(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】生体適合性バリア包装のための積層構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/08 20060101AFI20230509BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B32B27/08
B65D65/02 E
(21)【出願番号】P 2020543696
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2018077012
(87)【国際公開番号】W WO2019081176
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-10-09
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511260148
【氏名又は名称】レノリット ソシエタス エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】RENOLIT SE
【住所又は居所原語表記】Horchheimer Str. 50 67547 Worms GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ブロック・ヤーコプ・ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】フォン・キルヒバッハ・ハンス・パウル・ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・ペートルス・ヨハンネス・アントーニウス
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/152015(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/115685(WO,A1)
【文献】特表2014-508688(JP,A)
【文献】特開2012-250356(JP,A)
【文献】特開2016-005875(JP,A)
【文献】特開2017-105110(JP,A)
【文献】特開平10-272742(JP,A)
【文献】特開2008-208347(JP,A)
【文献】特表2003-512201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順列-A-[B-A-]
n(nは4~36)を有する異なるタイプのポリマーA及びポリマーBの層の交互スタックを含み、ここで、層A及びBの層厚が3μm未満である、柔軟な積層構造体であって、A及びBは、少なくとも部分的に再生可能資源に基づく熱可塑性ポリマーであり、熱可塑性ポリマーAはポリアミド、有核ポリアミド、ポリアミドとエチレンビニルアルコールコポリマーとのブレンド、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスクシネート)、ポリケトン、アイオノマー、バイオオレフィンとカルボン酸もしくはエステルとのコポリマーまたはこれらのアイオノマーもしくは混合物、無水マレイン酸がグラフトしたポリオレフィンもしくはバイオオレフィンカルボン酸もしくはエステルコポリマーもしくはアイオノマー、無水マレイン酸がグラフトしたバイオポリオレフィンもしくはバイオオレフィンカルボン酸もしくはエステルコポリマーもしくはアイオノマーとグラフトされていないバイオポリオレフィンもしくはバイオオレフィンカルボン酸もしくはエステルコポリマーもしくはアイオノマーとのブレンドであり、熱可塑性ポリマーBは
、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンカーボネート、場合によりポリテトラメチレンスクシネートと混合したポリ(1,3-グリセロールカーボネート)、またはポリアミドとエチレンビニルアルコールコポリマーもしくはポリケトンもしくはポリビニルアルコールコポリマーもしくはポリアルキレンカーボネートとの混合物であり、そして熱可塑性ポリマーBは、酸素、窒素、二酸化炭素、有機揮発物及び湿気の透過に対して機能性バリア特性を有し、前記構造体が、23℃及び85体積%相対湿度下に24時間でm
2当たり5gH
2O未満の水蒸気透過速度(DIN53122)、並びに23℃及び50体積%相対湿度下に24時間でm
2当たり10cm
3O
2未満の酸素透過速度(ASTM D3985)を有する、前記積層構造体。
【請求項2】
ポリマーA及び/またはBの一方または両方が、少なくとも部分的に再生可能資源をベースとする熱可塑性エラストマーC及び/またはDとブレンドされ、ポリマーブレンドAC及び/またはBDが形成されており、ここで、ブレンド中の熱可塑性エラストマーC及び/またはDの量はそれぞれ3~45重量%であり、そして熱可塑性ポリマーB及びエラストマーDが本質的に不相溶性であり、そしてこれらの層の交互スタックが、順列-AC-[BD-AC-]nまたは-A-[BD-A-]nまたは-AC-[B-AC-]n(nは4~36)、及び3μm未満の層A、B、AC、BDの層厚を有する、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
ポリマーAがポリアミドまたは有核ポリアミドである、請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
ポリマーAが、バイオエチレンとカルボン酸もしくはエステルとのコポリマーまたはこれらのアイオノマーもしくは混合物、あるいはバイオエチレンとカルボン酸もしくはエステルとの無水マレイン酸グラフトコポリマーまたはこれらのアイオノマーもしくは混合物である、請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項5】
ポリマーAが、それのモノマー性構成要素のうちの少なくとも一つが再生可能資源由来、例えばグリセロール、ジオール、バニリン、フェルラ酸、乳酸、レブリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、1,4-ブタンジアミド、バイオ-1,4-ブタンジオール、二酸、ヒドロキシ酸、フラン、エステルアミド、アミド、エステル、CO、CO
2、バイオ-アルキレン由来であるポリマーである、請求項1~4のいずれか一つに記載の積層構造体。
【請求項6】
ポリマーA及び/またはポリマーBが、ポリマーブレンドAC及び/またはBDの形で使用される、請求項1~5のいずれか一つに記載の積層構造体。
【請求項7】
熱可塑性エラストマーC
及び/またはDが、少なくとも部分的に再生可能資源由来のエラストマーである、請求項6に記載の積層構造体。
【請求項8】
熱可塑性エラストマーC及びDが、互いに独立して、ポリトリメチレンカーボネート、乳酸の割合が少なくとも40モル%であるポリ(ラクテート/ブタンジオール/セバケート/イタコネート)、トリブロックエラストマーであるポリ(L-ラクチド)-b-ポリミルセン-b-ポリ(L-ラクチド)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)もしくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-b-ヒドロキシバレレート)のようなポリエステルエラストマー、ポリイタコネート及びポリイタコン酸アミドからのトリブロックコポリマー、バニリンメタクリレートもしくはグリセロールジメタクリレートブロックコポリマー、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、またはこれらのブレンドである、請求項6または7に記載の積層構造体。
【請求項9】
ポリマーAが、無水マレイン酸グラフトポリオレフィンであり、そしてエラストマーCが、請求項7または8に記載のエラストマーである、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項10】
交互スタックのどちらの面上にも一つまたは複数の機能層を含む、請求項1~9のいずれか一つに記載の積層構造体。
【請求項11】
機能層のうちの一つがシーリング層である、請求項10に記載の積層構造体。
【請求項12】
機能層のうちの少なくとも一つが、それのモノマー性構成要素のうちの少なくとも一部が再生可能資源由来であるポリマーからなる、請求項10または11に記載の積層構造体。
【請求項13】
少なくとも二つの機能層を含み、これらの機能層のうちの一つが、交互スタックと第二の機能層との間の接着を促進するつなぎ層である、請求項10~12のいずれか一つに記載の積層構造体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一つに記載の積層構造体であって、
-ISO527-1、2、3またはASTM D882に従い(23℃及び50%相対湿度で)測定した引っ張り弾性率が<400MPaであり、及び/または
-ISO527-1,2,3またはASTM D882に従い測定した破断点引っ張り強さが>10MPaであり、及び/または
-ISO527-2,3またはASTM D882に従い測定した破断伸びが>200%であり、及び/または
-ASTM D256(23℃、ノッチ付き)またはISO180(1A)(ノッチ付き)に従い測定したアイゾット衝撃強さが破断を生じず、及び/または
-ISO179(ノッチ付き)に従い測定したシャルピー衝撃強さが破断を生じず、及び/または
-ISO8256A1(ノッチ付き、23℃)に従い測定した引っ張り衝撃強さが160KJ/m
2超である、及び/または
-ASTM D1709に従い測定したダート衝撃強さが250g超であり、及び/または
-ASTM D3420に従い測定したスペンサー衝撃強さが30J/mm超であり、及び/または
-ISO6383-2またはASTM D1922に従い測定したエレメンドルフ引き裂き強さが、少なくとも2Nであり、及び/または
-ASTM D638、ASTM D882及びISO527に記載のような応力歪み試験によって決定された引っ張り靱性が>15MJ/m
3であり、及び/または
-ASTM F1306-90またはDIN EN14477に類似の方法を用いて試験した貫入抵抗が少なくとも15Jである、
前記積層構造体。
【請求項15】
請求項14に記載の積層構造体であって、
-ISO527-1、2、3またはASTM D882に従い(23℃及び50%相対湿度で)測定した引っ張り弾性率が<250MPaであり、及び/または
-ISO527-1,2,3またはASTM D882に従い測定した破断点引っ張り強さが>15MPa、但し40MPa未満であり、及び/または
-ISO527-2,3またはASTM D882に従い測定した破断伸びが>300%、但し800%未満であり、及び/または
-ISO6383-2またはASTM D1922に従い測定したエレメンドルフ引き裂き強さが3N超であり、及び/または
-ASTM D638、ASTM D882及びISO527に記載のような応力歪み試験によって決定された引っ張り靱性が>25MJ/m
3であり、及び/または
-ASTM F1306-90またはDIN EN14477に類似の方法を用いて試験した貫入抵抗が25J超である、
前記積層構造体。
【請求項16】
請求項15に記載の積層構造体であって、
-ISO527-1、2、3またはASTM D882に従い(23℃及び50%相対湿度で)測定した引っ張り弾性率が75~150MPaの範囲であり、及び/または
-ASTM D638、ASTM D882及びISO527に記載のような応力歪み試験によって決定された引っ張り靱性が>40MJ/m
3である、
前記積層構造体。
【請求項17】
医療、食品及び他の物質または物品のためのガス、匂い及び湿気バリア機能、柔軟性、透明性及び靱性を有する包装フィルム、及び(液体)(完全)非経口薬、経腸薬、IV薬、CAPD薬、及び局所薬の包装のために、並びに細胞培養及び貯蔵(2D、3D)単及び複室バッグ及び容器の製造のための;並びに食品包装用途での使用のための、並びに化粧品及び個人用衛生用品の包装のための、請求項1~16のいずれか一つに記載の積層構造体の使用。
【請求項18】
前記フィルムがオストミーフィルムとしての使用のための、医薬品もしくは栄養素の包装のための、またはバッグ-イン-ボックスライナーもしくはリッドフィルムとしての使用のための、請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性のポリマー及び/または少なくとも部分的に再生可能資源に由来するポリマーからなる複数の交互する押出ポリマー層を有する強靭で柔軟性でかつ非熱収縮性のバリア積層構造体を提供し、そして一般的にこのような構造体に関するものである。複数の層は、医療、食品及び他の包装用フィルムの用途に有用な優れたガス、匂い及び湿気バリア機能、柔軟性、固有の透明性及び強靭性を供するように構成される。
【背景技術】
【0002】
包装工業では、食品(例えば肉、魚、チーズ)、液状食品(例えばミルクまたはフルーツジュース)並びに医療及び他の製品(例えば医療器具;経腸薬、(完全)非経口薬、局所薬及び液;生細胞;パーソナルケア用製品、例えば香水、包帯、ワイプ)を、多くの場合に多層型フィルム材料の形のポリマー性(すなわちプラスチック)材料から構成された容器、バッグ、トレー及びボトルなどの包装材中に包装することは周知である。
【0003】
環境的に優しく(エコ・フレンドリー)であり、例えば陸、海または大気を数十年にわたって汚染しない、しばしばバイオベースと称される再生可能資源から製造されるポリマー及びポリマー構造体の開発に大きな関心がもたれている。革新的な加工技術を用いることは、化石燃料への依存性を低めそしてより良くかつより持続可能な将来への変遷をサポートするための重要な戦略である。調節可能な物理的、機械的及び生化学的特性を有する生分解性ポリマー及びポリマー構造体を開発することにも大きな関心があり、そして生分解性ポリマーが、生体医学的及び生態学的用途の両方に大きな注目を集めている。ここで、再生可能資源という用語は、ヒトの時間の尺度における有限の時間量での生物学的プロセスまたは他の自然に生じるプロセスのいずれかを介して補充されて、使用及び消費が原因の枯渇を解消する資源を指すために使用される。具体的には、再生可能資源は、油、ガスまたはヒトの寿命と比べて形成するのに非常に長い時間を要する他の資源のような化石燃料からの原料とは異なり、生体から排他的に、好ましくは微生物、植物、真菌、及び動物製品または排出物から排他的に誘導される原料である。エネルギーに関しては、太陽光、水及び風力並びにバイオガスが包含される。ここで、再生可能資源からの材料も、「バイオベース」または「バイオ-」と称される。ポリマーの場合は、少なくとも一つの、好ましくは一つ超の、最も好ましくは全てのモノマーが、再生可能資源由来である。生体適合性材料とは、少なくとも部分的に、好ましくは本質的に、最も好ましくは排他的に、再生可能資源からまたは生分解性材料から、または部分的にもしくは排他的に再生可能資源から製造された生分解性材料から製造された材料のいずれかを意味する。生分解性とは、材料が、環境中に置かれた時にヒトの寿命と同等のまたはそれより短い時間内に、環境に害のない生成物に分解することを意味する。
【0004】
包装のためには、酸素、二酸化炭素、水(湿気)及び有機揮発物(匂い)に対する高いバリアを有するポリマー及びポリマー構造体の開発にも大きな関心がある。ポリマー構造体のバリア特性を改善するために様々な提案がなされている。
【0005】
一つの共通の方策は、例えばEP1629543B1(特許文献1)及びUS8486488B2(特許文献2)に記載されているように、ポリマー構造体の上面の無機層コーティングを使用する。しかし、コーティング中の欠点、例えばピンホールまたは細かいひびの形成は、しばしば拡散通路の形成を招く。これは、経時的にバリア特性を劣化させる。他の不利な点の一つは、第二のプロセスで基本構造にコーティングを施す必要がある点である。
【0006】
ポリマーのガスバリア特性を改善するための固形無機フィラーの導入もまた広く使用されてきており、例えばWO2001/096661A1(特許文献3)に記載されている。しかし、このようなフィラーを多量に導入することは、溶融粘度の特有の上昇の故に加工を複雑にする。また、この導入は、光沢及び透明性などの光学的特性の損失や、または不均一さをしばしば招く。
【0007】
更に別の方策の一つは、機能性バリア特性を持つポリマーからなるフィルムの使用である。酸素、窒素、二酸化炭素及び有機揮発物に対する十分な機能性バリア特性を有する商業的に利用可能なポリマー種は多くはない。一般的に既知のものは、中でも、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリケトン(POK)及びポリアミド(PA)である。より特殊なタイプの一つは、ポリビニルアルコール(PVOH)のフィルムグレードである。或るグレードのポリアミド及びPVOHのみが、二年未満で土壌または(海)水中で分解可能または堆肥化可能であり、そして再生可能資源から製造されているかまたは再生可能資源から製造することができる。例えば、POKは、バイオエチレン及び一酸化炭素から製造することができる。更に、アルキレンオキシド及び二酸化炭素(CO2)から製造された、PEC(ポリエチレンカーボネート)、PPC(ポリプロピレンカーボネート)、PBC(ポリブチレンカーボネート)、PCHC(ポリシクロヘキサンカーボネート)のようなポリアルキレンカーボネートの群も知られている。特に、PECは、ガス及び匂いに対して良好なバリア特性を示す。
【0008】
これらのポリマーからなるフィルムは、所望のバリアを供するが、大概は、他の幾つかの望ましいまたは必要な特性に欠けるか、または比較的高額である。バリア特性を備えたフィルムを供する他のポリマーは、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、メチルペンテン、メチルペンテン、ノルボルネンなどから形成されたポリマーまたはコポリマーであり、少量のエステルまたはアクリレート成分、例えばビニルアセテート(EVA)、メチルアクリレート(EMA)を含むかまたは含まない。これらは、水(湿気)に対して良好なバリア特性を有するが、ガス及び匂いに対するバリア特性に欠けている。一つの例外は、ガスに対する中程度のバリア特性を有するポリイソブチレンである。現在は、ポリマー用の構成要素(例えばモノマー)は、バイオマスから生成することができ、供給原料は、例えばコーン、大豆、小麦、カノーラ、糖、亜麻、ヒマワリ、イネ科植物である。セルロースの予備処理の後は、中でも、エタノール、ブタノール、アセトン及び水素を生成できる。バイオマスのヘミセルロースの前処理後及び化学的変性後に、例えばレブリン酸、ヒドロキシメチルフルフラール及びフルフラールを生成できる。バイオマスからは、リグニンも生成でき、これからバニリン及びビニルエステルを収穫できる。バイオマスの発酵からは、クエン酸、乳酸、コハク酸、アゼライン酸、イタコン酸、アスパルギン酸、グルタミン酸、レブリン酸、及びジカルボン酸も含む更に多くのカルボン酸を収穫できる。リグノセルロース酸からは、重要な酸、例えばフランジカルボン酸(2,5-FDCA)を製造できる。イソソルビド類、脂肪酸、リシン及び他の多くものを、天然の再生可能資源から得ることができる。これらの中間体から、全ての種類の熱可塑性プラスチック及びエラストマー、例えばポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、グリコポリマー、ポリエステルアミド、ポリ(エステル)カーボネート、更にはポリオレフィンを、当技術分野で周知の方法(大概は接触法)によって重合できる。
【0009】
多くの場合に、改善されたバリア特性は、複数の層を備えたフィルム、いわゆる多層フィルムを使用して、例えば水蒸気バリア及びガスバリア特性を組み合わせることによって生み出される。このようなフィルムは、多くの文献及び特許に記載されているが、包装用途のみに向けて記載されたものではない。特に食品包装用途では、バリア包装材のための中央コア層を形成するために、PA/EVOH/PA構造体が広く使用されている(例えば、US4407873A(特許文献4);US4640852A(特許文献5);EP1314758A1(特許文献6);EP1658175B1(特許文献7)またはUS5154789A(特許文献8))。EVOHは、非常に良好な酸素バリア材料であるが、(US4828915A(特許文献9)及びEP64330B1(特許文献10)でも指摘されているように)脆く、そして割れ易く、その結果、そのバリア機能の一部を失ってしまう。この損失を減少するためには、EVOHを、その両側でPA層によって保護できることが見出された。印刷及びシーリングを可能にするためには、良好な印刷性及び/またはシーリング性を持つスキンまたは外側層が通常加えられる。この観点での最も基本的な構造は、バリアコアPA/EVOH/PA;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)もしくはエチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)のようなポリオレフィン(PO)またはオレフィンコポリマー(coPO)の二つのスキン層、及びスキンとコアとの接着を保証するための二つのつなぎ(tie)層(多くの場合には、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンまたはオレフィンコポリマー、MAH-g-POまたはMAH-gーcoPO、例えばMAH-g-EVAまたはMAH-g-EMA)からなり、(co)PO/つなぎ/PA/EVOH/PA/つなぎ/(co)POの積層構造となる、7層フィルムである。エチレン含有率が約23~50モル%の範囲で様々な多くのグレードのEVOHがあり、そしてPAには更により多くの変形及びグレードがあり(例えばPA6、PA6.6、PA4.6,PA4.10、PA6.10、PA10.10、PA10.12、MXD6、PA11、PA12、PA6.12)、これらから、PA11、PA4.10、PA6.10、PA10.10及びPA10.12が、例えば(殆どをまたは部分的に)再生可能資源(例えばトウゴマの種子;ナタネ油;発酵プロセスからのコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸;例えばバイオコハク酸からの1,4ブタンジアミド)から製造される。他の部類のバイオベースポリアミドは、PA6F、PA8F、PA10及びPA12Fであり、これらは、ポリ(ヘキサ、オクタ、デカ、及びドデカメチレンフランジカルボキサミド)である。それで、このような可能な7層構造体には多くのバリエーションがある。食品の包装を初めとした様々な用途、並びに例えばボトルや食肉の周りに使用される収縮性フィルムのようなサブ用途のためにだけでなく、ストーマバッグ用フィルムのような臭気バリア特性が必要な包装、肉、魚、魚肉製品及び肉製品用のスキン包装にも、多くの特許出願が出願されている。全ての種類のバリエーションにおけるEVOHとPAとのブレンドも知られている(例えば、US4990562A(特許文献11)、US5003002A(特許文献12)及びUS5286575A(特許文献13)参照)。
【0010】
WO02/056930A2(特許文献14)は、医療器具、特にカテーテル及びバルーンに関し、これらは、軟質及び硬質ポリマーからの交互層から形成された多層構造体からそれらの壁を作ることによって、より良好な耐応力性を有すると記載されている。水蒸気、酸素などに対するバリア特性については検討されていない。EP2716445A1(特許文献15)は、タイヤのインナーライナーとして有用な多層構造体を記載している。この構造体は、交互のバリア及びエラストマー層に基づき、記載のエラストマーブレンドは、エラストマーをマトリックス層として有するべきである。
【0011】
ガス、匂い及び水(湿気)に対する良好なバリア特性を有するフィルムを積層または共押出によって製造するためには、バリア層には或る程度の最小厚が必要とされる。酸素の良好なバリアは、室温(RT;約21℃)で、85%RH(相対湿度)において、酸素の透過速度が10cm3/m2・日/bar未満である。例えばEVOH中に32モル%のエチレンを有するフィルム構造体を用いる場合は、良好なバリア特性を達成するためには、そのEVOH層は約15μm厚であるのがよい。しかし、EVOH、またPVOHも、RTまたはそれ以下ではかなり堅いポリマーであり、少なくとも、コポリマーの構造中にエチレンを40モル%未満で有するEVOHグレードはそうである。RTでのそれの破断伸びはかなり小さく、そしてこれは、応力、曲げ、衝撃及び伸張力下で(ガラスの様に)脆く割れてしまう。
【0012】
EVOHの柔軟性は、全ての種類のゴム及びエラストマーとブレンドすることによって改善できることも知られており、この際、相溶化剤がしばしば追加的に含有される。例えばUS8470922B2(特許文献16)を参照されたい。第一のこのような変性は、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を作るための、ガラス様ポリスチレンへのゴムまたはエラストマー粒子の添加であった。ゴムは、架橋可能なエラストマーであり、これは、加工及び硬化(加硫)後には、もはや溶融押出可能ではない。これとは対照的に、熱可塑性エラストマー(TPE)は、RTでゴム様の特性を持つ溶融押出可能なポリマーである。これらは、化学的に永続的に架橋されるのではなく、架橋は物理的である。しかし、分散されたゴム相の透明性及び均一性が問題となり得る。これは上記の特許では考慮されていない、というのも、これは、そこに記載の用途には重要ではないからである。
【0013】
他の点は、ゴム及びエラストマー相は、耐衝撃性ポリマーの靱性に対して僅かにしか貢献しないことである。完全には理解されていないが、ゴム相及びエラストマー相体積分率、それらの粒度、粒子とマトリックスとの間の付着の程度、及び変性ポリマー層の厚さなどの様々なパラメータが、ゴムまたはエラストマー粒子周りのひび割れの形成、成長及び破損などの達成された効果に影響を及ぼすものと考えられる。積層体構造のための材料の選択には、これらの全ての要因が通常考慮される。靱性は、サンプルの寸法、ノッチの形状、試験速度及び温度などの外因性の変数、及び分子構造及び微細構造または形態などの内因性のパラメータによって決定される。内因性のパラメータに影響を及ぼすことによってより靱性の高いフィルムを製造することができる。
【0014】
例えばポリカーボネート及びポリ(スチレン-アクリロニトリル)からなる多層型積層体については、靱性及び延性などの性質は、 層の数が増えた時、すなわちそれらの厚さが減少したときに向上することも知られている。例えば、Ma et al.,“Thickness effects in microlayer composites of polycarbonate an poly(styrene-acrylonitrile)”,J.Mat.Science 25(1990) pp.2039-2040(非特許文献1)の最初の二頁を参照されたい。変形プロセスは、配向されたフィルム中の応力が破断応力未満であり、他方で未変形の接続されたマトリックス中の応力が降伏応力を超える場合にのみ存在する。この原則は、ポリマー系に一般的に適用できる。層厚を薄くすることによって、これらの条件は近似され、その結果、変形プロセスが連続的になる。
【0015】
積層体構造のための材料の選択に考慮される他の要因には、使用する材料のコスト及びリサイクル性、堆肥化可能性及び(生)分解性、並びに生じる廃棄物の量を決定する必要な材料の総量などが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】EP1629543B1
【文献】US8486488B2
【文献】WO2001/096661A1
【文献】US4407873A
【文献】US4640852A
【文献】EP1314758A1
【文献】EP1658175B1
【文献】US5154789A
【文献】US4828915A
【文献】EP64330B1
【文献】US4990562A
【文献】US5003002A
【文献】US5286575A
【文献】WO02/056930A2
【文献】EP2716445A1
【文献】US8470922B2
【文献】US6413595B1
【文献】US5076776A
【非特許文献】
【0017】
【文献】Ma et al.,“Thickness effects in microlayer composites of polycarbonate an poly(styrene-acrylonitrile)”,J.Mat.Science 25(1990) pp.2039-2040
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特に、より高い性能を有し、環境に優しく、よりコスト安の多層型ポリマーフィルムを供することが望ましいであろう。より高い性能とは、より小さい坪量及びより良好なカーボンフットプリントの多層フィルムを供しつつ、他方で、既存の積層体の性質と同等かまたはそれを超える必要なバリア機能を供することなどを含む。それ故、本発明の課題の一つは、従来技術を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、本発明者らは、マイクロ層化によってより厚手の全体的なポリマーバリア層を製造することなく、向上したバリア特性、柔軟性、透明性及び靱性を有するより生体適合性の積層構造体を得ることができることを見出した。好ましくは、但し必須ではないが、これらの特性は、第二の相としてバイオ/再生可能資源由来のエラストマーの導入によって更に改善される。本発明によれば、ポリマーA及びB、存在する場合は更にエラストマーC及びDは、少なくとの部分的に再生可能資源由来であり、好ましくは可能であれば全てがバイオベースである。該構造体をワンステップ・ブローフィルム押出プロセスによって製造する場合には、好ましくは、急水冷(water quenching)及びブローアップ比の制御のコンセプトも活用される。
【0020】
それ故、本発明は、順列-A-[B-A-]n(nは4~36)、及び3μm未満、典型的には1μm未満の層A及びBの層厚を有する、異なるタイプのポリマーA及びBの層の交互スタックを含む積層構造体であって、A及びBが、少なくとも部分的に再生可能資源をベースとした熱可塑性ポリマーであり、そして熱可塑性ポリマーBが、酸素、窒素、二酸化炭素、有機揮発物の透過に対する機能性バリア特性を有する、積層構造体を提供する。好ましくは、ポリマーA及びBは、それぞれ熱可塑性エラストマーC及びD、特に好ましくは少なくとも部分的に再生可能ポリマー構成要素(例えばモノマー)から製造された熱可塑性エラストマーC及びDとブレンドされ、ポリマーブレンドAC及びBDを形成し、ここで、該ブレンド中の熱可塑性エラストマーC及びDの量はそれぞれ3~45重量%であり、及び熱可塑性ポリマーB及びエラストマーDは本質的に不相溶性であり、及び交互スタックは、層-AC-[BD-AC-]n(nは4~36)から構成され、そして層AC及びBDの層厚は3μm未満、典型的には1μm未満である。
【0021】
3μm未満の厚さを有する各層の交互スタックを得るためのポリマー層またはポリマーブレンド層のマイクロ層化は、本質的に、使用したポリマーの形態及び分子構造に影響を及ぼす。それにより、これらは、より延性が強くなり、縺れた状態になる。第一には柔軟性を増強し、そして第二には層の層間剥離及び/または裂開を防止する。
【0022】
ポリマー層A及びB中に、それぞれ分散されたエラストマー性ポリマー粒子C及びDの形の第二の相を導入することは、特に3μm未満の薄い層では、層の小さなひび割れまたは亀裂及びその結果としての破壊などの局所的な変形メカニズムを制御する。そこで、ACは、ポリマーAとエラストマー性ポリマー粒子Cとのブレンドを表し、そしてBDは、バリアポリマーBとエラストマー性ポリマー粒子Dとのブレンドを表す。微視的な強靱化及び固有の変形挙動は、ゴム/エラストマー含有率及び微視的な形態に依存する。エラストマー相中のキャビテーションは、塑性変形にとって本質である。キャビテーション事象は、周りを取り囲むマトリックス中の応力の再分配をもたらし、そしてマトリックスのせん断降伏プロセスによる効果的な塑性変形を促進する。キャビテーションの前、エラストマー粒子の表面上の応力は、それの体積弾性係数及びそれの体積ひずみによって決定される。空隙が形成されたら直ぐに、エラストマー相内の体積ひずみ、それ故、粒子の表面のところの垂直応力も、ほぼ0にまで低下し、それによって、粒子は効果的に空隙になる。その結果、エラストマーの係数(modulus)は、それのキャビテーション能力を決定する。減少した係数及びそれ故、低下する耐キャビテーション性を有するエラストマーは、強靱化剤としてより有効であり、他方で、ゴム相の激しい架橋は、キャビテーションプロセスを禁止する。
【0023】
積層構造体を製造する好ましい方法では、ブローフィルム押出法は、急水冷と、及びブローアップ比の制御によるポリマー鎖の配向と共に適用される。
【0024】
フィルム気泡の急水冷は、半結晶性ポリマー中の結晶成長に影響を及ぼす。水でのフィルムの急冷、すなわち急水冷によって、結晶性または半結晶性ポリマーは、結晶サイズがより小さくなるために、より透明性及び柔軟性が高くなる。結晶化プロセスは、既に組織化された微細構造を乱すか、または微細構造の組織化を抑制するか、または二つの異なる形態間に遷移部を誘発する虞がある。結晶化の後の最終的な形態は、サンプルが、ミクロ相分離溶融物から冷却されるか、または均一な溶融物もしくは溶液から結晶化するかに依存する。更に、非晶質ブロックの存在は、結晶化速度に影響を与える。ガラス様の非晶質及び半結晶性ポリマーの場合は、基本的な方策は、絡み合いネットワークを、急冷時にガラス状態に保持することである。絡み合い間の分子量Meなどの絡み合いネットワークの特性は、見かけゴム実効的剛性率(apparent rubber plateau modulus)から溶融物の状態で判断できる。ゴム弾性の古典的な概念を適用すると、ネットワークの最大延伸比DRmaxはMe
1/2と比例する。靱性は、主として、絡み合いネットワークをそれの最大伸長度まで延伸した時の破断歪みによって決定され、そしてこの簡単な分析に従い、ポリアミドの或る種の変形態様に関して、例えばポリスチレンは約310%のDRmaxを有し、例えばポリカーボネートは150%、EVOHは600%までのDRmaxを有することを簡単に導くことができる。プラクチスでは、殆どのポリマーは、不制御のひび割れプロセス、不純物(例えばゲル)及び無機もしくは有機添加剤の故に、巨視的にはそれらの最大DRmaxレベルに達しない。
【0025】
ポリマー鎖を整列させることによる配向は、ブローアップ比の制御を介して達成される。配向は、ポリマーフィルムの使用中の縮小及びクリープ(すなわち、メモリー効果)を最小化するために、溶融段階で行われる。縮小は、或る種類の消毒、滅菌、レトルト加工、マイクロ波処理または煮沸処理を受けるフィルムにとっては望ましくない。また、フィルムの厳しいクリープ(経時的な、応力下での寸法変化)も望ましくない。
【0026】
ひび割れの開始及びひび割れの伝播は、微細構造及びラメラ領域の方向によって強く影響を受ける。ラメラが、ひび割れの方向に対して垂直に、すなわち引っ張り方向に対して平行に整列している場合、ひび割れは、積み重なったラメラの境界のところで停止する。微視的領域、いわゆるグレイン(grain)では、ラメラ型マイクロドメインが優先的に配向しているが、配向方向は、隣のグレインの配向方向とは異なっている。全体的な構造は、グレインの集合体と見なすことができる。適用された応力場に対して並行に配列した積み重なったラメラは、単一のラメラよりもひび割れの停止により効果的である。更に、グレイン中の形態の局所的な配向は、ひび割れの変向を招き;ひび割れの伝播は、全ての場合において外部応力場に対して垂直方向では起こらない。トルエンキャストフィルムでは、応力の方向に配向したラメラのスタックを持つグレインが、効果的なひび割れ停止体である。
【0027】
本発明によれば、エコ・フレンドリーでもある薄い総厚で優れた機械的及びバリア特性を示す多目的包装積層構造体を提供することができる。本発明による積層構造体は、ガスバリア特性に関して有効なばかりでなく、匂いバリア及び水蒸気バリア特性に関しても有効であり、そして靱性、貫入抵抗、衝撃強さ、並びに裂け始め及び伝播抵抗などの向上した機械的特性を有する。本発明による積層構造体は、少なくとも部分的に、好ましくは主としてまたは完全に再生可能資源から誘導されたポリマーから製造される。幾つかの態様では、この構造も生分解性である。
【0028】
該構造体は、23℃及び85%RH下に24時間でm2当たり5gH2O未満の水蒸気透過速度(WVTR)を有する(DIN53122)。更に、該構造体は、23℃及び50%RH下に24時間でm2当たり10cm3O2未満の酸素透過速度(OTR)を通常有する(ASTM D3985)。
【0029】
典型的には、当該柔軟性及び靱性の積層構造体は、以下の機械的特徴を有することが望ましい:
(23℃及び50%RHで)ISO527-1,2,3/ASTM D882に従い測定した、例えば引っ張り弾性率として表現された柔軟性:<400MPa、好ましくは<250MPa、最も好ましくは75~150MPaの範囲。
【0030】
ISO527-1,2,3/ASTM D882に従い測定した破断点引っ張り強さ(または極限引っ張り強さ):>10MPa、好ましくは>15MPa、但し40MPa未満。
【0031】
ISO527-2,3/ASTM D882に従い測定した破断時伸び:>200%、好ましくは>300%、但し800%未満。
【0032】
衝撃強さは、幾つかの方法に従い測定できる:
・アイゾッドASTM D256、ノッチ付き、23℃(J/m):好ましくは破断無し。
・アイゾッドISO 180(1A)、ノッチ付き(J/m2):好ましくは破断無し。
・シャルピー衝撃強さ、ノッチ付き、ISO179に従い測定(KJ/m2):好ましくは破断無し。
・引っ張り衝撃強さISO8256A1、ノッチ付き、23℃:好ましくは160KJ/m2超。
・ダート衝撃強さASTM D1709:好ましくは250g超。
・スペンサーインパクト、ASTM D3420に従い測定:好ましくは30J/mm超。
・少なくとも約2N、好ましくは3N超のISO6383-2/ASTM D1922に従い測定されたエレメンドルフ引き裂き強さ。
・引っ張り靱性は、ASTM D638、ASTM D882及びISO 527に記載のように応力歪み試験によって決定でき(例えば、サンプルが、それが破断する前に吸収できるエネルギーであり、これは、応力-歪み曲線の下のエリアである)、>15MJ/m3、好ましくは>25MJ/m3、最も好ましくは>40MJ/m3であるのがよい。
・類似のASTM F1306-90またはDIN EN14477を用いて行われる試験である貫入抵抗(トータル貫通エネルギー)は、少なくとも15J、好ましくは25J超であるのがよい。
【0033】
それ故、該積層構造体は、中でも、垂直及び水平フローラッパー機(HFFS&VFFS)、ポーチ製造機、例えば直立式ポーチ機、トップもしくはフォーミングウェブとしての熱形成機、スキン包装機、及びリッドもしくはスキン包装フィルムとしてのトレイシーリング装置で有用な包装材料として使用するために適している。これは、特に、医療用途、例えばオストミーフィルムとしての医療用途のために、及び(液体)(完全)非経口、経腸及び局所薬(例えば医薬品、栄養素)の包装のために、細胞培養及び貯蔵(2D、3D)バッグ及び容器を製造するために、並びにバッグ・イン・ボックスライナー及びリッドフィルムなどの食品包装用途における使用のために適している。更に別の好ましい使用は、化粧品及び個人用衛生用品の包装である。
【0034】
バリア特性は、ポリマーA及びBまたはポリマーブレンドAC及びBDからの交互マイクロ層のスタック(バリアスタックとも称する)によって供される。
【0035】
一つの態様では、ポリマーAは、少なくとも部分的にバイオベースのポリアミド(PA)である。PAは、有核種であることができる。ポリアミドの核生成は、比較的多数の結晶化開始点(成核サイト)を形成し、その結果、比較的高いレベルの結晶化度を有するポリアミドを与え、この際、実際の球粒は、非有核型よりも小さくなる、無機成核剤を加えることを意味する。このような有核ポリアミドは、非有核型と比べて比較的高いガスバリアを与える。ポリマーAは、無水マレイン酸グラフト化バイオポリオレフィン(例えば、そのモノマー性構成要素が再現可能資源から製造されている)(MAH-g-PO)、またはオレフィンコポリマー(MAH-g-coPO)、またはこれらとポリオレフィンもしくはオレフィンコポリマーとのブレンドであることもできる。ポリマーAは、更に、ポリアルキレンスクシネートまたはアイオノマー(ION)のような二酸をベースとするバイオポリマーであることができる。これらのコポリマーは、酸無水物でグラフトされていることができ(例えば、PO-g-MAH)、そしてグラフトされたコポリマーは、未グラフト化ポリオレフィン及び/またはコポリマーとのブレンドとして使用することができる。特に、MAH-g-(co)POは、通常は、グラフト化(コ)ポリオレフィンのいわゆるコンセントレートと、同種の非グラフト化(コ)ポリオレフィンとのブレンドとして使用される。ポリマーAは、更に、ポリケトンであるか、またはPAとエチレンビニルアルコールコポリマーとのブレンドであることができる。ポリマーBは、好ましくはポリアルキレンカーボネート(PAC、例えばPEC、PPC、PBC、PCHC)、場合によりポリテトラメチレンスクシネートと混合されたポリ(1,3グリセロールカーボネート)、またはポリケトン(POK)、またはポリビニルアルコール(PVOH)、またはバイオエチレン及び変性バイオビニルエステルから製造されたエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、またはEVOHもしくはPOKもしくはPVOHもしくはPACとPAとの混合物もしくはブレンド(ここでPAは、好ましくは40重量%未満の量で存在し、そして少なくとも部分的には再生可能資源由来である)である。
【0036】
好ましく使用されるポリマーブレンドAC及びBDは、二種以上の熱可塑性樹脂と二種以上の熱可塑性エラストマーとの混合物またはブレンドを含むこともできる。使用されるポリマーは、商業的に入手可能であり、例えばPVOH及びEVOHは、Kuraray社(EVAL)またはNippon Goshei社から入手できる。適当なPAは、例えば、BASF社、DSM社、EMS-Grivory社、Arkema社、Evonik社、Dupont社、Suzhou Hipro Polymers社及びSolvay社から入手可能である。POKは、例えばHyosung社から入手可能である。PACは、例えば、Empower Materials Inc社またはSK Inc社またはNovomer社から入手できる。
【0037】
エラストマーDがポリマーBのために使用される場合、好ましくはエラストマーCがポリマーAに使用される場合にも、エラストマーは、熱可塑性ポリマーと不相溶性であり、それ故、非付着性であり、そしてマトリックス内でエラストマードメインが互いにひどく接触することなく均一に分散されているべきである。好ましくは、(球形または楕円形のように見える分散層であるが、事実、エラストマー鎖の集まった束である)ドメインのサイズは、400nm未満であるのがよく、これは、良好な透明性を保証するために可視光の波長未満である。エラストマーC、Dは、本発明において分散相を形成する。
【0038】
ポリマーA及びBとブレンドするための適当な熱可塑性エラストマーC及びDは、例えば、再生可能資源由来のエラストマー、例えばポリトリメチルカーボネート、乳酸含有率が少なくとも40モル%のポリ(ラクテート/ブタンジオール/セバケート/イタコネート)、トリブロックエラストマーのポリ(L-ラクチド)-b-ポリミルセン-b-ポリ(L-ラクチド)、Hytrel RS(Dupont社)のようなポリエステルエラストマー、またはポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレートまたはco-b-ヒドロキシバレレート)(C.J Cheil Jedang Corp社、前身はMetabolix Inc.)、ポリイタコネートとポリイタコン酸アミドとのトリブロックコポリマー、バニリンメタクリレートもしくはグリセロールジメタクリレートブロックコポリマー(後者は、スチレンが使用されている慣用のビニルエステル樹脂と比べて高い熱安定性を有し、そのため、スチレンに対する適したバイオベースの代替物として働き得る)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS、バイオラバーとも称される)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びこれらのブレンドである。典型的には、使用される場合は、エラストマーC及びDの量は、ポリマーブレンドAC及びBDの全重量に対して、3~45重量%、好ましくは5~25重量%の範囲である。ポリマーAがPAである場合は、エラストマーCは好ましくは不相溶性である。熱可塑性ポリマーB及びエラストマーDは本質的に不相溶性であり、これは、これらが、分子レベルでは本質的にほとんど混合しない別個の相を形成することを意味する。一般的に、これらは、連続相と、球形または(幾らか伸びているかまたは集束エラストマー鎖ではない)楕円の形の分散相とを形成する。
【0039】
上記のようにエラストマーとブレンドされた熱可塑性ポリマーは、脆性の挙動の代わりに延性の挙動を示す。これは、溶融ポリマーフィルムを、急水冷ブローフィルムプロセスにおける冷水での溶融ポリマーフィルムの素早い冷却を介して結晶サイズを制御することによって相乗的にサポートすることができる。更に、3μmよりも薄い層の作製は、ポリマーブレンドを配向させて、これらの自由度を失わせる結果となる。これは、最も融点が低い層の溶融曲線の開始(ISO11357-3;ISO3146;ASTM D3418に従うDSC測定における溶融曲線の開始)までフィルムが再加熱された時も回復され得ない。その結果、鎖は準安定の状態に固定され、そして応じて製造されたフィルムは、もはやそれほど収縮及びクリープを起こさない。これは、医療用包装材にとっては特に重要な性質である。医療包装材は、典型的には、(大概は高められた温度で水蒸気または加圧熱水またはEtO(エチレンオキシド)によって)消毒可能であるか、または高められた温度で滅菌可能である必要がある。全てのケースにおける収縮は、全ての方向に10%を超えるべきではなく、好ましくは5%未満であるべきである。水蒸気または加圧熱水を使用する場合は消毒温度は121℃(250°F)である。欧州、米国、日本、中国の薬局方に及びFDA CFR21に記載のように、レトルト加工温度は、121℃~135℃であり、EtO及び滅菌は、通常は65~85℃の範囲で行われる。交互層A及びBまたはAC及びBDのバリアスタックの厚さは、通常は、4~60μm、好ましくは4~30μmの範囲である。
【0040】
該積層構造体は、更に一つまたはそれ以上の別の機能性ポリマー(好ましくは再生可能資源製の機能性ポリマー)層、例えば耐衝撃層もしくは剛性促進層またはスキン層、あるいは食品認可着色剤を含む、または印刷性を向上する、または柔らかい手触りを与える、または色を追加する、またはシーリングを改善もしくは増強する、または海もしくは土壌中での生分解性もしくは堆肥化性を改善する層を含むことができるかまたはしばしば含む。これらの更なる層は、交互スタックのいずれの面にも積層することができる。これらの層は、必要に応じて、隣接する層の接着を改善するために介在させることができるかまたは介在させる。追加機能層を含む積層構造体の典型的な総厚は15~400μm、好ましくは25~250μmの範囲である。典型的には、但し非限定的に、シーリング及び印刷用に重要なスキン層は、全フィルム厚の5~35%の範囲の厚さを有する。
【0041】
一つの好ましいスキン層は、例えば、良好にシーリング可能な層である。有用な材料は、バイオエチレンのホモポリマー、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びより好ましくは、バイオエチレン及び1-アルケン、例えばプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、いわゆるアルファオレフィンからのコポリマー、またはバイオエチレンとビニルアセテート、メチルもしくはエチルもしくはブチルアクリレートとのコポリマー、またはアクリルベースのアイオノマー(ION)、あるいはバイオエチレンと少量の環状オレフィン、例えばノルボルネンとのコポリマー、またはこれらのブレンド及び混合物である。これらの材料は、バイオエラストマーを、好ましくは30重量%未満の量で含むことができる。このようなスキン層を備えた積層構造体は、熱によって、インパルス加熱によって、電気誘導によって及び超音波によってまたは高周波数によってシーリングすることができ、但し後者は、極性(非対称)ポリマーの場合のみである。この機能層のシーリングは、それ自体へとまたはこのタイプの他のフィルムスキン層へとまたは不織(布)または(コート)紙またはTyvek(登録商標)へと行うことができる。
【0042】
印刷性を供するためには、更に別の好ましいスキン層が加えられる。殆どのバイオポリマーは、極性かまたは幾らか極性であり、そして良好に印刷可能である。また、少量のグラフトポリオレフィンまたはエステルを含むバイオポリオレフィンも印刷性を増強することができる。押出可能なスキン層の厚さは、一般的に5~30μmの範囲である。このスキン層は、薄いコーティング(数μm以下)であることもでき、例えばアクリレートベースのコーティング、または例えばナノクレー粒子を含むアクリレートベースのコーティングでさえあることができる。このようなスキン層を備えた該積層構造体は、通常使用される様々な印刷技術(例えばフレキソ、グラビア、オフセット)の一つ以上を用いて良好な印刷性を有する。
【0043】
多くの場合に、二つのスキン層が加えられ、一方のスキン層はシーリングを可能とするものであり、他方は、バリアスタックの反対側での印刷を可能とするものである。これらのスキン層は、一つ(またはそれらの両方)が印刷性及びシーリング性を供するようにも選択できる。適当な材料は当技術分野で既知である。
【0044】
一つの態様では、該積層構造体の貫入抵抗を改善する耐衝撃性促進層が含まれる。好ましい耐衝撃性促進層は、リグニンから(部分的に)生成されたポリエステル、ポリエステルアミド及びポリウレタンから、またはバニリンから作ったビニルエステルから製造することができる。典型的には、但し非制限的に、このような層は、総フィルム厚の10%~70%の厚さの範囲であることができる。
【0045】
一つの態様では、該積層構造体の剛性を高めるために剛性促進層が含まれる。好ましい剛性促進層の一つは、例えば、バイオベースポリエステル、フラノエート、例えばポリエチレンフラノエート(Avantium社)、ポリアミド(PA)または他の剛性、但し好ましくは靱性のポリマーから製造することができる。通常は、剛性促進層は、それほど厚手ではないが、多くの場合に、但し非限定的に、総フィルム厚の2~15%の範囲である。
【0046】
該スキン層は、バイオベースポリマー、例えばポリブチレンスクシネート(PBS)(LDPEと同様の性質)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)と同等の性質を有するポリ(エチレン(もしくはプロピレンもしくはブチレン)-2,5-フランジカルボキシレート)(PEF;PPF、PBF)、または同様にPETと同等の性質を有するポリジヒドロキシフェルラ酸(PHFA)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシレート-co-エチレン-スクシネート(PEFS)(これらは、例えばCanon社、Avatium社、Mitsubishi社、Showa Denko社から入手可能である)から製造される。また、スキン層は、例えばDupont社から販売されている、ポリ(ヘキサ(もしくはオクタもしくはデカもしくはドデカ)メチレン-フランジカルボキシアミド)、あるいは例えばBASF社から販売されている、ポリ(ブチレンスクシネート-co-ブチレンアゼラート)、ポリ(ブチレン-スクシネート-co-テレフタレート)(PBST)、ポリ(ブチレン-アジペート-co-テレフタレート)(PBAT)、あるいは例えばSolvay社及びBorregaard社から入手可能な、ポリ(ブチレンスクシネート-co-1,4ブタンジアミド)またはポリ(5-ヒドロキシレバリン酸)、あるいは例えばKaneka社から入手可能な、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB-co-3HH)のようなバイオベースポリマーから製造される。更に関心が持たれるものは、乳酸、例えばポリ乳酸-co-グリセロールモノステアレート及びポリ乳酸-co-グリコール酸(glycololic acid)(PLGA)をベースとするポリマーである。ポリブチレンテレフタレートと類似の特性を持つポリマーの一つは、例えばSorona EPの商品名でDupont社によって販売されているバイオ-ポリ(トリメチレンテレフタレート)である。同様に関心がもたれるものは、例えばEvonik社から販売されているポリ-p-ジオキサノンである。更に別の関心がもたれるものは、例えばArkema社によって販売されている、イソソルビドとポリカーボネートジオールまたはポリエーテルイミドとをベースとするポリウレタンエラストマー(例えばPEBAX)、あるいは例えばMitsubishi社から販売されている、ポリ(オリゴテトラメチレンスクシネート-co-テトラメチレンカーボネート)(PTMS/PTeMC)、あるいはバイオベースポリエステルウレタンを形成するために4,4メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)と反応させたヒドロキシル末端基を有するPBSである。ブレンドは、スキン層の目的を達成するために、これらの(部分的に)バイオベースのポリマーから製造することができる。
【0047】
これらの層は、必要に応じて機能層との及び/または機能層間のバリア層スタックの接着を改善するために加えられる。つなぎ層のための有用な材料は、例えば無水マレイン酸グラフトバイオ-ポリオレフィン(MAH-g-PO)またはポリオレフィンコポリマー(MAH-g-coPO)、またはベンゾオキサジン樹脂、ポリウレタン、グリコールポリマー、再生可能資源から(部分的に)製造されたポリエステルである。これらは、例えばPAまたはPAブレンド層を、バイオPOまたは他のバイオポリマー製のスキン層に接着するのに役立つ。一般的に、限定はされないが2~約20μmの範囲の厚さを有する押出可能なつなぎ層が使用される。
【0048】
全てのポリマーは、添加剤、例えば酸化防止剤(例えばIrganox 1010、1076)、ブロッキング防止剤(例えばSiO2、エルカミド、エチレンビスステアレート)、酸スカベンジャ(例えばハイドロタルサイト、MgO)を含んでよく、これらはそれらの通常の量で使用される。食品の包装については、直接または間接的な食品接触、好ましくは直接的な食品接触に関して(少なくとも、FDAによりUSAで、及び欧州で)食品認可されている添加物のみがスキン層のために使用される。医療用途に使用する場合は、好ましくは、これらの添加剤は、欧州薬局方第3版第3章に記載されている。これらの層中には、或る用途には着色剤を使用してよく、例えばオストミーフィルム用に肌色の着色剤を使用し得る。使用される着色剤は食品認可されているものである。
【0049】
スタック層と内部スキン層との間に配置された、食品または液体または成分接触側に向いているこれらの層の一つ中にも、有機または無機酸素スカベンジャ材料、例えば微分散鉄粉末を加えてよいしまたは加えることが可能である。
【0050】
本発明による積層構造体は、それ自体既知の方法で製造することができる。好ましくは、ブローフィルム押出プロセスが使用され、この場合、異なるポリマー樹脂を、一つ以上の押出機中に別々に溶融し、そして個々の溶融物流として、押出ダイ中にポンプ輸送され、次いでこのダイが、個々の溶融物流を多層フィルムに成形する。好ましくは、全ての層AまたはACのための樹脂は一緒に溶融され、全ての層BまたはBDについても同様である。薄い交互層を形成するためには、例えばUS6413595B1(特許文献17)及びUS5076776A(特許文献18)に記載のような特殊な環状ダイ設計が有用である。ブローアップ比は典型的には少なくとも1:2、好ましくは1:3以上であり、気泡は急水冷によって冷却される。次いで、ポリマー樹脂層を有する押出された積層体、すなわち今や当該積層構造体は、ワインダーでロール上に巻き上げられる。
【0051】
本発明を、以下の図面を用いて説明するが、記載の具体的な態様には限定されない。本発明は、互いを排除しない記載の特徴の全ての組み合わせ、特に好ましい特徴の全ての組み合わせを包含する。
【0052】
数値に関しての「おおよそ」、「約」及び類似の表現としての特徴付けは、10%までより大きい及び小さい値、好ましくは5%までより大きい及び小さい値、いずれの場合も、少なくとも1%までより大きい及び小さい値が包含されることを意味し、厳密値は、最も好ましい値または限界値である。他に記載がなければ、「%」または「部」の量は、重量に基づき、かつはっきりしない時は、関連する組成物/混合物の総重量を基準とする。「実質的に不含」という記載は、特定の材料が目的をもって組成物に加えられておらず、そして痕跡量または不純物としてのみ存在することを意味する。ここで使用する場合、他に記載がなければ、「を含まない」という表現は、組成物が、特定の材料を含まないこと、すなわち組成物中のこのような材料の含有率が0重量%であることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図2】
図2は、本発明による第二の積層構造体を示す。
【0054】
図1は、押出ラインによって製造された積層構造体1の断面を示す。この例では、積層構造体1は、10枚のポリマー層2(ポリマーブレンドAC:バイオ-ポリアミド+バイオ-エラストマー)及び9枚のポリマー層3(ポリマーブレンドBD:PEC+バイオ-エラストマー)から製造された24枚の連続する層の交互スタックを含む。この交互スタックは、-AC-[BD-AC-]
n層順列(n=9)を有する。構造1は、更に次の機能層:積層構造体シーリング層を形成するスキン層4(例えば、PBSの層)、耐衝撃性促進層5(例えば、ポリエチレンフラノエート(PEF)の層);シーリングスキン層4及び耐衝撃性促進層5と各々の隣接するAC層2との接着を促進する接着促進層6(例えば、ポリウレタンつなぎ樹脂);及びスキン層7(例えば印刷性のためのPBAT/PBSTの層)も含む。
【0055】
図2は、代替的な積層構造体1の断面を示す。この例では、積層構造体1は、積層構造体シーリング層を形成するスキン層4(例えば、PBSの層)、10枚のポリマー層2(ポリマーA:PA6.10)及び9枚のポリマー層3(ポリマーB:PVOH)から製造された24枚の連続層の交互スタックを含む。この交互スタックは、-A-[-B-A-]
n層順列(n=9)を有する。構造1は、更に別の機能層、すなわち耐衝撃促進層5(例えばポリエステルエラストマーの層);積層体剛性促進層8(例えばポリエチレンフラノエート(PEF)の層);及び印刷性を増強するためのPBATもしくはPBSTでできたスキン層7も含む。
【0056】
図1及び2に示す積層構造体では、ポリマー樹脂スタック順列は、典型的には、約4μm~約60μmの厚さを有し、他方で、該積層構造体1は、15μm~400μmの範囲の総厚を有する。当該スタック順列に含まれるポリマーA及びBまたはポリマーブレンドAC及びBDの個々の層は、典型的にはそれぞれ1μm未満の厚さを有する。
【0057】
図1及び2に記載のような積層構造体は、高耐曲げ割れ性の匂い及びガスバリアを有する非常に有効な包装用積層材料を形成し、そして医療、食品及び他の包装用途、例えば現代の食品及び液状食品包装システムに使用するためのバッグ-イン-ボックスライナー、オストミーフィルム、(完全)非経口、経腸、局所、細胞培養及び貯蔵フィルム及びバッグ、リッドフィルムに使用するのに適している。これらは、例えば、熱成形機で及び真空スキン包装機中で使用することができる。本発明において記載したような押出積層体は、望ましい場合には、少なくとも含まれる適切なスキン層を用いて、印刷することもできる。それ故、柔軟性積層体は、好ましくは、ガス、匂い及び湿気バリア機能、柔軟性、透明性及び靱性を有する包装用フィルムとして、医療、食品及び他の物質または物品のために使用される。これらは、オストミーフィルムとして;例えば、(液体)(完全)非経口薬、経腸薬、静脈内薬(IV)、持続携行式腹膜透析薬(CAPD)及び局所薬(例えば医薬品、栄養素)の包装のために;細胞培養用及び貯蔵用(2D、3D)単及び複室(例えばマルチチャンバ)バッグ及び容器の製造のために;及び食品包装用途、例えばバッグ-イン-ボックスライナー及びリッドフィルムに使用するために;並びに化粧品及び個人用衛生用品の包装のために有用である。
【実施例】
【0058】
本発明による約80μm厚の積層構造体を、
図1に示すように製造した。ここで、各々の層は、約0.9μm厚であり、AC、BDスタックの両側には、約3μm厚のつなぎ層を押出した。シーリングしたバックをこの積層構造体から製造し、そして比較として、LLDPE/つなぎ/PA/EVOH/PA/つなぎ/EVAからバッグを製造した。切断したタマネギを上記バッグ内に入れ、そしてこれらのバッグをシールしそしてRTで保存した。数日後、比較用バッグ中のタマネギは褐変し、そしてタマネギの臭いを知覚できた。本発明による積層構造体から製造したバッグ中では、タマネギは数ヶ月白色のままであり、臭いも検出されなかった。これは、該新規生体適合性構造体が非常に効果的なバリアを供することを示している。
【0059】
それ故、本発明は、順列-A-[B-A-]n-またはAC-[BD-AC-]n(nは4~36)を有する、ポリマーA及びBまたはポリマーブレンドAC及びBDからの層の交互スタックを含み、ここで、層AまたはAC及び層BまたはBDの層厚が3μm未満であり、A及びBは熱可塑性ポリマーであり、C及びDは熱可塑性エラストマーであり、ポリマーA、BまたはA及びBのモノマー性構成要素の少なくとも一つは再生可能資源由来であり、及び前記熱可塑性ポリマーBは、機能性バリア特性を有し、及びポリマーブレンドAC及びBD中の熱可塑性エラストマーC及びDの量がそれぞれ3~45重量%であり、そしてポリマーB及びエラストマーDは本質的に不相溶性である、生体適合性積層構造体を提供する。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
順列-A-[B-A-]
n
(nは4~36)を有する異なるタイプのポリマーA及びポリマーBの層の交互スタックを含み、ここで、層A及びBの層厚が3μm未満である、柔軟な積層構造体であって、A及びBは、少なくとも部分的に再生可能資源に基づく熱可塑性ポリマーであり、熱可塑性ポリマーAはポリアミド、有核ポリアミド、ポリアミドとエチレンビニルアルコールコポリマーとのブレンド、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスクシネート)、ポリケトン、アイオノマー、バイオオレフィンとカルボン酸もしくはエステルとのコポリマーまたはこれらのアイオノマーもしくは混合物、無水マレイン酸がグラフトしたポリオレフィンもしくはバイオオレフィンカルボン酸もしくはエステルコポリマーもしくはアイオノマー、無水マレイン酸がグラフトしたバイオポリオレフィンもしくはバイオオレフィンカルボン酸もしくはエステルコポリマーもしくはアイオノマーとグラフトされていないバイオポリオレフィンもしくはバイオオレフィンカルボン酸もしくはエステルコポリマーもしくはアイオノマーとのブレンドであり、熱可塑性ポリマーBは、エチレンビニルアルコールコポリマー、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンカーボネート、場合によりポリテトラメチレンスクシネートと混合したポリ(1,3-グリセロールカーボネート)、またはポリアミドとエチレンビニルアルコールコポリマーもしくはポリケトンもしくはポリビニルアルコールコポリマーもしくはポリアルキレンカーボネートとの混合物であり、そして熱可塑性ポリマーBは、酸素、窒素、二酸化炭素、有機揮発物及び湿気の透過に対して機能性バリア特性を有し、前記構造体が、23℃及び85体積%相対湿度下に24時間でm
2
当たり5gH
2
O未満の水蒸気透過速度(DIN53122)、並びに23℃及び50体積%相対湿度下に24時間でm
2
当たり10cm
3
O
2
未満の酸素透過速度(ASTM D3985)を有する、前記積層構造体。
2.
ポリマーA及び/またはBの一方または両方が、少なくとも部分的に再生可能資源をベースとする熱可塑性エラストマーC及び/またはDとブレンドされ、ポリマーブレンドAC及び/またはBDが形成されており、ここで、ブレンド中の熱可塑性エラストマーC及び/またはDの量はそれぞれ3~45重量%であり、そして熱可塑性ポリマーB及びエラストマーDが本質的に不相溶性であり、そしてこれらの層の交互スタックが、順列-AC-[BD-AC-]nまたは-A-[BD-A-]nまたは-AC-[B-AC-]n(nは4~36)、及び3μm未満の層A、B、AC、BDの層厚を有する、前記1.に記載の積層構造体。
3.
ポリマーAがポリアミドまたは有核ポリアミドである、前記1.または2.に記載の積層構造体。
4.
ポリマーAが、バイオエチレンとカルボン酸もしくはエステルとのコポリマーまたはこれらのアイオノマーもしくは混合物、あるいはバイオエチレンとカルボン酸もしくはエステルとの無水マレイン酸グラフトコポリマーまたはこれらのアイオノマーもしくは混合物である、前記1.または2.に記載の積層構造体。
5.
ポリマーAが、それのモノマー性構成要素のうちの少なくとも一つが再生可能資源由来、例えばグリセロール、ジオール、バニリン、フェルラ酸、乳酸、レブリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、1,4-ブタンジアミド、バイオ-1,4-ブタンジオール、二酸、ヒドロキシ酸、フラン、エステルアミド、アミド、エステル、CO、CO
2
、バイオ-アルキレン由来であるポリマーである、前記1.~4.のいずれか一つに記載の積層構造体。
6.
ポリマーA及び/またはポリマーBが、ポリマーブレンドAC及び/またはBDの形で使用され、ここで熱可塑性エラストマーCまたはDが、好ましくは、少なくとも部分的に再生可能資源由来のエラストマーである、前記1.~5.のいずれか一つに記載の積層構造体。
7.
熱可塑性エラストマーC及びDが、互いに独立して、ポリトリメチレンカーボネート、乳酸の割合が少なくとも40モル%であるポリ(ラクテート/ブタンジオール/セバケート/イタコネート)、トリブロックエラストマーであるポリ(L-ラクチド)-b-ポリミルセン-b-ポリ(L-ラクチド)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)もしくはポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-b-ヒドロキシバレレート)のようなポリエステルエラストマー、ポリイタコネート及びポリイタコン酸アミドからのトリブロックコポリマー、バニリンメタクリレートもしくはグリセロールジメタクリレートブロックコポリマー、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、またはこれらのブレンドである、前記6.に記載の積層構造体。
8.
ポリマーAが、無水マレイン酸グラフトポリオレフィンであり、そしてエラストマーCが、好ましくは、前記9.に記載の少なくとも部分的に再生可能資源由来のエラストマーである、前記1.に記載の積層構造体。
9.
交互スタックのどちらの面上にも一つまたは複数の機能層を含む、前記1.~8.のいずれか一つに記載の積層構造体。
10.
機能層のうちの一つがシーリング層である、前記9.に記載の積層構造体。
11.
機能層のうちの少なくとも一つが、それのモノマー性構成要素のうちの少なくとも一部が再生可能資源由来であるポリマーからなる、前記9.または10.に記載の積層構造体。
12.
少なくとも二つの機能層を含み、これらの機能層のうちの一つが、交互スタックと第二の機能層との間の接着を促進するつなぎ層である、前記9.~11.のいずれか一つに記載の積層構造体。
13.
前記1.~12.のいずれか一つに記載の積層構造体であって、
- ISO527-1、2、3またはASTM D882に従い(23℃及び50%相対湿度で)測定した引っ張り弾性率が<400MPa、好ましくは<250MPa、最も好ましくは75~150MPaの範囲であり、及び/または
- ISO527-1,2,3またはASTM D882に従い測定した破断点引っ張り強さが>10MPa、好ましくは>15MPa、但し40MPa未満であり、及び/または
- ISO527-2,3またはASTM D882に従い測定した破断伸びが>200%、好ましくは>300%、但し800%未満であり、及び/または
- ASTM D256(23℃、ノッチ付き)またはISO180(1A)(ノッチ付き)に従い測定したアイゾット衝撃強さが破断を生じず、及び/または
- ISO179(ノッチ付き)に従い測定したシャルピー衝撃強さが破断を生じず、及び/または
- ISO8256A1(ノッチ付き、23℃)に従い測定した引っ張り衝撃強さが160KJ/m
2
超である、及び/または
- ASTM D1709に従い測定したダート衝撃強さが250g超であり、及び/または
- ASTM D3420に従い測定したスペンサー衝撃強さが30J/mm超であり、及び/または
- ISO6383-2またはASTM D1922に従い測定したエレメンドルフ引き裂き強さが、少なくとも約2N、好ましくは3N超であり、及び/または
- ASTM D638、ASTM D882及びISO527に記載のような応力歪み試験によって決定された引っ張り靱性が>15MJ/m
3
、好ましくは>25MJ/m
3
、最も好ましくは>40MJ/m
3
であり、及び/または
- ASTM F1306-90またはDIN EN14477に類似の方法を用いて試験した貫入抵抗が少なくとも15J、好ましくは25J超である、
前記積層構造体。
14.
医療、食品及び他の物質または物品のためのガス、匂い及び湿気バリア機能、柔軟性、透明性及び靱性を有する包装フィルム、例えばオストミーフィルムとして、及び(液体)(完全)非経口薬、経腸薬、IV薬、CAPD薬、及び局所薬(例えば医薬品、栄養素)の包装のために、並びに細胞培養及び貯蔵(2D、3D)単及び複室(例えばマルチチャンバ)バッグ及び容器の製造のための;並びに食品包装用途、例えばバッグ-イン-ボックスライナー及びリッドフィルムでの使用のための、並びに化粧品及び個人用衛生用品の包装のための、前記1.~13.のいずれか一つに記載の積層構造体の使用。