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特許7274540インビトロの新生児バイオミメティック(NMIMIC)モデル及び方法、並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】インビトロの新生児バイオミメティック(NMIMIC)モデル及び方法、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20230509BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20230509BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230509BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20230509BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C12Q1/02
C07K14/52
C12N5/0783
C12N5/0781
C07K16/28
【請求項の数】 26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021131082
(22)【出願日】2021-08-11
(62)【分割の表示】P 2019513400の分割
【原出願日】2017-09-07
(65)【公開番号】P2021180673
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】62/384,897
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511289976
【氏名又は名称】サノフィ パスツール ヴァックスデザイン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス, エバン
(72)【発明者】
【氏名】カマラ, ティルマライ
(72)【発明者】
【氏名】モスケラ, ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ウィットマン, ヴォーン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】モーザー, ジャニス
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク, ドナルド
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-537732(JP,A)
【文献】特表2015-509382(JP,A)
【文献】特表2009-521228(JP,A)
【文献】Altern. Lab. Anim.,2009年,Vol. 37, Suppl. 1,pp.19-27
【文献】Disrupt. Sci. Technol.,2012年,Vol. 1, No. 1,pp.28-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性についてワクチン候補をスクリーニングする方法であって、
(a)ワクチン候補および1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン候補特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン候補の一部またはワクチン候補の構成成分を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって活性についてワクチン候補をスクリーニングする、
ことを含み、
前記細胞応答は、前記B細胞によるサイトカインの産生、前記B細胞によるマーカーの発現、および、前記B細胞による、(c)で添加されたワクチン候補の一部またはワクチン候補の構成成分に対する結合特異性を有する抗体の産生のうちの1つ以上であり、
前記1つ以上の細胞活性化因子が、抗CD28抗体、IL-6、およびIL-12からなる群から選ばれる、
前記方法。
【請求項2】
ワクチンの効能を評価する方法であって、
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチンの一部またはワクチンの構成成分を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによってワクチンの効能を評価する、
ことを含み、
前記細胞応答は、前記B細胞によるサイトカインの産生、前記B細胞によるマーカーの発現、および、前記B細胞による、(c)で添加されたワクチンの一部またはワクチンの構成成分に対する結合特異性を有する抗体の産生のうちの1つ以上であり、
前記1つ以上の細胞活性化因子が、抗CD28抗体、IL-6、およびIL-12からなる群から選ばれる、
前記方法。
【請求項3】
インビトロの細胞培養を用いてワクチンのインビボでの効能を予測する方法であって、
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチンの一部またはワクチンの構成成分を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、細胞応答が見出された場合、前記ワクチンはインビボでの効能を有すると予測する、
ことを含み、
前記細胞応答は、前記B細胞によるサイトカインの産生、前記B細胞によるマーカーの発現、および、前記B細胞による、(c)で添加されたワクチンの一部またはワクチン候補の構成成分に対する結合特異性を有する抗体の産生のうちの1つ以上であり、
前記1つ以上の細胞活性化因子が、抗CD28抗体、IL-6、およびIL-12からなる群から選ばれる、
前記方法。
【請求項4】
前記第1の細胞培養物が、8~12日間維持される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
追加ワクチンまたはワクチン候補が、少なくとも1回、第1の細胞培養物に添加される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の細胞培養物が、8~12日間維持され、追加ワクチンまたはワクチン候補が、最初のワクチンまたはワクチン候補の添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンまたはワクチン候補の添加後5、6または7日目のうちの1つに添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
照射を受けたフィーダー細胞が、ワクチンまたはワクチン候補添加の1回以上の繰り返しの際に、第1の培養物に添加される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記照射を受けたフィーダー細胞が、無血清培地で成長した臍帯血単核細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記(c)の培養物が、8~12日間維持される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
IL-21が、(c)の培養物に添加される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記(c)の培養物が、1~25日間維持され、第2の細胞培養物に対するワクチン若しくはワクチン候補の一部またはワクチン若しくはワクチン候補の構成成分を添加のうえで、IL-21が、第2の細胞培養物の調製後の2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後の5、6または7日目のうちの1つに、添加される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記サイトカインが、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-17、またはIL-21のうちの1つ以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記マーカーが、CD10、CD19、CD20、CD24、CD27、CD38、CD40、CD86、CD138、IgD、IgG、およびIgMのうちの1つ以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ワクチンが、不活化ワクチン、弱毒化ワクチン、トキソイドワクチン、サブユニットワクチン、コンジュゲートワクチン、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌、菌類、若しくはそれらのうちのいずれかの断片、または抗原刺激された樹状細胞である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記臍帯血B細胞が、臍帯血CD4+T細胞に対して自家性である、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記臍帯血B細胞が、第2の細胞培養物に臍帯血B細胞の添加する前に、CpG2006で処理される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比が、1:1から1:100の範囲である、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の細胞培養物が、3次元マトリックスに形成される、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記マトリックスが、ゲルマトリックスである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
活性についてワクチン候補をスクリーニングする方法であって、
(a)ワクチン候補および細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン候補特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-6、およびIL-12のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチン候補を、最初のワクチン候補の添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチン候補の添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、1:1から1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン候補の一部またはワクチン候補の構成成分を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記ワクチン候補の一部またはワクチン候補の構成成分を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン候補の一部またはワクチン候補の構成成分に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって活性についてワクチン候補をスクリーニングする、
ことを含む、前記方法。
【請求項21】
ワクチンの効能を評価する方法であって、
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-6、およびIL-12のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチンの添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンの添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、1:1から1:100までの範囲であり、
(c)ワクチンの一部またはワクチンの構成成分を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記ワクチンの一部またはワクチンの構成成分を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチンの一部またはワクチンの構成成分に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによってワクチンの効能を評価する、
ことを含む、前記方法。
【請求項22】
インビトロの細胞培養を用いてワクチンのインビボでの効能を予測する方法であって、
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-6、およびIL-12のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチン添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチン添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、1:1から1:100までの範囲であり、
(c)ワクチンの一部またはワクチンの構成成分を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記ワクチンの一部またはワクチンの構成成分を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチンの一部またはワクチンの構成成分に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって、このような抗体が見出される場合、前記ワクチンはインビボで効能を有すると予測する、
ことを含む、前記方法。
【請求項23】
前記照射を受けたフィーダー細胞が、無血清培地で成長した臍帯血単核細胞である、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ワクチンが、不活化ワクチン、弱毒化ワクチン、トキソイドワクチン、サブユニットワクチン、コンジュゲートワクチン、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌、菌類、若しくはそれらのうちのいずれかの断片、または抗原刺激された樹状細胞、である、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記臍帯血B細胞が、第2の細胞培養物に臍帯血B細胞の添加する前に、CpG2006で処理される、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記マトリックスが、ゲルマトリックスである、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ワクチン接種は感染に対する最善の防御であり、生後数カ月は、ワクチンが疾患に対し強力な防護を誘導することができる重要な期間を提供する。しかしながら、ワクチンおよび免疫治療の臨床開発および改良は、未成熟の免疫系での免疫反応をテストするための適切なインビトロアッセイの欠如によって妨げられている。新生児(neonatal)および乳幼児(infant)の免疫のインビトロモデルの開発は、出生後に投与することができるワクチンの研究を進める上で大きな利点となるであろう。ここに記載される本発明は、このような、および他の重要な目的に関する。
【発明の概要】
【0002】
ここに提供されるのは、哺乳類の新生児免疫系のインビトロモデルとして共に供する細胞培養構築物および方法論である。これら哺乳類の臍帯血ベースの新生児モジュール免疫インビトロ構築物(nMIMIC:eonatal odular immune n vitro onstruct)モデルは、選択抗原(selected antigen)に対する若齢期の免疫応答を予測するために用いることができ、乳幼児および歩き始めの幼児(toddler)用ワクチンの前臨床評価における一次スクリーニングとして役立てることができる。
【0003】
本発明のnMIMICモデルは、若齢期のナイーブ免疫(naive immunity)の態様を再現する。nMIMICモデルにおける発生期の臍帯血に由来する免疫細胞を用いて、ここに開示されるモデルは、臨床において観察される新生児および乳幼児の免疫応答を真似る。これらのnMIMICモデルは、臍帯血由来の哺乳動物新生児免疫系の成分(例えば、T、B、および樹状細胞(DCs:dendritic cells)を利用し、インビボにて生理学的濃度で観察されるものと同様の比率でそれらを培養物中に提示する能力を提供する。これらのモデルを用いて、本発明者らは、(1)抗原処理した臍帯血由来(cord-blood derived)樹状細胞をCD4+T細胞に適用して細胞媒介性応答を生じさせること、および(2)臍帯血CD4+T細胞を、B細胞のヘルプおよび体液性応答に必須である特殊なクラスのTリンパ球である、T濾胞性ヘルパー細胞(TFH)に分化させることができ、これらのTFH細胞をナイーブB細胞に適用して小児期ワクチンに対する抗原特異的抗体応答を生じさせることができた。
【0004】
本発明の実施形態は、2つの特定のnMIMICモデル、nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルおよびnMIMIC B細胞/TFH細胞モデル、並びに、抗原に対する哺乳類新生児免疫系の成分の細胞応答について情報を提供するためにこれらのモデルを使用する方法、および、候補ワクチンの評価において使用する方法を含む。
【0005】
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデル
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルは、主として、臍帯血由来の樹状細胞(DCs)および臍帯血CD4+T細胞を含み、例えば、新生児抗原提示およびCD4+T細胞反応について選択薬剤の効果をアッセイするために用いることができる。nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルが多くの異なる態様で用いることができることは容易に明らかであろうが、このモデルの非限定的な例として、選択薬剤(selected agent)に対する新生児免疫系の細胞の反応をインビトロで評価する方法を例示することができる。具体的には、第1の実施形態として、本発明は、選択薬剤に対する細胞応答を評価する方法に関し、当該方法は下記:
(a)選択薬剤を、臍帯血由来の樹状細胞(DCs)を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、前記樹状細胞による前記選択薬剤の取り込みを促進する条件下で細胞培養物を維持し、薬剤刺激された樹状細胞の第1集団を形成し、
(b)(a)で発達させた薬剤刺激された樹状細胞と臍帯血CD4+T細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、T細胞の活性化を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(c)薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を、(b)の細胞培養物に添加し、T細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、ここで、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団は、薬剤刺激された樹状細胞の前記第1集団と同じ方法で調製されており、
(d)T細胞応答について(c)の細胞培養物からの上清および/またはT細胞を分析し、それによって選択薬剤に対する細胞応答を評価すること、
を含む。
【0006】
他の非限定的な例として、nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルは、哺乳類新生児免疫系の成分に対する活性について選択薬剤(例えば、抗原、ワクチン)をスクリーニングするインビトロでの方法を例示することができる。具体的には、第2の実施形態として、本発明は、活性について選択薬剤をスクリーニングする方法に関し、当該方法は下記:
(a)選択薬剤を、臍帯血由来の樹状細胞(DCs)を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、前記樹状細胞による前記選択薬剤の取り込みを促進する条件下で細胞培養物を維持し、薬剤刺激された樹状細胞の第1集団を形成し、
(b)(a)で発達させた薬剤刺激された樹状細胞と臍帯血CD4+T細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、T細胞の活性化を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(c)薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を、(b)の細胞培養物に添加し、T細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、ここで、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団は、薬剤刺激された樹状細胞の前記第1集団と同じ方法で調製されており、
(d)T細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞の細胞応答について分析し、それによって活性について前記選択薬剤をスクリーニングする、
ことを含む。
【0007】
これら第1および第2の実施形態の側面において、第1の細胞培養物は、約3、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、または48時間以上、第2の細胞培養物の形成の前に維持される。特定の一側面において、第1の細胞培養物は、約12~36時間、第2の細胞培養物の形成の前に維持される。
【0008】
これら第1および第2の実施形態の側面において、第2の細胞培養物は、薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を加える前に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間以上維持される。特定の一側面において、第2の細胞培養物は、薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を添加する前に、約5~10日間維持される。
【0009】
これら第1および第2の実施形態の側面において、(c)の培養物は、(d)の分析前に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12時間以上維持される。特定の一側面において、(c)の培養物は、(d)の分析前に、約2~8時間維持される。
【0010】
これら第1および第2の実施形態の側面において、T細胞応答は、サイトカインまたはマーカーの産生でありうる。サイトカインの例としては、以下に限定されるものではないが、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-21、IL-22、およびIL-26のうちの1つ以上が挙げられる。マーカーの例としては、以下に限定されるものではないが、1つ以上のCD25、CD26、CD27、CD28、CD30、CD44、CD69、CD71、CD134、およびCD154が挙げられる。
【0011】
これら第1および第2の実施形態の側面において、選択薬剤は、抗原、ワクチン、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌(bacteria)、真菌(fungi)、および断片でありうる。
【0012】
これら第1および第2の実施形態の側面において、臍帯血T細胞は、臍帯血由来の樹状細胞に対して自家性(すなわち、同じ生物体由来)である。この実施形態の他の側面において、臍帯血T細胞は、臍帯血由来の樹状細胞に対し同種異系(すなわち、同じ種の他の生物体由来)である。
【0013】
これら第1および第2の実施形態の側面において、(b)の培養物中における、薬剤刺激された樹状細胞の臍帯血T細胞に対する比は、約1:5から約1:100の範囲である。
【0014】
これら第1および第2の実施形態の側面において、(c)の培養物に添加される薬剤刺激された樹状細胞の第2集団の、臍帯血T細胞に対する比は、約1:5から約1:100の範囲である。
【0015】
これら第1および第2の実施形態の側面において、臍帯血由来の樹状細胞は、以下のマーカー:CD14、CD16、CD25、CD80、CD86、およびHLA-DRのうちの1つ以上を発現していることにより特徴づけられうる。
【0016】
本発明ならびにこれら第1および第2の実施形態の別の側面において、臍帯血由来の樹状細胞は、
(a)細胞培養ウェルの下部チャンバーの上に分離可能に吊される当該ウェルの上部チャンバー内に収容されている多孔質膜の上面で内皮細胞を培養し、
(b)(a)の多孔質膜上の内皮細胞に臍帯血単核細胞(CBMCs:cord blood mononuclear cell)を与え、
(c)前記臍帯血単核細胞を与えてから約48時間後に、多孔質膜および内皮細胞を収容している前記上部チャンバーを取り外し、
(d)樹状細胞を前記ウェルの下部チャンバーから分離する、
ことを含む方法によって調製しうる。
【0017】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、多孔質膜は、ポリカーボネート膜、または、直径約1から15μmの範囲の孔を有するもの、またはその両方を備える膜でありうる。いくつかの実施形態において、ウェルの上部チャンバー、ポリカーボネート膜、およびウェルの下部チャンバーを提供するために、透過性支持体を用いてもよい。このような透過性支持体としては、例えば、Corning社のTranswell(登録商標)パーミアブルサポートが挙げられる。
【0018】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、ウェルの下部チャンバーは、細胞外マトリックス(ECM:extracellular matrix)材料を含みうる。いくつかの実施形態において、細胞外マトリックス材料は、以下に限定されるものではないが、ゼラチン、コラーゲン、合成細胞外マトリックス材料、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA:poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリグリコール酸(PGA)、天然細胞外マトリックス材料、キトサン、プロトサン(protosan)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニンおよびそれらの混合物から選ばれる材料を含みうる。ウェルの下部チャンバーは、更に、繊維芽細胞、支持細胞、および間質細胞のうちの1つ以上を含みうる。
【0019】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、内皮細胞は、以下に限定されるものではないが、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC:human umbilical vein endothelial cell)およびヒト体細胞ハイブリッドEA.hy926でありうる。追加の側面において、内皮細胞は、形質転換された内皮細胞系でありうる。
【0020】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、内皮細胞は、多孔質膜の両面に培養してもよい。
【0021】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、内皮細胞は、臍帯血単核細胞を加える前に、コンフルエンシー(confluency)に達するまで培養することができる。
【0022】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、内皮細胞は、臍帯血単核細胞を加える前に、多層細胞増殖に達するまで、培養してもよい。
【0023】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、細胞外マトリックス材料の層は、多孔質膜の上面にあってもよく、内皮細胞は細胞外マトリックス材料層上に培養される。あるいは、細胞外マトリックス材料の層は上面および多孔質膜の下面にあってもよく、内皮細胞は細胞外マトリックス材料の両方の層上に培養される。細胞外マトリックス材料は、以下に限定されるものではないが、ゼラチン、コラーゲン、合成細胞外マトリックス材料、PLGA、PGA、天然細胞外マトリックス材料、キトサン、プロトサン(protosan)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン、およびそれらの混合物から選ばれる材料を含みうる。
【0024】
これらの実施形態の側面において、樹状細胞を調製するのに用いられるウェルの下部チャンバーは、(a)の第1の細胞培養物としての役割も果たしうる。
【0025】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデル
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、主として、臍帯血由来濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞および臍帯血B細胞を含んでおり、例えば、抗原提示およびB細胞応答についての選択薬剤の効果をアッセイするために用いることができる。nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、多くの異なる態様で用いることができ、非限定的な例として、選択ワクチン(selected vaccine)に対する新生児免疫系の細胞応答をインビトロで評価する方法が挙げられる。このように、第3の実施形態として、本発明は、活性についてワクチンをスクリーニングする方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって活性についてワクチンをスクリーニングする、
ことを含む。
【0026】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、他の非限定的な例として、インビトロのテストを経てワクチンの潜在的効能を評価するインビトロの方法として例示することができる。
具体的には、第4の実施形態として、本発明は、ワクチンの効能をアッセイする方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによってワクチンの効能を評価する、
ことを含む。
【0027】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、更なる非限定的な例として、インビトロの細胞培養物を用いてワクチンのインビボにおける効能を予測するインビトロの方法として例示することができる。
具体的には、第5の実施形態として、本発明は、インビトロの細胞培養物を用いてワクチンのインビボにおける効能を予測する方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、細胞応答が見出された場合、前記ワクチンはインビボでの効能を有すると予測する、
ことを含む。
【0028】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、第1の細胞培養物は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日以上間維持される。特定の一側面において、第1の細胞培養物は、約8~12日間維持される。
【0029】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、追加ワクチンが、少なくとも1回、2回、3回、またはそれより多く、第1の細胞培養物に添加される。特定の一側面において、追加ワクチンは、少なくとも1回、第1の細胞培養に添加される。照射を受けたフィーダー細胞を、1回以上のワクチン添加の繰り返しの際に、第1の培養物に添加してもよい。照射を受けたフィーダー細胞は、これに限定されるものではないが、無血清培養媒体において成長した臍帯血単核細胞(CBMCs)でありうる。
【0030】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、第1の細胞培養物は約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日間以上維持され、追加ワクチンが、最初のワクチン添加後、2、3または4日目に添加され、そして、追加ワクチンが、最初のワクチンの添加後、5、6または7日目に添加される。特定の一側面において、第1の細胞培養物は、約8~12日間維持され、追加ワクチンが、最初のワクチン添加後、2、3または4日目のうちの1つの日に添加され、そして、5、6または7日目のうちの1つの日に添加される。照射を受けたフィーダー細胞を、ワクチン添加の1回以上の繰り返しの際に、第1の培養物に添加してもよい。照射を受けたフィーダー細胞は、これに限定されるものではないが、無血清培養媒体において成長した臍帯血単核細胞(CBMCs)でありうる。
【0031】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、(c)において添加されるワクチン特異的抗原は、第2の細胞培養物が調製された後まもなく、すなわち(b)の第2の細胞培養物の調製後の約1時間以内に、(b)の第2の細胞培養物に添加される。
【0032】
これらの実施形態の側面において、(c)の培養物は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間以上維持される。特定の一側面において、(c)の培養物は、約8~12日間維持される。
【0033】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、IL-21は、通常、約10~500ng/mlの範囲の濃度で、(c)の培養物に添加しうる。添加される場合、IL-21は次の1つ以上の時点で添加される:(i)ワクチン特異的抗原が(b)の第2の細胞培養物に添加されるとき、(ii)第2の細胞培養物の調製後、2、3または4日目、および(iii)第2の細胞培養物の調製後、5、6または7日目。
【0034】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、(c)の培養物は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日以上の期間維持され、IL-21は、(i)ワクチン特異的抗原が(b)の第2の細胞培養物に添加されるとき、(ii)第2の細胞培養物の調製後、2、3または4日目、および(iii)第2の細胞培養物の調製後、5、6または7日目、に添加される。
【0035】
これらの第3、4および5の実施形態の側面において、細胞応答は、TFH細胞によるサイトカインの産生、TFH細胞によるマーカーの発現、B細胞によるサイトカインの産生、B細胞によるマーカーの発現、および、B細胞による、ワクチン特異的抗原に対し結合特異性を有する抗体の産生のうちの1つ以上である。サイトカインは、以下に限定されるものではないが、CXCL13、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、IL-17およびIL-21のうちの1つ以上でありうる。マーカーは、以下に限定されるものではないが、CD10、CD19、CD20、CD24、CD27、CD38、CD40、CD86、CD138、IgD、IgG、およびIgMのうちの1つ以上でありうる。
【0036】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、ワクチンは、以下に限定されるものではないが、不活化、弱毒化、トキソイド、サブユニット、コンジュゲート、結合価および異型のワクチン、または、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌、真菌、または、それらの断片、または、抗原刺激された樹状細胞でありうる。
【0037】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、ワクチン特異的抗原は、以下に限定されるものではないが、ワクチンの一部またはワクチンの構成成分でありうる。
【0038】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、1つ以上の細胞活性化因子は、以下に限定されるものではないが、抗CD28抗体で、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23でありうる。
【0039】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、臍帯血B細胞は、臍帯血CD4+T細胞に対して自家性(すなわち、同じ生物体由来)である。
【0040】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、臍帯血B細胞は、臍帯血B細胞を第2の細胞培養物に添加する前に、CpG2006で処理してもよい。
【0041】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100の範囲である。
【0042】
これら第3、4および5の実施形態の側面において、第2の細胞培養物は、3次元マトリックスに形成してもよい。マトリックスは、ゲルマトリックスでもよい。
【0043】
他の非限定的な例において、nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、抗原の免疫原性を評価するインビトロの方法として用いることができる。具体的には、第6の実施形態として、本発明は、抗原の免疫原性を評価する方法に関し、当該方法は下記:
(a)抗原および1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)前記抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって抗原の免疫原性を評価する、
ことを含む。
【0044】
この第6の実施形態の側面において、第1の細胞培養物は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日以上の期間維持される。特定の一側面において、第1の細胞培養物は、約8~12日間維持される。
【0045】
この第6実施形態の側面において、追加抗原は、少なくとも1回、2回、3回、またはそれより多く、第1の細胞培養物に添加される。特定の一側面において、追加抗原は、少なくとも1回、第1の細胞培養物に添加される。照射を受けたフィーダー細胞を、1回以上の抗原添加の繰り返しの際に、第1の培養物に添加してもよい。照射を受けたフィーダー細胞は、これに限定されるものではないが、無血清培養培地において成長した臍帯血単核細胞(CBMCs)でありうる。
【0046】
この第6の実施形態の側面において、第1の細胞培養物は約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日間以上維持され、追加抗原が、最初の抗原添加の後、2、3または4日目に添加され、そして、追加抗原が、最初の抗原添加の後、5、6または7日目に添加される。特定の一側面において、第1の細胞培養物は約8~12日間維持され、追加抗原が、最初の抗原添加の後、2、3または4日目のうちの1つの日に添加され、そして、5、6または7日目のうちの1つの日に添加される。照射を受けたフィーダー細胞を、1回以上のワクチン添加の繰り返しの際に、第1の培養物に添加してもよい。照射を受けたフィーダー細胞は、これに限定されるものではないが、無血清培養培地において成長した臍帯血単核細胞(CBMCs)でありうる。
【0047】
この第6の実施形態の側面において、(c)において添加される抗原は、第2の細胞培養物が調製された後まもなく、すなわち(b)の第2の細胞培養物の調製後の約1時間以内に、(b)の第2の細胞培養物に添加される。
【0048】
この第6実施形態の側面において、(c)の培養物は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25日間以上維持される。特定の一側面において、(c)の培養物は、約1~25日間維持される。
【0049】
この第6の実施形態の側面において、IL-21を、通常、約1~500ng/mlの範囲の濃度で、(c)の培養物に添加しうる。添加される場合、IL-21は以下の時点の1つ以上で添加される:(i)抗原が(b)の第2の細胞培養物に添加されるとき、(ii)第2の細胞培養の調製後、2、3または4日目、および(iii)第2の細胞培養物の調製後、5、6または7日目。
【0050】
この第6の実施形態の側面において、(c)の培養物は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日以上の期間維持され、IL-21は、(i)抗原が(b)の第2の細胞培養物に添加されるとき、(ii)第2の細胞培養物の調製後、2、3または4日目、および(iii)第2の細胞培養物の調製後、5、6または7日目に添加される。
【0051】
この第6実施形態の側面において、細胞応答は、TFH細胞によるサイトカインの産生、TFH細胞によるマーカーの発現、B細胞によるサイトカインの産生、B細胞によるマーカーの発現、およびB細胞による抗原に対し結合特異性を有する抗体の産生、のうちの1つ以上である。サイトカインは、以下に限定されるわけではないが、CXCL13、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、IL-17、およびIL-21の1つ以上でありうる。マーカーは、以下に限定されるわけではないが、CD10、CD19、CD20、CD24、CD27、CD38、CD40、CD86、CD138、IgD、IgG、およびIgMのうちの1つ以上でありうる。
【0052】
この第6実施形態の側面において、1以上の細胞活性化因子は、以下に限定されるものではないが、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23でありうる。
【0053】
この第6の実施形態の側面において、臍帯血B細胞は、臍帯血CD4+T細胞に対して自家性(すなわち、同じ生物体体由来)である。
【0054】
この第6の実施形態の側面において、臍帯血B細胞は、臍帯血B細胞を第2の細胞培養物に添加する前に、CpG2006で処理してもよい。
【0055】
この第6の実施形態の側面において、第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲である。特定の一側面において、第2の細胞培養物における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、または1:100である。
【0056】
この第6実施形態の側面において、第2の細胞培養物は、3次元マトリックスに形成してもよい。マトリックスは、ゲルマトリックスでもよい。
【0057】
具体的な一例である、第7の実施形態として、本発明は、インビボで、活性についてワクチンをスクリーニングする方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチンの添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンの添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって活性について、前記ワクチンをインビトロでスクリーニングする、
ことを含む。
【0058】
他の例である、第8実施形態として、本発明は、ワクチンの効能をインビトロで評価する方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチン添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチン添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって前記ワクチンの効能をインビトロで評価する、
ことを含む。
【0059】
更なる例である、第9の実施形態として、本発明は、インビトロの細胞培養物を用いてワクチンのインビボでの効能を予測する方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチン添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチン添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって、このような抗体が見出される場合、前記ワクチンはインビボで効能を有すると予測する、
ことを含む。
【0060】
これら第7、8および9の実施形態の側面において、照射を受けたフィーダー細胞は、これに限定されるものではないが、無血清培養媒体において成長した臍帯血単核細胞(CBMCs)でありうる。
【0061】
これら第7、8および9の実施形態の側面において、ワクチンは、以下に限定されるわけではないが、不活化、弱毒化、トキソイド、サブユニット、コンジュゲート、結合価および異型のワクチン、または、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌、真菌、または、それらの断片、または抗原刺激された樹状細胞でありうる。
【0062】
これら第7、8および9の実施形態の側面において、ワクチン特異的抗原は、以下に限定されるものではないが、ワクチンの一部またはワクチンの構成成分でありうる。
【0063】
これら第7、8および9の実施形態の側面において、臍帯血B細胞は、臍帯血B細胞を第2の細胞培養物に添加する前に、CpG2006で処理してもよい。
【0064】
これら第7、8および9の実施形態の側面において、マトリックスは、ゲルマトリックスでもよい。
【0065】
以上の記述は、以下の本発明の詳細な説明をより理解しうるように、本発明の特徴及び技術的利点を包括的に概説したものである。以下では、本発明の特許請求の範囲の主題を構成する本発明の更なる特徴及び利点について記述する。本明細書に開示する任意の概念及び特定の実施形態を、本発明と同じ目的を達成するための他の構造を変更又は設計するための基礎として利用できることは、当業者によって理解されよう。このような均等な構成は、特許請求の範囲に記載されている本発明の思想及び範囲から逸脱するものではないことは、当業者によって理解されよう。その構成と運用方法の両方に関して本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、更なる目的及び利点と共に、添付図面を参照する以下の説明から一層理解される。なお、任意の説明、図、実施例等は、例示及び説明のためにのみ提供され、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】選択抗原を評価するためのnMIMIC 樹状細胞/CD4+T細胞モデル。選択抗原で24時間前処理された新生児樹状細胞(1)は、7日間、CD4+T細胞と共培養される(2)。ついで、共培養物は、分析(4)の前に、抗原処理された樹状細胞(3)に、5~7時間、再暴露される。分析は、フローサイトメトリー、細胞内サイトカイン染色(ICCS)などの手段によって、サイトカイン発現をアッセイすることを含みうる。
【0067】
図2】nMIMIC 樹状細胞/CD4+T細胞モデル:Hib-TT(「Hib」)を有するnMIMICの刺激は、フローサイトメトリーを介して新生児の抗原特異的CD4+T細胞の活性化を導く。複数の細胞内のサイトカインが、nMIMIC T細胞アッセイにおいて、Hib-TTに応答して増加した。細胞内サイトカイン分析の前に、抗原処理された樹状細胞を受け取った臍帯血T細胞を7日間共培養し、一方は標的樹状細胞で再刺激し、他方は再刺激しなかった。各対内の第2バーは、Hib-TTで刺激および再刺激された培養物を表す。各サイトカインについてのデータは、%CD4+OX40+cytokine+細胞として示されている。グラフのデータは、ボックスウィスカープロット(box and whisker plot)で表され、1番目と3番目の四分位数がボックスの端にあり、中央値はボックスの内側の線であり、データセットの最大値と最小値がウィスカー(whisker)で示されている。
【0068】
図3】nMIMIC 樹状細胞/CD4+T細胞モデル:Hib-TT(「Hib」)用いたnMIMICの刺激は、フローサイトメトリーを介して新生児のCD4+T細胞の活性化を導く。各バーの上の%は、刺激指数(SI)またはバックグラウンドに対する倍率変化(fold change)が≧1.5であったドナーの数を表す。刺激指数は、Hib-TTで処理し再刺激した培養物(Hib-TT/Hib-T)を、Hib-TTで処理したが再刺激しなかった培養物(Hib-TT/NoAg)で割って算出した。SIによって実証されるように、複数の細胞内サイトカインが、nMIMIC T細胞アッセイにおいてHib-TTに応答して増加している。
【0069】
図4】選択抗原を評価するためのnMIMIC naive ナイーブTFH/B細胞モデル。選択抗原は、抗原特異的臍帯血TFH細胞を産生するのに用いられる。ついで、TFH細胞はB細胞と共培養され、上清収集および抗体分析の前に、複合培養物は抗原によって任意に再刺激される。
【0070】
図5A図5A-5B。MenACYW-DT誘導IgM抗体[MenACYW(髄膜炎菌ワクチン)-DT-induced IgM antibody]応答を、nMIMICモデルにおいて観察した。nMIMICにおけるMenACYW-DT誘導抗原特異的IgM抗体は、4つ全ての髄膜炎菌血清型(A、C、Y、W-135)に応答し、いくつかのドナーはバックグラウンドに対する倍率変化の増加を示している。これらの実験において、Hib-TT(「Hib」)は、関係のない非髄膜炎菌のバックグラウンドコントロールとして働く。図5Aにおいて、データは、IgM抗体の大きさ(IgM antibody magnitude)(MSD単位で表す)を示し、他方図5Bにおいて、データは刺激指数(SI)またはバックグラウンドHib-TTコントロールに対する倍率変化を示している。各バーの上の%は、SIが≧1.5であったドナーの数を表す。
図5B】(上記[図5A]の説明と同じ。)
【0071】
図6A図6A-6B。MenACYW-DT誘導IgG抗体応答を、nMIMICモデルにおいて観察した。nMIMICにおいてMenACYW-DT誘導抗原特異的IgG抗体は、4つ全ての髄膜炎菌血清型(A、C、Y、W-135)に応答し、いくつかのドナーは血清型Cのバックグラウンドに対する倍率変化の増加を示している。これらの実験において、Hib-TT(「Hib」)は、関係のない非髄膜炎菌のバックグラウンドコントロールとして働く。図6Aにおいて、データはIgG抗体の大きさ(IgG antibody magnitude)(MSD単位で表す)を示し、他方図6Bにおいて、データは刺激指数(SI)またはバックグラウンドHib-TTコントロールに対する倍率変化を示している。各バーの上の%は、SIが≧1.5であったドナーの数を表す。
図6B】(上記[図6A]の説明と同じ。)
【0072】
図7】デング熱ウイルスワクチン誘導免疫IgM抗体応答が、nMIMICモデルで観察された。nMIMICモデルにおいてデング熱ワクチン誘導抗原特異的IgM抗体は、4つ全てのデング熱ワクチン血清型(1、2、3、4)に応答し、いくつかのドナーは血清型1、3および4のバックグランドに対する倍率変化の増加を示す。これらの実験において、Act Hib-TT(「Act Hib」)は、関係のない非デング熱ウイルスバックグラウンドコントロールとして働く。抗体大きさを左のグラフに、刺激指数を右のグラフに示す。刺激指数(SI)は、デング熱抗体産生応答をAct-HIBコントロールで割って算出された。1.5以上のSIは、ポジティブ応答と考えられる。
【0073】
図8】黄熱ウイルスワクチン誘導抗原特異的IgG抗体応答が、nMIMICモデルで観察された。nMIMICモデルにおいて黄熱ウイルスワクチン誘導抗原特異的IgM抗体は、17D黄熱ウイルスワクチンに応答し、いくつかのドナーはバックグランドに対する倍率変化の増加を示す。これらの実験において、デング熱ウイルス(「デング熱」)は、関係のない非黄熱ウイルスバックグラウンドコントロールとして働く。抗体大きさを左のグラフに、刺激指数を右のグラフに示す。刺激指数(SI)は、黄熱抗体応答をデング熱コントロールで割って算出された。1.5以上のSIは、ポジティブ応答と考えられる。
【0074】
図9】MenACWY-DTおよびACWY-TTは両方とも、4つ全ての血清型の髄膜炎菌性抗IgM抗体産生を刺激する:Ab magnitude。髄膜炎菌性ワクチン誘導IgM抗体応答が、nMIMICモデルで観察された。両方のワクチンは、nMIMICにおいて、我々とは関係のない非髄膜炎菌性Act-HIBコントロールに対して、臍帯血ドナーのポジティブIgM抗体応答を示す。
【0075】
図10】MenACWY-DTおよびACWY-TTは両方とも、4つ全ての血清型の髄膜炎菌性抗IgM抗体産生を刺激する:Stim Index。IgMデータの、髄膜炎菌性ACWY-DTおよびACWY-TT刺激指数を示す。1.5以上のSIは、ポジティブ応答と考えられる。パーセント(%)は、1.5以上のSIを有するドナーの数を表す。
【0076】
図11】MenACWY-DTおよびACWY-TTは両方とも、4つ全ての血清型の髄膜炎菌性抗IgG抗体産生を刺激する:Ab magnitude。髄膜炎菌性ワクチン誘導IgG抗体応答が、nMIMICモデルで観察された。MenACWY-DTおよびACWY-TTは両方とも、nMIMICにおいて、我々とは関係のない非髄膜炎菌性Act-HIBコントロールに対して臍帯血ドナーのポジティブIgG抗体反応を示している。
【0077】
図12】MenACWY-DTおよびACWY-TTは両方とも、4つ全ての血清型の髄膜炎菌性抗IgM抗体産生を刺激する:刺激指数(Stim Index)。IgGデータの、髄膜炎菌性ACWY-DTおよびACWY-TT刺激指数を示す。1.5以上のSIは、ポジティブ応答と考えられる。パーセント(%)は、1.5以上のSIを有するドナーの数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
I.定義
本明細書で使用する不定冠詞「a」又は「an」は、一以上を意味しうる。本明細書において、用語「comprising(含む、有する、備える)」等と関連して使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」は、一又は複数を意味することがある。本明細書で使用する「他の(another)」とは、少なくとも第2の又はそれ以上を意味しうる。更に、文脈による要求がない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含む。
【0079】
本明細書で使う、「約(about)」は、明示の有無にかかわらず、数値、例えば、整数、分数、及び百分率について言及する。「約」という用語は、示された値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と当業者がみなすことができる数値の範囲(例えば、指示された値の+/-5~10%)を、一般的に意味する。場合によっては、用語「約」は、最も近い有効数字に丸められた数値を含むことができる。
【0080】
本明細書において使う、「抗原」(antigen)とは、免疫応答を誘導する薬剤(agent)(例えば、タンパク質、ポリペプチド、多糖、糖脂質など)のことをいうか;および/または、生物に暴露されるか投与されたとき、T細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)、Fc受容体(例えば、樹状細胞およびマクロファージによって高レベルで発現される、活性化しているFc受容体)、B細胞受容体によって、または抗体(例えば、B細胞によって産生される)に、結合する薬剤のことをいう。いくつかの実施形態において、抗原は、生物体において体液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。あるいは又はさらには、いくつかの実施形態において、抗原は、生物体における細胞応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞を伴う)を誘発する。
【0081】
本明細書において用いる、「ワクチン」とは、免疫応答を刺激することができる(例えば、抗原を含有する)投与可能で予防的な、化合物、組成物、または物質のことをいい、それが原因となる病原体(例えば、ウイルス、バクテリア、真菌など)による感染に対する防御を与える(または感染の症状を改善する)。
【0082】
本明細書中で用いる、「アジュバント」とは、抗原の免疫応答を非特異的に増強する 物質または媒体のことをいう。 アジュバントには、抗原が吸着する、ミネラル(ミョウバン、酸化アルミニウム三水和物、またはリン酸塩)の懸濁液;または、抗原溶液を鉱油で乳化したもの(例えば、フロイント不完全アジュバント)、ときには更に抗原性を増強するために死滅させたミコバクテリウムを含めたもの(フロイント完全アジュバント)、である油中水型エマルション、および 水中油型エマルション(例えば、MF59、AS03)、を含めることができる。免疫賦活性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含むもの)を、アジュバントとして使うこともできる。アジュバントは、生体分子(例えば、共刺激分子)も含む。生物学的アジュバントとしては、例えば、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、および41BBLが挙げられる。
【0083】
II.本発明
上記にて概説のとおり、本発明は、哺乳類の新生児免疫細胞系のインビトロモデルとして共に役立つ、細胞培養構築物および方法論を提供する。構築物が臍帯血および臍帯血由来の免疫細胞を含む細胞培養物であるので、構築物は、新生児モジュール免疫インビトロ構築物(nMIMIC:eonatal odular immune n vitro onstruct)と称する。これらのnMIMICモデルは、選択薬剤(例えば抗原)に対する若齢期の免疫応答を予測するために用いることができ、それらは、乳幼児および歩き始めの幼児用ワクチンの前臨床評価における第一次評価としても役立てることができる。
【0084】
nMIMICモデルは、臍帯血免疫細胞を利用する。そのような細胞の使用は、細胞研究のために新生児、乳幼児、および歩き始めの幼児から十分に大量の血液を得ることに関連する実用上のおよび倫理的な問題ゆえに、インビトロでの早期免疫を研究するための唯一の実用的アプローチである。臍帯血単核細胞(CBMCs)は、例えば、米国全体の血液バンクから入手しうる。
【0085】
公表された文献に見られるように、免疫反応を評価するために臍帯血を利用しているグループがある一方、細胞の種類や濃度の比率、多細胞相互作用、および時空間的細胞動態など、哺乳類の免疫システムの細胞成分のバランスを考慮したシステムは提供されていない。ここに提供されるnMIMICモデルを用いて、人間の新生児および乳幼児の免疫応答プロファイルが再現される。重要なこととして、ワクチン接種に対する統計的に有意な新生児免疫応答を、数百(フェーズ2試験)または数千(フェーズ3試験)もの乳幼児の参加が必要となる臨床試験よりも、はるかに少ないドナーサンプル(20~40臍帯血単核細胞サンプル)で達成できる。これらのアッセイは、小規模な臨床試験であっても実行するのにかかるコストの何分の一かのコストで実施できる。今日までに出された実験データは、nMIMICモデルが、細菌コンジュゲート製剤などの様々なワクチンの免疫原性を評価するためのインビトロバイオミメティックシステムとして役立てることができるという強力な証拠を提供する。nMIMICモデルシステムは、非常に実用的かつ達成可能なアプローチを包含するだけでなく、ヒューマンコンポーメント(human component)、すなわち乳幼児を利用する必要なしに、ヒト乳幼児免疫系における免疫学的応答を評価するための強力なツールを提供する。これは、複雑な臨床試験を行う前に、新規または改良されたワクチンの処方および使用に関する決定的な結果を提供する。
【0086】
同様に上記にて概説したとおり、本発明のnMIMICモデルは、臍帯血からの哺乳類新生児免疫系の成分(例えば、T、B、および樹状細胞)を利用し、それらを、インビボの生理学的条件下で観察されるものと同様の比率で、培養物中に提示する能力を提供する。これらのモデルを用いて、本発明者らは、(1)臍帯血由来樹状細胞(DCs)およびCD4+T細胞を用いて細胞性応答を惹起し、(2)臍帯血由来TFH細胞およびナイーブB細胞を用いて小児期ワクチンに対する抗原特異的抗体応答を惹起することができた。
【0087】
このように、本発明は、2つの特定のnMIMICモデル、nMIMIC 樹状細胞/TセルモデルおよびnMIMIC B細胞/TFH細胞モデル、並びに、抗原に対する哺乳類新生児免疫系の成分の細胞応答についての情報を提供するために、これらのモデルを使用する方法 および、候補ワクチンの評価において使用する方法、として定めることができる。
【0088】
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデル
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルは、本発明の2つのnMIMICモデルのうち第一ものである。このモデルは、主として、臍帯血由来樹状細胞(DCs)および臍帯血CD4+T細胞を含み、例えば、新生児抗原提示およびCD4+T細胞反応についての選択薬剤の効果をアッセイするために、用いることができる。新生児免疫細胞系は未発達であるので、この種のシステムの抗原およびワクチンに対する応答は、少年(juvenile)および大人の免疫系で見られるそれらとは異なることがあり得る。したがって、このモデルは、新生児免疫細胞系の複雑さを研究するばかりではなく、抗原またはワクチンに対する乳幼児であり得そうな応答に関する重要な情報を得るために、用いることができる。
【0089】
最も広い観念において、nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルは、(i)臍帯血由来の樹状細胞(DCs)の集団を調製または取得すること、(ii)選択薬剤に樹状細胞を曝露し、取り込みを可能にすること、(iii)これらの薬剤刺激された樹状細胞を臍帯血CD4+T細胞と共に培養すること、および(iv)細胞応答を評価すること、によって利用される。よって、このモデルの使用により、新生児樹状細胞による薬剤の取り込みおよび提示、薬剤刺激された樹状細胞とCD4+T細胞との間の相互作用、および薬剤刺激された樹状細胞によって活性化されるときのCD4+T細胞の細胞応答などの異種の機能性を研究することができる。
【0090】
nMIMIC 樹状細胞/細胞モデルが多くの異なる態様で用いることができることは容易に明らかであろうが、このモデルは、一般的に、選択薬剤に対する新生児免疫系の細胞の応答をインビトロで評価する方法として特徴づけることができる。しかして、本発明は、選択薬剤に対する細胞応答を評価する方法に関し、当該方法は下記:
(a)選択薬剤を、臍帯血由来の樹状細胞(DCs)を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、前記樹状細胞による前記選択薬剤の取り込みを促進する条件下で細胞培養物を維持し、薬剤刺激された樹状細胞の第1集団を形成し、
(b)(a)で発達させた薬剤刺激された樹状細胞と臍帯血CD4+T細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、T細胞の活性化を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(c)薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を、(b)の細胞培養物に添加し、T細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、ここで、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団は、薬剤刺激された樹状細胞の前記第1集団と同じ方法で調製されており、
(d)T細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/またはT細胞を分析し、それによって選択薬剤に対する細胞応答を評価すること、
を含む。
【0091】
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルは、哺乳類の新生児免疫細胞系の成分に対する活性について選択薬剤(例えば、抗原、ワクチン)をスクリーニングするインビトロでの方法としても特徴づけることもできる。しかして、本発明は、活性について選択薬剤をスクリーニングする方法にも関し、当該方法は下記:
(a)選択薬剤を、臍帯血由来の樹状細胞(DCs)を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、前記樹状細胞による前記選択薬剤の取り込みを促進する条件下で細胞培養物を維持し、薬剤刺激された樹状細胞の第1集団を形成し、
(b)(a)で発生させた薬剤刺激された樹状細胞と臍帯血CD4+T細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、T細胞の活性化を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(c)薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を、(b)の細胞培養物に添加し、T細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、ここで、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団は、薬剤刺激された樹状細胞の前記第1集団と同じ方法で調製されており、
(d)T細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/またはT細胞を分析し、それによって活性について選択薬剤をスクリーニングすること、
を含む。
【0092】
このモデルが使用される場合、他の重要な要因の中でもとりわけ、第1の細胞培養物はある期間は維持され、その期間は培養条件および抗原の同一性に応じて変わる。しかしながら、第1の細胞培養物は、第2の細胞培養物の形成の前に、一般的には、約1から48時間維持される。適切な期間は、第2の細胞培養物の形成の前に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48時間以上、そして、約12~36時間、約15~33時間、約18~30時間、および約21~27時間でありうる。
【0093】
このモデルが使用される場合、同様に、他の重要な要因の中でもとりわけ、第2の細胞培養物はある期間は維持され、その期間は培養条件および抗原の同一性に応じて変わる。しかしながら、第2の細胞培養物は、薬剤刺激された樹状細胞の第2集合を加える前に、一般的には、約1から20日の間にかけて維持される。適切な期間は、薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を添加する前に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日以上、そして、約10~20日、約12~20日、約14~10日、約16~20日、約12~16日、約14~16日、約4~10日、約5~10日、および約6~8日でありうる。
【0094】
このモデルが使用される場合、他の重要な要因の中でもとりわけ、(c)の培養物はある期間は維持され、その期間は培養条件および抗原の同一性に応じて変わる。しかしながら、(c)の培養物は、(d)の分析の前に、一般的には、約1から10時間の間にかけて維持される。適切な期間は、(d)の分析前に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12時間以上、そして、約6~12時間、約8~12時間、約10~12時間、約8~10時間、約2~8時間、約3~7時間、および約4~6時間程度でありうる。
【0095】
このモデルが使用される場合、分析されるT細胞応答は、例えば、サイトカインまたはマーカーの産生でありうる。サイトカインの例としては、以下に限定されるものではないが、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-21、IL-22およびIL-26のうちの1つ以上が挙げられる。マーカーの例としては、以下に限定されるものではないが、CD25、CD26、CD27、CD28、CD30、CD44、CD69、CD71、CD134、およびCD154のうちの1つ以上が挙げられる。
【0096】
当業者は、本発明のこのモデルまたは他のモデルのいずれかで用いられる選択薬剤は、広く様々なものがあり、樹状細胞によって取り込まれ、提示される能力によってのみ限定されると理解するであろう。適切な薬剤は、一般的に、抗原およびワクチンとして定義することができ、それらは更に、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび多糖、ならびにウイルス、ビリオン、細菌、菌類、およびそれらの断片、として定義することができる。
【0097】
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルにおいて使用することができる免疫細胞は、モデルの使用様式に応じて、単一の臍帯血供給源または2つ以上の供給源に由来し得る。したがって、例えば、臍帯血T細胞は、臍帯血由来の樹状細胞に対して自家性(すなわち、同じ生物体由来)、または臍帯血由来の樹状細胞に対して同種異系(すなわち、同じ種の別の生物由来)とすることができる。
【0098】
(b)の培養物中における薬剤刺激された樹状細胞の臍帯血T細胞に対する比は、モデルの使用様式、選択薬剤の同一性、および培養物中に含まれる他の成分などの要因に応じて変えることができる。樹状細胞のT細胞に対する比は、約1:5から約1:100の範囲でありうる。多くの用途において、比は、約1:20から約1:80または約1:30から約1:50の範囲でありうるが、許容可能な範囲は、約1:10~約1:50、約1:20~約1:60、約1:15~約1:35、および約1:30~約1:55でもありうる。
【0099】
同様に、(c)の培養物に添加される、薬剤刺激された樹状細胞の第2集団中の細胞の、臍帯血T細胞に対する、培養物中における比は、モデルの使用様式、選択薬剤の同一性、および培養物中に含まれる他の成分などの要因に応じて変えることができる。樹状細胞のT細胞に対する比は、約1:5から約1:100の範囲でありうる。多くの用途において、比は、約1:5から約1:50または約1:5から約1:15の範囲でありうるが、許容可能な範囲は、約1:5~約1:20、約1:10~約1:25、約1:15~約1:30、および約1:20~約1:40でもありうる。
【0100】
これらの実施形態の側面において、臍帯血由来の樹状細胞は、以下のマーカー:CD14、CD16、CD25、CD80、CD86、およびHLA-DRのうちの1つ以上を発現することとして特徴づけられうる。
【0101】
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルで用いられる臍帯血由来樹状細胞は、モデルの使用と併せて用意することができるか、または、他から、例えば、商業的供給源から、入手することができる。樹状細胞は、活性細胞培養物から得ることができるか、または細胞の冷凍アリコートから調製することができる。本発明の一側面において、臍帯血由来の樹状細胞は、下記:
(a)細胞培養ウェルの下部チャンバーの上に分離可能に吊される当該ウェルの上部チャンバー内に収容されている多孔質膜の上面で内皮細胞を培養し、
(b)(a)の多孔質膜上の内皮細胞に臍帯血単核細胞(CBMCs)を与え、
(c)前記臍帯血単核細胞を与えてから約48時間後に、多孔質膜および内皮細胞を収容している前記上部チャンバーを取り外し、
(d)樹状細胞を前記ウェルの下部チャンバーから分離する、
ことを含む方法によって調製することができる。
【0102】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する上記の方法において、多孔質膜は、ポリカーボネート膜、または、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、もしくはポリエステル(PET)で構成された膜でありうる。多孔質膜は、通常、例えば単球および未発達の樹状などの細胞が通過できる孔を有する。その孔は、直径が約1から15μmの範囲であり、一般的に、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14と15μmとの間であろう。ウェルの上部チャンバー、多孔質膜、およびウェルの下部チャンバーを提供するために、透過性支持体を用いてもよい。そのような透過性支持体の例としては、Corning社のTranswell(登録商標)パーミアブルサポートがある。
【0103】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する方法において、ウェルの下部チャンバーは、細胞外マトリックス(ECM)材料を含みうる。細胞外マトリックス材料は、以下に限定されるものではないが、ゼラチン、コラーゲン、合成細胞外マトリックス材料、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)、天然細胞外マトリックス材料、キトサン、プロトサン(protosan)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニンおよびそれらの混合物から選ばれる材料を含みうる。ウェルの下部チャンバーは、更に、繊維芽細胞、支持細胞、および間質細胞のうちの1つ以上を含みうる。
【0104】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する上記の方法において、内皮細胞は、以下に限定されるものではないが、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)およびヒト体細胞ハイブリッドEA.hy926(ATCC(登録商標)CRL-2922TM;ATCC、マナッサ、バージニア)でありうる。追加の側面において、内皮細胞は、形質転換された内皮細胞系でありうる。
【0105】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する上記の方法において、内皮細胞は、多孔質膜の両面に培養してもよい。更に、内皮細胞は、臍帯血単核細胞を加える前に、コンフルエンシーに達するまで培養してもよい。あるいは、内皮細胞は、臍帯血単核細胞を加える前に、多層細胞増殖に達するまで、培養してもよい。
【0106】
臍帯血由来の樹状細胞を調製する上記の方法において、細胞外マトリックス材料の層は、多孔質膜の上面にあってもよく、内皮細胞は細胞外マトリックス材料層上に培養される。あるいは、細胞外マトリックス材料の層は、多孔質膜の上面および下面にあってもよく、内皮細胞は、細胞外マトリックス材料の両方の層上に培養される。細胞外マトリックス材料は、以下に限定されるものではないが、ゼラチン、コラーゲン、合成細胞外マトリックス材料、PLGA、PGA、天然細胞外マトリックス材料、キトサン、プロトサン(protosan)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン、およびそれらの混合物から選ばれる材料を含みうる。
【0107】
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルが、臍帯血由来の樹状細胞を調製する上記の方法と併せて用いられる場合、 樹状細胞の調製に用いられるウェルの下部チャンバーは、(a)の第1の細胞培養物としての役割を果たしうる。あるいは、(a)の第1の細胞培養物は、樹状細胞が移される別個の培養物とすることもできる。
【0108】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデル
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、本発明の2つのnMIMICモデルのうち第2ものである。このモデルは、臍帯血由来の濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞および臍帯血B細胞を含んでおり、例えば、新生児抗原提示およびB細胞反応についての選択薬剤の効果をアッセイするために用いることができる。nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルと同様に、このモデルもまた、新生児免疫細胞系の複雑さを研究するばかりではなく、抗原またはワクチンに対する乳幼児であり得そうな応答に関する重要な情報を得るために、用いることができる。
【0109】
最も広い観念において、nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、(i)選択薬剤の存在下において臍帯血CD4+T細胞から臍帯血由来TFH細胞の集団を調製すること、(ii)これらのTFH細胞およびナイーブ臍帯血B細胞を含む第2の細胞培養物を調製すること、(iii)追加の薬剤またはその断片を培養物に添加すること、(iv)細胞の応答を評価すること、によって利用される。したがって、このモデルの使用により、TFH細胞の成熟、TFH細胞による薬剤の取り込みおよび提示、薬剤刺激されたTFH細胞とB細胞との相互作用、ならびにTFH細胞およびB細胞の細胞応答などの異種の機能性を研究することができる。
【0110】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルが多くの異なる態様で用いることができることは容易に明らかであろうが、このモデルは、一般的には、選択ワクチンに対する新生児免疫系の細胞の応答を評価するインビトロでの方法として特徴づけることができる。したがって、本発明は、活性についてワクチンをスクリーニングする方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって活性についてワクチンをスクリーニングする、
ことを含む。
【0111】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、インビトロのテストを経てワクチンの潜在的効能を評価する、インビトロでの方法として特徴づけることもできる。したがって、本発明はまた、ワクチンの効能を評価する方法にも関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによってワクチンの効能を評価する、
ことを含む。
【0112】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、更に、インビトロの細胞培養物を用いてワクチンのインビボにおける効能を予測するインビトロでの方法として特徴づけることができる。したがって、本発明はまた、インビトロの細胞培養を用いてワクチンのインビボにおける効能を予測する方法にも関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、細胞応答が見出された場合、前記ワクチンはインビボでの効能を有すると予測する、
ことを含む。
【0113】
加えて、nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルは、抗原の免疫原性を評価するインビトロでの方法として特徴づけることができる。したがって、本発明は、抗原の免疫原性を評価する方法に関し、当該方法は下記:
(a)抗原および1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)前記抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって抗原の免疫原性を評価する、
ことを含む。
【0114】
このモデルが使用される場合、他の重要な要因の中でもとりわけ、第1の細胞培養物はある期間は維持され、その期間は培養条件およびワクチン/抗原の同一性に応じて変わる。しかしながら、一般的には、第1の細胞培養物は約1から20日間維持される。適切な期間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日以上、そして約7~13日、 約8~12日、約9~11日でありうる。
【0115】
このモデルが使われる場合、追加のワクチン/抗原を、1回、2回、3回、またはそれより多く、第1の細胞培養物に添加してもよい。追加のワクチン/抗原は、第1の細胞培養物に添加される最初のワクチン/抗原と同一でもよい。あるいは、追加のワクチン/抗原は、最初のワクチン/抗原が関わるまたは由来するのと同じ病原体または疾患に対する免疫応答を刺激する、異なるワクチン/抗原でありうる。例えば、最初のワクチン/抗原は、特定のウイルスまたは細菌から1つ以上の抗原を含んでいてよく、追加のワクチン/抗原は、同じウイルスまたは細菌から1つ以上の異なる抗原を含んでいてもよい。追加のワクチン/抗原はまた、最初のワクチン/抗原とは異なる処方でもよい。例えば、最初のワクチン/抗原は、アジュバントを用いてもよいし、追加のワクチン/抗原は、アジュバントを用いなくてもよい。特定の一側面において、追加のワクチン/抗原は、少なくとも1回、第1の細胞培養物に添加される。照射を受けたフィーダー細胞を、ワクチン/抗原添加の1回以上の繰り返しの際に、第1の培養物に添加してもよい。照射を受けたフィーダー細胞は、これに限定されるわけではないが、臍帯血単核細胞(CBMCs)でありうる。
【0116】
追加のワクチン/抗原が添加される場合、最初のワクチン/抗原添加後、2、3または4日目に添加されてもよく、および/または、追加のワクチン/抗原は、最初のワクチン/抗原添加後、5、6または7日目に添加される。特定の一側面において、第1の細胞培養物は約8~12日間維持され、追加のワクチン/抗原が、最初のワクチン/抗原添加の後、2、3または4日目のうちの1つの日に添加され、そして、5、6または7日目のうちの1つの日に添加される。
【0117】
このモデルが用いられる場合、(c)に添加される抗原またはワクチン特異的抗原は、(b)の細胞培養物が調製された後まもなく、すなわち、(b)の細胞培養物の調製後、約1、2、3、4、5、または6時間以上以内に、添加される。このモデルで用いられるワクチン特異的抗原の同一性は、ワクチンの同一性に基づいて幅広く変わるであろうが、このような抗原は、通常、ワクチンの一部またはワクチンの構成成分である。(c)に添加される抗原またはワクチン特異的抗原は、(a)に添加される最初のワクチン/抗原と同一でもよい。あるいは、(c)に添加される抗原またはワクチン特異的抗原は、(a)に添加されるワクチン/抗原と異なっていてもよい(すなわち、(a)に添加されるワクチン/抗原中に存在しないものでもよい)。あるいは、(c)に添加される抗原またはワクチン特異的抗原は、(a)に添加されるワクチン/抗原と異なってもよいが、ステップ(a)のワクチン/抗原が関わる同じ病原体または疾患に対して免疫応答を刺激する能力がありうる。例えば、ステップ(a)において添加されたワクチン/抗原は、特定のウイルスまたは細菌からの1つ以上の抗原(例えば多糖)を含んでいてもよく、そして、追加のワクチン/抗原は、同じウイルスまたは細菌と異なる1つ以上の抗原(例えばポリペプチド)を含んでいてもよい。
【0118】
このモデルが使用される場合、他の重要な要因の中でもとりわけ、(c)の培養物もまた、ある期間は維持され、その期間は、培養条件、およびワクチンまたは抗原の同一性に応じて変わる。しかしながら、(c)の培養物は、一般的には、約1から25日間維持される。適切な期間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25日以上、そして、約10~20日、約12~18日、約14~16日、約7~13日、約8~12日、および約9~11日でありうる。
【0119】
これらの実施形態の側面において、IL-21を、(c)の培養物に添加してもよい。添加量は変更してよいが、培地中の最終濃度は、一般的には、約1~500ng/mlの範囲であろう。適切な濃度は、約10~500ng/ml、1~100ng/ml、50~350ng/ml、50~150ng/ml、100~400ng/ml、150~500ng/mlおよび200~500ng/mlでありうる。
【0120】
IL-21が添加される場合、IL-21は以下の1つ以上の時点で添加しうる:(i)抗原またはワクチン特異的抗原が(b)の第2の培養物に添加されるとき、(ii)第2の細胞培養の調製後、2、3または4日目、および(iii)第2の細胞培養物の調製後、5、6または7日目。特定の一側面において、(c)の培養物は、約8~12日、10日間維持され、そして、抗原またはワクチン特異的抗原を添加のうえで、IL-21は、第2の細胞培養物の調製後の2、3または4日目の3日うちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後の5、6または7日目の6日のうちの1つで、添加される。
【0121】
このモデルが使われるときに、細胞応答は、TFH細胞によるサイトカインの産生、TFH細胞によるマーカーの発現、B細胞によるサイトカインの産生、B細胞によるマーカーの発現、および抗原に対する結合特異性を有する抗体またはB細胞によるワクチン特異的抗原の産生、のうちの1つ以上である。サイトカインは、以下に限定されるものではないが、CXCL13、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、IL-17およびIL-21のうちの1つ以上でありうる。マーカーは、以下に限定されるものではないが、CD10、CD19、CD20、CD24、CD27、CD38、CD40、CD86、CD138、IgD、IgG、およびIgMのうちの1つ以上でありうる。
【0122】
当業者は、このモデルにおいて用いうるワクチンまたは抗原は、広く様々なものが可能であり、TFH細胞によって処理され、B細胞に対して提示される能力によってのみ限定されることを理解するであろう。適切なワクチンは、一般的には、不活化、弱毒化、トキソイド、サブユニット、コンジュゲート、結合価および異型のワクチンとして定義することができ、それらは更に、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび多糖、ならびに、ウイルス、ビリオン、細菌および菌類などの微生物およびその断片、および抗原刺激された樹状細胞として定義することができる。
【0123】
このモデルで使用される細胞活性化因子の1つ以上は、以下に制限されるものではないが、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23でありうる。
【0124】
nMIMIC 樹状細胞/TFH細胞モデルにおいて使用することができる免疫細胞は、モデルの使用様式に応じて、単一の臍帯血供給源または2つ以上の供給源に由来し得る。したがって、例えば、臍帯血B細胞は、TFH細胞が由来する臍帯血CD4+Tに対して自家性(すなわち、同じ生物体由来)であり得る。臍帯血B細胞は、臍帯血CD4+T細胞に対して異種(すなわち、異なる種の生物体由来)でさえあり得る。
【0125】
このモデルが用いられる場合、臍帯血B細胞は、臍帯血B細胞を(b)の第2の細胞培養物に添加する前に、CpG2006(ODN 2006;InvivoGen、サンディエゴ、カリフォルニア)で処理してもよい。CpG2006が用いられる場合、B細胞は、(b)の第2の細胞培養物を形成する前に、約1~48時間、濃度約0.1~5μg/mlの活性化因子で処理される。
【0126】
第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、モデルの使用様式、選択薬剤(ワクチンまたは抗原)の同一性、および培養物中に含まれる他の成分などの要因に応じて変えることができる。多くの用途について、比は、約1:1から約1:100の範囲でありうる。
【0127】
このモデルが用いられる場合、第2の細胞培養物は、3次元マトリックス中に形成してもよい。マトリックスは、以下に限定されるものではないが、3D細胞培養のためのハイドロゲルなどのゲルマトリックスでありうる。マトリックスは、1つ以上の細胞外マトリックス成分を含有してもよく、そのようなものには、以下に限定されるものではないが、コラーゲンI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、フィブロネクチン、およびラミニンのうちの1つ以上が含まれる。
【0128】
具体的な一例では、本発明は、インビトロで、活性についてワクチンをスクリーニングする方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチン添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチン添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって、インビトロで、活性についてワクチンをスクリーニングする、
ことを含む。
【0129】
他の例では、本発明は、ワクチンの効能をインビトロで評価する方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチンの添加の後の2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンの添加の後の5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによってワクチンの効能をインビトロで評価する、
ことを含む。
【0130】
更なる一例において、本発明は、インビトロの細胞培養を用いてワクチンのインビボでの効能を予測する方法に関し、当該方法は下記:
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチンの添加の後の2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンの添加の後の5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したTFH細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、TFH細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって、このような抗体が見出される場合、前記ワクチンはインビボで効能を有すると予測する、
ことを含む。
【0131】
これらの例において、照射を受けたフィーダー細胞は、以下に限定されるものではないが、臍帯血単核細胞(CBMCs)でありうる。
【0132】
当業者は、このモデルにおいて用いうるワクチンは、広く様々なものが可能であり、TFH細胞によって処理され、B細胞に提示される能力によってのみ限定されることを理解するであろう。適切なワクチンは、一般的には、不活化、弱毒化、トキソイド、サブユニット、コンジュゲート、結合価および異型のワクチンとして定義することができ、それらは更に、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび多糖、ならびに、ウイルス、ビリオン、細菌および菌類などの微生物、およびそれらの断片、および抗原刺激された樹状細胞として定義することができる。
【0133】
このモデルで用いられるワクチン特異的抗原は、ワクチンの同一性に基づいて幅広く変わるであろうが、このような抗原は、通常、ワクチンの一部またはワクチンの構成成分である。
【0134】
臍帯血B細胞は、臍帯血B細胞を第2の細胞培養物に添加する前に、CpG2006で処理してもよい。CpG2006が用いられる場合、B細胞は、(b)の第2の細胞培養物を形成する前に、約1~48時間、濃度約0.1~5μg/mlの活性化因子で処理される。
【0135】
マトリックスは、以下に限定されるものではないが、3D細胞培養のためのハイドロゲルなどのゲルマトリックススでありうる。
【0136】
両方のモデルに適用できる全般的特徴
本発明の各実施形態および側面において、サイトカイン、マーカーおよび他の因子の産生および/または存在についての上清および細胞培養培地の分析は、当業者によく知られ理解されている手段によって実施することができ、以下に限定されるものではないが、そのようなものには、サイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル(例えば、ミリポアのMILLIPLEXマップTMキット)、ELISAまたはMSD(mesoscal scale discovery)マルチ・アレイ技術が含まれる。
【0137】
本発明の各実施形態および側面において、サイトカイン、細胞表面マーカーおよび他の因子の産生および/または発現についての細胞(例えばTFH細胞、T細胞およびB細胞)の分析は、当業者によく知られ理解されている手段によって実施することができ、そのようなものには、以下に限定されるものではないが、特異性をもって選択される分子に結合する1つ以上の抗体を用いるフローサイトメトリーが含まれる。
【0138】
本発明の各実施形態および側面において、細胞抗体産生についての上清および細胞培養培地の分析は、当業者によく知られ理解されている手段によって実施することができ、そのようなものには、以下に限定されるものではないが、磁気ビーズパネル、ELISA、またはMSDマルチ・アレイ技術が含まれる。同様に、本発明の各実施形態および側面において、細胞抗体産生についてのB細胞の分析は、当業者によく知られ理解されている手段によって実施することができ、そのようなものには、以下に限定されるものではないが、磁気ビーズパネル、ELISA、またはMSDマルチ・アレイ技術が含まれる。
【0139】
本発明の各実施形態および側面において、細胞応答(例えばTFH細胞、T細胞および/またはB細胞の応答)を促進する培養条件としては、インビトロでの免疫細胞の培養に通常関連した培養条件(例えば、5%CO2、95%相対湿度、および37℃)が含まれる。
【0140】
本発明の各実施形態および側面において、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞の発達を促進する条件としては、免疫細胞の培養に通常関連した培養条件(例えば、5%CO2、95%相対湿度、および37℃)が含まれる。
【0141】
本発明の各実施形態および側面において、臍帯血細胞の供給源は、ヒト、ヒト以外の霊長類、トリ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、コンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコまたは齧歯動物)、または他の哺乳でありうる。
【0142】
III. 実施例
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデル
nMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルの使用について、図1を示しつつ、以下に詳述する。
【0143】
末梢組織等価(PTE)法を用いて、ヒトの臍帯血樹状細胞を、内皮細胞層(ヒト体細胞ハイブリッドEA.hy926細胞)を含むトランスウェル・システム(transwell system)で生成した。0日目に、EA.hy926細胞を、孔直径約1~15μmの24ウェルトランスウェルインサート(transwell insert)に20%FCS(ウシ胎仔血清)を含むM199培地中に、1×104から1×105細胞の密度で、プレーティングした。6日目に、M199培地を、無血清培地で置換した。7日目に、臍帯血単球(CBMCs)を集め、無血清培養物中に1×106から50×106細胞で、EA.hy926層を含む24ウェルトランスウェルインサート上にプレーティングした。樹状細胞がこの層を通って移動するにつれて、それらは抗原を提示する能力を有する成熟細胞に分化した。
【0144】
同じく7日目に、24ウェルトランスウェルにプレーティングされたEA.hy926の第2のセットを、20%FCSを含むM199培地中に用意し、7日間培養し、13日目に無血清培地に培地交換した。
【0145】
8日目に、臍帯血単核細胞を加えた培養物のトランスウェルインサートを取り出し、0日目に調製したEA.hy926細胞を重層した新鮮なトランスウェルと交換した。この時点で、樹状細胞はトランスウェルを通って24ウェル皿の一番下に移動しており、まだトランスウェルインサートに存在する他の細胞タイプは取り除かれる。続いて、実験用培養物は所定濃度の対象とする抗原で処理する一方、コントロール培養物はビヒクル単独に受けた。この実験では、選択抗原は、ヘモフィルスb破傷風トキソイドコンジュゲートワクチン(Haemophilus b tetanus toxoid conjugate vaccine:Hib-TT(サノフィ パスツール))とした。
【0146】
9日目に、抗原の存在および非存在において処理された樹状細胞を採取し、単離された臍帯血CD4+T細胞と共に1:5から1:100の間の比(樹状細胞:T細胞)で共培養し、7日間インキュベートした。臍帯血CD4+T細胞は、磁気ビーズ分離によるネガティブセレクションを使用して分離した。14日目に、臍帯血単核細胞を、第2セットのEA.hy926トランスウェルプレート(7日目に調製)に一晩添加し、抗原処理を、上記のように新鮮なEA.hy926トランスウェルと交換した後の15日目に加えた。
【0147】
16日目に、第1の樹状細胞/CD4+T細胞共培養物を集め、第2の共培養物を、処理および無処置のトランスウェルで生成した樹状細胞の第2のセットを用いて調製した。第1の樹状細胞/CD4+T細胞共培養物を、5×104から1×106の間でプレーティングし、採取した樹状細胞の第2のセットを5×103から1×105の間でプレーティングした。トランスウェルで生成した樹状細胞の第2のセットを、フローサイトメトリーによる細胞内のサイトカイン分析の前に、2から10時間にわたり再刺激した。
【0148】
細胞内サイトカインの染色を行い、抗原に応答したTh1(IFN、TNFα、IL-2)およびTh2(IL-4、IL-6、IL-10、IL-13)サイトカインサブセットの両方の蓄積をフローサイトメトリーよって分析した。フローサイトメトリーには、青色、赤色および紫色レーザーを有するBD Fortessa(登録商標)サイトメーター、BD FACSDiva(登録商標)ソフトウェア、CD4+T細胞分析のために以下のパネルを使用した。
【表1】
【0149】
分析により、Hib-TTを有するnMIMIC 樹状細胞/T細胞モデルの刺激が新生児の抗原特異的CD4+T細胞の活性化に導くことが示された。図2に示すように、複数の細胞内のサイトカインが、nMIMIC T細胞アッセイにおいてHib-TTに応答して増加したことが、フローサイトメトリーを介してアッセイされた。抗原処理された樹状細胞を受け取った臍帯血T細胞を7日間共培養し、細胞内サイトカイン分析の前に、一方を標的樹状細胞で再刺激し、他方は再刺激しなかった。各着色した一対のうち2本目のバーは、Hib-TTで刺激および再刺激されて培養されたものを示す。
【0150】
図3に示すように、IFN、TNFα、IL-2、IL-21、IL-17、IL-13、IL-6およびIL-8の産生もまた増加したことが、フローサイトメトリーを介してアッセイされた。図3において、各バーの上の%は、刺激指数(SI)またはバックグラウンドに対する倍率変化(fold change)が≧1.5であったドナーの数を表す。複数の細胞内のサイトカインが、SIによって示されるように、モデル中のHib-TTに応答して増加することが見出された。これらの結果は、フローサイトメトリーを介したサイトカイン評価によって実証されたように、Th1(TNFαおよびIL-8)、Th2(IL-13、IL-6)、ならびにTh17(IL-17)の応答が現れ、Hib-TTによる刺激に応答して、臍帯血CD4+T細胞が活性化したことを示す。
【0151】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデル
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルの使用について、図4を示しつつ、以下に詳述する。
【0152】
0日目に、ヒト臍帯血単球(CBMCs)を集め、無血清培養培地中1×106から50×106細胞で、24ウェル培養プレートのウェルにプレーティングした。ウェルの第1グループは、選択抗原(濃度は選択抗原用に最適化)、抗CD28抗体(0.1μg/mlから10μg/ml)、IL-6(1ng/mlから500ng/ml)、IL-12(1ng/mlから500ng/ml)およびを含むTFH分化カクテルで処理された。ウェルの第2グループは、後のステップでフィーダー細胞として供するため、未処理のままにされた。細胞の第3グループは、ネガティブコントロールとするために、未処理のままとした。選択ワクチンは、髄膜炎菌性多糖体A、C、YおよびW型-135ジフテリアコンジュゲートワクチン(MenACYW-DT:meningococcal polysaccharide groups A, C, Y and W-135 diphtheria conjugate vaccine(サノフィ パスツール)およびHib-TT(コントロール)であった。
【0153】
3日目に、臍帯血単核細胞を、選択したウェルから、強いピペッティングおよび/または細胞を擦過することによってコニカルチューブに採取し、続いて無血清培地でリンスした。CD4+T細胞は、ネガティブセレクションを用いて磁気ビーズ分離によって集められた臍帯血単核細胞から分離した。続いて、CD4+T細胞を、96ウェル培養プレートの各ウェルにつき、1×105から10×106細胞の濃度で、無血清培養培地にプレーティングした。1×104から5×105の照射を受けた臍帯血単核細胞フィーダー細胞および追加のTFH分化カクテルを、選択したウェルに添加した。
【0154】
6日目、照射を受けたフィーダー細胞(1×103~1×105)およびTFH分化カクテルを、追加で、選択したウェルに添加した。
【0155】
10日目に、TFHをウェルから採取し、1×104から5×105細胞を、1×105から10×106の単離された臍帯血B細胞(ネガティブ磁気ビーズ選択)と共に、3D細胞培養用のハイドロゲル中で、共培養した。TFH細胞のB細胞に対する共培養比は、1:1から1:100の範囲に調製した。TFH分化カクテルに存在した同じ抗原を、TFH細胞/B細胞共培養物に添加した。
【0156】
12日目に、TFH細胞/B細胞共培養物に、IL-21を添加した(1ng/ml~500ng/ml)。14日目に、IL-21を、TFH細胞/B細胞共培養物に、再び添加した。
【0157】
20日目に、B細胞を培養物から採取し、培養培地を集めた。IgMおよびIgG抗原特異的抗体産生について、4つすべての髄膜炎菌性血清型抗原(A、C、Y、W-135)がコーティングされたメソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery)96ウェルプレートを用いて分析した。メソスケールディスカバリーのIgMおよびIgG二次抗体を、上清中の抗体を検出するために用いた。
【0158】
分析により、MenACYW-DT誘導抗体応答(MenACYW-DT-induced antibody responses)を、nMIMIC B細胞/TFHモデルを用いて発生させることができることが実証された。図5に示されるように、4つすべての髄膜炎菌性血清型(A、C、Y、W-135)に対するMenACYW-DT誘導抗原特異的IgM抗体応答(MenACYW-DT-induced antigen-specific IgM antibody responses)が、数人のドナーにおいて観察された。バックグランドに対する倍率変化の増加が、図5に示される。
【0159】
図6に示された結果は、数人のドナーが血清型Cについてのバックグランドに対する倍率変化の増加を示し、nMIMIC B細胞/TFHモデルが、髄膜炎菌の各血清型に対するMenACYW-DT誘導抗原特異的IgG抗体応答を示すためにも使用できることを実証している。
【0160】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデル - デング熱
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルの使用について、図4を示しつつ、以下に詳述する。
【0161】
0日目に、ヒト臍帯血単球(CBMCs)を集め、無血清培養培地中1×106から50×106細胞で、24ウェル培養プレートのウェルにプレーティングした。ウェルの第1グループは、選択抗原(濃度は選択抗原によって最適化)、抗CD28抗体(0.1μg/mlから10μg/ml)、IL-6(1ng/mlから50ng/ml)およびIL-12(1ng/mlから500ng/ml)を含むTFH分化カクテルで処理した。ウェルの第2グループは、後のステップでフィーダー細胞として供するため、未処理のままとした。細胞の第3グループは、ネガティブコントロールとするために、未処理のままとした。選択ワクチンは、血清型1、2、3および4(サノフィ パスツール)およびHib-TT(コントロール)からなるデング熱ウイルスワクチンであった。
【0162】
3日目に、臍帯血単核細胞を、選択したウェルから強力なピペッティングおよび/または穏やかな擦過によってコニカルチューブに採取し、続いて、無血清培養培地でリンスした。CD4+T細胞は、ネガティブセレクションを用いて磁気ビーズ分離によって採取された臍帯血単核細胞から分離した。続いて、CD4+T細胞を、96ウェル培養プレートの各ウェルにつき、1×105から10×106細胞の濃度で、無血清培養培地にプレーティングした。1×104から5×105の照射を受けた臍帯血単核細胞フィーダー細胞および追加のTFH分化カクテルを、選択したウェルに添加した。
【0163】
6日目、照射を受けたフィーダー細胞(1×103~1×105)およびTFH分化カクテルを、追加で、選択したウェルに添加した。
【0164】
10日目に、TFHをウェルから採取し、1×104から5×105細胞を、1×105から10×106の単離された臍帯血B細胞(ネガティブ磁気ビーズ選択)と共に、3D細胞培養用のハイドロゲル中で、共培養した。TFH細胞のB細胞に対する共培養比は、1:1から1:100の範囲に調製した。TFH分化カクテルに存在した同じ抗原を、TFH細胞/B細胞共培養に添加した。
【0165】
12日目に、TFH細胞/B細胞共培養物に、IL-21を添加した(1ng/ml~500ng/ml)。14日目に、IL-21を、TFH細胞/B細胞共培養物に、再び添加した。
【0166】
20日目に、B細胞を培養物から採取し、培養培地を集めた。IgMおよびIgG抗原特異的抗体産生について、4つすべてのデング熱血清型抗原(1、2、3、および4)がコーティングされたメソスケールディスカバリー96ウェルプレートを用いて分析した。メソスケールディスカバリーのIgMおよびIgG二次抗体を、上清中の抗体を検出するために用いた。
【0167】
分析により、デング熱ウイルス誘導抗体応答(Dengue Virus-induced antibody responses)を、nMIMIC B細胞/TFHモデルを用いて生じさせることができることが実証された。図7に示されるように、4つすべてのデング熱血清型(1、2、3および4)に対するデング熱ウイルス誘発抗原特異的IgM抗体応答(Dengue Virus-induced antigen-specific IgM antibody responses)が、数名のドナーで観察された。バックグラウンドに対する倍率変化の増加を、図7に示す。
【0168】
図7に示された結果は、数人のドナーが血清型についてのバックグランドに対して倍率変化の増加を示し、nMIMIC B細胞/ TFHモデルは、デング熱の各血清型に対するデング熱ウイルス誘導抗原特異的IgM抗体応答を示すためにも使用できることを実証している。
【0169】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデル - 黄熱ワクチン
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルの使用について、図4を示しつつ、以下に詳述する。
【0170】
0日目に、ヒト臍帯血単球(CBMCs)を集め、無血清培養培地中1×106から50×106細胞で、24ウェル培養プレートのウェルにプレーティングした。ウェルの第1グループは、ウェルの第1グループは、選択抗原(濃度は選択抗原用に最適化)、抗CD28抗体(0.1μg/mlから10μg/ml)、IL-6(1ng/mlから50ng/ml)およびIL-12(1ng/mlから500ng/ml)を含むTFH分化カクテルで処理された。ウェルの第2グループは、後のステップでフィーダー細胞として供するため、未処理のままとした。細胞の第3グループは、ネガティブコントロールとするために、未処理のままとした。選択ワクチンは、17D黄熱ウイルスワクチン(サノフィ パスツール)およびデング熱ワクチン(コントロール)であった。
【0171】
3日目に、臍帯血単核細胞を、選択したウェルから強いピペッティングおよび/または細胞を擦過することによってコニカルチューブに採取し、続いて無血清培地でリンスした。CD4+T細胞は、ネガティブセレクションを用いて、磁気ビーズ分離によって採取された臍帯血単核細胞から分離した。続いて、CD4+T細胞を、96ウェル培養プレートの各ウェルにつき、1×105から10×106細胞の濃度で、無血清培養培地にプレーティングした。1×104から5×105の照射を受けた臍帯血単核細胞フィーダー細胞および追加のTFH分化カクテルを、選択したウェルに添加した。
【0172】
6日目、照射を受けたフィーダー細胞(1×103~1×105)およびTFH分化カクテルを、追加で、選択したウェルに添加した。
【0173】
10日目に、TFHをウェルから採取し、1×104から5×105細胞を、1×105から10×106の単離された臍帯血B細胞(ネガティブ磁気ビーズ選択)と共に、3D細胞培養用のハイドロゲル中で、共培養した。TFH細胞のB細胞に対する共培養比は、1:1から1:100の範囲に調製した。TFH分化カクテルに存在した同じ抗原を、TFH細胞/B細胞共培養に添加した。
【0174】
12日目に、TFH細胞/B細胞共培養物に、IL-21を添加した(1ng/ml~500ng/ml)。14日目に、IL-21を、TFH細胞/B細胞共培養物に、再び添加した。
【0175】
20日目に、B細胞を培養物から採取し、培養培地を集めた。IgMおよびIgG抗原特異的抗体産生について、17D黄熱ウイルスワクチンでコーティングしたメソスケールディスカバリー96ウェルプレートを使用して分析した。メソスケールディスカバリーのIgMおよびIgG二次抗体を、上清中の抗体を検出するために用いた。
【0176】
分析により、17D黄熱ウイルスワクチン誘導抗体応答(17D Yellow fever virus vaccine-induced antibody responses)を、nMIMIC B細胞/TFHモデルを用いて生じさせることができることが実証された。図8に見られるように、17D黄熱ウイルスワクチン誘導抗原特異的IgM抗体応答(17D Yellow fever virus vaccine-induced antigen-specific IgM antibody responses)が、数人のドナーにおいて観察された。バックグラウンドに対する倍率変化の増加を、図8の右に示す。
【0177】
図8に示された結果は、数人のドナーが血清型についてのバックグランドに対して倍率変化の増加を示し、nMIMIC B細胞/TFHモデルは、17D黄熱ウイルスワクチン誘導抗原特異的IgM抗体のワクチンに対する応答を示すためにも使用できることを実証している。
【0178】
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデル - 髄膜炎菌性ワクチン
nMIMIC B細胞/TFH細胞モデルの使用について、図4を示しつつ、以下に詳述する。
【0179】
0日目に、ヒト臍帯血単球(CBMCs)を集め、無血清培養培地中1×106から50×106細胞で、24ウェル培養プレートのウェルにプレーティングした。ウェルの第1グループは、選択抗原(濃度は選択抗原用に最適化)、抗CD28抗体(0.1μg/mlから10μg/ml)、IL-6(1ng/mlから50ng/ml)およびIL-12(1ng/mlから500ng/ml)を含むTFH分化カクテルで処理された。ウェルの第2グループは、後のステップでフィーダー細胞として供するため、未処理のままとした。細胞の第3グループは、ネガティブコントロールとするために、未処理のままとした。選択ワクチンは、髄膜炎菌性多糖体A、C、YおよびW型-135ジフテリアコンジュゲートワクチン(MenACYW-DT)およびA、C、YおよびW型-135破傷風トキソイドコンジュゲートワクチンおよびHib-TTで(コントロール)あった。
【0180】
3日目に、臍帯血単核細胞を、選択したウェルから強いピペッティングおよび/または細胞を擦過することによってコニカルチューブに採取し、続いて無血清培地でリンスした。CD4+T細胞は、ネガティブセレクションを用いて磁気ビーズ分離によって採取された臍帯血単核細胞から分離した。続いて、CD4+T細胞を、96ウェル培養プレートの各ウェルにつき、1×105から10×106細胞の濃度で、無血清培養培地中にプレーティングした。1×104から5×105の照射を受けた臍帯血単核細胞フィーダー細胞および追加のTFH分化カクテルを、選択したウェルに添加した。
【0181】
6日目、照射を受けたフィーダー細胞(1×103~1×105)およびTFH分化カクテルを、追加で、選択したウェルに添加した。
【0182】
10日目に、TFHをウェルから採取し、1×104から5×105細胞を、1×105から10×106の単離された臍帯血B細胞(ネガティブ磁気ビーズ選択)と共に、3D細胞培養用のハイドロゲル中で、共培養した。TFH細胞のB細胞に対する共培養比は、1:1から1:100の範囲に調製した。TFH分化カクテルに存在した同じ抗原を、TFH細胞/B細胞共培養に添加した。
【0183】
12日目に、TFH細胞/B細胞共培養物に、IL-21を添加した(1ng/ml~500ng/ml)。14日目に、IL-21を、TFH細胞/B細胞共培養物に、再び添加した。
【0184】
20日目に、B細胞を培養物から採取し、培養培地を集めた。IgMおよびIgG抗原特異的抗体産生について、4つすべての髄膜炎菌性血清型抗原(A、C、Y、W-135)がコーティングされたメソスケールディスカバリー96ウェルプレートを用いて分析した。メソスケールディスカバリーのIgMおよびIgG二次抗体を、上清中の抗体を検出するために用いた。
【0185】
分析により、MenACYW-DTおよびTTによって誘導された抗体応答を、nMIMIC B細胞/TFHモデルを用いて生じさせることができることが実証された。図9に示されるように、4つすべての髄膜炎菌性血清型(A、C、Y、W-135)に対するMenACYW-DTおよびTTによって誘導された抗原特異的IgM抗体応答が、数人のドナーにおいて観察された。バックグラウンドに対する倍率変化の増加を、図9に示す。図10もまた、これらのワクチンがIgM抗体についてのほとんどの血清型に対して1.5を超える刺激指数(SI)を示したことを実証している。
【0186】
図11は、MenACYW-DTおよびTTの4つの血清型すべてが、我々とは関係のない非髄膜炎菌Act-HIBコントロールに対して、ポジティブ抗体、nMIMIC中の臍帯血ドナーのIgG応答を示すことを示す。図12は、IgG抗体データの刺激指数(SI)を示す。
【0187】
図9~12に示された結果は、数人のドナーがバックグランドに対して倍率変化の増加を示し、nMIMIC B細胞/TFHモデルが、各血清型に対し、MenACYW-DTおよびMenACYW-TTワクチン誘導抗原特異的IgGおよびIgM抗体応答を示すためにも使用できることを実証している。
【0188】
本発明について、特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることは、当業者にとって明らかである。特許請求の範囲は、ここに記述した特定の実施形態に限定されない。
<付記事項>
[付記事項1]
選択薬剤に対する細胞応答を評価する方法であって、
(a)選択薬剤を、臍帯血由来の樹状細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、前記樹状細胞による前記選択薬剤の取り込みを促進する条件下で細胞培養物を維持し、薬剤刺激された樹状細胞の第1集団を形成し、
(b)(a)で発達させた薬剤刺激された樹状細胞と臍帯血CD4+T細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、T細胞の活性化を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(c)薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を、(b)の細胞培養物に添加し、T細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、ここで、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団は、薬剤刺激された樹状細胞の前記第1集団と同じ方法で調製されており、
(d)T細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/またはT細胞を分析し、それによって選択薬剤に対する細胞応答を評価する、
ことを含む、前記方法。
[付記事項2]
活性について選択薬剤をスクリーニングする方法であって、
(a)選択薬剤を、臍帯血由来の樹状細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、前記樹状細胞による前記選択薬剤の取り込みを促進する条件下で細胞培養物を維持し、薬剤刺激された樹状細胞の第1集団を形成し、
(b)(a)で発生させた薬剤刺激された樹状細胞と臍帯血CD4+T細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、T細胞の活性化を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(c)薬剤刺激された樹状細胞の第2集団を、(b)の細胞培養物に添加し、T細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、ここで、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団は、薬剤刺激された樹状細胞の前記第1集団と同じ方法で調製されており、
(d)T細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/またはT細胞を分析し、それによって活性について選択薬剤をスクリーニングする、
ことを含む、前記方法。
[付記事項3]
前記第1の細胞培養物が、前記第2の細胞培養物の形成の前に、約12~36時間維持される、付記事項1または2に記載の方法。
[付記事項4]
前記第2の細胞培養物が、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団が添加される前に、約5~10日間維持される、付記事項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項5]
前記(c)の培養物が、(d)の分析の前に、約2~8時間維持される、付記事項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項6]
前記T細胞応答は、サイトカインまたはマーカーの産生である、付記事項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項7]
前記サイトカインが、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-21、IL-22、およびIL-26のうちの1つ以上である、付記事項6に記載の方法。
[付記事項8]
前記マーカーが、CD25、CD26、CD27、CD28、CD30、CD44、CD69、CD71、CD134、およびCD154のうちの1つ以上である、付記事項6に記載の方法。
[付記事項9]
前記選択薬剤が、抗原、ワクチン、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌、真菌、または、それらの断片である、付記事項1~8のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項10]
前記臍帯血T細胞が、前記臍帯血由来の樹状細胞に対して自家性である、付記事項1~9のいずれ一項に記載の方法。
[付記事項11]
前記(b)の培養物における、薬剤刺激された樹状細胞の臍帯血T細胞に対する比が、約1:5から約1:100の範囲である、付記事項1~10のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項12]
前記(c)の培養物に添加される、薬剤刺激された樹状細胞の前記第2集団の、臍帯血T細胞に対する比が、約1:5から約1:100の範囲である、付記事項1~11のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項13]
前記樹状細胞が、以下のマーカー:CD14、CD16、CD25、CD80、CD86、およびHLA-DRのうちの1つ以上を発現する、付記事項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項14]
前記臍帯血由来の樹状細胞が、
(a)細胞培養ウェルの下部チャンバーの上に分離可能に吊される当該ウェルの上部チャンバー内に収容されている多孔質膜の上面で内皮細胞を培養し、
(b)(a)の多孔質膜上の内皮細胞に臍帯血単核細胞を与え、
(c)前記臍帯血単核細胞を与えてから約48時間後に、多孔性膜および内皮細胞を収容している前記上部チャンバーを取り外し、
(d)樹状細胞を前記ウェルの下部チャンバーから分離する、
ことを含む方法によって調製される、付記事項1~13のいずれか一項の方法。
[付記事項15]
前記多孔質膜が、ポリカーボネート膜である、付記事項12に記載の方法。
[付記事項16]
前記多孔質膜は、大きさ約1~15μmの範囲の穴を有する、付記事項14または15に記載の方法。
[付記事項17]
膜支持体が、前記ウェルの上部チャンバー、前記ポリカーボネート膜、および前記ウェルの下部チャンバーを提供することに用いられる、付記事項14~16のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項18]
前記ウェルの下部チャンバーが、細胞外マトリックス材料を含む、付記事項14~17のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項19]
前記細胞外マトリックス材料が、ゼラチン、コラーゲン、合成細胞外マトリックス材料、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、ポリグリコール酸、天然細胞外マトリックス材料、キトサン、プロトサン(protosan)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる材料を含む、付記事項18に記載の方法。
[付記事項20]
前記ウェルの下部チャンバーが、繊維芽細胞、支持体細胞、および間質細胞を更に含む、付記事項14~19のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項21]
前記(a)の第1の細胞培養物が、前記ウェルの下部チャンバーである、付記事項14~20のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項22]
前記内皮細胞が、ヒト臍帯静脈内皮細胞またはヒト体細胞ハイブリッドEA.hy926である、付記事項14~21のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項23]
前記内皮細胞が、形質転換された内皮細胞系である、付記事項14~22のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項24]
内皮細胞が、前記多孔質膜の両面に培養される、付記事項14~23のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項25]
前記内皮細胞が、前記臍帯血単核細胞を加える前に、コンフルエンシーに達するまで培養される、付記事項14~24のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項26]
前記内皮細胞が、前記臍帯血単核細胞を加える前であって、多層細胞発育に達成するまで、培養される、付記事項14~25のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項27]
細胞外マトリックス材料の層が前記多孔質膜の上面にあって、前記内皮細胞が前記細胞外マトリックス材料層上で培養される、付記事項14~26のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項28]
細胞外マトリックス材料の層が前記多孔質膜の上面および下面にあって、前記内皮細胞が細胞外マトリックス材料層の両方の層に培養される、付記事項14~26のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項29]
前記細胞外マトリックスが、ゼラチン、コラーゲン、合成細胞外マトリックス材料、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、ポリグリコール酸、天然細胞外マトリックス材料、キトサン、プロトサン(protosan)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる材料を含む、付記事項27または28に記載の方法。
[付記事項30]
活性についてワクチンをスクリーニング方法であって、
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(T FH )細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したT FH 細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって活性についてワクチンをスクリーニングする、
ことを含む、前記方法。
[付記事項31]
ワクチンの効能を評価する方法であって、
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(T FH )細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したT FH 細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによってワクチンの効能を評価する、
ことを含む、前記方法。
[付記事項32]
インビトロの細胞培養を用いてワクチンのインビボでの効能を予測する方法であって、
(a)ワクチンおよび1つ以上の細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1のインビトロ細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(T FH )細胞の発達を促進する条件下で細胞培養物を維持し、
(b)(a)で発達したT FH 細胞と臍帯血B細胞とを含む第2のインビトロ細胞培養物を形成し、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で培養物を維持し、
(d)細胞応答について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、細胞応答が見出された場合、前記ワクチンはインビボでの効能を有すると予測する、
ことを含む、前記方法。
[付記事項33]
前記第1の細胞培養物が、約8~12日間維持される、付記事項30~32のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項34]
追加ワクチンが、少なくとも1回、第1の細胞培養物に添加される、付記事項30~33のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項35]
前記第1の細胞培養物が、約8~12日間維持され、追加ワクチンが、最初のワクチンの添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンの添加後5、6または7日目のうちの1つに添加される、付記事項30~34のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項36]
照射を受けたフィーダー細胞が、ワクチン添加の1回以上の繰り返しの際に、第1の培養物に添加される、付記事項34または35に記載の方法。
[付記事項37]
前記照射を受けたフィーダー細胞が、無血清培地で成長した臍帯血単核細胞である、付記事項36に記載の方法。
[付記事項38]
前記(c)の培養物が、約8~12日間維持される、付記事項30~37のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項39]
IL-21が、(c)の培養物に添加される、付記事項30~38のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項40]
前記(c)の培養物が、約1~25日間維持され、第2の細胞培養物に対するワクチン特異的抗原を添加のうえで、IL-21が、第2の細胞培養物の調製後の2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後の5、6または7日目のうちの1つに、添加される、付記事項30~39のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項41]
前記細胞応答は、T FH 細胞によるサイトカインの産生、T FH 細胞によるマーカーの発現、B細胞によるサイトカインの産生、B細胞によるマーカーの発現、およびB細胞によるワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生のうちの1つ以上である、付記事項30~40のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項42]
前記サイトカインが、CXCL13、TNFα、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、IL-17、またはIL-21のうちの1つ以上である、付記事項41に記載の方法。
[付記事項43]
前記マーカーが、CD10、CD19、CD20、CD24、CD27、CD38、CD40、CD86、CD138、IgD、IgG、およびIgMのうちの1つ以上である、付記事項41に記載の方法。
[付記事項44]
前記ワクチンが、不活化、弱毒化、トキソイド、サブユニット、コンジュゲート、結合価および異型のワクチン、またはタンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌、菌類、またはそれらの断片、または抗原刺激された樹状細胞である、付記事項40~43のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項45]
前記ワクチン特異的抗原が、ワクチンの一部またはワクチンの構成成分である、付記事項40~44のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項46]
前記1つ以上の細胞活性化因子が、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23からなる群から選ばれる、付記事項40~45のいずれか一項である方法。
[付記事項47]
前記臍帯血B細胞が、臍帯血CD4+T細胞に対して自家性である、付記事項40~46のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項48]
前記臍帯血B細胞が、第2の細胞培養物に臍帯血B細胞の添加する前に、CpG2006で処理される、付記事項40~47のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項49]
前記第2の細胞培養物中における、T FH 細胞の臍帯血B細胞に対する比が、約1:1から約1:100の範囲である、付記事項40~48のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項50]
前記第2の細胞培養物が、3次元マトリックスに形成される、付記事項40~49のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項51]
前記マトリックスが、ゲルマトリックスである、付記事項50に記載の方法。
[付記事項52]
活性についてワクチンをスクリーニングする方法であって、
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(T FH )細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチンの添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンの添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したT FH 細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、T FH 細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって活性についてワクチンをスクリーニングする、
ことを含む、前記方法。
[付記事項53]
ワクチンの効能を評価する方法であって、
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(T FH )細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチンの添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチンの添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したT FH 細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、第2の細胞培養物中における、T FH 細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによってワクチンの効能を評価する、
ことを含む、前記方法。
[付記事項54]
インビトロの細胞培養を用いてワクチンのインビボでの効能を予測する方法であって、
(a)ワクチンおよび細胞活性化因子を、臍帯血CD4+T細胞を含む第1の細胞培養物に添加し、ワクチン特異的濾胞性ヘルパーT(T FH )細胞の発達を促進する条件下で、約8~12日間、細胞培養物を維持し、
ここで、前記細胞活性化因子は、抗CD28抗体、IL-2、IL-6、IL-12、IL-21、およびIL-23のうちの1つ以上であり、
ここで、照射を受けたフィーダー細胞および追加ワクチンを、最初のワクチン添加後2、3または4日目のうちの1つ、および、最初のワクチン添加後5、6または7日目のうちの1つに添加し、
(b)(a)で発達したT FH 細胞と自家性臍帯血B細胞とを含む第2の細胞培養物を3次元マトリックス中で形成し、
ここで、前記第2の細胞培養物中における、T FH 細胞の臍帯血B細胞に対する比は、約1:1から約1:100までの範囲であり、
(c)ワクチン特異的抗原を、(b)の細胞培養物に添加し、細胞応答を促進する条件下で、約1~25日間、培養物を維持し、
ここで、前記抗原を添加のうえで、IL-21を、第2の細胞培養物の調製後2、3または4日目のうちの1つ、および、第2の細胞培養物の調製後5、6または7日目のうちの1つに、(b)の細胞培養物に添加し、
(d)前記B細胞による、前記ワクチン特異的抗原に対する結合特異性を有する抗体の産生について、(c)の細胞培養物からの上清および/または細胞を分析し、それによって、このような抗体が見出される場合、前記ワクチンはインビボで効能を有すると予測する、
ことを含む、前記方法。
[付記事項55]
前記照射を受けたフィーダー細胞が、無血清培地で成長した臍帯血単核細胞である、付記事項52~54のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項56]
前記ワクチンが、不活化、弱毒化、トキソイド、サブユニット、コンジュゲート、結合価および異型のワクチン、またはタンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、ウイルス、ビリオン、細菌、菌類、またはそれらの断片、または抗原刺激された樹状細胞、である、付記事項52~55のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項57]
前記ワクチンに特異的な抗原が、ワクチンの一部またはワクチンの構成成分である、付記事項52~56のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項58]
前記臍帯血B細胞が、第2の細胞培養物に臍帯血B細胞の添加する前に、CpG2006で処理される、付記事項52~57のいずれか一項に記載の方法。
[付記事項59]
前記マトリックスが、ゲルマトリックスである、付記事項52~58のいずれか一項に記載の方法。



図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12