(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】多様度指数を確立することで腫瘍バリアント多様度を評価することによるがん予後診断の方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20230509BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230509BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230509BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230509BHJP
【FI】
C12Q1/68
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2020562686
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2019061810
(87)【国際公開番号】W WO2019215223
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】シアオチュイ マー
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット ベーンル
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー ジェイ.ヤン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ミューリー
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス ヘルト
(72)【発明者】
【氏名】アーシ バラスブラマンヤン
(72)【発明者】
【氏名】シー リョウ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン チュイ
【審査官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん患者の予後を同定する方法であって、次の工程:
(a)前記患者から得られた無細胞血液試料から核酸を単離すること;
(b)下記表1:
【表1】
に列挙され
ている全てのバイオマーカ
について、前記試料中でのそれぞれの少なくとも一部の配列を決定すること;及び
(c)前記患者における腫瘍バリアント(tumor variant)多様度指数を決定すること;
を含み、ここで
(ア)腫瘍バリアント多様度が、良好なアウトカムを得た関連集団における患者の前記腫瘍バリアント多様度と同分位数である場合、前記患者は予後が良好であると同定し、
(イ)腫瘍バリアント多様度が、不良なアウトカムを得た関連集団における患者の前記腫瘍バリアント多様度と同分位数である場合、前記患者は予後が不良であると同定し、
ここで、前記がんが、非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer:NSCLC)及び小細胞肺がん(small cell lung cancer:SCLC)から選択され;
前記腫瘍バリアント(tumor variant)多様度指数は、Shannon多様度指数、Simpson多様度指数、Simpson多様度の逆数、及びGini-Simpson多様度指数から選択され;
前記Shannon多様度指数は、式IIにより得られ、
前記Simpson多様度指数は、式IIIにより得られ、
Simpson多様度の逆数は、式IVにより得られ、そして
前記Gini-Simpson多様度指数は、式Vにより得られ、
ここで、前記式II~Vは下記のとおりであり;
式II: Shannon=-(VARDEPTH
i/SVD)ln-Σ
i(VARDEPTH
i/SVD)
式III: Simpson=Σ
ip
i
2
式IV: Simpson逆指数=1/Σ
ip
i
2
式V: Gini-Simpson=1-Σ
ip
i
2
上記式中、p
iは、
式I:p
i=VARDEPTH
i/SVD
(式中、VARDEPTHは、重複排除されたバリアント深度又は分子深度、すなわち、シーケンシングの実行中に検出されたバリアント(突然変異)を含む固有分子の数であり、
SVDは検出されたバリアント(突然変異)を有する全分子の合計に対するΣ
i VARDEPTH
i
である。)
により得られる、当該方法。
【請求項2】
前記関連集団が、同タイプのがんを有する患者の前記集団である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配列を決定することが、ターゲットエンリッチメントの工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記配列を決定することが、アダプタライゲーションの工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記配列を決定することが、分子バーコードを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記配列を決定することが、配列アラインメントの工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記配列を決定することが、エラー訂正の工程を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本発明は、がん患者の核酸に基づく検査の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのがん患者は、転移段階で診断されるか、又はより初期段階の疾患から転移へと進行する。その時点だと予後は不良であり、効果的な治療法の最適な選択が重要である。最新の診断アプローチは、腫瘍耐性及び再発を予測するために循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)に見出される突然変異に依存している(米国特許出願第14/774,518号、及び「Identification and Use of Circulating Tumor Markers」と題された国際出願第PCT/US2015/049838号を参照されたい)。例えば、耐性変異の変異アリル頻度(allele frequency:AF)の増加は、特定の標的治療法に対する耐性の発生を示す。しかしながら、適切な治療法を選択するためには、治療前から治療後までの腫瘍進化(tumor evolution)のより一般的な評価が必要となる。
【0003】
循環腫瘍DNAのプロファイリングからの突然変異データには、最先端技術のツールでは容易に解釈できない情報が含まれることがある。ある時点での各患者は、循環血液内にDNAを放出した原発性及び転移性腫瘍由来の循環腫瘍バリアントのコレクションを有する。特定の突然変異又は突然変異負荷(mutation burden)の存在又は不在は、最先端技術を用いて検出することができるが、患者ケアにおいて使用するために容易に解釈することはできない。この変異データを解釈し、臨床的に有用な情報に変換する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、本発明は、がん患者の予後を同定する方法であって、次の工程:患者から得られた無細胞血液試料から核酸を単離すること;表1に列挙されている全てのバイオマーカについて、前記試料中でのそれぞれの少なくとも一部の配列を決定すること;患者における腫瘍バリアント(tumor variant)多様度指数を決定すること;腫瘍バリアント多様度が、良好なアウトカムを得た関連集団における患者の該腫瘍バリアント多様度と同分位数である場合、該患者は予後が良好であると同定すること;又は、腫瘍バリアント多様度が、不良なアウトカムを得た該関連集団における患者の該腫瘍バリアント多様度と同分位数である場合、該患者は予後が不良であると同定すること;を含む、方法である。該腫瘍バリアント多様度は、Shannon多様度指数、Simpson多様度指数、Simpson多様度の逆数、及びGini-Simpson多様度指数から選択される。いくつかの実施形態では、該がんは、非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer:NSCLC)、小細胞肺がん(small cell lung cancer:SCLC)から選択される。予後は、全生存期間(overall survival:OS)であってもよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、該多様度指数は、式Iに従って決定された集団における種の比率を用いて決定される。Shannon多様度指数は、式IIに従って決定することができる。Simpson多様度指数は、式IIIに従って決定することができる。Simpson多様度の逆数は、式IVに従って決定することができる。Gini-Simpson多様度指数は、式Vに従って決定することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、該関連集団は、同タイプのがんを有する患者の該集団である。
【0007】
配列を決定する工程は、ターゲットエンリッチメント、アダプタライゲーション、分子バーコード、配列アラインメント、エラー訂正、及びDNA増幅のうちの1つ以上を含み得る。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、非小細胞肺がん(NSCLC)患者を治療する方法であって、次の工程:該患者から得られた無細胞血液試料から核酸を単離すること;表1に列挙された各バイオマーカの少なくとも一部の配列を該試料中で決定すること;該患者における腫瘍バリアント多様度指数を決定すること;腫瘍バリアント多様度が低い場合、該患者を化学療法レジメンに陽性反応を示す可能性が高いと同定し、該化学療法レジメンを与えること;又は、腫瘍バリアント多様度が高い場合、該患者を該化学療法レジメンに陽性反応を示す可能性が低いと同定し、該化学療法レジメンを与えないこと;を含む、方法である。いくつかの実施形態では、腫瘍バリアント多様度は、関連集団における腫瘍バリアント多様度指数の第1の三分位値未満まで低下する場合は低く、そして腫瘍バリアント多様度は、関連集団における腫瘍バリアント多様度指数の第1の三分位値以上に低下する場合は高い。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、小細胞肺がん(SCLC)患者を治療する方法であって、次の工程:該患者から得られた無細胞血液試料から核酸を単離すること;表1に列挙された各バイオマーカの少なくとも一部の配列を該試料中で決定すること;該患者における腫瘍バリアント多様度指数を決定すること;腫瘍バリアント多様度が低い場合、該患者を化学療法レジメンに陽性反応を示す可能性が高いと同定し、該化学療法レジメンを与えること;又は、腫瘍バリアント多様度が高い場合、該患者を該化学療法レジメンに陽性反応を示す可能性が低いと同定し、該化学療法レジメンを与えないこと;を含む、方法である。いくつかの実施形態では、腫瘍バリアント多様度は、関連集団における腫瘍バリアント多様度指数の第1の三分位値未満まで低下する場合は低く、そして腫瘍バリアント多様度は、関連集団における腫瘍バリアント多様度指数の第1の三分位値以上に低下する場合は高い。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、プロセッサと、該プロセッサに連結された非一時的コンピュータ可読媒体と、を含む、患者における腫瘍バリアント多様度を検出するように設計されたコンピュータシステムであって、該媒体は、表1からのバイオマーカに関するシーケンシングデータを分析し、配列比較及び突然変異検出を行い、エラー訂正を行い、式II、式III、式IV、及び式Vのうちの1つ以上に従って腫瘍バリアント多様度指数を決定し、並びに試料中の腫瘍バリアント多様度が所定の閾値を上回るか又は下回るかを判断する工程を含む方法を実施するための、該プロセッサによって実行可能なコードを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ステージIVの小細胞肺がん(SCLC)患者における、全生存期間(OS)とShannon多様度指数との関係を図示している。
【
図2】
図2は、ステージIVの小細胞肺がん(SCLC)患者における、全生存期間(OS)とGini-Simpson多様度指数との関係を図示している。
【
図3】
図3は、ステージIVの肺腺がん(非小細胞肺がん、NSCLC)患者における、全生存期間(OS)とGini-Simpson多様度指数との関係を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
以下の定義は、本開示を限定するものではなく、単に理解する助けとなるものである。
【0013】
用語「PFS」とは、本明細書では、患者の無増悪生存期間を記載するために使用される。
【0014】
用語「OS」とは、本明細書では、患者の全生存期間を記載するために使用される。
【0015】
用語「循環腫瘍DNA(ctDNA)」とは、本明細書では、腫瘍に由来するヒト血漿又は血清中に見出される無細胞DNA(cfDNA)の一部を記載するために使用される。循環腫瘍DNAは、腫瘍の突然変異特性によって非腫瘍DNAと区別される。
【0016】
用語「バイオマーカ」とは、本明細書では、生物学的又は臨床的現象に関連する情報を含むヌクレオチド配列を記載するために使用される。例えば、情報は、ヌクレオチド配列の突然変異状態であってもよい。バイオマーカは、遺伝子(コード配列、制御配列、イントロン、若しくはスプライス部位を含む)、又は遺伝子間領域であり得る。臨床現象は、悪性細胞、例えば、患者の試料中における腫瘍細胞の存在であり得る。
【0017】
用語「多様度指数」とは、本明細書では、データセット内にいくつの異なる種が存在するかを反映する定量的尺度を記述するために使用され、同時に、基本的実体がそれらの種の間でどの程度均等に分布しているかを考慮する。Magurran,A.E.、「Measuring Biological Diversity」(2003年)、Wiley-Blackwellを参照されたい。用語「腫瘍多様度指数」及び「腫瘍バリアント多様度指数」とは、互換的に使用され、腫瘍中に見出される突然変異配列バリアント(種)に適用される多様度指数を指す。
【0018】
本発明は、患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)の突然変異内容に基づいて、腫瘍患者の予後を評価する方法である。具体的には、突然変異内容を評価して、患者における腫瘍細胞の多様度を決定する。
【0019】
循環腫瘍DNAのプロファイリング結果には、最先端のツールで評価できる以上の情報が含まれている可能性がある。ある時点での各患者は、循環血液内にDNAを放出した原発性及び転移性腫瘍の両方を含有する循環腫瘍バリアントのコレクションを有する。腫瘍の異なるサブクローンが循環腫瘍DNAに寄与するので、循環腫瘍バリアントは、典型的な組織アッセイから生成できるものよりも多くを提供する可能性がある。更に、元の腫瘍細胞のサブクローンは時間とともに進化し、患者の血液中で検出可能な突然変異プロファイルを変化させる。本発明は、患者の医師に使える結果を提供するために、患者における腫瘍細胞の集団の豊富さ及び存在量を分析するための生態学的多様度指数を利用する新規な方法である。
【0020】
生態学的多様度指数は以前に腫瘍へ適用されている。Maleyら(「Genetic clonal diversity predicts progression to esophageal adenocarcinoma」、Nat.Genet.、第38巻、第468~473頁(2006年))は、複数の組織生検、細胞選別、並びにTP53及び染色体17のセントロメアへのFISHプローブを用いて、試料当たりの遺伝的に異なるクローンを測定するための、食道腺がんにおけるShannon多様度を適用実証した。Shannon多様度指数の上位四分位値の患者は、Barrett食道として知られる前がん性状態から食道腺がんを発症する確率が高いことがわかった。Almendro Vら(「Inference of tumor evolution during chemotherapy by computation modeling and in situ analysis of genetic and phenotypic cellular diversity」、Cell Reports.、第6巻、第514~527頁(2014年))は、乳がんにおける多様度を特徴づけるために同様のアプローチを用いたが、Merlo LMFら(「A comprehensive survey of clonal diversity measures in Barrett’s esophagus as biomarkers of progression to esophageal adenocarcinoma」Cancer Prevention Research、11月号、第3巻、第11号、第1388~97頁(2010年))は、Shannon及びSimpsonが食道腺がんにおいて類似していることを示した。
【0021】
本発明は、患者のctDNAにおいて検出された突然変異に生態学的多様度指数を適用する、包括的アプローチである。いくつかの実施形態では、指数は、Shannon指数、Simpson指数、又はそれらの組合せである。いくつかの実施形態では、突然変異は、患者のctDNAに適用される次世代シーケンシングデータによって評価される。生態学的多様度の評価により、患者の予後が予測され、治療法を提案される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、バイオマーカパネルを使用して、次世代シーケンシング(next-generation sequencing:NGS)によってがん関連遺伝子における体細胞突然変異及び突然変異負荷を同定する。いくつかの実施形態では、本発明は、患者由来の血液、又は血液由来試料を利用した。試料は、循環腫瘍DNA(cfDNA又はctDNA)を含む無細胞DNAを含有する、任意の血液画分、例えば、血清又は血漿を含んでもよい。いくつかの実施形態では、試料は、治療中の様々な時間、例えば、手術の前及び後、又は化学療法レジメンの前、後、及び最中に、連続して採取される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍試料などの腫瘍試料は、血液試料との比較のために使用される。固形組織又は血液試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fix paraffin-embedding:FFPE)、新鮮凍結組織、又は保存培地中で収集された血液組織を含む、中にDNAを保存する好適な手段によって収集することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明は、遺伝子パネル又は突然変異パネル又は体細胞バリアントパネルを含む、バイオマーカパネルを利用する。ゲノムの小部分(例えば、1メガベース、200キロベース、100キロベース以下)を含むパネルの使用は、全ゲノムシーケンシング(whole genome sequencing:WGS)及び全エクソームシーケンシング(whole exome sequencing:WES)のような既存の方法よりも効率が改善している。パネルで評価される突然変異には、それらが遺伝子のコード領域に生じる場合、ナンセンス・ミスセンス突然変異及びフレームシフト突然変異に対応する一塩基多様性(single-nucleotide variation:SNV)、欠失、及び挿入(インデル)が含まれ得る。他のタイプの突然変異には、遺伝子融合及び転位置が含まれる。このようなパネルの選択、サイズ、及び内容は、例えば、米国特許出願第14/774,518号、及び国際出願第PCT/US2015/049838号「Identification and Use of Circulating Tumor Markers」に記載されている。いくつかの実施形態では、本発明は、パネル中のバイオマーカ、例えば表1に列挙された遺伝子の配列を決定することを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子の全配列を決定する。他の実施形態では、遺伝子の全コード配列を決定する。他の実施形態では、がんにおいて変異誘発を受けることが知られている遺伝子の一部の配列のみが決定される。更に他の実施形態では、バイオマーカはコード配列と関連しないが、制御配列、又はヒト腫瘍において変異することが知られている未知の機能の配列と関連する。
【0024】
本発明の文脈において、バイオマーカの配列は、当該技術分野で公知である任意の好適な方法によって決定することができる。好適な方法は、低いエラー率でまれな配列を検出するのに充分な精度、例えば、感受性及び特異性を有する。いくつかの実施形態では、シーケンシング方法は、例えば、上記の特許出願「Identification and Use of Circulating Tumor Markers」に記載されているような、分子バーコード、エラーステレオタイピング(error stereotyping)、及びエラー抑制の他の化学的方法又は計算方法の使用といった、エラー訂正工程を含む。シーケンシング方法には、アレイに基づくシーケンシング(Illumina、カリフォルニア州サンディエゴ)、エマルジョンに基づくシーケンシング(ThermoFisher、マサチューセッツ州ウォルサム)、光学的測定に基づくシーケンシング(Pacific BioSciences、カリフォルニア州メンロ―パーク)、若しくはナノポアに基づくシーケンシング(Roche Sequencing Solutions、カリフォルニア州サンタクララ)若しくはOxford Nanopore(オックスフォード、英国)、又は利用可能な任意の他の単一分子に基づくシーケンシング方法を含む、超並列シーケンシング方法を挙げることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明は、試料中の腫瘍特異的突然変異を同定及び定量化するために、患者の組織及び血液を分析することができるAVENIO(登録商標)ctDNA Analysis Kit(Roche Sequencing Solutions,Inc.、カリフォルニア州プレザントン)などのバイオマーカパネルを利用する。バイオマーカパネルの構成は、表1に示すAVENIO(登録商標)ctDNA Analysis Kit監視パネルである。
【表1】
【0026】
いくつかの実施形態では、表1に列挙された197の遺伝子のパネルが使用される。いくつかの実施形態では、本発明は、臨床試料から得られた結果に基づいてバイオマーカパネルを改善する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、本発明は、統計的に有意な数の患者由来の無細胞DNAにおけるバイオマーカの存在と、治療法に応答したA)RFS、B)TTR(又はDFS)、C)OS、又は上記のいずれかとの間の相関を分析する工程を含む。予測相関を示す追加のバイオマーカは、パネルに含まれる。統計的に有意な予測相関を示さないバイオマーカは、パネルから除外される。
【0027】
いくつかの実施形態では、バイオマーカの配列を決定する工程は、ターゲットエンリッチメント工程を含む。エンリッチメントは、1つ以上の標的特異的プローブを介して標的配列を捕捉することによって行うことができる。試料中の核酸を変性させ、一本鎖標的特異的プローブと接触させてもよい。プローブは、ハイブリダイゼーション複合体が形成された後、親和性捕捉部分を提供することによってそれらが捕捉されるように、親和性捕捉部分に対するリガンドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、親和性捕捉部分はアビジン又はストレプトアビジンであり、リガンドはビオチンである。いくつかの実施形態では、該部分は、固体支持体に結合される。以下に更に詳細に説明するように、固体支持体は、DYNABEADS(商標)磁気ビーズ又は磁性ガラス粒子などの超常磁性球状ポリマー粒子を含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、バイオマーカの配列を決定する工程は、アダプタ分子が標的核酸に連結されるアダプタライゲーション工程を更に含む。ライゲーションは、平滑末端ライゲーション、又はより効率的な付着末端ライゲーションであり得る。標的核酸は、鎖充填を含む「最終修復(end repair)」、すなわち、DNAポリメラーゼによって3’末端を伸長して5’オーバーハングを除去することによって、平滑末端にすることができる。いくつかの実施形態では、平滑末端核酸は、例えばDNAポリメラーゼ又は末端トランスフェラーゼによって、アダプタの3’末端への単一ヌクレオチド及び標的核酸の3’末端への単一相補的ヌクレオチドを付加することで付着性にすることができる。更に他の実施形態では、アダプタ及び標的核酸は、制限エンドヌクレアーゼでの消化によって付着末端(オーバーハング)を獲得し得る。制限酵素認識部位は、固有のものであってもよく、又は配列に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、他の酵素工程が、ライゲーションを達成するために必要とされ得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドキナーゼは、標的核酸分子及びアダプタ分子に5’-リン酸を加えるために使用され得る。いくつかの実施形態では、アダプタ分子は、インビトロ合成人工配列である。他の実施形態では、アダプタ分子は、インビトロ合成天然配列である。更に他の実施形態では、アダプタ分子は、天然分子から単離される。
【0029】
いくつかの実施形態では、バイオマーカの配列を決定する工程は、標的核酸を増幅する工程を更に含む。増幅は、指数関数的ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)、一方の鎖のみの線形増幅、又はオリゴヌクレオチドプライマを利用する任意の他の方法によるものであってもよい。種々のPCR条件は、「PCR Strategies」(M.A.Innis、D.H.Gelfand、及びJ.J.Sninsky eds.(1995年)Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ)第14章;「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」(M.A.Innis、D.H.Gelfand、J.J.Sninsky、及びT.J.White eds.、Academic Press、ニューヨーク州(1990年))に記載されている。増幅工程は、アダプタライゲーションの前又は後に行うことができる。したがって、増幅は、例えばアダプタライゲーションによって標的配列に導入されたユニバーサルプライマ結合部位を利用する。他の実施形態では、遺伝子特異的(標的特異的)プライマ又はプライマ対はアダプタライゲーションの前に使用され、増幅された標的核酸は、本明細書に記載されるようにアダプタにライゲーションされる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明は、標的核酸へのバーコードの導入を含む。個々の分子のシーケンシングは、典型的には、例えば、米国特許第7,393,665号、同第8,168,385号、同第8,481,292号、同第8,685,678号、及び同第8,722,368号に記載されているような分子バーコードを必要とする。固有分子バーコードは、典型的にはインビトロ操作の最初の工程の間に患者の試料などの試料中の各分子に加えられる、短い人工配列である。バーコードは分子とその子孫を標識する。固有分子バーコード(unique molecular barcode:UID)には複数の用途がある。バーコードは、試料中の個々の核酸分子を追跡して、例えば、生検なしにがんを検出しモニタするために、患者の血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)分子の存在及び量を評価することを可能にする。米国特許出願第14/774,518号を参照されたい。固有分子バーコードはまた、シーケンシングのエラー訂正にも使用できる。単一の標的分子の子孫全体が同じバーコードで標識され、バーコード化されたファミリを形成する。バーコード化されたファミリの全メンバに共有されていない配列の変動は、人工物として廃棄され、これは真の突然変異ではない。バーコードはまた、ファミリ全体が元の試料中の単一分子を表しているため、位置的重複排除及び標的の定量化にも使用することができる。Idを参照のこと。
【0031】
いくつかの実施形態では、アダプタは、1つ以上のバーコードを含む。他の実施形態では、増幅プライマ(例えば、アダプタライゲーションの前に増幅で使用されるプライマ)は、プライマの5’部分にバーコードを含む。バーコードは、試料が混合(多重化)される試料の源を同定するために使用される多重試料ID(MID)であってもよい。バーコードはまた、各元の分子及びその子孫を同定するために使用される固有分子ID(UID)としても機能する。バーコードはまた、UIDとMIDとの組合せであってもよい。いくつかの実施形態では、単一のバーコードが、UID及びMIDの両方として使用される。いくつかの実施形態では、各バーコードは、所定の配列を含む。他の実施形態では、バーコードは、ランダム配列を含む。バーコードは1~20ヌクレオチド長であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、バイオマーカの配列を決定する工程は、配列分析の工程を更に含む。この工程は、配列アラインメント、エラー訂正、及び配列変動(突然変異)の決定を含む。いくつかの実施形態では、アラインメントを使用して、複数の配列、例えば同じバーコード(UID)を有する複数の配列からコンセンサス配列を決定する。いくつかの実施形態では、バーコード(UID)は、全てが同一のバーコード(UID)を有する複数の配列からコンセンサスを決定するために使用される。他の実施形態では、バーコード(UID)は、を使用して、人工物、すなわち、同一のバーコード(UID)を有する一部の配列に存在するが全ての配列には存在しない変動を除去するために使用される。PCRエラー又はシーケンシングエラーから生じるこのような人工物は、除去され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、試料中の各配列の数は、試料中の各バーコード(UID)を有する配列の相対数を定量化することによって定量化することができる。各UIDは、元の試料中の単一の分子を表し、各配列バリアントに関連する異なるUIDを計数することによって、元の試料中の各配列の画分を決定することができる。当業者は、コンセンサス配列を決定するために必要な配列読取りの数を決定することができる。いくつかの実施形態では、関連する数は、正確な定量的結果のために必要なUID(「配列深度(sequence depth)」)当たりの読取りである。いくつかの実施形態では、所望の深度はUID当たり5~50読取りである。
【0034】
本発明は、多様度指数を決定する工程、すなわちデータセット内にどれだけの異なる種が存在するかを反映する定量的尺度を決定することによって、患者の試料中の腫瘍バリアント多様度を決定する工程を含み、同時に、基本的実体(個々の突然変異配列など)がそれらの種の間でどれだけ均等に分布しているかを考慮する。Magurran,A.E.、「Measuring Biological Diversity」(2003年)、Wiley-Blackwellを参照されたい。
【0035】
いくつかの実施形態では、多様度指数は、((pi)中Σipi)として表されるShannon多様度指数であり、ここで、piは、集団における種iの比率である。種とは、患者の試料中に存在する配列のバリアントである。試料中の全ての種の比率を合計すると1(すなわち、Σipi=1)になるので、各piは、各試料の全てのpiの合計によって標準化される。種の数、すなわちバリアント(突然変異)配列を評価して、piを決定する。いくつかの実施形態では、種の数は、式Iに従ってVARDEPTHとして評価される。他の実施形態では、種の数は、二重鎖深度(すなわち、バリアントを有する測定した二重鎖分子)又はアリル頻度といった、別の定量的測定として評価される。
【0036】
いくつかの実施形態では、集団中の種iの比率であるpiは、式Iに従って計算される。
【0037】
式I
pi=VARDEPTHi/SVD
VARDEPTH=重複排除されたバリアント深度又は分子深度、すなわち、シーケンシングの実行中に検出されたバリアント(突然変異)を含む固有分子の数;
SVD=検出されたバリアント(突然変異)を有する全分子の合計に対するΣi VARDEPTHi
【0038】
したがって、Shannon多様度指数は式IIで表される。
【0039】
式II
Shannon=(VARDEPTHi/SVD)ln-Σi(VARDEPTHi/SVD)
【0040】
いくつかの実施形態では、多様度指数は、Σi pi
2(式III)で表される、Simpson多様度指数である。いくつかの実施形態では、多様度指数は、1/Σipi
2(式IV)で表される、Simpson逆指数である。いくつかの実施形態では、多様度指数は、1-Σipi
2(式V)で表される、Gini-Simpson指数である。全実施形態では、piは、上記のように(例えば、式Iに従って、又はVARDEPTHの代わりに式Iで利用されるVARDEPTHに代わる定量的測定を使用して)計算された集団における種iの比率である。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明に従って決定される腫瘍バリアント多様度は、高い又は低いと評価される。いくつかの実施形態では、腫瘍バリアント多様度は、関連集団が同じタイプのがんと診断されたがん患者からなる集団レベルで評価される。例えば、腫瘍バリアント多様度は、集団中の分位数を下回る場合は低いと定義され、腫瘍バリアント多様度は、集団中の同じ分位数以上である場合は高いと定義される。分位数は、四分位値、三分位値、又は中央値とであり得る。いくつかの実施形態では、分位数及び腫瘍バリアント多様度は、集団中の第1の三分位値を下回る場合は低いと定義され、腫瘍バリアント多様度は、集団中の第1の三分位値以上である場合は高いと定義される。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者のctDNAから得られた腫瘍バリアント多様度指数を用いて、患者におけるがんの状態を評価する工程を含む。いくつかの実施形態では、評価は、患者が抗がん治療法に応答する可能性があるか、又は応答しない可能性があるかを同定することを含む。他の実施形態では、評価は、予測された無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)として表される患者の予後を決定することを含む。いくつかの実施形態では、治療法に対する応答は、治療法完了後の予測された無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)として評価される。いくつかの実施形態では、治療法は、第一選択化学療法又は化学放射線療法である。評価は、本明細書に記載されるように決定される腫瘍バリアント多様度に基づく。いくつかの実施形態では、患者の予後を決定する工程を含む評価工程は、上記のような集団データを用いて行うことができる。一部の集団では、低腫瘍多様度指数は、予後不良及び治療法に対する応答不良を示す。このような集団では、四分位値、三分位値、又は中央値などの設定された分位数未満の腫瘍多様度指数を検出することは、予後不良及び治療法に対する応答不良の評価を示す。他の集団では、高腫瘍多様度指数は、良好な予後及び治療法に対する正の応答を示す。このような集団では、四分位値、三分位値、又は中央値などの設定された分位数以上の腫瘍多様度指数を検出することは、良好な予後及び治療法に対する正の応答の評価を示す。
【0043】
以下に示す実施例は、異なる集団、すなわち異なるタイプのがんと診断された患者における、腫瘍多様度指数の使用を例示する。第1の実施例では、
図1に示すように、より低いShannon多様度指数を示すステージIVの小細胞肺がん(SCLC)患者は、より高いShannon多様度指数を示す患者と比較して、予後が不良であった。指数はベースライン(化学療法の前)で評価した。最初の三分位値(1.17以下)にバリアント二重鎖深度を有する患者は、全生存期間がより短かった(ハザード比=1.8;95%信頼区間1~3.3;ログランクp=0.034;生存期間中央値の差=4.5ヶ月)。
【0044】
別の実施例では、
図2に示すように、より低いGini-Simpson多様度指数を示すステージIVの小細胞肺がん(SCLC)患者は、より高いGini-Simpson多様度指数を示す患者と比較して、予後が不良であった。指数はベースライン(化学療法の前)で評価した。最初の三分位値(0.64以下)でバリアント二重鎖深度を有する患者は、全生存期間がより短かった(ハザード比=1.8;95%信頼区間1~3.3;ログランクp=0.033;生存期間中央値の差=4.5ヶ月)。Gini-Simpson及び逆Simpson値は同じ生存分析結果を示した。
【0045】
異なる集団による一実施例では、より低いGini-Simpson多様度指数を示すステージIVの肺腺がん(非小細胞肺がん、NSCLC)患者は、より高いGini-Simpson多様度指数を示す患者と比較して、予後が良好であった(
図3)。指数はベースライン(化学療法の前)で評価した。第1の四分位値(0.65以下)でバリアント二重鎖深度を有する患者は、化学療法治療から6ヶ月もの長い無増悪生存期間を有した。Gini-Simpson及び逆Simpson値は同じ生存分析結果を示した。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明はまた、患者のctDNAから得られた腫瘍バリアント多様度指数によって導かれる評価に基づいて、患者におけるがんに治療法を推奨又は投与する工程も含む。いくつかの実施形態では、本発明は、治療法完了後の無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)を予測(本明細書に記載されるように決定される腫瘍バリアント多様度の使用)することによって患者が治療に応答する可能性があるかどうかを決定する工程と、患者が応答すると予測される場合、患者に治療法を推奨又は投与する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、治療法は、化学療法、化学放射線療法、又は免疫療法である。
【0047】
本発明の一態様は、患者における腫瘍バリアント多様度を検出するためのシステムを含む。該システムは、プロセッサと、該プロセッサに連結された非一時的コンピュータ可読媒体と、を含み、該媒体は、表1からのバイオマーカに関するシーケンシングデータを分析し、配列比較及び突然変異検出を行い、エラー訂正を行い、式II、式III、式IV、又は式Vに従って腫瘍バリアント多様度指数を決定し、並びに試料中の腫瘍バリアント多様度が所定の閾値、例えば集団に基づく閾値を上回るか又は下回るかを判断する工程を含む方法を実施するための、該プロセッサによって実行可能なコードを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍バリアント多様度が閾値以上である場合、システムは患者を高腫瘍腫瘍バリアント多様度を有するものとして分類し、任意に、高腫瘍バリアント多様度に対する予後又は治療法の推奨を出力する。同時に、腫瘍バリアント多様度が閾値を下回る場合、システムは患者を低腫瘍腫瘍バリアント多様度を有するものとして分類し、任意に、低腫瘍バリアント多様度に対する予後又は治療法の推奨を出力する。
【0048】
いくつかの実施形態では、1つ以上の記憶装置を備えることができるコンピュータ可読媒体は、患者における腫瘍バリアント多様度応じた利用可能な治療法のリストを含むデータベースを含む。コンピュータ可読媒体は、好適な治療を列挙するレポートを生成するための命令を有するプログラムコードを更に含む。
【0049】
システムは、デジタルデータを処理するためのプロセッサと、デジタルデータを格納するためのプロセッサに結合されたメモリと、デジタルデータを入力するためのプロセッサに結合された入力デジタイザと、メモリに格納されプロセッサによってアクセス可能なプログラムコードと、プロセッサに結合された表示装置と、デジタルデータから得られた情報を表示するためのメモリと、データネットワーキングと、1つ以上の情報データベースと、を含む、様々な機能的態様を備えることができる。データベースは、患者データ、患者試料データ、以前の治療データを含む臨床データ、治療及び治療薬のリスト、及び患者追跡データなどを含んでもよい。
【実施例】
【0050】
実施例1.小細胞肺がん(SCLC)患者における腫瘍バリアント多様度の評価
本実施例では、治療前血漿試料は、ステージIVの小細胞肺がん(SCLC)である対象56人から得られた。対象は以前に第一選択化学療法又は化学放射線療法で治療されたことがある。血漿試料は、AVENIO(登録商標)ctDNA Surveillance Kit(Roche Sequencing Solutions、カリフォルニア州プレザントン)、198キロベースの標的化次世代シーケンシングパネル(表1)を用いて分析した。試料は製造業者の推奨に従って処理した。シーケンシングデータを製造業者の推奨に従って分析し、配列読取りにおけるバリアントを決定した。
【0051】
Shannon多様度指数(式I)及びSimpson多様度指数(式II)を、種として各体細胞バリアントと、その種の存在量としてその変異を伴う検出された二重鎖分子の数とを考慮することにより、バリアントデータに適用した。試料の血漿バリアント多様度スコアがコホートの最初の三分位値を下回った場合、試料は低腫瘍不均一性であるとしてランク付けされた。
【0052】
結果は、Shannon多様度指数として評価した低い腫瘍バリアント多様度を有するステージIVのSCLC対象が、より短い全生存期間であったことを示す(ハザード比=1.8;95%信頼区間1~3.3;ログランクp=0.034;生存期間中央値の差=4.5ヶ月;
図1)。同様に、Gini-Simpson指数又はSimpson多様度の逆数として評価した低い腫瘍バリアント多様度を有する対象は、より短い全生存期間であった(ハザード比=1.8;95%信頼区間1~3.3;ログランクp=0.033;生存期間中央値の差=4.5ヶ月;
図2)。
【0053】
実施例2.非小細胞肺がん(NSCLC)患者における腫瘍バリアント多様度の評価
また、41のステージIV肺腺がん(非小細胞肺がん(NSCLC))の前向き観察研究から、治療前血漿試料に関するSimpson多様度指数も評価した。対象は以前に第一選択化学療法又は化学放射線療法で治療されたことがある。血漿試料は、AVENIO(登録商標)ctDNA Surveillance Kit(Roche Sequencing Solutions、カリフォルニア州プレザントン)、198キロベースの標的化次世代シーケンシングパネル(表1)を用いて分析した。試料は製造業者の推奨に従って処理した。シーケンシングデータを製造業者の推奨に従って分析し、配列読取りにおけるバリアントを決定した。
【0054】
Shannon多様度指数(式I)及びSimpson多様度指数(式II)をバリアントデータに適用した。試料の血漿バリアント多様度スコアがトレーニングコホートの最初の三分位値を下回った場合、試料は低腫瘍バリアント多様度であるとして分類された。Gini-Simpson指数又はSimpson多様度の逆数として評価した腫瘍バリアント多様度が低いステージIVの腺がん対象は、化学療法治療から6ヶ月もの長い無増悪生存期間を有した(
図3)。
【0055】
本発明を特定の実施例を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲内で種々の変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載される実施例によって限定されるべきではなく、以下に提示される特許請求の範囲によって限定されるべきである。