(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】低い血流量で患者から高効率で二酸化炭素を除去するための生体模倣マイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
A61M1/16 107
(21)【出願番号】P 2018562220
(86)(22)【出願日】2017-05-26
(86)【国際出願番号】 US2017034813
(87)【国際公開番号】W WO2017205818
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-03-30
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016976
【氏名又は名称】ザ・チャールズ・スターク・ドレイパ・ラボラトリー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ボーレンステイン,ジェフリー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ギンベル,アラ エー.
(72)【発明者】
【氏名】サントス,ホセ エー.
(72)【発明者】
【氏名】トラススロー,ジェームズ ジー.
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0306296(US,A1)
【文献】特開昭53-059295(JP,A)
【文献】特表2015-500699(JP,A)
【文献】特開昭57-180964(JP,A)
【文献】特表2009-533122(JP,A)
【文献】国際公開第2015/039118(WO,A1)
【文献】米国特許第4636310(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38;60/00-60/90
B01D 53/22;61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスであって:
前記マイクロ流体デバイスを介してガスを流すように構成された複数のガス流路を含む複数の第1の層;
複数の膨張性膜であって、前記複数の膨張性膜の各々は前記複数のガス流路のそれぞれのガス流路に結合し、かつ加圧に対応して前記複数の膨張性膜の各々が膨張するように構成される、複数の膨張性膜;
前記複数の膨張性膜の膜内に少なくとも部分的に埋め込まれた複数の支持構造であって、前記複数の支持構造は、前
記膜が前
記膜の長さに沿って間隔を空けて支持されるように分配さ
れ、前記複数の支持構造は前
記膜の一部に屈曲を低減するように配置される、複数の支持構造;および
複数の血液流路を備えかつ前記膨張性膜と結合する、複数の第2の層であって、前記複数の血液流路は前記膨張性膜によって前記複数のガス流路から分離するように構成され、かつ前記複数の血液流路は前記マイクロ流体デバイスを介して血液を流すように構成され、前記複数の血液流路は、
前記複数の第2の層の各々に規定される断面積であって、前記断面積の形状は、第1の幅と第2の幅の間で各々の血液流路が変動するように、ガス圧の印加によって変動するように構成される、断面積を備える、
複数の第2の層;
を備え、
前記第1の層、前記膨張性膜、および前記第2の層は、それぞれの膜が第1の層と第2の層の間に提供されるように変動する配置で積層され、
前記複数の支持構造は、各々が(i)前記複数のガス流路のそれぞれのガス流路に面する第1の端部と、(ii)前記それぞれのガス流路よりも前記複数の血液流路のそれぞれの血液流路に近い第2の端部と、を有する支持構造を含み、前記複数の支持構造は、ガスが前記それぞれのガス流路を流れる流れの方向に対して垂直な、且つ血液が前記それぞれの血液流路を流れる方向に対して垂直な、方向に前記第1の端部から前記第2の端部まで延在する、
マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記複数の血液流路各々の入口に結合する入口マニホールド、
前記複数の血液流路各々の出口に結合する出口マニホールド、ならびに
開口入口端および開口出口端を含む前記複数のガス流路
をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の層および前記第2の層を収容する圧力容器であって、前記ガスが前記複数のガス流路各々の開口端に流れ込むように構成される、圧力容器をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記断面積の形状が、前記複数の膨張性膜のうちの少なくとも1つの膨張の程度により制御される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複数の膨張性膜のうちの少なくとも1つが、前記複数のガス流路の前記ガスのガス圧に対応する距離を変形させるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記支持構造は、前記膨張性膜とは材料が異なり、前記断面積の形状が、前記複数の支持構造各々の間で撓む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記支持構造は、前記複数のガス流路の長さに沿って均一に分配される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記支持構造は、前記複数のガス流路の長さに沿って不均一に分配される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記支持構造は前記膨張性膜よりも
硬い、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
ガスの流れが約10サイクル/分~約30サイクル/分の速度であるように前記複数のガス流路にガスが供給される、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2016年5月27日に出願された米国仮特許出願第62/342456号の利益および優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
酸素化装置は、損傷したまたは罹患した肺により行われる酸素化を補助する肺補助装置として用いられ得る。血液酸素化装置の標準的な構成は、血液中の二酸化炭素の除去を最大にすることを考慮せずに、血液に移動する酸素量を最大にするように構成される。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、体外構成または埋め込み構成のいずれかで使用できるマイクロ流体デバイスを含む、システムおよび方法を考察する。デバイスは、呼吸器疾患または傷害に罹患している患者の血液からの二酸化炭素の効率的かつ安全な除去を補助する。一部の実装形態において、マイクロ流体デバイスは、血液が低い血流量でマイクロ流体デバイスを流れると血液から臨床的に意義のある量の二酸化炭素を除去するように構成される。低い血流量は、安全性および血液の健全性を高めることができる。安全性の向上は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および高炭酸症を引き起こす他の疾患に罹患している患者での該デバイスの使用を可能にし得る。
【0004】
本開示の一態様にしたがって、マイクロ流体流デバイスは、第1の層を含み得る。第1の層は、複数のガス流路を含み得る。デバイスは、第1の層に結合する膨張性膜を含み得る。デバイスは第2の層を含み得る。第2の層は、複数の血液流路を含み得る。第2の層は、膨張性膜に結合し得る。複数の血液流路は、膨張性膜により複数のガス流路から分離され得る。複数の血液流路は、第2の層に規定される断面積を含み得る。断面積の形状は、複数の血液流路の長さに沿って変動し得る。
【0005】
デバイスは、複数の血液流路各々の入口に結合する入口マニホールドも含み得る。デバイスは、複数の血液流路各々の出口に結合する出口マニホールドを含み得る。複数のガス流路は、開口入口端および開口出口端を含み得る。
【0006】
デバイスは、圧力容器を含み得る。圧力容器は、第1の層および第2の層を収容し得る。圧力容器は、ガスが複数のガス流路各々の開口端に流れ込むように構成され得る。断面積の形状は、膨張性膜の膨張の程度により制御され得る。膨張性膜は、複数のガス流路のガスのガス圧に対応する距離を変形させるように構成され得る。
【0007】
デバイスは、膨張性膜を支持する複数のリブを含み得る。膨張性膜は、複数のリブ各々の間の血液流路の中心軸に向かって撓み得る。
【0008】
複数のリブは、複数のガス流路の長さに沿って均一に分配され得る。他の実装形態において、複数のリブは、複数のガス流路の長さに沿って不均一に分配され得る。膨張性膜は、複数のリブを含み得る。
【0009】
本開示の別の態様にしたがって、方法は、マイクロ流体デバイスを提供することを含み得る。デバイスは第1の層を含み得る。第1の層は複数のガス流路を含み得る。デバイスは、第1の層に結合する膨張性膜を含み得る。デバイスは、第2の層を含み得る。第2の層は、複数の血液流路を含み得る。第2の層は、膨張性膜に結合し得る。複数の血液流路は、膨張性膜により複数のガス流路から分離され得る。複数の血液流路は、第2の層に規定される断面積を有し得る。方法は、血液が複数の血液流路各々の入口に流れ込むことを含み得る。方法は、複数のガス流路をガスで加圧して、膨張性膜を膨張させることにより、複数の血液流路の長さに沿って断面積の形状を変動させることを含み得る。方法は、複数の流路各々の出口から血液を収集することを含み得る。
【0010】
方法は、血液が複数の血液流路各々の入口に結合する入口マニホールドを流れることも含み得る。方法は、複数の血液流路各々の出口に結合する出口マニホールドから血液を収集することを含み得る。方法は、ガスが複数のガス流路の開口入口端に流れ込むことを含み得る。
【0011】
いくつかの実装形態において、方法は、マイクロ流体デバイスを収容する圧力容器を加圧することを含み得る。方法は、ガスが複数のガス流路を脈動流で流れることを含み得る。断面積の形状は、膨張性膜の膨張の程度により制御される。
【0012】
膨張性膜は、複数のガス流路のガスのガス圧に対応する距離を変形させるように構成される。方法は、複数のリブ間の膨張性膜を膨張させることを含み得る。複数のリブは、複数のガス流路の長さに沿って均一に分配され得る。リブは、複数のガス流路の長さに沿って不均一に分配される。膨張性膜は、複数のリブを含み得る。ガスは空気であり得る。
【0013】
当業者には、本明細書に記載の図が、もっぱら例示のためであることが理解されよう。場合によっては、記載の実装形態の様々な態様が、記載の実装形態の理解を促進するために、誇張または拡大して示され得ることが理解されるべきである。図面において、同じ参照文字は全般的に、様々な図面全体で同じ特徴、機能的に同様および/または構造的に同様の要素を指す。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本教示の原理を説明することに重点が置かれている。図面は、何らかの方法で本教示の範囲を限定することを意図するものではない。システムおよび方法は、以下の図面を参照して、以下の例示的説明からよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】血液からの二酸化炭素の除去のためのマイクロ流体デバイスを含む例示的システムを示す図である。
【
図2】二酸化炭素の移動の体積%対搬送ガス流量を示すグラフである。
【
図3】搬送ガスとして純酸素を使用する二酸化炭素の移動対搬送ガスとして空気を使用する二酸化炭素の移動の比較を示すグラフである。
【
図4】
図1Aに例示するシステムでの使用のために、流路構造を変動的に調節するように構成される、例示的マイクロ流体デバイスを示す断面図である。
【
図5】
図1Aに例示するシステムを用いて血液から二酸化炭素を除去する例示的方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
記載の概念が、実装のいかなる特定の方法にも限定されないため、上で導入され、以下でさらに詳細に考察される様々な概念は、様々な方法のいずれかで実装され得る。具体的な実装形態および応用形態の例は、主として例示のために提供される。
【0016】
概観として、本開示は、生体模倣流設計を有し得るマイクロ流体デバイスを説明する。該設計は、非常に低い血流量で血液から高効率で二酸化炭素を除去することを補助する。安全性の向上は、抗凝固剤に対する信頼の低下および現在の方式と比較して凝固および出血の減少に起因し得る。
【0017】
血液ガスの高い移動量は、薄いガス透過膜を利用するか、マイクロ流体デバイスを介してガス流量およびガス組成を制御することによるか、混合を向上させ、境界層の蓄積を低減するように血液流路設計を制御することによるか、またはこれらのいずれかの組み合わせにより達成される。
【0018】
酸素化とは異なり、臨床的に意義のある量での二酸化炭素の除去は、非常に低い血流量で達成できる。例えば、いくつかの実装形態において、本デバイスは、約350mL/分および約450mL/分の血流量で、約60mL/分~約100ml/分の二酸化炭素の除去を達成できる。対照的に、成人における有意な酸素化は、毎分数リットルの血流量を必要とし得る。
【0019】
図1Aは、血液からの二酸化炭素の除去のためのマイクロ流体デバイス102を含む、例示的システム100を例示している。概観として、システム100は、圧力容器104内に収容されるマイクロ流体デバイス102を含む。流体ポンプ106により、流体(例えば、血液)はマイクロ流体デバイス102を流れる。ガスポンプ108により、ガスは圧力容器104に流れ込む。1つ以上の圧力調整器110は、圧力容器104内の圧力を調整する。ポンプ106および108は、制御装置112により制御され、いくつかの実装形態において、圧力容器104の圧力示度を圧力調整器110から受け取る。他の実装形態において、ガスポンプ108により、ガスがマニホールドからマイクロ流体デバイス102のガス流路に供給され、マイクロ流体デバイス102は、圧力容器104内に収容されない。
【0020】
一般に、マイクロ流体デバイス102は、複数のポリマー基材層を含む。ポリマー基材層各々は、複数のガス流路、および血液流路とも称され得る複数の流体流路を含む。いくつかの実装形態において、各ポリマー基材層において、ガス流路各々および流体流路各々(ポリマー基材層の端部の流路を除く)が、各々、2つの流体流路および2つのガス流路の間にあるように、ガス流路および流体流路は交互に並ぶ。マイクロ流体デバイス102はまた、第1のポリマー基材層の流体流路各々が、第2のポリマー基材層のガス流路と垂直に整列し、それと重なるように構成される。同様に、第1のポリマー基材層のガス流路各々は、第2のポリマー基材層の流体流路と垂直に整列し、それと重なる。この整列構成は、格子状構成と称される。格子状構成において、ガス流路は各内部流体流路を取り囲み(例えば、上、下および両側)、流体流路は各内部ガス流路を取り囲む。いくつかの実装形態において、ガス流路および流体流路は、本開示の範囲から逸脱せずにより複雑な交互パターンに従って交互に並ぶ。
【0021】
他の実装形態において、所与のポリマー基材層の流路各々は、同じ種類の流路を含む。例えば、ガス流路のみを含むガス層および流体流路のみを含む流体層。これらの実装形態において、マイクロ流体デバイス102は、積層された、交互のガス層および流体層を含む。層各々は、ガス透過膜により分離される。
【0022】
システムのマイクロ流体デバイス102は、圧力容器104内に収容され得る。マイクロ流体デバイス102のガス流路各々にガスを送るマニホールドシステムの複雑さを低減するために、マイクロ流体デバイス102のガス流路にガスを供給するベントは、開いていて、圧力容器104内で生じる周囲大気条件にさらされる。これらの実装形態において、ガス流路は、ガス流路各々にガスを分配するための複雑なマニホールドを必要としない。これらの実装形態において、マイクロ流体デバイス102の流体流路のみがマニホールドに結合する。圧力容器104は、高圧に耐えるように構成される硬いシェルを含む耐圧筐体である。圧力容器104は、ガス不透過プラスチック、例えば、ポリカーボネート、または金属から製造される。制御装置112は、圧力容器104を加圧するために、酸素などのガスを圧力容器104に注入する、ガスポンプ108を制御する。いくつかの実装形態において、圧力容器104は、約1atm~約5atm、約1atm~約4atm、1atm~約3atmまたは約1.5atm~約2.5atmに加圧される。
【0023】
システム100の圧力容器104は、圧力容器104内の圧力を調整し、圧力容器104内で所定の圧力を維持する、1つ以上の圧力調整器110を含む。いくつかの実装形態において、圧力調整器110は、制御装置112に圧力示度を送る圧力センサーを含み、これにより、圧力容器104内での圧力の閉ループ制御が可能になる。いくつかの実装形態において、圧力調整器110は、所定の圧力を実質的に超える圧力の上昇を防止する圧力放出弁である。例えば、圧力調整器110は、圧力容器104内の圧力が2.5atmに到達すると自動的に開く圧力弁であり得る。操作中、二酸化炭素は、血液から(例えば、ポリマー層から)拡散し、圧力容器104に入る。また、圧力容器104内の圧力を放出することにより、二酸化炭素レベルが圧力容器104内で上昇しないように、二酸化炭素を圧力容器104から排出することが可能になる。
【0024】
システム100は、制御装置112により制御され、流体がマイクロ流体デバイス102を流れるように構成される流体ポンプ106も含む。例えば、流体ポンプ106は、血液がマイクロ流体デバイス102の流体流路を流れるように構成される。流体ポンプ106は、マイクロ流体デバイス102の流体流路各々に流体を分配するマイクロ流体デバイス102のマニホールドに流体的に結合する。流体ポンプ106は、流体が約100mL/分~約1L/分、約200mL/分~約800mL/分、または約400mL/分~約600mL/分の量でマイクロ流体デバイス102を流れるように構成される。
【0025】
いくつかの実装形態において、制御装置112は、流体ポンプ106およびガスポンプ108を介して、マイクロ流体102に入るガス流量およびガス組成を制御し、血液からの二酸化炭素の移動量を増加させる。搬送ガス流量が大きいと、二酸化炭素の除去は漸近値まで増加する。いくつかの実装形態において、システム100は、マイクロ流体デバイス102のガス流路を流れる搬送ガス流量を変えることにより、二酸化炭素の移動量を調節する。いくつかの実装形態において、搬送ガスの組成は、実質的に純酸素である。搬送ガスが実質的に純酸素であるとき、搬送ガス流量が増加するにつれて、二酸化炭素の移動量は漸近値まで増加する。この関係は
図2に例示するグラフに例示されている。
【0026】
いくつかの実装形態において、システム100は、複数のマイクロ流体デバイス102を含む。マイクロ流体デバイス102は、順次一緒に結合され得る。一連のマイクロ流体デバイス102において交互のマイクロ流体デバイス102は、血液流路からガス流路への二酸化炭素の移動量を増加させるように構成され得、他のマイクロ流体デバイス102は、ガス流路から血液流路に移動する酸素量を増加させるように構成される。例えば、第1のマイクロ流体デバイスは、血液から二酸化炭素を除去し得、第2のマイクロ流体デバイスは、血液を酸素化し得る。いくつかの実装形態において、本明細書に記載のマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスを流れる血液を酸素化するためと、該血液から二酸化炭素を除去するための両方で用いられ得る。
【0027】
図1Bは、
図1で例示するシステム100で使用できる例示的なマイクロ流体デバイス102の分解立体図を例示している。マイクロ流体デバイス102は、複数のポリマー層120を含む。ポリマー層120は、ガス流路を含んだり、血液流路を含んだりし得る。いくつかの実装形態において、ポリマー層120各々は、複数のガス流路および複数の流体流路を含み得る。隣接するポリマー層120は、透過膜により互いに分離され得る。膜は、膨張性膜であり得る。膜は、ある層のガス流路を別の層の血液流路から分離し得る。いくつかの実装形態において、膜は、ガスおよび血液流路各々の対向壁を形成し得る。例えば、流路各々の床および天井は、膜であり得る。これらの実装形態において、ガスおよび血液流路は、ポリマー層120の縦溝として形成される。これにより、マイクロ流体デバイス102には、ポリマー層120、膜、ポリマー層120、膜の反復層パターンが付与され得る。他の実装形態において、ガスおよび血液流路は、ポリマー層120内のトレンチとして形成される。これらの実装形態において、ポリマー層120は、流路の3つの壁を形成し得、膜は、4つ目の壁(例えば、天井または床)を形成し得る。マイクロ流体デバイス102は、ポリマー層120、膜、ポリマー層120の反復パターンを含み得る。様々な交互パターンが、本明細書に記載のシステムに好適であり得る。
【0028】
ポリマー層120および膜は、層を一緒にクランプすることによるか、または層をグリューで一緒に結合するか、もしくは層を一緒に熱溶接することにより、一緒に結合され得る。一緒に結合されると、ポリマー層120は、別の流体流ネットワーク、および別のガス流ネットワークを構築し得る。いくつかの実装形態において、結合したポリマー層120は、1つの流体流ネットワークおよび2つの別のガス流ネットワークを構築する。
【0029】
マイクロ流体デバイス102は、流体入口マニホールド122および流体出口マニホールド124を含み得る。血液などの流体は、流体入口マニホールド122から様々なポリマー層120の流体流路各々へ流れる。流体が、ポリマー層120各々(または血液流路を含むポリマー層120)を出るとき、流体出口マニホールド124から流体が収集される。マイクロ流体デバイス102は、上層128および下層130各々にベント126(a)およびベント126(b)を含む。いくつかの実装形態において、上層128および下層130は、ガスおよび流体流路を含まず、ベント126が、最上部および最下部のポリマー層においてガス流路への入口となる。すなわち、ガス流路は、マイクロ流体デバイス102の外側の環境にさらされる開口入口を有し得る。ベントは、ガス流路の入口へのアクセスを提供し、周囲環境へのアクセスを可能にする。周囲環境は、マイクロ流体デバイス102を収容する圧力容器内の環境であり得る。ベント126(a)は、第1のガス流ネットワークのガス流路へのアクセスを提供し、ベント126(b)は、第2のガス流ネットワークのガス流路へのアクセスを提供する。いくつかの実装形態において、ガス流路を含む各ポリマー層120は、周囲ガスが各ポリマー層120のガス流路を直接流れることを可能にする開口入口を含み得る。
【0030】
入口マニホールド122および出口マニホールド124は、血液に大きな損傷を与えずにポリマー層120各々から血液を導入および収容するように構成され得る。例えば、入口マニホールド122と出口マニホールド124の両方が、直角ではなく緩やかな曲線状の流路を含む。いくつかの実装形態において、マニホールド内の流路は、血管流路を模倣する。例えば、流路は分岐で分かれる。分岐後、流路の大きさは、Murrayの法則に従って小さくなる。
【0031】
マイクロ流体デバイス102のポリマー層120各々は、第1のポリマー層120の流路が、第1のポリマー層120の両側のポリマー層120の流路と実質的に重なり、並行して走るように互いに積層され得る。いくつかの実装形態において、マイクロ流体デバイス102は、10~100、30~80または40~60枚重ねのポリマー層120を含む。ポリマー層120は、約25~約150の流路、約50~約125の流路および約75~約100の流路を含み得る。
【0032】
いくつかの実装形態において、ポリマー層120は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から製造され、ポリマー層120各々の間に分離膜なしで互いに直接積層される。例えば、ポリマー層120の流路が、PDMS層内に規定され得る場合、酸素は、ガス流路から飽和し、PDMSに入る。その場合には、PDMSは、ガス流路と水平および垂直に整列した流体流路の酸素源として働く。他の実装形態において、ポリマー層120は、熱可塑性物質、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミドまたは環状オレフィンコポリマー(COC)、生分解性ポリエステル、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、または軟性エラストマー、例えば、ポリグリセロールセバケート(PGS)から製造される。これらの実装形態において、ポリマー層120各々は、流体流路とガス流路との間の酸素または他のガスの拡散を可能にするために選択された半多孔性膜により互いに分離され得る。
【0033】
図2は、二酸化炭素の移動の体積%対搬送ガス流量のグラフを例示している。グラフは、3つの異なる血流量に対する二酸化炭素の移動と搬送ガス流量との関係を例示している。各実験において、搬送ガスは100%酸素であった。グラフに例示するように、移動効率は、3つの血流量すべてで40mL/分で漸近値に到達し、最も急激な上昇は、約5mL/分~約10mL/分の血流量で生じる。
【0034】
いくつかの実装形態において、搬送ガスは、二酸化炭素の移動量を増加させるために酸素濃度が低い。
図3は、搬送ガスとして純酸素を使用する二酸化炭素の移動対搬送ガスとして空気を使用する二酸化炭素の移動を比較するグラフを例示している。丸は、搬送ガスとして空気を使用する、様々な血流量に対する二酸化炭素の体積%の移動を例示しており、ひし形は、搬送ガスとして純酸素を使用する、様々な血流量に対する二酸化炭素の体積%の移動を例示している。グラフに例示するように、二酸化炭素の体積%の移動は、血流量のいくつかに対して増加し、搬送ガスとして空気を使用して得られる性能の向上を示している。他の実装形態において、搬送ガスは純窒素である。
【0035】
図3に例示するように、二酸化炭素の移動量は、搬送ガスが純酸素から空気に変更されると増加する。ある血流量で移動は20%程度増加する。いくつかの実装形態において、空気はガスの混合物を含み得る。空気は、酸素約20体積%、窒素78体積%であり得、残りの部分は、他のガスの混合物である。いくつかの実装形態において、空気(または他のガス)は、本明細書に記載のマイクロ流体デバイスで使用する前に、周囲条件に基づき乾燥または加湿され得る。搬送ガスは、純酸素であり得るか、または酸素を約10%~約100%、約10%~約75%、約10%~約50%または約10%~約25%含有し得る。
【0036】
いくつかの実装形態において、マイクロ流体デバイスの血液流路は、血液が血液流路の長さに沿って流れるように血液を混合する混合要素を含む。いくつかの実装形態において、混合要素はまた、膜の血液側に沿って形成し得る境界層を破壊できる。混合要素は、マイクロ流体デバイス102の流路壁に組み込まれ得る。混合要素は、流路の1つ、2つまたは3つの壁に含まれ得る。混合要素はまた、膜の表面に含まれ得る。混合要素は、血液流路の長さに沿って分配され得る。混合要素は、流路の床付近の血液が膜に向かって押されるように血液を混合し得る。例えば、水平方向における層流条件下で、垂直方向での血液粒子の移動はほとんどない。これにより、同じ分量の血液が、流路の長さに沿って膜付近に残るため、膜を越えて二酸化炭素が移動するのを防止できる。このような条件下で、膜付近の血液中では二酸化炭素の量が減少し、流路の床付近の血液(例えば、膜から最も離れた血液)は、二酸化炭素を多く含んだままである。混合要素により、二酸化炭素に富む血液が血液流路の床から膜に向かって押される。
【0037】
混合要素は、血液流路の壁に配置された複数のシェブロン様混合特徴を含み得る。混合要素は、他の混合要素、例えば、溝、流路、突起部またはそれらの組み合わせを含み得る。血液流路の膜または壁に形成された混合要素は、静的混合要素と称され得る。混合要素は、実質的に血液流路の全長に沿って広がり得る。他の実装形態において、混合要素は、血液流路の全長のサブ部分のみに対応する。さらに他の実装形態において、混合要素は、グループ化され得る。例えば、血液流路は、流路の第1の部分に沿って第1の種類の混合要素、次いで流路の第2の部分に沿って第2の種類の混合要素を含み得る。混合要素の分配は、流路の長さに沿って等しくてよい。または、混合要素の分配は、流路の長さに沿って変化させてもよい。例えば、流路は、入口端と比較して、流路の出口端に向かって高密度の混合要素を含み得る。
【0038】
いくつかの実装形態において、混合要素の高さまたは深さは、血液流路の全高の約5%~約10%、約10%~約20%または約20%~約30%である。いくつかの実装形態において、流路の混合要素各々は、同じ高さまたは深さである。他の実装形態において、混合要素の高さまたは深さは、流路の長さに沿って変化する。マイクロ流体デバイスの血液およびガス流路は、深さ約100μm~約500μm、約150μm~約450μm、約200μm~約400μmおよび約200μm~約350μmであり得る。
【0039】
いくつかの実装形態において、混合要素は動的である。混合要素は、各血液流路の中心縦軸に向かって(またはそこから離れて)膜を膨張させることにより形成され得る。いくつかの実装形態において、ガスポンプ108は、流路構造を変動的に調節するパルス状の機械波のガスをガス流路に供給することにより、血液の混合を向上させ、二酸化炭素の移動を増加させるように構成される。ガス流路内での圧力の上昇は、膜を各血液流路の中心縦軸に向かって膨張させる。いくつかの実装形態において、血流を拍出し、膜を膨張させ、血液流路構造を変動させる圧力波を血液流路から発生させることができる。いくつかの実装形態において、マイクロ流体デバイスは、静的および動的混合要素の混合物を含み得る。例えば、血液流路の床は、シェブロン混合要素を含み、パルスガス流は、膜を変動的に膨張させて、血液流路構造(例えば、断面積の形状)を調節するために用いられ得る。
【0040】
他の実装形態において、血液は、流路構造を調節するために血液流路に脈動的に供給される。これらの実装形態において、血液流路を流れる血液の圧力は、各血液流路の中心縦軸から離れて膜を膨張させ得る。
【0041】
図4Aは、流路構造を変動的に調節するように構成される例示的マイクロ流体デバイス102の断面図を例示している。マイクロ流体デバイス102は、2つのガス流路402および1つの血液流路404を含む。血液流路404は、個々の膜406によりガス流路402各々から分離される。膜406は、リブ408とも称され得る複数の支持構造408を含む。
【0042】
また、
図1を参照すると、ガスは、ガス流路402を脈動的に流れる。制御装置112は、ガス流路402を流れるガスの脈動圧を制御する。制御装置112により、ガスはガス流路402を約10サイクル/分~約30サイクル/分、約15サイクル/分~約25サイクル/分または約15サイクル/分~約20サイクル/分の速度で流れ得る。
【0043】
図4に例示するように、比較的高圧サイクル中、高いガス圧により、血液流路404の中心軸に向かって膜406が膨張し、これにより血液流路404が一時的に狭窄する。例示するように、支持構造408は、膜を静止状態で保持し、膜406は、支持構造408の間で膨張する。ガス流が比較的低圧(例えば、血液流路404の血液の圧力以下の圧力)まで循環すると、膜406はその元の位置に戻る。ガス圧により、膜406が血液流路404の中心軸に向かって膨張すると、血液流路の断面積の形状は、血液流路の長さに沿って変化する。例えば、
図4Aに例示する例において、血液流路404は、支持構造408の1つで得られた断面積で最も広い。血液流路404は、隣接する支持構造408の中間で得られた断面積で最も狭い。例示するように、血液流路404の長さに沿った流路の断面積の形状の変化は、変動の一形態であり得る。断面積の形状はまた、デフォルト位置(膜406が膨張していない)から、膜406が血液流路の中心軸に向かって(またはそこから離れて)膨張する狭窄(または膨張)位置まで変動し得る。
【0044】
いくつかの実装形態において、血液は、脈動波形で血液流路404を流れる。脈動波形は、体内の血液の心拍出の血行動態波形を模倣し得る。血液の脈動は、シャトルポンプを用いて発生できる。
【0045】
膜406の膨張により、血液流路404に面する膜406の表面に小さな起伏が生じる。起伏は、脈動ガス流で変動的に出現し得る。起伏は、膜406に沿って境界層を自然に妨害および破壊する手段を提供し得る。起伏はまた、血液を混合し、血液中に残る二酸化炭素を撹拌して、混合および移動を向上させる。
【0046】
図4Aに例示するように、支持構造408は、マイクロ流体デバイス102の膜406内に埋め込まれる。本明細書に記載の膜は、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、または約50μm~約100μmであり得る。
【0047】
いくつかの実装形態において、リブは、複数のガス流路の長さに沿って均一に分配される。例えば、隣接するリブ間の距離は、ガス流路の長さに沿って一定であり得る。他の実装形態において、リブは、複数のガス流路の長さに沿って不均一に分配される。例えば、隣接するリブ間の距離は、ガス流路の長さに沿って変化し得る。リブは、ガス流路の出口に向かってより密な間隔で配置されてもよく、ガス流路の入口に向かってより密な間隔で配置されてもよく、またはリブの分配はランダムであってもよい。
【0048】
他の実装形態において、支持構造408は、膜406内に埋め込まれない。例えば、
図4Bは、膜406のガス流路表面に結合する支持構造410を含むマイクロ流体デバイス102を例示している。支持構造408は、膜406の材料よりも硬い材料を含み得る。いくつかの実装形態において、支持構造408は、支持構造408を膜406よりも硬くするために、膜406のPDMSと異なる組成を有するPDMSで製造され得る。
【0049】
図4Cは、支柱412である支持構造を含むマイクロ流体デバイスを例示している。支柱412は、膜406のガス表面に結合する支持構造の別の例である。支柱412は、ガスがガス流路402の長さに沿って流れることを可能にする。支柱412は、膜406の一部をガス流路402の対向壁に結合させる。支柱412は、それらが結合する膜406の部分付近での膜406の屈曲を実質的に防止する。
【0050】
図4Dは、マイクロ流体デバイス102を例示している。マイクロ流体デバイス102は、
図4Bに関して上に記載されたものと同様の支持構造410を含む。マイクロ流体デバイス102は、血液が、血液流路404を脈動的に流れる一例を例示している。血液の脈動流は、膜406をガス流路402に向かって外側に屈曲させる。
【0051】
いくつかの実装形態において、マイクロ流体デバイスの支持構造は、本明細書に記載の支持構造のいずれかまたはそれらの組み合わせであり得る。さらに、支持構造は、膜406の表面に広がるメッシュを含み得る。リブ、バーまたはメッシュは、膜406よりも硬い金属またはプラスチックを含み得る。
【0052】
図4Eは、マイクロ流体デバイス102を例示している。
図4Eに例示するマイクロ流体デバイス102は、
図4Aに例示するマイクロ流体デバイス102に類似している。
図4Eに例示するように、膜406は、血液流路404に向かって膨張していない。例えば、ガス流路402内の圧力は、膜406を撓ませるほど高くない場合がある。いくつかの実装形態において、ガス流路402の脈動流により、断面積が、
図4Eに例示する断面積と
図4Aに例示する断面積との間で変動し得る。断面積の形状は、時間とともに変動し得る(例えば、膜は膨張し、その後、元の状態に戻り得る)。断面積の形状はまた、距離とともに変動し得る。例えば、
図4Aに例示するように、加圧ガス流路402は、血液流路404の断面積を正弦波的に変化させる。すなわち、血液流路404の高さまたは幅の少なくとも1つは、血液流路404の長さに沿って正弦波的に変化する。他の実装形態において、断面積の形状は、非正弦波的に変動し得る。断面積の形状はまた、時間と距離の両方とともに変動し得る(例えば、脈動ガス流により、マイクロ流体デバイス102が
図4Aに例示する状態と
図4Eに例示する状態との間で変動する場合)。
【0053】
図5は、血液から二酸化炭素を除去する例示的方法500のブロック図を例示している。方法500は、マイクロ流体デバイスを提供すること(ACT502)を含み得る。方法500は、血液がデバイスの血液流路の入口を流れること(ACT504)を含み得る。方法500は、デバイスの血液流路の長さに沿って断面積の形状を変動させること(ACT506)を含み得る。方法500は、デバイスの血液流路の出口から血液を収集すること(ACT508)を含み得る。
【0054】
上で示したように、方法500は、マイクロ流体デバイスを提供すること(ACT502)を含み得る。マイクロ流体デバイスは、本明細書に記載のマイクロ流体デバイスのいずれかであり得る。マイクロ流体デバイスは、複数のポリマー層を含み得る。第1の層は、複数のガス流路を含み得る。第2の層は、複数の血液流路を含み得る。血液およびガス流路は、層間に結合する膨張性膜により互いに分離され得る。複数の血液流路は、第2の層に規定される断面積を含み得る。デフォルト状態(または初期状態)において、断面積は、血液流路の長さに沿って実質的に均一であり得る。血液流路は、流体が血液に加えてまたはその代わりに流れることが可能であるか、そうでなければそのように構成される流体流路であり得る。
【0055】
方法500は、血液がデバイスの血液流路の入口から流れること(ACT504)を含み得る。いくつかの実装形態において、血液流路は、マニホールドシステムに結合する。血液は、複数の血液流路各々の入口に結合する入口マニホールドを流れ得る。マニホールドは、血液に対する外傷を減少できる平滑かつ段階的な分岐および屈曲を有する流路を含み得る。いくつかの実装形態において、ガス流路はガスマニホールドに結合する。他の実装形態において、ガス流路は、ガスマニホールドに結合していない。ガス流路の入口は、ガス流路が周囲環境にさらされるように開かれ得る。
【0056】
方法500は、デバイスの血液流路の長さに沿って断面積の形状を変動させること(ACT506)を含み得る。デバイスの血液流路の長さに沿って断面積の形状を変動させることは、断面積を脈動的に変化させること(例えば、血液流路を狭窄し、次いで弛緩すること)、血液流路の長さに沿って断面積を変化させること(例えば、血液流路を血液流路の長さに沿って点で狭窄すること)、またはそれらの組み合わせ(例えば、血液流路を点で脈動的に狭窄すること)を含み得る。
【0057】
断面積の形状は、膜を血液流路内で膨張させることにより変化し得る。膜は、ガス流路を加圧することにより血液流路内で膨張し得る。ガス流路の圧力が、血液流路の圧力を超える場合、膜は血液流路内で膨張し得る。いくつかの実装形態において、膜はガス流路内で膨張し得る。
【0058】
いくつかの実装形態において、マイクロ流体デバイスは、圧力容器内に配置される。デバイスのガス流路の入口は、ガス流路内の圧力が、実質的に圧力容器内の圧力であるように、周囲環境に開かれ得る。圧力容器を加圧することにより、ガス流路は膜を加圧し、膜を膨張させる。圧力容器内の圧力レベルは、血液流路内の血液の圧力を超えるか、または下回るように制御され得る。ガスは、ガス流路を脈動流で流れ得る。脈動流は、比較的低い圧力値と比較的高い圧力値との間で圧力容器内の圧力を変動させることにより生じ得る。比較的低い圧力は、血液流路内の圧力を下回るか、またはそれにほぼ等しい圧力であり得、比較的高い圧力は、血液流路内の圧力を超える圧力であり得る。圧力は、膜の膨張量を制御する。膜の膨張は、血液流路の断面積の形状を制御し得る。膜の膨張量は、複数のガス流路のガスのガス圧に関連し得る。
【0059】
方法500は、デバイスの血液流路の出口から血液を収集すること(ACT508)を含み得る。血液流路の出口は出口マニホールドに結合し得る。血液に損傷を与えずに、出口マニホールドから、血液流路を出る血液が収集できる。いくつかの実装形態において、マイクロ流体デバイスを出る血液は、血液を酸素化できる酸素化装置に移動し得る。他の実装形態において、血液は、マイクロ流体デバイスに入る前に酸素化装置を通過し得る。
【0060】
上記実施形態は、様々な方法のいずれかで実装され得る。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェアまたはそれらの組み合わせを用いて実装され得る。ソフトウェアで実装される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに提供されるのか、または複数のコンピュータ間に分散されるのかに関わらず、任意の好適なプロセッサまたは一群のプロセッサ上で実行され得る。
【0061】
また、コンピュータは、1つ以上の入力および出力デバイスを有し得る。これらのデバイスを使用して、とりわけ、ユーザインタフェースを提示することができる。ユーザインタフェースを提供するために使用できる出力デバイスの例としては、出力の視覚的提示のためのプリンタまたはディスプレイ画面、および出力の可聴提示のためのスピーカまたは他の音響発生装置が挙げられる。ユーザインタフェース用に使用できる入力デバイスの例としては、キーボード、ならびにポインティングデバイス、例えば、マウス、タッチパッドおよびデジタル化タブレットが挙げられる。別の例として、コンピュータは、音声認識または他の可聴形式で入力情報を受信できる。
【0062】
このようなコンピュータは、ローカルエリアネットワークもしくは広域ネットワーク、例えば、企業ネットワーク、インテリジェントネットワーク(IN)またはインターネットを含む、任意の好適な形態の1つ以上のネットワークにより相互接続され得る。このようなネットワークは、任意の好適な技術に基づき得、任意の好適なプロトコルに従って動作し得、無線ネットワーク、有線ネットワークまたは光ファイバネットワークを含み得る。
【0063】
本明細書に記載の機能の少なくとも一部を実装するために用いられるコンピュータは、メモリ、1つ以上の処理ユニット(本明細書では簡単に「プロセッサ」とも称される)、1つ以上の通信インターフェース、1つ以上のディスプレイユニット、および1つ以上のユーザ入力デバイスを含み得る。メモリは、任意のコンピュータ可読媒体を含み得、本明細書に記載の様々な機能を実装するためのコンピュータ命令(本明細書において「プロセッサ実行可能命令」とも称される)を記憶し得る。処理ユニット(複数可)は、命令を実行するために用いられ得る。通信インターフェース(複数可)は、有線もしくは無線ネットワーク、バスまたは他の通信手段に連結され得、したがって、コンピュータが他のデバイスに通信を伝送するか、および/または他のデバイスから通信を受信することを可能にし得る。ディスプレイユニット(複数可)は、例えば、ユーザが命令の実行に関連して、様々な情報を確認することを可能にするために提供され得る。ユーザ入力デバイス(複数可)は、例えば、ユーザが手動調整を行うか、選択を行うか、データもしくは様々な他の情報を入力するか、および/または命令の実行中にプロセッサと様々な様式のいずれかで相互作用することを可能にするために提供され得る。
【0064】
本明細書に概説される様々な方法またはプロセスは、様々なオペレーティングシステムまたはプラットフォームのいずれか1つを使用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコードされ得る。さらに、このようなソフトウェアは、いくつかの好適なプログラミング言語および/またはプログラミングもしくはスクリプトツールのいずれかを使用して記述されてもよく、またフレームワークまたは仮想マシンで実行される実行可能な機械言語コードまたは中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0065】
この点において、様々な発明の概念は、1つ以上のコンピュータまたは他のプロセッサで実行されるとき、上で考察される本発明の様々な実施形態を実装する方法を行う、1つ以上のプログラムで符号化されたコンピュータ可読記憶媒体(または複数のコンピュータ可読記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイもしくは他の半導体デバイスの回路構成、または他の非一時的媒体もしくは有形のコンピュータ記憶媒体)として具体化され得る。コンピュータ可読媒体(複数可)は、そこに記憶されたプログラム(複数可)が、上で考察される本発明の様々な態様を実装するために、1つ以上の異なるコンピュータまたは他のプロセッサ上にロードされ得るように、可搬型であり得る。
【0066】
用語「プログラム」または「ソフトウェア」は、上で考察される実施形態の様々な態様を実装するために、コンピュータもしくは他のプロセッサをプログラムするように用いられ得る、任意の種類のコンピュータコード、またはコンピュータ実行可能命令のセットを指して一般的な意味で本明細書で用いられる。さらに、一態様に従って、実行されると、本発明の方法を行う1つ以上のコンピュータプログラムは、単一コンピュータまたはプロセッサ上に存在する必要はないが、本発明の様々な態様を実装するいくつかの異なるコンピュータまたはプロセッサの間でモジュール様式で分散され得ることが理解されるべきである。
【0067】
コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のコンピュータまたは他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールなどの多くの形態であり得る。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを行うか、または特定の抽象データタイプを実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造などを含む。典型的には、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態で所望されるように組み合わせられ得るか、または分散され得る。
【0068】
また、データ構造は、任意の好適な形態で、コンピュータ可読媒体に記憶され得る。説明を簡単にするために、データ構造は、データ構造内の位置を介して関連するフィールドを有することが示され得る。同様に、このような関係は、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体の位置でのフィールドに記憶領域を割り当てることにより達成できる。しかし、任意の好適な機構を使用して、ポインタ、タグまたはデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用を含む、データ構造のフィールドにおける情報間の関係を確立することができる。
【0069】
また、様々な発明の概念は、実施例が提供された1つ以上の方法として具体化され得る。方法の一部として実行される動作は、任意の好適な方法で順序付けされ得る。したがって、例示的実施形態において、逐次的な動作として示されても、実施形態は、いくつかの動作を同時に実行することを含み得る、動作が例示と異なる順序で実行されるように構築され得る。
【0070】
本明細書で用いられる用語「約」および「実質的に」は、当業者により理解され、それが用いられる文脈に応じた程度まで変化する。当業者に明らかでない用語が用いられる場合、それが用いられる状況下で、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。
【0071】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で用いられる不定冠詞「1つの(aおよびan)」は、相反することが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0072】
明細書および特許請求の範囲において本明細書で用いられる語句「および/または」は、そのように結合された要素、すなわち、場合によっては結合して存在し、他の場合には結合せずに存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」で解釈されるべきである。具体的に特定されるこれらの要素に関連するか、または関連しないかにかかわらず、他の要素は、「および/または」節で具体的に特定される要素以外に任意で存在し得る。したがって、非限定的例として、「Aおよび/またはB」の参照は、オープンエンドな言語、例えば、「含む(compising)」と組み合わせて用いられるとき、一実施形態において、Aのみ(任意でB以外の要素を含む)、別の実施形態において、Bのみ(任意でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態において、AとBの両方(任意で他の要素を含む)などを指し得る。
【0073】
明細書および特許請求の範囲において本明細書で用いられる「または」は、上に定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈されるべきであり、すなわち、多数のまたは一覧の要素の少なくとも1つを含むが、1つ以上も含み、任意で追加の列挙されていない項目を含む。相反することが明確に示されている唯一の用語、例えば、「の1つのみ」もしくは「の正確に1つ」、または特許請求の範囲で用いられる場合の「からなる」は、多数のまたは一覧の要素の正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で用いられる用語「または」は、排他性の用語、例えば、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」、または「の正確に1つ」が先行する場合、排他的代替物(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すとしてのみ解釈されるべきである。「から本質的になる」は、特許請求の範囲で用いられる場合、特許法の分野において用いられるその通常の意味を有するべきである。
【0074】
明細書および特許請求の範囲において本明細書で用いられる語句「少なくとも1つ」は、1つ以上の要素の一覧に関して、要素の一覧の要素の任意の1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、要素の一覧内に具体的に列挙される各およびすべての要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素の一覧における要素の任意の組み合わせを排除しないことが理解されるべきである。この定義は、具体的に特定されたこれらの要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、要素が、「少なくとも1つ」の語句が指す要素の一覧内で具体的に特定された要素以外に任意に存在し得ることも可能にする。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に「AまたはBの少なくとも1つ」または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、少なくとも1つ、任意で2つ以上のAを含み、Bが不在であること(および、任意でB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態において、少なくとも1つ、任意で2つ以上のBを含み、Aが不在であること(および任意でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態において、少なくとも1つ、任意で2つ以上のAを含むこと、および少なくとも1つ、任意で2つ以上のBを含むこと(および任意で他の要素を含む)などを指し得る。
【0075】
特許請求の範囲において、および上記明細書において、すべての移行句、例えば「含む(comprising)、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる(composed of)」などは、オープンエンド、すなわち、含むが、限定されないことを意味すると理解されるべきである。移行句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」は、米国特許庁特許審査手続便覧2111.03に記載されているように、各々、閉鎖または半閉鎖移行句であるべきである。
【0076】
様々な修正および変更が、本発明の精神または範囲から逸脱せずに本発明の方法において行われ得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明は、本発明の修正および変更が、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内であるとの条件で、これらを含むことが意図される。米国特許を含むが、これに限定されない、本明細書で参照されるすべての公開されている文書は、参照により具体的に組み込まれる。