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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】癌を処置するための医薬組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20230509BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/407 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K31/69
A61K38/07
A61K31/573
A61K31/58
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/407
【請求項の数】 30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020215170
(22)【出願日】2020-12-24
(62)【分割の表示】P 2016569589の分割
【原出願日】2015-05-26
(65)【公開番号】P2021059579
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】1409471.8
(32)【優先日】2014-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】599108792
【氏名又は名称】ユーロ-セルティーク エス.エイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヨーク・メーリング
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ・マリア・オシオ
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/040286(WO,A2)
【文献】特表2012-515776(JP,A)
【文献】国際公開第2013/113838(WO,A1)
【文献】Blood Cancer Journal,2013年,Vol.3,e162,doi:10.1038/bcj.2013.58
【文献】British Journal of Haematology,2013年,Vol.160,p.321-330
【文献】Molecular Cancer Therapeutics,Vol.10,2011年,p.2034-2042
【文献】Blood,2013年,Vol.122,p.2331-2337
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 38/00-38/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアソームインヒビター、及び式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、癌の処置に使用するための、組合せ物:
【化1】
であって、プロテアソームインヒビターが、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102から選択される、組合せ物。
【請求項2】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、サリチル酸塩、乳酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、又は酢酸塩である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
グルココルチコイドを更に含む、請求項1又は2に記載の組合せ物。
【請求項4】
グルココルチコイドが、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、及びプレドニゾンからなる群から選択される、請求項3に記載の組合せ物。
【請求項5】
前記組合せ物中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩のモル比が1:1000から1000:1まで、1:1000から10:1まで、又は、1:5から1:0.5までである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項6】
さらにグルココルチコイドを含み、
前記組合せ物中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩対グルココルチコイドのモル比が、1:1000:10から1000:1:20まで、又は、1:3:4から1:0.5:3までである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項7】
薬学的に許容される希釈剤又は担体、及び請求項1から6のいずれか一項に記載の組合せ物を含む、癌の処置に使用するための、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組合せ物、及び場合により、患者を処置するための指示書を含む、癌の処置に使用するための、キット。
【請求項9】
前記癌が、乳癌、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び白血病から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項10】
前記癌が、再発性及び/又は抵抗性である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項11】
前記処置において、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドを、同時に、逐次的に、又は別々に投与する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項12】
前記処置において、患者の体重1kgあたり0.01から0.3mgの用量範囲のプロテアソームインヒビターを患者に投与する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項13】
前記処置において、患者の体重1kgあたり0.05から0.15mgの用量範囲のプロテアソームインヒビターを患者に投与する、請求項12に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項14】
存在する場合には、患者の体重1kgあたり0.1から1mgの用量範囲のグルココルチコイドを投与する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項15】
存在する場合には、患者の体重1kgあたり0.3から0.5mgの用量範囲のグルココルチコイドを投与する、請求項14に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項16】
ロテアソームインヒビター、及び式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、癌の処置に使用するための、組合せ物:
【化2】
であって、プロテアソームインヒビターが、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102から選択される、組合せ物。
【請求項17】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、サリチル酸塩、乳酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、又は酢酸塩である、請求項16に記載の組合せ物。
【請求項18】
グルココルチコイドを更に含む、請求項16又は17に記載の組合せ物。
【請求項19】
グルココルチコイドが、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、及びプレドニゾンからなる群から選択される、請求項18に記載の組合せ物。
【請求項20】
前記組合せ物中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩のモル比が1:1000から1000:1まで、1:1000から10:1まで、又は、1:5から1:0.5までである、請求項16から19のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項21】
さらにグルココルチコイドを含み、
前記組合せ物中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩対グルココルチコイドのモル比が、1:1000:10から1000:1:20まで、又は、1:3:4から1:0.5:3までである、請求項16から20のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項22】
薬学的に許容される希釈剤又は担体、及び請求項16から21のいずれか一項に記載の組合せ物を含む、癌の処置に使用するための医薬組成物。
【請求項23】
請求項16から21のいずれか一項に記載の組合せ物、及び場合により、患者を処置するための指示書を含む、癌の処置に使用するためのキット。
【請求項24】
前記癌が、乳癌、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び白血病から選択される、請求項16から21のいずれか一項に記載の組合せ物、請求項22に記載の組成物、又は請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記癌が、再発性及び/又は抵抗性である、請求項16から24のいずれか一項に記載の組み合せ物、組成物、又はキット。
【請求項26】
前記処置において、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドを、同時に、逐次的に、又は別々に投与する、請求項16から25のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項27】
前記処置において、患者の体重1kgあたり0.01から0.3mgの用量範囲のプロテアソームインヒビターを患者に投与する、請求項16から26のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項28】
前記処置において、患者の体重1kgあたり0.05から0.15mgの用量範囲のプロテアソームインヒビターを患者に投与する、請求項27に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項29】
存在する場合には、患者の体重1kgあたり0.1から1mgの用量範囲のグルココルチコイドを投与する、請求項16から28のいずれか一項に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【請求項30】
存在する場合には、患者の体重1kgあたり0.3から0.5mgの用量範囲のグルココルチコイドを投与する、請求項29に記載の組合せ物、組成物、又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の処置において、例えば、乳癌、又は多発性骨髄腫、リンパ腫、若しくは白血病等の血液癌の処置において有用である組合せ及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、最も生命を脅かす疾患の1つである。癌は、身体の一部における細胞が制御できない増殖を起こす状態である。米国癌学会からの最近のデータによると、米国では2014年に、新たな癌が167万症例存在すると推定される。癌は、米国では2番目の死因であり(心疾患に次ぐ2番目)、2014年には585000人を超える生命が奪われるであろう。実際、米国に住む全男性の50%及び全女性の33%が、一生の間に何らかのタイプの癌を発症すると推定される。したがって、癌は主な公衆衛生上の重荷となり、米国においてはかなりの費用となる。これらの数値は世界中殆どの国々にまたがる随所に反映されるが、癌のタイプ及び癌を発症する集団の相対的比率は、遺伝及び食事を含めた多くの様々な要因に応じて変動する。
【0003】
数十年の間、外科手術、化学療法、及び放射線が、様々な癌に対する確立された処置であった。患者は通常、自身の疾患のタイプ及び程度に応じてこれらの処置の組合せを受ける。しかし、外科的処置(すなわち、患部組織の除去)が不可能である場合は、化学療法が癌患者にとって最も重要な選択肢である。外科手術は、乳房、結腸、及び皮膚等のある部位に位置する腫瘍を除去する上でときに有効であるが、背骨等の他の領域に位置する腫瘍の処置にも、血液及び造血組織(例えば、骨髄)の癌を含む散在性の血液癌の処置にも用いることができない。これらには、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び白血病が含まれる。放射線治療は、生存組織の電離放射線への曝露を伴い、曝露された細胞の死滅又は細胞に対する損傷を引き起こす。放射線治療の副作用は急性且つ一時的であり得るが、その他は不可逆的であり得る。化学療法は、細胞の複製又は細胞の代謝の破壊を伴う。化学療法は、乳房、肺、及び精巣の癌の処置において最もよく用いられる。この癌処置が失敗する主因の1つは、癌細胞による薬物耐性の発症であり、疾患の再発又は更に死亡をまねき得る重大な問題である。よって、より効果的な癌処置が必要とされている。
【0004】
多発性骨髄腫は、重大且つ高まりつつある問題である。多発性骨髄腫は形質細胞に生じる癌である。正常な形質細胞は、感染と戦うための免疫グロブリンを生成する。骨髄腫では形質細胞が異常となり、制御できないほど増殖し、パラプロテインとしても知られ、有用な機能のない1タイプの抗体だけを放出する。パラプロテインは骨髄に蓄積し、血流中を循環する傾向があり、尿中にも検出され得る。これは、骨髄細胞が成人では通常活性である、身体の複数の部位に罹患する(よって「多発性」骨髄腫である)。多発性骨髄腫(又は骨髄腫とも呼ばれる)の主形態は活動型骨髄腫、形質細胞腫、軽鎖骨髄腫、及び非分泌型骨髄腫である。2011年の米国における骨髄腫の新規症例数は、1年あたりに男女100000人あたり6.1人であり、5年を超える生存率のパーセント値は45%であった。2014年の米国における新規症例数は24000を超え(全癌症例数の1.4%)、2014年の死亡数は11000人を超える(全癌症例の1.9%)と推定される。
【0005】
WO-A-2010/085377では、式Iの化合物が、多発性骨髄腫細胞系に対して優れたin vitro活性を有することが示され、活性はベンダムスチンが示す活性より35~100倍大きい範囲であった。
【0006】
白血病は、「芽球」と呼ばれる未熟な白血球細胞の異常な増大を特徴とする、一タイプの血液又は骨髄の癌である。身体は、感染と戦うための正常で機能的な白血球細胞を生成する代わりに、これらの非機能的な芽球を多数生成する。白血病は、一連の疾患を網羅する広義の語である。ひいては、白血病は、血液、骨髄、及びリンパ系に罹患する疾患の更に広範な群の一部であり、これらは全て血液の新生物としても知られている。最も一般的な形態は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、及び慢性骨髄性白血病(CML)であり、あまり一般的ではない形態には、ヘアリー細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、及びT細胞急性リンパ芽球性が含まれる。2014年の米国における新たな症例数は52000を超え(米国における新たな癌全ての3.1%)、死亡は24000人を超える(米国における癌死亡数全ての4.1%)と推定される。5年を超える生存率のパーセント値は現在57.2%であり、多くの他の癌よりも著しく低い数値であり、急性骨髄性白血病に対する5年を超える生存率は特に低く、わずか20%である。
【0007】
リンパ腫はリンパ系の癌である。リンパ腫には2つの主なタイプがあり、すなわちホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫である。
【0008】
非ホジキンリンパ腫は、より一般的な形態のリンパ腫である。リンパ系は身体中に及び、したがって非ホジキンリンパ腫は身体の殆ど全ての部分に見出すことができる。非ホジキンリンパ腫患者では、患者の白血球(リンパ球)に異常分裂するものがある。これらの白血球には正常細胞のように、いかなる休止時間もなく、連続的に分裂を始め、したがって非常に多くが生成される。これらの白血球は、通常のように、自然に死滅しない。これらの細胞は、完全に成熟する前に分裂を始め、したがって正常の白血球のように感染と戦うことができない。異常なリンパ球は全て、リンパ節、又は骨髄若しくは脾臓等の他の場所で収集を始める。次いで、これらは成長して腫瘍になり、リンパ系又はこれらが成長している臓器の内部で問題を起こし始める。例えば、リンパ腫が甲状腺で始まる場合、これは甲状腺ホルモンの正常な生成に影響を及ぼし得る。非ホジキンリンパ腫には多くの異なるタイプがある。これらはいくつかの異なる方法で分類することができる。1方法は罹患する細胞のタイプによる。非ホジキンリンパ腫では、B細胞及びT細胞の2タイプのリンパ球が影響を受け得る。これはB細胞リンパ腫又はT細胞リンパ腫と分類される。非ホジキンリンパ腫を有するヒトの殆どがB細胞リンパ腫を有する。T細胞リンパ腫は、10代及び若年成人においてより一般的である。
【0009】
ホジキンリンパ腫の細胞は顕微鏡下で特別な外観を呈する。これらの細胞はリードシュテルンベルグ細胞と呼ばれる。非ホジキンリンパ腫にはリードシュテルンベルグ細胞がない。ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫は異なる2疾患であるため、医師が、これらの細胞間の違いを見分けることができるのが重要である。ホジキンリンパ腫では、癌になったのはリンパ節における細胞である。
【0010】
2009年に、非ホジキンリンパ腫患者に対する5年を超える%生存率は63%であり、同期間にわたるホジキンリンパ腫患者に対する生存率は83%であった。
【0011】
乳癌は、乳房の組織に形成する癌である。乳癌の最も一般的なタイプは乳管癌であり、これは乳管(乳汁を乳房の小葉から乳頭まで運搬する薄い管)の内壁において始まる。別の一タイプの乳癌は小葉癌であり、これは乳房の小葉(乳腺)において始まる。乳癌は、低クローディン腫瘍(claudin-low tumors)、基底細胞様腫瘍(basal-like tumors)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陽性腫瘍、管腔A腫瘍、及び管腔B腫瘍の亜群に分類することができる。浸潤性乳癌は、乳管又は小葉における始まった場所から周囲の正常な組織に広がった乳癌である。乳癌は男性及び女性の両方に生じるが、男性の乳癌は稀である。2014年に、女性約23300及び男性2400の新たな症例が存在し、女性の死亡は4000人、男性の死亡は400人を少々超えると推定される。
【0012】
乳癌を有する女性100人毎におよそ15人が、トリプルネガティブ乳癌を有し、すなわち、エストロゲンネガティブであり、プロゲステロンネガティブであり、且つHER2ネガティブである。再発性のトリプルネガティブ乳癌は、生物学的に高悪性度であり、薬物耐性を速やかに発症し、分子標的がないため、医学的必要性が非常に満たされていない状態である。現在まで、化学療法が依然として、進行したトリプルネガティブ乳癌に対する治療の標準であり、全生存の中央値は低い。
【0013】
WO-A-2010/085377では、以下の式Iの化合物が開示されている。これはHDAC経路を潜在的に阻害する、クラスで第1の二重機能的アルキル化-HDACi融合分子である。
【0014】
【化1】
【0015】
生物学的アッセイにより、式Iの化合物はHDAC酵素を潜在的に阻害することが示され(HDAC1のIC50は9nM)、多発性骨髄腫細胞系に対して優れたin vitro活性を有することが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】WO-A-2010/085377
【文献】WO2013/113838
【非特許文献】
【0017】
【文献】Chouら、Adv. Enzyme Regul.、22巻、27~55頁(1984年)
【文献】E. W. Martin「Remington's Pharmaceutical Sciences」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
乳癌、及び多発性骨髄腫、リンパ腫、又は白血病等の血液癌の処置を含めた、より有効な癌処置が必要とされている。現在、これらの状態は多くのヒトに罹患し、長期間の予後の中央値はこれらの状態の多くでは良好ではない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様において、プロテアソームインヒビター、及び式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む組合せを提供する:
【0020】
【化2】
【0021】
驚くべきことに、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及びカルフィルゾミブ又はボルテゾミブ等のプロテアソームインヒビターの組合せは、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び白血病等の血液癌、並びに乳癌を含めた癌の処置において特に有効であり、したがってこれらは、癌に対するより有効な処置を見出す問題に取り組む努力の中で極めて有望であることが見出された。組合せは、場合により、デキサメタゾン等のグルココルチコイドを更に含むことができる。これらの更なる組合せも、癌の処置において特に有効である。
【0022】
本発明の第2の態様において、薬学的に許容される希釈剤又は担体、及び本発明の第1の態様による組合せを含む医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様による組合せ、及び場合により患者を処置するための指示書を含むキットを提供する。
【0024】
本発明の第4の態様において、癌の処置における使用のための、本発明の第1、第2、又は第3の態様による組合せ、組成物、又はキットを提供する。
【0025】
本発明の第5の態様において、本発明の第1、第2、又は第3の態様による組合せ、組成物、又はキットを、それを必要とする患者に投与する工程を含む、前記患者における癌を処置する方法を提供する。
【0026】
本発明の第6の態様において、再発性/抵抗性の多発性骨髄腫の処置における使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を提供する。一実施形態において、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩は、プロテアソームインヒビター、及び場合により更にグルココルチコイドと組み合わせた、再発性/抵抗性の多発性骨髄腫の処置における使用のためである。
【0027】
本発明の第7の態様において、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、前記患者における再発性/抵抗性の多発性骨髄腫を処置する方法を提供する。一実施形態において、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩は、プロテアソームインヒビターと組み合わせて投与し、更に場合により、グルココルチコイドと組み合わせても投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】単一化合物に対して、並びに組合せとして(二重及び三重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのMM1S多発性骨髄腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図2】単一化合物に対して、並びに組合せとして(二重及び三重)、72時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのMM1S多発性骨髄腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図3】単一化合物に対して、及び組合せとして、MM1S細胞3×106個を右側腹部中に皮下接種したCB17-SCIDマウスに対する様々な試験化合物に対する試験日数に対して、腫瘍成長(mm3)をプロットしたものを示す図である。
図4】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのRPMI8226多発性骨髄腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図5】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroの2013-10-16 MTS AMO abzb多発性骨髄腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図6】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroの2014-01-15 MTS Jekoマントル細胞リンパ腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図7】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroの2014-01-15 Grantaマントル細胞リンパ腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図8】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroの2014-02-21 MTS MTS MDA-MB468基底細胞様乳癌細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図9】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのMTS HL-60前骨髄球性白血病細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図10】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのMTS U937急性骨髄性白血病細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図11】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのBJAB(胚中心線(germinal center line)B細胞リンパ腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図12】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのOciLy3(ABC型)B細胞リンパ腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図13】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのTMD8(ABC型)B細胞リンパ腫細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図14】単一化合物に対して、及び組合せとして(二重)、48時間インキュベート後、様々な試験化合物に対する濃度に対して、in vitroのBT-549トリプルネガティブ乳癌細胞の生存%を対照の%としてプロットしたものを示す図である。
図15】放射線治療単独での対照に対する、2つの異なる濃度の式Iの化合物(EDO-S101)と組合せの放射線治療の線量(Gy)に対して、in vitroのT98G、U251MG、及びU87MG神経膠芽腫細胞系の%生存割合をプロットしたものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示において、数々の一般用語及び句を用いるが、これらは以下の通り解釈されたい。
【0030】
「動物」には、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカ等)、及び非哺乳動物(例えば、トリ等)が含まれる。
【0031】
「薬学的に許容される塩」は、上記に規定した通り薬学的に許容され、所望の薬理活性を有する、本発明の化合物の塩を意味する。このような塩には、無機酸と形成される酸付加塩、又は有機酸と形成される酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機塩基又は有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩基付加塩も含まれる。一般的にこのような塩は、例えば、遊離の酸又は塩基の形態のこれらの化合物を、水中又は有機溶媒中又は二者の混合液中、理論量の好適な塩基又は酸と反応させることによって調製される。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル等の非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例には、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸付加塩、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、トシル酸塩、乳酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩等の有機酸付加塩が含まれる。アルカリ付加塩の例には、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びアンモニウム塩等の無機塩、並びに例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸塩等の有機アルカリ塩が含まれる。
【0032】
驚くべきことに、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及びカルフィルゾミブ又はボルテゾミブ等のプロテアソームインヒビターの組合せは、多発性骨髄腫、白血病、及びリンパ腫等の血液癌、及び乳癌を含めた癌の処置において特に有効であり、したがって癌に対してより有効な処置を見出す問題に取り組む努力の中で極めて有望であることが見出された。組合せは、場合により、デキサメタゾン等のグルココルチコイドを更に含むことができる。これらの更なる組合せは、癌の処置においても、特に有効である。
【0033】
本発明の組合せにおいて、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、好ましくは、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、サリチル酸塩、乳酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、又は酢酸塩であってよく、より好ましくは酢酸塩であってよい。
【0034】
本発明の組合せにおいて、プロテアソームインヒビターは、好ましくは、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、マリゾミブ(marizomib)、デランゾミブ(delanzomib) (CEP-18770)、オプロゾミブ(oprozomib) (ONX 0912)、イキサゾミブ(MLN-9708)、及びLU-102、又は薬学的に許容されるこれらの塩からなる群から選択することができる。特に好ましくは、プロテアソームインヒビターは、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102から選択することができる。
【0035】
これらのプロテアソームインヒビターの構造は以下の通りである:
【0036】
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【0037】
本発明の組合せは、グルココルチコイドを更に含むことができる。本発明の組合せのこれらの実施形態において、グルココルチコイドは、好ましくは、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、及びプレドニゾンからなる群から選択することができ、最も好ましくはデキサメタゾンである。
【0038】
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、プロテアソームインヒビター、及び場合によりグルココルチコイドを含む本発明の1つの更に好ましい組合せにおいて、前記組合せは、1つ又は複数の追加の薬学的に活性な薬剤を更に含むことができる。特に適切な薬学的に活性な薬剤は、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、プロテアソームインヒビター、及びグルココルチコイドに対して異なる作用様式を有する抗腫瘍薬、例えば、ニトロソ尿素(nitrosurea)、エチレンイミン、スルホン酸アルキル、ヒドラジン、及びトリアジン等のアルキル化剤、並びにプラチナベースの薬剤;植物アルカロイド、タキサン、ビンカアルカロイド;抗腫瘍性抗生物質、例えば、クロモマイシン、アントラサイクリン、並びに種々の抗生物質、例えば、マイトマイシン及びブレオマイシン;葉酸拮抗薬、ピリミジン拮抗薬、プリン拮抗薬、及びアデノシンデアミナーゼインヒビター等の代謝拮抗薬;トポイソメラーゼインヒビター、例えば、トポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、種々の抗悪性腫瘍薬、例えば、リボヌクレオチドレダクターゼインヒビター、副腎皮質ステロイドインヒビター、微小管阻害薬、及びレチノイド;プロテインキナーゼ;熱ショックタンパク質、ポリ-ADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)、低酸素誘導因子(HIF)、プロテアソーム、Wnt/Hedgehog/Notchシグナル伝達タンパク質、TNF-アルファ、マトリクスメタロプロテイナーゼ、ファルネシルトランスフェラーゼ、アポトーシス経路、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、及びメチルトランスフェラーゼ;ホルモン療法、血管破壊剤(vascular disrupting agent)、遺伝子治療、RNAi癌治療、化学予防薬(chemoprotective agent)、抗体コンジュゲート、インターロイキン-2等の癌免疫療法、癌ワクチン又はモノクローナル抗体;並びに好ましくはDNA損傷薬、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼインヒビター、微小管阻害薬、EGFRインヒビター、HER2インヒビター、VEGFR2インヒビター、BRAFインヒビター、Bcr-Ablインヒビター、PDGFRインヒビター、ALKインヒビター、PLKインヒビター、METインヒビター、エピジェネティック薬(epigenetic agent)、HSP90インヒビター、PARPインヒビター、CHKインヒビター、アロマターゼインヒビター、エストロゲン受容体アンタゴニスト、及びVEGF、HER2、EGFR、CD50、CD20、CD30、CD33等を標的化する抗体である。
【0039】
本発明の組合せの好ましい一実施形態において、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドは、同時、逐次的、又は別々の投与に適合される。プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドが、同時投与に適合されるのが好ましい。
【0040】
本発明の組合せの好ましい一実施形態において、プロテアソームインヒビターは、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102から選択され、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩は
【0041】
【化4】
【0042】
又はその酢酸塩である。この組合せの一実施形態において、組合せはグルココルチコイドを更に含むことができ、前記グルココルチコイドはデキサメタゾンである。
【0043】
本発明の組合せの好ましい一実施形態において、前記組合せ中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩のモル比は1:1000から1000:1までである。好ましくは、前記組合せ中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩のモル比は1:1000から10:1まで、より好ましくは1:800から1:200まで、又は1:5から1:0.5まで、最も好ましくは1:700から1:400まで、又は1:3から1:0.5まで、例えば、1:1000、1:900、1:800、1:700、1:600、1:500、1:400、1:10、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、又は1:0.5である。
【0044】
本発明の1つの特に好ましい組合せは、式Iの化合物又はその酢酸塩、並びにボルテゾミブ及びカルフィルゾミブから選択されるプロテアソームインヒビターを含み、前記組合せ中のボルテゾミブ及びカルフィルゾミブから選択されるプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩のモル比は、1:700から1:400まで、例えば、1:700、1:600、1:500、又は1:400である。本発明の第1の態様の別の特に好ましい組合せは、式Iの化合物又はその酢酸塩、並びにLU-102から選択されるプロテアソームインヒビターを含み、前記組合せ中のLU-102対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩のモル比は、1:3から1:0.5まで、例えば、1:3、1:2、1:1、又は1:0.5である。
【0045】
驚くべきことに、プロテアソームインヒビター、及び式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む組合せは相乗的な組合せであることが見出された。換言すると、組合せの効力はCalcusynソフトウエア(biosoft社、Ferguson、MO、USA)で測定したが、このソフトウエアは、Chou Talay法(Chouら、Adv. Enzyme Regul.、22巻、27~55頁(1984年))に基づき、以下の解釈で組合せ指数(CI)を算出する:
CI 1>1:アンタゴニスト効果、CI=1:相加効果、及びCI<1相乗効果。
【0046】
現在の研究では、プロテアソームインヒビター、及び式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む本発明の二重組合せの多くでは、CIは1未満であることが見出され、相乗効果が指摘される。
【0047】
本発明の組合せの別の好ましい一実施形態は、プロテアソームインヒビター、及び式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩に加えてグルココルチコイドを更に含み、前記組合せ中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩対グルココルチコイドのモル比は、1:1000:20から1000:1:20までである。好ましくは、前記組合せ中のプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩対グルココルチコイドのモル比は、1:1000:10から1:100:2までである。好ましくは、前記組合せ中に用いられる、プロテアソームインヒビター対式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩対グルココルチコイドのモル比は、1:1000:5から1:200:2まで、より好ましくは、1:700:4から1:400:3まで、例えば、1:1000:5、1:900:5、1:800:4、1:700:4、1:600:4、1:500:3、又は1:400:3である。
【0048】
本発明の1つの特に好ましい組合せは、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブから選択されるプロテアソームインヒビター、式Iの化合物又はその酢酸塩、及びデキサメタゾンを含み、前記組合せ中のボルテゾミブ及びカルフィルゾミブから選択されるプロテアソームインヒビター対式Iの化合物又はその酢酸塩対デキサメタゾンのモル比は、1:700:4から1:400:3まで、例えば、1:700:4、1:700:3、1:600:4、1:600:3、1:500:3、又は1:400:3である。本発明の第1の態様の別の特に好ましい組合せは、LU-102から選択されるプロテアソームインヒビター、式Iの化合物又はその酢酸塩、及びデキサメタゾンを含み、前記組合せ中のLU-102対式Iの化合物又はその酢酸塩対デキサメタゾンのモル比は、1:3:4から1:0.5:3まで、例えば、1:3:4、1:3:3、1:2:4、1:2:3、1:1:4、1:1:3、又は1:0.5:3である。
【0049】
驚くべきことに、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及びグルココルチコイドを含む本発明の三重組合せの多くもまた相乗的な組合せであり、すなわち、組合せ指数CIが1未満であることが見出された。
【0050】
本発明の第2の態様による医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤又は担体、及び本発明の第1の態様による組合せを含む。第2の発明の好ましい組成物には、上記に記載し、例示した、本発明の好ましい組合せを含む組成物が含まれる。本発明の第2の態様による医薬組成物の薬学的に許容される希釈剤又は担体は、本発明の組合せの活性薬剤の担体として作用し、前記組合せ中に存在する活性薬剤を妨害しない、あらゆる適切な分散剤、賦形剤、補助剤、又は他の材料であってよい。典型的な薬学的に許容される担体及び希釈剤の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に見出すことができ、これらには水、食塩水、デキストロース溶液、血清溶液、リンゲル溶液、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、界面活性剤(例えば、Cremophor)、環状多糖(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン又はスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン)、ポリマー、リポソーム、ミセル、ナノ粒子等が含まれる。
【0051】
本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様による組合せ、及び場合により、患者を処置するための指示書を含むキットを提供する。典型的に、キットは、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、プロテアソームインヒビター、及びグルココルチコイドを、患者を処置するための指示書と一緒に含むことができる。各活性薬剤は、適切な容器中に提供することができる。キットは、例えば、式Iの化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、プロテアソームインヒビター、又はグルココルチコイド、又はこれらのあらゆる組合せのための送達系を更に含むことができる。
【0052】
指示書は、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドの組合せを、処置中の特定の状態、その状態の段階、使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組合せ;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、及び食事;投与時間、投与経路、及び使用する特定の化合物の排泄速度;処置の期間;使用する特定の化合物と組み合わせて、又は同時期に用いる薬物;並びに医薬の技術分野ではよく知られている同様の因子等の変数にしたがって、同時、逐次的、又は別々に投与することを助言し得る。本発明の第3の態様による好ましいキットには、上記に記載し、例示した、本発明の好ましい組合せを含むものが含まれる。
【0053】
本発明の第4の態様において、癌の処置における使用のための、本発明の第1、第2、又は第3の態様による組合せ、組成物、又はキットを提供する。
【0054】
本発明の第5の態様において、それを必要とする患者に、本発明の第1、第2、又は第3の態様による組合せ、組成物、又はキットを投与する工程を含む、前記患者における癌を処置する方法を提供する。
【0055】
本発明の組合せ、組成物、及びキットは、in vitro及びin vivoの両方で広範囲の腫瘍細胞型に対して極めて活性であることが見出された。本発明のこれら二重及び三重の組合せ、並びに本発明の組成物及びキットにおける組合せが示す抗腫瘍活性は、多くの場合、単なる相加を超え、大幅に1未満の組合せ指数CIを示し、これらの組合せに対する相乗性が指摘される。この驚くべき所見は、癌の処置における本発明の組合せ、組成物、及びキットの特定の有効性を更に支持するものである。
【0056】
本発明の組合せ、組成物、及びキットによって処置することができる癌の例には、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び白血病等の血液癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、精巣癌、膵臓癌、肝臓癌、胃癌、胆道癌、食道癌、消化管間質腫瘍、子宮頸癌、卵巣癌、子宮癌、腎臓癌、メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、膀胱癌、肉腫、中皮腫、胸腺腫、骨髄異形成症候群、神経膠芽腫、並びに骨髄増殖性疾患が含まれる。特に、本発明の組合せ、組成物、及びキットは、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び白血病等の血液癌、並びに乳癌に対して有効である。
【0057】
本発明の第4の態様による癌の処置、又は本発明の第5の態様による処置の方法における使用のための、組合せ、組成物、又はキットの一実施形態において、癌は、血液癌及び乳癌から選択される。
【0058】
本発明の組合せ、組成物、又はキットが血液癌の処置における使用のためである場合、これは、好ましくは、多発性骨髄腫(例えば、全形態とも再発及び抵抗性の段階を含めた全ての段階において処置できる、活動型骨髄腫、形質細胞腫、軽鎖骨髄腫、又は非分泌型骨髄腫)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫)、及び白血病[急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML、全形態とも、再発及び抵抗性の段階を含めた全ての段階において処置できる、骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、及び急性巨核球性白血病を含む)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、又はT細胞急性リンパ芽球性白血病]から選択することができる。
【0059】
本発明の組合せ、組成物、又はキットが、乳癌の処置における使用のためである場合、乳癌は、典型的に、低クローディン腫瘍、基底細胞様腫瘍、ヒト上皮成長因子2受容体(HER2)陽性腫瘍、管腔A腫瘍、及び管腔B腫瘍から選択することができ、好ましくはトリプルネガティブ乳癌である。
【0060】
本発明による癌の処置における使用のための組合せ、組成物、又はキットの好ましい一実施形態、及び本発明による癌を処置する方法において、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドを、同時に、逐次的に、又は別々に投与する。より好ましくは、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドを同時に投与する。
【0061】
本発明による癌の処置及び癌を処置する方法における使用のための組合せにおいて、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩は、典型的に、それを必要とする患者に、患者の体重1kgあたり10から100mgの用量範囲、好ましくは患者の体重1kgあたり40から80mgの用量範囲を投与する。典型的に、プロテアソームインヒビターは、それを必要とする患者に、患者の体重1kgあたり0.01から0.3mgの用量範囲、より好ましくは患者の体重1kgあたり0.05から0.15mgの用量範囲を投与する。組合せにおいてグルココルチコイドも投与する場合、グルココルチコイドは、典型的に、患者の体重1kgあたり0.1から1mgの用量範囲を投与する。患者の体重1kgあたり0.3から0.5mgの用量範囲を投与するのが好ましい。
【0062】
本発明による組合せ、組成物、又はキットの治療有効量は、あらゆる医学的処置に適用できる理にかなった損益比で、処置する対象に対して本発明の第4及び第5の態様による治療効果を付与する組合せ、組成物、又はキットの量である。治療効果は、他覚的(すなわち、いくつかの試験若しくはマーカーによって測定できる)でも、又は自覚的(すなわち、対象が効果の指標を与え、若しくは効果を感じる)でもよい。本発明による組合せ、組成物、又はキットの有効量は、組合せ中に、患者の体重1kgあたり10から100mgまで(例えば、体重1kgあたり40から80mg、例えば、体重1kgあたり40、50、60、70、又は80mg)の用量範囲の式Iの化合物又はその塩が含まれ、患者の体重1kgあたり0.01から0.3mgまで(例えば、体重1kgあたり0.1から1mg、例えば、体重1kgあたり0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5mg)の用量範囲のプロテアソームインヒビターが含まれ、患者の体重1kgあたり0.03から1mgまで(例えば、患者の体重1kgあたり0.3から0.5mg、例えば、患者の体重1kgあたり0.3、0.4、又は0.5mg)の用量範囲のグルココルチコイドが含まれるものと考えられる。
【0063】
有効量は、投与経路、及び他の活性薬剤との同時利用の可能性に応じて変動する。しかし、本発明の組合せ、組成物、及びキットの合計一日利用量は、担当の医師が、健全な医学上の判断の範囲内で決定することを理解されよう。あらゆる特定の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、処置中の障害及び障害の重症度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、及び食事;投与時間、投与経路、及び使用する特定の化合物の排泄速度;処置の期間;使用する特定の化合物と組み合わせて、又は同時期に用いる薬物;並びに医学の技術分野ではよく知られている同様の因子を含めた多様な因子による。
【0064】
本発明はまた、癌を処置するための、例えば、血液癌又は乳癌を処置するための医薬の製造における、本発明の第1、第2、又は第3の態様による組合せ、組成物、又はキットの使用を対象とする。
【0065】
本発明の組合せ、組成物、又はキットの投与形態の適切な例には、制限なく、経口、局所、非経口、舌下、直腸、膣、眼、及び鼻腔内が含まれる。非経口投与には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射又は注入の技術が含まれる。組合せ、組成物、及びキットを非経口投与するのが好ましい。本発明の組合せ及び組成物は、組合せ又は組成物を動物、好ましくはヒトに投与した時に、本発明の組合せ又は組成物が、生体利用可能であるように製剤化することができる。組成物は、1つ又は複数の用量単位の形態をとることができ、例えば、錠剤は単一の用量単位であってよく、エアロゾル形態の本発明の組合せ又は組成物の容器は、複数の用量単位を収容することができる。
【0066】
本発明の組合せをキットの形態において提供するのが好ましい。典型的に、キットは、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び場合によりグルココルチコイドを含む。ある実施形態において、キットは、1つ又は複数の送達系、例えば、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、及び場合によりグルココルチコイド、又はこれらのあらゆる組合せ、並びにキットを使用するための指導(例えば、患者を処置するための指示書)を含むことができる。これらの指導/指示書は、プロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合にはグルココルチコイドの組合せを、処置中の特定の状態、その状態の段階、使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組合せ;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、及び食事;投与時間、投与経路、及び使用する特定の化合物の排泄速度;処置の期間;使用する特定の化合物と組み合わせて、又は同時期に用いる薬物;並びに医学の技術分野ではよく知られている同様の因子等の変数にしたがって、同時に、逐次的に、又は別々に投与することを助言し得る。
【0067】
薬学的に許容される希釈剤又は担体は粒子性であってよく、したがって、組成物は、錠剤又は散剤等の形態である。担体は液体であってよく、組合せ、組成物、又はキットは、例えば、経口用シロップ剤又は注射用液剤である。加えて、吸入投与等において有用なエアロゾル組成物を提供するように、担体は気体であってよい。このような薬学的担体は、石油、動物、植物、又は合成起源のものを含めた、水又は油等の液体、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等であってよい。担体は、食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンのり、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素等であってよい。加えて、佐剤(auxiliary agent)、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤を用いることができる。一実施形態において、動物に投与する場合、本発明の組合せ、組成物、又はキット、及び薬学的に許容される担体は無菌である。本発明の組合せ又は組成物を静脈内投与する場合、好ましい担体は水である。食塩水溶液及びデキストロース水溶液及びグリセリン溶液も、特に注射用溶液剤に、液体の担体として用いることができる。適切な薬学的担体にはまた、賦形剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレングリコール、水、エタノール等も含まれる。本発明の組成物は、所望により、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝化剤も含むことができる。
【0068】
経口投与を意図する場合、組合せ、組成物、又はキットは固体又は液体の形態であってよく、この場合、半固体、半流動体、懸濁剤、及びゲル形態が、固体又は液体いずれかとして本明細書にみなされる形態内に含まれる。
【0069】
経口投与用の固体組成物として、組合せ、組成物、又はキットは、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム剤、ウエハー剤等の形態に製剤化することができる。このような固体組成物は、典型的に、活性薬剤を全て含む単一の錠剤として、又は各々が本発明の組合せの単一の活性薬剤を含む数々の別々の固体組成物として(キットの場合)のいずれかで、1つ又は複数の不活性な希釈剤を含む。加えて、以下の1つ又は複数が存在することができる:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、又はゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトース、又はデキストリン、崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、コーンスターチ等;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、ショ糖又はサッカリン;香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味料;及び着色剤。
【0070】
組合せ又は組成物がカプセル剤の形態(例えば、ゼラチンカプセル)である場合、これは、上記のタイプの材料に加えて、液体の担体、例えば、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、又は脂肪油を含むことができる。
【0071】
組合せ、組成物、又はキットは、液体の形態、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤、又は懸濁剤であってよい。液体は、経口投与に、又は注射による送達に有用であり得る。経口投与を意図する場合、組合せ、組成物、又はキットは、1つ又は複数の甘味剤、保存剤、色素/着色剤、及び香味増強剤を含むことができる。注射による投与のための組合せ又は組成物中に、1つ又は複数の界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、バッファー、安定化剤、及び等張化剤も含まれていてよい。本発明のキットにおいて、組成物の活性薬剤を1つ又は複数含む液体成分を、投与前に組み合わせ、同時に投与してもよく、又は各活性薬剤を逐次的に若しくは別々に投与してもよい。
【0072】
好ましい投与経路は、それだけには限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、鼻腔内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、膣内、又は経皮を含む非経口投与である。好ましい投与様式は開業医の裁量にまかされ、一部には医学的状態の部位(例えば、癌の部位)による。より好ましい一実施形態において、本発明の組合せ、組成物、及びキットを静脈内投与する。
【0073】
本発明の液体の組合せ、組成物、及びキットは、これらが溶液剤であっても、懸濁剤等であっても、又は他の同様の形態であっても、以下の1つ又は複数も含むことができる:無菌の希釈剤、例えば、注射用水、食塩水溶液、好ましくは生理学的食塩水、リンゲル溶液、等張の塩化ナトリウム、合成モノグリセリド又はジグリセリド等の不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、又は他の溶媒;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;並びに塩化ナトリウム又はデキストロース等の稠度を調整するための薬剤。非経口の組合せ又は組成物は、ガラス、プラスチック、又は他の材料で作られている、アンプル、使い捨てシリンジ、又は複数用量バイアル中に封入されていてもよい。好ましい補助剤は生理学的食塩水である。
【0074】
投与(例えば、静脈内)用に、組合せ、組成物、又はキットは、典型的に、患者の体重1kgあたり10から100mgの用量範囲の式Iの化合物又はその塩、患者の体重1kgあたり0.01から0.3mgの用量範囲のプロテアソームインヒビター、及び患者の体重1kgあたり0.03から1mgの用量範囲のグルココルチコイドを含むことができる。より好ましくは、組合せ、組成物、又はキットは、典型的に、患者の体重1kgあたり40から80mgの用量範囲の式Iの化合物又はその塩、患者の体重1kgあたり0.05から0.15mgの用量範囲のプロテアソームインヒビター、及び患者の体重1kgあたり0.3から0.5mgの用量範囲のグルココルチコイドを含むことができる。
【0075】
本発明の組合せは、組合せのプロテアソームインヒビター、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び存在する場合には、場合によるグルココルチコイドが、同時、逐次的、又は別々の投与に適合されるように製剤化することができる。これらを同時に投与するのが好ましい。
【0076】
本発明の組合せ、組成物、又はキットは、あらゆる便利な経路により、例えば、注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜皮膚の内壁を介した吸収により、投与することができる。
【0077】
特定の実施形態において、本発明の1つ又は複数の組合せ、組成物、又はキットを投与し、或いは組合せ、組成物、又はキットを、処置を必要とする領域に局所的に投与するのが望ましいことがある。一実施形態において、投与は、癌、腫瘍、又は新生物の部位(若しくは以前の部位)、或いは新生物発生前の組織に直接注射することによってもよい。
【0078】
例えば、吸入器若しくはネブライザーを用い、エアロゾル化剤と製剤化することにより、又は炭化フッ素若しくは合成肺サーファクタント中の還流により、肺投与も使用することができる。ある実施形態において、本発明の組合せ、組成物、又はキット、又は組成物は、トリグリセリド等の伝統的な結合剤及び担体とともに坐剤として製剤化することができる。
【0079】
本発明の組合せ、組成物、又はキットは、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液剤を含むカプセル剤、散剤、徐放製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル剤、噴霧剤、懸濁剤の形態、又は使用に適するあらゆる他の形態をとることができる。適切な製剤上の担体の他の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0080】
医薬組合せ、組成物、及びキットは、製薬の技術分野ではよく知られている方法を用いて調製することができる。例えば、注射により投与しようとする組成物は、溶液を形成させるように本発明のキットの成分を水と組み合わせることによって調製することができる。界面活性剤を加えて均一な溶液又は懸濁液の形成を促進してもよい。
【0081】
本発明の組合せ、組成物、及びキットは、癌の処置において特に有効である。
【0082】
本発明の組合せは、in vitro及びin vivoの両方で、広範な腫瘍細胞型に対して優れた活性を有することが示されており、そのため、血液癌及び乳癌等の癌の処置において使用するための開発が特に注目を集めている。
【0083】
本研究において、式Iの化合物又はその塩は、神経膠芽腫の処置において、放射線治療と組み合わせて投与することができることも発見された。in vitro及びin vivo両方の試験により、式Iの化合物又はその塩の、放射線治療と一緒の組合せは、放射線治療単独より効果的であることが示された。CNS癌(グリオーマ)細胞系SF-268、SF-295、SF-539、SNB-19、SNB-75、及びU-251で試験した、式Iの化合物に対するデータの事前開示(prior disclosure)がWO2013/113838にある。これらは、式Iの化合物を単独で用いた場合の、神経膠芽腫に対する活性を示唆するものである。
【実施例
【0084】
以下の実施例において、以下の式Iを有する化合物を、EDO-S101(又は図においてEDO)と呼ぶ。
【0085】
【化5】
【0086】
(実施例1)in vitroのEDO-S101組合せ-多発性骨髄腫MM1S細胞系
EDO-S101を、Northwestern University、Chicago、IL、USAのSteven Rosenの好意により提供された多発性骨髄腫MM1S細胞系において、in vitroでボルテゾミブ及びデキサメタゾンと組み合わせた。活性を、ミトコンドリアの酵素であるスクシネートデヒドロゲナーゼによって生成され、ホルマザンと呼ばれる青色化合物に変わる、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾール(MTT)からの臭化物の還元代謝に基づくMTTアッセイにより測定した。次いで、処理した細胞のミトコンドリアの機能を決定する。この方法は、細胞の増殖及び生存の能力を測定するのに広く用いられている。残存する生存細胞は、生成されたホルマザンの量に比例する。
【0087】
簡潔に述べると、方法は以下の通りである:
- ウエル1個あたりMM1S細胞30000個を、96ウエルマイクロタイタープレート中にプレーティングした。
- EDO-S101及びPIの希釈を、エタノール中のDMSO及びデキサメタゾンにおいて調製し、実験で指摘する最終濃度までウエル中に加えた。
- プレートを、5%CO2/95%空気の存在下、湿潤雰囲気中、37℃のインキュベータで24~48~72時間インキュベートした。
- インキュベート後、MTT溶液10μLを各ウエルに加え、2時間インキュベートしてホルマザン結晶を形成させた。
- SDSとの混合溶液プラスHCl(SDS各12mlに対してHCl10μL) 100μlを加えて、ホルマザン結晶を溶解させた。
- 570nmODの吸光度を読み取り、650nmの基準波長を用いる。
- 細胞の生存度(パーセント値)を以下の通り得た:%生存度=処理細胞のOD×100/対照細胞のOD。
- 各用量を4回ずつ試験し、各実験を少なくとも2回ずつ行った。
【0088】
全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であった。EDO-S101 500nM、1μM、2.5μM;デキサメタゾン2.5nM、5nM、10nM;及びボルテゾミブ0.75nM、1.5nM、3nM。
【0089】
結果は以下のTable 1(表1)及び図1に示す通りである。
【0090】
【表1】
【0091】
組合せの効力を、Chou Talay法(Chouら、Adv. Enzyme Regul.、22巻、27~55頁(1984年))に基づくCalcusynソフトウエア(biosoft社、Ferguson、MO、USA)で定量し、このソフトウエアは以下の解釈で組合せ指数(CI)を算出する:
CI 1>1:アンタゴニスト効果、CI=1:相加効果、及びCI<1相乗効果。
【0092】
図1及び上記より、EDO-S101はボルテゾミブとの相乗性を示し、ボルテゾミブ及びデキサメタゾンとの三重組合せにおける相乗性も示すことが見てとれる。
【0093】
更なる一実験において、同じ一定用量のこれら薬物を48時間ではなく72時間インキュベートした。結果は下記のTable 2(表2)及び図2に示す通りである。
【0094】
【表2】
【0095】
繰り返すと、図2及びTable 2(表2)における上記の結果より、EDO-S101はボルテゾミブとの相乗性を示し、ボルテゾミブ及びデキサメタゾンとの三重組合せにおける相乗性も示すことが見てとれる。
【0096】
(実施例2)皮下形質細胞腫の異種移植片に対するin vivoのEDO-S101組合せ
CB17-SCIDマウス(The Jackson Laboratory社、Bar Harbor、MEより入手)の右側腹部中に、RPMI1640培地100μL及びMatrigel (BD Biosciences社) 100μL中、Northwestern University、Chicago、IL、USAのSteven Rosenの好意により提供された多発性骨髄腫MM1S細胞3×106個を皮下接種した。腫瘍が触診可能になったら、マウスを各群5匹の8つの処置群に無作為化した。
【0097】
群は以下であった:
- 対照(ビヒクル単独で処置した群)
- ボルテゾミブ1mg/kg腹腔内を週2回、3週間
- デキサメタゾン0,5mg静脈内を週2回、3週間
- EDO-S101 30mg/kg用量の静脈内を週1回、3用量
- ボルテゾミブ プラス デキサメタゾン
- ボルテゾミブ プラスEDO-S101
- EDO-S101 プラス デキサメタゾン
- EDO-S101プラス ボルテゾミブ、及びデキサメタゾンの三重組合せ。
【0098】
ノギスにより腫瘍の直径を毎日測定し、腫瘍の体積を楕円の体積として、以下の式を用いて推定し: V=4/3π×(a/2)×(b/2)2、式中、「a」及び「b」はそれぞれ最長及び最短の直径に相当する。
【0099】
腫瘍の成長の結果は、図3における試験日数に対する腫瘍成長(mm3)のプロットに示す通りである。EDO-S101及びボルテゾミブの組合せは、いずれかの薬剤単独で見られた結果より低い腫瘍体積をもたらし、一方、EDO-S101、ボルテゾミブ、及びデキサメタゾンの三重組合せは、試験の終わりまでに、個々の活性薬剤のいずれかよりも、非常に有意に低い腫瘍体積を示すことが見てとれる。
【0100】
(実施例3)in vitroのEDO-S101組合せ-多発性骨髄腫RPMI8226細胞系
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりに多発性骨髄腫RPMI8226細胞系(DMSZより入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であった。EDO-S101濃度0、2、4、8μM;ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ各々濃度0、5、10、20nm;並びにLU-102濃度0、1、3.3、10μM。ベンダムスチンでの対照も行った。
【0101】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図4に示す通りである。図は、多発性骨髄腫RPMI8226に対して、in vitroでEDO-S101との3つの組合せ各々に対し、明らかな相乗性を示す。EDO-S101 4μM及びカルフィルゾミブ20nMのCIは0.019であり、EDO-S101 4μM及びLU-102 3μMのCIは0.109であった。
【0102】
(実施例4)in vitroのEDO-S101組合せ-多発性骨髄腫2013-10-16MTS AMO abzb細胞系
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりに、ボルテゾミブ抵抗性多発性骨髄腫2013-10-16MTS AMO abzb細胞系(Department of Oncology and Hematology of the Kantonsspital St. GallenでProf. Dr. med. C. Driessenにより産生された)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、EDO-S101は0、2、4、8μM、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブは各々0、1.25、2.5、5、10、20nM、並びにLU-102は0、1、3.3、10μMであった。
【0103】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図5に示す通りである。図は、カルフィルゾミブ及びLU-102のEDO-S101との組合せは、in vitroで、ボルテゾミブ抵抗性多発性骨髄腫2013-10-16MTS AMO abzbに対して明らかな相乗性を示す。この細胞系に対するEDO-S101及びカルフィルゾミブの組合せに対するCIは0.11であり、EDO-S101及びLU-102に対するCIは0.25であった。
【0104】
(実施例5)in vitroのEDO-S101組合せ-マントル細胞リンパ腫細胞系2014-01-15MTS Jeko
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりにマントル細胞リンパ腫細胞系2014-01-15MTS Jeko (LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、実施例3と同じであった。
【0105】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図6に示す通りである。図は、EDO-S101との3つの組合せは各々、in vitroで、マントル細胞リンパ腫細胞系2014-01-15MTS Jekoに対して、明らかな相乗性を示す。EDO-S101 2μM及びボルテゾミブ20nMのCIは0.292であり;EDO-S101 2μM及びカルフィルゾミブ20nMのCIは0.206であり;EDO-S101 2μM及びLU-102 10μMのCIは0.204であった。
【0106】
(実施例6)in vitroのEDO-S101組合せ-マントル細胞リンパ腫細胞系2014-01-15MTS Granta
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりにマントル細胞リンパ腫細胞系2014-01-15MTS Granta (LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、実施例3と同じであった。
【0107】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図7に示す通りである。図は、EDO-S101との3つの組合せは各々、in vitroで、マントル細胞リンパ腫細胞系2014-01-15MTS Grantaに対して、明らかな相乗性を示す。EDO-S101 0.5μM及びボルテゾミブ8nMのCIは0.025であり;EDO-S101 0.5μM及びカルフィルゾミブ8nMのCIは0.089であり;EDO-S101 1μM及びLU-102 3μMのCIは0.078であった。
【0108】
(実施例7)in vitroのEDO-S101組合せ-基底細胞様乳癌細胞系MTS MDA-MB468
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりに基底細胞様乳癌細胞系MTS MDA-MB468(LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、EDO-S101は0、2、4、8、及び16μM;ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ各々では0、8、16、及び32 nM;並びにLU-102では0、1、3.3、及び10μMであった。
【0109】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図8に示す通りである。図は、EDO-S101との3つの組合せは各々、in vitroで、トリプルネガティブ乳癌細胞系MTS MDA-MB468に対する明らかな相乗性を示す。
【0110】
(実施例8)in vitroのEDO-S101組合せ-前骨髄球性白血病細胞系HL-60
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりに前骨髄球性白血病細胞系HL-60 (LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、EDO-S101は0、1、2、及び4μM;ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブは0、5、10、20nM;並びにLU-102は0、1、3.3、及び10μMであった。
【0111】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図9に示す通りである。図は、EDO-S101との3つの組合せは各々、in vitroで、前骨髄球性白血病細胞系HL-60に対する明らかな相乗性を示す。EDO-S101 1μM及びボルテゾミブ20nMのCIは0.051であり;EDO-S101 1μM及びカルフィルゾミブ20nMのCIは0.073であり;EDO-S101 1μM及びLU-102 3μMのCIは0.387であった。
【0112】
(実施例9)in vitroのEDO-S101組合せ-急性骨髄性白血病細胞系U937
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりに急性骨髄性白血病細胞系U937(LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、実施例8と同じであった。
【0113】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図10に示す通りである。図は、EDO-S101との3つの組合せは各々、in vitroで、急性骨髄性白血病細胞系U937に対して、明らかな相乗性を示す。EDO-S101 2μM及びボルテゾミブ10nMのCIは0.285であり;EDO-S101 2μM及びカルフィルゾミブ10nMのCIは0.285であり;EDO-S101 2μM及びLU-102 3μMのCIは0.095であった。
【0114】
(実施例10)in vitroのEDO-S101組合せ-B細胞リンパ腫細胞系BJAB
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりにB細胞リンパ腫細胞系BJAB(胚中心線)(LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、実施例8と同じであった。
【0115】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図11に示す通りである。図は、EDO-S101及びカルフィルゾミブの組合せは、特にin vitroでB細胞リンパ腫細胞系BJAB(胚中心線)に対して強力な相乗性を示す一方、EDO-S101及びボルテゾミブの組合せも相乗性を示した。EDO-S101及びカルフィルゾミブの組合せに対するCIは0.09であり、EDO-S101及びボルテゾミブの組合せに対するCIは0.62であった。
【0116】
(実施例11)in vitroのEDO-S101組合せ-B細胞リンパ腫細胞系OciLy3
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりにB細胞リンパ腫細胞系OciLy3(ABC型)(LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、EDO-S101は0、0.5、1、及び2μM、ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブは0、5、10、及び20nM、並びにLU-102は0、1、3.3、及び10μMであった。
【0117】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図12に示す通りである。図は、EDO-S101及びボルテゾミブの組合せは、特にin vitroでB細胞リンパ腫細胞系OciLy3(ABC型)に対して強力な相乗性を示す一方、EDO-S101及びカルフィルゾミブの組合せも相乗性を示した。EDO-S101及びカルフィルゾミブの組合せに対するCIは0.59であり、EDO-S101及びボルテゾミブの組合せに対するCIは0.21であった。
【0118】
(実施例12)in vitroのEDO-S101組合せ- B細胞リンパ腫細胞系TMD8
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりにB細胞リンパ腫細胞系TMD8(ABC型)(LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、実施例11と同じであった。
【0119】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図13に示す通りである。図は、EDO-S101及び試験したプロテアソームインヒビターの全ての組合せに対する強力な相乗性を示す。EDO-S101及びカルフィルゾミブの組合せに対するCIは0.17であり、EDO-S101及びボルテゾミブの組合せに対するCIは0.14であり、EDO-S101及びLU-102の組合せに対するCIは0.63であった。
【0120】
(実施例13)in vitroのEDO-S101組合せ-トリプルネガティブ乳癌細胞系BT-549
実施例1に記載したのと同じ試験手順を用い、しかしMM1S細胞系の代わりにトリプルネガティブ乳癌細胞系BT-549(LGC Standards S.a.r.l.社、6、rue Alfred Kastler、BP 83076、F-67123 Molsheim Cedex、Franceから入手)を用いて、EDO-S101の、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びLU-102との組合せを順番に、活性に対して試験した。全実験に対して、速度定数は様々な薬物に対する濃度であり、EDO-S101は0、1、2、及び4μMであり;ボルテゾミブ及びカルフィルゾミブ各々は0、5、10、及び20nMであり; LU-102は0、1、3.3、及び10μMであった。
【0121】
細胞生存度を、非処置対照のパーセント値として測定し、結果は図14に示す通りである。図は、トリプルネガティブ乳癌細胞系BT-549に対する、in vitroでの、EDO-S101との3つの組合せ各々に対する明らかな相乗性を示す。EDO-S101及びボルテゾミブの組合せに対するCIは0.14であり、EDO-S101及びカルフィルゾミブの組合せに対するCIは0.05であり、EDO-S101及びLU-102の組合せに対するCIは0.38であった。
【0122】
(実施例14)in vitroの神経膠芽腫細胞系に対する放射線治療及びEDO-S101の組合せ
U251MG神経膠芽腫細胞系では、IC50は、EDO-S101に対して6.60μMであると測定された(それに対して、ベンダムスチンでは30μM及びテモゾロミド(temozolamide)では20μMであった)。
【0123】
U87G神経膠芽腫細胞系では、IC50は、EDO-S101に対して1.36μMであると測定された(それに対して、ベンダムスチンでは30μM及びテモゾロミドでは20μMであった)。
【0124】
T98G神経膠芽腫細胞系では、IC50は、EDO-S101に対して7.70μMであると測定された(それに対して、ベンダムスチンでは52μM及びテモゾロミドでは>100μMであった)。
【0125】
図15から見てとれる通り、神経膠芽腫細胞に対する%生存率は、放射線治療をEDO-S101の用量(5μM又は10μM)と組み合わせて用いた場合、放射線治療単独と比べて、大幅に低減した。
【0126】
(実施例15)in vivoの神経膠芽腫細胞系に対する放射線治療及びEDO-S101の組合せ
U87MG、U251MG、及びT98G
皮下接種した異種移植片
処置及び量
- ビヒクル(対照)
- 放射線治療(2Gy/連続5日間)
- テモゾロミド(連続5日間16mg/Kg、po)
- テモゾロミド+放射線治療
- EDO-S101(60mg/Kg、1、8、及び15日、28日毎60mg/Kg、iv)
- EDO-S101+放射線治療
【0127】
腫瘍が進行するまでの時間は、U251MGマウス異種移植片モデルでは対照に対しておよそ17~18日から、放射線治療及びテモゾロミドの組合せで42日まで、EDO-S101単独に対して50日を超えるまで(有意性P=0.924)、EDO-S101及び放射線治療の組合せに対して大幅に50日を超えるまで(有意性P=0.0359)増大したことが見出された。
【0128】
腫瘍が進行するまでの時間は、U87MGマウス異種移植片モデルでは対照に対しておよそ15日から、放射線治療及びテモゾロミドの組合せで35日まで、EDO-S101単独に対して40日まで(有意性P=2372)、EDO-S101及び放射線治療の組合せに対して大幅に50日を超えるまで(有意性P=0.0001)増大したことが見出された。
【0129】
(実施例16)再発性/抵抗性の多発性骨髄腫モデルに対するEDO-S101の活性
MYC遺伝子座の遺伝子の再編成は、MYCの発現の調節不全をもたらし、ヒト多発性骨髄腫において最もよくある変異である。遺伝子操作したVk*MYCマウスモデルはMYCの調節不全に基づいており、非処置の多発性骨髄腫の臨床上及び生物学上忠実なモデルとして広く確証されている。9つの薬物又は薬物のクラス(DNAアルキル化剤、グルココルチコイド、プロテアソームインヒビター、IMiD、nab-パクリタキセル、ヒストン脱アセチル化酵素インヒビター、TACI-Ig、ペリフォシン及びSNS-032、CDK2,7,9インヒビター)が、Vk*MYC MMにおいて20%を超える部分的応答率を有すると以前に報告されている。これらの中で、最初の5つが多発性骨髄腫患者でも20%を超えるPRを有し、陽性適中度56%である。
【0130】
EDO-S101は、Vk*MYC多発性骨髄腫で高率の応答を誘発し、これは、1週間離して2用量だけを投与したマウスでは3か月を超えて持続した。EDO-S101は、非常に高悪性度の、再発性/抵抗性多発性骨髄腫の多剤耐性Vk12653移植モデルにおいて単一薬剤活性が確認された唯一の薬剤であるのに注目すべきである。
【0131】
結論として、式Iの化合物(EDO-S101)は、広範囲の骨髄腫、リンパ腫、白血病、及び乳癌細胞系に対して、in vitro及びin vivoの作用の両方で、プロテアソームインヒビターと組み合わせて優れた活性を示すことが見てとれる。更に、これらの組合せの多くの活性は驚くべきことに相乗的であり、多くの場合、非常に著しい度合いで相乗的であることが見てとれる。しかし更に、実施例1及び2において、式Iの化合物、プロテアソームインヒビター、及びデキサメタゾン等のグルココルチコイドを含む三重組合せが特に強力な相乗性を示したことが分かる。
【0132】
結果として、場合によりグルココルチコイドを含む、本発明の式Iの化合物のプロテアソームインヒビターとの組合せは、癌、特に血液癌及び乳癌の処置において有用であると期待される。
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