(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】被検者における活動をモニタ及び/または刺激するための電極装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/293 20210101AFI20230509BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61B5/293
A61N1/05
(21)【出願番号】P 2019511870
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 AU2017050939
(87)【国際公開番号】W WO2018039732
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-09-01
(32)【優先日】2016-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521168841
【氏名又は名称】イーピーアイ-マインダー・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エドワード・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェームズ・クック
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン・バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】チュア・ヴァネッサ・マキシム
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ライ
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0099430(US,A1)
【文献】特表平06-505665(JP,A)
【文献】特表2013-505783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081362(US,A1)
【文献】特表2014-521400(JP,A)
【文献】特開平09-140802(JP,A)
【文献】特開2015-112113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
5/24-5/398
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極装置であって、
エラストマー材料製の細長い一体型の埋込み可能ボディと、
前記一体型の埋込み可能ボディに配置されて、前記一体型のボディの長さに沿って離間された複数の電極と、
前記一体型の埋込み可能ボディを通って延びて前記複数の電極に電気的に接続する1つ以上の伝導性要素を含む、螺旋形状の電気接続部と、
前記エラストマー材料製の一体型のボディを通って延びかつ前記エラストマー材料製の一体型のボディにより直接覆われて、前記螺旋形状の電気接続部の径方向内側に配置された補強装置と、を含み、
前記補強装置は螺旋形状または波形を有し、
前記一体型のボディの一部は、前記補強装置と前記電気接続部との間に配置されており、
前記一体型のボディの長さは、前記一体型のボディを張力下に置くことによって延長可能であり、前記補強装置は、前記埋込み可能ボディの長さが張力下で延びることができる度合いを制限し、
前記補強装置は、前記複数の電極の各々に固定されている、前記電極装置。
【請求項2】
前記一体型のボディの伸長方向において、前記一体型のボディを張力下に置いたときに前記補強装置の長さは延長可能であり
前記一体型のボディの伸長方向において、前記一体型のボディを張力下に置いたときに、前記補強装置は最大の延長長さを有し、前記電気接続部は最大の延長長さを有し、
前記補強装置の最大の延長長さは前記電気接続部の最大の延長長さよりも短い、請求項1に記載の電極装置。
【請求項3】
前記一体型のボディの伸長方向において、前記一体型のボディを張力下に置いたときに、前記複数の電極に隣接する前記補強装置の部分は、前記複数の電極からさらに遠くに離間している前記補強装置の部分よりも延びが小さいように構成されている、請求項1または2に記載の電極装置。
【請求項4】
前記一体型のボディを張力下に置くと、前記補強装置の螺旋形状または波形が真っ直ぐになり、補強部材の長さが延長される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項5】
前記複数の電極から離間する部分よりも前記複数の電極に隣接する部分における方が前記補強装置は真っ直ぐである、請求項3または4に記載の電極装置。
【請求項6】
前記補強装置は、前記補強装置の螺旋形状または波形が実質的に完全にまっすぐであるときに最大の延長長さに達するように構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項7】
前記補強装置及び前記電気接続部はそれぞれ、螺旋形状を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項8】
前記補強装置及び前記電気接続部の螺旋形状は同心である、請求項7に記載の電極装置。
【請求項9】
前記補強装置の螺旋形状の直径は前記電気接続部の螺旋形状の場合よりも小さい、および/または、前記補強装置の螺旋形状のピッチは前記電気接続部の螺旋形状のピッチよりも大きい、請求項7または8に記載の電極装置。
【請求項10】
前記補強装置は繊維であり、
前記繊維の外面は前記一体型のボディの前記エラストマー材料によって直接覆われている、請求項1から9のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項11】
前記補強装置は前記
複数の電極の
各々に結びつけられている請求項1から10のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項12】
前記複数の電極のうちの少なくとも1つは、前記一体型のボディの一部の周りで周囲方向に延びる伝導性材料の環状部分を含み、
前記補強装置は前記複数の電極のうちの少なくとも1つを通って延びる、請求項1から11のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項13】
前記一体型のボディの長さに沿って位置する少なくとも1つのアンカーを含み、
前記少なくとも1つのアンカーは前記一体型のボディから半径方向外側に突き出て、
前記少なくとも1つのアンカーは前記一体型のボディの近位端に向かう角度で突き出て、
前記少なくとも1つのアンカーに隣接する前記一体型のボディの表面に凹部が設けられ、前記アンカーは前記凹部内に圧縮可能である、請求項1から12のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項14】
前記複数の電極は、脳の右半球及び左半球の一方上に配置されるように構成された第1の電極対と、前記脳の前記右半球及び左半球の他方上に配置されるように構成された第2の電極対とを含む、および/または、前記電極装置は脳活動信号をモニタするためのものである、請求項1から13のいずれか1項に記載の電極装置。
【請求項15】
前記電極装置の少なくとも前記一体型のボディは、被検者の頭皮と頭蓋との間に、又は、帽状腱膜下腔内に埋め込むために構成される、請求項1から14のいずれか1項に記載の電極装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2016年9月1日に出願のオーストラリア仮出願第2016903501号に対する優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、被検者における活動をモニタ及び/または刺激する電極装置(たとえば、てんかん事象などの脳活動をモニタするための電極装置)に関する。
【背景技術】
【0003】
てんかんは、世界でもっとも良く知られた重症な脳疾患であると考えられる。推定で5000万人の患者が世界に存在し、毎年2400万人の新しい患者が発生している。
【0004】
てんかんは、短時間で起こるほとんど気付かない発作から、患者が激しく震えるより明白な発作まで、様々なてんかん発作によって特徴付けられる脳の状態である。てんかん発作は非誘発性かつ再発性で、原因不明によるものである。
【0005】
てんかん発作の発生を検出して、発作頻度及び重症度のモニタリングを可能にし、てんかんの診断及び/または適切な発作制御方針の決定を行うための安全で信頼性が高く快適な方法を有することが望ましい。
【0006】
てんかん発作をモニタするための現在の技術はEEG記録に基づいている。これは典型的に、頭皮の外面に取り付けたEEG電極を用いるか、または外科的に埋め込んだ頭蓋内EEG電極を介して行われる。
【0007】
本明細書に含まれる文献、行為、材料、装置、物品等のいかなる説明も、これらの事柄の一部または全部が先行技術基準の一部を形成しているということを認めるか、または本出願の各請求項の優先日の前に存在していたので、本開示に関連する分野において良く知られた一般知識であったということを認めるものと解釈してはならない。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、本開示は、電極装置であって、エラストマー材料を含む細長い埋込み可能ボディと、埋込み可能ボディの長さに沿って位置する複数の電極と、エラストマー材料を通って延びて電極に電気的に接続する1つ以上の伝導性要素を含む電気接続部と、エラストマー材料を通って延びる補強装置と、を含み、埋込み可能ボディの長さは、埋込み可能ボディを張力下に置くことによって延長可能であり、補強装置は、埋込み可能ボディの長さが張力下で延びることができる度合いを制限する、電極装置を提供する。
【0009】
本明細書の全体に渡って、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形例には、記載した要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップのグループを包含することを暗示するが、任意の他の要素、整数、もしくはステップ、または要素、整数、もしくはステップのグループを排除することは暗示しないと理解されるだろう。
【0010】
別の態様では、本開示は、電極装置であって、エラストマー材料を含む細長い埋込み可能ボディと、埋込み可能ボディの長さに沿って位置する複数の電極と、エラストマー材料を通って延びて電極に電気的に接続する1つ以上の伝導性ワイヤを含む電気接続部と、を含み、電極のうちの少なくとも1つは埋込み可能ボディの一部の周りで周囲方向に延びる、電極装置を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、被検者の組織層間の埋め込み場所に電極装置を送出するための送出装置であって、カニューレと、カニューレの近位端に接続された柄部と、少なくとも部分的にカニューレを通って延びる内部部材であって、カニューレの遠位端開口部で露出する遠位先端部を有し、電極装置を受け取るための開口部をカニューレ内に設けるために取り外し可能である内部部材と、を含む送出装置を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、電極装置を埋め込む方法であって、被検者の組織内に第1の切開及び第2の切開を形成することであって、第1及び第2の切開は離間している、形成することと、第1の切開を通してカニューレを導入し、カニューレを組織層の間を第2の切開まで押して、カニューレが第1及び第2の切開の間を延び、カニューレの少なくとも遠位端開口部が第2の切開を通して露出するようにすることであって、内部部材が少なくとも部分的にカニューレを通って延び、カニューレの遠位端開口部で露出する遠位先端部を有する、露出するようにすることと、カニューレの露出する遠位端開口部を介してカニューレから内部部材を取り出すことと、カニューレ内に電極装置を挿入することと、第1と第2の切開の間の位置に電極装置を残しながら第1の切開からカニューレを引き出すことと、を含む方法を提供する。
【0013】
本開示のこれら及び他の態様は、図及び添付の請求項を含む本発明の以下の詳細な説明を読んだ後に当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の実施形態は、以下の図を参照して非限定的な例として説明されない。
【0015】
【
図1a】本開示の実施形態による電極装置の側面図を示す。
【
図1b】本開示の実施形態による電極装置の平面図を示す。
【
図2】
図1a及び1bの電極装置の電気部品の概略図を示す。
【
図3a】
図1a及び1bの電極装置の一部の断面図を示す。
【
図3b】
図1a及び1bの電極装置の一部の断面図を示す。
【
図3c】
図1a及び1bの電極装置の一部の断面図を示す。
【
図4a】
図1a及び1bの電極装置の遠位端部分の平面図を示す。
【
図4b】
図1a及び1bの電極装置の遠位端部分の側面図を示す。
【
図5a】
図1a及び1bの電極装置の補強装置及び電気接続部の表現であり、補強装置及び電気接続部に張力が印加される前を示す。
【
図5b】
図1a及び1bの電極装置の補強装置及び電気接続部の表現であり、補強装置及び電気接続部に張力が印加された後を示す。
【
図6】本開示の代替的な実施形態による電極装置の一部の断面図を示す。
【
図7a】アンカーを含む
図1a及び1bの電極装置の一部の平面図を示す。
【
図7b】アンカーを含む
図1a及び1bの電極装置の一部の平面図を示す。
【
図7c】アンカーを含む
図1a及び1bの電極装置の一部の平面図を示す。
【
図8】本開示の実施形態による電極装置の電極の埋め込み場所を例示する。
【
図9】本開示の実施形態による電極装置の電極の埋め込み場所をさらに例示する。
【
図10a】本開示の実施形態による電極装置を埋め込むための送出装置の平面図を示す。
【
図10b】本開示の実施形態による電極装置を埋め込むための送出装置の側面図を示す。
【
図12a】本開示の実施形態による電極装置を埋め込む方法におけるステップを例示する。
【
図12b】本開示の実施形態による電極装置を埋め込む方法におけるステップを例示する。
【
図13a】本開示の実施形態による電極装置を埋め込む方法におけるステップをさらに例示する。
【
図13b】本開示の実施形態による電極装置を埋め込む方法におけるステップをさらに例示する。
【
図13c】本開示の実施形態による電極装置を埋め込む方法におけるステップをさらに例示する。
【
図13d】本開示の実施形態による電極装置を埋め込む方法におけるステップをさらに例示する。
【
図14】本開示の実施形態による電極装置の埋め込み場所を例示する。
【
図15a】本開示の別の実施形態による電極装置の側面図を示す。
【
図15b】本開示の別の実施形態による電極装置の平面図を示す。
【
図16a】本開示の別の実施形態による電極装置内で用いる電極の端面図を示す。
【
図16b】本開示の別の実施形態による電極装置内で用いる電極の側面図を示す。
【
図16c】電極装置の埋込み可能ボディと嵌合する電極の端面図を示す。
【
図17a】本開示のさらに別の実施形態による電極装置内で用いる電極の端面図を示す。
【
図17b】本開示のさらに別の実施形態による電極装置内で用いる電極の側面図を示す。
【
図17c】電極装置の埋込み可能ボディと嵌合する電極の端面図を示す。
【
図18a】本開示のさらに別の実施形態による電極装置内で用いる電極の端面図を示す。
【
図18b】本開示のさらに別の実施形態による電極装置内で用いる電極の側面図を示す。
【
図18c】電極装置の埋込み可能ボディと嵌合する電極の断面側面図を示す。
【
図19a】本開示のさらに別の実施形態による電極装置内で用いる電極の端面図を示す。
【
図19b】本開示のさらに別の実施形態による電極装置内で用いる電極の側面図を示す。
【
図19c】電極装置の埋込み可能ボディと嵌合する電極の断面側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態は、被検者の体内組織における電気的活動を、複数の電極(電極の1つ以上は被検者に埋め込まれている)を含む電極装置を用いてモニタリング及び/または刺激することに関する。ある実施形態は、たとえば、脳活動(たとえば、てんかん性脳活動)をモニタするために被験者の頭部に埋め込まれた電極装置に関する。しかし、本開示による電極装置は、電気的活動のモニタリング及び/または刺激が望まれる身体の種々の異なる場所に埋め込むためのものであってもよい。場所はたとえば、人間または動物の消化器系、呼吸器系、泌尿器系、生殖器系、内分泌系、心臓血管系、リンパ液系、外皮系、及び神経系のうちの1つ以上の部分である。
【0017】
図1a及び1bを参照して、一実施形態では、電極装置100が提供される。電極装置100は、細長い埋込み可能ボディ110と、埋込み可能ボディ110に沿って埋込み可能ボディ110の長さ方向に位置する複数の電極120とを含む。埋込み可能ボディの近位端において、電極120に送り及び/またはそこから受け取ることができる電気信号を処理するための処理装置130が設けられている。電気増幅器140(たとえば、プリアンプ)が、埋込み可能ボディ110内の電極120と処理装置130との間に配置されている。代替的な実施形態では、
図15a及び15bに例示するように、電気増幅器140’を、埋込み可能ボディ110’内に配置しないで、電極装置100’の処理装置130’に一体化してもよい。
【0018】
図3aを参照して、電極120の1つに隣接する電極装置100の一部の断面図を示す。電極120は、たとえば、増幅器140及び処理装置130に、埋込み可能ボディ110を通って延びる電気接続部150によって電気的に接続されている。また補強装置160が電極装置100内に設けられている、補強装置160は、埋込み可能ボディ110を通って延びて、埋込み可能ボディ110の長さが張力下で延びることができる度合いを制限する。
【0019】
この実施形態では、
図1a及び1bを参照して、4つの電極120が設けられている。電極120は、埋込み可能ボディ110に沿って、埋込み可能ボディ110の増幅器140と遠位先端部111との間に離間している。埋込み可能ボディ110の遠位先端部111はテーパ状になっている。4つの電極120は、電極の2つの電極対121、122に構成されている。2つの最も遠位の電極120は第1の電極対121を形成し、2つの最も近位の電極120は第2の電極対122を形成している。この実施形態では、第1の対121の電極120は互いに離間していて、その距離xは約40~60mm、たとえば約50mm(電極120の中心間で測定)であり、第2の対122の電極120も互いに離間していて、その距離xは約40~60mm、たとえば約50mm(電極120の中心間で測定)である。第1及び第2の電極対121、122は互いに離間していて、その距離yは約30~50mm、たとえば約40mm(2つの対のうち互いに隣接する電極の中心間で測定)である。
【0020】
電極装置100の電気部品の概略図を
図2に示す。増幅器140は、処理装置130と一体化されていようと分離されていようと、電池を含んでいてもよく、また電極120と処理装置130との間で送られる電気信号を増幅してもよい。処理装置130は、送受信装置、アナログデジタル変換器、及びプロセッサを含んで、電極120との間で送受信される電気信号に関するデータを処理してもよい。処理装置130は処理データを記憶するためのメモリを含んでいてもよい。処理装置130は、人工内耳とともに広く用いられるタイプの処理装置と同様であってもよいが、他の構成も可能である。増幅器140は、たとえば、電極120と同一直線上にあるときに、たとえば、医療グレードチタンで形成して、セラミック製フィードスルーアセンブリを取り付けてもよい。
【0021】
処理装置130によって処理及び記憶されるデータは、たとえば未加工EEGデータであってもよい。EEGデータを無線でまたはワイヤを介して外部コンピューティング装置190に送信して、データを分析してもよい。コンピューティング装置190は未加工EEG信号を分析して、目標事象が起きたか否かを判定してもよい。事象に関するデータを、分析に基づいてコンピューティング装置190が生成してもよい。一例では、コンピューティング装置190は脳活動信号を分析して、目標事象(たとえば、てんかん事象)が生じたか否かを判定してもよく、てんかん事象に関するデータを、分析に基づいてコンピューティング装置190が生成してもよい。
【0022】
コンピューティング装置190を用いて、電極装置100の外部でデータ分析を行うことにより、たとえば、電極装置100内での電力消費量が小さくなる場合があり、電極装置100が保持する幾何学的形状を小さくすることができる。また、コンピューティング装置190の処理能力は、電極装置100に含まれるいずれかのプロセッサを用いて可能なものより著しく高くてもよい。コンピューティング装置190は、電極装置100から受け取った電気データを連続的に記録するソフトウェアを実行してもよい。
【0023】
処理装置130及び/またはコンピューティング装置190は、信号処理を行うために、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)及び/または他のコンポーネント及び/またはソフトウェアモジュールを含むことができる。全般的に、使用するいかなるプロセッサも、本開示の1つ以上の特徴を制御するための多くの制御または処理モジュールを含んでいてもよいこと、及び所望のデータ(たとえば、未加工または処理済みのEEGデータ)を記憶するための1つ以上の記憶要素を含んでいてもよいことが理解される。モジュール及び記憶要素は、1つ以上の処理装置及び1つ以上のデータ記憶装置を用いて実装することができる。モジュール及び/または記憶装置は、1つの場所にあってもよいし、または複数の場所に渡って分配して1つ以上の通信リンクによって相互接続してもよい。電極装置とともに用いる処理装置としては以下のものを挙げてもよい。マイクロプロセッサ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、スマートフォン、携帯情報端末、及び他のタイプの装置(たとえば、具体的に本開示による方法を行うために製造された装置)。
【0024】
さらに、処理モジュールを、プログラム命令を含むコンピュータプログラムまたはプログラムコードによって実施することができる。コンピュータプログラム命令は、ソースコード、オブジェクトコード、マシンコード、または任意の他の記憶データであって、説明したステップをプロセッサに実行させるように動作可能な記憶データを含むことができる。コンピュータプログラムは、任意の形式のプログラミング言語で書き込むことができ(たとえば、コンパイルまたはインタープリットされた言語)、また任意の形式で実施することができる(たとえば、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくは他のユニットであって、コンピューティング環境での使用に適したものとして)。データ記憶装置(複数可)としては、好適なコンピュータ可読媒体、たとえば揮発性(たとえば、RAM)及び/もしくは不揮発性(たとえば、ROM、ディスク)メモリまたは他のものを挙げてもよい。
【0025】
図3b及び3c(
図3aのラインB-B及びC-Cに沿った断面図をそれぞれ示す)を参照して、埋込み可能ボディ110は丸い(たとえば、実質的に円形または卵形の)断面プロファイルを有している。同様に、電極120はそれぞれ、丸い(たとえば、実質的に円形または卵形の)断面プロファイルを有している。電極120はそれぞれ、埋込み可能ボディ110の一部の周りで完全に周囲方向に延びている。埋込み可能ボディ110及び電極120をこのように構成することによって、埋込み可能ボディ110及び電極120の正確な方位(被検者に埋め込まれたとき)はそれほど重要ではない。たとえば、電極120は、実質的に任意の方向にある組織と電気的に相互作用してもよい。これに関連して、電極120は360度の機能を有すると考えてもよい。また丸い断面の構成によって、電極装置100の埋込み可能部分を目標場所に挿入することが簡単になり、体内組織に損傷を与える危険性を小さくすることができる。たとえば、埋込み可能ボディ110は挿入カニューレまたはスリーブとともに用いることができ、また本来は組織に外傷を生じさせ得る鋭い刃がなくてもよい。
【0026】
この実施形態では、埋込み可能ボディ110はエラストマー材料(たとえば、医療グレードシリコーン)で形成されている。各電極120は、埋込み可能ボディ110の一部の周りで周囲方向に延びる伝導性材料の環状部分を含んでいる。より具体的には、各電極120は、埋込み可能ボディ110の一部(詳細には、埋込み可能ボディ110のエラストマー材料の一部)の周りで周囲方向に延びる伝導性材料の中空円筒を含む。電極120は「リング」電極と考えてもよい。
【0027】
しかし、代替的な実施形態では、埋込み可能ボディのエラストマー材料の一部の周囲の周りに完全には延びない電極を設けてもよい。たとえば、
図16a~16cを参照して、一実施形態では、1つ以上の電極410が、埋込み可能ボディ110’のエラストマー材料の一部の周りに部分的に、より詳細には約4分の3延びるようにデザインされている。また、
図17a~17cを参照して、一実施形態では、1つ以上の電極420が、埋込み可能ボディ110’’のエラストマー材料の一部の周りに部分的に、より詳細には約2分の1延びるようにデザインされている。
図16a~17cの実施形態では、電極410、420は伝導性材料の部分円筒であり、円筒の4分の1または2分の1の周囲方向部分が無い。円筒の周囲の4分の1または2分の1が無いか、または実際には円筒の約4分の1~約2分の1の間のいずれかが無いことによって、たとえば、電極装置に対する製造プロセスを単純化してもよい。これによって、電極装置のエラストマー材料及び/または他の特徴部を、たとえば電極の端部を通して送り込むことを必要とせずに、電極の側面を通して延ばすことを可能にし得る。
【0028】
図1a及び1bの実施形態を再び参照して、また
図4a及び4bをさらに参照して、電極120と埋込み可能ボディ110との間の嵌合を強化するために、この実施形態では、各電極120の外面に渡って延びるストラップ112が設けられている。この実施形態では、2つのストラップ112が、各電極120の実質的に両側に、埋込み可能ボディ110の伸長方向と垂直な方向に配置されている。ストラップ112は、埋込み可能ボディ110の部分113a、113b間に接続されている。部分113a、113bは、電極120の両側に埋込み可能ボディの伸長方向に配置されている。部分113a、113bを以下では側面部分と言う。埋込み可能ボディ110が張力下に置かれて及び/または湾曲したときに、ストラップ112によって、側面部分113a、113bが電極120から引き離されるかまたは離脱することを防ぐことができる。この実施形態では、ストラップ112は側面部分113a、113bと同じエラストマー材料で形成されている。ストラップ112は、側面部分113a、113bと一体に形成されている。側面部分113a、113bとのその接続点から、ストラップ112は各電極120の中心部分に向かって幅が狭くなる。その結果、ストラップ112が電極120の表面をカバーする度合いが最小限になって、比較的大きな電極表面が電極120の周囲の周りに露出した状態であり、隣接する体内組織と電気接点を形成することが確実になる。
図3bを参照して、各電極の周囲の周りに、外部電極表面の少なくとも75%、外部電極表面の少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%が、たとえば組織との電気接点を形成するために露出していてもよい。
【0029】
代替的な実施形態において、異なる数のストラップ112を用いてもよい。たとえば、1つ、3つ、4つ以上のストラップ112である。より多数のストラップ112を用いる場合、各ストラップ112の幅を狭くしてもよい。ストラップ112を、各電極120の周囲の周りに一様に分配してもよいし、不規則に分配してもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、ストラップ112を省略して、電極120の周囲の周りに、すべての外部電極表面が組織との電気接点を形成するために露出することを確実にしてもよい。
【0030】
ストラップを省略した実施形態を
図18a~18cに例示する。この実施形態では、電極430が設けられている。電極430は、電極装置の伸長方向における電極430の反対端に縮径431の部分を含むように変更されている。縮径は、電極430を形成する円筒の壁の厚みを小さくすることによって実現するが、それに加えてまたはその代わりに、縮径部分を、電極を形成する伝導性材料を曲げるかもしくは成形することによって、または他の方法で形成してもよい。
図18cに示すように、縮径部分は、埋込み可能ボディ110’’’のエラストマー材料の下に配置される(たとえば、完全に埋め込まれた状態である)ように構成されている。エラストマー材料は、縮径部分431の上方及び縮径部分431の下方の両方に延びて、埋込み可能ボディ内のこれらの電極部分を捕捉し、埋込み可能ボディとの嵌合を強化することができる。同様の縮径部分411、421を、部分円筒として形成された電極(たとえば、
図16a~17cに例示する電極410、420のような)とともに設けることができる。
【0031】
図18bに示すように、縮径部分431(または実際には、エラストマー材料に直接接続された電極の任意の他の部分)に、1つ以上のアパーチャ433(たとえば、孔及び/またはスロット)などを設けてもよい。製造中に、エラストマー材料をアパーチャ433を通して流して、埋込み可能ボディに電極430をロックしてもよい。同様のアパーチャを他の実施形態の電極(たとえば、
図16~17cに例示したもの)に導入してもよい。
【0032】
前述したように、埋込み可能ボディ110はエラストマー材料(たとえば、シリコーン)で形成されている。エラストマー材料によって、埋込み可能ボディ110は湾曲し、曲がり、及び伸びることができて、埋込み可能ボディ110が、目標埋め込み位置まで送られたときに容易にねじ曲がれるように、また目標埋め込み位置における体内組織の形状に容易に適合できるようになっている。またエラストマー材料を用いることによって、埋め込み中または以後の使用中に被検者に対して外傷が生じるわずかな危険性も減ることが確実になる。
【0033】
本開示の実施形態では、電極120に対する電気接続部150は比較的脆い白金ワイヤ伝導性要素を含んでいる。
図3a~3cを参照して、たとえば、埋込み可能ボディ110が湾曲し、曲がり、及び/または伸びる間に、白金ワイヤが破断するかまたはポキンと折れる可能性を減らすために、電気接続部150には波状形状(より具体的には、この実施形態では螺旋形状)が与えられているが、他の非直線形状も用いてよい。電気接続部150のたとえば螺旋形状によって、埋込み可能ボディとともに電気接続部150が伸び、曲がり、及び湾曲することができる。埋込み可能ボディ110が湾曲し、曲がり、及び/または伸びることは典型的に、被検者に埋込み可能ボディを埋め込む間に、及び使用後に被検者から埋込み可能ボディ110を任意に取り出すときに起こる。
【0034】
前述したように、補強装置160も電極装置100内に設けられている。補強装置160は、埋込み可能ボディ110を通って延びており、埋込み可能ボディ110の長さが張力下で延びることができる度合いを制限するために設けられている。電極装置100が張力下に置かれたとき、補強装置160は電極装置100に加わる歪みの大部分に耐えることができる。この実施形態では、柔軟で引張り強度が高い材料の繊維(たとえば、ストランド、フィラメント、コード、またはストリング)により補強装置160が設けられている。詳細には、超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)(たとえば、Dyneema(商標))の繊維が、本実施形態において補強装置160として設けられている。補強装置160は、埋込み可能ボディ110を通って埋込み可能ボディ110の長さ方向に延びて、埋込み可能ボディ110のエラストマー材料によって概ね直接覆われている。
【0035】
補強装置160は、UHMwPEに加えてまたはUHMwPEに対する代替物として、種々の異なる材料を含んでいてもよい。補強装置は、他のプラスチック及び/または非伝導性材料たとえばポリパラフェニレンテレフタルアミド(たとえば、Kevlar(商標))を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、金属繊維または外科用鋼を用いてもよい。
【0036】
電気接続部150と同様に、補強装置160も波状形状(より具体的には、この実施形態では螺旋形状)を有しているが、他の非直線形状を用いてもよい。補強装置160の螺旋形状は電気接続部150の螺旋形状とは異なる。たとえば、
図3a~3cから明らかなように、補強装置160の螺旋形状の直径は電気接続部150の螺旋形状の場合よりも小さい。また、補強装置160の螺旋形状のピッチは電気接続部150の螺旋形状の場合よりも大きい。
【0037】
埋込み可能ボディ110が張力下に置かれると、埋込み可能ボディのエラストマー材料が伸びる。その結果、電気接続部150及び補強装置160の両方の螺旋形状が真っ直ぐになる。これは、
図5a及び5bの比較から明らかである。電気接続部150及び補強装置は160が真っ直ぐになると、それらの長さは埋込み可能ボディ110の伸長方向に長くなると考えることができる。したがって、埋込み可能ボディ110が張力下に置かれたとき、電気接続部150及び補強装置160のそれぞれの長さは埋込み可能ボディ110の伸長方向に延長可能である。
【0038】
電気接続部150及び補強装置160のそれぞれに対して、埋込み可能ボディの伸長方向における理論上の最大の延長長さに達するのは、その螺旋形状(または用いてもよい任意の他の非直線形状)が実質的に完全にまっすぐになるときである。しかし、電気接続部150及び補強装置160の螺旋形状の違いに起因して、補強装置160の最大の延長長さは電気接続部150の最大の延長長さよりも短い。したがって、埋込み可能ボディ110が張力下に置かれたとき、補強装置160がその最大の延長長さに達するのは、電気接続部150がその最大の延長長さに達する前になる(再び、
図5a及び5bに例示する)。実際に、補強装置160によって、電気接続部150がその最大の延長長さに達することを実質的に不可能にすることができる。電気接続部150は比較的脆い可能性があり、特に張力下に置かれたときに、また特に最大の延長長さに達したときに破損しやすい傾向があり得る。そのため、補強装置160によって、埋込み可能ボディ110が張力下に置かれたときに電気接続部150が損傷を受ける可能性を減らすことができる。電気接続部150とは対照的に、補強装置160がその最大の延長長さに達したとき、その高い引張り強度によって、電極装置100に加わる著しい量の歪みに耐えることができ、電極装置100の電気接続部150及び他のコンポーネントに対する損傷が妨げられる。
【0039】
電極装置100の他のコンポーネントが補強装置160によって損傷から保護されることを考慮して、埋込み可能ボディ110は、張力下に置かれると損傷または破損する傾向があり得ることに注目されたい。埋込み可能ボディ110のエラストマー材料は、張力下に置かれたときにその伸長方向における理論上の最大の延長長さを有する。最大の延長長さとはエラストマー材料がその弾性限度に達する点である。この実施形態では、補強装置160の最大の延長長さもまた埋込み可能ボディ110の最大の延長長さよりも短い。したがって、埋込み可能ボディ110が張力下に置かれたとき、補強装置160がその最大の延長長さに達するのは、埋込み可能ボディ110がその最大の延長長さに達する前になる。実際に、補強装置160によって、埋込み可能ボディ110がその最大の延長長さに達することを実質的に不可能にすることができる。埋込み可能ボディ110のエラストマー材料は比較的脆い可能性があり、特に張力下に置かれたときに、また特にその弾性限度に達したときに破損しやすい傾向があり得、補強装置160によって、埋込み可能ボディ110が張力下に置かれたときに損傷を受ける可能性を減らすことができる。
【0040】
この実施形態では、補強装置160及び電気接続部150の螺旋形状は同心配置で設けられている。その直径がより小さいために、補強装置160を電気接続部150の半径方向内側に配置することができる。このような位置決めを考慮すると、補強装置によって、埋込み可能ボディ110に対する強化コアの形状が得られる。同心配置によって、強度及び堅固性の増加がもたらされる一方で、張力下に置かれたときの埋込み可能ボディ110の歪みが比較的小さく、最適な外科処理特性が得られる。
【0041】
図示するように、補強装置160は埋込み可能ボディ110のエラストマー材料によって直接覆われている。したがって、この実施形態では、螺旋形状の補強装置160がエラストマー材料以外の材料と接触することが回避されている。螺旋状に成形された補強装置は他のストランドまたは繊維と絡むことも絡み合うこともなく、たとえば(たとえば、ロープのストランドとは対照的に)、その螺旋形状に対して相当量のたわみが生じ得ることが確実である。その結果、螺旋形状は、たとえば、張力下でまっすぐな構成に移行することができる。
【0042】
補強装置160の配置は、埋込み可能ボディ110が張力下に置かれたときに、補強装置160の長さが、埋込み可能ボディ110が張力下にないときのその長さの約20%延長可能となるように行われる。それにもかかわらず、本開示の実施形態において、補強装置160として、埋込み可能ボディが張力下にないときの補強装置の長さの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、もしくは少なくとも25%、またはそれ以外の値で延長可能な補強装置160を用いてもよい。埋込み可能ボディの伸長方向における補強装置の最大の延長長さは、埋込み可能ボディが張力下にないときのその長さの約5%、約10%、約15%、約20%、もしく約25%、またはそれ以外の値であってもよい。
【0043】
図3aに表すように、補強装置160はその長さに沿って比較的一様な螺旋構造を有する。しかし、いくつかの実施形態では、補強装置の形状はその長さに沿って変えることができる。たとえば、
図6に例示するように、埋込み可能ボディ110の他の部分と比べて、電極120に隣接するところで、補強装置をより真っ直ぐにすることができる(たとえば、半径がより小さく及び/またはピッチがより大きい螺旋形状を有することによって)。補強装置の形状にこのような変化を設けることによって、電極120に隣接するところでの埋込み可能ボディ110の伸びを小さくしてもよい。そうでなければ、電極120に隣接するところでは、埋込み可能ボディ110から電極120の位置がずれる危険性がより大きい。このように電極120に隣接するところで張力緩和を高めることは、補強装置160(したがって、埋込み可能ボディ110)が埋込み可能ボディ110の他の部分において望ましい度合いまで伸びることができることを依然として維持しながら、行うことができる。
【0044】
図示するように、この実施形態における電気接続部150は比較的脆い白金ワイヤ伝導性要素を含んでいる。電気接続部150内に少なくとも4つの白金ワイヤが設けられて、それぞれ4つの電極120の対応する1つに接続している。ワイヤは互いに撚られていて、互いに電気的に絶縁されている。電極の最も遠位に対する電気接続部150の白金ワイヤの接続を
図3aに例示する。図からわかるように、ワイヤは、電極120の遠位端に隣接する電極120の内面1210に接続されているが、他の接続配置を用いることもできる。
【0045】
補強装置160は各電極120の中空中心を通って延びている。補強装置160は、少なくとも最も遠位の電極120から、また任意的に埋込み可能ボディ110の遠位先端部111に隣接する領域から、増幅器140に隣接する位置まで延びている。いくつかの実施形態では、補強装置160は増幅器140と処理装置130との間を延びてもよい。いくつかの実施形態では、補強装置160は、埋込み可能ボディ110の遠位先端部111及び/または最も遠位の電極120から処理装置130まで延びてもよい。
【0046】
補強装置160が埋込み可能ボディ110のエラストマー材料内を滑ることもそこから離れることもないように、補強装置160内に補強装置160の長さに沿って一連の結節161が形成されている。たとえば、
図4aを参照して、結節161aを少なくとも補強装置160の遠位端に、埋込み可能ボディ110の遠位先端部111に隣接して形成することができ、及び/または結節161を、各電極120の片側または両側に隣接して形成することができる。結節によって単に、埋込み可能ボディの弾性材料に対する補強装置160の動作抵抗が得られてもよく、及び/または結節を用いて、補強装置160を装置100の他の特徴物に固定して(結びつけて)もよい。
【0047】
本実施形態では、たとえば、
図3aに例示するように、補強装置160は結節161bを介して各電極120に固定されている。補強装置160を電極120に固定することができるように、電極120は延長部分1220を含んでいる。延長部分1220の周りで補強装置160の結節161を結びつけることができる。
図3aに示すように、延長部分1220は、電極120を形成する中空円筒の開口端に渡って延びる材料のループまたはアームを含むことができる。ループまたはアームの別の例(補強装置1600が結節1601を用いて結びつけられるかまたは他の方法で接続される電極430の延長部分432を与える)を、
図18a~18cに例示する実施形態に示す。さらなる代替的な実施形態では、また
図19a~19cに例示するように、導管または眼442を電極440内に(たとえば、電極440の中空円筒内に)配置してもよい。導管または眼442には補強装置1610が結びつけられるかまたは他の方法で接続される。結節1611を導管または眼442の片側または両側に形成して、補強装置1610と電極440との間の相対的な軸方向運動が起こらないようにしてもよい。延長部分432または導管もしくは眼442を、電極の他の実施形態(たとえば、
図16a~17cに例示するような部分円筒形状を有するもの)とともに利用することができる。
【0048】
図1a、1b、4a、4b、及び7a~7cを参照して、電極装置100は少なくとも1つのアンカー170(この実施形態では複数のアンカー170)を含んでいる。複数のアンカー170は、埋込み可能ボディ110の長さに沿って位置しており、それぞれ電極120の対応する1つに隣接している。各アンカー170は、埋込み可能ボディ110から半径方向外側に(具体的には、この実施形態では、埋込み可能ボディ110の近位端に向かう角度で)突き出るように構成されている。各アンカー170は、丸みを帯びた先端171を伴う平坦化された付加物またはフィンの形状である。アンカー170は、電極装置100が埋め込み位置にあるときに、電極装置100に対する安定化が得られるようにデザインされている。埋め込まれると、各アンカー170の周りに組織被膜が形成されて、アンカー170(したがって埋込み可能ボディ110)を所定の場所に固定することができる。この実施形態では、アンカー170は約0.5mm~2mmの長さであり、たとえば、約1mmまたは1.5mmの長さである。
【0049】
アンカー170が、電極装置100の埋め込みも使用後の電極装置100の取り出しも邪魔することがないように、各アンカー170は圧縮可能である。アンカー170が埋込み可能ボディ110から半径方向外側に突き出る度合いが小さくなるように、アンカー170は圧縮可能(たとえば、折り畳み式)である。圧縮されたときにアンカー170が埋込み可能ボディ110から半径方向外側に突き出る度合いをさらに小さくするために、各アンカー170に隣接する埋込み可能ボディ110の表面に凹部172が設けられている。アンカーは凹部172内に圧縮可能である。この実施形態では、アンカー170は、対応する凹部172の底面から突き出ており、凹部はアンカー170の近位及び遠位側の両方に及んでいる。したがって、アンカー170を対応する凹部内に、近位または遠位のいずれかの方向に圧縮することができる。これを
図7b及び7cに例示する。これには、アンカー170が、組織表面または埋め込みツール(たとえば、送出装置)の表面に渡って近位及び遠位方向のいずれかに引かれたときに、凹部172内の記憶位置に自動的に動けるという優位点がある。
【0050】
本実施形態の電極装置100は、脳内の電気的活動をモニタするときに用いるように、特に脳内のてんかん事象に関係する電気的活動をモニタするように構成されている。電極装置100は、頭皮と頭蓋との間の帽状腱膜下腔内に少なくとも部分的に埋め込まれるように構成されている。少なくとも埋込み可能ボディ110の電極120と隣接部分とが帽状腱膜下腔内に配置される。
【0051】
電極120の埋め込み場所の説明図を
図8に示す。図からわかるように、電極120は特に帽状腱膜と頭蓋骨膜との間のポケットに配置される。
図9も参照して、埋め込まれると、第1及び第2の電極対121、122は、被検者の頭部300の正中線310の対応する側面に、実質的に対称配置で配置される。したがって、第1及び第2の電極対121、122は、脳の右半球306a及び左半球306b上にそれぞれ配置される。たとえば、第1の電極対121を用いて脳の右半球306aにおける電気的活動をモニタすることができ、第2の電極対122を用いて脳の左半球306bにおける電気的活動をモニタすることができる。逆もまた同様である。独立した電気的活動データを、右半球及び左半球のそれぞれに対して記録してもよい(たとえば、診断目的で)。脳の右半球306a及び左半球306b上に電極対121、122を配置するために、電極装置の埋込み可能ボディ110を被検者の頭部180の頭蓋上で内側外側方向に埋め込む。電極対121、122は被検者の眼及びそしゃく筋から離れて位置して、これらの場所から信号の人工物が導入されるのを回避している。
【0052】
本開示の実施形態により電極装置100を埋め込む方法を、
図12a~12dを参照して以下でさらに説明する。本方法では、
図10a、10b、及び11に例示するような送出装置200を用いる。送出装置200は、電極装置100が配置される帽状腱膜ポケットを形成することができ、この埋め込み場所への(すなわち、帽状腱膜ポケット内への)電極装置100の溝形成を助けることができる。電極装置を人体または動物体の他の場所で用いるときには、わずかな変更を本方法及び関連する送出装置に施してもよい。
【0053】
送出装置200(「トロカール」と考えてもよい)は、たとえば、カニューレ210を含んでいる。カニューレ210の長さは、被検者の頭蓋上で、被検者の頭部の一方の側の側頭の後方に配置された第1の切開301と、被検者の頭部の他方の側の耳の後方に配置された第2の切開302との間を伸びるのに十分である。第1及び第2の切開301、302の場所を、
図12a及び12bにそれぞれ例示する。切開301、302の目的について以下でより詳細に説明する。
【0054】
カニューレ210の近位端において、送出装置200は柄部220を含んでいる。柄部220を外科医が把持して、第1の切開301を通って被検者の頭蓋上へ進むカニューレ210の動きを操作することができる。柄部220は、快適さを考慮して人間工学的に成形されており、たとえばネジを用いて互いに固定された2つの中空シェルから形成されている。柄部デザインは特に、3Dプリンティングを用いて形成することに適していてもよい。
【0055】
また送出装置200は、取り外し可能な内部部材(この実施形態では内部フィラメント230)を含む。この内部部材は、カニューレ210の中心溝を通って延び、カニューレ210の遠位端開口部211で露出する遠位先端部231を有する。フィラメント230の遠位先端部231は尖っていて、送出装置200の先端が組織層を通って移動するかまたは通り抜けて組織層間にポケットを広げられるようになっている。遠位先端部231はカニューレ210の遠位端開口部211の遠位に配置されている。フィラメント230はカニューレ210の遠位端開口部211から柄部220内部の場所に延びている。
【0056】
カニューレ210は、S形状に事前に湾曲された可撓性材料を含んでいる。事前に湾曲された形状は、たとえば、カニューレ210が頭蓋の周りにほぼ150~180度通り抜けることを助けながら、2つを超える切開を形成して複数の通り抜け軌跡を用いる必要性を回避するようにデザインされている。カニューレ210の曲がりは、たとえば頭蓋の曲がりにほぼ一致していてもよい。カニューレ210はその長さに沿って柔軟性特性が異なっている。この実施形態では、カニューレ210の壁の厚みを変更することによって異なる柔軟性を得ている。カニューレ210の遠位部分210aは近位部分210bよりも柔軟である。カニューレ210の柔軟性は、その遠位端開口部211に向かって、たとえば徐々にまたは不連続に増加している。柔軟性が変化することによって、この場合もやはり、頭蓋の周りをカニューレ210が通り抜けることを助けている。たとえば、より柔軟な遠位部分210aによって、通り抜ける間に外科医がその部分210aを手動で曲げられるようにすることができ、組織層間を進行する間に何らかの外傷が体内組織に対して生じ得るこの危険性を減らすことができる。また、それほど柔軟でない近位部分210bによってより大きな剛性をカニューレに与えて、所定の位置に押されたときにカニューレに加わる力に耐えるようにすることができる。たとえば、近位部分201bが曲がる可能性は、その比較的高い壁の厚みに起因してはるかに小さいことがある。
【0057】
フィラメント230の遠位先端部231は非対称に成形されている。より平坦な表面が、頭蓋に面するように構成された送出装置200の側にあり、より傾斜した表面が、頭蓋とは反対方向を向くように構成された送出装置200の側にある。非対称に成形された先端231を用いることによって、頭蓋の周りにカニューレ210が通り抜けることを助けることができ、この場合も、組織層間を進行するときに体内組織に対して何らかの外傷が生じ得る危険性を減らすことができる。
【0058】
フィラメント230は、送出装置200の柄部220にあるロッキング機構240を用いて、カニューレ210内の所定の位置に取り外し可能にロックされる。ロッキング機構は、フィラメント230の一方の側と嵌合するように構成された接合部241と、フィラメント230の第2の反対側と嵌合するように構成されたカム242とを含んでいる。カム242は、カム242と接合部241との間でフィラメント230に印加される嵌合力を増加させるように第1の方向に回転可能であり、またカム242と接合部241との間でフィラメント230に印加される嵌合力を解除するように第2の反対方向に回転可能である。またロッキング機構240は、柄部220の表面において外科医によって動作可能なボタン243を含んでいる。ボタン243は接合部241に接続されていて、フィラメント230をロックし及びロッキングを解除するように要求されたときに、カム242を第1及び第2の方向に回転させるように送出装置200の遠位近位方向にスライド可能である。この実施形態では、ボタン243は、フィラメント230をロックするように近位方向に、またフィラメント230のロッキングを解除するように遠位方向にスライド可能である。ロッキング機構のデザインは、フィラメント230のロッキングを解除したときに、フィラメントの遠位先端部231が自動的に前方に(遠位に)動いて、カニューレ210の遠位端211開口部から離れるようになされている。たとえば、遠位先端部231を約5mm前方へ動かしてもよい。前方へ動かすことによって、カニューレ210から取り出すために、フィラメント230の遠位先端部231が外科医によってより容易に嵌合され得る。
【0059】
図12a及び12bを参照して、電極装置100を埋め込むために、外科医は外科用メスまたは他の切断装置を用いて、被検者の頭部300の両側に第1及び第2の切開301、302を形成する。切開301、302は、少なくとも
図8に例示する頭皮の頭蓋骨膜層(頭蓋骨膜)と同じくらい深く形成する。第2の切開302に隣接して、外科医はまた、頭皮内に、電極装置100が完全に埋め込まれたときに少なくとも電極装置100の処理装置130を受け取るための後方ポケット303を開く。ポケット303を、鈍い刃または他の好適なツールを用いて形成してもよい。
【0060】
図12aを参照して、送出装置200の先端231を第1の切開301を通して帽状腱膜下腔内に導入する。送出装置200を、帽状腱膜下腔を通して、矢印304で示す方向に、被検者の頭蓋の頂部上で概ね内側外側方向に押す。
図12bを参照して、送出装置200が、矢印305で示す方向に被検者の頭部300の反対側の第2の切開302に達するまで走行し続けるように、送出装置200を押す。
【0061】
送出装置200を最終的に、その先端(より具体的には、フィラメント230の尖った遠位先端部231)がカニューレ210の遠位端開口部211とともに、第2の切開302から露出する場所まで動かす。これを
図13aに例示する。フィラメントロッキング機構240を解除した後、送出装置200の柄部220上でボタン243をスライドすることによって、外科医は、自分の指または把持ツールを用いてフィラメント230の遠位先端部231を把持し、カニューレ210からフィラメント230を完全に引き出す。これを
図13bに例示する。これによって、カニューレ210の中心溝は空になり、カニューレ210の遠位端開口部211は露出している。
【0062】
図13cを参照して、電極装置100の遠位先端部111を次に、カニューレ210の遠位端開口部211を通してカニューレ210の中心溝内に挿入する。このプロセスの間、カニューレ210は、被検者の頭蓋に対して実質的に静止したままであり、一方で、電極装置100はカニューレ210の中心溝に沿って、したがって被検者の頭蓋上に送り込まれる。中心溝に沿って送り込まれるため、電極装置100の埋込み可能ボディ110の長さに沿って位置する複数のアンカー170は強制的に圧縮(折り畳まれた)状態にされ(概ね
図7bに示す)、アンカー170が挿入プロセスを妨害しないことが確実にされる。
【0063】
主に処理装置130を除いて、電極装置100はすべてカニューレ210内に送り込まれる。処理装置130はカニューレ210を通って延びるには大きすぎる。挿入プロセスの終わりでは、電極装置100の処理装置130が、カニューレ210の遠位端開口部211に隣接する位置に達したときに、処理装置130を後方ポケット303内に押し込む。送出装置200を次に、
図13dに例示するように、第1の切開301から完全に引き出すことができる。引き出しプロセスの間、電極装置100は、被検者の頭蓋に対して所望の埋め込み場所に実質的に静止したままであり、アンカーは
図7aに例示したようなその半径方向に突出した構成に戻る。第1及び第2の切開301、302を次に、たとえば縫合することによって閉じることができ、電極装置100を頭皮下の概ね
図14に例示するような位置に埋め込まれたままにする。
【0064】
使用後は、電極装置100を取り出すために、外科医は第2の切開302を再び開くか、または第2の切開302に隣接してさらなる切開を形成することができる。処理装置130をポケット303から取り出した後に、埋込み可能ボディ110を切開から引き出すことができる。切開から引き出したときに、埋込み可能ボディ110は伸びて曲がり得るが、伸びが起こる度合いを前述した方法で補強装置160によって制御して、電極装置100に対する損傷を妨げることができる。切開から引き出したときに、埋込み可能ボディ110の長さに沿って位置する複数のアンカー170は、この場合も強制的に圧縮(折り畳まれた)状態にされ(概ね
図7cに示す)、アンカー170が取り出しプロセスを妨害しないことが確実にされる。
【0065】
当業者であれば分かるように、本開示の広い一般的な範囲から逸脱することなく、前述した実施形態に多くの変形及び/または変更を施してもよい。たとえば、本開示の実施形態による電極装置を、てんかん事象に関係せず及び/またはEEG信号の取得に基づかない脳活動をモニタ及び/または刺激するときに用いるように適応させてもよい。したがって、本実施形態はすべての点で例示的であって限定的ではないと考えるべきである。
【符号の説明】
【0066】
100 電極装置
110、110’、110’’、110’’’ 可能ボディ
111 遠位先端部
112 ストラップ
113a 側面部分
113b 側面部分
120 電極
121 第1の電極対
122 第2の電極対
130、130’ 処理装置
140、140’ 電気増幅器
150 電気接続部
160 補強装置
161 結節
161a 結節
161b 結節
170 アンカー
171 先端
172 凹部
180 頭部
190 外部コンピューティング装置
200 送出装置
201b 近位部分
210 カニューレ
210a 遠位部分
210b 近位部分
211 遠位端開口部
220 柄部
230 内部フィラメント
231 遠位先端部
240 フィラメントロッキング機構
241 接合部
242 カム
243 ボタン
300 頭部
301 第1の切開
302 第2の切開
303 後方ポケット
306a 右半球
306b 左半球
310 正中線
410 電極
411 縮径部分
420 電極
421 縮径部分
430 電極
431 縮径部分
432 延長部分
433 アパーチャ
440 電極
442 眼
1210 内面
1220 延長部分
1600 補強装置
1601 結節
1610 補強装置
1611 結節