IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイヤー・ブルガー(ジャーマニー)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7274487伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備
<>
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図1A
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図1B
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図2
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図3A
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図3B
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図3C
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図4
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図5A
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図5B
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図6A
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図6B
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図7
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図8
  • 特許-伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】伝熱管を用いて電極を電気的に切り離された形で均一に温度制御するシステム及びそのようなシステムを備えた処理設備
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230509BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/68 N
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020534418
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018085820
(87)【国際公開番号】W WO2019121899
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】102017223592.6
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519163924
【氏名又は名称】マイヤー・ブルガー(ジャーマニー)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベーム・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ラシュケ・ゼバスティアン
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-045859(JP,A)
【文献】特開平06-061184(JP,A)
【文献】特開2009-170721(JP,A)
【文献】独国実用新案第202010004109(DE,U1)
【文献】特開平09-315803(JP,A)
【文献】特開2005-228972(JP,A)
【文献】特開昭62-025411(JP,A)
【文献】特開平09-092707(JP,A)
【文献】特開2011-192532(JP,A)
【文献】特開2003-100835(JP,A)
【文献】特表2012-519239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一つのヒートパイプの形態の伝熱管と、一つの連結部品と、一つの温度制御装置とを有する、電極を温度制御するシステムであって、
この伝熱管は、その少なくとも第一の端部を少なくとも部分的に電極内に配置可能であり、少なくとも一つの伝熱管は、少なくとも部分的に、伝熱管の第一と第二の端部の間のその長手方向の延伸部を、電極の使用面に対して平行に延ばしており、
この連結部品は、この伝熱管の第二の端部を加熱又は冷却するのに適しており、
この温度制御装置は、この連結部品を加熱又は冷却するのに適しており、
これらの電極及び温度制御装置は、互いに電気的に絶縁されている、
システム。
【請求項2】
前記の連結部品は電極の外面の少なくとも一部であり、その部分が、伝熱管の第二の端部と接して、電極のそれ以外の領域と比べて高い熱吸収率を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記の連結部品は、20W/(m・K)以上の熱伝導度を有する材料から成る、電極から分離された物体であるとともに、電極の外面の領域に配置することが可能であり、その領域が、伝熱管の少なくとも第二の端部を配置することが可能である電極の体積領域と接することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記の連結部品は、20W/(m・K)以上の熱伝導度を有する材料から成る、電極から分離された物体であり、その中に、伝熱管の少なくとも第二の端部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記の連結部品が導電性の材料から構成されることを特徴とする請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記の連結部品が電気絶縁性の材料から構成されることを特徴とする請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項7】
前記の連結部品が熱伝導面を有し、その面が、この連結部品のそれ以外の領域と比べて高い熱吸収率又は高い熱伝導度を有することを特徴とする請求項3から6までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項8】
電極への入熱面である、電極との連結部品の接触面は、電極の使用面よりも著しく小さく、使用面の15%以内であるとともに、電極の上側、下側及び外側で電極表面全体の10%以内であることを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記の温度制御装置が、赤外線放熱器、誘導器、抵抗式加熱器又は流体ベースの装置であることを特徴とする請求項1からまでのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項10】
このシステムが、更に、温度測定ユニットと制御ユニットを有し、この温度測定ユニットが、前記の連結部品の温度と関連するパラメータを検出するのに適しており、この制御ユニットが、この温度測定ユニットを制御するのに適していることを特徴とする請求項1からまでのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項11】
一つの処理室と、その処理室内の少なくとも一つの電極とを有する処理設備において、この処理設備が、更に、請求項1から10までのいずれか一つに記載の電極を温度制御するシステムを少なくとも一つ有することを特徴とする処理設備。
【請求項12】
前記の電極を温度制御する少なくとも一つの第一のシステムの温度制御装置が、処理室の外に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の処理設備。
【請求項13】
前記の電極を温度制御する第一のシステムの連結部品が、完全にこの処理室の中に配置されており、前記の電極を温度制御する第一のシステムの温度制御装置が赤外線放熱器又は誘導器であることを特徴とする請求項12に記載の処理設備。
【請求項14】
この処理設備が、複数の電極と、電極を温度制御する複数のシステムとを有し、電極を温度制御するために、少なくとも二つのシステムの連結部品が、少なくとも一つの追加の伝熱管を介して互いに接続されていることを特徴とする請求項11から13までのいずれか一つに記載の処理設備。
【請求項15】
この処理設備が、処理室内に複数の電極を有し、それらの電極の使用面が、それぞれ互いに平行に対向して配置されており、並んだ電極が、それらに異なる電極電圧を印加できるように、一つ又は複数の電圧供給部と接続されており、
電極を温度制御するシステムが、それぞれ請求項3又は4に記載のシステムであり、この連結部品が、その少なくとも一つの外面において、それに割り当てられた電極と同じ電位を有し、
並んだ電極に割り当てられた、電極を温度制御するシステムの連結部品が、それらの並んだ電極の間隔に対して直角である少なくとも一つの方向において、互いにずらして配置されている、
ことを特徴とする請求項11から14までのいずれか一つに記載の処理設備。
【請求項16】
電極を温度制御する少なくとも一つシステムの連結部品が、電圧供給部と接続されており、単独で、或いはそれぞれ少なくとも一つの伝熱管と共に、割り当てられた電極に電極電圧を印加するのに適していることを特徴とする請求項11から15までのいずれか一つに記載の処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一つ又は複数の電極を温度制御するシステムに関する。この場合、電極の温度制御は伝熱管を介して実現され、それにより、電極の均一な温度制御と電気的な切り離しが温度制御装置によって実現可能である。更に、本発明は、そのようなシステムを備えた処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽電池製造などの半導体技術や、例えば、光学ガラスのコーティングなどの表面加工技術の多くの方法において、電極を介してエネルギーを投入する処理プロセスが用いられている。特に、層を成膜、除去又は改変するためのプラズマプロセスは、その例である。その場合、使用する電極は、基板保持部又はガス供給部としての役割も果たすことができる。多くの場合、例えば、一つ又は複数の基板を所与のプロセスに適した温度に移行させるか、その温度を保持するか、或いは電極を強く加熱するためには、使用する電極を所定の温度に保持するべきである。
【0003】
そのような電極の均一な温度制御を実現するために、通常は液体システム又は抵抗式加熱器が温度制御装置として使用されている。液体システムでは、液体、例えば、オイル、水又はガスなどが電極を貫流し、その液体は、外部から供給されて、再び外部に搬出される。抵抗式加熱器は、平坦な部品又は真っ直ぐな、或いは曲がった熱線として電極の上又は中に配置されており、電気エネルギーが、電極の電力に関係無く、外部からその加熱器に供給される。しかし、両方の場合に、電極の電力の一部が、温度制御装置を介して外に排出され、それによって、本来の処理プロセスに利用可能な電力が低下して、場合によっては、温度制御装置の構成部品自体も損なわれてしまう。従って、多くの場合、温度制御装置を電極から電気的に切り離すために、負担のかかる絶縁部又はフィルター回路が必要である。そのことは、特に、高周波用の電極にとって、即ち、電極の電力が10kHz~100MHzの帯域内の周波数による場合に重要である。
【0004】
更に、特に、液体としてオイルを使用した場合に、液体システムは別の欠点も有する。即ち、オイルの加熱により達成可能な電極又は基板保持部の温度は、例えば、約350°Cに制限される。更に、電極又は基板保持部を貫流する間の液体による排熱のために、液体が電極に流入する場所と液体が電極から流出する場所の間に数ケルビンの温度差が生じ、それによって、電極を均一に温度制御できなくなる。とりわけ、液体システムの場合には、特に、オイルベースの温度制御装置では、プロセス設備内で漏れる虞が有り、そのことは、設備を清浄にする負担が大きくなることと関連する。
【0005】
抵抗式加熱器の欠点は、それが電極又は基板保持部の加熱だけを実現できるが、能動的な冷却を実現できないことである。
【0006】
特に、コーティング設備で部品を冷却するために、ヒートパイプとも呼ばれる伝熱管を使用することも基本的に周知である。即ち、例えば、特許文献1は、ガス分配プレートの流出表面に対して直角に延びて、冷却液が貫流し、その際伝熱管の表面と直に接触する冷却ジャケットの一つの端部の所で包囲された伝熱管を用いてガス分配プレートを冷却することを記載している。特許文献2でも、高周波用電極から熱を排出するために伝熱管を使用することに言及する一方、電極の加熱は、加熱触媒、抵抗式加熱器又は加熱液体により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際特許公開第95/16804号明細書
【文献】欧州特許公開第2481831号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、温度制御装置と電極の間の良好な電気的な切り離しを保証するともに、従来の温度制御システムのそれ以外の欠点を防止又は軽減した、電極、特に、高周波用電極を温度制御する改善されたシステムと、そのようなシステムを備えた処理設備とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本課題は、独立請求項に基づくシステム及び処理設備によって解決される。有利な実施構成は従属請求項に見出される。
【0010】
本発明による電極を温度制御するシステムは、少なくとも、一つの伝熱管と、一つの連結部品と、一つの温度制御装置とを有する。この伝熱管は、少なくとも一つの第一の端部を少なくとも部分的に電極内に配置するのに適している一方、この連結部品は、伝熱管の第二の端部を加熱又は冷却するのに適している。また、この温度制御装置は、連結部品を加熱又は冷却するのに適しており、そのため、電極に関する熱源又は吸熱源としての役割を果たす。この場合、電極と温度制御装置は互いにガルバニック絶縁されており、その結果、温度制御装置は電極から電気的に切り離されている。電極自体は、必ずしも本発明による電極を温度制御するシステムの構成部分ではないが、電極及び電極を温度制御するシステムは、互いに調整され、互いに連結されるのに適している。そのために、電極は、少なくとも、その内部に伝熱管の少なくとも第一の端部を収容するのに適している。
【0011】
ヒートパイプとも呼ばれる伝熱管は、特殊な内部構造、例えば、毛細管又は詰め込まれた金網を備えた被覆材料から成るパイプである。伝熱管の閉鎖された体積内には、その体積を部分的に液体の状態で、部分的に蒸気の状態で満たす作動流体が有る。この場合、熱は、作動流体が蒸発する入熱箇所から、作動流体が再び凝縮する出熱箇所に伝達される。従って、大きな熱流密度のために、例えば、5cmの比較的小さい入熱面の場合に、伝熱管の全長に関して約0.5Kの非常に小さい温度差において、例えば、40cmの比較的長い区間に渡って、非常に短い時間で、例えば、数秒以内に、例えば、50Wの大きな熱流を運ぶことができる。当業者には、伝熱管の様々な実施構成が周知である。被覆材料は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルメッキされた銅、特殊鋼又は異なる金属から成る合金などの金属であるか、さもなければ、ガラス、セラミック又は複合材であるとすることができる。この場合、パイプは、円形、楕円形、四角形、n角形又はそれ以外の任意の横断面を有することができ、その横断面は非常に平坦に(ほぼベルト形状又は平らに)構成することもできる。作動流体としては、所望の温度範囲に応じて、例えば、水、ナトリウム、リチウム又は水銀を使用することができる。複数の伝熱管を使用する場合の伝熱管の数と形状及び伝熱管の配置形態は、伝達すべき熱量と電極の幾何形状に応じて選定することができる。この場合、伝熱管は、真っ直ぐな棒又は曲がった形状で実現することができ、例えば、蛇行した形状による複数の曲げ又は三次元の曲げも可能である。
【0012】
電極に対する伝熱管の熱的結合は熱伝導により行われ、その場合、伝熱管を電極に差し込む、挟み込む、捻じ込む、貼り付ける、或いはろう付けすることができる。
【0013】
当業者は、この少なくとも一つの伝熱管の材料と幾何形状、その配置形態及び電極内の固定手法を、存在する境界条件、例えば、プロセスガス、達成すべき電極温度、電極の材料、電極電圧の伝送形態等に応じて、その知見に基づき選定する。即ち、電圧供給部から電極に電極電圧を供給するために、例えば、金属製の伝熱管を使用することができる。
【0014】
電極は、様々な材料から、或いは様々な材料の層構造から構成することができるが、電極に渡っての電位の所望の分布を実現するために、電極の少なくとも一つの構成部分は導電性である。典型的な電極材料は、アルミニウム、黒鉛、特殊鋼又は複合材料である。多くの場合、電極は、二つの対向する表面と(これらの表面の間隔に関して)大きな横方向のサイズとを有する平坦な物体である。これらの表面の中の少なくとも一つは、電界の発生及び/又は一つ又は複数の基板の保持を担当し、以下において、使用面と称する。従って、電圧を印加されない、接地状態又は浮遊状態の基板保持部も、本出願の意味において電極として解釈すべきである。しかし、電極は、例えば、ガス分配部であるとするか、或いはそのような部分を含むこともできる。電極の電気接続は、直流電圧又は低周波から高周波の交流電圧により行うことができ、本発明によるシステムは、特に、例えば、周波数が13.56MHz又は40MHzの高周波電圧を印加される電極を温度制御するのに適している。電極は、一つのピース又は複数の部分から、例えば、ハーフシェルから構成することができ、個々の部分は、リベット固定、溶接、ろう付け、接着、ネジ止め、挟持又はそれ以外の接合技術により互いに連結される。電極には、有利には、少なくとも一つの伝熱管を収容する空洞が設けられて、その中に、一つ又は複数の伝熱管を差し込む、捻じ込む又は収納することができる。一つ又は複数の伝熱管の(伝熱管の第一の端部と第二の端部の間の)長手方向の延伸部は、少なくとも部分的に電極の使用面に対して平行に延びる。
【0015】
温度制御装置を用いて加熱又は冷却される連結部品は、熱量を少なくとも一つの伝熱管に運び込むか、或いは少なくとも一つの伝熱管から運び出す役割を果たす。
【0016】
第一の実施構成では、この連結部品が電極の外面の少なくとも一つの部分であり、伝熱管の第二の端部が、この外面の此の部分と接する。この場合、連結部品は、電極の外面の此の部分と一致する熱伝導面だけから構成され、この熱伝導面は、電極のそれ以外の領域と比べて高い熱吸収率を有する。そのために、電極の外面の此の部分は、例えば、カーボンブラック、黒鉛又はラッカーで黒くするか、その表面を粗くするか、或いは別の薄い(50μm以下の厚さの)高吸収コーティングを配備することができる。例えば、アルミニウム製電極を外面の所で陽極処理することができる。有利には、連結部品を有する外面は電極の使用面ではない。更に、有利には、外面の全面が連結部品を構成する。第一の実施構成は、特に、温度制御装置として赤外線放熱器を使用するのに適しており、その際、連結部品は、赤外線放熱器のスペクトル領域において、0.5以上、有利には、0.7~0.9の範囲内の熱吸収率(放射率)を有する一方、電極の残りの領域は、コーティング比率に応じて、約0.2の放射率を有する。連結部品の面は、有利には、電極の使用面よりも著しく小さく、例えば、使用面の15%以内であるとともに、例えば、電極の表面(電極の上側、下側及び外側)全体の10%以内である。連結部品との伝熱管の熱的結合は、熱伝導により行われる。一つ又は複数の伝熱管は、連結部品から電極の使用面を通って電極の内部にまで延びており、その結果、熱は、電極の使用面に渡って均一に分布して、使用面は、均一に、例えば、使用面の拡がり全体に関して0.5Kの温度差で温度制御される。
【0017】
本発明によるシステムの第二の実施構成では、連結部品は、電極から切り離された、熱伝導度が大きな材料から成る物体であり、この連結部品は、伝熱管の少なくとも第二の端部を配置することが可能である電極の体積領域と接する、電極の外面の領域に配置するのに適している。即ち、本発明によるシステムを使用する場合、伝熱管は完全に電極内に配置される一方、連結部品は、伝熱管の第二の端部が置かれた領域内において電極の外面と接して、物理的に、例えば、挟持又は螺合によって、連結部品と電極の間に良好な熱伝導が生じるように電極と接続される。従って、連結部品は、連結部品と伝熱管の第二の端部の間に有る電極材料を介した熱伝導によって、熱を伝熱管に伝えるか、或いは熱を伝熱管から取り去る。連結部品は、電極と同じ材料又は別の材料から構成することができ、所望の電極温度の範囲内において、有利には、電極材料の熱伝導度と同じ、或いはそれを上回る20W/(m・K)以上、有利には、150W/(m・K)以上の熱伝導度を有する。場合によっては、連結部品の材料選定時に、処理プロセスのために電極を使用する時に存在するプロセス環境に対する適合性にも注目すべきである。電極への入熱面である、電極との連結部品の接触面は、有利には、電極の使用面よりも著しく小さく、例えば、使用面の15%以内であるとともに、例えば、電極表面(電極の上側、下側及び外側)全体の10%以内である。
【0018】
本発明によるシステムの第三の実施構成では、連結部品は、電極から切り離された、熱伝導度が大きな材料から成る物体であり、そこには、伝熱管の少なくとも第二の端部が配置される。この場合、連結部品は、有利には、物理的に電極と直に接続されていないが、電極と接することができる。このことは、連結部品と電極の材料が異なる熱膨張係数を有する場合に有利である。連結部品と電極に関する熱膨張係数が同じ又はほぼ同じである場合、連結部品を物理的に、例えば、螺合又は挟持により、電極と接続することもできる。連結部品は、電極と同じ材料又は別の材料から構成することができ、所望の電極温度の範囲において、有利には、電極材料の熱伝導度と同じ、或いはそれを上回る20W/(m・K)以上、有利には、150W/(m・K)以上の熱伝導度を有する。場合によっては、連結部品の材料選定時に、処理プロセスのために電極を使用する時に存在するプロセス環境に対する適合性にも注目すべきである。
【0019】
第三の実施構成では、連結部品との伝熱管の熱的結合は熱伝導により行われ、伝熱管は、連結部品に差し込むか、挟み込むか、捻じ込むか、貼り付けるか、或いはろう付けすることができる。連結部品は、電極と同様に、一つのピース又は複数の部分から、例えば、ハーフシェルから構成することができ、個々の部分は、リベット固定、溶接、ろう付け、接着、ネジ止め、挟持又はそれ以外の接合技術により互いに連結される。連結部品には、有利には、少なくとも一つの伝熱管を収容する空洞が設けられており、その中に、一つ又は複数の伝熱管を差し込む、捻じ込む又は収容することができる。
【0020】
第二又は第三の実施構成の一つの特別な実現形態では、連結部品は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルメッキされた銅又は黒鉛などの導電性の材料から構成される。この実施構成において、連結部品が電極と接するか、或いは伝熱管が導電性の被覆材料を有する場合、連結部品は電極と同じ電位に有る。そして、更に、連結部品及び/又は伝熱管を介して、電極に電極電圧を加えることもできる。
【0021】
第二又は第三の実施構成の別の特別な実現形態では、連結部品は、例えば、酸化物セラミック、例えば、Al又は非酸化物セラミック、例えば、窒化アルミニウムなどの電気絶縁性の材料から構成される。
【0022】
有利には、本発明によるシステムの第二又は第三の実施構成の連結部品は、連結部品の外面である熱伝導面を有し、この面を介して、連結部品は温度制御装置と協力して動作する。「連結部品の外面」とは、連結部品内に設けられた孔の表面であるとも解釈され、温度制御装置は、少なくとも部分的に此の孔の中に配置される。この熱伝導面は、連結部品のそれ以外の領域と比べて高い熱吸収率又は高い熱伝導度を有する。そのために、この熱伝導面は、既に第一の実施構成の連結部品に関して述べた通り、黒くするか、粗くするか、或いは薄い高吸収コーティングを配備することができる。有利には、温度制御装置の波長帯域における熱吸収率は0.5以上、有利には、0.7~0.9の範囲内である。温度制御装置と連結部品の間で熱が熱伝導により伝達される場合、この熱伝導面に、特に大きな熱伝導度を有するコーティング、例えば、グラフェン、銅、銀又は金から成る層を配備することもできる。この熱伝導面は、有利には、150W/(m・K)以上の熱伝導度を有する。温度制御装置への特に良好な熱的結合を実現するために、この熱伝導面は、有利には、拡大された面である。即ち、この熱伝導面は、例えば、この面と対向する連結部品の外面よりも大きな高さ又は幅を有する。しかし、連結部品の熱伝導面は、有利には、電極の使用面よりも著しく小さく、例えば、使用面の15%以内であるとともに、例えば、電極表面(電極の上側、下側及び外側)全体の10%以内である。
【0023】
温度制御装置は、有利には、熱放射により熱を連結部品に伝達する赤外線放熱器であるか、或いは交番磁界を用いて連結部品の材料に渦電流を誘導する誘導器である。両方の場合に、温度制御装置は、連結部品から間隔を開けて配置することができ、その結果、導電性の連結部品の場合又は導電性の連結部品と導電性の伝熱管の場合でも、温度制御装置と電極の間の直接的又は電気的な連結は生じない。温度制御装置として赤外線放熱器を使用する場合、例えば、石英ガラスなどの赤外線を通すが、電気絶縁性の材料を赤外線放熱器と連結部品の間に配置して、温度制御装置と電極の電気的な切り離し離を保証することもできる。
【0024】
熱放射による連結部品の冷却を実現するために、温度制御装置は、強力に冷却されるヒートシンクであるとすることもできる。即ち、例えば、黒鉛面を連結部品の熱伝導面に対向して配置して、冷却し、そのため、連結部品に関する放射線の吸熱源としての役割を果たすことができる。
【0025】
別の有利な実施構成では、温度制御装置は、抵抗式加熱器又は流体ベースの装置であり、熱伝導により熱を連結部品に伝達するか、或いは(流体ベースの装置の場合に)連結部品から熱を取り去るものである。連結部品又は(電極から間隔を開けて配置された連結部品の場合に)少なくとも伝熱管が電気絶縁性の材料から構成される場合、温度制御装置は連結部品と直に接することができる。連結部品と伝熱管が導電性の材料から構成される場合、温度制御装置と連結部品の熱伝導面の間に、更に電気絶縁体が配置される。この実現形態では、確かに温度制御装置と電極は、完全には電気的に互いに切り離されていないが、電気損失が低減されて、良好に算出可能であり、そのため、電極への電圧供給時に容易に考慮することができる。
【0026】
別の実施構成では、本システムは、更に、温度測定ユニットと制御ユニットを有し、この温度測定ユニットは、連結部品の温度と関連するパラメータを検出するのに適しており、この制御ユニットは、この温度測定ユニットを制御するのに適している。この場合、温度測定ユニットは、連結部品に直に配置された熱電対を備えることができる。導電性の材料から成る連結部品の場合、この熱電対は、有利には、連結部品から電気的に切り離される。別の変化形態では、温度測定ユニットは、放射温度計又は光ファイバーセンサーを備えることができる。この制御ユニットは、温度測定ユニットを用いて検出された連結部品の実際の温度と連結部品の所与の目標温度に応じて温度制御装置を制御する。
【0027】
本発明による処理設備は、一つの処理室と、その処理室内の少なくとも一つの電極と、少なくとも一つの本発明による電極を温度制御するシステムとを有する。この処理室が、二つ以上の電極を有する場合、有利には、各電極は、それぞれその電極を温度制御する個別のシステムを割り当てられる。即ち、電極を温度制御する各システムの少なくとも一つの伝熱管と連結ユニットは、ちょうど一つの電極に割り当てられるが、温度制御装置は、複数の電極又は連結部品を同時に温度制御するために用いることもできる。それに代わって、そぞれ電極の中の一つであるが、それぞれ異なる電極と接続された伝熱管を一つの連結部品とだけ接続し、そのため、一つの連結部品を複数の電極に割り当てることも可能である。有利には、処理設備は、処理室内で真空を発生させるのに適しており、そのための相応の装置と特性を有する。
【0028】
有利には、電極を温度制御する少なくとも一つの第一のシステムの温度制御装置は処理室の外に配置される。しかし、それに代わって、温度制御装置は、処理室の中に配置することもできる。即ち、例を挙げると、例えば、石英ガラスから成る被覆パイプ内に配置された赤外線放熱器を処理室の中に配置することができる。この変化形態は、被覆パイプが処理室内の雰囲気、例えば、真空に対して密閉され、そのため、被覆パイプの内部では、雰囲気圧力において所定のガス組成が支配的になるとの利点を有する。それによって、赤外線放熱器の動作電圧時における制限が無くなる。
【0029】
有利な実施構成では、電極を温度制御する第一のシステムの温度制御装置が処理室の外に配置され、この第一のシステムの連結部品が完全に処理室の中に配置される。この場合、温度制御装置は、有利には、赤外線放熱器であり、処理室は放射線用窓を有し、その窓を通して、赤外線が温度制御装置から連結部品に到達することができる。それに代わって、温度制御装置が誘導器であり、処理室を交番磁界に関して適合させることができる。この場合、有利には、温度制御装置と電極の間の電気的な切り離しは、温度制御装置と連結部品の間の間隔と、誘電体として作用する、それらの間に有る空気、或いは、場合によっては、それらの間に有る真空とによって実現される。
【0030】
当然のことながら、温度制御装置が処理室の外に配置された第一のシステムの連結部品を完全又は部分的に処理室の外に配置することもできる。それに対応した処理室の壁を通る貫通孔は当業者に周知である。
【0031】
有利には、処理設備は、複数の電極と電極を温度制御する複数のシステムとを有し、電極を温度制御する少なくとも二つのシステムの連結部品は、少なくとも一つの追加の伝熱管を介して互いに接続される。従って、個々の連結部品の間の温度差を均して、割り当てられた連結部品が追加の伝熱管を介して互いに接続された全ての電極に渡る特に均一な温度分布を実現することができる。それに代わって、当然のことながら、異なる電極に関して異なる温度を設定することもでき、その場合、これらの電極の連結部品は、追加の伝熱管を介して互いに接続されない。
【0032】
有利には、処理設備は、複数の電極と電極を温度制御する複数のシステムとを有し、電極の使用面は、それぞれ互いに平行に対向して配置される。それは電極のスタックに相当し、この場合、電極は、垂直方向に上下に、水平方向に並んで、或いは任意の別の空間方向に沿って並んで配置することができる。この場合、並んだ電極は、異なる電極電圧を印加できるように、一つ又は複数の電圧供給部と接続される。従って、並んだ電極は、それぞれ(平板)コンデンサを形成し、そこでは、例えば、プラズマを点火させるか、或いは別の処理を施すことができる。この場合、有利には、第一の電極電圧を加えられる電極と第一の電極電圧と異なる第二の電極電圧を加えられる電極とがスタック内に交互に配置される。各電極は、その電極を温度制御する個々のシステムに割り当てられて、各連結部品は、ちょうど一つの電極に割り当てられる。電極を温度制御するシステムの連結部品は、本発明によるシステムの第二又は第三の実施構成と関連して上述した通り、それぞれ電極から切り離された物体である。この場合、各連結部品は、その少なくとも一つの外面に、それに割り当てられた電極と同じ電位を有する。言い換えると、電極と連結部品は、電気的に連結されて、同じ電位に有る。並んだ電極の連結部品の間で追加的に形成される(平板)コンデンサの容量を低減し、それにより寄生プラズマが点火する虞を最小化するために、並んだ電極に割り当てられた連結部品は、並んだ電極の間隔に対して直角の少なくとも一つの方向において互いにずらして配置される。即ち、連結部品は、電極の異なる側に配置されるか、或いは、有利には、電極の対向する側に配置されるか、さもなければ、電極の側方延伸部の中の一つの一部に渡ってのみ延びる連結部品は、確かに電極の同じ側に配置されるが、電極のその側方延伸部に沿って互いにずらして配置され、有利には、一つの連結部品が、それに対応する電極の側方延伸部の始めに配置され、一つの連結部品が、それに対応する電極の側方延伸部の終わりに配置される、即ち、側方延伸部の異なる周縁部に配置される。
【0033】
処理設備の特別な実施構成では、電極を温度制御する少なくとも一つのシステムの連結部品は、電圧供給部と接続されて、単独で、或いはそれぞれ少なくとも一つの伝熱管と共に、それに対応する電極に電極電圧を印加するのに適している。言い換えると、連結部品は、導電性であり、電極と接するか、或いは少なくとも一つの伝熱管も導電性である場合、連結部品を介して電極に電力を供給することができる。従って、電極への別個の電圧供給を連結部品への電圧供給に置き換えることができ、そのことは、電極の所要スペースと処理設備の別の特性に関して肯定的な効果を有する。例えば、真空の実現回数を低減するとともに、寄生プラズマを防止するか、或いは電極への別個の電圧供給時における寄生プラズマの発生を防止するための追加の電気絶縁を省略することができる。追加の伝熱管が存在する場合、その伝熱管を連結部品に電極電圧を供給するために利用することもできる。
【0034】
本発明によるシステム及び本発明による処理設備は、以下の利点を有する。
ア 電極内における非常に均一な温度分布(0.5K以下の温度差)が実現可能である。イ 非常に速い熱伝導、特に、2~3K/秒の高い加熱速度が可能である。
ウ 本システムの全ての材料がプロセスに適合するように選定可能であり、伝熱管を介して、追加の電磁界が導入されないので、電極を用いたプラズマプロセスに影響を与えない。
エ 温度制御装置からの電極の少なくとも著しい電気的な切り離しによって、電極に電力を印加した時の電気損失が防止又は最小化される。
オ 温度制御装置からの電極の少なくとも著しい電気的な切り離しによって、温度制御装置が、高周波の電極電圧による妨害から保護される。
カ 冷却も可能である、電極を温度制御する変化形態を安価で多方面に渡って実現可能である。
キ 処理室内の液体又はガス状の不純物の体積の最小化によって、漏れの虞が最小化される。
ク 処理室又は処理設備全体の保守の負担が最小化される。
ケ 構成部品の多機能化(例えば、熱量を伝達するとともに、電極に電圧を供給するための伝熱管)によって、必要な真空実現回数が最小化される。
【0035】
以下において、実施例及び図面に基づき本発明を明らかにする。この場合、個々の部品のサイズ及びそれらの関係は、互いに正しい縮尺ではなく、単に模式的に描かれている。同じ符号は、それに対応する同様の構成部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】温度制御装置が連結部品から間隔を開けて配置された、本発明による電極を温度制御するシステムの第一の例の模式図
図1B】温度制御装置が連結部品と物理的に接続された、本発明による電極を温度制御するシステムの第二の例の模式図
図2】本発明による電極を温度制御するシステムの第一の実施構成に関する例の一部の斜視図
図3A】本発明による電極を温度制御するシステムの第二の実施構成に関する例の斜視図
図3B】第一の位置における図3Aの例の横断面図
図3C】第二の位置における図3Aの例の横断面図
図4】本発明による電極を温度制御するシステムの第三の実施構成に関する第一の例の一部の斜視図
図5A】本発明による電極を温度制御するシステムの第三の実施構成に関する第二の例の一部の斜視図
図5B図5Aに図示された構成部品の下側部分だけの斜視図
図6A】電極を温度制御するシステムの連結部品が処理室の外に配置された、本発明による処理設備の第一の例の模式図
図6B】電極を温度制御するシステムの連結部品が処理室の中に配置され、温度制御装置が処理室の外に配置された、本発明による処理設備の第二の例の模式図
図7】複数の電極が配置された、本発明による処理設備の第三の例の模式図
図8】並んだ連結部品がずらして配置され、連結部品の中の幾つかが追加の伝熱管を介して同じ電位で互いに接続された電極スタックを有する本発明による処理設備の第四の例の模式図
図9】並んだ連結部品がずらして配置され、連結部品が共通の温度制御装置によって同じ電位で温度制御される電極スタックを有する本発明による処理設備の第五の例の模式図
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1A及び1Bと関連して、本発明による電極を温度制御するシステム1の基本構造が図示されており、連結部品との温度制御装置の熱的結合は、熱放射(図1A)又は熱伝導(図1B)により行われる。
【0038】
図1Aは、本発明によるシステムの第一の例100を図示している。このシステムは、少なくとも、第一の端部121と第二の端部122を有する一つの伝熱管120と、一つの連結部品130と、一つの温度制御装置140とを備えている。伝熱管120の第一の端部121は、電極110の内部に配置される一方、伝熱管120の第二の端部122は、図示された例100では、連結部品130の中に配置されている。この伝熱管120は、少なくとも部分的に、その長手方向の(伝熱管の第一と第二の端部の間の)延伸部を電極110の使用面115に対して平行に延ばしており、この電極上には、例えば、基板170が配置されて保持されるか、或いは支持される。複数の基板を電極110の使用面115の上に配置して保持するか、或いは支持することもできる。この使用面115は、図示されたケースでは、xy平面内を延びる。図示されたケースでは、伝熱管120は、その長手方向の延伸部全体を使用面115に対して平行に、例えば、x方向に沿って真っ直ぐな伝熱管として延ばしている。この連結部品130は、連結部品130の別の領域と比べて高い熱吸収率を有し、熱伝導面136と対向する、連結部品130の外面と比較して、並びに、連結部品130と対向する、電極110の外面と比較して、より大きな面積の黒くされた熱伝導面136を有する。そのために、図示されたケースでは、熱伝導面136の延伸部がz方向に拡大されている。この熱伝導面136は、ここでは、赤外線放熱器である温度制御装置140からの(図1Aでは、破線の矢印により表示された)熱放射線を特に良好に吸収するのに適している。この伝熱管120の第二の端部122は、熱伝導面136と接しないが、別の例では、熱伝導面と接することもできる。
【0039】
この温度制御装置140は、誘導した渦電流により連結部品130を加熱する誘導器であるとすることもできる。このケースでは、連結部品は、別個の熱伝導面を持たない。
【0040】
本発明によるシステムの第一の例100では、連結部品130は、電極110に対して独立した物体であり、電極から間隔を開けて配置されており、電極110と連結部品130の対向する外面の距離は、図1Aでは間隔dとして表示されている。この間隔dは、0mm~100mmの範囲内に有り、この間隔dは、一つ又は複数の伝熱管120の最大長によって制限される。現在入手可能な伝熱管120の小さい直径では、この最大長は約1mである。しかし、図2と関連して詳しく説明する通り、連結部品を電極の外面として構成することもできる。更に、連結部品130と温度制御装置140は、同じく互いに間隔dを開けて配置されており、連結部品130と温度制御装置140の間には、空気及び/又は真空が存在する。この間隔dは、1mm~50mmの範囲内にある。この場合、温度制御装置140と連結部品130の間の数pFの範囲内の小さい容量結合を保証すべきであるので、間隔dの最小値は、特に、熱伝導面136の大きさにより決まる。それに対して、この間隔dの最大値は、特に、温度制御装置140の集束能力及び/又は処理能力に依存し、そのため、所与の値よりも大きくすることもできる。従って、伝熱管120及び/又は連結部品130は、導電性又は電気絶縁性に構成することができる。
【0041】
本発明によるシステムの第一の例100は、更に、温度測定ユニット150と制御ユニット160を有する。この温度測定ユニット150は、連結部品130の温度又は連結部品130の温度の推定を可能にするそれ以外のパラメータを測定して、一つ又は複数の測定したパラメータ、或いはそれから求めた温度を有線方式又は無線方式により制御ユニット160に伝送する。この温度測定ユニット150は、図示されたケースでは、熱伝導面136を介して放出される放射線により連結部品130の温度を検出する放射温度計151として実現されている。この制御ユニット160は、無線接続とすることもできる制御配線161を介して、連結部品130の所望の温度が実現されるように、温度制御装置140を制御する。
【0042】
図1Bに図示された本発明によるシステムの第二の例101は、図1Aの第一の例100と以下の点において相違する。
ア ここでは、連結部品130は、第一の例100の黒くされた熱伝導面の代わりに、高い熱伝導度の熱伝導面137を有する。
イ この温度制御装置140は、抵抗式加熱器142(又は流体ベースの温度制御装置)であり、電気絶縁体143を介して連結部品130の熱伝導面137と物理的に接続されている。この電気絶縁体143は、例えば、酸化物セラミック、例えば、Al、或いは非酸化物セラミック、例えば、AlNから構成することができる。伝熱管120及び/又は連結部品130が電気絶縁形態で実現されている場合、その電気絶縁体143を省いて、温度制御装置140を連結部品130の熱伝導面137と直に接するようにすることもできる。この電気絶縁体143も、20W/(m・K)以上の、さもなければ、有利には、150W/(m・K)を上回る高い熱伝導度を有する。
ウ 温度測定ユニット150は、連結部品130の表面に配置された熱電対152から構成され、それは、場合によっては、絶縁体によって連結部品130から電気的に切り離されている。この熱電対152は、連結部品130の温度と関連するパラメータを測定して、そのパラメータを、或いは検出された温度を有線方式又は無線方式により制御ユニット160に送る。
【0043】
図2は、本発明による電極111を温度制御するシステムの第一の実施構成に関する例102の一部を斜視図で図示している。この電極111は、五つの伝熱管120a~120eを備えるとともに、使用面115と側面116を有する。この側面116は、同時に第一の実施構成102の連結部品131を構成する。図2には、本発明によるシステムの温度制御装置とそれ以外の部品は図示されていない。
【0044】
この連結部品131は、黒くされた熱伝導面136として実現されている。伝熱管120a~120eの第二の端部122は、全て電極の側面116と接する一方、伝熱管120a~120eの第一の端部121は、側面116と対向する、電極111の側面の近くに配置されているが、その面と接していない。これらの伝熱管120a~120eは、楕円形の横断面を有する真っ直ぐなパイプとして構成されて、電極111の内部を使用面115に対して平行に延びている。それらは外から見ることができないので、図2では、それらの輪郭だけが破線で表示されている。当然のことながら、伝熱管は、それ以外の、例えば、円形又は扁平な横断面を有することもできる。更に、伝熱管は、例えば、電極の取り付け時に容易に平坦にされた、或いは変形された場合に、規則的でない横断面又は局所的に異なる横断面を有することもできる。
【0045】
図3A~3Cと関連して、本発明による電極112を温度制御するシステムの第二の実施構成に関する例103を説明する。この場合、図3Aは本システム103の模式的な斜視図を図示する一方、図3Bと3Cは、それぞれ位置Y1又はY2における図3Aのシステム103の模式的な横断面を図示している。
【0046】
このシステム103は、電極112内に配置された伝熱管1201及び1202と、電極112に対して独立した物体であり、伝熱管1201及び1202と直に接続されていない連結部品132とを有する。この連結部品132は、電極112の上側の使用面115oと接する上側部分132oと、電極112の下側の使用面115uと接する下側部分132uとから構成される。この場合、図3A~3Cに図示されている通り、上側の使用面115oの上の連結部品132が配置されていない領域に、基板170を配置して保持することができる。このシステム103の図示された例では、下側の使用面115uは、使用されないが、例えば、その下側の使用面115uの下にz方向に沿って配置されたプロセス空間にプロセスガスを供給するガス分配器を備えることができる。しかし、当然のことながら、連結部品132は、電極112の表面の中の一つにだけ配置することもできる、即ち、例えば、上側部分132oだけから構成することもできる。
【0047】
このシステム103は、更に、図示された例では、例えば、石英ガラスから成る被覆管144内に配置された赤外線放熱器141である温度制御装置140を有する。この被覆管144内には、基板170の処理中に生成されるプロセス雰囲気と異なる雰囲気が存在することができる。例えば、被覆管144内の雰囲気を標準圧力(10Pa)の空気であるとすることができる一方、プロセス雰囲気は、100Paの圧力のシラン(SiH)と水素(H)から成る混合気である。この利点は、赤外線放熱器141がプロセス雰囲気から保護されて、理想的な周囲環境条件で動作できることである。この場合、赤外線放熱器141は、その全長に渡って(図面ではz方向に沿って)同じ形状で形成されるか、或いは、その長さに沿って異なる領域を有することができ、それらの異なる領域は異なる熱量を放出する。
【0048】
温度制御装置140は、連結部品132の開口部145及び電極112の開口部117の中に配置されている。この場合、両方の開口部14と117は、それぞれ連結部品132全体又は電極112全体を貫通して延びており、その結果、温度制御装置140は、連結部品132の上側部分132oからも、連結部品132の下側部分132uからも突き出ている。しかし、温度制御装置140は、例えば、連結部品132の中で、或いは、例えば、上側部分132oの中で終止することもでき、その結果、連結部品132の開口部145は、上側部分132oの表面にまで到達しない。この被覆管144は、例えば、直径が32mmの円形の横断面を有する。この被覆管144は、被覆管144、連結部品132及び電極112の熱膨張を可能にするために、例えば、0.5mm~5mmの幅の隙間によって、連結部品132及び電極112から間隔を開けて配置される。連結部品132の外面である、連結部品132の開口部145の内面は、連結部品132の熱伝導面を構成して、熱放射線を特に良好に吸収するために、例えば、黒くされた熱伝導面136として構成することができる。即ち、この熱伝導面136は、連結部品132のそれ以外の領域と比べて高い吸収性能を有する。この連結部品は、例えば、アルミニウムから構成されるが、非導電性の材料から構成することもできる。
【0049】
伝熱管1201及び1202は、電極112の中に配置されて、伝熱管1201及び1202の両端は電極112の中に有る。一つ又は複数の伝熱管1201は、図3Bに図示されている通り、電極112において開口部117も形成された電極112の領域にy方向に沿って配置されている。それに対して、伝熱管1202は、図3Cに図示されている通り、電極112において開口部117が形成されていない電極112の領域にy方向に配置されている。一つ又は複数の伝熱管1201は、x方向の長さが伝熱管1202よりも短い。伝熱管1201及び1202は、全体として連結部品132から間隔を開けて配置されている、即ち、それらは連結部品と接しないとともに、伝熱管1201及び1202の一端が連結部品132の中に配置されていない。従って、温度制御装置140から伝熱管1201及び1202への熱量又はその逆の熱量は、電極112の材料を介して伝達され、温度制御装置140は、電極112を直に温度制御するとともに、連結部品132を介して間接的に温度制御する。この場合、連結部品132から電極112への熱伝導は、大きな連結面(連結部品132と電極112の間の境界面)と、電極112と比べた連結部品132のより良好な熱伝導度とにより、温度制御装置140から電極112への直接的な熱伝導よりも著しく大きくなる。この連結部品132は、全体として、温度制御装置140に沿った(z方向に)電極112よりも著しく大きな長さに渡って延びている。例えば、z方向に沿った連結部品132の上側部分132oと下側部分132uの厚さの合計が38mmである一方、電極112は、z方向に沿って12mmの厚さしかない。xy平面における連結部品132と電極112の間の連結面は、例えば、100cmであり、それは、例えば、電極112の使用面の15%以内に相当する。
【0050】
当然のことながら、二つ以上の温度制御装置140、例えば、二つ又は三つの温度制御装置を開口部145及び117内に配置することができ、それらは、異なる熱量を連結部品132に伝達することができる。更に、温度制御装置140が抵抗式加熱器又は流体ベースの装置であることも可能であり、その際、電極112と温度制御装置140の間に、場合によっては、連結部品132と温度制御装置140の間にも、相応の電気絶縁部が配備される。更に、連結部品132は、例えば、ガス供給部又は電極112に電位を供給する電気端子などの更に別の部品を備えることもできる。
【0051】
図4は、本発明による電極113を温度制御するシステムの第三の実施構成に関する第一の例104の一部を図示しており、温度制御装置は図示されていない。この本発明によるシステムの第三の実施構成も、連結部品が独立した物体として構成されているとの特徴を有する。第一の例103では、連結部品133が電極113の側面116と接する。図4は、それぞれ、伝熱管120f~120kが配置された、電極113と連結部品133の下側だけを図示している。例えば、伝熱管120kに関しては、第一の端部121と第二の端部122が表示されている。全ての伝熱管120f~120kは、先ずはx方向に沿って連結部品133から電極113に延びた後、更なる延びがy方向に沿って延びる、横断面が円形の曲がったパイプとして実現されている。この曲げによって、伝熱管120f~120kは、電極113を、そのxy平面に沿った拡がり全体において均一に温度制御する一方、同時に、連結部品133は、y方向に関して電極113よりも著しく小さい拡がりを有する。温度制御装置からの良好な熱的結合を実現するために、連結部品133は、例えば、図1A及び1Bと関連して説明した通り、黒くされた熱伝導面又は高い熱伝導度の熱伝導面であるとすることができる熱伝導面135を有する。この熱伝導面135は、電極113の側面116と比べて、より大きなz方向に沿った拡がりを有する。
【0052】
既に述べた通り、図4では、電極113又は連結部品133に、その部品のために設けられた窪みに伝熱管120f~120kが配置されている、電極113の下側と連結部品133の下側だけが図示されている。この場合、窪みは、有利には、伝熱管120f~120kのほぼ全体が電極113の下側又は連結部品133の下側に収容されるような大きさである。即ち、伝熱管120f~120kのための窪みの深さは、例えば、伝熱管の高さよりも若干低く、その結果、伝熱管は、電極113又は連結部品133の上側に取り付けた時に、電極113又は連結部品133の下側の上に容易に沈められる。従って、半田ペーストや伝熱ペーストなどの更なる補助手段無しに、伝熱管120f~120kと電極113又は連結部品133の間の非常に良好な熱的接触を実現することができる。しかし、z方向に沿った伝熱管120f~120kの拡がりのほぼ半分までを電極113の下側又は連結部品133の下側によって収容することも可能である。そして、電極113又は連結部品133の上側は、それぞれ同じく相応の窪みを有し、その結果、伝熱管120f~120kは、電極113及び連結部品133の各上側及び下側への連結後に、完全に電極113又は連結部品133の材料によって包囲される。電極113又は連結部品133の上側及び下側との連結のために、電極113及び連結部品133は、貫通孔又は電極112又は連結部品133の材料内で終止する孔であるとすることができる固定用孔180を有し、その孔に、固定手段を、例えば、ネジ、リベット又はそれらと同様の物を差し込むことができる。
【0053】
例えば、移動方向に関して、電極113を移動又は保持するための保持開口部190が電極113の下側に設けられる一方、xy平面内を延びる、電極113の上側の外側表面が基板を収容して保持する役割を果たす。
【0054】
図5A及び5Bは、本発明によるシステムの第三の実施構成に関する第二の例105の一部の斜視図であり、図5Bは、図5Aに図示された構成部品の下側部分だけを図示している。本発明によるシステムの温度制御装置と、場合によっては、それ以外の構成部品は図示されていない。
【0055】
又もや、これらの電極114と連結部品134は、それぞれ上側部分114o又は134oと下側部分114u又は134uから構成され、これらの部分は、それぞれ伝熱管120l~120qが配置された窪みを有する。図4に図示された第一の例104と異なり、伝熱管120l~120qは、x方向に沿って真っ直ぐに延びて、曲がり部分を持たない。更に、連結部品134は、y方向に沿って電極114の側面116の拡がり全体に渡って延びており、その結果、連結部品134と電極114がy方向に沿って同じ拡がりを有するとともに、側面116から間隔を開けて配置されている。伝熱管120l~120qは、y方向に沿って電極114と連結部品134の拡がりに渡って均一に分散して配置されている。しかし、場合によっては、電極114のその側面への大きな熱排出を均すか、或いは電極114の拡がりに渡った別の特別な熱分布を実現するために、それ以外の分布形態も有利であるとすることができる。また、この連結部品134は、電極114の側面116に対してz方向に拡大された熱伝導面135を有する。
【0056】
図5Aは、使用状態における電極114と連結部品134を図示しており、上側部分114o又は134oと下側部分114u又は134uは、(図5Bに図示された)固定用孔180に差し込まれた固定手段181(例えば、ネジ)によって互いに固定的ではあるが、解除可能に接続されている。それに対して、図5Bは、側面116の下側部分116と共に電極114の下側部分114uだけを図示するとともに、熱伝導面135の下側部分135uと共に連結部品134の下側部分134uだけを図示している。
【0057】
更に、図5Aでは、基板保持部又は基板を収容するための窪み118が電極114の使用面115に設けられていることが分かる。
【0058】
更に、温度制御装置140が、図3A~3Cと関連して説明した通り、連結部品133又は134内の開口部を通って突き抜けることも、そのため、連結部品133又は134を「内側から」温度制御することも可能である。
【0059】
図面では、これまで、一つの電極に対して、常にちょうど一つの連結部品を図示しているが、複数の連結部品を、一つの電極を温度制御するための付属する伝熱管と共に使用することもできる。言い換えると、電極を温度制御する複数のシステムを一つの電極において使用することもでき、例えば、複数のシステムの中の幾つか、或いは全ての温度制御装置が一つの共通の温度制御装置であるとすることもできる。後者の場合、連結部品又は伝熱管の異なる実施形態によって、電極の異なる領域に異なる熱量を導入することができる。例えば、電極の異なる領域を異なる形態により温度制御する場合に、電極を温度制御する複数のシステムを一つの電極だけを温度制御するために使用することができる。しかし、一般的に、大抵の電極材料の高い熱伝導度は、入熱量が僅かに異なる場合でも、電極の全ての領域を均一に温度制御するのに有用である。
【0060】
図6Aは、本発明による処理設備の第一の例200の模式図を図示している。この処理設備200は、少なくとも一つの電極110が配置された処理室210を有する。この電極110は、本発明による温度制御システムを用いて加熱又は冷却される。そのために、この温度制御システムは、図1Bと関連して述べた通り、少なくとも、一つの伝熱管120と、一つの連結部品130と、一つの温度制御装置140とを有する。温度測定ユニット150と制御ユニット160も有る。第一の例200では、連結部品130と温度制御装置140は、処理室210の外に配置されている。従って、処理室210の内部をその周囲環境から隔離する、処理室210の壁211は、伝熱管120のための貫通孔212を有し、この孔は、壁211からの伝熱管120の断熱を、場合によっては、壁211からの伝熱管120の電気絶縁も保証する。電極110の使用面115には、処理設備200に属さない基板170が配置されており、処理室210内で実行されるプロセスにより処理することができる。そのために、電圧供給部220から電気配線221を介して、電極110に所定の電極電圧を印加することができる。この電圧は、非接触形態により伝送することもできる。真空ポンプやガス供給配管などの処理設備200の別の部品は、ここでは図示されていない。
【0061】
図6Aに図示された第一の例200は、熱配管を介した連結部品130への入熱を実現する温度制御装置140、例えば、(図示された通りの)抵抗式加熱器又は流体ベースの温度制御装置を採用することを可能にする。この場合、処理室210から温度制御装置を移転させることによって、流体ベースの温度制御装置の漏れの作用を軽減することができる。しかし、当然のことながら、温度制御装置として放射線源を使用することも可能である。
【0062】
図6Bは、本発明による処理設備の第二の例201の模式図を図示している。この場合、処理設備201は、基本的に処理設備200と同じ構成部品、即ち、電極110、伝熱管120、連結部品130、温度制御装置140、温度測定ユニット150、制御ユニット160、壁211を備えた処理室210、電圧供給部220及び電気配線221を有する。しかし、ここでは、連結部品130が処理室210の中に配置される一方、更に、温度制御装置140は処理室210の外に配置されている。このことは、特に、図1Aと関連して述べた通り、温度制御装置140として(図示されている通りの)赤外線放熱器141又は誘導機器を使用するのに適している。温度制御装置140と連結部品130の間の放射線経路には、例えば、石英ガラスから成る放射線用窓213が処理室210の壁211に配置されている。
【0063】
図7は、複数の電極が処理室内に配置された、本発明による処理設備の第三の例202を模式的に図示している。この例202では、二つの電極110aと110bが処理室210内に配置されており、電極110a及び110bの使用面115a及び115bは、互いに平行にかつ互いに対向して配置されている。従って、両方の電極110a及び110bは、相応の電位を加えた場合に、例えば、電極110aと110bの間のプラマの点火を可能にする一つの平板コンデンサを構成する。そのために、これらの電極110a及び110bは、それぞれ別個の電気配線221a又は221bを介して、それぞれ別個の電圧供給部220a又は220bと接続されている。当然のことながら、一つの電圧供給部だけから、両方の電極110a及び110bに異なる電位を加えることもできる。
【0064】
この場合、図7に図示されている通り、一方の電極、例えば、電極110bだけが一つ又は複数の基板を保持する一方、他方の電極、例えば、電極110aは所定の電界を発生する役割だけを果たすことができる。しかし、両方の電極が一つ又は複数の基板を保持するか、或いは一方又は両方の電極が、例えば、ガスを供給する機能などの別の機能を実行することもできる。
【0065】
各電極110a及び110bは、各電極を温度制御する別個のシステムによって加熱又は冷却することができる。そのために、第一の伝熱管120aが、第一の連結部品130aと第一の電極110aの間で第一の熱量を伝達し、この第一の連結部品130aは、第一の温度制御装置140a、例えば、第一の電気絶縁体143aを介して第一の連結部品130aと接続された第一の抵抗式加熱器142aによって、第一の温度にまで加熱される。第二の伝熱管120bが、第二の連結部品130bと第二の電極110bの間で第二の熱量を伝達し、この第二の連結部品130bは、第二の温度制御装置140b、例えば、第二の電気絶縁体143bを介して第二の連結部品130bと接続された第二の抵抗式加熱器142bによって、第二の温度にまで加熱される。従って、連結部品130a及び130bの異なる、或いは同じ第一又は第二の温度を、そのため、電極110a及び110bの異なる、或いは同じ第一又は第二の温度も設定することができる。当然のことながら、各連結部品と各電極の間で熱を伝達するために複数の伝熱管を使用することもでき、伝熱管の数、その実施形態及び/又は配置形態は、電極を温度制御する異なるシステムに関して同じであるか、或いは異なるものとすることができる。
【0066】
これらの連結部品130a及び130bと温度制御装置140a及び140bは、例えば、図6Aと関連して説明した通り、処理室210の外に配置されている。従って、処理室210は、伝熱管120a又は120bのための二つの貫通部212a及び212bをも有する。例えば、同様の温度制御装置140a及び140bが図示されているが、存在する電極の各々に対して異なる温度制御装置を使用するか、或いは複数の電極に対して一つの共通の温度制御装置を使用することもできる。
【0067】
図8は、本発明による処理設備の第四の例203を模式図で図示している。この場合、処理室210内には、互いに上下に配置された複数の電極110a~110fから成る電極スタックが配置されており、各電極110a~110fの使用面は、z方向に沿って位置する異なるxy平面内に互いに平行に延びている。この場合、電極スタックの外側の電極110aと110fの各々は、並んだ電極、即ち、電極110b又は電極110eの方を向いた使用面だけを有する。内側の電極110b~110eの各々は、それぞれ並んだ電極の使用面の方を向いた二つの対向する使用面を有する。例えば、電極110bに関して、上側の使用面115oと下側の使用面115uが図8に表示されており、上側の使用面115oが電極110aの使用面の方を向く一方、下側の使用面115uは電極110cの上側の使用面の方を向いている。当然のことながら、電極スタックにおける電極の数は、自由に選定することができ、図示された六つの数の電極に限定されない。例えば、20個、50個、それどころか100個の上下に配置された電極から成る電極スタックも周知であり、複数の電極スタックを横方向に並んで配置することもできる。
【0068】
各電極110a~110fは、各電極を温度制御する別個のシステムによって、所定の温度にまで加熱又は冷却される。そのために、電極110a~110fの各々は、例えば、電極110bに対して表示されている、少なくとも一つの伝熱管120を介して、一つの連結部品130a~130fと接続されている。この例203では、全ての連結部品130a~130fは、処理室210内に配置されており、それぞれ、赤外線放熱器として構成された温度制御装置140a~140fによって加熱される。そのために、図6Bと関連して説明した通り、温度制御装置140a~140fとそれらに付属する連結部品130a~130fの間の各放射線経路内における処理室210の壁211に放射線用窓213が配置されている。基本的に、それぞれ割り当てられた連結部品で同じ温度を実現する場合、温度制御装置140a~140fの中の一つ又は複数を一つの共通の温度制御装置に置き換えることもできる。
【0069】
更に、電極スタックに渡る、即ち、z方向に沿った温度の均一化を実現するために、異なる連結部品を互いに接続する追加の伝熱管を使用することができる。例えば、図8には、二つの追加の伝熱管230aと230bが図示されている。この場合、伝熱管230aは、連結部品130b、130d及び130fを互いに接続する一方、伝熱管230bは、連結部品130c及び130eを互いに接続する。例えば、電極110aを電極110c及び110eと異なる温度に温度制御するので、連結部品130aは、伝熱管230bを介して、それ以外の連結部品と接続されていない。しかし、当然のことながら、相応の電極温度が所望されている場合には、伝熱管230bを介して、連結部品130c及び130eと接続することもできる。二つの異なる追加の伝熱管230a及び230bを使用する理由は、各連結部品及び伝熱管を介した電極への電位供給部と、それらの空間的な配置形態とに因るものである。しかし、電位供給部と電極を温度制御するシステムの別の実施形態では、追加の伝熱管の配置形態をそれ以外の形で構成することができる。
【0070】
それぞれ二つの並んだ電極が、一つの平板コンデンサを構成し、並んだ電極に異なる電位を印加することができる。この例203では、電位の印加は、連結部品130a~130fへの電圧供給によって行われ、連結部品130a~130f及び伝熱管120は、導電性に設計されている。例えば、電極110b,110d及び110fは、各連結部品130a、130d及び130fと各伝熱管120を介して、電圧供給部220aから電気配線221aを通して第一の電位を印加される。電極110a、110c及び110eは、各連結部品130a、130c及び130cと各伝熱管120を介して、電圧供給部220bから電気配線221bを通して第二の電位を印加され、第二の電位は第一の電位と異なる。この代替の電位印加形態では、それぞれ二つの並んだ電極の間に、一つの電界が形成され、そのことは、例えば、プラズマを点火させるのに適している。
【0071】
寄生プラズマが発生する虞を軽減するために、異なる電位を印加される電極の連結部品130a~130fは互いにずらして配置される。図示された例203では、同様に印加される全ての連結部品130a、130c及び130eが電極スタックの右側に配置されるとともに、同様にではあるが、別の電位を印加される全ての連結部品130b、130d及び130fは、電極スタックの左側に配置されている。即ち、異なる形態で印加される電極に割り当てられた連結部品は、それぞれx方向に沿って互いにずらして配置されている。このことは、特に、図5A及び5Bに図示されている通り、各電極の全体的な拡がりに沿ってy方向に延びる連結部品に関して有利である。図4に図示されている通り、各電極の拡がりの一部だけに渡ってy方向に延びる連結部品では、電極を温度制御する全てのシステムの連結部品を電極スタックの片側に、即ち、x方向に沿った側に配置することができるが、異なる形態で印加される電極に割り当てられた連結部品は、その場合、有利には、y方向に沿ってずらして配置される。電極スタックの片側に全ての連結部品を配置することは、全ての連結部品が、場合によっては、一つの温度制御装置によって加熱又は冷却できるとの利点を有する。
【0072】
追加の伝熱管が存在して、導電性に実現されている場合、それと接続された連結部品及びそれに付属する電極に追加の伝熱管を介して電位を印加することもできる。
【0073】
図9は、本発明による処理設備の第五の例204の模式図を図示しており、そこでは、図8の第四の例203と同様に、上下に配置された電極110のスタックにおいて並んだ連結部品133がずらして配置されるとともに、同じ電位を有する連結部品133が、一つの共通の温度制御装置140a又は140bによって温度制御される。この場合、図3A~3Cと関連して述べた電極を温度制御するシステムが用いられる。言い換えると、各電極110a~110fは、その内部に伝熱管120を有し、その伝熱管の第二の端部が各電極110の体積領域にまで達し、その体積領域の外側表面の中の少なくとも一つが各連結部品133a~133fと接する。この場合、異なる電位を有する並んだ電極110の連結部品133は、x方向に関して電極110の対向する側に配置される。この電位は、それぞれ電気配線221a又は221bを介して電圧供給部220a又は電圧供給部220bと接続された連結部品133a~133fを通して供給される。第一の電位に有る連結部品133b、133d及び133fは、z方向に沿って延びる第一の温度制御装置140aを介して接続されて(この第一の温度制御装置140aは、各連結部品133b、133d及び133fと各電極110b、110d及び110fにおける開口部(孔)を通して案内される)、第一の温度制御装置140aによって温度制御される。同様に、第二の電位に有る連結部品133a、133c及び133eは、第二の温度制御装置140bを通って延びて、第二の温度制御装置140bによって温度制御される。第二の温度制御装置140bは、電極110a、110c及び110eにおける相応の開口部を通っても延びている。これらの連結部品133は、それぞれz方向に沿って同じ温度制御装置140a又は140bと接続された直ぐ隣の連結部品133の近くにまで延びることができ、その結果、温度制御装置140a又は140bのほぼ全体が各連結部品133又は電極110内を延びる。しかし、連結部品133は、有利には、温度上昇時における連結部品133の熱膨張を補償できるように、互いに直に接しない。それに代わって、図9に示唆されている通り、温度制御装置140a又は140bの大きい方の領域も連結部品133及び電極110の外に存在することができる。このケースでは、有利には、その拡がりの所定の領域でのみ大きな熱量を放出する赤外線放熱器を使用することができ、その際、これらの領域が、連結部品133及び電極110によって包囲される一方、僅かな赤外線しか発生しない赤外線放熱器の領域は、連結部品133及び電極110の外に配置される。温度制御装置140a及び140bは、処理室210の壁211を貫通して通り抜けて、処理室210の外で制御ユニット160と接続される。
【0074】
この実施例の利点は、処理室210内の所要スペースが非常に少ないことと、既に図3A~3Cと関連して説明した通り、赤外線放熱器のための空気雰囲気が被覆管により閉鎖されていることと、処理室210の壁211によって、真空に必要な実現形態が非常に軽減されることとである。
【0075】
連結部品133は、電圧を供給する以外に、例えば、それぞれ電極110a~110eの下側の使用面115uに配置されたガス分配器にプロセスガスを供給するためにも利用することができる。このことは、ここでは、見易くするために図示されていない。
【0076】
本発明による電極を温度制御するシステム及び本発明による処理設備を実現する前記の手法の幾つか又は全ては、それらが相互に排除し合わない限り、互いに組み合わせることもできる。更に、電極を温度制御する異なるシステムに、異なる温度制御装置と、異なる数、実現形態及び/又は配置形態の伝熱管及び連結部品とを用いることができる。処理設備における電極の数、並びに連結部品及び追加の伝熱管の数、実施形態及び/又は配置形態も図示された例のものに限定されない。ここで挙げた間隔及び大きさに関する値は基準値であるが、相応の構成部品を適切に選定した場合、これらの基準値を上回る、或いは下回ることもできる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.
少なくとも、一つの伝熱管と、一つの連結部品と、一つの温度制御装置とを有する、電極を温度制御するシステムであって、
この伝熱管は、その少なくとも第一の端部を少なくとも部分的に電極内に配置可能であり、
この連結部品は、この伝熱管の第二の端部を加熱又は冷却するのに適しており、
この温度制御装置は、この連結部品を加熱又は冷却するのに適しており、
これらの電極及び温度制御装置は、互いに電気的に切り離されている、
システム。
2.
前記の連結部品は電極の外面の少なくとも一部であり、その部分が、伝熱管の第二の端部と接して、電極のそれ以外の領域と比べて高い熱吸収率を有することを特徴とする上記1のシステム。
3.
前記の連結部品は、高い熱伝導度を有する材料から成る、電極から分離された物体であるとともに、電極の外面の領域に配置することが可能であり、その領域が、伝熱管の少なくとも第二の端部を配置することが可能である電極の体積領域と接することを特徴とする上記1のシステム。
4.
前記の連結部品は、高い熱伝導度を有する材料から成る、電極から分離された物体であり、その中に、伝熱管の少なくとも第二の端部が配置されていることを特徴とする上記1のシステム。
5.
前記の連結部品が導電性の材料から構成されることを特徴とする上記3又は4のシステム。
6.
前記の連結部品が電気絶縁性の材料から構成されることを特徴とする上記3又は4のシステム。
7.
前記の連結部品が熱伝導面を有し、その面が、この連結部品のそれ以外の領域と比べて高い熱吸収率又は高い熱伝導度を有することを特徴とする上記3から6までのいずれか一つのシステム。
8.
前記の温度制御装置が、赤外線放熱器、誘導器、抵抗式加熱器又は流体ベースの装置であることを特徴とする上記1から7までのいずれか一つのシステム。
9.
このシステムが、更に、温度測定ユニットと制御ユニットを有し、この温度測定ユニットが、前記の連結部品の温度と関連するパラメータを検出するのに適しており、この制御ユニットが、この温度測定ユニットを制御するのに適していることを特徴とする上記1から8までのいずれか一つのシステム。
10.
一つの処理室と、その処理室内の少なくとも一つの電極とを有する処理設備において、この処理設備が、更に、上記1から9までのいずれか一つの電極を温度制御するシステムを少なくとも一つ有することを特徴とする処理設備。
11.
前記の電極を温度制御する少なくとも一つの第一のシステムの温度制御装置が、処理室の外に配置されていることを特徴とする上記10の処理設備。
12.
前記の電極を温度制御する第一のシステムの連結部品が、完全にこの処理室の中に配置されており、前記の電極を温度制御する第一のシステムの温度制御装置が赤外線放熱器又は誘導器であることを特徴とする上記11の処理設備。
13.
この処理設備が、複数の電極と、電極を温度制御する複数のシステムとを有し、電極を温度制御するために、少なくとも二つのシステムの連結部品が、少なくとも一つの追加の伝熱管を介して互いに接続されていることを特徴とする上記10から12までのいずれか一つの処理設備。
14.
この処理設備が、処理室内に複数の電極を有し、それらの電極の使用面が、それぞれ互いに平行に対向して配置されており、並んだ電極が、それらに異なる電極電圧を印加できるように、一つ又は複数の電圧供給部と接続されており、
電極を温度制御するシステムが、それぞれ上記3又は4のシステムであり、この連結部品が、その少なくとも一つの外面において、それに割り当てられた電極と同じ電位を有し、
並んだ電極に割り当てられた、電極を温度制御するシステムの連結部品が、それらの並んだ電極の間隔に対して直角である少なくとも一つの方向において、互いにずらして配置されている、
ことを特徴とする上記10から13までのいずれか一つの処理設備。
15.
電極を温度制御する少なくとも一つシステムの連結部品が、電圧供給部と接続されており、単独で、或いはそれぞれ少なくとも一つの伝熱管と共に、割り当てられた電極に電極電圧を印加するのに適していることを特徴とする上記10から14までのいずれか一つの処理設備。
【符号の説明】
【0077】
100~105 電極を温度制御するシステム
110~114,110a~110f 電極
114o 電極の上側部分
114u 電極の下側部分
115 電極の使用面
115o 電極の上側の使用面
115u 電極の下側の使用面
116 電極の側面
116u 側面の下側部分
117 電極における開口部
118 基板保持部のための窪み
120,120a~120q,1201,1202 伝熱管
121 伝熱管の第一の端部
122 伝熱管の第二の端部
130~134,130a~130f 連結部品
132o,134o 連結部品の上側部分
132u,134u 連結部品の下側部分
135 熱伝導面
135u 熱伝導面の下側部分
136 黒くされた熱伝導面
137 高い熱伝導度の熱伝導面
140,140a~140f 温度制御装置
141 赤外線放熱器
142 抵抗式加熱器
143 電気絶縁体
144 被覆管
145 連結部品における開口部
150 温度測定ユニット
151 放射温度計
152 熱電対
160 制御ユニット
161 制御配線
170 基板
180 固定用孔
181 固定手段
190 保持用開口部
200~204 処理設備
210 処理室
211 処理室の壁
212 伝熱管のための貫通孔
213 放射線用窓
220,220a,220b 電圧供給部
221,221a,221b 電気配線
230a,230b 追加の伝熱管
電極と連結部品の間の間隔
連結部品と温度制御装置の間の間隔
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9