(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】マイクロサテライト不安定性(MSI)癌の予防及び治療のための共通腫瘍ネオアンチゲンをベースとした万能ワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230509BHJP
C40B 30/00 20060101ALI20230509BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230509BHJP
C07K 4/12 20060101ALI20230509BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20230509BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20230509BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230509BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230509BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C40B30/00
C12Q1/6869 Z
C07K4/12
C07K14/435
C40B40/10
C40B40/08
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/867 Z
A61P35/00
A61K39/00 H
(21)【出願番号】P 2020501311
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2018069032
(87)【国際公開番号】W WO2019012082
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-17
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518435943
【氏名又は名称】ノイスコム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】ニコシア,アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】スカルセッリ,エリーザ
(72)【発明者】
【氏名】レオーニ,グイド
(72)【発明者】
【氏名】ラーム,アルミン
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/020026(WO,A1)
【文献】Stefan M. Woerner et al.,Systematic identification of genes with coding microsatellites mutated in DNA mismatch repair-deficient cancer cells.,Int. J. Cancer,2001年07月01日,Vol.93, No.1,p.12-19,doi: 10.1002/ijc.1299
【文献】Yvette Schwitalle et al.,Immunogenic peptides generated by frameshift mutations in DNA mismatch repair-deficient cancer cells.,Cancer Immun.,2004年11月25日,Vol.4,p.14
【文献】Shen Luhui et al.,Abstract 469: Progress towards developing a universal, prophylactic cancer vaccine.,Cancer Res.,2013年04月,Vol.73, No.8 Suppl,p.1-4,https://cancerres.aacrjournals.org/content/73/8_Supplement/469,doi: 10.1158/1538-7445.AM2013-469
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝性及び散発性のMSI癌を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療のための万能マイクロサテライト不安定性(MSI)癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)を作製するためにフレームシフトペプチドのコレクション(CFSP)を選択する方法であって、
(i)各々がフレームシフト突然変異(FSM)を含む核酸のコレクション(CFSM)を選択する工程であって、各FSMが各々異なる患者の少なくともM個の癌サンプル(CS)の1つ以上に存在し、前記患者の癌がMSI表現型を有する癌細胞を含み、
選択されるFSMの少なくとも50%が基準(a)、(b)、(c)及
び(d):
(a)前記FSMが6ヌクレオチド以上の長さを有するコード遺伝子のモノヌクレオチド反復(MNR)中に存在する;
(b)前記FSMが1ヌクレオチドの欠失に相当する;
(c)前記FSMを含むDNAシークエンシングリードの数が適合正常サンプルと比較して腫瘍サンプル中で有意に高い(0.05以下のFDR補正フィッシャー検定p値);
(d)前記FSMが25%未満の対立遺伝子頻度で適合正常サンプル中に存在する;
を満たす、工程と、
(ii)X個の異なるフレームシフトペプチド(FSP)を選択する工程であって、選択される各FSPが、FSMを有しない対応する野生型(wt)核酸の翻訳産物と比べて異なる最初のアミノ酸をコードするコドンから始まる少なくとも4アミノ酸長のCFSMのFSMを含む核酸のタンパク質コードセグメントの完全な翻訳産物であり、
Xが少なくとも2
0であり、Mが少なくとも5である、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
選択されるFSPの少なくとも50%が、以下の基準:
(a)前記FSPが、CS中に存在する癌型の少なくとも1つについて少なくとも5%であるM個の異なるCSのコレクションの一部である特定の型の癌のCSのサブセットについて観察される癌型特異的頻度(CF)で観察されるFSMを含む核酸によってコードされる、及び/又は;
(b)前記FSPをコードする前記FSMを有する遺伝子の平均mRNA発現レベルが、前記CS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位80パーセンタイル内にある、及び/又は;
(c)前記FSPを生じる前記FSMが、癌を有しない被験体のコホートにおいて正常組織の2%未満で観察される;
の1つ以上を満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)前記CSがMSI腫瘍、又は大腸癌及び/又は胃癌及び/又は子宮内膜癌、又は大腸癌、胃癌及び子宮内膜癌を有する患者に由来し、及び/又は、
(ii)Mが少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、若しくは少なくとも300であり、及び/又は、
(iii)Xが少なくとも35、少なくとも50、少なくとも100、若しくは少なくとも200である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)に含まれるペプチドのアミノ酸配列又は該CVPに含まれるペプチドをコードする核酸配列を修飾する方法であって、
(a)少なくともY個のフレームシフトペプチド(FSP)又はその少なくとも8アミノ酸長のフラグメントを、請求項1~3のいずれか一項に従って選択されるフレームシフトペプチドのコレクション(CFSP)から選択する工程と、
(b)以下の基準:
(i)前記FSPが4アミノ酸~9アミノ酸の長さを有する、及び/又は;
(ii)前記FSPが、同じフレームシフト突然変異(FSM)を含む核酸によってコードされる2つ以上のFSP中に存在する8アミノ酸以上の1つ以上の同一の連続ストレッチを含有する、及び/又は;
(iii)前記FSPが、wtヒトタンパク質中にも存在する8アミノ酸以上の1つ以上の連続ストレッチを含有する;
を満たすFSPの1つ以上又は全てのアミノ酸配列を修飾する工程であって、
(i)に従うFSPのアミノ酸配列が、該FSPのすぐ上流に存在する野生型(wt)アミノ酸配列の1個~4個のアミノ酸を該FSPのN末端に付加することによって修飾され、修飾FSP(mFSP)が少なくとも8アミノ酸の長さを有し、(ii)に従うFSPのアミノ酸配列が、最長のFSPを除く全てからこれらの連続ストレッチを除去することによって修飾されるが、但し、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有するFSPは、前記CVPから除外され、及び/又は(iii)に従うFSPのアミノ酸配列が、これらのストレッチを除去することによって修飾され、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有する修飾FSPが前記CVPから除外される、工程と、
を含み、前記CVPのアミノ酸配列が、工程(a)において選択され、及び/又は工程(b)において修飾される前記FSP又はそのフラグメントのアミノ酸配列を含み、
Yが少なくとも2
0である、方法。
【請求項5】
工程(a)において、前記CVPの前記FSPが前記CFSPから続けて選択され、各選択工程において、依然として閾値(TV)未満である最大数の癌サンプルにおける閾値に達するように全FSPアミノ酸長の累積量(CAFSPL)を増加させる新たなFSPが前記CFSPから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)において、前記CVPの前記FSPが前記CFSPから続けて選択され、各選択工程において、依然として閾値(TV)未満である最大数の癌サンプルにおける閾値に達するように全FSPアミノ酸長の累積量(CAFSPL)を増加させる新たなFSPが前記CFSPから選択され、2つ以上のFSPにより、CAFSPLが依然として閾値未満である最大数の癌サンプルについてのCAFSPLが増加する場合、最高のスコアを有するFSPが選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
(i)各癌サンプルについてのCAFSPLが、既に前記CVPの一部であるFSP及び対応するFSMが前記癌サンプル中に存在するCFSPからの新たなFSPのアミノ酸長を合計することによって決定され、及び/又は、
(ii)前記閾値が、特定の癌型に属する癌サンプル(CS)からのサンプルの各サブセットについて別々に規定され、及び/又は、
(iii)前記スコアが、前記FSPのアミノ酸長と該FSPを生じるFSMが前記CSにおいて観察される全体的頻度との積として定義され、及び/又は、
(iv)前記癌サンプルのサブセットが、前記FSMが5%以上のCFで存在する腫瘍型の全ての癌サンプルを含み、及び/又は、
(v)5%未満の全体的頻度でFSMによって生じるFSPが選択から除外され、及び/又は、
(vi)前記CVPへの組入れが、CAFSPLが依然として閾値(TV)未満であるか、若しくは前記CVP中に存在する全てのFSPの累積長さがV個のアミノ酸の最大値に達した任意の癌サンプルのCAFSPLを増加させる更なるFSPが得られなくなるまで、新たなFSP及び/又は修飾FSPの付加を継続し、及び/又は、
(vii)同じFSMに由来するFSPを、個々のFSPのスコアの合計として算出される複合スコアを有する1つのFSPとして扱う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)各癌サンプルについてのCAFSPLが、既に前記CVPの一部であるFSP及び対応するFSMが前記癌サンプル中に存在するCFSPからの新たなFSPのアミノ酸長を合計することによって決定され、及び/又は、
(ii)前記閾値が、特定の癌型に属する癌サンプル(CS)からのサンプルの各サブセットについて別々に規定され、及び/又は、
(iii)前記スコアが、癌型特異的頻度(CF)が5%未満の癌型のCS中のFSMを計数することなく、前記FSPのアミノ酸長と該FSPを生じるFSMが前記CSにおいて観察される全体的頻度との積として定義され、及び/又は、
(iv)前記癌サンプルのサブセットが、前記FSMが5%以上のCFで存在する腫瘍型の全ての癌サンプルを含み、及び/又は、
(v)5%未満の全体的頻度でFSMによって生じるFSPが選択から除外され、及び/又は、
(vi)前記CVPへの組入れが、CAFSPLが依然として閾値(TV)未満であるか、若しくは前記CVP中に存在する全てのFSPの累積長さがV個のアミノ酸の最大値に達した任意の癌サンプルのCAFSPLを増加させる更なるFSPが得られなくなるまで、新たなFSP及び/又は修飾FSPの付加を継続し、及び/又は、
(vii)同じFSMに由来するFSPを、個々のFSPのスコアの合計として算出される複合スコアを有する1つのFSPとして扱う、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記CVPへの組入れが、CAFSPLが依然としてTV未満である任意の癌サンプルのCAFSPLを増加させる更なるFSPが得られなくなるまで、新たなFSPの付加を継続し、及び/又は、
同じFSMに由来するFSPを、個々のFSPのスコアの合計として算出される複合スコアを有する1つのFSPとして扱う、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記TVが少なくとも400アミノ酸、少なくとも600アミノ酸、若しくは少なくとも800アミノ酸であるか、又は、
(b)前記TVが、
(i)大腸癌及び胃癌について少なくとも400アミノ酸、少なくとも600アミノ酸、若しくは少なくとも800アミノ酸であり、
(ii)子宮内膜癌について少なくとも200アミノ酸、少なくとも300アミノ酸、若しくは少なくとも400アミノ酸である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記CVPが前記CFSPから選択される各FSPの少なくとも4個のアミノ酸を含み、及び/又は、
(ii)Yが、前記CVPの一部である全てのペプチドの累積アミノ酸長Vが少なくとも280アミノ酸若しくは少なくとも6000アミノ酸となるように選択され、
(iii)Yが少なくとも35、少なくとも50、少なくとも100、若しくは少なくとも200であり、及び/又は、
(iv)前記CVPが配列番号1~1087に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択され、又は配列番号1~209に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択されるFSP及び/又はmFSPを含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)又はCVPをコードする核酸のコレクションを作製する方法であって、
(i)請求項4~9のいずれか一項に記載の方法において修飾されるアミノ酸又は核酸の配列を得る工程と、
(ii)1つ以上のポリペプチド中のCVPのアミノ酸配列又は前記配列を有する核酸のコレクションを合成する工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)又はCVPをコードする核酸のコレクションを作製する方法であって、
(i)請求項4~9のいずれか一項に記載の方法において修飾されるアミノ酸又は核酸の配列を得る工程と、
(ii)1つ以上のポリペプチド中のCVPのアミノ酸配列又は前記配列を有する核酸のコレクションを合成すると共に、前記核酸のコレクションを1つ以上の発現カセット及び/又は発現ベクターのコレクションに挿入する工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
配列番号1~209に従う209個のフレームシフトペプチド(FSP)及び修飾FSP(mFSP)を含む、癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)。
【請求項15】
A)配列番号1088~1091、
B)配列番号1092~1095、
C)配列番号1155~1158、又は
D)配列番号1159~1162
に従うアミノ酸配列を有する4つのポリペプチドを含む、請求項14に記載の癌ワクチンペプチドコレクション。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の癌ペプチドコレクション(CVP)をコードする核酸のコレクション。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸のコレクションの全て又は一部を各々が含む発現ベクターのコレクションであって、該発現ベクターのコレクションの全体が請求項16に記載の核酸のコレクションの全てを含む、発現ベクターのコレクション。
【請求項18】
前記発現ベクターの少なくとも1つが前記発現ベクターの免疫原性を増強する1つ以上の要素を含む、請求項17に記載の発現ベクターのコレクション。
【請求項19】
前記発現ベクターの少なくとも1つが、癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)の免疫原性を増強する要素:不変鎖配列又はそのフラグメント;ヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子のシグナルペプチド;PEST配列;サイクリン破壊ボックス;ユビキチン化シグナル;SUMO化シグナル;インターロイキン、又はインターロイキン2、インターロイキン12又はインターロイキン15;チェックポイントタンパク質特異的リガンド、又は抗PD1抗体又はそのPD1結合フラグメント、抗CTLA4抗体又はその抗CTLA4結合フラグメント、抗LAG3抗体又は抗LAG3結合フラグメント、抗TIM3抗体又はその抗TIM3結合フラグメントをコードする1つ以上の核酸を含む、請求項17又は18に記載の発現ベクターのコレクション。
【請求項20】
各発現ベクターがプラスミド、コスミド、RNA、アジュバントと配合されたRNA、リポソーム粒子中に配合されたRNA、自己増幅RNA(SAM)、アジュバントと配合されたSAM、リポソーム粒子中に配合されたSAM、ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、複製可能な又は複製不全のアデノウイルスベクター、チンパンジー又はボノボ又はゴリラに由来する複製可能な又は複製不全のアデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)ベクター、サル又はヒトサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター、並びにレトロウイルス又はレンチウイルスベクターからなる群から選択される、請求項17~19のいずれか一項に記載の発現ベクターのコレクション。
【請求項21】
MSI表現型を有する癌細胞を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療に使用され、予防法が、MLH-1、MSH-2、MSH-6、PMS2及びTACSTD1/EPCAM等のミスマッチ修復系(MMR)に関与する遺伝子に生殖細胞突然変異を有する患者を含む、マイクロサテライト不安定性(MSI)癌を発症するリスクがあることが知られる患者に対するものであり、治療が、MSI状態の診断後の任意の組織に生じる全ての病期(I~IV)の癌を有する患者に対するものであり、かかるワクチンの使用が、自然発生の又は薬理学的に誘導されたものであり得るMSI状態を有する癌の治療を対象とし、癌が大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、小腸癌、肝胆道癌、肝癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮肉腫、脳癌及び皮膚癌からなる群から選択される、請求項14又は15に記載の癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)、請求項16に記載の核酸のコレクション、請求項17~20のいずれか一項に記載の発現ベクターコレクション。
【請求項22】
マイクロサテライト不安定性(MSI)表現型を有する癌細胞を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療に使用され、核酸のコレクション及び/又は発現ベクターコレクションが異種プライム-ブーストワクチン接種スキームで投与され、プライムがアデノウイルスベクターによるものであり、1回以上のブーストがポックスウイルスベクター若しくはMVAベクターによるものであり、予防法が、MLH-1、MSH-2、MSH-6、PMS2及びTACSTD1/EPCAM等のミスマッチ修復系(MMR)に関与する遺伝子に生殖細胞突然変異を有する患者を含む、MSI癌を発症するリスクがあることが知られる患者に対するものであり、治療が、MSI状態の診断後の任意の組織に生じる全ての病期(I~IV)の癌を有する患者に対するものであり、かかるワクチンの使用が、自然発生の又は薬理学的に誘導されたものであり得るMSI状態を有する癌の治療を対象とし、癌が大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、小腸癌、肝胆道癌、肝癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮肉腫、脳癌及び皮膚癌からなる群から選択される、請求項16に記載の核酸のコレクション及び/又は請求項17~20のいずれか一項に記載の発現ベクターコレクション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝性及び散発性のマイクロサテライト不安定性(MSI)腫瘍を有する患者の予防法及び治療のための万能癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)を作製するためにフレームシフトペプチドのコレクション(CFSP)を選択する方法に関する。本発明は、CFSPからフレームシフトペプチド(FSP)のサブセットを選択し、任意にFSPのアミノ酸(aa)配列を修飾して修飾FSP(mFSP)を生成することによってCVPを作製する方法にも関する。本発明は、同時に使用することもできる1つ以上のワクチンベクター中のFSP及び/又はmFSPのCVPをコードする核酸コレクションに更に関する。これらのCVP、核酸及びベクターは、MSI癌の予防法又は治療に使用される。
【背景技術】
【0002】
癌ワクチンの分野では、長年にわたって腫瘍関連抗原、ここ最近では腫瘍特異抗原の標的化に重点が置かれていた。腫瘍特異抗原は、発癌性ウイルスタンパク質、又は腫瘍ネオアンチゲンの産生をもたらすコード遺伝子における体細胞突然変異により癌細胞において生じる可能性があり、正常細胞中に存在しないことからそのように定義される。腫瘍ネオアンチゲンは、より低い自己寛容及び自己免疫のリスクのためにより魅力的ではあるが、所与の患者の癌性細胞及びヒト集団によって大きく異なり、共通腫瘍ネオアンチゲンをベースとした効果的な万能癌ワクチンの開発の妨げとなる。
【0003】
しかしながら、その根底にある生物学のために、この原則に従わない癌の群:DNAミスマッチ修復遺伝子(MMR)における突然変異に起因することが多いマイクロサテライト不安定性(MSI)腫瘍が存在する。MMR系の欠陥は、マイクロサテライトと呼ばれる反復ヌクレオチド配列の領域における突然変異の蓄積を引き起こす。コード遺伝子のマイクロサテライトでの突然変異は、翻訳リーディングフレームのシフトを引き起こし、C末端が新規の非自己ペプチド、いわゆるフレームシフトペプチド(FSP)から構成されるキメラタンパク質を生じる可能性がある。他の殆どの癌とは異なり、MSI腫瘍における突然変異は、モノヌクレオチド反復(MNR)からなるマイクロサテライトにおいて他に優先して生じる。コード領域内では、かかる突然変異は主として1ヌクレオチドの欠失からなり、限られた数の遺伝子に影響を及ぼすため、患者間で共通する(非特許文献1)。
【0004】
したがって、MSI関連癌は、共通腫瘍ネオアンチゲンをベースとした万能ワクチンを設計する、またとない機会をもたらす。MSI腫瘍には、それぞれMMR遺伝子における体細胞突然変異及び生殖細胞突然変異に起因する、散発性癌及び遺伝性癌の両方が含まれる。リンチ症候群(LS)は、第2の群に当てはまる希少疾患(ORPHA144)である。特に、MMR経路のMSH2遺伝子又はMLH1遺伝子のいずれかにヘテロ接合生殖細胞突然変異を有する個体(遺伝的LS保因者の約90%)は、より癌を発症するリスクが高い。具体的には、これらの個体は、生涯にわたって50%を超えて結腸癌又は子宮内膜癌を発症する傾向がある(非特許文献2)。
【0005】
要約すると、本明細書に記載される本発明は、MSI腫瘍で共通するFSPネオアンチゲンの特定、並びに特にLS保因者におけるMSI癌の治療及びそれらの予防のためのCFSPから得られるFSP及び修飾FSPのサブセットをベースとする万能ワクチン(CVPとして定義される)の開発に関する。これらのCVPは、特に以下の利点を与える可能性がある:(i)多様なMSI癌に対する良好な治療的及び/又は予防的免疫応答、(ii)使用準備済であり、多くの共通FSPをコードするために大きな患者コホートにおいて効果的な既製ワクチン、(iii)任意のMSI癌の治療及び予防法に好適であるように特定のCVPを選択することができること(このことは予防の状況において特に有用である)、(iv)潜在的自己エピトープの排除のために自己免疫応答のリスクがないこと。
【0006】
本発明者らの知る限りでは、本発明の方法は、以下のものを含む、これまでに知られていない様々な特徴によって特徴付けられる:
(i)
a)概して、選択腫瘍型において閾値を超えて発現される遺伝子からのフレームシフトペプチドの選択、
b)健常被験体の組織では存在しない又は極めて稀なフレームシフトペプチドの選択、
c)正常ヒトタンパク質中の8アミノ酸以上の長さを有するセグメントと同一のセグメントのフレームシフトペプチドからの除外、及び、
c)多数の癌サンプルの使用、
等の様々な安全対策。
(ii)最小の推定CD8+T細胞エピトープ(8量体)よりも長さが短いフレームシフトペプチドの組入れ。これは、少なくとも8アミノ酸のペプチドを生成する、最大4つの野生型アミノ酸の付加によって達成される。
(iii)個々の癌サンプル(癌サンプルがワクチンの標的とされる集団である)が各々、ワクチンによってコードされるフレームシフトペプチドの一部分を含有し、この部分で表されるフレームシフトペプチドの全長が少なくとも400アミノ酸となるような、ワクチンに含まれるフレームシフトペプチドの最適なコレクションの選択。ウイルス抗原を標的とするワクチンの臨床試験から、概して、フレームシフトペプチドと同様に400アミノ酸のウイルス抗原、すなわち非自己抗原が各患者において少なくとも1回の免疫原性T細胞応答を生じるのに必要とされることが示された。各癌サンプルについてカバーされるフレームシフトペプチドの部分は異なるが(すなわち、各癌サンプルはフレームシフト突然変異の異なるサブセットを含有し、結果として、最適なコレクションからのフレームシフトペプチドの異なるサブセットが存在する)、最適なコレクションは、各腫瘍サンプル中のカバーされるフレームシフトペプチドの画分が少なくとも400アミノ酸の全長を有するように選択される。このため、この400アミノ酸の法則を開示の選択方法に組み込むことで、ワクチン標的集団の腫瘍中に存在するFSPに対するT細胞の誘導が確実になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Kim, T.M., et al. (2013) Cell 155(4): 858-868
【文献】Boland, C.R. and A. Goel (2010) Gastroenterology 138(6): p. 2073-2087 e3
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、遺伝性及び散発性のMSI癌を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療のための万能マイクロサテライト不安定性(MSI)癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)を作製するためにフレームシフトペプチドのコレクション(CFSP)を選択する方法であって、
(i)各々がフレームシフト突然変異(FSM)を含む核酸のコレクション(CFSM)を選択する工程であって、各FSMが各々異なる患者の少なくともM個の癌サンプル(CS)の1つ以上に存在し、前記患者の癌がMSI表現型を有する癌細胞を含み、
選択されるFSMの少なくとも50%が基準(a)、(b)、(c)及び/又は(d):
(a)前記FSMが6ヌクレオチド以上の長さを有するコード遺伝子のモノヌクレオチド反復(MNR)中に存在する;
(b)前記FSMが1ヌクレオチドの欠失に相当する;
(c)前記FSMを含むDNAシークエンシングリードの数が適合正常サンプルと比較して腫瘍サンプル中で有意に高い(0.05以下のFDR補正フィッシャー検定p値);
(d)前記FSMが25%未満の対立遺伝子頻度で適合正常サンプル中に存在する;
を満たす、工程と、
(ii)X個の異なるフレームシフトペプチド(FSP)を選択する工程であって、選択される各FSPが、FSMを有しない対応する野生型(wt)核酸の翻訳産物と比べて異なる最初のアミノ酸をコードするコドンから始まる少なくとも4アミノ酸長のCFSMのFSMを含む核酸のタンパク質コードセグメントの完全な翻訳産物であり、
Xが少なくとも20、より好ましくは少なくとも35であり、Mが少なくとも5である、工程と、を含む、方法に関する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、CVPに含まれるペプチドのアミノ酸配列又は該CVPに含まれるペプチドをコードする核酸配列を決定する方法であって、
(a)少なくともY個のFSP又はその少なくとも8アミノ酸長のフラグメントを、本発明の第1の態様に従って選択されるCFSPから選択する工程と、
(b)以下の基準:
(i)前記FSPが4アミノ酸~9アミノ酸の長さを有する、及び/又は;
(ii)前記FSPが、同じFSMによってコードされる2つ以上のFSP中に存在する8アミノ酸以上の1つ以上の同一の連続ストレッチを含有する、及び/又は;
(iii)前記FSPが、wtヒトタンパク質中にも存在する8アミノ酸以上の1つ以上の連続ストレッチを含有する;
を満たすFSPの1つ以上又は全てのアミノ酸配列を修飾する工程であって、
(i)に従うFSPのアミノ酸配列が、該FSPのすぐ上流に存在する野生型(wt)アミノ酸配列の1個~4個のアミノ酸を該FSPのN末端に付加することによって修飾され、修飾FSP(mFSP)が少なくとも8アミノ酸の長さを有し、(ii)に従うFSPのアミノ酸配列が、最長のFSPを除く全てからこれらの連続ストレッチを除去することによって修飾されるが、但し、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有するFSPは、前記CVPから除外され、及び/又は(iii)に従うFSPのアミノ酸配列が、これらのストレッチを除去することによって修飾され、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有する修飾FSPが前記CVPから除外される、工程と、
を含み、前記CVPのアミノ酸配列が、工程(a)において選択され、及び/又は工程(b)において修飾される前記FSP又はそのフラグメントのアミノ酸配列を含み、
Yが少なくとも20、より好ましくは少なくとも35である、方法に関する。
【0010】
第3の態様では、本発明は、CVP又はCVPをコードする核酸のコレクションを作製する方法であって、
(i)本発明の第2の態様の方法において決定されるアミノ酸又は核酸の配列情報を得る工程と、
(ii)1つ以上のポリペプチド中のCVPのアミノ酸配列又は前記配列を有する核酸のコレクションを合成すると共に、任意に前記核酸のコレクションを1つ以上の発現カセット及び/又は発現ベクターのコレクションに挿入する工程と、
を含む、方法に関する。
【0011】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様の方法によって作製することができるCVP又は該CVPのペプチドをコードする核酸のコレクションに関する。
【0012】
第5の態様では、Y個の異なるFSP及び/又はmFSPを含むか又はそれらからなるCVPであって、各FSP又はmFSPへと修飾されるFSPが、いずれの場合も少なくとも4アミノ酸長の、FSMを有しない対応するwt核酸の翻訳産物と比べて異なる最初のアミノ酸をコードするコドンから始まるFMS含有核酸のタンパク質コードセグメントのフラグメント又は完全な翻訳産物であり、前記FSP又は前記mFSPへと修飾されるFSPの少なくとも50%が、以下の基準:
(a)前記FSPが、CS中に存在する癌型の少なくとも1つについて少なくとも5%であるM個の異なるCSのコレクションの一部である特定の型の癌のCSのサブセットについて観察される癌型特異的頻度(CF)で観察されるFSMによってコードされる、及び/又は;
(b)前記FSPをコードする前記FSMを有する遺伝子の平均mRNA発現レベルが、前記CS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位80パーセンタイル内にある、及び/又は;
(c)前記FSPを生じる前記FSMが、癌を有しない被験体のコホートにおいて正常組織の2%未満で観察される;
の1つ以上を満たし、
以下の基準:
(i)FSPが4アミノ酸~9アミノ酸の長さを有する、及び/又は;
(ii)前記FSPが、同じFSMによってコードされる2つ以上のFSP中に存在する8アミノ酸以上の1つ以上の同一の連続ストレッチを含有する、及び/又は;
(iii)前記FSPが、wtヒトタンパク質中にも存在する8アミノ酸以上の1つ以上の連続ストレッチを含有する;
を満たすこれらのFSPの1つ以上又は全てのアミノ酸配列が、(i)に従うFSPについては、該FSPのすぐ上流に存在する野生型(wt)アミノ酸配列の1個~4個のアミノ酸を該FSPのN末端に付加することによって修飾され、修飾FSP(mFSP)が少なくとも8アミノ酸の長さを有し、(ii)に従うFSPについては、最長のFSPを除く全てからこれらの連続ストレッチを除去することによって修飾されるが、但し、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有するFSPは、該CVPから除外され、及び/又は(iii)に従うFSPについては、これらのストレッチを除去することによって修飾され、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有する修飾FSPが該CVPから除外され、
Yが少なくとも20、より好ましくは少なくとも35であり、Mが少なくとも5である、CVP。
【0013】
第6の態様では、本発明は、本発明の第5の態様のCVPをコードする核酸コレクションに関する。
【0014】
第7の態様では、本発明は、本発明の第4又は第6の態様の核酸コレクションの全て又は一部を各々が含む1つ以上の発現ベクターのコレクションであって、該発現ベクターのコレクションの全体が本発明の第4又は第6の態様の核酸コレクションの全てを含む、発現ベクターのコレクションに関する。
【0015】
第8の態様では、本発明は、MSI表現型を有する癌細胞を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療に使用され、癌が好ましくは大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、小腸癌、肝胆道癌、肝癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮肉腫、脳癌及び皮膚癌からなる群から選択される、本発明の第4又は第5の態様のCVP、本発明の第4又は第6の態様の核酸コレクション、本発明の第7の態様の発現ベクターコレクションに関する。
【0016】
第8の(eighth)態様では、本発明は、MSI表現型を有する癌細胞を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療に使用され、核酸コレクション及び/又は発現ベクターコレクションが異種プライム-ブーストワクチン接種スキームで投与され、好ましくはプライムがアデノウイルスベクターによるものであり、1回以上のブーストがMVAベクターによるものである、本発明の第4若しくは第6の態様の核酸コレクション及び/又は本発明の第7の態様の発現ベクターコレクションに関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】抗原の長さによってワクチンにより誘導される免疫原性エピトープの数が決まることを示す図である。
【
図2】MSI細胞株におけるNous-209の免疫原性カバレッジを示す図である。
【
図3】MSI CRC生検材料におけるNous-209の免疫原性カバレッジを示す図である。
【
図4】MSI患者の生検材料におけるNous-209から生じる予測MHC-I結合エピトープの数を示す図である。
【
図5】Nous-209に含まれる配列番号123に対応するFSPがHLA.A02トランスジェニックマウスにおいてin vivoで免疫原性であることを示す図である。インターフェロンγ(IFN-γ)についての細胞内染色(ICS)によって測定される、5匹の動物におけるFSP配列番号123中に存在するHLA-A02九量体に対する代表的なCD8 T細胞応答(パネルA)。FSP反応性T細胞のかなりの割合(5.6%)を示す、これらのマウスの1匹に由来するIFN-γ+CD8 T細胞についてのゲーティング戦略のFACSプロット(パネルB)。
【
図6】Nous-209 FSPをレイアウトA及びBで含有する8つの人工ポリペプチドについてIUPREDによって予測される障害プロファイルを示す図である。
【
図8】マウスにおけるGAd20-209-FSP/MVA-209-FSPプライム(prime:初回刺激)/ブースト(boost:追加免疫)計画の免疫原性を示す図である。IFNγ ELISpot応答をGAd20-209-FSPプライムの2週間後(GAd)及びMVA-209-FSPブーストの1週間後(GAd/MVA)に測定する。ワクチンによってコードされる209個のFSPのポリペプチド配列をカバーする合成ペプチドの16個のプール(P1~P16)に対する応答(脾細胞100万個当たりのIFNγを産生するT細胞の数)を示す。
【
図9】209個のFSP配列をカバーする16個のプールの各々に対する免疫応答の測定を示す図である。GAd20-209-FSP/MVA-209-FSPをワクチン接種したマウスの脾細胞に対するブースト後に測定したIFNγ ELISpot応答。ワクチンによってコードされる209個のFSPのポリペプチド配列をカバーする合成ペプチドの16個のプール(P1~P16)の各々に対する応答(脾細胞100万個当たりのIFNγを産生するT細胞の数)を示す。
【
図10】単一ベクターによってコードされるFSPに対するワクチンにより誘導される免疫応答がベクターの同時投与の影響を受けないことを示す図である。IFNγ ELISpot応答を、ベクター混合物又は単一ベクターで免疫化したマウスにおいてプライム後(第2週、灰色のバー)及びブースト後(第3週、黒色のバー)に測定する。ベクターFSPA1によってコードされるFSPの配列をカバーする合成ペプチドの4個のプール(P1~P4)(A)及びベクターFSPA2によってコードされるFSPの配列をカバーする合成ペプチドの4個のプール(P5~P8)(B)に対する応答(脾細胞100万個当たりのIFNγを産生するT細胞の数)を示す。統計値をノンパラメトリックマン-ホイットニーU検定によって算出する(ns=p>0.05)。
【
図11】Nous-209に含まれる配列番号123に対応するFSP(FSP-ペプチド)がHLA.A02トランスジェニックマウスにおいてin vivoで免疫原性であることを示す図である。A)IFNγ+CD8+FSP特異的T細胞応答及びDMSP対照について観察される応答のパーセンテージ。B)DMSO対照(上)及びFSPペプチド(下)についての代表的なマウスサンプルの1つに由来するIFN-γ+CD8 T細胞についてのゲーティング戦略のFACSプロット。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を以下で詳細に記載する前に、本明細書中に記載する特定の方法論、プロトコル及び試薬は変動し得るので、本発明はこれらに限定されないことを理解すべきである。本明細書中で使用される専門用語が、特定の実施形態を記載するためのものにすぎず、添付した特許請求の範囲のみによって限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも理解すべきである。他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0019】
好ましくは、本明細書中で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Klbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)に記載されるように、並びにAxel Kleemann and Jurgen Engel, Thieme Medical Publishing, 1999による"Pharmaceutical Substances: Syntheses, Patents, Applications"、"Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals", Susan Budavari et al.編, CRC Press, 1996、及びUnited States Pharmacopeia-25/National Formulary-20(the United States Pharmcopeial Convention, Inc., Rockville Md., 2001により出版)に記載されるように定義される。
【0020】
以下の本明細書及び添付の特許請求の範囲を通じて、文脈上他に必要な場合以外は、「を含む(comprise)」という単語、並びに「を含む(comprises)」及び「を含む(comprising)」等の変化形は、記載された特徴、整数若しくは工程、又は特徴、整数若しくは工程の群を包含することを示唆するが、任意の他の特徴、整数若しくは工程、又は整数若しくは工程の群を除外することを示唆しないと理解される。以下の節では本発明の種々の態様をより詳細に規定する。そのようにして規定した各態様は、反対の内容が明示されない限り、任意の他の態様(単数又は複数)と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であるとして示した任意の特徴を、好ましい又は有利であるとして示した任意の他の特徴(単数又は複数)と組み合わせることができる。
【0021】
複数の文書が、本明細書の文章全体を通じて引用される。本明細書中で引用される文書(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の仕様書、取扱説明書等を含む)の各々が、上記のものであるか又は下記のものであるかに関わらず、その全体において引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書のどの記載も、本発明が従来の発明に基づくかかる開示に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈すべきではない。
【0022】
定義
以下で、本明細書で頻繁に使用される用語の幾つかの定義を示す。これらの用語は、それらがそれぞれ使用される場合に、本明細書の残りの部分では、それぞれ定義される意味及び好ましい意味を有することとなる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、それが自然状態で会合する他の分子を実質的に含まない分子を指す。特に、単離されたとは、分子が動物の身体又は動物の身体サンプル中にないことを意味する。このため、単離分子は、動物内で他の分子とは会合又は接触することがない。単離されたとは、本明細書に記載されるような関連する他の構成要素から単離されること、例えば分子が含まれる組成物の他の構成要素から単離されること、又はそれが含まれるベクター若しくは細胞から単離されることを意味するものではない。
【0024】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本明細書中では区別なく使用され、ヌクレオチドモノマーから作製されるポリマー又はオリゴマー高分子として理解される。ヌクレオチドモノマーは、核酸塩基、五炭糖(例えば、リボース又は2'-デオキシリボースであるが、これらに限定されない)、及び1個~3個のリン酸基で構成される。通常、核酸は、個々のヌクレオチドモノマー間のホスホジエステル結合により形成される。本発明の文脈において、好ましい核酸分子として、リボ核酸(RNA)、修飾RNA、デオキシリボ核酸(DNA)、及び例えば、RNA-DNAハイブリッド等のそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、核酸は、例えばリン酸トリエステル法に従って、化学的に合成することができる(例えば、Uhlmann, E. & Peyman, A. (1990) Chemical Reviews, 90, 543-584を参照のこと)。
【0025】
「ORF」と略される「オープンリーディングフレーム」という用語は、本発明の文脈において、アミノ酸の連続ストリングに翻訳することができるヌクレオチドの配列を指すために使用される。通例、ORFは開始コドン、通常は3ヌクレオチドの倍数である長さを有する後続の領域を含有するが、所与のリーディングフレーム内の終止コドン(TAG、TAA、TGA、UAG、UAA又はUGA)を含有しない。ORFは、それが翻訳され得るアミノ酸がペプチド連結鎖を形成するタンパク質をコードする。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「タンパク質」、「ペプチド(単数)」、「ポリペプチド(単数)」、「ペプチド(複数)」及び「ポリペプチド(複数)」という用語は、全体にわたって区別なく使用される。これらの用語は、本発明の文脈において、天然に存在するペプチド、例えば、天然に存在するタンパク質、及び天然に存在するアミノ酸又は天然に存在しないアミノ酸を包含し得る合成ペプチドの両方を指すのに使用される。ペプチドは、天然又は非自然発生アミノ酸の側鎖又は遊離アミノ末端若しくはカルボキシ末端を修飾することによって化学修飾されていてもよい。この化学修飾は、更なる化学部分の付加、及びグリコシル化等のアミノ酸の側鎖中の官能基の修飾を含む。ペプチドは、好ましくは少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個又は少なくとも100個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも8個又は少なくとも30個のアミノ酸を含む重合体である。
【0027】
「FSM」と略される「フレームシフト突然変異」という用語は、本発明の文脈において、突然変異の下流のリーディングフレームの変更、ひいては野生型タンパク質と比較して変更された配列を有するタンパク質をもたらす、タンパク質をコードするORF内の核酸配列の変更を指すために使用される。フレームシフト突然変異は、3で割り切れない数のヌクレオチドがORF内で挿入又は欠失する場合に生じる。通例、FSMは、1つ又は2つのヌクレオチドが欠失又は挿入される場合に生じる。欠失は、挿入よりも頻度が高い。1つ又は2つのヌクレオチドがORFのコドン内で欠失する場合、変更されたコドンは、影響を受けるコドンの3'の1つ又は2つのヌクレオチドにより形成される。この変更されたコドンが終止コドンでない限り、ORFの翻訳産物は、変更されたコドン及び次の終止コドンまでの変更されたコドンの代わりのORF3'によって決まる。1つ又は2つのヌクレオチドがコドンに挿入される場合、以前のヌクレオチドの2つ又は1つのヌクレオチドと挿入されたヌクレオチドの1つ又は2つとを含む新たなコドンが生成する。この新たなコドンが終止コドンでない限り、ORFの翻訳産物は、新たなコドン及び次の終止コドンまでの新たなコドンの代わりのORF3'によって決まる。
【0028】
「FC」と略される「フレームシフトコドン」という用語は、本発明の文脈において、wt配列と比較して異なるアミノ酸をコードするFSMの3'の最初のコドンを指すために使用される。
【0029】
「CFSM」と略される「FSMを含む核酸のコレクション」という用語は、本発明の文脈において、特定のMSI癌型、例えば大腸癌、子宮内膜癌若しくは胃癌、若しくは2つ以上のMSI癌において観察される全てのFSM、又は下で詳細に概説される基準の1つ以上に従って選択されるFSMのサブグループであり得るFSMを各々が含む別個のヌクレオチド配列のリストを指すために使用される。
【0030】
「FSP」と略される「フレームシフトペプチド」という用語は、本発明の文脈において、FCから始まるCFSMのFSMを含む核酸のタンパク質コードセグメントの完全な翻訳産物を指すために使用される。
【0031】
「CFSP」と略される「フレームシフトペプチドのコレクション」という用語は、本発明の文脈において、特定のMSI癌型、例えば大腸癌、子宮内膜癌若しくは胃癌、若しくは2つ以上のMSI癌において観察される全てのFSP、又は下で詳細に概説される基準の1つ以上に従って選択されるFSPのサブグループであり得るFSPのアミノ酸配列のリストを指すために使用される。
【0032】
「mFSP」と略される「修飾FSP」という用語は、本発明の文脈において、FSPをベースとするが、特定のFSPを、癌ワクチンペプチドコレクションを形成するペプチドのコレクションへの組入れにより好適なものにするようにアミノ酸の付加又は欠失によってFSPと比較して修飾されたアミノ酸配列を有するペプチドを指すために使用される。修飾により利益を得る可能性があるFSPを選択する基準及び特定の修飾が下で詳細に概説される。
【0033】
「CVP」と略される「癌ワクチンペプチドコレクション」という用語は、本発明の文脈において、個々のペプチドの形態の又は互いに連結したFSP及び/又はmFSPを指すために使用される。2つ以上の異なるFSP及び/又はmFSPがペプチド結合によって互いに連結し、ポリペプチドを形成するのが好ましい。連結は直接であっても、又は1つ以上のリンカーアミノ酸、例えばGly、Ser又はAlaのような小さなフレキシブルアミノ酸を介していてもよい。更なる抗原の生成を回避するために、ペプチドが互いに直接連結することが好ましい。FSP及び/又はmFSPを互いに連結し、ポリペプチドを形成することが好ましい。非常に長いmRNAの翻訳効率が減少することが知られており、したがって、全長が1000アミノ酸超、より好ましくは1500アミノ酸超のFSP及びmFSPを含むCVPを別個のポリペプチドに分割することが好ましい。例えば、CVPが約6000アミノ酸のFSP及び/又はmFSPを含む場合、FSP及び/又はmFSPを連結して、全長が約1500アミノ酸のFSP及び/又はmFSPを各々が含む4つの別個のポリペプチドを形成することが好ましい。
【0034】
「MSI」と略される「マイクロサテライト不安定性」という用語は、マイクロサテライト領域中の1つ以上の反復単位の欠失又は挿入によるマイクロサテライトの長さの変更として定義される。これにより、同じ個体に由来する正常/生殖系列細胞中のゲノムDNAと比較して、腫瘍細胞のゲノムDNA中の全長が変更された新規のマイクロサテライト対立遺伝子が生成する。この遺伝的高変異性の条件は、DNAミスマッチ修復(MMR)の障害に起因する。MMRは、DNA複製中にゲノムDNAに生じる自然突然変異を修正する機構である。通例、突然変異は、短いヌクレオチドの挿入又は欠失の単一塩基ミスマッチである。後者の2つがORF中に生じる場合、また、挿入又は欠失したヌクレオチド配列の長さが3で割り切れない場合(上記のFSMの定義を参照されたい)にフレームシフト突然変異を生じ得る。
【0035】
「MSI表現型」という用語は、反復ヌクレオチド、殆どの場合、GT/CA反復の長さの変化の診断を指す。かかる反復は、健常被験体のゲノムDNA全体にわたって生じ、ヒトゲノムの約3%を占める。当業者は、サンプルにおけるMSI表現型を決定する方法を十分理解している。好ましい方法は、マイクロサテライト不安定性についての米国国立癌研究所(NCI)のワークショップにおいて確立されたガイドラインに従う、7つのマーカーを網羅する、Promega(ウィスコンシン州マディソン)のMSI Analysis System(v 1.2)の使用である。
【0036】
「ネオエピトープ(neo-epitope)」という用語は、本発明の文脈において、正常/生殖系列細胞中には存在しないが、特にMSI表現型を有する前癌性及び/又は癌性細胞中で生じる、腫瘍によってコードされるエピトープを指すために使用される。
【0037】
「発現カセット」という用語は、本発明の文脈において、転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結される、発現される少なくとも1個の核酸配列を含む核酸分子、例えば、本発明のCVPをコードする核酸又はその一部を指すのに使用される。好ましくは、発現カセットは、プロモーター、開始部位及び/又はポリアデニル化部位等の所与の遺伝子の効率的な発現用のシス調節エレメントを含む。好ましくは、発現カセットは、患者の細胞における核酸の発現に必要とされる更なるエレメント全てを含有する。したがって、典型的な発現カセットは、発現される核酸配列に作動可能に連結されるプロモーター、並びに転写物の効率的なポリアデニル化、リボソーム結合部位、及び翻訳終結に必要とされるシグナルを含有する。カセットの更なるエレメントとして、例えば、エンハンサーが挙げられ得る。発現カセットはまた、効率的な終結を提供するために、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含有することが好ましい。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から獲得され得るか、又は異なる遺伝子から獲得されてもよい。
【0038】
本発明の文脈で使用される「作動可能に連結された」という用語は、そのように記載された構成要素がそれらの通常の機能を発揮するように構成されるエレメントの配置を指す。核酸が、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合に、核酸は「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーターは、それが1つ以上の導入遺伝子の転写に影響を及ぼすのであれば、1つ以上の導入遺伝子に作動可能に連結されている。さらに、コーディング配列に作動可能に連結された制御エレメントは、コーディング配列の発現に影響を及ぼすことが可能である。制御エレメントがコーディング配列を発現に向かわせる機能を有する限りは、制御エレメントはコーディング配列と連続している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される介在配列が、プロモーター配列とコーディング配列との間に存在する場合があり、そのプロモーター配列は、依然としてコーディング配列に「作動可能に連結されている」とみなされ得る。
【0039】
「発現ベクター」という用語は、細胞、好ましくは哺乳類細胞へと、導入されることが可能であるか、又は本発明の核酸のコレクション若しくは本発明の核酸のコレクションの一部である1個の核酸を導入することが可能であるポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドとタンパク質との混合物を指す。ベクターの例として、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス又は人工染色体が挙げられるが、これらに限定されない。特に、ベクターは、適切な宿主細胞へとプロモーター及び本発明の核酸のコレクション又は核酸のコレクションの一部である1個の核酸を輸送するのに使用される。発現ベクターは、宿主細胞において発現ベクターの自己複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含有してもよい。宿主細胞に一度入ると、発現ベクターは、宿主染色体DNAと独立して、又は宿主染色体DNAと同時に複製してもよく、ベクター及びその挿入されたDNAの幾つかのコピーが生成され得る。多くの場合が安全性の理由で、複製不全発現ベクターが使用される場合、ベクターは、複製しない場合があり、単に核酸の発現を誘導し得る。発現ベクターのタイプに応じて、発現ベクターは、細胞から失われてもよく、すなわち、核酸によってコードされるCVPを単に一過的に発現するか、又は細胞において安定であってもよい。発現ベクターは通常、発現カセット、すなわち、核酸の、mRNA分子への転写を可能にする必須エレメントを含有する。
【0040】
「抗原」という用語は、本発明の文脈において、免疫応答の分子、例えば、抗体、T細胞受容体(TCR)等によって認識される任意の構造を指すのに使用される。好ましい抗原は、特定の疾患と関連付けられる細胞タンパク質である。抗原は、適応免疫系の高度可変抗原受容体(B細胞受容体又はT細胞受容体)によって認識され、液性又は細胞性免疫応答を誘発し得る。かかる応答を誘発する抗原はまた、免疫原とも称される。細胞内部のタンパク質のほんの一部が、それらが外来性又は細胞性であるかどうかに関係なく、より小さなペプチドへとプロセシングされて、主要組織適合複合体(MHC)によって提示される。細胞性免疫応答は、小ペプチドフラグメントにT細胞受容体が結合する場合に引き起こされる。
【0041】
「エピトープ」という用語は、抗原決定基としても知られ、本発明の文脈において、抗原のセグメント、好ましくは、免疫系の分子、例えば、B細胞受容体、T細胞受容体又は抗体によって結合されるペプチドを指すのに使用される。抗体又はB細胞によって結合されるエピトープは、「B細胞エピトープ」と称され、T細胞によって結合されるエピトープは、「T細胞エピトープ」と称される。この文脈において、「結合」という用語は、1×105 M-1以上、好ましくは1×106 M-1、1×107 M-1、1×108 M-1以上の、抗体又はT細胞受容体(TCR)と、各々のエピトープとの間の結合定数を有する結合と定義される特異的な結合に関する。当業者は、結合定数を決定する方法を十分認識している(例えば、Caoili, S.E. (2012) Advances in Bioinformatics Vol. 2012を参照のこと)。好ましくは、抗体の、エピトープへの特異的な結合は、抗体のFab(フラグメント、抗原結合)領域によって媒介され、B細胞の特異的な結合は、B細胞受容体が含む抗体のFab領域によって媒介され、T細胞の特異的な結合は、T細胞受容体の可変(V)領域によって媒介される。T細胞エピトープは、抗原提示細胞の表面上に提示され、ここで、T細胞エピトープは、主要組織適合(MHC)分子に結合される。それぞれMHCクラスI、II及びIII分子と称される、少なくとも3個の異なるクラスのMHC分子が存在する。MHC-I経路により提示されるエピトープは、細胞傷害性Tリンパ球(CD8+細胞)による応答を誘発するのに対して、MHC-II経路により提示されるエピトープは、T-ヘルパー細胞(CD4+細胞)による応答を誘発する。MHCクラスI分子によって提示されるT細胞エピトープは通常、8アミノ酸長~11アミノ酸長のペプチドであり、MHCクラスII分子によって提示されるT細胞エピトープは通常、13アミノ酸長~17アミノ酸長のペプチドである。MHCクラスIII分子はまた、糖脂質として非ペプチド性エピトープを提示する。したがって、「T細胞エピトープ」という用語は、好ましくは、MHCクラスI又はMHCクラスII分子のいずれかによって提示され得る8アミノ酸長~11アミノ酸長又は13アミノ酸長~17アミノ酸長のペプチドを指す。エピトープは通常、糖側鎖を有し得るか、又は有し得ない化学的に活性な表面の分類のアミノ酸からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を通常有する。立体構造的及び非立体構造的なエピトープは、変性溶媒の存在下で、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
【0042】
「接合エピトープ(junctional epitope)」という用語は、本発明の文脈において使用される場合、所与のCVPの単離FSP、mFSP及び/又はその抗原性フラグメント中には存在しないが、2つのペプチド、例えば2つのFSPがペプチド結合によって連結することで形成されるアミノ酸配列を含むエピトープを指す。例えば、連結ペプチド結合を包含する第1のペプチドの1つ~7つのアミノ酸及び第2のペプチドの7つ~1つのアミノ酸が含まれる、8つの連続アミノ酸を有する組み立てられたペプチドの全ての潜在的接合エピトープのリストを作成することができる。次いで、全ての潜在的接合エピトープを特定するために、このリストをCVPの全てのFSP及びmFSPのアミノ酸配列と比較する。
【0043】
「非MSI癌エピトープ」という用語は、癌細胞において特異的に発現されるが、FSMによるものではないタンパク質のエピトープを指す。かかるエピトープは、健常細胞よりも癌細胞中で少なくとも10倍豊富である場合に特異的とみなされる。かかるエピトープの例は、例えば黒色腫におけるチロシナーゼ若しくは乳癌におけるHer-2受容体のように癌細胞中で発現が上方調節されるタンパク質、又は例えばp53のように或る特定の癌において突然変異するタンパク質である。
【0044】
「免疫原性カバレッジ(immunogenic coverage)」という用語は、ワクチンにより患者において生じる可能性がある免疫原性エピトープの予想される数を指す。400アミノ酸の累積長さについて患者の腫瘍中に存在するFSPのセットをコードするワクチンは、平均3つの免疫原性エピトープを生じさせることが予想され、良好な免疫原性カバレッジをもたらす。
【0045】
「その抗原性フラグメント」という用語は、本発明の文脈において使用される場合、抗原、好ましくはFSP又はmFSPのフラグメントであって、抗原と同様に抗原性である、すなわち哺乳動物においてB細胞免疫応答及び/又はT細胞免疫応答を引き起こすことが可能である、フラグメントを指す。抗原性の「FSP及び/又はmFSPのフラグメント」は、上で定義され、以下でより詳細に定義されるFSP及びmFSPの少なくとも8アミノ酸超の連続ストレッチであるのが好ましい。mFSPのフラグメントは、mFSPのベースとなるFSPの少なくとも4つのアミノ酸を含む。
【0046】
「CVPをコードする核酸のコレクション」という用語は、本発明の文脈において、CVPの全てのFSP及び/又はmFSP又はその抗原性フラグメントを含むポリペプチドをコードし、CVPの全てのFSP及び/又はmFSPを含む2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、又はそれ以上、好ましくは4個のポリペプチドをコードする1つ以上の連続核酸配列を指すために使用される。このため、この用語は、一実施形態ではCVPをコードする単一核酸を含み、他の最も極端な実施形態では、核酸のコレクションは、各々のFSP及び/又はmFSP又はその抗原性フラグメントについての別個の核酸を含む。
【0047】
「調製物」及び「組成物」という用語は、本発明の文脈において使用される場合、活性化合物、例えば、本発明のVLPと、担体及び/又は賦形剤との配合物を含むと意図される。
【0048】
「薬学的に許容可能な」は、本発明の文脈において使用される場合、連邦規制機関若しくは州政府によって承認された、又は米国薬局方、若しくは動物、特にヒトにおける使用について一般に認められる他の薬局方に記載されるものを意味する。
【0049】
「担体」という用語は本明細書で使用される場合、治療上活性な成分とともに投与される希釈剤、賦形剤、界面活性剤、安定剤、生理的緩衝溶液又はビヒクル等であるが、これらに限定されない薬理学的に不活性な物質を指す。かかる医薬担体は液体であっても又は固体であってもよい。液体担体としては、水、及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含むが、これらに限定されない油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等における生理食塩溶液等の滅菌液が挙げられるが、これらに限定されない。生理食塩溶液、並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液を特に注射溶液の液体担体として用いることもできる。医薬組成物を静脈内投与する場合、生理食塩溶液が好ましい担体である。好適な医薬担体の例は、E. W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。
【0050】
好適な医薬「賦形剤」としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0051】
「界面活性剤」としては、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton X-100、並びにポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65及びポリソルベート80等のポリソルベート等であるが、これらに限定されない陰イオン、陽イオン及び非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0052】
「安定剤」としては、マンニトール、スクロース、トレハロース、アルブミン、並びにプロテアーゼ及び/又はヌクレアーゼアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明の文脈において使用され得る「生理的緩衝溶液」としては、塩化ナトリウム溶液、脱塩水、及びリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES緩衝液([4(2ヒドロキシエチル)ピペラジノ]エタンスルホン酸)又はMOPS緩衝液(3モルホリノ-1プロパンスルホン酸)等であるが、これらに限定されない好適な有機又は無機緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれの緩衝液の選択は概して、所望の緩衝液モル濃度によって決まる。リン酸緩衝液は、例えば注射溶液及び輸液に好適である。
【0054】
「アジュバント」という用語は、組成物の活性成分に対する免疫応答を細胞又は体液レベルで高める、刺激する、活性化する、増強する又は変調する作用物質を指し、例えば免疫学的アジュバントは、実際の抗原に対する免疫系の応答を刺激するが、それ自体は免疫学的効果を有しない。かかるアジュバントの例としては、無機アジュバント(例えば、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム等の無機金属塩)、有機アジュバント(例えばサポニン又はスクアレン)、油性アジュバント(例えばフロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント)、サイトカイン(例えばIL-1β、IL-2、IL-7、IL-12、IL-18、GM-CFS及びINF-γ)、微粒子アジュバント(例えば、免疫刺激複合体(ISCOMS)、リポソーム又は生分解性ミクロスフェア)、ビロソーム、細菌アジュバント(例えば、モノホスホリルリピドA又はムラミルペプチド)、合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチド類似体又は合成リピドA)、又は合成ポリヌクレオチドアジュバント(例えば、ポリアルギニン又はポリリシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
「有効量」又は「治療上有効な量」は、本来の目的を達成するのに十分な治療薬の量である。所与の治療薬の有効量は、治療薬の性質、投与経路、治療薬の投与対象の動物の大きさ及び種、並びに投与目的等の因子により変動し得る。各々の個別のケースにおける有効量は、当該技術分野において確立された方法に従って当業者が経験的に決定することができる。
【0056】
本明細書中で使用する場合、或る疾患又は障害に関する「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」又は「治療法(therapy)」は、(a)該障害の重症度を低減すること、(b)治療される該障害(複数の場合もある)に特徴的な症状の発症を制限又は予防すること、(c)治療される該障害(複数の場合もある)に特徴的な症状の悪化を阻止すること、(d)該障害(複数の場合もある)を過去に有していた個人における該障害(複数の場合もある)の再発を制限又は予防すること、及び(e)過去に該障害(複数の場合もある)の症状を示した個人における症状の再発を制限又は予防することのうち1つ以上を達成することを意味する。
【0057】
本発明の態様及び好ましい実施形態
第1の態様では、本発明は、遺伝性及び散発性のMSI癌を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療のための万能マイクロサテライト不安定性(MSI)癌ワクチンペプチドコレクション(CVP)を作製するためにフレームシフトペプチドのコレクション(CFSP)を選択する方法であって、
(i)各々がフレームシフト突然変異(FSM)を含む核酸のコレクション(CFSM)を選択する工程であって、各FSMが各々異なる患者の少なくともM個の癌サンプル(CS)の1つ以上に存在し、患者の癌がMSI表現型を有する癌細胞を含み、
選択されるFSMの少なくとも50%が基準(a)、(b)、(c)及び/又は(d):
(a)FSMが6ヌクレオチド以上の長さを有するコード遺伝子のモノヌクレオチド反復(MNR)中に存在する;
(b)FSMが1ヌクレオチドの欠失に相当する;
(c)FSMを含むDNAシークエンシングリードの数が適合正常サンプルと比較して腫瘍サンプル中で有意に高い(0.05以下のFDR補正フィッシャー検定p値);
(d)FSMが25%未満の対立遺伝子頻度で適合正常サンプル中に存在する;
を満たす、工程と、
(ii)X個の異なるフレームシフトペプチド(FSP)を選択する工程であって、選択される各FSPが、FSMを有しない対応する野生型(wt)核酸の翻訳産物と比べて異なる最初のアミノ酸をコードするコドンから始まる少なくとも4アミノ酸長のCFSMのFSMを含む核酸のタンパク質コードセグメントの完全な翻訳産物であり、
Xが少なくとも20、より好ましくは少なくとも35であり、Mが少なくとも5である、工程と、
を含む、方法に関する。
【0058】
第1の態様の方法に従って或る特定の数及びタイプのFSPを選択することで、多数のFSPに対するT細胞の誘導がワクチン接種により確実となる。400 aaの法則に基づいて予想されるT細胞免疫原性エピトープの数は、400 aa毎に少なくとも1個の免疫原性エピトープであり、したがって6021 aaの全長(total length)をコードするワクチンについて少なくとも16個である。本発明者らは、6021 aaの全長の209個のFSPによるワクチン接種が少なくとも16個の異なるFSPに対するT細胞応答を誘導することが可能であり、376 aa毎に少なくとも1個に対応することをマウスモデルにおいて実際に実証し(
図9)、これにより免疫原性の法則が確認された。遺伝子ベクターをベースとする選択ワクチン接種プラットホームでは、ペプチドワクチン接種とは異なり、個々のFSPの免疫原性がワクチン中に存在する別のFSPによって抑制されないことが確実であった。本発明者らは、4つのワクチンベクター(vectors)のうち1つのみの投与が、4つのワクチンベクターの混合物の投与と比較して実質的に同一の応答を生じることを示すことにより、競合が生じないことをマウスモデルにおいて実証した。
【0059】
一実施形態では、工程(ii)において選択されるFSPは、遺伝性及び散発性のMSI癌を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療のための万能MSI CVPを作製するための候補FSPと称することができる。「候補」は、FSPが潜在的に予防効果又は治療効果を有することを意味する。これは、選択プロセス及びそれらの構造に基づいて予想することができる。
【0060】
選択基準(c)には、健常被験体(単数又は複数)に由来する適合正常サンプルよりも1つ以上の腫瘍サンプルのゲノムDNA中で所与のFSMの保有率(prevalence)が有意に高い、すなわち多く見られることが必要とされる。これに関連して、「有意に高い」という用語は、wt非突然変異MNRの保有率と比べた所与のFSMの保有率が、0.1以下、より好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満、更により好ましくは0.005未満の偽発見率(FDR)補正フィッシャー検定p値により、正常サンプルと比較して腫瘍サンプル中で有意に高いことを意味する。この値が低いほど、健常組織に対する望ましくない免疫反応の刺激の可能性が減少するため、FSMがCFSMへの組入れにより適したものとなる。この基準をサンプルに由来するゲノムDNA又はcDNAのいずれかのシークエンシングによって評定する。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(c)を満たすことが好ましい。
【0061】
基準(c)が所与のFSMの相対保有率に関する一方で、基準(d)は、正常サンプルの対立遺伝子中の所与のFSMの絶対保有率に関する。CFSMに選択されるFSMが正常サンプルの対立遺伝子中で低い全保有率を有することが好ましい。正常サンプルにおける対立遺伝子頻度は40%未満、より好ましくは35%未満、より好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満、更により好ましくは10%未満であるのが好ましい。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(d)を満たすことが好ましい。
【0062】
CFSMに選択されるFSMが基準(c)及び(d)の両方を満たすことが好ましい。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(c)及び(d)を満たすことが好ましい。少なくとも50%が基準(a)及び/又は(b)も満たすのが好ましい。
【0063】
別の好ましい実施形態では、CFSMに選択されるFSMは、基準(a)を満たす。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(a)を満たすことが好ましい。
【0064】
別の好ましい実施形態では、CFSMに選択されるFSMは、基準(b)を満たす。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(b)を満たすことが好ましい。
【0065】
別の好ましい実施形態では、CFSMに選択されるFSMは、基準(a)、(c)及び(d)を満たす。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(a)、(c)及び(d)を満たすことが好ましい。
【0066】
別の好ましい実施形態では、CFSMに選択されるFSMは、基準(b)、(c)及び(d)を満たす。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(b)、(c)及び(d)を満たすことが好ましい。
【0067】
別の好ましい実施形態では、CFSMに選択されるFSMは、基準(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす。CFSMに選択されるFSMの50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも100%が基準(a)、(b)、(c)及び(d)を満たすことが好ましい。
【0068】
本発明の方法は、特定の患者だけでなく、MSI癌を有する多くの異なる患者のMSI癌の治療に好適であり、すなわちMSI癌の治療のための万能CVPであるCVPを提供する。同じ理由から、MSI癌の発症に対する予防効果を有するのにも好適である。したがって、本発明の方法におけるFSMの選択は、1人の患者にのみ由来する癌サンプルの分析に基づくのではなく、異なる患者に由来する幾つかの癌サンプルの情報を用いるものである。適切な多様性を得るために、異なる患者の少なくとも5つの癌サンプル(CS)を分析して、FSMを決定する。上で概説されるように、これは全ゲノムシークエンシング、エクソームシークエンシング、又はサンプルから単離されたmRNAから生成したcDNAのシークエンシングによって行うのが好ましい。MSI癌を有する患者に由来する癌サンプルが使用される。これは、癌サンプルに含まれる細胞におけるMSI表現型を検出することによって確認することができる。CSは同じMSI癌のもの、すなわち同じ組織に由来するものであっても、又は2つ以上の異なるMSI癌に由来するものであってもよい。2つ以上の異なるMSI癌のMSI癌のCSを選択プロセスに使用する場合が特に好ましく、特に広く使用可能なCVPをもたらす。サンプルが由来する好ましいMSI癌は、大腸癌及び胃癌、大腸癌及び子宮内膜癌、胃癌及び子宮内膜癌、並びに胃癌、大腸癌及び子宮内膜癌である。
【0069】
FSMに基づいて概説される選択プロセスは、FSMを含む特定の核酸によってコードされるFSPに基づいて行うこともでき、すなわち基準(c)及び(d)を核酸配列ではなく、それぞれコードされるアミノ酸配列を比較することによっても評定することができる。癌又は正常サンプルにおけるFSMの存在を野生型タンパク質配列のC末端ではなく、C末端にFSPを含むコードされるタンパク質アミノ酸配列の数を決定することによって評定することもできることが当業者にはすぐに明らかである。
【0070】
本発明者らは、以下の基準:
(a)FSPが、CS中に存在する癌型の少なくとも1つについて少なくとも5%であるM個の異なるCSのコレクションの一部である特定の型の癌のCSのサブセットについて観察される癌型特異的頻度(CF)で観察されるFSMによってコードされる、及び/又は;
(b)FSPをコードするFSMを有する遺伝子の平均mRNA発現レベルが、CS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位80パーセンタイル内にある、及び/又は;
(c)FSPを生じるFSMが、癌を有しない被験体のコホートにおいて正常組織の2%未満で観察される;
の1つ以上を用いてCFSPに含まれるFSPを選択することを更に想定する。
【0071】
CFSPに含まれるFSPの少なくとも50%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たすのが好ましい。CFSPに選択されるFSPの60%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも70%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも80%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも90%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも95%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、最も好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも100%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たすことが好ましい。
【0072】
基準(a)に関して、FSPが、CS中に存在する癌型の少なくとも1つ又は全てについて少なくとも5%、好ましくはCS中に存在する癌型の少なくとも1つ又は全てについて少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%であるM個の異なるCSのコレクションの一部である特定の型の癌のCSのサブセットについて観察されるCSで観察されるFSMによってコードされることが好ましい。
【0073】
基準(b)に関して、FSPをコードするFSMを有する遺伝子の平均mRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内にあることが好ましい。FSPの相対存在量が高いほど、免疫応答の誘導がMSI癌の治療又は予防法において効果的となる可能性が高くなる。明確にするために、「上位80パーセンタイル」という表現は、最上位のmRNAの発現を含み、下位19%のmRNAの発現のみを除外する発現レベルを有する全てのFSMを指す。したがって、「上位30パーセンタイル」は、最上位のmRNAの発現を含み、下位69%のmRNAの発現を除外する全てのFSMを指す。
【0074】
基準(a)及び(b)の好ましい組合せは、CFが少なくとも5%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。基準(a)及び(b)の他の好ましい組合せは、CFが少なくとも10%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。基準(a)及び(b)の他の好ましい組合せは、CFが少なくとも15%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。基準(a)及び(b)の他の好ましい組合せは、CFが少なくとも20%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。
【0075】
基準(c)に関して、FSPを生じるFSMが癌を有しない被験体のコホートにおいて正常組織の2%未満、より好ましくは1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.6%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満又はそれ以下で観察されることが好ましい。
【0076】
本発明の第1の態様の方法の好ましい実施形態では、
(i)CSがMSI腫瘍、好ましくは大腸癌及び/又は胃癌及び/又は子宮内膜癌、より好ましくは大腸癌、胃癌及び子宮内膜癌を有する患者に由来し、及び/又は、
(ii)Mが少なくとも30、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも300であり、及び/又は、
(iii)Xが少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300である。
【0077】
好ましくは、Mは少なくとも30であり、かつXは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、好ましくは、Mは少なくとも50であり、かつXは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、Mは少なくとも100であり、かつXは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、Mは少なくとも200であり、かつXは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、更により好ましくは、Mは少なくとも300であり、かつXは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300である。
【0078】
サンプル数Mの増加により、より広範な、すなわちより普遍的なCVPの適用性が確実となる。しかしながら、FSMの統計的分布のために、特定のMSI癌型に生じる全てのFSMの決定の完全性は、漸近的に所与の数のサンプルの最大値に達する。このため、特定のMSI癌型の400個を超えるサンプルを加えても顕著な改善は得られない。MSI癌型に存在するFSMの広いカバレッジを改善するために、2つ以上のMSI癌のCSを使用することが好ましい。治療及び予防法に同時に適用可能な好ましいMSI癌は、大腸癌及び胃癌、大腸癌及び子宮内膜癌、胃癌及び子宮内膜癌、並びに大腸癌、胃癌及び子宮内膜癌である。
【0079】
第2の態様では、本発明は、CVPに含まれるペプチドのアミノ酸配列又は該CVPに含まれるペプチドをコードする核酸配列を決定する方法であって、
(a)少なくともY個のFSP又はその抗原フラグメントを、本発明の第1の態様に従って選択されるCFSPから選択する工程と、
(b)以下の基準:
(i)前記FSPが4アミノ酸~9アミノ酸の長さを有する、及び/又は;
(ii)前記FSPが、同じFSMによってコードされる2つ以上のFSP中に存在する8アミノ酸以上の1つ以上の同一の連続ストレッチを含有する、及び/又は;
(iii)前記FSPが、wtヒトタンパク質中にも存在する8アミノ酸以上の1つ以上の連続ストレッチを含有する;
を満たすFSPの1つ以上又は全てのアミノ酸配列を修飾する工程であって、
(i)に従うFSPのアミノ酸配列が、該FSPのすぐ上流に存在する野生型(wt)アミノ酸配列の1個、2個、3個、又は4個の間、好ましくは4個のアミノ酸を該FSPのN末端に付加することによって修飾され、修飾FSP(mFSP)が少なくとも8アミノ酸の長さを有し、(ii)に従うFSPのアミノ酸配列が、最長のFSPを除く全てからこれらの連続ストレッチを除去することによって修飾されるが、但し、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有するFSPは、前記CVPから除外され、及び/又は(iii)に従うFSPのアミノ酸配列が、これらのストレッチを除去することによって修飾され、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有する修飾FSPが前記CVPから除外される、工程と、
を含み、前記CVPのアミノ酸配列が、工程(a)において選択され、及び/又は工程(b)において修飾される前記FSP又はその抗原フラグメントのアミノ酸配列を含み、
Yが少なくとも20、より好ましくは少なくとも35である、方法に関する。
【0080】
第2の態様との関連で、「決定する」という用語が、工程(b)から即座に明らかであるように、ペプチドの配列を(例えばシークエンシングによって)「特定する」という意味ではなく、「定義される」、「確定する」、「体系化する」又は「修正する」という意味で使用されることに留意する。
【0081】
一実施形態では、工程(b)において修飾されるFSPの少なくとも1つが、i)免疫原性であり、ii)患者の腫瘍に存在するか、又はそうであることが予想される。このFSPの免疫原性は、選択又は修飾される別のFSPによって抑制されないことが好ましい。
【0082】
更なる実施形態では、工程(b)において修飾されるFSPは、遺伝性及び散発性のMSI癌を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療のための万能MSI CVPを作製するための候補FSPである。
【0083】
工程(b)によるFSPの修飾は、FSPの抗原性を改善するという目的に適う。基準(i)、(ii)、(iii)、(i)+(ii)、(i)+(iii)、(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iii)を満たすFSPの少なくとも50%が修飾され、より好ましくは基準(i)、(ii)、(iii)、(i)+(ii)、(i)+(iii)、(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iii)を満たすFSPの少なくとも60%が修飾され、基準(i)、(ii)、(iii)、(i)+(ii)、(i)+(iii)、(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iii)を満たすFSPの少なくとも70%が修飾され、より好ましくは基準(i)、(ii)、(iii)、(i)+(ii)、(i)+(iii)、(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iii)を満たすFSPの少なくとも80%が修飾され、より好ましくは基準(i)、(ii)、(iii)、(i)+(ii)、(i)+(iii)、(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iii)を満たすFSPの少なくとも90%が修飾され、より好ましくは基準(i)、(ii)、(iii)、(i)+(ii)、(i)+(iii)、(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iii)を満たすFSPの少なくとも95%が修飾され、最も好ましくは基準(i)、(ii)、(iii)、(i)+(ii)、(i)+(iii)、(ii)+(iii)又は(i)+(ii)+(iii)を満たすFSPの100%が修飾されることが好ましい。
【0084】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、FSP及びmFSPの選択が、工程(a)において行われ、FSPがCFSPから続けて選択され、各選択工程において、閾値未満である最大数の癌サンプルにおける閾値に達するように全FSPアミノ酸長の累積量(CAFSPL)を増加させる新たなFSPがCFSPから選択され、任意に、2つ以上のFSPにより、CAFSPLが依然として閾値未満である最大数の癌サンプルについてのCAFSPLが増加する場合、最高のスコアを有するFSPが選択される。
【0085】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、
(i)各癌サンプルについてのCAFSPLは、既にCVPの一部であるFSP及び対応するFSMが癌サンプル中に存在するCFSPからの新たなFSPのアミノ酸長を合計することによって決定され、及び/又は、
(ii)閾値は、特定の癌型に属するCSからのサンプルの各サブセットについて別々に規定され、及び/又は、
(iii)スコアは、任意にCFが5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満の癌型のCS中のFSMを計数することなく、FSPのアミノ酸長とFSPを生じるFSMがCSにおいて観察される全体的頻度との積として定義され、及び/又は、
(iv)癌サンプルのサブセットは、FSMが5%以上、より好ましくは10%以上、15%以上のCFで存在する腫瘍型の全ての癌サンプルを含み、及び/又は、
(v)5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満の全体的頻度でFSMによって生じるFSPが選択から除外され、及び/又は、
(vi)CVPへの組入れが、CAFSPLが依然として閾値(TV)未満であるか、又はCVP中に存在する全てのFSPの累積長さがV個のアミノ酸の最大値に達した任意の癌サンプルのCAFSPLを増加させる更なるFSPが得られなくなるまで、新たなFSP及び/又は修飾FSPの付加を継続し、及び/又は、
(vii)同じFSMに由来するFSPを、個々のFSPのスコアの合計として算出される複合スコアを有する1つのFSPとして扱う。
【0086】
基準(i)~(vii)は、1つ以上の型のMSI癌を有する患者のコホートに対する高い免疫原性カバレッジをもたらすことによって、CVPに選択されるFSPの普遍性を改善するという目的に適う。加えて、基準(vi)は、ワクチンにおいてコードされ得る抗原の総量を制限することによって実際に実行可能なCVPの選択も可能にする。スコアリングシステムの使用により、より高い観測頻度を有し(したがって、多数の患者において存在することが予想される)、より長い全アミノ酸長を有するFSP(すなわち、より高い全体的免疫原性を有する)が好ましくはCVPに含まれることが確実となる。
【0087】
好ましい実施形態では、FSPの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%について基準(i)+(iii)+(vi)が満たされる。
【0088】
このため、少なくとも50%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも60%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも70%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも80%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも90%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、最も好ましくは100%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択されることが好ましい。
【0089】
スコアを代替的方法で、例えばFSPを生じるFSMの全体的頻度、FSPの長さ若しくは長さの逆数のみに基づいて、又は癌特異的スコアの合計として、又は1つ以上の癌型をスコアの算出から除外した後に定義することもできることが当業者にはすぐに明らかである。代替的スコアは、各FSPにおいて予測されたMHCクラスI及び/又はクラスIIエピトープの数を更に含んでいても、又はそれのみに基づいていてもよい。FSMを含む特定のmRNAアイソフォームの発現レベルが既知である場合に基準(vii)が変更され得ることも当業者にはすぐに明らかである。その場合、同じFSMによって生じるFSPの1つ以上を選択から除外してもよく、又はFSMを含む個々のmRNAアイソフォームから生じるFSPのスコアをアイソフォームの観測相対発現レベルに従って加重してもよい。
【0090】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、
(i)CVPへの組入れが、CAFSPLが依然としてTV未満である任意の癌サンプルのCAFSPLを増加させる更なるFSPが得られなくなるまで、新たなFSPの付加を継続し、及び/又は、
(ii)同じFSMに由来するFSPを、個々のFSPのスコアの合計として算出される複合スコアを有する1つのFSPとして扱う。
【0091】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、
(a)前記TVが少なくとも400アミノ酸、好ましくは少なくとも600アミノ酸、より好ましくは少なくとも800アミノ酸であるか、又は、
(b)前記TVが、
(i)大腸癌及び胃癌について少なくとも400アミノ酸、好ましくは少なくとも600アミノ酸、より好ましくは少なくとも800アミノ酸であり、
(ii)子宮内膜癌について少なくとも200アミノ酸、好ましくは少なくとも300アミノ酸、より好ましくは少なくとも400アミノ酸である。
【0092】
TVの値を、異なる型の癌を含むCS、例えば大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、小腸癌、肝胆道癌、肝癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮肉腫、脳癌及び/又は皮膚癌のサンプルの組合せに対して選択を行う任意の状況に拡張することができることが当業者にはすぐに明らかである。
【0093】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、
(i)前記CVPが前記CFSPから選択される各FSPの少なくとも4個のアミノ酸を含み、及び/又は、
(ii)Yが、前記CVPの一部である全てのペプチドの累積アミノ酸長Vが少なくとも280アミノ酸、好ましくは少なくとも6000アミノ酸となるように選択され、
(iii)Yが少なくとも35、好ましくは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200であり、及び/又は、
(iv)前記CVPが配列番号1~1087に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択され、好ましくは配列番号1~209に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択されるFSP及び/又はmFSPを含む。
【0094】
第3の態様では、本発明は、CVP又はCVPをコードする核酸のコレクションを作製する方法であって、
(i)本発明の第2の態様の方法において決定されるアミノ酸又は核酸の配列情報を得る工程と、
(ii)1つ以上のポリペプチド中のCVPのアミノ酸配列又は前記配列を有する核酸のコレクションを合成すると共に、任意に前記核酸のコレクションを1つ以上の発現カセット及び/又は発現ベクターのコレクションに挿入する工程と、
を含む、方法に関する。
【0095】
CVPのFSP、修飾する場合にmFSP、又はその抗原性フラグメントの合成は、FSP、修飾する場合にmFSP、若しくはその抗原性フラグメントをコードする核酸のコレクションの組み換え発現、又は化学合成によって行うことができる。同様に、CVPのペプチドをコードする核酸のコレクションの合成は、固相上での化学合成を含む既知の方法によって行うことができる。
【0096】
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様の方法によって作製することができるCVP又は該CVPのペプチドをコードする核酸のコレクションに関する。
【0097】
第5の態様では、CVPは、Y個の異なるFSP及び/又はmFSP又は少なくとも8アミノ酸の長さを有するFSP及び/又はmFSPの抗原性フラグメントを含むか又はそれらからなり、各FSP又はmFSPへと修飾されるFSPが、いずれの場合も少なくとも4アミノ酸長の、FSMを有しない対応するwt核酸の翻訳産物と比べて異なる最初のアミノ酸をコードするコドンから始まるFSM含有核酸のタンパク質コードセグメントの完全な翻訳産物であり、前記FSP又は前記mFSPへと修飾されるFSPの少なくとも50%が、以下の基準:
(a)前記FSPが、CS中に存在する癌型の少なくとも1つについて少なくとも5%であるM個の異なるCSのコレクションの一部である特定の型の癌のCSのサブセットについて観察される癌型特異的頻度(CF)で観察されるFSMによってコードされる、及び/又は;
(b)前記FSPをコードする前記FSMを有する遺伝子の平均mRNA発現レベルが、前記CS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位80パーセンタイル内にある、及び/又は;
(c)前記FSPを生じる前記FSMが、癌を有しない被験体のコホートにおいて正常組織の2%未満で観察される;
の1つ以上を満たし、
以下の基準:
(i)FCによってコードされるアミノ酸から始まるFSMを含む核酸によってコードされるFSPが4アミノ酸~9アミノ酸の長さを有する、及び/又は;
(ii)前記FSPが、同じFSMによってコードされる2つ以上のFSP中に存在する8アミノ酸以上の1つ以上の同一の連続ストレッチを含有する、及び/又は;
(iii)前記FSPが、wtヒトタンパク質中にも存在する8アミノ酸以上の1つ以上の連続ストレッチを含有する;
を満たすこれらのFSPの1つ以上又は全てのアミノ酸配列が、(i)に従うFSPについては、該FSPのすぐ上流に存在する野生型(wt)アミノ酸配列の1個~4個のアミノ酸を該FSPのN末端に付加することによって修飾され、修飾FSP(mFSP)が少なくとも8アミノ酸の長さを有し、(ii)に従うFSPについては、最長のFSPを除く全てからこれらの連続ストレッチを除去することによって修飾されるが、但し、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有するFSPは、該CVPから除外され、及び/又は(iii)に従うFSPについては、これらのストレッチを除去することによって修飾され、連続ストレッチの除去後に4アミノ酸未満の長さを有する修飾FSPが該CVPから除外され、
Yが少なくとも20、より好ましくは少なくとも35であり、Mが少なくとも5である。
【0098】
CVPに含まれるFSPの少なくとも50%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たすのが好ましい。CFSPに選択されるFSPの60%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも70%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも80%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも90%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、より好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも95%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たし、最も好ましくはCFSPに選択されるFSPの少なくとも100%が基準(a)、(b)、(c)、(a)+(b)、(a)+(c)、(b)+(c)又は(a)+(b)+(c)を満たすことが好ましい。
【0099】
基準(a)に関して、FSPが、CS中に存在する癌型の少なくとも1つ又は全てについて少なくとも10%、好ましくはCS中に存在する癌型の少なくとも1つ又は全てについて少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも40%であるM個の異なるCSのコレクションの一部である特定の型の癌のCSのサブセットについて観察されるCFで観察されるFSMによってコードされることが好ましい。
【0100】
基準(b)に関して、FSPをコードするFSMを有する遺伝子の平均mRNA発現レベルが、CS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内にあることが好ましい。FSPの相対存在量が高いほど、免疫応答の誘導がMSI癌の治療又は予防法において効果的となる可能性が高くなる。明確にするために、「上位80パーセンタイル」という表現は、最上位のmRNAの発現を含み、下位19%のmRNAの発現のみを除外する発現レベルを有する全てのFSMを指す。したがって、「上位30パーセンタイル」は、最上位のmRNAの発現を含み、下位69%のmRNAの発現を除外する全てのFSMを指す。
【0101】
基準(a)及び(b)の好ましい組合せは、CFが少なくとも5%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。基準(a)及び(b)の他の好ましい組合せは、CFが少なくとも10%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。基準(a)及び(b)の他の好ましい組合せは、CFが少なくとも15%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。基準(a)及び(b)の他の好ましい組合せは、CFが少なくとも20%であり、FSMを有する遺伝子のmRNA発現レベルが、好ましくは特定の型の癌のCS全体の各タンパク質コード遺伝子の平均mRNA発現値を表す分布の上位75パーセンタイル、好ましくは上位70パーセンタイル、好ましくは上位65パーセンタイル、好ましくは上位60パーセンタイル、好ましくは上位55パーセンタイル、より好ましくは上位50パーセンタイル、より好ましくは上位40パーセンタイル、より好ましくは上位30パーセンタイル内であることである。
【0102】
基準(c)に関して、FSPを生じるFSMが癌を有しない被験体のコホートにおいて正常組織の2%未満、より好ましくは1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.6%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満又はそれ以下で観察されることが好ましい。
【0103】
本発明の第5の態様のCVPの好ましい実施形態では、
(i)CSがMSI腫瘍、好ましくは大腸癌及び/又は胃癌及び/又は子宮内膜癌、より好ましくは大腸癌、胃癌及び子宮内膜癌を有する患者に由来し、及び/又は、
(ii)Mが少なくとも10、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも300であり、及び/又は、
(iii)Yが少なくとも35、好ましくは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200であり、及び/又は、
(iv)CVPが各FSPの少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも8個のアミノ酸を含み、及び/又は、
(v)Yが、CVPの一部である全てのFSP及び/又はmFSP又はその抗原性フラグメントの累積アミノ酸長Vが少なくとも280アミノ酸、好ましくは少なくとも500アミノ酸、好ましくは少なくとも1000アミノ酸、好ましくは少なくとも1500アミノ酸、好ましくは少なくとも2000アミノ酸、好ましくは少なくとも2500アミノ酸、好ましくは少なくとも3000アミノ酸、好ましくは少なくとも3500アミノ酸、好ましくは少なくとも4000アミノ酸、好ましくは少なくとも4500アミノ酸、好ましくは少なくとも5000アミノ酸、好ましくは少なくとも5500アミノ酸、より好ましくは少なくとも6000アミノ酸となるように選択され、及び/又は、
(vi)CVPのFSP及び/又はmFSPが配列番号1~1087に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択され、好ましくは配列番号1~209に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択される。
【0104】
好ましくは、Mは少なくとも30であり、かつYは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、好ましくは、Mは少なくとも50であり、かつYは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、Mは少なくとも100であり、かつYは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、Mは少なくとも200であり、かつYは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300であり、更により好ましくは、Mは少なくとも300であり、かつYは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300である。
【0105】
本発明の一実施形態では、本発明の第5の態様のCVPは、1つ以上の非MSI癌特異抗原を更に含む。かかる抗原は、治療対象の癌型の1つ以上にも特異的であるのが好ましい。
【0106】
好ましい実施形態では、CVPの少なくとも35個、好ましくは少なくとも50個、好ましくは少なくとも100個、より好ましくは少なくとも200個、より好ましくは少なくとも209個のFSP及び/又はmFSP又はその抗原性フラグメントが配列番号1~1087に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択され、好ましくは配列番号1~209に従うFSP及び/又はmFSPの群から選択される。
【0107】
配列番号1~1087に従うFSP及びmFSPは、MSI腫瘍、特に大腸癌、胃癌及び子宮内膜癌の予防法又は治療により適切であるものから順に1から1087まで順序付けられる。特定の好適なサブセットは、配列番号1~50、1~75、1~100、1~125、1~150、1~175、1~200、特に好ましくは1~209、1~225、1~250、1~275、1~300、1~325、1~350、1~375、1~400、1~450、1~500、1~550、1~600、1~650、1~700、1~750、1~800、1~850、1~900、1~950、1~1000、1~1050又は1~1087のアミノ酸配列を有するFSP及びmFSPを含むか又はそれらからなる。サブセットが厳密に指定のそれぞれのFSP及び/又はmFSPを含むか又はそれらからなることが好ましいが、これらのFSP及び/又はmFSPの1%~10%が、その活性が実質的に失われることなしにセットから除外され得ることが当業者には理解される。同様に、「含む」という言い回しによって示唆されるように、例えば配列番号1~200のアミノ酸配列を含むサブセットは、配列番号201~1087の1個~100個又はそれ以上のFSP又はmFSP、及び/又は1個以上の他のFSP又はmFSP又は非MSI癌特異抗原を付加的に含んでいてもよい。
【0108】
本発明の第5の態様のCVPの好ましい実施形態では、CVPのFSPは、CFSPから続けて選択され、各選択工程において、新たなFSP又はその抗原性フラグメントが、閾値未満である最大数の癌サンプルにおける閾値に達するようにCAFSPLを増加させるためにCFSPから選択され、任意に、2つ以上のFSPにより、CAFSPLが依然として閾値未満である最大数の癌サンプルについてのCAFSPLが増加する場合、最高のスコアを有するFSPが選択される。
【0109】
本発明の第5の態様のCVPの好ましい実施形態では、
(i)各癌サンプルについてのCAFSPLが、既に前記CVPの一部であるFSP及び対応するFSMが癌サンプル中に存在するCFSPPからの新たなFSPのアミノ酸長を合計することによって決定され、及び/又は、
(ii)前記閾値が、特定の癌型に属するCSからのサンプルの各サブセットについて別々に規定され、及び/又は、
(iii)前記スコアが、FSPのアミノ酸長とFSPを生じるFSMがCSにおいて観察される全体的頻度との積として定義され、及び/又は、
(iv)前記CVPへの組入れが、CAFSPLが依然として閾値(TV)未満である任意の癌サンプルのCAFSPLを増加させる更なるFSPが得られなくなるまで、新たなFSPの付加を継続し、及び/又は、
(v)同じFSMに由来するFSPを、個々のFSPのスコアの合計として算出される複合スコアを有する1つのFSPとして扱う。
【0110】
本発明の第5の態様のCVPの好ましい実施形態では、
(i)各癌サンプルについてのCAFSPLが、既に前記CVPの一部であるFSP及び対応するFSMが癌サンプル中に存在するCFSPからの新たなFSPのアミノ酸長を合計することによって決定され、及び/又は、
(ii)前記閾値が、特定の癌型に属するCSからのサンプルの各サブセットについて別々に規定され、及び/又は、
(iii)前記スコアが、CFが5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満の癌型の癌サンプル中のFSMを計数することなく、FSPのアミノ酸長とFSPを生じるFSMの全体的頻度との積として定義され、及び/又は、
(iv)癌サンプルのサブセットが、FSMが5%以上、より好ましくは10%以上、15%以上のCFで存在する腫瘍型の全ての癌サンプルを含み、及び/又は、
(v)5%未満、より好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満の全体的頻度でFSMによって生じるFSPが選択から除外され、及び/又は、
(vi)前記CVPへの組入れが、CAFSPLが依然としてTV未満であるか、若しくはCVP中に存在する全てのFSPの累積長さがV個のアミノ酸の最大値に達した任意の癌サンプルのCAFSPLを増加させる更なるFSPが得られなくなるまで、新たなFSPの付加を継続し、及び/又は、
(v)同じFSMに由来するFSPを、個々のFSPのスコアの合計として算出される複合スコアを有する1つのFSPとして扱う。
【0111】
第5の態様によるCVPを第1及び第2の態様の方法によって設計することができ、したがって第1及び第2の態様に関して概説される選択工程及び基準を、第5の(fifth)態様のCVPを特性評価するために同様に用いることができることが当業者には理解される。したがって、好ましい実施形態では、基準(i)+(iii)+(vi)は、FSPの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%について満たされる。
【0112】
このため、少なくとも50%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも60%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも70%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも80%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、より好ましくは少なくとも90%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択され、最も好ましくは100%のFSPが好ましくは基準(i)+(iii)+(vi)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(iii)+(v)+(vi)又は(i)+(iii)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(vi)+(vii)、(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、より好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)、(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(vi)+(vii)、(i)+(ii)+(iii)+(v)+(vi)+(vii)又は(i)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて、最も好ましくは基準(i)+(ii)+(iii)+(iv)+(v)+(vi)+(vii)に基づいて選択されることが好ましい。
【0113】
本発明の第5の態様のCVPの好ましい実施形態では、
(a)前記TVが少なくとも400アミノ酸、好ましくは少なくとも600アミノ酸、より好ましくは少なくとも800アミノ酸であるか、又は、
(b)前記TVが、
(i)大腸癌及び胃癌について少なくとも400アミノ酸、好ましくは少なくとも600アミノ酸、より好ましくは少なくとも800アミノ酸であり、
(ii)子宮内膜癌について少なくとも200アミノ酸、好ましくは少なくとも300アミノ酸、より好ましくは少なくとも400アミノ酸である。
【0114】
本発明の第5の態様のCVPの好ましい実施形態では、CVPのペプチドは別々であるか、又は少なくとも2つのFSP及び/又はmFSPが1つ以上のポリペプチドに含まれる。2つ以上のFSP及び/又はmFSPをポリペプチドへと連結する場合、連結がペプチド結合による直接的なものである、すなわちアミノ酸リンカーを有しないことが好ましい。
【0115】
2つのFSP及び/又はmFSPをポリペプチド内で連結する前に、得られる接合配列がwtヒトタンパク質中にも存在する8アミノ酸以上の連続ストレッチを1つ以上含有するかを評定することも好ましい。この場合には、これら2つのペプチドをそのようには連結しない。したがって、連結したFSP及び/又はmFSPの得られるポリペプチドは、wtヒトタンパク質中にも存在する8アミノ酸以上の連続ストレッチを1つ以上含有しない。CVPに含まれるFSP及び/又はmFSPの全長に応じて、FSP及び/又はmFSPは2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上のポリペプチドに含まれ得る。
【0116】
本発明者らは、配列番号1~209の209個のFSP及びmFSP、又はその抗原性フラグメントを4つのポリペプチドに組み立て、これがこれらの抗原を提供する特に好適な方法であることを見出した。4つのポリペプチド中の配列番号1~209のFSP及びmFSPの好ましい配置は、配列番号1088~1091(レイアウトA)、配列番号1092~1095(レイアウトB)、配列番号1155~1158(レイアウトC)又は配列番号1159~1162(レイアウトD)に従うアミノ酸配列を有する以下の4つのポリペプチドからなるか又はそれらを含む。
【0117】
同じCVP、すなわち同じFSP及びmFSPを含むCVPのその後の一連の投与において、例えば配列番号1~209に従うFSP及びmFSPを含むポリペプチドを異なる順序で配置することが好ましい。これにより接合エピトープ(epitopes)に対する望ましくない免疫反応が最小限に抑えられる。例えば、ポリペプチドレイアウトAとポリペプチドレイアウトB、レイアウトAとレイアウトC、レイアウトAとレイアウトD、レイアウトBとレイアウトC、レイアウトBとレイアウトD、レイアウトCとレイアウトD、レイアウトAとレイアウトB及びレイアウト(layout)C、レイアウトAとレイアウトB及びレイアウトD、レイアウトBとレイアウトC及びレイアウトD、レイアウトAとレイアウトB、レイアウトC及びレイアウトDでCVPの投与を組み合わせることが好ましい。
【0118】
したがって、本発明は、各セットが、同じFSP及びmFSP又はその抗原性フラグメントを含むか又はそれらからなる、すなわち同じCVPである1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個又はそれ以上のポリペプチドを含む、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上の異なるポリペプチドのレイアウトも含む。このため、各セット間の違いはFSP、mFSP又はその抗原性フラグメントのアミノ酸配列ではなく、それぞれの数のポリペプチドにおけるFSP、mFSP又はその抗原性フラグメントの配置である。所与のCVPが2つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP又はその抗原性フラグメントを含むか又はそれらからなる1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、又はそれ以上のポリペプチド、最も好ましくは4個のポリペプチドを含み、3つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP又はその抗原性フラグメントを含むか又はそれらからなる1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、又はそれ以上のポリペプチド、最も好ましくは4個のポリペプチドを含み、4つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP又はその抗原性フラグメントを含むか又はそれらからなる1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、又はそれ以上のポリペプチド、最も好ましくは4個のポリペプチドを含み、5つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP又はその抗原性フラグメントを含むか又はそれらからなる1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、又はそれ以上のポリペプチド、最も好ましくは4個のポリペプチドを含むことが特に好ましい。各々の異なるレイアウトが異なる接合配列により他のレイアウトと区別される、すなわち2つのレイアウトが或るFSP又はmFSPと次のFSP又はmFSPとの同じN末端とC末端との連結の間の連結を含まないのが好ましい。
【0119】
各レイアウトは通例、患者に別々に投与されるため、異なるレイアウトを同じCVPの別個の組成物とみなすこともできる。
【0120】
本発明の第5の態様のCVPの好ましい実施形態では、CVPの1つ以上のFSP及び/又はmFSP、又は2つ以上のFSP及び/又はmFSPを含むポリペプチドを、好ましくはペプチド結合によって、CVPの免疫原性を増強する以下の要素の1つ以上に連結する:不変鎖配列又はそのフラグメント;組織型プラスミノーゲン活性化因子;PEST配列;サイクリン破壊ボックス;ユビキチン化シグナル;SUMO化シグナル;インターロイキン、好ましくはインターロイキン2、インターロイキン12又はインターロイキン15;チェックポイントタンパク質特異的リガンド、好ましくは抗PD1抗体又はそのPD1結合フラグメント、抗CTLA4抗体又はその抗CTLA4結合フラグメント、抗LAG3抗体又は抗LAG3結合フラグメント、抗TIM3抗体又はその抗TIM3結合フラグメント。
【0121】
好ましい実施形態では、選別シグナル(ヒト組織プラスミノーゲンアクチベータシグナルペプチド(hTPA;配列番号1104、又はhTPAとして分類されるその機能的フラグメント)又はヒト不変鎖(hINV;配列番号1105、又はhINVとして分類されるその機能的フラグメント)のいずれか)をN末端に付加し、任意に(optionally)インフルエンザHAタグ配列(配列番号1106)を配列番号1088~1091(レイアウトA)、配列番号1092~1095(レイアウトB)、配列番号1155~1158(レイアウトC)又は配列番号1159~1162(レイアウトD)のポリペプチドのC末端に付加する。
【0122】
そのように構築されるポリペプチドの好ましいアミノ酸配列は、hTPAについては配列番号1107~1110(レイアウトA)、配列番号1111~1114(レイアウトB)、配列番号1171~1174(レイアウトC)及び配列番号1179~1182(レイアウトD)として、hINVについては配列番号1115~1118(レイアウトA)、配列番号1119~1122(レイアウトB)、配列番号1175~1178(レイアウトC)及び配列番号1183~1186(レイアウトD)によって提示される。
【0123】
第6の態様では、本発明は、本発明の第5の態様のCVPをコードする核酸のコレクションに関する。核酸は、好ましくはDNA、RNA又はその血清半減期を増加させるように修飾されたRNAであり得る。
【0124】
CVPに関する上記の理由(reasons)から、FSP、mFPS又はその抗原性フラグメントを含む1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、又はそれ以上のポリペプチドの2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上、好ましくは4個の異なるレイアウトを使用することが好ましい。これと一致して、それぞれの数のポリペプチドをコードする核酸のコレクションが異なるレイアウトを有する。好ましい実施形態では、FSB及び/又はmFSBをコードする核酸のコレクションは、配列番号1088~1091(レイアウトA)、配列番号1092~1095(レイアウトB)、配列番号1155~1158(レイアウトC)又は配列番号1159~1162(レイアウトD)に従う4つのポリペプチドをコードし、ヒトコドン使用頻度に基づいてコドン最適化される。
【0125】
所与のCVPをコードする核酸のコレクションの形態でCVPを投与する場合、2個、3個、4個、5個、6個又はそれ以上の異なる核酸のレイアウトを使用することが好ましく、ここで各レイアウトは、同じFSP及びmFSP又はその抗原性フラグメントを含むか又はそれらからなるポリペプチドをコードする、すなわち同じCVPをコードする1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、又はそれ以上の核酸を含む。本発明の第4又は第5の態様のCVPをコードする所与の核酸のコレクションが2つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP若しくはその抗原性フラグメントを含むか若しくはそれらからなるポリペプチドをコードする1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、若しくはそれ以上の核酸、最も好ましくはポリペプチドをコードする4個の核酸を含み、3つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP若しくはその抗原性フラグメントを含むか若しくはそれらからなるポリペプチドをコードする1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、若しくはそれ以上の核酸、最も好ましくはポリペプチドをコードする4個の核酸を含み、4つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP若しくはその抗原性フラグメントを含むか若しくはそれらからなるポリペプチドをコードする1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、若しくはそれ以上の核酸、最も好ましくはポリペプチドをコードする4個の核酸を含み、5つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP若しくはその抗原性フラグメントを含むか若しくはそれらからなるポリペプチドをコードする1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、若しくはそれ以上の核酸、最も好ましくはポリペプチドをコードする4個の核酸を含み、又は6つの異なるレイアウトで提供され、同じFSP及びmFSP若しくはその抗原性フラグメントを含むか若しくはそれらからなるポリペプチドをコードする1個以上、好ましくは2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個、若しくはそれ以上の核酸、最も好ましくはポリペプチドをコードする4個の核酸を含むことが特に好ましい。
【0126】
同じCVPをコードするが、異なるレイアウトを有する、配列番号1~209のFSP及びmFSPをコードするかかる核酸コレクションの更なる例を、hTPAを含むレイアウトAについては配列番号1123~1126、レイアウトCについては配列番号1187~1190、hTPAを含むレイアウトBについては配列番号1127~1130、レイアウトDについては配列番号1191~1194、hINVを含むレイアウトAについては配列番号1131~1134、レイアウトCについては配列番号1195~1198、hINVを含むレイアウトBについては配列番号1135~1138、レイアウトDについては配列番号1199~1202に提示する。
【0127】
好ましい実施形態では、効率的な翻訳の開始を可能にするためにコザック配列(CGCGACTTCGCCGCC)を本発明の第4又は第6の態様による核酸のコレクションの開始コドンのすぐ上流に配置してもよく、HAタグの下流にTAA終止コドンを配置した。最終的に、核酸のコレクションが、ヌクレオチド配列のそれぞれ5'末端及び3'末端に付加された、カセットのサブクローニングを容易にするために固有の制限部位を含む2つの隣接セグメントを含むことが好ましい(
図7)。
【0128】
本発明の第4及び第6の態様の核酸のコレクションは、発現カセットに含まれていてもよい。
【0129】
第7の態様では、本発明は、各々が本発明の第4又は第6の態様の核酸のコレクションの全て又は一部を含む1つ以上の発現ベクターのコレクションであって、発現ベクターのコレクションの全体が本発明の第4又は第6の態様の核酸のコレクションの全てを含む、すなわち発現ベクターのコレクションが所与のCVPの全てのFSP、mFSP又はその抗原性フラグメントをコードする核酸を含む、発現ベクターのコレクションに関する。
【0130】
発現ベクターのコレクションが発現ベクターの免疫原性を増強する1つ以上の要素を含むことが好ましい。かかる要素は、FSP、mFSP若しくはその抗原性フラグメントとの融合として発現されるか、又はベクター、好ましくは発現カセット中のベクターに含まれる別の核酸によってコードされるのが好ましい。
【0131】
好ましい実施形態では、CVPの免疫原性を増強する要素は、不変鎖配列又はその免疫刺激性フラグメント;組織型プラスミノーゲン活性化因子;PEST配列;サイクリン破壊ボックス;ユビキチン化シグナル;SUMO化シグナル;インターロイキン、好ましくはインターロイキン2、インターロイキン12又はインターロイキン15;チェックポイントタンパク質特異的リガンド、好ましくは抗PD1抗体又はそのPD1結合フラグメント、抗CTLA4抗体又はその抗CTLA4結合フラグメント、抗LAG3抗体又は抗LAG3結合フラグメント、抗TIM3抗体又はその抗TIM3結合フラグメントからなる群から選択される。
【0132】
第7の態様の発現ベクターのコレクションの好ましい実施形態では、コレクションの各発現ベクターは、プラスミド、コスミド、RNA、アジュバントと配合されたRNA、リポソーム粒子中に配合されたRNA、自己増幅RNA(SAM)、アジュバントと配合されたSAM、リポソーム粒子中に配合されたSAM、ウイルスベクター、好ましくはアルファウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルスベクター、シンドビス(SIN)ウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(SFV)ウイルスベクター、また好ましくは複製可能な又は複製不全のアデノウイルスベクター(好ましくは、チンパンジー又はボノボ又はゴリラに由来する)、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又は改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)ベクター、サル又はヒトサイトメガロウイルス(CMV)ベクター、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)ベクター、レトロウイルス又はレンチウイルスベクターからなる群から独立して選択される。1つのコレクションに使用される全ての発現ベクターが同じタイプである、例えば複製不全アデノウイルスベクターであることが好ましい。
【0133】
最も好ましい発現ベクターはアデノウイルスベクター、特にヒト又は非ヒト大型類人猿に由来するアデノウイルスベクターである。アデノウイルスが由来する好ましい大型類人猿は、チンパンジー(Pan)、ゴリラ(Gorilla)及びオランウータン(Pongo)、好ましくはボノボ(Pan paniscus)及びナミチンパンジー(Pan troglodytes)である。通例、自然発生の非ヒト大型類人猿アデノウイルスは、それぞれの大型類人猿の糞便サンプルから単離される。最も好ましいベクターは、hAd5、hAd11、hAd26、hAd35、hAd49、ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd55、ChAd63、ChAd73、ChAd82、ChAd83、ChAd146、ChAd147、PanAd1、PanAd2及びPanAd3ベクターをベースとする非複製アデノウイルスベクター、又は複製可能なAd4及びAd7ベクターである。ヒトアデノウイルスhAd4、hAd5、hAd7、hAd11、hAd26、hAd35及びhAd49は、当該技術分野で既知である。自然発生ChAd3、ChAd4、ChAd5、ChAd6、ChAd7、ChAd8、ChAd9、ChAd10、ChAd11、ChAd16、ChAd17、ChAd19、ChAd20、ChAd22、ChAd24、ChAd26、ChAd30、ChAd31、ChAd37、ChAd38、ChAd44、ChAd63及びChAd82をベースとするベクターは、国際公開第2005/071093号に詳細に記載されている。自然発生PanAd1、PanAd2、PanAd3、ChAd55、ChAd73、ChAd83、ChAd146及びChAd147をベースとするベクターは、国際公開第2010/086189号に詳細に記載されている。
【0134】
特定の実施形態では、アデノベクター(adenovector)は、Gad20(GADNOU20とも称される、配列番号1219)であるか又はそれに由来する。一実施形態では、それに由来するとは、アデノベクターが配列番号1219に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有することを意味する。しかしながら、好ましい実施形態では、これは以下のことを意味する:
アデノベクターが、
(i)配列番号1219のヌクレオチド19386~19472によってコードされるアミノ酸(aa)配列、又は少なくとも85%のaa配列同一性を有し、aa位置27にAを有さず、好ましくはVを有するその変異体を含む第1の超可変領域HVR1、
(ii)配列番号1219のヌクレオチド19527~19571によってコードされるaa配列、又は少なくとも85%のaa配列同一性を有し、aa位置1にLを有さず、好ましくはIを有するその変異体を含む第2の超可変領域HVR2、
(iii)配列番号1219のヌクレオチド19623~19643によってコードされるaa配列、又は少なくとも85%のaa配列同一性を有し、aa位置7にVを有さず、好ましくはAを有するその変異体を含む第3の超可変領域HVR3、
(iv)配列番号1219のヌクレオチド19737~19772によってコードされるaa配列、又は少なくとも85%のaa配列同一性を有するその変異体を含む第4の超可変領域HVR4、
(v)配列番号1219のヌクレオチド19794~19838によってコードされるaa配列、又は少なくとも85%のaa配列同一性を有するその変異体を含む第5の超可変領域HVR5、
(vi)配列番号1219のヌクレオチド19908~19934によってコードされるaa配列、又は少なくとも85%のaa配列同一性を有するその変異体を含む第6の超可変領域HVR6、及び、
(vii)配列番号1219のヌクレオチド20259~20336によってコードされるaa配列、又は少なくとも85%のaa配列同一性を有し、aa位置1にIを有さず、好ましくはVを有するその変異体を含む第7の超可変領域HVR7、
を含むアデノウイルスヘキソンタンパク質をコードする。
【0135】
好ましい実施形態では、HVR変異体は、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。配列同一性のパーセンテージレベルによる定義の代替として、HVR変異体は、コードされる配列と比較して一定数のアミノ酸突然変異を有すると定義することができる。この場合、突然変異の数は以下の通りである:少なくとも85%の配列同一性の代わりに、HVR1中に最大4個の突然変異、HVR2中に最大2個の突然変異、HVR3中に最大1個の突然変異、HVR4中に最大1個の突然変異、HVR5中に最大2個の突然変異、HVR6中に最大1個の突然変異、及びHVR7中に最大3個の突然変異;少なくとも90%の配列同一性の代わりに、HVR1中に最大2個の突然変異、HVR2中に最大1個の突然変異、HVR3中に最大1個の突然変異、好ましくは突然変異なし、HVR4中に最大1個の突然変異、HVR5中に最大1個の突然変異、HVR6中に最大1個の突然変異、好ましくは突然変異なし、及びHVR7中に最大2個の突然変異;少なくとも95%の配列同一性の代わりに、HVR1中に最大1個の突然変異、HVR2中に最大1個の突然変異、好ましくは突然変異なし、HVR3中に最大1個の突然変異、好ましくは突然変異なし、HVR4中に最大1個の突然変異、好ましくは突然変異なし、HVR5中に最大1個の突然変異、好ましくは突然変異なし、HVR6中に最大1個の突然変異、好ましくは突然変異なし、及びHVR7中に最大1個の突然変異。
【0136】
当該技術分野で、例えばBradley et al. (J Virol., 2012 Jan;86(2):1267-72)から既知のように、アデノウイルス中和抗体はヘキソン超可変領域を標的とし、血清陽性率(serumprevalence)を有するアデノウイルスのHVR領域を置き換えることによって、このアデノウイルスは、免疫宿主における免疫系を回避することができる。このため、上記のHVRは、下で定義されるそれぞれのヘキソンタンパク質と共に使用することができるが、これらのヘキソンタンパク質、更には下記のペントン及びファイバータンパク質とは独立した、すなわち他のヘキソン、ペントン及び/又はファイバータンパク質を有する異なるアデノウイルス中のヘキソンHVRを置き換えることにより有用性を有する。
【0137】
好ましい実施形態では、ヘキソンタンパク質は、配列番号1219のヌクレオチド18981~21845によってコードされるアミノ酸配列、又は少なくとも85%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0138】
好ましい実施形態では、ヘキソン変異体は少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。配列同一性のパーセンテージレベルによる定義の代替として、ヘキソン変異体は、コードされる配列と比較して一定数のアミノ酸突然変異を有すると定義することができる。この場合、突然変異の数は以下の通りである:少なくとも85%の配列同一性の代わりに、最大143個の突然変異;少なくとも90%の配列同一性の代わりに、最大95個の突然変異;少なくとも95%の配列同一性の代わりに、最大47個の突然変異;少なくとも96%の配列同一性の代わりに、最大38個の突然変異;少なくとも97%の配列同一性の代わりに、最大28個の突然変異;少なくとも98%の配列同一性の代わりに、最大19個の突然変異;少なくとも99%の配列同一性の代わりに、最大9個の突然変異。ヘキソン変異体が上記のそれぞれのHVRについて定義されるよりも低い配列同一性又はより多いHVR中の突然変異を有しないことを理解されたい。
【0139】
一実施形態では、アデノベクターは、配列番号1219のヌクレオチド14021~15973によってコードされるアミノ酸配列、又は少なくとも85%の配列同一性を有するその変異体を含むアデノウイルスペントンタンパク質を更にコードする。好ましい実施形態では、ペントン変異体は、コードされる配列と比較して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。配列同一性のパーセンテージレベルによる定義の代替として、ペントン変異体は、一定数のアミノ酸突然変異を有すると定義することができる。この場合、突然変異の数は以下の通りである:少なくとも85%の配列同一性の代わりに、最大97個の突然変異;少なくとも90%の配列同一性の代わりに、最大65個の突然変異;少なくとも95%の配列同一性の代わりに、最大32個の突然変異;少なくとも96%の配列同一性の代わりに、最大26個の突然変異;少なくとも97%の配列同一性の代わりに、最大19個の突然変異;少なくとも98%の配列同一性の代わりに、最大13個の突然変異;少なくとも99%の配列同一性の代わりに、最大6個の突然変異。
【0140】
ペントン変異体は、アミノ酸位置289にDを有さず、好ましくはGを有し、アミノ酸位置341にDを有さず、好ましくはNを有するのが好ましい。
【0141】
別の実施形態では、アデノベクターは、配列番号1219のヌクレオチド32163~33956によってコードされるアミノ酸配列、又は少なくとも85%の配列同一性を有するその変異体を含むアデノウイルスファイバータンパク質を更に(すなわちヘキソン、場合によってはペントンタンパク質の隣に)コードする。好ましい実施形態では、ファイバー変異体は少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。配列同一性のパーセンテージレベルによる定義の代替として、ファイバー変異体は、コードされる配列と比較して一定数のアミノ酸突然変異を有すると定義することができる。この場合、突然変異の数は以下の通りである:少なくとも85%の配列同一性の代わりに、最大89個の突然変異;少なくとも90%の配列同一性の代わりに、最大59個の突然変異;少なくとも95%の配列同一性の代わりに、最大29個の突然変異;少なくとも96%の配列同一性の代わりに、最大23個の突然変異;少なくとも97%の配列同一性の代わりに、最大17個の突然変異;少なくとも98%の配列同一性の代わりに、最大11個の突然変異;少なくとも99%の配列同一性の代わりに、最大5個の突然変異。
【0142】
ファイバー変異体は、アミノ酸位置181にAを有さず、好ましくはPを有し、アミノ酸位置474にVを有さず、好ましくはIを有し、及び/又はアミノ酸位置4と5との間にSの挿入、好ましくはアミノ酸挿入を有しないのが好ましい。
【0143】
別の実施形態では、アデノベクターは、配列番号1219のヌクレオチド10724~10897によるヌクレオチド配列、又は少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列の変異体を含むVA RNA IIノンコーディングRNAを更に(すなわちヘキソン、場合によってはペントン及び/又はファイバータンパク質の隣に)コードする。代替的には又は加えて、アデノベクターは、配列番号1219のヌクレオチド10492~10659によるヌクレオチド配列、又は少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列の変異体を含むVA RNA IノンコーディングRNAをコードしてもよい。好ましい実施形態では、VA RNA変異体は少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。配列同一性のパーセンテージレベルによる定義の代替として、VA RNA変異体は、一定数のヌクレオチド突然変異を有すると定義することができる。この場合、突然変異の数は以下の通りである:少なくとも85%の配列同一性の代わりに、VA RNA I中に最大25個の突然変異及びVA RNA II中に最大26個の突然変異;少なくとも90%の配列同一性の代わりに、VA RNA I中に最大16個の突然変異及びVA RNA II中に最大17個の突然変異;少なくとも95%の配列同一性の代わりに、任意のVA RNA中に最大8個の突然変異;少なくとも96%の配列同一性の代わりに、任意のVA RNA中に最大6個の突然変異;少なくとも97%の配列同一性の代わりに、任意のVA RNA中に最大5個の突然変異;少なくとも98%の配列同一性の代わりに、任意のVA RNA中に最大3個の突然変異;少なくとも99%の配列同一性の代わりに、任意のVA RNA中に最大1個の突然変異。
【0144】
VA RNA II変異体は、(a)79位にCを有さず、及び/又は80位にAを有さず、好ましくは79位にTを有し、及び/又は80位にGを有し、(b)81位にAを有さず、好ましくは81位にGを有するのが好ましい。VA RNA I変異体は、好ましくは80位にGを有さず、好ましくは80位にAを有する。
【0145】
本発明によるVA RNAは、アデノウイルス産生の改善をもたらす。
【0146】
アデノベクターが、配列番号1219を参照として用いて、アデノウイルスゲノム中でヘキソン、ペントン及び/又はファイバーの遺伝子に隣接した他のアデノウイルス遺伝子及びヌクレオチドセグメントを更に含むことが好ましい。また、アデノベクターがアデノウイルス粒子へのポリヌクレオチドのパッケージングに必要とされる配列を含むことが特に好ましい。
【0147】
概して、アデノベクターが以下の少なくとも1つを含むことが好ましい:
(a)アデノウイルス5'末端、好ましくはアデノウイルス5'逆方向末端反復;
(b)アデノウイルスEla領域、又は13S領域、12S領域及び9S領域の中から選択されるそのフラグメント;
(c)アデノウイルスElb領域、又はスモールT領域、ラージT領域及びIX領域からなる群の中から選択されるそのフラグメント;
(d)アデノウイルスVA RNA領域、又はVA RNA I領域及びVA RNA II領域からなる群の中から選択されるそのフラグメント;
(e)アデノウイルスE2b領域、又はスモールpTP領域、ポリメラーゼ領域及びIVa2領域からなる群の中から選択されるそのフラグメント;
(f)アデノウイルスL1領域、又は28.1 kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノプロテイン、52/55 kDaタンパク質及びIIIaタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするそのフラグメント;
(g)アデノウイルスL2領域、又は上で定義されるペントンタンパク質、VIIタンパク質、Vタンパク質及びXタンパク質からなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするそのフラグメント;
(h)アデノウイルスL3領域、又はVIタンパク質、上で定義されるヘキソンタンパク質及びエンドプロテアーゼからなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするそのフラグメント;
(i)アデノウイルスE2a領域、又はDBPタンパク質からなるアデノウイルスタンパク質をコードするそのフラグメント;
(j)アデノウイルスL4領域、又は100 kDタンパク質、22 kDホモログ、33 kDホモログ及びタンパク質VIIIからなる群から選択されるアデノウイルスタンパク質をコードするそのフラグメント;
(k)アデノウイルスE3領域、又はE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8及びE3 ORF9からなる群から選択されるそのフラグメント;
(l)アデノウイルスL5領域、又は上で定義されるファイバータンパク質をコードするそのフラグメント;
(m)アデノウイルスE4領域、又はE4 ORF6/7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及びE4 ORF1からなる群から選択されるそのフラグメント;
(n)アデノウイルス3'末端、好ましくはアデノウイルス3'逆方向末端反復;及び/又は、
(o)アデノウイルスE1領域。
【0148】
これらの要素は、配列番号1219に従う同じアデノウイルスに由来するものであっても、又はキメラアデノウイルスを形成するように異なるアデノウイルス、特に異なる種のアデノウイルス、例えばヒトアデノウイルスに由来するものであってもよい。
【0149】
アデノベクターの幾つかの実施形態では、アデノベクターが上に概説されるような((a)~(m)のような)1つ以上のゲノム領域を含まないことが望ましい場合もある。特に、アデノベクターはE1、E3及び/又はE4領域を含まなくてもよく、及び/又は少なくとも1つの遺伝子を非機能的なものにする欠失及び/又は突然変異を含むアデノウイルス遺伝子を含む。これらの好ましい実施形態では、好適なアデノウイルス領域は、上述の領域(複数の場合もある)/遺伝子(複数の場合もある)を含まない又は選択領域(複数の場合もある)/遺伝子(複数の場合もある)が非機能的なものとなるように修飾される。これらを非機能的なものにする可能性の1つは、1つ以上の人工終止コドン(例えばTAA)をこれらの遺伝子のオープンリーディングフレームに導入することである。ウイルスを複製欠損にする方法が当該技術分野で既知である(例えば、Brody et al, 1994 Ann NY Acad Sci., 716: 90-101を参照されたい)。欠失により導入遺伝子を、好ましくはミニ遺伝子カセット等の発現カセット内にて挿入するスペースを作ることができる。さらに、当該技術分野で既知であるように、欠失を用いて、パッケージング細胞株又はヘルパーウイルスを使用しなければ複製することができないアデノウイルスベクターを生成することができる。指定の遺伝子/領域の欠失又は機能喪失型突然変異の1つ以上を含む、かかる組み換えアデノウイルスは、例えば遺伝子療法又はワクチン接種のためのより安全な組み換えアデノウイルスを提供することができる。
【0150】
アデノベクターは、本明細書で概説される少なくとも1つのゲノム領域/遺伝子(例えば、領域E1、E3及び/又はE4等)、具体的にはE1A、E1B、E2A、E2B、E3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8、E3 ORF9、E4 ORF6/7、E4 ORF6、E4 ORF5、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2及び/又はE4 ORF1、好ましくはE1A、E1B、E2A、E2B、E3及び/又はE4を含まなくてもよく、及び/又は少なくとも1つの遺伝子を非機能的なものにする欠失及び/又は突然変異を含むアデノウイルス遺伝子を含むが、無傷のEla及び/又はElb領域を保持することが望ましい。かかる無傷のEl領域は、アデノウイルスゲノム中のその天然(native)位置に位置していても、又は天然アデノウイルスゲノム中の欠失の部位(例えば、E3領域中)に配置されてもよい。
【0151】
好ましい実施形態では、アデノベクターは、以下のアデノウイルスタンパク質:タンパク質VI、タンパク質VIII、タンパク質IX、タンパク質IIIa及びタンパク質IVa2の1つ以上、好ましくは全てを更にコードする。
【0152】
アデノウイルスの技術分野の平均的な当業者は、上で指定したアデノウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを決定する方法を十分に認識している。当業者は、アデノウイルスゲノムの構造も認識しており、不当な負担なしに、本明細書で概説される個々のアデノウイルス領域及びORFを任意のアデノウイルスゲノムにマッピングすることができる。
【0153】
「ヘキソンタンパク質」という用語は、アデノウイルスに含まれるヘキソン(II)タンパク質を指す。本発明によるヘキソンタンパク質又はその変異体は、感染性アデノウイルスビリオン中のヘキソンタンパク質又はそのフラグメントと同じ機能を有する。このため、好ましくはカプシドタンパク質として上記ヘキソン又はその変異体を含むアデノウイルスは、宿主細胞内に入ることが可能である。ヘキソンタンパク質の変異体を生成する好適な方法は、米国特許第5,922,315号に記載されている。この方法では、アデノウイルスヘキソンの少なくとも1つのループ領域を別のアデノウイルス血清型の少なくとも1つのループ領域と交換する。組み換えアデノウイルスが宿主細胞内に入ることができるかを容易に決定することができる。例えば、宿主細胞をアデノウイルスと接触させた後、組み換え宿主細胞を洗浄し、溶解させることができ、アデノウイルスRNA及び/又はDNAが宿主細胞中に見られるかを、例えばアデノウイルスRNA及び/又はDNAに特異的な適切なハイブリダイゼーションプローブを用いて決定することができる。代替的又は付加的には、組み換えアデノウイルスと接触させた後の宿主細胞を洗浄し、溶解させ、例えばウエスタンブロットを用いてアデノウイルス特異抗体でプローブすることができる。また別の代替案では、宿主細胞における遺伝子産物の発現に好適な発現カセットを含む組み換えアデノウイルスによる感染後に宿主細胞が遺伝子産物、例えば蛍光タンパク質を発現するかを、例えばin vivoで観察する。
【0154】
「超可変領域」(HVR)という用語は、株間で高い配列変異を有し、ヘキソンタンパク質の溶媒露出面に位置するため、ウイルスカプシドの外側に露出するドメインを指す。これらは中和抗体の主要決定基である。HVRは、例えば他のヘキソンタンパク質との配列アラインメントによって特定することができる。
【0155】
「アデノウイルスペントンタンパク質」とは、アデノウイルスに含まれるペントンベース(III)タンパク質を意味する。アデノウイルスペントンタンパク質は、カプシドの正二十面体対称の角に局在化することを特徴とする。本発明によるペントンタンパク質又はその変異体は、感染性アデノウイルスビリオン中のペントンタンパク質と同じ機能を有する。このため、好ましくはカプシドタンパク質として上記ペントン又はその変異体を含むアデノウイルスは、宿主細胞内に入ることが可能であり、これを上記のように試験することができる。さらに、機能性ペントンは、アデノウイルスファイバータンパク質に対して親和性を有する。平均的な当業者は、タンパク質間の親和性を試験する方法を十分に認識している。第1のタンパク質が第2のタンパク質に結合することが可能であるかを決定するために、例えば遺伝学的酵母ツーハイブリッドアッセイ、又はプルダウン、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)ベースのアッセイ若しくはプラズモン共鳴アッセイ等の生化学アッセイを用いることができる。プルダウン又はプラズモン共鳴アッセイを用いる場合、生化学の技術分野で既知であるように、タンパク質の少なくとも1つをHISタグ、GSTタグ又は他のタグ等のアフィニティタグに融合することが有用である。
【0156】
「ファイバータンパク質」という用語は、アデノウイルスに含まれるノブのあるファイバー(IV)タンパク質を指す。本発明によるファイバータンパク質又はその変異体は、感染性アデノウイルスビリオン中のファイバータンパク質又はそのフラグメントと同じ機能を有する。このため、好ましくはカプシドタンパク質として上記ファイバー又はファイバー変異体を含むアデノウイルスは、宿主細胞内に入ることが可能であり、これを上記のように試験することができる。さらに、機能性ファイバータンパク質は、アデノウイルスペントンタンパク質に対して親和性を有する。また、グリコシル化形態の機能性アデノウイルスファイバータンパク質は、三量化することが可能である。このため、変異体がグリコシル化され、及び/又は三量体を形成することが可能であることも好ましい。三量化を含む親和性は、上記のように試験することができ、グリコシル化アッセイも当該技術分野で既知である。
【0157】
「VA(ウイルス関連)RNA」は、アデノウイルス中に見られる一種のノンコーディングRNAである。これは翻訳の調節において役割を果たす。VAI又はVA RNA I及びVAII又はVA RNA IIと呼ばれる、このRNAの2つのコピーが存在する。2つのVA RNA遺伝子は、アデノウイルスゲノム中で別個の遺伝子である。VA RNA Iが主要な種であり、VA RNA IIは、より低レベルで発現される。どちらの転写産物もポリアデニル化されず、どちらもPolIIIによって転写される。
【0158】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はタンパク質の配列との関連での「同一性」又は「同一の」という用語は、最大の一致についてアラインメントされた場合に同一である2つの配列中の残基の数を指す。具体的には、2つの配列の配列同一性パーセントは、核酸配列又はアミノ酸配列に関わらず、2つのアラインメントされた配列間の完全な一致の数を短い方の配列の長さで除算し、100を乗算したものである。2つの配列をアラインメントするために用いることができるアラインメントツールは当業者に既知であり、例えばワールドワイドウェブ上、例えばポリペプチドアラインメントのためのClustal Omega(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)、又はポリヌクレオチドアラインメントのためのMUSCLE(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/muscle/)若しくはMAFFT(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/mafft/)、又はポリヌクレオチド及びポリペプチドのアラインメントのためのWATER(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/)で得ることができる。2つの配列間のアラインメントは、デフォルトのパラメーター設定、例えばMAFFTについては、好ましくはMatrix:Blosum62、Gap Open 1.53、Gap Extend 0.123、WATERのポリヌクレオチドについては、好ましくはMATRIX:DNAFULL、Gap Open:10.0、Gap Extend 0.5、WATERのポリペプチドについては、好ましくはMATRIX:BLOSUM62、Gap Open:10.0、Gap Extend:0.5を用いて行うことができる。十分なアラインメントをもたらすためにいずれかの配列中にギャップを導入する必要があり得ることが当業者には理解される。「最良の配列アラインメント」は、最小数のギャップを有した上で最大数の同一の残基のアラインメントをもたらすアラインメントとして定義される。これは、アラインメントにあらゆる配列中のあらゆる残基を含むグローバルアラインメントであるのが好ましい。
【0159】
「変異体」という用語は、ポリペプチドに関して、概してポリペプチドの修飾バージョン、例えば突然変異を指し、ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸が欠失、挿入、修飾及び/又は置換されている可能性がある。概して、変異体は機能性であり、機能性変異体を含むアデノウイルスが宿主細胞に感染することが可能であることを意味する。より具体的な機能は本明細書で定義され、一般的定義に優先する。「突然変異」又は「アミノ酸突然変異」は、アミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入であり得る(「及び」は、2つ以上の突然変異が存在する場合に適用することができる)。これは置換(すなわち、保存的又は非保存的アミノ酸置換)、より好ましくは保存的アミノ酸置換であるのが好ましい。幾つかの実施形態では、置換は、非自然発生アミノ酸との自然発生アミノ酸の交換も含む。保存的置換は、置換されるアミノ酸と同様の化学的特性を有する別のアミノ酸によるアミノ酸の置換を含む。保存的置換は、以下のものからなる群から選択される置換であるのが好ましい:
(i)別の異なる塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換;
(ii)別の異なる酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換;
(iii)別の異なる芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換;
(iv)別の異なる非極性脂肪族アミノ酸による非極性脂肪族アミノ酸の置換;及び、
(v)別の異なる極性非荷電アミノ酸による極性非荷電アミノ酸の置換。
【0160】
塩基性アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン及びリシンからなる群から選択されるのが好ましい。酸性アミノ酸は、アスパラギン酸又はグルタミン酸であるのが好ましい。芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されるのが好ましい。非極性脂肪族アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン及びイソロイシンからなる群から選択されるのが好ましい。極性非荷電アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、プロリン、アスパラギン及びグルタミンからなる群から選択されるのが好ましい。保存的アミノ酸置換とは対照的に、非保存的アミノ酸置換は、上で概説される保存的置換(i)~(v)に該当しない、任意のアミノ酸との或るアミノ酸の交換である。
【0161】
配列同一性を決定する手段は上に説明している。
【0162】
タンパク質のアミノ酸は、修飾、例えば化学修飾することもできる。例えば、タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸の側鎖又は遊離アミノ若しくはカルボキシ末端を、例えばグリコシル化、アミド化、リン酸化、ユビキチン化等によって修飾することができる。化学修飾は、当該技術分野で既知であるようにin vivoで、例えば宿主細胞内で行うこともできる。例えば、タンパク質のアミノ酸配列中に存在する好適な化学修飾モチーフ、例えばグリコシル化配列モチーフによりタンパク質がグリコシル化される。修飾により修飾アミノ酸の同一性の変化(例えば、置換又は欠失)がもたらされない限り、修飾ポリペプチドは、言及されるポリペプチドの範囲内であり、すなわち本明細書で定義される変異体ではない。
【0163】
「変異体」という用語は、ポリヌクレオチドに関して、概してポリヌクレオチドの修飾バージョン、例えば突然変異を指し、ポリヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドが欠失、挿入、修飾及び/又は置換されている可能性がある。概して、変異体は機能性であり、機能性変異体を含むアデノウイルスが宿主細胞に感染することが可能であることを意味する。より具体的な機能は本明細書で定義され、一般的定義に優先する。「突然変異」は、ヌクレオチドの置換、欠失及び/又は挿入であり得る(「及び」は、2つ以上の突然変異が存在する場合に適用することができる)。これは置換であるのが好ましく、より好ましくはアミノ酸置換、最も好ましくは保存的アミノ酸置換を引き起こす。
【0164】
概して、発現ベクターのコレクション、すなわちそれぞれのCVPの全てのFSP、mFSP及びその抗原性フラグメントをコードする核酸を含む発現ベクターのコレクションの全ての発現ベクターが、1つのタイプ、例えば複製可能なアデノウイルスのものであることが好ましい。同じCVP又はそれをコードする核酸の異なるレイアウトが用いられる本発明の実施形態では、各レイアウトは、別個の発現ベクターのコレクションに含まれる。このため、各レイアウトは、同じ発現ベクター又は異なる発現ベクターに含まれ得る。発現ベクター自体が患者において抗原性である場合には後者が好ましい。このため、同じCVPの2回以上の反復投与の間に発現ベクターのタイプを、好ましくは異なるレイアウトで変化させることによりCVPが患者において発現される可能性が高まる。
【0165】
本発明は、薬剤に使用される、本発明の第4若しくは第5の態様のCVP、本発明の第4若しくは第6の態様の核酸のコレクション、又は本発明の第7の態様の発現ベクターコレクションにも関する。
【0166】
本発明は、本発明の第4若しくは第5の態様のCVP、本発明の第4若しくは第6の態様の核酸のコレクション、又は本発明の第7の態様の発現ベクターコレクションを含む医薬組成物にも関する。
【0167】
同じCVPの異なるレイアウト、同じCVPのかかる異なるレイアウトをコードする核酸、又は異なるレイアウトを有するかかる核酸を含む発現ベクターを同種又は異種プライム-ブースト投与計画(下記を参照されたい)に使用する場合、「医薬組成物」という用語は、同じCVP、同じCVPのかかる異なるレイアウトをコードする核酸、又は異なるレイアウトを有するかかる核酸を含む発現ベクターの別々の投与を可能にする2つの物理的に分離された組成物も包含する。
【0168】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤、並びに任意に1つ以上の付加的な活性物質を更に含む。好ましくは、第5の態様の組成物は、好ましくは精製形態の治療有効量の化合物を、患者への適当な投与のための形態が得られるように好適な量の担体及び/又は賦形剤と共に含有する。配合物は、投与方法に適するものとする。
【0169】
医薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、持続放出配合物等の形を取ることができる。医薬組成物は、トリグリセリド等の従来の結合剤及び担体と共に坐剤として配合することができる。
【0170】
本発明の医薬組成物の調製については、薬学的に許容可能な担体は、固体又は液体のいずれであってもよい。固体形態の組成物としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、トローチ剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒が挙げられる。固体賦形剤は、希釈剤、着香料、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤又はカプセル化材としても働くことができる1つ以上の物質であり得る。粉末では、賦形剤は、微粉化された本発明の阻害剤との混合物中の微粉化された固体であるのが好ましい。錠剤では、活性成分を必要な結合特性を有する担体と好適な割合で混合し、所望の形状及びサイズに圧縮する。好適な賦形剤は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。坐剤の調製については、脂肪酸グリセリドの混合物又はココアバター等の低融点ワックスを初めに融解させ、撹拌等によって活性成分をその中に均一に分散させる。次いで、融解させた均一な混合物を好都合なサイズの型に注入し、冷却することによって凝固させる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与に好適な固形剤形として使用することができる。
【0171】
液体形態の組成物としては、溶液、懸濁液及びエマルション、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール溶液又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射(例えば静脈内、動脈内、骨髄内輸液、筋肉内、皮下、腹腔内、皮内及び髄腔内注射)については、液体調製物を溶液、例えばポリエチレングリコール水溶液に配合することができる。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合に好ましい担体である。
【0172】
医薬組成物は、単位剤形であるのが好ましい。かかる形態では、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割することができる。単位剤形は、パッケージが個別量の組成物を含有する、パッケージ化された錠剤、カプセル及びバイアル又はアンプル内の粉末等のパッケージ化された組成物であってもよい。また、単位剤形はカプセル、注射バイアル、錠剤、カシェ剤若しくはトローチ剤自体であっても、又はパッケージ化された形態の適切な数のこれらのいずれかであってもよい。
【0173】
組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有していてもよい。
【0174】
さらに、かかる医薬組成物は、限定されるものではないが、アジュバント等の他の薬理活性物質及び/又は付加的な活性成分を含んでいてもよい。本発明の文脈におけるアジュバントとしては、無機アジュバント、有機アジュバント、油性アジュバント、サイトカイン、微粒子状アジュバント、ビロソーム(virosomes)、細菌アジュバント、合成アジュバント又は合成ポリヌクレオチドアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
第8の態様では、本発明は、MSI表現型を有する癌細胞を含む癌を有するか、又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療に使用され、癌が好ましくは大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、小腸癌、肝胆道癌、肝癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮肉腫、脳癌及び皮膚癌からなる群から選択される、本発明の第4若しくは第5の態様のCVP、本発明の第4若しくは第6の態様の核酸のコレクション、又は本発明の第7の態様の発現ベクターコレクションに関する。
【0176】
上で概説されるように、本発明の万能ワクチンの特定の利点の1つは、1つだけではない癌型の予防法又は療法が提供されるということである。したがって、第8の(eighth)態様によると、少なくとも2つの型のMSI癌、より好ましくは少なくとも3つの型のMSI癌、好ましくは大腸癌、胃癌、子宮内膜癌、小腸癌、肝胆道癌、肝癌、神経内分泌癌、子宮頸癌、卵巣癌、子宮肉腫、脳癌及び皮膚癌の予防法(prophylaxis)又は治療法を提供することが好ましい。
【0177】
予防法は、本発明において、MLH-1、MSH-2、MSH-6、PMS2及びTACSTD1/EPCAM等のミスマッチ修復系(MMR)に関与する遺伝子に生殖細胞突然変異を有する患者を含む、臨床ガイドラインに従ってMSI癌を発症するリスクがあることが知られる患者に対するものであるのが好ましい。治療は、最新の臨床ガイドラインに従うMSI状態の診断後の任意の組織に生じる全ての病期(I~IV)の癌を有する患者に対するものである。かかるワクチンの使用は、自然発生の又は薬理学的に誘導されたものであり得るMSI状態を有する癌の治療を対象とする。
【0178】
多くの場合、CVPの単回投与は、腫瘍疾患からの効果的な保護又は腫瘍疾患の治療処置に必要とされる数の長期免疫細胞を生じさせるのに十分でない。結果として、特定の疾患に特異的な生物学的製剤による反復チャレンジが該疾患に対する持続的な防御免疫を確立するか、又は所与の疾患を治癒するために必要とされる。CVP、かかるCVPをコードする核酸のコレクション又はかかる核酸を含む発現ベクターのコレクションの反復投与を含む投与計画は、本発明において「プライム-ブーストワクチン接種計画」と称される。プライム-ブーストワクチン接種計画は、CVP、かかるCVPをコードする核酸のコレクション又はかかる核酸を含む発現ベクターのコレクションの少なくとも2回の投与を含むのが好ましい。CVP、かかるCVPをコードする核酸のコレクション又はかかる核酸を含む発現ベクターのコレクションの最初の投与は、「プライミング」と称され、同じCVP、かかるCVPをコードする核酸のコレクション又はかかる核酸を含む発現ベクターのコレクションの任意の後続投与は、「ブースティング」と称される。CVP、かかるCVPをコードする核酸のコレクション又はかかる核酸を含む発現ベクターのコレクションの各々の後続投与において、同じCVPではあるもの異なるレイアウトで投与してもよいことが上記の説明から理解される。
【0179】
このため、本発明の好ましい実施形態では、プライム-ブースティングワクチン接種計画は、免疫応答のプライミングのためのCVP、かかるCVPをコードする核酸のコレクション又はかかる核酸を含む発現ベクターのコレクションの1回の投与、及び免疫応答のブースティングのための少なくとも1回の後続投与を含む。免疫応答のブースティングのための2回、3回、4回又は更には5回の投与も本発明によって企図されることを理解されたい。
【0180】
プライムとブーストとの間の期間は1週間、2週間、4週間、6週間又は8週間であるのが好ましい。期間は、4週間又は8週間であるのがより好ましい。2回以上のブーストを行う場合、後のブーストを前のブーストの1週間、2週間、4週間、6週間又は8週間後に行うのが好ましい。任意の2回のブーストの間隔は、4週間又は8週間であるのがより好ましい。
【0181】
本発明のプライム-ブーストワクチン接種計画は、同種又は異種であり得る。同種プライム-ブースト計画では、プライミング及び少なくとも1回のブースティングの両方をCVP、かかるCVPをコードする核酸のコレクション又はかかる核酸を含む発現ベクターのコレクションの同じ投与手段を用いて行う。異種プライム-ブースティング計画では、免疫応答のプライミング及びブースティングには異なる手段を用いる。本発明の文脈において、異種プライム-ブースティング計画は、例えば免疫応答のプライミングのためのポックスウイルスベクター及び免疫応答のブースティングのための異なる発現ベクター又はCPVを含み得る。
【0182】
本発明の好ましい一実施形態では、プライム-ブースティングワクチン接種計画は同種であり、本発明の別の好ましい実施形態では、プライム-ブースティングワクチン接種計画は異種である。
【0183】
したがって、一態様では、本発明は、MSI表現型を有する癌細胞を含む癌を有するか又はかかる癌を発症するリスクがある患者の予防法又は治療に使用され、核酸のコレクション及び/又は発現ベクターコレクションが異種プライム-ブーストワクチン接種スキームで投与され、好ましくはプライムがアデノウイルスベクターによるものであり、1回以上のブーストがポックスウイルスベクター、好ましくはMVAベクターによるものである、本発明の第4又は第6の態様の核酸のコレクション及び/又は本発明の第7の態様の発現ベクターコレクションに関する。
【実施例】
【0184】
実施例1:MSI腫瘍サンプルのタンパク質コード遺伝子におけるモノヌクレオチド反復(MNR)突然変異の選択
全エクソーム配列データ(4.0、公開日2016年10月31日)に基づき、TCGAデータポータル(https://gdc-portal.nci.nih.gov/)から利用可能な突然変異注釈フォーマット(Mutation Annotation Format;MAF)ファイルを、タンパク質コード遺伝子のエクソームのタンパク質コードセグメント内に位置する6ヌクレオチド長以上のMNR中のフレームシフト突然変異(FSM)の存在について分析した。TCGAサンプル注釈データで定義されるMSI表現型を有する腫瘍のみを分析時に考慮した。この群は、69個の高MSI(MSI-H)大腸癌(CRC)、85個のMSI胃癌及び166個のMSI子宮内膜(EC)癌に相当する合計320個の腫瘍サンプル及び適合正常対照サンプルを含むものであった。第2のフィルタリング工程では、1ヌクレオチド欠失によって生じるFSMのみを、このタイプのFSMがCRC及びEC腫瘍において最も頻繁に観察されることから受け入れた(1)。以下の基準を満たすFSMのみを受け入れることによって、得られるリストを更に改良した:(i)突然変異を有するリードの数が適合正常サンプルと比較して腫瘍中で有意に高かった(0.05以下のFDR補正フィッシャー検定p値);(ii)適合正常サンプル中のFSMの対立遺伝子頻度が25%以下であった。残りのFSMを、分析した3つの腫瘍型(CRC、胃癌、EC)の1つで少なくとも5%の腫瘍サンプル中に存在するFSMのみを保持することによって更にフィルタリングした。最終選択工程では、ワクチンに不適切であるとみなされることから以下のカテゴリーに入るFSMを除外した:(i)正常サンプルのコレクションからのサンプルの2%以上におけるFSMの存在(EXACデータベースhttp://exac.broadinstitute.org/)、及び/又は(ii)FSM保有遺伝子のmRNA発現(RSEM log2発現値)が、全ての3つの腫瘍型(CRC、EC及び胃癌)を考慮して発現された全てのタンパク質コード遺伝子(TCGA遺伝子レベルmRNA発現データ)の下位20パーセンタイル値内であった。このようにして得られたリストは1283個のFSMを含み、これらの腫瘍のCFSMとなる。
【0185】
実施例2:許容可能な特性を有するフレームシフトペプチドのリストの選択
次いで、実施例1において選択されたCFSMのFSMの各々を、NCBI REFSEQデータベースからの対応するmRNA配列(単数又は複数)にANNOVARを用いてマッピングし(Wang K, et al. (2010) NAR, 38:e164)、野生型(wt)及び得られる突然変異mRNAの両方をタンパク質に翻訳した。wt及び突然変異タンパク質配列の比較により、対応するフレームシフトペプチド(FSP)のアミノ酸(aa)配列が決定された。FSMが複数のmRNAアイソフォームの存在のために異なる長さ及び/又はaa配列の複数のFSPを生じる場合、得られる全てのFSPを保持した。得られるリストをフィルタリングし、潜在的CD8 Tネオエピトープを生じることができないことから4 aaよりも短い全てのFSPを除外した。
【0186】
さらに、CVPに含まれるFSPのアミノ酸配列を、或る特定の基準を満たす場合にアミノ酸の付加又は欠失によって修飾した(又は或る特定の基準を満たさなかったFSPを修飾後に除外した):(i)FSPが10 aaよりも短い場合、FCによってコードされるアミノ酸のすぐN末端側に自然発生する4 wt aaをFSPのN末端に付加し、推定CD8 T細胞ネオエピトープの最小長さ(8量体~10量体)に達するペプチドを確実にした(これは、FSMを含まない対応する野生型(wt)核酸の翻訳産物と比べて異なる最初のアミノ酸をコードするコドンから始まるFSM含有核酸のタンパク質コードセグメントの完全な翻訳産物であると本発明の文脈において定義されるFSPとは異なることから、mFSPと称される)。同じFSMに由来する複数のFSP間で共通するアミノ酸ストレッチは、最長のFSPにおいてのみ保持され、すなわち、より短いFSPでは、これらのアミノ酸ストレッチが欠失した。最終工程では、wtヒトプロテオーム(NCBI REFSEQデータベース)中にも存在する8以上の連続アミノ酸の任意のセグメントを、自己免疫を誘導するリスクを最小限に抑えるためにFSPから除去した。wtセグメントの除外後に得られるFSPが4 aaよりも短い場合、リストから除外した。このようにして得られた最終的なFSPの群は、1059個のFSMによってコードされる1087個のアミノ酸配列(配列番号1~1087)(表1)で構成され、CVPと称される。
【0187】
表1
1087個のFSPの各々について、FSPを生じるFSMのゲノム座標(hg19アセンブリ)と共に配列番号を報告する。
配列番号 FSMのゲノム座標
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0188】
実施例3:高い「免疫原性カバレッジ」を有するMSIワクチンのためのFSPの最適なサブセットの選択
配列番号1~1087は、本発明のCVPに含まれ得るFSP及びmFSPのアミノ酸配列を示す。この例示的なCFSPは、1087個のFSP及びmFSPを含む。実施例1及び2において概説される基準が変更される場合、CFSPが付加的な又はより少ないFSPを含み、したがってCVPは付加的な又はより少ないFSP及びmFSPを含む。CVP、例えばウイルスベクター、裸のDNA/RNAを投与する方法に応じて、このように多数のFSP及びmFSPのCVPを生成することが実際的又は経済的ではない場合もある。このため、本発明者らは、特定のMSI癌を患う患者の大部分の最適な免疫化又はMSI癌を発症する可能性がある患者における最適な予防法を達成するために、実施例1及び2において概説されるように生成したCFSPから、CVPに含まれるCFSPの好適な数のFSP又はFSPに由来するmFSPを選択する更なる選択基準を開発した。以下に、好ましいCVPに含まれるFSP及びmFSPのサブセットを決定するために本発明者らが用いたかかる付加的な選択基準を説明する。
【0189】
種々のウイルス抗原をワクチン接種したヒト被験体における過去の研究では、約400 aaの抗原性配列が平均3個(最低1個、最高12個)の免疫原性エピトープを含有することが示された(
図1)(Borthwick, N., et al. (2017) PLoS One 12(4), Swadling, L., et al. (2014) Sci Transl Med 6(261))。したがって、本明細書で3個の免疫原性エピトープの予測平均として意図される、良好な「免疫原性カバレッジ」を得るためには、ワクチンに選択されるFSPが各患者の腫瘍において少なくとも400 aaの全長を示すことが望ましい。このため、本発明者らは、400 aaの経験的に確立された最小の免疫原性カバレッジ閾値が試験したMSI腫瘍の最大数で達成されるようにCFSPからFSPを選択するアルゴリズムを開発した。実現可能な場合には、本発明者らは、FSPの一部が腫瘍細胞上で翻訳又は提示されない可能性を相殺するために、800 aaの標的免疫原性カバレッジに達することを目的とした。これらの基準は、(i)大きな患者コホートにおいて効果的な免疫応答を誘導する高い確率;及び(ii)所与の患者内の多数の癌細胞がワクチンにより誘導される免疫の標的となることを確実にするものとする。
【0190】
最終ワクチンセット中の全てのFSPについて6000 aaの最大全長を達成するためにアルゴリズムにおいて付加的な制約を課した。この長さのカットオフは、約1500 aaの連続接合FSP及び/又はmFSPをコードするベクター1つ当たり約4500ヌクレオチドの最大挿入サイズを前提として、ワクチンベクターの好ましい総数(n=4)を反映するものであった。
【0191】
CVSPコレクション中のFSPを生じる1059個のFSMの各々について、320個のTCGA MSI腫瘍(69個のMSI-H大腸癌、85個のMSI胃癌及び166個のMSI子宮内膜癌)の各々において、1又はゼロの値をそれぞれFSMの存在又は非存在に基づいて帰属させる。各腫瘍型について、5%未満の頻度を有するFSMを、各腫瘍群においてより共通するFSMのワクチンリストへの組入れに有利となるようにゼロの値に割り当てた。
【0192】
最初の工程として、各FSMによって生じる全てのFSPの全長と、320個のMSI腫瘍全体にわたるFSMの観測頻度との積であるスコア(aa長×FSMを含有するサンプルの数/全サンプル)に従い、アルゴリズムにより1059個のFSMをランク付けした。
【0193】
ワクチンリストに含まれる最初のFSMは、最高のスコアを有するFSMとした。続いて、アルゴリズムを、最大数の腫瘍の免疫原性カバレッジを増加させることを可能にするFSMを毎回選択することによって周期的に継続した。2つ以上のFSMがこの条件を満たす場合、最高のスコアを有するFSMを選んだ。1つのFSMが選択される場合、そのFSMによってコードされる全てのFSPをワクチンリストに加え、それに応じて、対応するFSPの全aa長を加えることによって選択されるFSMを保有するサンプルの免疫原性カバレッジを更新した。サンプルが標的免疫原性カバレッジ閾値(この場合、大腸癌及び胃癌について800 aa、子宮内膜癌について400 aaと選択される)に達した時点で、未だ標的カバレッジに達していないサンプルのみを考慮した上で、これがその後のFSMの選択のためにアルゴリズムにより割り引かれる。
【0194】
以下の3つの条件の1つが満たされるまで、アルゴリズムによりFSP又はmFSP、すなわちCVPを形成するアミノ酸配列をワクチンリストに加え続ける:(i)選択されるFSMによってコードされる選択される全てのFSPの全aa長が6000 aaに取って代わった;(ii)全ての癌サンプルが標的閾値以上の免疫原性カバレッジを有していた、又は(iii)閾値未満のサンプルの免疫原性カバレッジを増加させるFSMがそれ以上存在しなかった。
【0195】
記載のアルゴリズムを用いて選択されたFSPの最終サブセットは、6021 aaの全長について204個のFSMから生じる209個のFSPを含み、Nous-209と称される(配列番号1~209)。FSPのこのサブセットは、TCGA大腸癌サンプルの98%で400 aa以上の免疫原性カバレッジをもたらし、数の中央値はサンプル1つ当たり50個のFSP、免疫原性カバレッジの中央値は1322 aaである。同様に、Nous-209中のFSPは、胃癌サンプルの95%で400 aa以上の免疫原性カバレッジをもたらし、数の中央値はサンプル1つ当たり46個のFSP、カバレッジの中央値は1178 aaである。最後に、400 aa以上の免疫原性カバレッジがTCGA子宮内膜癌の70%で達成され、数の中央値はサンプル1つ当たり21個のFSP、カバレッジの中央値は512 aaである。800 aaの標的値について算出した場合に、免疫原性カバレッジは大腸癌及び胃癌で非常に高いままである(それぞれ93%及び83%)。
【0196】
実施例4:高い免疫原性カバレッジを有する候補MSI癌ワクチンとしてのNous-209の検証
Nous-209に含まれるFSP及びmFSPのリストの最初の検証工程として、本発明者らは、MSI細胞株のパネル(7個のCRC及び1個のEC)に対して次世代シークエンシング(NGS)を行った。ゲノムレベル(エクソームシークエンシング)では、Nous-209にも含まれる各細胞株において検出されたFSMの数は、全ての細胞株が400 aaの最小免疫原性カバレッジ閾値を大きく超えるものであり、平均カバレッジ(FSP累積長さ)は2037 aaであった(
図2A)。
【0197】
次に、本発明者らは、RNA-seqによって同じ細胞株を分析し、エクソームシークエンシングによって検出されたNous-209中のFSMの幾つが転写レベルでも発現されるかを決定した。特に、400 aaを超える免疫原性カバレッジが全ての細胞株についてRNA-seqレベルでも維持された(
図2B)。
【0198】
MSI細胞株について得られた結果と同様の結果が、6つの新鮮凍結MSI大腸癌適合生検材料(腫瘍及び正常組織)のエクソームシークエンシングによって得られた。分析した全ての患者について、免疫原性カバレッジは400 aaの最小閾値よりも高く、平均カバレッジは926 aaであった。6つのサンプルのうち4つが800 aaの標的閾値を超えた(
図3)。
【0199】
さらに、Nous-209の免疫原性を推定するために、本発明者らは、MSI CRC生検材料中のワクチンにコードされるFSPの幾つがMHC-I分子に対して良好な結合プロファイル(IC
50≦500 nM)を有するエピトープを生成することが予測されるかを算出した。この目的で、本発明者らは、初めに6人の患者のHLAハプロタイプを生検材料のシークエンシングデータから導き出した。続いて、本発明者らは、各患者に存在するワクチンにコードされるFSPのサブセットについてのHLA-I適合患者特異的結合予測を、IEDBソフトウェア(http://www.iedb.org/)を用いて行った。各MSI患者は、自身のHLA-Iハプロタイプに結合することが予測される平均67個(最低29個、最高141個)のエピトープを有していた(
図4)。
【0200】
まとめると、これらの結果から、MSI細胞株及び原発腫瘍生検材料の両方においてNous-209に含まれるサブセットのようなFSPのサブセットによって高い免疫原性カバレッジを達成することができることが実証される。
【0201】
本発明者らは次に、Nous-209中のFSPに対する免疫原性応答をin vivoで測定し得るかを検証した。この目的で、本発明者らは、HLA-A02
+トランスジェニックマウスをNous-209 FSPのサブセットで免疫化した。ワクチンにより誘導される免疫応答を、HLA-A02に対する結合予測に基づいてこれらのFSPから選択される九量体を用いる細胞蛍光測定(FACS)によって評価した。
図5に、インターフェロンγ(IFN-γ)についての細胞内染色(ICS)によって測定される、5匹の動物における配列番号123に対応するFSPに由来するHLA-A02九量体に対する代表的なCD8 T細胞応答を示す(パネルA)。FSP反応性T細胞のかなりの割合(5.6%)を示す、これらのマウスの1匹に由来するIFN-γ
+CD8 T細胞についてのゲーティング戦略のFACSプロットをパネルBに示す。
【0202】
実施例5:Nous-209の核酸カセットの構築
Nous-209中のFSPを4つのサブセットに分割し、各々が以下のウイルス骨格:大型類人猿アデノウイルス(GAd)及び改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)へのクローニングに好適な約1500 aaをコードする、長さ約4500ヌクレオチドの人工遺伝子を生成した。各遺伝子を、いかなるリンカーも用いずにFSP配列を次々に接合することによって組み立てた。209個のFSPを、各遺伝子が実施例3に記載のアルゴリズムに従って同様のランクレベルを有するほぼ同じ数のFSPを含有し、対応するFSMが3つの癌型にわたって同様の観測頻度の全体的分布を有するFSPを含有することが確実となるように4つの遺伝子に分配した。この手順により以下のものが得られた:
遺伝子1=1507 aa(46個のFSP)
遺伝子2=1501 aa(54個のFSP)
遺伝子3=1506 aa(59個のFSP)
遺伝子4=1507 aa(51個のFSP)。
【0203】
各人工遺伝子を、FSPの異なる順序に対応する4つの異なるレイアウト(A、B、C及びD)で組み立てた(表2)。異種プライム-ブーストワクチン接種戦略に基づいて、レイアウトA及びCの遺伝子をGAdベクターの構築に使用し、レイアウトB及びDの遺伝子をMVA骨格にクローニングした。レイアウトAとBとの間及びレイアウトCとDとの間のFSPのスクランブリングを設計し、接合エピトープに対する免疫応答をブーストし得る、隣接FSP間で同じ接合aa配列をコードするGAd及びMVAの両方を有することを回避した。2つのレイアウトの各遺伝子についてFSPの順序を選ぶために、本発明者らは、FSPがランダムに接合された50000個の異なるポリペプチドを生成する手順を用いた。これらの中から、本発明者らは、異なる接合を有し、最初の50 aaに不規則な配列(IUPREDソフトウェア(Dosztanyi Z., et al. (2005) Bioinformatics 21, 3433)(
図6)によって推定される、0.50を超える平均不規則傾向)を有する2つを選択した。後者の選択は、不規則なN末端がプロテアソームによるプロセシングに有利に働き、したがってMHC-I分子上のFSP由来のエピトープの提示の可能性を増大するはずであるという考えに基づくものであった。続いて、人工ポリペプチドを、ヒトプロテオームと交差反応性の領域の生成を回避するためにヒト参照タンパク質との類似性についてコンピューターによってスクリーニングした。レイアウトA、B、C及びDの4つのポリFSPストリングのaa配列を、異なる順序のFSPに対応する配列番号1088~1091(レイアウトA)、配列番号1092~1095(レイアウトB)、配列番号1155~1158(レイアウトC)及び配列番号1159~1162(レイアウトD)として挙げる(表2)。異種プライム-ブーストワクチン接種戦略に基づいて、レイアウトA及びCの遺伝子をGAdベクターの構築に使用し、レイアウトB及びDの遺伝子をMVA骨格にクローニングした。レイアウトAとBとの間及びレイアウトCとDとの間のFSPのスクランブリングをそれぞれ設計した。それらの対応するnt配列は、配列番号1096~1099(レイアウトA)、配列番号1100~1103(レイアウトB)、配列番号1163~1166(レイアウトC)及び配列番号1167~1170(レイアウトD)である。
【0204】
発現カセットを構築するために、選別シグナル(ヒト組織プラスミノーゲンアクチベータシグナルペプチド(hTPA;配列番号1104)又はヒト不変鎖(hINV;配列番号1105)のいずれか)をN末端に付加し、インフルエンザHAタグ配列(配列番号1106)を各ポリペプチド配列のC末端に付加した(
図7)。そのように構築されたポリペプチドの拡張配列は、hTPAについては配列番号1107~1110(レイアウトA)、配列番号1111~1114(レイアウトB)、配列番号1171~1174(レイアウトC)及び配列番号1179~1182(レイアウトD)として、hINVについては配列番号1115~1118(レイアウトA)、配列番号1119~1122(レイアウトB)、配列番号1175~1178(レイアウトC)及び配列番号1183~1186(レイアウトD)によって提示される。指定のポリFSPストリングを生成するための対応するnt配列をヒトコドン使用頻度に基づいてコドン最適化した(hTPAを含む、レイアウトAについては配列番号1123~1126、レイアウトBについては配列番号1127~1130、レイアウトCについては配列番号1187~1190、レイアウトDについては配列番号1191~1194;hINVを含む、レイアウトAについては配列番号1131~1134、レイアウトBについては配列番号1135~1138、レイアウトCについては配列番号1195~1198、レイアウトDについては配列番号1199~1202)。加えて、効率的な翻訳の開始を可能にするためにコザック配列(CGCGACTTCGCCGCC)を開始コドンのすぐ上流に配置し、HAタグの下流にTAA終止コドンを配置した。最後に、カセットのサブクローニングを容易にするために固有の制限部位を含む2つの隣接セグメントを、ヌクレオチド配列のそれぞれ5'末端及び3'末端に付加した(
図7)。人工遺伝子を代表するnt配列(hTPAを含む、レイアウトAについては配列番号1139~1142、レイアウトBについては配列番号1143~1146、レイアウトCについては配列番号1203~1206、レイアウトDについては配列番号1207~1210;hINVを含む、レイアウトAについては配列番号1147~1150、レイアウトBについては配列番号1151~1154、レイアウトCについては配列番号1211~1214、レイアウトDについては配列番号1215~1218)を標準的なオリゴヌクレオチド合成方法によって生成し、TetO-CMVプロモーター(Tetリプレッサーの結合部位を含むhCMVプロモーター)とBGH(ウシ成長ホルモン)ポリAとの間にサブクローニングした。
【0205】
表2
レイアウトA、B、C及びDの遺伝子1、遺伝子2、遺伝子3及び遺伝子4についての組み立てたポリペプチドのFSP組成。いずれの場合にも、FSPの配列番号は、組み立てたポリペプチド中の位置に基づいて列挙する(N末端からC末端)。
【表2】
【0206】
実施例6:免疫原性の確認
レイアウトAの4つの遺伝子を含有する4つのGAdベクター(GAd20-209-FSP)(ポリペプチド配列:配列番号1107~1110、ヌクレオチド配列:配列番号1139~1142)及びレイアウトBの4つの遺伝子を含有する4つのMVAベクター(MVA-209-FSP)(ポリペプチド配列:配列番号1111~1114、ヌクレオチド配列:配列番号1143~1146)の免疫原性をマウス(CB6F1マウス系統)において評価した。GAd20-209-FSPは、領域E3が欠失し、領域E1が遺伝子置換されたGAd20(配列番号1219)から構築した。マウスを各ベクターについて10
8個のウイルス粒子(vp)の用量のGAd20-209-FSPの単回筋肉内免疫化によって免疫化し、2週間後に10
7プラーク形成単位(pfu)の用量のMVA-209-FSPによってブーストした。ワクチンにコードされるFSPに対するT細胞応答の誘導を、209個のFSP配列をカバーする合成ペプチドを用いるELIspotアッセイによって測定した。合成ペプチドをDMSOに希釈し、混合して、16個のプールを形成した。免疫応答(脾細胞100万個当たりのインターフェロン-γ(IFN-γ)を産生するT細胞の数)をプライムの2週間後及びブーストの1週間後に分析した。データから、GAd20-209-FSPによるプライミング後のT細胞媒介性免疫応答の誘導及びMVA-209-FSPの投与後に得られた免疫応答の強力なブーストが示される(
図8)。16個のペプチドプールの各々に対して検出されたことから、応答はワクチン構築物全体に分布している複数のFSPに対するものであった(
図9)。重要なことには、ベクターの同時投与は単一ベクターによってコードされるFSPに対する免疫応答に影響を及ぼさず、FSPのワクチン混合物の存在下での免疫干渉が排除された(
図10)。最後に、T細胞応答の品質を、2つのペプチドプール(プール1及びプール3)を用いることによる細胞内染色(ICS)によって評定し、FSP特異的CD4及びCD8 IFNγ+T細胞の誘導が示された(
図11)。
【0207】
実施例4において説明されるように、Nous-209中のFSPに対する免疫原性応答がin vivoでも測定され得るかを検証した。HLA-A02+トランスジェニックマウスをNous-209 FSPのサブセット(30個のFSP)又はDMSO陰性対照で免疫化した。ワクチンにより誘導される免疫応答を、HLA-A02に対する結合予測に基づいて30個のFSPから選択される九量体を用いる細胞蛍光測定(FACS)によって評価した。
図11に、インターフェロンγ(IFN-γ)についての細胞内染色(ICS)によって測定される、5匹の動物におけるFSP配列番号123中に存在するHLA-A02九量体に対する代表的なCD8 T細胞応答を示す(パネルA)。FSP反応性T細胞のかなりの割合(5.6%)を示す、これらのマウスの1匹に由来するIFN-γ+CD8 T細胞についてのゲーティング戦略のFACSプロットをパネルBに示す。
【0208】
まとめると、これらの結果から以下のことが実証される:
i)構築物は高度に免疫原性であり、CD4及びCD8免疫応答を誘導する。
ii)免疫応答は16個の異なるペプチドプールに対するものであり、したがって少なくとも16個の異なるエピトープを認識する(各プールについて1個)。近交系マウス(実質的に遺伝的に同一のマウス)であっても、ワクチンの6000 aaに16個のエピトープを有することは、概して375 aa中に少なくとも1個の免疫原性エピトープに相当することから、400 aa中に少なくとも1個のエピトープの法則が確認されることが示される。
iii)ベクター1を単独で使用するか又は他の3つのベクターと組み合わせるかに関わらず、ベクター1にコードされる抗原に対する同等の免疫応答が測定されることから、明らかな干渉効果、特に個々のベクター間の抑制は見られない。同様に、ベクター2を単独で使用するか又は(or)他の3つと組み合わせるかに関わらず、ベクター2にコードされる抗原に対する同等の免疫応答が測定された。
【符号の説明】
【0209】
図面訳
図1
N. epitopes recognized by vaccine-induced T cells ワクチンにより誘導されるT細胞によって認識されるエピトープの数
# epitopes エピトープの数
Ag length Agの長さ
HCV: min 5, max 35 epitopes/volunteer HCV:最低5個、最高35個のエピトープ/ボランティア
HIV: min 3, max 20 epitopes/volunteer HIV:最低3個、最高20個のエピトープ/ボランティア
Empirical immunogenic rule: 400 aa contain at least 1 epitope, on average 2 (HCV) or 4 (HIV) 経験的な免疫原性の法則:400 aaは少なくとも1個、平均して2個(HCV)又は4個(HIV)のエピトープを含有する
図2
Exome sequencing エクソームシークエンシング
FSPs cumulative length FSPの累積長さ
図3
Coverage カバレッジ
Tumor ID 腫瘍ID
Stage 病期
Lynch リンチ
図4
N. predicted epitopes 予測エピトープの数
Tumor ID 腫瘍ID
Stage 病期
Lynch リンチ
図5
% of CD8 CD8の%
CD8 responses CD8応答
図6
LAYOUT レイアウト
Gene 遺伝子
Disorder tendency 不規則傾向
Residue position 残基位置
図7
cloning クローニング
Kozak コザック
hTPA or hINV hTPA又はhINV
poly-FSP polypeptide ポリFSPポリペプチド
HA tag HAタグ
STOP 停止
図8
splenocytes 脾細胞
peptide pools ペプチドプール
図9
splenocytes 脾細胞
peptide pools ペプチドプール
図10
Mixed vectors 混合ベクター
Single vector 単一ベクター
splenocytes 脾細胞
peptide pools ペプチドプール
Vaccine ワクチン
図11
peptide ペプチド
【配列表】