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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】密封パックの製造方法及びトレイシーラ
(51)【国際特許分類】
   B65B 31/02 20060101AFI20230509BHJP
   B65B 7/28 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B65B31/02 B
B65B7/28 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020088024
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181330
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】川合 誠司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-511501(JP,A)
【文献】特開昭55-163117(JP,A)
【文献】特開2006-142424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 7/00- 7/28
B65B31/00-31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容するためのポケット部、及び、該ポケット部の開口端から外側に延出形成されたフランジ部を有する容器と、前記ポケット部に内容物が収容された状態で前記ポケット部を塞ぐようにして前記フランジ部に取着された蓋フィルムとを備え、前記ポケット部内に所定のガスが封入されてなる密封パックの製造方法であって、
所定のシール装置によって、帯状の蓋フィルム材料を切断して前記蓋フィルムを得るとともに、前記容器における前記ポケット部内に前記ガスを充填した上で該容器の前記フランジ部に該蓋フィルムを溶着するシール工程と、
前記シール装置に対し前記蓋フィルム材料を供給する蓋フィルム材料供給工程と、
前記蓋フィルム材料のうち切断後に残ったスクラップを巻取るスクラップ巻取工程とを含み、
前記シール工程は、
前記蓋フィルム材料を挟んで上下に配置された上側チャンバ構成部及び下側チャンバ構成部を有するチャンバを閉じて、該チャンバの内部空間に前記容器を収容した状態とする閉鎖工程と、
前記蓋フィルム材料のうちの前記チャンバの内部空間に位置する部位を環状に切断して前記蓋フィルムを得る切断工程と、
前記切断工程後において、前記チャンバの内部空間のガス交換を行うことで、前記ポケット部内に前記ガスを充填するガス交換工程と、
前記ガス交換工程後において、前記チャンバを閉じた状態のまま、前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着する溶着工程とを備え
前記閉鎖工程においては、前記蓋フィルム材料により前記チャンバの内部空間が上部空間と下部空間とに区画され、
前記シール工程は、前記切断工程による前記蓋フィルム材料の切断前又は切断と同時期に、前記蓋フィルム材料のうち前記蓋フィルムに対応する部位又は前記蓋フィルムを吸着保持する吸着保持工程を含み、
前記溶着工程では、前記吸着保持工程により吸着保持されている前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着することを特徴とする密封パックの製造方法。
【請求項2】
前記ガス交換工程では、前記チャンバの内部空間に対する前記ガスの供給を調節し該内部空間における気圧を調節することによって、製造された前記密封パックにおける前記蓋フィルムを膨出又は陥凹させた状態とすることを特徴とする請求項1に記載の密封パックの製造方法。
【請求項3】
内容物を収容するためのポケット部、及び、該ポケット部の開口端から外側に延出形成されたフランジ部を有する容器と、前記ポケット部に内容物が収容された状態で前記ポケット部を塞ぐようにして前記フランジ部に取着された蓋フィルムとを備え、前記ポケット部内に所定のガスが封入されてなる密封パックを製造するためのトレイシーラであって、
帯状の蓋フィルム材料を切断して前記蓋フィルムを得るとともに、前記容器における前記ポケット部内に前記ガスを充填した上で該容器の前記フランジ部に該蓋フィルムを溶着するシール装置と、
前記シール装置に対し前記蓋フィルム材料を供給する蓋フィルム材料供給手段と、
前記蓋フィルム材料のうち切断後に残ったスクラップを巻取るスクラップ巻取手段とを備え、
前記シール装置は、
前記蓋フィルム材料を挟んで上下に配置された上側チャンバ構成部及び下側チャンバ構成部を有し、開閉可能に構成されたチャンバと、
前記蓋フィルム材料のうちの前記チャンバの内部空間に位置する部位を環状に切断して前記蓋フィルムを得る切断手段と、
前記チャンバを閉じて該チャンバの内部空間に前記容器を収容した状態において、前記切断手段により前記蓋フィルム材料を切断した後に、該内部空間のガス交換を行うことで、前記ポケット部内に前記ガスを充填するガス交換手段と、
前記ガス交換手段によるガス交換後において、前記チャンバを閉じた状態のまま、前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着する溶着手段とを備え
前記チャンバは、前記蓋フィルム材料を切断することなく単に前記チャンバを閉じた状態においては、前記蓋フィルム材料により前記チャンバの内部空間が上部空間と下部空間とに区画されるよう構成され、
前記シール装置は、前記切断手段による前記蓋フィルム材料の切断前又は切断と同時期に、前記蓋フィルム材料のうち前記蓋フィルムに対応する部位又は前記蓋フィルムを吸着保持する吸着保持手段を備え、
前記溶着手段は、前記吸着保持手段により吸着保持されている前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着するように構成されていることを特徴とするトレイシーラ。
【請求項4】
前記シール装置においては、前記容器の上方に前記蓋フィルム材料が配置されるようになっており、
前記切断手段は、前記蓋フィルム材料のうち前記フランジ部の外縁よりも内側に位置する部位を環状に切断するように構成されていることを特徴とする請求項に記載のトレイシーラ。
【請求項5】
前記下側チャンバ構成部は、上下動可能に構成されており、
前記上側チャンバ構成部には、上側チャック部が設けられるとともに、前記下側チャンバ構成部には、下側チャック部が設けられ、
前記切断手段は、前記上側チャンバ構成部に取付けられており、
前記下側チャンバ構成部を上動させることで、前記上側チャック部及び前記下側チャック部によって前記蓋フィルム材料が把持されるとともに、前記切断手段によって該蓋フィルム材料が切断され、かつ、前記チャンバが閉じられるように構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のトレイシーラ。
【請求項6】
前記シール装置は、前記容器が載置されるとともに、上下動可能に構成された容器テーブルを備え、
前記溶着手段は、発熱可能な加熱部を有し、
前記チャンバを閉じた後、前記容器テーブルを上動させて、前記蓋フィルムの裏面を前記フランジ部に接触させつつ該蓋フィルムの表面を前記加熱部に押し当てることで、該フランジ部に該蓋フィルムが溶着されるように構成されていることを特徴とする請求項に記載のトレイシーラ。
【請求項7】
前記ガス交換手段は、前記チャンバの内部空間に対する前記ガスの供給を調節することで該内部空間における気圧を調節可能に構成されており、該気圧の調節によって、製造された前記密封パックにおける前記蓋フィルムを膨出又は陥凹させた状態とすることが可能であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載のトレイシーラ。
【請求項8】
前記切断手段は、鋸歯状の切断刃を備え、該切断刃が前記蓋フィルム材料の厚さ方向に沿って該蓋フィルム材料に押し込まれることで、該蓋フィルム材料を切断するように構成されていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載のトレイシーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の収容空間にガスが封入されてなる密封パックの製造方法及び密封パックを製造するためのトレイシーラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品などの内容物を収容するためのポケット部を有する容器と、該ポケット部を塞ぐようにして前記容器に取着された蓋フィルムとを備えた密封パックが知られている。このような密封パックでは、内容物の長期保存などを可能とすべく、ポケット部内に所定のガス(例えば、窒素や二酸化炭素などの不活性ガス)を封入することがある。
【0003】
上記のような密封パックを製造するための装置として、トレイシーラと呼ばれる装置が知られている。トレイシーラは、例えば、容器供給手段(搬送アセンブリ)、蓋フィルム材料供給手段(フィルム駆動アセンブリ)及びシール装置(包装アセンブリ)などを備えている(例えば、特許文献1等参照)。容器供給手段は、コンベア等を備えており、シール装置に対し内容物を収めた容器を順次供給する。蓋フィルム材料供給手段は、駆動ローラ等を備えており、シール装置に対し、前記蓋フィルムの材料である帯状の蓋フィルム材料を供給する。
【0004】
また、シール装置は、蓋フィルム材料を切断して蓋フィルムを得るとともに、容器におけるポケット部内にガスを充填した上で該容器に該蓋フィルムを溶着する機能を備えている。シール装置は、上側チャンバ構成部(上側ツール)及び下側チャンバ構成部(下側ツール)を有してなる開閉可能なチャンバと、チャンバの内部空間におけるガス交換を行うガス交換手段(真空装置及び雰囲気装置)と、蓋フィルム材料を切断するための切断手段(切断ユニット)と、容器に蓋フィルムを溶着するための溶着手段(加熱ヘッド)とを備えている。
【0005】
上記のようなシール装置では、まず、チャンバを閉じることで、ポケット部に内容物を収容した容器が該チャンバの内部空間に配置されつつ、該チャンバにより蓋フィルム材料が把持された状態となる。その上で、ガス交換手段によってチャンバの内部空間におけるガス交換が行われることで、ポケット部内に所定のガスが充填される。その後、切断手段によって蓋フィルム材料が環状に切断されて蓋フィルムが得られる。得られた蓋フィルムは、ポケット部の開口を覆うようにして容器に載置された状態となる。そして最後に、溶着手段によって容器に対し蓋フィルムが溶着されることで、ポケット部内にガスの封入された密封パックが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-513106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に係るシール装置では、チャンバにより蓋フィルム材料を把持した状態において、該蓋フィルム材料によって、チャンバの内部空間は上側空間と下側空間とに区画された状態となる。ここで、例えば容器の配置された下側空間のみを対象としてガス交換を行うとすると、両空間に気圧差が生じ、各種不具合が発生し得る。そこで、ガス交換を行う際には両空間を対象としてガス交換を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、上記のようなガス交換を行うためには、例えば各空間に個別に通じる複数のガス流路などを備えた、複雑な構造のチャンバを用いなければならない。そのため、装置の製造やメンテナンスに係るコストの増大を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の構造を簡素化させることができ、製造やメンテンナンスに係るコストの抑制を図ることができる密封パックの製造方法及びトレイシーラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.内容物を収容するためのポケット部、及び、該ポケット部の開口端から外側に延出形成されたフランジ部を有する容器と、前記ポケット部に内容物が収容された状態で前記ポケット部を塞ぐようにして前記フランジ部に取着された蓋フィルムとを備え、前記ポケット部内に所定のガスが封入されてなる密封パックの製造方法であって、
所定のシール装置によって、帯状の蓋フィルム材料を切断して前記蓋フィルムを得るとともに、前記容器における前記ポケット部内に前記ガスを充填した上で該容器の前記フランジ部に該蓋フィルムを溶着するシール工程と、
前記シール装置に対し前記蓋フィルム材料を供給する蓋フィルム材料供給工程と、
前記蓋フィルム材料のうち切断後に残ったスクラップを巻取るスクラップ巻取工程とを含み、
前記シール工程は、
前記蓋フィルム材料を挟んで上下に配置された上側チャンバ構成部及び下側チャンバ構成部を有するチャンバを閉じて、該チャンバの内部空間に前記容器を収容した状態とする閉鎖工程と、
前記蓋フィルム材料のうちの前記チャンバの内部空間に位置する部位を環状に切断して前記蓋フィルムを得る切断工程と、
前記切断工程後において、前記チャンバの内部空間のガス交換を行うことで、前記ポケット部内に前記ガスを充填するガス交換工程と、
前記ガス交換工程後において、前記チャンバを閉じた状態のまま、前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着する溶着工程とを備え
前記閉鎖工程においては、前記蓋フィルム材料により前記チャンバの内部空間が上部空間と下部空間とに区画され、
前記シール工程は、前記切断工程による前記蓋フィルム材料の切断前又は切断と同時期に、前記蓋フィルム材料のうち前記蓋フィルムに対応する部位又は前記蓋フィルムを吸着保持する吸着保持工程を含み、
前記溶着工程では、前記吸着保持工程により吸着保持されている前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着することを特徴とする密封パックの製造方法。
【0012】
上記手段1によれば、チャンバを閉じた状態(より詳しくは、蓋フィルム材料を切断することなく単にチャンバを閉じた状態)においては、該蓋フィルム材料によりチャンバの内部空間が上側空間と下側空間とに区画された状態となるところ、該蓋フィルム材料を切断した後に、該内部空間のガス交換が行われる。従って、前記上側空間及び前記下側空間を連通させた上でガス交換を行うことができる。これにより、各空間に個別に通じる複数のガス流路など、両空間に気圧差が生じないようにするための機構をチャンバに設けずに済む。その結果、装置の構造を簡素化させることができ、製造やメンテナンスに係るコストの抑制を図ることができる。
【0013】
また、シール装置に対し蓋フィルム材料を供給するとともに、該蓋フィルム材料のうち切断後に残ったスクラップを巻取って回収するため、密封パックの製造を効率よく行うことができる。
【0015】
また、蓋フィルム材料の切断前又は切断と同時期に、蓋フィルム材料に対応する部位(切断後に蓋フィルムとなる部位)又は蓋フィルムが吸着保持される。そして、吸着保持されている蓋フィルムが容器(フランジ部)に溶着される。従って、溶着時における蓋フィルムの位置ずれをより確実に防止でき、製造された密封パックにおいて、フランジ部に対する蓋フィルムの溶着位置をより確実に一定とすることができる。これにより、溶着位置に起因した不良品の発生をより抑えることができるとともに、密封パックの見栄えを良好なものとすることができる。
【0016】
手段.前記ガス交換工程では、前記チャンバの内部空間に対する前記ガスの供給を調節し該内部空間における気圧を調節することによって、製造された前記密封パックにおける前記蓋フィルムを膨出又は陥凹させた状態とすることを特徴とする手段1に記載の密封パックの製造方法。
【0017】
上記手段によれば、ガスの供給を調節しチャンバの内部空間の気圧を調節することで、密封パックにおける蓋フィルムを、ポケット部内から離れるように膨出させた状態又はポケット部内に落ち込むようにして陥凹させた状態とすることができる。例えば、チャンバの内部空間の気圧が大気圧よりも大きなものとなるように調節することで、蓋フィルムを膨出させた状態とすることができ、一方、該内部空間の気圧が大気圧よりも小さなものとなるように調節することで、蓋フィルムを陥凹させた状態とすることができる。このように蓋フィルムを膨出又は陥凹させることで、製造された密封パックにおいて、蓋フィルムに“しわ”を付きにくくすることができる。その結果、密封パックの見栄えをより良好なものとすることができる。
【0018】
手段.内容物を収容するためのポケット部、及び、該ポケット部の開口端から外側に延出形成されたフランジ部を有する容器と、前記ポケット部に内容物が収容された状態で前記ポケット部を塞ぐようにして前記フランジ部に取着された蓋フィルムとを備え、前記ポケット部内に所定のガスが封入されてなる密封パックを製造するためのトレイシーラであって、
帯状の蓋フィルム材料を切断して前記蓋フィルムを得るとともに、前記容器における前記ポケット部内に前記ガスを充填した上で該容器の前記フランジ部に該蓋フィルムを溶着するシール装置と、
前記シール装置に対し前記蓋フィルム材料を供給する蓋フィルム材料供給手段と、
前記蓋フィルム材料のうち切断後に残ったスクラップを巻取るスクラップ巻取手段とを備え、
前記シール装置は、
前記蓋フィルム材料を挟んで上下に配置された上側チャンバ構成部及び下側チャンバ構成部を有し、開閉可能に構成されたチャンバと、
前記蓋フィルム材料のうちの前記チャンバの内部空間に位置する部位を環状に切断して前記蓋フィルムを得る切断手段と、
前記チャンバを閉じて該チャンバの内部空間に前記容器を収容した状態において、前記切断手段により前記蓋フィルム材料を切断した後に、該内部空間のガス交換を行うことで、前記ポケット部内に前記ガスを充填するガス交換手段と、
前記ガス交換手段によるガス交換後において、前記チャンバを閉じた状態のまま、前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着する溶着手段とを備え
前記チャンバは、前記蓋フィルム材料を切断することなく単に前記チャンバを閉じた状態においては、前記蓋フィルム材料により前記チャンバの内部空間が上部空間と下部空間とに区画されるよう構成され、
前記シール装置は、前記切断手段による前記蓋フィルム材料の切断前又は切断と同時期に、前記蓋フィルム材料のうち前記蓋フィルムに対応する部位又は前記蓋フィルムを吸着保持する吸着保持手段を備え、
前記溶着手段は、前記吸着保持手段により吸着保持されている前記蓋フィルムを前記フランジ部に溶着するように構成されていることを特徴とするトレイシーラ。
【0019】
上記手段によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0022】
手段.前記シール装置においては、前記容器の上方に前記蓋フィルム材料が配置されるようになっており、
前記切断手段は、前記蓋フィルム材料のうち前記フランジ部の外縁よりも内側に位置する部位を環状に切断するように構成されていることを特徴とする手段に記載のトレイシーラ。
【0023】
上記手段によれば、製造された密封パックにおいて、蓋フィルムの外縁(つまり被切断部)は、フランジ部の外縁から外側にはみ出ない。これにより、密封パックの見栄えを一層良好なものとすることができる。
【0024】
手段.前記下側チャンバ構成部は、上下動可能に構成されており、
前記上側チャンバ構成部には、上側チャック部が設けられるとともに、前記下側チャンバ構成部には、下側チャック部が設けられ、
前記切断手段は、前記上側チャンバ構成部に取付けられており、
前記下側チャンバ構成部を上動させることで、前記上側チャック部及び前記下側チャック部によって前記蓋フィルム材料が把持されるとともに、前記切断手段によって該蓋フィルム材料が切断され、かつ、前記チャンバが閉じられるように構成されていることを特徴とする手段3又は4に記載のトレイシーラ。
【0025】
上記手段によれば、下側チャンバ構成部を上動させることによって、上側チャック部及び下側チャック部によって蓋フィルム材料が把持されるとともに、蓋フィルム材料の切断が行われ、さらには、チャンバが閉じられる。従って、切断手段や蓋フィルム材料を把持する手段(上側チャック部等)を個別に動作させるための駆動源を設ける必要がなくなり、装置の構造をより簡素なものとすることができる。その結果、製造やメンテナンスに係るコストの抑制をより効果的に図ることができる。
【0026】
手段.前記シール装置は、前記容器が載置されるとともに、上下動可能に構成された容器テーブルを備え、
前記溶着手段は、発熱可能な加熱部を有し、
前記チャンバを閉じた後、前記容器テーブルを上動させて、前記蓋フィルムの裏面を前記フランジ部に接触させつつ該蓋フィルムの表面を前記加熱部に押し当てることで、該フランジ部に該蓋フィルムが溶着されるように構成されていることを特徴とする手段に記載のトレイシーラ。
【0027】
上記手段によれば、容器テーブルを上動させることで、容器(フランジ部)に蓋フィルムが溶着される。従って、加熱部を上下動させる構成と比べて、装置の構造を一層簡素なものとすることができ、製造等に係るコストの抑制を一層効果的に図ることができる。
【0028】
手段.前記ガス交換手段は、前記チャンバの内部空間に対する前記ガスの供給を調節することで該内部空間における気圧を調節可能に構成されており、該気圧の調節によって、製造された前記密封パックにおける前記蓋フィルムを膨出又は陥凹させた状態とすることが可能であることを特徴とする手段3乃至6のいずれかに記載のトレイシーラ。
【0029】
上記手段によれば、上記手段と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0030】
手段.前記切断手段は、鋸歯状の切断刃を備え、該切断刃が前記蓋フィルム材料の厚さ方向に沿って該蓋フィルム材料に押し込まれることで、該蓋フィルム材料を切断するように構成されていることを特徴とする手段3乃至7のいずれかに記載のトレイシーラ。
【0031】
上記手段によれば、蓋フィルム材料を切断する際の初期には、切断刃が蓋フィルム材料の厚さ方向に沿って蓋フィルム材料に押し込まれることで、切断刃の先端が蓋フィルム材料に刺さった状態となる。従って、切断刃に対する蓋フィルム材料の位置ずれを防止した状態とすることができる。そして、この状態で、切断刃が蓋フィルム材料に対しさらに押し込まれることで該蓋フィルム材料が切断される。そのため、蓋フィルム材料をより確実に所望の形状に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】密封パックの斜視図である。
図2】密封パックの断面図である。
図3】トレイシーラの概略構成を示す模式図である。
図4】シール装置の概略構成を示す断面斜視模式図である。
図5】シール装置の概略構成を示す断面模式図である。
図6】下側チャンバ構成部が上動して、下側ベース部に係止突起が係止された状態を示すシール装置の断面模式図である。
図7】下側チャンバ構成部が上動して、蓋フィルム材料の切断等が行われた状態を示すシール装置の断面模式図である。
図8】容器テーブルが上動して、フランジ部に蓋フィルムが溶着される状態を示すシール装置の断面模式図である。
図9】チャンバを閉じた状態において、蓋フィルム材料のうち両チャンバ構成部により把持される領域を示すための斜視模式図である。
図10】カッタの斜視模式図である。
図11】密封パックの製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態のトレイシーラによって製造される密封パックについて説明する。
【0034】
図1,2に示すように、密封パック1は、1つのポケット部2を備えた容器3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器3に取着された蓋フィルム4とを有している。尚、図1等では、容器3及び蓋フィルム4を実際よりも厚肉で示している。ポケット部2には、例えば食品やペットフード等の内容物5が収容されている。容器3及び蓋フィルム4は、実質的に通気性を有しないものとされており、内容物5を密封状態で維持可能となっている。
【0035】
容器3は、例えばPP(ポリプロピレン)等の熱可塑性樹脂材料によって構成されている。尚、容器3を複数種類の熱可塑性樹脂材料からなる多層構造としてもよい。また、容器3には、ポケット部2の開口端から外側へ延出するようにフランジ部3aが形成されている。一方、蓋フィルム4は、容器3と相溶性のある熱可塑性樹脂により形成されており、前記フランジ部3aに取着されている。尚、蓋フィルム4を、容器3と相溶性のある熱可塑性樹脂からなるシーラントが表面に塗布された薄肉材により構成してもよい。
【0036】
また、内容物5の長期保存などを可能とすべく、ポケット部2内には、所定のガス(例えば、窒素や二酸化炭素などの不活性ガス)が封入されている。本実施形態では、ポケット部2内の気圧は大気圧よりも大きなものとされており、その結果、蓋フィルム4は、ポケット部2内から離れるようにして膨出した状態となっている。
【0037】
次に、密封パック1を製造するためのトレイシーラ10について説明する。
【0038】
図3に示すように、トレイシーラ10は、フィルム装置11、容器供給装置12、シール装置13及び搬出装置14を備えている。
【0039】
フィルム装置11は、シール装置13に対し蓋フィルム4の材料となる帯状の蓋フィルム材料51を供給しつつ、蓋フィルム材料51のうち切断後に残ったスクラップ52を巻取るための装置である。フィルム装置11は、支持部11a、複数のガイドローラ11b及び巻取部11cを備えている。
【0040】
支持部11aは、蓋フィルム材料51がロール状に巻回されてなる原反を自由回転可能な状態で支持する。尚、支持部11aを巻取部11cと同期して回転可能に構成してもよい。
【0041】
ガイドローラ11bは、前記原反から引き出された蓋フィルム材料51が掛装されており、該蓋フィルム材料51の移動経路を定める。ガイドローラ11bによって、シール装置13における後述する上側チャンバ構成部31及び下側チャンバ構成部32間であって該シール装置13に供給された容器3の上方に、蓋フィルム材料51が案内される。
【0042】
巻取部11cは、図示しない駆動手段によって間欠的に回転可能に構成されており、回転することでスクラップ52を巻取る。また、巻取部11cが回転することによって、原反から蓋フィルム材料51が引き出されるとともに、一定長さの蓋フィルム材料51がシール装置13に対し順次供給される。本実施形態では、フィルム装置11が「蓋フィルム材料供給手段」を構成し、巻取部11cが「スクラップ巻取手段」を構成する。
【0043】
容器供給装置12は、シール装置13に対し、ポケット部2に内容物5が収容された容器3を順次供給する。容器供給装置12は、搬送コンベア12a及び受渡装置(不図示)を備えている。搬送コンベア12aは、容器3を1列に並べた状態でシール装置13側に搬送する。本実施形態では、搬送コンベア12aによる容器3の搬送時又は搬送前に、自動又は手動によって該容器3のポケット部2へと内容物5が収容される。前記受渡装置は、搬送コンベア12aによってシール装置13の手前まで搬送された1の容器3をシール装置13へと受け渡す。
【0044】
シール装置13は、蓋フィルム材料51を切断して蓋フィルム4を得るとともに、容器3におけるポケット部2内に所定のガスを充填した上で、該容器3のフランジ部3aに該蓋フィルム4を溶着する。シール装置13によって、ポケット部2内に所定のガスの封入された密封パック1が得られる。シール装置13の詳細な構成については後述する。
【0045】
搬出装置14は、シール装置13により製造された密封パック1を、シール装置13から取出しつつ、所定の下流位置まで搬送する。搬出装置14は、取出装置(不図示)及び搬送コンベア14aを備えている。前記取出装置は、密封パック1をシール装置13から取出して搬送コンベア14aに受け渡す。搬送コンベア14aは、密封パック1を1列に並べた状態で前記下流位置に搬送する。前記下流位置に搬送された密封パック1は、例えば、梱包されたり、後工程の装置に供給されたりする。尚、前記受渡装置及び前記取出装置に代えて、これら両装置の機能を有する1の装置を設けてもよい。つまり、容器3を搬送コンベア12aからシール装置13に受け渡すこと、及び、密封パック1をシール装置13から取出して搬送コンベア14aに受け渡すことを同時に行う装置を設けてもよい。
【0046】
次いで、シール装置13について説明する。シール装置13は、図4,5に示すように、チャンバ30、カッタ34、ヒータ35、吸着ボード36、ロッド37、押さえばね38、容器テーブル39及びガス交換装置40を備えている。本実施形態では、カッタ34が「切断手段」を構成し、同様に、ヒータ35が「溶着手段」を、吸着ボード36が「吸着保持手段」を、ガス交換装置40が「ガス交換手段」を構成する。
【0047】
チャンバ30は、容器3を密閉状態で収容するために用いられる。チャンバ30は、蓋フィルム材料51を挟んで上下に配置される上側チャンバ構成部31及び下側チャンバ構成部32を有しており、開閉可能に構成されている。本実施形態において、チャンバ30の開閉は、下側チャンバ構成部32が上下動して上側チャンバ構成部31に対し接近又は離間することでなされる。
【0048】
上側チャンバ構成部31は、上側ベース部311、被取付部312、上側チャック部313及び把持用ばね314を備えている。
【0049】
上側ベース部311は、チャンバ30の内部空間S(図7等参照)のうちの特に上側の空間を形成する部位である。上側ベース部311は、下方に開口する内部空間を備えた箱状をなしている。上側ベース部311の下端面は、矩形環状をなしており、下側チャンバ構成部32の後述するパッキン322などと相対向した状態とされている。また、上側ベース部311の上壁部には、ガス交換を行う際に利用されるガス通路311aと、ロッド37を挿通するための挿通孔311bとが貫通形成されている。
【0050】
加えて、上側ベース部311は、ロッド37の長手方向に沿って所定範囲内で上下動可能であり、その結果、上側チャンバ構成部31は、所定の下限位置から所定の上限位置までの間で上下動可能となっている。尚、図4,5では、下限位置に配置された状態の上側チャンバ構成部31を示している。
【0051】
被取付部312は、カッタ34等が取付けられる部位であり、上側ベース部311の側壁部の内面から内側(ロッド37側)に向けて突出している。
【0052】
上側チャック部313は、チャンバ30を閉じたときに、後述する下側チャック部321cと協働して蓋フィルム材料51を把持する。蓋フィルム材料51の把持は、上側チャック部313の下端面でなされる。当該下端面は、容器3におけるフランジ部3aの外縁よりも一回り大きな矩形環状とされている。従って、チャンバ30を閉じたときには、上側チャック部313等によって、蓋フィルム材料51のうちフランジ部3aよりも外側に位置する環状部位が把持されることとなる。
【0053】
把持用ばね314は、上側チャック部313等によって蓋フィルム材料51を把持するときに、該上側チャック部313に対し下向きの力を付与して、蓋フィルム材料51をより確実に把持するために利用される。把持用ばね314は、上側チャック部313及び被取付部312間に介在されている。
【0054】
下側チャンバ構成部32は、下側ベース部321及びパッキン322を備えている。
【0055】
下側ベース部321は、チャンバ30の内部空間Sのうちの特に下側の空間を形成する部位である。下側ベース部321は、箱状をなしており、上壁部の中心に形成された矩形状の貫通孔321aを通して外部と連通する内部空間を備えている。加えて、下側ベース部321は、図示しない駆動手段によって所定範囲内で上下動可能であり、その結果、下側チャンバ構成部32は、所定の下限位置から所定の上限位置までの間で上下動可能となっている。
【0056】
また、下側ベース部321の上壁部には、外側から内側に向けて、溝部321b、下側チャック部321c及びフランジ載置部321dが順に形成されている。溝部321bは、パッキン322を配置するための矩形環状の溝である。下側チャック部321cは、上側チャック部313とで蓋フィルム材料51を把持する部位であり、矩形環状の突起部によって構成されている。フランジ載置部321dは、下側チャンバ構成部32が上動したときにフランジ部3aが載置される平坦面である。
【0057】
一方、下側ベース部321の下壁部には、後述するテーブルロッド39aを挿通するための挿通孔321eが貫通形成されている。
【0058】
パッキン322は、チャンバ30を閉じたときに、チャンバ30の内部空間Sの気密性を確保するために用いられる。パッキン322は、下側ベース部321の上端面よりも若干だけ上方に突出しており、チャンバ30を閉じたときには、蓋フィルム材料51を介して上側ベース部311の下端面に圧接するようになっている。
【0059】
尚、本実施形態では、チャンバ30を閉じた状態において、両チャンバ構成部31,32(具体的には、両ベース部311,321及びパッキン322)によって、蓋フィルム材料51における環状領域R1(図9にて散点模様を付した部位)が把持される。従って、本実施形態では、チャンバ30を閉じた状態(より詳しくは、蓋フィルム材料51を切断することなく単にチャンバ30を閉じた状態)においては、蓋フィルム材料51によって、チャンバ30の内部空間Sが上側空間と下側空間とに区画(分離)されるようになっている。
【0060】
カッタ34は、蓋フィルム材料51を切断して蓋フィルム4を得るために用いられる。カッタ34は、上側チャック部313の内側にて被取付部312に取付けられることで、上側チャンバ構成部31に取付けられた状態となっている。カッタ34の先端部(下端部)は、上側チャンバ構成部31が下限位置に配置されている状態において、ヒータ35の下端面よりも下方に突き出すようになっている。但し、上側チャンバ構成部31の上動に伴いカッタ34が上動することで、カッタ34の先端部は、ヒータ35の下端面よりも上方に配置され得る。
【0061】
また、カッタ34は、蓋フィルム4の外縁形状に対応する矩形筒状をなしており、カッタ34の先端部には、複数の尖った歯部が環状に配設されてなる鋸歯状の切断刃34aが設けられている(図10参照)。切断刃34aが蓋フィルム材料51の厚さ方向に沿って該蓋フィルム材料51に押し込まれることで、該蓋フィルム材料51が切断される。本実施形態では、下側チャンバ構成部32が上動することで、容器3の上方に位置する蓋フィルム材料51のうち、該容器3のフランジ部3aの外縁よりも内側に位置する部位が環状に切断される。
【0062】
ヒータ35は、容器3に対し蓋フィルム4を溶着するために用いられる。ヒータ35の下端部には、通電により発熱可能な加熱部35aが設けられており、該加熱部35aは、蓋フィルム4の外縁形状よりも一回り小さな矩形環状をなしている。ヒータ35は、カッタ34の内側にてロッド37に固定された状態となっている。
【0063】
吸着ボード36は、蓋フィルム4を吸着保持するための装置である。吸着ボード36は、カッタ34の内側にてロッド37の下端部に固定されている。吸着ボード36の下面には多数の吸着孔(不図示)が設けられており、所定の吸引手段(不図示)によって該吸着孔に対し負圧を供給可能とされている。吸着孔に負圧を供給することで、吸着ボード36の下面によって蓋フィルム4や蓋フィルム材料51を吸着保持可能である。本実施形態では、カッタ34による蓋フィルム材料51の切断と同時期に、切断により得られた蓋フィルム4が吸着保持される。また、蓋フィルム4は、ポケット部2の開口を塞ぐことのない位置(すなわち、ポケット部2内のガス交換に支障が生じない位置)で吸着保持される。尚、カッタ34による蓋フィルム材料51の切断前に、蓋フィルム材料51のうち蓋フィルム4に対応する部位(切断後、蓋フィルム4となる部位)を吸着保持するように構成してもよい。
【0064】
ロッド37は、上側チャンバ構成部31やヒータ35等を支持しつつ、上側チャンバ構成部31の上下動をガイドする。ロッド37は、棒状をなしており、その上端部が所定の取付対象に固定されている。また、ロッド37と上側ベース部311との間は、所定のシール部品(不図示)が配置されており、チャンバ30の内部空間Sにおける気密性が確保されるようになっている。
【0065】
押さえばね38は、上側チャンバ構成部31に対し下向きの付勢力を付与するための部品である。押さえばね38は、ロッド37の外周において、ロッド37の上端鍔状部分及び上側ベース部311の上壁部により挟み込まれた状態で設置されている。
【0066】
容器テーブル39は、シール装置13に供給された容器3を支持したり、上下動させたりするために用いられる。容器テーブル39は、前記貫通孔321aよりも一回り小さな矩形平板状をなしており、上面に容器3が載置される。また、容器テーブル39の下面から下方に向けてテーブルロッド39aが延びており、前記挿通孔321eに挿通されている。容器テーブル39やテーブルロッド39aは、所定位置よりも下方への移動を規制されつつ、上下動可能とされている。テーブルロッド39aの外周面と下側ベース部321との間は、所定のシール部品(不図示)が配置されており、チャンバ30の内部空間Sにおける気密性が確保されるようになっている。
【0067】
加えて、テーブルロッド39aの外周には、鍔状の係止突起39bが設けられている。下側チャンバ構成部32が一定位置まで上動すると、下側ベース部321の下壁部に対し係止突起39bが係止された状態となる。この状態のまま下側チャンバ構成部32がさらに上動することで、下側チャンバ構成部32とともに容器テーブル39が上動する。
【0068】
ガス交換装置40は、チャンバ30を閉じた状態において該チャンバ30の内部空間Sにおけるガス交換を行うことで、ポケット部2内に所定のガスを充填する。ガス交換装置40は、所定の通気管41により上側チャンバ構成部31に接続されている。通気管41の内部空間は、前記ガス通路311aやチャンバ30の内部空間Sに連通している。ガス交換装置40は、通気管41を通して、チャンバ30の内部空間Sのガスを吸引して該内部空間Sを真空状態とする(つまり真空引きする)こと、及び、該内部空間Sに対しガスを供給することをこの順序で実行する。
【0069】
加えて、ガス交換装置40は、チャンバ30の内部空間Sに対する前記ガスの供給(供給量)を調節することで、該内部空間Sにおける気圧を調節可能とされている。該気圧の調節により、製造された密封パック1における蓋フィルム4を膨出状態とすることが可能である。
【0070】
次いで、トレイシーラ10による密封パック1の製造方法について説明する。
【0071】
図11に示すように、受渡工程S1において、前記受渡装置により、搬送コンベア12aからシール装置13に対しポケット部2に内容物5の収納された容器3が受渡されて、該容器3が容器テーブル39に載置される。このとき、下側チャンバ構成部32は下限位置に配置されており、下側チャンバ構成部32の上端面と容器テーブル39の上面とは同じ高さとなっている(図5参照)。これにより、シール装置13に対する容器3の受渡し、及び、容器テーブル39に対する容器3の載置を容易に行うことが可能となっている。
【0072】
一方、蓋フィルム材料供給工程S2において、巻取部11cの間欠回転により、一定長さの蓋フィルム材料51がシール装置13に供給される。
【0073】
次いで、シール工程S3において、シール装置13により、供給された容器3及び蓋フィルム材料51に対する各種処理が行われる。シール工程S3は、把持工程S31、切断工程S32、吸着保持工程S33、閉鎖工程S34、ガス交換工程S35、溶着工程S36及び開放工程S37を含む。把持工程S31は、両チャック部313,321cにより蓋フィルム材料51を把持する工程である。切断工程S32は、カッタ34により、蓋フィルム材料51のうちのチャンバ30の内部空間Sに位置する部位を環状に切断して蓋フィルム4を得る工程である。吸着保持工程S33は、蓋フィルム材料51を切断して得られた蓋フィルム4を吸着保持する工程である。閉鎖工程S34は、両ベース部311,321及びパッキン322によって蓋フィルム材料51を把持しつつ、チャンバ30を閉じて、該チャンバ30の内部空間Sに容器3を収容した状態とする工程である。
【0074】
シール工程S3では、まず、下側チャンバ構成部32を上動させることで、下側ベース部321の下壁部に係止突起39bを係止させるとともに、フランジ載置部321dにフランジ部3aを載置させる(図6参照)。さらに、下側チャンバ構成部32の上動が継続されることで、下側チャンバ構成部32とともに容器テーブル39及び容器3が上動する。
【0075】
そして、下側チャンバ構成部32の上動に伴い、まず、両チャック部313,321cにより蓋フィルム材料51が把持される。つまり、把持工程S31が行われる。このとき、把持用ばね314が圧縮変形することで、蓋フィルム材料51の把持がより確実になされる(図7参照)。
【0076】
次いで、下側チャンバ構成部32の上動に伴い、蓋フィルム材料51が把持された状態で、切断刃34aが蓋フィルム材料51の厚さ方向に沿って該蓋フィルム材料51に押し込まれることにより、蓋フィルム材料51が切断される。より詳しくは、切断時の初期には、切断刃34aの先端が蓋フィルム材料51に刺さった状態となる。そして、この状態で、切断刃34aが蓋フィルム材料51に対しさらに押し込まれることで該蓋フィルム材料51が切断される。
【0077】
また、切断と同時期に、吸着ボード36によって、得られた蓋フィルム4が吸着保持される。すなわち、切断工程S32及び吸着保持工程S33が同時期に行われる。
【0078】
そして、下側チャンバ構成部32がさらに上動することで、両ベース部311,321及びパッキン322により蓋フィルム材料51(スクラップ52)が把持されつつ、チャンバ30が閉じられる。つまり、閉鎖工程S34が行われる。
【0079】
切断工程S32や閉鎖工程S34の後に、ガス交換工程S35が行われる。この工程では、ガス交換装置40により、チャンバ30の内部空間Sのガス交換が行われる。すなわち、チャンバ30の内部空間Sが真空引きされた後、該内部空間Sに所定のガスが供給される。これにより、チャンバ30内に収容された容器3のポケット部2内に前記ガスが充填される。また、ガス交換工程S35においては、チャンバ30の内部空間Sに対するガスの供給(供給量)が調節されることで、該内部空間Sにおける気圧が大気圧よりも大きなものとされる。
【0080】
次いで、溶着工程S36において、チャンバ30を閉じた状態のまま、吸着ボード36に吸着保持された蓋フィルム4がフランジ部3aに溶着される。すなわち、下側チャンバ構成部32を上限位置まで上動させて容器テーブル39をさらに上動させることで、蓋フィルム4の裏面をフランジ部3aに接触させつつ、発熱状態の加熱部35aに蓋フィルム4の表面を所定時間だけ押し当てる(図8参照)。これにより、フランジ部3aに蓋フィルム4が溶着されて、密封パック1が得られる。得られた密封パック1は、蓋フィルム4の外縁(つまり被切断部)がフランジ部3aの外縁から外側にはみ出ない状態となる。
【0081】
尚、溶着工程S36では、下側チャンバ構成部32に押されることで、押さえばね38からの付勢力に抗して上側チャンバ構成部31が上限位置まで移動する。その結果、カッタ34が上動することとなり、容器3に対しカッタ34の先端部が接触しないようになっている。
【0082】
溶着工程S36の後、開放工程S37において、下側チャンバ構成部32を下限位置まで移動させることで、チャンバ30が開かれる。これにより、密封パック1は大気圧下に置かれ、該密封パック1の蓋フィルム4は膨出する。
【0083】
その後、搬出工程S4において、前記取出装置により、シール装置13から搬送コンベア14aへと密封パック1が受渡される。受渡された密封パック1は、搬送コンベア14aによって搬送されて、前記下流位置へと搬送される。
【0084】
一方、スクラップ巻取工程S5において、巻取部11cにより、蓋フィルム材料51のうち切断後に残ったスクラップ52が巻取られる。巻取られたスクラップ52は、別途廃棄処理される。
【0085】
以上詳述したように、本実施形態によれば、蓋フィルム材料51を切断した後に、チャンバ30の内部空間Sのガス交換が行われる。従って、本実施形態のように、チャンバ30を閉じた状態(より詳しくは、蓋フィルム材料51を切断することなく単にチャンバ30を閉じた状態)においては、蓋フィルム材料51によりチャンバ30の内部空間Sが上側空間と下側空間とに区画されるような構成であっても、前記上側空間及び前記下側空間を連通させた上でガス交換を行うことができる。これにより、各空間に個別に通じる複数のガス流路など、両空間に気圧差を生じないようにするための機構をチャンバ30に設けずに済む。その結果、装置の構造を簡素化させることができ、製造やメンテナンスに係るコストの抑制を図ることができる。
【0086】
加えて、蓋フィルム材料51の切断と同時期に蓋フィルム4が吸着保持されるとともに、吸着保持されている蓋フィルム4が容器3(フランジ部3a)に溶着される。従って、溶着時における蓋フィルム4の位置ずれをより確実に防止でき、製造された密封パック1において、フランジ部3aに対する蓋フィルム4の溶着位置をより確実に一定とすることができる。これにより、溶着位置に起因した不良品の発生をより抑えることができるとともに、密封パック1の見栄えを良好なものとすることができる。
【0087】
また、ガスの供給を調節しチャンバ30の内部空間Sの気圧を調節することで、密封パック1における蓋フィルム4を膨出状態とすることができる。これにより、製造された密封パック1において、蓋フィルム4に“しわ”を付きにくくすることができる。その結果、密封パック1の見栄えをより良好なものとすることができる。
【0088】
加えて、製造された密封パック1において、蓋フィルム4の外縁(つまり被切断部)は、フランジ部3aの外縁から外側にはみ出ない。そのため、密封パック1の見栄えをより一層良好なものとすることができる。
【0089】
さらに、密封パック1の製造時には、下側チャンバ構成部32を上動させることによって、両チャック部313,321cによって蓋フィルム材料51が把持されるとともに、把持された蓋フィルム材料51の切断が行われ、さらには、チャンバ30が閉じられる。従って、カッタ34や上側チャック部313等を個別に動作させるための駆動源を設ける必要がなくなり、装置の構造をより簡素なものとすることができる。その結果、製造やメンテナンスに係るコストの抑制をより効果的に図ることができる。
【0090】
併せて、容器テーブル39を上動させることで、容器3(フランジ部3a)に蓋フィルム4が溶着される。従って、加熱部35a(ヒータ35)を上下動させる構成と比べて、装置の構造を一層簡素なものとすることができ、製造等に係るコストの抑制を一層効果的に図ることができる。
【0091】
また、本実施形態では、下側チャンバ構成部32の移動により容器テーブル39を移動させる構成であるため、容器テーブル39を移動させるための駆動源を設ける別途必要がない。これにより、製造コスト等の抑制をさらに効果的に図ることができる。
【0092】
加えて、蓋フィルム材料51を切断する際の初期には、切断刃34aの先端が蓋フィルム材料51に刺さった状態となる。従って、切断刃34aに対する蓋フィルム材料51の位置ずれを防止した状態とすることができる。そして、この状態で、切断刃34aが蓋フィルム材料51に対しさらに押し込まれることで該蓋フィルム材料51が切断される。そのため、蓋フィルム材料51をより確実に所望の形状に切断することができる。
【0093】
また、シール装置13に対し蓋フィルム材料51を供給するとともに、該蓋フィルム材料51のうち切断後に残ったスクラップ52を巻取って回収するため、密封パック1の製造を効率よく行うことができる。
【0094】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0095】
(a)上記実施形態では、容器供給装置12からシール装置13に対し1の容器3が供給されて、シール装置13によって該1の容器3を対象とした処理が行われるように構成されている。これに対し、容器供給装置12からシール装置13に対し複数の容器3が一度に供給され、シール装置13によってこれら複数の容器3を対象とした処理が行われるように構成してもよい。この場合、生産性を高めるべく、チャンバ30を閉じることで該チャンバ30の内部空間に複数の容器3が収容されるとともに、該内部空間のガス交換により、これら容器3のポケット部2のそれぞれへとガスが充填されるように構成することが好ましい。
【0096】
(b)上記実施形態では、チャンバ30の内部空間Sにおける気圧が大気圧よりも大きなものとなるように該内部空間Sに対するガスの供給(供給量)が調節されることで、密封パック1における蓋フィルム4が膨出状態となるように構成されている。これに対し、内部空間Sの気圧が大気圧よりも小さなものとなるようにガスの供給を調節することで、蓋フィルム4が、ポケット部2内に落ち込むようにして陥凹した状態となるように構成してもよい。このように構成した場合においても、密封パック1の蓋フィルム4に“しわ”を付きにくくすることができ、密封パック1の見栄えを良好なものとすることができる。
【0097】
(c)上記実施形態において、密封パック1は1のポケット部2を有するものとされているが、密封パック1に設けられるポケット部2の数は何ら限定されるものではない。また、ポケット部2や容器3、蓋フィルム4の形状や位置関係についても何ら限定されるものではなく、適宜変更してもよい。勿論、容器3等の形状などに合わせて、チャンバ30やカッタ34の形状や配置位置を変更してもよい。
【0098】
(d)上記実施形態では、カッタ34、ヒータ35及び容器テーブル39を動作させるための駆動源は設けられていないが、駆動源を別途設けて、カッタ34等が個別に動作するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…密封パック、2…ポケット部、3…容器、4…蓋フィルム、5…内容物、10…トレイシーラ、11…フィルム装置(蓋フィルム材料供給手段)、11c…巻取部(スクラップ巻取手段)、13…シール装置、30…チャンバ、31…上側チャンバ構成部、32…下側チャンバ構成部、34…カッタ(切断手段)、34a…切断刃、35…ヒータ(溶着手段)、35a…加熱部、36…吸着ボード(吸着保持手段)、39…容器テーブル、40…ガス交換装置(ガス交換手段)、51…蓋フィルム材料、52…スクラップ、313…上側チャック部、321c…下側チャック部、S…チャンバの内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11