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特許7274453ポリウレタンフォームおよびそのフォームを作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームおよびそのフォームを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20230509BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230509BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20230509BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230509BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
C08L71/02
C08G18/48 004
C08G18/48 041
C08G18/48 037
C08G18/76
C08G18/00 G
C08G18/00 H
C08G101:00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020502123
(86)(22)【出願日】2018-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2018041171
(87)【国際公開番号】W WO2019018142
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】62/533,250
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ポルセリ、ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】クックソン、ポール エー.
(72)【発明者】
【氏名】カザーティ、フランソワ エム.
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538270(JP,A)
【文献】特開2006-291222(JP,A)
【文献】特表2017-516897(JP,A)
【文献】国際公開第2006/115169(WO,A1)
【文献】特開平02-163112(JP,A)
【文献】特開平11-140153(JP,A)
【文献】国際公開第95/023819(WO,A1)
【文献】特表2016-530390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G65/00- 67/04
C08G18/00- 18/87
C08G71/00- 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルの混合物であって、
a)前記ポリエーテルの混合物の重量に基づいて60~80重量%の、10~25重量%のオキシエチレン含量、および1500~2500のヒドロキシル当量を有する1つ以上の公称性三官能エチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールであって、前記ヒドロキシル基の少なくとも70%が第一級である、1つ以上の公称三官能エチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールと、
b)前記ポリエーテルの混合物の重量に基づいて10~30重量%の、4~8の公称官能性、10~25重量%のオキシエチレン含有量、および1500~2500のヒドロキシル当量を有する1つ以上のエチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールであって、前記ヒドロキシル基の少なくとも70%が第一級である、1つ以上のエチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールと、
c)前記ポリエーテル混合物の重量に基づいて5~12重量%の、少なくとも3の公称官能性、少なくとも4000の分子量、および少なくとも70重量%のオキシエチレン含量を有する1つ以上のポリエーテルポリオールと、
d)前記ポリエーテルの混合物の重量に基づいて2~10重量%の、20~65重量%のオキシエチレン含量、および400~2000の分子量を有するプロピレンオキシドならびにエチレンオキシドの1つ以上の単官能コポリマーと、を含む、ポリエーテルの混合物。
【請求項2】
65~75重量%のa)と、10~20%のb)と、5~10%のc)と、3~6%のd)と、を含む、請求項1に記載のポリエーテルの混合物。
【請求項3】
d)が、40~63重量%のオキシエチレン含量を有する、請求項1または2に記載のポリエーテルの混合物。
【請求項4】
ポリウレタンフォームを作製する方法であって、少なくとも1つの触媒および少なくとも1つの界面活性剤の存在下で、芳香族ポリイソシアネートを少なくとも1つの架橋剤、水、および請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエーテルの混合物と反応させることを含み、イソシアネート指数が、85~125であり、前記水の量が、前記ポリエーテルの混合物の100重量部あたり1.0~3.0重量部である、方法。
【請求項5】
前記水の量が、前記ポリエーテルの混合物の100重量部あたり1.5~2.25重量部である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
イソシアネート指数が、少なくとも90である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
イソシアネート指数が、少なくとも100である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載の方法によって作製される軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
ASTM D-3574-11反発弾性試験での少なくとも50%の弾力性と、ISO3386-1に従って測定された場合に、40%圧縮で少なくとも1.0kPaの圧縮力ひずみ(CFD)と、3.5以上のたわみ係数と、を有する、請求項8に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
ASTM D-3574-11反発弾性試験での少なくとも52%の弾力性と、ISO3386-1に従って測定された場合に、40%圧縮で少なくとも1.8kPaの圧縮力ひずみ(CFD)と、3.6以上のたわみ係数と、毎秒少なくとも1.25リットルの機械破砕後の気流と、を有する、請求項8に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
3.8以上のたわみ係数を有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォームを作製するのに有用なポリオール組成物、およびポリオール組成物を使用した軟質ポリウレタンフォームを作製する方法に関する。
【0002】
いくつかの寝具類および家具の用途において、弾力性、支持性、快適性が高いフォームクッション化が必要とされる。
【0003】
弾力性は通常、ASDM D-3574-11などの反発弾性試験を使用して評価される。これらの用途においては、一般に50%を超える値、特に52%を超える値が必要とされる。
【0004】
支持は、圧縮力ひずみ(CFD)によって示され、所定の量でフォームを圧縮するためにどれだけの力を適用する必要があるかを測定したものである。これらの用途において、ISO3386-1の試験に従って、40%圧縮で1.0kPa以上、特に1.8以上のCFD値が、通常必要とされる。
【0005】
快適さは、「たわみ係数」の用語で表すことができ、たわみ係数は、65%圧縮時、25%圧縮時でのCFD値の比率である。求められているのは、柔らかく感じられ、加えられた重量の下で屈曲するが、それでも使用者の重量を支持することが可能なフォームであるため、より大きな値が所望される。3.5以上のたわみ係数が、これらの用途において非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの要件を全て満たす、特定のポリウレタンフォームが利用可能である。この特性の組み合わせを実現するために、フォームは一般に、70~80の指数のような低イソシアネート指数で作製される。これらの配合物においてイソシアネート指数が高いと、それが上昇して硬化するにつれてフォーム配合物が不安定になる傾向がある。これは、フォームの崩壊、フォームの密度および質のばらつき、およびその他の加工上の問題につながる。
【0007】
それにもかかわらず、より高いイソシアネート指数で作動することが所望されている。低イソシアナート指数のフォーム配合物は、かなりの量の芳香族アミン反応副産物を形成する傾向がある。これらは、製品において臭気および揮発性有機化合物(VOC)の一因となる。
【0008】
支持性、快適性、弾力性のあるフォームが、85以上のイソシアネート指数で生産されるプロセスを提供することが望ましいであろう。
【0009】
一態様における本発明は、
a)ポリエーテルの混合物の重量に基づいて60~80重量%の、10~25重量%のオキシエチレン含量、および1500~2500のヒドロキシル当量を有する1つ以上の公称性三官能エチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールであって、ヒドロキシル基の少なくとも70%が第一級である、1つ以上の公称三官能エチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールと、
b)ポリエーテルの混合物の重量に基づいて10~30重量%の、4~8の公称官能性、10~25重量%のオキシエチレン含有量、および1500~2500のヒドロキシル当量を有する1つ以上のエチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールであって、ヒドロキシル基の少なくとも70%が第一級である、1つ以上のエチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ポリオールと、
c)ポリエーテル混合物の重量に基づいて5~12重量%の、少なくとも3の公称官能性、少なくとも4000の分子量、および少なくとも70重量%のオキシエチレン含量を有する1つ以上のポリエーテルポリオールと、
d)ポリエーテルの混合物の重量に基づいて2~10重量%の、20~65重量%のオキシエチレン含量、および400~2000の分子量を有するプロピレンオキシドならびにエチレンオキシドの1つ以上の単官能コポリマーと、を含む、ポリエーテルの混合物である。
【0010】
前述のポリオール混合物は、高官能性ポリエーテルポリオール(b)、およびポリエーテルモノオール(d)を高い割合のポリオールc)と一緒にする、まれな組み合わせであり、混合物を使用して軟質ポリウレタンフォームを作製すると、セルオープナーとして機能すると考えられる。
【0011】
本発明は、ポリウレタンフォームを作製するための方法でもある。この方法において、芳香族ポリイソシアネートは、少なくとも1つの触媒および少なくとも1つの界面活性剤の存在下で、少なくとも1つの架橋剤、水、および前述のポリエーテルの混合物と反応し、イソシアネート指数は、85~125であり、水の量は、ポリエーテルの混合物の100重量部あたり1.0~3.0重量部である。
【0012】
本発明はまた、前述の方法により作製された軟質ポリウレタンフォームである。フォームは、ASTM D-3574-11反発弾性試験で少なくとも50%、好ましくは少なくとも52%の弾力性によって示されるように、弾力性があるという特徴があり、ISO3386-1に従って測定された場合に、40%圧縮で少なくとも1.0kPaの圧縮力ひずみ(CFD)を有し、3.5以上の「たわみ係数」を有し、55~120kg/mの密度を有する。これらの結果は、100近くから100以上のイソシアネート指数で取得され、フォーム製品中の芳香族アミン副産物の量を低減するという追加の利点を提供する。
【0013】
ポリオールa)は、単一のポリオールまたはポリオールの混合物であり得る。ポリオールa)内の各ポリオールは、好ましくは、プロピレンオキシドまたはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物をトリオール開始剤で重合し、続いてポリエーテル鎖の末端でエチレンオキシドを単独で重合することにより形成された、オキシエチレンキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)である。開始剤は、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、またはトリエチロールプロパンであり得る。プロピレンオキシドまたはプロピレンオキシド/エチレンオキシド混合物の重合は、単一ステップか、または2回以上のステップで実行され得る。各ポリオールa)ポリオールは、かかるポリオールの全重量に基づいて、10~20重量%、または12~17重量%のオキシエチレン含量を有し得る。
【0014】
ポリオールa)内に含まれる各ポリオールは、1750~2200のヒドロキシル当量を有し得る。ヒドロキシル当量は、ASTM D4274で定められているような滴定方法を使用してヒドロキシル価(mg KOH/gポリオール)を取得し、次の関係を使用してヒドロキシル価を当量に変換することによって決定される:
当量=56,100÷OH数。
【0015】
ポリオールa)内の各ポリオールのヒドロキシル基の少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%は、第一級であり得る。
【0016】
ポリオールb)は、単一のポリオールまたはポリオールの混合物であり得る。ポリオールb)内の各ポリオールは、好ましくは、プロピレンオキシドまたはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物を4~8個のアルコキシル化可能な部位を有する開始剤で重合し、続いてポリエーテル鎖の末端でエチレンオキシドを単独で重合することにより形成された、オキシエチレンキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)である。かかる開始剤の例は、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スクロース、ソルビトールなどの4~8個のヒドロキシル基を有するポリオール、ならびにエチレンジアミンなどのポリアミンである。プロピレンオキシドまたはプロピレンオキシド/エチレンオキシド混合物の重合は、単一ステップか、または2回以上のステップで実行され得る。各ポリオールb)ポリオールは、かかるポリオールの全重量に基づいて、10~20重量%、または12~17重量%のオキシエチレン含量を有し得る。ポリオールb)に含まれる各ポリオールは、1500~2200、または1650~2200のヒドロキシル当量を有し得る。かかるポリオール(複数可)のヒドロキシル基の少なくとも80%、または少なくとも85%が、第一級であり得る。
【0017】
製造の観点から、三官能開始剤と、4~8個のアルコキシル化可能な基を有する開始剤との混合物をアルコキシル化することにより、ポリオールb)およびポリオールa)の少なくとも一部を混合物として生産することが便利である。かかる共開始ポリオールは、三官能ポリエーテル分子(ポリオールa)の全部または一部を形成する)および4~8の公称官能性を有する他の分子(ポリオールb)の全部または一部を形成する)のある割合を含む。かかる産物の例は、ソルビトール/グリセリン混合物またはスクロース/グリセリン混合物で開始されるポリエーテルポリオールである。かかる混合物は、1分子当たり4~5、特に4.2~4.8のヒドロキシル基の平均的官能性を有し得る。
【0018】
ポリオールc)はさらに、単一のポリオールまたはポリオールの混合物であり得る。ポリオールc)内の各ポリオールは、i)エチレンオキシドホモポリマー、ii)少なくとも70重量%のエチレンオキシドおよび最大30重量%のプロピレンオキシドのランダムコポリマー、またはiii)少なくとも70重量%のエチレンオキシドおよび最大30重量%のプロピレンオキシドのブロックコポリマーであることが好ましい。ポリオールc)内の各ポリオールは、少なくとも3の公称機能性を有する。機能性は、例えば、最大8、最大6、または最大4であり得る。ポリオールc)内の各ポリオールの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した場合に、少なくとも4800g/molであり得、例えば、最大12,000、最大10,000、または最大8000g/molであり得る。
【0019】
ポリオールd)は、単一のポリオールまたはポリオールの混合物であり得る。ポリオールd)内の各ポリオールは、i)80~35重量%のプロピレンオキシド、およびそれに対応する20~65重量%のエチレンオキシドの混合物を単官能開始剤で共重合することによって作製されるランダムコポリマー、またはii)プロピレンオキシドおよびエチレンオキシド(いずれかの順序で)をかかる開始剤に連続的に追加することによって作製されるブロックコポリマーであることが好ましい。かかる開始剤の例は、C1-C16アルカノールなどのモノオール(monol)である。重合は、単一ステップ、または2回以上のステップで実行され得る。各ポリオールd)ポリオールは、かかるポリオールの全重量に基づいて、20~65重量%、45~63重量%、または50~60重量%のオキシエチレン含量を有し得る。ポリオールd)に含まれる各ポリオールは、400~1500、450~1000、または450~850の数平均分子量を有し得る。かかるポリオール(複数可)のヒドロキシル基の少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%が、第一級であり得る。
【0020】
本発明のポリオール混合物は、ポリオールa)~d)の組み合わされた重量の全てに基づいて、60~80重量%、65~80重量%、または65~75重量%のポリオールa)、10~30重量%、または10~20重量%のポリオールb)、5~12%、または5~10%のポリオールc)、および2~10%、2~8%、または3~6%のポリオールd)を含み得る。
【0021】
本発明のポリオール混合物は、弾力性のある軟質ポリウレタンフォームを作製するのに有用である。
【0022】
ポリウレタンフォームは、少なくとも1つの触媒および少なくとも1つの界面活性剤の存在下で、ポリオール混合物、水、および架橋剤を芳香族ポリイソシアネートと反応させることにより、本発明に従って作製される。
【0023】
架橋剤は、本発明の目的のために、少なくとも3つのヒドロキシル基、または少なくとも2つのヒドロキシル基に加えて少なくとも1つの第一級または第二級アミノ基を有する化合物であり、分子量は最大300、好ましくは最大200である。架橋剤の例には、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、および最大300の分子量を有する前述のうちのいずれかのアルコキシレートが含まれる。
【0024】
架橋剤の有用な量は、ポリオール混合物の100重量部あたり、0.5~5重量部、1~4重量部、または1.5~3.5重量部である。
【0025】
水の量は、ポリオール混合物の100重量部あたり、1.0~3.0部、1.0~2.8部、1.25~2.5部、1.5~2.25部、または1.5~2.0部であり得る。これらの量の水には、ポリオール混合物および/または架橋剤に存在し得る水、別個に追加された水、および他の源からの水を含む、反応に提供される全ての水が含まれる。
【0026】
ポリオール混合物、水、および架橋剤は、芳香族ポリイソシアネートとの反応混合物内に形成される。ポリオール混合物、架橋剤、および水に追加してイソシアネート反応性化合物が存在してもよいが、それらが全て存在する場合、それらは好ましくは、ポリオール混合物の100重量部あたり、10重量部以下、5重量部以下、好ましくは2重量部以下の量で存在する。
【0027】
ポリオール混合物を構成するポリオールは、反応混合物を形成する前に一緒にブレンドされてもよい。代替的には、ポリオールは、個々に、または様々な副次的組み合わせで一緒にして、反応混合物を形成してもよい。架橋剤および水は、ポリイソシアネートとの反応混合物を形成する前に、ポリオール混合物の成分(またはポリオール混合物自体)の1つ以上と別個の流れとして予混合、および/または組み合わせることができる。
【0028】
芳香族ポリイソシアネートは、75~300、好ましくは85~175のイソシアネート当量を有する。有用な芳香族ポリイソシアネートの例には、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4-4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMDI)、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、および4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートが含まれる。好ましくは、ポリイソシアネートは、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、PMDI、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、またはそれらの任意の2つ以上の混合物である。ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、およびこれらの混合物は、総称的にMDIと呼ばれ、全て使用することができる。PMDIおよびMDIの混合物である「ポリマーMDI」を使用することができる。トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、およびそれらの混合物は、総称してTDIと呼ばれ、全て使用することができる。前述のうちのいずれもが、例えば、1つ以上の尿素、ウレタン、カルボジイミド、アロフォネート、イソシアヌレート、またはビウレット連結で修飾され得る。
【0029】
好ましい芳香族ポリイソシアネートは、MDI(2,4’-または4,4’-異性体またはそれらの異性体の混合物)、または1つ以上の尿素、ウレタン、カルボジイミド、アロフォネート、イソシアヌレート、またはビウレット連結で修飾されたMDIであり、室温の液体であり、かつ135~200のイソシアネート当量を有するイソシアネート混合物を生成する。
【0030】
イソシアネート指数は、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、または少なくとも100であり、125と同等に高く、115と同等に高く、または110と同等に高くてもよい。イソシアネート指数は、反応混合物に提供されるイソシアネート基の、反応混合物に提供されるイソシアネート反応性基の総数に対する比率の100倍である。イソシアネート指数を計算する目的のために、水は分子ごとに2つのイソシアネート反応性基を有するとされ、第一級アミノ基は単一のイソシアネート反応性基とされる。
【0031】
反応は、1つ以上の触媒の存在下で実行される。触媒(複数可)は、水-イソシアネート反応およびアルコール-イソシアネート反応のいずれかまたは両方を触媒する。適切な触媒としては、例えば、第三級アミン、環状アミジン、第三級ホスフィン、種々の金属キレート、酸性金属塩、強塩基、種々の金属アルコレートおよびフェノレート、ならびに有機酸の金属塩が含まれる。金属含有触媒の例は、スズ、ビスマス、コバルトおよび亜鉛の塩である。最も重要な触媒は、第三級アミン触媒、環状アミジン、亜鉛触媒およびスズ触媒である。第三級アミン触媒の例には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、1,4-ジアゾビシクロ-2,2,2-オクタン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、およびアルキル基が4~18個の炭素原子を含有するジメチルアルキルアミンが含まれる。これらの第三級アミン触媒の混合物がしばしば使用される。
【0032】
DMEA(ジメチルエタノールアミン)もしくはDMAPA(ジメチルアミノプロピルアミン)のような反応性アミン触媒、または自己触媒ポリオールとして作用するアミン開始ポリオールもまた、VOC(揮発性有機化合物)を減少させるために使用され得る。
【0033】
スズ触媒には、塩化第二スズ、塩化第一スズ、オクタン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、スズリシノレート、およびRがアルキルまたはアリールであり、nが0~18であるなどの、式SnR(OR)4-nの他のスズ化合物などが含まれる。亜鉛触媒およびスズ触媒は、少しでも使用される場合、一般に1種以上の第三級アミン触媒と共に使用される。
【0034】
触媒は、典型的には少量で使用され、例えば、各触媒は、ポリオール混合物100重量部あたり、約0.0015~約5、または0.1~0.5重量部で利用される。
【0035】
この反応は、フォーム安定化界面活性剤の存在下でさらに実行される。フォーム安定化界面活性剤は、ポリマーが硬化するまで、発泡プロセス中に発泡剤によって形成された気泡を安定化させることを補助する。ポリウレタンフォームを作製するために通常使用されるような多種多様なシリコーン界面活性剤は、フォームを作製する際に使用することができる。かかるシリコーン界面活性剤の例は、商品名Tegostab(商標)(Th.Goldschmidt and Co.)、Niax(商標)(GE OSi Silicones)およびDabco(商標)(Air Products and Chemicals)で市販されている。界面活性剤は、ポリオール混合物の100重量部あたり、0.25~5、または0.5~2.5重量部の量で存在してもよい。
【0036】
フォーム配合物は、上述されるものに追加して1つ以上の成分を含んでもよい。これらには、例えば、メラミン、および炭酸カルシウムなどの充填剤;ポリオレフィン分散液などのポリマー分散液;二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、アゾ/ジアゾ染料、フタロシアニン、ジオキサジン、およびカーボンブラックなどの顔料ならびに/または着色剤;ガラス繊維、炭素繊維、フレーク状ガラス、マイカ、タルクなどの強化剤;殺生物剤;防腐剤;抗酸化剤;難燃剤;可塑剤;パラフィン油;植物または動物の脂肪;エポキシ化植物油および/または動物性脂肪;ワックス粒子;ゲル粒子などが含まれる。
【0037】
フォーム配合物中に補助発泡剤を含めることが望ましい可能性がある。そのような補助発泡剤としては、様々な低沸点クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン、炭化水素などのような物理的(吸熱性)発泡剤、ならびに、ポリウレタン形成反応の条件下で分解または反応する化学的(発熱性)発泡剤(水以外)が含まれる。さらに、二酸化炭素、空気、窒素、またはアルゴンなどのガスを泡立てプロセスにおける補助発泡剤として使用してもよい。二酸化炭素もまた、液体としてまたは超臨界流体として使用することができる。
【0038】
フォームは、前述の成分を組み合わせ、得られた反応混合物を硬化させてフォームを生成する条件にさらすことにより作製される。ポリイソシアネートは、好ましくは、反応混合物の様々な成分の均質混合物を創出するミックスヘッドまたは他の装置を使用して他の成分と混合される。
【0039】
硬化ステップは、特別な処理条件を必要とせず、それゆえに、軟質ポリウレタンフォームを作製するための当該技術分野において記載された加工条件および装置は完全に適合している。ほとんどの場合、触媒が存在する場合、イソシアネート化合物は、室温(22℃)であっても水およびポリオールと自発的に反応する。必要な場合、熱を反応混合物に適用して、硬化反応を加速させることができる。これは、成分を合わせる前に成分の一部または全部を加熱することによって、反応混合物に熱を適用することによって、またはそれぞれの一部の組み合わせによって行うことができる。反応混合物が、安定なフォームを形成するために十分に膨張および硬化するまで、硬化を続ける。
【0040】
一部の実施形態において、硬化ステップは密閉型内で実施される。そのようなプロセスにおいて、反応混合物は、型それ自体の中で形成されるか、または型の外側で形成され、次に型の中へ射出されてそこで硬化するかのいずれかである。したがって、反応混合物が硬化するときのその膨張は、成形部品の寸法および形状と同様に、型の内面によって制限される。
【0041】
他の実施形態において、硬化ステップは、フリーライズ(またはスラブストック)プロセスの中で行われる。フリーライズプロセスにおいては、反応混合物は、フォームの膨張にわずかな抵抗しか与えない大気または軽量表面(フィルムなど)に対して少なくとも一方向(通常は垂直方向)での膨張が生じるように、開放容器に注ぎ込まれる。フリーライズプロセスにおいて、反応混合物は、その自重による場合を除いて、本質的に拘束されずに少なくとも一方向に膨張する。フリーライズプロセスは、反応混合物を形成し、それをトラフ内またはコンベア上に分配することによって実施してもよく、そこで反応混合物は膨張および硬化する。
【0042】
本発明に従って製造されたポリウレタンフォームは、少なくとも55kg/mのフォーム密度を有する。フォーム密度は、ISO845-88によって測定した場合に、少なくとも58kg/mであり得、かつ最大120kg/m、最大100kg/m、最大80kg/m、または最大75kg/mであり得る。フォームは、ASTM D-3574-11反発弾性試験により測定した場合に、少なくとも50%、好ましくは少なくとも52%、または少なくとも54%の弾力性を有する。弾力性は、最大75%、または最大65%であり得る。
【0043】
ポリウレタンフォームは、ISO3386-1に従って測定した場合に、40%の圧縮で少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.2、より好ましくは少なくとも1.8kPaの圧縮力ひずみ(CFD)を有する。40%CFDは、少なくとも2.2kPa、または少なくとも2.5kPaであり得、例えば最大4kPa、または3.6kPaであり得る。「たわみ係数」は、少なくとも3.5であり、少なくとも3.6、少なくとも3.7、または少なくとも3.8であり得る。たわみ係数は、6と同等に高く、または5.6と同等に高くてもよい。
【0044】
本発明のフォームは、ISO7231に従って測定した場合に、機械的に開いた気泡を粉砕した後、少なくとも1.25リットル/秒、好ましくは1.25~5リットル/秒、または1.25~2リットル/秒の空気流を有することが好ましい。
【0045】
密度、弾力性、硬度(40%CFD値によって示される)、およびたわみ係数の前述の組み合わせにより、本発明に従って作製されたフォームは、家具および寝具類の用途に非常に適している。
【0046】
本発明のフォームは、枕、マットレス、背もたれ(ベッドヘッドボード用、座席用など)、着座用クッション、包装材、保護用クッション材などのようなクッション用途において有用である。これらは、音および/または振動(すなわち、NVH)の減衰手段として、またはその構成要素として使用することができる。
【0047】
以下の実施例は、本発明を例解するために提供されるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。すべての部およびパーセンテージは、他に指示がない限り、重量による。
【実施例
【0048】
実施例1~4および比較試料A
ポリウレタンフォームを、以下の表に記載される配合物から作製した。示される水の量は、全ての源からの総水量である。
【0049】
ポリオール1は、2000当量のエチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)トリオールである。それは、ポリオール1の重量に基づいて、70%を超える第一級ヒドロキシル基、および約15%のオキシエチレン含量を有する。
【0050】
ポリオール2は、エチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)トリオールと、1750当量のエチレンオキシドキャップ化ポリ(プロピレンオキシド)ヘキソールとの混合物である。グリセリンと、ソルビトールとの混合物をプロポキシル化してからエトキシル化することにより調製した。トリオールおよびヘキソールの各々は、ポリオール1の重量に基づいて、70%を超える第一級ヒドロキシル基、および約15%のオキシエチレン含量を有する。
【0051】
ポリオール3は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーである。それは、少なくとも70%のオキシエチレン含量、3の公称ヒドロキシル官能性、および約5000の分子量を有する。
【0052】
ポリオール4Aは、約50%のプロピレンオキシド、および50%のエチレンオキシドの分子量750の単官能ブロックコポリマーである。
【0053】
ポリオール4Bは、約60%のプロピレンオキシド、および40%のエチレンオキシドの分子量500の単官能ブロックコポリマーである。
【0054】
ポリイソシアネートは、約130のイソシアネート当量を有するポリマーMDIである。
【0055】
イソシアネートを除く全ての成分を、プロペラミキサを使用して室温で一緒に攪拌した。次いで、イソシアネートを追加した。成分をさらに10秒攪拌し、得られた混合物を30x30x25cmのオープンボックスに注ぎ、熱を加えることなく硬化した。得られたフォームをボックスから取り出し、140℃で5分、二次硬化した。フォームを室温まで冷却し、手動で粉砕した。フォームの密性を、フォームが粉砕されるときに主観的に評価し、1が非常に開いたフォームを表し、10が多くの独立気泡を備えた非常に密なフォームを表すことを伴う1~10のスケールで評価した。
【0056】
フォーム密度(ISO845-88)、25%、40%、65%圧縮時のCFD(ISO3386-1)、弾力性(ASTM D3574-11)、気流(ISO7231)(破砕フォーム上)、ヒステリシス(ISO3386-1)、ならびに75%圧縮および90%圧縮の圧縮セット(ISO1856)を全て測定した。たわみ係数は、65%および25%の圧縮測定から計算した。結果は表に示すとおりである。
【表1】
【0057】
表のデータによって示されるように、本発明のポリエーテル混合物は、同等の密度で、より高い気流、およびより高いたわみ係数を有するフォームを提供する。25%CFD値は低く、家具および寝具類の用途に望ましい。本発明のフォームはまた、より低い密性評価によって示されるように、より容易なプロセスである。実施例2は、これらの優れた結果が100を超えるイソシアネート指数で得られるとして、特に注目に値する。