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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230509BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230509BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230509BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230509BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230509BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230509BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20230509BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20230509BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20230509BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/66 A
H01M50/534
H01M50/586
H01M50/593
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019024866
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020135974
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 義隆
(72)【発明者】
【氏名】高市 哲
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125893(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114497(WO,A1)
【文献】特開2016-012495(JP,A)
【文献】特開平05-109402(JP,A)
【文献】特開2018-116917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 4/64-4/84
H01M 50/50-50/598
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の表面に正極活物質を含有する正極活物質層が配置された正極と、
負極集電体の表面に負極活物質を含有する負極活物質層が配置された負極と、
前記正極活物質層および前記負極活物質層との間に介在する固体電解質層と、
を有する発電要素を備え、
平面視した際に、前記固体電解質層の外周端が前記正極活物質層の外周端と一致し、前記負極活物質層の外周端の少なくとも一部が前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端より内側に位置し、かつ、
前記の関係を満たす部位に、前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端のうち、より内側に位置する外周端と平面視において重複するように(ただし、前記固体電解質層の外周端と平面視において一致する場合を除く)、前記負極集電体および/または前記固体電解質層の前記負極活物質層側の表面に、SOC0%のときに前記負極活物質層の厚さ以下の厚さを有する絶縁性イオン透過抑制層が配置される、全固体電池。
【請求項2】
前記絶縁性イオン透過抑制層は、前記負極集電体の前記負極活物質層側の表面に配置されている、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記絶縁性イオン透過抑制層の内周端は、前記負極活物質層の外周端と接するように配置されている、請求項1または2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記負極活物質層の外周すべてにわたって、前記負極活物質層の外周端が前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端より内側に位置している、請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記負極活物質層の外周すべてにわたって前記絶縁性イオン透過抑制層が配置されている、請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記負極集電体の外周の一部が外側へ向かって延在されて負極集電板と電気的に接続される負極集電部をさらに備え、
少なくとも前記負極集電部に対応する位置において、前記負極活物質層の外周端が前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端より内側に位置する部位が存在し、当該部位の少なくとも一部に前記絶縁性イオン透過抑制層が配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記負極活物質層の外周すべてにわたって、前記負極活物質層の外周端が前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端より内側に位置しており、
前記負極活物質層の外周すべてにわたって前記絶縁性イオン透過抑制層が配置されており、かつ、
前記負極集電部に対応しない位置においては、平面視した際に前記負極集電体の外周端が前記固体電解質層の外周端より内側に位置している、請求項6に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記固体電解質層の厚さは、0.1~100μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記絶縁性イオン透過抑制層は、弾性を有する材料により構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記絶縁性イオン透過抑制層は、樹脂材料またはゴム材料により構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項11】
前記負極活物質は、金属リチウム、ケイ素系負極活物質またはスズ系負極活物質を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の全固体電池。
【請求項12】
全固体リチウムイオン二次電池である、請求項1~11のいずれか1項に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの非水電解質二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、現実的な全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
ここで、現在一般に普及しているリチウムイオン二次電池は、電解質に可燃性の有機電解液を用いている。このような液系リチウムイオン二次電池では、液漏れ、短絡、過充電などに対する安全対策が他の電池よりも厳しく求められる。
【0005】
そこで近年、電解質に酸化物系や硫化物系の固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池等の全固体電池に関する研究開発が盛んに行われている。固体電解質は、固体中でイオン伝導が可能なイオン伝導体を主体として構成される材料である。このため、全固体リチウムイオン二次電池においては、従来の液系リチウムイオン二次電池のように可燃性の有機電解液に起因する各種問題が原理的に発生しない。また一般に、高電位・大容量の正極材料、大容量の負極材料を用いると電池の出力密度およびエネルギー密度の大幅な向上が図れる。正極活物質として硫黄単体(S)や硫化物系材料を用いた全固体リチウムイオン二次電池は、その有望な候補である。
【0006】
ここで、全固体電池を構成する固体電解質層は、液系電池を構成するセパレータとは異なり、塗布法や蒸着法といった手法によって正負極のいずれかの活物質層の表面に形成されることがある。このような手法により形成された固体電解質層は薄膜化が可能である。その結果、固体電解質層におけるオーミック抵抗が低減でき、かつ、セル容積も低減できることから、全固体電池の高出力化および高容量化に有利である。
【0007】
一方、上述したような固体電解質層の形成手法によると、固体電解質層は自立膜として存在することができず、固体電解質層を形成する際の下地層となる正負極のいずれかの活物質層によって支持される必要がある。そのため、全固体電池を平面視した際に、固体電解質層の外周端は、下地層となる活物質層の外周端と一致することになる。
【0008】
ここで、特許文献1には、比較的厚さの小さい固体電解質層が正極活物質層と負極活物質層との間に介在し、平面視した際にこれらの外周がすべて一致するリチウム固体二次電池において、充電時の固体電解質層の外周部でのデンドライト発生に起因する短絡の発生を抑制する技術が開示されている。具体的に、特許文献1では、平面視した際に負極集電体の外周が固体電解質層の外周よりも所定の距離以上内側に位置するように配置することで、充電時における短絡の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-12495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されているリチウム固体二次電池においては、固体電解質層の外周部においても充電時にデンドライトが発生し、短絡が発生する虞がある。したがって、本発明者らは、平面視した際に負極活物質層の外周が正極活物質層(および固体電解質層)の外周よりも内側に位置する構成とすることで、上述したようなデンドライトの発生および短絡の発生を防止することを試みた。しかしながら、このような構成としてもなお、発電要素の外周部におけるデンドライトの発生に起因して短絡が生じる場合があった。
【0011】
そこで本発明は、固体電解質層の外周端が正極活物質層の外周端と一致し、負極活物質層の外周端が固体電解質層の外周端より内側に位置するような構成を有する全固体電池において、発電要素の外周部におけるデンドライトの発生およびこれに起因する短絡の発生を防止しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、全固体電池の積層方向から平面視した際に負極活物質層の外周端が負極集電体の外周端より内側に位置するように構成するとともに、負極集電体の外周端および固体電解質層の外周端のうちより内側に位置する外周端と平面視において重複するように、負極集電体および/または固体電解質層の負極活物質層側の表面に、SOC0%のときに負極活物質層の厚さ以下の厚さを有する絶縁性イオン透過抑制層を配置することで上記の課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の一形態によれば、正極集電体の表面に正極活物質を含有する正極活物質層が配置された正極と、負極集電体の表面に負極活物質を含有する負極活物質層が配置された負極と、前記正極活物質層および前記負極活物質層との間に介在する固体電解質層とを有する発電要素を備える全固体電池が提供される。そして、当該全固体電池は、平面視した際に、前記固体電解質層の外周端が前記正極活物質層の外周端と一致し、前記負極活物質層の外周端の少なくとも一部が前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端より内側に位置するという特徴を備えている。また、当該全固体電池においては、前記の関係を満たす部位に、前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端のうち、より内側に位置する外周端と平面視において重複するように、前記負極集電体および/または前記固体電解質層の前記負極活物質層側の表面に、SOC0%のときに負極活物質層の厚さ以下の厚さを有する絶縁性イオン透過抑制層が配置されている点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固体電解質層の外周端が正極活物質層の外周端と一致し、負極活物質層の外周端が固体電解質層の外周端より内側に位置するような構成を有する全固体電池において、固体電解質層の外周部と負極集電体の外周部との接触が防止される。このため、発電要素の外周部におけるデンドライトの発生が防止される。その結果、デンドライトの発生に起因する短絡の発生もまた、防止されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る全固体電池の一実施形態である扁平積層型電池の外観を表した斜視図である。
図2図2は、図1に示す2-2線に沿う断面図である。
図3図3は、図1および図2に示す積層型電池の発電要素を構成する単電池層の平面図であり、単電池層の構成要素を積層方向から平面視した場合の配置形態を示している。
図4図4は、図3に示す4-4線に沿う断面図である。
図5図5は、図4に示す実施形態に係る全固体電池の変形例を示す断面図である。
図6図6は、図4に示す実施形態に係る全固体電池の変形例を示す断面図である。
図7図7は、図4に示す実施形態に係る全固体電池の変形例を示す断面図である。
図8図8は、図3に示す実施形態に係る全固体電池の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態は、正極集電体の表面に正極活物質を含有する正極活物質層が配置された正極と、負極集電体の表面に負極活物質を含有する負極活物質層が配置された負極と、前記正極活物質層および前記負極活物質層との間に介在する固体電解質層とを有する発電要素を備え、平面視した際に、前記固体電解質層の外周端が前記正極活物質層の外周端と一致し、前記負極活物質層の外周端の少なくとも一部が前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端より内側に位置し、かつ、前記の関係を満たす部位に、前記負極集電体の外周端および前記固体電解質層の外周端のうち、より内側に位置する外周端と平面視において重複するように、前記負極集電体および/または前記固体電解質層の前記負極活物質層側の表面に、SOC0%のときに前記負極活物質層の厚さ以下の厚さを有する絶縁性イオン透過抑制層が配置される、全固体電池である。
【0017】
以下、図面を参照しながら、上述した本形態の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
図1は、本発明に係る全固体電池の一実施形態である扁平積層型電池の外観を表した斜視図である。図2は、図1に示す2-2線に沿う断面図である。積層型とすることで、電池をコンパクトにかつ高容量化することができる。なお、本明細書においては、図1および図2に示す扁平積層型の双極型でないリチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」とも称する)を例に挙げて詳細に説明する。ただし、本形態に係る全固体電池の内部における電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用しうるものである。
【0019】
図1に示すように、積層型電池10は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極集電板25、負極集電板27が引き出されている。発電要素21は、積層型電池10の電池外装材(ラミネートフィルム29)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は、正極集電板25および負極集電板27を外部に引き出した状態で密封されている。
【0020】
なお、本形態に係る全固体電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型の全固体電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材にラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムを含むラミネートフィルムの内部に収容される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0021】
また、図1に示す集電板(25、27)の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極集電板25と負極集電板27とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極集電板25と負極集電板27をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図1に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0022】
図2に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する扁平略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、固体電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、正極集電体11の両面に正極活物質を含有する正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、負極集電体12の両面に負極活物質を含有する負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、固体電解質層17を介して対向するようにして、正極、固体電解質層および負極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、固体電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
【0023】
図2に示すように、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。
【0024】
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)25および負極集電板(タブ)27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材であるラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体13に超音波溶接や抵抗溶接などにより取り付けられていてもよい。
【0025】
図3は、図1および図2に示す積層型電池10の発電要素21を構成する単電池層19の平面図であり、単電池層19の構成要素を積層方向から平面視した場合の配置形態を示している。図3では、紙面に垂直な方向に沿って紙面の手前から紙面の裏側に向かって、単電池層19を構成する正極集電体11、正極活物質層13、固体電解質層17、負極活物質層15、負極集電体12がこの順に積層されている。図4は、図3に示す4-4線に沿う断面図である。
【0026】
図2図4に示すように、固体電解質層17の外周は、平面視した際に、正極活物質層13の外周と一致するように配置されている。このような構成は、固体電解質層17を塗布法や蒸着法といった手法によって正極活物質層13の表面に形成すると得られる。正極集電体11(紙面に垂直な方向に沿って紙面の最も手前に位置する)の外周もまた、その一部が外側へ向かって延在されて正極集電板25と電気的に接続される正極集電部11aを除き、平面視した際に、固体電解質層17(および正極活物質層13)の外周と一致するように配置されている。
【0027】
一方、負極集電体12の外周は、その一部が外側へ向かって延在されて負極集電板27と電気的に接続される負極集電部12aを除き、平面視した際に、固体電解質層17(並びに正極活物質層13および正極集電体11)の外周の内側に位置している。言い換えれば、負極集電体12の外周すべてにわたって、負極集電体12の外周端は固体電解質層17の外周端より内側に位置している。
【0028】
また、負極活物質層15の外周は、平面視した際に、負極集電体12の外周の内側に位置している。これにより、負極活物質層15の外周は、平面視した際に、固体電解質層17の外周よりも内側に位置することとなっている。言い換えれば、負極活物質層15の外周すべてにわたって、負極活物質層15の外周端が負極集電体12の外周端および固体電解質層17の外周端より内側に位置している。
【0029】
そして、負極活物質層15の外周すべてにわたって当該負極活物質層15を取り囲むように、ポリウレタン樹脂シート23が負極集電体12の負極活物質層15側の表面に配置されている(図3に示す網掛け部)。このポリウレタン樹脂シート23は、積層型電池10がSOC0%のときに負極活物質層15の厚さ以下の厚さを有している。なお、「SOC(State of Charge);充電状態」とは、満充電状態における容量と現在時点における容量との比をいう。したがって、「SOC0%のとき」とは、現在時点における容量が0(ゼロ)である時点をいう。
【0030】
本実施形態において、ポリウレタン樹脂シート23の内周端は、負極活物質層15の外周すべてにわたって負極活物質層15の外周端と接するように配置されている。なお、ポリウレタン樹脂シート23は、負極集電部12aに対応しない位置においては、平面視した際に前記負極集電体12の外周端が前記固体電解質層17の外周端より内側に位置している。そして、ポリウレタン樹脂シート23は、負極集電体12の外周端および固体電解質層17の外周端のうち、より内側に位置する外周端と平面視において重複するように配置されている。ここで、「負極集電体12の外周端および固体電解質層17の外周端のうち、より内側に位置する方と平面視において重複する」の概念には、負極集電体12の外周端と固体電解質層17の外周端とが一致する場合も含めるものとする。この点に関し、本実施形態においては、図3および図4に示すように、負極集電部12aに対応する位置では固体電解質層17の外周端が負極集電体12の外周端より内側に位置している。このため、負極集電部12aに対応する位置では、ポリウレタン樹脂シート23は固体電解質層17の外周端(図4の右端部において一点鎖線で示されている)と平面視において重複するように配置されている。これに対し、本実施形態において、負極集電部12aに対応しない位置では負極集電体12の外周端が固体電解質層17の外周端より内側に位置している。このため、負極集電部12aに対応しない位置では、ポリウレタン樹脂シート23は負極集電体12の外周端(図4の左端部において一点鎖線で示されている)と平面視において重複するように配置されている。
【0031】
ポリウレタン樹脂シート23は「絶縁性イオン透過抑制層」として機能する。すなわち、絶縁性であることにより電子の透過を防止する。また、イオンの透過も防止する。本実施形態では、このような性質を有する絶縁性イオン透過抑制層としてのポリウレタン樹脂シート23が、負極集電体12外周端および/または固体電解質層17の外周端と平面視において重複するように配置されている。その結果、負極集電体12の外周と固体電解質層17の外周との接触が防止され、また、これらの間でのデンドライトの発生や成長も防止される。その結果、発電要素21の外周部における短絡の発生の防止に寄与しうる。
【0032】
以下、本形態に係る全固体電池の主要な構成部材について説明する。
【0033】
[集電体]
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0034】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0035】
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0036】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0037】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
【0038】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
【0039】
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5~80質量%である。
【0040】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0041】
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb、LiTi12等が挙げられる。さらに、ケイ素系負極活物質やスズ系負極活物質が用いられてもよい。ここで、ケイ素およびスズは第14族元素に属し、非水電解質二次電池の容量を大きく向上させうる負極活物質であることが知られている。これらの単体は単位体積(質量)あたり多数の電荷担体(リチウムイオン等)を吸蔵および放出しうることから、高容量の負極活物質となる。ここで、ケイ素系負極活物質としては、Si単体を用いることが好ましい。また同様に、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素酸化物を用いることも好ましい。この際、xの範囲は0.5≦x≦1.5であることがより好ましく、0.7≦x≦1.2であることがさらに好ましい。さらには、ケイ素を含有する合金(ケイ素含有合金系負極活物質)が用いられてもよい。一方、スズ元素を含む負極活物質(スズ系負極活物質)としては、Sn単体、スズ合金(Cu-Sn合金、Co-Sn合金)、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物等が挙げられる。このうち、アモルファススズ酸化物としてはSnB0.40.63.1が例示される。また、スズケイ素酸化物としてはSnSiOが例示される。また、負極活物質として、リチウムを含有する金属を用いてもよい。このような負極活物質は、リチウムを含有する活物質であれば特に限定されず、金属リチウムのほか、リチウム含有合金が挙げられる。リチウム含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。本発明は、充放電時の負極活物質の膨張収縮が大きい場合に特に優れた効果を奏するものである。このような観点と、高容量であるという点で、負極活物質は、金属リチウム、ケイ素系負極活物質またはスズ系負極活物質を含むことが好ましく、金属リチウムを含むことが特に好ましい。
【0042】
負極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0043】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0044】
負極活物質層は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。負極活物質層が固体電解質を含むことにより、負極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、硫化物固体電解質であることが好ましい。
【0045】
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiS-P、LiI-LiPS、LiI-LiBr-LiPS4、LiPS4、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである)等が挙げられる。なお、「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
【0046】
硫化物固体電解質は、例えば、LiPS骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよい。LiPS骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-LiPS、LiI-LiBr-LiPS4、LiPSが挙げられる。また、Li骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質(例えば、Li11)が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。なかでも、硫化物固体電解質は、P元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましく、硫化物固体電解質は、LiS-Pを主成分とする材料であることがより好ましい。さらに、硫化物固体電解質は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)を含有していてもよい。
【0047】
また、硫化物固体電解質がLiS-P系である場合、LiSおよびPの割合は、モル比で、LiS:P=50:50~100:0の範囲内であることが好ましく、なかでもLiS:P=70:30~80:20であることが好ましい。
【0048】
また、硫化物固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラスであってもよく、固相法により得られる結晶質材料であってもよい。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質の常温(25℃)におけるイオン伝導度(例えば、Liイオン伝導度)は、例えば、1×10-5S/cm以上であることが好ましく、1×10-4S/cm以上であることがより好ましい。なお、固体電解質のイオン伝導度の値は、交流インピーダンス法により測定することができる。
【0049】
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等が挙げられる。NASICON型構造を有する化合物の一例としては、一般式Li1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等が挙げられる。また、酸化物固体電解質の他の例としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.30.46)、LiLaZrO(例えば、LiLaZr12)等が挙げられる。
【0050】
固体電解質の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状、薄膜形状等が挙げられる。固体電解質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、特に限定されないが、40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。一方、平均粒径(D50)は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
【0051】
負極活物質層における固体電解質の含有量は、例えば、1~60質量%の範囲内であることが好ましく、10~50質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
負極活物質層は、上述した負極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
【0053】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0054】
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。
【0055】
導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましい。なお、本明細書中において、「導電助剤の粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「導電助剤の平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0056】
負極活物質層が導電助剤を含む場合、当該負極活物質層における導電助剤の含有量は特に制限されないが、負極活物質層の合計質量に対して、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは2~8質量%であり、さらに好ましくは4~7質量%である。このような範囲であれば、負極活物質層においてより強固な電子伝導パスを形成することが可能となり、電池特性の向上に有効に寄与することが可能である。
【0057】
一方、バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
【0058】
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
【0059】
負極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
[絶縁性イオン透過抑制層]
絶縁性イオン透過抑制層は、上述したように、負極集電体および/または固体電解質層の負極活物質層側の表面に配置される。そして、絶縁性イオン透過抑制層は、絶縁性であることにより電子の透過を防止し、かつ、イオンの透過も防止する。
【0061】
このような性質を示す絶縁性イオン透過抑制層の構成材料は特に制限されず、電子およびイオンの透過を防止できる任意の材料が採用されうる。電子およびイオンの透過を確実に遮断して本発明の作用効果を十分に得るという観点や、軽量かつ安価であるという観点から、絶縁性イオン透過抑制層の構成材料としては、樹脂材料またはゴム材料が用いられることが好ましい。樹脂材料の例として、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等が例示される。また、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が挙げられる。なお、これらの樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の樹脂前駆体が用いられてもよい。また、ゴム材料の例としては、ラテックスゴム、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0062】
ここで、負極活物質層の厚さは充放電の進行に伴って変動する可能性がある。具体的には、負極活物質層の厚さは充電の進行に伴って増大する一方で、放電の進行に伴って減少することが多い。したがって、電池のSOCが0%(最も放電されて負極活物質層の厚さが最小の状態)のときに絶縁性イオン透過抑制層の厚さが負極活物質層の厚さよりも大きいと、負極活物質層と固体電解質層との界面において剥離が発生して電池性能が低下する虞がある。したがって、絶縁性イオン透過抑制層は、電池のSOCが0%のときに負極活物質層の厚さ以下の厚さを有することが必要である。なお、絶縁性イオン透過抑制層の具体的な厚さについて特に制限はなく、負極活物質層の厚さに応じて適宜決定されうる。また、絶縁性イオン透過抑制層が負極集電体の表面および固体電解質層の表面の双方に設けられてもよいが、この場合の「絶縁性イオン透過抑制層の厚さ」は、双方の絶縁性イオン透過抑制層の厚さの合計値をいうものとする。
【0063】
また、絶縁性イオン透過抑制層の構成材料は、弾性を有する材料であることが好ましい。このような構成とすることで、負極集電体または固体電解質層の表面に配置される絶縁性イオン透過抑制層の厚さが、SOC0%のときの負極活物質層15の厚さよりも大きい場合であっても、絶縁性イオン透過抑制層が弾性変形することによってその厚さを負極活物質層の厚さと等しい値まで減少させることが可能となる。このような場合についても、「絶縁性イオン透過抑制層がSOCが0%のときに負極活物質層の厚さ以下の厚さを有する」の定義を満たすものとする。また、絶縁性イオン透過抑制層を極めて薄く配置することが困難であるような場合においても、弾性を有する材料から構成することによって、絶縁性イオン透過抑制層を確実に配置することができる。なお、本明細書において、ある材料が「弾性を有する」とは、当該材料のヤング率の値が0.001~70[GPa]の範囲内の値である材料から構成されていることを意味する。ここで、ヤング率の値は、樹脂についてはJIS K7161-1(2014年)により測定されうる。また、ゴムのヤング率についてはJIS Z6251(2010年)により測定されうる。上記で列挙した樹脂材料やゴム材料の多くは、弾性を有する材料である。
【0064】
負極集電体または固体電解質層の表面への絶縁性イオン透過抑制層の配置は、単にこれらの構成材料を密着させることによって行ってもよいし、粘着層や接着剤層を介して貼り付けることによって行ってもよい。
【0065】
[正極活物質層]
正極活物質層は、硫黄を含む正極活物質を含むことが好ましい。硫黄を含む正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S)のほか、有機硫黄化合物または無機硫黄化合物の粒子または薄膜が挙げられ、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる物質であればよい。有機硫黄化合物としては、ジスルフィド化合物、国際公開第2010/044437号パンフレットに記載の化合物に代表される硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等が挙げられる。なかでも、ジスルフィド化合物および硫黄変性ポリアクリロニトリル、およびルベアン酸が好ましく、特に好ましくは硫黄変性ポリアクリロニトリルである。ジスルフィド化合物としては、ジチオビウレア誘導体、チオウレア基、チオイソシアネート、またはチオアミド基を有するものがより好ましい。ここで、硫黄変性ポリアクリロニトリルとは、硫黄粉末とポリアクリロニトリルとを混合し、不活性ガス下もしくは減圧下で加熱することによって得られる、硫黄原子を含む変性されたポリアクリロニトリルである。その推定構造は、例えばChem. Mater. 2011,23,5024-5028に示されているように、ポリアクリロニトリルが閉環して多環状になるとともに、Sの少なくとも一部はCと結合している構造である。この文献に記載されている化合物はラマンスペクトルにおいて、1330cm-1と1560cm-1付近に強いピークシグナルがあり、さらに、307cm-1、379cm-1、472cm-1、929cm-1付近にピークが存在する。一方、無機硫黄化合物は安定性に優れることから好ましく、具体的には、硫黄単体(S)、S-カーボンコンポジット、TiS、TiS、TiS、NiS、NiS、CuS、FeS、LiS、MoS、MoS等が挙げられる。なかでも、S、S-カーボンコンポジット、TiS、TiS、TiS、FeSおよびMoSが好ましく、硫黄単体(S)、S-カーボンコンポジット、TiSおよびFeSがより好ましく、硫黄単体(S)が特に好ましい。ここで、S-カーボンコンポジットとは、硫黄粉末と炭素材料とを含み、これらを加熱処理または機械的混合に供することによって複合化した状態のものである。より詳細には、炭素材料の表面や細孔内に硫黄が分布している状態、硫黄と炭素材料がナノレベルで均一に分散し、それらが凝集して粒子となっている状態、細かな硫黄粉末の表面や内部に炭素材料が分布している状態、または、これらの状態が複数組み合わさった状態のものである。
【0066】
正極活物質層は、硫黄を含む正極活物質に代えて、硫黄を含まない正極活物質を含んでもよい。硫黄を含まない正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li(Ni-Mn-Co)O等の層状岩塩型活物質、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、LiTi12が挙げられる。
【0067】
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0068】
正極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0069】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40~99質量%の範囲内であることが好ましく、50~90質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0070】
正極活物質層もまた、負極活物質層と同様に導電助剤および/またはバインダをさらに含んでもよい。
【0071】
[固体電解質層]
本形態に係る全固体電池の固体電解質層は、固体電解質を主成分として含有し、上述した正極活物質層と負極活物質層との間に介在する層である。固体電解質層に含有される固体電解質の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0072】
固体電解質層における固体電解質の含有量は、例えば、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0073】
固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。固体電解質層に含有されうるバインダの具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0074】
固体電解質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1~300μmの範囲内であることがより好ましい。また、本発明の作用効果は固体電解質層の厚さが小さいほど顕著に発現しうる。このため、固体電解質層の厚さは、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.1~50μmである。
【0075】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0076】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体(11、12)と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0077】
[電池外装材]
電池外装材としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1および図2に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
【0078】
本形態に係る積層型電池は、複数の単電池層が並列に接続された構成を有することにより、高容量でサイクル耐久性に優れるものである。したがって、本形態に係る積層型電池は、EV、HEVの駆動用電源として好適に使用される。
【0079】
以上、全固体電池の一実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0080】
例えば、図4に示す実施形態においては、絶縁性イオン透過抑制層としてのポリウレタン樹脂シート23が、平坦なシートの形態で負極集電体12の外周部に設けられている。ただし、図5に示すように、絶縁性イオン透過抑制層(ポリウレタン樹脂シート23)は負極集電体12の外周端を覆うように回り込んで配置されてもよい。このような構成とすることで、負極集電体12の外周部におけるデンドライトの発生およびこれに起因する短絡の発生をより確実に防止することができる。
【0081】
また、絶縁性イオン透過抑制層としてのポリウレタン樹脂シート23は、負極集電体12の外周端および固体電解質層17の外周端のうち、より内側に位置する方と平面視において重複するように配置される限り、図6に示すように固体電解質層17の表面に配置されてもよい。このような構成とすることによっても、図4に示す配置形態と同様に本発明の作用効果を発現することができる。ただし、本発明の作用効果をより確実に発現させるという観点からは、図4に示すように負極集電体12の表面に絶縁性イオン透過抑制層を配置することが好ましい。
【0082】
さらに、図4に示す実施形態においては、絶縁性イオン透過抑制層としてのポリウレタン樹脂シート23が負極活物質層15の外周端と接するように配置されている。このような構成によれば、絶縁性イオン透過抑制層(ポリウレタン樹脂シート23)と負極活物質層15の外周端との間の空間を通じて負極集電体12と固体電解質層17とが接触する虞が確実に低減され、本発明の作用効果をより確実に発現させることができる。ただし、図7に示すように、絶縁性イオン透過抑制層と負極活物質層15の外周端との間が離隔するように絶縁性イオン透過抑制層を配置したとしても、負極集電体12と固体電解質層17との接触は防止できることから、同様にして本発明の作用効果を発現させることは可能である。
【0083】
また、図4に示す実施形態においては、負極活物質層15の外周すべてにわたって絶縁性イオン透過抑制層としてのポリウレタン樹脂シート23が配置されている。このような構成によれば、本発明の作用効果をより確実に発現させることが可能である。ただし、このような構成には限定されない。例えば、図8に示すように、電流密度がより大きくなりデンドライト発生や短絡発生のリスクも大きい負極集電部12aに対応する位置のみに絶縁性イオン透過抑制層が配置されてもよい。このような構成とすることにより、より効果の高い箇所のみに絶縁性イオン透過抑制層を優先的に配置することができ、製造工程を簡素化できるために製造コストや時間を削減することが可能であり、また、外周のすべてにわたって正確に絶縁性イオン透過抑制層を配置する必要がないことから、製造歩留りも向上させることができる。なお、このように負極活物質層15の外周すべてにわたって絶縁性イオン透過抑制層が配置されるわけではない場合、絶縁性イオン透過抑制層が配置される部位では、負極活物質層の外周端が負極集電体の外周端および固体電解質層の外周端より内側に位置していることが必要である。
【0084】
図4に示す実施形態において、絶縁性イオン透過抑制層としてのポリウレタン樹脂シート23は、負極集電部12aに対応しない位置においては、平面視した際に負極集電体12の外周端が固体電解質層17の外周端より内側に位置している。このような構成によれば、本発明の作用効果をより確実に発現させることが可能である。ただし、このような構成には限定されない。例えば、負極集電部12aに対応しない位置において、平面視した際に負極集電体12の外周端が固体電解質層17の外周端と一致していたり、これよりも外側に位置していたりしてもよい。
【0085】
さらには、図2図8に示す実施形態において、負極活物質層の外周すべてにわたって、負極活物質層の外周端が負極集電体の外周端および固体電解質層の外周端より内側に位置している。このような構成とすることで、デンドライトが固体電解質層を貫通したり固体電解質層の外周を通じて正極活物質層の外周に到達したりすることに起因する短絡の発生をより効果的に防止することが可能である。ただし、本発明においてはこのような構成のみには限定されず、負極活物質層の外周端が負極集電体の外周端および固体電解質層の外周端より内側に位置する部位が少なくとも一部に存在していればよい。そして、負極活物質層の外周端が負極集電体の外周端および固体電解質層の外周端より内側に位置する部位の少なくとも一部に、絶縁性イオン透過抑制層が配置されていればよいのである。
【0086】
また、図2に示す実施形態では、複数存在する負極活物質層のすべての外周部に絶縁性イオン透過抑制層が配置されている。ただし、負極活物質層が複数含まれる電池においては、少なくとも1つの負極活物質層の外周部に絶縁性イオン透過抑制層が配置されていれば本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0088】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0089】
[車両]
本発明に係る全固体電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0090】
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 積層型電池、
11 正極集電体、
11a 正極集電部、
12 負極集電体、
12a 負極集電部、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
23 ポリウレタン樹脂シート、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 ラミネートフィルム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8