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特許7274556炭化タンタルコーティング炭素材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】炭化タンタルコーティング炭素材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/87 20060101AFI20230509BHJP
   C04B 35/52 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C04B41/87 U
C04B41/87 G
C04B35/52
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021195277
(22)【出願日】2021-12-01
(65)【公開番号】P2022087846
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0165748
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519053658
【氏名又は名称】トカイ カーボン コリア カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】チョ ドンワン
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248060(JP,A)
【文献】特開2006-348388(JP,A)
【文献】特開2020-109049(JP,A)
【文献】特表2019-515128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/87
C04B 35/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素基材と、
前記炭素基材上に形成された炭化タンタルコーティング層と、を含み、
前記炭化タンタルコーティング層に含まれている最大マイクロクラックの幅は、1.5μm~2.6μmであり、
前記炭素基材は表面気孔を含み、
炭素基材の表面気孔を通じて前記炭素基材内に炭化タンタルが浸透され、
前記炭化タンタルの浸透の深さは、30μm~150μmである、炭化タンタルコーティング炭素材料。
【請求項2】
前記炭素基材は、グラフェン、黒鉛及びフラーレンからなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の炭化タンタルコーティング炭素材料。
【請求項3】
前記炭素基材の熱膨張係数は、4.0×10-6/℃~5.0×10-6/℃である、請求項1に記載の炭化タンタルコーティング炭素材料。
【請求項4】
前記炭素基材の表面の粗さ(Ra)は、0.6μm~10μmである、請求項1に記載の炭化タンタルコーティング炭素材料。
【請求項5】
前記炭素基材は、表面前処理されたものであり、
前記前処理は、プラズマ処理、音波処理、酸(acid)処理、サンドブラスト及び研磨処理からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の炭化タンタルコーティング炭素材料。
【請求項6】
前記炭素基材の表面気孔は、1μm~50μmの直径を有する、請求項に記載の炭化タンタルコーティング炭素材料。
【請求項7】
前記炭化タンタルコーティング層の厚さは、10μm~35μmである、請求項1に記載の炭化タンタルコーティング炭素材料。
【請求項8】
炭素基材を準備するステップと、
前記炭素基材上にCVD方式で炭化タンタルコーティング層を形成させるステップと、を含み、
前記炭素基材上にCVD方式で炭化タンタルコーティング層を形成させるステップでは、前記炭素基材の表面気孔を通じて、前記炭素基材の内部に炭化タンタルが浸透され、
前記炭化タンタルコーティング層の厚さは、10μm~35μmであり、
前記炭素基材の表面の粗さ(Ra)は、0.6μm~10μmであり、
前記炭化タンタルの浸透の深さは30μm~150μmであり、
前記炭化タンタルコーティング層に含まれている最大マイクロクラックの幅は、1.5μm~2.6μmである、炭化タンタルコーティング炭素材料の製造方法。
【請求項9】
前記炭素基材を準備するステップの後に、前記炭素基材の表面をプラズマ処理、音波処理、酸処理、サンドブラスト、及び研磨処理からなる群より選択される1つ以上の方法で前処理するステップをさらに含む、請求項に記載の炭化タンタルコーティング炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化タンタルコーティング炭素材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温環境で腐食性ガスの雰囲気に露出される炭素材料は、腐食性ガスとの反応によって変質したり損傷し、頻繁に交換しなければ炭素材料に求められる本来の機能を行うことができないという問題が生じる。
【0003】
例えば、火鉢内に炭素材料からなる製品を配置し、火鉢内にアンモニアガスを導入してアンモニアの雰囲気を形成しながら火鉢内部を1200℃程度で加熱した場合、アンモニアから分解された水素ガスによって炭素材料からなる製品は短時間に消耗されてしまい、その寿命が短くなる。
【0004】
このような寿命の問題を解決するため、炭素材料の表面に炭化タンタルコをコーティングした炭化タンタル複合体を用いているが、炭化タンタルココーティング層と炭素材料との間の物性の違いによりクラックが発生し、特に、熱膨張係数の違いによりマイクロクラックが発生する問題がある。すなわち、発生したマイクロクラックの間に腐食性ガスが浸透し、炭素基材が損傷してしまうことにより部品の寿命が短縮されるという問題が存在する。
【0005】
炭化タンタルコーティング層に類似の物性を有する炭素材料も挙げられるが、単結晶SiCの工程に使用される部品は、単結晶SiCに類似の物性(熱膨張係数)の炭素材料の使用が必要である。
【0006】
したがって、SiCに類似の物性を有する炭素材料基盤の炭化タンタルコーティング複合体において、炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの幅を減少させることで、部品の寿命を増加させ得る技術の開発が求められる。
【0007】
前述した背景技術は、発明者が本明細書の開示内容を導き出す過程で保持したり習得したものであり、必ず、本出願の前に一般の公衆に公開された公知技術とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題を解決するためのもので、本発明の目的は、炭化タンタルコーティング層に発生するマイクロクラックの幅を減少させた炭化タンタルコーティング炭素材料及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものなどに制限されず、言及されない他の課題は、下記の記載によって当該分野当業者に明確に理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、炭素基材と、前記炭素基材上に形成された炭化タンタルコーティング層とを含み、前記炭化タンタルコーティング層に含まれている最大マイクロクラックの幅は、1.5μm~2.6μmである炭化タンタルコーティング炭素材料を提供する。
【0011】
一実施形態によると、前記炭素基材は、グラフェン、黒鉛及びフラーレンからなる群より選択される1つ以上を含むことができる。
【0012】
一実施形態によると、前記炭素基材の熱膨張係数は、4.0×10-6/℃~5.0×10-6/℃であってもよい。
【0013】
一実施形態によると、前記炭素基材の表面の粗さ(Ra)は、0.6μm~10μmであってもよい。
【0014】
前記炭素基材は、表面前処理されたものであり、前記前処理は、プラズマ処理、音波処理、酸(acid)処理、サンドブラスト及び研磨処理からなる群より選択される1つ以上を含むことができる。
【0015】
一実施形態によると、前記炭素基材は表面気孔を含み、炭素基材の表面気孔を通じて前記炭素基材内に炭化タンタルが浸透されることができる。
【0016】
一実施形態によると、前記炭化タンタルの浸透の深さは、30μm~150μmであってもよい。
【0017】
一実施形態によると、前記炭素基材の表面気孔は、1μm~50μmの直径を有してもよい。
【0018】
一実施形態によると、前記炭化タンタルコーティング層の厚さは、10μm~40μmであってもよい。
【0019】
一実施形態の他の側面は、炭素基材を準備するステップと、前記炭素基材上にCVD方式で炭化タンタルコーティング層を形成させるステップとを含み、前記炭化タンタルコーティング層に含まれている最大マイクロクラックの幅は、1.5μm~2.6μmである炭化タンタルコーティング炭素材料の製造方法することができる。
【0020】
一実施形態によると、前記炭素基材を準備するステップの後に、前記炭素基材の表面をプラズマ処理、音波処理、酸処理、サンドブラスト、及び研磨処理からなる群より選択される1つ以上の方法で前処理するステップをさらに含むことができる。
【0021】
一実施形態によると、前記炭素基材上にCVD方式で炭化タンタルコーティング層を形成させるステップは、前記炭素基材の表面気孔を通じて、前記炭素基材の内部に前記炭化タンタルが浸透され、前記炭化タンタルの浸透の深さは30μm~150μmであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る炭化タンタルコーティング炭素材料は、炭化タンタルコーティング層に発生したマイクロクラックの幅を低減することで、マイクロクラックを介して浸透するガスを最小化して高温腐食性ガスによる炭素基材の損傷を抑制し、炭素材料が用いられた製造装備部品及び機器などの寿命を増加させ得る効果がある。
【0023】
本発明に係る炭化タンタルコーティング炭素材料の製造方法は、炭化タンタルコーティング層を形成するとき、工程条件、コーティング層の厚さ、炭素基材の表面の粗さなどの調節を通じて炭化タンタルコーティング層に発生するマイクロクラックの幅を効率よく制御できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、比較例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの形状及び前記炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材の損傷度を示すイメージである。
図2】従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、比較例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの形状及びマイクロクラックの幅を測定したイメージである。
図3】本発明の一実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、実施例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの形状及び前記炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材の損傷度を示すイメージである。
図4】本発明の実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、実施例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの幅を測定したイメージである。
図5】本発明の一実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、炭素基材の内部に浸透した炭化タンタルの浸透の深さを測定したイメージである。
図6】比較例1の炭化タンタルコーティング炭素材料に酸化テスト(600℃、10時間)を行った後、酸化部位をレーザ顕微鏡(×500倍率)で観察したイメージである。
図7】実施例1の炭化タンタルコーティング炭素材料に酸化テスト(600℃、10時間)を行った後、酸化部位をレーザ顕微鏡(×500倍率)で観察したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付する図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。以下で説明する実施形態は、実施形態に対して制限しようとするものではなく、これに対するすべての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解されなければならない。
【0026】
本明細書で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0027】
異なるように定義さがれない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0028】
また、図面を参照して説明する際に、図面符号に拘わらず同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。実施形態の説明において関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0029】
また、実施形態の構成要素の説明において、第1,第2,A,B,(a),(b)などの用語を使用することがある。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものにすぎず、その用語によって該当の構成要素の本質や順番又は順序などが限定されない。いずれか一つの実施形態に含まれている構成要素と、共通の機能を含む構成要素は、他の実施形態で同じ名称を用いて説明することにする。反対となる記載がない以上、いずれか一つの実施形態に記載した説明は、他の実施形態にも適用され、重複する範囲において具体的な説明は省略することにする。
【0030】
本発明の一側面は、炭素基材と、前記炭素基材上に形成された炭化タンタルコーティング層とを含み、前記炭化タンタルコーティング層に含まれている最大マイクロクラックの幅は1.5μm~2.6μmである炭化タンタルコーティング炭素材料を提供する。前記炭化タンタルコーティング層は、CVD方式で形成されたものであってもよい。
【0031】
最大マイクロクラックの幅とは、炭化タンタルコーティング層が含まれた炭素材料で発生するマイクロクラックのうち、クラックの幅が最も大きい部分をいい、SEM分析設備を用いてクラック部位のイメージを観察し、クラック間のギャップを垂直方向にて測定してクラックの幅を測定する(SEMモデル名:JEOL、JSM-6390)。
【0032】
本発明に係る炭化タンタルコーティング炭素材料は、従来における炭化タンタルコーティング炭素材料と比較して、炭化タンタルコーティング層に発生したマイクロクラックの幅が減少した特徴を有することで、高温環境で腐食性ガスに露出時、マイクロクラックの間で浸透するガスを最小化して炭素基材の損傷度を減らすことができ、窮極的に、炭化タンタルコーティング炭素材料が使用された部品の寿命を増加させることができる。
【0033】
また、炭素基材と炭化タンタルコーティング層の付着力が増加することで、高温環境で炭素基材から炭化タンタルコーティング層が剥離される現像を防止できる。
【0034】
一実施形態によれば、前記炭素基材は、グラフェン、黒鉛、及びフラーレンからなる群より選択される1つ以上を含んでもよい。
【0035】
一実施形態によれば、前記炭素基材の熱膨張係数は、4.0×10-6/℃~5.0×10-6/℃であってもよい。
【0036】
前記熱膨張係数の値は、熱膨張係数測定機(DIL 402C)で常温~400℃の範囲で測定した値である。
【0037】
前記炭素基材は、単結晶SiCに類似の熱膨張係数を有し、特に、単結晶SiC Epitaxy/Growth設備の部品材料で使用されるのに適合している。
【0038】
一般に、炭素基材上に炭化タンタルコーティング層が形成された炭素材料は、内部的な要因と外部的な要因によって炭化タンタルコーティング層にマイクロクラック(Micro crack)が発生する。ここで、内部的な要因として、物質内部の不純物の存在、格子の不一致、電位、相変化、結晶粒の膨張及び収縮などがあり、外部的な要因として、異種物質間の相互作用のような要素がある。特に、単結晶SiCに類似の物性(熱膨張係数)の炭素基材を使用する場合、炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックが生成することから、これを減少させる必要がある。
【0039】
本発明に係る炭化タンタルコーティング炭素材料は、単結晶SiCに類似の熱膨張係数を有するにも関わらず、最大マイクロクラックの幅が1.5μm~2.6μmに制御され、炭素材料を用いた部品の寿命を増加させ得るという効果がある。
【0040】
一実施形態によれば、前記炭化タンタルコーティング層の熱膨張係数は、6.5×10-6/℃~7.5×10-6/℃であってもよい。
【0041】
一実施形態によれば、前記炭素基材の表面の粗さ(Ra)は、0.6μm~10μmであってもよい。
【0042】
好ましくは、前記炭素基材の表面の粗さ(Ra)は、0.8μm~10μmであってもよく、好ましくは、1μm~10μmであってもよく、より好ましくは、1μm~8μmであってもよい。
【0043】
前記炭素基材の表面の粗さが前記範囲未満である場合に炭化タンタルコーティング層との付着力が低下し、前記範囲を超過すれば、マイクロクラックの幅が増加することがある。
【0044】
一実施形態によれば、前記炭素基材は表面前処理されたものであり、前記前処理は、プラズマ処理、音波処理、酸(acid)処理、サンドブラスト及び研磨処理からなる群より選択される1つ以上を含んでもよい。
【0045】
前記炭素基材は、前記表面前処理を介して、炭素基材の表面の粗さ(Ra)を調節したり、炭素基材の表面に気孔を形成させたり、予め形成された気孔内部の不純物を除去することができる。
【0046】
前記炭素基材の表面の粗さは、炭化タンタルコーティング層に発生するマイクロクラックの幅、及び炭化タンタルコーティング層との付着力を改善するために調節され得る。
【0047】
また、前記炭素基材の表面の気孔は、炭化タンタルコーティング層が形成される過程において、炭化タンタルが炭素基材の内部に浸透可能にする役割を果たす。
【0048】
一実施形態によれば、前記炭素基材は表面気孔を含み、前記炭素基材の表面気孔を通じて前記炭素基材の内部に炭化タンタルが浸透され得る。
【0049】
前記炭素基材の内部に浸透した炭化タンタルは植物の根元のような役割を果たし、炭化タンタルコーティング層と炭素基材の付着力を増加させ得る。
【0050】
したがって、高温工程が行われるとき、炭素基材から炭化タンタルコーティング層が剥離される現像を防止することができる。
【0051】
前記炭化タンタルの浸透の深さは、炭素基材の表面気孔を通じて内部に浸透した炭化タンタルの浸透の深さであって、前記炭素基材の表面から深度方向への長さを意味する。
【0052】
前記炭化タンタルの浸透の深さは、炭化タンタルコーティング層に生じるマイクロクラックの幅、及び炭化タンタルコーティング層と炭素基材の付着力に影響を与える。したがって、前記炭化タンタルの浸透の深さを制御することは、炭化タンタルコーティング層に生じる井マイクロクラックの幅及び炭化タンタルコーティング層と炭素基材の付着力を制御するために重要な要素である。
【0053】
一実施形態によれば、前記炭化タンタルの浸透の深さは、30μm~150μmであってもよい。
【0054】
好ましくは、前記炭化タンタルの浸透の深さは、40μm~150μmであってもよく、より好ましくは、50μm~150μm、より好ましくは、50μm~130μmであってもよい。
【0055】
前記炭化タンタルの浸透の深さが前記範囲未満である場合、炭化タンタルコーティング層に発生するマイクロクラックの幅が増加し、炭素基材と炭化タンタルコーティング層の付着力が弱まって、高温工程を実行時に炭化タンタルコーティング層が剥離されることがある。
【0056】
前記炭化タンタルの浸透の深さが前記範囲を超過する場合、炭化タンタルを深く浸透させるために低温で工程を行い、結晶性が低下するという問題が発生する恐れがあり、そのため、炭化タンタルコーティング層の物性に影響を与えることがある。
【0057】
一実施形態によれば、前記炭素基材の表面気孔は、1μm~50μmの直径を有し、好ましくは、10μm~30μmの直径を有してもよい。
【0058】
もし、前記炭素基材の表面気孔が前記範囲未満である場合、炭化タンタルの浸透が十分に行われず、炭素基材の内部に植物の根元形態に炭化物が形成されないか、十分な深さで形成されないことがある。
【0059】
一方、前記炭素基材の表面気孔が前記範囲を超過する場合、炭素材料の耐久性が低下したり、むしろ、炭素基材と炭化タンタルコーティング層の付着力を弱化させることがある。
【0060】
一実施形態によれば、前記炭化タンタルコーティング層の厚さは、10μm~40μmであってもよい。
【0061】
好ましくは、前記炭化タンタルコーティング層の厚さは15μm~40μmであってもよく、より好ましくは、15μm~35μmであってもよい。
【0062】
前記炭化タンタルコーティング層の厚さが前記範囲未満であるか前記範囲を超過する場合、炭化タンタルコーティング層に発生するマイクロクラックの幅が増加し得る。
【0063】
また、前記炭化タンタルコーティング層の厚さが前記範囲未満である場合、基材から不純物が流入する(ガス放出)という問題が発生する恐れがあり、前記範囲を超過する場合、マイクロクラックの発生が増加する。
【0064】
本発明の他の側面は、炭素基材を準備するステップと、前記炭素基材上にCVD方式で炭化タンタルコーティング層を形成させるステップとを含み、前記炭化タンタルコーティング層に含まれている最大マイクロクラックの幅は、1.5μm~2.6μmである炭化タンタルコーティング炭素材料の製造方法を提供する。
【0065】
本発明に係る炭化タンタルコーティング炭素材料の製造方法は、炭素基材の表面に化学蒸着(CVD)方式で炭化タンタルコーティング層を形成させるが、形成された炭化タンタルコーティング層に発生した最大マイクロクラックの幅を1.5μm~2.6μmに制御する特徴がある。
【0066】
前記CVD方式により炭化タンタルコーティング層を形成させるステップにおいて、CVD工程を行うとき、一般に使用されるTa前駆体物質及びC前駆体物質を用いてもよい。
【0067】
前記Ta前駆体物質として、TaCl、TaCl、TaO、TaOなどのタンタル系ハロゲン化合物を用いてもよく、前記C前駆体物質として、CH、C、Cなどの炭素系気体化合物を用いてもよい。
【0068】
一実施形態によれば、前記炭素基材を準備するステップの後、前記炭素基材の表面を、プラズマ処理、超音波処理、酸処理、サンドブラスト及び研磨処理からなる群より選択される1つ以上の方法により前処理するステップをさらに含んでもよい。
【0069】
前記前処理するステップは、炭素基材の表面前処理を介して、炭素基材の表面の粗さ(Ra)を調節したり、炭素基材の表面に気孔を形成させたり、予め形成された気孔内部の不純物を除去することができる。
【0070】
前記炭素基材の表面の粗さは、炭化タンタルコーティング層に発生するマイクロクラックの幅及び炭化タンタルコーティング層との付着力を改善するために調節され得る。
【0071】
また、前記炭素基材の表面の気孔は、炭化タンタルコーティング層が形成される過程で、炭化タンタルが炭素基材の内部に浸透可能にする役割を果たす。
【0072】
一実施形態によれば、前記炭素基材上にCVD方式で炭化タンタルコーティング層を形成させるステップは、前記炭素基材の表面気孔を通じて、前記炭素基材の内部に前記炭化タンタルが浸透され、前記炭化タンタルの浸透の深さは30μm~150μmであってもよい。
【0073】
本発明に係る炭化タンタルコーティング炭素材料の製造方法は、炭素基材上に炭化タンタルコーティング層を化学蒸着(CVD)方式で形成させることで、炭素基材の内部に浸透する炭化タンタルの浸透の深さを容易に制御できる特徴がある。
【0074】
本発明の更なる側面は、前記炭化タンタルコーティング炭素材料を含む部品を提供する。
【0075】
一実施形態によれば、前記部品は製造装備部品であってもよく、前記製造装備部品は、LED製造装備、半導体製造装備の部品であってもよい。
【0076】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳しく説明する。
【0077】
但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例に限定されることはない。
【0078】
<試験例1>マイクロクラックの形状及び炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材の損傷度比較の観測
従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料と本発明の一実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの形状及び前記炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材の損傷度を比較観測した。
【0079】
SEM(Scanning Electron Microscope)装備でマイクロクラック(Micro Crack)の位置を分析し、マイクロクラック間のギャップを垂直方向にて測定して最大マイクロクラック幅(Micro Crack Width)を測定した。
【0080】
図1は、従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、比較例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの形状及び前記炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材の損傷度を示すイメージである。
【0081】
図2は、従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、比較例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの形状及びマイクロクラックの幅を測定したイメージである。
【0082】
図1及び図2を参照すると、従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料は、炭化タンタルコーティング層に発生したマイクロクラックの幅が広く、前記炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材(グラファイト)の損傷度が酷いことが確認される。
【0083】
炭化タンタルコーティング材料内のマイクロクラックが広い部分と狭い部分とが共存することが確認され、クラックの広い部分で腐食性ガスが浸透して基材(グラファイト)を損傷させる。
【0084】
従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料は、炭化タンタルコーティング層に発生したクラック間のギャップを垂直方向に測定したとき、3.0μm~3.61μmレベルのマイクロクラックの幅が測定された。
【0085】
図3は、本発明の一実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、実施例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの形状及び前記炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材の損傷度を示すイメージである。
【0086】
図4は、本発明の一実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、実施例1の炭化タンタルコーティング層のマイクロクラックの幅を測定したイメージである。
【0087】
図3及び図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料は、炭化タンタルコーティング層に発生したマイクロクラックの幅及び前記炭化タンタルコーティング炭素材料を単結晶SiC成長工程に使用した後、炭素基材の損傷度が従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料と比較して著しく減少したことが確認される。特に、炭素基材の損傷度は、従来技術に係る炭化タンタルコーティング炭素材料よりも1/2程度に減少したことが確認される。
【0088】
炭化タンタルコーティング層に発生したクラック間のギャップを垂直方向に測定したとき、1.5μm~1.8μmレベルのマイクロクラックの幅が測定された。
【0089】
図5は、本発明の一実施形態に係る炭化タンタルコーティング炭素材料において、炭素基材の内部に浸透した炭化タンタルの浸透の深さを測定したイメージである。
【0090】
図5を参照すると、炭素基材上にCVD方法により炭化タンタルコーティング層を形成させるとき、炭素基材の気孔を通じて炭化タンタルが炭素基材の内部に浸透され、浸透された炭化タンタルは、植物の根元のような役割を果たして炭素基材と炭化タンタルコーティング層の付着力を増加させることが確認される。
【0091】
<試験例2>炭化タンタルコーティング層の厚さ変化によるマイクロクラック幅の変化観測
炭化タンタルコーティング層の厚さ変化によるマイクロクラック幅の変化を観測するために、炭素基材の表面の粗さ及び炭化タンタルの浸透の深さを一定に固定した状態で、炭化タンタルコーティング層の厚さのみを変化させて炭化タンタルコーティング炭素材料を製造してから、発生したマイクロクラックの幅を測定した。
【0092】
測定結果を表1に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1を参照すると、炭化タンタルコーティング層の厚さが増加することにより、マイクロクラックの幅も増加する傾向が示されていることが確認される。
【0095】
<試験例3>炭素基材の表面照度変動によるマイクロクラック幅の変化観測
炭素基材の表面の粗さ(Ra)変化によるマイクロクラック幅の変化を観測するために、炭化タンタルコーティング層の厚さ、及び炭化タンタルの浸透の深さを一定に固定した状態で炭素基材の表面の粗さ(Ra)のみを変化させ、炭化タンタルコーティング炭素材料を製造した後、発生したマイクロクラックの幅を測定した。炭素基材の表面の粗さは、炭素基材の表面をレーザ顕微鏡で非接触3D測定システムを用いて50倍率で観察して測定面積の粗さを測定した(モデル名:KEYENCE、VK-X1100、プログラム名:LS_Vkxz)。
【0096】
測定結果を表2に示した。
【0097】
【表2】
【0098】
表2を参照すると、炭素基材の表面の粗さが増加することにより、その変化の幅が大きくないが、マイクロクラックの幅が減少することが確認される。
【0099】
<試験例4>炭化タンタル浸透の深さによるマイクロクラック幅の変化観測
炭化タンタル浸透の深さ変化によるマイクロクラック幅の変化を観測するために、炭化タンタルコーティング層の厚さ及び炭素基材の表面の粗さを一定に固定した状態で炭化タンタルの浸透の深さのみを変化させて炭化タンタルコーティング炭素材料を製造した後、発生したマイクロクラックの幅を測定した。
【0100】
測定結果を表3に示した。
【0101】
【表3】
【0102】
表3を参照すると、炭化タンタル浸透の深さが増加することにより、マイクロクラックの幅が減少することが確認される。
【0103】
<試験例5>炭化タンタル浸透の深さを改善した条件で炭化タンタルコーティング層の厚さの変化によるマイクロクラック幅の変化観測
炭素基材の表面の粗さ及び炭化タンタル浸透の深さが改善された条件で一定に固定し、炭化タンタルコーティング層の厚さをそれぞれ相違にして炭化タンタルコーティング炭素材料を製造した後、発生したマイクロクラックの幅を測定した。
【0104】
測定結果を表4に示した。
【0105】
【表4】
【0106】
表4を参照すると、粗さ及び炭化タンタル浸透の深さの改善された条件で、炭化タンタルコーティング層の厚さが10μm~40μmである範囲であるとき、マイクロクラックの幅がさらに減少することが確認される。
【0107】
<試験例6>酸化テスト
マイクロクラックによる炭素基材の損傷程度を確認するために、酸火鉢で酸化テストを実施した。各条件ごとの試片を製造してテストを実施し、テスト試片の大きさは20mm×20mm×2tである。
【0108】
先に、600℃で10時間熱処理した後、酸化面積を測定し、600℃で20時間熱処理した後、炭化タンタルコーティング層の剥離の有無を確認した。
【0109】
図6は、比較例1の炭化タンタルコーティング炭素材料に酸化テスト(600℃、10時間)を行った後、酸化部位をレーザ顕微鏡(×500倍率)で観察したイメージである。
【0110】
図7は、実施例1の炭化タンタルコーティング炭素材料に酸化テスト(600℃、10時間)を行った後、酸化部位をレーザ顕微鏡(×500倍率)で観察したイメージである。
【0111】
ここで、点線で示された部分が酸化された面積である。
【0112】
酸化された部位は、レーザ顕微鏡を用いて×500倍率でイメージを観察し、プログラムを用いて酸化された面積を選択して算出した。(モデル名:KEYENCE、VK-X1100、プログラム名:LS_Vkxz)
【0113】
図6及び図7を参照すると、比較例1より実施例1の酸化面積部位が著しく小さいことが確認される。
【0114】
具体的な酸化面積の測定結果を表5に示し、炭化タンタルコーティング層の剥離の有無に対する結果を表6に示した。
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
表5を参照すると、マイクロクラックの最大幅の大きさが増加することにより、酸化面積も増加することが確認される。即ち、炭化タンタルコーティング層に発生したマイクロクラックの最大幅の大きさが酸化される面積を決定することが分かる。
【0118】
表6を参照すると、マイクロクラックの最大幅の大きさが2.9μm以上であるとき、炭化タンタルコーティング層の剥離が発生することが分かる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、前記に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法とは異なる順に実行されたり、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法とは異なる形態に結合又は組み合せられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても適切な結果が達成されることができる。
【0120】
したがって、他の実現、他の実施形態及び特許請求の範囲と均等のものなども後述する権利要求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7