絡構造が、前面金属層よりも低い抵抗性を有する材料を具える。加熱された板金片を押圧ステーションに移動させ、加熱された領域を冷却しながら、板金片が押圧される。
【0005】
この方法でもって、加熱対象となる板金片の全領域を同時に加熱することができ、より効率的な工程が提供される。更に、加熱された領域をより迅速に、かつより均一に冷却することができ、改良した硬化特性が提供される。
【0006】
一実施例において、例えば鉄鋼を硬化するのに適切なものとして、前面金属層は、板金片を含むことができ、つまり、熱を発生させる電流が、処理対象の板金片に誘導される。
【0007】
別の実施例において、前面金属層は、板金片の直下に位置する加熱層を含むことができ、板金片は、加熱層から分離可能である。これは、アルミニウム等の抵抗性が非常に低い板金を加工するのに有用である。
【0008】
インレイが前面金属層の直下に位置し得、電磁流量または電流を伝えることにより、前面金属層における熱の発生を部分的に低減する。このことにより、任意の所望の形状を有するパターンが、板金片上で加熱できるようになる。
【0009】
対応する製造装置および対応する加熱ステーションも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示に係る板金材料を加工する装置を概略的に示す。
図2図2は、図1の加熱ステーションの操作を示す。
図3図3は、加工された板金片を示す。
図4図4は、加熱ステーションの第1実施例における層のスタックを概略的に示す。
図5図5は、加熱ステーションの第2実施例における層のスタックを概略的に示す。
図6図6は、板金片の下にあるインレイによる、板金表面全体の加熱の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示に係る板金材料を加工する装置を概略的に示す。装置1は、加熱ステーション3および押圧ステーション7またはプレス、ならびに搬送デバイス5を含み、搬送デバイス5は、加熱された板金片を加熱ステーション3から押圧ステーション7まで迅速に搬送するように考案されている。加熱を終えて5秒以内に押圧を実行できるように搬送が行われる。
【0012】
装置1は、以下のステップを含む、硬化板金製品を製造するための方法を実現する。最初に、図1に示すように、板金片9を加熱ステーション3に配置する。それは、更なる搬送デバイス(図示せず)により、手動または自動で行うことができる。図示するように、板金片9は平坦であってもよいが、それは必須ではない。
【0013】
加熱ステーション3は、板金片の表面全体、または図2に示すように表面上のパターン11を加熱する。必要な加熱量は、その板金片9の素材の冶金的性質、および硬化工程の所望の結果による。例えば、鉄鋼が硬化され、パターン11に沿って異なる結晶構造を有するトレースが望まれる場合、パターン中の材料を、例えば、910度以上の温度まで加熱して、比較的迅速に冷却することができる。
【0014】
図1を再び参照すると、以下に記載の方法で加熱を行うと、板金片9をプレスまたは押圧ステーション7に迅速に移動させ、そこでは、その板金片は、以前の形状とは異なる形状に押圧され、任意選択的には、その板金片に所望の切り込みを入れるために穴があけられる。この工程は、板金片9の再形成だけでなく、必要に応じて、その板金片の予め加熱された部分の冷却も行い、硬化による効果をもたらす。その結果が、図3に示す板金片である。硬化パターン11は、所望の性質を有する最終板金片13の提供を促し、例えば、より硬いが生成されたパターン11では材料がより脆い所望のパターンに変形することができる。このことは、例えば、ドライバおよび乗客の安全のため、衝突車が所定の方法で変形することが必要な自動車製品において有用である。
【0015】
図1を再び参照すると、搬送デバイス5は、抽象的にローラとして示されている。しかし、板金片9を加熱ステーション3から押圧ステーション7に搬送するのに、産業ロボット等、様々なデバイスを用いることができる。一部の硬化工程において、加熱終了および押圧実行までの時間を短くすることが必要なことがあり、通常は、搬送デバイス5の要件として5秒以下と定められている。
【0016】
図1において、加熱ステーション3は、上方が解放された状態で示されている。しかし、示したような押圧ステーション7と同様、下半部に押し付ける上半部を、加熱ステーション3にも設けることが可能である。
【0017】
加熱ステーション3において板金片9の選択された領域の誘導加熱が行われる。そのことについて、加熱ステーション3の概略的断面図である図4に示した第1実施例を参照して説明する。
【0018】
具体的には、高周波(典型的には20~50kHzの範囲)の交流パルスにより供給されたコイル17が用いられる。コイルは、銅やアルミニウム等の抵抗率の低い材料からなり、コイルキャリア15に巻き付けられる。
【0019】
コイルキャリア15は、抵抗率が高く、高比透磁率を有する材料を具えることができる。この目的に適した材料の一例として、断熱プラスチック材で所望の形状に焼結される強磁性微粒を含む、例えば、SOMALOY等の軟磁性複合材料が挙げられる。
【0020】
コイル17およびコイルキャリア15は、伝導性の隣接素子に流れる強力な電流を誘導する。主要の電流ループは、板金片9、および短絡構造23により形成される。短絡構造23は、板金片9の対向する縁部33、35を相互接続し、本実施例では前面金属層が形成される。ここで「前面」とは、コイル17の前側の面、および加熱が行われる加熱ステーション3の面に関する。コイルが回転するところである、前面金属層の対向する縁部33、35が、コイル17の後側を通る短絡構造23により相互接続される。従って、強力な交流が図中の矢印に示される方向に流れ、同様に、交流磁場が、電流に対して直交した向きに流れる。電流は、このループ内で熱を発生させる。しかし、加熱の対象で、かつ前面金属層を構成する板金片9が、硬化可能な鉄鋼であり、短絡構造23が、例えば、銅またはアルミニウムからなる場合、その熱の大半は、より抵抗性の高い板金片9に発生し、そこで非常に効率的に加熱される。一般的に、短絡構造23は、金属層よりも抵抗性が低い材料を具えることができる。
【0021】
中間の導電層19を、コイルキャリア15と前面金属層9との間に配置することができる。この中間層19は、隣接層から電気/ガルバニック絶縁され得るが、それ自体が、例えば、銅またはアルミニウムからなる高伝導性があり、数センチまでの厚さとすることができる。コイル17は、電流を中間層19の下面に誘導し、それらの電流は、表皮効果により、下面、第1端面、上面、および第2端面に沿って層19の表面近くを流れて下面に戻り、中間層19の外境界の近くに閉ループを形成する。従って、強力な電流が中間層19の上面に存在し、誘導により電流が前面金属層9を通って流れることを促す。
【0022】
断熱層21を、下の部分、典型的には前面金属層9の直下に配置することができる。この層は、前面金属層9がより高温に達することができるよう、前面金属層9からの熱伝導を低減する役割を果たす。 例えば、イットリウム安定化ジルコニウム、YSZを含むガラスセラミック組成物等の材料、またはKAPTON等の異なるプラスチック材が、そのために考えられる。
【0023】
図5は、加熱ステーション3の第2実施例における層のスタックを示す。このスタックは、板金片9の加熱を目的とし、板金片9は、アルミニウム等、それ自体は抵抗性が非常に低い。本実施例において、短絡構造23に接続された固定前面金属層25が提供される。接続は、ほぼ永久とすることができ、固定層25は、図4の実施例において前面金属層を構成する板金片9と同様の特性を有することができる。つまり、その伝導性は高いが、短絡構造の伝導性に比べると遥かに低い。
【0024】
従って、本実施例において、加熱されるのは固定層25で、その熱は、固定層25に積層された板金片9に同様に伝えられる。次に、板金片9を固定層から分離させ、押圧ステーションに移動させる。この装置は、例えば、アルミニウムの硬化が可能になる。加熱は前述の実施例ほど効率的ではないが、温度の要件はそれほど高くなくてもよい。
【0025】
図6は、板金片9の表面上の加熱の変化を示す。前面金属層が図4の板金片9そのものであろうが、図5の固定金属層であろうがいずれにせよ、前面金属層の直下に位置するインレイにより、加熱を実現することができる。従って、インレイは、下にある、断熱層21に削り込まれた凹部に位置し得る。インレイは、銅またはアルミニウム等の高伝導片27を具えることができる。或いは、コイルキャリアで用いられるような、高比透磁率を有する高磁伝導片29が考えられる。導電片27は、前面金属層からの電流の向きを局所的に変える。同様に、高磁片は、前面金属層からの磁場の方向を変える。いずれにしても、加熱発生が小さい領域31には、板金片9の選択的な硬化が可能になる板金片ができる。任意選択により、更なる冷却を提供することができ、加熱対象ではない領域が、流体流により、例えば中間層19である程度冷却される。
【0026】
本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で異なる方法で変化させ変更することができる。例えば、上記において平坦な板金片の加熱を説明したが、板金片は曲がっていてもよく、または原則として任意の形状を有していてもよい。加熱ステーションを押圧と組み合わせることで、加熱および押圧操作間において搬送装置を不要とすることも可能である。金属加工を、複数の連続したステップに更に分けてもよく、上述のような加熱ステーションを、最初の押圧操作後に用いてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6