(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】制御装置および変速システム
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20230509BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20230509BHJP
B62J 45/40 20200101ALI20230509BHJP
B62M 25/08 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B62M6/45
B62J45/00
B62J45/40
B62M25/08
(21)【出願番号】P 2019092410
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 充彦
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-137786(JP,A)
【文献】特開2015-209159(JP,A)
【文献】特開平10-194185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167738(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62J 45/00
B62J 45/40
B62M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記変速比は複数の変速比を含み、
前記複数の変速比は、第2変速比および最小変速比を含み、
前記制御部は、
前記第2制御モードにおいて、前記変速比が
前記第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
前記第1制御モードにおいて、前記最小変速比を含む前記複数の変速比から選択される変速比になるように前記変速装置を制御する、制御装置。
【請求項2】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記制御部は、
前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
前記人力駆動車に関する人力駆動車情報に応じて前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替え、
前記人力駆動車情報は、前記人力駆動車の走行に関する第2走行情報を含み、
前記第2走行情報は、ケイデンス、パワー、および、前記変速比の少なくとも1つを含む、制御装置。
【請求項3】
前記第2走行情報は、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、前記人力駆動車の車速、および、前記人力駆動車の加速度の少なくとも1つをさらに含む、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記制御部は、
前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
ケイデンスが第1ケイデンス以上の場合、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える、制御装置。
【請求項5】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記制御部は、
前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
前記人力駆動車のクランクに作用するトルクが第1トルク以下、かつ、前記人力駆動車の車速が第1車速以上である状態が第1所定時間以上継続した場合、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える、制御装置。
【請求項6】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記制御部は、
前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
前記人力駆動車のクランクに作用するトルクが第2トルク以下、前記人力駆動車の車速が第2車速以上、かつ、ケイデンスが第2ケイデンス以上である状態が第2所定時間以上継続した場合、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える、制御装置。
【請求項7】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記制御部は、
前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
前記変速比が第1変速比以下であり、かつ、前記人力駆動車のクランクに作用するトルクが第3トルク以上である場合、前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替える、制御装置。
【請求項8】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記制御部は、
前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
路面の傾斜角度が第1所定角度以上である場合、前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替える、制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記人力駆動車に関する人力駆動車情報に応じて前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、
前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、
前記制御部は、前記変速比が第1変速比以下の場合に前記人力駆動車に関する人力駆動車情報に応じて前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替え、
前記制御部は、前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御
し、
前記第1変速比は、前記第2変速比よりも小さい、制御装置。
【請求項11】
前記人力駆動車情報は、前記人力駆動車の走行に関する第2走行情報を含み、
前記第2走行情報は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の加速度、および、前記人力駆動車の変速比の少なくとも1つを含む、
請求項9または10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記人力駆動車情報は、前記人力駆動車の走行環境に関する走行環境情報を含み、前記走行環境情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む、
請求項9から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記路面情報は、前記人力駆動車が走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む、
請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記人力駆動車情報は、前記人力駆動車に搭乗する搭乗者に関する搭乗者情報を含み、前記搭乗者情報は、前記搭乗者の心拍数、筋電位、発汗量、および、体温の少なくとも1つを含む、
請求項9から13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記第1制御モードにおいて、前記変速比が前記第2変速比よりも大きくなることを許容する、
請求項1から14のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、第1参照値に基づいて規定される変速条件に応じて
前記変速装置を制御する、
請求項1から15のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項17】
前記第1参照値は、前記人力駆動車の走行に関する第1走行情報を含み、
前記第1走行情報は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、前記人力駆動車の車速、および、前記人力駆動車の加速度の少なくとも1つを含む、
請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記人力駆動車は、外部からの入力を受け付ける操作装置を含み、
前記制御部は、前記操作装置からの操作信号に応じて、前記第1制御モード、および、前記第2制御モードの一方から他方に前記制御モードを切り替える、
請求項1から17のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項19】
前記操作装置は、前記変速装置を操作するための変速操作装置であり、
前記制御部は、前記変速比が前記第2変速比である場合に、前記変速操作装置においてシフトアップ変速操作が行われることによって、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える、
請求項18に記載の制御装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記変速装置と、を備える変速システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人力駆動車の変速装置を制御する制御装置を備えた変速システムが知られている。制御装置は、人力駆動車のクランクの回転数、および、閾値に基づいて規定される変速条件に基づいて、変速装置を制御する。特許文献1は、従来の変速システムの一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人力駆動車に搭乗する搭乗者が快適に走行できることが望まれる。
本発明の目的は、人力駆動車の快適な走行に貢献できる制御装置および変速システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、人力駆動力を補助する電動補助ユニットを有する人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、前記制御部は、前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御する。
上記第1側面の制御装置によれば、第2制御モードにおいて、変速比が第2変速比よりも大きくなることが抑制されるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に関する人力駆動車情報に応じて前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替える。
上記第2側面の制御装置によれば、人力駆動車に関する人力駆動車情報に応じて、制御モードを切り替えるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0007】
本発明の第3側面に従う制御装置は、人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御モードに応じて制御する制御部を備え、前記制御モードは、第1制御モードと、前記第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含み、前記制御部は、前記変速比が第1変速比以下の場合に前記人力駆動車に関する人力駆動車情報に応じて前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替え、前記制御部は、前記第2制御モードにおいて、前記変速比が第2変速比以下になるように前記変速装置を制御する。
【0008】
上記第3側面の制御装置によれば、第2制御モードにおいて、変速比が第2変速比よりも大きくなることが抑制されるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0009】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1制御モードにおいて、前記変速比が前記第2変速比よりも大きくなることを許容する。
上記第4側面の制御装置によれば、第1制御モードにおいて、第2変速比よりも大きくなることが抑制されないため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0010】
前記第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、第1参照値に基づいて規定される変速条件に応じて変速装置を制御する。
上記第5側面の制御装置によれば、変速条件に応じて変速装置を制御するため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0011】
前記第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記第1参照値は、前記人力駆動車の走行に関する第1走行情報を含み、前記第1走行情報は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、前記人力駆動車の車速、および、前記人力駆動車の加速度の少なくとも1つを含む。
上記第6側面の制御装置によれば、第1走行情報に基づく制御により人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0012】
前記第2から第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記人力駆動車情報は、前記人力駆動車の走行に関する第2走行情報を含み、前記第2走行情報は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の加速度、および、前記人力駆動車の変速比の少なくとも1つを含む。
上記第7側面の制御装置によれば、第2走行情報に基づく制御により人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0013】
前記第7側面に従う第8側面の制御装置において、前記第2走行情報は、前記ケイデンスを含み、前記制御部は、前記ケイデンスが第1ケイデンス以上の場合、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える。
上記第8側面の制御装置によれば、制御モードが好適に切り替えられるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0014】
前記第7側面に従う第9側面の制御装置において、前記第2走行情報は、前記トルク、および、前記車速を含み、前記制御部は、前記トルクが第1トルク以下、かつ、前記車速が第1車速以上である状態が第1所定時間以上継続した場合、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える。
上記第9側面の制御装置によれば、制御モードが好適に切り替えられるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0015】
前記第7側面に従う第10側面の制御装置において、前記第2走行情報は、前記トルク、前記車速、および、前記ケイデンスを含み、前記制御部は、前記トルクが第2トルク以下、前記車速が第2車速以上、かつ、前記ケイデンスが第2ケイデンス以上である状態が第2所定時間以上継続した場合、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える。
上記第10側面の制御装置によれば、制御モードが好適に切り替えられるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0016】
前記第7から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記第2走行情報は、前記トルク、および、前記変速比を含み、前記制御部は、前記変速比が第1変速比以下であり、かつ、前記トルクが第3トルク以上である場合、前記第1制御モードから前記第2制御モードに前記制御モードを切り替える。
上記第11側面の制御装置によれば、制御モードが好適に切り替えられるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0017】
前記第2から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記人力駆動車情報は、前記人力駆動車の走行環境に関する走行環境情報を含み、前記走行環境情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む。
上記第12側面の制御装置によれば、適切な人力駆動車情報により制御することで人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0018】
前記第12側面に従う第13側面の制御装置において、前記路面情報は、前記人力駆動車が走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む。
上記第13側面の制御装置によれば、適切な人力駆動車情報により制御することで人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0019】
前記第13側面に従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記路面の傾斜角度が第1所定角度以上である場合、前記第1制御モードから第2制御モードに前記制御モードを切り替える。
上記第14側面の制御装置によれば、制御モードが好適に切り替えられるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0020】
前記第2から第14側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記人力駆動車情報は、前記人力駆動車に搭乗する搭乗者に関する搭乗者情報を含み、前記搭乗者情報は、前記搭乗者の心拍数、筋電位、発汗量、および、体温の少なくとも1つを含む。
上記第15側面の制御装置によれば、適切な人力駆動車情報により制御することで人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0021】
前記第1から第15側面のいずれか1つに従う第16側面の制御装置において、前記人力駆動車は、外部からの入力を受け付ける操作装置を含み、前記制御部は、前記操作装置からの操作信号に応じて、前記第1制御モード、および、前記第2制御モードの一方から他方に前記制御モードを切り替える。
上記第16側面の制御装置によれば、制御モードが好適に切り替えられるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0022】
前記第16側面に従う第17側面の制御装置において、前記操作装置は、前記変速装置の操作するための変速操作装置であり、前記制御部は、前記変速比が前記第2変速比である場合に、前記変速操作装置においてシフトアップ変速操作が行われることによって、前記第2制御モードから前記第1制御モードに前記制御モードを切り替える。
上記第17側面の制御装置によれば、制御モードが好適に切り替えられるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0023】
本発明の第18側面に従う変速システムは、前記第1から第17側面のいずれか1つの制御装置と、前記変速装置と、を備える。
上記第18側面の変速システムによれば、第1モードおよび第1モードとは異なる第2モードに基づいて変速装置が制御されるので、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の制御装置および変速システムによれば、人力駆動車の快適な走行に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の変速システムを含む人力駆動車の側面図。
【
図2】第1実施形態の制御装置と各種の要素との電気的な接続関係を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態の制御装置が実行する変速装置の制御に用いられる変速条件の一例を示すマップ。
【
図4】第1実施形態の変速システムの制御装置が実行する第1モード切替制御の一例を示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態の変速システムの制御装置が実行する第2モード切替制御の一例を示すフローチャート。
【
図6】第3実施形態の変速システムの制御装置が実行する第3モード切替制御の一例を示すフローチャート。
【
図7】第4実施形態の変速システムの制御装置が実行する第4モード切替制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1を参照して、変速システム10を含む人力駆動車Aについて説明する。
ここで、人力駆動車は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動で人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽車両が想定され、公道での運転に免許を要しない車両が想定される。図示される人力駆動車Aは、電気エネルギーを用いて人力駆動力を補助する電動補助ユニットEを有する。具体的には、図示される人力駆動車Aは、トレッキングバイクである。人力駆動車Aは、フレームA1、フロントフォークA2、車輪W、ハンドルH、および、ドライブトレインBをさらに含む。車輪Wは、前輪WFおよび後輪WRを含む。
【0027】
ドライブトレインBは、例えばチェーンドライブタイプである。ドライブトレインBは、クランクC、フロントスプロケットD1、リアスプロケットD2、および、チェーンD3を含む。クランクCは、フレームA1に回転可能に支持されるクランク軸C1、および、クランク軸C1の両端部のそれぞれに設けられる一対のクランクアームC2を含む。各クランクアームC2の先端には、ペダルPDが回転可能に取り付けられる。ドライブトレインBは、任意のタイプから選択でき、ベルトドライブタイプ、または、シャフトドライブタイプであってもよい。
【0028】
フロントスプロケットD1は、クランク軸C1と一体に回転するようにクランクCに設けられる。リアスプロケットD2は、後輪WRのハブHRに設けられる。チェーンD3は、フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2に巻き掛けられる。人力駆動車Aに搭乗する搭乗者によってペダルPDに加えられる人力駆動力は、フロントスプロケットD1、チェーンD3、および、リアスプロケットD2を介して後輪WRに伝達される。
【0029】
電動補助ユニットEは、人力駆動車Aの推進をアシストするように動作する。電動補助ユニットEは、例えばペダルPDに加えられる人力駆動力に応じて動作する。電動補助ユニットEは、モータE1を含む。電動補助ユニットEは、人力駆動車Aに搭載されるバッテリBTから供給される電力によって動作する。
【0030】
変速システム10は、制御装置12と、変速装置20とを備える。制御装置12は、例えば電動補助ユニットEのハウジングE2内に収容される。制御装置12は、バッテリBTから供給される電力によって動作する。
【0031】
変速装置20は、外装変速機を含む。一例では、変速装置20は、フロントディレーラ22およびリアディレーラ24の少なくとも1つを含む。フロントディレーラ22は、フロントスプロケットD1付近に設けられる。フロントディレーラ22の駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるフロントスプロケットD1が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。人力駆動車Aの変速比は、フロントスプロケットD1の歯数とリアスプロケットD2の歯数との関係に基づいて規定される。一例では、人力駆動車Aの変速比は、フロントスプロケットD1の回転速度に対するリアスプロケットD2の回転速度の割合で定義される。すなわち、人力駆動車Aの変速比は、リアスプロケットD2の歯数に対するフロントスプロケットD1の歯数の割合で定義される。リアディレーラ24は、フレームA1のリアエンドA3に設けられる。リアディレーラ24の駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるリアスプロケットD2が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2の構成は、任意に選択される。フロントスプロケットD1の枚数は、例えば1枚である。一例では、フロントスプロケットD1は、歯数が34TのフロントスプロケットD1を含む。この場合、フロントディレーラ22の構成を省略してもよい。リアスプロケットD2の枚数は、例えば11枚である。一例では、リアスプロケットD2は、歯数が46T、37T、32T、28T、24T、21T、19T、17T、15T、13T、および、11TのリアスプロケットD2を含む。別の例では、フロントスプロケットD1の枚数は、2枚である。フロントスプロケットD1は、歯数が34Tおよび24TのフロントスプロケットD1を含む。リアスプロケットD2の枚数は、例えば12枚である。リアスプロケットD2は、歯数が51T、45T、39T、33T、28T、24T、21T、18T、16T、14T、12T、および、10TのリアスプロケットD2を含む。変速装置20は、外装変速機に代えて内装変速機を含んでいてもよい。この場合、内装変速機は、例えば後輪WRのハブHRに設けられる。変速装置20は、外装変速機に代えて無段変速機を含んでいてもよい。この場合、無段変速機は、例えば後輪WRのハブHRに設けられる。変速装置20は、変速操作装置SLからの操作信号に応じて、人力駆動車Aの変速比を変更する。
【0032】
図2を参照して、変速システム10の具体的な構成について説明する。
制御装置12は、人力駆動車Aの変速比を変更する変速装置20を制御モードに応じて制御する制御部14を備える。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)である。制御部14は、人力駆動車Aの変速装置20を変速条件に応じて自動的に制御する。制御部14は、変速操作装置SLの操作に応じて変速装置20を制御することもできる。制御部14は、人力駆動車Aの変速装置20以外に、人力駆動車Aに搭載される各種のコンポーネントをさらに制御してもよい。制御装置12は、各種の情報を記憶する記憶部16をさらに備える。記憶部16は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。記憶部16は、例えば制御のための各種プログラム、および、予め設定される情報等を記憶する。
【0033】
記憶部16は、制御部14が実行する複数の制御モードを記憶する。制御モードは、第1制御モードと、第1制御モードとは異なる第2制御モードと、を含む。制御部14は、第1制御モードにおいて、変速比が第2変速比よりも大きくなることを許容する。制御部14は、第2制御モードにおいて、変速比が第2変速比以下になるように変速装置20を制御する。一例では、第2変速比は、2.5である。好ましくは、第2変速比は、2.0である。具体的には、変速装置20が、歯数が34Tの1枚のフロントスプロケットD1および11枚のリアスプロケットD2を含む場合、制御部14は、第2制御モードにおいて、15T、13T、および、11TのリアスプロケットD2にチェーンD3が巻き付くことを抑制するようにリアディレーラ24を制御する。変速装置20が、歯数が34Tの1枚のフロントスプロケットD1および12枚のリアスプロケットD2を含む場合、制御部14は、第2制御モードにおいて、16T、14T、12T、および、10TのリアスプロケットD2にチェーンD3が巻き付くことを抑制するようにリアディレーラ24を制御する。複数の制御モードにおいて、変速操作装置SLからの操作信号による人力駆動車Aの変速比の変更の可否は、任意に設定される。第1例では、複数の制御モードの少なくとも1つは、変速操作装置SLの操作に基づいて変速比が変更されるように設定される。第2例では、複数の制御モードにおいて、変速操作装置SLの操作に基づいて変速比が変更されないように設定される。
【0034】
人力駆動車Aは、外部からの入力を受け付ける操作装置ODを含む。操作装置ODは、変速操作装置SLを含む。変速装置20は、例えば変速操作装置SLの操作に応じて機械的または電気的に駆動されるように構成される。変速装置20が電気的に駆動される場合、変速装置20は、バッテリBTから供給される電力、または、変速装置20に搭載される専用の電源から供給される電力によって動作する。変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速比が変化するように変速装置20が動作する。一例では、変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速比が小さくなるように変速装置20が動作する。別の例では、変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速比が大きくなるように変速装置20が動作する。変速操作装置SLは、制御部14と有線または無線通信可能に構成される。以下、変速装置20が人力駆動車Aの変速比を大きくする変速をシフトアップ変速と称し、変速比を小さくする変速をシフトダウン変速と称する場合がある。
【0035】
人力駆動車Aは、各種の情報を検出するための検出装置DDをさらに含む。検出装置DDは、例えば人力駆動車Aの走行に関する人力駆動車情報を取得する。一例では、検出装置DDは、ケイデンスを検出するためのセンサ、人力駆動車AのクランクCに作用するトルクを検出するためのセンサ、パワーを検出するためのセンサ、人力駆動車Aの車速を検出するためのセンサ、および、人力駆動車Aの加速度を検出するためのセンサの少なくとも1つを含む。検出装置DDは、人力駆動車Aの変速比をさらに検出する。検出装置DDは、走行環境情報および搭乗者情報の少なくとも1つを検出可能に構成される。一例では、検出装置DDは、走行環境情報および搭乗者情報の少なくとも1つが検出可能なセンサを含む。別の例では、検出装置DDは、走行環境情報および搭乗者情報の少なくとも1つを外部から入手可能な通信部を含む。制御部14は、検出装置DDが検出した各種の情報を有線または無線通信で取得する。人力駆動車情報は、人力駆動車Aの走行環境に関する走行環境情報を含む。走行環境情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む。人力駆動車情報は、人力駆動車Aに搭乗する搭乗者に関する搭乗者情報を含む。搭乗者情報は、搭乗者の心拍数、筋電位、発汗量、および、体温の少なくとも1つを含む。
【0036】
制御部14は、第1参照値に基づいて規定される変速条件に応じて変速装置20を制御する。
図3は、第1参照値と閾値との関係を示す。第1参照値は、人力駆動車Aの走行に関する第1走行情報を含む。第1走行情報は、ケイデンス、人力駆動車AのクランクCに作用するトルク、パワー、人力駆動車Aの車速、および、人力駆動車Aの加速度の少なくとも1つを含む。制御部14は、人力駆動車Aに搭載される検出装置DDによって第1参照値を取得する。第1参照値の一例は、ケイデンスである。
【0037】
閾値THは、第1閾値TH1および第2閾値TH2を含む。一例では、制御部14は、第1参照値と第1閾値TH1との関係に応じて、シフトアップ変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値と第2閾値TH2との関係に応じて、シフトダウン変速を実行するように変速装置20を制御する。第1閾値TH1は、第2閾値TH2とは異なる。この場合、第1閾値TH1および第2閾値TH2は、所定の範囲を有する。一例では、第1閾値TH1は、第2閾値TH2に対して所定値PVだけ異なる。所定値PVは、所定の範囲を規定する所定幅である。第1閾値TH1は、第2閾値TH2よりも大きい。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上になるとシフトアップ変速を実行するように変速装置20を制御し、第1参照値が第2閾値TH2未満になるとシフトダウン変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上、かつ、現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比の場合、人力駆動車Aの変速比を維持するように変速装置20を制御する。人力駆動車Aの最大変速比は、フロントスプロケットD1とリアスプロケットD2との関係に基づく最大の変速比である。制御部14は、第1参照値が第2閾値TH2未満、かつ、現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比の場合、人力駆動車Aの変速比を維持するように変速装置20を制御する。人力駆動車Aの最小変速比は、フロントスプロケットD1とリアスプロケットD2との関係に基づく最小の変速比である。別の例では、制御部14は、第1参照値と第1閾値TH1との関係に応じて、シフトダウン変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値と第2閾値TH2との関係に応じて、シフトアップ変速を実行するように変速装置20を制御する。第1閾値TH1、および、第2閾値TH2は、任意に設定される。第1例では、第1閾値TH1は、80rpmである。第2閾値TH2は、60rpmである。所定値PVは、20rpmである。第2例では、第1閾値TH1は、85rpmである。第2閾値TH2は、55rpmである。所定値PVは、30rpmである。
【0038】
制御部14は、人力駆動車Aに関する人力駆動車情報に応じて第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替える。一例では、人力駆動車情報は、人力駆動車Aの走行に関する第2走行情報を含む。第2走行情報は、ケイデンス、人力駆動車AのクランクCに作用するトルク、パワー、人力駆動車Aの車速、人力駆動車Aの加速度、および、人力駆動車Aの変速比の少なくとも1つを含む。別の例では、人力駆動車情報は、走行環境情報および搭乗者情報の少なくとも1つを含む。制御部14は、人力駆動車Aに関する人力駆動車情報に応じて第2制御モードから第1制御モードに制御モードを切り替える。人力駆動車情報は、第2走行情報、走行環境情報、および、搭乗者情報の少なくとも1つを含む。
【0039】
図4を参照して、制御部14が実行する第1切替制御について説明する。第1切替制御は、制御部14が第1制御モードおよび第2制御モードの一方から他方に制御モードを切り替える制御である。第1切替制御において、第1制御モードから第2制御モードに切り替える制御に利用する人力駆動車情報は、走行環境情報を含む。走行環境情報は、路面に関する情報を含む。路面情報は、人力駆動車Aが走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む。制御部14は、路面の傾斜角度が第1所定角度以上である場合、第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替える。一例では、第1所定角度は、15パーセントの斜度に相当する角度である。第1切替制御において、第2制御モードから第1制御モードに切り替える制御に利用する人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、ケイデンスを含む。制御部14は、ケイデンスが第1ケイデンス以上の場合、第2制御モードから第1制御モードに制御モードを切り替える。第1ケイデンスは、第1閾値TH1として利用されるケイデンスの値よりも所定以上大きくなるように設定される。一例では、第1ケイデンスは、110rpmである。
【0040】
制御部14は、例えば以下の処理に従って、第1切替制御を実行する。
制御部14は、ステップS11において、第1制御モードで変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS12において、人力駆動車情報を検出装置DDから取得する。人力駆動車情報は、人力駆動車Aが走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む。
【0041】
制御部14は、ステップS13において、路面の傾斜角度が第1所定角度以上か否かを判定する。第1所定角度以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS14の処理に移行する。第1所定角度以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS12の処理に移行する。
【0042】
制御部14は、ステップS14において、第2制御モードで変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS15において、人力駆動車情報を検出装置DDから取得する。人力駆動車情報は、ケイデンスに関する情報を含む。
【0043】
制御部14は、ステップS16において、ケイデンスが第1ケイデンス以上か否かを判定する。第1ケイデンス以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS17の処理に移行する。第1ケイデンス以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS15の処理に移行する。制御部14は、ステップS17において、第1制御モードで変速装置20を制御する。
【0044】
以上の処理を経て、ステップS11からS17の処理を終了する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS11からS17の処理を含む第1切替制御を繰り返し実行する。
【0045】
第1実施形態の変速システム10によれば、例えば以下のような効果が得られる。
制御部14は、第2制御モードで変速装置20を制御している場合、第1ケイデンス以上であると判定すると、第2制御モードから第1制御モードに切り替える。制御部14は、人力駆動車情報に基づいて変速装置20を制御するため、搭乗者にとって好ましい変速比が選択され、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0046】
<第2実施形態>
図5を参照して、第2実施形態の変速システム10について説明する。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
制御部14は、第1切替制御に代えてまたは加えて、第2切替制御を実行する。第2切替制御は、制御部14が第1制御モードおよび第2制御モードの一方から他方に制御モードを切り替える制御である。第2切替制御において、第1制御モードから第2制御モードに切り替える制御に利用する人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。一例では、第2走行情報は、変速比を含む。制御部14は、変速比が第1変速比以下の場合に人力駆動車Aに関する人力駆動車情報に応じて第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替える。第2走行情報は、変速比に加えてさらに別の情報を含む。第2走行情報は、トルク、および、変速比を含む。制御部14は、変速比が第1変速比以下であり、かつ、トルクが第3トルク以上である場合、第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替える。第1変速比は、第2変速比よりも小さい。一例では、第1変速比は、1.2である。好ましくは、第1変速比は、1.1である。一例では、第3トルクは、71Nmから150Nmの間に設定される。具体的には、変速装置20が、歯数が34Tの1枚のフロントスプロケットD1および11枚のリアスプロケットD2を含む場合、制御部14は、リアスプロケットD2の歯数が46T、37T、および、32Tであり、かつ、検出装置DDが検出するトルクが71Nm以上である場合に、第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替える。変速装置20が、歯数が34Tの1枚のフロントスプロケットD1および12枚のリアスプロケットD2を含む場合、制御部14は、リアスプロケットD2の歯数が51T、45T、39T、および、33Tであり、かつ、検出装置DDが検出するトルクが71Nm以上である場合に、第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替える。
【0048】
第2切替制御において、第2制御モードから第1制御モードに切り替える制御に利用する人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、トルク、および、車速を含む。制御部14は、トルクが第1トルク以下、かつ、車速が第1車速以上である状態が第1所定時間以上継続した場合、第2制御モードから第1制御モードに制御モードを切り替える。第1トルクは、第3トルクよりも小さくなるように設定される。一例では、第1トルクは、10Nmから30Nmの間に設定される。第1車速は、25km/hである。第1所定時間は、30秒である。
【0049】
制御部14は、例えば以下の処理に従って、第2切替制御を実行する。
制御部14は、ステップS21において、第1制御モードで変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS22において、人力駆動車情報を検出装置DDから取得する。人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、変速比、および、トルクを含む。
【0050】
制御部14は、ステップS23において、変速比が第1変速比以下か否かを判定する。変速比が第1変速比以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS24の処理に移行する。変速比が第1変速比以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS22の処理に移行する。
【0051】
制御部14は、ステップS24において、トルクが第3トルク以上であるか否かを判定する。トルクが第3トルク以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS25の処理に移行する。トルクが第3トルク以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS22の処理に移行する。
【0052】
制御部14は、ステップS25において、第2制御モードで変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS26において、人力駆動車情報を検出装置DDから取得する。人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、トルク、および車速を含む。
【0053】
制御部14は、ステップS27において、トルクが第1トルク以下か否かを判定する。トルクが第1トルク以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS28の処理に移行する。トルクが第1トルク以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS26の処理に移行する。
【0054】
制御部14は、ステップS28において、車速が第1車速以上であるか否かを判定する。車速が第1車速以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS29の処理に移行する。車速が第1車速以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS26の処理に移行する。
【0055】
制御部14は、ステップS29において、第1所定時間以上、第1トルク以下、および、第1車速以上が継続したか否かを判定する。第1所定時間以上継続したと判定した場合、制御部14は、ステップS30の処理に移行する。第1所定時間以上継続していないと判定した場合、制御部14は、ステップS26の処理に移行する。
【0056】
制御部14は、ステップS30において、第1制御モードで変速装置20を制御する。以上の処理を経て、ステップS21からS30の処理を終了する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS21からS30の処理を含む第2切替制御を繰り返し実行する。
【0057】
第2実施形態の変速システム10によれば、例えば以下の効果をさらに得ることができる。
制御部14は、複数の閾値に基づいて切替制御を実行する。このため、例えば人力駆動車Aが登坂を走行する場合に、第2変速比以上の変速比で走行する恐れを低減できる。搭乗者に係る負荷を低減することができ、人力駆動車Aの快適な走行に貢献できる。
【0058】
<第3実施形態>
図6を参照して、第3実施形態の変速システム10について説明する。第3実施形態の変速システム10は、第2実施形態の変速システム10に対して、制御部14が第2制御モードから第1制御モードに制御モードを切り替える際に参照する人力駆動車情報が異なる第3切替制御を実行する点が異なる。第1実施形態、および、第2実施形態と共通する構成については、第1実施形態、および、第2実施形態と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0059】
制御部14は、第1切替制御、および、第2切替制御の少なくとも1つに代えてまたは加えて、第3切替制御を実行する。第3切替制御は、制御部14が第1制御モード、および、第2制御モードの一方から他方に制御モードを切り替える制御である。
【0060】
第3切替制御において、第2制御モードから第1制御モードに切り替える制御に利用する人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、トルク、車速、および、ケイデンスを含む。制御部14は、トルクが第2トルク以下、車速が第2車速以上、かつ、ケイデンスが第2ケイデンス以上である状態が第2所定時間以上継続した場合、第2制御モードから第1制御モードに制御モードを切り替える。第2トルクは、例えば第1トルクよりも大きく、第3トルクよりも小さくなるように設定される。一例では、第2トルクは、50Nmから70Nmの間に設定される。第2トルクは、第3トルクと同じ大きさになるように設定されてもよい。第2車速は、第1車速よりも遅く設定される。一例では、第2車速は、20km/hである。第2ケイデンスは、第1ケイデンスよりも小さくなるように設定される。一例では、第2ケイデンスは、90rpmである。第2所定時間は、第1所定時間よりも短くなるように設定される。一例では、第2所定時間は、5秒である。
【0061】
制御部14は、例えば以下の処理に従って、第3切替制御を実行する。
制御部14は、ステップS41において、第1制御モードで変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS42において、人力駆動車情報を検出装置DDから取得する。人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、変速比、および、トルクを含む。
【0062】
制御部14は、ステップS43において、変速比が第1変速比以下か否かを判定する。変速比が第1変速比以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS44の処理に移行する。変速比が第1変速比以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS42の処理に移行する。
【0063】
制御部14は、ステップS44において、トルクが第3トルク以上であるか否かを判定する。トルクが第3トルク以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS45の処理に移行する。トルクが第3トルク以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS42の処理に移行する。
【0064】
制御部14は、ステップS45において、第2制御モードで変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS46において、人力駆動車情報を検出装置DDから取得する。人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、トルク、車速、および、ケイデンスを含む。
【0065】
制御部14は、ステップS47において、トルクが第2トルク以下か否かを判定する。トルクが第2トルク以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS48の処理に移行する。トルクが第1トルク以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS46の処理に移行する。
【0066】
制御部14は、ステップS48において、車速が第2車速以上か否かを判定する。車速が第2車速以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS49の処理に移行する。車速が第2車速以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS46の処理に移行する。
【0067】
制御部14は、ステップS49において、ケイデンスが第2ケイデンス以上か否かを判定する。ケイデンスが第2ケイデンス以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS51の処理に移行する。ケイデンスが第2ケイデンス以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS46の処理に移行する。
【0068】
制御部14は、ステップS50において、第2トルク以下、第2車速以上、および、第2ケイデンス以上である状態が第2所定時間以上継続したか否かを判定する。第2所定時間以上継続したと判定した場合、制御部14は、ステップS51の処理に移行する。第2所定時間以上継続していないと判定した場合、制御部14は、ステップS46の処理に移行する。
【0069】
制御部14は、ステップS51において、第1制御モードで変速装置20を制御する。以上の処理を経て、ステップS41からS51の処理を終了する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS41からS51の処理を含む第3切替制御を繰り返し実行する。
【0070】
<第4実施形態>
図2、および、
図7を参照して、第4実施形態の変速システム10について説明する。第4実施形態の変速システム10は、第1実施形態から第3実施形態の変速システム10に代えてまたは加えて、操作装置ODの操作により、手動的に制御モードが切り替わる点が異なる。第1実施形態から第3実施形態と共通する構成については、第1実施形態から第3実施形態と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
人力駆動車Aは、外部からの入力を受け付ける操作装置ODを含む。制御部14は、操作装置ODからの操作信号に応じて、第1制御モード、および、第2制御モードの一方から他方に制御モードを切り替える。以下、操作装置ODからの操作信号に応じてモードを切り替える制御を、第4切替制御と称する。制御部14は、第1切替制御から第3切替制御の少なくとも1つに代えてまたは加えて第4切替制御を実行する。操作装置ODは、変速装置20の操作するための変速操作装置SLである。制御部14は、変速比が第2変速比である場合に、変速操作装置SLにおいてシフトアップ変速操作が行われることによって、第2制御モードから第1制御モードに制御モードを切り替える。制御部14は、変速比が第1変速比である場合に、変速操作装置SLにおいてシフトダウン変速操作が行われることによって、第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替えるように構成されてもよい。
【0072】
制御部14は、例えば以下の処理に従って、第4切替制御を実行する。
制御部14は、ステップS61において、第2制御モードで変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS62において、操作信号を受信したか否かを判定する。操作信号を受信したと判定した場合、制御部14は、ステップS63の処理に移行する。操作信号を受信していないと判定した場合、制御部14は、ステップS62の処理を再度実行する。
【0073】
制御部14は、ステップS63において、操作信号に応じて変速装置20を制御する。制御部14は、ステップS64において、人力駆動車情報を取得する。人力駆動車情報は、第2走行情報を含む。第2走行情報は、変速比を含む。
【0074】
制御部14は、ステップS65において、変速比が第2変速比か否かを判定する。変速比が第2変速比であると判定した場合、制御部14は、ステップS66の処理に移行する。変速比が第2変速比でないと判定した場合、制御部14は、ステップS62の処理に移行する。
【0075】
制御部14は、ステップS66において、操作信号は、シフトアップ変速を要求するシフトアップ信号か否かを判定する。シフトアップ信号であると判定した場合、制御部14は、ステップS67の処理に移行する。シフトアップ信号でないと判定した場合、制御部14は、ステップS62の処理に移行する。
【0076】
制御部14は、ステップS67において、第1制御モードで変速装置20を制御する。以上の処理を経て、ステップS61からS67の処理を終了する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS61からS67の処理を含む第4切替制御を繰り返し実行する。
【0077】
<変形例>
各実施形態に関する説明は、本発明に従う制御装置および変速システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う制御装置および変速システムは、例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
・第1実施形態から第3実施形態の変速システム10において、スタート時に制御部14が第1制御モードで変速装置20を制御する構成を開示したが、スタート時に制御部14が第2制御モードで変速装置20を制御する構成であってもよい。この場合、制御部14は、ステップS14、ステップS25、および、ステップS45の少なくとも1つの処理から変速装置20の制御を開始するように構成される。
【0079】
・第4実施形態の変速システム10において、変速比が第2変速比であり、かつ、シフトアップ信号を受信した場合に、第2制御モードから第1制御モードに変更されないように構成されてもよい。
【0080】
・第4実施形態の変速システム10において、操作装置ODは、人力駆動車Aに搭載されるサイクルコンピュータであってもよい。サイクルコンピュータは、外部からの入力を受け付ける入力部を含む。一例では、入力部は、ボタンにより構成される。サイクルコンピュータは、入力部に入力された操作内容に対応した操作信号を制御部14に送信する。操作信号は、シフトアップ変速を要求するシフトアップ信号、および、シフトダウン変速を要求するシフトダウン信号を含む。
【0081】
・搭乗者に各種情報を報知する報知装置を備えていてもよい。各種情報は、現在の制御モード情報および制御モードの切り替え情報の少なくとも1つを含む。報知装置は、人力駆動車Aに搭載されるサイクルコンピュータを含む。報知装置は、LED(Light Emitting Diode)、スピーカ、および、振動装置の少なくとも1つを含んでいてもよい。報知装置は、例えば人力駆動車AのハンドルHに設けられる。
【0082】
・制御部14は、変速比に基づく制御に代えてまたは加えて、変速段数に基づいて制御するように構成されていてもよい。変速段数は、変速装置20が、歯数が34Tの1枚のフロントスプロケットD1および11枚のリアスプロケットD2を含む場合、リアスプロケットD2を歯数が多い順に並べた順番と一致する。制御部14は、第2制御モードにおいて、変速段数が第1変速段数以上となることを抑制するようにリアディレーラ24を制御する。第1変速段数は、例えば9段である。制御部14は、変速段数が第2変速段数以下の場合に、人力駆動車Aに関する人力駆動車情報に応じて第1制御モードから第2制御モードに制御モードを切り替える。第2変速段数は、例えば3段である。
【0083】
・第1制御モード、および、第2制御モードで制御部14が変速装置20を制御する場合に、発進時における変速比が異なるように設定していてもよい。一例では、第1制御モードにおいて、人力駆動車Aの発進時の変速比は、第2変速比が設定される。第2制御モードにおいて、人力駆動車Aの発進時の変速比は、第1変速比が設定される。
【0084】
・他の走行環境情報に基づいて、第1制御モード、および、第2制御モードの一方から他方に切り替える切替制御が実行されてもよい。第1例では、空気抵抗に関する空気抵抗情報に基づいて、切替制御が実行される。制御部14は、人力駆動車Aに対する空気抵抗が所定値以上であるか否かに基づいて、切替制御を実行する。第2例では、天候に関する天候情報に基づいて、切替制御が実行される。制御部14は、人力駆動車Aの走行時の天候が雨天であるか否かに基づいて、切替制御を実行する。第3例では、気温に関する気温情報に基づいて、切替制御が実行される。制御部14は、人力駆動車Aの走行時の気温が所定温度以上であるか否かに基づいて、切替制御を実行する。
【0085】
・搭乗者情報に基づいて、切替制御が実行されてもよい。一例では、制御部14は、搭乗者の心拍数が所定心拍数以上であるか否かに基づいて、切替制御を実行する。
【0086】
・検出装置DDは、撮像装置を備えていてもよい。撮像装置は、人力駆動車Aの周囲の走行環境を画像として取得する。一例では、撮像装置は、カメラである。制御部14は、画像に基づいて、切替制御を実行する。一例では、制御部14は、画像から走行路面の傾斜が第1所定角度以上であると判定した場合に、第1制御モードから第2制御モードに切り替える。制御部14は、画像から走行路面の傾斜が第1所定角度以上ではないと判定した場合に、第2制御モードから第1制御モードに切り替える。
【0087】
・人力駆動車Aの種類は、任意に変更可能である。人力駆動車Aは、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイク、シティサイクル、カーゴバイク、リカンベント、および、キックスケータの少なくとも1つに変更可能である。
【0088】
・本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0089】
10…変速システム、12…制御装置、14…制御部、20…変速装置、A…人力駆動車、C…クランク、E…電動補助ユニット、OD…操作装置、SL…変速操作装置。