(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】制御性T細胞エピトープ
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20230509BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20230509BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230509BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230509BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230509BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230509BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230509BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20230509BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230509BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230509BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230509BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230509BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230509BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230509BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230509BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20230509BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230509BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230509BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K7/06
C12N15/12
C12N5/0783
C12Q1/02
A61P37/02
A61P37/04
A61K38/10
A61K38/08
A61K39/00 H
A61K35/17
A61P37/06
A61P37/08
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P7/04
A61P15/08
A61P31/04
A61P31/12
A61P33/00
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020520056
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054595
(87)【国際公開番号】W WO2019071116
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520116920
【氏名又は名称】エピバックス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】EpiVax, Inc.
【住所又は居所原語表記】188 Valley Street, Suite 424, Providence, Rhode Island 02909, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】520116931
【氏名又は名称】フード アンド ドラッグ アドミニストレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、エイミー エス.
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-516290(JP,A)
【文献】国際公開第2002/060917(WO,A2)
【文献】特表2014-514334(JP,A)
【文献】国際公開第2005/111074(WO,A1)
【文献】Autoimmunity Reviews,2013年,Vol.12,pp.436-443
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の単離されたT細胞エピトープポリペプチドを含むT細胞エピトープ組成物であって、少なくとも1つの単離されたT細胞エピトープポリペプチドが配列番号1の配列からなる、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のT細胞エピトープ組成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項3】
対象における抗原特異的免疫応答を抑制するためのキットであって、
1つ以上の単離されたT細胞エピトープポリペプチドを含むT細胞エピトープ組成物を含み、少なくとも1つのT細胞エピトープポリペプチドは、配列番号1の配列からなる、キット。
【請求項4】
制御性T細胞の集団を拡大するための方法であって、
(a)対象から提供された生物学的サンプルから制御性T細胞を単離すること;および
(b)前記単離された制御性T細胞を、
前記制御性T細胞の数が増加して拡張された制御性T細胞組成物を生じる条件下で、有効量の請求項1に記載のT細胞エピトープ組成物と接触させることを含み、それにより前記生物学的サンプル中の前記制御性T細胞を拡張する、方法。
【請求項5】
生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激するための方法であって、
(a)対象から提供された生物学的サンプルから制御性T細胞を単離すること;および
(b)前記単離された制御性T細胞を、前記
制御性T細胞が刺激される条件下で、有効量の請求項1に記載のT細胞エピトープ組成物と接触させることを含み、それによって生物学的サンプル中の
前記制御性T細胞を刺激する方法。
【請求項6】
対象における標的抗原に対する抗原特異的免疫応答を抑制するための薬剤の製造における請求項1に記載のT細胞エピトープ組成物の使用であって、少なくとも1つのT細胞エピトープポリペプチドが、前記標的抗原と、共有結合され、非共有結合され、または混合されて、前記標的抗原に対する免疫応答を低下させる、使用。
【請求項7】
前記抑制効果が天然のTregによって媒介される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記抑制効果が適応性Tregによって媒介される、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記T細胞エピトープ組成物はエフェクターT細胞応答を抑制する、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記T細胞エピトープ組成物はヘルパーT細胞応答を抑制する、請求項6に記載の使用。
【請求項11】
前記T細胞エピトープ組成物はB細胞応答を抑制する、請求項6に記載の使用。
【請求項12】
有効量の抗原またはアレルゲンをさらに含む、請求項3に記載のキット。
【請求項13】
有効量の抗原またはアレルゲンをさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項14】
配列番号2~14からなる群から選択される1つまたは複数の単離されたT細胞エピトープポリペプチドをさらに含む、請求項1、2、または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記T細胞エピトープ組成物が、配列番号2~14からなる群から選択される1つまたは複数の単離されたT細胞エピトープポリペプチドをさらに含む、請求項3または12に記載のキット。
【請求項16】
前記T細胞エピトープ組成物が、配列番号2~14からなる群から選択される1つまたは複数の単離されたT細胞エピトープポリペプチドをさらに含む、請求項6~11に記載の使用。
【請求項17】
前記T細胞エピトープ組成物は、配列番号2~14からなる群から選択される1つまたは複数の単離されたT細胞エピトープポリペプチドをさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/568625号、2017年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/568630号、および2018年9月11日に出願された米国仮特許出願第62/729792号に基づく優先権を主張する。上記出願の全ての全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出され、参照により全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2018年10月4日に作成された前記ASCIIコピーは、EPV 0008WO SEQUENCE Listing ST25.txtという名前で、サイズは114KBである。
【0003】
本開示は、概して、新規なクラスの制御性T細胞エピトープ(「Tレギトープ(Tregitope)」と呼ばれる)に関する。本開示は、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)Tレギトープ組成物ならびにこれらを調製および使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
自己または外来抗原に対する寛容の人工的誘導が、自己免疫、移植アレルギーおよびその他の疾患の治療の目標である。自己および非自己治療用タンパク質を標的とする免疫応答は、しばしば臨床的有効性を制限する。治療用タンパク質組成物に対する寛容を誘導する免疫調節処置は、抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させ、臨床結果を改善し得る。最近まで、治療的寛容誘導は、広範な免疫細胞枯渇療法に依存していた。これらの広範なアプローチは一般に免疫系を弱め、多くの対象を日和見感染症、自己免疫発作およびがんに対して脆弱にする。当技術分野では、免疫寛容の誘導に対する攻撃性が低く、より標的を絞ったアプローチが必要である。
【0005】
免疫寛容は、抗原提示細胞(APC)、T細胞、B細胞、サイトカイン、ケモカインおよび表面受容体間の複雑な相互作用によって調節されている。初期の自己/非自己識別は、髄質上皮細胞が未成熟T細胞に対する特異的自己タンパク質エピトープを発現する新生児発達中に胸腺で起こる。親和性の高い自己抗原を認識するT細胞は削除されるが、親和性が中程度の自己反応性T細胞はしばしば削除を回避し、いわゆる「自然」制御性T細胞(TReg)細胞に変換され得る。これらの自然TReg細胞が末梢に輸送され、潜伏性自己免疫反応の制御に役立つ。
【0006】
寛容の第2の形態は、末梢で発生する。この場合、活性化T細胞が、IL-10、TGF-βおよびCCL19などの一定の免疫抑制サイトカインおよびケモカインの作用を通して「適応」TReg表現型に変換される。これらの「適応」TReg細胞の考えられる役割には、侵入病原体の排除に成功した後の免疫応答を弱めること、アレルギー反応によって引き起こされる過剰な炎症の制御、低レベルもしくは慢性感染症によって引き起こされる過剰な炎症の制御、またはおそらく有益な共生細菌を標的とする炎症反応の制御が含まれる。
【0007】
内在性TReg(自然TRegと適応TRegの両方を含む)は、末梢の免疫調節の重要な構成要素である。例えば、TCRを通した自然TRegの活性化で、自然TRegは免疫調節サイトカインおよびケモカインを発現する。活性化自然TRegは、接触依存性および非依存性の機序を通して、近くのエフェクターT細胞を抑制し得る。さらに、それだけに限らないが、IL-10およびTGF-βを含む、これらの細胞によって放出されるサイトカインは、抗原特異的適応TRegを誘導することができる。多大な努力にもかかわらず、ごく一部の例外を除いて、自然TReg、およびさらに重要なことに、臨床的に重要な量で循環している自然TRegの抗原特異性はまだ不明である。
【0008】
当技術分野では、一般的な自己タンパク質に含有される制御性T細胞エピトープ(「Tレギトープ」)の同定、このようなTレギトープを含有する組成物、ならびにこれらの調製および使用に関連する方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む新規な治療用制御性T細胞エピトープ組成物、ならびに例えば体内の免疫応答を抑制する、より具体的には医学的状態を処置するための治療剤の投与によって引き起こされる体内の免疫応答を抑制するための同組成物の使用を提供することである。
【0010】
本明細書に開示されるTレギトープ組成物およびTレギトープ抗原組成物の使用を通した内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)の選択的会合および活性化は、不要な免疫応答の存在を示す任意の疾患または状態を処置するための手段として治療的に価値がある。このような不要な免疫応答の例として以下が挙げられる:1型糖尿病、MS、ループスおよびRAなどの自己免疫疾患;移植片対宿主病(GVHD)および宿主対移植片病(HVGD)などの移植関連障害;アレルギー反応;モノクローナル抗体などの生物学的医薬品の免疫拒絶;置換タンパク質、例えば、それだけに限らないがインスリン、凝固第VIII因子(FVIII)および/または凝固第VIII因子補充を標的とする免疫応答の管理;ボツリヌス毒素などの治療用毒素を標的とする免疫応答の管理;ならびに急性または慢性にかかわらず、感染性疾患に対する免疫応答の管理。
【0011】
本開示は、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)、および特定の態様では、末梢の外来および自己タンパク質に対する免疫応答を既に調節している細胞(既存または自然TReg)の機能を利用する。態様では、本開示は、例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含むこのような組成物を含む、Tレギトープ組成物を提供する。TReg活性化制御性T細胞エピトープは、以下で「ある(a)」または「該(the)」「Tレギトープ(Tregitope)」または「Tレギトープ(Tregitopes)」と呼ばれ得る。態様では、本開示のTレギトープ組成物が、特異的標的抗原と共有結合的に結合している、非共有結合的に結合している、または混和物であり得る。
【0012】
態様では、本開示は、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」または「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)に関する。「~から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、本開示によるポリペプチドが、配列番号1~14のいずれかによる配列またはその変異体に加えて、MHCリガンドとして機能するペプチドの一部を必ずしも形成していないペプチドの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基であって、但し、Tレギトープとして機能するペプチドの活性を実質的に損なわないものを含有することを意味することを意図している。態様では、単離、合成、または組換えポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~2の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる。態様では、単離、合成、または組換えポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる。態様では、ポリペプチドが、異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入された本開示の配列番号1~14(態様では、配列番号1~14のその断片を含む)の1つまたは複数を含む。態様では、配列番号1~14の1つまたは複数が、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入され得るが、これが、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と一緒に、接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成されてもよい。態様では、本開示は、配列番号1~14の1つまたは複数を含む配列を有するポリペプチド(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい)であって、前記配列番号1~14の1つまたは複数が自然にはポリペプチドに含まれない、および/または前記配列番号1~14の1つまたは複数がポリペプチド中の自然の位置に位置していない、ポリペプチドに関する。態様では、単離、合成、または組換えポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1、3~8および10~14の1つまたは複数を含み、前記単離、合成、または組換えポリペプチドがヒト凝固第V因子を含まない。態様では、単離、合成、または組換えポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号2または9の1つまたは複数を含み、前記単離、合成、または組換えポリペプチドがヒト凝固第VIII因子を含まない。上記ポリペプチドの態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい。
【0013】
態様では、本開示は、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)を含むキメラまたは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい)に関する。態様では、本開示のキメラまたは融合ポリペプチド組成物が、異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入された1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)を含む。態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、異種ポリペプチドに挿入されてもよい、異種ポリペプチドのC末端に付加されてもよい、および/または異種ポリペプチドのN末端に付加されてもよい。上記キメラまたは融合ポリペプチド組成物の態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。態様では、1つまたは複数の本開示の単離、合成、または組換えポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~2の配列1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる。態様では、1つまたは複数の本開示の単離、合成、または組換えポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる。キメラまたは融合ポリペプチド組成物の態様では、配列番号1~14の1つまたは複数が、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入され得るが、これが、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と一緒に、接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成されてもよい。態様では、本開示のキメラまたは融合ポリペプチド組成物が、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数を含む配列を有するポリペプチドであって、前記配列番号1~14の1つまたは複数が自然にはポリペプチドに含まれない、および/または前記配列番号1~14の1つまたは複数がポリペプチド中の自然の位置に位置していない、ポリペプチドを含む。態様では、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数が、ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入され得る。上記キメラまたは融合ポリペプチド組成物の態様では、キメラまたは融合ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい。
【0014】
態様では、本開示は、態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド)をコードする、または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物をコードする、単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい核酸(例えば、DNAまたはRNA)に関する。1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド)または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物をコードする核酸の態様では、1つまたは複数のポリペプチドまたは組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド)または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物をコードする核酸の態様では、1つまたは複数のポリペプチドまたは組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物が、配列番号1~2の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド)または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物をコードする核酸の態様では、1つまたは複数のポリペプチドまたは組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物が、配列番号1を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド)または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物をコードする本開示の核酸、例えばそれだけに限らないが、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する少なくとも1つの制御性T細胞エピトープをコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)を含むベクターが提供される。態様では、本開示は、本開示のベクターを含む細胞に関する。
【0015】
態様では、本開示は、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい)の1つまたは複数を含む)本明細書に開示されるTレギトープ組成物を含む医薬組成物または製剤に関する。態様では、医薬組成物が、薬学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む。態様では、本開示は、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい)の1つまたは複数を含む)本明細書に開示されるTレギトープ組成物を含む医薬組成物または製剤であって、Tレギトープ組成物(またはTレギトープ組成物に含まれる1つもしくは複数のTレギトープ)が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる医薬組成物または製剤に関する。医薬組成物または製剤の態様では、Tレギトープ組成物(またはTレギトープ組成物に含まれる1つもしくは複数のTレギトープ)が、配列番号1~2の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる。医薬組成物または製剤の態様では、Tレギトープ組成物(またはTレギトープ組成物に含まれる1つもしくは複数のTレギトープ)が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0016】
態様では、本開示は、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象の制御性T細胞(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む内在性TReg)を刺激、誘導および/または拡大する、ならびに/あるいはそれを必要とする対象の免疫応答を抑制する方法に関する。
【0017】
態様では、本開示は、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含む、それを必要とする対象の医学的状態を処置または予防する方法に関する。態様では、医学的状態が、アレルギー、自己免疫疾患、移植関連障害、移植片対宿主病、血液凝固障害、酵素またはタンパク質欠乏障害、止血障害、がん、不妊症;およびウイルス、細菌または寄生虫感染症からなる群から選択される。別の実施形態では、医学的状態が血友病A、BまたはCである。
【0018】
態様では、本開示は、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象の制御性T細胞(例えば、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む))を刺激/誘導して免疫応答を抑制する方法に関する。態様では、免疫応答が、少なくとも1つの治療用タンパク質による1つまたは複数の治療的処置、ワクチンによる処置、または少なくとも1つの抗原による処置の結果である。特定の実施形態では、免疫応答が、凝固第VIII第因子補充による1つまたは複数の治療的処置の結果である。よって、1つまたは複数の本開示のTレギトープ組成物の投与を使用して、血友病Aを患っている患者の既に確立された免疫応答の発生を予防するまたは既に確立された免疫応答を終了させて、第VIII因子(および凝固第VIII因子補充)に対する寛容誘導を確立することができる。別の態様では、本開示のTレギトープ組成物の投与が、1つまたは複数の抗原提示細胞を制御性表現型に、1つまたは複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせ、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCD11cおよびHLA-DR発現を低下させる。
【0019】
態様では、本開示は、制御性T細胞の集団を拡大する方法であって、(a)対象から生体試料を用意するステップと;(b)生体試料から制御性T細胞を単離するステップと;(c)T制御性細胞の数が増加して、拡大した制御性T細胞組成物をもたらす条件下で、単離した制御性T細胞を有効量の本開示のTレギトープ組成物(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)と接触させて、それによって生体試料の制御性T細胞を拡大するステップと;さらに、(d)試料を、処置を必要とする患者に戻すステップとを含む方法に関する。
【0020】
態様では、本開示は、生体試料の制御性T細胞を刺激する方法であって、(a)対象から生体試料を用意するステップと;(b)生体試料から制御性T細胞を単離するステップと;(c)T制御性細胞が1つまたは複数の生物学的機能を変化させるよう刺激される条件下で、単離した制御性T細胞を有効量の本開示のTレギトープ組成物(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)と接触させて、それによって生体試料の制御性T細胞を刺激するステップと;さらに、(d)細胞を、処置を必要とする患者に戻すステップとを含む方法に関する。
【0021】
態様では、本開示は、対象の免疫応答を抑圧/抑制する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含み、Tレギトープ組成物は免疫応答を抑圧/抑制する方法に関する。態様では、Tレギトープ組成物が、自然免疫応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、適応免疫応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、エフェクターT細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、メモリーT細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、ヘルパーT細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、B細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、nkT細胞応答を抑圧/抑制する。
【0022】
態様では、本開示は、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物の投与を通して、対象の免疫応答、具体的には抗原特異的免疫応答を抑制する方法であって、前記Tレギトープ組成物は、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TReg、ならびに態様ではCD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞を含む)を活性化する、あるいはCD4+T細胞の活性化、CD4+および/またはCD8+T細胞の増殖を抑制する、ならびに/あるいはβ細胞またはnkT細胞の活性化または増殖を抑制する方法に関する。態様では、本開示のTレギトープ組成物が、特異的標的抗原と共有結合的に結合している、非共有結合的に結合している、または混和物であり得る。態様では、特異的標的抗原と共有結合的に結合している、非共有結合的に結合している、または混和物である本開示のTレギトープ組成物投与によって、標的抗原に対する免疫応答が減少する。
【0023】
態様では、標的抗原が自己タンパク質またはタンパク質断片であり得る。態様では、標的抗原がアレルゲンであり得る。態様では、標的抗原が同種タンパク質またはタンパク質断片であり得る。態様では、標的抗原が生物医薬品またはその断片であり得る。態様では、標的抗原が凝固第VIII因子補充である。態様では、抑制効果が自然TRegによって媒介される。態様では、抑制効果が適応TRegによって媒介される。態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物に含まれる1つまたは複数のTレギトープが、エフェクターT細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、自然免疫応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、適応免疫応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、ヘルパーT細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、メモリーT細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、B細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、nkT細胞応答を抑制する。
【0024】
態様では、本開示は、対象の医学的状態を予防または処置するため、特に免疫応答を抑制するためのキットであって、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を含むキットに関する。態様では、キットが、有効量の抗原またはアレルゲンまたは治療剤、例えば置換タンパク質またはペプチドをさらに含んでもよい。
【0025】
本開示は、以下の図面を参照することにより、よりよく理解され得る。特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは、HLA DRB1競合結合曲線を報告するグラフである。HLA DRB1*0101アッセイの結果を要約する図である(左パネルは配列番号1、3、4および6を示し、右パネルは配列番号5および7を示す)。
【
図1B】
図1Bは、HLA DRB1競合結合曲線を報告するグラフである。HLA DRB1*0301アッセイの結果を要約する図である。
【
図1C】
図1Cは、HLA DRB1競合結合曲線を報告するグラフである。選択されたFVペプチドのHLA DRB1*0701アッセイの結果を要約する図である(左パネルは配列番号1、3、4および6を示し、右パネルは配列番号5および7を示す)。
【
図1D】
図1Dは、HLA DRB1競合結合曲線を報告するグラフである。選択されたFVペプチドのHLA DRB1*1101アッセイの結果を要約する図である(左パネルは配列番号1、3、4および6を示し、右パネルは配列番号5および7を示す)。
【
図1E】
図1Eは、HLA DRB1競合結合曲線を報告するグラフである。HLA DRB1*1501の結果を要約する図である(左パネルは配列番号1、3、4および6を示し、右パネルは配列番号5および7を示す)。
【
図2A】
図2Aは、樹状細胞の表現型に対する推定Tレギトープへの曝露の効果を示している。配列番号15のHLA-DR/CD11cドットプロットのオーバーレイ(167として図に記載される濃い灰色)を示し、培地対照(薄い灰色)が観察されたHLA-DR発現のシフトを強調する図である。
【
図2B】
図2Bは、樹状細胞の表現型に対する推定Tレギトープへの曝露の効果を示している。HLA-DR MFIの%Δを計算するために使用される式(%は培地対照に対する相対である)を表す図である。
【
図2C】
図2Cは、樹状細胞の表現型に対する推定Tレギトープへの曝露の効果を示している。各ペプチド刺激剤についてのHLA-DR MFIの%Δを示す棒グラフである(配列番号15はTreg 167である)。
【
図3A】
図3Aは、培地対照に対する各ペプチド刺激剤について計算されたHLA陰性集団の%Δ変化を示している。配列番号15(Tレギトープ167として図に記載されている)および培地対照についてのHLA-DR対CD11cのプロットを示す図である。
【
図3B】
図3Bは、培地対照に対する各ペプチド刺激剤について計算されたHLA陰性集団の%Δ変化を示している。ビヒクルが培地である場合のHLA+およびHLA-各ペプチド刺激剤の%をプロットする棒グラフである。T
Reg167が対照として使用され、配列PAVLQSSGLYSLSLSSVVTVPSSSLGTQ(配列番号15)を有する。
【
図3C】
図3Cは、培地対照に対する各ペプチド刺激剤について計算されたHLA陰性集団の%Δ変化を示している。HLA陰性集団の%Δ変化を計算するために使用される式を表す図である。
【
図4】種々のペプチド刺激剤の存在下での5人のドナーにわたるアッセイ7日目に分析されたCD11対HLA-DRの表面発現を表す一連のドットプロットを示す図である。T
Reg167(図で167として示される)が対照として使用され、配列PAVLQSSGLYSLSLSSVVTVPSSSLGTQ(配列番号15)を有する。
【
図5】種々のペプチド刺激剤の存在下での5人のドナーにわたるアッセイ7日目に分析されたCD11c対CD86の表面発現を表す一連のドットプロットを示す図である。T
Reg167(図で167として示される)が対照として使用され、配列PAVLQSSGLYSLSLSSVVTVPSSSLGTQ(配列番号15)を有する。
【
図6A】
図6Aは、高度に活性化された制御性T細胞のゲーティング戦略を示している。CD4+T細胞は、上昇したCD25、Ganzyme B、Foxp3、および低いCFSE(増殖)に対してゲーティングされる。破傷風トキソイド(TT)を添加しないアッセイでのゲーティング戦略を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、高度に活性化された制御性T細胞のゲーティング戦略を示している。CD4+T細胞は、上昇したCD25、Ganzyme B、Foxp3、および低いCFSE(増殖)に対してゲーティングされる。0.5μg/mLのTTを添加したアッセイでのゲーティング戦略を示す図である。
【
図7】高度に活性化されたグランザイムB陽性CD4
+T細胞(CD25
+グランザイムB
+)のゲーティングが、これらの細胞のサブセットが高度増殖性制御性T細胞(CFSE低FoxP3
++)で構成されることを示すことを実証する図である。配列番号1(FV621として示される)はこの集団の相対的割合を増加させる(
図7、上列)が、配列番号3(FV432として示される)は有意な効果を示さない(
図7、下列)。図のデータは、ドナー135に対応する。
【
図8A】
図8Aは、CD4
+T細胞活性化の2つの尺度のゲーティング戦略を示している。活性化Tエフェクター細胞(T
eff)が、CD25
hi/FoxP3
int集団であるCD25およびFoxP3を特徴とすることを示す図である。
【
図8B】
図8Bは、CD4
+T細胞活性化の2つの尺度のゲーティング戦略を示している。細胞が最初にCD4+でゲーティングされ、CD4+/CD25+T細胞の%増殖がCFSE枯渇によって決定される、特徴付けられたCD4 T細胞の増殖を示す図である。
【
図9】破傷風トキソイド(TT)による刺激時のCD4+T細胞の活性化ならびにペプチド配列番号1(下列)および対照ペプチド配列番号3(上列)による抑制を示す図である。
【
図10】TTによる刺激時のCD4+T細胞の増殖ならびにペプチド配列番号1(下列)および対照ペプチド配列番号3(上列)による同細胞の抑制を報告する図である。
【
図11】破傷風トキソイド(TT)による刺激時のCD4+T細胞の活性化ならびにペプチド配列番号1(下列)および対照ペプチド配列番号3(上列)による抑制を示す図である。
【
図12】Tレギトープ(配列番号8(開始ペプチド)および配列番号1(伸長ペプチド))をその第VIII因子ホモログ(それぞれ、配列番号9(開始ペプチド)および配列番号2(伸長ペプチド))と整列させて、ペプチド間の相同性を表示する図である。アンカー残基は太字で示され;保存されたTCR接触は太字で下線付きで示され;一致しないTCR接触は太字でイタリック体で示される。
【
図13A】2人のドナーにわたるペプチド配列番号1(上列)および配列番号2(下列)によるCD4+T細胞活性化の比較阻害を示す図である。
【
図13B】2人のドナーにわたるペプチド配列番号1(上列)および配列番号2(下列)によるCD4+T細胞増殖の比較阻害を示す図である。
【
図14】ドナー121についてのCD8+T細胞増殖(上列)および活性化(下列)に対する配列番号1の効果を示す図である。
【
図15】ドナー097および121についてのCD8+T細胞増殖(上列)および活性化(下列)に対するペプチド配列番号1の効果を示す図である。
【
図16A】陰性対照よりも好ましい生存プロファイルを示すペプチド配列番号1についての生存プロットを要約する図である。
【
図16B】陽性対照よりも好ましい生存プロファイルを示すペプチド配列番号1についての生存プロットを要約する図である。
【
図17A】広範なHLA-DRB1ハプロタイプを網羅するドナーにわたり、破傷風トキソイド(
図17A)に応答する活性化(増殖)CD4
+エフェクターT細胞に対する本開示のTレギトープの阻害効果が、高度に活性化された(グランザイムB+)制御性T細胞(
図17B)のそれを反映することを実証する図である。
【
図17B】広範なHLA-DRB1ハプロタイプを網羅するドナーにわたり、破傷風トキソイド(
図17A)に応答する活性化(増殖)CD4
+エフェクターT細胞に対する本開示のTレギトープの阻害効果が、高度に活性化された(グランザイムB+)制御性T細胞(
図17B)のそれを反映することを実証する図である。各ドナーについて、値は100%=TTのみ、本開示のTレギトープなしに正規化される。
図17Aと
図17Bの両方に示されるように、配列番号1はFV621として示され、配列番号3はFV432として示され、配列番号4はFV548として示され、配列番号5はFV582として示され、配列番号6はFV1737として示され、配列番号7はFV1802として示される。
【
図18】破傷風トキソイドが活性化(CD25高)CD4 T細胞の集団を刺激して増殖させる(CFSE低)(活性化細胞のおよそ90%も増殖している(データは示さず))ことを示し、さらに、高度に活性化された細胞のこの集団が、配列番号1(FV621として示される)によって用量依存的に積極的に抑制され(
図18、上列)、配列番号3(FV432として示される)が、活性化CD4細胞に対する有意な阻害効果を示さない(
図18、下列)ことを示す図である。
【
図19】EpiBarを含有する免疫原性インフルエンザHAペプチドの例、および無差別インフルエンザエピトープのEpiMartix分析を示す図である。インフルエンザHAペプチドは、EpiMatrixの8つの対立遺伝子全てについてスコアが非常に高く、クラスタースコアは18である。10のクラスタースコアが有意と見なされる。バンド様EpiBarパターンは、無差別エピトープの特徴である。PRYVKQNTL(配列番号60)、RYVKQNTLK(配列番号61)、YVKQNTLKL(配列番号62)、VKQNTLKLA(配列番号63)およびKQNTLKLAT(配列番号64)の結果を示す。Zスコアは、9merフレームが所与のHLA対立遺伝子に結合する可能性を示す。上位5%の全てのスコアが「ヒット」と見なされ、10%未満の非ヒット(*)は、簡潔にするために
図19では隠されている。
【
図20】80%超のTCR接触が保存されている(DR15で一致)、ヒト第V因子とヒト第VIII因子との間で共有される推定エピトープ、ならびにそれらのEpiMatrixスコアを示す図である。アンカー残基は黒色で示され、保存されたTCR接触は緑色で表示され、不一致TCR接触は赤色で示される。IHFTGHSFI(配列番号8)および選択された伸長ペプチドILTIHFTGHSFIYGK(配列番号1);IHFSGHVFT(配列番号9)および選択された伸長ペプチドIHSIHFSGHVFTVRK(配列番号2);FKNMASRPY(配列番号10)および選択された伸長ペプチドKIVFKNMASRPYSIY(配列番号3);IMSTINGYV(配列番号12)および選択された伸長ペプチドESNIMSTINGYVPES(配列番号5);FHAINGMIY(配列番号14)および選択された伸長ペプチドSHEFHAINGMIYSLP(配列番号7);IEDFNSGLI(配列番号16)および伸長ペプチドENLIEDFNSGLIGPL(配列番号17);VKDLNSGLI(配列番号18)および伸長ペプチドVDLVKDLNSGLIGAL(配列番号19);KIVFKNMAS(配列番号20)および伸長ペプチドDTLKIVFKNMASRPY(配列番号21);VITLKNMAS(配列番号22)および伸長ペプチドDTVVITLKNMASHPV(配列番号23);FKNQASRPY(配列番号24)および伸長ペプチドLTIFKNQASRPYNIY(配列番号25);LKNMASHPV(配列番号26)および伸長ペプチドVITLKNMASHPVSLH(配列番号27);FRNQASRPY(配列番号28)および伸長ペプチドMVTFRNQASRPYSFY(配列番号29);IMHSINGYV(配列番号30)および伸長ペプチドASNIMSSINGYVFDS(配列番号31);LLLKQSNSS(配列番号32)および伸長ペプチドSDLLLLKQSNSSKIL(配列番号33);RVLFQDNSS(配列番号34)および伸長ペプチドYLTRVLFQDNSSHLP(配列番号35);FKNLASRPY(配列番号36)および伸長ペプチドQVRFKNLASRPYSLH(配列番号37);LKNMASHPV(配列番号38)および伸長ペプチドVITLKNMASHPVSLH(配列番号39);FKNQASRPY(配列番号40)および伸長ペプチドLIIFKNQASRPYNIY(配列番号41);FRNQASRPY(配列番号42)および伸長ペプチドMVTFRNQASRPYSFY(配列番号43);FHAINGYIM(配列番号44)および伸長ペプチドNYRFHAINGYIMDTL(配列番号45);IKKITAIIT(配列番号46)および伸長ペプチドLLKIKKITAIITQGC(配列番号47);FKKVTPLIH(配列番号48)および伸長ペプチドDTEFKKVTPLIHDRM(配列番号49);VKNFFNPPI(配列番号50)および伸長ペプチドKGHVKNFFNPPIISR(配列番号51);ならびにKHNIFNPPI(配列番号52)および伸長ペプチドSGIKHNIFNPPIIAR(配列番号53)について結果が示される。
【
図21】ヒト第V因子およびヒト第VIII因子ペプチドペアが5つ全てのTCR接触位置およびそれらの推定EpiMatrixスコアで一致した推定エピトープを示す図である。アンカー残基は黒色で示され、保存されたTCR接触は緑色で表示され、不一致TCR接触は赤色で示される。FDENLSWYL(配列番号11)および伸長ペプチドFAVFDENKSWYLEDN(配列番号4);IHSGLIGPL(配列番号13)および伸長ペプチドEKDIHSGLIGPLLI(配列番号6);FDETKSWYF(配列番号54)および伸長ペプチドFTIFDETKSWYFTEN(配列番号55);FDENRSWYL(配列番号56)および伸長ペプチドFSVFDENRSWYLTEN(配列番号57);ならびにVHSGLIGPL(配列番号58)および伸長ペプチドEKDVHSGLIGPLIV(配列番号59)について結果が示される。
【
図22】
図5の樹状細胞表現型分析を通して得られた結果を要約する図である。
図22に提示されるように、請求されるTレギトープ配列番号1への曝露は、試験した5人の対象全てでHLA-DRの発現を低下させた。さらに、5人の対象のうち4人で、Tレギトープ配列番号1への曝露によって、CD11c-高コホート中に存在するCD86-低の%が増加した。両傾向は、獲得制御性表現型へのシフトを示した。ΔMFIおよび%細胞集団計算の分析は、ビヒクル対照分析に対するものである。
【
図23】複数のHLAクラスII型にわたる配列番号1に対する高い結合親和性を示す、5つのHLA-DR1型にわたる配列番号1のHLA結合結果を示す図である。
【
図24A】
図24Aは、バイスタンダー抑制アッセイに使用されるゲーティング戦略を示しており、TTによって刺激されたCD4 T細胞の制御性マーカーおよび活性化マーカーを強調し、主要な増殖集団がTエフェクターメモリー表現型(CD45RA-低/CCR7-低)に対応することを示している。ドナー全体で観察される傾向を典型的に示すドナー108によるTTへの応答を示し、典型的な別個の集団を示す図である。
【
図24B】
図24Bは、バイスタンダー抑制アッセイに使用されるゲーティング戦略を示しており、TTによって刺激されたCD4 T細胞の制御性マーカーおよび活性化マーカーを強調し、主要な増殖集団がTエフェクターメモリー表現型(CD45RA-低/CCR7-低)に対応することを示している。各集団についての増殖の程度を示す、FoxP3およびCD25マーカーのゲーティング戦略を示す図である。
【
図24C】
図24Cは、バイスタンダー抑制アッセイに使用されるゲーティング戦略を示しており、TTによって刺激されたCD4 T細胞の制御性マーカーおよび活性化マーカーを強調し、主要な増殖集団がTエフェクターメモリー表現型(CD45RA-低/CCR7-低)に対応することを示している。総CD4 T細胞および増殖性CD4 T細胞の制御性表現型を示し、後者における活性化エフェクターT細胞の高い優位性を示す図である。
【
図24D】
図24Dは、バイスタンダー抑制アッセイに使用されるゲーティング戦略を示しており、TTによって刺激されたCD4 T細胞の制御性マーカーおよび活性化マーカーを強調し、主要な増殖集団がTエフェクターメモリー表現型(CD45RA-低/CCR7-低)に対応することを示している。活性化T細胞のほとんど(CD25
hi FoxP3
int、Q2)がエフェクターメモリー表現型(CD45RA-低/CCR7-低)を示すことを示す図である。
【
図25】
図1A~
図1Cに示される選択されたクラスII HLA対立遺伝子に対する一定のTレギトープについての結合曲線のHLA結合結果の要約を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
概要
適応免疫カスケードは、可溶性タンパク質抗原が抗原提示細胞(APC)に取り込まれ、クラスII抗原提示経路を通して処理されると始まる。クラスII提示経路のタンパク質抗原は、小胞体で見られる種々のプロテアーゼによって分解される。結果として生じたタンパク質断片の一部は、クラスII MHC分子に結合している。ペプチド搭載MHC分子は細胞表面に運ばれ、そこでCD4+T細胞によって調べられる。MHC分子に結合し、APCと循環T細胞との間の細胞間相互作用を媒介することができるペプチド断片は、T細胞エピトープと呼ばれる。CD4+T細胞によるこれらのペプチド-MHC複合体の認識は、応答するT細胞の表現型および局所サイトカイン/ケモカイン環境に基づいて、免疫活性化または免疫抑制応答のいずれかをもたらし得る。一般に、MHC/ペプチド複合体とTエフェクター細胞のT細胞受容体(TCR)との間の会合が、IL-4およびIFN-γなどの炎症性サイトカインの活性化およびその後の分泌をもたらす。他方、自然T制御性細胞(TReg)の活性化が、とりわけ免疫抑制性サイトカインIL-10およびTGF-βの発現をもたらす(Shevach E、(2002)、Nat Rev Immunol、2(6):389~400)。これらのサイトカインは近くのエフェクターT細胞に直接作用して、ある場合にはアネルギーまたはアポトーシスをもたらす。他の場合では、制御性サイトカインおよびケモカインがエフェクターT細胞をT制御性表現型に変換する;この過程は、ここでは「誘導」または「適応」寛容と呼ばれる。MHC分子に結合し、循環している内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)と会合および/またはこれを活性化することができるT細胞エピトープは、Tレギトープと呼ばれる。態様では、ここに開示されるTレギトープがT細胞エピトープクラスターであり、これらは複数のMHC対立遺伝子および複数のTCRに結合することができるエピトープである。
【0028】
初期の自己/非自己識別は、皮質および髄質上皮細胞が未成熟T細胞に対する特異的自己タンパク質エピトープを発現する新生児発達中に胸腺で起こる。親和性の高い自己抗原を認識するT細胞は削除されるが、親和性が中程度の自己反応性T細胞はしばしば削除を回避し、いわゆる自然制御性T細胞(TReg)細胞に変換され得る。これらの自然TReg細胞が末梢に輸送され、潜伏性自己免疫反応の制御に役立つ。自然制御性T細胞は、免疫調節および自己寛容の重要な構成要素である。
【0029】
自己寛容は、T細胞、B細胞、サイトカインおよび表面受容体間の複雑な相互作用によって調節されている。T制御性免疫応答は、タンパク質抗原(自己であろうと外来であろうと)に対するTエフェクター免疫応答を相殺する。自己反応性Tエフェクター細胞の数もしくは機能を増加させる、またはT制御性細胞の数もしくは機能を減少させることによる、自己反応性側へのバランスの傾きが、自己免疫として現れる。
【0030】
通常、バイスタンダーT制御性細胞によって供給されるIL-10およびTGF-βの存在下で、T細胞受容体を介して活性化すると、成熟T細胞が「適応」TReg表現型に変換される寛容の第2の形態が末梢で起こる。これらの「適応」TReg細胞の考えられる役割には、侵入病原体の排除に成功した後の免疫応答を弱めること、アレルギー反応によって引き起こされる過剰な炎症の制御、低レベルもしくは慢性感染症によって引き起こされる過剰な炎症の制御、またはおそらく有益な共生細菌およびウイルスを標的とする炎症反応の制御が含まれる。「適応」TRegは、体細胞超突然変異を受けたヒト抗体を標的とする免疫応答の抑制においても役割を果たし得る(Chaudhry Aら、(2011)、Immunity、34(4):566~78)。
【0031】
TReg細胞はB細胞寛容にも役立つ。B細胞は、細胞表面上で単一の低親和性Fc受容体であるFcyRIIBを発現する(Ravetch JVら、(1986)、Science、234(4777):718~25)。この受容体は、細胞質ドメインに免疫受容体抑制性チロシンモチーフ配列(ITIM)を含有している。免疫複合体によるFcγRIIBとB細胞受容体(BCR)の共連結(co-ligation)は、ITIMのチロシンリン酸化を誘因するよう作用してイノシトールホスファターゼ、SHIPの動員をもたらし、MAPキナーゼの活性化を妨害することによってBCR誘因増殖を阻害し、細胞膜からのブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)の解離によって食作用を遮断し、細胞へのカルシウム流入を阻害する。FcγRIIBはまた、ITIMとは無関係にアポトーシスを誘導することもできる。ICによるFcγRIIBのホモ凝集で、Btkと細胞膜の会合が増強され、それによってアポトーシス反応が誘因される(Pearse Rら、(1999)、Immunity、10(6):753~60)。FcγRIIBの発現は高度に可変性であり、サイトカイン依存性である。活性化Th2およびTReg細胞によって発現されるIL-4およびIL-10は、相乗的に作用してFcγRIIB発現を増強し(Joshi Tら、(2006)、Mol Immuno.、43(7):839~50)、したがって、体液性応答の抑制を助けることが示されている。
【0032】
Tレギトープ特異的TReg細胞を活用して、不要な免疫応答を抑制し、共送達された(co-delivered)タンパク質に対する適応TRegを誘導することも可能である。この発見は、移植、タンパク質療法、アレルギー、慢性感染症、自己免疫およびワクチン設計のための治療レジメンおよび抗原特異的療法の設計に意味を有する。(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を含むTレギトープと合わせた薬物、タンパク質またはアレルゲンの投与が、エフェクター免疫応答を抑制することができる。本開示のTレギトープ組成物を含むTレギトープを使用して、免疫系を寛容に向けて意図的に操作することができる。
【0033】
(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物が、制御性T細胞の選択的会合および活性化に有用である。本明細書では、一定の内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)が、全身性と限定的な疾患特異的状況の両方で、会合、活性化および/または不要な免疫応答の抑制に適用され得ることが実証されている。態様では、本開示のTレギトープ組成物を使用して、既存の制御性T細胞集団と会合およびこれらを活性化して、血友病Aを患っている患者の出血を予防または停止するために使用される第VIII因子補充によって引き起こされる免疫応答を抑制することができる。
【0034】
多大な努力にもかかわらず、ごく一部の例外を除いて、自然TReg、およびさらに重要なことに、臨床的に重要な量で循環している自然TRegの抗原特異性は不明である。本明細書では、免疫グロブリンまたは血清タンパク質凝固第V因子(「FV」)および凝固第VIII因子(「FVIII」)などの、血液蒸気を循環する一定のヒトタンパク質が、制御性T細胞の内在性集団(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)に関連するT細胞エピトープを含有することが証明されている。正常な免疫監視の過程で、これらのタンパク質は樹状細胞またはマクロファージなどの専門的APCに取り込まれ、分解される。分解過程中、これらのタンパク質に含有されるエピトープの一部がMHC分子と結合し、制御性T細胞に提示される細胞表面に輸送される。これらの細胞は、いったんAPCによって活性化されると、サイトカインおよびケモカインを放出し、そうでなければ細胞外タンパク質の機能を妨げる自己免疫応答を抑制するのを助ける。
【0035】
(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を使用して、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)を選択的に活性化することによって、本開示のTレギトープ組成物を使用して、種々の不要な免疫応答を抑制することができることが本明細書で示される。その最も単純な形態では、本開示のTレギトープ組成物の全身施用を、例えばMSの再燃、アレルギー反応、移植反応または感染症に対する制御されない応答などの重度の自己免疫反応を制御するのに有用な一般化された免疫抑制剤として使用することができる。
【0036】
例えばそれだけに限らないが、関節リウマチ(RA)に罹患している関節に局所施用される、より制御された施用では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を使用して、限局性自己免疫応答を抑制することができる。本開示のTレギトープ組成物の一定の他のT細胞エピトープへの融合、結合または混和を通して達成される可能性があるような標的化用途では、Tレギトープ組成物が、融合、結合、または混和T細胞エピトープに対する高度に特異的な免疫応答を抑制しながら、免疫系のバランスをそのまま保つことができる。例えば、インスリンなどの自己免疫抗原、ブラジルナッツ抗原などのアレルゲン、または抗体などの抗原タンパク質(IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE分子またはその抗原特異的抗体断片(それだけに限らないが、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディを含む)または置換酵素に融合した本開示のTレギトープ組成物の送達を通して、免疫系は、例えば、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)を誘導する、および/または応答するエフェクターT細胞の表現型を適応制御性T細胞の表現型に変換することによって、共送達抗原を「寛容する」よう訓練され得る。
【0037】
一定の態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を使用して、血友病Aを患っている患者の出血を予防または停止するために使用される第VIII因子補充によって引き起こされる免疫応答を抑制することができる。例えば、第VIII因子補充は、本開示のTレギトープ組成物と(例えば、それだけに限らないが、第VIII因子補充と本開示のTレギトープ組成物の融合、結合もしくは混和、または本発明のTレギトープの第VIII因子補充への挿入および/もしくは連結を通して)投与することができ、本開示のTレギトープ組成物が第VIII因子補充を標的とした免疫応答を抑制する。このような免疫再プログラミングは、血友病Aを患っている患者の出血を予防または停止するために使用される第VIII因子補充を標的とする免疫応答を低減または排除しながら、免疫系のバランスをそのまま保つことができるだろう。
【0038】
上述のように、本開示のTレギトープは循環細胞外タンパク質に由来する。有用であるために、これらのTレギトープは真のT細胞エピトープ(すなわち、MHC分子とTCRの両方に結合することができる)であるべきである。態様では、Tレギトープが、治療効果を有するのに十分大きな既存の制御性T細胞集団に関連しているべきである。複数のMHC対立遺伝子および複数のTCRに結合することができるエピトープである、T細胞エピトープクラスターが、この後の資格を満たすのに重要である。
【0039】
より具体的には、本開示のTレギトープが、凝固第V因子または第VIII因子の成分である。それらの自然状態で、本開示のTレギトープは、免疫応答を予防または終結する内在性TReg(態様では、天然TRegおよび/または適応TRegを含む)と会合およびこれを活性化することができる。これらの凝固第V因子または第VIII因子ペプチドは、凝固第VIII因子の断片と高度に関連している。態様では、血友病Aの患者の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物への曝露によって、凝固第VIII因子に対する免疫応答を予防し、処置された患者が第VIII因子補充の十分な利益を受けられるようにすることができる。さらに、本開示のTレギトープ組成物による処置は、対応する内在性TReg集団(態様では、天然TRegおよび/または適応TRegを含む)を拡大し、これらを第VIII因子由来の相同ペプチドによる活性化に利用可能にし、それによって第VIII因子を標的とするエフェクター応答を抑制することができる。ここに開示される処置は以下の利点を提供する:
1.本開示のTレギトープ組成物による処置は、高度に抗原特異的である(例えば、Tレギトープ組成物による処置は、例えば、対応する内在性TReg集団(態様では、天然TRegおよび/または適応TRegを含む)を高度に抗原特異的に拡大および/または刺激することができる);
2.患者を頻繁に高用量の第VIII因子注入で長期間処置する現在の抗原特異的療法と比較して、効率的で安価な処置レジメン;および
3.高用量の第VIII因子処置が処置患者に免疫寛容を誘導できない場合の第2の防御処置。
【0040】
態様では、本開示は、自己免疫応答を経験している患者に安全に投与される、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)治療用Tレギトープ組成物に関する。請求されるTレギトープ(および前記Tレギトープ組成物内のTレギトープ)の作用機序は自然であり、それらの有効性および安全性を支持している。態様では、本開示のTレギトープが、凝固第V因子および第VIII因子の天然成分であり、それ自体、全てのヒトに自然に存在することを考慮すると、本開示は、処置を必要とする血友病A患者に安全に投与される治療用Tレギトープ組成物に関する。
【0041】
態様では、本開示は、MHC結合傾向およびTCR特異性を保持する、以下の制御性Tレギトープ、その断片、その変異体、およびこのような変異体の断片の1つまたは複数を含む、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)Tレギトープ組成物に関する:
ILTIHFTGHSFIYGK(配列番号1);
IHSIHFSGHVFTVRK(配列番号2);
KIVFKNMASRPYSIY(配列番号3);
FAVFDENKSWYLEDN(配列番号4);
ESNIMSTINGYVPES(配列番号5);
EKDIHSGLIGPLLI(配列番号6);
SHEFHAINGMIYSLP(配列番号7);
IHFTGHSFI(配列番号8);
IHFSGHVFT(配列番号9);
FKNMASRPY(配列番号10);
FDENLSWYL(配列番号11);
IMSTINGYV(配列番号12);
IHSGLIGPL(配列番号13);および
FHAINGMIY(配列番号14)。
【0042】
定義
本発明の理解をさらに促進するために、いくつかの用語および句を以下で定義する。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されている用語などの用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的なまたは過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「生体試料」という用語は、生物からの組織、細胞または分泌物の任意の試料を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「移植」という用語は、ある対象から「移植組織」または「移植片」と呼ばれる細胞または臓器を採取し、それまたはそれらを(通常)異なる対象に入れる過程を指す。移植組織を提供する対象は「ドナー」と呼ばれ、移植組織を受けた対象は「レシピエント」と呼ばれる。同じ種の2つの遺伝的に異なる対象の間で移植された臓器または移植片は、「同種移植片」と呼ばれる。異なる種の対象の間で移植された移植片は、「異種移植片」と呼ばれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「医学的状態」という用語は、それだけに限らないが、処置および/または予防が望ましい1つまたは複数の身体的および/または心理的症状として現れる任意の状態または疾患を含み、以前および新たに同定された疾患ならびに他の障害を含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、がん性細胞、転移性腫瘍細胞、悪性黒色腫、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、または自己免疫もしくは病的炎症の場合は正常なヒト細胞もしくは組織に対する選択的損傷、その破壊、または人体からの排除をもたらす、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の協調作用を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を含む組成物の「有効量」、「治療上有効量」などの用語は、所望の治療的および/または予防的効果を達成するのに十分な量、例えば処置されている疾患に関連する症状の予防または減少をもたらす量である。対象に投与される本開示の組成物の量は、疾患の種類および重症度、ならびに健康全般、年齢、性別、体重および薬物に対する忍容性などの個体の特徴に依存する。この量はまた、疾患の程度、重症度および種類にも依存する。当業者であれば、これらおよび他の因子に応じて適切な投与量を決定することができるだろう。本発明の組成物は、互いに組み合わせて、または1つもしくは複数の追加の治療用化合物と組み合わせて投与することもできる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「制御性T細胞」、「Treg」などの用語は、それだけに限らないが、CD4、CD25およびFoxP3を含む一定の細胞表面マーカーの存在を特徴とする、内在性T細胞のサブセット(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)を意味する。活性化すると、制御性T細胞は、それだけに限らないが、IL-10、TGF-βおよびTNF-αを含む免疫抑制性サイトカインおよびケモカインを分泌する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「T細胞エピトープ」という用語は、長さ7~30アミノ酸で、ヒト白血球抗原(HLA)分子に特異的に結合し、特異的T細胞受容体(TCR)と相互作用することができるMHCリガンドまたはタンパク質決定基を意味する。一般に、T細胞エピトープは直鎖状であり、特定の三次元特性を発現しない。T細胞エピトープは変性溶媒の存在による影響を受けない。T細胞エピトープと相互作用する能力は、インシリコ法によって予測することができる(全て全体が参照により本明細書に組み込まれる、De Groot ASら、(1997)、AIDS Res Hum Retroviruses、13(7):539~41;Schafer JRら、(1998)、Vaccine、16(19):1880~4;De Groot ASら、(2001)、Vaccine、19(31):4385~95;De Groot ARら、(2003)、Vaccine、21(27~30):4486~504)。
【0050】
本明細書で使用される場合、「T細胞エピトープクラスター」という用語は、約4~約40個のMHC結合モチーフを含有するポリペプチドを指す。特定の実施形態では、T細胞エピトープクラスターが、約5~約35個のMHC結合モチーフ、約8~約30個のMHC結合モチーフ、または約10~20個のMHC結合モチーフを含有する。
【0051】
「制御性T細胞エピトープ」(「Tレギトープ」)という用語は、免疫寛容原性応答を引き起こし(Weber CAら、(2009)、Adv Drug Deliv、61(11):965~76)、MHC分子に結合し、循環している内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)と会合および/またはこれらを活性化し、それだけに限らないが、IL-10およびTGF-βおよびTNF-αを含む免疫抑制性サイトカインの発現をもたらすことができる「T細胞エピトープ」を指す。態様では、ここに開示されるTレギトープが、複数のMHC対立遺伝子および複数のTCRに結合することができるエピトープであるT細胞エピトープクラスターである。
【0052】
本明細書で使用される場合、「免疫刺激T細胞エピトープポリペプチド」という用語は、免疫応答、例えば、例えば体液性、T細胞系、または自然免疫応答を誘導することができる分子を指す。態様では、免疫刺激T細胞エピトープポリペプチドが、ヒト凝固第V因子または凝固第VIII因子である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「B細胞エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。B細胞エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。コンフォメーションエピトープと非コンフォメーションエピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
【0054】
本明細書で使用される「対象」という用語は、免疫応答が誘発される任意の生物を指す。対象という用語は、それだけに限らないが、ヒト、ヒト以外の霊長類(チンパンジーおよび他の類人猿ならびにサル種など);家畜(ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなど);飼育哺乳動物(イヌおよびネコなど);実験室動物(マウス、ラットおよびモルモットなどのげっ歯類を含む)を含む。この用語は、特定の年齢も性別も示さない。よって、成体および新生児の対象、ならびに胎児が、男性であろうと女性であろうと、網羅されることが意図される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「MHC複合体」という用語は、HLAリガンドとして知られるポリペプチドの特異的レパートリーと結合し、前記リガンドを細胞表面に輸送することができるタンパク質複合体を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「MHCリガンド」という用語は、1つまたは複数の特異的MHC対立遺伝子に結合することができるポリペプチドを意味する。「HLAリガンド」という用語は、「MHCリガンド」という用語と互換性がある。表面上でMHC/リガンド複合体を発現する細胞は、「抗原提示細胞」(APC)と呼ばれる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「T細胞受容体」または「TCR」という用語は、APCの表面上に提示されるMHC/リガンド複合体の特異的レパートリーと会合することができるT細胞によって発現されるタンパク質複合体を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「MHC結合モチーフ」という用語は、特定のMHC対立遺伝子への結合を予測するタンパク質配列中のアミノ酸のパターンを指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「EpiBar(商標)」という用語は、少なくとも4つの異なるHLA対立遺伝子に結合すると予測される単一の9merフレームを指す。EpiBar(商標)を含有する免疫原性ペプチドの代表例を以下で
図19に示す。
図19は、EpiBarの例および無差別インフルエンザエピトープのEpiMatrix分析を示している。無差別に免疫原性であることが知られているエピトープであるインフルエンザHAペプチドを考える。インフルエンザHAペプチドは、EpiMatrixの8つの対立遺伝子全てについてスコアが非常に高い。そのクラスタースコアは18である。10超のクラスタースコアを有意と見なす。バンド様EpiBarパターンは、無差別エピトープの特徴である。PRYVKQNTL(配列番号60)、RYVKQNTLK(配列番号61)、YVKQNTLKL(配列番号62)、VKQNTLKLA(配列番号63)およびKQNTLKLAT(配列番号64)の結果を
図19に示す。Zスコアは、9merフレームが所与のHLA対立遺伝子に結合する可能性を示す。上位5%の全てのスコアが「ヒット」と見なされ、10%未満の非ヒット(*)は、簡潔にするために
図19では隠されている。
【0060】
[0075]本明細書で使用される場合、「免疫シナプス」という用語は、細胞表面MHC複合体とTCRの両方への所定のT細胞エピトープの同時会合によって形成されるタンパク質複合体を意味する。
【0061】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指し、特定の長さを指さない;よって、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質はポリペプチドの定義に含まれる。本明細書で使用される場合、ポリペプチドは、組換え細胞および非組換え細胞から単離した場合に細胞物質を実質的に含まない場合、または化学合成した場合に化学前駆体もしくは他の化学物質を含まない場合に、「単離」または「精製」されたと言われる。しかしながら、本開示のポリペプチド(例えば、態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい、配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になるポリペプチド、またはその変異体および断片)を、正常では細胞中に会合していない別のポリペプチド(例えば、異種ポリペプチド)に接合、連結または挿入し、さらに「単離」または「精製」することができる。1つまたは複数の本開示のTレギトープに関して本明細書で使用される場合、「異種ポリペプチド」という用語は、1つまたは複数のTレギトープが異種ポリペプチドに対して異種である、または自然には含まれないことを意味することを意図している。例えば、1つまたは複数の本開示のTレギトープ(および/または全体が参照により組み込まれる米国特許第7884184号明細書に開示されるIgG由来Tレギトープなどの1つまたは複数の他のTレギトープ)を、異種ポリペプチド(例えば、異種モノクローナル抗体)に連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入することができる。さらに、1つまたは複数の本開示のTレギトープを、別のポリペプチドに接合、連結、または挿入することができ、前記1つまたは複数の本開示のTレギトープは自然にはポリペプチドに含まれない、および/または前記1つまたは複数の本開示のTレギトープはポリペプチド中の自然の位置に位置していない。ポリペプチドが組換え的に産生される場合、これはまた、培養培地を実質的に含まないことができる、例えば、培養培地がポリペプチド調製物の体積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満となる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「特注のコンピュータプログラム」という用語は、具体的な目的を満たす;典型的には、生データの特定のセットを分析し、特定の科学的質問に答えるように設計されたコンピュータプログラムを指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「zスコア」という用語は、要素が平均からどれだけの標準偏差であるかを示す。zスコアは、以下の式から計算することができる。z=(X-μ)/σ(式中、zはzスコアであり、Xは要素の値であり、μは母平均であり、σは標準偏差である)。
【0064】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が特に明記しない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことを意図している。「または」は「および/または」を意味する。本明細書で使用される場合、「および/または」および「1つまたは複数」という用語は、列挙される関連する項目の任意のおよび全ての組み合わせを含む。例えば、「本開示の配列番号1~14の1つまたは複数」に関する「1つまたは複数」という用語は、配列番号1~14の任意のおよび全ての組み合わせを含む。「またはその組み合わせ」という用語は、前記の要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0065】
本出願の全体を通して、以下の略語および/または頭字語を使用する:
APC 抗原提示細胞
CEF サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルスおよびインフルエンザウイルス
CFSE色素 カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル色素
DMSO ジメチルスルホキシド
DR抗体 抗原D関連抗体
ELISA 酵素結合免疫吸着測定
FACS 蛍光活性化セルソーティング
Fmoc 9-フルオロニルメトキシカルボニル
FV ヒト凝固第V因子
FVIII ヒト凝固第VIII因子
HLA ヒト白血球抗原
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IVIG 静脈内精製免疫グロブリンG抗体
MFI 平均蛍光指数
MHC 主要組織適合複合体
PBMC 末梢血単核球
PI 増殖指数
RPMI ロズウェルパーク記念研究所培地
Teff エフェクターT細胞
TReg 制御性T細胞
TT 破傷風トキソイド
UV 紫外線
【0066】
変異体ポリペプチド(変異体Tレギトープを含む)は、1つまたは複数の置換、欠失、挿入、反転、融合および切断、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なることができる。態様では、変異体Tレギトープが、1つまたは複数の置換、欠失、挿入、反転、融合および切断、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なることができ、但し、前記変異体がMHC結合傾向およびTCR特異性を保持する。
【0067】
本開示は、本発明のTレギトープのポリペプチド断片も含む。本発明はまた、本明細書に記載されるTレギトープの変異体の断片を包含し、但し、前記断片および/または変異体がMHC結合傾向およびTCR特異性を保持する。
【0068】
本開示はまた、ここに開示されるTレギトープの1つまたは複数がその一部であるキメラまたは融合ポリペプチド(態様では、単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい)を提供する。態様では、キメラまたは融合ポリペプチド組成物が、異種ポリペプチド(例えば、それだけに限らないが、IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE分子またはその抗原特異的抗体断片(それだけに限らないが、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディを含む))に連結した1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、TレギトープまたはT細胞エピトープポリペプチド)を含む。前述のように、「異種ポリペプチド」という用語は、1つまたは複数のTレギトープ(例えば、配列番号1~14の1つまたは複数)が異種ポリペプチドに対して異種である、または自然には含まれないことを意味することを意図している。態様では、1つまたは複数のTレギトープが、異種ポリペプチドに挿入されてもよい(例えば、突然変異誘発技術もしくは当技術分野の他の既知の手段を通して)、異種ポリペプチドのC末端に付加されてもよい、および/または異種ポリペプチドのN末端に付加されてもよい。例えば、突然変異誘発によるタンパク質工学は、部位特異的突然変異誘発技術、または当技術分野で知られている他の突然変異誘発技術を使用して実施することができる(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、James A.BranniganおよびAnthony J.Wilkinson.、2002、Protein engineering 20 years on.Nature Reviews Molecular Cell Biology 3、964~970;Turanli-Yildiz B.ら、2012、Protein Engineering Methods and Applications,intechopen.com参照)。態様では、キメラまたは融合ポリペプチドが、異種ポリペプチドに作動可能に連結された1つまたは複数の本開示のTレギトープを含む。「作動可能に連結された」とは、ポリペプチド(例えば、1つまたは複数の本開示のTreg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)と異種タンパク質が、インフレームで融合または化学的に連結またはその他の方法で結合していることを示している。態様では、キメラまたは融合ポリペプチド組成物が、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数を含む配列を有するポリペプチドであって、前記配列番号1~14の1つまたは複数が自然にはポリペプチドに含まれない、および/または前記配列番号1~14の1つまたは複数がポリペプチド中の自然の位置に位置していない、ポリペプチドを含む。態様では、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数が、ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入され得る。態様では、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数が、小分子、薬物、または薬物断片、例えばそれだけに限らないが、定義されたHLAに高い親和性で結合する薬物または薬物断片に接合または連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)され得る。上記キメラ、融合ポリペプチドおよび融合産物組成物の態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる。態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~2の配列1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる。態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0069】
単離ポリペプチド(例えば、単離Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)は、それを自然に発現する細胞から精製する、それを発現するように改変された細胞(組換え体)から精製する、または既知のタンパク質合成方法を使用して合成することができる。一実施形態では、Tレギトープが、組換えDNAまたはRNA技術によって産生される。例えば、Tレギトープをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングし、発現ベクターを宿主細胞に導入し、ポリペプチドが宿主細胞で発現される。次いで、標準的なタンパク質精製技術を使用した適切な精製スキームによって、Tレギトープを細胞から単離することができる。
【0070】
本開示の目的のために、Tレギトープは、例えば、D-立体異性体、非天然アミノ酸;アミノ酸類似体;および模倣物などの天然アミノ酸の修飾形態を含むことができる。さらに、態様では、Tレギトープが、本開示のTレギトープ(T細胞エピトープポリペプチド)のレトロインベルソ(retro-inverso)ペプチドを含むことができる。
【0071】
本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。本開示の他の特徴、目的および利点は、説明および特許請求の範囲から明らかになるだろう。本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に引用される全ての参考文献は、各個々の刊行物、特許または特許出願が全ての目的のために全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別的に示されているのと同程度に、全ての目的のために全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
組成物
態様では、本開示は、本明細書に開示されるポリペプチド(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい、Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される単離、合成もしくは組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物;および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤を含むTレギトープ組成物を提供する。態様では、Tレギトープ組成物が、以下の制御性Tレギトープ(ならびにその断片、変異体およびこのような変異体の断片、但し、前記断片および/または変異体は、MHC結合傾向およびTCR特異性を保持する)の1つまたは複数を含む:
ILTIHFTGHSFIYGK(配列番号1);
IHSIHFSGHVFTVRK(配列番号2);
KIVFKNMASRPYSIY(配列番号3);
FAVFDENKSWYLEDN(配列番号4);
ESNIMSTINGYVPES(配列番号5);
EKDIHSGLIGPLLI(配列番号6);
SHEFHAINGMIYSLP(配列番号7);
IHFTGHSFI(配列番号8);
IHFSGHVFT(配列番号9);
FKNMASRPY(配列番号10);
FDENLSWYL(配列番号11);
IMSTINGYV(配列番号12);
IHSGLIGPL(配列番号13);および
FHAINGMIY(配列番号14)。
【0073】
一態様では、本開示は、一般的なヒトタンパク質に由来するペプチドまたはポリペプチド鎖を含む「Tレギトープ」と呼ばれる新規なクラスのT細胞エピトープ(単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい)を提供する。本開示のTレギトープは、それらのソースタンパク質の既知の変異体の間で高度に保存されている(例えば、既知の変異体の10%超に存在する)。本開示のTレギトープは、EpiMatrix(商標)分析によって同定される少なくとも1つの推定T細胞エピトープを含む。EpiMatrix(商標)は、EpiVax(Providence、Rhode Island)によって開発された独自開発のコンピュータアルゴリズムであり、推定T細胞エピトープの存在についてタンパク質配列をスクリーニングするために使用される。入力配列は、各フレームが、最後で8アミノ酸重複する重複9merフレームに構文解析される。次いで、8つの一般的なクラスII HLA対立遺伝子(DRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301およびDRB1*1501)のパネルに関する予測結合親和性について、結果のフレームのそれぞれがスコアリングされる。生のスコアが、ランダムに生成されたペプチドの大規模な試料のスコアに対して正規化される。結果として得られる「Z」スコアが報告される。態様では、対立遺伝子特異的EpiMatrix(商標)Zスコアが1.64を超える9merペプチド(理論的には任意の試料の上位5%)が、推定T細胞エピトープと見なされる。
【0074】
推定T細胞エピトープのクラスターを含有するペプチドは、インビトロおよびインビボアッセイの検証において試験陽性となる可能性が高くなる。初期EpiMatrix(商標)分析の結果が、Clustimer(商標)アルゴリズムとして知られる第2の独自開発のアルゴリズムを使用して、推定T細胞エピトープ「クラスター」の存在についてさらにスクリーニングされる。Clustimer(商標)アルゴリズムは、統計的に異常に多数の推定T細胞エピトープを含有する任意の所与のアミノ酸配列内に含有されるサブ領域を同定する。典型的なT細胞エピトープ「クラスター」は、長さが約9~およそ30アミノ酸に及び、複数の対立遺伝子に対する親和性および複数の9merフレームにわたる親和性を考慮して、約4~約40くらいの推定T細胞エピトープを含有することができる。総計EpiMatrix(商標)スコアを特定した各エピトープクラスターは、推定T細胞エピトープのスコアを合計し、候補エピトープクラスターの長さおよびランダムに生成された同じ長さのクラスターの予想スコアに基づいて補正係数を差し引くことによって計算される。+10を超えるEpiMatrix(商標)クラスタースコアが有意と見なされる。態様では、本開示のTレギトープが、T細胞エピトープクラスターとして知られるパターンを形成するいくつかの推定T細胞エピトープを含有する。
【0075】
最も反応性のT細胞エピトープクラスターの多くは、「EpiBar(商標)」と呼ばれる特徴を含有する。前記のように、EpiBar(商標)は、少なくとも4つの異なるHLA対立遺伝子に反応性であると予測される単一の9merフレームである。態様では、本開示のTレギトープが、1つまたは複数のEpiBars(商標)を含むことができる。
【0076】
態様では、本開示のTレギトープが、少なくとも中程度の親和性で少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の一般的なHLAクラスII分子に結合する(例えば、態様では、可溶性HLA分子に基づくHLA結合アッセイで200μM未満のIC50)。態様では、本開示のTレギトープが、HLAの少なくとも1つ、および他の態様では2つ以上の対立遺伝子の状況でAPCによって細胞表面に提示されることが可能である。これに関連して、Tレギトープ-HLA複合体は、Tレギトープ-HLA複合体に特異的なTCRを有し、正常な対照の対象で循環している内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)によって認識され得る。態様では、Tレギトープ-HLA複合体の認識により、一致する制御性T細胞が活性化され、制御性サイトカインおよびケモカインが分泌され得る。
【0077】
態様では、本開示は、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」または「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)に関する。「~から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、本開示によるポリペプチドが、配列番号1~14のいずれかによる配列またはその変異体を有することに加えて、MHCリガンドとして機能するペプチドの一部を必ずしも形成していないペプチドの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基であって、但し、Tレギトープとして機能するペプチドの活性を実質的に損なわないものを含有することを意味することを意図している。態様では、ポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~2の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる。態様では、ポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、からなる、またはから本質的になる。態様では、ポリペプチドが、異種ポリペプチド(例えば、それだけに限らないが、抗体(IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE分子またはその抗原特異的抗体断片(それだけに限らないが、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディを含む))に接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入された本開示の配列番号1~14(態様では、配列番号1~14の断片およびその変異体を含む、但し、前記断片および/またはその変異体は、MHC結合傾向およびTCR特異性を保持する)の1つまたは複数を含む。態様では、配列番号1~14の1つまたは複数が、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入され得るが、これが、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と一緒に、接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成されてもよい。態様では、本開示は、配列番号1~14の1つまたは複数を含む配列を有するポリペプチド(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい)であって、前記配列番号1~14の1つまたは複数が自然にはポリペプチドに含まれない、および/または前記配列番号1~14の1つまたは複数がポリペプチド中の自然の位置に位置していない、ポリペプチドに関する。態様では、ポリペプチド(態様では、単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい)が、配列番号1、3~8および10~14の1つまたは複数を含む配列を有し、前記ポリペプチドがヒト凝固第V因子を含まない。態様では、ポリペプチド(態様では、単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい)が、配列番号2または9の1つまたは複数を含む配列を有し、前記単離、合成または組換えポリペプチドがヒト凝固第VIII因子を含まない。態様では、単離、合成または組換えポリペプチドが、配列番号1~14の1つまたは複数を含み、前記配列1~14の1つまたは複数が、自然にはポリペプチドに含まれない、および/または前記配列番号1~14の1つまたは複数がポリペプチド中の自然の位置に位置していない。態様では、本開示の単離、合成、または組換えTレギトープが以下の1つまたは複数を含む:
ILTIHFTGHSFIYGK(配列番号1);
IHSIHFSGHVFTVRK(配列番号2);
KIVFKNMASRPYSIY(配列番号3);
FAVFDENKSWYLEDN(配列番号4);
ESNIMSTINGYVPES(配列番号5);
EKDIHSGLIGPLLI(配列番号6);
SHEFHAINGMIYSLP(配列番号7);
IHFTGHSFI(配列番号8);
IHFSGHVFT(配列番号9);
FKNMASRPY(配列番号10);
FDENLSWYL(配列番号11);
IMSTINGYV(配列番号12);
IHSGLIGPL(配列番号13);
FHAINGMIY(配列番号14);ならびに
その断片、変異体およびこのようなその変異体の断片(但し、前記断片および/または変異体は、MHC結合傾向およびTCR特異性を保持する)。
【0078】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を、均質になるまで精製する、または部分的に精製することができる。しかしながら、Tレギトープ組成物が均質になるまで精製されていない調製物が有用であることが理解される。重要な特徴は、かなりの量の他の成分が存在する場合でさえ、調製物によりTレギトープの所望の機能が可能になることである。よって、本開示は、種々の程度の純度を包含する。一実施形態では、「細胞物質を実質的に含まない」という用語は、約30%未満(乾燥重量)の他のタンパク質(例えば、混入タンパク質)、約20%未満の他のタンパク質、約10%未満の他のタンパク質、約5%未満の他のタンパク質、約4%未満の他のタンパク質、約3%未満の他のタンパク質、約2%未満の他のタンパク質、約1%未満の他のタンパク質、またはこれらの間の任意の値もしくは範囲を有するTレギトープの調製物を含む。
【0079】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物が組換え的に産生される場合、前記Tレギトープ組成物が培養培地を実質的に含まないこともできる、例えば、培養培地が、Tレギトープ、核酸、またはキメラもしくは融合ポリペプチド調製物の体積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満となる。「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、Tレギトープの合成に関与する化学前駆体または他の化学物質から分離されているポリペプチド、核酸、またはキメラもしくは融合ポリペプチドの調製物を含む。「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、例えば、約30%未満(乾燥重量)の化学前駆体もしくは他の化学物質、約20%未満の化学前駆体もしくは他の化学物質、約10%未満の化学前駆体もしくは他の化学物質、約5%未満の化学前駆体もしくは他の化学物質、約4%未満の化学前駆体もしくは他の化学物質、約3%未満の化学前駆体もしくは他の化学物質、約2%未満の化学前駆体もしくは他の化学物質、または約1%未満の化学前駆体もしくは他の化学物質を有するTレギトープ、核酸、またはキメラもしくは融合ポリペプチドの調製物を含むことができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列が少なくとも約45~55%、典型的には少なくとも約70~75%、より典型的には少なくとも約80~85%、より典型的には約90%超、より典型的には95%超またはそれ以上相同または同一である場合、2つのポリペプチド(またはポリペプチドの領域)が実質的に相同または同一である。2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の%相同性または同一性を決定するために、配列を最適な比較目的で整列させる(例えば、他のポリペプチドまたは核酸分子との最適なアラインメントのために、あるポリペプチドまたは核酸分子の配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。ある配列中の位置が、他の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、分子はその位置で相同である。本明細書で使用される場合、アミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」と同等である。2つの配列間の%相同性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(例えば、%相同性は、同一の位置の数/位置の総数×100に等しい)。
【0081】
態様では、本開示はまた、より低い程度の同一性を有するが、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドによって実施される同じ機能の1つまたは複数を実施する、特に任意のこのような変異体がMHC結合傾向およびTCR特異性を保持するのに十分な類似性を有するポリペプチド(例えば、本明細書に開示されるTレギトープおよびTレギトープ組成物)を包含する。類似性は、保存されたアミノ酸置換によって決定される。このような置換は、ポリペプチド中の所与のアミノ酸を同様の特徴の別のアミノ酸で置換するものである。保存的置換は表現型的にサイレントである可能性が高い。保存的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの中での互いの置換;ヒドロキシル残基SerとThrの相互交換、酸性残基AspとGluの交換、アミド残基AsnとGlnとの間の置換、塩基性残基LysとArgの交換、ならびに芳香族残基PheとTyrの間の置換である。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントである可能性が高いかについての指針が見出されている(Bowie JUら、(1990)、Science、247(4948):130610、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0082】
態様では、変異体ポリペプチドが、1つまたは複数の置換、欠失、挿入、反転、融合および切断、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なることができる。変異体ポリペプチドは、完全に機能的であることができる(例えば、MHC結合傾向およびTCR特異性を保持する)、または1つもしくは複数の活性において機能を欠くことができる。完全に機能的な変異体は、典型的には保存的変異または重要でない残基もしくは重要でない領域での変異のみを含有し;この場合、典型的には、MHC結合を提供したMHC接触残基が保存されている。機能的変異体は、機能に変化がない、または取るに足らない変化をもたらす類似のアミノ酸の置換を含有することもできる(例えば、MHC結合傾向およびTCR特異性を保持する)。あるいは、このような置換は、機能にある程度プラスまたはマイナスの影響を及ぼし得る。非機能的変異体は、典型的には1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、反転、もしくは切断、または重要な残基もしくは重要な領域;この場合、典型的にはTCR接触残基での置換、挿入、反転、もしくは欠失を含有する。
【0083】
態様では、本開示はまた、ここに開示されるTレギトープのポリペプチド断片を含む、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)Tレギトープ組成物を含む。態様では、本開示は、本明細書に記載されるTレギトープの変異体の断片も包含する。態様では、本明細書で使用される場合、断片が少なくとも約9個の連続アミノ酸を含む。有用な断片(および本明細書に記載されるTレギトープの変異体の断片)には、Tレギトープの生物学的活性、特にMHC結合傾向およびTCR特異性の1つまたは複数を保持するものが含まれる。生物学的に活性な断片は、例えば、約9、12、15、16、20もしくは30またはそれ以上のアミノ酸長(この間の任意の値または範囲を含む)である。断片は、別個のもの(他のアミノ酸にもポリペプチドにも融合していない)であってもよい、またはより大きなポリペプチド内にあってもよい。単一のより大きなポリペプチド内にいくつかの断片が含まれていてもよい。態様では、宿主での発現のために設計された断片が、ポリペプチド断片のアミノ末端に融合した異種プレおよびプロポリペプチド領域、および断片のカルボキシル末端に融合した追加の領域を有することができる。
【0084】
態様では、本開示のTレギトープが、その対立遺伝子もしくは配列変異体(「突然変異体」)または類似体を含むことができる、あるいは化学修飾(例えば、ペグ化、グリコシル化)を含むことができる。態様では、突然変異体が、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドによって実施される同じ機能、特にMHC結合傾向およびTCR特異性を保持する。態様では、突然変異体が、MHC分子への増強された結合を提供することができる。態様では、突然変異体が、TCRへの増強した結合をもたらすことができる。別の例では、突然変異体が、MHC分子および/またはTCRへの結合の減少をもたらすことができる。また、結合するが、TCRを介したシグナル伝達を許可しない突然変異体も考えられる。
【0085】
態様では、本開示はまた、キメラまたは融合ポリペプチド組成物を提供する。態様では、本開示は、ここに開示されるTレギトープの1つまたは複数がその一部である単離、合成、または組換えキメラまたは融合ポリペプチド組成物を提供する。態様では、キメラまたは融合ポリペプチド組成物が、異種ポリペプチド(例えば、それだけに限らないが、抗体(IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE分子またはその抗原特異的抗体断片(それだけに限らないが、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディを含む)であり得る)に接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入された1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、TレギトープまたはT細胞エピトープポリペプチド)を含む。1つまたは複数の本開示のTレギトープに関して前記のように、「異種ポリペプチド」という用語は、1つまたは複数の本開示のTレギトープが異種ポリペプチドに対して異種である、または自然には含まれないことを意味することを意図している。態様では、1つまたは複数のここに開示されるポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、異種ポリペプチドに挿入されてもよい(例えば、組換え技術、突然変異誘発技術もしくは当技術分野の他の既知の手段を通して)、異種ポリペプチドのC末端に付加されてもよい、および/または異種ポリペプチドのN末端に付加されてもよい。例えば、突然変異誘発によるタンパク質工学は、部位特異的突然変異誘発技術、または当技術分野で知られている他の突然変異誘発技術を使用して実施することができる(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、James A.BranniganおよびAnthony J.Wilkinson.、2002、Protein engineering 20 years on.Nature Reviews Molecular Cell Biology 3、964~970;Turanli-Yildiz B.ら、2012、Protein Engineering Methods and Applications,intechopen.com参照)。態様では、キメラまたは融合ポリペプチドが、異種ポリペプチドに作動可能に連結された1つまたは複数のここに開示されるポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)を含む。「作動可能に連結された」とは、1つまたは複数のここに開示されるポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)と異種ポリペプチドが、インフレームで融合または化学的に連結またはその他の方法で結合していることを示している。上記単離、合成または組換えキメラまたは融合ポリペプチド組成物の態様では、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。キメラまたは融合ポリペプチド組成物の態様では、配列番号1~14の1つまたは複数が、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入され得るが、これが、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と一緒に、接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成されてもよい。態様では、キメラまたは融合ポリペプチド組成物が、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数を含む配列を有するポリペプチドであって、前記配列番号1~14の1つまたは複数が自然にはポリペプチドに含まれない、および/または前記配列番号1~14の1つまたは複数がポリペプチド中の自然の位置に位置していない、ポリペプチドを含む。態様では、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数が、ポリペプチドに接合、連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)、および/または挿入され得る。態様では、キメラまたは融合ポリペプチド組成物が、Tレギトープと実質的に相同ではないアミノ酸配列を有する異種ポリペプチドに作動可能に連結された1つまたは複数のここに開示されるTレギトープを含む。態様では、キメラまたは融合ポリペプチドが、Tレギトープ自体の機能に影響を及ぼさない。例えば、融合ポリペプチドは、Tレギトープ配列がGST配列のC末端に融合しているGST融合ポリペプチドであり得る。他の種類の融合ポリペプチドには、それだけに限らないが、酵素的融合ポリペプチド、例えばβ-ガラクトシダーゼ融合体、酵母ツーハイブリッドGAL融合体、ポリHis融合体およびIg融合体が含まれる。このような融合ポリペプチド、特にポリ-His融合体またはアフィニティータグ融合体は、組換えポリペプチドの精製を促進することができる。一定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)では、異種シグナル配列を使用することによって、ポリペプチドの発現および/または分泌を増加させることができる。したがって、態様では、融合ポリペプチドが、そのN末端に異種シグナル配列を含有する。上記組換えキメラまたは融合ポリペプチド組成物の態様では、異種ポリペプチドまたはポリペプチドが、生物学的に活性な分子を含む。態様では、生物学的に活性な分子が、免疫原性分子、T細胞エピトープ、ウイルスタンパク質および細菌タンパク質からなる群から選択される。態様では、生物学的に活性な分子が、ヒト凝固第VIII因子補充である。態様では、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数が、小分子、薬物または薬物断片に接合または連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)され得る。例えば、本開示の配列番号1~14の1つまたは複数が、定義されたHLAに高い親和性で結合する薬物または薬物断片に接合または連結(例えば、インフレームで融合、化学的に連結、もしくはその他の方法で結合)され得る。上記キメラもしくは融合ポリペプチド組成物または融合産物の態様では、そこに含まれる1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。上記キメラもしくは融合ポリペプチド組成物または融合産物の態様では、そこに含まれる1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~2の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。上記キメラもしくは融合ポリペプチド組成物または融合産物の態様では、そこに含まれる1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。上記キメラもしくは融合ポリペプチド組成物または融合産物の態様では、キメラもしくは融合ポリペプチド組成物または融合産物が、組換えであっても、単離されていても、および/または合成であってもよい。
【0086】
キメラまたは融合ポリペプチド組成物は、当技術分野で知られている標準的な組換えDNAまたはRNA技術によって生成することができる。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAまたはRNA断片を、従来の技術に従ってインフレームで一緒に連結することができる。別の実施形態では、融合遺伝子を、自動化DNA合成装置を含む従来の技術によって合成することができる。あるいは、2つの連続核酸断片の間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して、核酸断片のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実行し、次いで、これらをアニーリングし、再増幅してキメラ核酸配列を生成することができる。(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、(第2版、1992)、FM Asubelら(編者)、Green Publication Associates、New York、NY(出版)、ISBN:9780471566355)。さらに、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)(例えば、1つまたは複数の本開示のTレギトープは、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる)を、組換え技術、合成重合技術、突然変異誘発技術または当技術分野の他の既知の標準的な技術を通して、異種ポリペプチドに挿入する、またはポリペプチドの自然には生じない位置に挿入することができる。例えば、突然変異誘発によるタンパク質工学は、部位特異的突然変異誘発技術、または当技術分野で知られている他の突然変異誘発技術を使用して実施することができる(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、James A.BranniganおよびAnthony J.Wilkinson.、2002、Protein engineering 20 years on.Nature Reviews Molecular Cell Biology 3、964~970;Turanli-Yildiz B.ら、2012、Protein Engineering Methods and Applications,intechopen.com参照)。
【0087】
さらに、融合部分(例えば、GSTタンパク質)を既にコードしている多くの発現ベクターが市販されている。本発明のTレギトープをコードする核酸分子を、融合部分が少なくとも1つのTレギトープにインフレームで連結されるように、このような発現ベクターにクローニングすることができる。
【0088】
態様では、本開示はまた、1つまたは複数の本開示のポリペプチドおよび/または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物を全体的または部分的にコードする核酸(例えば、その全てが単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよいDNA、RNA、ベクター、ウイルス、またはハイブリッド)を提供する。1つまたは複数の本開示のポリペプチドまたは本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物をコードする核酸の態様では、1つまたは複数のポリペプチドまたは組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。態様では、核酸が、発現カセット、プラスミド、および発現ベクター、または組換えウイルスをさらに含む、またはその中に含有され、場合により核酸、または発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルスが、細胞、場合によりヒト細胞または非ヒト細胞に含有され、場合により細胞が核酸、または発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルスで形質転換される。態様では、細胞が、例えば、本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド);本明細書に開示される単離、合成もしくは組換え核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、もしくは組換えウイルス;および/または本明細書に開示される単離、合成もしくは組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物の1つまたは複数に形質導入、トランスフェクト、またはこれらを含有するよう操作される。態様では、細胞が哺乳動物細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞であり得る。態様では、本開示の核酸分子をベクターに挿入し、例えば、発現ベクターまたは遺伝子療法ベクターとして使用することができる。遺伝子療法ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5328470号明細書)または定位的注射(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Chen SHら、(1994)、Proc Natl Acad Sci USA、91(8):3054~7)によって対象に送達することができる。遺伝子療法ベクターの製剤は、許容される希釈剤中の遺伝子療法ベクターを含むことができる、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、組換え細胞から完全な遺伝子送達ベクター、例えばレトロウイルスベクターをインタクトで作製することができる場合、製剤は遺伝子送達システムを産生する1つまたは複数の細胞を含むことができる。このような医薬組成物を、投与のための説明書と共に容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。少なくとも1つの本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド)および/または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチドを全体的または部分的にコードする上記の核酸(例えば、DNA、RNA、ベクター、ウイルス、またはこれらのハイブリッド)の態様では、核酸が、配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になるポリペプチド;配列番号1~2の1つもしくは複数を含む、からなる、もしくはから本質的になるポリペプチド;または配列番号1を含む、からなる、もしくはから本質的になるポリペプチドの1つまたは複数をコードする。態様では、本開示は、1つまたは複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、もしくはT細胞エピトープポリペプチド)または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチド組成物をコードする本開示の核酸、例えばそれだけに限らないが、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなる、またはから本質的になる少なくとも1つの制御性T細胞エピトープをコードする核酸(DNAまたはRNA)を含むベクターに関する。態様では、本開示は、本開示のベクターを含む細胞に関する。態様では、細胞が哺乳動物細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞であり得る。
【0089】
1つまたは1つまたは複数の本開示のポリペプチドおよび/または本開示のキメラもしくは融合ポリペプチドを全体的または部分的にコードする本明細書で提供される核酸(RNA、DNA、ベクター、ウイルスまたはそのハイブリッド)は、種々の供給源から単離、遺伝子操作、増幅、合成的に生成、および/または組換え的に発現/産生することができる。これらの核酸から産生された組換えポリペプチドを、個別に単離またはクローニングし、所望の活性について試験することができる。例えば、インビトロ、細菌、真菌、哺乳動物、酵母、昆虫または植物細胞発現系を含む任意の組換え発現系を使用することができる。態様では、本明細書で提供される核酸が、周知の化学合成技術によってインビトロで合成される(例えば、全て全体が参照により本明細書に組み込まれる、Adams(1983)J.Am.Chem.Soc.105:661;Belousov(1997)Nucleic Acids Res.25:3440~3444;Frenkel(1995)Free Radic.Biol.Med.19:373~380;Blommers(1994)Biochemistry 33:7886~7896;Narang(1979)Meth.Enzymol.68:90;Brown(1979)Meth.Enzymol.68:109;Beaucage(1981)Tetra.Lett.22:1859;米国特許第4458066号明細書に記載される)。さらに、本明細書で提供される核酸の操作のための技術、例えば、サブクローニング、標識プローブ(例えば、クレノウポリメラーゼを使用したランダム-プライマー標識、ニックトランスレーション、増幅)、配列決定、ハイブリダイゼーションなどは、科学文献および特許文献に十分記載されている(例えば、全て全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook編.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版),Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory、(1989);Current Protocols In Molecular Biology、Ausubel編John Wiley&Sons,Inc.、New York(1997);Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology:Hybridization With Nucleic Acid Probes,Part I.Theory and Nucleic Acid Preparation、Tijssen編Elsevier、N.Y.(1993)参照)。
【0090】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物が、抗原、アレルゲン、または治療用タンパク質と混和して合わせられる。このような組成物は、抗原、アレルゲン、または治療用タンパク質との混和物の局所送達が、対象の抗原またはアレルゲンに対する寛容増加をもたらす、それを必要とする対象の抗原、アレルゲン、または治療用タンパク質に対する寛容を誘導する方法に有用であり、抗原、アレルゲン、または治療用タンパク質に対する寛容を誘導する適切な賦形剤と共に送達される。この組み合わせは、本開示のTレギトープ組成物が共有結合的もしくは非共有結合的に結合した状態で投与することができる、またはこれらを混和物、または分岐もしくは化学連結調製物として投与することができる。このような組成物は、抗原またはアレルゲンまたは治療用タンパク質(例えば、それだけに限らないが、インスリン、凝固第VIII因子(FVIII)および/または凝固第VIII因子補充)に対する寛容を誘導する方法に有用である。例えば、このような組成物はそれを必要とする対象で有用であり、抗原またはアレルゲンまたは治療用タンパク質との混和物の局所送達が、対象の抗原またはアレルゲンまたは治療用タンパク質に対する寛容増加をもたらし、抗原またはアレルゲンまたは治療用タンパク質に対する寛容を誘導する適切な賦形剤と共に送達される。態様では、本開示のTレギトープ組成物が、T細胞依存的に治療用血液凝固タンパク質に対する免疫応答を抑制する目的のために、治療用血液凝固タンパク質と組み合わせられている。この組み合わせは、本開示のTレギトープ組成物が共有結合的もしくは非共有結合的に結合した状態で投与することができる、またはこれらを混和物として投与することができる。このような組成物は、治療用血液凝固タンパク質との混和物の局所送達が、対象の治療用血液凝固タンパク質に対する寛容増加をもたらす、それを必要とする対象の治療用血液凝固タンパク質に対する寛容を誘導する方法に有用であり、治療用血液凝固タンパク質に対する寛容を誘導する適切な賦形剤と共に送達される。抗原もしくはアレルゲンもしくは治療用タンパク質と混和して合わせられた、または抗原もしくはアレルゲンもしくは治療用タンパク質と共有結合的もしくは非共有結合的に結合した上記Tレギトープ組成物の態様では、1つまたは複数のそこに含まれる本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)が、配列番号1~14の1つまたは複数を含む、からなるまたはから本質的になる;配列番号1~2の1つまたは複数、特に配列番号1を含む、からなる、またはから本質的になる配列を有する。
【0091】
医薬組成物および製剤
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい)の1つまたは複数を含む)本明細書のTレギトープ組成物が、医薬組成物または製剤に含まれ得る。態様では、医薬組成物または製剤が一般に、本開示のTレギトープ組成物と、薬学的に許容される担体および/または賦形剤とを含む。態様では、前記医薬組成物が投与に適している。薬学的に許容される担体および/または賦形剤は、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定される。したがって、ここに開示されるTレギトープ組成物を投与するための医薬組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、(第18版、1990)、Mack Publishing Co.、Easton、PA出版参照)。態様では、医薬組成物が一般に、滅菌、実質的に等張で、米国食品医薬品局の全ての適正製造基準(GMP)規制に完全に準拠して製剤化される。
【0092】
「薬学的に許容される」、「生理学的に許容される」という用語、およびこれらの文法的変形は、これらが組成物、担体、賦形剤および試薬に言及する場合、互換的に使用され、材料が、組成物の投与を禁止する程度までの望ましくない生理学的効果をもたらすことなく、対象への投与が可能であることを表す。例えば、「薬学的に許容される賦形剤」は、例えば、一般的に安全で、非毒性で、望ましい医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用およびヒト医薬使用に許容される賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合はガス状であり得る。当業者であれば、本開示の特定のTレギトープ組成物の投与の適切なタイミング、順序および投与量を決定することができるだろう。
【0093】
態様では、このような担体または希釈剤の好ましい例としては、それだけに限らないが、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび非水性ビヒクル(不揮発性油など)も使用することができる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および化合物の使用は、当技術分野で周知である。従来の培地または化合物が、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のおよび上で前記のTレギトープ組成物と不適合性である限りを除いて、組成物へのその使用が考えられる。補助活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0094】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示の本開示のTレギトープ組成物が、意図した投与経路と適合するよう製剤化される。本開示のTレギトープ組成物は、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内;経膣;筋肉内経路によりまたは吸入剤として投与することができる。態様では、本開示のTレギトープ組成物を、沈着物が蓄積した特定の組織に直接注射することができる(例えば、頭蓋内注射)。他の態様では、筋肉内注射または静脈内注入が、本開示のTレギトープ組成物の投与に使用され得る。いくつかの方法では、本開示のTレギトープ組成物が、頭蓋に直接注射される。いくつかの方法では、本開示のTレギトープ組成物が、徐放性組成物または装置、例えば、それだけに限らないが、Medipad(商標)装置として投与される。
【0095】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を、場合により本明細書に記載される種々の医学的状態の処置に少なくとも部分的に有効な他の薬剤と組み合わせて投与することができる。例えば、対象の中枢神経系への投与の場合、本開示のTレギトープ組成物を、血液脳関門を横切る本発明の薬剤の通過を増加させる他の薬剤と合わせて投与することもできる。
【0096】
態様では、非経口、皮内、または皮下施用に使用される溶液または懸濁液が、それだけに限らないが、以下の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌化合物;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化合物;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調整するための化合物。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。賦形剤の例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、水、エタノール、DMSO、グリコール、プロピレン、脱脂乳などが挙げられる。組成物はまた、pH緩衝試薬、および湿潤剤または乳化剤を含有することもできる。
【0097】
態様では、非経口製剤を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または複数回投与バイアルに封入することができる。
【0098】
態様では、注射使用に適した医薬組成物または製剤が、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合で、組成物は滅菌であり、容易な注射針通過性(syringeability)が存在する程度まで流動性であるべきである。これは、製造および貯蔵の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護される。態様では、Tレギトープ製剤が、凝集体、断片、分解産物および翻訳後修飾を、これらの不純物がHLAに結合し、純粋なTレギトープと同様に機能すると予想される同族T細胞に同じTCR面を提示する程度まで含み得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌および抗真菌化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張化合物、例えば糖、多価アルコール、例えばマニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいだろう。注射用組成物の持続的吸収を、組成物中に吸収を遅延させる化合物、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0099】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を、必要に応じて、上に列挙される成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒に必要量組み込み、引き続いて滅菌濾過することによって、滅菌注射溶液を調製することができる。一般に、分散液は、結合剤を、塩基性分散媒および上記で列挙したものの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法は、予め滅菌濾過したその溶液からの有効成分と任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。さらに、本開示のTレギトープ組成物は、有効成分の徐放またはパルス放出を可能にするような様式で製剤化することができるデポー注射またはインプラント調製物の形態で投与することができる。
【0100】
態様では、経口組成物が、一般に不活性希釈剤または食用担体を含み、ゼラチンカプセルに封入する、または錠剤に圧縮することができる。態様では、経口治療投与の目的のために、結合剤を賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、うがい薬として使用するための流体担体を使用して調製することもでき、この場合、流体担体中の化合物が経口施用され、すすがれ、吐き出されるまたは飲み込まれる。薬学的に適合性の結合化合物、および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。態様では、錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなどが、以下の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含有することができる:微結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogelもしくはコーンスターチなどの崩壊化合物;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味化合物;またはペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香味剤などの香味化合物。
【0101】
吸入による投与の場合、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達することができる。
【0102】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物の全身投与が、経粘膜または経皮手段によることもできる。経粘膜または経皮投与の場合、浸透する障壁に適した浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は一般に当技術分野で知られており、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤の使用を通して達成することができる。経皮投与の場合、Tレギトープが軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化され、当技術分野で一般的に知られているように局所的にまたは経皮パッチ技術を通して施用され得る。
【0103】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を、直腸送達用の坐剤(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0104】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物が、Tレギトープ組成物を体からの急速な排除から保護する担体、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤を用いて調製される。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製する方法は、当業者には明らかであるだろう。材料は、例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を使用した感染細胞を標的としたリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に知られている方法に従って調製することができる(全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4522811号明細書)。態様では、本開示のTレギトープ組成物を、所望の部位へのTレギトープ組成物の徐放を可能にする生体高分子固体支持体内に埋め込む、またはこれに連結させることができる。
【0105】
態様では、投与の容易さおよび投与量の均一性のために経口または非経口組成物を投薬単位形態に製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、処置される対象のための単位投与量として適した物理的離散単位を指す;各単位は、必要な医薬担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の結合剤を含有する。本開示の投与単位形態の詳細は、結合剤の固有の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに対象を処置するためにこのようなTレギトープ組成物を調合する分野に固有の制限によって指示され、直接依存する。
【0106】
態様では、1つまたは複数の本明細書に開示されるポリペプチド(態様では、単離されていても、合成であっても、または組換えであってもよい、Treg活性化制御性T細胞エピトープ、TレギトープまたはT細胞エピトープポリペプチド)を、Tレギトープを含む単離樹状細胞(DC)のエキソビボパルシング、引き続いてパルス細胞の患者への再注入によって患者に投与することもできる。これらは、当業者に知られている方法に従って調製することができる(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Butterfield、(2013)、Front Immunol、4:454およびDissanayakeら、(2014)、PLoS One、9(3)1~10参照)。これらの再注入は、上記の方法および組成物によって投与され得る。
【0107】
Tレギトープ組成物を使用する方法
(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物で制御性T細胞を刺激することは、対応する内在性TReg集団(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)を刺激、誘導、および/または拡大することができ、態様では、以下のサイトカインおよびケモカインの1つまたは複数の分泌増加をもたらす:IL-10、IL-35、TGF-β、TNF-αおよびMCP1。態様では、刺激が、対応する内在性TReg集団(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)によるIL-2Rαの発現上昇およびエフェクター細胞に対するIL-2の枯渇をもたらすことができる。さらなる態様では、刺激が、対応する内在性TReg集団(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)によるパーフォリングランザイムの増加をもたらし、このようなTreg集団がTエフェクター細胞および他の免疫刺激細胞を殺傷することを可能にすることができる。なおさらなる態様では、このような刺激が、対応する内在性TReg集団(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)による免疫抑制アデノシンの産生をもたらすことができる。他の態様では、このような刺激が、樹状細胞上の同時刺激分子に結合し、これを除去する対応する内在性TReg集団(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)をもたらし、樹状細胞機能の阻害をもたらすことができる。さらに、態様では、このような刺激が、対応する内在性TReg集団(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)による、樹状細胞および他の細胞集団、例えば、それだけに限らないが、内皮細胞上のチェックポイント分子のTReg誘導上方制御をもたらすことができる。追加の態様では、このような刺激が、B制御細胞のTreg刺激をもたらすことができる。B制御細胞(「B-reg」)は、CD1d、CD5の発現、およびIL-10の分泌を特徴とする抗炎症効果を担う細胞である。B-regはまた、Tim-1の発現によっても同定され、Tim-1ライゲーションを通して誘導され、寛容を促進することができる。B-regである能力は、toll様受容体、CD40リガンドなどの多くの刺激因子によって駆動されることが示された。しかしながら、B-regの完全な特性評価は進行中である。B-regはまた、高レベルのCD25、CD86、およびTGF-βも発現する。制御性T細胞によるこのような制御性サイトカインおよびケモカインの分泌の増加、ならびに上記の他の活性が、制御性T細胞の特徴である。態様では、本開示のTレギトープ組成物によって活性化される制御性T細胞が、CD4+CD25+FOXP3表現型を発現し得る。本開示のTレギトープ組成物によって活性化される制御性T細胞は、抗原特異的Th1またはTh2関連サイトカインレベル、主にINF-γ、IL-4、およびIL-5の低下によって、ならびにCFSE希釈および/または細胞溶解活性によって測定される抗原特異的Tエフェクター細胞の増殖および/またはエフェクター機能の低下によって測定されるエキソビボでのTエフェクター免疫応答を直接抑制する。態様では、本開示のTレギトープ組成物によって活性化される制御性T細胞が、抗原特異的Th1もしくはTh2関連サイトカインレベルの低下(ELISAアッセイによって測定される)、抗原特異的Tエフェクター細胞レベルの低下(EliSpotアッセイによって測定される)、細胞溶解活性の低下、および/またはタンパク質抗原の抗体価の低下によって測定されるインビボでのTエフェクター免疫応答を直接抑制する。
【0108】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物によって活性化される自然制御性T細胞が、適応TReg細胞の発達を刺激する。態様では、抗原の存在下で末梢T細胞を本開示のTレギトープ組成物と共インキュベートすると、抗原特異的CD4+/CD25+T細胞が拡大し、これらの細胞におけるFoxp3遺伝子またはFoxp3タンパク質の発現が上方制御され、インビトロでの抗原特異的Tエフェクター細胞の活性化が抑制される。態様では、本開示のTレギトープ組成物が、T制御1型(Tr1)細胞の活性化および/または拡大をもたらし得る。Tr1細胞は、いくつかの免疫媒介疾患において強力な免疫抑制能力を有する(RoncaroloおよびBattaglia、2007、Nat Rev Immunol 7、585~598;Roncaroloら、2011、Immunol Rev 241、145~163;Potら、2011、Semin Immunol 23、202~208)。高レベルのIL-10の分泌、およびグランザイムBを介した骨髄抗原提示細胞(APC)の殺傷が、Tr1媒介抑制の主な機序である(Grouxら、1997、Nature 389、737~742;Magnaniら、2011 Eur J Immunol 41、1652~1662)。Tr1細胞は、固有のサイトカインプロファイルおよび制御機能により、Tヘルパー(TH)1、TH2およびTH17細胞と区別される。Tr1細胞は、それぞれTH2およびTH17細胞の特徴サイトカインであるIL-4およびIL-17よりも高レベルのIL-10を分泌することが示されている。Tr1細胞はまた、低レベルのIL-2も分泌することができ、局所サイトカイン環境に応じて、可変レベルの重要なTH1サイトカインであるIFN-γを合わせて産生することができる(Roncaroloら、2011、Immunol Rev 241、145~163)。FOXP3は、活性化時に発現が低く、一過的であるため、Tr1細胞のバイオマーカーではない。IL-10産生Tr1細胞は、ICOS(Haringerら、2009、J Exp Med 206、1009~1017)およびPD-1(Akdisら、2004、J Exp Med 199、1567~1575)を発現するが、これらのマーカーは特異的ではない(Maynardら、2007、Nat Immunol 8、931~941)。最晩期活性化抗原(VLA)-2のα2インテグリンサブユニットであるCD49bは、IL-10産生T細胞のマーカーとして提案されている(Charbonnierら、2006、J Immunol 177、3806~3813)が、ヒトTH17細胞でも発現される(Boisvertら、2010、Eur J Immunol 40、2710~2719)。さらに、マウスCD49b+T細胞はIL-10を分泌する(Charbonnierら、2006、J Immunol 177、3806~3813)が、炎症性サイトカインも分泌する(Kassiotisら、2006、J Immunol 177、968~975)。MHCクラスII分子に高い親和性で結合するCD4ホモログであるリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、マウスIL-10産生CD4+T細胞によって発現される(Okamuraら、2009、Proc Natl Acad Sci USA 106、13974~13979)が、活性化エフェクターT細胞(WorkmanおよびVignali、2005、J Immunol 174、688~695;Bettiniら、2011、J Immunol 187、3493~3498;Bruniquelら、1998、Immunogenetics 48、116~124;Leeら、2012、Nat Immunol 13、991~999)およびFOXP3+制御性T細胞(Treg)(Camisaschiら、2010、J Immunol 184、6545~6551)によっても発現される。近年、ヒトTr1細胞がCD226(DNAM-1)を発現し、これが骨髄APCの特異的殺傷に関与していることが示された(Magnaniら、2011 Eur J Immunol 41、1652~1662)。さらなる態様では、本開示のTレギトープ組成物が、TGF-β分泌Th3細胞、制御性NKT細胞、制御性CD8+T細胞、ダブルネガティブ制御性T細胞の活性化および/または拡大をもたらし得る。「Th3細胞」は、以下の表現型CD4+FoxP3+を有し、活性化時に高レベルのTGF-β、一定量のIL-4およびIL-10を分泌でき、IFN-γもIL-2も分泌しない細胞を指す。これらの細胞はTGF-β由来である。「制御性NKT細胞」は、静止時に以下の表現型CD161+CD56+CD16+およびVα24/Vβ11 TCRを有する細胞を指す。「制御性CD8+T細胞」は、静止時に以下の表現型CD8+CD122+を有し、活性化時に高レベルのIL-10を分泌することができる細胞を指す。「ダブルネガティブ制御性T細胞」は、静止時に以下の表現型TCRαβ+CD4-CD8-を有する細胞を指す。
【0109】
態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物が、モノクローナル抗体、タンパク質治療薬、自己免疫応答を促進する自己抗原、アレルゲン、移植組織に対する免疫応答を制御するために、および寛容が所望の結果である他の用途で有用である。態様では、本開示のTレギトープ組成物が、血友病Aを患っている患者の出血を予防または停止するために使用される第VIII因子補充によって引き起こされる免疫応答を制御するのに有用である。
【0110】
態様では、本開示のTレギトープが、MHCクラスII分子に結合し、MHCクラスII分子の状況でTCRと会合し、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む)を活性化することができる。
【0111】
それを必要とする対象の免疫応答の抑制.態様では、本開示は、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象の制御性T細胞(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む内在性TReg)を刺激、誘導および/または拡大する、ならびに/あるいはそれを必要とする対象の免疫応答を抑制する方法に関する。
【0112】
態様では、本開示は、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象の制御性T細胞(例えば、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TRegを含む))を刺激/誘導して免疫応答を抑制する方法に関する。態様では、免疫応答が、少なくとも1つの治療用タンパク質による1つまたは複数の治療的処置、ワクチンによる処置(特に、有害事象がワクチン接種から生じる状況)、または少なくとも1つの抗原による処置の結果である。特定の実施形態では、免疫応答が、凝固第VIII第因子補充による1つまたは複数の治療的処置の結果である。よって、1つまたは複数の本開示のTレギトープ組成物の投与を使用して、血友病Aを患っている患者の既に確立された免疫応答の発生を予防するまたは既に確立された免疫応答を終了させて、第VIII因子(および凝固第VIII因子補充)に対する寛容誘導を確立することができる。別の態様では、本開示は、T細胞依存的に治療用血液凝固タンパク質に対する免疫応答を抑制する目的のために、治療用血液凝固タンパク質(例えば、凝固第VIII因子補充)と組み合わせて本開示のTレギトープ組成物を使用する方法を提供する。この組み合わせは、本開示のTレギトープ組成物が共有結合的もしくは非共有結合的に結合した状態で投与することができる、またはこれらを混和物として投与することができる。別の態様では、本開示のTレギトープ組成物の投与が、1つまたは複数の抗原提示細胞を制御性表現型に、1つまたは複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせ、樹状細胞または抗原提示細胞におけるCD11cおよびHLA-DR発現を低下させる。
【0113】
態様では、本開示は、対象の免疫応答を抑圧/抑制する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含み、Tレギトープ組成物は免疫応答を抑圧/抑制する方法に関する。態様では、Tレギトープ組成物が、自然免疫応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、適応免疫応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、エフェクターT細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、メモリーT細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、ヘルパーT細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、B細胞応答を抑圧/抑制する。態様では、Tレギトープ組成物が、nkT細胞応答を抑圧/抑制する。
【0114】
態様では、本発明は、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物の投与を通して、対象の免疫応答、具体的には抗原特異的免疫応答を抑制する方法であって、前記Tレギトープ組成物は、内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TReg、ならびに態様ではCD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞を含む)を活性化する、あるいはCD4+T細胞の活性化、CD4+および/またはCD8+T細胞の増殖を抑制する、ならびに/あるいはβ細胞またはnkT細胞の活性化または増殖を抑制する方法に関する。態様では、本開示のTレギトープ組成物が、特異的標的抗原と共有結合的に結合している、非共有結合的に結合している、または混和物であり得る。特定の態様では、本開示のTレギトープ組成物の例えば、単離、合成、または組換え単離、合成、または組換えポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレギトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)および/またはキメラもしくは融合ポリペプチド組成物の1つまたは複数が、特異的標的抗原と共有結合的に結合している、非共有結合的に結合している、または混和物であり得る。態様では、特異的標的抗原と共有結合的に結合している、非共有結合的に結合している、または混和物である本開示のTレギトープ組成物投与によって、標的抗原に対する免疫応答が減少する。
【0115】
態様では、標的抗原が自己タンパク質またはタンパク質断片であり得る。態様では、標的抗原がアレルゲンであり得る。態様では、標的抗原が同種タンパク質またはタンパク質断片であり得る。態様では、標的抗原が生物医薬品またはその断片であり得る。態様では、標的抗原が第VIII凝固因子補充である。態様では、抑制効果が自然TRegによって媒介される。態様では、抑制効果が適応TRegによって媒介される。態様では、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物に含まれる1つまたは複数のTレギトープが、エフェクターT細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、自然免疫応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、適応免疫応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、ヘルパーT細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、メモリーT細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、β細胞応答を抑制する。態様では、ここに開示されるTレギトープ組成物の1つまたは複数のTレギトープが、nkT細胞応答を抑制する。
【0116】
小分子治療薬の設計.一態様では、本発明は、小分子治療薬を設計する目的のために、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を使用する方法を提供する。一態様では、Tレギトープ特異的T細胞を、2週間間隔で、1μg/mlの濃度の小分子混合物および自己樹状細胞(DC)のプールで3回刺激し、引き続いて異種DCおよび抗原で刺激する。丸底96ウェルプレートの1ウェル当たり、T細胞(1.25×105)およびDC(0.25×105)を添加する。500mlのRPMI培地1640に50mlのFCS(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、UT)、ペニシリンおよびストレプトマイシン(GIBCO Laboratories、Gaithersburg、MD);20mM Hepes(GIBCO);および4mlの1N NaOH溶液を補充することによって、T細胞培地を作製する。IL-2濃度は最初は0.1nMであり、その後の刺激ラウンド中に1nMまで徐々に増加させる。2nM IL-2を含有する培地中、フィーダー細胞としての0.6×105エプスタインバーウイルス形質転換B細胞(100グレイ)および1.3×105個異種末梢血単核球(33グレイ)、ならびに1μg/ml Difco(商標)フィトヘマグルチニン(Bacterius Ltd、ヒューストン、TX)を使用することにより限界希釈によって、T細胞クローンを誘導する。次いで、Tレギトープ特異的T細胞を刺激する小分子プールを個々の分子として試験する。
【0117】
T細胞受容体のクローニング.態様では、本開示は、T細胞受容体をクローニングする目的のために、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を使用する方法を提供する。Tレギトープ特異的T細胞のクローニングは、当業者に知られている技術によって実施することができる。例えば、単離PBMCを、20%HSAを含有する10μg/ml RPMI培地で、Tレギトープで刺激する。IL-2を、5日目に始めて1日おきに添加する(最終濃度10U/ml)。T細胞を、11日目または12日目に四量体プールで染色する。各プールについて、2~3×105個の細胞を、50mlの培養培地(10mg/ml)中0.5mgのPE標識四量体と共に37°Cで1~2時間インキュベートし、次いで、室温で15分間、抗CD4-FITC(BD PharMingen、サンディエゴ、CA)で染色する。細胞を洗浄し、Becton Dickinson FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson、San Jose、CA)で分析する。対応する単一ペプチドを搭載した四量体を、陽性染色を示すプールについて生成し、分析を14日目または15日目に行う。特定の四量体に陽性の細胞は、同日または翌日にBecton Dickinson FACSVantage(San Jose、CA)を使用して、96ウェルU底プレートに選別された単一細胞である。選別された細胞を、24時間後に2.5mg/ml PHAおよび10U/ml IL-2を添加したフィーダーと同様に、1ウェル当たり1.5~3×105個の非対応、照射(5000rad)PBMCで拡大する。クローニングしたT細胞の特異性を、四量体(同族ペプチドまたは対照ペプチド、HA307-319を搭載)による染色および10mg/mlの特定のペプチドを用いたT細胞増殖アッセイによって確認する(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Novak EJら、J Immunol、166(11):6665~70)。態様では、全RNAを、上記のように作製されたTレギトープ特異的T細胞株からRNeasy Mini Kit(Qiagene、Hilden、DE)で抽出する。GeneRacer(登録商標)キット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用したcDNA末端の迅速増幅(RACE)法によって、1μgの全RNAを使用してTCR cDNAをクローニングする。一本鎖cDNAを合成する前に、5’RACE GeneRacer(登録商標)キットの取扱説明書に従って、RNAを脱リン酸化し、脱キャッピングし、RNAオリゴヌクレオチドと連結する。SuperScript IIRT(登録商標)(Life Technologies Corp、Carlebad、CA)およびGeneRacer(登録商標)Oligo-dTを、RNA Oligo-連結mRNAの一本鎖cDNAへの逆転写に使用する。5’RACEを、5’プライマーとしてGeneRacer(登録商標)5’(GeneRacer(登録商標)キット)およびそれぞれTCRα、β1またはβ2鎖の3’プライマーとして遺伝子特異的プライマーTCRCAR(5’-GTT AAC TAG TTC AGC TGG ACC ACA GCC GCA GC-3’;配列番号65)またはTCRCB1R(5’-CGG GTT AAC TAG TTC AGA AAT CCT TTC TCT TGA CCA TGG C-3 ’;配列番号66)またはTCRCBR2(5’-CTA GCC TCT GGA ATC CTT TCT CTT G-3’;配列番号67)を使用することによって、5’RACEを実施する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物をpCR2.1 TOPOベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)にクローニングし、One Shot TOP10 Competent大腸菌(Escherichia coli)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に形質転換する。プラスミドDNAを、TCRα、β1およびβ2鎖についての各構築物からの96個の個々のクローンから調製する。全てのプラスミドの完全長インサートを配列決定して、vα/vβの使用を決定する(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Zhao Yら、(2006)、J Immunother、29(4):398~406)。
【0118】
医学的状態を予防または処置する方法
本発明は、例えば、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含む、対象の1つまたは複数の医学的状態を予防または処置する方法、ならびに前記投与するステップによって対象の医学的状態を予防または処置する方法に関する。医学的状態は、例えば、原発性免疫不全(原発性免疫不全障害に関連する自己免疫など);免疫媒介血小板減少症、川崎病、20歳以上の患者における造血幹細胞移植、慢性B細胞リンパ性白血病、および小児HIV 1型感染症であり得る。具体例としては、(血液学)再生不良性貧血、赤芽球癆、ダイアモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血、新生児溶血性疾患、後天性抑制第VIII因子、後天性フォン・ウィルブランド病、免疫媒介好中球減少症、血小板輸血に対する不応状態、新生児同種免疫/自己免疫性血小板減少症、輸血後紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症症候群;(感染性疾患)、固形臓器移植、外科手術、外傷、火傷およびHIV感症;(神経学)てんかんおよび小児難治性ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、重症筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症;(産科学)習慣性流産;(呼吸器科)喘息、慢性胸部症状、リウマチ学、関節リウマチ(成人および若年性)、全身性エリテマトーデス、全身性血管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、ウェゲナー肉芽腫症;(その他)副腎白質ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、ベーチェット症候群、急性心筋症、慢性疲労症候群、先天性心ブロック、嚢胞性線維症、自己免疫性水疱性皮膚炎、糖尿病、急性突発性自立神経失調症、急性散在性脳脊髄炎、内毒血症、溶血性輸血反応、血球貪食症候群、急性リンパ芽球性白血病、下位運動ニューロン症候群、、多発性骨髄腫、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス1型関連脊髄症、腎炎症候群、膜性腎症、ネフローゼ症候群、甲状腺機能正常眼症、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調、再発性中耳炎、傍腫瘍性小脳変性症、パラプロテイン血症に伴うニューロパチー、パルボウイルス感染症(一般)、多発ニューロパチー、臓器肥大、内分泌障害、Mタンパク質、および皮膚変化(POEMS)症候群、進行性腰仙骨神経叢障害、ライム神経根神経炎、ラスムッセン症候群、ライター症候群、急性腎不全、血小板減少症(非免疫)、連鎖球菌毒素ショック症候群、ブドウ膜炎およびフォークト・小柳・原田症候群が挙げられる。
【0119】
特定の実施形態では、本発明は、例えば、アレルギー、自己免疫疾患、移植片対宿主病などの移植関連障害、酵素またはタンパク質欠乏障害、止血障害(例えば、血友病A、BもしくはC)、がん(特に、腫瘍関連自己免疫)、不妊症、または感染症(ウイルス、細菌もしくは寄生虫)を処置する方法に関する。(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を、有害事象を減少させるまたは同時投与される化合物の有効性を増強するために、医学的状態を有する対象を処置するために使用される他のタンパク質または化合物と合わせて使用することができる。
【0120】
血友病を患っている患者の出血を予防または停止するために使用される第VIII因子補充によって引き起こされる抗体および/またはCD4+T細胞応答の予防または処置への適用.血友病は、切り傷または外傷後の過剰な出血を特徴とする疾患である。この過剰な出血の原因は、血友病患者において血液が適切に凝固できないことである。血友病は遺伝性障害であり、これは遺伝性である(親から子へ受け継がれる)または子宮内での発達中に起こった遺伝子の変化の結果であることを意味する。出血は外的または内的であり得る。関節の内出血(膝や腰など)が血友病の小児でよく見られる。血友病は主に男児に-5000~10000人に約1人発症する。遺伝子を受け継いだ女児はめったにこの状態にならないが、遺伝子の保有者として子供に遺伝子を受け渡し得る。
【0121】
外傷により出血が生じると、血小板は凝固プロセスを開始する。血小板は、追加の血小板を誘引する化学物質を放出するとともに、凝固因子として知られる血液中のタンパク質を活性化し、ヒトでは、これらはヒト凝固第I~XIII因子として知られている。これらのタンパク質は血小板と混ざって線維を形成し、これが血餅を強化して、出血を停止する。血友病を患っている患者は、一緒に作用して血液を凝固させるのに十分な量の凝固因子を産生できない。血友病は、患者が血液を凝固させるのに十分な第VIII因子または第IX因子を産生できないことに起因する。
【0122】
血友病には、血友病Aと血友病Bの2つの主要なタイプがある。症例の約80%が、第VIII因子欠乏症である血友病Aであり、血友病BおよびCは、体が産生する第IX因子が少なすぎると発生する。血友病は、血液中の凝固因子の量に基づいて、軽度、中等度または重度となり得る。
・軽度血友病:体は6%~50%の罹患凝固因子を作り出す。
・中等度血友病:体は2%~5%の罹患凝固因子を作り出す。
・重度血友病:体は1%未満の罹患凝固因子を作り出す。
一般に、軽度血友病の患者は、たまにしか多量出血しないだろう。重度血友病の患者は、ずっと頻繁な出血問題のリスクがある。
【0123】
血友病は生涯にわたる状態であり、肝移植以外に治療法はないが、これは血友病自体よりも深刻な健康問題をしばしば引き起こすおそれがある。
【0124】
第VIII因子補充療法は、血液が凝固するのを助け、出血による長期的な関節損傷を防ぐ。これは、凝固を促進するために出血エピソードが起こっている間に、または血液を健康に保つための定期的にスケジュールされた処置で投与され得る。治療は血液に「注入」される-診療所または自宅で、訪問看護師またはこの治療を投与するためのトレーニングを受けた両親(および患者自身)によって、静脈内(IV)ラインを介して与えられる。凝固因子が血中に入ると、これは急速に働き始める。
【0125】
しかしながら、血友病Aを患っているヒト患者は、出血エピソードを予防または停止するために処方された凝固第VIII因子補充に対する抗体応答を頻繁に開始する。患者の体は、新しい凝固因子を異物と見なし、その凝固作用を遮断する抗体を発達させる。重度血友病Aの小児の約4分の1が凝固因子に対する抗体を発達させる。これらの抗体応答は、第VIII因子処置の有効性を減少させ、重度の有害出血エピソードおよび関節炎などのさらなる合併症を引き起こすため、これらの抗体は血友病を治療困難にするおそれがある。
【0126】
血友病Aを患っている患者の出血を予防または停止するために使用される第VIII因子補充によって引き起こされる不要な抗体および/またはCD4+T細胞応答の予防と治療の両方のための1つの戦略は、制御性T細胞の誘導である。血友病患者は、第VIII因子補充を受ける場合に不要な免疫応答の発達から保護され得る。態様では、本発明は、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与し、それによって医学的状態を処置することを含む、血友病Aを患っている患者の出血を予防または停止するために使用されるヒト凝固第VIII因子補充によって引き起こされる自己免疫応答を予防するまたは減少させることに関する。本発明のTレギトープ組成物を、有害事象を減少させるまたは同時投与される化合物の有効性を増強するために、医学的状態(例えば、それだけに限らないが、血友病A)を有する対象を処置するために使用される他のタンパク質または化合物(例えば、それだけに限らないが、ヒト凝固第VIII因子補充)と共にまたは合わせて使用することができる。
【0127】
アレルギーへの適用.アレルゲン特異的制御性T細胞は、アレルギーおよび喘息の発症を制御する上で重要な役割を果たす。内在性TReg(態様では、自然TRegおよび/または適応TReg、ならびに態様では、CD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞を含む)は、アレルギー性疾患に関与する不適切な免疫応答を阻害することが示されている。いくつかの近年の研究は、制御性T細胞が、動物モデルだけでなくヒトでも、感受性個体のTヘルパー2型バイアス免疫応答の過剰発達の制御に重要な役割を果たすことを示している。近年の研究は、TregがTGF-βおよびIL-10の分泌によるT細胞同時刺激も抑制することを示しており、アレルギー性疾患の制御におけるTregの重要な役割を示唆している。自然または適応制御性T細胞の拡大障害はアレルギーの発症につながり、アレルゲン特異的Tregを誘導する処置は、アレルギーおよび喘息の治癒的治療を提供するだろう。喘息の予防と治療の両方のための1つの戦略は、Tregの誘導である。Th1またはTreg応答をもたらす免疫刺激によって、動物を喘息の発症から保護することができる。したがって、本開示のTレギトープ組成物は、アレルギーおよび/または喘息を予防または処置する方法で有用である。よって、態様では、本開示は、対象のアレルギーおよび/または喘息を予防または処置する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって対象のアレルギーおよび/または喘息を予防または処置する方法に関する。
【0128】
移植への適用.本開示のTレギトープ組成物は、ドナー細胞に対する免疫応答を特異的に下方制御する細胞の発達を促進することによって、移植プロセス中に寛容を誘導するのに有用である。臓器特異的自己免疫を処置するためのAg特異的TReg細胞の誘導は、一般的免疫抑制を回避する重要な治療開発である。骨髄移植のマウスモデルでは、TRegがドナー骨髄の生着を促進し、有益な移植片対腫瘍免疫効果を無効にすることなく、移植片対宿主病の発生率および重症度を減少させる。これらの知見は、マウスおよびヒトのTRegが表現型および機能特性を共有しているという観察と共に、ヒト造血細胞移植に関連する合併症を減少させるためのこれらの細胞の使用に関する積極的な調査をもたらした。TRegとエフェクターT細胞の不均衡は、移植片対宿主病の発症に寄与するが、免疫調節の機序、特にTRegの非自己認識特性、他の免疫細胞への効果および他の免疫細胞との相互作用、ならびに抑制活性の部位は十分理解されていない。
【0129】
ヒトと実験動物モデルの両方からの証拠を集めることは、移植片対宿主病(GVHD)の発症におけるTRegの関与を暗に示した。TRegが移植片対腫瘍(GVT)活性からGVHDを分離することができることの実証は、GVT効果に有害な結果を与えることなくGVHDを減少させるよう免疫抑制能を操作できることを示唆している。抑制機能を備えた種々のTリンパ球が報告されているが、2つの最もよく特徴付けられたサブセットは、自然に発生する胸腺内産生TReg(自然TReg)と末梢で産生される適応TReg(適応TReg)である。したがって、本開示のTレギトープ組成物は、移植プロセス中に寛容を誘導する方法に有用である。よって、態様では、本開示は、対象の移植プロセス中に寛容を誘導する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって移植プロセス中に寛容を誘導する方法に関する。
【0130】
寛容化剤としてのおよび自己免疫への適用.態様では、本開示のTレギトープ組成物を、免疫原性化合物(タンパク質治療薬)のための寛容化剤として使用することができる(Weber CAら、(2009)、Adv Drug Deliv、61(11):965~76)。この発見は、タンパク質治療薬の設計に影響を及ぼす。よって、本開示のTレギトープ組成物と合わせたモノクローナル抗体、自己サイトカイン、または外来タンパク質の投与は、有害なTエフェクター免疫応答を抑制する。インビボでは、TRegは樹状細胞を通して作用して、自己反応性T細胞活性化を制限し、よって、エフェクター機能の分化および獲得を防ぐ。活性化病原性細胞の供給を制限することによって、TRegは自己免疫疾患の進行を防止または遅延させる。しかしながら、この防御機序は、おそらくは長期疾患経過におよぶTReg細胞の不足ならびに/あるいはTReg耐性病原性T細胞の発達および蓄積のために、自己免疫個体では不十分に見える。よって、これらの患者の自己寛容の回復には、進行中の組織傷害を制御する能力が増加したTRegの注入と共に、病原性T細胞の浄化が必要となり得る。甲状腺炎およびインスリン依存性糖尿病などの臓器特異的自己免疫状態は、この寛容機序の崩壊に起因している(Mudd PAら、(2006)、Scand J Immunol、64(3):211~8)。したがって、本開示のTレギトープ組成物は、自己免疫を予防または処置する方法で有用である。よって、態様では、本開示は、対象の自己免疫を予防または処置する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって対象の自己免疫を予防または処置する方法に関する。
【0131】
糖尿病への適用.1型(若年性)糖尿病は、インスリン産生膵臓β細胞の破壊に起因する臓器特異的自己免疫疾患である。非糖尿病患者では、膵島細胞抗原特異的T細胞は胸腺発達時に削除される、または膵島細胞抗原に対するエフェクター反応を積極的に抑制するT制御性細胞に変換される。若年性糖尿病患者および若年性糖尿病のNODマウスモデルでは、これらの寛容機序が欠落している。これらの機序が存在しない場合、膵島細胞抗原がヒト白血球抗原(HLA)クラスIおよびII分子によって提示され、CD8(+)およびCD4(+)自己反応性T細胞によって認識される。これらの自己反応性細胞による膵島細胞の破壊は、最終的にはグルコース不耐性につながる。Tレギトープと膵島細胞抗原の同時投与は、内在性T制御性細胞の活性化および既存の抗原特異的エフェクターT細胞の制御性表現型への変換をもたらす。このようにして、有害な自己免疫応答がリダイレクトされ、抗原特異的適応寛容の誘導につながる。抗原特異的寛容の誘導による自己エピトープに対する自己免疫応答の調節により、進行中のβ細胞破壊を防ぐことができる。したがって、本開示のTレギトープ組成物は、糖尿病を予防または処置する方法で有用である。よって、態様では、本開示は、対象の糖尿病を予防または処置する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって対象の糖尿病を予防または処置する方法に関する。
【0132】
B型肝炎(HBV)感染への適用.慢性HBVは通常、獲得性である(母子感染により)、または成人での急性HBV感染のまれな結果であり得る。慢性B型肝炎(CH-B)の急性増悪には、B型肝炎コアおよびe抗原(HBcAg/HBeAg)に対する細胞傷害性T細胞応答の増加が伴う。近年の研究では、SYFPEITHI T細胞エピトープマッピングシステムを使用して、HBcAgおよびHbeAgからMHCクラスII制限エピトープペプチドを予測した(Feng ICら、(2007)、J Biomed Sci、14(1):43~57)。高スコアのペプチドを使用したMHCクラスII四量体を構築し、TRegおよびCTL頻度を測定するために使用した。結果は、HBcAgに特異的なTReg細胞が、HBcAgペプチド特異的細胞傷害性T細胞の増加を伴う増悪中に減少することを示した。寛容段階中に、FOXp3発現TReg細胞クローンを同定した。これらのデータは、HbcAg TReg T細胞の減少が慢性B型肝炎ウイルス感染の自然歴の自然増悪の原因であることを示唆している。したがって、本開示のTレギトープ組成物は、ウイルス感染症を予防または処置する方法で有用である。よって、態様では、本開示は、対象のウイルス感染症(例えば、HBV感染症)を予防または処置する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって対象の前記ウイルス感染症を予防または処置する方法に関する。
【0133】
SLEへの適用.全身性エリテマトーデス(SLE)またはシェーグレン症候群で役割を果たすTRegエピトープが定義されている。このペプチドは、スプライソソームタンパク質の残基131~151(RIHMVYSKRSGKPRGYAFIEY;配列番号68)を含む。可溶性HLAクラスII分子との結合アッセイおよび分子モデリング実験により、エピトープが無差別エピトープとして挙動し、ヒトDR分子の大きなパネルに結合することが示された。正常なT細胞および非ループス自己免疫患者のT細胞とは対照的に、ランダムに選択されたループス患者の40%のPBMCが、ペプチド131~151に反応して増殖するT細胞を含有していた。リガンドの変化によりT細胞の応答が変化し、このペプチドに応答するT細胞の集団がいくつか存在し、その中にTReg細胞があり得ることを示唆している。T制御性エピトープは、シェーグレン症候群でも定義されている。したがって、配列番号68のTレギトープと組み合わせて投与される本開示のTレギトープ組成物は、SLEを予防または処置する方法で有用である。よって、態様では、本開示は、対象のSLEを予防または処置する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を配列番号68のTレギトープと組み合わせて投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって対象のSLEを予防または処置する方法に関する。
【0134】
自己免疫性甲状腺炎への適用.自己免疫性甲状腺炎は、自己甲状腺ペルオキシダーゼおよび/またはサイログロブリンに対する抗体が生じ、甲状腺の濾胞が徐々に破壊されると起こる状態である。HLA DR5はこの疾患と密接に関連している。したがって、甲状腺ペルオキシダーゼおよび/またはサイログロブリンTSHRあるいはこれらの一部と組み合わせて投与される本開示のTレギトープ組成物は、自己免疫性甲状腺炎を予防または処置する方法で有用である。よって、態様では、本開示は、対象の自己免疫性甲状腺炎を予防または処置する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物を甲状腺ペルオキシダーゼおよび/またはサイログロブリンTSHRあるいはこれらの一部と組み合わせて投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって対象の自己免疫性甲状腺炎を予防または処置する方法に関する。さらなる態様では、TSHRもしくは他のグレーブス病抗原またはこれらの一部と組み合わせて投与される本開示のTレギトープ組成物は、グレーブス病を予防または処置する方法で有用である。グレーブス病は、甲状腺機能亢進症または甲状腺からのホルモンの異常な強力放出をもたらす、自己甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)に対する抗体を特徴とする自己免疫障害である。いくつかの遺伝因子がグレーブス病に対する感受性に影響を及ぼし得る。女性は男性よりもこの疾患にかかりやすい傾向があり;白人およびアジア人集団は黒人集団よりもリスクが高く、HLA DRB1-0301がこの疾患と密接に関連している。よって、態様では、本開示は、対象のグレーブス病を予防または処置する方法であって、治療上有効量の(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物をTSHRもしくは他のグレーブス病抗原またはこれらの一部と組み合わせて投与するステップを含む方法、ならびに前記投与するステップによって対象のグレーブス病を予防または処置する方法に関する。
【0135】
Tレギトープ組成物を使用したT制御性細胞のエキソビボ拡大および/または刺激.態様では、本開示は、制御性T細胞を拡大するためのエキソビボ方法を提供する。一実施形態では、本発明は、生体試料の制御性T細胞を拡大する方法であって、(a)対象から生体試料を用意するステップと;(b)生体試料から制御性T細胞を単離し;T制御性細胞の数が増加して、拡大した制御性T細胞をもたらす条件下で、単離した制御性T細胞を有効量の本開示のTレギトープ組成物(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)と接触させて、それによって生体試料の制御性T細胞を拡大するステップとを含む方法を提供する。態様では、方法が、拡大された制御性T細胞を対象に投与するステップをさらに含む。態様では、拡大された制御性T細胞を投与される対象が、例えば拡大されたTレギトープの自家移植によって、元の生体試料を得た個体と同じ個体である(Ruitenberg JJら、(2006)、BMC Immunol、7:11)。
【0136】
態様では、本開示は、生体試料の制御性T細胞を刺激するためのエキソビボ方法であって、(a)対象から生体試料を用意するステップと;(b)生体試料から制御性T細胞を単し;T制御性細胞が1つまたは複数の生物学的機能を変化させるよう刺激される条件下で、単離した制御性T細胞を有効量の本開示のTレギトープ組成物(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)と接触させて、それによって生体試料の制御性T細胞を刺激するステップとを含む方法を提供する。態様では、方法が、刺激された制御性T細胞を対象に投与するステップをさらに含む。態様では、刺激された制御性T細胞を投与される対象が、例えば拡大されたTレギトープの自家移植によって、元の生体試料を得た個体と同じ個体である。
【0137】
Tレギトープ組成物を使用した抗原提示細胞のエキソビボパルシング.態様では、本開示は、生体試料の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ等)のためのエキソビボ方法であって、(a)対象から生体試料を用意するステップと;(b)生体試料から抗原提示細胞を単離し;抗原提示細胞が1つまたは複数の生物学的機能を変化させる(例えば、Tレギトープを提示するおよび/または抗原提示細胞を免疫寛容原性に傾ける(態様では、このような免疫寛容原性状態を誘導するための抗原提示細胞のサイトカイン処置をさらに含むことができる)よう刺激される条件下で、単離した抗原提示細胞を有効量の本開示のTレギトープ組成物(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)と接触させて、それによって生体試料の抗原提示細胞を刺激するステップとを含む方法を提供する。態様では、方法が、刺激された抗原提示細胞を対象に投与するステップをさらに含む。態様では、刺激された抗原提示細胞を投与される対象が、例えば刺激された抗原提示細胞の自家移植によって、元の生体試料を得た個体と同じ個体である。
【0138】
Tレギトープ組成物のインビトロ使用.態様では、本開示は、インビトロ試験および実験モデルでの制御性T細胞機能の試験における試薬としての、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)本開示のTレギトープ組成物の使用を提供する。
【0139】
キット.本明細書に記載される方法は、例えば、本明細書に記載される医学的状態の症状または家族歴を示す対象を処置するための臨床設定で、好都合に使用することができる、(例えば、本明細書に開示される配列番号1~14の1つもしくは複数を含む、からなるもしくはから本質的になる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレギトープ」もしくは「T細胞エピトープポリペプチド」と呼ばれ得る)(態様では、ポリペプチドが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルスもしくは細胞(態様では、これらの全てが単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);本明細書に開示されるキメラもしくは融合ポリペプチド組成物(態様では、単離されていても、合成であっても、もしくは組換えであってもよい);および/または本明細書に開示される医薬組成物もしくは製剤の1つまたは複数を含む)少なくとも1つの本開示のTレギトープ組成物を含む予め包装されたキットを利用することによって実施することができる。一実施形態では、キットが、少なくとも1つの本開示のTレギトープ組成物を使用して、本明細書に記載される医学的状態の症状または家族歴を示す対象を処置するための説明書をさらに含む。
【0140】
例示
以下の例は、少しも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。本開示に照らして、特許請求の範囲内の多数の実施形態が当業者に明らかであるだろう。
【0141】
(1)Tレギトープ組成物のインシリコ同定
T細胞は、MHC(主要組織適合複合体)クラスII分子の状況で抗原提示細胞(APC)によって提示されるエピトープを特異的に認識する。これらのヘルパーTエピトープは、MHCクラスII結合溝に適合する7~30個の連続アミノ酸を含む直鎖状配列として表すことができる。いくつかのコンピュータアルゴリズムが開発され、種々の起源のタンパク質分子内のクラスIIエピトープを検出するために使用されている(De Groot ASら、(1997)、AIDS Res Hum Retroviruses、13(7):539~41;Schafer JRら、(1998)、Vaccine、16(19):1880~4;De Groot ASら、(2001)、Vaccine、19(31):4385~95;De Groot ASら、(2003)、Vaccine、21(27~30):4486~504)。Tヘルパーエピトープのこれらの「インシリコ」予測は、ワクチンの設計および治療用タンパク質、すなわち抗体ベース薬物、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、改変タンパク質足場、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解薬の脱免疫化(de-immunization)に首尾よく適用されてきた(Dimitrov DS、(2012)、Methods Mol Biol、899:1~26)。本発明の好ましい「治療用タンパク質」は、ヒト凝固第VII因子または第VIII因子である。
【0142】
EpiMatrix(商標)システム(EpiVax、Providence、Rhode Island)は、クラスIおよびクラスII HLAリガンドならびにT細胞エピトープを予測するのに有用なコンピュータプログラムにコードされた予測アルゴリズムのセットである。EpiMatrix(商標)システムは、特定のアミノ酸(20)とHLA分子内の結合位置(9)との間の相互作用をモデル化するために、20×9係数行列を使用する。任意の所与の入力タンパク質内にある推定T細胞エピトープを同定するために、EpiMatrix(商標)システムはまず、入力タンパク質を、各フレームが、最後で8アミノ酸重複する重複9merフレームのセットに構文解析する。次いで、ヒトHLA分子の1つまたは複数の一般的な対立遺伝子;典型的にはDRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301およびDRB1*1501に対する予測親和性について、各フレームをスコアリングする(Mackら、(2013)、Tiss Antig、81(4):194~203)。手短に言えば、任意の所与の9merペプチドについて、特定のアミノ酸コード(20の天然アミノ酸の各々について1つ)と相対結合位置(1~9)を使用して、予測行列から係数を選択する。個々の係数を、Sturnioloによって最初に開発されたポケットプロファイル法(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sturniolo Tら、1999、Nat Biotechnol、17(6):555~61)に似ているが同一ではない独自開発の方法を使用して導出する。次いで、個々の係数を合計して生のスコアを生成する。次いで、EpiMatrix(商標)生スコアを、ランダムに生成されたペプチド配列の非常に大きなセットから導出されたスコア分布に関して正規化する。結果として得られる「Z」スコアは正規分布に従い、対立遺伝子間で直接比較可能である。
【0143】
EpiMatrix(商標)ペプチドスコアリング.EpiMatrix(商標)「Z」スケールで1.64を超えるペプチドスコア(任意の所与のペプチドセットのおよそ上位5%)が、予測されたMHC分子に結合する有意な可能性を有すると決定された。スケールで2.32を超えるスコアのペプチド(上位1%)は、結合する可能性が極めて高い;公開されているほとんどのT細胞エピトープが、このスコア範囲内に入る。以前の研究では、EpiMatrix(商標)が公開されたMHCリガンドおよびT細胞エピトープを正確に予測することも実証されている(全体が参照により本明細書に組み込まれる、De Groot AS、Martin W.Reducing risk,improving outcomes:bioengineering less immunogenic protein therapeutics.Clin Immunol.2009年5月;131(2):189~201.doi:10.1016/j.clim.2009.01.009.Epub 2009年3月6日)。
【0144】
無差別T細胞エピトープクラスターの同定.潜在的なT細胞エピトープは、タンパク質配列全体にランダムに分布するのではなく、「クラスター化」する傾向がある。T細胞エピトープ「クラスター」は、長さが9~およそ30アミノ酸に及び、複数の対立遺伝子に対する親和性および複数のフレームにわたる親和性を考慮して、4~40くらいの結合モチーフを含有する。エピトープマッピング後、Clustimer(商標)として知られる独自開発のアルゴリズムを使用することによって、EpiMatrix(商標)アルゴリズムによって生成された結果セットをT細胞エピトープクラスターおよびEpiBars(商標)の存在についてスクリーニングする。手短に言えば、分析される各9merペプチドのEpiMatrix(商標)スコアを集計し、統計学的に導出された閾値に対してチェックする。次いで、高スコアの9merを一度に1アミノ酸ずつ伸長する。次いで、伸長配列のスコアを再集計し、修正した閾値と比較する。提案された伸長がクラスターの全体的なスコアをもはや改善しなくなるまで、このプロセスを繰り返す。本試験で同定された1つまたは複数のTレギトープは、Clustimer(商標)アルゴリズムによってT細胞エピトープクラスターとして同定された。これらは、相当数の推定T細胞エピトープとEpiBars(商標)を含有しており、MHC結合とT細胞反応性の高い可能性を示している。
【0145】
例1.Tレギトープ組成物の同定
血友病患者は、切断されたもしくは突然変異した第VIII因子(FVIII)タンパク質を産生する、またはFVIIIタンパク質をまったく産生しない。結果として、治療用FVIIIは、時として血友病を患っている患者の免疫系によって「異物」と認識され、FVIII特異的CD4+T細胞の活性化と抗FVIII抗体の発達をもたらす。この「抗薬物抗体」応答は、組換えFVIIIで処置された血友病A患者の25~30%で発生し、罹患率を増加させ、生活の質を低下させる(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Waters BおよびLillicrap D、(2009)、J Thromb Haemost、7(9):1446~56)。
【0146】
FVIIIおよび第V因子(FV)は、凝固カスケードにおけるタンパク質分解活性化の補因子である相同糖タンパク質である。これらは(A1-A2-B-A3-C1-C2)の保存されたドメイン構造を共有し、AおよびCドメインで35%のアミノ酸同一性も共有する(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pipe SWら、J Biol Chem、273(14):8537~44)。FVのアミノ酸配列に存在する制御性T細胞エピトープ(Tレギトープ)を認識する制御性T細胞(TReg)は、FVIIIのアミノ酸配列に存在する相同な制御性T細胞エピトープと交差反応する。FVに由来するTレギトープは、特にFVIII欠損血友病患者において、FVIIIを標的とする抗治療免疫応答を抑制する目的に有用となり得る。
【0147】
9merペプチドはFVに存在し、これはHLA DRB1*1501(血友病の既知の危険因子)に対するリガンドであり、FVIIIに存在する相同配列に関連し得る、但し、前記FVIII由来ホモログもDRB1*1501に対する推定リガンドであり、これらのペプチドに存在する5つのT細胞受容体(TCR)接触残基(相対位置2、3、5、7および8)のうち少なくとも4つがFV由来推定エピトープ間で共有されており、そのFVIII由来ホモログを同定した。ヒトFVの完全なアミノ酸配列(Genbank寄託:NP_000121.2)を重複9merフレームに構文解析し、前記のようにEpiMatrix(商標)システムを使用してスコアリングした。ヒトFVIIIの完全なアミノ酸配列(Genbank寄託:NP_000123.1)を重複9merフレームに構文解析し、前記のようにEpiMatrix(商標)システムを使用してスコアリングした。
【0148】
特注のコンピュータプログラムを使用して、FVIIIに由来する推定DRB1*1501リガンドのセットに対してFVに由来する推定DRB1*1501リガンドをスクリーニングした。FVで同定された推定エピトープのうちの10が、FVIIIのTCRホモログと一致した。次いで、FV由来リガンドとそのFVIII由来のホモログの各々を、実験セットに存在する検証済みのエピトープを同定するために、従来手段によって免疫エピトープデータベース(IEDB)(国立アレルギー感染症研究所(NIAID)、Bethesda、MD)に対してスクリーニングした。インシリコ分析の結果を
図20に示す。FV由来ペプチドまたはFVIII由来ホモログに存在するP1結合アンカーが乏しいため、3つのペプチドをさらなる検討から除外した:配列番号3、FV932(配列番号32および伸長ペプチド配列番号33)、およびFV 2188(配列番号50および伸長ペプチド配列番号51)。FVおよび/またはFVIIIのマウスバージョン内の保存が低く、動物ベースのモデルでの使用に問題があることを示唆しているので、2つの追加のペプチドを排除した:FV 179(配列番号16および伸長ペプチド配列番号17)およびFV 2130(配列番号46および伸長ペプチド配列番号47)。以前に選択されたペプチドFV 435(配列番号3および伸長ペプチド配列番号10)との密接な相同性のために、ペプチドFV 1660(配列番号36および伸長ペプチド配列番号37)を排除した。残っている4つのペプチドを、さらなる試験のために選択した。ペプチドリガンドとクラスII HLAとの間の高い親和性結合を確保するために、9merペプチドを伸長して、少なくとも2~3アミノ酸長のnおよびc末端「隣接」を含めなければならない。4つのペプチドの各々のn末端およびc末端隣接への3つのアミノ酸を、さらなる分析のために選択した。合成されたペプチドを、配列番号1(ILTIHFTGHSFIYGK);配列番号2(IHSIHFSGHVFTVRK);配列番号3(KIVFKNMASRPYSIY);配列番号5(ESNIMSTINGYVPES);および配列番号:7(SHEFHAINGMIYSLP)と呼ぶ。
【0149】
第2の分析では、5つのTCR接触位置全てで一致するFV-FVIIIペプチドペアを同定した。HLA DRB1*1501についての高EpiMatrix(商標)Zスコアは必要でなかった。唯一の要件は、所与のペアの両ペプチドが、少なくとも1つの一致したDRB1対立遺伝子についてのスコアが高いことであった。戻されたペプチドセットを
図21に示す。この分析に基づいて、2つの追加のペプチドをさらなる試験のために選択した:配列番号4(FAVFDENKSWYLEDN)および配列番号6(EKDIHSGLIGPLLI)。
【0150】
(2)可溶性MHCへのTレギトープ結合を評価する方法.
ペプチドの合成.本発明のTレギトープは、直接化学合成または組換え法によって製造することができる(全体が参照により本明細書に組み込まれる、J Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、(第2版、1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Springs Harbor、NY(出版))。試料Tレギトープは、Fmoc化学(9-フルオロニルメトキシカルボニル合成を使用して、21st Century Biochemicals(Marlborough、マサチューセッツ州)の本発明の発明者らの指導および指示の下で調製した。一定の態様では、Tレギトープをn末端アセチルおよびc末端アミノ基でキャッピングした。選択されたTレギトープのHPLC、質量分析、およびUVスキャン(それぞれ純度、質量およびスペクトルを保証する)分析により、80%超の純度が示された。
【0151】
配列番号1 ILTIHFTGHSFIYGKのアミノ酸分析は、第三者請契約者(New England Peptide,Inc.、Gardner、MA)が実施し、予測される組成を確認した(データは示さず)。
【0152】
質量スペクトルおよび分析HPLC分析は、第2の独立契約者(21St Century Biochemicals,Inc.、Marlboro、MA)が実施し、Tレギトープの組成をさらに確認した(データは示さず)。
【0153】
HLA結合アッセイ.EpiVax(Providence、Rhode Island)で結合活性を分析した。使用した結合アッセイ(Steere ACら、(2006)、J Exp Med、2003(4):961~71)は、ペプチド-MHC親和性の間接的尺度をもたらした。可溶性HLA分子を、非標識実験Tレギトープおよび標識対照ペプチドと共に96ウェルプレートにローディングした。いったん結合混合物が安定した平衡に達したら(24時間)、HLA-Tレギトープ複合体を抗ヒトDR抗体でコーティングしたELISAプレートに捕捉させ、標識用のユーロピウム結合プローブ(PerkinElmer、Waltham、MA)で検出した。結合した標識対照ペプチドを測定する時間分解蛍光は、SpectraMax(登録商標)M5ユニット(Spectramax、Radnor、PA)によって評価する。実験Tレギトープの結合を、標識対照ペプチドの%阻害として表した(実験蛍光/対照蛍光×100)。各実験Tレギトープについての%阻害値(一定範囲のモル濃度にわたる)を使用して、標識対照Tレギトープの特異的結合の50%を阻害する濃度、すなわちTレギトープのIC50を計算した。
【0154】
実験TレギトープをDMSOに溶媒和した。次いで、希釈Tレギトープを水性緩衝溶液中結合試薬と混合し、100000nM~100nMの範囲の最終濃度を得た。次いで、Tレギトープを5つの一般的なクラスII HLA対立遺伝子のパネルに対してアッセイした:HLA-DRB1*0101、HLA-DRB1*0301、HLA-DRB1*0701、HLA-DRB1*1101およびHLA-DRB1*1501。各濃度での標識対照ペプチドの%阻害から、線形回帰分析を使用して、各Tレギトープ/対立遺伝子の組み合わせについてIC50値を導出した。
【0155】
このアッセイでは、実験Tレギトープは、100nM以下の濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する場合、非常に高い親和性で結合し、100nM~1000nMの濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する場合、高い親和性で結合し、1000nM~10000nMの濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する場合、中程度の親和性で結合すると見なされる。低親和性ペプチドは、10000nM~100000nMの濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する。100000nM未満の濃度で対照ペプチド結合の少なくとも50%を阻害できず、用量反応を示さないペプチドは、非結合性物質(non-binder)(NB)と見なされる。
【0156】
例2.HLAクラスII分子への結合によるペプチド特性評価
可溶性MHC結合アッセイを、前記方法に従って本発明のTレギトープで実施した。IC
50値(nM)は、6点阻害曲線から導出した。結合アッセイで使用した合成Tレギトープのリストを表1に示す。
図1A~
図1Cは、選択されたクラスII HLA対立遺伝子に対する一定のTレギトープの結合曲線を示す。
図1AはHLA DRB1
*0101アッセイの結果を要約し、
図1BはHLA DRB1
*0301アッセイの結果を要約している。
図1Cは選択されたFVペプチドのHLA DRB1*0701アッセイの結果を要約し、
図1Dは選択されたFVペプチドのHLA DRB1*1101アッセイの結果を要約し、
図1EはHLA DRB1*1501の結果を報告している。
【0157】
【0158】
HLA結合結果の要約を
図25に示す。EpiMatrix(商標)予測、計算IC
50値、および結果の分類を、各TレギトープおよびHLA対立遺伝子について報告する。FVとFVIIIとの間で交差反応性があると予測されるTレギトープ-対立遺伝子の組み合わせを示す。これらのTレギトープ-対立遺伝子相互作用のうち、14/16はHLAに結合することが示されており、これらのTレギトープがヒトPBMCアッセイで測定可能な応答を生成することを示している。これらの所見に基づいて、4つのTレギトープをさらなる試験のために選択した:配列番号3、配列番号5、配列番号1および配列番号7。Tレギトープ配列番号4および配列番号6は、それらの高度に制限されたHLA結合プロファイルのために取っておいた。
【0159】
(3)ペプチド曝露APCの表現型を評価する方法
プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によるクラスII HLA(HLA-DR)およびCD86の表面発現は、APCがT細胞応答を調節する1つの方法である。クラスII HLA表面マーカーの発現は、Tレギトープ、特に対照Tレギトープ167(21st Century Biochemicals、Marlboro、MA)に応答して下方制御される。さらに、表面マーカーCD86の発現低下は、TReg機能増強と正の相関がある(Zheng Yら、J Immunol、2004、172(5):2778~84)。このアッセイでは、選択されたTレギトープを含む候補Tレギトープを、プロフェッショナルAPC、特に樹状細胞の表面上のクラスII HLAおよび同時刺激分子CD86の発現を下方制御する能力について試験した。
【0160】
さらなるテストのために選択された4つのTレギトープの各々を、EpiVax(EpiVax、Providence、Rhode Island)で以前開発された独自開発のAPC表現型アッセイを使用して、制御可能性について個別に試験した。以前に収穫し、凍結したPBMCを解凍し、従来手段によってchRPMIに懸濁した。EpiVaxの発明者の指示および指導の下、Hartford Hospital(Hartford、Connecticut)がEpiVaxに提供した細胞材料の小さな抽出試料でHLA分類を実施した。アッセイ0日目に、0.5x106個の細胞を抽出し、表面マーカーCD11c(樹状細胞に特異的なマーカー)の存在についてスクリーニングし、フローサイトメトリーによって表面マーカーHLA-DRおよびCD86の存在について分析した。残っている細胞を蒔き(chRPMI+800ul培地中1ml当たり4.0x106個細胞)、選択された4つのペプチドの1つまたは緩衝液のみ(陰性対照)、Tレギトープ167(陽性対照、配列番号15)(21st Century Biochemicals、Marlboro、MA)、Flu-HA 306-318(陰性対照)(21ST Century Biochemicals、Marlboro、MA)およびOva 323-339(陰性対照)(21st Century Biochemicals、Marlboro、MA)を含む陽性および陰性対照の1つで刺激した(50μg/mL)。蒔いた細胞を37℃で7日間インキュベートした。アッセイ7日目に、インキュベートした細胞を表面マーカーCD11cの存在についてフローサイトメトリーによってスクリーニングした。次いで、CD11c陽性細胞を、表面マーカーHLA-DRおよびCD86の存在について分析した。実験ペプチドを、5人の異なるヒトドナーから採取した試料で試験した。
【0161】
2015年3月より前は、実験で使用した全血試料は全て、IRB 07115プロトコル(Clinical Partners、Johnston、RI)の下で健康なドナーから供給された。白血球は、従来のフィコール分離勾配(Noble PBおよびCutts JH、Can Vet J、1967、8(5):110~11)を使用して単離した。2015年4月以降は、白血球除去フィルターを Rhode Island Blood Center(Providence、RI)から入手して、健康なドナーから入手した全血から白血球を濾過した。全血をフィルターに通した後、フィルターを反対方向に流し、収集した白血球をフィルターから押し出した。次いで、従来のフィコール分離勾配を使用して白血球を単離した。収集した白血球はその後、さらなる使用のために凍結した。アッセイでの使用に必要な場合、凍結白血球を従来の方法を使用して解凍した。以下で論じられるGvHD試験では、PBMCをHemaCare、Van Nuys、CAから入手し、実験をLifespan Hospital(Providence、RI)で実施した。
【0162】
樹状細胞の表現型に対する推定Tレギトープへの曝露を複数の手段によって測定した。最初に、各実験条件について、CD11cとHLA-DRの対照的な表面発現であるドットプロットを作成した(
図4)。全ての対照ペプチドおよび実験ペプチドに曝露した細胞のドットプロットを、培養培地のみに曝露した対照細胞から生成されたドットプロットに重ねた。オーバーレイは、Tレギトープで刺激されたCD11c-高細胞と刺激されていないCD11c-高細胞との間のHLA-DR分布のシフトを視覚的に観察するために有効な方法を提供した(
図2A参照、配列番号15(Tレギトープ167、濃い灰色)および培地対照(薄い灰色)についてのHLA-DR/CD11cドットプロットのオーバーレイは、観察されるHLA-DR発現のシフトを強調することを示す)。観察されたHLA-DRの分布のシフトを定性的尺度として報告した。次に、各ドットプロットのCD11c-高セグメントについてのHLA-DR発現の強度の変化を、
図2Bの式を使用して計算した。HLA-DR発現強度の%変化は、ペプチド曝露細胞についてのHLA-DR発現の平均蛍光指数(MFI)-培地曝露細胞についてのHLA-DR発現のMFIを培地曝露細胞についてのHLA-DR発現のMFIで割ったものの100倍(
HLA-DRMFI
ペプチド
-HLA-DRMFI
培地/
HLA-DRMFI
培地*100)に等しい。
図2Cは、各ペプチド刺激剤についてのHLA-DR MFIの%Δを示す棒グラフである。次に、CD11c高集団中に存在するHLA-DR-低細胞の割合の%変化を、培地対照と比較して各ペプチドについて計算した(
図3A~
図3C)。HLA-DR-低細胞の割合の%変化は、
図3Cの式を使用して計算され、ペプチド曝露細胞についてのHLA-DR-低の%-培地曝露細胞についてのHLA-DR-低の%を培地曝露細胞についてのHLA-DR-低の%で割ったものの100倍(
HLA-DR-低%
ペプチド
-HLA-DR-低%
培地/
HLA-DR-低%
培地*100)に等しい。このアッセイでは、観察されたHLA-DR MFIの負の変化とCD11c-高集団に存在するHLA-DR-低細胞の割合の正の変化が、HLAの発現低下と制御性APC表現型へのシフトを示した。
図3Aは、配列番号15(対照として使用され、式PAVLQSSGLYSLSLSSVVTVPSSSLGTQを有するTレギトープ167)および培地対照についてのHLA-DR対CD11cのプロットである。
図3Bは、ビヒクルが培地である場合のHLA+およびHLA-各ペプチド刺激剤の%をプロットする棒グラフである。
【0163】
同様の方法を使用して、CD86;T細胞活性化を促進することが知られている同時刺激分子の表面発現に対するTレギトープ曝露の影響を評価した。最初に、各実験条件について、CD11cとCD86の対照的な表面発現であるドットプロットを作成した(
図5)。全ての対照ペプチドおよび実験Tレギトープに曝露した細胞のドットプロットを、培養培地のみに曝露した対照細胞から生成されたドットプロットに重ねた。オーバーレイは、Tレギトープ刺激CD11c-高細胞と非刺激CD11c-高細胞との間のCD86分布のシフトを視覚的に観察するために有効な方法を提供した(データは示さない)。観察されたCD86の分布のシフトを定性的尺度として報告した。次に、各ドットプロットのCD11c-高セグメントについてのCD86-高発現の強度の変化を計算した。CD86-高発現強度の%変化は、ペプチド曝露細胞についてのCD86発現の平均蛍光指数(MFI)-培地曝露細胞についてのCD86-高発現のMFIを培地曝露細胞についてのCD86発現のMFIで割ったものの100倍(
CD86-高MFI
ペプチド
-CD86-高MFI
培地/
CD86-高MFI
培地*100)に等しい(データは示さない)。次に、CD11c高集団中に存在するCD86-低細胞の割合の%変化を計算した。CD86-高細胞の割合の%変化は、ペプチド曝露細胞についてのCD86-高の%-培地曝露細胞についてのCD86-高の%を培地曝露細胞についてのCD86-高の%で割ったものの100倍(
CD86-低%I
ペプチド
-CD86-低%
培地/
CD86-低%
培地*100)に等しい。このアッセイでは、観察されたCD86 MFIの負の変化とCD11c-高集団に存在するCD86-低細胞の割合の正の変化が、CD86の発現低下と制御性APC表現型へのシフトを示した。
【0164】
例3.ペプチド曝露APCの特性評価
樹状細胞表現型分析を、前記方法に従って、選択されたTレギトープで実施した。5人のヒトドナーの各々で試験した各実験条件に対応するドットプロットを
図4および
図5に示す。
【0165】
図4は、種々のペプチド刺激剤の存在下での5人のドナーにわたるアッセイ7日目に分析されたCD11対HLA-DRの表面発現を表す一連のドットプロットである。CD11c+/HLA-DR+集団の下方移動(
図4の右上象限)は、獲得制御性表現型を示す培地対照と比較して、配列番号1で処置された試料で明らかであった。Tレギトープ167(配列番号15、陽性対照)および他のFVペプチドの一部が同様に応答したが、観察されたシフトは配列番号1でより顕著である。
【0166】
図5は、種々のペプチド刺激剤の存在下での5人のドナーにわたるアッセイ7日目に分析されたCD11c対CD86の表面発現を表す一連のドットプロットである。培地対照と比較した場合、配列番号1で処置された試料に存在するCD86低細胞の増加は、獲得制御性表現型へのシフトを示した。
図22は、前記樹状細胞表現型分析を通して得られた結果を要約している。
図22に提示されるように、請求されるTレギトープ配列番号1への曝露は、試験した5人の対象全てでHLA-DRの発現を低下させた。さらに、5人の対象のうち4人で、Tレギトープ配列番号1への曝露によって、CD11c-高コホート中に存在するCD86-低の%が増加した。両傾向は、獲得制御性表現型へのシフトを示した。
【0167】
(4)制御性T細胞の増殖に対するペプチド効果を評価する方法
EpiVax(Providence、RI)によって実施された以前の研究は、陽性対照Tレギトープ167(配列番号15、21st Century Biochemicals、Marlboro、MA)を含む既知のTレギトープへの曝露後の制御性T細胞の増殖の増加を示した。このアッセイでは、本開示のTレギトープを含む候補Tレギトープを、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞間で増殖を誘導する能力について試験した。以前に収穫し、凍結したPBMCを解凍し、従来手段によって条件chRPMI(3.3x106個細胞/mL)に懸濁した。細胞をCFSE(カタログ番号:65-0850-84、Affymetrix、Santa Clara、CA))で染色し、1ウェル当たり300000個の細胞で蒔いた。プレートを一晩(5%CO2中37℃)インキュベートした。アッセイ1日目に、配列番号1および配列番号3(対照ペプチド)を滅菌DMSOで再構成し、20mg/mLの最終ストック濃度を得た。EpiVax(EpiVax、Providence、Rhode Island)で実施された以前の滴定実験は、0.5μg/ml破傷風トキソイド(TT)(Astarte Biologics、Bothell、WA)による刺激が、健康な対照ドナー(Rhode Island Blood Center、Providence、RI)から採取されたPBMCで、測定可能なCD4+エフェクターメモリーT細胞応答を誘発することを確立した。破傷風トキソイドストック(100μg/mL)(Astarte Biologics,Bothell,WA)を条件chRPMIで希釈し、1ug/mLの使用濃度を得た。次いで、蒔いた細胞を、100μLの条件chRPMI(陰性対照)、100μLの破傷風トキソイド溶液(陽性対照)(Astarte Biologics、Bothell、WA)、2991μL破傷風トキソイド溶液+9μLの配列番号1溶液の希釈液100μl、2997μLの破傷風トキソイド溶液+3μLの配列番号1溶液の希釈液100μl、または6998.2μLの破傷風トキソイド溶液+1.8μLの配列番号1溶液の希釈液100μlで刺激した。並行して、同数の同じ細胞含む対照ウェルを、配列番号1について記載されるように調製した配列番号3ペプチド溶液と共にインキュベートした。次いで、全てのプレートをさらに6日間インキュベートした。アッセイ5日目に、各ウェルから100μLの上清を除去し、新たな条件chRPMIと交換した。
【0168】
FoxP3、CD25、グランザイムBのレベル上昇および増殖を示す高度に活性化された制御性T細胞を選択した。CD4+T細胞が、CD25、グランザイムB、FoxP3の上昇、および低CFSE(増殖)に対してゲーティングされる、高度に活性化された制御性T細胞のゲーティング戦略を
図6A~
図6Bに示す(ドナー157を使用した代表的な結果を示す)。
図6AはTTを添加していない代表的なアッセイの結果を示し、
図6Bは0.5μg/mlのTTを使用した代表的なアッセイの結果を示している。
【0169】
例4.配列番号1は、高度に増殖性の活性化制御性T細胞の集団を強力に誘導する
制御性T細胞増殖アッセイを、前記方法に従って本開示のTレギトープで実施した。
図7に示されるように、高度に活性化されたグランザイムB陽性CD4
+T細胞(CD25
+グランザイムB
+)のゲーティング(
図6A~
図6Bに示される)が、これらのサブセットが高度増殖性制御性T細胞(CFSE低FoxP3
+)で構成されることを示している。配列番号1はこの集団の相対的割合を増加させるが、配列番号3は有意な効果をもたらさない。図のデータは、ドナー135に対応する。高度に活性化されたグランザイムB陽性制御性T細胞のこの集団の増加は、複数のドナーにわたって本開示の様々なTレギトープによって示されるエフェクターT細胞阻害の程度と密接に相関しており(
図17A~
図17B)、本開示のTレギトープがエフェクターCD4
+細胞に対する阻害効果を有する場合にのみ相対数が顕著に増加する。これは、配列番号1の阻害機序における細胞傷害性制御性T細胞の関与を示唆している。全体として、このデータは、配列番号1が、グランザイムBに富む高度に増殖性の活性化制御性T細胞の集団を強力に誘導することを示している。
【0170】
(5)CD4+エフェクターT細胞の増殖に対するペプチド効果を評価する方法
PBMC細胞集団内に含有されるCD4+エフェクターメモリーT細胞を、既知のT細胞エピトープによる刺激に応答して増殖するように誘導することができる。EpiVax(Providence、RI)は、配列番号1が複数のHLA分子に結合すること、および配列番号1が曝露APC(Clinical Partners、Johnston、RI)で制御性表現型を誘導することができることを示した。競合的阻害HLA結合アッセイの結果は、ペプチド-MHC親和性の間接的尺度を提供する(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Steere ACら、J Exp Med、(2006)、203(4):961~71)。実験Tレギトープの結合を、標識対照ペプチドの%阻害として表す(実験蛍光/対照蛍光×100)。各実験Tレギトープについての%阻害値(一定範囲のモル濃度にわたる)を使用して、標識対照ペプチドの特異的結合の50%を阻害する濃度を計算する。この値をIC
50と呼ぶ。
図23は複数のHLAクラスII型にわたる配列番号1に対する高い結合親和性を示す、5つのHLA-DR1型にわたる配列番号1のHLA結合結果を示し、表3はIC
50を示す。
【表3】
【0171】
この実験の目的は、直接的(T
Regの会合と活性化)または間接的(APC表現型の調節)のいずれかによって抗原刺激CD4+エフェクターメモリーT細胞の増殖を抑制する配列番号1の能力を確立することであった。最初の試験では、配列番号3を陰性対照として使用した(
図9~
図11)。その後の試験では、配列番号1の性能を、そのFVIII由来ホモログである配列番号2と比較した(
図13)。
【0172】
以前に収穫し、凍結したPBMCを解凍し、従来手段によって条件chRPMI(3.3x106個細胞/mL)に懸濁した。細胞をCFSE(カタログ番号:65-0850-84、Affymetrix、Santa Clara、CA))で染色し、1ウェル当たり300000個の細胞で蒔いた。プレートを一晩(5%CO2中37℃)インキュベートした。アッセイ1日目に、配列番号1および配列番号3(対照ペプチド)を滅菌DMSOで再構成し、20mg/mLの最終ストック濃度を得た。EpiVax(EpiVax、Providence、Rhode Island)で実施された以前の滴定実験は、0.5μg/ml破傷風トキソイド(TT)(Astarte Biologics、Bothell、WA)による刺激が、健康な対照ドナー(Rhode Island Blood Center、Providence、RI)から採取されたPBMCで、測定可能なCD4+エフェクターメモリーT細胞応答を誘発することを確立した。破傷風トキソイドストック(100μg/mL)(Astarte Biologics,Bothell,WA)を条件chRPMIで希釈し、1ug/mLの使用濃度を得た。次いで、蒔いた細胞を、100μLの条件chRPMI(陰性対照)、100μLの破傷風トキソイド溶液(陽性対照)(Astarte Biologics、Bothell、WA)、2991μL破傷風トキソイド溶液+9μLの配列番号1溶液の希釈液100μl、2997μLの破傷風トキソイド溶液+3μLの配列番号1溶液の希釈液100μl、または6998.2μLの破傷風トキソイド溶液+1.8μLの配列番号1溶液の希釈液100μlで刺激した。並行して、同数の同じ細胞含む対照ウェルを、配列番号1について記載されるように調製した配列番号3ペプチド溶液と共にインキュベートした。次いで、全てのプレートをさらに6日間インキュベートした。アッセイ5日目に、各ウェルから100μLの上清を除去し、新たな条件chRPMIと交換した。
【0173】
アッセイ7日目に、細胞をインキュベーションから取り出した。細胞を、生/死判別、表面マーカーCD127、CCR7、CD4、CD45RAおよびCD25、ならびに細胞内FoxP3について標識した。染色細胞を、従来の手段によるFACS分析のためにさらに調製した。細胞を最初にゲーティングして凝集体および死細胞を除去した。生細胞をCD4 T細胞についてゲーティングし、その後の分析は全てこの集団で行った。活性化Tエフェクター集団を、CD4+/CD25-高/FoxP3-中(CD4
+/CD25
hi/FoxP3
int)として同定した(
図8A)。この同定されたTエフェクター細胞集団の並行分析では、この主要な集団の増殖がCD45RA低およびCCR7低エフェクターメモリーT細胞にも対応することが示された:
図24A~
図24Dは、バイスタンダー抑制アッセイに使用されるゲーティング戦略を示しており、TTによって刺激されたCD4 T細胞の制御性マーカーおよび活性化マーカーを強調し、主要な増殖集団がTエフェクターメモリー表現型(CD45RA-低/CCR7-低)に対応することを示している。
【0174】
CD4+/CD25-高(CD4
+/CD25
hi)T細胞の増殖を、CFSE染色(カタログ番号:65-0850-84、Affymetrix、Santa Clara、CA)の希釈およびCFSE-低(CFSE
lo)集団によって決定される%増殖から推定した(
図8B)。
【0175】
例5A.ペプチド配列番号1はCD4+エフェクターT細胞の増殖および活性化を抑制した。
増殖刺激剤(破傷風トキソイド)を配列番号1と共送達した場合のCD4+エフェクター細胞の活性化(
図9)および増殖(
図10)の変化を測定し、主にTエフェクターメモリー細胞で構成されるCD4+T細胞の増殖反応を特徴付けた。
【0176】
T細胞増殖アッセイを、前記方法に従って本開示のTレギトープで実施した。活性化および増殖について試験した各実験条件に対応するドットプロットを、それぞれ
図9および
図10に示す。
図9は、ドナー114において、ペプチド配列番号1が、破傷風トキソイドに反応する活性化エフェクターCD4+T細胞(CD4+/CD25-高/FoxP3-中、CD4
+/CD25
hi/FoxP3
intとして示される)の集団を用量依存的に強力に抑制し(
図9、下列)、対照ペプチド配列番号3が認識できる効果を有さなかった(
図9、上列)ことを示している。同じ実験で、ペプチド配列番号1によって活性化された総CD4+T細胞(CFSE低細胞、
図10中、CFSE
loとして示される)の増殖は、ペプチド配列番号1によって用量依存的に強力に抑制された(
図10、下列)が、対照ペプチド配列番号3は効果がほとんどなかった(
図10、上列)。
図18は、破傷風トキソイドが活性化(CD25高)CD4 T細胞の集団を刺激して増殖させ(CFSE低)、活性化細胞のおよそ90%も増殖していることを示している(データは示さない)。高度に活性化された細胞のこの集団は、配列番号1(FV621として示される)によって用量依存的に積極的に抑制され(
図18、上列)、配列番号3(FV432として示される)は活性化CD4細胞に対する有意な阻害効果を示さない(
図18、下列)。
【0177】
さらに、CD4+およびCD4-生細胞のゲーティングは、細胞増殖に対する配列番号1の阻害効果がCD4-集団よりもCD4+集団で顕著であることを示した(
図11)。配列番号1は、CD4-T細胞の増殖を用量依存的に抑制した(
図11、下列)。陰性対照ペプチド配列番号3は、CD4集団に対する阻害効果をほとんど示さなかった(
図11、上列)。
【0178】
例5B.ペプチド配列番号1およびそのFVIIIホモログはCD4+エフェクターT細胞の増殖を抑制した。
さらに、正常なドナーのPBMCにおけるTTに対するCD4+T細胞エフェクターメモリー応答に対する、第V因子由来Tレギトープ(配列番号1)とその第VIII因子ホモログ(配列番号2)の阻害効果を比較、分析および評価した。
図12は、ペプチド配列番号1および配列番号2のアラインメントが、両ペプチド配列間の相同性を示すことを示している。
【0179】
2人の正常なドナーに由来するPBMCのTTに対するリコール応答に対するペプチド配列番号1および配列番号2の効果を評価するために設計された試験を行った。使用されるプロトコルは前に記載されている。Tレギトープ濃度は5、10、15および20ug/mlに及んだ。配列番号1は、TTに応答するCD4+T細胞活性化およびT
effの増殖を濃度依存的に阻害した(それぞれ、
図13A(上の2つのパネル)および
図13B(上の2つのパネル))。
図13Aに示されるように、ドナー096について、CD4+T細胞活性化が、20ug/ml(11mM)で80%減少した。また、
図13Aに示されるように、ドナー120について、CD4+T細胞活性化が、20ug/ml(11mM)で90%減少した。配列番号2は、TTを添加すると、両CD4+T細胞メモリー応答(CD4+T細胞活性化とT
effの増殖)を濃度依存的に阻害した(それぞれ、
図13A(下の2つのパネル)および
図13B(下の2つのパネル))。
図13Aに示されるように、ドナー096について、CD4+T細胞活性化が、20ug/ml(11mM)で70%減少した。また、
図13Aに示されるように、ドナー120について、CD4+T細胞活性化が、20ug/ml(11mM)で50%減少した。
図13Bに示されるように、一般に、ドナー120は、試験した濃度範囲にわたって所与のペプチド濃度の配列番号1(上の2つのパネル)または配列番号2(下の2つのパネル)について、5~20%強い阻害効果で応答した(CD4+増殖とT
eff活性化の両方について)。配列番号1とその配列番号2ホモログとの間のペプチド配列の類似性は、それらの並行T細胞阻害機能と共に、FVに対する抗原特異的寛容が、血友病A患者のFVIIIなどの相同置換タンパク質に対する寛容を刺激する有用な方法であることを証明している。このアッセイでは、配列番号1と配列番号2の両方が、用量依存的にCD4+T細胞の増殖を抑制し、TエフェクターT細胞を活性化した。
【0180】
(6)CD8+エフェクターT細胞に対する配列番号1ペプチド効果を評価する方法.
PBMC細胞集団内に含有されるCD8+エフェクターメモリーT細胞を、既知のクラスI T細胞エピトープによる刺激に応答して増殖するように誘導することができる。配列番号1は、複数のHLA対立遺伝子に結合し、曝露APC(Clinical Partners、Johnston、RI)の制御性表現型を誘導する(使用したゲーティング戦略により、全血ドナーから収集したPBMCのAPC画分の同定が可能になる)。このアッセイの結果は、直接的(TRegの会合と活性化)または間接的(APC表現型の調節)のいずれかによって抗原刺激CD8+TエフェクターメモリーT細胞の増殖を抑制する配列番号1の能力を確立するものである。
【0181】
T細胞増殖アッセイを、前記方法に従って本開示のTレギトープで実施した。2人の健康なドナーのPBMCを解凍し、従来手段によって条件chRPMI(3.3x106個細胞/mL)に懸濁した。細胞をCFSE(カタログ番号:65-0850-84、Affymetrix、Santa Clara、CA))で染色し、1ウェル当たり300000個の細胞で蒔いた。プレートを一晩(5%CO2中37℃)インキュベートした。アッセイ1日目に、配列番号1を滅菌DMSOで再構成し、20mg/mLの最終ストック濃度を得た。chRPMI中最終濃度が2倍の配列番号1の中間溶液を前記のように調製した。配列番号1の最終濃度を、2.5、5、10および20ug/mlから試験した。CD8+刺激抗原として、ヒトサイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルスおよびインフルエンザウイルスに由来する23種のMHCクラスI制限ウイルスエピトープからなるCEFペプチドプールを使用した。CEFペプチドをウェルに添加し(2μg/mLについてのデータを示す)、細胞および培地(対照)または0、1、2もしくは4ug/mlの配列番号1を使用した。全てのプレートをさらに6日間インキュベートした。アッセイ5日目に、各ウェルから100μLの上清を除去し、新たな条件chRPMIと交換した。
【0182】
従来の方法を使用して、生/死マーカー、細胞外マーカーCD4、CD8αおよびCD25、CD127、CD45RAおよびCCR7、ならびに細胞内マーカーFoxP3について細胞を染色した。FACS分析後、細胞をゲーティングして凝集体および死細胞を除去した。生細胞集団では、CD8αおよびCD4細胞を個別にゲーティングし、前述のように各集団を増殖(CFSE低集団)または活性化(CD25-高/FoxP3 低/中、FoxP3int_lo CD25hiとして示される)について分析した。
【0183】
例6.ペプチド配列番号1はCD8+エフェクターT細胞の増殖を抑制した。
健康なドナーのPBMCをCEFペプチド混合物で刺激した場合の配列番号1によるCD8+T細胞応答の潜在的な阻害を試験した。
図14は、配列番号1が、CEFペプチドに対するCD8+T細胞増殖応答(上列)ならびにCD8+細胞の活性化(下列)を強力に阻害することを示している。
図15は、増殖CD8+T細胞の%(CFSE低)(上の2つのパネル)および活性化CD8+Tエフェクター細胞の%(CD25
hi FoxP3
int/lo)(下の2つのパネル)が、配列番号1の濃度の増加とともに減少することを示しており、配列番号1がCD8+T細胞集団に対しても阻害効果を有することを示している。両方の場合で、配列番号1は反応を用量依存的に強力に阻害した。
【0184】
(7)免疫応答(GvHD)に対するペプチド効果を評価する方法
骨髄移植は、不健康な骨髄を提供された健康な骨髄に置き換える手法である。骨髄移植は、白血病などの生命を脅かす血液がん(Vincente Dら、(2007)、Bone Marrow Transplant、40(4):349~54)、再生不良性貧血などの骨髄不全をもたらす疾患(Champlin REら、(2007)、Blood、109(10):4582~5)、および他の免疫系または遺伝性疾患(Chinen JおよびBucley RH、(2010)、J Allergy Clin Immunol、125(2 Suppl 2):S324-35)の患者を処置するために使用することができる。移植片対宿主病(GvHD)は、骨髄移植の主要な合併症として知られており、発症後の即時かつ高い死亡率を特徴とする(Lee SJら、(2003)、Biol Blood Marrow Transplant、9(4):215~33)。GvHDでは、ドナーリンパ球が移植ドナー組織からHLA不適合レシピエント組織に移行するため、ドナーリンパ球によって重度の組織損傷が引き起こされる。症状には、レシピエントへの注入によって引き起こされる皮膚、肺、肝臓および腸などの種々の臓器の重度の損傷が含まれる(Goker Hら、(2001)、Exp Hematol、29(3):259~77)。
【0185】
EpiVax(RI、Providence、RI)により、免疫不全マウスへのヒト末梢血単核球(PBMC)(ロイコパック(leukopak)(Hemacare、Van Nuys、CA)から入手)の移植により、GvHD様症候群が起こり、20~50日目までに死亡することが観察された。このモデルでは、移植されたPBMC内に含有されるT細胞が、宿主マウスの皮膚、肝臓、腸、肺および腎臓に浸潤し、重度の損傷を引き起こし、最終的に死に至った。免疫不全マウス系統NOD-scid IL-2Rγnull(NSG-Jaxストック番号005557)(The Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)マウスおよびヒトPBMCの移植を使用して、GvHDの進行に対する配列番号1の影響を評価した。アッセイ1日目に、マウスを体重により一致した処置群と対照群にグループ分けし(表7)、次いで、X線照射源(Lifespan Hospital、Providence、RI)から100cGyを照射した。6時間の照射後、マウス対象は尾静脈を介して1000万個のhPBMC IVを受けた。8群のマウスは照射を受けたが、PBMCは受けなかった。アッセイ0日目から開始し、アッセイ25日目まで続けて、対象マウスに、表4に概説されるスケジュールに従って投与した。
【0186】
体重減少、姿勢、活動、ならびに被毛および皮膚の外観を含む臨床観察を、週に3回行った。対象マウスを、開始日から20%を超える体重減少を示した場合、または以下の臨床徴候の組み合わせを示した場合、安楽死させた:(i)開始日から10~20%の体重減少(ii)触ると冷たい(iii)背中を丸めた姿勢およびみすぼらしい毛皮を伴う嗜眠。
【表4】
【0187】
例7.配列番号1は、異種間GvHDモデルでGvHDの発症を阻害した。
ヒトリンパ球の免疫不全マウスへの移植およびその後の配列番号1での処置により、このインビボモデルでの免疫機能に関する配列番号1の評価が可能になった。配列番号1はT細胞活性化を抑制し、よって疾患の進行を遅らせた。評価に使用された主な評価基準は、試験対象の生存であった。カプラン・マイヤー生存曲線によって示唆されるように、配列番号1で処置された群のGvHDの発症の遅延が観察された。
図16A~
図16Bは、配列番号1での処置により、陰性対照(
図16A)および陽性対照IVIG(
図16B)と比較して生存が延長したことを証明している。
【0188】
例8.FVIII-Tレギトープ構築物の作製
Tレギトープと免疫原性タンパク質の融合は、免疫原性タンパク質の末梢寛容の誘導をもたらし得る。凝固第VIII因子は重度血友病Aの人々で免疫原性である。このような構築物を作製する1つの例示的な方法では、第VIII因子とTレギトープのコード配列で構成されるキメラ構築物を作製する(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、(1989))。手短に言えば、重複オリゴをアニーリングし、発現プラスミドにサブクローニングすることによって、カルボキシ末端および/またはアミノ末端でTレギトープに融合した第VIII因子コード領域を作製する。Tレギトープを、例えば突然変異誘発(すなわち、部位特異的突然変異誘発)によって第VII因子に挿入してもよい。プラスミドをDG44 CHO細胞にトランスフェクトし、安定したトランスフェクタントを選択する。キメラタンパク質を免疫親和性カラムで精製し、免疫寛容原性について評価する。表5~8は、このようなタンパク質(例えば、キメラタンパク質)の例示的な実施形態を示している。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0189】
例9.FVIII-複数Tレギトープ構築物の作製
適応寛容を促進するために、高度免疫原性タンパク質に複数のTレギトープが存在してもよい。このような構築物を作製する1つの例示的な方法では、凝固第VIII因子と複数のTレギトープのコード配列で構成されるキメラ構築物を作製する(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、(1989))。手短に言えば、重複オリゴをアニーリングし、発現プラスミドにサブクローニングすることによって、カルボキシ末端および/またはアミノ末端でTレギトープに融合した第VIII因子コード領域を作製する。Tレギトープを、例えば突然変異誘発(すなわち、部位特異的突然変異誘発)によって第VII因子に挿入してもよい。プラスミドをDG44 CHO細胞にトランスフェクトし、安定したトランスフェクタントを選択する。キメラタンパク質を免疫親和性カラムで精製し、免疫寛容原性について評価する。表9は、このようなタンパク質(例えば、キメラタンパク質)の例示的な実施形態を示している。
【表9】
【0190】
等価物
本発明をその具体的な実施形態に関連して説明してきたが、さらなる修正が可能であることが理解されるであろう。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野内の既知のまたは慣用的な慣習内にあり、添付の特許請求の範囲内にある本開示からの逸脱を含む本発明の変化、使用または適応を網羅することを意図している。
【配列表フリーテキスト】
【0191】
配列表65~67 <223>合成プライマー
配列表69~73 <223>合成構築物
【配列表】