(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】含浸織布及び研磨粒子を含む研磨製品
(51)【国際特許分類】
B24D 11/00 20060101AFI20230509BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20230509BHJP
B24D 11/06 20060101ALI20230509BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230509BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20230509BHJP
D03D 15/533 20210101ALI20230509BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B24D11/00 B
B24B37/24 D
B24D11/06 B
D03D1/00 Z
D03D11/00 Z
D03D15/533
D06M15/693
(21)【出願番号】P 2020551852
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2019057433
(87)【国際公開番号】W WO2019185544
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-01
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591270796
【氏名又は名称】ハバシット アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】ブレント・ホワイトヘッド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・タイラー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・デイビーズ
(72)【発明者】
【氏名】ボド・ヴィクスメルテン
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-233962(JP,A)
【文献】特開2002-068440(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01390603(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第00562611(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 11/00
B24B 37/24
B24D 11/06
D03D 1/00
D03D 11/00
D03D 15/533
D06M 15/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなる含浸(6)で含浸された織布であって;該布地は:
a)必然的に互いに平行に走っており、距離Dだけ互いに離れている、第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(301-308)の第1の層(A);
b)必然的に互いに平行に走っており、前記距離Dだけ互いに離れている、第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(309-316)の第2の層(B);
ここで、前記第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(301-308)の各々については、1つの対応する第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(309-316)が存在しており、その逆も然りであり、連続したマルチフィラメントペア(301/309、302/310、303/311、304/312、305/313、306/314、307/315、308/316)を形成しており、各かかる連続したマルチフィラメントペアは、固有の及び上昇する整数インデックスNで明示することができる;
c)次の織り型c1-c4:
c1-(N mod 4)=0を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
Aで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(302/310、306/314)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(302、306)周りの絡み;(N mod 4)=1を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
Bで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307/315)のうちの第1の(303、307)及び第2の(311、315)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;(N mod 4)=2を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
Cで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(304/312、308/316)のうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(312、316)周りの絡み;及び(N mod 4)=3を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
Dで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第1の(301、305)及び第2の(309、313)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;
又は
c2-前記インデックスN
Aを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(310、314)周りの絡み;前記インデックスN
Bを有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307(315)のうちの第1の(303、307)及び第2の(311、315)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスN
Cを有する、すべてのマルチフィラメントペア(304/312、308/316)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(304、308)周りの絡み;及び前記インデックスN
Dを有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;
又は
c3-前記インデックスN
Aを有する、すべてのマルチフィラメントペア(302/310、306/314)のうちの第1の(302、306)及び第2の(310、314)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスN
Bを有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307/315)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(303、307)周りの絡み;前記インデックスN
Cを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の(304、308)及び第2の(312、316)非捲縮横糸マルチフィラメント(304/312、308/316)間の通し;及び前記インデックスN
Dを有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(309、313)周りの絡み;
又は
c4-前記インデックスN
Aを有する、すべてのマルチフィラメントペア(302/310、306/314)のうちの第1の(302、306)及び第2の(310、314)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスN
Bを有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307/315)のうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(311、315)周りの絡み;前記インデックスN
Cを有する、すべてのマルチフィラメントペア(304/312、308/316)のうちの第1の(304、308)及び第2の(312、316)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;及び前記インデックスN
Dを有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(301、305)周りの絡み
のうちの1つを有する、捲縮縦糸フィラメント(41-44);
d)すべてのマルチフィラメントペア(301/309、302/310、303/311、304/312、305/313、306/314、307/315、308/316)のうちの第1の(301-308)及び第2の(309-316)非捲縮横糸マルチフィラメント間を通る、非捲縮縦糸フィラメント(1);及び
e)前記規定した織り型c1、c2、c3又はc4のうちの1つを有する、捲縮帯電防止縦糸フィラメント;
ただし、全4つの前記規定した織り型c1、c2、c3及びc4
については、捲縮縦糸フィラメント(41-44)が存在している;
ここで、前記布地は、前記捲縮縦糸フィラメント(41-44)及び前記捲縮帯電防止縦糸フィラメントの他には、捲縮縦糸フィラメントを全く含ま
ず、
各非捲縮縦糸フィラメント(1)が、その次の非捲縮縦糸フィラメント(1)から偶数の捲縮縦糸フィラメント(41-44)だけ横糸方向に離れており、前記偶数は少なくとも2である;及び
(N mod 4)は、4によるNのユークリッドの整数除法により得られる余りを表す;
を含む、布地、
及び:
iia)前記含浸布の一方の側にすぐ隣接している、含浸(6)におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第1の最上面(8)を有する、第1の上層(7)、及び
iiia)前記第1の上層(7)の第1の最上面(8)に埋め込まれた第1の微粒子状研磨材(9);
又は
iib)前記含浸布の一方の側にすぐ隣接している、含浸(6)におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第1のカバー層(71);
及び
iiib)前記第1のカバー層(71)
に隣接している、マトリクス材料、第1の上部シート面(111)及び該第1の上部シート面(111)に埋め込まれた第1の研磨粒子(91)を含む、第1の予め製造された研磨シート(101)、ここで、前記マトリクス材料は、含浸(6)とは異なる、
又は
iic)前記含浸布の一方の側に隣接している、マトリクス材料、第1の上部シート面(111)及び該第1の上部シート面(111)に埋め込まれた第1の研磨粒子(91)を含む、第1の予め製造された研磨シート(101)、ここで、前記マトリクス材料は、含浸(6)とは異なる、
のいずれかを含む、研磨製品。
【請求項2】
前記布地が、第1の非捲縮横糸マルチフィラメントa)(301-308)、第2の非捲縮横糸マルチフィラメントb)(309-316)、捲縮縦糸フィラメントc)(41-44)、非捲縮縦糸フィラメントd)(1)及び捲縮帯電防止縦糸フィラメントe)からなる、請求項1に記載の研磨製品。
【請求項3】
i)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなる含浸(6)で含浸された織布であって;該布地は:
a)必然的に互いに平行に走っており、距離Dだけ互いに離れている、第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(301-308)の第1の層(A);
b)必然的に互いに平行に走っており、前記距離Dだけ互いに離れている、第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(309-316)の第2の層(B);
ここで、前記第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(301-308)の各々については、1つの対応する第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(309-316)が存在しており、その逆も然りであり、連続したマルチフィラメントペア(301/309、302/310、303/311、304/312、305/313、306/314、307/315、308/316)を形成しており、各かかる連続したマルチフィラメントペアは、固有の及び上昇する整数インデックスNで明示することができる;
c)次の織り型c1-c4:
c1-(N mod 4)=0を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
A
で表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(302/310、306/314)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(302、306)周りの絡み;(N mod 4)=1を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
B
で表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307/315)のうちの第1の(303、307)及び第2の(311、315)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;(N mod 4)=2を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
C
で表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(304/312、308/316)のうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(312、316)周りの絡み;及び(N mod 4)=3を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはN
D
で表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第1の(301、305)及び第2の(309、313)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;
又は
c2-前記インデックスN
A
を有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(310、314)周りの絡み;前記インデックスN
B
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307(315)のうちの第1の(303、307)及び第2の(311、315)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスN
C
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(304/312、308/316)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(304、308)周りの絡み;及び前記インデックスN
D
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;
又は
c3-前記インデックスN
A
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(302/310、306/314)のうちの第1の(302、306)及び第2の(310、314)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスN
B
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307/315)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(303、307)周りの絡み;前記インデックスN
C
を有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の(304、308)及び第2の(312、316)非捲縮横糸マルチフィラメント(304/312、308/316)間の通し;及び前記インデックスN
D
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(309、313)周りの絡み;
又は
c4-前記インデックスN
A
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(302/310、306/314)のうちの第1の(302、306)及び第2の(310、314)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスN
B
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(303/311、307/315)のうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(311、315)周りの絡み;前記インデックスN
C
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(304/312、308/316)のうちの第1の(304、308)及び第2の(312、316)非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;及び前記インデックスN
D
を有する、すべてのマルチフィラメントペア(301/309、305/313)のうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(301、305)周りの絡み
のうちの1つを有する、捲縮縦糸フィラメント(41-44);及び
d)すべてのマルチフィラメントペア(301/309、302/310、303/311、304/312、305/313、306/314、307/315、308/316)のうちの第1の(301-308)及び第2の(309-316)非捲縮横糸マルチフィラメント間を通る、非捲縮縦糸フィラメント(1);
ただし、全4つの前記規定した織り型c1、c2、c3及びc4については、捲縮縦糸フィラメント(41-44)が存在している;
ここで、前記布地は、前記捲縮縦糸フィラメント(41-44)の他には、捲縮縦糸フィラメントを全く含まず、
各非捲縮縦糸フィラメント(1)が、その次の非捲縮縦糸フィラメント(1)から偶数の捲縮縦糸フィラメント(41-44)だけ横糸方向に離れており、前記偶数は少なくとも2である;及び
(N mod 4)は、4によるNのユークリッドの整数除法により得られる余りを表す;
を含む、布地、
及び:
iia)前記含浸布の一方の側にすぐ隣接している、含浸(6)におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第1の最上面(8)を有する、第1の上層(7)、及び
iiia)前記第1の上層(7)の第1の最上面(8)に埋め込まれた第1の微粒子状研磨材(9);
又は
iib)前記含浸布の一方の側にすぐ隣接している、含浸(6)におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第1のカバー層(71);及び
iiib)前記第1のカバー層(71)に隣接している、マトリクス材料、第1の上部シート面(111)及び該第1の上部シート面(111)に埋め込まれた第1の研磨粒子(91)を含む、第1の予め製造された研磨シート(101)、ここで、前記マトリクス材料は、含浸(6)とは異なる、
又は
iic)前記含浸布の一方の側に隣接している、マトリクス材料、第1の上部シート面(111)及び該第1の上部シート面(111)に埋め込まれた第1の研磨粒子(91)を含む、第1の予め製造された研磨シート(101)、ここで、前記マトリクス材料は、含浸(6)とは異なる、
のいずれかを含む、研磨製品。
【請求項4】
前記布地が、第1の非捲縮横糸マルチフィラメントa)(301-308)、第2の非捲縮横糸マルチフィラメントb)(309-316)、捲縮縦糸フィラメントc)(41-44)及び非捲縮縦糸フィラメントd)(1)からなる、請求項3
に記載の研磨製品。
【請求項5】
各非捲縮縦糸フィラメント(1)が、2つのすぐ隣接する捲縮縦糸フィラメント(42、43)により、横糸方向に挟まれている、請求項1
~4の一項に記載の研磨製品。
【請求項6】
前記請求項1に規定された織り型c1(41)及びc2(42)の捲縮縦糸フィラメントが、常にペアで存在し、横糸方向に互いにすぐ隣接しており、請求項1に規定された織り型c3(43)及びc4(44)の捲縮縦糸フィラメントが、常にペアで存在し、横糸方向に互いにすぐ隣接している、請求項1~
5の一項に記載の研磨製品。
【請求項7】
捲縮縦糸フィラメントc)(41-44)の非捲縮縦糸フィラメントd)(1)に対する数の比が、4:1~12:1の範囲である、請求項1~
6の一項に記載の研磨製品。
【請求項8】
前記捲縮縦糸フィラメントc)(41、42、43、44)及び前記非捲縮縦糸フィラメントd)(
1)が、横糸方向に繰り返し単位で並んでおり、該繰り返し単位において、非捲縮縦糸フィラメントd)(1)及び前記織り型c1(41)、c2(42)、c3(43)及びc4(44)の捲縮縦糸フィラメントが横方向に並んでいる順序が、常に同一である、請求項1~
7の一項に記載の研磨製品。
【請求項9】
請求項1
又は3に規定されたiia)及びiiia)を含む、請求項1~
8の一項に記載の研磨製品。
【請求項10】
エンドレス研磨ベルトであり、前記布地の縦糸方向が、ベルトの進行方向にある、請求項
9に記載の研磨製品。
【請求項11】
iv)前記含浸布の他方の側にすぐ隣接している、前記含浸布の含浸(6)におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物からなるが、布地がない、第2の最上面を有する、第2の上層;及び
v)該第2の上層の第2の最上面に埋め込まれた第2の微粒子状研磨材、
を更に含む、請求項
9に記載の研磨製品。
【請求項12】
請求項1
又は3に規定されたiib)及びiiib)を含む、請求項1~
11の一項に記載の研磨製品。
【請求項13】
iv)前記含浸布の他方の側にすぐ隣接している、前記含浸(6)におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第2のカバー層(72);
v)前記第2のカバー層(72)に隣接している、マトリクス材料、第2の上部シート面(112)及び該第2の上部シート面(112)に埋め込まれた第2の研磨粒子(92)を含む、第2の予め製造された研磨シート(102)、ここで、前記マトリクス材料は前記含浸(6)とは異なる、
を更に含む、請求項1
2に記載の研磨製品。
【請求項14】
研磨パッド又は研磨ディスクである、請求項1
2又は1
3に記載の研磨製品。
【請求項15】
前記含浸(6)が、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーである、請求項1~1
4の一項に記載の研磨製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、研磨製品を含む布地に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨製品は、幅広く確立されており、様々な産業、例えば、航空宇宙、自動車用品製造、一般産業、海洋、金属加工、塗料調製、精密研削及びフィニッシング、第一次金属、溶射、輸送重機及び木材加工、において使用されている。
【0003】
研磨製品は、通常ポリエステル、コットン又はアラミドの基布、該基布に化学的に又は物理的に取り付けられた、例えば、ゴム、エラストマー、熱可塑性又は熱硬化性材料であることができる布地で覆われた層、及び種々の研磨化合物及び粒子からなる上層、からなるものであり得る。研磨製品のカテゴリーは、限定されることなく:湿式/乾式ベルト、やすり、狭部用、ポータブル、超砥粒及びマイクロ-フィニッシング、ワイドアンドフラットフィニッシングベルト及び材料である。研磨製品は、パッド、ディスク又はベルトの形態であってよい。
【0004】
研磨製品は、それらの使用の間、不可避的に強いせん断応力を経験する。せん断は、移動する支持体に対する研磨製品の裏側の粘着のために、及び研磨製品の研磨する側である前側と、研磨されるアプリケーション(application to be abraded)の表面間の摩擦のために生じる。研磨製品の裏側及び前側に作用する2つの力は、反対方向に向いており、したがって研磨製品の内部にせん断を引き起こす。このせん断は、研磨製品が、研磨されるアプリケーションを研磨する間、単一方向に走る研磨ベルトである場合、単一方向性であり得る。せん断は、しかしながら、研磨製品が、例えば、2方向に移動する、特に研磨されるアプリケーションに亘っておよそ円形の動きで移動するパッドである場合には、また2方向性であってよい。
【0005】
特開2013-240839号公報は、平織り、ツイル織り又はサテン織りであってよい基布材を含む、研磨布について開示している。縦糸は、少なくとも部分的にはコア-シーズ繊維である。該布は研磨ベルトに使用されている。
【0006】
特開2011-093083号公報は、マルチフィラメントの硬い撚糸生地及びそのアスカーA硬度が60である基材を含む、層状の磨きパッドについて開示している。生地は平織り、ツイル織り又はサテン織りであってよく、平織りが縦糸及び横糸の結合力が最も強いことから好ましい。
【0007】
国際公開第2012/042040号は、『シート、ベルト、モップディスク、フラップディスク』の形態の被覆された研磨剤において、研磨剤を結合するために、高性能が要求される場合、『主にフェノール樹脂が使用され』、そうでない場合、『尿素樹脂及びまた動物のり』が使用され、及び湿式研削のために『エポキシ、ウレタン又はアルキド樹脂』が使用されるということについて言及している。
【0008】
米国特許出願公開第第2010/0323574号明細書は、レベルN1、N3、N5及びN7に伸長している横糸フィラメント;すべてが同一の織り型を有し、レベルN1、N3、N5及びN7の前記横糸フィラメントで織られている縦糸繊維A、B及びC;すべてが同一の、第2の織り型を有し、またレベルN1、N3、N5及びN7の前記横糸フィラメントで織られている縦糸繊維G、H及びI;レベルN2、N4及びN6に伸長している更なる横糸フィラメント;及び横糸フィラメントで全く織られていない縦糸フィラメントD、J、E、K、F及びL、の4層を有する布地について開示している。この布地は、複合材料部品、例えば、ステイ、ロッド及びランディングギアのストラット、を製造する際に使用するためのものである。
【0009】
英国特許出願公告第1390603号明細書は、上部及び下部の横糸フィラメント、強化ワイヤ(縦糸方向に伸長している)、強化ワイヤと平行に走り、前記上部の及び下部の横糸フィラメントで織られていない、縦糸のように伸長している糸、前記上部の及び下部の横糸フィラメントの両方で織られているバインダー横糸、及び前記上部の横糸フィラメントのみで又は前記下部の横糸フィラメントのみで織られている縦糸を含む、布地について開示している。それは、またその布地を含み、エラストマー材料、好ましくはPVCプラスチゾルで含浸されたコンベアベルトについて開示している。
【0010】
本発明は、研磨製品のための改善された布地及びそれらを含む研磨製品を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、
[1]
a)必然的に互いに平行に走っており、距離Dだけ互いに離れている、第1の非捲縮横糸マルチフィラメントの第1の層(A);
b)必然的に互いに平行に走っており、前記距離Dだけ互いに離れている、第2の非捲縮横糸マルチフィラメントの第2の層(B);
第1の非捲縮横糸マルチフィラメントの各々については、1つの対応する第2の非捲縮横糸マルチフィラメントが存在し、その逆も然りであり、連続したマルチフィラメントペアを形成しており、各かかる連続したマルチフィラメントペアは、固有の及び上昇する整数インデックスNで明示することができる;
c)次の織り型c1-c4:
c1-(N mod 4)=0を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはNAで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み;(N mod 4)=1を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはNBで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;(N mod 4)=2を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはNCで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み;及び(N mod 4)=3を満たすインデックスNであって、かかるインデックスNはNDで表されるインデックスNを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;
又は
c2-前記インデックスNAを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み;前記インデックスNBを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスNCを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み;及び前記インデックスNDを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;
又は
c3-前記インデックスNAを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスNBを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み;前記インデックスNCを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;及び前記インデックスNDを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み;
又は
c4-前記インデックスNAを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;前記インデックスNBを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第2の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み;前記インデックスNCを有する、すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し;及び前記インデックスNDを有する、すべてのフィラメントペアのうちの第1の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み
のうちの1つを有する、捲縮縦糸フィラメント;
d)すべてのマルチフィラメントペアのうちの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間を通る、非捲縮縦糸フィラメント;及び
e)要すれば、前記規定した織り型c1、c2、c3又はc4のうちの1つを有する、捲縮帯電防止縦糸フィラメント;
ただし、全4つの前記規定した織り型c1、c2、c3及びc4の捲縮縦糸フィラメントが存在している;
ここで、前記布地は、前記捲縮縦糸フィラメント及び前記任意選択の捲縮帯電防止縦糸フィラメントの他には、他の捲縮縦糸フィラメントを全く含まない。
を含む、織布。
[2]各非捲縮縦糸フィラメントが、その次の非捲縮縦糸フィラメントから偶数の捲縮縦糸フィラメントだけ、横糸方向に離れており、前記偶数は少なくとも2である、前記[1]の布地。
[3]各非捲縮縦糸フィラメントが、2つのすぐ隣接する捲縮縦糸フィラメントにより、横糸方向に挟まれている、前記[1]又は[2]の布地。
[4]前記[1]に規定された織り型c1及びc2の捲縮縦糸フィラメントが、常にペアで存在し、横糸方向に互いにすぐ隣接しており、前記[1]に規定された織り型c3及びc4の捲縮縦糸フィラメントが、常にペアで存在し、横糸方向に互いにすぐ隣接している、前記[1]~[3]のうちの1つの布地。
[5]前記捲縮縦糸フィラメントc)の非捲縮縦糸フィラメントd)に対する数の比が、4:1~12:1の範囲である、前記[1]~[4]のうちの1つの布地。
[6]前記捲縮縦糸フィラメントc)及び非捲縮縦糸フィラメントd)が、横糸方向に繰り返し単位で並んでおり、該繰り返し単位において、非捲縮縦糸フィラメントd)及び前記織り型c1、c2、c3及びc4の捲縮縦糸フィラメントが横糸方向に並んでいる順序が常に同一である、前記[1]~[5]のうちの1つの布地。
[7]前記捲縮帯電防止縦糸フィラメントe)を含む、前記[1]~[6]のうちの1つの布地。
[8]前記第1の非捲縮横糸マルチフィラメントa)、第2の非捲縮横糸マルチフィラメントb)、捲縮縦糸フィラメントc)、非捲縮縦糸フィラメントd)及び任意選択の捲縮帯電防止縦糸フィラメントe)からなる、前記[1]~[7]のうちの1つの布地。
[9]
i)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなる含浸で含浸されている、前記[1]~[8]のうちのいずれか1つの布地;
ii)前記含浸布の一方の側にすぐ隣接している、前記含浸布の含浸におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第1の最上面を有する、第1の上層及び
iii)前記第1の上層の第1の最上面に埋め込まれた第1の微粒子状研磨剤
を含む、研磨製品。
[10]エンドレス研磨ベルトである、前記[9]の研磨製品。
[11]
iv)前記含浸布の他方の側にすぐ隣接している、前記含浸布の含浸(6)におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第2の最上面を有する、第2の上層;及び
v)前記第2の上層の第2の最上面に埋め込まれた第2の微粒子状研磨材
を更に含む、前記[9]の研磨製品。
[12]
i)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂又はエラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなる含浸で含浸されている、前記[1]~[8]のうちのいずれか1つの布地;
ii)要すれば、前記含浸布の一方の側にすぐ隣接する、前記含浸布の含浸におけるものと同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第1のカバー層;
iii)前記含浸布の一方の側に隣接する、又は、前記第1のカバー層が存在する場合、前記第1のカバー層に隣接する、第1の上部シート面に埋め込まれた第1の研磨粒子を含む第1の上部シート面を有する、第1の予め製造された(prefabricated)研磨シート
を含む、研磨製品。
[13]
iv)要すれば、前記含浸布の他方の側にすぐ隣接している、前記含浸布の含浸と同一の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を含む又はからなるが布地がない、第2のカバー層;
iv)前記含浸布の他方の側に隣接している、又は、前記第2のカバー層が存在する場合、前記第2のカバー層に隣接している、前記第2の上部のシート面に埋め込まれた第2の研磨粒子を含む第2の上部のシート面を有する、第2の予め製造された研磨シート
を更に含む、前記[12]の研磨製品。
[14]研磨パッド又は研磨ディスクである、前記[12]又は[13]の研磨製品。
[15]前記含浸は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー、特にTPU、を含む又はからなる、前記[11]~[14]のうちの1つの研磨製品。
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1-3は、本発明の布地の実施形態の略図である、すなわち、縦糸方向における断面図として
図1、上面図として
図2、及びまた断面図として
図3であるが、非せん断状態(
図3の上部)又は20°せん断(
図3の下部)のいずれかにある、ただ1つの捲縮縦糸フィラメントを含む;
【
図2】
図1-3は、本発明の布地の実施形態の略図である、すなわち、縦糸方向における断面図として
図1、上面図として
図2、及びまた断面図として
図3であるが、非せん断状態(
図3の上部)又は20°せん断(
図3の下部)のいずれかにある、ただ1つの捲縮縦糸フィラメントを含む;
【
図3】
図1-3は、本発明の布地の実施形態の略図である、すなわち、縦糸方向における断面図として
図1、上面図として
図2、及びまた断面図として
図3であるが、非せん断状態(
図3の上部)又は20°せん断(
図3の下部)のいずれかにある、ただ1つの捲縮縦糸フィラメントを含む;
【
図5】
図5は、横糸方向における断面図として、
図1の本発明の布地の略図を含む;
【
図6】
図6及び7は、各々、本発明の研磨ベルトの及び研磨パッド又はディスクの実施形態の概略断面図であり、各々、
図1の布地を含む。
【
図7】
図6及び7は、各々、本発明の研磨ベルトの及び研磨パッド又はディスクの実施形態の概略断面図であり、各々、
図1の布地を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、マトリクスが、単一方向に強化された、多層の織布コンポーネントの織られて結合した層に直接浸みわたっている、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー材料又はそれらの混合物のマトリクスの使用を提供し、前記布地が、マトリクス中に埋め込まれ、もつれている、十分に含浸された、マトリクス及び布地の物理的なもつれ、を提供する。層分離を最小化する際のかかるもつれの補助は、良好な摩耗特性を通じて、ポリマーマトリクスの結合/接着特性及び製品の侵入/脅かしの問題に対する抵抗を向上させ、一般にベルト性能及び耐用年数を向上させる。一方、良好な統合的及び次元的柔軟性を提供する。
【0014】
研磨される製品への本発明の研磨製品の動作は、布地の縦糸又は横糸方向のいずれか一方、又は両方であってよい。1つの具体的な実施形態において、前記動作はおよそ、又は正確に円形であってよい。本発明の布地及びそれを含む本発明の研磨製品は、せん断が縦糸方向又は横糸方向のいずれかにある場合、せん断層間剥離に対して、等しく良好な抵抗を示す。これは、驚くべきであり、というのは、本発明の布地は、縦糸方向における織物構造及びフィメント密度のいずれもが、横糸方向における織物構造及びフィラメント密度と異なるためである。織物構造における違いは、例えば、布地(縦糸又は横糸方向、典型的には縦糸方向)の方向のうちの1つは、研磨ベルトにおけるけん引層の要求をまた満足しなければならないためである;この要求は、もう一方の方向(横糸又は縦糸方向、典型的には横糸方向)においては必要ではない。縦糸及び横糸の両方向におけるせん断層間剥離に対する等しく良好な抵抗の唯一の観点から、縦糸及び横糸方向に同一の織物構造及びフィラメント数を有する布地が、非常に好ましくあり得る。
【0015】
本発明の布地は、縦糸方向又は横糸方向のいずれか一方におけるせん断層間剥離に対し、等しく良好な抵抗を与えるため、主な、又は単独の、研磨動作の方向に対して、本発明の研磨製品における布地の配向性は重要ではない。該研磨製品が、しかしながら研磨ベルトである場合、布地の縦糸方向はベルトの進行方向であることが好ましい。
【0016】
本発明の布地の縦糸方向におけるせん断層間剥離に対する抵抗の向上についての可能な理論的な説明は、
図1-4を参照して与えられる。本発明の布地は、第1に、横糸方向におけるせん断層間剥離に対して良好な抵抗を与える。というのは、横糸フィラメントは、すべて、単一フィラメントがもしかしたらそうであるよりもより密接にそれらに接着している含浸とかみ合っているマルチフィラメントであるためである。横糸方向におけるせん断層間剥離に対する抵抗の向上についての可能な更なる理論的説明は、
図5を参照して与えられる。
【0017】
本発明の布地において、非捲縮横糸フィラメントは、すべてマルチフィラメント(以降『非捲縮横糸マルチフィラメント』と示す)である。非捲縮横糸マルチフィラメントは、好ましくはポリエステル、例えば、PETからなる。非捲縮横糸マルチフィラメントのタイターは、特にポリエステル、例えば、PET、からなる場合、好ましくは670~2100dtexの範囲である。また好ましくは、非捲縮横糸マルチフィラメントの引張り強度は、好ましくは15~250cN/texの範囲、より好ましくは30~100cN/texの範囲及び非常に好ましくは60~80cN/texの範囲である。また好ましくは、それらの熱収縮(180℃で2分間の加熱下でのパーセントでの長さの減少)は、0.5~15%の、より好ましくは0.5~5%の及び非常に好ましくは1~2%の範囲である。また好ましくは、非捲縮横糸マルチフィラメントは、好ましくは多少の又はS-又はZ-撚り、又は撚りなしを有していてよく、メートル当たりのターンの数は、好ましくは0~50の、より好ましくは0~30の及び非常に好ましくは0~10の範囲である。非捲縮横糸マルチフィラメントは、要すれば、含浸のそれに対する接着を更に強化するために、例えば、公知の『コア-スピニング』プロセス(例えば、米国特許第2992150号明細書を参照)により、ステープル繊維、例えば、ポリエステル又は天然繊維、例えば、コットン、とともに紡糸してよい。好ましくはしかしながら、前記非捲縮横糸マルチフィラメントは、かかるステープル繊維がない。前記含浸は、本発明の布地全体のおかげで、ステープル繊維がなくてもかかる横糸マルチフィラメントに十分に接着する。
【0018】
本発明の布地は、前記の型の第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメントを含む。第1の非捲縮横糸マルチフィラメントの各々に対して、1つの対応する第2の非捲縮横糸マルチフィラメントが存在しており、その逆も然りであり、連続したマルチフィラメントペアを形成しており、その各々に対して整数のインデックスNを割り当てることができる。このインデックスNは任意である、ただし、整数Nは、縦糸方向における連続したマルチフィラメントペアの順とともに増加する。インデックスNは、Nmin~Nmaxの範囲内であってよく、Nminは、典型的には、問題の布地の例の第1のマルチフィラメントペアに割り当てられる、最小の可能なインデックスであり、Nmaxは、典型的には、問題の布地の例の最後のマルチフィラメントペアに割り当てられる、最高の可能なインデックスである。与えられるインデックスNが、名称NA、NB、NC又はNDに割り当てられるかは、Nについてなされる4を法とする演算の結果により、本明細書で使用される限り、いわゆる4によるNの『ユークリッドの整数除法』で得られる余りである。
【0019】
捲縮縦糸フィラメントは、すべて好ましくはまたマルチフィラメント、スパン糸又は一般に公知の『コア-スピニング』プロセスにより、ともに紡糸されたマルチフィラメント糸とステープル繊維との組み合わせである。任意のかかる捲縮縦糸フィラメントは、好ましくは天然繊維、例えば、コットン、黄麻、麻又はセルロース系繊維がない。含浸は、かかる天然繊維さえなくても、本発明の布地の十分に接着する。捲縮縦糸フィラメントは、好ましくはポリエステル、例えば、PETからなる。捲縮縦糸フィラメントのタイターは、特にポリエステル、例えば、PET、からなる場合、好ましくは550~2000dtexの範囲である。また好ましくは、捲縮縦糸フィラメントの引張り強度は、好ましくは15~250cN/texの範囲、より好ましくは15~40cN/texの範囲及び非常に好ましくは20~30cN/texの範囲である。また好ましくは、それらの熱収縮(180℃で2分間の加熱下でのパーセントでの長さの減少)は、0.5~15%の、より好ましくは5~15%の及び非常に好ましくは8~12%の範囲である。また好ましくは、捲縮縦糸は、好ましくはS-又はZ-撚りを有していてよく、メートル当たりのターンの数は、好ましくは0~400の、より好ましくは250~400の及び非常に好ましくは300~400の範囲である。代わって、それらの撚りの程度は、好ましくは5~15%の、より好ましくは7~13%の及び非常に好ましくは9~11%の範囲であってよい。
【0020】
捲縮縦糸フィラメントは、4つの異なる織り型c1-c4のうちの1つを有する。これらの4つの織り型は、問題のマルチフィラメントペアを定義する前記インデックスN
A-N
Dを使用して、次の表1のようなものである:
【表1】
【0021】
すなわち、前記織り型c1、c4、c2及びc3は、第1の非捲縮横糸マルチフィラメント周りの絡み、第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通し、第2の非捲縮横糸マルチフィラメン周りの絡み及び第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の通しが、c1-c4-c2-c3と進む際、インデックスNA、NB、NC及びNDについて、循環的に並び替えられる点でのみ異なる。
【0022】
本発明の布地について、前記織り型c1及びc2の捲縮縦糸フィラメントが、常にペアで現れ、横糸方向に互いにすぐに隣接していること、及び、前記織り型c3及びc4の捲縮縦糸フィラメントが、常にペアで現れ、横糸方向に互いにすぐ隣接していること、が好ましい。
【0023】
本発明の布地は、前記すべての織り型c1-c4の捲縮縦糸フィラメントを含む。好ましくはそれは、等しい数で4つの織り型c1、c2、c3及びc4の各々の捲縮縦糸フィラメントを含み、より好ましくはまた、前記説明した各繰り返し単位内に、等しい数で含む。
【0024】
非捲縮縦糸フィラメントは、すべて好ましくは、互いに平行に並んでおり及びすぐ隣接している、マルチフィラメント、又は複数のかかるマルチフィラメント、例えば、3-8のかかるマルチフィラメント、である。非捲縮縦糸フィラメントは、好ましくはポリエステル、特にPET、又はアラミドからなる。非捲縮縦糸フィラメントのタイター(又は、複数のマルチフィラメントが存在する場合、それらすべてのタイターの合計)は、好ましくは500~5000dtexの範囲である。より好ましくは、非捲縮縦糸フィラメントが、ポリエステル、例えば、PET、製である場合、それらのタイター(又は、複数のマルチフィラメントが存在する場合、それらすべてのタイターの合計)は550~2000dtexの範囲である;それらがアラミド製である場合、それらのタイター(又は、複数のマルチフィラメントが存在する場合、それらすべてのタイターの合計)は、より好ましくは440~3500dtexの範囲である。また好ましくは、非捲縮縦糸フィラメントの引張り強度(又は、複数のマルチフィラメントが存在する場合、全体の総引張強度)は、好ましくは15~250cN/texの範囲、より好ましくは30~100cN/texの範囲及び非常に好ましくは60~80cN/texの範囲である。また好ましくは、それらの熱収縮(180°Cで2分間の加熱下でのパーセントでの長さの減少)は、0.5~15%の、より好ましくは0.5~5%の及び非常に好ましくは1~2%の範囲である。また好ましくは、非捲縮縦糸マルチフィラメントは、好ましくは多少のS-又はZ-撚り、又は撚りなしを有していてよく、メートル当たりのターンの数は、好ましくは0~400の、より好ましくは50~300の及び非常に好ましくは70~140の範囲である。
【0025】
本発明の布地について、捲縮縦糸フィラメント及び非捲縮縦糸フィラメントが、横糸方向において繰り返し単位で存在しており、織り型c1を有する捲縮縦糸フィラメント、織り型c2を有する捲縮縦糸フィラメント、織り型c3を有する捲縮縦糸フィラメント、織り型c4を有する捲縮縦糸フィラメント及び非捲縮縦糸フィラメントが、横糸方向に並ぶ順序は、常に同一であることがより好ましい。
【0026】
好ましくはまた、各非捲縮縦糸フィラメントは、偶数の捲縮縦糸フィラメントだけ、その次の非捲縮縦糸フィラメントから横糸方向に離れており、その偶数は少なくとも2である。ここでより好ましくは、すぐ隣接している任意の捲縮縦糸フィラメントは、前記説明した織り型c1/c2又は織り型c3/c4のいずれかを有する。
【0027】
より好ましくはまた、各非捲縮縦糸フィラメントは、2つのすぐ隣接する捲縮縦糸フィラメントにより、横糸方向に挟まれている。すなわち、2つの連続した非捲縮縦糸フィラメントは、好ましくは決して横糸方向に互いにすぐ隣接していない;その間に、好ましくは常に少なくとも1つの、好ましくは2つの(前記参照)捲縮縦糸フィラメントが存在する。
【0028】
非捲縮縦糸フィラメント当たり、典型的には4~12の捲縮縦糸フィラメントが存在し、その具体的な比である12:1は、特に、平行に並んでおり、互いにすぐ隣接している複数のフィラメントである前記非捲縮縦糸フィラメントの前記実施形態に当てはまる。別の非常に好ましい実施形態は、4:1の捲縮縦糸フィラメントの非捲縮縦糸フィラメントに対する比率である。
【0029】
布地の1つの具体的な好ましい実施形態において、捲縮縦糸フィラメントの非捲縮縦糸フィラメントに対する比は、4:1であってよい。その中でこれらの縦糸フィラメントが繰り返し単位に生じる場合、これらの繰り返し単位中におけるフィラメントの順序は、常に同一であり、例示的なかかる順序は、C(c1)-C(c2)-UC-C(c3)-C(c4)又はそれらの任意の巡回置換である、ここで、Cは捲縮縦糸フィラメントを表し、UCは非捲縮縦糸フィラメントを表し、織り型は括弧内に示される。
【0030】
布地の別の好ましい実施形態において、捲縮縦糸フィラメントの非捲縮縦糸フィラメントに対する比は、12:1であってよい。その中で縦糸フィラメントが繰り返し単位に生じる場合、フィラメントの順序は常に同一であり、例示的なかかる順序は、C(c3)-C(c4)-C(c1)-C(c2)-C(c3)-C(c4)-UC-C(c1)-C(c2)-C(c3)-C(c4)-C(c1)-C(c2)又はそれらの任意の巡回置換であり、ここで、C及びUCは、前記のものであり、織り型は括弧内に示される。
【0031】
前記非捲縮横糸、捲縮縦糸及び非捲縮縦糸マルチフィラメントは、すべて好ましくは、複合繊維の形態であってよい。かかる複合繊維のサブクラスは、複数の高融点ポリマーのフィラメントが複数の低融点ポリマーのフィラメントと合わさったもの;又は複数の高融点ポリマーのフィラメントが低融点ポリマーに埋め込まれ、又は低融点ポリマーによりシーズされたものである。ここで、『高融点』及び『低融点』は、互いに相対的なものである。かかる複合繊維の目的は、織りの際又はその後のいずれかの際に、特にそれらのオーバークロス部分で、溶解するマルチフィラメントとともに、低融点材料のみが軟らかくなるよう、複合繊維が加熱されることである、。再度冷却する際、オーバークロス部分の結合しているホットメルト接着剤のために、布地は、せん断の下での変形に対し、及びしたがってせん断層間剥離に対し、増加した抵抗を示す。
【0032】
複数の高融点ポリマーのフィラメントが低融点ポリマーに埋め込まれている複合繊維の例は、いわゆる『海島』フィラメントである;複数の高融点ポリマーのフィラメントが低分子量ポリマーにシーズされている複合繊維の例は、例えば、50:50~80:20のコア:シーズの質量比の『コア-シーズ』繊維であり;同心又は離心のいずれかである。好ましいのは、前記コア-シーズ複合繊維であり、非常に好ましい同心型のものである。
【0033】
融点又は溶融間隔の差は、例えば、同一のタイプを有するが、2つの異なる分子量を有することにより、又は2つの化学的に異なるが交換可能なポリマーにより、制御することができる。高融点及び低融点ポリマーのためのポリマー材料のペアの例は、例えば、高及び低分子量ポリエステル、特にPET;ポリエステル及びポリアミド-6,6;ポリアミド-6,6及びコポリエステルである。
【0034】
1つの複合マルチフィラメントにおいて2つの異なるタイプのポリマーを組み合わせると、複合繊維の自己カーリング又は自己捲縮が生じ、それは本発明の目的には好ましくない。それに対抗するために、複合繊維の断面において、それらが少なくともおよそCn対称(その回転軸は複合繊維の中心軸に沿って走っており、nは2と等しいか又は2より大きい整数である)を有するよう、2つの複数のフィラメントが均一に分布しているか;又は低融点ポリマーの領域が均一に分布しているか、又は配置されていることが好ましい。非常に好ましい同心のコア-シーズ複合繊維の場合において、nは無限大であり得る。
【0035】
複合繊維のこれらタイプは、そのようなものとして、すべて従来的なものであり、当該技術分野においてよく知られている。
【0036】
本発明の布地は、要すれば前記定義した織り型c1-c4のうちの1つの捲縮帯電防止縦糸フィラメントを含んでもよい。これらの帯電防止フィラメントは、好ましくは、例えば、炭素繊維の、スパン糸であり、又はそこに引っ付く、その上に被覆される、又はそこに埋め込まれる金属導電体を有する、導電性ポリエステル、コットン、ナイロン又はアラミド繊維である。かかる導電性繊維は、そのようなものとして、従来的なものである。捲縮帯電防止縦糸フィラメントの引張り強度は、好ましくは15~250cN/texの範囲、より好ましくは15~40cN/texの範囲及び非常に好ましくは20~30cN/texの範囲である。また好ましくは、それらの熱収縮(180℃で2分間の加熱下でのパーセントでの長さの減少)は、0.5~15%の、より好ましくは5~15%の及び非常に好ましくは8~12%の範囲である。また好ましくは、捲縮帯電防止縦糸フィラメントは、好ましくはS-又はZ-撚りを有していてよく、メートル当たりのターンの数は、好ましくは0~400の及びより好ましくは100~400の範囲である。より好ましくは、4つの連続した非捲縮縦糸フィラメントごとにに隔てられる、ちょうど1つの捲縮帯電防止縦糸フィラメントが存在する。
【0037】
縦糸方向に、本発明の布地は、前記織り型c1、c2、c3又はc4のうちの1つを有する捲縮縦糸フィラメント及び任意選択の捲縮帯電防止縦糸フィラメントの他には、他の型の捲縮フィラメントを含まない。より好ましくは、本発明の布地は、織り型c1、c2、c3又はc4を有する捲縮縦糸フィラメント及び任意選択の捲縮帯電防止縦糸フィラメント及び非捲縮縦糸フィラメントの他には、縦糸方向に、他の型のフィラメントを含まない。横糸方向に、本発明の布地は、好ましくは非捲縮第1の及び第2の横糸フィラメントの他には、他のフィラメントを含まない。非常に好ましくは、本発明の布地は、非捲縮第1の及び第2の横糸フィラメント、非捲縮縦糸フィラメント、捲縮縦糸フィラメント及び任意選択の捲縮帯電防止縦糸フィラメントの他には、他のフィラメントを含まない。
【0038】
縦糸フィラメントが、繰り返し単位に、これらの繰り返し単位におけるフィラメントの順序は、常に同一であり、捲縮帯電防止縦糸フィラメントがまた存在している、生じる場合、好ましくはまた、これらの捲縮帯電防止縦糸フィラメントは、繰り返し単位において常に同一の位置で含まれる。それとは別に、繰り返し単位におけるそれらの数及び位置(複数あり)は任意である。好ましくは繰り返し単位当たり、1つのかかる捲縮帯電防止縦糸フィラメントが存在する。
【0039】
布地全体の布地の張力は、好ましくは縦糸方向に4000~8000N/50mm、より好ましくは5000~7000N/50mmの範囲であり、好ましくは横糸方向に6000~9000N/50mm、より好ましくは6500~8500N/50mmの範囲である。
【0040】
熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、エラストマー又は熱硬化性樹脂で含浸されている、本発明の布地は、本発明の研磨製品への前駆体であってよい。
【0041】
前記含浸として、熱可塑性樹脂は、好ましくは熱可塑性ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、実質的にランダムのエチレン/C3-12-α-オレフィンコポリマー(α-オレフィンの例は、1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンである)、熱可塑性ポリアミド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)及びPVCからなる群から選択してよい。
【0042】
前記含浸として、熱可塑性エラストマーは、好ましくは熱可塑性エラストマーのブロックコポリマー(例えば、スチレンブロックコポリマー、特にスチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン及びスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー)、中密度ポリエチレンの硬いブロックとエチレン/α-オレフィンコポリマーの軟らかいブロックとのコポリマー、熱可塑性ポリウレタン(例えば、ポリエステルジオール又はポリエーテルジオールとジイソシアナートとのコポリマー)、ポリエーテル-/エステルブロックアミド及び熱可塑性エラストマーイオノマーからなる群から選択してよい。
【0043】
前記含浸として、熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、エポキシ樹脂、又はポリカルボン酸、例えば、グリコール、例えば、グリセロールにより架橋されたポリ(メタ)アクリル酸であってよい。
【0044】
前記含浸として、エラストマーは、例えば、ポリウレタン、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)又はアクリラートゴムであってよい。これらはすべて、含浸工程の間に又はその後に、好ましくは同時に架橋又は加硫処理してよい。エラストマーは、上で説明したように、その前に熱可塑性樹脂と混合されていてもよい。
【0045】
前記含浸は、好ましくは熱可塑性エラストマー、より好ましくはTPU、からなる。好適なTPUは、硬いブロックセグメントを含むジイソシアナートをポリエステルジオールの軟らかいブロックセグメントと反応させることで得られ得る。
【0046】
かかる含浸布は、例えば、次の工程により、得てよい:
a)本発明の布地を提供する工程;
b)該布地の一方の側を、典型的には好適な溶媒、例えば、DMF、アセトン、ジメチルスルホキシド又は他のもの中でのそれらの溶液を使用して、及び好適な塗装法、例えば、エアナイフ、エアナイフ、又はキス-ローラー又は移送塗装を使用して、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの比較的薄い層でシールする工程;
c)要すれば加熱又は他の種類の照射及び/又は減圧下で、前記溶媒を蒸発させて、対象となる布地の側に熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの薄い下塗り塗料を提供する工程;この塗料はなお多孔質及びガス透過性である;
d)前記布地の反対の側に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はエラストマー又はそれらの混合物の比較的薄いフィルム塗料を、下塗り塗料におけるものとして、例えば、カレンダーすること又は押し出すことにより適用し、それが下塗り塗料と遭遇するまで、布地に押し入れ、及び押し通す工程る;トラップされたガスを下塗り塗料を通じて逃し、それにより含浸布が得られる。
【0047】
出来上がった含浸布は、典型的には、本発明の布地の両側に含浸材料を有することとなり、布地のフィラメント部分は環境に曝されていない。布地の一方の側に、布地は、幾何学的に明確に定められた表面の連続層を形成することとなり、この連続層は、布地を完全に埋め込む。この連続層は、好ましくはまた含浸材料のみからなり、布地を完全に含まない、第1の上層を含んでよい。この第1の上層は、前記説明した方法が使用される場合、通常、カレンダーすること又は押し出すことにより熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物の比較的厚いフィルム塗料が適用された布地の側にある。この第1の上層の厚さは、存在する場合、Diで表され、典型的には100~500マイクロメートルの範囲である。存在する場合、第1の上層は、前記幾何学的に明確に定義された表面を形成することとなる。厚さDiは、超音波反射を使用して決定してよい。すなわち、適切な超音波プローブを前記幾何学的に明確に定義された表面に置いてよい。プローブからベルトへの超音波パルスの放出と、第1の超音波エコー(埋め込まれた布地の表面から反射される)の検出間の時間差を測定することができる。使用される熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーにおける音波の長軸方向の速度が分かっている場合、Diを決定することができる.使用される熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーにおける音波の長軸方向に速度については、例えば、James E. Markによる、『Physical Properties of Polymers Handbook』、第2版、の第60章『Acoustic properties of polymers』、その表60.1及びそこに引用されている参考文献を参照する。かかるベルト厚さの測定装置及び適切なプローブは、実際に公知であり、市場で入手可能である。例としては、プローブとして単独の要素である変調器を有する、NDT Instrumentsからの38DL Plusである。
【0048】
要すれば、及び前記説明した方法における任意選択の工程e)として、前記含浸において使用したものと同一の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物のシートを、含浸布の他方の側に積層又はカレンダーすることができる。前記説明した方法において、これは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物の比較的薄い層で初めにシールされた側である。これは、それから前記布地の他方の側に、第2の幾何学的に明確に定義された最上面を有する、任意選択の第2の上層を形成することとなる。
【0049】
本発明の研磨製品は、少なくとも1つの種類の微粒子状研磨材を含む。微粒子状研磨材(複数あり)は、そのようなものとして、従来的なものである。研磨材の例は、限定することなく、アルミナ(例えば、褐色酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム及び白色酸化アルミニウムを含む溶融酸化アルミニウム;セラミック酸化アルミニウム;コランダム;ルビー;サファイヤ;又はドープアルミナ)、耐熱性炭化物(例えば、炭化ケイ素;炭化ホウ素;炭化タングステン;炭化チタン又はセメンタイト(Fe3C))、耐熱性窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ジルコニウム;窒化タングステン;窒化バナジウム;窒化クロム;窒化タンタル又は窒化ニオブ)、クロミナ、アルミナジルコニア、ダイヤモンド、酸化鉄、二ホウ素化チタン、セリア、ガーネット(例えば、パイロープ;鉄礬柘榴石;マンガンざくろ石;灰クロ(-)ムざくろ石及び灰鉄ザクロ石)、粉末状ガラス、金属粒子及びそれらの組み合わせ、を含む。研磨粒子は、典型的には、粒子径分布のレーザー回折決定法により得られる、0.01~30マイクロメートル、好ましくは0.05~10マイクロメートル、及びより好ましくは0.1~5マイクロメートルに及ぶ、質量中央径(MMD)を有していてよい。研磨粒子は、典型的には少なくともおよそ7の 、好ましくは少なくとも8のモース硬度を有していてよい。
【0050】
本発明の研磨製品は、前記のような含浸布を提供する工程、及び前記のような微粒子状研磨材を適用する工程により、調製してよい。これは、いくつかの方法で行ってよい。
【0051】
第1の好ましい実施形態において、研磨製品は、上層(複数あり)それ自体(複数あり)の最上面(複数あり)に埋め込まれた研磨粒子を含む。含浸の、及びしたがって、上層(複数あり)の材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物、したがって、加熱すると柔らかくなるか又は溶解する材料である。上層(複数あり)の最上面(複数あり)は、1つの代わりにおいて、例えば、IRランプの列により、ほとんどその(それらの)融点近くまで均一に加熱されて、柔らかくなってよい。加熱するとすぐに微粒子状研磨材は、例えば、静電噴霧により、柔らかくなった表面(複数あり)に噴霧されるか又はまぶされる。代わって、研磨粒子をなお冷たい最上面(複数あり)に静電噴霧してもよく、これは、熱せられたカレンダーロールを通過し、同時に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を軟らかくし、及び研磨粒子を該軟らかくされた表面(複数あり)に埋め込む。これらの2つの代わりのいずれかにおいて、冷却後、最上面(複数あり)に直接埋め込まれた研磨粒子を有する、研磨製品が得られる。各研磨材を含む上層の全体の厚さ、Di’、は、また、まだ研磨粒子がない上層について、前記概略を示した、超音波反射を使用して決定してよい。研磨粒子が、研磨材を含む最上部の連続した上層の期待される厚さに対して、非常に小さい場合、例えば、その質量中央径(MMD、前記参照)が、0.01~0.5マイクロメートルの範囲である場合、超音波パルスの発生と埋め込まれた布地の表面から反射されるエコー間の時間差を取得することができる。Di’は、前記説明したDiと実質的に同一となる。研磨粒子が大きいMMDである場合、超音波プローブは、外側の表面上には直接ないが、研磨粒子の頂点にあることとなる。この場合において、外側の表面から反射される、第1のエコーと埋め込まれた布地の表面から反射される、第2のエコー間の時間差を取得することができる。
【0052】
微粒子状研磨材が、前記概略を示した、上層(複数あり)に含まれる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物に直接埋め込まれている場合、せん断応力下、発明の布地からの層間剥離に対して、増強された抵抗含浸を最大限利用する。というのは、更なる層が存在せず、したがって研磨で使用する間、他のあり得る層間分離の心配がないためである。
【0053】
本発明の研磨粒子を得るための第2の好ましい方法は、前記説明した、研磨粒子を含む1つ又は2つの予め製造されたシートを、前記含浸(含浸におけるものと同一の熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの上層(複数あり)が存在しない場合)の一方の面又は両方の面に、又はかかる上層(複数あり)が存在する場合、上層(複数あり)の表面(複数あり)に、適用することである。それらを含む予め製造されたシートの形態において、研磨粒子を含むことにより、市場から入手可能な、所望の均一性でそれらを製造する際の各手順の経験を有する、シートの多様性を活用することが可能となり得る。それは、研磨される基材上への良好な研磨作用の観点から有益な更なる機械的剛直性を研磨製品にまた与え得る。
【0054】
この第2の実施形態において、用語『研磨粒子を含む予め製造されたシートを適用する』は、第1に、熱及び圧力、例えば、熱せられたカレンダーロール、そこでは含浸材料それ自体がホットメルト接着剤として作用し得る、により、又は更なる熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂又はエラストマー接着剤又は接着プライマーを併用することによる、含浸布/任意選択の上層(複数あり)及び予め製造された研磨シートの化合物の結合を意味すると解される。第2に、それらの間の物理的又は化学的結合に何らの影響をもたらすことなく、単純に予め製造された研磨シートを含浸布/任意選択の上層(複数あり)の化合物の上に重ね、ひとたび消耗されたり又は破れた際に、該予め製造された研磨シートを容易に置き換えたりすることができる、本発明の研磨製品を得ることを意味すると解される。
【0055】
第1の前記説明した実施形態におけるものとして、各任意選択の第1の及び第2の上層(複数あり)は、また、各々、厚さDi1及びDi2を有することとなり、各第1の及び第2の研磨粒子を含む予め製造されたシートは、各々、厚さDi1’及びDi2’を有することとなる。これらの厚さの各々は、また前記のように、超音波により測定可能であるが、これは特にまた、含浸及び任意選択の第1の及び第2の上層(複数あり)の熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーが、通常、予め製造された研磨シート(複数あり)のマトリクス材料と異なり、更なる超音波エコーが各界面で得られるためである。
【0056】
用語『研磨粒子を含む予め製造されたシート』は、任意の平面状シート材料、例えば、シート、リボン、テープ又はディスクの形態のもの、を意味し得る。これらの予め製造されたシートは、要すれば接着剤の使用を伴う、プラスチックの、例えば、典型的にはポリエステルの、支持体に埋め込まれた研磨粒子を含み、又はサンドペーパー型であってよい。含浸布/任意選択の上層(複数あり)の化合物への物理的又は化学的結合がない前記研磨粒子には、後者が特に好ましい。
【0057】
予め製造された研磨シートが含浸布/任意選択の上層(複数あり)の化合物に結合している場合、得られる研磨製品の、使用の間のせん断の下での層間剥離に対する抵抗は、含浸に研磨粒子を直接埋め込む、前記概略を示した第1の方法におけるものと同様であり得る。
【0058】
予め製造された研磨シートが、物理的又は化学的結合がない含浸布/任意選択の上層(複数あり)の化合物に単純に適用される場合、研磨に使用する間のそれらの間の接着は、典型的には研磨製品が、含浸の表面と予め製造された研磨シートの底側の間の静止摩擦係数を利用して、研磨される製品の表面に対して行使することとなる圧力のために生じる。前記底側が、例えば、明示的な表面探査又はエンボス加工による、目立った表面粗さ又は表面非平坦性を有する場合、研磨における使用の間、その非平坦な底の面は、やがて含浸の又は最上部の連続上層の表面にぴったりと適合し始め得る:研磨における使用は、摩擦熱を生じさせ、室温で中程度のショアA硬さの及び熱を加えると軟らかくなる含浸は、やがて少し変形して前記非平坦な底面に適合することとなる。
【0059】
市場には研磨粒子及び/又は予め製造された研磨シートを提供する多くの会社が存在し、例えば、本願の出願時点のものでは、Minnesota Mining & Manufacturing(USA)、D.K. Holdings Limited(UK)、KGS Diamond International AG(ネーデルランド、ポルトガル)及びSIA Abrasives(スイス)である。
【0060】
前記実施形態の任意のものにおいて、研磨粒子は、そのようなものとして又は予め製造された研磨シートの形態で使用されようと、最終的に、本発明の研磨製品の外側表面部分のみを覆い得る。研磨粒子又は研磨シートにより覆われていない外側表面のセクションは、研磨された材料及び/又は過剰な摩擦熱が除かれ得る、凹型チャネルを構成し得る。さらに、外側表面の一部のみが覆われている場合、研磨される製品の表面に加えられる圧力は、研磨プロセスのパラメータの残りが不変のままである場合、その部分の逆数で増加する。
【0061】
本発明の研磨製品の全体の厚さ、Dtot、は、典型的には0.5~5mmの、好ましくは1~3mmの範囲である。厚さDtotは、通常の測定機器で、要すれば例えば、0.2barの弱い過圧、を適用することにより、測定することができる。
【0062】
本発明の研磨製品は、例えば、研磨される製品の表面の十分な部分を研磨することが可能な、十分な表面の、任意の必然的にシート状の形状を有することができる。研磨製品は、平面状に使用されてよく又はシリンダー状に巻き上げられていてもよい。研磨製品は、手動のものであってよく、電動のもの、例えば、本発明の研磨製品が固定された又は横たわらせられた、円形のゴム支持ディスクを有する電動ドリルによるもの、であってもよい。好ましくは、それは、研磨ベルトの、又は研磨ディスク又は研磨パッドの形状を有する。本発明の研磨ベルトにおいて、研磨粒子は、好ましくは布地における含浸(前記参照)と同一の熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーからなる、布地がない上層の最上面に直接埋め込まれている。研磨ベルトは、通常のコンベアベルトと同様に、すなわち、駆動式及び遊びの滑車を使用したエンドレス形状で、通常作動する。本発明の研磨ベルトについて、それは、前記滑車と面するもう一方の側ではない一方の側にのみ、研磨粒子コーティングを有するのが好ましい。本発明の研磨ベルトは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを含み、ホットメルト接着剤として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー又はそれらの混合物を使用しながら、コンベアベルトのための任意の従来の末端結合技術により、例えば、いわゆる『フィンガーエンド(finger end)』又は重なり結合技術により、エンドレスにすることができる。研磨材パッドは、好ましくは平面であり、好ましくは四角形、長方形、三角形の、又は円弧の部分の又は円の部分の形状を有し、好ましくはまた丸味を帯びた先端を有する。本発明の研磨ディスクは、好ましくは必然的に又は正確に円形を有し、好ましくは円形摩擦動作に使用することを目的としている。本発明の研磨パッド又はディスにおいて、研磨コーティングは、含浸布の一方の又は両方の側に適用される;好ましくはそれらはそれらの一方の側のみに適用される。研磨コーティングは、含浸布に直接又は含浸と同一の材料からなる、布地がないカバー層のいずれかに、予め製造された研磨シートの形態において、好ましくは適用される。
【0063】
本発明の研磨製品は、含まれる研磨材及び形状に応じて、幅広く多様なアプリケーションを有することができる。非限定的な例は、デバリング(例えば、内径デバリング)、ブレンディング(例えば、コーナーのブレンディング)、バッファリング、クロム取り、クリーニング、コーティング除去、スケール除去、研磨(例えば、ドラム研磨;エッジ研磨;金型研磨;ワイドベルト研磨;ポータブルベルト研磨又はストローク研磨)、エッジ面取り、エッジ縫い、フィニッシング(例えば、輪郭フィニッシング;微細フィニッシング;フラットエリアフィニッシング;中間フィニッシング;ステンレス鋼フィニッシング;直線起毛フィニッシング;スーパーフィニッシング;溶接除去フィニッシング又は伝導装置マイクロ-フィニッシング)、ゲート除去、研削(例えば、高圧研削;光研削;プレート研削;直角研削;シート研削;揺動フレーム研削;スラブ研削又は芯なし研削&円筒研削)、研磨機のスケール除去、分割線除去、研磨(例えば、プレート研磨;研磨内径;シート研磨又はコイル研磨)、ペイント前の金属の準備、ラディウシング(radiusing)、洗練、粒子のセット、加工、等。
【0064】
研磨製品に使用され、研磨動作が布地の縦糸方向である場合、本発明の布地の層間剥離に対する抵抗は、
図1-4を参照して説明される。
【0065】
図1(断面図)及び
図2(上面図)は、本発明の例示的な布地を示す。この布地は、非捲縮縦糸フィラメント1、各々、数字301-308及び309-316で表される、第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(
図1の断面に示す)、及び捲縮縦糸フィラメント41-44を有する。各第1の非捲縮横糸マルチフィラメント301又は302又は303又は304又は305又は306又は307又は308に対して、1つの対応する第2の非捲縮横糸マルチフィラメント309又は310又は311又は312又は313又は314又は315又は316が存在し、その逆も然りであり、連続したマルチフィラメントペア301/309、302/310、303/311、304/312、305/313、306/314、307/315、308/316を形成する。これらの連続したマルチフィラメントペアの各々は、整数のインデックス;例えば、次の表2によるもので明示できる:
【表2】
【0066】
図3は、
図1の布地の捲縮縦糸フィラメント41の概略側面図であり、1つはせん断がないもの、1つは20°せん断のもの(
図3の下部)である。この捲縮縦糸フィラメント41は、長さVの下降するフィラメント部分(数字411で示されるもの)及び長さWの上昇するフィラメント部分(数字412で示されるもの)を有する。ここで、非せん断状態では、W=Vである。
【0067】
布地がせん断している場合、上昇するフィラメント部分412は、張力を受ける。しかしながら、非捲縮縦糸フィラメント1及び捲縮縦糸フィラメント41-44が合理的に高い引張強度にあると仮定される場合、ハーフピッチL及び上昇するフィラメント部分412の長さWは、非せん断状態及びせん断状態において、不変であると推測され得る。下降するフィラメント部分411が、せん断の下にある場合、圧縮応力を受け、それらの長さV’は、その圧縮応力の下では、図的に短くなる。
【0068】
せん断下での、下降するフィラメント部分411のこの図的に短縮された長さV’は、せん断角、フィラメント径及びフィラメント間距離に基づき、及びL及びW残りの定数が次のとおりである仮定の下、正確に計算することができる:
【数1】
式中、Wは前記上昇するフィラメント部分412の長さであり(非せん断状態とせん断状態とで等しく、さらに、非せん断状態においては、下降するフィラメント部分411の長さVと等しい)、このWは次のとおり計算することができる:
【数2】
式中、Lは前記ハーフピッチであり、Hは対応するペア(例えば、308/316)に一致する、隣接する非捲縮横糸マルチフィラメントの中心間の垂直方向の距離である;Xは非捲縮横糸マルチフィラメント(複数あり)301-316の直径である;Yは捲縮縦糸フィラメント41の直径である;及びδはせん断角である。
【0069】
有意義なせん断角δについて、sin(δ)は0より大きいか又は等しい、及びL及びHは常に0より大きい。それから(1)において常に:
【数3】
これは、(1)の括弧内の項が常に0より小さく、(1)で計算されるV’が常にW(=V)より小さく、比V’:Vが常に1より小さいことを意味する。
【0070】
与えられたH及びδで、(1)に現れる項
【数4】
はハーフピッチLの増加とともに0に近づくようになり、与えられたH、X、Y、及びδで、(1)で計算されるV’はWに近づくようになる。したがって、V’:V(=V’:W)の比は、ハーフピッチLの増加とともに1に近づくようになる。
【0071】
D=15ユニット、L=30ユニット、H=15ユニット、X=4.35、Y=4.35ユニット及びδ=20°である、
図1-3の例示的な実施形態において、前記式を用いて:W=V=32.39ユニット、V’=26.29ユニット、及びV’:V(=V:W)=0.831を得る。これは、20°せん断で16.9%の下降するフィラメント部分611の図的な短縮に相当する。
【0072】
かかる圧縮応力に対する下降するフィラメント部分411の推定される実際の反応は、(モノフィラメントについて)それらの長軸からいくぶん外側へ膨らむことであり又は(マルチフィラメントについて)そこに含まれる個々のフィラメントがいくぶんけば立つこと、又はマルチフィラメントがいくぶん大きくなることである。圧縮応力に対する下降するフィラメント部分411のこの推定される実際の反応は、これらの下降するフィラメント部分411に接着している含浸のあり得る層間剥離の、したがって縦糸フィラメント41に接着しているかかる含浸の層間剥離の、主な理由であるとされる。圧縮応力に対する下降するフィラメント部分411のこの推定される実際の反応は、
図3に十分に示すことができない。その代わり、
図3は、前記非せん断状態であるVからのせん断状態であるV’への下降するフィラメント部分411の図的な長さの短縮を示している。下降するフィラメント部分411の図的に短縮するV’がより顕著になるにつれ、圧縮応力に対する下降するフィラメント部分411の前記実際の反応がより顕著に予測される。
【0073】
本発明の布地において、任意の非捲縮横糸マルチフィラメント301-316間を決して通ることなく、
図4に示すように、交互に、単純に第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント、各々301-308及び309-316、周りに絡む、捲縮縦糸フィラメント5が使用された場合、その交互に絡む、捲縮縦糸フィラメント5についてのハーフピッチLは、Dと等しくあり得、したがって、30ではなく、たった15であり得る。せん断の下、その上昇するフィラメント部分52の長さWが一定であると仮定され、及び他のすべてのパラメータが
図1-3について同一であると仮定される場合、20°のせん断角で、かかる交互に絡む捲縮縦糸フィラメント5の下降するフィラメント部分51について、前記式(1)及び(2)を用いて:W=V=19.35ユニット、V’=12.42ユニット及びV’:V(=V’:W)=0.642が得られ得る。これは、20°せん断で、35.8%のこれらの下降するフィラメント部分51の図的な短縮に相当する。これは、
図1の本発明の布地の捲縮縦糸フィラメント41について観測された16.9%よりもはるかに大きいものであり、圧縮応力に対して、かかる交互に絡む捲縮縦糸フィラメント5における、下降するフィラメント部分51のより顕著な実際の反応、及びしたがって、せん断下で層間剥離する、かかるフィラメントの下降するフィラメント部分51に接着する含浸の、より顕著な傾向を示すものである。
【0074】
本発明の布地において、縦糸方向における織りのハーフピッチLは、隣接する非捲縮横糸フィラメントの中心間の距離Dのおよそ2倍である。というのは、それらの第1の及び第2の非捲縮フィラメント間に捲縮縦糸フィラメント41-44を通させる、追加のフィラメントペアが常に存在するからである。布地のせん断状態における任意のかかるマルチフィラメントペアにおける、第1の非捲縮横糸マルチフィラメント(例えば、
図3における303又は308)及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント(例えば、
図3における311又は316)の中心間の図の距離H’を計算するための式は:
【数5】
式中、H、L及びδは、前記定義したものである。
である。
L及びHは常に0より大きいため、及び有意義なせん断角δについて、sin(δ)は0より大きいか又は等しいため、式(3)で計算されるH’は、ハーフピッチLの増加とともに小さくなる。式(3)によるH’は、せん断角が0と等しい場合、Hと等しく、δが0より大きい場合、Hより小さくなる。ハーフピッチLが大きくなるにつれ、式(3)のH’は、せん断角δの増加とともに、より速く0に収束する。
【0075】
前記式(3)の前記挙動により、第2に、せん断角δの増加とともにより小さくなるH’のために、前記追加のマルチフィラメントペア(例えば、
図3における303/311)は、横方向に、下降するフィラメント部分411を圧縮し始め、それらが前記外側へ膨らむこと、大きくなること又はけば立つことに部分的に対抗することとなり、したがって、更にこれらの下降するフィラメント部分411に接着している含浸の層間剥離を抑制する、と予測することができる。
【0076】
前記式(3)の前記振舞いにより、第3に、増加するハーフピッチLとともに、より速く0に収束するH’のために、
図1-3の本発明の布地においては、距離H’の減少が、
図4に示した捲縮縦糸フィラメント5を有する布地におけるものよりも、より顕著になる。というのは、かかる単純交互式の捲縮縦糸フィラメントについて、ハーフピッチLはその距離Dと等しいのだけであり、距離Dの2倍ではないためである、ことを予測することができる。したがって
図1-3の本発明の布地は、せん断されるのではなく、その圧縮(より顕著なH’の減少)される傾向のために、縦糸フィラメント5を含む布地と同程度には、せん断されることができないことが、予測される。
図3の下部における略図は、
図1-3の本発明の布地は、非捲縮横糸フィラメント301-316と捲縮縦糸フィラメント41との及び非捲縮横糸フィラメント301-316と非捲縮縦糸フィラメント1との図の重なりを考慮すると、20°までのせん断に抵抗すると実際に予測するものである。
【0077】
前記思慮は、具体的には、
図1-2に現れる捲縮縦糸フィラメント41についてなされたものであるが、そこに示された任意の他の捲縮縦糸フィラメント42、43及び44のうちのいくつかに適用することができる。それらは、すべて 捲縮縦糸フィラメント41と同一の織り型を有するためである。
【0078】
前記すべてを考慮すると、含浸され、研磨製品に成形される際、
図1の布地は、
図4に示される交互に絡む縦糸フィラメント5を有する布地よりも、研磨動作が布地の縦糸方向である場合、よりせん断層間剥離しない傾向があることが予測される。
【0079】
布地の縦糸方向における研磨動作の下でのせん断層間剥離に対するこの向上した抵抗に必要不可欠なものは、したがって本発明の布地は、
図1-2について説明した織り型の捲縮縦糸フィラメント41-44をいずれも含み、非捲縮縦糸フィラメント1を含むが、
図4に示したように、非捲縮横糸フィラメント間を全く通らず、単純に交互に第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント周りに絡む捲縮縦糸フィラメント5を全く含まないということである。
【0080】
研磨製品において使用され、研磨動作が布地の横糸方向である場合、本発明の布地の層間剥離に対する向上した抵抗は、
図5を参照して説明される。
【0081】
図5は、横糸方向における
図1の発明の布地の4つの断面図を示す。第1の断面図は、非捲縮横糸マルチフィラメント302、310を有する連続したマルチフィラメントペアを通したものである;第2のものは、非捲縮横糸マルチフィラメント303、311を有する連続したマルチフィラメントペアを通したものである;第3のものは、非捲縮横糸マルチフィラメント304、312を有する連続したマルチフィラメントペアを通したものである;及び第4のものは、非捲縮横糸マルチフィラメント305、313を有する連続したマルチフィラメントペアを通したものである。各4つの断面図において、破線の箱は、横糸方向における繰り返し単位を示す。すべての断面図におけるこの繰り返し単位は、また各連続したマルチフィラメントペアの第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間を通る、1つの捲縮縦糸フィラメントを含む:第1の及び第3の断面図において、それは捲縮縦糸フィラメント43であり、第2の及び第4の断面図において、それは捲縮縦糸フィラメント42である。第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間の捲縮縦糸フィラメント42、43の通しは、垂直線で示される;捲縮縦糸フィラメント42、43が、第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間を通る際、上昇するフィラメント部分412(
図3において説明)を形成する場合、これらは上側の実線及び下側の破線である;又はこれらの捲縮縦糸フィラメント42、43が、第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント間を通る際、下降するフィラメント部分411(
図3において説明)を形成する場合、これらの垂直線は、上側の破線及び下側の実線である。捲縮縦糸フィラメント42、43は、いずれも第1の/第2の非捲縮横糸マルチフィラメント302/310、303/311、304/312及び305/313間を通り、第1の非捲縮横糸マルチフィラメント302-305周りに及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント310-313周りに絡む。したがって、捲縮縦糸フィラメント42、43は、それらの中心軸周りに回転することが全くできず、したがって、第1に、反対方向に、前記第1の非捲縮横糸マルチフィラメント302-305及び前記第2の非捲縮横糸マルチフィラメント310-313の軸変位動作を抑制する。かかる軸変位動作は、実際には、非捲縮縦糸フィラメント1により支持され、それらの中心軸周りの回転により、反対方向に、前記第1の非捲縮横糸マルチフィラメント302-305及び前記第2の非捲縮横糸フィラメント310-313のかかる軸変位動作を促しながら、おそらくは、ローラーとして作動し得る。非捲縮横糸マルチフィラメント302-305及び310-313が十分に近い場合、又は横糸方向におけるせん断の際、十分に近くなる場合、捲縮縦糸フィラメント42、43は、また摩擦により、反対方向でのそれらの更なる軸変位を抑制する。それらは回転することができないためである。
【0082】
また
図5に示すように、繰り返し単位が、なお更に捲縮縦糸フィラメント41、44を含む場合、非捲縮横糸マルチフィラメント302-305及び310-313の反対方向における軸変位の抑制は、更により顕著となる。捲縮縦糸フィラメント42、43について説明したのと同一の理由のためである。
【0083】
要約すると、
図1の布地は、またせん断抵抗性、したがって、その横糸方向に、せん断層間剥離抵抗性であることが、予測される。
【0084】
せん断の方向が、縦糸方向(
図3を参照して説明したように、布地のより強い圧縮をもたらす)と、横糸方向(非捲縮横糸フィラメント302-305及び310-313と非捲縮縦糸フィラメント1間の増加した摩擦を引き起こし、
図5を参照して説明したように、代わりに横糸方向におけるせん断を妨げる、布地の前記より強い圧縮を使用する)と同時である場合、せん断層間剥離に対する抵抗は特に顕著である、と予測される。
【0085】
研磨動作の下での、本発明の研磨製品のせん断層間剥離に対する抵抗は、Taber研磨機(Taber industries)において、容易に実験的に試験することができる。標準化されたTaber研磨ホイールの代わりに、同一のサイズであるが、研磨する外側の面として、試験される本発明の研磨製品のリボンを含む、従来型の研磨ホイールを使用する。このセットアップにより、それに含まれる布地の織りの任意の方向(縦糸、横糸、又は両方の組み合わせ)に、本発明の研磨製品のせん断について、試験することが可能となる。リボンは、好適な配向性で、本発明の研磨製品から切り出されることのみを必要とする。
【0086】
図6は、非捲縮縦糸フィラメント1及び第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント、各々、301-308及び309-316を通過する、その長軸方向に沿った、本発明の布地を含む、本発明の研磨ベルトの概略断面図である。布地の長軸(縦糸)方向は、また研磨ベルトの進行方向とみなされる。第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント301-308及び309-316、各々、ポリエステルからなり、説明した実施形態において、0.25-0.45mmの厚さを有する。非捲縮縦糸フィラメント1は、典型的にはポリエステルからなる又は、より好ましくは、アラミドからなるマルチフィラメントである。捲縮縦糸フィラメント41-44は、典型的にはポリエステルからなるマルチフィラメントであり、説明した実施形態において、550~2000 dtexのタイターを有する。典型的には非捲縮縦糸フィラメント1当たり、4又は12の捲縮縦糸フィラメント41-44が存在する。研磨ベルトは、典型的にはTPUの、例えば、Lubrizol’s Estane(登録商標)TPUタイプの、含浸6、及び含浸6と同一の含浸材料からなり、完全に布地を含まない、最上部の連続した上層7を有する。最上部の連続した上層7と含浸布との間の境界は、破線で示される。最上部の連続した上層7は、そこに直接埋め込まれた研磨粒子9を有する上面8を有する。最上部の連続した上層は、研磨粒子を埋め込んだ後、前記概略を示した、超音波により測定可能な厚さD
i’を有する。上層7の上面8に研磨粒子9を直接埋め込むことで、ベルトの全体の厚さD
totを減少させるのを助け、滑車全体に亘る曲げ性の観点から支持できるものである。本発明のこの研磨ベルトは、典型的には、前記測定機器により、目に見える、1~3mmの範囲の全体の厚さD
totを有する。
【0087】
図7は、非捲縮縦糸フィラメント1及び第1の及び第2の非捲縮横糸マルチフィラメント、各々、301-308及び309-316、を通過する、その長軸方向に沿った、本発明の布地を含む、本発明の研磨パッド又はディスクの概略断面図である。それは、本発明の布地、含浸6及び含浸布の一方の側にある、含浸6と同一の含浸材料からなるが、完全に布地がない、厚さD
i1の第1のカバー層71を含む。示された実施形態において、また含浸6と同一の材料からなるが、布地が完全にない、厚さD
i2の第2のカバー層72が存在する。この研磨パッド又はベルトは、厚さD
i1’の、その第1の上部シート面111に埋め込まれたこれらの第1の研磨粒子91を含む、第1の予め製造されたシート101の形態で、第1の研磨粒子91を含む。それは、例えば、タイプ262Lの研磨テープ、又はタイプSのいわゆる『マイクロ-フィニッシングフィルム』であってよく、いずれもMinnesota Mining & Manufacturingにより製造されている。この第1の予め製造されたシート101は、熱及び圧力の下、要すれば相性のよいホットメルト接着剤(示していない)の併用とともに、第1の上層71に積層されている。第1の予め製造されたシート101と同一の又はそれと異なる、第2の予め製造されたシート102、厚さD
i2’の、その第2の上部シート面112に埋め込まれた研磨粒子92(研磨粒子91と同一であってよく又はそれとは異なるものであってよい)を更に含む、第2の予め製造されたシート102が、第2の上層72に積層されている。この第2の予め製造された研磨材を含有する層は任意選択的である。