(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】エアゾール型染毛剤又は毛髪脱色剤の第2剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230509BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20230509BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230509BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230509BHJP
A61Q 5/08 20060101ALI20230509BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/22
A61K8/34
A61K8/31
A61Q5/08
A61Q5/10
(21)【出願番号】P 2021064416
(22)【出願日】2021-04-05
(62)【分割の表示】P 2016253417の分割
【原出願日】2016-12-27
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2015255729
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 宗男
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-074706(JP,A)
【文献】特開平09-157637(JP,A)
【文献】特開2007-217293(JP,A)
【文献】特開2009-155311(JP,A)
【文献】特開2014-237621(JP,A)
【文献】特開2010-280581(JP,A)
【文献】特開2003-073240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 ー 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤組成物と混合して使用するエアゾール型染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物であって、下記成分(A)~(D)を含有し、成分(B)に対する成分(C)及び(D)の合計の質量比[(C)+(D)]/(B)が1.0以上3.5以下であり、成分(C)に対する成分(D)の質量比(D)/(C)が1.3以上2.1以下であり、容器から吐出させた直後の粘度が10,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であり、エアゾール容器に充填する前の粘度(粘度1)に対する、容器から吐出させた直後の粘度(粘度2)の比(粘度2/粘度1)が0.80以上1.25以下である、エアゾール型染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物。
(A) 過酸化水素
(B)
下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルであって、成分(B-1)と成分(B-2)を、質量比〔(B-1):(B-2)〕が0.5:9.5~4:1となる範囲で組み合わせてなるもの
R
1
-O-(CH
2
CH
2
-O)
m
-H (1)
〔式中、R
1
は炭素数8以上22以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、mは平均値で1以上100以下の数を示す。〕
(B-1)一般式(1)中のmが1以上30未満であるポリオキシエチレンアルキルエーテル
(B-2)一般式(1)中のmが30以上100以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル
(C) 下記一般式(2)で表される高級アルコールであって、成分(C-1)及び成分(C-2)を、質量比〔(C-1):(C-2)〕が0.5:9.5~9.5:0.5となる範囲で組み合わせてなるもの
R
2-OH (2)
〔式中、R
2は炭素数12~24の直
鎖の炭化水素基を示す。〕
(C-1)一般式(2)中のR
2が炭素数12以上18以下の直鎖の炭化水素基である高級アルコール
(C-2)一般式(2)中のR
2が炭素数20以上24以下の直鎖の炭
化水素基である高級アルコール
(D) 炭化水素
【請求項2】
第2剤組成物中の成分(B)の含有量が0.5質量%以上15質量%以下である、請求項
1に記載の第2剤組成物。
【請求項3】
第2剤組成物中の成分(C)の含有量が0.5質量%以上30質量%以下である、請求項1
又は2に記載の第2剤組成物。
【請求項4】
成分(D)が、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン及びスクワランからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~
3のいずれかに記載の第2剤組成物。
【請求項5】
第2剤組成物中の成分(D)の含有量が3質量%以上30質量%以下である、請求項1~
4のいずれかに記載の第2剤組成物。
【請求項6】
第2剤組成物中
の成分(E)カチオン界面活性剤の含有量が0質量%以上0.001質量%以下である、請求項1~
5のいずれかに記載の第2剤組成物。
【請求項7】
更に、成分(F)としてヒドロキシエタンジホスホン酸を含有する、請求項1~
6のいずれかに記載の第2剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール型染毛剤又は毛髪脱色剤の第2剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とからなり、第1剤と第2剤とが互いに独立したエアゾール容器にそれぞれ収納され、使用時にはそれらを吐出・混合して用いる2剤型エアゾール形態の染毛剤又は毛髪脱色剤が知られている(特許文献1及び2)。
【0003】
このような2剤型エアゾール形態の製品において、当該製品を製造するにあたって、剤をエアゾール容器に充填する時や、剤をエアゾール容器から吐出する時に、剤に高いせん断力がかかることが一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-297018号公報
【文献】特開2004-091359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、充填時や吐出時に剤にかかるせん断力は非常に強いため、剤の乳化構造を変化させてしまい、使用するときには最初に設定した剤の粘度より低くなってしまうことがあった。このような剤の粘度低下は、エアゾール容器からの剤の吐出量の変化をもたらす原因となる。特に、2剤型エアゾール形態の染毛剤又は毛髪脱色剤において、上記の粘度変化が原因で、第1剤容器から吐出される第1剤の吐出量と、第2剤容器から吐出される第2剤の吐出量とが大幅に異なってしまい、安定した染毛/脱色効果が得られなくなる可能性がある。
【0006】
また、エアゾール形態の染毛剤/脱色剤では、第2剤に過酸化水素とカチオン界面活性剤(多くの場合対イオンは塩化物イオン)を用いると金属製容器が腐食する可能性があり、それを抑制するために金属容器の内袋や内面コートを選定する必要があり多大な労力がかかること、また、第2剤にアニオン界面活性剤を用いると髪の感触の悪化や、低pHでの分解の可能性があることから、イオン性界面活性剤を使用することが困難であるという問題もあった。
【0007】
そこで本発明は、イオン性界面活性剤をできるだけ用いることなく、エアゾール容器への剤の充填前からエアゾール容器から吐出された後までの粘度を一定に保つことで、エアゾール容器からの剤の安定な吐出を実現し、安定した染毛/脱色効果を得ることができる第2剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、エアゾール型染毛剤又は毛髪脱色剤の第2剤において、イオン性界面活性剤をできるだけ用いることなく剤の粘度を一定に保つには、乳化粒子径を小さくすればよいこと、更に、そのためには、特定比率で非イオン界面活性剤、高級アルコール及び炭化水素を配合することが有効であることを見出した。
【0009】
本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤組成物と混合して使用するエアゾール型染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物であって、下記成分(A)~(D)を含有し、成分(B)に対する成分(C)及び(D)の合計の質量比[(C)+(D)]/(B)が1.0以上3.5以下であり、成分(C)に対する成分(D)の質量比(D)/(C)が1.2以上2.2以下である、エアゾール型染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物を提供するものである。
(A) 過酸化水素
(B) 非イオン界面活性剤
(C) 高級アルコール
(D) 炭化水素
【発明の効果】
【0010】
本発明の第2剤組成物は、エアゾール容器への充填や吐出による減粘が抑制され粘度が一定に保たれるため、エアゾール容器から安定に吐出することができ、第1剤と共にエアゾール型染毛剤又は脱色剤として使用した際、安定した染毛/脱色効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第2剤組成物〕
本発明の第2剤組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤組成物と組み合わせ、エアゾール型染毛剤又は毛髪脱色剤として使用される。
【0012】
〔成分(A):過酸化水素〕
本発明の第2剤組成物は成分(A)として過酸化水素を含有する。第2剤組成物中における過酸化水素の含有量は、十分な脱色力を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、また、頭皮への刺激を抑制する観点から、好ましくは9質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
【0013】
〔成分(B):非イオン界面活性剤〕
本発明の第2剤組成物は成分(B)として非イオン界面活性剤を含有する。成分(B)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルポリグルコシド、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0014】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、次の一般式(1)で表されるものを用いることができる。
【0015】
R1-O-(CH2CH2-O)m-H (1)
〔式中、R1は炭素数8以上22以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、mは平均値で1以上100以下の数を示す。〕
【0016】
一般式(1)において、R1の炭素数は、染毛剤に含有される染料の溶解性の観点から、8以上であって、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、また、22以下であって、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。成分(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
成分(B)は、第2剤組成物の安定性の観点から、一般式(1)中のmが、(B-1)1以上30未満であるものと、(B-2)30以上100以下であるものとの組合せであることが好ましく、(B-1)1以上20以下であるものと、(B-2)35以上60以下であるものとの組合せであることがより好ましく、(B-1)1以上10以下であるものと、(B-2)35以上45以下であるものとの組合せであることが更に好ましい。成分(B-1)と成分(B-2)との質量比〔(B-1):(B-2)〕は、第2剤組成物の安定性の観点から、好ましくは0.5:9.5~4:1、より好ましくは1:9~3:2、更に好ましくは1.5:8.5~1:1、更に好ましくは1:4~2:3である。
【0018】
第2剤組成物中における成分(B)の含有量は、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。
【0019】
〔成分(C):高級アルコール〕
本発明の第2剤組成物は成分(C)として高級アルコールを含有する。成分(C)としては、下記一般式(2)で表されるものを用いることができる。
【0020】
R2-OH (2)
〔式中、R2は炭素数12以上24以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示す。〕
【0021】
成分(C)としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナービルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。成分(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
成分(C)は、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、一般式(2)中のR2が、(C-1)炭素数12以上18以下の直鎖アルキル基であるものと、(C-2)炭素数20以上24以下の直鎖アルキル基であるものとの組合せであることが好ましく、(C-1)炭素数14以上18以下の直鎖アルキル基であるものと、(C-2)炭素数20以上22以下の直鎖アルキル基であるものとの組合せであることがより好ましい。成分(C-1)と成分(C-2)との質量比〔(C-1):(C-2)〕は、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、好ましくは0.5:9.5~9.5:0.5、より好ましくは1:9~9:1、更に好ましくは1.5:8.5~8.5:1.5、更に好ましくは1:4~4:1、更に好ましくは1:3~3:1である。
【0023】
第2剤組成物中における成分(C)の含有量は、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
【0024】
〔成分(D):炭化水素〕
本発明の第2剤組成物は成分(D)として炭化水素を含有する。本発明において使用される成分(D)の炭化水素としては、25℃において液状であるものが好ましく、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワラン等が挙げられる。これらの中でも、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、流動パラフィンが好ましい。成分(D)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
第2剤組成物中における成分(D)の含有量は、染毛又は脱色後の明るさを向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
【0026】
また、第2剤組成物中における成分(B)に対する成分(C)及び(D)の合計の質量比[(C)+(D)]/(B)は、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、1.0以上であって、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上であり、また、3.5以下であって、好ましくは3.3以下、より好ましくは3.2以下である。
【0027】
更に、第2剤組成物中における成分(C)に対する成分(D)の質量比(D)/(C)は、第2剤組成物の粘度を一定に保つ観点から、1.2以上であって、好ましくは1.3以上であり、また、2.2以下であって、好ましくは2.1以下である。
【0028】
〔成分(E):カチオン界面活性剤〕
本発明の第2剤組成物は、成分(E)としてカチオン界面活性剤を含有し得る。成分(E)のカチオン界面活性剤としては、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、臭化モノアルキルトリメチルアンモニウムが好ましく、なかでも塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(ラウリルトリモニウムクロリド)を用いることができる。成分(E)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
第2剤組成物中における成分(E)の含有量は、金属容器の腐食を防止する観点から、好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下であり、更には成分(E)を含有しないことが好ましい。
【0030】
〔成分(F):ヒドロキシエタンジホスホン酸〕
本発明の第2剤は、成分(F)としてヒドロキシエタンジホスホン酸を含有し得る。第2剤組成物中における成分(F)の含有量は、過酸化水素の安定化の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0031】
〔pH〕
本発明の第2剤組成物のpH(25℃)は、過酸化水素の分解抑制の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。pH調整剤としては、塩酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸;リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。
【0032】
〔粘度〕
本発明の第2剤組成物をエアゾール容器に充填する前の粘度(以下「粘度1」と呼ぶ)は、処方の安定性の観点から、好ましくは5,000mPa・s以上、より好ましくは10,000mPa・s以上、更に好ましくは15,000mPa・s以上、更に好ましくは20,000mPa・s以上、更に好ましくは25,000mPa・s以上であり、また好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは90,000mPa・s以下、更に好ましくは80,000mPa・s以下、更に好ましくは70,000mPa・s以下、更に好ましくは50,000mPa・s以下である。
【0033】
本発明の第2剤組成物を内袋に充填して1箇月後、第2容器から第2剤組成物を吐出させた直後の粘度(以下「粘度2」と呼ぶ)は、処方の安定性の観点から、好ましくは5,000mPa・s以上、より好ましくは10,000mPa・s以上、更に好ましくは15,000mPa・s以上、更に好ましくは20,000mPa・s以上、更に好ましくは25,000mPa・s以上であり、また好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは90,000mPa・s以下、更に好ましくは80,000mPa・s以下、更に好ましくは70,000mPa・s以下、更に好ましくは50,000mPa・s以下である。
【0034】
粘度1に対する粘度2の比(粘度2/粘度1)は、処方の安定性の観点から、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上、更に好ましくは0.93以上であり、また、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.20以下、更に好ましくは1.15以下、更に好ましくは1.13以下である。
【0035】
なお、本発明の第2剤組成物の粘度(25℃)は、ヘリカルスタンド付きB形粘度計を用い、T-Cのローターを用いて10rpmで1分間回転させた後の値とする。
【0036】
〔第2剤組成物における乳化粒子の体積平均径〕
本発明の第2剤組成物を内袋に充填する前における乳化粒子の体積平均径は、粘度を一定に保つ観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、また好ましくは23μm以下、更に好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、更に好ましくは12μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
【0037】
上記範囲に設定することで、いずれの温度帯においても第2容器から吐出される第2剤組成物の粘度を一定に保持することができる。
【0038】
ここで、第2剤組成物における乳化粒子の体積平均径は、HORIBA製の動的光散乱式粒径分布測定装置を用い、試料の設定は「Organic sample」(屈折率:1.600-0.000i)、分散媒の設定は「Water」(屈折率:1.333)を選択して第2剤の平均径の体積分布測定することで得た値である。
【0039】
〔第1剤組成物〕
本発明の第2剤組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤組成物と組み合わせ、エアゾール型染毛剤又は毛髪脱色剤として使用される。
【0040】
〔アルカリ剤〕
第1剤組成物中にはアルカリ剤を含有する。アルカリ剤としては、アンモニア及びその塩(例えば炭酸水素アンモニウム);モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
第1剤組成物中におけるアルカリ剤の含有量は、十分な染毛効果の点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、また、毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
【0042】
〔染料〕
本発明の第2剤組成物が染毛剤用第2剤である場合、第1剤組成物中には酸化染料中間体又は直接染料を含有し得る。
【0043】
(酸化染料中間体)
酸化染料中間体としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカプラーを用いることができる。プレカーサーとしては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、オルトクロルパラフェニレンジアミン、N-フェニルパラフェニレンジアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、3-メチル-4-アミノフェノール、2-ヒドロキシエチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、4-アミノ-メタクレゾール、オルトアミノフェノール、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0044】
また、カプラーとしては、例えばレゾルシン、2-メチルレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、5-アミノオルトクレゾール、メタフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2,6-ジアミノピリジン、2-メチル-5-ヒドロキシエチルアミノフェノール、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0045】
プレカーサーとカプラーはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、第1剤組成物中におけるプレカーサーとカプラーそれぞれの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。
【0046】
(直接染料)
直接染料としては、酸性染料、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。より具体的には、酸性染料としては、青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、酸性橙3等が挙げられ、ニトロ染料としては、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC赤3、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン等が挙げられ、分散染料としては、分散紫1、分散青1、分散黒9等が挙げられ、塩基性染料としては、塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性黄76、塩基性橙31、塩基性赤51等が挙げられる。
【0047】
直接染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、酸化染料中間体と併用してもよい。第1剤中における直接染料の含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0048】
〔第1剤中のその他成分〕
第1剤中には、上記アルカリ剤、染料以外にも当該分野で通常使用し得る成分を含有し得る。
【0049】
〔エアゾール容器の形態〕
本発明に使用し得るエアゾール容器としては、(1)第1剤を含有する内袋と第2剤を含有する内袋とが互いに独立したエアゾール容器に収納される二連式エアゾール容器(例えば、特開2000-297018号公報に記載の容器)、(2)第1剤を含有する内袋と第2剤を含有する内袋のそれぞれが1つのエアゾール容器に収納される二重式エアゾール容器(例えば、特開2013-43659号公報に記載の容器)が挙げられる。
【0050】
内袋としては、弾性を有するものが好ましく、高密度又は低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合物ケン化物、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂製のもの、これらを積層したもの等が用いられ、噴射ガス透過性が低いものが好ましい。また、内袋の内面を耐薬品性の樹脂でコートして用いることもできる。
【0051】
本発明に用いられる噴射ガスとしては、ジメチルエーテル、液化石油ガス、窒素ガス、代替フロン等、一般にエアゾール製品に用いられるものであれば特に限定されずに使用することができる。中でも、変質防止の面から窒素ガスが好ましい。
【0052】
〔剤形〕
本発明の第2剤組成物をエアゾール容器から吐出させたときの剤形は、クリーム状、ゲル状、ペースト状、泡状などとすることができる。
【0053】
〔エアゾール型染毛剤又は毛髪脱色剤の製造方法〕
アルカリ剤を含有する第1剤組成物と本発明の第2剤組成物とをそれぞれエアゾール容器に充填することにより、エアゾール型染毛剤又は毛髪脱色剤を製造することができる。この際、本発明の第2剤組成物の粘度を、前述した粘度範囲、すなわち5,000mPa・s以上100,000mPa・s以下に調整した後、エアゾール容器に充填することが好ましい。
【0054】
〔染毛用具〕
本発明のエアゾール型染毛剤又は脱色剤は、染毛用具を用いて毛髪に塗布することができる。染毛用具としては、特開2006-326081号公報に記載されるような刷毛部及び櫛部を有する染毛用具を用いることができる。
【0055】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0056】
<1> アルカリ剤を含有する第1剤組成物と混合して使用するエアゾール型染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物であって、下記成分(A)~(D)を含有し、成分(B)に対する成分(C)及び(D)の合計の質量比[(C)+(D)]/(B)が1.0以上3.5以下であり、成分(C)に対する成分(D)の質量比(D)/(C)が1.2以上2.2以下である、エアゾール型染毛用又は毛髪脱色用第2剤組成物。
(A) 過酸化水素
(B) 非イオン界面活性剤
(C) 高級アルコール
(D) 炭化水素
【0057】
<2> 第2剤組成物中の成分(A)の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは9質量%以下、より好ましくは6質量%以下である<1>に記載の第2剤組成物。
【0058】
<3> 成分(B)が、好ましくは下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである、<1>又は<2>に記載の第2剤組成物。
R1-O-(CH2CH2-O)m-H (1)
〔式中、R1は炭素数8以上22以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、mは平均値で1以上100以下の数を示す。〕
【0059】
<4> 一般式(1)中のR1の炭素数が、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である、<3>に記載の第2剤組成物。
【0060】
<5> 成分(B)が、好ましくは(B-1)一般式(1)中のmが1以上30未満であるポリオキシエチレンアルキルエーテルと(B-2)一般式(1)中のmが30以上100以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとの組合せ、より好ましくは(B-1)一般式(1)中のmが1以上20以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルと(B-2)一般式(1)中のmが35以上60以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとの組合せ、更に好ましくは(B-1)一般式(1)中のmが1以上10以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルと(B-2)一般式(1)中のmが35以上45以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとの組合せである、<3>又は<4>に記載の第2剤組成物。
【0061】
<6> 成分(B-1)と成分(B-2)との質量比〔(B-1):(B-2)〕が、好ましくは0.5:9.5~4:1、より好ましくは1:9~3:2、更に好ましくは1.5:8.5~1:1、更に好ましくは1:4~2:3である、<5>に記載の第2剤組成物。
【0062】
<7> 第2剤組成物中の成分(B)の含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0063】
<8> 好ましくは、成分(C)が下記一般式(2)で表される高級アルコールである、<1>~<7>のいずれかに記載の第2剤組成物。
R2-OH (2)
〔式中、R2は炭素数12~24の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を示す。〕
【0064】
<9> 成分(C)が、好ましくは(C-1)一般式(2)中のR2が炭素数12以上18以下の直鎖の炭化水素基である高級アルコールと(C-2)一般式(2)中のR2が炭素数20以上24以下の直鎖の炭化素水素基である高級アルコールの組み合わせ、より好ましくは(C-1)一般式(2)中のR2が炭素数14以上18以下の直鎖の炭化水素基である高級アルコールと(C-2)一般式(2)中のR2が炭素数20以上22以下の直鎖の炭化素水素基である高級アルコールの組み合わせである、<8>に記載の第2剤組成物。
【0065】
<10> 成分(C-1)と成分(C-2)との質量比〔(C-1):(C-2)〕が、好ましくは0.5:9.5~9.5:0.5、より好ましくは1:9~9:1、更に好ましくは1.5:8.5~8.5:1.5、更に好ましくは1:4~4:1、更に好ましくは1:3~3:1である、<9>に記載の第2剤組成物。
【0066】
<11> 第2剤組成物中の成分(C)の含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である、<1>~<10>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0067】
<12> 成分(D)が、好ましくは25℃において液状の炭化水素である、<1>~<11>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0068】
<13> 成分(D)が、好ましくは流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン及びスクワランからなる群より選択される少なくとも1種である、<12>に記載の第2剤組成物。
【0069】
<14> 第2剤組成物中の成分(D)の含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である、<1>~<13>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0070】
<15> 第2剤組成物中における成分(B)に対する成分(C)及び(D)の合計の質量比[(C)+(D)]/(B)が、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上であり、また、好ましくは3.3以下、より好ましくは3.2以下である、<1>~<14>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0071】
<16> 第2剤組成物中における成分(C)に対する成分(D)の質量比(D)/(C)が、好ましくは1.3以上であり、また、好ましくは2.1以下である、<1>~<15>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0072】
<17> 更に、好ましくは第2剤組成物中の0.001質量%以下の範囲において、より好ましくは0.0005質量%以下の範囲において、成分(E)としてカチオン界面活性剤を含有することができ、更に好ましくは成分(E)を含有しない、<1>~<16>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0073】
<18> 好ましくは、更に、成分(F)としてヒドロキシエタンジホスホン酸を含有する、<1>~<17>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0074】
<19> 第2剤組成物中における成分(F)の含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である、<18>に記載の第2剤組成物。
【0075】
<20> 25℃におけるpHが、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である、<1>~<19>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0076】
<21> エアゾール容器に充填する前の粘度が、好ましくは5,000mPa・s以上、より好ましくは10,000mPa・s以上、更に好ましくは15,000mPa・s以上、更に好ましくは20,000mPa・s以上、更に好ましくは25,000mPa・s以上であり、また好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは90,000mPa・s以下、更に好ましくは80,000mPa・s以下、更に好ましくは70,000mPa・s以下、更に好ましくは50,000mPa・s以下である、<1>~<20>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0077】
<22> 内袋に充填して1箇月後に第2容器から吐出させた直後の粘度が、好ましくは5,000mPa・s以上、より好ましくは10,000mPa・s以上、更に好ましくは15,000mPa・s以上、更に好ましくは20,000mPa・s以上、更に好ましくは25,000mPa・s以上であり、また好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは90,000mPa・s以下、更に好ましくは80,000mPa・s以下、更に好ましくは70,000mPa・s以下、更に好ましくは50,000mPa・s以下である、<1>~<21>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0078】
<23> エアゾール容器に充填する前の粘度(粘度1)に対する内袋に充填して1箇月後に第2容器から吐出させた直後の粘度(粘度2)の比(粘度2/粘度1)が、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上、更に好ましくは0.93以上であり、また、好ましくは1.25以下、より好ましくは1.20以下、更に好ましくは1.15以下、更に好ましくは1.13以下である、<1>~<22>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【0079】
<24> 内袋に充填する前における第2剤組成物の乳化粒子の体積平均径が、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、また好ましくは23μm以下、更に好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、更に好ましくは12μm以下、更に好ましくは10μm以下である、<1>~<23>のいずれかに記載の第2剤組成物。
【実施例】
【0080】
実施例1、比較例1
表1に示す配合処方の第2剤組成物を調製した。次いで、二連式エアゾールの第2容器の内袋に第2剤組成物を充填し、内袋と第2剤容器との間に窒素ガスを充填した。以下に示す方法により、第2剤組成物の粘度及び体積平均径を測定した。
【0081】
(粘度測定法)
第2剤組成物の粘度は、容器への充填前と、容器に充填1箇月後に容器から吐出した直後の2時点において測定した。粘度(25℃)は、ヘリカルスタンド付きB形粘度計(東機産業株式会社製,モデルTVB-10R、T-BAR STAGE TS-10)を用い、T-Cのローターを用いて10rpmで1分間回転させた後の値である。
【0082】
(乳化粒子の体積平均径の測定法)
乳化粒子の体積平均径は、HORIBA製のDYNAMIC LIGHT SCATTERING PARTICLE SIZE ANALYZER LB-500を用い、試料の設定は「Organic sample」(屈折率:1.600-0.000i)、分散媒の設定は「Water」(屈折率:1.333)を選択し、乳化粒子の平均径の体積分布を測定することで得た値である。
【0083】
【0084】
実施例2~7、比較例2~5
表2及び表3に示す配合処方の第2剤組成物を調製した。前述の方法により、第2剤組成物の乳化粒子の体積平均径を測定した。
【0085】
【0086】