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特許7274238給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法
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  • 特許-給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/10 20060101AFI20230509BHJP
   G16Z 99/00 20190101ALI20230509BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230509BHJP
   E03B 1/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G06F17/10 Z
G16Z99/00
G06Q10/04
E03B1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021516678
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2020072296
(87)【国際公開番号】W WO2021000581
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】201910582168.0
(32)【優先日】2019-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】鄭 飛飛
(72)【発明者】
【氏名】黄 源
(72)【発明者】
【氏名】張 清周
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200901(JP,A)
【文献】米国特許第09897260(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第108664684(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/10
G16Z 99/00
G06Q 10/04
G06Q 50/06
E03B 1/00
E03F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管システム(IDP)を識別して、同じ配管直径の直列配管システム集合IDP={IDP,IDP,・・・,IDP}を形成し、Nは管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管システムの個数であるステップ1であって、同じ配管直径の直列配管システムは同じ配管直径の直列配管簡略化の基本対象であり、いずれかの同じ配管直径の直列配管システムIDP 、4本の連結された直列配管P、P、PおよびPと、3つの中間接続節点N、NおよびNと、両端接続節点NおよびNと、外部接続配管P、P、PおよびPと、を含み、ここで、節点N、N、N、NおよびNの節点流量、順にq、q、q、qおよびqである場合、当該同じ配管直径の直列配管システムIDP(i=1,・・・,N)は以下の数式
【数1】
(前記式(1)の右辺は順にそれぞれ、直列配管の集合、中間接続節点の集合、両端接続節点の集合、左端接続節点に接続される外部接続配管の集合、右端接続節点に接続される外部接続配管の集合である)、
で表される、ステップ1と、
集合IDP中の同じ配管直径の直列配管システムIDP(i=1,2,3,・・・,N)について最適化目標関数を確立することによって各中間節点流量配分により生じる簡略化誤差Errを計算して集合Err={Err,Err,・・・,Err}(Iは中間節点の個数)を形成し、中間節点がN、NおよびNの場合、確立される最適化目標関数はそれぞれ以下の数式
【数2】
で表され、ここで、下付き0およびdはそれぞれ、元の同じ配管直径の直列配管システム、中間節点流量配分後の同じ配管直径の直列配管システムを表し、wおよびwは重み係数であり、重み係数の下付き1、2および3はそれぞれN、N、Nに対応し、簡略化された二つの直列配管の相対的な重要度を示し、
【数3】
は節点Nの過渡流量影響係数であり、節点における水量の過渡流量に対する影響度を示し、その値は0~100%の間であり、
【数4】
は、接続配管Pの節点Nにおける伝達係数であり、以下の数式で表され、
【数5】
Aは配管の断面積、Dは配管直径、aは配管における波の速さ、Mは節点Nでの接続配管の総数、mは節点Nにおけるm番目の接続配管を表し、伝達係数
【数6】
の数値は0~2の間で、過渡圧力波が配管Pに沿って節点Nまで伝達した際の圧力変動幅の変化の程度を表し
節点における初期定常状態での水力状態と接続配管の属性を利用して節点Nの過渡流量影響係数である
【数9】
を確定し、すなわち、
【数10】
を確定し、ここで、SNiは節点Nにおける静的属性を表し、節点における初期定常状態での水力状態と接続配管の属性により確定され、すなわち、
【数11】
であり、ここで、q(N)およびH(N)はそれぞれ節点Nにおける初期定常状態の水量および圧力を示し、gは重力加速度であり、
直列配管の配管長さの比例を利用して二つの直列配管の重み係数を表し、すなわち、
【数12】
であり、ここで、Lは配管長さを示し、
最適化目標関数を解くと、簡略化誤差Errおよび対応する最適化決定変数値rが得られ、すなわち、式(2)~式(4)を解くと、それぞれ、中間節点N、NおよびNの簡略化誤差Err、ErrおよびErr、並びに対応する最適化決定変数値r、rおよびrが得られる、ステップ2と、
Errmin=min(Err)に基づいて、優先的に簡略化可能な中間節点を決定し、簡略化モデルの正確性を確保するため、簡略化誤差の制御閾値Errtolに基づいて同じ配管直径の直列配管の結合操作が適切であるか否かを判断し、
もし、Errmin≦Errtolの場合は、簡略化でき、 (12)
もし、Errmin>Errtolの場合は、簡略化に適せず、 (13)
すなわち、Errmin≦Errtolの場合は、続いて次の処理を行うが、そうでない場合は、ステップ6の処理にジャンプする、ステップ3と、
簡略化可能な中間節点に対して簡略化操作を行い、簡略化された両端節点の流量および同等の配管パラメータを決定する、ステップ4と、
同じ配管直径の直列配管システムIDPにおける簡略化された中間節点を除去して前記式(1)を更新し、この際、IDPにおける中間節点の数が0である場合、現在の同じ配管直径の直列配管システムにおける直列配管が全て簡略化されたことを示し、ステップ6の処理にジャンプし、そうでない場合、ステップ2の処理にジャンプし、現在の同じ配管直径の直列配管システムの簡略化を継続する、ステップ5と、
現在の同じ配管直径の直列配管システムについての簡略化が完了され、次のグループの同じ配管直径の直列配管システムの簡略化を実行し始め、ステップ2の処理に戻り、このように繰り返すことによりすべての同じ配管直径の直列配管システムが簡略化されると、簡略化プロセスが終了したことを示す、ステップ6と、

前記ステップ1において、いずれかの同じ配管直径の直列配管システムIDP が、5本以上の連結された直列配管と、4つ(直列配管の数-1)以上の中間接続節点と、を含む場合、前記ステップ2において、左端に最も近い中間節点については前記式(2)により、右端に最も近い中間節点については前記式(4)により、両側に隣り合う節点も中間節点である中間節点については、前記式(3)により、それぞれ簡略化誤差Errおよび対応する最適化決定変数rを取得し、
前記ステップ1において、いずれかの同じ配管直径の直列配管システムIDP が、3本の連結された直列配管と、2つの中間接続節点と、を含む場合、前記ステップ2において、左端側の中間節点については前記式(2)により、右端側の中間節点については前記式(4)により、それぞれ簡略化誤差Errおよび対応する最適化決定変数rを取得し、
前記ステップ1において、少なくとも1つの端部に接続される外部接続配管が3つ以上である場合、前記式(2)における第2式および前記式(4)における第1式については、すべての外部接続配管のいずれかの端部節点における伝達係数の和を考慮する、
給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法。
【請求項2】
ステップ2において、最適化決定変数値rは0~1の値をとる、ことを特徴とする請求項1に記載の給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法。
【請求項3】
ステップ3において、制御閾値Errtolの範囲は0.01~0.03である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法。
【請求項4】
ステップ4において、簡略化された両端節点の流量は、Errminに対応する最適化決定変数値rに基づいて決定されてもよく、すなわち、中間節点Nについて簡略化し、簡略化された両端節点NおよびNの水量はそれぞれq+rおよびq+(1-r)qであり、同等の配管パラメータは、(1)配管直径および波の速さはそれぞれ直列配管の配管直径および波の速さに等しく、(2)配管の長さは二本の直列配管の配管長さの和に等しく、(3)配管の抵抗係数は水力等価の原則に基づいて確定し、すなわち、水流が簡略化された後、同等の配管における損失水頭は簡略化される前の直列配管における損失水頭と同じく、との方法により決定される、ことを特徴とする請求項1に記載の給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市給水管網の技術分野に関し、具体的には給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展および住民生活水準の向上に伴い、都市給水管網の情報化、知能化管理は必然的な発展趨勢となっており、我が国のスマート水道建設の重要な一部となっている。水理モデルの確立および応用は、管網の情報化および知能化における不可欠な重要部分であり、給水管網に対する漏水監視および最適化運用の重要な前提でもある。近年、地理情報システム(GIS)は、既に都市給水システムの情報化管理に広く応用されている。GISは、幅広い管網トポロジ構造情報と豊富な部材の属性情報を有している、管網の水理モデルの確立に極めて便利である。しかしながら、GISに基づく給水管網の水理モデルは、通常、あまりにも詳細で複雑なシステム情報を有し、さらに、給水管網の規模が大きくなるにつれて、管網の水理モデルの規模と複雑さも増大され、管網モデルの解決と管理保守がますます困難になっている。したがって、管網モデルの汎用性と使いやすさを確保するための適切な技術的対策が求められている。そこで、モデルの簡略化は常用の技術的手段であって、管網の複雑さと部材の数を減らして、モデルを使いやすくするとともにモデルのシミュレーション精度を確保できる。
【0003】
直列配管の簡略化は、給水管網モデルの簡略化における一般的な操作の一つで、モデル内における節点(ノード)と配管の数を効果的に簡略化できる。ここで、同じ配管直径の直列配管の組み合わせは、主な簡略化タイプの一つであり、単一の配水管に大量のユーザー節点を有する場合の処理に使用される。水力計算やモデル応用の観点から、これらの分散されたユーザー節点は、少数の「集中型」ユーザー節点に組み合わせられることにより、モデルの複雑さを低減できる。このような組み合わせのプロセスは、システムにおける水量のバランスを維持するため、中間節点の流量を両端節点に分布することに関する。現在、通常の中間節点の流量分布の多くは、たとえば、等比例分布または直列配管の長さに応じて分布など、経験的または半経験的方法を採用する。これらの通常の方法は、モデルの簡略化の前後で定常状態の水力計算結果にほとんど差がないことを保証できるため、定常流状態での応用シーンに適している。一方、管網において顕著な水力状態の急激変化があった場合(つまり、過渡流状態)、通常の方法では、過渡流過程における過渡圧力波の伝播過程に対する節点流量の複雑な影響を考慮していないため、中間節点流量分布の前後で、過渡流の計算および解析結果に大きな違いが生じる可能性があり、ひいては、過渡に対する防止と制御措置の設計が不合理になってしまい(機能障害またはコストの無駄)、管網の安全運行管理に重大なリスクを形成する。この点からいえば、現在の給水直列配管の簡略化過程における節点流量の分布は、未だに科学的、合理的かつ効果的な方法が欠けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、給水直列配管における水力過渡のシミュレーションの精度を高める節点流量最適化配分方法を提供することにより、簡略化後の同じ配管直径の直列配管システムが、元のシステムの過渡的な水力特性を最大限に維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明に係る給水直列配管における過渡水力のシミュレーション精度を高める節点流量最適化配分方法は、
ステップ1として、管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管システム(IDP)を識別して、同じ配管直径の直列配管システム集合IDP={IDP,IDP,・・・,IDP}(Nは自然数)を形成し、Nは管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管システムの個数であり、同じ配管直径の直列配管システムは同じ配管直径の直列配管簡略化の基本対象であり、たとえば、同じ配管直径の直列配管システムIDPは、4本の連結された直列配管P、P、PおよびPと、3つの中間接続節点N、NおよびNと、両端接続節点NおよびNと、外部接続配管P、P、PおよびPと、を含み、ここで、節点N、N、N、NおよびNの節点流量は、順にq、q、q、qおよびqであり、当該同じ配管直径の直列配管システムIDP(i=1,・・・,N、Nは自然数)は以下の数式
【数1】
で表され、
ステップ2として、集合IDP中の同じ配管直径の直列配管システムIDP(i=1,2,3,・・・,N)について最適化目標関数を確立することによって各中間節点流量配分により生じる簡略化誤差Errを計算して集合Err={Err,Err,・・・,Err}(Iは中間節点の個数)を形成し、中間節点がN、NおよびNの場合、確立される最適化目標関数はそれぞれ以下の数式
【数2】
で表され、ここで、下付き0およびdはそれぞれ、元の同じ配管直径の直列配管システム、中間節点流量配分後の同じ配管直径の直列配管システムを表し、wおよびwは重み係数であり、重み係数の下付き1、2および3はそれぞれN、N、Nに対応し、簡略化された二つの直列配管の相対的な重要度を示し、
【数3】
は節点Nの過渡流量影響係数(i=1,・・・,N、Nは自然数)であり、節点における水量の過渡流量に対する影響度を示し、その値は0~100%の間であり、
【数4】
は、接続配管Pの節点Nにおける伝達係数であり、以下の数式で表され、
【数5】
は配管の断面積、Dは配管直径、aは配管における波の速さ、Mは節点Nでの接続配管の総数、mは節点Nにおけるm番目の接続配管を表し、伝達係数
【数6】
の数値は0~2の間で、過渡圧力波が配管Pに沿って節点Nまで伝達した際の圧力変動幅の変化の程度を表し、具体的には、
【数7】
は配管Pに沿って節点Nに伝達する前の初期振幅に対する節点Nに伝達した際の過渡圧力波の倍数を表し、
【数8】
は配管Pに沿って節点Nに伝達する前の初期振幅に対する節点Nに伝達した際の過渡圧力波の倍数を表し、節点における初期定常状態での水力状態と接続配管の属性を利用して節点Nの過渡流量影響係数である
【数9】
を確定し、すなわち、
【数10】
を確定し、ここで、SNiは節点Nにおける静的属性を表し、節点における初期定常状態での水力状態と接続配管の属性により確定され、すなわち、
【数11】
であり、ここで、q(N)およびH(N)はそれぞれ節点Nにおける初期定常状態の水量および圧力を示し、gは重力加速度であり、
直列配管の配管長さの比例を利用して二つの直列配管の重み係数を表し、すなわち、
【数12】
であり、ここで、Lは配管長さを示し、
最適化目標関数を解くと、簡略化誤差Errおよび対応する最適化決定変数値rが得られ、具体的には、数2~数4(式(2)~式(4))を解くと、それぞれ、中間節点N、NおよびNの簡略化誤差Err、ErrおよびErr、並びに対応する最適化決定変数値r、rおよびrが得られ、
ステップ3として、Errmin=min(Err)に基づいて、優先的に簡略化可能な中間節点を決定し、簡略化モデルの正確性を確保するため、簡略化誤差の制御閾値Errtolに基づいて同じ配管直径の直列配管の結合操作が適切であるか否かを判断し、
もし、Errmin≦Errtolの場合は、簡略化でき、 (12)
もし、Errmin>Errtolの場合は、簡略化に適せず、 (13)
すなわち、Errmin≦Errtolの場合は、続いて次の処理を行うが、そうでない場合は、ステップ6の処理にジャンプし、
ステップ4として、簡略化可能な中間節点に対して簡略化操作を行い、簡略化された両端節点の流量および同等の配管パラメータを決定し、
ステップ5として、同じ配管直径の直列配管システムIDPにおける簡略化された中間節点を除去し、この際、IDPにおける中間節点の数が0である場合、現在の同じ配管直径の直列配管システムにおける直列配管が全て簡略化されたことを示し、ステップ6の処理にジャンプし、そうでない場合、ステップ2の処理にジャンプし、現在の同じ配管直径の直列配管システムの簡略化を継続し、
ステップ6として、現在の同じ配管直径の直列配管システムについての簡略化が完了され、次のグループの同じ配管直径の直列配管システムの簡略化を実行し始め、ステップ2の処理に戻り、このように繰り返すことによりすべての同じ配管直径の直列配管システムが簡略化されると、簡略化プロセスが終了したことを示す、
ことを含む。
【0006】
好ましくは、ステップ2において、最適化決定変数値rは0~1の値をとる。
【0007】
好ましくは、ステップ3において、制御閾値Errtolの範囲は0.01~0.03である。
【0008】
好ましくは、ステップ4において、簡略化された両端節点の流量は、Errminに対応する最適化決定変数値rに基づいて決定されてもよく、たとえば、中間節点Nについて簡略化し、簡略化された両端節点NおよびNの水量はそれぞれq+rおよびq+(1-r)qであり、同等の配管パラメータは、(1)配管直径および波の速さはそれぞれ直列配管の配管直径および波の速さに等しく、(2)配管の長さは二本の直列配管の配管長さの和に等しく、(3)配管の抵抗係数は水力等価の原則に基づいて確定し、すなわち、水流が簡略化された後、同等の配管における損失水頭は簡略化される前の直列配管における損失水頭と同じく、との方法により決定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような有益な効果を奏する。
第一に、給水管網モデルの同じ配管直径の直列配管の簡略化において、本発明では初めて過渡水理シミュレーションの精度を向上するための節点流量最適化配分方法を提供し、 この方法によれば、従来の方法では元のシステムの過渡水理特性を効果的に保持できないという欠点を解消し、中間節点流量配分の最適化モデルを提供することにより、簡略化誤差の最小化を実現できる。
第二に、従来の経験的または半経験的の節点流量配分方法と比較して、本発明に係る方法は、中間節点流量配分係数を最適化することにより、過渡流計算分析への影響を最小化でき、また、節点流量配分により生じる簡略化誤差は、簡略化誤差の制御閾値により定量的に評価でき、簡略化過程に対する効率的な制御を実現できる。さらに、本発明に係る方法での簡略化動作は、簡略化誤差が最も小さい中間節点から順次に行われるため、従来の節点流量配分によりモデルの正確性が著しく低下する潜在的欠陥を効果的に解消でき、同じ配管直径の直列の簡略化動作の信頼性および正確性を保証できる。本発明は、管網の過渡流の危害防止と制御のために、重要な理論的根拠と技術的指針を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】同じ配管直径の直列配管システムおよび節点流量の配分を示す図である。
図2】実施例に係る給水管網トポロジ構造を示す図である。
図3】実施例における同じ配管直径の直列配管の簡略化過程および簡略化した後の管網トポロジ構造を示す図である。
図4】本発明に係る方法を使用した場合と従来方法を利用した場合とで得られる接点における過渡圧力波動の状況を対する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る技術的手段についてさらに詳細に説明する。なお、具体的な実施形態は本発明についての詳細な説明だけであり、本発明を限定するものではないことに注意されたい。
【0012】
本発明に係る給水直列配管における水力過渡のシミュレーションの精度を高める節点流量最適化配分方法は、次のステップ1~ステップ6を含む。
(ステップ1)
管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管システム(IDP)を識別して、同じ配管直径の直列配管システム集合IDP={IDP,IDP,・・・,IDP}(Nは自然数)を形成し、Nは管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管システムの個数であり、同じ配管直径の直列配管システムは本発明に係る同じ配管直径の直列配管簡略化の基本対象であり、図1(a)に示すように、複数本の連結された直列配管(P、P、PおよびP)と、複数の中間接続節点(N、NおよびN)と、両端接続節点(NおよびN)と、外部接続配管(P、P、PおよびP)と、を含む。ここで、節点N、N、N、NおよびNの節点流量は、順にq、q、q、qおよびqである。図1(a)に示される同じ配管直径の直列配管システムIDP(i=1,・・・,N)は以下の数式
【数13】
で表される。ここで、上記式(1)は、同じ配管直径の直列配管システムが3つの中間節点および両端接続節点において二本の外部接続配管を有する場合を示しており、これは、管網モデルにおいて一般的に存在する同じ配管直径の直列配管の状況である。なお、3つ以上の中間節点および両端接続節点において複数本(3本以上)の外部接続配管を有する場合は、本実施形態に基づいて拡張でき、本発明に係る方法も当然に適用できる。
【0013】
(ステップ2)
集合IDP中の同じ配管直径の直列配管システムIDPについて、配管結合簡略化とは、中間節点流量を両端節点に分配することである。たとえば、図1(b)における中間節点Nに対して、節点流量配分は、その節点流量を両端節点NおよびNに分配することにより水量の維持を保持することである。すなわち、簡略化後の節点NおよびNにおける水量はそれぞれq+rおよびq+(1-r)qであり、ここで、rは中間節点Nの水量配分係数を示す。同じ配管直径の直列配管システムは通常複数の中間節点を有するため、各中間節点の流量配分により生じる簡略化誤差Errを確定する必要があり、集合Err={Err,Err,・・・,Err}(Iは中間節点の個数)を形成する。本発明では、過渡圧力波の簡略化前後でのシステムにおける伝達過程の差異を最小化することを総合的に鑑みて、最適化目標関数を確立することによって中間節点流量配分により生じる簡略化誤差を計算する。図1(a)に示される中間節点N、NおよびNを例にすれば、確立される最適化目標関数はそれぞれ以下の数式
【数14】
で表され、ここで、下付き0およびdはそれぞれ、元のシステム、中間節点流量配分後のシステムを表し、wおよびwは重み係数であり、簡略化された二つの直列配管の相対的な重要度を示し、
【数15】
は節点Nの過渡流量影響係数であり、節点における水量の過渡流量過程に対する影響度を示し、その値は0~100%の間であり、
【数16】
は、接続配管Pの節点Nにおける伝達係数であり、以下の数式で表され、
【数17】
Aは配管の断面積、Dは配管直径、aは配管における波の速さ、Mは節点Nでの接続配管の総数、mは節点Nにおけるm番目の接続配管を表し、伝達係数
【数18】
の数値は0~2の間で、過渡圧力波が配管Pに沿って節点Nまで伝達した際の圧力変動幅の変化の程度を表し、たとえば、
【数19】
は配管Pに沿って節点Nに伝達する前の初期振幅に対する節点Nに伝達した際の過渡圧力波の倍数を表し、これは、過渡圧力波が配管Pに沿って節点Nに伝達した際、圧力波の幅が変化するためである。また、
【数20】
は配管Pに沿って節点Nに伝達する前の初期振幅に対する節点Nに伝達した際の過渡圧力波の倍数を表す。
【0014】
本発明では、節点における初期定常状態での水力状態と接続配管の属性を利用して節点Nの過渡流量影響係数である
【数21】
を確定し、すなわち、
【数22】
を確定し、ここで、SNiは節点Nにおける静的属性を表し、節点における初期定常状態での水力状態と接続配管の属性により確定され、すなわち、
【数23】
であり、ここで、q(N)およびH(N)はそれぞれ節点Nにおける初期定常状態の水量および圧力を示し、gは重力加速度である。
【0015】
本発明では、直列配管の配管長さの比例を利用して二つの直列配管の重み係数を表し、すなわち、
【数24】
であり、ここで、Lは配管長さを示す。
【0016】
最適化目標関数Min:Errにおいて、伝達係数
【数25】
および
【数26】
は、簡略化前のシステムの配管属性および初期定常状態での水力状態に関連し、既知のパラメータである。なお、
【数27】
は、簡略化後のシステム(すなわち、節点流量配分後)の節点Nにおける静的属性SNiと関連し(すなわち、式(5))、SNiは節点Nにおける節点水量に関係する(ここで指すのは、中間節点水量が分配された後、節点Nにおける節点水量)。したがって、当該最適化目標関数の最適化決定変数は中間節点の水量配分係数rであり、これを解けば簡略化誤差Errおよび対応する最適化決定変数値rが得られる。具体的には、式(2)~式(4)を解くと、それぞれ、中間節点N、NおよびNの簡略化誤差Err、ErrおよびErr、並びに対応する最適化決定変数値r、rおよびrが得られる。なお、最適化目標関数Min:Errの最適解が合理であることを確保するため、本発明では、最適化決定変数値rは0~1の値をとる。
【0017】
式(2)~(4)は、同じ配管直径の直列配管システムにおいて、異なる位置(それぞれ左境界、中央、右境界)における中間節点の簡略化誤差の求め方法を提供しているが、任意の中間節点および外部接続配管の数が異なる同じ配管直径の直列配管システムへの応用まで拡張できる。
【0018】
(ステップ3)
Errmin=min(Err)に基づいて、優先的に簡略化可能な中間節点を決定する。簡略化モデルの正確性を確保するため、本発明では、簡略化誤差の制御閾値Errtolに基づいて同じ配管直径の直列配管の結合操作(すなわち、中間節点水量配分)が適切であるか否かを判断し、
もし、Errmin≦Errtolの場合は、簡略化でき、 (12)
もし、Errmin>Errtolの場合は、簡略化に適せず、 (13)
当該閾値の設置については、Errtolが大きいほど中間節点水量配分を行う直列配管も多くなり、簡略化モデルはより多くの元のシステムの過渡特徴を失う。本発明に係る制御閾値Errtolの合理的な範囲は0.01~0.03であり、これにより異なる場面における管網水力モデルの適用を満たしている。
Errmin≦Errtolの場合は、続いて次の処理を行うが、そうでない場合は、ステップ6の処理にジャンプする。
【0019】
(ステップ4)
簡略化可能な中間節点に対して簡略化操作を行い、簡略化された両端節点の流量および同等の配管パラメータを決定する。簡略化された両端節点の流量は、Errminに対応する最適化決定変数値rに基づいて決定されてもよく、たとえば、中間節点Nについて簡略化し、簡略化された両端節点NおよびNの水量はそれぞれq+rおよびq+(1-r)qである。同等の配管パラメータは、(1)配管直径および波の速さはそれぞれ直列配管の配管直径および波の速さに等しく、二本の直列配管における波の速さは同じである。(2)配管の長さは二本の直列配管の配管長さの和に等しい。(3)配管の抵抗係数は水力等価の原則に基づいて確定し、すなわち、水流が簡略化された後、同等の配管における損失水頭は簡略化される前の直列配管における損失水頭と同じく、との方法により決定される。
【0020】
(ステップ5)
同じ配管直径の直列配管システムIDPにおける簡略化された中間節点を除去し、この際、IDPにおける中間節点の数が0である場合、現在の同じ配管直径の直列配管システムにおける直列配管が全て簡略化されたことを示し、ステップ6の処理にジャンプし、そうでない場合、ステップ2の処理にジャンプし、現在の同じ配管直径の直列配管システムの簡略化を継続する。
【0021】
(ステップ6)
現在の同じ配管直径の直列配管システムについての簡略化が完了され、次のグループの同じ配管直径の直列配管システムの簡略化を実行し始め、ステップ2の処理に戻り、このように繰り返すことによりすべての同じ配管直径の直列配管システムが簡略化されると、簡略化プロセスが終了したことを示す。
【0022】
<実施例>
図2は、本実施例に係る給水管網トポロジ構造を示す図である。該給水管網は4つの水源プール、317本の配管および268個の節点を備えている。管網モデルにおける直列配管はすべて同じ配管直径の直列配管であり、中間節点はいずれも節点流量を有する。本発明に係る方法を利用して、当該管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管を簡略化する(モデル適用要件に応じて簡略化誤差制御閾値Errtolを設定する)。
【0023】
本発明に係る給水直列配管における水力過渡のシミュレーションの精度を高める節点流量最適化配分方法は、次のステップを含む。
(ステップ1)
管網モデルにおける同じ配管直径の直列配管システム(IDP)を識別すると、本実施例では、70グループ識別され、同じ配管直径の直列配管システム集合IDP={IDP,IDP,・・・,IDP70}を形成できる。図3(a)に示すように、第一グループの同じ配管直径の直列配管システムを例にすると、以下の数式
【数28】
で表される。
【0024】
(ステップ2)
集合IDP中の同じ配管直径の直列配管システムIDPについて、式(2)~式(4)に基づいて中間節点NおよびNの節点流量配分により生じる簡略化誤差を算出する。
本実施例において、中間節点NおよびNはそれぞれ左境界および右境界の中間節点であり、式(2)および式(4)を利用することにより簡略化誤差ErrおよびErr(Err<Err)をそれぞれ算出し、これによりシステムIDPの簡略化誤差集合Err={Err,Err}を形成する。
【0025】
(ステップ3)
Errmin=min(Err)に基づいて、優先的に簡略化可能な中間節点を節点1、すなわち、Errmin=Errと決定する。式(12)および式(13)に基づいて、簡略化に適するか否かを判断し、Errmin≦Errtolの場合は、続いて次の処理を行うが、そうでない場合は、ステップ10の処理にジャンプする。
【0026】
(ステップ4)
簡略化可能な中間節点1に対して簡略化操作を行い、簡略化された後、直列配管「1」および「2」は一本の同等の配管「12」に結合され、簡略化後の両端節点3および2の節点流量および同等の配管パラメータを決定する。簡略化された両端節点の流量は、Errmin(すなわち、Err)に対応する最適化決定変数値rに基づいて決定されてもよい。すなわち、簡略化された後、両端節点3および2の水量はそれぞれq+rおよびq+(1-r)qである。同等の配管「12」のパラメータは、(1)配管直径および波の速さはそれぞれ直列配管の配管直径および波の速さに等しい。(2)配管の長さは二本の直列配管の配管長さの和に等しい。(3)配管の抵抗係数は水力等価の原則に基づいて確定し、すなわち、水流が簡略化された後、同等の配管における損失水頭は簡略化される前の直列配管における損失水頭と同じである、との方法により決定される。
【0027】
(ステップ5)
同じ配管直径の直列配管システムIDPにおける簡略化された中間節点1を除去し、IDP={([12],[3]),(2),(3,4),([4],[5],[6]),([7],[8])}を得る。この際、IDPにおける中間節点が節点2であって、中間節点の数が0より大きいため、現在の同じ配管直径の直列配管システムの簡略化を継続する。
【0028】
(ステップ6)
集合IDP中の同じ配管直径の直列配管システムIDPについて、式(2)~式(4)に基づいて中間節点2の簡略化誤差を算出し、簡略化誤差集合Err={Err}を形成する。
【0029】
(ステップ7)
Errmin=min(Err)に基づいて、優先的に簡略化可能な中間節点を節点2、すなわち、Errmin=Errと決定する。式(12)および式(13)に基づいて、簡略化に適するか否かを判断し、Errmin≦Errtolの場合は、続いて次の処理を行うが、そうでない場合は、ステップ10の処理にジャンプする。
【0030】
(ステップ8)
簡略化可能な中間節点2に対して簡略化操作を行い、簡略化された後、直列配管「12」および「3」は一本の同等の配管「123」に結合され、簡略化後の両端節点3および4の節点流量および同等の配管パラメータを決定する。
【0031】
(ステップ9)
同じ配管直径の直列配管システムIDPにおける簡略化された中間節点2を除去し、IDP={([123]),( ),(3,4),([4],[5],[6]),([7],[8])}を得る。この際、IDPにおける中間節点の数が0であるため、現在の同じ配管直径の直列配管システムにおける直列配管が全て簡略化されたことを示し、続けて、次の処理を実行する。
【0032】
(ステップ10)
現在のシステムIDPについての簡略化が完了され、次のグループの同じ配管直径の直列配管システムIDPの簡略化を実行し始め、ステップ2の処理に戻り、このように繰り返すことによりすべての同じ配管直径の直列配管システムが簡略化されると、簡略化プロセスが終了したことを示す。
【0033】
上記に示されたようなステップにより実施例に係る管網における同じ配管直径の直列配管についての簡略化を実現する。図3(b)には簡略化誤差制御閾値Errtol=0.03の場合の簡略化結果を示している。図に示されるように、簡略化誤差制御閾値を設けることにより、管網モデルにおいて、簡略化された後に過渡水力シミュレーションの誤差を明らかに増大させてしまう節点は残され、管網モデルの正確性および信頼性を確保している。
【0034】
元のモデルおよび簡略化されたモデルのそれぞれにおいて、同様の過渡流イベント(すなわち、弁を閉鎖するイベント)を発生させ、過渡流プロセスのシミュレーション計算を行う。図4には、簡略化後の管網モデルを過渡流計算分析に適用した結果が示され、図4(b)は図4(a)の破線枠内図面の部分拡大図であり、図4(d)は図4(c)の破線枠内図面の部分拡大図である。図4は、本発明に係る方法を使用して得られた簡略化モデルと、従来の簡略化方法(本実施例において、従来の簡略化方法は、中間節点流量の均等配分を用いている)を使用して得られた簡略化モデルとの過渡流計算結果および元のモデルとの比較を示す図である。
【0035】
図4に示されるように、本発明に係る簡略化方法は、過渡圧力変動のピーク値および位相の両方において、元のモデルとより良好に一致しており、従来の簡略化方法に比べて、本発明に係る方法は明らかに計算精度の優位性を有している。特に、深刻な水柱分離現象が発生した際、図4(c)、(d)に示されるように、本発明に係る簡略化方法では、依然として、過渡流計算結果と元のモデルとの基本一致性を保障できるが、従来の簡略化方法では、過渡流計算結果が水柱分離の発生時において空気室体積を形成し、水柱再結合時刻および強度の面において元のモデルとの違いが明らかである。したがって、実際の応用では、本発明に係る方法を使用して同じ配管直径の直列配管を簡略化することにより過渡流計算の正確性を確保し、さらには、管網の過渡流の危害防止と制御のために、科学的根拠を提供する必要がある。
【0036】
上記説明した実施例は本発明に係る一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明に係る実施例に基づいて、いわゆる当業者が創作的工夫を果たさない前提で得られるすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。

図1
図2
図3
図4