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特許7274520ヒドロクロロフルオロカーボンの脱ハロゲン化水素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ヒドロクロロフルオロカーボンの脱ハロゲン化水素
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20230509BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021067780
(22)【出願日】2021-04-13
(62)【分割の表示】P 2018511676の分割
【原出願日】2016-09-09
(65)【公開番号】P2021102657
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】62/217,291
(32)【優先日】2015-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュエフイ スン
(72)【発明者】
【氏名】カール クラウス
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513437(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050953(WO,A1)
【文献】特表2015-518898(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103449958(CN,A)
【文献】特表2007-509942(JP,A)
【文献】特表2013-528585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌しながら、触媒の非存在下、水性溶媒中で、苛性剤と、式RCXYCZQTを有するハロフルオロアルカンを接触させ、式RCX=CZQを有するフルオロオレフィンを含む生成物を製造する工程を含み、式中、Rは過フッ素化アルキル基であり、X、ZおよびQは独立してHまたはハロゲンであり、YおよびTの一方はHであり、他方はCl、BrまたはIである、脱ハロゲン化水素プロセスであって、
前記ハロフルオロアルカンがCF3CHClCH2Clであり、前記フルオロオレフィンがCF3CCl=CH2であるか、
前記ハロフルオロアルカンがCF3CCl2CH3であり、前記フルオロオレフィンがCF3CCl=CH2であり、
前記苛性剤が、NaOH、KOH、LiOH、CsOH、Zn(OH)2、Na2CO3、K2CO3、K3PO4、Na3PO4、KFまたはCsFであり、
30℃から90℃の範囲の温度で実施される、
脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項2】
前記ハロフルオロアルカンに対する前記苛性剤のモル比が0.01から5の範囲である、請求項1に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項3】
前記モル比が0.02から4である、請求項2に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項4】
前記モル比が0.04から2である、請求項2に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項5】
前記モル比が0.05から1.5である、請求項2に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項6】
前記水性溶媒が水である、請求項1に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項7】
アミンがさらに存在する、請求項1に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項8】
前記アミンは、式NR1R2R3(式中、R1、R2およびR3は、独立して水素、アルキル基、アリール、アリールアルキル基、ヘテロ環、ヘテロ環式アルキルである)または、式N(R4)(R5)N(R6)(R7)(式中、R4、R5、R6およびR7は、独立して水素、アルキル基、アリール、アリールアルキル基、ヘテロ環、またはヘテロ環式アルキルである)を有する、請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項9】
前記ハロフルオロアルカンに対する前記アミンのモル比が0.02から3の範囲である、請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項10】
前記苛性剤に対する前記アミンのモル比が0.02から3の範囲である、請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項11】
前記ハロフルオロアルカンに対する前記苛性剤のモル比が0.01から5の範囲である、請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項12】
前記ハロフルオロアルカンに対する前記アミンのモル比が0.02から3の範囲であり、前記苛性剤に対する前記アミンのモル比が0.02から3の範囲であり、および、前記ハロフルオロアルカンに対する前記苛性剤のモル比が0.01から5の範囲である、請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項13】
前記アミンがトリエチルアミンである、請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項14】
-10psigから150psigの圧力で実施される、請求項1または請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項15】
前記水性溶媒が水である、請求項7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項16】
0.1から50馬力/1000ガロン液体の範囲の混合力で攪拌が行われる、請求項1または7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項17】
0.5から40馬力/1000ガロン液体の範囲の混合力で攪拌が行われる、請求項16に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項18】
1から35馬力/1000ガロン液体の範囲の混合力で攪拌が行われる、請求項17に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項19】
0psigから100psigの範囲の圧力で実施される、請求項1または請求項7に記載の脱塩化水素プロセス。
【請求項20】
5psigから100psigの範囲の圧力で実施される、請求項1または請求項7に記載の脱塩化水素プロセス。
【請求項21】
前記脱ハロゲン化水素プロセスにより前記ハロフルオロアルカンの79.7%以上が前記フルオロオレフィンに変換される、請求項1または7に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【請求項22】
生成された前記フルオロオレフィンを2,3,3,3-テトラフルオロプロペンに変換する工程をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の脱ハロゲン化水素プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、脱ハロゲン化水素触媒(相間移動触媒を含む)の非存在下、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)を生成するための、液相中でのヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の脱ハロゲン化水素に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、低いオゾン破壊係数と低い地球温暖化係数とを有し、飽和CFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ヒドロクロロフルオロカーボン)の代替品の候補としてみなされている。HCFOは、冷媒、溶媒、発泡剤、洗浄剤、エアゾール噴射剤、誘電体、消化剤およびパワーサイクル作動液としてのそれらの使用を含む、広範囲の用途において採用され得る。例えば、HCFO-1233xf(CF3CCl=CH2)は、発泡剤、消化剤、冷媒等として使用することができる。HCFO-1233xfはまた、ゼロオゾン破壊係数および低い地球温暖化係数を有する冷媒である、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)の製造における中間体でもある。
【0003】
従来、HCFOの調製のために相間移動触媒が使用されてきた。それらは反応を加速するが、これらの使用済み触媒を廃棄する必要があるため、環境問題をも引き起こす。さらに、相間移動触媒の使用は、脱ハロゲン化水素反応のコストを増加させる。
【0004】
それらは高価であるため、相間移動触媒の使用の排除は、これらの脱ハロゲン化水素反応のコストを減少させる。さらに、これらの排除は、廃棄物処理をより簡単に、より安価にさせ得る。さらに、相間移動触媒の排除は、プロセスからそれらをリサイクルおよび回収する必要を減らすことにより、脱ハロゲン化水素反応を単純化させ得る。最後に、触媒は脱ハロゲン化水素の活性化エネルギーを低減させるため、脱ハロゲン化水素生成物を分解し、出発物質を浪費する傾向がより強い。脱ハロゲン化水素反応における相間移動触媒の排除は、このリスクを低減させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、相間移動触媒の存在なしに脱ハロゲン化水素反応を行うことに対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、相間移動触媒を含む脱ハロゲン化水素触媒の存在なしの、脱ハロゲン化水素プロセスを提供する。このプロセスは、約0.1から約50馬力毎1000ガロン(HP/1000gal)の範囲の力で混合しながら、約20℃から約100℃の温度範囲において、水溶液中で式RCXYCZQTを有するハロフルオロアルカンを苛性剤に接触させ、式RCX=CZQを有するフルオロオレフィンを含む生成物を製造する工程を含み、式中、Rは過フッ素化アルキル基であり、X、ZおよびQは独立してHまたはハロゲンであり、YおよびTのうちの一方はHであり、他方は塩素、臭素、またはヨウ素等のハロゲンである。別の実施形態において、アミンまたはアンモニアがさらに存在する。さらに別の実施形態では、本プロセスは、約0.1から約50馬力毎1000ガロン(HP/1000gal)の範囲の力で混合しながら、約0℃から約80℃の温度範囲において、水溶液中でハロフルオロアルカンRCXYCZQTを苛性剤および式NR1R2R3を有するアミンと接触させ、式RCX=CZQを有するフルオロオレフィンを含む生成物を製造する工程を含み、式中、Rは過フッ素化アルキル基であり、X、ZおよびQは独立してHまたはハロゲンであり、YおよびTの一方はHであり、他方はハロゲンであり、R1、R2およびR3は独立して水素、アルキル基、アリール、アリールアルキル基、ヘテロ環、ヘテロ環式アルキルまたはN(R4)(R5)N(R6)(R7)であり、式中、R4、R5、R6およびR7は独立して水素、アルキル基、アリール、アリールアルキル基、ヘテロ環またはヘテロ環式アルキルである。一実施形態において、RCXYCZQTに対するアミンのモル比は、約0.02から約3の範囲である。別の実施形態において、苛性剤に対するアミンのモル比は、約0.02から約3の範囲である。さらに別に実施形態において、ハロフルオロアルカンに対する苛性剤のモル比は、約0.01から約0.05の範囲であり;別の実施形態においては、約0.02から約4であり、別の実施形態においては約0.04から約2であり、また別の実施形態では、約0.05から約1.5である。さらに別の実施形態において、RCXYCZQTに対するアミンのモル比は、約0.02から約3の範囲であり、苛性剤に対するアミンのモル比は約0.02から約3の範囲であり、苛性剤に対するハロフルオロアルカンのモル比率は約0.01から約5の範囲である。
【0007】
本開示の特徴および利点は、以下の本発明の様々な態様の非限定的な例から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に記載するように、相間移動触媒の非存在下、200mlシェイカーチューブ反応器における、28℃での、12wt%NaOHを用いた2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパンの脱塩化水素に関して、時間に対する温度および圧力を示すグラフである。
図2】実施例2に記載するように、相間移動触媒の非存在下、200mlシェイカーチューブ反応器における、55℃での、12wt%NaOHを用いた2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパンの脱塩化水素に関して、時間に対する温度および圧力を示すグラフである。
図3】実施例3に記載するように、相間移動触媒の非存在下、200mlシェイカーチューブ反応器における、80℃での、12wt%NaOHを用いた2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパンの脱塩化水素に関して、時間に対する温度および圧力を示すグラフである。
図4】実施例5に記載するように、相間移動触媒の非存在下、オートクレーブにおける、55℃での、12wt%NaOHを用いた2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフロオロプロパンの脱塩化水素に関して、時間に対する温度および攪拌速度の変化を示すグラフである。
図5】実施例7に記載するように、相間移動触媒の非存在下、オートクレーブにおける、80℃での、12wt%NaOHを用いた2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパンの脱塩化水素に関して、様々な攪拌速度での時間に対する温度を示すグラフである。
図6】実施例10に記載するように、相間移動触媒の非存在下、オートクレーブにおける、60℃での、12wt%NaOHを用いた2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパンの脱塩化水素に関して、様々な攪拌速度での時間に対する温度を示すグラフである。
図7】実施例10に記載するように、相間移動触媒の非存在下、オートクレーブにおける、60℃での、12wt%NaOHを用いた2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパンの脱塩化水素に関して、様々な攪拌速度での時間に対する圧力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的であり、添付の特許請求の範囲にて定義される本発明を限定するものではない。実施形態の1つまたは複数の別の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0010】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはこれらの任意の他の変形は、非排他的な包括を包含することが意図される。例えば、一覧の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそうした要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない他の要素またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、明らかに逆の記載がない限り、「または」は、排他的論理和ではなく、包含的論理和を指す。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つにより満足される:Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、およびAとBの両方が真である(または存在する)。
【0011】
また、「a」または「an」の使用は、本明細書に記載の要素および成分を説明するのに採用される。これは、単に便宜のために、および、本発明の範囲の一般的な意味を与えるために、行われる。この記述は1つまたは少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、他を意味することが明白でない限り、単数形は複数形も含む。
【0012】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似のまたは同等の方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を下に記載する。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、特定の引用がされていない限り、その全体が参照により組み込まれる。矛盾が生じる場合には、定義を含め、本明細書が優先する。さらに、材料、方法、例は単に例示的であり、限定的であることを意図しない。
【0013】
量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および/または好ましい下限値のリストとして示されている場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関係なく、任意の範囲上限または好ましい値および任意の範囲下限または好ましい値の任意のペアから形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書において記載されている場合、別段の記述がない限り、範囲はその終点、および範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。
【0014】
本明細書で使用される場合、「脱ハロゲン化水素」という用語は、分子内の隣接する炭素上の水素およびハロゲン(例えばCl、BrまたはI)を除去して、対応するオレフィンを形成するプロセスを意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「脱塩化水素」という用語は、分子内の隣接する炭素上の水素および塩素を除去して、対応するオレフィンを形成するプロセスを意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「フルオロオレフィン」および「フルオロアルケン」という用語は、同義であり互換的に使用される。それらはそれぞれ、水素、炭素、フッ素および炭素-炭素二重結合を含み、任意選択的に塩素または他のハロゲン原子を含む分子として定義される。例は本明細書を通して説明される。1つの例はHCFO-1233xfである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ハロフルオロアルカン」という用語は、炭素、水素、フッ素およびI、BrまたはClなどのフッ素以外の少なくとも1つのハロゲンを含む飽和アルカンを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「クロロフルオロアルカン」という用語は、炭素、水素、フッ素および塩素、および任意選択的にその他のハロゲンを含む飽和アルカンを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、単独でまたは「過フッ素化アルキル基」などの複合語として、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、または他の異性体などの、環式または非環式および直鎖または分枝状アルキル基を含む。例えば、アルキル基は1-10個の炭素原子を含んでもよい。アルキル基は1から6個の炭素原子を含む低級アルキルであってもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「過フッ素化アルキル基」という用語は、炭素原子上の全ての水素がフッ素により置換されているアルキル基を意味する。過フッ素化アルキル基の例は、-CF3および-CF2CF3を含む。
【0021】
本明細書で定義される場合、「アリール」は、単独でまたは複合語として使用され、6、10、14または18個の環炭素原子を含む芳香族環を意味する。例えば、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル、アントラセニルなどを含む。
【0022】
本明細書で定義される場合、「アリールアルキル」という用語の使用は、アルキル基の一方の末端が主鎖に、もう一方の末端がアリール基に結合していることを意味する。例えば、ベンジル、フェネチル、フェンプロピル(phenpropyl)などを含む。
【0023】
「ヘテロ環」という用語は、単独でまたは複合語として使用される場合、3から14個の環原子を含む芳香族、部分芳香族、部分飽和または飽和の、単環式、二環式または三環式系を意味する。ここで、環原子の1つ、2つまたは3つは独立して、窒素、酸素および硫黄から選択され、その余の環原子は炭素原子である。ヘテロ環は2つまたは3つの縮合環を含む縮合環系でもよい;環の少なくとも1つは、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む。ヘテロ原子環の原子は、完全飽和、部分飽和または芳香族の環上に位置してもよい。ヘテロ環は、ヘテロ環と縮合した環の1つは芳香族であるか、ヘテロ原子が芳香族環の環原子上にある、完全なヘテロ芳香族または部分的なヘテロ芳香族であってもよい。本明細書で使用される場合、ヘテロ環式(heterocyclic)は、ヘテロ芳香族を含む。さらに、ヘテロ環式環は、2つの環炭素間、2つの環窒素原子間、または環窒素原子と環炭素原子の間のいずれかにおいて、1つまたは複数の二重結合を含んでもよい。ヘテロサイクリル(heterocyclyl)の接頭語としてのアザ、オキサまたはチオの表示は、それぞれ、少なくとも1つの環窒素、環酸素、または環硫黄原子が環原子として存在することを意味する。ヘテロ環式化合物の環窒素原子は塩基性の窒素原子でもよい。ヘテロ環式化合物の環窒素原子または環硫黄原子はまた、任意選択的に、対応するN-オキシド、S-オキシドまたはS,S-ジオキシドに酸化されていてもよい。ヘテロアリールがヒドロキシ基で置換されている場合、その対応する互変異性体もまた含まれる。典型的なヘテロ環には、ピペリジル、ピロリジル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフリル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3-ジオキソラニル、1,4-ジオキサニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、ピラジニル、チエニル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、フラニル、ピロリル、1,2,4-チアジアゾリル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、ベンゾフラニル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、チエノピリジル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、ベンゾアザインドリル、1,2,4-トリアジニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾリル、インドリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、1,3,4-チアジアゾリル、チアゾリル、チエニルおよびチアゾリルなどが含まれる。
【0024】
本明細書で定義される場合、「ヘテロ環式アルキル」という用語は、一方の末端がヘテロ環式環に結合し、もう一方の末端が主鎖に結合しているアルキル基を意味する。
【0025】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。
【0026】
「水性溶媒」という用語は、水または、1つまたは複数の溶媒を水と混合した混合物を含む溶媒を意味する。一実施形態において、水は単独溶媒である。しかし、水性溶媒はまた、水と混和性の他の溶媒、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、アセトニトリル、アセトアルデヒド、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、1,4-ジオキサンなどと混合した水も含んでもよい。
【0027】
本明細書に記載するように、一実施形態では、ハロフルオロアルカンは、約0.1から約150馬力毎1000ガロンの範囲内の混合力で、水性溶媒中で苛性剤と混合され、フルオロオレフィンを製造する。本明細書で定義される場合、「混合(mixing)」という用語は、水溶液1000ガロンあたり約0.1から約50馬力の特定の混合力で、反応物、ハロフルオロアルカンおよび苛性剤を攪拌するプロセスを意味する。攪拌(stirring)、すなわち混合(mixing)は、一実施形態では、ハロフルオロアルカンを脱ハロゲン化水素化してフルオロオレフィンを製造するために十分な条件下で、反応物がお互いに実質的に完全に混合できるように、機械的手段、例えば攪拌機またはシェイカーによって行うことができる。
【0028】
本明細書中で使用される「混合力(mixing power)」および「攪拌力(agitating power)」という用語または類似の用語は同義であり、互換的に使用される。
【0029】
本開示におけるいくつかのフルオロオレフィン、例えばCF3CH=CHCl(HCFO-1233zd)は、異なる配置異性体、または立体異性体として存在する。特定の異性体が指定されていない場合、本開示は1つの配置異性体、1つの立体異性体、またはそれらの任意の組み合わせの全てを意味する。例えば、HCFO-1233zdは、E異性体、Z異性体または任意の組み合わせ、または任意の比率の両異性体の混合物を表すことを意味する。
【0030】
実施形態における開示は、約0.1から約50HP/1000ガロンの範囲の動力入力で混合を提供しながら、約20℃から約100℃の温度範囲において、水性溶媒中で、式RCXYCZQTを有するハロフルオロアルカンを苛性剤と接触させて、式RCX=CZQを有するフルオロオレフィンを製造する工程を含む、液相における脱ハロゲン化水素プロセスであり、式中、Rは過フッ素化アルキル基であり、X,ZおよびQは独立してHまたはハロゲンであり、YおよびTの一方は水素であり、他方はハロゲン、例えば塩素、臭素またはヨウ素である。記載する条件は、脱ハロゲン化水素反応が生じるために効果的であり、ハロフルオロアルカンは苛性塩基によって脱ハロゲン化水素化され、対応するフルオロオレフィンを形成する。
【0031】
一実施形態では、YまたはTのいずれか(ただし両方ではない)は塩素である。この場合、本プロセスは脱塩化水素反応である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、Rは-CF3または-CF2CF3である。本発明のいくつかの実施形態において、RCXYCQZTはCF3CHClCH2Cl(HCFC-243db)であり、RCX=CQZはCF3CCl=CH2(HCFO-1233xf)である。他の例は、CF3CH2CHCl2、CF3CCl2CH3、CF3CHFCH2Cl、CF3CHClCH2F、CF2CH2CHClF、CF3CClFCH3としてRCXYCQZTを含み、それぞれの反応生成物はCF3CH=CHCl、CF3CCl=CH2、CF3CF=CH2、CF3CH=CHF、CF3CH=CHFおよびCF3CF=CH2である。
【0033】
本開示における脱ハロゲン化水素プロセスに用いられるクロロフルオロアルカン、すなわちRCXYCZQTは、当技術分野で公知の方法によって合成することができる。例えば、HCFC-243dbは、CF3CH=CH2を塩素化することにより、またはCFClH2とCF2=CHClの付加反応によって調製することができる。
【0034】
本反応のプロセスは、一実施形態において、水中に置かれた際に解離する塩基を含む、苛性剤の存在下で実施される。例は、アルカリ金属酸化物、水酸化物またはアミド、例えば、酸化ナトリウムまたは酸化カリウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、またはナトリウムアミドまたはカリウムアミド;またはアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物またはアミド、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属リン酸塩またはアルカリ金属カルボン酸塩、を含む。
【0035】
しかしながら、定義したように「苛性剤」という用語はアンモニアを含むアミンを除外する。特に反対の指示がない限り、「アミン」という用語はアンモニアを含む。
【0036】
他に明示されない限り、本明細書で使用される場合、「アルカリ金属水酸化物」という用語は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムから選択される化合物またはそれら化合物の混合物を意味する。
【0037】
同様に、「アルカリ金属アミド」という用語は、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドから選択される化合物、またはそれら化合物の混合物を意味する。
【0038】
他に明示されない限り、本明細書で使用される場合、「アルカリ土類金属水酸化物」という用語は、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムから選択される化合物、またそれら化合物の混合物を意味する。
【0039】
同様に、「アルカリ土類金属アミド」という用語は、ベリリウムアミド、マグネシウムアミド、カルシウムアミド、ストロンチウムアミドおよびバリウムアミドから選択される化合物、またはそれら化合物の混合物を意味する。
【0040】
苛性剤は、NaOH、KOH、LiOH、CsOH、Ca(OH)2、Zn(OH)2、Na2CO3、K2CO3、K3PO4、Na3PO4、KFまたはCsFなどを含み、水溶液中で溶解するか、水性懸濁液中に存在する。水相中の苛性剤は、脱ハロゲン化水素に有効な量で存在する。
【0041】
一実施形態において、式RCXYCZQTを有するハロフルオロアルカンに対する苛性剤のモル比は、約0.01から約5の範囲である。一実施形態において、モル比は約0.02から約4の範囲であり、別の実施形態においては約0.04から約2であり、さらに別の実施形態では約0.05から約1.5である。したがって、例えば、モル比は0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.90、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.00、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.30、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.40、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.80、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.90、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2.00、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.10、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.20、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.30、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、2.40、2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、2.50、2.51、2.52、2.53、2.54、2.55、2.56、2.57、2.58、2.59、2.60、2.61、2.62、2.63、2.64、2.65、2.66、2.67、2.68、2.69、2.70、2.71、2.72、2.73、2.74、2.75、2.76、2.77、2.78、2.79、2.80、2.81、2.82、2.83、2.84、2.85、2.86、2.87、2.88、2.89、2.90、2.91、2.92、2.93、2.94、2.95、2.96、2.97、2.98、2.99、3.00、3.01、3.02、3.03、3.04、3.05、3.06、3.07、3.08、3.09、3.10、3.11、3.12、3.13、3.14、3.15、3.16、3.17、3.18、3.19、3.20、3.21、3.22、3.23、3.24、3.25、3.26、3.27、3.28、3.29、3.30、3.31、3.32、3.33、3.34、3.35、3.36、3.37、3.38、3.39、3.40、3.41、3.42、3.43、3.44、3.45、3.46、3.47、3.48、3.49、3.50、3.51、3.52、3.53、3.54、3.55、3.56、3.57、3.58、3.59、3.60、3.61、3.62、3.63、3.64、3.65、3.66、3.67、3.68、3.69、3.70、3.71、3.72、3.73、3.74、3.75、3.76、3.77、3.78、3.79、3.80、3.81、3.82、3.83、3.84、3.85、3.86、3.87、3.88、3.89、3.90、3.91、3.92、3.93、3.94、3.95、3.96、3.97、3.98、3.99、4.00、4.01、4.02、4.03、4.04、4.05、4.06、4.07、4.08、4.09、4.10、4.11、4.12、4.13、4.14、4.15、4.16、4.17、4.18、4.19、4.20、4.21、4.22、4.23、4.24、4.25、4.26、4.27、4.28、4.29、4.30、4.31、4.32、4.33、4.34、4.35、4.36、4.37、4.38、4.39、4.40、4.41、4.42、4.43、4.44、4.45、4.46、4.47、4.48、4.49、4.50、4.51、4.52、4.53、4.54、4.55、4.56、4.57、4.58、4.59、4.60、4.61、4.62、4.63、4.64、4.65、4.66、4.67、4.68、4.69、4.70、4.71、4.72、4.73、4.74、4.75、4.76、4.77、4.78、4.79、4.80、4.81、4.82、4.83、4.84、4.85、4.86、4.87、4.88、4.89、4.90、4.91、4.92、4.93、4.94、4.95、4.96、4.97、4.98、4.99、5.00であってもよい。
【0042】
一実施形態において、アミンまたはアンモニアがさらに存在する。脱ハロゲン化水素反応は、一実施形態において、上記の苛性剤および式R1R2R3Nを有するアミンの存在下で行われ、式中、R1、R2およびR3は上で定義したとおりである。R1、R2およびR3のアルキル基、ヘテロ環式基、アリール基、アラルキル基、およびヘテロ環式アルキル基は、置換または無置換であることができる。本明細書の置換アルキル基、置換ヘテロ環式基、置換アリール基、置換アラルキル基または置換ヘテロ環式アルキルは、炭素原子上の1つまたは複数の水素が、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、アミノ基などの官能基に置換されていることを意味する。本明細書で定義される場合、アミンは、脂肪族アミン、芳香族アミン、ヘテロ環式アミンまたはそれらの混合物であることができる。本発明のいくつかの実施形態において、アミンは脂肪族アミンである。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、存在する場合、アミンは第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、またはそれらの混合物であることができる。本発明のいくつかの実施形態において、アミンは式RNH2を有する第1級無置換アルキルアミンであり、式中、RはC1-C16の無置換アルキル基である。本発明のいくつかの実施形態において、アミンは式R1NH2を有する第1級無置換アルキルアミンであり、式中、R1はC1-C3の無置換アルキル基である。第1級無置換アルキルアミンの例は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、tert-アミルアミン、ヘキシルアミン、およびそれらの混合物を含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、存在する場合、アミンは式R1R2NHを有する第2級無置換アルキルアミンであり、式中、R1およびR2のそれぞれは独立してC1-C6無置換アルキル基である。本発明のいくつかの実施形態において、アミンは式R1R2NHを有する第2級無置換アルキルアミンであり、式中、Rのそれぞれは独立してC1-C3無置換アルキル基である。第2級無置換アルキルアミンの例は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、およびそれらの混合物を含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、アミンは式R1R2R3Nを有する第3級無置換アルキルアミンであり、式中、R1、R2およびR3のそれぞれは独立してC1-C6無置換アルキル基である。本発明のいくつかの実施形態において、存在する場合、アミンは式R1R2R3Nを有する第3級無置換アルキルアミンであり、式中、R1、R2およびR3のそれぞれは独立してC1-C3無置換アルキル基である。第3級無置換アルキルアミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、およびそれらの混合物を含む。
【0046】
本発明の他の実施形態において、存在する場合、アミンはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、tert-アミルアミン、ジアミルアミン、トリアミルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、1,1,3,3-テトラメチルブチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N、N-ジメチルブチルアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
本発明の他の実施形態において、アミンは、炭素原子上の1つまたは複数の水素がヒドロキシル基で置換されている、1つ、2つまたは3つの置換アルキル基を有し、それは同じでも異なっていてもよい。そのようなアミンの例は、エタノールアミン(H2NCH2CH2OH)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン((HOCH23CNH2)、2-(メチルアミノ)エタノール(CH3NHCH2CH2OH)、2-(エチルアミノ)エタノール(CH3CH2NHCH2CH2OH)、2-(プロピルアミノ)エタノール(CH3CH2CH2NHCH2CH2OH)、2-(イソプロピルアミノ)エタノール((CH32CHNHCH2CH2OH)、2-(ブチルアミノ)エタノール(CH3(CH23NHCH2CH2OH)、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール((CH33CNHCH2CH2OH)、トリイソプロパノールアミン([CH3CH(OH)CH23N)、N,N-ジメチルエタノールアミン(HOCH2CH2N(CH32)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール((CH32NCH2CH(OH)CH3)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール((CH32N(CH23OH)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール((CH32C(NH2)CH2OH)、およびそれらの混合物を含む。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態において、アミンのR1、R2およびR3の1つは、炭素原子上の1つまたは複数の水素がヒドロキシ基に置換されているC1-C6の置換アルキル基を有し、その余の基は独立して、水素およびC1-C16無置換アルキル基からなる群から選択される。そのようなアミンの例は、エタノールアミン(H2NCH2CH2OH)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン((HOCH23CNH2)、2-(メチルアミノ)エタノール(CH3NHCH2CH2OH)、2-(エチルアミノ)エタノール(CH3CH2NHCH2CH2OH)、2-(プロピルアミノ)エタノール(CH3CH2CH2NHCH2CH2OH)、2-(イソプロピルアミノ)エタノール((CH32CHNHCH2CH2OH)、2-(ブチルアミノ)エタノール(CH3(CH23NHCH2CH2OH)、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール((CH33CNHCH2CH2OH)、N,N-ジメチルエタノールアミン(HOCH2CH2N(CH32)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール((CH32NCH2CH(OH)CH3)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール((CH32N(CH23OH)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール((CH32C(NH2)CH2OH)、およびそれらの混合物を含む。本発明のいくつかの実施形態において、アミンのR1、R2およびR3の少なくとも1つは、炭素原子上の1つまたは複数の水素がアミノ基で置換されている、C1-C6置換アルキル基であり、その余の基は、独立して、水素およびC1-C16無置換アルキル基からなる群から選択される。そのようなアミンの例は、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン((CH32N(CH23NH2)、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン((C252N(CH23NH2)、およびそれらの混合物を含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、存在する場合、アミンはポリアミンである。ポリアミンの例は、エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、スペルミジン(N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン)、スペルミン(N,N’-ビス(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、およびそれらの混合物を含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、アミンは、存在する場合、ヘテロ環式アミンである。ヘテロ環式アミンの例は、ピロリジン、ピロリン(1-ピロリン、2-ピロリンおよび3-ピロリンを含む)、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、ビピリジン(2,2’-ビピリジン、4,4’-ビピリジン、2,3’-ビピリジンおよび3,4’-ビピリジンなどを含む)、およびそれらの混合物を含む。
【0051】
本発明の他の実施形態において、アミンは、存在する場合、ヒドラジン(NH2NH2)、アルキルヒドラジン、アリールヒドラジンまたはアラルキルヒドラジンなどのヒドラジン誘導体およびそれらの混合物である。ヒドラジン誘導体の例は、メチルヒドラジン(CH3NHNH2)、1,1-ジメチルヒドラジン((CH32NNH2)、1,2-ジメチルヒドラジン(CH3NHNHCH3)、フェニルヒドラジン、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン、およびそれらの混合物を含む。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、アミンは、存在する場合、芳香族アミンである。芳香族アミンの例は、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、キシリジン、2,4,6-トリメチルアニリン、o-アニシジン、m-アニシジン、p-アニシジン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、およびそれらの混合物を含む。
【0053】
一実施形態において、上述のアミンの任意の混合物もまた、本開示において使用してもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態において、アミンは、存在する場合、ヘテロ環式アミン、ヒドラジン、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のいくつかの実施形態では、アミンはヘテロ環式アミンおよびそれらの混合物である。
【0055】
一実施形態において、R1、R2およびR3のうちの1つは水素であり、R1、R2およびR3のその他は独立して低級アルキルである。一実施形態において、R2およびR3は同じでも異なっていてもよい。また別の実施形態では、R1,R2およびR3は同じか、異なっており、水素以外である。例えば、R1、R2およびR3は独立して低級アルキルである。さらに別の実施形態では、R1はフェニル、アルキル、ピリジン、アルキル置換ピリジンであり、R2およびR3は前記定義の通りである。別の実施形態では、アミンはヒドラジンである。
【0056】
一実施形態において、アミンは、存在する場合、トリアルキルまたはジアルキルアミンであり、好ましいアミンはトリアルキルアミンである。
【0057】
R1、R2およびR3の全ての組み合わせおよび置換が考えられることに留意すべきである。
【0058】
一実施形態において、存在する場合、ハロフルオロアルカンに対するアミンのモル比は、約0.02から約3の範囲である。一実施形態において、モル比は約0.05から約0.5の範囲であり、別の実施形態において、モル比は約0.05から約0.25の範囲である。
【0059】
加えて、一実施形態において、存在する場合、苛性剤に対するアミンのモル比は、約0.05から約3の範囲であり、別の実施形態において、約0.05から約1であり、さらに別の実施形態において、約0.05から約0.5である。
【0060】
アミンの存在下または非存在下において、反応は触媒の非存在下で行われる。「触媒」とは、化学反応をスピードアップするが、反応によって消費されない物質を意味する;したがって、反応の終わりには、化学的変化なく回収することができる。相間移動触媒は、一方の相から反応が起きる他方の相への反応物の移動を促進する、不均一触媒である。例えば、相間移動触媒は、イオン化合物の、例えば水相から有機相への移動を促進する触媒である。水が溶媒として使用された場合、アルカリ金属水酸化物の結果として水相すなわち無機相が存在し、フルオロカーボンの結果として有機相が存在する。相間移動触媒は、これらの異なる成分の反応を促進する。様々な相間移動触媒が異なる方法で機能し得るが、それらの作用機序は、脱ハロゲン化水素反応を促進するという条件であれば、本発明におけるそれらの有用性を定義するものではない。相間移動触媒はイオン性または中性であってよく、典型的には、クラウンエーテル、オニウム塩、クリプタンド、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体(例えば、それらのフッ素化誘導体)からなる群から選択される。
【0061】
クラウンエーテルは、エーテル基がジメチレン結合によって連結した環状分子である。クラウンエーテルは、水酸化物のアルカリ金属イオンを受容または保持できると考えられる分子構造を形成する。例えば、18-クラウン-6(特に水酸化カリウムとの組み合わせ)、15-クラウン-5(特に水酸化ナトリウムとの組み合わせ)および12-クラウン-4(特に水酸化リチウムとの組み合わせ)を含む。
【0062】
ジベンジル-18-クラウン-6、ジシクロヘキサニル-18-クラウン-6、ジベンジル-24-クラウン-8およびジベンジル-12-クラウン-4などの上記クラウンエーテルの誘導体は、相間移動触媒と考えられ、排除される。他の種類のドナー原子、特にNまたはSによる、1つまたは複数の酸素原子の置換によって異なるクラウンエーテルに類似する、他の化合物も除外される。さらに、フッ素化誘導体、例えば1つまたは複数の水素原子がフッ素に置換された化合物なども同様に排除される。
【0063】
クリプタンドは、除外される別のクラスの化合物である。これらは、適切に間隔を空けたドナー原子を含む鎖でブリッジヘッド構造を結合させることによって形成された、三次元のポリマクロサイクリックキレート剤である。ブリッジのドナー原子は全てO、NまたはSでもよく、または化合物は、ブリッジ鎖がこのようなドナー原子の組み合わせを含む、混合ドナーマクロサイクルでもよい。例えば、[2.2.2]クリプタンド(4,7,13,16,21,24-ヘキサオキサ-1,10-ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、ブランド名Kryptand 222およびKryptofix 222で入手可能)におけるように、窒素のブリッジヘッドと(――OCH2CH2――)基の鎖の結合の結果である二環式分子を含むクリプタンドは、排除される。
【0064】
第4級ホスホニウム塩および第4級アンモニウム塩を含む、触媒として有用である任意の種類のオニウム塩は、排除される。排除されるそのようなホスホニウム塩および第4級アンモニウム塩の具体例は、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム(Aliquat(商標) 336およびAdogen(商標) 464の商品名で商業的に入手可能)、塩化テトラ-n-ブチルアンモニウム、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、硫酸水素テトラ-n-ブチルアンモニウム、塩化テトラ-n-ブチルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化トリフェニルメチルホスホニウム、塩化トリフェニルメチルホスホニウムおよび塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを含み、排除される。
【0065】
高温安定性(例えば、最大約200℃)を示す他のオニウム塩、例えば4-ジアルキルアミノピリジニウム塩、塩化テトラフェニルアルソニウム、塩化ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン]イミニウムおよび塩化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンイミノ]ホスホニウムもまた排除される。
【0066】
相間移動触媒として有用なポリアルキレングリコール化合物もまた排除される。例えば、式R6O(R5O)m7で表されるポリアルキレングリコール化合物もまた排除され、式中、R5はC1-10のアルキレン基であり、R6およびR7のそれぞれは独立してH、C1-10アルキル基、アリール基(すなわち、6、10、14個の環炭素原子を含む芳香族基、または5から14個の環原子を含み、N、OおよびSから選択される1から3のヘテロ原子およびその余の環原子は炭素原子であるヘテロアリール基、例えばフェニル、ナフチルまたはピリジニル)またはアリールアルキル基(例えばベンジルまたはC1-10アルキル置換フェニル)であり、mは少なくとも2の整数である。ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ジイソプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびテトラメチレングリコールなどの前述のポリアルキレングリコール、前述のグリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピルおよびモノブチルエーテルなどのモノアルキルグリコールエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよびペンタエチレングリコールジメチルエーテルなどのジアルキルエーテル、前述のグリコールのフェニルエーテル、ベンジルエーテル、および、ポリエチレングリコール(平均分子量約300)およびポリエチレングリコール(平均分子量約400)などのポリアルキレングリコール、および、前述のポリアルキレングリコールのジアルキル(例えばジメチル、ジプロピル、ジブチル)エーテルもまた排除される。
【0067】
本明細書に記載する脱ハロゲン化水素反応は液相で実施されるため、気相における脱ハロゲン化水素反応を触媒する、気相触媒もまた排除される。
【0068】
脱塩化水素触媒のような脱ハロゲン化水素触媒は、本明細書に記載する反応には使用しないため、反応のコストは最小化される。なぜなら、これらの触媒は高価であるためである。しかし、より重要なことに、環境問題のためにこれらの触媒は廃棄が難しく、触媒系に追加の費用を加える。本プロセスは、触媒の非存在下で行われ、この追加の費用を含まない。さらに、相間移動触媒の排除は、プロセスからのこれらの触媒のリサイクルおよび回収の必要を減少させることにより、脱ハロゲン化水素反応を単純化する。最後に、これらの触媒は脱ハロゲン化水素反応の活性化エネルギーを低くし、脱ハロゲン化水素生成物を分解して出発物質を形成する傾向がより強いため、脱ハロゲン化水素反応における相間移動触媒の排除はこのリスクを低減する。
【0069】
脱ハロゲン化水素反応は、アミンが存在してもしなくても、水性溶媒中で行われる。例えば、一実施形態において、脱ハロゲン化水素反応は水中で行われる。しかし、系の粘度を変えるため、生成物による反応により好ましい相として作用させるため、または熱質量を増加させるために、共溶媒または希釈剤が存在してもよい。有用な共溶媒または希釈剤は、プロセスと反応しないか、プロセスの平衡や反応速度論に負の影響を与えるものが含まれ、例えばメタノールやエタノールなどのアルコール;エチレングリコールなどのジオール;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、THF、ジオキサンなどのエーテル;メチルアセテート、エチルアセテートなどのエステル;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの直鎖、分枝状および環状アルカン;ヘキサフルオロイソプロパノール、ペルフルオロテトラヒドロフランなどのフッ素化希釈剤;ヘキサフルオロイソプロパノール、ペルフルオロテトラヒドロフランおよびペルフルオロデカリンなどのフッ素化希釈剤を含む。
【0070】
本明細書に記載する脱ハロゲン化水素反応は、アミンの存在下または非存在下において、約20℃から100℃の温度範囲で実施され、別の実施形態においては、約30℃から約90℃である。したがって、本プロセスの脱ハロゲン化水素反応は、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃で実施されてもよい。
【0071】
しかし、アミンが存在する場合、反応はより低温で実施されてもよい。すなわち、脱ハロゲン化水素反応は、アミンの存在下では、約0℃から約100℃の温度範囲で実施され、別の実施形態においては、約15℃から約90℃である。したがって、本プロセスの脱ハロゲン化水素反応は、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、または100℃で実施されてもよい。
【0072】
脱ハロゲン化水素プロセスは、アミンの存在下または非存在下において、大気圧より高い圧力、大気圧、または大気圧より低い圧力で行うことができる。一実施形態において、脱ハロゲン化水素反応の圧力は約-10psigから約150psigの圧力範囲で実施され、別の実施形態においては、約0psig、から約100psigであり、さらに別の実施形態においては、約5psigから約100psigである。したがって、例えば、圧力は-10psig、-9psig、-8psig、-7psig、-6psig、-5psig、-4psig、-3psig、-2psig、-1psig、0psig、1psig、2psig、3psig、4psig、5psig、6psig、7psig、8psig、9psig、10psig、11psig、12psig、13psig、14psig、15psig、16psig、17psig、18psig、19psig、20psig、21psig、22psig、23psig、24psig、25psig、26psig、27psig、28psig、29psig、30psig、31psig、32psig、33psig、34psig、35psig、36psig、37psig、38psig、39psig、40psig、41psig、42psig、43psig、44psig、45psig、46psig、47psig、48psig、49psig、50psig、51psig、52psig、53psig、54psig、55psig、56psig、57psig、58psig、59psig、60psig、61psig、62psig、63psig、64psig、65psig、66psig、67psig、68psig、69psig、70psig、71psig、72psig、73psig、74psig、75psig、76psig、77psig、78psig、79psig、80psig、81psig、82psig、83psig、84psig、85psig、86psig、87psig、88psig、89psig、90psig、91psig、92psig、93psig、94psig、95psig、96psig、97psig、98psig、99psig、100psig、101psig、102psig、103psig、104psig、105psig、106psig、107psig、108psig、109psig、110psig、111psig、112psig、113psig、114psig、115psig、116psig、117psig、118psig、119psig、120psig、121psig、122psig、123psig、124psig、125psig、126psig、127psig、128psig、129psig、130psig、131psig、132psig、133psig、134psig、135psig、136psig、137psig、138psig、139psig、140psig、141psig、142psig、143psig、144psig、145psig、146psig、147psig、148psig、149psig、または150psigでもよい。一実施形態において、圧力は上に列挙した整数の任意のpsigの間の値でもよい。
【0073】
脱ハロゲン化水素反応は、アミンの存在下また非存在下において、塩化物や苛性剤のような、ハロゲン化物塩の腐食作用に耐性のある物質から構成されている反応器内で行われる。反応器は、任意選択的にTFEまたはPFAで内張されていてもよい。反応器は、その頂部において高揮発性の生成物が蒸気として排出するのを可能にしながら、低揮発性の出発物質を反応器内に保つための、還流塔および濃縮器を有していてもよい。一実施形態において、反応器は、液体を保持することができ、攪拌機を含むタンクと、一体型加熱/冷却システムとからなる。攪拌機(agitator)は攪拌機(stirrer)であり、反応器内の液体を攪拌(agitates)、すなわち混合(mixes)する。反応器はさらに、攪拌機と通信するコントローラーを含み、コントローラーは攪拌機の回転を制御するために設計される。一実施形態における攪拌機は、電気モーターにより動力が供給され、液体を攪拌(ajitate)、すなわち混合(mix)するための攪拌機の回転速度を制御する。別の実施形態において、反応器は、駆動ユニットに接続され、中央に取り付けられた駆動軸を有する。一実施形態において、羽根が駆動軸に取り付けられている。一実施形態において、羽根は反応器の直径の約2分の1から約3分の2をカバーする。反応器はまた、バッフル、すなわち、回転する攪拌機により引き起こされる流れを絶つ固定羽根を使用してもよい。これらは容器の蓋に固定されたり、側壁の内側に取り付けられていてもよい。これらの容器は1リットル未満から40,000リットル以上までの異なるサイズでもよい。液体および固体は通常、反応器の上蓋の連結部を通して入れられる。蒸気およびガスもまた、上部の連結部を通して排出される。液体は通常底から、または上部に取り付けられた浸漬管を通って排出される。
【0074】
反応器は、タンク内の液体を混合する動力を攪拌機に与えることにより、RCXYCZQTおよび苛性剤と、存在する場合には、アミンからなる反応混合物を混合する。動力の入力は、容器の形状、バッフルの構造、もしあれば羽根の構造、および羽根の回転速度を含むいくつかのパラメータの組み合わせを基に計算される。この計算は、当業者により実施される。本明細書に記載するプロセスにおいて、収率を最大化するために、一実施形態において、苛性剤、RCXYCZQTおよび、存在する場合はアミンまたはアンモニアを一緒に混合して、小さい泡および高い相間表面積を発生させる。オートクレーブ反応器は、上で定義した馬力毎ガロン液体を達成することができる反応器の例である。一実施形態において、約0.1から約50馬力/1000ガロン液体が攪拌機に伝えられて攪拌機が反応混合物を攪拌し、一方別の実施形態において、約0.5から約40馬力/1000ガロン液体が攪拌機に伝えられて攪拌機が反応混合物を攪拌し、別の実施形態では、約1から約35馬力/1000ガロン液体が攪拌機に伝えられ、攪拌機が反応混合物を混合する。
【0075】
以下に記載する実施例では、機械的攪拌機によりもたらされる混合を使用しているが、混合力の入力は他の方法でもたらされることもできる。これらの方法は業界で知られており、容器に添加されるガスからのガスの泡によりもたらされたり、容器内での液体の気化により生まれる混合を使用することを含む。混合はまた、液体を容器からポンプに引き出し、液体をポンプ送液して容器内に戻すことによって提供することができる。静的ミキサー、ローター固定ヘッド、または内容物を混合することを意図した他の装置を、液体の循環経路内に存在させ、追加の混合動力の入力を提供することができる。混合は、単独の方法により、または2つ以上の方法の組み合わせにより提供することができる。
【0076】
脱ハロゲン化水素プロセスは、アミンの存在下または非存在下において、He、ArまたはN2などの不活性ガスの存在下で実施されてもよい。本発明のいくつかの実施形態において、不活性ガスは出発物質と共に反応器に供給される。
【0077】
一実施形態において、本明細書に記載の脱ハロゲン化水素プロセスは、アミンの存在下または非存在下において、連続プロセス、バッチプロセス、半連続プロセスまたはそれらの組み合わせなどの周知の化学工学の実践を用いて、液相の水性溶媒中で行われる。
【0078】
記載する条件下、および連続、バッチまたは半連続工程の全ての場合において、反応は、開始後の比較的短い時間で完了する。一実施形態において、反応時間は最大約4時間で十分である。例えば、一実施形態において、反応時間は約1から約120分の範囲であり、一方別の実施形態では、反応時間は約3から約60分の範囲であり、別の実施形態では、約5から約30分である。
【0079】
式RCX=CZQを有するフルオロアルカンは、蒸留、クロマトグラフィー、抽出などの当該技術分野で公知の分離技術を用いて単離される。
【0080】
以下の非限定的な例は、本発明をさらに説明するものである。実施例において、1233xfは2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであり、1233zdはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであり、1243zfは3,3,3-トリフルオロプロペンであり、243faは3,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロペンであり、243dbは2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパンであり、233abは1,2,2-トリクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンである。
【実施例
【0081】
(実施例1) 28℃における、200mlシェイカーチューブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0082】
87.4gの12wt%NaOH溶液および33.2gの243dbをシェイカーチューブ反応器に入れた。反応器を室温(28℃)で30分間振とうした。推定される混合力は30から40HP/1000ガロンであった。圧力は、反応の進行を示す図1に示すように1.8psigから20.2psigまで連続的に上昇した。生成物をGC-MSにより分析し(第1表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、30分で243dbの~80%が変換されたことを示した。本実施例に記載する反応剤は、以下のデータによって示されるように、比較例1で生成されたデータと比較して、比較例1の反応剤よりも激しく振とうされた。
【0083】
【表1】
【0084】
(実施例2) 55℃における、200mlシェイカーチューブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0085】
86gの12wt%NaOH溶液および36.5gの243dbをシェイカーチューブ反応器に入れた。反応器を-10℃に冷却し、短期間で排気した。次に、攪拌せずに55℃まで加熱した。温度が47℃に達した時点で振とうし、55℃まで加熱した。次に、~55℃を60分間維持した。推定される混合力は30-40HP/1000ガロンであった。反応の間、圧力は、反応の進行を示す図2に示すように、-6.34psigから~47psigまで連続的に上昇した。温度および圧力プロファイルに基づき、反応は25分付近で98%の変換率に到達したと推測された。生成物をGC-MSで分析し(第2表)、第2表の分析結果は243dbの~98%が変換されたことを示す。
【0086】
【表2】
【0087】
(実施例3) 80℃における、200mlシェイカーチューブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0088】
87gの12wt%NaOH溶液および36.1gの243dbをシェイカーチューブ反応器に入れた。反応器を-10℃に冷却し、短期間で排気した。次に、攪拌せずに67℃まで加熱した。67℃に達した時点で振とうし、80℃まで加熱した。次に、~80℃を60分間維持した。推定される混合力は30から40HP/1000ガロンであった。反応の間、圧力は、反応の進行を示す図3に示すように、3.8psigから~105psigまで連続的に上昇した。温度および圧力プロファイルに基づき、反応は10分付近で98%の変換率に到達したと推測された。生成物をGC-MSで分析し(第3表)、第3表の分析結果は243dbの~98.4%が変換されたことを示す。
【0089】
【表3】
【0090】
(比較例1) 250mlのガラス器具での、溶媒および相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0091】
250ml三つ口フラスコにメカニカルスターラー、熱電対およびバブラーにつながる管を装着した。次に、30gの243dbをフラスコに加え、30℃まで加熱した。次に、あらかじめ30℃に温めておいた7.2gの30wt%NaOHを243dbに加えた。30℃、515rpmで1時間混合し、このガラスフラスコ内の混合は、2つの液相が渦を巻いていることが観察された。反応容器内の有機相をGC-MSで分析し(第4表)、これは243dbの2.78%が1233xfに変換されたことを示す。
【0092】
【表4】
【0093】
(実施例4) 50℃、500rpmにおける400ml攪拌オートクレーブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0094】
150gの12wt%NaOH溶液を400mLオートクレーブに入れ、50℃まで加熱し、次に68gの243dbをポンプ投入した。反応混合物は50℃、500rpmで混合した。推定される混合力は1.2HP/1000ガロンであった。反応の進行を示す図4に示すように、圧力は5psigから46psigまで連続的に上昇した。反応器の圧力が安定した後、さらに20分間攪拌した。生成物をGC-MSで分析し(第5表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、45分で243dbの~99.4%が変換されたことを示す。
【0095】
【表5】
【0096】
(実施例5)50℃、1000rpmにおける400ml攪拌オートクレーブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0097】
150gの12wt%NaOH溶液を400mlオートクレーブに入れ、50℃まで加熱し、次に68gの243dbをポンプ投入した。反応混合物は50℃、1000rpmで混合した。推定される混合力は10.1HP/1000ガロンであった。反応の進行を示す図4に示すように、圧力は5psigから50psigまで連続的に上昇した。1000rpmでの実施の温度および圧力の両方が、500rpmよりもより早く頂点に達し、1000rpmの混合速度におけるはるかに速い反応速度を示した。反応器の圧力が安定した後、反応混合物をさらに20分間攪拌した。生成物をGC-MSにより分析し(第6表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、30分で243dbの~99.5%が変換されたことを示す。
【0098】
【表6】
【0099】
(実施例6) 80℃、500rpmの混合速度における、400ml攪拌オートクレーブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0100】
150gの12wt%NaOH溶液を400mlオートクレーブに入れ、80℃まで加熱し、次に68gの243dbをポンプ投入した。反応混合物は80℃、500rpmで混合した。推定される混合力は1.2HP/1000ガロンであった。反応の進行を示す図5に示すように、圧力は22.5psigから100psigまで連続的に増加した。反応器の圧力が安定した後、さらに20分間攪拌した。生成物をGC-MSで分析し(第7表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、44分で243dbの~99.9%が変換されたことを示す。
【0101】
【表7】
【0102】
(実施例7) 1000rpmで混合される80℃の400ml攪拌オートクレーブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0103】
150gの12wt%NaOH溶液を400mlオートクレーブに入れ、80℃まで加熱し、次に68gの243dbをポンプ投入した。反応混合物を80℃、1000rpmで混合した。推定される混合力は10.1HP/1000ガロンであった。反応の進行を示す図5に示すように、圧力は25psigから117psigまで連続的に上昇した。1000rpmでの実施の温度および圧力の両方が、500rpmよりもより早く頂点に達し、1000rpmの混合速度におけるはるかに速い反応速度を示した。反応器の圧力が安定した後、さらに20分間攪拌した。生成物をGC-MSで分析し(第8表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、34分で243dbの~99.9%が変換されたことを示す。
【0104】
【表8】
【0105】
(実施例8) 500rpmで混合される60℃の400ml攪拌オートクレーブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243db脱塩化水素
【0106】
150gの12wt%NaOH溶液を400mlオートクレーブに入れ、60℃まで加熱し、次に68gの243dbをポンプ投入した。反応混合物を60℃、500rpmで混合した。推測される混合力は1.2HP/1000ガロンであった。反応の進行を示す図7に示すように、圧力は6psigから62.5psigまで連続的に上昇した。反応器の圧力が安定した後、さらに20分間攪拌した。生成物をGC-MSで分析し(第9表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、35分で243dbの~99.3%が変換されたことを示す。
【0107】
【表9】
【0108】
(実施例9) 60℃、1000rpmにおける400ml攪拌オートクレーブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0109】
150gの12wt%NaOH溶液を400mlオートクレーブに入れ、60℃まで加熱し、次に68gの243dbをポンプ投入した。反応混合物を60℃、1000rpmで混合した。推定される混合力は10.1HP/1000ガロンであった。反応の進行を示す図6および図7に示すように、圧力は6psigから65psigまで連続的に上昇した。1000rpmの実施において、温度および圧力の両方が、500rpmよりもより早く頂点に達し、1000rpmの混合速度におけるはるかに速い反応速度を示した。反応器の圧力が安定した後、反応混合物をさらに20分間攪拌した。生成物をGC-MSにより分析し(第10表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、30分で243dbの~99.2%が変換されたことを示す。
【0110】
【表10】
【0111】
(実施例10) 60℃、1500rpmにおける400ml攪拌オートクレーブ反応器での、相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0112】
150gの12wt%NaOH溶液を400mlオートクレーブに入れ、60℃まで加熱し、次に68gの243dbをポンプ投入した。反応混合物を60℃、1500rpmで混合した。推定される混合力は34.1HP/1000ガロンであった。反応の進行を示す図6および図7に示すように、圧力は6psigから72.5psigまで連続的に上昇した。1500rpmの実施において、温度および圧力の両方が、1000rpmよりもより早く頂点に達し、1500rpmの混合速度におけるはるかに速い反応速度を示した。反応器の圧力が安定した後、反応混合物をさらに20分間攪拌した。生成物をGC-MSにより分析し(第11表)、分析結果は、相間移動触媒を使用せずに、30分で243dbの~99.2%が変換されたことを示す。
【0113】
【表11】
【0114】
(実施例11) トリエチルアミンを用いたNaOHによる243dbの脱塩化水素
【0115】
250mlの三つ口フラスコにメカニカルスターラー、熱電対、およびバブラーにつながる管を装着した。次に、30gの243dbと10gのトリエチルアミンとをフラスコに加え、30℃まで加熱した。次に、あらかじめ30℃に温めておいた7.2gの30wt%NaOHを243dbとトリエチルアミンの混合物に加えた。それを1時間混合した。反応容器内の有機化合物をGC/MSにより分析し、243dbから1233xfへの27%の変換率が示された。
【0116】
【表12】
【0117】
(比較例2) 溶媒および相間移動触媒を使用しない、NaOHによる243dbの脱塩化水素
【0118】
250mlの三つ口フラスコにメカニカルスターラー、熱電対、およびバブラーにつながる管を装着した。次に、30gの243dbをフラスコに加え、30℃まで加熱した。次に、あらかじめ30℃に温めておいた7.2gの30wt%NaOHを243dbに加えた。フラスコの内容物を、30℃、515rpmで1時間混合した。反応容器内の有機化合物をGC/MSで分析し、243dbから1233xfへの2.78%の変換率が示された。
【0119】
【表13】
【0120】
(比較例3) トルエンを用いたNaOHによる243dbの脱塩化水素
【0121】
250mlの三つ口フラスコにメカニカルスターラー、熱電対、およびバブラーにつながる管を装着した。次に、30gの243dbおよび10gのトルエンをフラスコに加え、30℃まで加熱した。次に、あらかじめ30℃に温めておいた7.2gの30wt%NaOHを243dbとトルエンとの混合物に加えた。フラスコの内容物を、30℃、515rpmで1時間混合した。反応容器内の有機化合物をGC/MSで分析し、243dbから1233zfへの0.87%の変換率が示された。
【0122】
【表14】
【0123】
本発明の任意の特定の態様および/または実施形態に関して本明細書で説明された特徴のいずれかと、本明細書で説明された本発明の任意の他の実施態様および/または実施形態の他の特徴のいずれかの1つまたは複数とを、組み合わせの適合性を確実にするために適切な修正を加えて、組み合わせ可能であることは、本発明が関連する技術分野の通常の知識を有する者に理解されるべきである。そのような組み合わせは、本開示によって企図される本発明の一部であると考えられる。
【0124】
前述の一般的な説明およびそれに続く詳細な説明のどちらも、例示的および説明的なものに過ぎず、特許請求する発明を限定するものではないことが理解されるべきである。他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書に開示された本発明の実施から当業者に明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7