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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】イミノ官能性シランの安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
C07F7/18 P
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019501951
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017042088
(87)【国際公開番号】W WO2018013900
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】62/362,741
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】クルーズ,リチャード,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ピノ,マシュー
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116146(JP,A)
【文献】特表2005-509682(JP,A)
【文献】特表2014-501237(JP,A)
【文献】特開2003-005324(JP,A)
【文献】特開昭62-083430(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00164520(EP,A1)
【文献】特開2000-265013(JP,A)
【文献】特開2011-057844(JP,A)
【文献】特開2012-088610(JP,A)
【文献】米国特許第02942019(US,A)
【文献】特開昭63-156795(JP,A)
【文献】特開平04-159286(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102532186(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミノ官能性シランを安定化する方法であって:
a)ブレンステッド-ローリー塩基をイミノ官能性シランに添加し;および
b)イミノ官能性シランをブレンステッド-ローリー塩基と混合して、酸性プロトン源を除去するために精製し、安定化されたイミノ官能性シランをもたらすことを含む方法;
ここで、イミノ官能性シランは一般式(I)のイミノ官能性アルコキシシランであり:
【化1】

式中:
は水素、1から20の炭素原子の1価の炭化水素基または1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から20の炭素原子の1価のヘテロ炭素基;
は1から20の炭素原子の2価の炭化水素基または1から20の炭素原子の2価のヘテロ炭素基;
は1から5の炭素原子のアルキル基;
はフェニル基または1から8の炭素原子のアルキル基;
Gは1から30の炭素原子の1価または多価の炭化水素基または1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から30の炭素原子のヘテロ炭素基;
下付文字aは0、1または2;そして
下付文字xは1、2、3または4である、そして
ブレンステッド-ローリー塩基は一般式(X)を有する化合物である:
M(OR) (X)
式中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Rは水素、1から20の炭素原子の炭化水素基、1から20までの炭素原子のヘテロ炭素基、孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道、またはMであり、そして下付文字fは1または2であり、但し(i)Mがアルカリ金属のとき、下付文字fは1;(ii)Mがアルカリ土類金属のとき、Rが孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道である場合を除いて下付文字fは2;(iii)RがMのとき、Mはアルカリ金属;そして(iv)Rが孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道であるとき、Mはアルカリ金属であり下付文字fは1であり、式(X)のブレンステッド-ローリー塩基は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類水酸化物、アルコキシドまたは酸化物である。
【請求項2】
イミノ官能性シランは:
一般式(IV)のアルジミノ官能性シランであって:
【化2】

式中:
は20までの炭素原子の2価の炭化水素基または1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する20までの炭素原子の2価のヘテロ炭素基;
は1から5の炭素原子のアルキル基;
はフェニル基または1から8の炭素原子のアルキル基;
およびYは各々独立して水素、有機ラジカル、またはそれらが結合する炭素原子と一緒に5から8の環状原子の環状炭素または環状ヘテロ環を形成し;
は水素、1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する10までの炭素原子の未置換または置換アルキル基、10までの炭素原子の未分岐または分岐アルキルまたはアルキレニル基、20までの炭素原子の置換または未置換アリール基またはアリールアルキル基、または-OR、-OC(=O)-R、-C(=O)ORまたは-C(=O)R基であって、ここでRは3から20の炭素原子の未置換または置換アルキル基;そして
下付文字aは0、1または2であるもの、
一般式(VI)のアルジミノ官能性シランであって:
【化3】

式中:
、R、Rおよび下付文字aはアルジミノ官能性シラン(IV)について前述した意味を有し;
およびRは各々独立して水素、1から12の炭素原子の1価の炭化水素基、またはそれらが結合する炭素原子と一緒になって5から12の炭素原子の未置換または置換の環を形成し、または1から12の炭素原子のヘテロ炭素基であり;
は水素、20までの炭素原子の1価の炭化水素基、20までの炭素原子および1つまたはより多くのヘテロ原子を含有するヘテロ炭素基、または2から20の炭素原子のアルコキシカルボキシル基;そして
およびRは各々独立して20までの炭素原子の1価の炭化水素基、20までの炭素原子および1つまたはより多くのヘテロ原子を含有するヘテロ炭素基、または2から20の炭素原子のアルコキシカルボキシル基、またはRおよびR並びにそれらが結合する炭素原子は一緒になってゼロ、1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する5から12の炭素原子の未置換または置換の環を形成するもの、および
一般式(VIII)のケチミノ官能性シランであって:
【化4】

式中:
、R、Rおよび下付文字aは各々、アルジミノ官能性シラン(IV)について前述したと同じ意味の1つを有し;
10およびR11は各々独立して20までの炭素原子の1価の炭化水素基または1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する20までの炭素原子の1価のヘテロ炭素基;そして、
下付文字aは0、1または2であるものからなる群より選択される少なくとも1つの要素である、請求項1の方法。
【請求項3】
式(X)のブレンステッド-ローリー塩基中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Rは水素、1から20の炭素原子の炭化水素基であり、そして下付文字fは1または2であり、但しMがアルカリ金属のとき、下付文字fは1であり、Mがアルカリ土類金属のとき、下付文字fは2である、請求項1の方法。
【請求項4】
ブレンステッド-ローリー塩基は、アルカリ金属およびアルカリ金属の水酸化物、アルコキシド、および酸化物からなる群より選択される少なくとも1つの要素である、請求項1の方法。
【請求項5】
ブレンステッド-ローリー塩基は、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、NaOMe、KOMe、NaOEt、KOEt、CaO、MgOおよびBaOからなる群より選択される少なくとも1つの要素である、請求項1の方法。
【請求項6】
イミノ官能性シランに添加されるブレンステッド-ローリー塩基(X)の量は、イミノ官能性シランおよびブレンステッド-ローリー塩基の合計重量に基づいて、0.0001から10重量パーセントの範囲にある、請求項1の方法。
【請求項7】
ブレンステッド-ローリー塩基は、使用濃度においてイミノ官能性シランに可溶であり、イミノ官能性シランのシラン部分のアルコキシ官能性Rがブレンステッド-ローリー塩基(X)のRと同じである、請求項1の方法。
【請求項8】
安定化されたイミノ官能性シランは、25℃で4週間貯蔵した後に、共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランおよびイミノ官能性シランの合計重量に基づき、2重量パーセント未満の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランを含有するイミノ官能性シランである、請求項1の方法。
【請求項9】
安定化されたイミノ官能性シランは、イミノ官能性シランの重量に基づいて0.0001から0.1重量パーセントのブレンステッド-ローリー塩基を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
工程(b)からの混合物におけるプロトン源を少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基で中和することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項11】
工程(b)における混合物のプロトン源が少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基で中和された後に、イミノ官能性シランと少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基の混合物から、少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基を分離することを
さらに含む、請求項1の方法。
【請求項12】
分離を行う工程が、イミノ官能性シランおよび少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基の混合物を蒸留すること、かかる混合物をイオン交換樹脂に通すこと、かかる混合物を抽出すること、およびかかる混合物に分取クロマトグラフィ法を適用することの少なくとも1つである、請求項11の方法。
【請求項13】
イミノ官能性シランは、(1,3-ジメチルブチリデン)-(3-トリエトキシシラニルプロピル)アミン、(1,3-ジメチルブチリデン)-(3-トリメトキシシラニルプロピル)アミン、(1,3-ジメチルブチリデン)-(2,2-ジメチル-4-トリエトキシシラニルブチル)アミン、イソプロピリデン-(3-メチルジエトキシシラニルプロピル)アミン、sec-ブチリデン-(3-トリエトキシシラニルプロピル)アミン、[3-(トリエトキシシラニル)プロピル]-(1-フェニルエチリデン)アミン、エチリデン-(3-ジメチルエトキシシラニルプロピル)アミン、(2-メチルプロピリデン)-(3-トリエトキシシラニルプロピル)アミン、ベンジリデン-(3-トリエトキシシラニルプロピル)アミン、[2,2-ジメチル-3-(3-トリエトキシシラニルプロピルイミノ)プロピル]ジメチルアミン、N-sec-ブチリデン-N'-(3-トリメトキシシラニルプロピル)エタン-1,2-ジアミンまたは3-(1-オクチリデン)アミノプロピルトリメトキシシランである、請求項1の方法。
【請求項14】
工程(a)において、イミノ官能性シランは内部のプロトン源の存在に起因して自己付加反応および脱アミノ化反応を受けやすく、工程(b)において、ブレンステッド-ローリー塩基はプロトン源を中和し、それによりかかる自己付加反応および脱アミノ化反応を阻止する、請求項1の方法。
【請求項15】
さらに:
c)安定化されたイミノ官能性シランからブレンステッド-ローリー塩基を分離し;そして
d)工程(c)の安定化されたイミノ官能性シランを収集することを含む、請求項1の方法。
【請求項16】
さらに:
c)安定化されたイミノ官能性シランからブレンステッド-ローリー塩基を分離し;そして
d)工程(c)の安定化されたイミノ官能性シランを収集することを含む、請求項14の方法。
【請求項17】
分離する工程(c)は、イミノ官能性シランおよび少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基の混合物を蒸留すること、およびかかる混合物をイオン交換樹脂または膜を介して通過させることの少なくとも1つによって実行される、請求項15の方法。
【請求項18】
分離する工程(c)は、イミノ官能性シランおよび少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基の混合物を蒸留すること、およびかかる混合物をイオン交換樹脂または膜を介して通過させることの少なくとも1つによって実行される、請求項16の方法。
【請求項19】
イミノ官能性シランに添加されるブレンステッド-ローリー塩基の量は、イミノ官能性シランの自己付加反応および脱アミノ化反応を阻止するのに十分なものである、請求項14の方法。
【請求項20】
イミノ官能性シランに添加されるブレンステッド-ローリー塩基の量は、イミノ官能性シランに存在するプロトン源のモル量に基づいて少なくとも1モル当量である、請求項14の方法。
【請求項21】
一般式(I)のイミノ官能性シラン:
【化5】

式中:
は水素、1から20の炭素原子の1価の炭化水素基または1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から20の炭素原子の1価のヘテロ炭素基;
は1から20の炭素原子の2価の炭化水素基または1から20の炭素原子の2価のヘテロ炭素基;
は1から5の炭素原子のアルキル基;
はフェニル基または1から8の炭素原子のアルキル基;
Gは1から30の炭素原子の1価または多価の炭化水素基または1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から30の炭素原子のヘテロ炭素基;
下付文字aは0、1または2;そして
下付文字xは1、2、3または4である、
ここで、イミノ官能性シランの重量に基づいて15ppm未満のプロトン源を含有し、
共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランおよびイミノ官能性シランの合計重量に基づき、2重量パーセント未満の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランを含有する、
及び、一般式(X)を有する化合物であるブレンステッド-ローリー塩基:
M(OR) (X)
式中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Rは水素、1から20の炭素原子の炭化水素基、1から20までの炭素原子のヘテロ炭素基、孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道、またはMであり、そして下付文字fは1または2であり、但し(i)Mがアルカリ金属のとき、下付文字fは1;(ii)Mがアルカリ土類金属のとき、Rが孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道である場合を除いて下付文字fは2;(iii)RがMのとき、Mはアルカリ金属;そして(iv)Rが孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道であるとき、Mはアルカリ金属であり下付文字fは1であり、式(X)のブレンステッド-ローリー塩基は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類水酸化物、アルコキシドまたは酸化物である;
を含む、
安定化されたイミノ官能性シラン組成物。
【請求項22】
共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランおよびイミノ官能性シランの合計重量に基づき、0.5重量パーセント未満の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランを含有する、請求項21の安定化されたイミノ官能性シラン組成物。
【請求項23】
イミノ官能性シランの重量に基づいて1ppm未満のプロトン源を含有する、請求項21の安定化されたイミノ官能性シラン組成物。
【請求項24】
共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランの合計重量に基づき、0.1重量パーセント未満の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランを含有し、イミノ官能性シランの重量に基づいて1ppm未満のプロトン源を含有する、請求項21の安定化されたイミノ官能性シラン組成物。
【請求項25】
ブレンステッド-ローリー塩基は、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、NaOMe、KOMe、NaOEt、KOEt、CaO、MgOおよびBaOからなる群より選択される少なくとも1つの要素である、請求項21の安定化されたイミノ官能性シラン組成物。
【請求項26】
イミノ官能性シランに添加されるブレンステッド-ローリー塩基の量は、イミノ官能性シランおよびブレンステッド-ローリー塩基の合計重量に基づいて、0.0001から10重量パーセントの範囲にある、請求項21の安定化されたイミノ官能性シラン組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
この出願は、2016年7月15日に出願された米国特許仮出願第62/362,741号の利益を主張しており、その全内容はここでの参照によって本願に取り込まれる。
【0002】
この発明はイミノ官能性シランに関し、より特定的には、イミノ官能性シランを精製および/または製造後処理して、イミノ官能性シランが付加反応によりイミノおよびアミノ官能性シランを生成し、また続いて脱アミノ化反応を行って、貯蔵中に生起する共役炭素-炭素2重結合を含有するイミノ官能性シランの生成を阻止する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
各種のイミノシランが技術的に知られており、特に、アミン含有化合物およびシリル化ポリマーの製造用中間体、コーティング用の接着促進剤、接着剤およびシーラント、並びに無機物が充填された複合材料のためのカップリング剤として有用であることが知られている。
【0004】
既知のイミノ官能性シランおよびそれらの調製方法の中には、米国特許第2,942,019号に記載されたアルジミノ官能性シラン、ケチミノ官能性シランおよび調製方法;米国特許第3,681,420号に記載されたN,N'-ビス[(トリ(置換)シリルアルキレン]-1,4-キシレン-α,α'-ジイミンおよび調製方法;米国特許第5,134,234に記載されたイミノ官能性シランおよびイソシアネートを使用した調製方法;米国特許第5,739,201に記載されたアルジミノ官能性シランおよびケチミノ官能性シラン並びに調製方法;米国特許第6,586,612号および第6,998,449に記載されたイミノ官能性シランおよびアミン交換調製方法;米国特許第7,906,673号および第8,877,955号に記載されたアルジミノ官能性シランおよび調製方法;米国特許第7,923,572に記載されたケチミノ官能性シランおよび調製方法;および、WO2009/043599に記載されたアミノ官能性シラン(「活性化シラン」)および調製方法がある。これらの特許文献の各々の内容は、その全部について本願に取り込まれる。
【0005】
イミノ官能性シランは付加反応を行って、イミドおよびアミノ官能性シランを形成し、これらのイミドおよびアミノ官能性シランはさらに脱アミノ化反応を行って、共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランを形成しうる。これらの望ましくない反応生成物は、所望とするイミノ官能性シランの含有量を低減させ、また着色を生じて、透明な組成物用の中間体または接着促進剤としては適さないものとなり、そして貯蔵安定性を損なう。生成物の純度および貯蔵安定性に対するこうした悪影響のゆえに、イミノ官能性シランのそれ自体での反応、およびその後の脱アミノ化反応を阻止し、抑制し、または防止する方法に対する必要性が生じている。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば:
a)ブレンステッド-ローリー塩基をイミノ官能性シランに添加し;および
b)イミノ官能性シランを少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基と混合して安定化されたイミノ官能性シランをもたらす
ことを含む、イミノ官能性シランの安定化方法が提供される。
【0007】
理論によって拘束されることを意図するものではないが、未処理のイミノ官能性シランは少なくとも1つの酸性プロトン源を含んでおり、その存在下に段々と時間と共に、イミノ官能性シランはそれ自体で反応し、望ましくない付加反応および脱アミノ化反応を形成すると考えられる。アルデヒド、ケトン、および/またはアミノシランといったイミノ官能性シランを調製するためのプロセスにおいて使用される反応物質は、プロトン(H)の源、例えばブレンステッド-ローリー酸を含んでよい。たとえ痕跡量であっても、こうしたブレンステッド-ローリー酸は、上述した望ましくないイミノ官能性シランの付加反応および脱アミノ化反応を触媒することが可能であり、それによって反応生成物として、共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シラン、および副生物として、所望とするイミノ官能性シランの調製において反応物質として当初用いられたアミノ官能性シランを生成する。こうした望ましくない反応は、所望とするイミノ官能性シランの量を経時的に、例えば貯蔵中に減少させ、結果的に、イミノ官能性シラン製品の相当の損失と、それに伴う共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランおよびアミノ官能性シランという不純物の無駄な蓄積をもたらしうる。
【0008】
本発明の方法は、新たに調製されたイミノシラン生成物について適用された場合、イミノシランの付加反応および脱アミノ化反応が生ずるのを効果的に阻止または防止し、また幾らかの付加反応および脱アミノ化反応が既に生じている場合には、そうした反応がさらに進行するのを妨げる。従って1つの実施形態において、本発明の方法は、所望とするイミノ官能性シラン生成物の当初の内容を保存し、または実質的に保存し、無駄な付加反応生成物および脱アミノ化反応生成物の発生を抑制または排除し、処理されたイミノ官能性シラン生成物の貯蔵安定性を大きく増大させる。
【発明の詳細な説明】
【0009】
本願の明細書及び請求項において、以下の用語および表現は、以下に示す意味を有するものとして理解されるべきである。
【0010】
単数形「ある」、「1つの」および「その」は複数形を含んでおり、特定の数値に対する参照は、文脈が明らかに他のことを示すのでない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0011】
本願に記載した全ての方法は、本願において別様に示されていない限り、または文脈と明らかに矛盾するものでない限り、任意の適切な順序で実施されてよい。本願に提示したありとあらゆる例または例示的な言葉(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図したものであり、請求項に記載がない限り、発明の範囲に限定を画するものではない。
【0012】
明細書におけるどのような言葉も、請求項に記載のない何らかの要素が本発明の実施に本質的であることを示すものと解釈すべきではない。
【0013】
本願で使用するところでは、「含む」、「包含する」、「含有する」、「特徴とする」といった用語、およびこれらの文法的な均等物は、包括的または無制限の用語であって、付加的な、引用していない要素または方法的工程を排除するものでないが、より限定的な用語である「からなる」および「本質的にからなる」をも含んでいることが理解されよう。
【0014】
組成の百分率は、別様に示すところがない限り、重量パーセントで与えられる。
【0015】
本願で示すどのような数値範囲も、その範囲内の全ての部分範囲、およびそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを含んでいることが理解されよう。
【0016】
さらに理解されるように、構造的、組成的、および/または機能的に関連する化合物、材料、または物質の群に属するものとして明細書に明示的または黙示的に記載され、および/または請求項に示された任意の化合物、材料、または物質は、その群の個々の代表物、およびそれらの全ての組み合わせを含んでいる。
【0017】
「プロトン源」という表現は、プロトンを放出可能な化合物を意味している。
【0018】
本願において「ブレンステッド-ローリー酸」という表現は、プロトンを任意の他の化合物へと伝達することのできる任意の化合物、すなわちプロトンドナーに対して適用されることが理解されよう。プロトンは正電荷単位を有する核粒子である;水素原子の核を構成することから、それは記号Hによって表される。
【0019】
本願において「ブレンステッド-ローリー塩基」という表現は、プロトンを受容する任意の化合物、すなわちプロトンアクセプタに対して適用されることが理解されよう。
【0020】
本願において「共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シラン」という表現は、C=C-C=Nという結合順を含み、ここでC=Cが炭素-炭素2重結合を表しC=Nが炭素-窒素2重結合、すなわちイミノ基を表す、任意の分子を意味することが理解されよう。
【0021】
「炭化水素基」という用語は、水素原子および炭素原子のみを含む任意の炭化水素化合物から、1つまたはより多くの水素原子が除去されたものを意味する。炭化水素基には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、アラルキル、およびアレーニルが含まれる。
【0022】
「ヘテロ炭素基」とは、1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する炭化水素基を意味する。
【0023】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素を除く第13~17族の任意の元素を意味し、例えば酸素、窒素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含んでいる。
【0024】
「アルキル」という用語は、任意の1価の、飽和した直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味し;用語「アルケニル」は任意の1価の、1つまたはより多くの炭素-炭素2重結合を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素2重結合、または基内の他の位置であることができる;そして用語「アルキニル」は、任意の1価の、1つまたはより多くの炭素-炭素3重結合を含有し、そして任意選択的に1つまたはより多くの炭素-炭素2重結合を含有する、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素3重結合、炭素-炭素2重結合、または基内の他の位置であることができる。
【0025】
アルキルの代表的な例には、メチル、エチル、プロピル、およびイソブチルが含まれる。アルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネン、およびエチリデンノルボルネニルが含まれる。アルキニルの例には、アセチレニル、プロパルギル、およびメチルアセチレニルが含まれる。
【0026】
用語「シクロアルキル」は、任意の1価の環状脂肪族炭化水素基を意味する;用語「シクロアルケニル」は、任意の1価の、1つまたはより多くの炭素-炭素2重結合を含有する環状脂肪族炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素2重結合、または基内の他の位置であることができる」;そして用語「シクロアルキニル」は、任意の1価の、1つまたはより多くの炭素-炭素3重結合を含有し、そして任意選択的に1つまたはより多くの炭素-炭素2重結合を含有する、環状脂肪族炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素3重結合、炭素-炭素2重結合、または基内の他の位置であることができる。
【0027】
シクロアルキルの代表的な例は、シクロペンチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘプチル、シクロオクチルを含む。シクロアルケニルの例は、シクロペンテニル、シクロヘプテニル、およびシクロオクタトリエニルを含む。シクロアルキニルの例は、シクロへプチニルである。
【0028】
用語「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」、および「シクロアルキニル」は、2環式、3環式、およびより高次の環状構造、並びにこれらの環状構造がさらにアルキル、アルケニル、および/またはアルキニル基で置換されたものを含んでいる。代表的な例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、シクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシル、およびシクロドデカトリエニルを含んでいる。
【0029】
用語「アリール」は、任意の1価の芳香族炭化水素基を意味する;用語「アラルキル」は、1またはより多くの水素原子が同数の同種および/または異種のアリール基(本願で定義される)で置換されている任意のアルキル基(本願で定義される)を意味する;用語「アレーニル」は、1またはより多くの水素原子が同数の同種および/または異種のアルキル基(本願で定義される)で置換されている任意のアリール基(本明細書で定義される)を意味する。アリールの例には、フェニルおよびナフタレニルが含まれる。アラルキルの例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。アレーニルの例には、トリルおよびキシリルが含まれる。
【0030】
実施例における場合、または別様に示された場合を除き、明細書および請求項において記載された、材料の量、反応条件、時間の長さ、材料の定量された性質、およびその他を示す全ての数値は、全ての場合について、用語「約」によって修飾されているものと理解すべきである。
【0031】
有用なヒドロカルビル基にはアルキル基が含まれ、その例はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびtert-ペンチル;n-ヘキシルのようなヘキシル;n-ヘプチルのようなヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、および2,2,4-トリメチルペンチルのようなオクチル;n-ノニルのようなノニル;n-デシルのようなデシル;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびメチルシクロヘキシルのようなシクロアルキルである。アルケニル基の例には、ビニル、プロペニル、アリル、およびメタリルが含まれる。シクロアルケニル基の例には、シクロヘキセニル、ノルボルネニル、エチルノルボルネニル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデンノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルが含まれる。アルキニル基の例には、アセチレニル、プロパルギルおよびメチルアセチレニルが含まれる。アリール基の例には、フェニル、ナフチル;o-、m-およびp-トリル、キシリル、エチルフェニル、およびベンジルが含まれる。
【0032】
イミノ官能性シランを生成するための、より一般的な既知の方法の中には、アミノ官能性シランとカルボニル化合物、すなわちアルデヒドおよび/またはケトンの縮合反応を含むものがあり、これらはいずれも、2級アミノ基、ヒドロキシル基またはスルフヒドリル基のような付加的な官能性を含んでいてよい。この反応は水を生成し、水は生成されるにつれて回収されるのが有利である。反応が完了すると、過剰の反応物質(単数または複数)は、有利にはイミノ官能性シラン生成物から、例えば減圧蒸留によって除去される。これらの反応は、酸および/または塩基によって触媒されてよい。
【0033】
イミノ官能性シランを生成するための他の方法は、シリル基を含まないイミノ官能性化合物と、アミノ官能性シランとの反応に関与している。この反応は、イミノ官能性シラン、およびシリル基を含有しない副生物のアミンを生じる。これらの反応は、酸および/または塩基によって触媒されてよい。
【0034】
本発明の1つの実施形態において、処理されるイミノ官能性シランは一般式(I)のイミノ官能性シランである:
【化1】

式中:
は水素、約20までの炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基のような、1から約20の炭素原子の1価の炭化水素基、またはN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から約20の炭素原子の1価のヘテロ炭素基、特に水素、1から約10の炭素原子、より特定的には2から4の炭素原子の直鎖アルキル基、例えばエチル、プロピルまたはブチル、または3から約10の炭素原子、より特定的には3から約6の炭素原子、さらにより特定的には3または4の炭素原子の分岐鎖アルキル基、例えばイソプロピルまたはイソブチル;
はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレンまたはアラルキレンのような1から約20の炭素原子の2価の炭化水素基、約20までの炭素原子を含む基、またはN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から約20の炭素原子の2価のヘテロ炭素基、特に1から約10の炭素原子、より特定的には2から約4の炭素原子の直鎖アルキレン基、例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン、または2から約10の炭素原子、より特定的には2から約6の炭素原子、さらにより特定的には3または4の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、例えばイソプロピレンまたはイソブチレン;
は1から約5の炭素原子のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチルまたはイソペンチル;
はフェニルまたは1から約8の炭素原子のアルキル基、特にメチルまたはエチル;
Gは1から約30の炭素原子の1価または多価の炭化水素基、またはN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から約30の炭素原子のヘテロ炭素基、特に1から約10の炭素原子、より特定的には2から4の炭素原子の直鎖アルキル基、例えばエチル、プロピルまたはブチル、1から約10の炭素原子およびN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含む置換アルキル基、3から約10の炭素原子、より特定的には3から約6の炭素原子、そしてさらにより特定的には3または4の炭素原子の分岐鎖のアルキル基、N、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含む3から約10の炭素原子の置換分岐鎖アルキル基、3から約10の炭素原子、より特定的には約5から約8の炭素原子のシクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル、約6から約10の炭素原子のアリール基、約7から約10の炭素原子のアレーニル基、約7から約10の炭素原子のアラルキル基、1から約10の炭素原子、より特定的には2から4の炭素原子の直鎖アルキレン基、例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン、または2から約10の炭素原子、より特定的には2から約6の炭素原子、そしてさらにより特定的には3または4の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、3から約10の炭素原子、より特定的には約5から約8の炭素原子のシクロアルキレン基、例えばシクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレンまたはシクロオクチレン、約6から約10の炭素原子のアリーレン基、約7から約10の炭素原子のアレーニレン基または約7から約10の炭素原子のアラルキレン基;
下付文字aは0、1または2、特に1;そして
下付文字xは1、2、3または4、特に1または2、およびより特定的には1である。
【0035】
イミノ官能性シラン(I)は公知の仕方で反応により得ることができ、例えば参照によってその全内容を本願に取り入れる米国特許第7,906,673号に記載されたように、一般式(II)のアミノ官能性シラン:
【化2】

ここでR、RおよびR並びに下付文字aが上述した意味を有するものを、一般式(III)のカルボニル含有化合物と反応させる:
【化3】

ここでG、Rおよび下付文字xは上述した意味を有し、生成物であるイミノ官能性シラン(I)は、任意の在来のまたはその他の既知の技術(単数または複数)、例えば上述した米国特許第7,906,673号に記載のものを用いて回収される。
【0036】
本発明の別の実施形態においては、処理すべきイミノ官能性シランは一般式(IV)のアルジミノ官能性シランである:
【化4】

式中:
は約20までの炭素原子の2価の炭化水素基、またはN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する約20までの炭素原子の2価のヘテロ炭素基、特に1から約10の炭素原子、より特定的には2から4の炭素原子の直鎖の アルキレン基、例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン、または2から約10の炭素原子、より特定的には2から約6の炭素原子の、そしてさらにより特定的には3または4の炭素原子の分岐鎖アルキレン基、例えばイソプロピレンまたはイソブチレン;
は1から約5の炭素原子のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチルまたはイソペンチル;
はフェニルまたは1から約8の炭素原子のアルキル基、特にメチルまたはエチル;
およびYは各々独立して、水素、有機ラジカル、またはそれらが結合する炭素原子と一緒に約5から約8、そして特に6の環状原子の環状炭素または環状ヘテロ環を形成し;
は水素、N、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する未置換または置換アルキル基、約10までの炭素原子の未分岐または分岐アルキルまたはアルキレニル基、約20までの炭素原子、特に約6から約12の炭素原子、そしてさらにより特定的には約6から約8の炭素原子の置換または未置換アリール基またはアリールアルキル基、または-OR、-OC(=O)-R、-C(=O)ORまたは-C(=O)R基であって、ここでRは3から約20の炭素原子、特に3から約10の炭素原子、そしてより特定的には3から約6の炭素原子の未置換または置換アルキル基、または約20までの炭素原子、特に約6から約12の炭素原子、そしてさらにより特定的には約6から約8の炭素原子の未置換または置換アリール基またはアラルキル基;そして
下付文字aは0、1または2である。
【0037】
アルジミノ官能性シラン(IV)は公知の仕方で反応により得ることができ、例えば上述した米国特許第7,906,673号に記載されたように、一般式(II)のアミノ官能性シラン:
【化5】

ここでR、RおよびR並びに下付文字aが上述の意味を有するものを、一般式(V)のアルデヒドと反応させる:
【化6】

ここでY、YおよびYは上述した意味を有し、生成物であるアルジミノ官能性シラン(V)は、任意の在来のまたはその他の既知の技術(単数または複数)、例えば上述した米国特許第7,906,673号に記載のものを用いて回収される。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態においては、処理されるイミノ官能性シランは一般式(VI)のアルジミノ官能性シランである:
【化7】

式中:
、R、Rおよび下付文字aは、アルジミノ官能性シラン(IV)について前述した意味を有し;
およびRは各々独立して、水素、1から約12の炭素原子の1価の炭化水素基、またはそれらが結合する炭素原子と一緒に約5から約12の炭素原子、特に約5から約8の炭素原子、そしてより特定的には5または6の炭素原子の未置換または置換された環を形成し、またはN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する1から約12の炭素原子のヘテロ炭素基であり;
は水素、約20までの炭素原子、より特定的には約12までの炭素原子、そしてより特定的には約6までの炭素原子のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基のような1価の炭化水素基、約20までの炭素原子およびN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有するヘテロ炭素基、または2から約20の炭素原子、特定的には2から約12の炭素原子、そしてより特定的には2から約6の炭素原子のアルコキシカルボキシル基;そして
およびRは各々独立して、約20までの炭素原子、より特定的には約12までの炭素原子、そしてより特定的には約6までの炭素原子のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基のような1価の炭化水素基、約20までの炭素原子およびN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有するヘテロ炭素基、または2から約20の炭素原子、特定的には2から約12の炭素原子、そしてより特定的には2から約6の炭素原子のアルコキシカルボキシル基、またはRおよびRおよびそれらが結合する炭素原子はゼロか、N、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する約5から約12の炭素原子の未置換または置換の環を形成する。
【0039】
アルジミノ官能性シラン(VI)は公知の仕方で反応により得ることができ、例えば参照によってその全内容を本願に取り入れる米国特許第8,877,955号に記載されたように、上述したアミノシラン(II)と、一般式(VII)のアルデヒドを反応させる:
【化8】

ここでR、R、R、RおよびRはアルジミノ官能性シラン(VI)で前述した意味を有し、生成物であるアルジミノ官能性シラン(VI)は、任意の在来のまたはその他の既知の技術(単数または複数)、例えば上述した米国特許第8,877,955号に記載のものを用いて回収される。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態においては、本発明の方法によって安定化されるイミノ官能性シランは一般式(VIII)のケチミノ官能性シランである:
【化9】

式中:
、R、Rおよび下付文字aの各々はアルジミノ官能性シラン(IV)について上述したと同じ意味の1つを有し;
10およびR11は各々独立して、約20までの炭素原子、特定的には約12までの炭素原子、そしてさらにより特定的には約6までの炭素原子の1価の炭化水素基、またはN、Oおよび/またはSのような1つまたはより多くのヘテロ原子を含有する約20までの炭素原子、特定的には約12までの炭素原子、そしてさらにより特定的には約6までの炭素原子の1価のヘテロ炭素基;そして
下付文字aは0、1または2である。
【0041】
ケチミノ官能性シラン(VIII)は公知の仕方で反応により得ることができ、例えば参照によってその全内容を本願に取り入れる米国特許第7,923,572号に記載されたように、上述したアミノ官能性シラン(II)と、一般式(IX)のケトンを反応させる:
【化10】

ここでR10およびR11は上述した意味を有し、生成物であるケチミノ官能性シラン (VIII)は、任意の在来のまたはその他の既知の技術(単数または複数)、例えば上述した米国特許第7,923,572号に記載のものを用いて回収される。
【0042】
イミノ官能性シラン(I)、アルジミノ官能性シラン(IV)および(VI)、並びにケチミノ官能性シラン(VIII)を調製するのに使用可能なアミノ官能性シラン(II)の代表的で非限定的な例には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメトキシメチルシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7-アミノ-4-オキサヘプチルジメトキシメチルシラン、並びにエトキシ基、プロポキシ基またはイソプロポキシ基をケイ素原子上に有するこれらの類縁体;1級アミノ基に加えて2級アミノ基(-NH基)を例えばケイ素原子に対してガンマ位に有する、いわゆるジアミノシラン、例えばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、およびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン;および1級アミノ基の他に2つの2級アミノ基(-NH基)を担持する、N-(2-アミノエチル)-N'-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンのような、いわゆるトリアミノシランが含まれる。
【0043】
イミノ官能性シラン(I)を調製するのに使用可能なカルボニル化合物(III)の代表的で非限定的な例には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、2-エチルカプロンアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒド、およびジフェニルアセトアルデヒド、2,2-ジメチル-3-メチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ジメチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-エチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ジエチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ビス(2-メトキシエチル)アミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ブチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ジブチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ヘキシルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-(2-エチルヘキシル)アミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ドデシルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ピロリジノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ピペリジノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-モルホリノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-(2,6-ジメチル)モルホリノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-ベンジルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ベンジルメチルアミノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ベンジルイソプロピルアミノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-シクロヘキシルアミノプロパナールおよび2,2-ジメチル-3-(N-シクロヘキシルメチルアミノ)プロパナール、4-オキソペンタナール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトンおよびジイソブチルケトン、シクロペンタノン、トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、トリメチルシクロヘキサノン、6-オキソ-2-ヘプタノン、5-オキソ-2-ヘキサノン、1,4-ジアセチルベンゼン、1,3,5-トリアセチルベンゼンおよびアセチルアセトンが含まれる。
【0044】
アルジミノ官能性シラン(VI)を調製するのに使用可能なアルデヒド(V)の代表的で非限定的な例には、ホルムアルデヒドと2-メチルブチルアルデヒド、2-エチル-ブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、2-エチルカプロアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒド(ヒドロアトロパアルデヒド)、およびジフェニルアセトアルデヒドといった別のアルデヒドとの交差アルドール反応から形成されるようなベータヒドロキシアルデヒドと、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノールのようなアルコール、または例えば3-メトキシ-、3-エトキシ-、3-プロポキシ-、3-イソプロポキシ-、3-ブトキシ-、およびさらに3-(2-エチルヘキソキシ)-2,2-ジメチルプロパナールのような脂肪族アルコールとのエーテル;3-ヒドロキシ-ピバルアルデヒド、3-ヒドロキシイソブチルアルデヒド、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、3-ヒドロキシブチルアルデヒド、3-ヒドロキシバレルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-ブチルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-エチルブチルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチルバレルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-エチルヘキサナール、1-ヒドロキシメチル-シクロペンタンカルバルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルバルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、3-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロピオンアルデヒド、および3-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルプロピオンアルデヒドのような上記したベータヒドロキシアルデヒドと、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2-エチルカプロン酸、および安息香酸のようなカルボン酸とのエステル化生成物;および3-ヒドロキシ-ピバルアルデヒド、3-ヒドロキシイソブチルアルデヒド、3-ヒドロキシプロパナール、3-ヒドロキシ-ブチルアルデヒド、3-ヒドロキシバレルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-ブチルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-エチルブチルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチルバレルアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-エチルヘキサナール、1-ヒドロキシメチル-シクロペンタンカルバルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルバルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、3-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロピオンアルデヒド、および3-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルプロピオンアルデヒドのような上記したベータヒドロキシアルデヒドと、例えば、ラウリン酸、トリデカノン酸、ミリスチン酸、ペンタデカノン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカノン酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン2酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9-トリオキサウンデカン2酸のようなカルボン酸、およびポリエチレングリコールの同様な誘導体、脱水素リシノレイン酸、およびまた例えば菜種油、ヒマワリ油、亜麻仁油、オリーブ油、椰子油、パーム核油、およびパーム油のような天然油脂の工業的鹸化由来の脂肪酸とのエステル化生成物が含まれる。
【0045】
アルジミノ官能性シラン(VI)を調製するのに使用可能なアルデヒド(VII)の代表的で非限定的な例には、2,2-ジメチル-3-メチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ジメチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-エチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ジエチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ビス(2-メトキシエチル)アミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ブチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ジブチルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ヘキシルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-(2-エチルヘキシル)アミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-ドデシルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ピロリジノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ピペリジノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-モルホリノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-(2,6-ジメチル)モルホリノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-ベンジルアミノプロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ベンジルメチルアミノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-ベンジルイソプロピルアミノ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-シクロヘキシルアミノプロパナール、および2,2-ジメチル-3-(N-シクロヘキシルメチルアミノ)プロパナールが含まれる。
【0046】
ケチミノシラン(VIII)を調製するために使用可能なケトン(IX)の代表的で非限定的な例には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトンおよびジイソブチルケトンのような脂肪族ケトン、およびシクロペンタノン、トリエメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびトリメチルシクロヘキサノンのような環状ケトンが含まれる。
【0047】
1つの特定的な実施形態においては、本発明によりイミノ官能性シランを安定化させるための方法は:
a)内部のプロトン源の存在に起因して自己付加反応および脱アミノ化反応を受けやすいイミノ官能性シランに対してブレンステッド-ローリー塩基を添加し;そして
b)イミノ官能性シランをブレンステッド-ローリー塩基と混合し、それによりプロトン源を中和し、安定化したイミノ官能性シランを提供することを含んでいる。
【0048】
本発明の上述した実施形態においては、工程(a)においてイミノ官能性シランに添加されたブレンステッド-ローリー塩基は、イミノ官能性シランの自己付加反応および脱アミノ化反応を阻止するのに十分なものでなければならない。1つの実施形態においては、そうしたブレンステッド-ローリー塩基の量は、イミノ官能性シランに存在するプロトン源のモル数に基づいて、一般には少なくとも約1モル当量、より特定的には約1から約10モル当量、そしてさらにより特定的には約1.2から約10モル当量である。
【0049】
上記した実施形態は付加的に:
c)工程(b)のイミノ官能性シランとブレンステッド-ローリー塩基の混合物からブレンステッド-ローリー塩基を分離して安定化されたイミノ官能性シラン、好ましくはブレンステッド-ローリー塩基を実質的に含まないイミノ官能性シランを提供し;そして
d)工程(c)の安定化されたイミノ官能性シランを収集することを含んでいる。
【0050】
選択されるブレンステッド-ローリー塩基は、プロトン源を中和するよう十分に塩基性でなければならないことが理解されよう。1つの実施形態においては、プロトン源を中和するために使用されるブレンステッド-ローリー塩基の共役酸は水中で約12より大きなpKa、特定的には約12から約25のpKa、そしてより特定的には約13から約20のpKaを有する。ブレンステッド-ローリー塩基の共役酸についてのpKa値は、特に「Advanced OrganicChemistry」第3版、J. March(1985)およびその引用文献、並びに「CRC Handbook of Chemistry and Physics」David R. Lide編、72版(CRC Press1991-92)に見出すことができる。こうしたpKa値はまたR.G.BatesおよびG.D.Pinchingの方法、米国化学会誌72、1393(1950)によって、25℃において求めることができる。ブレンステッド-ローリー塩基は、アルカリまたはアルカリ金属の水酸化物、アルコキシドまたは酸化物である場合には、十分な塩基性を有する。
【0051】
本願で使用するところでは、「ブレンステッド-ローリー塩基を実質的に含まない」という表現は、安定化されたイミノ官能性シランの重量に基づいて、約1重量パーセント未満、特定的には約0.01重量パーセント未満、より特定的には約0.0001重量パーセント未満、そしてさらにより特定的には約0.0001から約0.1重量パーセントのブレンステッド-ローリー塩基を含有する、安定化されたイミノ官能性シランを意味するものと理解される。
【0052】
1つの実施形態において、安定化されたイミノ官能性シランにおけるブレンステッド-ローリー塩基の量は、誘導結合プラズマ質量分析を用いて決定してよい。
【0053】
1つの実施形態において、安定化されたイミノ官能性シランは、25℃で4週間貯蔵(エージング)した後に、共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランおよびイミノ官能性シランの合計重量に基づき、約2重量パーセント未満の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランを含有するイミノ官能性シランである。より特定的には、安定化されたイミノ官能性シランは、25℃で4週間貯蔵した後に、共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランおよびイミノ官能性シランの合計重量に基づき、約0.5重量パーセント未満の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シラン、そしてさらにより特定的には、0.1重量パーセント未満の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランを含むイミノ官能性シランである。
【0054】
別の実施形態においては、安定化されたイミノ官能性シランは、イミノ官能性シランの重量に基づいて、約15ppm未満、特定的には約1ppm未満のプロトン源を含有するイミノ官能性シランである。
【0055】
1つの実施形態において、安定化されたイミノ官能性シラン中の共役炭素-炭素2重結合含有イミノ官能性シランの重量パーセントは、ドデカンを内部標準として、ガスクロマトグラフィ(GC)を用いて決定することができる。1つのGC手順によれば、GCカラムは30メートルの長さおよび0.25ミリメートルの直径であって0.25マイクロメートルのフィルムで被覆されており(アジレント社のHP-5)、ヘリウムのキャリアガスの流量は毎分1mL、初期温度プロファイルは50℃が2分間、続いて毎分8℃で340℃の温度まで上昇して、その温度で5分間保持され、そして水素炎イオン化検出器(FID)を使用する。
【0056】
上述したように、酸性プロトンは痕跡量であったとしても、イミノ官能性シランの望ましくない付加反応および脱アミノ化反応を招来する。イミノシラン中に存在するプロトン源は、種々の源、例えばアミノ官能性シラン、アルデヒドおよび/またはケトン反応物質の1つまたはより多くに関連する残留酸(単数または複数)のような源に由来しうるものであり、またさらにはイミノ官能性シランによる大気中の2酸化炭素および水の吸収に由来しうる。
【0057】
プロトン源の中和は、適切な量の少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基をプロトン源含有イミノ官能性シランに添加することによって達成可能である。1つの実施形態においては、適切な量の少なくとも1つのブレンステッド-ローリー塩基は、イミノ官能性シラン中に存在するプロトン源のモル数に基づいて、少なくとも1モル当量、より特定的には約1から約10モル当量、そしてさらにより特定的には約1.2から約10モル当量である。
【0058】
1つの実施形態において、ブレンステッド-ローリー塩基は一般式(X)を有する化合物である:
M(OR) (X)
ここでMはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Rは水素、1から約20の炭素原子の炭化水素基、約20までの炭素原子、特定的には1から約12の炭素原子、そしてさらにより特定的には1から約6の炭素原子のヘテロ炭素基、孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道、またはMであり、そして下付文字fは1または2であり、但し(i)Mがアルカリ金属のとき、下付文字fは1;(ii)Mがアルカリ土類金属のとき、Rが孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道である場合を除いて下付文字fは2;(iii)RがMのとき、Mはアルカリ金属;そして(iv)Rが孤立電子対を含有する酸素原子のp軌道であるとき、Mはアルカリ金属であり下付文字fは1である。式(X)のブレンステッド-ローリー塩基は、アルカリ塩またはアルカリ水酸化物、アルコキシドまたは酸化物であることが理解されよう。
【0059】
別の実施形態においては、ブレンステッド-ローリー塩基(X)の好ましい群において、Mはアルカリまたはアルカリ土類金属、Rは水素または1から約20の炭素原子、特定的には1から約12の炭素原子、より特定的には1から約6の炭素原子の炭化水素基、そしてさらにより特定的にはメチルまたはエチルであり、下付文字fは1または2であり、但しMがアルカリ金属のとき下付文字fは1であり、Mがアルカリ土類金属のとき下付文字fは2である。
【0060】
この目的に使用可能なブレンステッド-ローリー塩基(X)の代表的で非限定的な例には、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)、NaOMe、KOMe、NaOEt、KOEt、CaO、MgO、BaOおよびこれらの任意の組み合わせのような、アルカリ金属およびアルカリ金属の水酸化物、アルコキシドおよび酸化物が含まれる。
【0061】
安定化されるイミノ官能性シランに添加されるブレンステッド-ローリー塩基(X)の量は、イミノ官能性シランおよびブレンステッド-ローリー塩基の合計重量に基づいて、一般に約0.0001から約10重量パーセント、特定的には約0.001から約5重量パーセント、そしてより特定的には約0.1から約1重量パーセントの範囲にある。
【0062】
本発明の1つの実施形態において、選択されるブレンステッド-ローリー塩基は、使用濃度においてイミノ官能性シランに可溶であり、イミノ官能性シランのシラン部分のアルコキシ官能性、例えばトリメトキシシラン官能性イミノシランの場合にはナトリウムメトキシド、トリエトキシシラン官能性イミノシランの場合にはナトリウムエトキシド等々に合致するものである。
【0063】
プロトン源の中和は、何らかの未反応のアミノシラン、アルデヒドおよび/またはケトン反応物質(単数または複数)を回収するための、イミノ官能性シラン反応媒体の蒸留前、蒸留中、または蒸留後に行うことができる。しかしながら一般には、中和用のブレンステッド-ローリー塩基はイミノ官能性シランに対して、そうした蒸留の間または直後に添加することが好ましく、そしてイミノ官能性シランおよびブレンステッド-ローリー塩基(X)の混合物からイミノ官能性シランが蒸留される、蒸留中に添加することがより好ましい。.
【実施例
【0064】
本発明の実施形態においては、ブレンステッド-ローリー塩基および/またはブレンステッド-ローリー酸の分離は、処理されたイミノ官能性シラン、すなわちイミノ官能性シランおよびブレンステッド-ローリー塩基および/またはブレンステッド-ローリー酸の混合物の蒸留により、抽出により、分取クロマトグラフィ法により、濾過により、または任意の他の在来のまたはその他により知られた分離方法、並びにそうした方法の2またはより多くの組み合わせのいずれかによって達成可能である。
比較例1:安定化されていない3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランの調製
【0065】
この例は比較の目的で提供されており、ケチミノシラン、すなわち3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランを調製するための既知のプロセスを説明する:
【化11】
【0066】
ディーンスタークトラップおよび凝縮器、熱電対、添加漏斗、およびストッパーを装着した4口丸底フラスコ(5L)に、メチルイソブチルケトン(MIBK)(3L)を仕込んだ。ディーンスタークトラップにMIBK(~125mL)を充填し、反応容器のヘッドスペースを窒素でフラッシュした。MIBKを加熱還流し、ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン(593.08g)を還流しているMIBKに対し、4時間15分の時間をかけて滴下により添加した。得られた反応混合物を、アミノシランの終了後さらに1時間加熱還流した。反応過程を通じて、およそ37mLの水がディーンスタークトラップに収集された。反応混合物は蒸留によって精製し、最初に~2.2Lの揮発性物質(MIBKおよびEtOH)を大気圧下で除去した。得られた粗3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランは、真空蒸留によってさらに精製した。
実施例1:安定化された3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランの調製
【0067】
ディーンスタークトラップおよび凝縮器、熱電対、および添加漏斗を装着した3口丸底フラスコ(1L)に、MIBK(585mL)を仕込んだ。ディーンスタークトラップにMIBK(~25mL)を充填し、反応容器のヘッドスペースを窒素でフラッシュした。MIBKを加熱還流し、ガンマアミノプロピルトリエトキシシラン(100mL)を還流しているMIBKに対し、1時間25分の時間をかけて滴下により添加した。得られた反応混合物を、アミノシランの添加完了後さらに1時間半加熱還流した。反応過程を通じて、およそ7mLの水がディーンスタークトラップに収集された。反応混合物は蒸留によって精製し、最初に~525mLの揮発性物質(MIBKおよびEtOH)を大気圧下で除去した。これらの軽質成分を除去した後、エタノール中21重量%のナトリウムエトキシド溶液(0.824mL、0.7156g)を粗(3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン)に添加した。このナトリウムエトキシドを含有する粗生成物は、真空蒸留によってさらに精製した。
【0068】
実施例1のイミノシランの改善された貯蔵安定性を比較例1のそれと対比して示すために、6週間の過程にわたって、両方の生成物試料を純度についてGCにより分析した。両方の物質は、テフロンでライニングしたキャップを備えた~20mLのガラスバイアルに格納し、ヘッドスペースを窒素でパージして、充填されたバイアルは光による劣化を防止するために暗いキャビネット内に貯蔵した。以下の表に示すように、エージングの4週間後に生成物のほぼ2%が失われた、比較例1の方法によって作成された生成物とは対照的に、実施例1の方法により作成されたイミノシランは、6週間の過程にわたって高い純度を維持した。
【表1】

実施例2~12:イミノ官能性シランの調製
【0069】
実施例1で記載したのと実質的に同じ手順を用いて、以下の表IIに示すブレンステッド-ローリー塩基を用いて、アミン、ケトンおよびアルデヒドからイミノ官能性シランを調製可能である:

実施例13:粗3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランを調製するための2段階プロセス
【0070】
ディーンスタークトラップ、凝縮器、熱電対、添加漏斗およびメカニカルスターラーを装着した4口丸底フラスコ(1L)に、メチルイソブチルケトン(502グラム、5モル)を仕込んだ。N-ブチルアミン(73.14グラム、1モル)を添加漏斗に入れた。反応混合物を加熱還流し、還流しているメチルイソブチルケトンに対してN-ブチルアミンを1時間10分の時間をかけて滴下により添加した。得られた反応混合物をN-ブチルアミンの添加完了後さらに1時間10分加熱還流した。反応過程を通じて、およそ18mLの水がディーンスタークトラップに収集された。ディーンスタークトラップおよび凝縮器を、3インチのビグリューカラムおよび蒸留ヘッドに置き換えた。およそ382グラムの揮発性物質、メチルイソブチルケトンおよびN-ブチルアミンを、280から420mmHgの範囲の減圧下において、真空ストリッピングによって除去した。これらの軽質成分を除去した後、等モル量のガンマアミノプロピルトリエトキシシランを反応混合物に添加した。N-ブチルアミンを55℃および140mmHgにおいて真空によって除去し、粗3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランを1マイクロメートルのフィルターパッドを介して濾過した。
【0071】
粗3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランは、蒸留プロセスの間にブレンステッド-ローリー塩基で処理可能である。
実施例14:テレフタルアルデヒドおよび3-アミノプロピルトリエトキシシランの粗アルジミノ付加物の調製のための2段階プロセス
【0072】
ディーンスタークトラップ、凝縮器、熱電対、添加漏斗およびメカニカルスターラーを装着した4口丸底フラスコ(5L)に、テレフタルアルデヒド(569グラム、4.24モル)をトルエン(2,020グラム、22モル)と共に仕込んだ。N-ブチルアミン(620グラム、8.48モル)を添加漏斗に入れた。反応混合物を加熱還流し、還流している混合物に対してN-ブチルアミンを3時間45分かけて滴下により添加した。反応過程を通じて、およそ150mlの水が収集された。ディーンスタークトラップおよび凝縮器を真空蒸留ヘッドに置き換えた。トルエンおよびN-ブチルアミンからなるおよそ1,777グラムの揮発性物質を、18から150mmHgの範囲の減圧下において、真空ストリッピングによって除去した。
【0073】
これらの軽質成分を除去した後、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(2,061.5グラム、9.33モル)を反応混合物に添加した。N-ブチルアミンおよび過剰の3-アミノプロピルトリエトキシシランを240から11mmHgの範囲の減圧下に、室温と170℃の間の反応器温度において除去した。粗アルジミノシラン付加物は1マイクロメートルのフィルターパッドを介して濾過した。
【0074】
粗アルジミノシラン付加物は、蒸留プロセスの間にブレンステッド-ローリー塩基で処理することができる。
実施例15:水酸化カリウムからの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランの蒸留
【0075】
水酸化カリウム(0.1グラム)を、比較例1に従って調製した100グラムの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランに添加した。この混合物を108℃および1.57mmHgでの真空蒸留を介して精製し、透明で無色の溶液を得た。生成物の純度はGCを用いて99.61パーセントであった。14日間50℃でエージングした後、エージングした生成物の純度は99.52パーセントであった。この実験は、生成物を水酸化カリウムから首尾よく蒸留可能であることを示している。
実施例16:水酸化カルシウムからの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランの蒸留
【0076】
水酸化カルシウム(0.11グラム)を、比較例1に従って調製した106.2グラムの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランに添加した。この混合物を124℃の温度および2.4mmHgの圧力での真空蒸留を介して精製し、透明で無色の溶液を得た。生成物の純度はGCを用いて99.34パーセントであった。この実験は、生成物を水酸化カルシウムから首尾よく蒸留可能であることを示している。
実施例17:酸化マグネシウムからの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランの蒸留
【0077】
酸化マグネシウム(0.10グラム)を比較例1に従って調製した100グラムの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランに添加した。この混合物を120℃の温度および1.73mmHgの圧力での真空蒸留を介して制せし、透明で無色の溶液を得た。生成物の純度はGCを用いて99.57パーセントであった。この実験は、生成物を水酸化カルシウムから首尾よく蒸留可能であることを示している。
実施例18:炭酸ナトリウムからの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランの蒸留
【0078】
炭酸ナトリウム(無水)(0.1グラム)を比較例1に従って調製した100グラムの3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシランに添加した。この混合物を107℃の温度および1.52mmHgの圧力での真空蒸留を介して精製し、透明で無色の溶液を得た。生成物の純度はGCを用いて99.71パーセントであった。この例は、生成物を炭酸ナトリウムから首尾よく蒸留可能であることを示している。
実施例19:3-(1-オクチリデン)アミノプロピルトリメトキシシランの調製
【0079】
イミノ官能性シラン
【化12】

を以下のようにして調製した:

【0080】
ディーンスタークトラップ、凝縮器、熱電対、添加漏斗およびメカニカルスターラーを装着した4口丸底フラスコ(2L)に、オクタナール(96グラム、0.75モル)およびトルエン(800グラム、8.68モル)を仕込んだ。3-アミノプロピルトリメトキシシラン(169グラム、0.94モル)を添加漏斗に入れた。反応混合物を加熱還流し、還流しているトルエン/オクタナール混合物に対して3-アミノプロピルトリメトキシシランを2時間25分の時間にわたって滴下により添加した。反応過程を通じておよそ16mLの水がディーンスタークトラップに収集された。ディーンスタークトラップおよび凝縮器をショートパス蒸留ヘッドに置き換えた。トルエンおよびメタノールを含む、およそ780グラムの揮発性物質を、大気圧下での蒸留および続いての350から11mmHgでの真空ストリッピングによって除去した。軽質成分を除去した後、メタノール中25重量%のナトリウムメトキシド溶液1.1グラムを、220グラムの粗3-(1-オクチリデン)アミノプロピルトリメトキシシランに添加し、126から141℃の範囲の温度および1.45mmHgの圧力での真空蒸留を介してさらに精製して、透明で無色の溶液を得た。
【0081】
以上の記載は多くの詳細事項を含んでいるが、そうした詳細事項は本発明に対する限定として解釈されてはならず、単にその好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、本願に添付の請求項に規定された発明の範囲および思想の範囲内において、多くの他の実施形態を想起するであろう。