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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】蒸気アブレーションシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
A61B18/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021204332
(22)【出願日】2021-12-16
(62)【分割の表示】P 2018532059の分割
【原出願日】2016-12-19
(65)【公開番号】P2022027949
(43)【公開日】2022-02-14
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】62/357,742
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/269,776
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスティングス ロジャー ノエル
(72)【発明者】
【氏名】シュロム マーク
(72)【発明者】
【氏名】カールソン スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ホーイ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バイランド ティモシー ディー
(72)【発明者】
【氏名】ウー カーリアム シー
(72)【発明者】
【氏名】バクマイヤー ブライアン エイ
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-505266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288543(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0306950(US,A1)
【文献】特許第4703243(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2003/0199903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内への経尿道アクセスのためのサイズにされ、かつそのように構成された導入器シャフトと、
前記導入器シャフトに結合されたハンドルと、
前記ハンドルに配置され、かつ凝縮可能蒸気を発生させるように構成された蒸気発生器と、
前記蒸気発生器と連通し、かつ前記導入器シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送出ニードルと、
前記蒸気送出ニードルに取り付けられた磁石と、
前記磁石の周りに配置され、第1の巻線及び第2の巻線を有するソレノイドアクチュエータと、
前記導入器シャフトの内側の後退位置と、前記導入器シャフトの少なくとも部分的に外側の延長位置と、の間で前記蒸気送出ニードルの遠位先端を移動させるために、前記第1の巻線に第1の電流を供給し、同時に、前記第2の巻線に第2の電流を供給するように構成された電源と、を備え、
前記第1の電流の方向は、前記第2の電流の方向に対して反対の方向であり、
前記第1の巻線は、前記第1の電流が前記第1の巻線に印加されたときに第1の磁場を生成するように構成され、前記第2の巻線は、前記第2の電流が前記第2の巻線に印加されたときに第2の磁場を生成するように構成されていることを特徴とする前立腺治療デバイス。
【請求項2】
前記第1の磁場は、極性を前記磁石と共有する、請求項に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の磁場は、前記磁石の極性と反対の極性を有する、請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の磁場は、第1の力を発生させる、請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の磁場は、前記第1の力と同じ方向の第2の力を前記磁石に発生させる、請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記磁石は、前記蒸気送出ニードルの後退位置において、前記第1の巻線及び前記第2の巻線の両方の少なくとも一部内にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記磁石によって生成された磁場に比例する電圧出力を提供するように構成されたセンサを更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、2015年12月18日出願の米国仮特許出願第62,269,776号及び2016年7月1日出願の第62,357,742号の出願利益を主張するものであり、それらの両方は、それらの全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
〔引用による組み込み〕
本明細書に言及する特許及び特許出願を含む全ての文献は、各個々の文献が引用によって組み込まれるように具体的かつ個々に示されたかのような同じ程度までそれらの全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、低侵襲手法を使用する良性前立腺過形成の治療のためのデバイス及び関連方法に関する。
【背景技術】
【0004】
良性前立腺過形成(BPH)は、中高年男性内の一般的な疾患であり、患者数は年齢と共に増加する。年齢50では、男性の半分よりも多くは、症候性BPHを有し、70歳までには、男性のほぼ90%は前立腺肥大の微視的証拠を有する。症状の重症度も年齢と共に増大し、60~70の年齢層の患者の27%は、中等度から重度の症状を有し、70代にある患者の37%は、中等度から重度の症状を抱えている。
【0005】
人生早期の前立腺は、クルミのサイズ及び形状であり、BPHから生じる肥大前は約20gの重量である。前立腺肥大は、通常過程であるように見える。年齢と共に、前立腺は、その通常サイズの2倍又はそれよりも大きいサイズまで徐々に増大する。外側前立腺嚢の繊維筋性組織は、腺がある一定のサイズに達した後で膨張を制限する。膨張に対するそのような制限に起因して、嚢内組織は、尿道前立腺部に対して圧迫し、かつそれを締め付けることになり、従って、尿流れに対する抵抗を引き起こす。
【0006】
男性泌尿生殖器生体構造では、前立腺は、膀胱及び膀胱頸部の下に位置付けられる。膀胱の壁は、膨張及び収縮して膀胱から前立腺及びペニスを通って延びる尿道を通る尿流れを引き起こすことができる。前立腺によって取り囲まれた尿道の部分は、尿道前立腺部と呼ばれる。前立腺はまた、尿道前立腺部内に開放終端を有する射精管を取り囲む。性的刺激中に、精子は、精子と組み合わされて射精中に精液を形成する流体を提供する前立腺に精管によって精巣から搬送される。前立腺の両側では、精管及び精嚢は、接合して射精管と呼ばれる単一管を形成する。すなわち、各射精管は、精嚢分泌物及び精子を尿道前立腺部の中に搬送する。
【0007】
前立腺腺状構造は、辺縁帯、移行帯、及び中心帯の3つの帯に分類することができる。辺縁帯PZは、若い男性の前立腺の容積の約70%を含む。前立腺の後面のこの嚢下部分は、遠位尿道を取り囲み、癌の70~80%は、辺縁帯組織に発生する。中心帯CZは、射精管を取り囲み、かつ前立腺容積の約20~25%を閉じ込める。中心帯は、多くの場合に、炎症過程の部位である。移行帯TZは、前立腺過形成が成長する部位であり、かつ正常前立腺内の腺要素の容積の約5~10%を閉じ込めるが、BPHの場合にそのような容積の80%までを構成する可能性がある。移行帯は、2つの外側前立腺中葉及び尿道周囲腺領域から構成される。移行帯の周りに天然障壁、すなわち、尿道前立腺部、前側繊維筋性間質、及び移行帯と辺縁帯間の繊維平面が存在する。前側繊維筋性間質又は繊維筋性帯は、主として繊維筋性組織である。
【0008】
BPHは、典型的には、患者が厄介な排尿困難を訴えて医療を求める時に診断される。BPHの主症状は、排尿回数及び尿意切迫の増加及び排尿中の流量の有意な減少である。BPHはまた、膀胱の尿閉を引き起こす可能性があり、これは、次に、下部尿路感染症(LUTI)に至る可能性がある。多くの場合に、LUTIは、次に、腎臓内へ上昇して慢性腎盂炎を引き起こす可能性があり、最終的に腎不全に至る可能性がある。BPHはまた、重度の排尿困難によって引き起こされる睡眠障害又は心理的不安に関連付けられた性機能不全に至る場合がある。すなわち、BPHは、男性人口の加齢に伴って生活の質を有意に変える可能性がある。
【0009】
BPHは、前立腺の腺細胞の連続生成と自然死(アポトーシス)の間の不均衡の結果である。そのような細胞の過剰生成は、尿道前立腺部を横切る移行帯において最も有意に前立腺サイズの増大に至る。
【0010】
BPHの早期ステージの場合に、薬物治療は、症状の一部を軽減することができる。例えば、α遮断薬は、前立腺及び膀胱頸部に見出される平滑筋組織を弛緩することによってBPHを治療し、これは、尿がより容易に膀胱から流れることを可能にすることができる。そのような薬物は、腺要素が前立腺内で圧倒的な細胞増殖を引き起こすまでの有効性を証明することができる。
【0011】
しかし、BPHのより進行したステージは、手術的又は低侵襲性熱アブレーションデバイス介入によってのみ治療することができる。いくつかの方法が、組織の電気外科的又は機械的抽出と嚢内前立腺組織の熱アブレーション又は冷凍アブレーションとを使用して開発されている。多くの場合に、そのような介入は、一時的緩和をもたらすに過ぎず、これらの治療は、多くの場合に有意な周術期不快感及び死亡率を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
1つの熱アブレーション方法では、前立腺中葉内の複数の場所の中に貫通されている細長RFニードルを通じてRFエネルギが前立腺組織に送出される。細長RFニードルは、典型的には、小葉の中に貫通する絶縁体と共に長さ約20mmである。得られるRF治療は、従って、尿道前立腺部から離れるように組織を切除し、尿道前立腺部に近いか又はこれに平行な組織はターゲットにしない。RFエネルギの印加は、典型的には、1から3分にわたって又はそれよりも長く与えられ、これは、組織を切除するRFエネルギの嚢周囲までの熱拡散を可能にする。そのようなRFエネルギ送出方法は、平滑筋組織及びαアドレナリン作動性受容体が尿道前立腺部の周り又は移行帯内で均一に切除されないので、永続的効果を生成しない場合がある。その結果、前立腺中葉内の組織は、増殖して尿道に衝突し続ける可能性があり、従って、治療の長期的効果を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
患者内への経尿道アクセスのためのサイズにされ、かつそのように構成された導入器シャフトと、導入器シャフトに結合されたハンドルと、ハンドルに配置されて凝縮可能蒸気を発生するように構成された蒸気発生器と、蒸気発生器と連通して導入器シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送出ニードルと、ニードルに取り付けられた磁石と、磁石の周りに配置されたソレノイドアクチュエータであって、ソレノイドアクチュエータが、RF電流源に結合されたプッシュ巻線とRF電流源に結合されたプル巻線とを含み、プッシュ巻線が、第1の磁場を磁石に印加するように構成され、プル巻線が、第2の磁場を磁石に印加するように構成され、第1及び第2の磁場が、導入器シャフトの内側の後退位置と導入器シャフトの少なくとも部分的に外側の延長位置との間で蒸気送出ニードルの遠位先端を移動する上記ソレノイドアクチュエータとを含む前立腺治療デバイスを提供する。
【0014】
一実施形態では、第1の磁場は、極性を磁石と共有する。別の実施形態では、第2の磁場は、磁石の極性と反対の極性を有する。
【0015】
一部の実施形態では、第1及び第2の磁場の組合せは、蒸気送出ニードルが後退位置と延長位置間を移動する時に磁石の横移動を排除する。
【0016】
別の実施形態では、第1及び第2の磁場の組合せは、プッシュ巻線及びプル巻線によって磁石に及ぼされる力を単一巻線によって及ぼされると考えられるよりも約2倍にする。
【0017】
一部の実施形態では、ソレノイドアクチュエータは、後退位置から延長位置に向けて移動する時に蒸気送出ニードルの遠位先端を前立腺組織の中に貫通させるように構成される。
【0018】
一実施形態では、蒸気送出ニードルは、導入器シャフトが患者の尿道内に位置決めされた時に前立腺組織の中に延びるようなサイズにされ、かつそのように構成される。
【0019】
一部の実施形態では、ハンドルは、ソレノイドアクチュエータの手動制御が蒸気送出ニードルを後退位置と延長位置間で移動するようになっている。
【0020】
別の実施形態では、デバイスは、蒸気送出ニードルを通る凝縮可能蒸気の流れを起動するように構成された蒸気アクチュエータを含む。
【0021】
他の実施形態では、磁石は、ネオジウム-鉄-ボロン磁石を含む。
【0022】
更に別の実施形態では、デバイスは、ソレノイドアクチュエータの近くに配置された磁場センサを含み、磁場センサは、磁石によって生成された磁場に比例した電圧出力を提供して蒸気送出ニードルの位置を決定するように構成される。一部の実施形態では、蒸気送出は、蒸気送出ニードルが展開されていないことを磁場センサの電圧出力が示す場合に阻止される。
【0023】
他の実施形態では、デバイスは、プッシュ巻線にかつプル巻線に結合された電流センサを含み、電流センサは、プッシュ巻線又はプル巻線が電流源によって励起された時に逆起電力を検出するように構成される。一部の実施形態では、逆起電力は、電流センサを通って流れる電流の低下として現れる。他の実施形態では、逆起電力は、蒸気送出ニードルが延長位置の中に適正に展開されたことを示す。
【0024】
前立腺治療デバイスのシャフトをシャフトの遠位端が前立腺組織に近接するまで経尿道的に挿入する段階と、蒸気送出ニードルをシャフトから前立腺組織の中に前進させるようにソレノイドアセンブリを起動する段階と、凝縮可能蒸気を蒸気送出ニードルから前立腺組織の中に送出する段階とを含む前立腺組織を治療する方法を提供する。
【0025】
一部の実施形態では、凝縮可能蒸気は、前立腺組織内で熱効果を提供する。
【0026】
一実施形態では、ソレノイドアセンブリのプッシュ巻線は、蒸気送出ニードルに取り付けられた磁石に第1の磁場を印加して蒸気送出ニードルを前進させる。
【0027】
別の実施形態では、ソレノイドアセンブリのプル巻線は、第2の磁場を磁石に印加して蒸気送出ニードルを前進させる。
【0028】
流体源と、流体源に結合されたチューブの内側コイルであって、インコネルを含む上記内側コイルと、チューブの内側コイルを取り囲む導電ワイヤの外側コイルと、外側コイルに結合され、かつRF電流を外側コイルに印加して内側コイルを誘導加熱して蒸気を発生させるように構成されたRF発生器とを含む誘導蒸気発生器を提供する。
【0029】
一部の実施形態では、内側コイルの個々の巻線は、互いに半田付けされるか又は溶接されて隣接巻線間の電気接触を保証する。
【0030】
一実施形態では、発生器は、75%よりも高いカロリー送出効率を生成する。
【0031】
別の実施形態では、内側コイルは、0.75mmから0.95mmに及ぶ内径を含む。
【0032】
ハンドル、ハンドルに結合されたシャフト、及びシャフト内に部分的に配置された蒸気送出ニードル、及びシャフト内に配置されたフック特徴部、及びシャフトの内側の後退位置とシャフトの少なくとも部分的に外側の延長位置との間で蒸気送出ニードルの遠位先端を移動するように構成されたソレノイドアクチュエータを有する蒸気送出デバイスと、蒸気送出ニードルがシャフトを超えて遠位に延長された時に蒸気送出デバイスを受け入れるようなサイズにされ、かつそのように構成されたトレイであって、蒸気送出デバイスがトレイの中に挿入された時にフック特徴部に位置合わせされる開口部を含む上記トレイを含む小売包装と、トレイの開口部の中に挿入され、かつ蒸気送出デバイスのフック特徴部と係合して蒸気送出ニードルを所定位置にロックするように構成されたピンとを含むキットを提供する。
【0033】
本発明をより良く理解してそれを実際にどのように実施することができるかを見るために、同じ参照文字が添付図面内の類似の実施形態を通して一貫して対応する特徴を示す添付図面を参照して、一部の好ましい実施形態を単に非限定的な例として次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】蒸気送出システムの一実施形態を示す図である。
図1B】蒸気送出システムの一実施形態を示す図である。
図1C】蒸気送出システムの一実施形態を示す図である。
図1D】蒸気送出システムの一実施形態を示す図である。
図1E】蒸気送出システムの一実施形態を示す図である。
図2】蒸気送出システムの遠位部分の拡大図である。
図3A】ソレノイドニードルドライバの分解組立図である。
図3B】ソレノイドニードルドライバの分解組立図である。
図3C】ソレノイドニードルドライバの分解組立図である。
図4】ソレノイドニードルドライバの絵図である。
図5】蒸気送出ニードルを展開するためにソレノイドニードルドライバを通る電流流れを示す図である。
図6】磁石展開/位置を決定するための移動磁石から逆電流の測定値を示す図である。
図7】蒸気発生器の一実施形態を示す図である。
図8A】蒸気送出システムの蒸気ニードルがシステムの出荷中に移動するのを防止する出荷ピン構成を示す図である。
図8B】蒸気送出システムの蒸気ニードルがシステムの出荷中に移動するのを防止する出荷ピン構成を示す図である。
図8C】蒸気送出システムの蒸気ニードルがシステムの出荷中に移動するのを防止する出荷ピン構成を示す図である。
図8D】蒸気送出システムの蒸気ニードルがシステムの出荷中に移動するのを防止する出荷ピン構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
一般的に、BPHを治療するための1つの方法は、前立腺の内部の中に浸入的に加熱蒸気を導入する段階を含み、蒸気は、前立腺組織を制御可能に切除する。この方法は、オフィスベースの手順で各個々の蒸気治療当たり50カロリーと300カロリーの間の印加熱エネルギに対する蒸気を利用することができる(かつ各前立腺中葉に対して複数の治療を仮定する)。本方法は、前立腺組織の局所切除を引き起こすことができ、より具体的には、蒸気からの印加熱エネルギは、尿道に隣接していない前立腺組織を損傷することなく尿道に隣接する組織を切除するように局在化させることができる。
【0036】
本発明の開示は、BPHの治療、特に、中心又は辺縁帯の前立腺組織を切除することなく移行帯の前立腺組織を切除するための治療に関する。一実施形態では、本発明の開示は、尿道前立腺部に隣接する領域において対流加熱を使用する前立腺の治療に関する。切除治療の本方法は、2cm未満の深度まで膀胱頸部領域と精丘領域との間で尿道前立腺部に平行に平滑筋組織、αアドレナリン作動性受容体、交感神経構造、及び血管系をターゲットにするように構成される。
【0037】
システムは、水蒸気を含む蒸気媒体を送出する蒸気送出機構を含むことができる。システムは、少なくとも60~140℃の温度を有する蒸気を提供するように構成された蒸気源を利用することができる。別の実施形態では、システムは、1秒~30秒に及ぶ間隔にわたって蒸気を送出するように構成されたコンピュータコントローラを更に含む。
【0038】
一部の実施形態では、システムは、蒸気と共に送出するための薬物又は他の化学物質又は化合物の供給源を更に含む。これらの薬剤は、以下に限定されないが、麻酔薬、抗生物質、又はBotox(登録商標)のような毒性物質、又は癌組織細胞を治療することができる化学物質を含む。作用物質はまた、密封剤、接着剤、糊、又は瞬間接着剤などとすることができる。
【0039】
一部の実施形態では、患者内への経尿道アクセスのためのサイズにされ、かつそのように構成された導入器シャフトと、凝縮可能蒸気を発生させるように構成された蒸気発生器と、蒸気発生器と連通して導入器シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送出ニードルと、蒸気送出ニードルに対して磁場を発生して導入器シャフトの内側の後退位置と導入器シャフトの少なくとも部分的に外側の延長位置との間で蒸気送出ニードルを移動するように構成されたソレノイドアクチュエータとを含む前立腺治療デバイスを提供することができる。
【0040】
図1Aは、蒸気送出システムの一実施形態を示している。蒸気送出システム100は、患者の尿道の中に挿入するように構成された細長シャフト102と、人の手で把持するためのハンドル部分104とを有することができる。蒸気システム100は、シャフトに配置されて細長シャフト102の遠位部分から延びるように構成された蒸気送出ニードル106を含むことができる。
【0041】
ハンドルは、ユーザが送出デバイスを左及び右に容易に回転させて蒸気を前立腺の右及び左に送出することを可能にする人間工学的な後方に延びるハンドルとすることができる。蒸気送出ニードルは、シャフトにほぼ垂直に又はそこから横断方向に延びることができ、かつニードルから前立腺組織の中に蒸気媒体の流れを送出するように構成された1又は2以上の蒸気送出ポートを含むことができる。
【0042】
蒸気送出システム100は、システムの様々な機能を起動するように構成された1又は2以上のトリガ、ボタン、レバー、又は起動機構を更に含むことができる。図1Aに示すように、システムは、RF治療トリガ107、ニードル前進トリガ109、洗浄トリガ111、ニードル後退ボタン113、及び緊急ニードル解除リング115を含むことができる。ニードル前進トリガは、蒸気送出ニードルを延長/後退させるように構成することができ、RF治療トリガは、蒸気の流れを開始/停止するように構成することができ、洗浄トリガは、生理食塩水のような冷却及び/又は洗浄液を開始するように構成することができる。
【0043】
一部の実施形態では、トリガ又は起動機構は、様々な程度又は流量の蒸気及び/又は洗浄を制御するように操作することができる。例えば、トリガのうちの1つの単一押圧又は押し下げは、標準洗浄流水を提供することができ、一方でトリガの迅速二重押圧又は押し下げは、洗浄の流量が標準洗浄流量よりも増加する「ターボ」洗浄流水を提供することができる。この特徴は、例えば、医師が閉塞に遭遇して追加の冷却を必要とするか、又は血液又は他の体液の蓄積に起因して尿道及び/又は前立腺において視野低下がある場合に有用である場合がある。
【0044】
蒸気送出システム100は、蒸気源10、吸引源20、流体冷却又は洗浄源30、光源40、及び/又は蒸気の発生及び蒸気源からシャフトの内腔を通して、蒸気送出ニードルを通して、かつ組織の中への蒸気の送出を制御するように構成された電子コントローラ50に接続することができる。一部の実施形態では、電子コントローラは、蒸気送出システム上又は内に配置することができ、他の実施形態では、電子コントローラは、システムとは別に配置することができる。
【0045】
図1Bは、シャフトを超えて延びて蒸気送出ポート108を露出する蒸気送出ニードル106を含む蒸気システム100のシャフトの遠位部分の拡大図を示す。蒸気送出ポート108は、与えられた用途において組織への蒸気の送出を最適化するパターンに配置することができる。例えば、BPHの治療に対して設計されたシステムでは、送出ポート108は、3列の4つの蒸気送出ポートを含み、ポートの列は、ニードルの円周周りに120度間隔で離間し、送出ポートの1列は、ニードルの前縁から遠位に向いて尿道前立腺部に隣接する組織の切除を保証する。一般的に、蒸気送出ポートは、各々が固有の直径を有することができる。一実施形態では、蒸気送出ポート全ては、同じ直径を有する。システム100は、内視鏡又はカメラを受け入れるようなサイズにされた内腔を更に含み、医師に追加の視野及びフィードバックを提供することができる。この内視鏡又はカメラは、展開された時に蒸気送出ニードルの視野を含むシャフトの遠位端の視野を提供することができる。
【0046】
図1Cは、ソレノイドニードルドライバ110及び蒸気発生器112を示す蒸気送出システム100の切取内部図である。ソレノイドニードルドライブ110は、以下により詳細に説明するように、蒸気送出システムの蒸気送出ニードルを前進及び後退させるように構成することができる。蒸気発生器112は、蒸気送出ニードルを通してターゲット組織に送出するための高品質蒸気を生成するように構成される。
【0047】
図1D~1Eは、1つの特定の実施形態による蒸気送出システムのハンドルアセンブリの特定の寸法及び角度を示している。デバイスの早期バージョンは、医師が側葉のいずれかを治療しながら垂直にデバイスを保持することを可能にする回転機構を組み込んでいた。このデバイスの有用性は、患者の膝の間の作業空間に起因して影響を受けなかったが、それは、システム内の複数の自由度に起因して手順の複雑性を増した。デバイスの図示のバージョンは、この機構を排除して手順を簡素化している(並びにその製造を簡素化して費用を低減する)。回転機能の排除は、医師がユニット全体を回転させて側葉にアクセスすることを要求するが、それはまた、サイズの縮小を可能にして使用中にデバイスのより容易な操作を提供する。
【0048】
利用可能な人体測定データに基づいて、あぶみ内の典型的な砕石位にある5パーセンタイルの男性は、自分の膝の間に約14インチの空間を有する。蒸気送出デバイスの使用中に、患者の上脚の間のデバイスの場所は、主としてデバイスのシャフトの長さに基づいている。これは、上脚の区域にデバイスを位置決めし、それは、1)ハンドルとシャフトの間にハンドルの約109°のすくい角を提供する段階を含む設計をデバイスに対して駆動したものである。この特徴は、回内位及び仰臥位の両方にある間の手首の快適な角度及びより容易なトリガプルを可能にする。すくい角の組み込みは、僅かにより長いハンドルがより大きい手を有する医師を受け入れ、一方でデバイスのその部分をユニットの左又は右への90°の回転中に患者の上脚から離れるように向けることを可能にし、2)約11インチの振れ直径(図1E)をもたらす約5.8インチのハンドル長さ(図1D)を提供し、3)チューブセット及びケーブルの追加の27°取り出しを提供して患者の上脚により多くのクリアランスを提供し、4)後退ボタンの遠位場所、対称設計、及び電気起動を提供することを可能にする。起動するのに10lbf超を必要とするデバイスの背面上のレバーを利用するデバイスの以前のバージョンは、この段階中に頻繁に不安定なデバイスをもたらす。その対称性に起因して、新しい設計は、約1/2lbfの力で右又は左手のいずれかの人さし指で容易に起動され、その使用中にデバイスを完全に安定なままに残す。
【0049】
図2~5は、蒸気送出デバイスのソレノイドニードルドライバの特徴及び機能性を説明している。図2は、ソレノイドニードルドライバ110の機能性を示す断面概略図である。ソレノイドニードルドライバは、蒸気送出ニードル106、プル巻線116、プッシュ巻線118、磁石120、ニードルホルダ122、ニードルチューブ124、可撓チューブ126、及び磁場センサ128を含む。図2では、ソレノイドニードルドライバは、その完全に前進した位置に示されている。蒸気送出ニードル106は、ニードルホルダ122を通して磁石120に剛的に取り付けることができる。次に、磁石は、以下により詳細に説明するように、プッシュ巻線及びプル巻線116及び118内に磁場を発生することによって横方向に移動することができる。磁場センサ128は、プッシュ巻線及びプル巻線が生成する磁場の強度を感知する。
【0050】
図3A~3Cは、ソレノイドニードルドライバの追加の特徴の分解組立図である。図3Aは、図2のプッシュ巻線及びプル巻線を保持するソレノイドコイルホルダ130を示している。図3Bの磁石120は、コイル巻線によって発生する磁場に応じて図3Aのソレノイドコイルホルダ130内で摺動する。図3Cのニードルホルダ122は、蒸気送出ニードルを磁石に取り付ける。
【0051】
一実施形態では、磁石は、約Br≒1.4テスラの残留誘導を有する等級N-48ネオジウム-鉄-ボロンから作ることができる。図3の磁石は、ニードルホルダの上に適合してその上にスナップ留めされるような形状にされた内面を有する。磁石は、高保磁力を有する配向材料であるので、磁石全体は、その軸線に沿って均一に磁化される。ニードルドライバにかかる力は、従って、磁石の容積に比例し、内面の側面を形成する余分な磁石材料は、ニードルドライバ力を増大させる。ニードルホルダは、接着剤を受け入れて蒸気送出ニードルをホルダに剛的に取り付けるように構成された孔を含むことができる。
【0052】
図2を参照すると、ソレノイドは、磁石及びニードルホルダに対してプッシュ/プル構成で構成されたプッシュ巻線及びプル巻線を含む。完全に後退したニードル位置では、磁石120の後端は、プッシュ巻線118の後端に位置合わせする。磁石の前端は、この完全に後退したニードル位置でプル巻線116の中に延びる。ニードルを前進したニードル位置の中に前進させるために、電流が、図4に示すようにプッシュ巻線及びプル巻線内で反対方向に流される。プッシュ巻線は、巻線から外へ同じ極性の磁石を反発する磁場を設定する。反発に起因して、磁石は、プッシュコイル軸線に沿って安定した均衡になく、磁石とその周囲の間の接触を増大させる可能性がある横移動を受けやすく、軸線方向前進に対して摩擦抵抗を増大させる。プル巻線は、磁石をプル巻線の中に引き付ける磁場を生成する。プル巻線は、磁石をコイルの軸線に引き付け、それによってプッシュ巻線の不安定性を取り除く。プッシュ巻線及びプル巻線の組合せは、単一巻線によって及ぼされる力の約2倍になる。プッシュ/プル対の巻線はまた、図4で見られるように、コイル対への電流の方向を単に逆にすることによって後退力を前進力と同一にする。
【0053】
一実施形態では、プッシュ巻線及びプル巻線は、AWG#30磁石ワイヤの約400巻回で各々が巻かれ、各コイルは、約10オームのDC抵抗を有する。電流は、前進又は後退中に約0.05秒にわたって起動された24ボルトDC電源によってソレノイドコイルに供給することができる。プッシュ巻線及びプル巻線は電気的に平行に接続されるので、この例におけるコイル対の抵抗は5オームであり、ソレノイド電流は約24/5=4.8アンペアである。ON時間は非常に短いので、巻線温度は、起動中に有意には上昇しない。ニードルは、0.020秒未満で約11mmのその全ての範囲を通して前進する/後退する。
【0054】
ソレノイド巻線によって磁石に及ぼされる軸線方向力は、磁界勾配に露出された磁気双極子にかかる力の式から計算することができる。コイルからの磁場及びその勾配は、ビオ・サバールの法則から計算することができる。点双極子にかかる力は、磁石容積にわたって積分されてニードルドライバに作用する正味の力を与えることができる。この計算は、10mm内径×15mm外径×20mm長の磁石、及び#30銅線の408巻回を有するプッシュ/プル巻線に対して図5にプロットされている。磁石の移動の全範囲が図に示されている。この範囲では、力は2.5~5ポンド範囲にあり、その移動範囲の中間点においてピークに達する。ニードルドライバにかかる正味の力は、この力からその移動に沿って遭遇する摩擦力を差し引いたものである。図5の曲線全体は、ソレノイド電流に比例して拡大及び縮小する。ニードル軌道に沿った力の変化を含む多くの力作用シナリオが可能であり、後退力を前進力と異なるものにする。
【0055】
磁石にかかる力は、その移動経路に沿った磁石材料の選択的配置によって変えることができる。例えば、鋼製リング又はワッシャは、ソレノイドニードルドライバの遠位端に配置され、ソレノイド電流をOFFにした後で磁石にかかる保持力を提供することができる。図1Aに示す緊急ニードル解除リングは、それが磁性鋼で作られる時に同じ目的を果たすことができる。後退中にソレノイド巻線によって及ぼされる初期力は、ワッシャの保持力に打ち勝つほど十分に強力である必要がある。
【0056】
図2~5のソレノイドニードルドライバは、蒸気送出ニードルの位置を正確に感知する機能を提供する。一実施形態では、磁場センサ128は、ニードルドライバ磁石の近くに配置することができ、これは、磁石によって生成される磁場に比例する電圧出力を提供する。磁場センサは、磁場が磁石位置(例えば、図2に示すように、後退位置にある時に磁石の近位端に隣接する)に対して単調な関係を有するように位置付けることができる。磁石の磁場は、ソレノイド巻線の磁場及び他の浮遊磁場と比較して大きく、磁石の位置及び従ってニードルの位置は、ニードル展開の前、その間、及び後のいつでも磁場センサによって一意的に決定することができる。展開不足のニードルへの蒸気の送出は、それによって蒸気送出システムのコントローラによって阻止することができる。ニードル展開中の磁石位置対時間も、コントローラによってモニタすることができる。磁石の完全であるが遅い又はぎくしゃくした動きは、システム内の過度の摩擦、又は磁石又はニードルの結合を示す場合がある。
【0057】
別の実施形態では、磁石/ニードル位置の表示は、磁石がソレノイド巻線に作用する逆起電力によって提供することができる。ソレノイドが一定電流源によって励起される時に、逆起電力は、磁石が移動する時はいつでもソレノイドにわたる電圧の低下として現れる。電流/電圧/逆起電力は、ソレノイドにおいて又はこれに代えて電力をソレノイドに提供する発電機において電流センサで測定することができる。ソレノイドが24ボルトDC電源のような一定電圧で励起される時に、逆起電力は、ソレノイド回路を通って流れる電流の低下として現れる。図6は、ニードルドライバ磁石が正常に展開された時の正常ソレノイド電流132(電流の低下を含む)、及び磁石が移動することが阻止される時の故障ソレノイド電流134(一定電流を示す)を示す。逆電流は、磁石が移動している時にのみ発生し、磁石及びニードルドライバが約10ミリ秒で完全に展開されることを示している。電流は、コンピュータの1サンプリングサイクル又は50ミリ秒にわたってONのままである。
【0058】
逆起電力を隔離するために、電流センサ出力は、非展開に関連付けられたDCレベルを排除し、かつ電流がON及びOFFになる時の高速移行を排除するために帯域通過フィルタリングすることができる。フィルタ出力の振幅は、コントローラによってサンプリングする時にONビットとして解釈される場合があるパルスを生じる。ソレノイド電力がONに切り換えられた後で逆電流パルスが測定されない場合に、磁石は移動せず、オペレータに警告が出される。逆電流波形の更に別の解析は、磁石及びニードル移動の改良された診断を提供することができる。例えば、逆電流の持続時間は、どの位長く磁石が移動していたかを示し、これは、どれほど磁石が移動しているかの表示である。波形のノイズ又は律動は、その移動に沿った摩擦増大の点を示すことができる。
【0059】
図7は、図1Cの蒸気送出システムの蒸気発生器112の詳細図である。蒸気発生器112は、内側蒸気コイル136及び内側蒸気コイルを取り囲む導電ワイヤの外側RFコイル138を含むことができる。滅菌水は、内側蒸気コイルの中に導入することができ、RF発生器139によって外側RFコイルのリード140に印加されるRF電流は、内側蒸気コイルを誘導加熱することができ、スチーム、すなわち、蒸気を発生させる。内側蒸気コイルは、内側コイルから流体源に延びるプラスチックチューブを通して滅菌水の供給源に接続することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、蒸気コイルの巻線は、インコネル、すなわち、ニッケル/クロムステンレス鋼金属チューブから構成することができる。例えば、18ゲージRFインコネル625チューブ又は18ゲージ薄壁(TW)インコネル625が好ましい。これに代えて、図7の外側RFコイルに流入するRF周波数電流は、内側蒸気コイルの本体において円周電流流れを誘導する。内側蒸気コイルの巻線の間に良好な電気接触を有することが重要である。
【0061】
この場合に、加熱要素は、N巻回外側RFコイル及び一巻回内側蒸気コイルを有する変圧器としてモデル化することができる。内側コイルに流入する電流は、RFコイルに流入する電流の約N倍とすることができる。誘導された内側コイル電流は、内側コイルに流入する水を蒸気に変換するオーム(I2r)加熱により内側コイルにおいて熱を生成する。上述のように、内側蒸気コイルの個々のコイル巻線が物理的接触状態にされるのが有利であり、これは、巻線間で良好な電気接触を保証するように個々の巻線を互いに半田付け又は溶接することによって達成することができる。インコネル625コイル状チューブの1つの顕著な利点は、その面上に形成される酸化層が十分に薄く、半田付けの要件なしに内側蒸気コイルの隣接巻線間でRF電流を自由に通過させるということである。
【0062】
インコネルの別の利点は、それが本質的に非磁性材料であるということである。透磁性は、RFコイルと内側コイルの間の結合を高めることができるが、ステンレス鋼チューブの磁気特性は、チューブのロット毎に一貫していない。デバイスによるカロリー出力の一貫性は非常に重要であるので、この用途では非磁性チューブが好ましい。304のようなステンレス鋼は、焼きなましされて磁気特性を排除することができる。インコネル625チューブの別の利点は、その電気的特性が、内側コイルの誘導加熱によって受ける範囲を超える温度(室温~350℃)とはほとんど無関係であることである。304又は316のようなステンレス鋼は、温度と共に電気的特性の遥かに大きい実質的な変化を有するだけでなく、これらの材料の多相構成に起因して、温度サイクルは、小さいが有意な影響がある電気的特性の履歴依存かつ予想不能な変化を生む可能性がある。
【0063】
本発明の開示の蒸気送出デバイスのカロリー出力は、効率係数を通して治療送出中のRF発生器の電力入力に関連する。カロリー出力は、デバイスの熱サイクルに起因して成分値の変化とは無関係に、送出される電力が一定である場合に発射毎に一貫することになる。カロリー出力は、入力電力が常に与えられた治療に対して同じである場合及び効率係数がデバイスによって一貫している場合に、デバイスによって一貫している。デバイス間の一貫性は、デバイス製造の一貫性によって達成される。更に、一貫性は、入力電力が一定に保たれれば、電力結合効率が100%に近づくので改善する。換言すると、デバイスパラメータの変動は、出力装置に送出される一定の入力電力の百分率が100%に近づくので出力に対する低減効果を有する。
【0064】
一実施形態では、RF発生器は、出力装置において電圧及び電流を測定することによってその出力で設定値に送出する電力をサーボするように設計され、出力電力を計算し、リアルタイムで出力電圧を調節して出力電力を設定電力に等しく保つ。ジュール加熱として蒸気コイルに送出される入力電力の百分率は、相互インダクタンスMを通して電流がRFコイルから蒸気コイルに誘導結合される蒸気送出システムの等価回路を解析することによって計算することができる。
【0065】
要素は、以下の通り定義することができる:
【0066】
V=MHzの周波数fで送出されるボルト単位のrf発生器電圧振幅、
1=アンペア単位の送出デバイスに流入するrf電流、
2=アンペア単位の蒸気送出コイルに流入するrf電流、
C及びR1は、オーム単位のそれぞれケーブル及びrfコイルのac抵抗であり、
C及びL1は、μH単位のそれぞれケーブル及びrfコイルのインダクタンスであり、
2は、オーム単位の蒸気送出コイルの円周ac抵抗であり、
2は、μH単位の蒸気送出コイルのインダクタンスであり、
Mは、μH単位のrfコイルと蒸気送出コイルの間の相互インダクタンスであり、
ここで、M2=cL12、0<c1、
cは、rf及び蒸気コイル間の変圧器結合係数である。
【0067】
電力結合効率は、蒸気送出コイルで発生するオーム熱対入力電力の比として定義される:
【0068】
η=<I2 2R2>/<I1V>、0<η<1
【0069】
ブラケット<>は、周波数「f」で正弦波入力の1サイクルにわたる平均を表している。設計目標は、電力結合効率ηをできるだけ1(100%)の近くにすることである。標準数学的解析を使用して、図7に対する回路方程式を解いて他の回路パラメータに関してηの式を解くことができる。
【0070】
η=xQ2/(1+xQ2+Q2 2
ここで、x=2πfcL1/(RC+R1
2=2πfL2/R2
【0071】
ここで、xは、入力回路のパラメータ及び結合係数を含み、Q2は、専ら2次蒸気送出コイルのパラメータを含む。効率は、xの固定値に対してQ2の関数として図10にプロットされている。効率は、xの全ての値に対してQ2=1である時にピーク値を有し、効率は、xの増加と共に増加することを見ることができる。この事実を認識する1つの方法は、内側コイルの電気抵抗が高すぎる時に、渦電流の誘導は熱がほとんど生成されずに小さくなることになるということである。その結果、内側コイルの電気抵抗が小さすぎる時に、I2 22オーム熱は小さくなる。曲線のピークが予想される。
【0072】
蒸気送出システムの実用設計では、加熱要素は、入れ子にしたソレノイドコイルを含むことができ、ここで内側蒸気コイルは、単一巻回巻線である。ソレノイドコイルのインダクタンス及び入れ子にしたソレノイドコイルの相互インダクタンスの公式は、文献に見出すことができ、効率に対するソリューションを完了させる。これらの公式は、数値積分を必要とする。しかし、長くて薄い入れ子にしたコイルを用いて、閉じた形式の解が利用可能である。この近似では、Q2は以下の通りである:
【0073】
単一巻回ソレノイドコイルに対してQ2=2πfμ0μ2Dt/(4ρ)
ここで、μ0=自由空間の透磁率=4πx10-7ヘンリー/メータ
μ2=蒸気コイルの相対透磁率
D=メートル単位の蒸気コイル直径
t=m単位の蒸気コイルチューブ壁厚又は周波数fでの皮膚深度のうちの小さい方
ρ=オーム-メートル単位の内側コイルチューブの電気抵抗
【0074】
2を含むパラメータの組合せは、好ましい実施形態では、Q2≒1を強いるように選択され、それによって電力結合効率を最適化する。内側コイルの相対透磁率μ2は、インコネル及び焼きなまし300系ステンレス鋼のような非磁性材料に対して1に等しい。
【0075】
作動周波数は、Q2=1に設定するように調節することができるが、一般的な医療のためのRF発生器は、400~500kHz範囲の作動周波数を有する。加熱要素から放射される電力のような複雑性は、より高周波で起こり、効率は、より低い周波数で下がり始める。直径及びチューブ壁厚は、システム制約内で調節することができ、適切な電気抵抗を有する材料は、できるだけ1に近い形でQ2を有するように選択することができる。好ましい実施形態では、内側コイルの外径は9mmであり、壁厚は0.2mmであり、材料は1.32オーム-mの抵抗率を有するインコネル625であり、作動周波数は、1.2の計算Q2及び1に近い測定Q2を生成する440kHzである。内側コイルインダクタンスの数値的評価は、Q2の計算及び測定値をより近い合意にもたらす。
【0076】
加熱要素回路の入力側に関するパラメータは、実用的制約内でxの値を最大にするように選択することができる。例えば、単層RFコイルにおいて細いワイヤの多数巻回を使用することにより、又はより大きい直径のワイヤの多層コイルを生成することによってL1を増加させるのが容易である。実際に、100ワット又はそれよりも高い加熱電力は、十分な蒸気治療を提供するのに必要である場合がある。5~20アンペアの範囲のAC電流は、十分な電力を送出するのに必要である場合があり、その結果、RFコイルに対して選択されたワイヤは、この範囲の電流搬送容量を有する必要があるようになる。与えられたRF電流に対して直径が小さすぎるワイヤは、治療中に時間と共に抵抗及び温度の大きい増加を示すことになる。xに対する公式から、抵抗R1の増加は、xの値を引き下げる。
【0077】
例えば、一実施形態では、AWG#22リッツ線で作られた単層コイルは、#20又は#24リッツ線のいずれかから作られた同じ長さのコイルよりも高いカロリー出力を与えたということが見出されている。多層コイルは、ある程度実用的である場合がある。結合定数cは、RFと蒸気コイルの間の分離が増大する時に低下する。長いソレノイドコイルの例では、cは、内側コイルと外側コイルの断面積の比に等しいので、一定蒸気コイル直径に対して外側コイル直径の2乗に比例して低下する。別の実用限界は、RFコイル回路のインピーダンスが、RFコイルインダクタンスL1と共に増加し、RFコイルにおいて与えられた電流を生成するのにより高い電圧を必要とするということである。高い電圧は、医療用途においては実用的及び規制上の限界がある。ケーブル抵抗も、大きい直径の銅線で作られた高いケーブルが臨床診療では許容されないので実用限界がある。x>15及び75%~90%の効率を有する機能する蒸気送出システムが達成されている。
【0078】
蒸気送出システムの全体効率は、電力結合効率が100%に近づく時でさえも100%未満である。これは、加熱要素、並びに送出チューブ及びニードルからの伝導、対流、及び放射に失われた熱と、内側コイルから離れて部分的に伝導又は放射されるRFコイル中の電流によるオーム加熱とに起因する。送出デバイスの熱設計は、これらの損失を蒸気コイルで発生する熱の約8%まで最小にする。蒸気送出システムの全体効率は、方程式によって定められる。
【0079】
ニードルからのカロリー出力x(4.186ジュール/カロリー)/治療時間=εPin ここで、ε=全体電力結合効率
Pin=Rezum発生器からの一定電力入力
【0080】
蒸気送出ニードルからのカロリー出力は、熱量計で蒸気を既知の量の水に送出することによって容易に測定される。BPH治療に使用する送出デバイスに関して、平均測定カロリー出力は208カロリーであった。これらのデバイスに対するBPH処置治療時間は、9秒である。本出願人の実験室から構成された送出デバイスは、ε=84%の全体効率(上記方程式から計算された)に対して僅か115ワットの入力電力で208カロリー出力を得ている。最初の市販送出デバイスは、ε=73%の全体効率に対して132ワットの入力電力で208カロリーを得ている。
【0081】
RFコイル内のオーム加熱からの熱損失は、RFと内側コイルの間の良好な熱的接触を保証することによって最小にすることができる。これは、2つのコイルの間の電気絶縁体の厚みを最小にし、依然として電気安全要件を満たすことによって得られる。良好な結果は、0.1mmの壁厚を有するポリイミド(カプトン)チューブである絶縁体に見出される。同様に、蒸気コイルに対して薄壁ハイポチューブを使用することは、rfコイルにおいて発生する熱が内側チューブにおいて水によりよく伝導することを可能にする。ここでのトレードオフは、ハイポチューブの機械的一体性及びQ2を1の近くに保つことである。
【0082】
電力結合効率は、内側蒸気コイルチューブに送出されたオーム加熱電力をRF発生器入力電力によって割り算した比として定義される。デバイスからのカロリー出力の更に別の損失は、送出ツールハンドル内の及び送出デバイスプローブを通した蒸気経路に沿った伝導、対流、及び放射に失われた熱によって起こる。これらの損失は、蒸気経路に沿って蒸気の凝縮で現れる。蒸発の大きい潜熱が、蒸気がデバイス内で凝縮する時に送出デバイス出力から失われる。凝縮した高温水は、組織に送出することができるが、蒸気よりも遙かに小さい熱含有量を有して送出される。
【0083】
熱損失は、以下の手段のうちの1又は2以上によって最小にすることができる:
【0084】
1)加熱要素の周りの断熱。空気は、良好で廉価な絶縁体である。一部の実施形態では、低質量バッフルを追加して対流を抑制することができる。
【0085】
2)ハンドルの内面上の金属反射器。金属反射器は、熱放射を反射して加熱要素に戻すことができる。これらの反射器は、反射器(例えば、連続電流経路がないホイル)において渦電流加熱を回避しなければならない。一部の実施形態では、反射器は、正方形にダイスカットされて電流経路を分解することができる。
【0086】
3)外側チューブの長さ及び熱伝導性を最小にする。蒸気送出ニードルへのチューブ接続内側コイル出口は、短縮するか又は最小にすることができる。
【0087】
4)蒸気送出ニードルの周りの空隙。
【0088】
カロリー送出効率の上記の議論は、蒸気への変換のために内側コイルに対して一貫して確実な水の流れを仮定している。実際には、水ラインチューブは、ある程度まで柔軟であり、それは、それが治療の最初に加圧下で延伸されると少量の水を格納することができる。滅菌水は、制御された流量でポンピングされているので、格納水は、内側コイルに送出された水から引き算され、治療の最初に送出デバイスのカロリー出力を低減する。チューブ柔軟性内に格納された水は、治療の終わりに放出されるが、RF電力は、この解除中にOFFであるので、それはカロリー出力に寄与しない。
【0089】
流れがチューブ柔軟性内に迂回される時間の長さは、チューブ柔軟性と水ライン及び内側コイル流れ抵抗との掛け算に依存している。内側蒸気コイルの流れ抵抗は、水ラインが内側コイル外径にわたって適合するようなサイズにされるので、水ラインの流れ抵抗よりも遥かに大きく、流れ抵抗は、チューブ内径の逆4乗で増加する。内側コイルの内径の僅かな縮小は、内側コイル内の水流量がその平衡値に達するのにそれがかかる時間を増大し、送出デバイスのカロリー出力を低減する可能性がある。
【0090】
実際に、内側コイルへの水の流れ及び送出デバイスのカロリー出力は、水ラインがPTFE(テフロン(登録商標))のような剛性の非柔軟材料で作られる時に僅かであることが見出されている。高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)のような幾分より柔軟な材料は、僅かなカロリー減少を示すに過ぎないが、PVCのようなより柔軟な材料は、チューブ壁厚が有意に増加してその柔軟性を低減しない限り、治療の最初にカロリー出力の有意な減少を有することができる。
【0091】
内側蒸気コイルの内径を増大させることは、水ラインチューブ柔軟性へのカロリー依存を低減する。1つの例では、内側コイル内径が0.84mmから0.89mmに増大した時に、全カロリーが、厚いPVC水ライン材料を用いて回収された。生産において、内側コイルチューブの内径は、サイズ不足内径に起因する流れ抵抗の偶然の増加を回避するように緊密に指定しなければならない。プラグ引き抜きチューブは、薄壁ハイポチューブの内径及び外径の両方を制御する。この工程では、チューブ内径は、±0.0005又は±0.0127mmの公差に保持される。
【0092】
内側コイルを蒸気送出ニードルに接続するチューブの柔軟性も、このチューブ内の容積膨張に起因する凝縮を回避し、かつ出力ニードル孔からの蒸気の流出を抑制する振動を阻止するように最小にしなければならない。シリコンは、それが高い蒸気温度に耐えるので、接続チューブに対して好ましい材料である。一部の実施形態では、繊維ガラスメッシュがチューブ外径の上に配置され、その膨張を阻止する。別の実施形態では、金属編組が、シリコンチューブの壁の中に共押出されてそれを非柔軟にする。別の実施形態では、加熱要素は、送出デバイスのバレルに配置され、加熱要素を蒸気送出ニードルに接続するあらゆるチューブの長さを最小にする。
【0093】
図8A~8Dは、蒸気送出システムの蒸気ニードルがシステムの出荷中に移動するのを防止する出荷ピン機構を示している。図8Aを参照すると、ニードルホルダ122が、蒸気送出ニードル106に接着される。ニードルホルダ122は、以下に説明する出荷ピンを捕捉するようになっているフック特徴部142を更に含む。
【0094】
図8Bを参照すると、蒸気送出ニードル106は、ニードルシール144を更に含み、これは、ニードルを前進させるデバイスのシャフトの内腔を密封するように構成される。ニードルシールは、流体及び他のデブリが内腔に入るのを阻止する。
【0095】
図8Cは、出荷パッケージ143に包装された蒸気送出システム100を示している。図示のように、蒸気送出ニードルは、デバイスの遠位先端を超えて進められ、出荷ピン146は、パッケージの開口部を通してデバイスのフック特徴部の中に配置されて所定位置にニードルの位置をロックする。図8Dは、出荷ピン146の近接図を示し、出荷ピンが出荷パッケージ143を通して蒸気送出システムのフック特徴部142の中に下方にいかに進むかを示している。
【0096】
出荷ピン機構は、出荷パッケージのトレイ保持器を通して蒸気送出システムの中に挿入可能なピンを含む。蒸気送出システムの内側では、ピンは、ニードルホルダが出荷中に移動することができないようにニードルホルダのフック特徴部に位置合わせしてこれを捕捉する。ニードルホルダはニードルに結合されるので、これは、出荷中にニードルがデバイスのシャフトの中に後退するのを阻止する。これは、ニードルがエミッタ端に設定された湾曲形状を有するという事実により、流通中のニードルの後退が許容不能である時に必要である。ニードルが仮に後退させられた場合に、この自然な曲げは、力をニードルシールに印加し、潜在的にシールを変形すると考えられる。ニードルシールの変形は、その後の使用中に漏れを生じる可能性があり、蒸気送出システムの内腔中への流体又はデブリを可能にする。更に、ニードルが内腔の中に後退する場合に、ニードルの形状は、長時間で変化する可能性がある。
【0097】
デバイス包装の開放時に、ユーザは、トレイ保持器を取り外さなければならない。出荷ピンがトレイ保持器の中にスナップして入るので、それは、トレイ保持器の取り外し中にデバイスからそれ自体を自然に取り外す。これは、出荷ピンとのユーザ相互作用を排除するように特に設計されたものである。
【0098】
本発明の特定の実施形態を詳細に上述したが、この説明は、例示的な目的のために過ぎず、本発明の上記説明は包括的ではないことは理解されるであろう。本発明の特定の特徴は、一部の図面に示されて他の図面には示されていないが、これは、便宜上に過ぎず、あらゆる特徴は、本発明により互いに組み合わせることができる。いくつかの変形及び代替物は、当業者には明らかであろう。そのような代替物及び変形は、特許請求の範囲に含まれるように意図している。従属請求項に提示する特定の特徴は、組み合わせて本発明の範囲に該当することができる。本発明はまた、従属請求項が他の独立請求項を参照して代わりに多重従属請求項フォーマットに書かれたかのような実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0099】
100 システム蒸気送出システム
110 ソレノイドニードルドライバ
112 蒸気発生器
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D