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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】測量システムおよびターゲット特定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230509BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/06 T
G01C15/00 103D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018124860
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003409
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-014864(JP,A)
【文献】特開2005-003445(JP,A)
【文献】特開2007-212291(JP,A)
【文献】特開2017-058556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量機と、前記測量機により視準されるターゲットとを備える測量システムであって、
前記測量機は、
鉛直軸を中心に回転可能な本体と、
前記本体に支持されるとともに水平軸を中心に回転可能な望遠鏡と、
前記望遠鏡が有する第1画角よりも広い第2画角を有する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像に基づいて該画像中のターゲット像を特定するターゲット特定部と、を有し、
前記ターゲットは、レーザ光を射出する射出部を有し、
前記ターゲット特定部は、前記射出部から前記レーザ光が射出されるオン期間に前記撮像部が撮像した第1画像と前記射出部から前記レーザ光が射出されないオフ期間に前記撮像部が撮像した第2画像との第1差分画像に基づいて前記ターゲット像を特定し、
前記射出部は、鉛直方向の幅よりも水平方向の幅が広いファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、
前記ターゲットは、前記射出部が射出する前記レーザ光のオン・オフを制御する射出制御部を有し、
前記射出制御部は、前記レーザ光のオン・オフを第1周期で繰り返す第1制御モードと、前記レーザ光のオン状態を維持する第2制御モードとを実行可能であり、
前記射出部は、前記第1周期よりも短い第2周期で前記ファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、
前記ターゲット特定部は、前記射出制御部が前記第1制御モードを実行する際に、前記第1差分画像に基づいて前記ターゲット像を特定し、
前記測量機は、前記射出制御部が前記第2制御モードを実行する際に、前記ファンビームが前記撮像部に入射する入射期間に前記撮像部が撮像した第3画像と前記ファンビームが前記撮像部に入射しない非入射期間に前記撮像部が撮像した第4画像との第2差分画像に基づいて前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲット像が適切であるかどうかを判断するターゲット判断部を有することを特徴とする測量システム。
【請求項2】
前記第3画像および前記第4画像は、前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲット像に対応する部分画像であることを特徴とする請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記測量機は、
前記鉛直軸を中心に前記本体を回転させる第1駆動部と、
前記水平軸を中心に前記望遠鏡を回転させる第2駆動部と、
前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御する駆動制御部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記望遠鏡が前記ターゲットを視準するように、前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲット像に応じて前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測量システム。
【請求項4】
前記射出部は、
周面に沿って複数の反射面が等間隔に形成されるとともに水平軸を中心に回転可能なポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーを回転させる回転駆動部と、
前記ポリゴンミラーの周面に向けて前記レーザ光を照射するレーザ光源と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の測量システム。
【請求項5】
前記測量機は、
前記ターゲットに向けて追尾光を照射する追尾光送光部と、
前記ターゲットで反射される前記追尾光を受光する追尾光受光部と、を有し、
前記ターゲットは、
前記追尾光送光部から照射された前記追尾光を該追尾光の入射方向に向けて反射させるプリズムを有し、
前記駆動制御部は、前記望遠鏡の視準軸上に前記プリズムが配置されるように、前記追尾光受光部の受光像に基づいて前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御することを特徴とする請求項3に記載の測量システム。
【請求項6】
測量機と、前記測量機により視準されるターゲットとを備える測量システムにおけるターゲット特定方法であって、
前記測量機は、
鉛直軸を中心に回転可能な本体と、
前記本体に支持されるとともに水平軸を中心に回転可能な望遠鏡と、
前記望遠鏡が有する第1画角よりも広い第2画角を有する撮像部と、を有し、
前記ターゲットは、レーザ光を射出する射出部を有し、
前記射出部から前記レーザ光が射出されるオン期間に第1画像を前記撮像部により撮像する第1撮像工程と、
前記射出部から前記レーザ光が射出されないオフ期間に第2画像を前記撮像部により撮像する第2撮像工程と、
前記第1画像と前記第2画像との第1差分画像に基づいて前記撮像部が撮像する画像中のターゲット像を特定するターゲット特定工程と、を備え、
前記射出部は、鉛直方向の幅よりも水平方向の幅が広いファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、
前記ターゲットの射出制御部は、前記射出部が射出する前記レーザ光のオン・オフを制御し、
前記射出制御部は、前記レーザ光のオン・オフを第1周期で繰り返す第1制御モードと、前記レーザ光のオン状態を維持する第2制御モードとを実行可能であり、
前記射出部は、前記第1周期よりも短い第2周期で前記ファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、
ーゲット特定部のターゲット判断部は、前記射出制御部が前記第1制御モードを実行する際に、前記第1差分画像に基づいて前記ターゲット像を特定し、
前記測量機は、前記射出制御部が前記第2制御モードを実行する際に、前記ファンビームが前記撮像部に入射する入射期間に前記撮像部が撮像した第3画像と前記ファンビームが前記撮像部に入射しない非入射期間に前記撮像部が撮像した第4画像との第2差分画像に基づいて前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲット像が適切であるかどうかを判断することを特徴とするターゲット特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量システムおよびターゲット特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測量機と、測量機により視準されるターゲットとを備える測量システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示される測量システムは、測量機にターゲットから出射されるガイド光の方向を検出する方向検出器を設け、ターゲットにガイド光を送光するガイド光送光器を設けたものである。特許文献1に開示される測量システムは、測量機本体を水平回転させて方向検出器でターゲットからガイド光を受光することにより水平方向を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4177765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された測量システムは、水平方向幅が約±5°のガイド光を方向検出器が受光するまで測量機本体を水平回転させる必要がある。そのため、ターゲットが測量機の正対位置から水平方向に大きく離れている場合、測定機本体を水平回転させて水平方向を検出するまでに多大な時間を要してしまう。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ターゲットが測量機の正対位置から水平方向に大きく離れている場合であってもターゲットを迅速に特定することができる測量システムおよびそれを用いたターゲット特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明によれば、測量機と、前記測量機により視準されるターゲットとを備える測量システムであって、前記測量機は、鉛直軸を中心に回転可能な本体と、前記本体に支持されるとともに水平軸を中心に回転可能な望遠鏡と、前記望遠鏡が有する第1画角よりも広い第2画角を有する撮像部と、前記撮像部が撮像した画像に基づいて該画像中のターゲット像を特定するターゲット特定部と、を有し、前記ターゲットは、レーザ光を射出する射出部を有し、前記ターゲット特定部は、前記射出部から前記レーザ光が射出されるオン期間に前記撮像部が撮像した第1画像と前記射出部から前記レーザ光が射出されないオフ期間に前記撮像部が撮像した第2画像との第1差分画像に基づいて前記ターゲット像を特定し、前記射出部は、鉛直方向の幅よりも水平方向の幅が広いファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、前記ターゲットは、前記射出部が射出する前記レーザ光のオン・オフを制御する射出制御部を有し、前記射出制御部は、前記レーザ光のオン・オフを第1周期で繰り返す第1制御モードと、前記レーザ光のオン状態を維持する第2制御モードとを実行可能であり、前記射出部は、前記第1周期よりも短い第2周期で前記ファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、前記ターゲット特定部は、前記射出制御部が前記第1制御モードを実行する際に、前記第1差分画像に基づいて前記ターゲット像を特定し、前記測量機は、前記射出制御部が前記第2制御モードを実行する際に、前記ファンビームが前記撮像部に入射する入射期間に前記撮像部が撮像した第3画像と前記ファンビームが前記撮像部に入射しない非入射期間に前記撮像部が撮像した第4画像との第2差分画像に基づいて前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲット像が適切であるかどうかを判断するターゲット判断部を有することを特徴とする測量システムにより解決される。
【0007】
本構成の測量システムによれば、望遠鏡が有する第1画角よりも撮像部が有する第2画角が広いため、第1画角にターゲットが存在しない場合であっても第2画角にターゲットが存在する場合には、撮像部にターゲットからのレーザ光が入射する。この場合、射出部からレーザ光が射出されるオン期間に撮像部が撮像した第1画像は、ターゲットから入射するレーザ光を含む画像となる。一方、射出部からレーザ光が射出されないオフ期間に撮像部が撮像した第2画像は、ターゲットから入射するレーザ光を含まない画像となる。第1画像と第2画像との第1差分画像は、ターゲットから入射するレーザ光を除く他の入射光の影響を除去したものとなる。そのため、第1差分画像に基づいて撮像部が撮像した画像中のターゲット像が特定される。
【0008】
このように、本構成の測量システムによれば、第1画角にターゲットが存在しない場合であっても第2画角にターゲットが存在する場合には、測量機を水平回転させることなくターゲットから入射するレーザ光を撮像部で撮像してターゲット像を特定することができる。そのため、ターゲットが測量機の正対位置から水平方向もしくは鉛直方向に大きく離れている場合であってもターゲット像を迅速に特定することができる。
また、本構成の測量システムによれば、射出部から射出されるレーザ光が鉛直方向の幅よりも水平方向の幅が広いファンビームであるため、小電力であっても遠方まで十分な光量を送ることができる。また、ファンビームを鉛直方向に連続的に走査するため、鉛直方向の幅の狭いファンビームを走査幅まで拡張して送ることができる。
また、本構成の測量システムによれば、ターゲット特定部がターゲットを特定する際に、第1画像と第2画像との撮像間隔と同等の間隔で発光するターゲット以外のものが存在した場合、ターゲット特定部がターゲット以外のものをターゲットとして誤って特定してしまう可能性がある。そこで、本構成の測量システムでは、射出部がファンビームを鉛直方向に連続的に走査する第2周期を、第1制御モードでレーザ光のオン・オフを繰り返す第1周期よりも短くし、第3画像と第4画像との第2差分画像に基づいてターゲット特定部が特定したターゲットが適切であるかどうかを判断している。第1画像と第2画像との撮像間隔よりも第3画像と第4画像との撮像間隔が短くなるため、ターゲット特定部が誤ってターゲットとして特定したものを排除し、特定されたターゲットが適切であるかどうかを判断することができる。
【0011】
ターゲット特定部がターゲットを特定する際に、第1画像と第2画像との撮像間隔と同等の間隔で発光するターゲット以外のものが存在した場合、ターゲット特定部がターゲット以外のものをターゲットとして誤って特定してしまう可能性がある。そこで、本構成の測量システムでは、射出部がファンビームを鉛直方向に連続的に走査する第2周期を、第1制御モードでレーザ光のオン・オフを繰り返す第1周期よりも短くし、第3画像と第4画像との第2差分画像に基づいてターゲット特定部が特定したターゲットが適切であるかどうかを判断している。第1画像と第2画像との撮像間隔よりも第3画像と第4画像との撮像間隔が短くなるため、ターゲット特定部が誤ってターゲットとして特定したものを排除し、特定されたターゲットが適切であるかどうかを判断することができる。
【0012】
本発明の測量システムにおいて、好ましくは、前記第3画像および前記第4画像は、前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲット像に対応する部分画像であることを特徴とする。
本構成の測量システムによれば、第3画像および第4画像が部分画像であるため、撮像部が撮像可能な全体画像を扱う場合に比べ、撮像部から第3画像および第4画像を取得する時間が大幅に削減される。そのため、撮像部が全体画像を取得する時間が第2周期よりも長くなる場合であっても、撮像部が第3画像および第4画像を取得する時間を第2周期よりも短くすることができる。
【0013】
本発明の測量システムにおいて、好ましくは、前記測量機は、前記鉛直軸を中心に前記本体を回転させる第1駆動部と、前記水平軸を中心に前記望遠鏡を回転させる第2駆動部と、前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御する駆動制御部と、を有し、前記駆動制御部は、前記望遠鏡が前記ターゲットを視準するように、前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲットに応じて前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御することを特徴とする。
【0014】
本構成の測量システムによれば、ターゲット特定部が特定したターゲットに基づいて第1駆動部および第2駆動部が制御されるため、望遠鏡が有する第1画角内にターゲットを配置して望遠鏡がターゲットを視準した状態とすることができる。
【0015】
本発明の測量システムにおいて、好ましくは、前記射出部は、周面に沿って複数の反射面が等間隔に形成されるとともに水平軸を中心に回転可能なポリゴンミラーと、前記ポリゴンミラーを回転させる回転駆動部と、前記ポリゴンミラーの周面に向けて前記レーザ光を照射するレーザ光源と、を有することを特徴とする。
本構成の測量システムによれば、ポリゴンミラーを回転駆動部により回転させ、ポリゴンミラーの周面にレーザ光を照射することにより、ファンビームを鉛直方向に連続的に走査することができる。
【0016】
本発明の測量システムにおいて、好ましくは、前記測量機は、前記ターゲットに向けて追尾光を照射する追尾光送光部と、前記ターゲットで反射される前記追尾光を受光する追尾光受光部と、を有し、前記ターゲットは、前記追尾光送光部から照射された前記追尾光を該追尾光の入射方向に向けて反射させるプリズムを有し、前記駆動制御部は、前記望遠鏡の視準軸上に前記プリズムが配置されるように、前記追尾光受光部の受光像に基づいて前記第1駆動部および前記第2駆動部を制御することを特徴とする。
本構成の測量システムによれば、追尾光受光部の受光像に基づいて第1駆動部および第2駆動部を制御し、望遠鏡の視準軸上にプリズムが配置される状態を維持することができる。
【0017】
前記課題は、本発明によれば、測量機と、前記測量機により視準されるターゲットとを備える測量システムにおけるターゲット特定方法であって、前記測量機は、鉛直軸を中心に回転可能な本体と、前記本体に支持されるとともに水平軸を中心に回転可能な望遠鏡と、前記望遠鏡が有する第1画角よりも広い第2画角を有する撮像部と、を有し、前記ターゲットは、レーザ光を射出する射出部を有し、前記射出部から前記レーザ光が射出されるオン期間に第1画像を前記撮像部により撮像する第1撮像工程と、前記射出部から前記レーザ光が射出されないオフ期間に第2画像を前記撮像部により撮像する第2撮像工程と、前記第1画像と前記第2画像との第1差分画像に基づいて前記撮像部が撮像する画像中のターゲット像を特定するターゲット特定工程と、を備え、前記射出部は、鉛直方向の幅よりも水平方向の幅が広いファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、前記ターゲットの射出制御部は、前記射出部が射出する前記レーザ光のオン・オフを制御し、前記射出制御部は、前記レーザ光のオン・オフを第1周期で繰り返す第1制御モードと、前記レーザ光のオン状態を維持する第2制御モードとを実行可能であり、前記射出部は、前記第1周期よりも短い第2周期で前記ファンビームを鉛直方向に連続的に走査し、ターゲット特定部のターゲット判断部は、前記射出制御部が前記第1制御モードを実行する際に、前記第1差分画像に基づいて前記ターゲット像を特定し、前記測量機は、前記射出制御部が前記第2制御モードを実行する際に、前記ファンビームが前記撮像部に入射する入射期間に前記撮像部が撮像した第3画像と前記ファンビームが前記撮像部に入射しない非入射期間に前記撮像部が撮像した第4画像との第2差分画像に基づいて前記ターゲット特定部が特定した前記ターゲット像が適切であるかどうかを判断することを特徴とするターゲット特定方法により解決される。
【0018】
本構成のターゲット特定方法によれば、望遠鏡の第1画角にターゲットが存在しない場合であっても撮像部の第2画角にターゲットが存在する場合には、測量機を水平回転させることなくターゲットから入射するレーザ光を撮像部で撮像してターゲット像を特定することができる。そのため、ターゲットが測量機の正対位置から水平方向もしくは鉛直方向に大きく離れている場合であってもターゲット像を迅速に特定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ターゲットが測量機の正対位置から水平方向に大きく離れている場合であってもターゲット像を迅速に特定することができる測量システムおよびそれを用いたターゲット特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る測量システムを示す平面図である。
図2図1に示す測量機の斜視図である。
図3図1に示すターゲットの斜視図である。
図4図1に示す測量システムの構成図である。
図5図4に示す射出部の構成図である。
図6図1に示す測量システムの射出部での発光,広角撮像部への入射,第1画像の撮像,第2画像の撮像を示すタイミングチャートである。
図7図1に示す測量システムの射出部での発光,広角撮像部への入射,第3画像の撮像,第4画像の撮像を示すタイミングチャートである。
図8】測量機が実行する処理を示すフローチャートである。
図9】測量機が実行する処理を示すフローチャートである。
図10】ターゲットが実行する処理を示すフローチャートである。
図11】第1画像と第2画像との第1差分画像の一例を示す図である。
図12】第3画像と第4画像との第2差分画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る測量システム300について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る測量システム300を示す平面図である。図2は、図1に示す測量機100の斜視図である。図3は、図1に示すターゲット200の斜視図である。図4は、図1に示す測量システム300の構成図である。図5は、図4に示す射出部210の構成図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の測量システム300は、測量機100と測量機100により視準されるターゲット200とを備える。本実施形態の測量システム300は、測量機100でターゲット200を視準し、測量機100の視準軸Y1に対するターゲット200の水平方向及び鉛直方向の角度と、測量機100からターゲット200までの距離を測定するシステムである。
【0023】
ここで、測量システム300が備える測量機100について説明する。
図2および図4に示すように、測量機100は、本体110と、望遠鏡120と、広角撮像部130と、制御部140と、駆動部150と、追尾部160と、通信部170と、記憶部180と、距離計190と、表示部193と、操作部195と、三脚197と、を備える。
【0024】
本体110は、地表に設置された三脚197に取り付けられる整準台111と、整準台111に設置される筐体112と、を備える。整準台111は、三脚197に設置される筐体112の取付面が水平となるように調整する機構を備える。筐体112は、整準台111に取り付けられた状態で、鉛直軸Z1を中心に水平方向に回転可能となっている。
【0025】
望遠鏡120は、ターゲット200を視準する光学系を備える装置である。望遠鏡120は、本体110に支持されるとともに水平軸X1を中心に鉛直方向に回転可能となっている。図1に示すように、望遠鏡120の第1画角は、水平軸X1に直交する視準軸Y1を中心としたθ1となっている。θ1は、例えば、1°~2°である。
【0026】
広角撮像部130は、被写体である周囲環境を画像として撮像する装置である。広角撮像部130の第2画角は、視準軸Y1を中心としたθ2となっている。第2画角θ2は、第1画角θ1よりも広く、例えば、30°~90°である。
【0027】
広角撮像部130として、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Secmiconductor)エリアイメージセンサを採用することができる。CMOSエリアイメージセンサは、撮像可能な全画素領域の一部である部分画素領域のみを部分画像として読み出すことができる。部分画像を読み出すことにより、全画素領域の画像を読み出す場合に比べ、一画像当たりの読み出し時間を短縮してフレームレートを上げることができる。
【0028】
制御部140は、測量機100の各部を制御する装置であり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。
制御部140は、ターゲット特定部141と、ターゲット判断部142と、駆動制御部143と、を備える。制御部140が備える各部は、例えば、CPUがROMや記憶媒体等から読み取ったプログラムを実行することにより機能する。
【0029】
ターゲット特定部141は、広角撮像部130が撮像した画像に基づいて画像中のターゲット200を示すターゲット像TGを特定するものである。
ターゲット判断部142は、ターゲット特定部141が特定したターゲット像TGが適切であるかどうかを判断するものである。
ターゲット特定部141およびターゲット判断部142が実行する具体的処理については後述する。
【0030】
駆動制御部143は、制御指令を送信することにより、水平駆動部151および鉛直駆動部152を制御するものである。駆動制御部143は、水平駆動部151を制御することにより、鉛直軸Z1を中心に本体110を水平方向の任意の位置に向けて回転させることができる。また、駆動制御部143は、鉛直駆動部152を制御することにより、水平軸X1を中心に望遠鏡120を鉛直方向の任意の位置に向けて回転させることができる。
【0031】
駆動部150は、水平駆動部151と、鉛直駆動部152と、水平角検出器153と、鉛直角検出器154と、を備える。水平駆動部151は、モータ(図示略)が発生する駆動力により、鉛直軸Z1を中心に本体110を水平方向に回転させる。鉛直駆動部152は、モータ(図示略)が発生する駆動力により、水平軸X1を中心に望遠鏡120を鉛直方向に回転させる。
【0032】
水平角検出器153は、水平方向の基準位置に対する本体110の水平方向の回転角を検出するセンサである。水平角検出器153は、本体110の水平方向の回転角を検出し、駆動制御部143へ伝達する。駆動制御部143は、水平角検出器153から伝達される水平方向の回転角が所望の目標値となるように、本体110を水平方向の位置を制御する。
【0033】
鉛直角検出器154は、鉛直方向の基準位置に対する望遠鏡120の鉛直方向の回転角を検出するセンサである。鉛直角検出器154は、望遠鏡120の鉛直方向の回転角を検出し、駆動制御部143へ伝達する。駆動制御部143は、鉛直角検出器154から伝達される鉛直方向の回転角が所望の目標値となるように、本体110を水平方向の位置を制御する。
【0034】
追尾部160は、追尾光送光部161と追尾光受光部162とを備える。追尾部160は、ターゲット200のプリズム230に向けて追尾光送光部161から追尾光を照射し、プリズム230で反射される追尾光を追尾光受光部162で受光する。追尾光受光部162が受光する追尾光の受光像は、望遠鏡120の視準軸Y1とプリズム230の中心の水平方向および鉛直方向のずれを示す像である。駆動制御部143は、追尾光受光部162が受光する追尾光の受光像に基づいて、望遠鏡120の視準軸Y1上にプリズム230の中心が配置されるように、水平駆動部151および鉛直駆動部152を制御する。
【0035】
通信部170は、ターゲット200との通信を行うものである。通信部170は、例えば、ターゲット200からターゲット200の時刻情報を受信し、ターゲット200へ測量機100の時刻情報を送信する。
【0036】
記憶部180は、広角撮像部130が撮像した画像や、通信部170が受信した情報や、制御部140が処理する各種の情報等を記憶する装置である。
距離計190は、ターゲット200に向けて測距光を照射するとともにターゲット200で反射した測距光を受光してターゲット200までの距離を計測する装置である。
【0037】
表示部193は、測量機100の制御部140が処理する各種の情報を表示して測量機100の操作者に通知する装置である。
操作部195は、測量機100の操作者による操作を受け付けて測量機100の各種の設定や制御部140に対する指示を入力する装置である。
【0038】
次に、測量システム300が備えるターゲット200について説明する。
ターゲット200は、レーザ光を射出する射出部210と、制御部220と、プリズム230と、通信部240と、記憶部250と、を備える。
【0039】
射出部210は、図3に示すように、鉛直方向の幅W1よりも水平方向の幅W2が広いファンビームBを射出し、鉛直方向に連続的に走査する装置である。図5に示すように、射出部210は、ポリゴンミラー211と、回転駆動部212と、レーザ光源213と、レンズユニット214と、を備える。
ポリゴンミラー211は、周面に沿って6つの反射面が等間隔に形成されるとともに水平軸X2を中心に回転可能な回転体である。
【0040】
回転駆動部212は、駆動力を発生するとともに駆動力をポリゴンミラー211に伝達して水平軸X2を中心にポリゴンミラー211を回転させる。レーザ光源213は、ポリゴンミラー211の周面に向けてレーザ光を照射する装置である。レンズユニット214に含まれるシリンドリカルレンズは、レーザ光源23から入射したレーザ光を直線状に集光させる部材である。
【0041】
レーザ光源23から照射されたレーザ光は、レンズユニット214に含まれるコリメートレンズで平行光束となり、ポリゴンミラー211の反射面へ入射する。ポリゴンミラー211の反射面で反射したレーザ光は、鉛直方向の幅W1よりも水平方向の幅W2が広いファンビームBとして射出される。図1に示すファンビームBの水平方向のビーム角θ3は、例えば、10°~30°とするのが望ましい。また、図3に示す鉛直方向の走査幅θ4は、例えば、90°~150°とするのが望ましい。
【0042】
制御部(射出制御部)220は、ターゲット200の各部を制御する装置であり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。制御部220は、射出部210が射出するレーザ光のオン・オフを制御する。
【0043】
プリズム230は、測量機100の追尾光送光部161から照射された追尾光の入射方向に向けて反射させる装置である。通信部240は、測量機100との通信を行うものである。通信部240は、例えば、測量機100から測量機100の時刻情報を受信し、測量機100へターゲット200の時刻情報を送信する。記憶部250は、通信部240が受信した情報や、制御部220が処理する各種の情報等を記憶する装置である。
【0044】
次に、図6および図7を参照して、ターゲット200の制御部220が実行する第1制御モードおよび第2制御モードについて説明する。図6は制御部220が第1制御モードを実行する際のタイミングチャートを示し、図7は制御部220が第2制御モードを実行する際のタイミングチャートを示す。
【0045】
図6は、図1に示す測量システム300の射出部210での発光,広角撮像部130への入射,第1画像の撮像,第2画像の撮像を示すタイミングチャートである。図7は、図1に示す測量システム300の射出部210での発光,広角撮像部130への入射,第3画像の撮像,第4画像の撮像を示すタイミングチャートである。図6におけるT1~T7の各時刻は、一定の時間間隔t1を空けた時刻である。図7におけるT1~T19の各時刻は、時間間隔t1よりも短い一定の時間間隔t2を空けた時刻である。
【0046】
ここで、ターゲット200の制御部220が実行する第1制御モードについて図6を参照して説明する。第1制御モードは、レーザ光源213によるレーザ光の照射のオン・オフを第1周期C1で繰り返すモードである。図6に示すように、射出部210は、時刻T1~T2,時刻T3~T4,時刻T5~T6の期間(オン期間)では、レーザ光源213によるレーザ光の照射をオン状態とする。一方、射出部210は、時刻T2~T3,時刻T4~T5,時刻T6~T7の期間(オフ期間)では、レーザ光源213によるレーザ光の照射をオフ状態とする。
【0047】
図6に示すように、ターゲット200の制御部220が第1制御モードを実行する際に、広角撮像部130には、第1周期C1よりも短い第2周期C2でオン・オフを繰り返すレーザ光が入射する。広角撮像部130に入射するレーザ光がオン・オフを第2周期C2で繰り返しているのは、図3に示す鉛直方向の走査幅θ4のうちの一部の領域を通過するときだけ広角撮像部130にレーザ光が入射するからである。第2周期C2は、ポリゴンミラー211の回転の周期を反射面の面数で除した時間と一致する。
【0048】
図6において、「第1画像の撮像」に対応するタイミングチャートは、射出部210からレーザ光が射出されるオン期間に広角撮像部130が画像(第1画像IM1)を撮像するタイミングを示している。タイミングチャートでハイレベルとなっている期間が第1画像IM1を撮像する期間である。第1画像IM1を撮像する期間が第2周期C2よりも十分に長いのは、間欠的に広角撮像部130に入射するレーザ光の光量を十分に得るためである。
【0049】
図6において、「第2画像の撮像」に対応するタイミングチャートは、射出部210からレーザ光が射出されないオフ期間に広角撮像部130が画像(第2画像IM2)を撮像するタイミングを示している。タイミングチャートでハイレベルとなっている期間が第2画像IM2を撮像する期間である。第2画像IM2を撮像する期間は、第1画像IM1を撮像する期間と等しい。これは、第1画像IM1と第2画像IM2の撮像条件を等しくし、第1画像IM1と第2画像IM2とでレーザ光が入射する位置を除く他の位置の画素値を同等にするためである。
【0050】
次に、ターゲット200の制御部220が実行する第2制御モードについて図7を参照して説明する。第2制御モードは、レーザ光源213によるレーザ光の照射のオン状態を維持するモードである。図7に示すように、射出部210は、時刻T1~T2に至るいずれの時刻においても、レーザ光源213によるレーザ光の照射をオン状態とする。
【0051】
図7において、「第3画像の撮像」に対応するタイミングチャートは、射出部210から射出されるレーザ光(ファンビーム)が広角撮像部130に入射する入射期間(時刻T11の前後,時刻T13の前後,時刻T15の前後,時刻T17の前後,時刻T19の前後)に、広角撮像部130が画像(第3画像IM3)を撮像するタイミングを示している。第3画像IM3を撮像する期間が、レーザ光が広角撮像部130に入射する期間よりも十分に長いのは、多少のタイミングのずれがあったとしても確実に広角撮像部130に入射するレーザ光の光量を得るためである。
【0052】
図7において、「第4画像の撮像」に対応するタイミングチャートは、射出部210から射出されるレーザ光が広角撮像部130に入射しない非入射期間(時刻T12の前後,時刻T14の前後,時刻T16の前後,時刻T18の前後,時刻T2の前後)に、広角撮像部130が画像(第4画像IM4)を撮像するタイミングを示している。第4画像IM4を撮像する期間は、第3画像IM3を撮像する期間と等しい。これは、第3画像IM3と第4画像IM4の撮像条件を等しくし、第3画像IM3と第4画像IM4とでレーザ光が入射する位置を除く他の位置の画素値を同等にするためである。
【0053】
次に、測量機100が実行する動作について、図8および図9を参照して説明する。
図8および図9は、測量機100が実行する処理を示すフローチャートである。図8および図9に示す各処理は、測量機100の制御部140がプログラムを実行することにより行われる処理である。
【0054】
ステップS101で、制御部140は、測量機100の通信部170がターゲット200の通信部240と通信可能であるか否かを判断し、YESであればステップS102へ処理を進める。
【0055】
ステップS102で、制御部140は、測量機100の通信部170でターゲット200の時刻情報を受信し、測量機100の時刻とターゲット200の時刻とを同期させる。ここで、同期とは、例えば、ターゲット200の時刻と測量機100の時刻との差分時間を算出し、差分時間を考慮してターゲット200と測量機100との動作のタイミングを合わせることをいう。
【0056】
ステップS103で、制御部140は、ターゲット200が第1制御モードを実行しているかどうかを判断し、YESであればステップS104へ処理を進める。例えば、制御部140は、通信部170を介してターゲット200に実行中の制御モードを問い合わせる。制御部140は、ターゲット200から受信した制御モードが第1制御モードを示す場合に、ステップS104でYESと判断する。
【0057】
ステップS104で、制御部140は、第1画像IM1を撮像するよう広角撮像部130を制御する。図6に示すように、制御部140は、射出部210からレーザ光が射出されるオン期間に広角撮像部130による第1画像IM1の撮像を行う。
【0058】
ステップS105で、制御部140は、第2画像IM2を撮像するよう広角撮像部130を制御する。図6に示すように、制御部140は、射出部210からレーザ光が射出されないオフ期間に広角撮像部130による第2画像IM2の撮像を行う。
【0059】
ステップS106で、制御部140は、所定組数(例えば、3組)の第1画像IM1および第2画像IM2のセットを撮像したかどうかを判断し、YESであればステップS107へ処理を進める。制御部140は、所定組数の画像を撮像するまでステップS104およびステップ105を繰り返し実行する。
【0060】
ステップS107で、制御部140は、所定組数の第1画像IM1と第2画像IM2との第1差分画像DI1をそれぞれ算出し、所定数の第1差分画像DI1の各画素の画素値を平均化する。平均化処理をすることで、外乱光の影響を低減することができる。なお、ステップS107において、第1差分画像DI1における画素値が所定値以下の画素については、画素値をゼロとする処理を行ってもよい。
【0061】
ステップS108で、制御部140のターゲット特定部141は、ステップS107で平均化した第1差分画像DI1に基づいてターゲット像TGを特定するターゲット特定処理を実行する。
【0062】
ここで、ターゲット特定部141が実行するターゲット特定処理について図11を参照して説明する。図11は、第1画像IM1と第2画像IM2との第1差分画像DI1の一例を示す図である。図11に示す第1差分画像DI1では、画素値が所定値よりも大きい部分を、ハッチングを付して示している。制御部140は、第1差分画像DI1において画素値が所定値よりも大きい領域を画像中のターゲット像TGとして特定する。図11は、1つのターゲット像TGを特定した例である。制御部140は、画素値が所定値よりも大きい部分が複数個所存在する場合には、複数の領域をターゲット像TGとして特定する。
【0063】
図11に示すように、ターゲット特定部141は、ターゲット特定処理において、例えば、ターゲット像TGとして特定した領域の重心位置を、ターゲット像TGの座標(Ht,Vt)として定めている。図11に示す第1差分画像DI1は、水平方向の画素の座標Hと垂直方向の画素の座標Vとを示す座標を、(H,V)で示している。第1差分画像DI1は、(0,0)から(Hmax,Vmax)までを全領域とする画像である。Y1(H0,V0)は、望遠鏡120の視準軸Y1と一致する第1差分画像DI1における座標を示す。
【0064】
ステップS109で、制御部140は、ステップS108のターゲット特定処理でターゲット像TGが特定されたかどうかを判断し、少なくとも1つの画像中のターゲット像TGが特定された場合はステップS110に処理を進める。
ステップS110で、制御部140は、第1制御モードから第2制御モードへの切り替えを指示する制御モード切替指示をターゲット200に送信するよう通信部170を制御する。
【0065】
ステップS110で、制御部140は、ターゲット200が第2制御モードを実行しているかどうかを判断し、YESであればステップS112へ処理を進める。例えば、制御部140は、通信部170を介してターゲット200に実行中の制御モードを問い合わせる。制御部140は、ターゲット200から受信した制御モードが第2制御モードを示す場合に、ステップS111でYESと判断する。
【0066】
ステップS112で、制御部140は、第3画像IM3を撮像するよう広角撮像部130を制御する。図7に示すように、制御部140は、射出部210からのレーザ光(ファンビーム)が広角撮像部130に入射する入射期間に第3画像IM3の撮像を行う。
【0067】
ステップS113で、制御部140は、第4画像IM4を撮像するよう広角撮像部130を制御する。図7に示すように、制御部140は、射出部210からのレーザ光(ファンビーム)が広角撮像部130に入射しない非入射期間に第4画像IM4の撮像を行う。
【0068】
ステップS114で、制御部140のターゲット判断部142は、ステップS112で撮像した第3画像IM3とステップS113で撮像した第4画像IM4との第2差分画像DI2に基づいて、ターゲット特定部141が特定した画像中のターゲット像TGがターゲット200として適切であるかどうかを判断するターゲット判断処理を実行する。
【0069】
ここで、ターゲット判断部142が実行するターゲット判断処理について図12を参照して説明する。図12は、第3画像IM3と第4画像IM4との第2差分画像DI2の一例を示す図である。
【0070】
図11に示す第1差分画像DI1は、(0,0)から(Hmax,Vmax)までを全領域とする画像であった。それに対して、図12に示す第2差分画像DI2は、(H1,V1)から(H2,V2)までを領域とする部分画像である。ここで、(H1,V1)から(H2,V2)までの領域は、ターゲット特定部141が特定した画像中のターゲット像TGを含む領域である。
【0071】
前述したステップS112において、広角撮像部130が撮像する第3画像IM3は、(0,0)から(Hmax,Vmax)までを全領域とする画像のうち(H1,V1)から(H2,V2)までを領域とする部分画像である。同様に、前述したステップS113において、広角撮像部130が撮像する第4画像IM4は、(0,0)から(Hmax,Vmax)までを全領域とする画像のうち(H1,V1)から(H2,V2)までを領域とする部分画像である。
【0072】
ターゲット判断部142は、第2差分画像DI2において画素値が所定値よりも大きい領域が存在する場合に、ターゲット特定部141が特定した画像中のターゲット像TGがターゲット200として適切であると判断する。
【0073】
ステップS115で、制御部140は、ステップS114のターゲット判断処理でターゲット像TGがターゲット200として適切であると判断された場合はステップS116に処理を進める。一方、制御部140は、ステップS114のターゲット判断処理でターゲット像TGがターゲット200として適切でないと判断された場合はステップS117に処理を進める。
【0074】
ステップS116で、制御部140は、ステップS115で適切であると判断されたターゲット像TGの位置に基づいて振り向き動作を実行する。振り向き動作は、望遠鏡120の視準軸Y1と一致するY1(H0,V0)の位置にプリズム230の中心が配置されるように、水平駆動部151および鉛直駆動部152を制御する動作である。
【0075】
制御部140は、広角撮像部130が撮像する(0,0)から(Hmax,Vmax)までの画像領域において、Y1(H0,V0)に対する画像中のターゲット像TGの座標(Ht,Vt)の相対座標(Ht-H0,Vt-V0)から、鉛直軸Z1を中心とした水平方向の目標回転角および水平軸X1を中心とした鉛直方向の目標回転角を算出する。駆動制御部143は、算出した水平方向の目標回転角と一致するように水平駆動部151を制御し、算出した鉛直方向の目標回転角と一致するように鉛直駆動部152を制御する。
【0076】
制御部140は、振り向き動作が終了した場合に本フローの処理を終了させる。なお、制御部140は、振り向き動作が終了した後に、追尾部160を用い、望遠鏡120の視準軸Y1上にプリズム230の中心が配置されるように水平駆動部151および鉛直駆動部152を制御する動作(自動追尾動作)を実行してもよい。
【0077】
ステップS117で、制御部140は、ステップS109で特定されたターゲット像TGのうち、ステップS114でターゲット200として適切であるかどうか判断されていない他のターゲット像TGがあるかどうかを判断する。制御部140は、YESであればステップS112へ処理を進め、NOであればステップS118へ処理を進める。ステップS112へ処理を進める場合、他のターゲット像TGを含む領域に読み出し位置を変えて、第3画像IM3および第4画像IM4を撮像する。このようにして、ステップS109で特定されたターゲット像TGのいずれかがステップS115でターゲット200として適切であると判断されるまで、ステップS112からステップS115までの処理を繰り返す。
【0078】
ステップS118で、制御部140は、ステップS114のターゲット判断処理で適切であると判断されたターゲット像TGの位置が存在しないため、水平回転動作を実行する。水平回転動作は、鉛直軸Z1を中心に本体110を回転させる動作である。駆動制御部143は、第2画角θ2と同じかそれよりも小さい回転角で本体110を回転させるように水平駆動部151を制御する。第2画角θ2と同じかそれよりも小さい回転角で回転させることにより、広角撮像部130が撮像していない範囲に広角撮像部130を振り向かせることができる。
【0079】
ステップS119で、制御部140は、第2制御モードから第1制御モードへの切り替えを指示する制御モード切替指示をターゲット200に送信するよう通信部170を制御する。制御部140は、ステップS119が終了すると、ステップS103へ処理を進める。
【0080】
次に、ターゲット200が実行する動作について、図10を参照して説明する。
図10は、ターゲット200が実行する処理を示すフローチャートである。図10に示す各処理は、測量機100の制御部220がプログラムを実行することにより行われる処理である。
【0081】
ステップS201で、制御部220は、ターゲット200の通信部240が測量機100の通信部170と通信可能であるか否かを判断し、YESであればステップS202へ処理を進める。
【0082】
ステップS202で、制御部220は、ターゲット200の通信部240で測量機100の時刻情報を受信し、ターゲット200の時刻と測量機100の時刻とを同期させる。ここで、同期とは、例えば、測量機100の時刻とターゲット200の時刻との差分時間を算出し、差分時間を考慮してターゲット200と測量機100との動作のタイミングを合わせることをいう。
【0083】
ステップS203で、制御部220は、レーザ光源213によるレーザ光の照射のオン・オフを第1周期C1で繰り返す第1制御モードを実行する。
ステップS204で、制御部220は、第1制御モードから第2制御モードへの切り替えを指示する制御モード切替指示を測量機100から受信したかどうかを判断し、YESであればステップS205へ処理を進める。
【0084】
ステップS205で、制御部220は、レーザ光源213によるレーザ光の照射のオン状態を維持する第2制御モードを実行する。
ステップS206で、制御部220は、第2制御モードから第1制御モードへの切り替えを指示する制御モード切替指示を測量機100から受信したかどうかを判断し、YESであればステップS203へ処理を進め、NOであればステップS207へ処理を進める。
【0085】
ステップS207で、制御部220は、測量機100へターゲット200への振り向き動作が完了したかどうかを問い合わせる。制御部220は、測量機100から通信部240を介して振り向き動作が完了したことを示す情報を受信した場合にYESと判定して本フローの処理を終了する。
【0086】
以上説明した本実施形態の測量システム300が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の測量システム300によれば、望遠鏡120が有する第1画角θ1よりも広角撮像部130が有する第2画角θ2が広いため、第1画角θ1にターゲット200が存在しない場合であっても第2画角θ2にターゲット200が存在する場合には、広角撮像部130にターゲット200からのレーザ光が入射する。この場合、制御部220が第1制御モードを実行する際に、レーザ光が射出されるオン期間に広角撮像部130が撮像した第1画像IM1は、ターゲット200から入射するレーザ光を含む画像となる。一方、制御部220が第1制御モードを実行する際に、レーザ光が射出されないオフ期間に広角撮像部130が撮像した第2画像IM2は、ターゲット200から入射するレーザ光を含まない画像となる。第1画像IM1と第2画像IM2との第1差分画像DI1は、ターゲット200から入射するレーザ光を除く他の入射光の影響を除去したものとなる。そのため、第1差分画像DI1に基づいて広角撮像部130が撮像した画像中のターゲット像TGが特定される。
【0087】
このように、本実施形態の測量システム300によれば、第1画角θ1にターゲット200が存在しない場合であっても第2画角θ2にターゲット200が存在する場合には、測量機100を水平回転させることなくターゲット200から入射するレーザ光を広角撮像部130で撮像してターゲット200の位置を特定することができる。そのため、ターゲット200が測量機100の正対位置から水平方向に大きく離れている場合であってもターゲット200の位置を迅速に特定することができる。
【0088】
また、本実施形態の測量システム300によれば、射出部210から射出されるレーザ光が鉛直方向の幅W1よりも水平方向の幅W2が広いファンビームBであるため、小電力であっても遠方まで十分な光量を送ることができる。また、ファンビームBを鉛直方向に連続的に走査するため、鉛直方向の幅の狭いファンビームBを走査幅θ4まで拡張して送ることができる。
【0089】
ターゲット特定部141がターゲット像TGを特定する際に、第1画像IM1と第2画像IM2との撮像間隔と同等の間隔で発光するターゲット200以外のものが存在した場合、ターゲット特定部141がターゲット200以外のものをターゲット像TGとして誤って特定してしまう可能性がある。そこで、本実施形態の測量システム300では、射出部210がファンビームBを鉛直方向に連続的に走査する第2周期C2を、第1制御モードでレーザ光のオン・オフを繰り返す第1周期C1よりも短くし、第3画像IM3と第4画像IM4との第2差分画像DI2に基づいてターゲット特定部141が特定したターゲット像TGが適切であるかどうかを判断している。第1画像IM1と第2画像IM2との撮像間隔よりも第3画像IM3と第4画像IM4との撮像間隔が短くなるため、ターゲット特定部141が誤ってターゲット200として特定したターゲット像TGを排除し、ターゲット像TGが適切であるかどうかを判断することができる。
【0090】
また、本実施形態の測量システム300によれば、第3画像IM3および第4画像IM4が部分画像であるため、広角撮像部130が撮像可能な全体画像を扱う場合に比べ、広角撮像部130から第3画像IM3および第4画像IM4を取得する時間が大幅に削減される。そのため、広角撮像部130が全体画像を取得する時間が第2周期C2よりも長くなる場合であっても、広角撮像部130が第3画像IM3および第4画像IM4を取得する時間を第2周期C2よりも短くすることができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0092】
100・・・測量機、 110・・・本体、 111・・・製準台、 112・・・筐体、 120・・・望遠鏡、 130・・・広角撮像部、 140・・・制御部、 141・・・ターゲット特定部、 142・・・ターゲット判断部、 143・・・駆動制御部、 150・・・駆動部、 151・・・水平駆動部(第1駆動部)、 152・・・鉛直駆動部(第2駆動部)、 153・・・水平角検出器、 154・・・鉛直角検出器、 160・・・追尾部、 161・・・追尾光送光部、 162・・・追尾光受光部、 170・・・通信部、 180・・・記憶部、 190・・・距離計、 193・・・表示部、 195・・・操作部、 197・・・三脚、 200・・・ターゲット、 210・・・射出部、 220・・・制御部(射出制御部)、 230・・・プリズム、 240・・・通信部、 300・・・測量システム、 TG・・・ターゲット像、 X1・・・水平軸、 Y1・・・視準軸、 Z1・・・鉛直軸、 θ1・・・第1画角、 θ2・・・第2画角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12