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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】患者を治療するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020001569
(22)【出願日】2020-01-08
(62)【分割の表示】P 2017545598の分割
【原出願日】2016-03-28
(65)【公開番号】P2020072956
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-02-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】62/138,508
(32)【優先日】2015-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スクワイア、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】マンシンガー、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン、デレク
(72)【発明者】
【氏名】ウィラード、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】コノリー、ジョセフ
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534872(JP,A)
【文献】特表2007-517596(JP,A)
【文献】特表2002-525183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0005809(US,A1)
【文献】国際公開第2010/028300(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を治療するためのシステムであって、
拡張可能な閉塞プラグであって、長尺状のシャフトと、長尺状のシャフトの先端部に配置された、膜によって少なくとも部分的に覆われた可撓性フレームワークと、を有しており、前記可撓性フレームワークが、前記長尺状のシャフトに固定された第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを有しているとともに、第1の直径を有する第2の端部によって特徴付けられる第1の形態と、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2の端部によって特徴付けられる第2の形態との間で移動可能である、拡張可能な閉塞プラグと、
前記長尺状のシャフトの基端部に可逆的に取り付けられたプッシュロッドと、
前記可撓性フレームワークの第2の端部の周囲に配置されるとともに、前記第1の形態において前記可撓性フレームワークを拘束するように構成されている溶解可能なスリーブと、を備えており、
前記溶解可能なスリーブが、患者の血管内で水性物質との反応によって溶解可能であり、
前記可撓性フレームワークの第2の端部が、前記システムの先端部に配置されており、
前記第2の形態において、前記可撓性フレームワークが、前記第1の端部での最小直径から前記第2の端部での最大直径まで変化する、システム。
【請求項2】
前記可撓性フレームワークが、一対の交差したワイヤを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記可撓性フレームワークが、形状記憶材料を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記可撓性フレームワークおよび膜が、前記第2の形態にあるとき、円錐形または傘形状を画定する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
カテーテルをさらに備え、前記拡張可能な閉塞プラグが、前記第1の形態にあるときに前記カテーテル内に摺動可能に挿入するような大きさおよび形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記膜が合成ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記合成ポリマーが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE、ポリウレタンおよびシリコーンからなる群から選択される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記可撓性フレームワークが、X形状で互いに融着された少なくとも2つの長尺状の要素を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記膜が円板状である、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
血管の閉塞に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療機器の分野に関する。より詳細には、本出願は、血管の閉塞のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塞栓形成は、血管の部分的または完全な閉塞を伴い、血管を通る血液の流れを制限する。血管の意図的な閉塞(「治療的塞栓形成」)は、脳および末梢動脈瘤、動静脈奇形および子宮筋腫を含む様々な血管および非血管の病態を治療し、肝腫瘍を含む充実性腫瘍への血流を減少させるために使用される。塞栓形成は、ポリマーミクロスフェア、金属コイル、金属プラグまたはポリマープラグ、および液体塞栓物質の使用を含む様々な手段によって達成される。
【0003】
典型的な塞栓術において、局所麻酔が最初に共通の動脈または静脈に対して行われる。次に、動脈または静脈を穿刺し、カテーテルを挿入して、関心領域に蛍光透視法で誘導する。血管造影は、カテーテルを通して造影剤を注入することによって行われ、それによって、カテーテルの先端部の下流の血管樹の部分を視覚化する。塞栓剤の沈着が所望される部位にカテーテルが配置されると、塞栓剤はカテーテルを通って沈着する。塞栓剤は、一般に、閉塞されるべき血管の大きさ、所望する閉塞の持続時間、および/または治療すべき疾患または病態の種類などに基づいて選択される。閉塞されるべき血管内の部位への塞栓剤の送達後、追跡血管造影を行い、閉塞の特異性および完全性を確認することができる。
【0004】
脾臓動脈瘤のサンドイッチ塞栓術、消化管出血のサンドイッチ塞栓術、精索静脈瘤または骨盤鬱血症候群を治療するための血管の塞栓術および外傷後の出血を止めるための塞栓術を含む多くの一般的な塞栓術においては、病巣箇所における(at a focal point)よりも血管の「長さ」に沿った塞栓が望ましい。しかしながら、塞栓術において最も一般的に使用される塞栓コイルは、「病巣の(focal)」塞栓術に最適に使用される。実際には、使用者は、複数の塞栓コイルを使用して長さのある血管に詰めて血管を充填するが、この手法は多くのコイルを個々に配置しなければならないため、多くの時間と材料を必要とし、係る費用を増加させる。
【0005】
液体塞栓剤は、近年、コイル充填法の可能な代替法として浮上している。このような物質には、TRUFILL(登録商標)n-ブチルシアノアクリレート(n-BCA)(Codman&Shurtleff社、レイナム、マサチューセッツ州)、およびONYX(登録商標)エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)(ev3 Endovascular社、プリマス、ミネソタ州)が含まれるが、高価(EVOH塞栓剤の場合、1mLあたり2500ドル程度)であり、比較的高流量の血管に配置した場合、非標的領域の移動および塞栓が起こりやすい。そのような移動を防止するために、施術者は、重合した液体塞栓塊のいずれかの側(すなわち、基端側および/または先端側)にコイルを配置し、さらに血流を減少させ、非標的塞栓症のリスクを低減する。しかしながら、このアプローチはまた、複数のステップを必要としており、大部分の液体塞栓剤(例えばn-BCA)がカテーテル内で凝固すると特に、複数のカテーテルの使用を必要とすることがあり、重合した液体塞栓塊付近に塞栓コイルを配置することが望ましい場合には、新しいカテーテルを配置する必要がある。
【0006】
従来の塞栓コイルおよび/または液体塞栓剤を血管に詰めるための別の代替法は、AZUR(商標)コイル(Terumo Medical社、サマセット、ニュージャージー州)などの複数のヒドロゲル被覆塞栓コイルを使用することである。これらのコイルは、水性環境に曝されると体積が膨張し、等価な配置前直径を有する従来の塞栓コイルよりも多くの空間を占めることを可能にする。そうであっても、これらの装置を含む方法は、通常、複数のコイルの配置を必要とするため、単一の配置ステップだけを必要とする介入よりも複雑さを増し、また、費用を要する。
【0007】
さらに、多くの塞栓術、特に血管の小孔または分岐部の閉塞において、高い特異性を有する塞栓物質の配置が望まれている。しかし、閉塞の特異性は、閉塞装置または閉塞物質が配置中に移動する傾向(塞栓コイルおよびプラグの場合、「キックバック(kickback)」または「ジャンピング(jumping)」と呼ばれる)によって低減され得る。血管閉塞の設定では、そのようなキックバックは、不完全な塞栓形成または非標的塞栓形成を招く可能性がある。一般的に、閉塞プラグ装置は、塞栓コイルよりもキックバックする傾向が少なく、特にキックバックが望ましくない用途では好ましいが、プラグとコイルの選択において、使用者には別のトレードオフが提示される。Amplatzer(商標)塞栓プラグ(St.Jude Medical社、ミネアポリス、ミネソタ州)などの塞栓プラグは、一般に、塞栓コイルよりも大きな外形を有し、狭いまたは曲がりくねった血管を通ってまたはそのような血管内に配置するのに適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、その様々な態様において、既存のコイルおよび液体塞栓剤の欠点に対処し、病巣箇所ではなく、血管の長さにわたって塞栓の単一ステップ送達のためのシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は患者を治療するためのシステムに関し、このシステムは、長尺状のシャフトと、長尺状のシャフトの先端部に配置され、膜によって少なくとも部分的に覆われた可撓性フレームワークとを有する拡張可能な閉塞プラグを備える。可撓性フレームワークは、第1の直径によって特徴付けられる第1の(圧縮された)形態と、比較的大きな第2の直径によって特徴付けられる第2の(拡張された)形態との間を移動することができる。このシステムは、いくつかの場合において、1対の交差したワイヤおよび/または形状記憶材料を有するフレームワークを含む、多くの任意の特徴を有する。可撓性フレームワークは、第1に、長尺状のシャフトに固定された第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを含むことができる。いくつかの場合には、フレームワークの第1の端部は拡張可能な閉塞プラグの先端部に位置しており、他の場合には第2の端部が拡張可能な閉塞プラグの先端部に位置している。いくつかの場合において、可撓性フレームワークおよび膜は、第2の形態に拡張すると、円錐形または傘形状を画定する。システムはまた、カテーテルおよびプッシュロッドを含むことができ、この場合、拡張可能な閉塞プラグは、第1の形態ではカテーテル内を摺動可能であり、カテーテルの内部にない場合には、第2の形態をとる。膜は、円板状または円形であってもよく(必ずしも必要ではない)、場合によっては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE、ポリウレタンまたはシリコーンのような合成ポリマーである。可撓性フレームワークは、X字状に融着(fused together)された2つ以上の長尺状の要素を含むことができる。あるいは、可撓性フレームワークは、第1の端部で接続され、(例えば、ブッシング、アイレットなどによって)接続または拘束された2つ以上のワイヤを含むことができ、それによって、第2の形態において、第1の端部での最小直径から、第1の端部と第2の端部との間の最大直径まで、および第2の端部での第2の直径より小さい第3の直径まで変化する部分(taper)を有する。本発明のこの態様によるシステムは、例えば血管の閉塞において、医療用に使用することができる。
【0010】
別の態様では、本発明は、長尺状のシャフトと、長尺状のシャフトの第1の端部に配置され、ポリマー膜によって少なくとも部分的に覆われる可撓性フレームワークとを含む拡張可能な塞栓プラグに関する。上述のように、このフレームワークは、第1の直径によって特徴付けられる第1の形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径によって特徴付けられる第2の形態との間を移動する。拡張可能な塞栓プラグにはいくつかの選択的な機能がある。第1に、可撓性フレームワークは、1対の交差したニチノールワイヤを含むことができ、あるいは、可撓性フレームワークは、長尺状のシャフトに固定された第1の端部および第1の端部の反対側の第2の端部を有することができる。これら後者の場合には、第1の端部を拡張可能な塞栓プラグの先端部に配置するか、または第2の端部を拡張可能な塞栓プラグの先端部に配置することができる。場合によっては、拡張可能な塞栓プラグは、可撓性フレームワークの第2の端部またはその付近において拡張可能な塞栓プラグの周りに配置されたポリマースリーブを含み、このスリーブは、第1の形態で可撓性フレームワークを保持するような大きさにされ、患者の血管内に配置されると溶解、分解あるいは腐食するように構成される。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、患者の血管内に拡張可能な閉鎖プラグを挿入することによって患者を治療する方法に関する。拡張可能な閉鎖プラグは、長尺状のシャフトと、長尺状のシャフトの第1の端部に配置された、ポリマー膜で覆われた可撓性フレームワークとを含む。拡張可能な閉鎖プラグは、第1の(圧縮された)形態と第2の(拡張された)形態との間で移動可能である。拡張可能な閉鎖プラグは、カテーテルまたはマイクロカテーテルによって(例えば、マイクロカテーテルの先端部を血管内に挿入し、その後、血管内に拡張可能な閉鎖プラグを配置する)、血管内に挿入可能である。場合によっては、液体塞栓物質が、血管内の拡張可能な閉鎖プラグと接触するようにカテーテルを通って流れる。
【0012】
本発明の態様は、以下の図面を参照して以下に説明され、同様の参照番号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】配置の様々な段階における本発明の特定の実施形態によるスネア閉塞装置の概略図を示す。
図1B】配置の様々な段階における本発明の特定の実施形態によるスネア閉塞装置の概略図を示す。
図1C】配置の様々な段階における本発明の特定の実施形態によるスネア閉塞装置の概略図を示す。
図1D】配置の様々な段階における本発明の特定の実施形態によるスネア閉塞装置の概略図を示す。
図2A】本発明の代替実施形態によるスネア閉塞装置の概略図を示す。
図2B】本発明の代替実施形態によるスネア閉塞装置の概略図を示す。
図2C】本発明の代替実施形態によるスネア閉塞装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の明細書において別段の定めがない限り、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理の説明に重点が置かれている。
図1を参照すると、本発明の実施形態の一群による例示的な閉塞装置100は、少なくとも2つの構成要素、すなわち、拡張可能なフレームワーク110と、フレームワーク110の少なくとも一部に固定された膜111とを有する拡張可能な閉塞要素105を含む。閉塞要素105はまた、好ましくは、カテーテルを通って血管などの体内管腔内への閉塞装置100の送達を容易にするために、プッシュロッド120に可逆的に連結された中心シャフト115を有する。閉塞要素105は、比較的細いゲージのカテーテルを通ってより大きい直径の血管への閉塞装置100の送達を容易にするために、圧縮した(小径の)形態と拡張した(大径)形態との間で移動可能であることが好ましい。より大きい直径の血管では、閉塞要素105は通常拡張して血管の内壁に接触し、配置後の閉塞装置100の移動を制限したり防止するように血管に対して十分な径方向外向きの力を付与する。
【0015】
フレームワーク110は、好ましくは、対称的な「X」形状または他の半径方向に対称な形状を形成するために、ろう付けされ、はんだ付けされ、または他の方法で取り付けられた、0.03インチ(0.762mm)~0.06インチ(1.524mm)のニチノールワイヤからなる2つ以上の部分(pieces)から形成されており、さらに熱処理されて開いた状態に付勢される。ニチノールはフレームワーク110の好ましい材料であるが、場合によっては、ステンレス鋼、形状記憶ポリマー、白金、あるいはポリ乳酸(PLA)および/またはポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)などの他の材料が使用される。その後、フレームワーク110に対して、(ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または延伸PTFE(ePTFE)、ポリウレタンまたはシリコーン等の)ポリマーフィルムのシート111(円板状、すなわち円形が望ましいがこれに限らない)が接着される。閉塞装置100を圧縮した形態にするために、フレームワーク110のニチノールの支柱が、中心に向かって半径方向内方に曲げられ、例えば取り外し可能なまたは溶解可能なスリーブ112によってそこで拘束される。スリーブ112は、好ましくはポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)および/またはポリエチレングリコール(PEG)などの水溶性ポリマーから形成される。閉塞装置100は、圧縮されると、0.021インチ(0.533mm/1.333mm(4Fr))、0.025インチ(0.635mm/1.666mm(5Fr))、0.027インチ(0.686mm)等のマイクロカテーテルを介した送達を可能にするように選択された外径を有する。この大きさは、0.066インチ(1.667mm/1.666mm(5Fr))等の現在使用されている装置に近似するが、著しく太い血管を塞ぐのに有用な大きさに制限される。一般に、圧縮した形態の閉塞装置100の外径は、使用されるマイクロカテーテルの内径よりわずかに小さい(例えば、0.027インチ(0.686mm)のカテーテルで使用するためには0.025インチ(0.635mm))。
【0016】
中央シャフト115は、任意に切断可能なリンクまたはジョイント、ネジによってプッシュロッド120に結合される。医療用インプラントの例示的な分離機構は、とりわけ、米国特許第5,250,071号(相補的な雄形端部と雌形端部を組み込んだ連動する留め具機構を記載)、米国特許第5,354,295号(電解的に切断可能なコアワイヤを記載)、米国特許第6,059,779号(電解的に切断可能なコアワイヤの周りに配置可能な環状の戻り電極を記載)、および米国特許出願公開第2009/0177261号(合成ポリマーを含む、熱または電気エネルギーに反応して形状が変化する材料を利用する分離機構を記載)において記載されている。前述の参考文献の各々は、参照によりその全体が、すべての目的のために本明細書に組み込まれる。これに代えて、中央シャフト115は、スリーブ112等の水溶性スリーブによってプッシュロッド120に結合される。
【0017】
いくつかの場合において、膜111、中心シャフト115、または閉塞装置100の他の部分は、コーティングを含み、そのようなコーティングは、様々に、閉塞装置が配置された血管の内壁に対する閉塞装置の接着性を向上させるための粘着性、または親水性(例えば、bioslide(商標)親水性コーティング、Boston Scientific社、マールボロ、マサチューセッツ州)、あるいは、発泡体のような疎水性塞栓物質120の閉塞装置への接着を容易にするための疎水性(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE、シリコーン)を有する。閉塞装置100の部分は、ヨウ素化コーティングおよび/または、白金、パラジウムまたはタングステンバンドや他のマーカーのような別個の蛍光透視マーカーを含むこともできる。さらに、スネア装置の動脈/血管壁への接着性を向上させるために、変性アクリレートタイプの粘膜接着剤が使用されることもある。
【0018】
使用中、閉塞装置100は、図1Aおよび1Bに全体的に示されている手順に従って、マイクロカテーテル(図示せず)によって血管に挿入される。この手順は、カテーテルの先端部が、閉塞が望まれる長い血管に近接するかまたはその血管内にあるように、カテーテルを患者の血管系に挿入することから始まる。カテーテルをそのように位置決めし、プッシュロッド120を前進させると、閉塞装置100がカテーテルの先端開口を通って血管内を先端方向に延びる(あるいは、カテーテルが閉塞装置100およびプッシュロッド120上を後退させて、閉塞装置100をこの工程中に所定の位置で拡張する)。血管内への閉塞装置100の配置中または配置後に、閉塞要素105の直径を制限するスリーブ112は、好ましくは、血管内で水性物質(例えば、水)との反応によって溶解、分解等を行い、図1B-1Dに示すように、フレームワーク110および膜111を半径方向外方に拡張して血管の内壁と接触させることができる。閉塞装置100は配備されると、図1Cおよび1Dに示すように、略傘型の輪郭を有する。
【0019】
閉塞要素105は、拡張に続いて、任意に、その所望の最終位置の先端側の位置へと押され、次に引き戻される。その後、液体塞栓が、任意で(必ずしも必要ではないが)、カテーテルを通ってカテーテルの先端部と閉塞要素105とによって画定された空間に流れる。液体塞栓は、重合、架橋、粘性化、または他の方法で、n-BCAまたはEVOHのような血管内への配置後に、液体からインサイチュ(in situ)でゲルまたは固体へ変化する任意の物質であってもよい(この手順は、説明を容易にするために、「硬化(hardening)」として、本出願全体を通じて参照される)。液体塞栓が硬化した後に、プッシュロッド120と中心シャフト115との間のリンクが切断され、閉塞要素105および中心シャフト115が所定の位置に留まり、留置片(indwelling implant)を形成する塞栓物質に取り付けられる。プッシュロッド120と中心シャフト115との間のリンクの切断は、好ましい実施形態では、機械的、電解的または熱的に分離可能な構造である切断可能なリンクまたはジョイントの使用によって容易にされる。
【0020】
本発明の別の実施形態を図2A~2Cに示す。第1の代替の実施形態では、図2Aおよび2Bに示すように、閉塞要素105は、上述の実施形態のように中央シャフト115に向かってではなく、中心シャフト115の反対側に開くように配置を変えている。この配置は、配備中の閉塞装置100の横方向の移動または「ジャンピング」の危険を少なくして、カテーテルを閉塞装置100上に単に前進させることによって閉塞装置の再外装(resheathing)を容易にするという利点があり、それによって閉塞要素105を圧縮し、閉塞装置100を使用者によって再配置することを可能にする(このような再位置決めは、好ましくは、プッシュロッド120と中心シャフト115との間のリンクが切断される前に行われる)。他の実施形態では、フレームワーク110は、閉塞要素105の先端部において接続され、配置前にオーバーチューブ113内に拘束され、配置中にオーバーチューブ113を通って先端方向に進められる複数の形状記憶ワイヤを含む。複数の形状記憶ワイヤは、一旦カテーテルを通って延びると、拡張して上記した傘状構造と同様の構造を形成する。
【0021】
本明細書で使用される「および/または」という語句は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素の「一方または両方」を意味すると理解されるべきである。反対のことが明確に示されていない限り、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、「および/または」句によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの開放型言語と併せて使用される場合、一実施形態では、BなしのA(場合によってはB以外の要素を含む)、別の実施形態では、AなしのB(場合によってはA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(必要に応じて他の要素を含む)等を指すことができる。
【0022】
「本質的に~からなる」という用語は、本明細書中で他に定義されない限り、機能に寄与する他の物質を排除することを意味する。それにもかかわらず、このような他の物質は、集合的にまたは個別に微量で存在してもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「略」または「およそ」は、プラスまたはマイナス10%(例えば、重量または体積)を意味し、いくつかの実施形態ではプラスまたはマイナス5%を意味する。本明細書を通して、「1つの例」、「一例」、「1つの実施形態」または「一実施形態」は、その例に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、現在の技術の少なくとも1つの例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一例で」、「一例において」、「1つの実施形態で」、または「一実施形態」の語句は、必ずしもすべて同じ例を参照するものではない。さらに、特定の特徴、構造、ルーチン、ステップ、または特性は、技術の1つまたは複数の例において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。本明細書で提供される見出しは、便宜上のものであり、特許請求の範囲に記載の技術の範囲または意味を限定または解釈することを意図するものではない。
【0024】
本発明の特定の実施形態について上述した。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本明細書に明示的に記載されたものに対する追加および修正も本発明の範囲内に含まれることは明白である。さらに、本明細書に記載された様々な実施形態の特徴は、互いに排他的ではなく、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、組み合わせまたは置換が本明細書に明示されていなくても、そのような組み合わせまたは置換において存在することを理解すべきである。実際には、本明細書に記載されているものの変形、修正、および他の実装が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者に思い浮かぶであろう。このように、本発明は、先の例証となる記載によってのみ定義されるものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C