(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ワイパ装置の連結部材及びワイパ装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/40 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
B60S1/40 100B
B60S1/40 300B
(21)【出願番号】P 2020058238
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】久田 起也
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-030759(JP,U)
【文献】特開2001-354120(JP,A)
【文献】実開昭61-047757(JP,U)
【文献】特開2007-331748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00-1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパブレードのレバーに形成された収容孔内に収容されるとともに、前記収容孔の両側壁に掛け渡された軸が嵌め込まれる軸孔及び前記軸孔の周壁の一部を開放するスリットを有し、ワイパアームの先端部に設けられたU字状の取付部が連結される連結部を備え、前記軸を中心に回動することで前記ワイパアームに対して前記ワイパブレードを回動可能に連結する樹脂製の連結部材において、
前記連結部の幅方向の両側から延びるとともに、前記ワイパアームの前記取付部の両側面を支持する一対の支持部を有しており、
一対の前記支持部は、前記連結部の高さ方向において前記スリットが形成されている側であり、且つ前記軸孔よりも前記ワイパアームの基端側に設けられ、前記基端側に向けて突出する弾性変形可能な腕部を有して
おり、
前記連結部及び一対の前記支持部が一体に形成されている、
ワイパ装置の連結部材。
【請求項2】
前記腕部は、前記支持部における他の部分よりも薄肉な薄肉部
と、前記薄肉部よりも前記基端側に位置するとともに前記幅方向の外側に向かって突出する先端部と、を有している、
請求項1に記載のワイパ装置の連結部材。
【請求項3】
収容孔及び前記収容孔の両側壁に掛け渡された軸を有するレバーを備えるワイパブレードと、
前記収容孔内に収容される請求項1または請求項2に記載の連結部材と、
前記連結部材の前記連結部に連結されるU字状の取付部を先端部に有するワイパアームと、を備え、
前記軸を中心に前記連結部材が回動することで前記ワイパアームに対して前記ワイパブレードが回動可能に構成されており、
一対の前記支持部の前記腕部と、前記収容孔の前記両側壁とがそれぞれ当接している、
ワイパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ装置の連結部材及びワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ワイパ装置が開示されている。このワイパ装置は、ワイパアームと、ワイパアームの先端部に対して回動可能に連結されたワイパブレードとを備えている。ワイパブレードのレバーには、収容孔及び収容孔の両側壁に掛け渡された軸が設けられている。収容孔内には、樹脂製の連結部材としてのクリップが収容されている。クリップは、上記軸が嵌め込まれる軸孔及び軸孔の周壁の一部を開放するスリットが形成された連結部を有している。ワイパアームの先端部には、クリップの連結部に連結されるU字状の取付部が設けられている。レバーの軸を中心にクリップが回動することでワイパアームに対してワイパブレードが回動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうしたワイパ装置においては、ワイパブレードによるガラス面の払拭性能を向上させる上で、ワイパブレードの先端の変動量を低減すること、所謂びびりの発生を抑制することが求められている。ワイパブレードの先端の変動量を低減するためには、収容孔の両側壁とクリップとの間の隙間を小さくすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、収容孔の両側壁とクリップとの間の隙間を小さくすると、クリップとレバーとの間に作用する摩擦抵抗が大きくなり、ワイパアームに対してワイパブレードが回動する際の回動トルクが大きくなる。その結果、ガラス面に対してワイパブレードの姿勢が追従しにくくなり、かえって払拭性能を悪化させる一因となる。
【0006】
本発明の目的は、ワイパアームに対するワイパブレードの回動トルクの増大抑制と、ワイパブレードの先端の変動抑制との両立を図ることのできるワイパ装置の連結部材及びワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためのワイパ装置の連結部材は、ワイパブレードのレバーに形成された収容孔内に収容されるとともに、前記収容孔の両側壁に掛け渡された軸が嵌め込まれる軸孔及び前記軸孔の周壁の一部を開放するスリットを有し、ワイパアームの先端部に設けられたU字状の取付部が連結される連結部を備え、前記軸を中心に回動することで前記ワイパアームに対して前記ワイパブレードを回動可能に連結する樹脂製のものである。前記連結部材は、前記連結部の幅方向の両側から延びるとともに、前記ワイパアームの前記取付部の両側面を支持する一対の支持部を有しており、一対の前記支持部は、前記連結部の高さ方向において前記スリットが形成されている側であり、且つ前記軸孔よりも前記ワイパアームの基端側に設けられ、前記基端側に向けて延びる弾性変形可能な腕部を有している。
【0008】
同構成によれば、一対の支持部が上記腕部を有している。このため、ワイパアームに対してワイパブレードが回動する際、腕部が収容孔の側壁に押し付けられると、腕部が幅方向の内側に向けて弾性変形するようになる。これにより、腕部と収容孔の側壁との間に作用する摩擦抵抗が抑えられるようになり、ワイパアームに対してワイパブレードが回動する際の回動トルクが小さくなる。すなわち、ガラス面に対してワイパブレードの姿勢が追従しやすくなる。
【0009】
このように上記構成によれば、腕部の弾性変形を利用することでワイパアームに対するワイパブレードの回動トルクを小さくできることから、収容孔の両側壁と一対の腕部との間の間隔を小さく設定することが可能となる。これにより、ワイパブレードと連結部材との間の隙間に起因するワイパブレードの先端の変動量を低減でき、所謂びびりの発生を抑制できる。
【0010】
特に、上記腕部は、軸孔よりもワイパアームの基端側に設けられており、基端側に向けて突出する部位である、すなわち、連結部材においてワイパブレードの先端から最も離れた部位である。このため、ワイパブレードの先端の変動量を効果的に低減できる。
【0011】
したがって、ワイパアームに対するワイパブレードの回動トルクの増大抑制と、ワイパブレードの先端の変動抑制との両立を図ることができる。
上記ワイパ装置の連結部材において、前記腕部は、前記支持部における他の部分よりも薄肉な薄肉部を有していることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、連結部材の設計に際して腕部の薄肉部の厚さを調整することによって、腕部の強度や弾性変形の度合を容易に調整することができる。
上記の目的を達成するためのワイパ装置は、収容孔及び前記収容孔の両側壁に掛け渡された軸を有するレバーを備えるワイパブレードと、前記収容孔内に収容される前記連結部材と、前記連結部材の前記連結部に連結されるU字状の取付部を先端部に有するワイパアームと、を備え、前記軸を中心に前記連結部材が回動することで前記ワイパアームに対して前記ワイパブレードが回動可能に構成されており、一対の前記支持部の前記腕部と、前記収容孔の前記両側壁とがそれぞれ当接している。
【0013】
同構成によれば、一対の支持部の腕部と収容孔の両側壁との間の間隔がゼロとされるため、ワイパブレードと連結部材との間の隙間に起因するワイパブレードの先端の変動量を効果的に低減でき、所謂びびりの発生を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイパアームに対するワイパブレードの回動トルクの増大抑制と、ワイパブレードの先端の変動抑制との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ワイパ装置の一実施形態について、ワイパ装置全体を示す平面図。
【
図3】アームピース、第1レバー、及び連結部材の部分組付体を示す斜視図。
【
図4】アームピース、第1レバー、及び連結部材を互いに離間して示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図6を参照して、ワイパ装置の連結部材及びワイパ装置の一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用のワイパ装置は、ワイパアーム10と、ワイパアーム10の先端部に対して回動可能に連結されたワイパブレード20とを備えている。
【0017】
ワイパアーム10は、図示しない車両のピポット軸に固定されるアームヘッド11と、アームヘッド11の先端に連結されるリテーナ12と、リテーナ12の先端に固定されるアームピース13とを備えている。アームヘッド11、リテーナ12、及びアームピース13は、いずれも金属製である。
【0018】
図4及び
図5に示すように、アームピース13の先端部には、U字状の取付部14が設けられている。
図1及び
図2に示すように、ワイパブレード20は、ワイパアーム10に対して回動可能に連結される長尺状の第1レバー21と、第1レバー21の基端側(
図1及び
図2の左側)に連結される長尺状の第2レバー22と、第1レバー21の先端側(
図1及び
図2の右側)に連結される長尺状の第3レバー23とを備えている。第1レバー21、第2レバー22、及び第3レバー23は、いずれも硬質樹脂製である。
【0019】
第1レバー21、第2レバー22、第3レバー23には、ヨーク51,52,53を介してゴム製のワイパリップ60が連結されている。
なお、以降において、第1レバー21の長手方向(
図1及び
図2の左右方向)、第1レバー21の幅方向(
図1の上下方向)、第1レバー21の高さ方向(
図2の上下方向)を、それぞれ単に長手方向L、幅方向W、高さ方向Hとして説明する。
【0020】
図1及び
図3~
図6に示すように、長手方向Lにおける第1レバー21の中央部には、第1レバー21を高さ方向Hに貫通する収容孔24が設けられている。
図4~
図6に示すように、長手方向Lにおける収容孔24の中央部には、収容孔24の両側壁25に掛け渡された金属製の軸26が設けられている。軸26は、幅方向Wに沿って延在している。軸26は、インサート成形により第1レバー21と一体に形成されている。
【0021】
第1レバー21の収容孔24内には、硬質樹脂製の連結部材30が収容されている。本実施形態の連結部材30は、幅方向Wにおいて対称な形状を有している。
連結部材30は、ワイパアーム10の取付部14が連結される連結部31を有している。連結部31は、軸26が嵌め込まれる軸孔32及び軸孔32の周壁32aの一部(
図4及び
図5の下部)を開放するスリット33を有している。
【0022】
連結部材30は、連結部31の幅方向Wの両側から高さ方向Hの両側に延びるとともに、ワイパアーム10の取付部14の両側面14aを支持する一対の支持部34と、一対の支持部34に連なるとともにワイパアーム10の先端側(
図5及び
図6の右側)に向けて延出された一対の延出部36とを有している。
【0023】
各支持部34は、幅方向Wにおいて弾性変形可能な腕部35を有している。各腕部35は、連結部31の高さ方向Hにおいてスリット33が形成されている側(
図4及び
図5の下側)であり、且つ軸孔32よりもワイパアーム10の基端側(
図5及び
図6の左側)に設けられ、同基端側に向けて突出している。各腕部35の先端部は、アームピース13の取付部14の端面(
図5の左端面)よりもワイパアーム10の基端側(
図5の左側)に向けて突出している。各支持部34の腕部35同士は、互いに独立している。
【0024】
各腕部35は、支持部34における他の部分よりも薄肉な薄肉部35aを有している。本実施形態では、腕部35のうち先端部35bを除く基端側の部分が、支持部34における腕部35以外の部分よりも薄肉とされている。
【0025】
図6に示すように、幅方向Wにおける腕部35の外面同士の間隔は、幅方向Wにおける側壁25同士の間隔と同一に設定されている。したがって、一対の支持部34の腕部35と、収容孔24の両側壁25とがそれぞれ当接している。
【0026】
図4に示すように、各延出部36の先端部には、幅方向Wの内側に向けて軸部37が突設されている。固定部材40の両側面には、軸部37が挿入される一対の軸穴41が形成されている。固定部材40は、連結部材30に対して各軸部37を中心に回動可能に取り付けられている。
【0027】
図4~
図6に示すように、固定部材40は、一対の延出部36同士の間に挿入されることで、取付部14に対して弾性的に係合する係合部42を有している。係合部42が取付部14に対して係合することにより、アームピース13の取付部14が連結部31に取り付けられた状態に固定される。
【0028】
こうした構成を備えるワイパ装置においては、連結部材30が、軸26を中心に回動することでワイパアーム10に対してワイパブレード20を回動可能に連結している。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0029】
連結部材30の一対の支持部34が上記腕部35を有している。このため、ワイパアーム10に対してワイパブレード20が回動する際、腕部35が収容孔24の側壁25に押し付けられると、腕部35が幅方向Wの内側に向けて弾性変形するようになる。これにより、腕部35と収容孔24の側壁25との間に作用する摩擦抵抗が抑えられるようになり、
図2に矢印Bにて示すように、ワイパアーム10に対してワイパブレード20が回動する際の回動トルクが小さくなる。すなわち、ガラス面に対してワイパブレード20の姿勢が追従しやすくなる。
【0030】
このように本実施形態によれば、腕部35の弾性変形を利用することでワイパアーム10に対するワイパブレード20の回動トルクを小さくできることから、収容孔24の両側壁25と一対の腕部35との間の間隔を小さく設定することが可能となる。これにより、ワイパブレード20と連結部材30との間の隙間に起因するワイパブレード20の先端の変動量(
図1の矢印A方向の変動量)を低減でき、所謂びびりの発生を抑制できる。
【0031】
特に、上記腕部35は、軸孔32よりもワイパアーム10の基端側に設けられており、基端側に向けて突出する部位である、すなわち、連結部材30においてワイパブレード20の先端から最も離れた部位である。このため、ワイパブレード20の先端の変動量を効果的に低減できる。
【0032】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)連結部材30一対の支持部34は、連結部31の高さ方向Hにおいてスリット33が形成されている側であり、且つ軸孔32よりもワイパアーム10の基端側に設けられ、同基端側に向けて突出する弾性変形可能な腕部35を有している。こうした構成によれば、上記作用を奏することから、ワイパアーム10に対するワイパブレード20の回動トルクの増大抑制と、ワイパブレード20の先端の変動抑制との両立を図ることができる。
【0033】
(2)腕部35は、支持部34における他の部分よりも薄肉な薄肉部35aを有している。こうした構成によれば、連結部材30の設計に際して腕部35の薄肉部35aの厚さを調整することによって、腕部35の強度や弾性変形の度合を容易に調整することができる。
【0034】
(3)一対の支持部34の腕部35と、収容孔24の両側壁25とがそれぞれ当接している。こうした構成によれば、一対の支持部34の腕部35と収容孔24の両側壁25との間の間隔がゼロとされるため、ワイパブレード20と連結部材30との間の隙間に起因するワイパブレード20の先端の変動量を低減でき、所謂びびりの発生を効果的に抑制できる。
【0035】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0036】
・上記実施形態では、一対の支持部34の腕部35と、収容孔24の両側壁25とがそれぞれ当接する構成について例示したが、一対の支持部34の腕部35と、収容孔24の両側壁25との間に僅かな隙間が存在するものであってもよい。
【0037】
・腕部35全体を薄肉部35aにすることもできる。
・腕部35は薄肉部35aを有していないものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…ワイパアーム
11…アームヘッド
12…リテーナ
13…アームピース
14…取付部
14a…側面
20…ワイパブレード
21…第1レバー
22…第2レバー
23…第3レバー
24…収容孔
25…側壁
26…軸
30…連結部材
31…連結部
32…軸孔
32a…周壁
33…スリット
34…支持部
35…腕部
35a…薄肉部
35b…先端部
36…延出部
37…軸部
40…固定部材
41…軸穴
42…係合部
51,52,53…ヨーク
60…ワイパリップ