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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】電子ドラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 3/14 20060101AFI20230509BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G10H3/14 A
G10H1/00 A
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021506584
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 GB2019052221
(87)【国際公開番号】W WO2020030912
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】1812826.4
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1909213.9
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520222597
【氏名又は名称】ソナス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジェームス ヘイスティングス
(72)【発明者】
【氏名】マコーリフ,ジョン マイケル
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6150600(US,A)
【文献】米国特許第4852443(US,A)
【文献】特開2018-36640(JP,A)
【文献】特表2017-532614(JP,A)
【文献】特開平6-161449(JP,A)
【文献】米国特許第5293000(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00,3/14
G10D 13/00
G06F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部材と、
ドラムヘッドと、
前記ドラムヘッドに取り付けられ、共振周波数を有する受動共振回路と、前記底部材に取り付けられ、前記受動共振回路を前記共振周波数で励起するように構成された能動共振回路とを備えるドラムセンサと、
前記共振周波数のRF駆動信号で前記能動共振回路を駆動するためのセンサドライバと、
前記ドラムヘッドの位置および/または速度を検知するために、駆動された前記能動共振回路からのRF信号のレベルを検出する検出器と、
前記検出器に結合された信号処理部であって、前記RF信号の検出されたレベルを処理して、前記ドラムヘッドの位置および/または速度を検知し、前記ドラムヘッドの打撃時点を判定するように構成された信号処理部と、
を具備する電子ドラム。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記RF信号の検出されたレベルを処理して、前記ドラムヘッドが打撃された前記ドラムヘッド上の位置を判定するように構成されている、
請求項1に記載の電子ドラム。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記RF信号の検出されたレベルを処理して、前記ドラムヘッドの打撃強度と、前記ドラムヘッドが打撃された際の前記ドラムヘッドとの接触の持続時間との1または両方を判定するように、さらに構成されている、
請求項1または2に記載の電子ドラム。
【請求項4】
前記RF信号の検出されたレベルによりドラムヘッド応答波形を特定し、前記信号処理部は、1つのドラムセンサの前記ドラムヘッド応答波形から、前記ドラムヘッド上の打撃の半径方向における位置と前記ドラムヘッドの速度との両方を判定するように構成されている、
請求項1、請求項2または請求項3に記載の電子ドラム。
【請求項5】
前記ドラムセンサからの前記RF信号の検出されたレベルによりドラムヘッド応答波形を特定し、前記電子ドラムは2以上の前記ドラムセンサを備え、前記信号処理部は、前記ドラムヘッド上の打撃の位置を判定するために、前記2以上のセンサの前記ドラムヘッド応答波形間の振幅の差とタイミングの差とのうちの1または両方を判定するように構成されている、
請求項1、請求項2または請求項3に記載の電子ドラム。
【請求項6】
前記信号処理部に結合されたドラム音生成システムをさらに備え、前記ドラム音生成システムは、前記信号処理部からの出力に応じて、デジタル化されたドラム音サンプルを選択しオーディオ出力するように構成されている、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項7】
前記ドラムセンサは、前記能動共振回路と前記受動共振回路との間に変形可能セパレータ素子を備え、前記受動共振回路と前記変形可能セパレータ素子と前記能動共振回路とが、前記受動共振回路と前記能動共振回路との間に機械的経路を有するドラムセンサスタックを構成する、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項8】
前記ドラムセンサが、前記ドラムヘッドを支持するように構成されている、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項9】
前記ドラムセンサスタックは、前記受動共振回路を保護するために、前記ドラムヘッドと前記受動共振回路との間に配置されたインターポーザ素子をさらに備える、
請求項7に記載の電子ドラム。
【請求項10】
前記ドラムヘッドと前記受動共振回路との間の距離の調整をユーザが変更できるように、ユーザが交換可能な複数のインターポーザ素子を備える、
請求項9に記載の電子ドラム。
【請求項11】
前記ドラムヘッドの異なる位置に配置された複数のドラムセンサを備え、前記インターポーザ素子は前記複数のドラムセンサ間で共有される、
請求項9または請求項10に記載の電子ドラム。
【請求項12】
前記ドラムヘッドの異なる位置に配置された複数のドラムセンサを備え、前記複数のドラムセンサのうちの1つが前記ドラムヘッドの中心に配置され、前記複数のドラムセンサのうちの少なくとも1が前記ドラムヘッドの端部に隣接して配置されている、
請求項1から請求項11のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項13】
記ドラムヘッドの端部に隣接して配置されて同時に駆動される複数のドラムセンサが、少なくとも1のドラムセンサによって半径方向において分離されるように、前記複数のドラムセンサのRF駆動信号を多重化する多重化システムをさらに備える、
請求項12に記載の電子ドラム。
【請求項14】
前記ドラムヘッドは、当該ドラムヘッドの端部の周りにドラムヘッドリップを備え、前記底部材は、当該底部材の端部の周りに底部材リップを備え、前記ドラムヘッドリップが、前記底部材リップの内側に嵌合されるように構成されているか、あるいは、前記底部材リップが、前記ドラムヘッドリップの内側に嵌合するように構成されている、
請求項1から請求項13のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項15】
複数のドラムセンサと、
前記RF信号の検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムと
をさらに含み、
前記温度補償システムは、前記複数のドラムセンサの能動共振回路の少なくとも1に共振外駆動信号を印加し、前記複数のドラムセンサの少なくとも1の検出器からの前記共振外駆動信号のレベルを測定し、前記共振外駆動信号のレベルに応じて前記RF信号の検出されたレベルを補償するように構成されている、
請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項16】
少なくとも前記能動共振回路は、逆向きの複数の巻線を有するコイルを備え、
逆向きの前記複数の巻線は、逆向きの磁場を生成して互いに打ち消すように構成されている、
請求項1から請求項15のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項17】
前記受動共振回路および前記能動共振回路のそれぞれは、逆向きの第1の巻線および第2の巻線を有するコイルを備え、前記第1の巻線と前記第2の巻線とは前記ドラムセンサの中心軸の反対側にある、
請求項16に記載の電子ドラム。
【請求項18】
前記底部材上にバックプレーンをさらに備え、
当該バックプレーンは、それぞれのドラムセンサ用の1または複数の巻線を有するコイルを各々が備える複数の前記能動共振回路を搭載し、
前記信号処理部は、前記RF信号の検出されたレベルを処理して、前記ドラムセンサに関連付けられたドラムヘッド応答を規定する前記ドラムヘッドの位置および/または速度を検知するように構成されており、
前記信号処理部は、1または複数の前記ドラムセンサの前記ドラムヘッド応答を個別にまたはグループごとに調整して、前記ドラムセンサの、動きに対する感度を設定するように構成可能である、
請求項1から請求項17のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項19】
さらに、前記信号処理部に関連付けられ、前記複数のドラムセンサの感度を定義する感度構成データを個別にまたはグループごとに格納する不揮発性メモリと、前記感度構成データのユーザ定義、前記感度構成データのインポート、および前記感度構成データのエクスポートのうちの1以上を可能にするインタフェースと、
を備える請求項18に記載の電子ドラム。
【請求項20】
バックプレーンを備え、
前記バックプレーンは、
1または複数の巻線を有するコイルを各々が備えた複数の前記能動共振回路を搭載し、
前記複数の能動共振回路の少なくともいくつかは、一対の能動共振回路において、一方の能動共振回路のコイルの前記1または複数の巻線の構成が、他方の能動共振回路のコイルの前記1または複数の巻線の構成とは逆向きとなるように、対になっている、
請求項1から請求項19のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項21】
前記複数の能動共振回路は、空間グループごとに配置され、
一空間グループ内のすべての複数の能動共振回路について、当該複数の能動共振回路の前記コイルの前記1または複数の巻線は同じ向きを有し、
隣接する複数の空間グループでは、前記複数の能動共振回路の前記コイルの前記1または複数の巻線は逆向きを有し、
一空間グループ内では、前記複数の能動共振回路が時間的に順次駆動されるように多重化される、
請求項20に記載の電子ドラム。
【請求項22】
複数のドラムセンサを各々が有する複数のドラムヘッドを備え、
同時に駆動される複数のドラムセンサが、異なるドラムヘッドに存在するように、および/または、2つの直交方向の少なくともいずれか、または半径方向において、少なくとも1のドラムセンサによって分離されるように、前記複数のドラムセンサのRF駆動信号を多重化する多重化システムを備える、
請求項1から請求項21のいずれかに記載の電子ドラム。
【請求項23】
電子ドラムパッドの圧力を検知する検知システムであって、
複数のドラムパッドセンサを備え、
各ドラムパッドセンサは、
共振周波数を有する受動共振回路と、前記共振周波数で前記受動共振回路を励起するように構成された能動共振回路と、
前記受動共振回路および前記能動共振回路の1または両方の下方、または、前記受動共振回路と前記能動共振回路と間に変形可能な素子とを備え、
当該検知システムは、さらに、
前記能動共振回路を前記共振周波数のRF駆動信号で駆動する少なくとも1のセンサドライバと、
駆動されたセンサからのRF信号のレベルを検出する、関連付けられた前記ドラムパッドの位置および/または速度を検知するための、少なくとも1の検出器と、
を具備する検知システム。
【請求項24】
少なくとも前記能動共振回路は、逆向きの複数の巻線を有するコイルを備え、
逆向きの前記複数の巻線は、逆向きの磁場を生成して互いに打ち消すように構成されている、
請求項23に記載の検知システム。
【請求項25】
前記受動共振回路および前記能動共振回路のそれぞれは、逆向きの第1の巻線および第2の巻線を有するコイルを備え、前記第1の巻線と前記第2の巻線とは前記ドラムパッドセンサの中心軸の反対側にある、
請求項23または請求項24に記載の検知システム。
【請求項26】
前記電子ドラムパッドは底部材とドラムヘッドとを備え、
前記検出器に結合された信号処理部であって、前記RF信号の検出されたレベルを処理して、各ドラムパッドセンサに関連付けられたドラムヘッド応答を規定する前記ドラムヘッドの位置および/または速度を検知するように構成された信号処理部と、
前記底部材上にバックプレーンと、
をさらに備え、
前記バックプレーンは、それぞれのドラムパッドセンサ用の1または複数の巻線を有するコイルを各々が備える複数の前記能動共振回路を搭載し、
前記信号処理部は、1または複数の前記ドラムパッドセンサの前記ドラムヘッド応答を個別にまたはグループごとに調整して、各ドラムパッドセンサの、動きに対する感度を設定するように構成可能である、
請求項23から請求項25のいずれかに記載の検知システム。
【請求項27】
さらに、前記信号処理部に関連付けられ、前記複数のドラムパッドセンサの感度を定義する感度構成データを個別にまたはグループごとに格納する不揮発性メモリと、前記感度構成データのユーザ定義、前記感度構成データのインポート、および前記感度構成データのエクスポートのうちの1以上を可能にするインタフェースと、
を備える請求項26に記載の検知システム。
【請求項28】
バックプレーンを備え、
前記バックプレーンは、
1または複数の巻線を有するコイルを各々が備えた複数の前記能動共振回路を搭載し、
前記複数の能動共振回路の少なくともいくつかは、一対の能動共振回路において、一方の能動共振回路のコイルの前記1または複数の巻線の構成が、他方の能動共振回路のコイルの前記1または複数の巻線の構成とは逆向きとなるように、対になっている、
請求項23から請求項27のいずれかに記載の検知システム。
【請求項29】
前記複数の能動共振回路は、空間グループごとに配置され、
一空間グループ内のすべての複数の能動共振回路について、当該複数の能動共振回路の前記コイルの前記1または複数の巻線は同じ向きを有し、
隣接する複数の空間グループでは、前記複数の能動共振回路の前記コイルの前記1または複数の巻線は逆向きを有し、
一空間グループ内では、前記複数の能動共振回路が時間的に順次駆動されるように多重化される、
請求項28に記載の検知システム。
【請求項30】
複数のドラムパッドセンサを各々が有する複数のドラムヘッドを備え、
同時に駆動される複数のドラムパッドセンサが、異なるドラムヘッドに存在するように、および/または、2つの直交方向の少なくともいずれか、または半径方向において、少なくとも1のドラムパッドセンサによって分離されるように、前記複数のドラムパッドセンサのRF駆動信号を多重化する多重化システムを備える、
請求項23から請求項29のいずれかに記載の検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ドラムの改良が求められている。
【発明の概要】
【0003】
したがって、一態様では、電子ドラムが提供される。電子ドラムは、底部材を備えてもよい。電子ドラムは、さらに、ドラムヘッドまたはドラムパッドを備えてもよい。電子ドラムは、ドラムセンサをさらに含んでもよい。ドラムセンサは、ドラムヘッドに取り付けられ共振周波数を有する受動共振回路と、例えば底部材に取り付けられ共振周波数で受動共振回路を励起するように構成された能動共振回路とを備えてもよい。電子ドラムは、共振周波数のRF駆動信号で能動共振回路を駆動するセンサドライバをさらに備えてもよい。電子ドラムは、ドラムヘッドの位置および/または速度を検知するために、駆動された能動共振回路からのRF信号のレベルを検出する検出器をさらに備えてもよい。電子ドラムは、検出器に結合され、RF信号の検出されたレベルを処理して、ドラムヘッドの打撃時点を判定するためにドラムヘッドの位置および/または速度を検知するように構成された信号処理部をさらに備えてもよい。
【0004】
いくつかの実施態様では、信号処理部は、RF信号の検出されたレベルを処理して、ドラムヘッドが打撃された際のドラムヘッド上の位置を判定するように構成される。1つのドラムセンサから、例えば、RF信号の検出されたレベルの波形または振幅から、位置を判定してもよいし、あるいは複数のドラムセンサを用いて位置を判定してもよい。
【0005】
したがって、実施態様では、RF信号の検出されたレベルによりドラムヘッド応答波形を特定し、信号処理部は、1つのドラムセンサのドラムヘッド応答波形から、ドラムヘッド上の打撃の半径方向における位置および/またはドラムヘッドの速度の両方を判定するように構成されている。
【0006】
信号処理部は、さらに、RF信号の検出されたレベルを処理して、ドラムヘッドの打撃の強度と、ドラムヘッドが打撃された際のドラムヘッドとの接触の持続時間とのうちの1または両方を判定するように構成されてもよい。
【0007】
信号処理部は、RF信号の検出されたレベルを処理して、ドラムヘッドが打撃されたドラムヘッド上の位置を判定するように構成されてもよい。音生成システム(例えば、ドラム音生成システム)のユーザがドラムヘッドの異なる領域に異なる音を割り当てることを望む場合があるため、これは有利である。したがって、ユーザは、ドラムヘッドの端部が打撃されると「シンバル」音を再生し、ドラムヘッドの中心部が打撃されると「スネア」音を再生するよう割り当ててもよい。このように、信号処理部はどこで打撃が発生したかを判定できるため、ドラムヘッドを1つだけ用いて多種多様な音を再生してもよい。他の任意のバリエーションを、ドラムヘッドの異なる領域に割り当ててもよい。有利には、実施形態により、打撃の正確な位置検出が実現される。
【0008】
信号処理部は、RF信号の検出されたレベルを処理して、ドラムヘッドの打撃強度と、ドラムヘッドが打撃された際のドラムヘッドとの接触の持続時間とのうちの1または両方を判定するようにさらに構成されてもよい。有利には、打撃に対する2値のオン/オフ応答のみを有する電子ドラムと比較して、より応答性の高い電子ドラムが実現される。信号処理部は、判定したドラムヘッドの最大速度と、ドラムヘッドの加速度と、ドラムヘッドの総移動距離とのうちの1以上を処理して、ドラムヘッドがどの程度の強度で打撃されたかを判定してもよい。接触の持続時間は、ドラムヘッドの変位前の位置(すなわち、打撃を受ける前のドラムヘッドの位置)に向けてドラムヘッドが戻り始める前のドラムヘッドの変位を測定した結果を処理することによって判定してもよい。接触は、ドラムスティックなどの器具とドラムヘッドとの接触であってもよい。接触は、ユーザ(例えばユーザの指)とドラムヘッドとの接触であってもよい。
【0009】
RF信号の検出されたレベルにより、ドラムヘッド応答波形を特定し得る。信号処理部は、1つのドラムセンサのドラムヘッド応答波形から、ドラムヘッド上の打撃の半径方向における位置とドラムヘッドの速度の両方を判定するように構成されてもよい。有利には、ドラムセンサが1つだけあれば、打撃の半径方向位置と(打撃に応じた)ドラムヘッドの速度との両方を判定することが可能となる。多種多様に応答(すなわち、打撃の位置および/またはドラムヘッドの速度に依存)する電子ドラムを、複数のドラムセンサではなく、1つのドラムセンサのみで提供し得るため、コスト面で有利である。1つのセンサだけでそのような応答性を有するドラムを提供することができるため、多数のセンサを有するドラムと比較して、より簡易で、より効率的な製造プロセスがさらに実現される。信号処理部は、判定したドラムヘッド応答波形を、電子ドラムのメモリに記憶されたドラムヘッド応答波形テンプレートと比較してもよい。
【0010】
例えば、電子ドラムは、10個の異なる打撃(すなわち、様々な半径方向における打撃の位置および/または打撃強度)について予想されるドラムヘッド応答波形に対応する10個の異なるテンプレートを記憶してもよい。そして、信号処理部は、特定したドラムヘッド応答波形を記憶されたドラムヘッド応答波形と比較し、最も近い波形を見つけ、次に、記憶されたドラムヘッド応答波形のうち最も近い波形に関連付けられた半径方向における打撃(および/または打撃強度)に相関する半径方向の位置(および/または特定の打撃強度)で打撃が行われたことを判定するように構成されてもよい。
【0011】
ドラムセンサからのRF信号の検出されたレベルによりドラムヘッド応答波形を特定し得る。電子ドラムは2以上のドラムセンサを備えてもよく、信号処理部は、ドラムヘッド上の打撃の位置を判定するために、2以上のセンサのドラムヘッド応答波形間の振幅の差とタイミングの差とのうちの1または両方を判定するように構成されてもよい。
【0012】
2以上のドラムセンサを有することで、1つのドラムセンサを有するドラムと比較して、打撃の位置の判定の精度を向上し得る。これは、2つのドラムセンサを有するドラムが、半径方向の位置(ここで、半径方向の位置はドラムの中心からの距離)だけを判定するのではなく、ドラムの表面上のドラム打撃の正確な位置を判定できるからである。有利には、ドラムヘッドの異なる部分により多くの音響特性を割り当てることが可能となる。ドラムが打撃の位置を判定するように構成されているので、例えば、2つのドラムセンサを有するドラムにおける4つの異なる象限での打撃によって4つの異なるドラム音が発音されてもよい。振幅は、ドラムヘッド応答波形のゼロレベルからドラムヘッド応答波形の最大レベルまでの量として特定されてもよい。
【0013】
電子ドラムは、信号処理部に結合されたドラム音生成システムを備えてもよい。ドラム音生成システムは、信号処理部からの出力に応じて、デジタル化されたドラム音サンプルを選択しオーディオ出力するように構成されてもよい。有利には、電子ドラムの出力は、ドラム音生成システム、またはより一般的には音生成システムと互換性があってもよい。ドラム音生成システムは、オーディオファイルとして記憶された音サンプルを利用可能であり、および/または音を生成するためにシンセサイザを利用可能である。これにより、電子ドラムとのユーザインタラクション(例えば、打撃)に応じた音の出力が可能となる。
【0014】
ドラムセンサは、能動共振回路と受動共振回路との間に変形可能セパレータ素子を備えてもよく、ここで、受動共振回路と、変形可能セパレータ素子と、能動共振回路とは、受動共振回路と能動共振回路との間に機械的経路を有するドラムセンサスタックを構成してもよい。変形可能セパレータは、打撃に対するドラムヘッドの振動応答を最適化するように構成されてもよい。
【0015】
ドラムセンサは、ドラムヘッドを支持するように構成されてもよい。これにより、電子ドラムの耐久性が向上し得る。さらに、ドラムセンサがドラムヘッドを支持している場合、ドラムセンサがドラムヘッドを支持していない場合に比べてドラムセンサとドラムヘッドとがより強固に機械的に結合可能なため、ドラムセンサの、ドラム打撃に対する感度が増加し得る。
【0016】
ドラムセンサスタックはさらに、受動共振回路を保護するために、ドラムヘッドと受動共振回路との間に配置されたインターポーザ素子を備えてもよい。インターポーザは、スペーサおよび/または保護素子と呼ばれてもよい。
【0017】
電子ドラムは、ドラムヘッドと受動共振回路との距離の調整をユーザが変更できるように、ユーザが交換可能な複数のインターポーザ素子を備えてもよい。有利には、これにより、幅広い使用について正確な電子ドラムが実現される。例えば、ユーザがドラムヘッドを指で打撃する場合(すなわち、弱い力で打撃する場合)には、小さい(比較的薄い)インターポーザを用いてもよい。一方、ユーザがドラムヘッドをスティックで打撃する場合(すなわち、強い力で打撃する場合)には、大きい(比較的厚い)インターポーザを用いてもよい。
【0018】
電子ドラムは、ドラムヘッド上の異なる位置に配置された複数のドラムセンサを備えてもよく、インターポーザ素子は、複数のドラムセンサ間で共有されていてもよい。インターポーザの共有により、すべてのセンサを同じインターポーザで保護することができ、ひいては、ユーザはドラム全体を均一な方法で操作可能となる。インターポーザを共有することで、各ドラムセンサについて個別のインターポーザを有する電子ドラムと比較して、製造プロセスを簡素化し得る。
【0019】
電子ドラムは、ドラムヘッド上の異なる位置に配置された複数のドラムセンサを備えてもよく、複数のドラムセンサのうちの1つがドラムヘッドの中心に配置されてもよく、複数のドラムセンサのうちの少なくとも1がドラムヘッドの端部に隣接して配置されてもよい。センサをこのように配置することより、ドラムヘッドの表面全体にわたって打撃の正確な検知が可能となる。
【0020】
検知システムは、ドラムヘッドの端部に隣接して配置され、同時に駆動される複数のドラムセンサを、少なくとも1のドラムセンサによって半径方向において分離し得るように、ドラムセンサのRF駆動信号を多重化する多重化システムをさらに備えてもよい。有利には、同時にアクティブとなるドラムセンサを分離することにより、2つのドラムセンサ間の干渉が低減される。これにより、高精度なドラムセンサが実現される。
【0021】
ドラムヘッドは、ドラムヘッドの端部の周りにドラムヘッドリップを備えてもよく、底部材は、底部材の端部の周りに底部材リップを備えてもよく、ドラムヘッドのリップが、底部材のリップの内側に嵌合するように構成されてもよく、あるいは、底部材のリップが、ドラムヘッドのリップの内側に嵌合するように構成されてもよい。この意味で、ドラムヘッドは、底部材と合わせて完全なユニットとして構成し得る。これにより、構成要素のすべてがまとめて保持されるため、電子ドラムの耐久性が向上し得る。
【0022】
電子ドラムは、複数のドラムセンサと、RF信号の検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムとを備えてもよい。温度補償システムは、複数のドラムセンサの能動共振回路の少なくとも1に共振外駆動信号を印加し、複数のドラムセンサの少なくとも1の検出器からの共振外駆動信号のレベルを測定し、共振外駆動信号のレベルに応じてRF信号の検出されたレベルを補償するように構成されてもよい。
【0023】
電子ドラムは、温度の異なる様々な環境間で移動されることがある。例えば、スタジオからコンサート会場(温度が異なるおよび/または温度が変動する)に移動されることがある。したがって、温度補償システムは広範囲の温度にわたって正確なドラムセンサを実現するため、有利である。
【0024】
能動共振回路は、逆向きの複数の巻線を有するコイルを備えてもよく、特に、逆向きの複数の巻線は、逆向きの磁場を生成して互いに打ち消すように構成されている。これにより、複数のドラムセンサを備えたドラムの、より正確な読み取りが可能となる。さらに、磁場が打ち消されることにより、他のドラムセンサからの干渉が低減されるため、ドラムセンサをより低電力で動作させ得る。つまり、ノイズが少ないため、ドラムセンサは、逆向きの巻線を有するコイルのないドラムと比較して、より低電力で動作することができ、同等の信号対雑音比を維持することができる。したがって、各ドラムセンサをより低電力で駆動することができるので、電力効率が高まる。
【0025】
受動共振回路および能動共振回路のそれぞれは、逆向きの第1の巻線および第2の巻線を有するコイルを備えてもよく、第1の巻線と第2の巻線とはドラムセンサの中心軸の反対側にあってもよい。これにより、ドラムセンサ間の干渉の量を低減することができる。少なくとも上述した理由から、当該構成により、各ドラムセンサを低電力で駆動することができるので、電力効率を向上させることが可能となる。
【0026】
電子ドラムはさらに、底面部材上にバックプレーンを備えてもよく、バックプレーンは、それぞれのドラムセンサ用の1以上の巻線を有する各コイルを各々が備える複数の能動共振回路を搭載し、信号処理部は、RF信号の検出されたレベルを処理して、ドラムセンサに関連付けられたドラムヘッド応答を規定するドラムヘッドの位置および/または速度を検知するように構成されており、信号処理部は、ドラムセンサの1または複数のドラムセンサのドラムヘッド応答を個別にまたはグループごとに調整して、ドラムセンサの、移動に対する感度を設定するように構成可能である。有利には、移動に対して異なる感度を有するように構成可能な多様なドラムセンサを有する電子ドラムが実現される。最小限の接触(例えば、指のタップ)でドラムの左側の音を発音させ、より大きな接触(例えば、ドラムスティックの打撃)に応じてのみ、右側を発音させることを可能にしたいとユーザが望む場合がある。特定のドラムセンサの感度をユーザが指定可能にする電子ドラムを提供することにより、そのような高度な構成が実現される。
【0027】
電子ドラムは、信号処理部に関連付けられ、ドラムセンサの感度を定義する感度構成データを個別にまたはグループごとに格納する不揮発性メモリを備えてもよく、感度構成データのユーザ定義、感度構成データのインポート、および感度構成データのエクスポートのうちの1以上を可能にするインタフェースを備えてもよい。
【0028】
電子ドラムは、バックプレーンを含んでもよく、バックプレーンは、1以上の巻線を有する各コイルを各々が備えた複数の能動共振回路を搭載してもよい。能動共振回路の少なくともいくつかは、一対の能動共振回路において、能動共振回路の一方のコイルの1以上の巻線の構成が、能動共振回路の他方のコイルの1以上の巻線の構成とは逆向きとなるように、対になっている。
【0029】
電子ドラムは、少なくとも1のセンサドライバを備えてもよく、複数の能動共振回路は、空間グループごとに配置され、一空間グループ内のすべての能動共振回路について、複数の能動共振回路のコイルの1以上の巻線は同じ向きを有し、隣接する複数の空間グループでは、複数の能動共振回路のコイルの1以上の巻線は逆向きを有し、一空間グループ内では、複数の能動共振回路が時間的に順次駆動されるように多重化される。1つのドラムヘッド内に配置された複数の空間グループがあってもよい。複数のドラムヘッドにわたって配置された複数の空間グループがあってもよい。
【0030】
電子ドラムは、複数のドラムセンサを各々が有する複数のドラムヘッドを備えてもよく、同時に駆動される複数のドラムセンサが、異なるドラムヘッドに存在するように、および/または、2つの直交方向の少なくともいずれか、または半径方向において、少なくとも1のドラムセンサによって分離されるように、ドラムセンサのRF駆動信号を多重化する多重化システムを備えてもよい。有利には、2つの隣接するドラムセンサが同時に動作しないようにすることで、2つのドラムセンサ間の干渉が低減される。
【0031】
別の態様では、電子ドラムパッドの圧力を検知するための検知システムが提供される。検知システムは、複数のドラムパッドセンサを備えてもよい。各センサは、共振周波数を有する受動共振回路と、共振周波数で受動共振回路を励起するように構成された能動共振回路とを備えてもよい。各センサは、受動共振回路と能動共振回路の一方または両方の下方および/または間に、例えばゴムのブロックまたは層のような変形可能な素子をさらに備えてもよい。検知システムは、共振周波数のRF駆動信号で能動共振回路を駆動するための少なくとも1のセンサドライバをさらに備えてもよい。検知システムは、例えば、パッドへの打撃時点または打撃位置を判定するために、駆動されたセンサからのRF信号のレベルを検出する検出器であって、関連するドラムパッドの位置および/または速度を検知するための、少なくとも1の検出器をさらに備えてもよい。検知システムは、例えば、2つの次元の各々において、例えば、どのセンサも隣接するセンサと同時に駆動されないように構成された、多重化システムをさらに備えてもよい。
【0032】
上述した機能を実行するためのコードおよび/またはデータを伝送する、不揮発性メモリ等の非一過性のデータキャリアもまた提供される。コード/データは、解釈もしくはコンパイルされた従来のプログラミング言語でのソースコード、オブジェクトコードもしくは実行可能コードで構成され得る。またはVerilog(商標)等のハードウェア記述言語用のコードなど、ASICもしくはFPGAを設定もしくは制御するためのアセンブリコード、コード/データで構成され得る。当業者には理解されるように、そのようなコードおよび/またはデータは、互いに通信する複数の接続された構成素子の間で配信され得る。
【0033】
システムの他の態様を以下に説明する。これらは、前述したものと組み合わせてもよい。
【0034】
少なくとも能動共振回路、および、任意選択で受動共振回路は、特に、逆向きの巻線を有する1または2以上のコイルを備えてもよい。したがって例えば、巻線は、特にセンサから遠距離において、特に互いを打ち消すように均衡または相互に一致する逆向きの複数の磁場を生成してもよい。
【0035】
実施態様では、逆向きの巻線(および、つまりは逆向きの電流/磁場)を有するコイルと、多重化センサによるアドレッシングとを組み合わせることにより、極めて近接した位置で複数のセンサを容易に使用可能となる。したがって、実施態様では、逆向きの巻線は、均衡した逆向きの磁場を生成するように構成される。これにより、センサから距離が離れた箇所において、例えば、最大のコイル寸法の少なくとも10倍の距離において、磁場をほぼ完全に相殺し得る(センサからのRF場が、そのような離れた距離において検出不能であるというわけではない)。
【0036】
いくつかの実施態様では、能動共振回路は、2または3以上の、横方向に隣接するパンケーキコイルを備える。(本明細書において、2以上のコイルとの記載は、例えば巻線が逆向きである、2以上の巻線をもつ1つのコイルを含むと解釈され得る)。製造を容易にする目的で、パンケーキコイルをプリント回路基板(PCB)上に形成してもよく、PCBはフレキシブルPCBであってもよい。複数のコイルは必ずしも逆向きの巻線を有する必要はないが、このコイル構成を採用するだけで、相互干渉がある程度低減され得る。
【0037】
実施態様では、システム、特に多重化システムは、非駆動のドラムセンサの能動共振回路の動きを抑制するように構成される。例えば、コイル/センサを短絡、および/または共振外信号(例えば低周波数またはDC信号)で駆動することによって非駆動のドラムセンサの能動共振回路の動きを抑制する。この構成によれば、センサ間の干渉を低減することによって、共振回路ベースのセンサの使用が容易になる。
【0038】
上述した技術のうち1または複数を、近接するドラムセンサ間の干渉を制限するために採用してもよい。どの技術を、および、いくつの技術を採用するかは、ドラムが静止位置(アップ位置、および/または教示位置、および/または非打撃位置)にあるときの能動共振回路と受動共振回路との間の距離、および/または打撃位置と静止位置との間の移動距離に部分的に依存し得る。このように、概して、本検知システムのいくつかの実施態様では、近接するセンサ間の干渉を低減するために、本明細書に記載する多重化の構成およびいくつかの追加手段を利用してもよい。
【0039】
検知システムは、RF信号の検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムをさらに備えてもよい。温度補償システムは、複数の能動共振回路のうちの少なくとも1に共振外駆動信号を印加するように構成されてもよい。温度補償システムは次に、少なくとも1の検出器からの共振外駆動信号のレベルを測定してもよく、次に、共振外駆動信号のレベルに応じて、RF信号の検出されたレベルを補償(例えばオフセット)してもよい。いくつかの実施態様では、多重化システムは、複数のドラムセンサのうちの1つが、複数のタイムスロットのセットの各タイムスロットにおいて駆動されるように、駆動信号を多重化するように構成される。そして、温度補償システムは、追加のタイムスロット、特に、ドラム検査に用いないタイムスロットにおいて共振外駆動信号を印加するように構成されてもよい。
【0040】
いくつかの実施態様では、各ドラムセンサは、弾性変形可能な素子を備えてもよい。弾性変形可能な素子は、例えば複数の共振回路のうちの1の共振回路の下方に、例えば変形可能エンドストップとして設けられるか、または複数の共振回路の間に設けられてもよい。弾性変形可能な要素は、特に受動共振回路および能動共振回路の一方または両方の動きを制限し、特に弾性変形可能な要素に対する動きを検出することで圧力を検知する。
【0041】
関連する態様では、1または複数のドラムヘッドを備えた電子ドラムの応答を定期的に補償する方法が提供される。各ドラムヘッドは、能動共振回路と受動同調共振回路と検出器とを備えるセンサを有してもよい。当該方法は、第1の時刻tに検出された、センサからの初期出力信号Ot0を記憶部から読み出してもよい。tにおいて、能動共振回路は、能動共振回路の共振周波数を下回る周波数で駆動される。当該方法は、さらに、複数のセンサの少なくとも1について、tよりも後の時刻に、センサの後期出力信号Ot1を定期的に検出してもよい。当該方法は次に、調整値として、例えば、センサの初期出力信号とセンサの後期出力信号との差を算出してもよい。当該方法は次に、さらに、調整値を用いてセンサの動作出力を調整することによって、ドラムヘッドの応答を補償してもよい。動作出力は、能動共振回路の共振周波数で能動共振回路が駆動されているときのセンサからの出力であってよい。当該方法は、さらに、時分割多重化アドレス方式に従ってセンサを作動してもよい。そして当該方法は、時分割多重化アドレス方式において、センサが非作動中である「予備」タイムスロットを検出に用いてもよい。
【0042】
別の態様では、電子ドラム用の複数のセンサのセットが提供される。ドラムは、複数のドラムヘッドを有してもよい。複数のセンサのセットは、検知システムの一部であってもよい。各センサは、ドラムの移動部(すなわちドラムヘッド)に搭載するための受動共振回路と、例えば固定の基準位置に搭載するための能動共振回路とを備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサは能動共振回路と受動共振回路との相対的位置により能動共振回路における共振信号の変動を検出することでドラムヘッドの位置および/または速度を検出する検出器をさらに備えてもよい。検出器を複数のセンサ間で共有してもよい。変動は、いくつかの実施態様では、共振信号における信号の振幅の変動であってよい。複数のセンサのセットは、同じ共振周波数を有するセンサがドラムヘッド上で非隣接となるように配置された、2以上の異なる共振周波数を有する複数のセンサを備えてもよい。
【0043】
このアプローチの各実施態様は、比較的安価に構築可能であり、信頼性が高く、メカニカルスイッチのセンサバウンスも生じにくい。よって、ドラムヘッドの打撃と当該打撃による動きに非常に素早くかつ確実に応答することが可能になる。例えば理想的には、各ドラムヘッドは、少なくとも毎秒250回のレートで測定される。例えば、6つのセンサを備えた5つのドラムのセットでは、これは約7,500イベント/秒に相当する。本システムは、優れた温度安定性を提供することもでき、また、非接触であるので、堅牢であり実質的に汚れの影響を受けない。上記センサのいくつかの実施態様においては、さらに、振動に先立ち、静止位置と打撃後の最終的な変位後の位置との間を移動する際のドラムヘッドの位置を判定することができ、ドラムヘッドの位置を実質的に連続して判定し得る。基準位置は、例えば能動同調共振回路が取り付けられた底部材の上の、ドラムヘッドの下方における固定位置であってもよく、またはドラム用の複数のセンサのセットを搭載したプリント回路基板(PCB)上の位置であってもよい。ただし、代替的には、いくつかの実施態様においては、能動共振回路は、ドラムヘッド上に、またはドラムヘッドと関連付けて搭載されてもよく、共振回路は、基体やPCB等の上に搭載されてもよい。
【0044】
上記センサのいくつかの実施態様においては、センサは、ドラムヘッド押圧位置を超えてドラムヘッドが動いた時点を検出することもでき、したがって、ドラムヘッドに加えられた圧力を検出する際に有用である。
【0045】
センサは、ドラムヘッド速度をさらに検知することができ、かつ/または、検知されたドラムヘッド速度は、ドラムヘッド位置の判定に採用されてもよい。
【0046】
いくつかの実施態様では、第1の共振周波数を有するセンサが、例えば交互に並ぶドラムセンサに対して周波数を交互に用いて、第2の異なる共振周波数を有するセンサでインターリーブされる。これにより、センサ間干渉が低減される。
【0047】
複数のセンサのセットは、異なる時点において隣接するドラムセンサが選択されるように、センサの選択または走査を制御するコントローラを含んでもよい。これもまた、センサ間干渉を低減する目的である。いくつかの実施態様では、コントローラは、例えば、能動共振回路の一部を、例えば抵抗器を介して接地することにより、複数の非選択ドラムセンサの能動共振回路の応答を減衰させてもよい。コントローラは、多重化システムおよび/またはマイクロプロセッサを備えてもよい。
【0048】
いくつかの実施態様では、コントローラ/多重化システムは、複数のセンサの動作を時分割多重するように構成されてもよい。そのようなアプローチでは、各共振周波数によりセンサのグループを画定してもよく、時分割多重により複数のn個のタイムスロットを画定してもよい。例えば各グループの連続するドラムセンサには、連続するタイムスロットが割り当てられる。複数のグループの複数のセンサがインターリーブされている場合、例えば各グループの連続する複数のセンサは非隣接であってもよい。N個の共振周波数、および、よってN個のグループのセンサが存在してもよく、いくつかの実施態様では、N=1である。いくつかの実施態様では、現在のタイムスロットにおいてセンサの現在のグループの1つのセンサをアクティブ化した後、コントローラは、次のタイムスロットにおいて、同じグループ内の、例えば同じドラムヘッド上の次のセンサをアクティブ化してもよい。
【0049】
好ましくは、コントローラ/多重化システムは、隣接センサが同時にアクティブな状態とならないように構成されるが、隣のセンサのさらに隣のセンサは同時にアクティブ状態にあってもよい。同時にアクティブな複数のセンサどうしの間隔は、(m×N)+1であってもよい。ここで、mは1~n/2の範囲内であるが、より離れた構成が好ましい(間隔1は隣接センサを示す)。
【0050】
同じグループにおいて同時にアクティブな複数のセンサどうしの物理的間隔としては、最も近い間隔でn×N個のセンサ間隔であってもよい。このn×N個のセンサは、後段でセンサのサブセットと呼ばれる。これは通常、ドラムヘッドまたはドラムセット(すなわち、複数のドラムヘッドのセット)は複数のそのようなサブセットを有するからである。このように、コントローラ/多重化システムは、センサの同じグループ内で同じタイムスロットにおいてアクティブ化される複数のドラムセンサの間に(n×N)-1個のセンサが存在するように構成されてもよい。いくつかの実施態様では、nは8であってもよく、Nは2であってもよい。
【0051】
コントローラは、センサをアドレッシングするためのデジタルデマルチプレクサ等のアドレッシングデバイスに接続されたプロセッサを用いて実現してもよく、アナログマルチプレクサを介してセンサ能動共振器を読出し回路に選択的に接続することによって、アドレッシングされたセンサから信号を読み出してもよい。検出器、すなわち、読出し回路は、包絡線検出機能を実行してもよい。いくつかの実施態様では調整可能位相シフトを介して能動共振器に対する駆動信号から得られるイネーブル信号によって、読出し回路および/またはアナログマルチプレクサをイネーブルにしてもよい。デマルチプレクサ‐マルチプレクサ配置のコンテキストにおいて、または別個に、調整可能位相シフトを用いて、能動共振回路からの信号の同期検出を実行してもよい。
【0052】
コントローラまたは別のプロセッサが、各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、センサの押下および/または解放時において、押下されたセンサが解放位置と押下位置との間を動くときの一連の期間にわたりドラムヘッドの各センサの動きを判定するように構成されてもよい。各センサの動きは、センサが解放位置と押下位置との間を動くときのセンサの位置および/または近似速度であってもよい。
【0053】
いくつかのアプローチでは、センサの位置は、直接的にではなく、例えば積分によって、ドラムヘッド/ドラムセンサの速度から判定されてもよい。プロセッサは、各センサについてまたは移動中の各ドラムヘッド/ドラムセンサについて、時間の経過に伴う近似位置および/または速度のプロファイルを画定するデータを出力することができる。
【0054】
いくつかの実施態様では、プロセッサは、各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、連続する時間間隔で判定されたセンサの位置の変化からセンサの近似速度を判定するように構成される。このようにして判定された速度は、センサ速度に依存してフィルタリングされてもよい。例えば、センサが低速で動いているときは、より大きなフィルタリング/平滑化を適用する。これにより、高速で動くセンサの応答時間を大幅に損なうことなく、センサが低速で動いているときに正確なデータを提供することが可能となる。
【0055】
より一般的には、プロセッサは、共振信号の振幅および/または他の変動を処理して、例えばセンサ位置および/または速度の判定結果から、各ドラムヘッド/ドラムセンサについてのドラムヘッド打撃イベント/ドラムセンサ打撃イベントおよびドラムヘッド解放イベント/ドラムセンサ解放イベントを判定してもよい。プロセッサはこのように、各ドラムヘッド/ドラムセンサ/アクティブなドラムヘッド/アクティブなドラムセンサについての押圧イベント信号/解放イベント信号を出力することができる。
【0056】
いくつかのアプローチでは、一連のセンサ位置またはセンサの動きプロファイルを用いて、例えばセンサ位置の軌道を外挿することによって、押圧された(または解放された)センサがドラムヘッド打撃位置/ドラムセンサ打撃位置(またはドラムヘッド解放位置/ドラムセンサ解放位置)に達する時点を予測してもよい。予測位置は、後段でKと呼ばれる位置でもよい。そしてプロセッサは、実際のドラムヘッド打撃/ドラムセンサ打撃(またはドラムヘッド解放/ドラムセンサ解放)位置に達するより前に、ドラムヘッド打撃信号/ドラムセンサ打撃信号(またはドラムヘッド解放信号/ドラムセンサ解放信号)を発行すればよい。これは、処理遅延、例えばコンピュータゲームにおけるレイテンシーを補償するために有利であり得る。
【0057】
いくつかの実施態様では、一連のセンサ位置またはセンサの動きプロファイルを用いて、例えば、ドラムヘッド打撃イベント/ドラムセンサ打撃イベントの発行前および/または発行後に、または、ドラムヘッド打撃イベント/ドラムセンサ打撃イベント/ドラムヘッド解放イベント/ドラムセンサ解放イベントを発行する代わりに、生成された音の各種態様を制御する信号をコンピュータに供給してもよい。
【0058】
いくつかの実施態様では、プロセッサは、さらに、少なくとも3つの異なるセンサ位置、すなわち、第1にドラムヘッド解放位置/ドラムセンサ解放位置、第2にドラムヘッド打撃位置/ドラムセンサ打撃位置と、第3にアフタータッチ位置とを相互に区別するように構成されてもよい。アフタータッチ位置は、ドラムヘッド打撃位置/ドラムセンサ打撃位置を超えた位置であってもよく、押下の後にセンサに印加される追加圧力に対応してもよい。プロセッサは、センサがアフタータッチ位置に向けて動くとき/またはアフタータッチ位置から動くときのセンサの位置および/または速度を判定して、例えば可変圧力センサとして作用してもよい。あるいはプロセッサは、アフタータッチ位置に達した時点を単に特定してもよい。アフタータッチ位置は、例えば、ドラムヘッド/ドラムセンサへの追加圧力の印加の結果、通常の押下位置を超えたセンサの動きに対応し得る。各センサは、圧縮バネ/引張バネもしくは圧縮可能な素子もしくはブロック等の弾性付勢体または変形可能エンドストップデバイスを備えてもよい。この構成により、センサの押し下げ部分がデバイスと相互作用し、ドラムヘッド/ドラムセンサに対して追加の圧力が印加されない限り、デバイスによってさらなる動きが抑制される。追加圧力が印加されると、センサはそのアフタータッチ位置に向かって動く。アフタータッチ位置を各ドラムヘッド/ドラムセンサについて検出可能としてもよい。
【0059】
例えば、最大ドラムヘッド打撃位置/最大ドラムセンサ打撃位置とアフタータッチ検出開始との間に圧調節センサ移動距離(デッドゾーン)を設け、アフタータッチの開始前に必要な圧力量を設定可能としてもよい。
【0060】
複数のセンサのセットは、プリント回路基板等の基板上に設けられてよい。これらのセンサは、特に、ドラム/ドラムセットのドラムヘッド/ドラムセンサの位置に対応する位置に、基板に沿って配置される。より具体的には、受動共振回路がドラム/ドラムセットに位置する場合には、センサは隣接して配設されてよい。能動共振回路用のコイルは基板上にトラック状に形成されてもよく、例えばパンケーキコイルを構成する。複数のセンサのセットは、ドラムヘッド/ドラムセット全体またはドラムヘッドまたはドラムセットの一部についての複数のセンサであってもよい。前述した複数のセンサのセットを1または複数セット備えたドラムヘッド/ドラムセットも提供される。
【0061】
概して、複数のセンサのセットのプロセッサ/コントローラは、いかなる種類の処理デバイス/回路であってもよい。例えば、プログラムコードで制御されるマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはFPGA(フィールドプログラム可能ゲートアレイ)もしくはASIC(特定用途向け集積回路)等のハードウェアのうちの1または複数を備えた処理装置/回路であってもよい。いくつかの実施態様では、複数のセンサのセット用の制御機能/処理機能を、単一の集積回路内に備えてもよい。
【0062】
プログラム可能デバイスが利用される場合、プロセッサは、関連付けられた作業メモリと、上述した機能の一部または全部を実装するようにプロセッサを制御するためのプロセッサ制御コードを記憶する不揮発性プログラムメモリとを有してもよい。したがって、上述した機能を実行するためのコードおよび/またはデータを伝送する、不揮発性メモリ等の非一過性のデータキャリアも提供される。コード/データは、解釈もしくはコンパイルされた従来のプログラミング言語でのソースコード、オブジェクトコードもしくは実行可能コードで構成されてもよい。またはVerilog(商標)等のハードウェア記述言語用のコードなど、ASICもしくはFPGAを設定もしくは制御するためのアセンブリコード、コード/データで構成され得る。当業者に理解されるように、そのようなコードおよび/またはデータは、互いに通信する複数の接続された構成素子の間で配信され得る。
【0063】
例えばドラムヘッド/ドラムセットの複数のセンサの位置を検知する方法も提供される。この方法は、例えば、センサの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えば、固定の基準位置、例えばドラムヘッド/ドラムセットの一部に搭載するための能動共振回路とを備えるセンサを各センサに設けてもよい。いくつかの実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサはさらに検出器を備えてもよく、検出器は、能動共振回路と受動共振回路との相対的位置により、能動共振回路における共振信号の変動を検出し、ドラムヘッド/ドラムセンサの位置および/または速度を検出する。検出器は共有されてもよい。当該方法は、さらに、同一の共振周波数を有するドラムセンサが非隣接となるように配置された2以上の異なる共振周波数で動作する複数のセンサを配置してもよい。追加的にまたは代替的に、当該方法は、さらに、少なくとも能動共振回路の1または複数のコイルを、また、任意選択で受動共振回路についての1または複数のコイルも、逆向きの巻線を有するように構成することによって、センサ間の干渉を低減してもよい。
【0064】
位置、速度、および、ドラムヘッド/ドラムセットの複数のセンサに印加される圧力の測定値から導出された出力信号を供給するドラムヘッド/ドラムセットがさらに提供される。ドラムヘッド上のドラムセンサから測定値を導出してもよい。各ドラムセンサは、能動同調共振回路と、共振周波数で当該能動同調共振回路を駆動するための、能動同調共振回路に接続された駆動電子回路と、ドラムヘッド/ドラムセンサに関連付けられた電気的リアクティブ素子とを備え得る。任意選択で、駆動電子回路はセンサ間で共有される。電気的リアクティブ素子は、能動同調共振回路に対する電気的リアクティブ素子の相対的な位置に応じて、能動同調共振回路の応答を可変に修正してもよい。電子ドラム/検知システムは、能動同調共振回路に対する電気的リアクティブ素子の相対的な位置に応じて可変の出力信号を供給するための、能動同調共振回路に接続された読出し電子回路をさらに備えてもよい。読出し電子回路の可変の出力信号は、ドラムセンサ出力を提供してもよい。
【0065】
好ましくは、ただし必須ではなく、電気的リアクティブ素子は、能動同調共振回路が駆動される周波数に同調した受動同調共振回路を備える。したがって、ドラムセンサは単一の共振周波数で作動される。このアプローチの利点には、次のようなものがある。第1に、あるサイズのドラムセンサに対して、より大きな有効検知距離が達成され得る。第2に、ドラムセンサの出力信号では、検知された位置の変動に対してより大きな変動が取得可能である。よって、ドラムセンサ用の出力増幅器が不要となる場合が多く、より簡素となり、コストを削減することができる。第3に、近接配置された複数のドラムセンサの動作が容易となる。なぜならば、第2のドラムセンサが第1のドラムセンサの共振周波数とは大幅に異なる共振周波数に同調されている場合、第1のドラムセンサの共振周波数に同調した当該第1のドラムセンサの受動同調共振回路は、第2のドラムセンサの出力に実質的に影響しないからである。
【0066】
広義には、共振周波数の例示的範囲は、寄生容量の有害な影響に対して速さを均衡させる1~10MHzである。例えば、第1の共振周波数は3~4MHzの範囲内であってもよく、第2の共振周波数は4~5MHzの範囲内であってもよい。
【0067】
能動同調共振回路および受動同調共振回路で用いるコイルを、プリント回路基板上のトラックで画定される平らなまたは平面的なコイルで形成するのが特に有利であることがわかっている。これは、明確に定義された再現可能な形状を達成するのに役立ち、他の電気的に能動的な構成素子をプリント回路基板上で近接して配置することが容易になる。
【0068】
ドラムセンサから放射される電磁放出を最小限にし、かつ、ドラムセンサの電磁干渉信号に対する感受性を最小限にするために、能動同調共振回路のコイルを、電気的に接続された複数の「より小さな」一次コイルから形成してもよい。ここで、一次小コイルの巻線方向は、一次小コイルから放射される遠方電磁界の合計が実質的にゼロとなるように選択される。この場合、受動同調共振回路に用いるインダクタンスコイルは、一次小コイルのサブセットのみに誘導結合されるか、または複数の電気的に接続された二次小コイルで構成されてもよい。この場合、二次小コイルの巻方向および巻数は、ドラムセンサの出力信号の変動を最大限にするように選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1a-1b】図1aおよび1bは、それぞれ、システムの例示的な実施態様で用いる能動同調共振回路および受動同調共振回路を示す。
図2図2は、本システムの実施態様例で用いる同期復調器を備える読出し電子回路の一例を示す図である。
図3a-3b】図3aおよび図3bは、それぞれ、能動同調共振回路および受動同調共振回路用のプリント回路設計例を示す。
図4a-4b】図4aおよび4bは、それぞれ、能動同調共振回路および受動同調共振回路用の、逆向き巻線のコイルを備えたセンサ共振回路の例を示す図である。
図5a-5b】図5aおよび図5bは、単一のドラムセンサを備えた電子ドラムの例を示す。
図6a-6b】図6aおよび図6bは、複数のドラムセンサを備えた電子ドラムを示す。
図7図7は、複数の能動同調共振回路の多重化に使われる時分割多重化回路のタイミング図である。
図8図8は、複数のセンサの位置を判定する複数の能動同調共振回路を多重化する時分割多重化システムの回路図である。
図9図9は、センサの出力と変位との関係をプロットしたものである。
図10図10は、センサ押下時の測定位置および測定速度の例を示す。
図11図11は、センサの検出位置をキャリブレーションするためのキャリブレーション手順の一例を示す図である。
図12図12は、検知したイベントの検出に用いる処理の一例を示す図である。
図13図13は、ドラムヘッド/ドラムセンサからの過渡応答の一例を示す図である。
図14図14は、図13の過渡応答からトリガイベントを生成する際に用いられる手順の一例を示す。
図15図15は、複数のドラムヘッドのセットの時分割多重システムの一例を示す図である。
【0070】
図では、同様の要素は、同様の参照数字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1aを参照すると、能動同調共振回路は、入力抵抗素子4と、コイル1と、2つの容量素子2および3と、出力抵抗素子5と、駆動電子回路を入力抵抗素子に接続する手段6と、読出し電子回路を出力抵抗素子に接続する手段7とを備える。入力抵抗素子を省略してもよいが、入力抵抗素子は好ましい。なぜなら、入力抵抗素子は駆動電子回路から能動同調共振回路に供給される電流を制限する結果、動作電流を削減し、電力消費と能動同調共振回路からの電磁放出との両方を削減するし、読出し電子回路が能動同調共振回路に接続されたときの近接検出の感度を増大するからである。出力抵抗素子を省略してもよいが、出力抵抗素子もまた好ましい。入力抵抗素子および出力抵抗素子により、能動同調共振回路のインピーダンスに対する接続配線の影響が低減されるため、駆動電子回路への接続および読出し電子回路への接続長にかかわらず、すべてのセンサを本質的に同一にすることができるからである。
【0072】
図1bを参照すると、リアクティブ素子は、好ましくは、コイル8および容量素子9を備える受動同調共振回路である。ここで、コイルおよび容量素子は、閉共振LC回路を形成するように接続される。コイル1および8のサイズも、それらのインダクタンスの値も、実質的に同様である必要はない。容量素子9の静電容量の値としては、好ましくは、受動同調共振回路の共振周波数が図1aの能動同調共振回路の共振周波数と一致するように受動同調共振回路の共振周波数を調整する値が選択される。受動回路と能動回路とがこのように同調すると、複数のセンサを作動させることが可能である。近接して位置するセンサは実質的に異なる共振周波数に調整され、これにより、近接して位置するセンサ間の相互作用を最小限にする。さらに、受動回路および能動回路がこのように同調すると、図1aの出力7における信号振幅は、受動回路と能動回路との間の距離が減少するほど低下する。というのは、より多くのエネルギーが、受動同調共振回路に結合されて受動同調共振回路によって放散されるからである。信号振幅のこうした変動は好ましい。なぜなら、信号振幅の変動を測定する方が、能動同調共振回路がリアクティブ素子に近接することにより離調されてしまった場合の共振周波数の変動の測定よりも速いからである。
【0073】
駆動電子回路は、能動同調共振回路の共振周波数に等しい周波数または近い周波数の振動電圧駆動波形の生成器を備える。典型的には、一例では、この波形はマイクロコントローラタイマーまたはデジタルもしくはアナログのタイミング回路の出力によって生成される方形波形である。
【0074】
読出し電子回路は、読出しポイント7における信号の振幅に比例する電圧を生成する手段を備える。
【0075】
図2を参照すると、一例では、読出し電子回路は同期復調器回路であってもよい。例えば、読出しポイントからの信号はポイント20に接続され、例えばアナログスイッチ22によって復調される。アナログスイッチ22は、位相シフト素子21によってその位相が任意選択で調整される19に接続される振動電圧駆動波形によって制御される。出力ポイント25では、例えば、抵抗素子23および容量素子24を備えたローパスフィルタによって低周波数(またはdc)電圧となる。代替の読出し電子回路は、位相感応整流器、位相非感応整流器、非同期復調器、またはピーク検出器等であってもよい。
【0076】
能動同調共振回路および受動同調共振回路で用いられるコイル1および8は、どのタイプであってもよい。ただし、プリント回路基板上にトラック状に形成された平面らせんコイルを使用した場合には主な利点が3点ある。コイルは安価であり、高度に再現可能なインダクタンス値で作ることが可能である。また、プリント回路基板は、容量素子2、3、9、および抵抗素子4および5といった他の構成素子を搭載するために使うこともできる。したがって、インダクタンス値がほぼ一致した複数のコイルを設計することが可能である。
【0077】
図3aを参照すると、能動同調共振回路の一例は、単一の導電性レイヤまたは複数の導電性レイヤを備えるプリント回路基板上に形成されてもよい。実施態様では、コイル1は、連続するらせん状トラックから成り、トラックの電気的な連続性は、接続配線、または別の導電レイヤ上の別のらせん状トラック、またはプリント回路基板の複数の導電レイヤ上の複数のらせん状トラックに対する、接続ビア53を介した電気的接続によって維持される。また、容量素子2および3、ならびに抵抗素子4および5が近接して配置され、接続ポイント6および7が駆動電子回路および読出し電子回路用に対してそれぞれ設けられる。
【0078】
いくつかの実施態様では、能動同調共振回路はバックプレーン上に形成されてもよい。バックプレーンは、プリント回路基板であってもよい。いくつかの実施態様では、バックプレーンは、位置合わせのためにアクチュエータブロックの一部、例えば突起を収容するための開口部60を備える。
【0079】
図3bは、受動同調共振回路の一例を示す。受動同調共振回路は、単一の導電性レイヤまたは複数の導電性レイヤを備えるプリント回路基板上に形成してもよい。実施態様では、コイル8は、連続するらせん状トラックから成り、トラックの電気的な連続性は、接続配線、または別の導電レイヤ上の別のらせん状トラック、またはプリント回路基板の複数の導電レイヤ上の複数のらせん状トラックに対する、接続ビア54を介した電気的接続によって維持される。また、容量素子9が近接して位置する。
【0080】
いくつかの実施態様では、受動同調共振回路は、ドラムヘッド/ドラムセンサの一部を形成し、プリント回路基板上に形成されていてもよい。プリント回路基板は、後述するように、センサの取り付けを容易にする任意選択の開口部または凹部61を有していてもよい。
【0081】
電気的に接続された複数の一次小コイルから能動同調共振回路の誘導コイルが形成される場合には、能動同調共振回路からの電磁放出、および能動同調共振回路の電磁干渉信号に対する感受性は、実質的に低減され得る。ここで、一次小コイルの巻方向は、複数の一次小コイルから放射される遠方電磁界の合計が実質的にゼロとなるように選択される。
【0082】
誘導コイル1の一例が、図4aに示される。ここでは、2つの一次小コイルが8の字コイルを形成するように、逆巻方向58で直列に配線接続される。このような配置では、8の字コイルの第1の半分56から放射される遠方電磁界と8の字コイルの第2の半分57から放射される遠方電磁界とは大きさが等しいが、反極性を有する。したがって、8の字コイルから放射される遠方電磁界は実質的にゼロである。
【0083】
このような配置では、図3bに示すような受動同調共振回路は、受動同調共振回路の誘導コイルが能動同調共振回路の8の字コイルの半分56または半分57の1つのみに主として誘導結合されない限り、非効率的となる可能性がある。
【0084】
センサの出力信号を最大限にするために、図4bに示すように、受動同調共振回路の誘導コイルを8の字誘導コイルで同様に形成してもよい。8の字誘導コイルは、例えば、逆巻方向58で直列に配線接続された2つの二次小コイルを備え、各二次小コイルは、能動同調共振回路の8の字コイルの、異なる一次小コイルに主として誘導結合される。
【0085】
第1の能動同調共振回路の第1の共振周波数に同調された第1の受動同調共振回路は、実質的に異なる第2の共振周波数に同調した隣接する第2の能動同調共振回路の出力に実質的に影響しないが、第2の共振周波数に同調した対応する第2の受動同調共振回路が近接して位置するとき、第1の受動同調共振回路が動くと、第1の受動同調共振回路と第2の受動同調共振回路とが相互に結合することにより、第2の能動同調共振回路の出力に影響し得る。このような望ましくない相互作用は、物理的に隣接する受動同調共振回路の位置を、オフセットしなければこれらの回路が占有するであろう位置からオフセットすることによって最小限にすることができる。
【0086】
いくつかの実施態様では、ドラムまたはドラムセットのドラムヘッド上の複数のセンサは、センサのサブセットが任意の時点でイネーブルされる時分割多重化方式を用いて検査される。このスキームは、16個以上等の多数のセンサを備えたドラムセットについて、コスト、複雑さ、電力消費および電磁放出を削減するという利点を有し得る。
【0087】
第1の共振周波数で動作する第1のセンサおよび実質的に異なる第2の共振周波数で動作する第2のセンサが近接して位置する場合、これらのセンサが相互作用し、第1の共振周波数と第2の共振周波数との周波数差に等しい変動周波数で変動する干渉成分を第1のセンサの出力および第2のセンサの出力が含むおそれがある。再構成ローパスフィルタのカットオフ周波数が周波数差よりも実質的に低い場合、センサの出力を同期復調することにより、干渉成分は実質的に取り除かれる。しかし、ローパスフィルタの時間応答はセンサの応答の速さを制限するおそれがあるため望ましくない。したがって、この干渉を最小限にするための機構が望まれる。物理的に隣接するセンサが同時に駆動されない時分割多重化方式を使うことにより、この問題が回避され得る。
【0088】
しかし実際には、良好な性能を確保するために同期復調は必要ないことがわかっている。
【0089】
1以上の能動同調共振回路が同時に駆動される実施態様では、電磁放射を低減するためには、同時に駆動されたときに、コイルのある割合(例えば半分)が一方向に巻かれ、残りのコイルが逆方向で巻かれるように、能動同調共振回路のコイルの巻線方向を構成することが有利である。このようにして、コイルから放射される遠方電磁界の合計は、すべてのコイルが同一の方向で巻かれている場合と比較して大幅に減少し得る。
【0090】
図5aに示すように、電子ドラムは、一実施形態では、ドラムヘッド(すなわちドラムパッド)68、例えば柔軟な頂部材を備える。図5aの例では、ドラムヘッドの縁部の動きが保持機構63によって制限される。受動同調共振回路11はドラムヘッドに取り付けられる。
【0091】
電子ドラムは、受動同調共振回路11と、固定された底部材14に取り付けられた能動同調共振回路10とを有するドラムセンサを備える。能動同調共振回路10は、受動同調共振回路11に誘導結合されており、能動同調共振回路10と受動同調共振回路11との間隔の変化に応じて変化する信号を供給する。駆動電子機器および読出し電子機器は、能動同調共振回路に接続されている。
【0092】
本実施例および後述する実施例のドラムセンサは、ドラムヘッド68の振動を検知するように構成されている。しかしながら、実施態様では、ドラムから出力される音響信号として振動を直接使用するには、ドラムヘッドの振動に応じて生成されるRF信号の信号対雑音比の大きさが十分でない場合がある。したがって、いくつかの実施態様では、音響信号として使用する前に振動を処理してもよいし、ドラムの打撃時点および/または、どのように打撃されたか(例えば打撃位置)を検出するためにだけ振動を使用してもよく、検出後に、ドラム音の合成や、サンプルのドラム音の再生により音響として出力してもよい。合成された音/サンプルされた音は、検出した打撃の特性に応じて変化してもよい。このように、RF信号のS/N比の大きさがオーディオ出力信号として使用するには十分でない実施態様では、振動の初期的な過渡応答だけを契機として(過渡応答は後続の振動よりもはるかに大きいので)、例えば、サンプルまたはシンセサイザといった音を発音してもよい。
【0093】
図5bを参照すると、この例示的なドラムは、ドラムヘッド(すなわちドラムパッド)15と受動同調共振回路11と任意のインターポーザ素子65と変形可能セパレータ素子64と能動同調共振回路10と固定底部材14とを有する。インターポーザは、2つの機能を有する。第1に、ドラムヘッド15の動きによって受動同調共振回路11に加えられる力を制限することにより受動同調共振回路11の損傷を防止する。第2に、前記ドラムヘッドと前記受動同調共振回路11との間隔を多様な距離とすることが可能である(例えば、異なる厚さの素子をユーザが選択できるようにすることによって可能となる)。変形可能セパレータ64(例えば弾性ブロック)によりドラムヘッドの動きが許容され、それにより、前記受動同調共振回路11が対応して移動することが可能となり、ひいては、前記能動同調共振回路10と前記受動同調共振回路11との間隔が変化することが可能となる。
【0094】
上述たように、前記能動同調共振回路10と前記受動同調共振回路11との間隔が変動すると、RF信号が生成される。RF信号は、ドラムヘッドの打撃時点および打撃位置を判定するために処理され得る。ドラムの打撃強度等の特性をさらに判定することができる。特に、RF信号の検出されたレベルは、ドラムヘッド応答波形を判定するために、信号処理部によって処理され得る。ドラムセンサを1つ備えたドラムの場合(好ましくはドラムの中心に配置される)、打撃されたドラムの半径方向位置は、RF信号を処理することにより、ドラムヘッド全体の振動から得られるドラムヘッドの応答波形を用いて判定することができる。半径方向の位置は、ドラムが打撃されたときにドラムヘッドセンサ(複数可)から検出された波形の較正および/またはパターンマッチングによって判定してもよい。
【0095】
図5bは、受動同調共振回路11と能動同調共振回路10との間の変形可能セパレータ素子64を示す。変形可能セパレータ素子64と受動同調共振回路11と能動同調共振回路10とは、受動同調共振回路11と能動同調共振回路10との間に機械的経路を有するドラムセンサスタックを構成する。図5bは、インターポーザ素子65をさらに備えたドラムセンサスタックをさらに示している。
【0096】
図6aおよび図6bは、複数のドラムセンサを備える電子ドラムを示している。任意選択で、ドラムヘッドの外周部を、図5aに示すように保持してもよい(図6では図示略)。図6aおよび図6bのドラムは、ドラムヘッド15と、変形可能セパレータ素子64と、複数のドラムセンサとを備え、前記各位置センサは、受動同調共振回路11と、インターポーザ65と、能動同調共振回路10とを備える。センサが検出したRF信号のレベルの波形の振幅および/またはタイミングに基づいて、例えば三角測量または補間によってドラムヘッドの打撃位置を判定するために複数のセンサを使用することができる。
【0097】
図6aおよび図6bに例示されるドラムは、前記複数のドラムセンサの複数の受動同調共振回路11が前記ドラムヘッドの移動点67に対応して移動するような、剛性リンク部材66をさらに備える。これにより、例えば、複数のドラムセンサの出力から、例えば信号処理部(図示略)を用いた補間による演算によって、ドラムパッドの打撃(前記ドラムヘッドの移動を引き起こす)の位置を判定することが容易になる。
【0098】
一般的に、2以上のドラムセンサを使用する場合、各ドラムセンサからの信号の瞬時相対振幅から打撃の位置を判定することができる。そして、複数のドラムセンサの信号(振幅)は、信号の減衰が、測定した振幅に大きく影響しないように、測定される過渡応答の期間に対して十分近いタイミングで測定されることが望ましい。任意選択で、複数のドラムセンサで測定された過渡応答間のタイミングを、打撃位置に関する情報をより多く得るために用いてもよい。打撃のインパクトポイントでのドラムヘッドの動きがドラムヘッド全体に伝搬するのに時間がかかるからである。このタイミングは、ドラムヘッドの共振周波数に依存する。測定速度は過渡応答の検出に十分な速度でなければならない。
【0099】
このように、複数のドラムセンサがある場合、複数のドラムセンサから検出されたRF信号間の振幅の差を判定して、ドラムヘッドの打撃の位置を判定するように信号処理部を構成してもよい。さらに、または代替的に、複数のドラムセンサから検出されたRF信号間のタイミングの差を判定して、ドラムヘッドの打撃の位置を判定するように信号処理部を構成してもよい。信号処理部は、複数のドラムセンサから検出されたRF信号の振幅のうちの1以上を処理して、例えば、打撃の強度を判定するように構成されてもよい。
【0100】
図6bに示すように、複数のドラムセンサのうちの1つを、ドラムヘッドの中央に配置してもよく、他のドラムセンサを、ドラムヘッドの端部に隣接して配置してもよい。
【0101】
図6bにさらに示すように、ドラムの一例は、ドラムヘッドリップ27と底部材リップ29とを備えてもよい。ドラムヘッドリップ27は、底部材リップ29の内側に嵌合するように構成されてもよい。あるいは、底部材リップ29は、ドラムヘッドリップ27の内側に嵌合するように構成されてもよい。
【0102】
複数のドラムセンサがある場合、ドラムセンサのインターポーザを、複数のドラムセンサの1または複数のドラムセンサ間で共有してもよい。ドラムは、複数のドラムセンサの能動同調共振回路を1つ以上搭載したバックプレーンをさらに備えてもよい。バックプレーンは、PCBで形成されてもよく、ドラムの内部に保持されてもよい。信号処理部は、バックプレーン内に組み込まれてもよい。あるいは、複数のドラム(例えばドラムセットの複数のドラム)からの信号が、共有の信号処理部、例えば単一の処理ユニットによって処理可能なように、信号処理部をドラムの外側に配置してもよい。例えば、各々が8個のセンサからなる複数のグループが多重化される場合、各ドラムには8個のセンサがあってもよく、信号処理部を備えた外部コントローラによって多重化および信号処理が実行されてもよい。
【0103】
複数のドラムセンサを有するドラムでは、ドラムセンサの能動共振回路の一部が同時にアクティブであってもよい。これは、スネアドラムなどの従来のアコースティックドラムと同様の直径のドラムヘッドを有するドラムについて実施されてもよい。実施形態では、ドラムセット(または「ドラムキット」)は複数のドラムヘッドを備える。
【0104】
いくつかのドラムセット/ドラムキットは、従来のアコースティックドラムよりも小さい複数のドラムヘッドを備えてもよく、代わりに、例えば、数cmの幅であってもよく、指または小さなドラムスティックで打撃することを意図したものであってもよい。各ドラムヘッド/ドラムセンサは、各ドラムセンサ(例えば、同じドラムヘッドの、複数のセンサのセットの各ドラムセンサ)のコイルの巻線が順次駆動されるように多重化されていてもよい。各ドラムは、複数のドラムセンサを含んでいてもよい。
【0105】
別の実施態様では、交互のセンサが異なる周波数で駆動されるように構成されてもよく、例えば、各第1共振周波数F1および第2共振周波数F2で動作するように構成されてもよい。この態様を、前述の実施態様と組み合わせてもよい。センサのサブセットのうち、各タイムスロットにおいては第1の共振周波数で動作する1つのセンサのみがイネーブルされてもよく、第2の共振周波数で動作する1つのセンサのみがイネーブルされてもよい。さらに、実施態様では、物理的に隣接するセンサが同時にイネーブルになることは一切なく、干渉成分を最小限に抑制可能である。センサの複数のサブセットが同時に動作してもよい。
【0106】
多重化スキームの一例を図7に示す。検知システムのセンサは、例えば、図7の黒と白のバーで示されているように、相互に直接非隣接のセンサを備えた空間グループに分割されていてもよい。あるグループの複数のセンサは、別のグループの複数のセンサとは異なる共振周波数を有し得る。例えば、黒いバーで例示される1つのグループでは、8個のタイムスロットがあり、センサを8個おきに同時にアクティブ化する(駆動する)。このアプローチは、センサをk個おきに同時に駆動する(すなわち、同時に駆動されるセンサが、間にk-1個の非アクティブセンサを有する)、k個のタイムスロットに適応されてもよい。例えば、黒と白のバーで例示される、同時にアクティブなグループのセンサは、可能な限り(物理的に)分離されてもよい。
【0107】
例えば、実施態様では、同時に駆動されるセンサが少なくとも(k-1)個のセンサによって分離または囲まれるように、RF駆動信号を多重化する多重化システムが提供される。(k-1)は1以上の整数であり、少なくとも1の検出器が、駆動されるセンサからのRF信号のレベルを検出する。
【0108】
システムのいくつかの実施態様では、異なる共振周波数の異なるセンサのグループを採用しない。代わりに、すべてのセンサが実質的に同じ共振周波数を有し得る。前述の逆巻きのコイル設計によってこのようなアプローチの使用が容易となる。したがって、k個のタイムスロットがあってもよく、k個おきのセンサが同時にアクティブになって(駆動されて)もよい。
【0109】
図8に、単一の共振周波数で動作する複数のセンサのセットまたはサブセットを駆動するように構成された時分割多重化方式のコントローラの一例を示す。図8のシステムでは、プロセッサ35は、センサの能動同調共振回路の共振周波数と周波数が一致する駆動波形36を生成する。プロセッサは、どのセンサをイネーブルすべきかを選択するセレクタ信号37を生成する。センサの出力7はアナログマルチプレクサ34に結合される。アナログマルチプレクサの出力は、容量素子24とアナログマルチプレクサ内の抵抗素子とを備えるローパスフィルタを介して、プロセッサ内のAD変換器に結合される。プロセッサからの出力55は、センサの位置および速度に関する情報の送信に用いられる。センサの出力をAD変換器に結合する際にアナログマルチプレクサを採用することのさらなる利点として、アナログマルチプレクサが、同期復調に使われるアナログスイッチ22の機能を実行可能な点がある。これにより、アナログマルチプレクサの出力を、駆動波形36に結合されたイネーブル入力39を介して、同期してイネーブルまたはディスエーブルにすることが可能である。複数のセンサが実質的に異なる共振周波数で作動される場合、時分割多重化方式は、必要に応じて複製され得る。好適なプロセッサはARM Cortex-M0である。
【0110】
図8は、デマルチプレクサ/マルチプレクサを1つのみ示すが、複数の共振周波数を用いる場合、用いる共振周波数の各々について1つのデマルチプレクサ/マルチプレクサを採用してもよい。例えば、ドラムヘッド/ドラムセットの交互に並ぶセンサに共振周波数を交互にマップする場合、第2のデマルチプレクサ/マルチプレクサを用いてもよい。
【0111】
例えば、部品公差のバラツキが原因で、センサの能動同調共振回路または受動同調共振回路の離調が生じる。ダイオード40、容量素子24および任意選択で抵抗素子41またはスイッチング素子42(容量素子24上の電荷をリセットする)を備えるピーク検出回路に、(任意選択の)同期復調回路の出力を結合することによって、離調に対する感度の抑制が容易となり得る。スイッチング素子が使われる場合には、スイッチング素子は、マルチプレクサの制御に用いられるセレクタ信号に同期して、検出されたピークレベルをリセットしてもよい。
【0112】
検出器(読出し回路)からの信号は、例えばプロセッサ35のアナログ入力に一体化された、AD変換器38に入力されてもよい。
【0113】
ディスエーブルしたセンサの能動同調共振回路が駆動中でない場合、能動同調共振回路は同調アンテナとして作用する。これは悪影響を有する。この悪影響により、ディスエーブルしたセンサに対応するターゲットを動かすと、同様に同調したセンサの出力に測定可能な変動が生じ得る。これは、同様に同調したセンサが、ディスエーブルしたセンサに物理的に隣接せず、かつ、ターゲットの動きが、ディスエーブルしたセンサの上部における通常限度内に制約される場合であっても、同様である。この悪影響は、ディスエーブルの期間中、ディスエーブルした能動同調共振回路の共振周波数を変更することによって、例えば、能動同調共振回路の静電容量、抵抗、またはインダクタンスを電子スイッチによって変更することによって、削減され得る。これには、ディスエーブルしたセンサを直流電流または低周波数信号で駆動し、共振を防止するのが最も簡単である。図8を参照すると、時分割多重化方式でこれを達成する方法としては、能動同調共振回路の入力6を駆動する際にデジタルデマルチプレクサ33を用いる方法がある。イネーブルしたセンサの能動同調共振回路は、能動同調共振回路の共振周波数の波形36によって駆動され、ディスエーブルしたセンサの能動同調共振回路は、デジタルデマルチプレクサの論理ハイレベルまたは論理ローレベルに対応する直流電流信号によって駆動される。
【0114】
ドラムヘッド/ドラムセットの性能が、動作温度の範囲にわたって安定することが重要である。本明細書に記載するセンサが用いる同調共振回路は、特に、同調共振回路がプリント回路基板上に形成され、かつ、同調共振回路の容量素子が温度安定誘電体(クラス1誘電体)である場合、優れた温度安定性を有するが、回路内の他の電子素子は、温度で変化する特性を有する場合がある。これにより、動作温度の変動に伴いドラムセンサの出力信号が変動する可能性がある。そのような電子素子は、ダイオード40、デジタルデマルチプレクサ33、アナログマルチプレクサ34、抵抗素子4、5、41、プリント回路基板上のトラック、ならびに電圧調整器を含むが、それらに限定されない。したがって、動作温度の変動が原因で生じるドラムヘッド/ドラムセット上の複数のセンサの出力信号の変動を最小限にするために、温度補償方式が有用であり得る。
【0115】
温度補償方式の一例では、センサの受動同調共振回路がセンサの出力信号に対して影響を与えないようにセンサの能動同調共振回路を直流電流または低周波数信号で駆動する間、センサの出力信号の複数の測定を行い、複数の測定のうちの第1の測定はキャリブレーション手順中に実行され、後続の測定は定期的に、典型的には時分割多重化方式の追加タイムスロット内に実行され、第1の測定から後続の測定を減算することによって出力信号内の温度依存オフセットを算出し、能動同調共振回路が能動同調共振回路の共振周波数に等しい周波数または近い周波数で駆動されているときの出力信号の測定にオフセットを加算して、位置を測定する。このような温度補償方式では、各センサに対して、ドラムセンサの各グループに対して、または、すべてのドラムセンサに対して、1つの温度依存オフセットを使用してもよい。
【0116】
ドラムヘッド/ドラムセットでは、上述したような多重化方式を利用することにより、ドラムヘッドの位置を高速かつ正確に測定することが可能となる。例えば、図8に示す例を多重化することが可能である。ここで、セレクタ信号37の更新頻度は少なくとも32,000Hzであり、したがって、8つのセンサからなるサブセット内の各センサの位置を、4,000Hzの頻度において判定可能となる。この例を複製して、センサの他のサブセットに対して並行して実行してもよく、したがって、例えば88個といった多数のセンサの位置を、少なくとも352,000センサ/秒の速度で判定可能となる。打撃イベントのタイミングを適切に精度良く行うことを可能とし、かつ、任意選択で、イベントに関連付けられたドラムヘッドの速度を判定するために、理想的には、例えば、88個のセンサ(例えば8個のセンサを有する11個のドラムヘッド)について、少なくとも約22,000センサ/秒の速度に対応する少なくとも毎秒250回にわたって、センサの位置を判定すべきである。上述したシステムの実施態様により、これらの目標を容易に超えることができる。
【0117】
図9はセンサシステムの動作の理解に有用であり、キーボード上のセンサが押下されたときの、センサからのセンサ出力を示す。キーには3つの一次位置がある。キーが静止しているときの静止位置Kmax43と、キーの可動上部部材が変形可能エンドストップと最初に接触したポイントKzero44と、典型的なユーザによってドラムヘッドに印加される最大圧力のポイントに対応する最大押下ポイントKmin45である。最大押下ポイントKmin45において、変形可能エンドストップは、最大限に変形されると考えてもよい。ドラムヘッドが打撃されたときに判定される信号については後述する。
【0118】
複数のセンサについては、機械的なバラツキにより、および電子部品公差により、複数の一次位置のうちのいずれか1つに位置する一のセンサの出力信号が、同じ一次位置にある第2のセンサの出力信号と同一になる可能性は低い。したがって、いずれのセンサの位置も複数のセンサの各一次位置に対して確実に既知となるように、キャリブレーション処理を行うことが望ましい。このようなキャリブレーション処理を図11に示す。
【0119】
センサの位置が一次位置KmaxとKzeroとの間にある場合、センサのキャリブレーション後の位置Kは、KmaxとKzero間の押下割合として、次式K=100%×(Ko-Kzero)/(Kmax-Kzero)により、センサの測定位置Koから算出可能である。
【0120】
センサの位置が一次位置KzeroとKminとの間にある場合、センサのキャリブレーション後の位置Kpressは、KzeroとKmin間の押下割合、すなわち図9の50の割合として、次式Kpress=100%×(Ko-Kmin)/(Kzero-Kmin)により、センサの測定位置Koから算出可能である。そのようなケースでは、Kpressは、センサの押下範囲50に対応する、キーに印加される圧力の量であると考えてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、Kpressの算出には、オフセットKpoffを含んでもよい。これにより、Kpressは、センサの位置Koが(Kzero-Kpoff)とKminの間になるまでゼロである。すなわち、Kpress=100%×(Ko-Kmin)/(Kzero-Kpoff-Kmin)である。オフセットにより、センサの位置が変動しても、センサのキャリブレーション後の位置KもKpressも変動しないデッドゾーンが形成される。これにより、アフタータッチ閾値の実装が容易となる。
【0122】
いくつかの実施態様では、各センサは、ドラムヘッドの押下が二次位置Konを超えたときにドラム打撃イベントを発行してもよく、ドラムヘッドの押下が別の二次位置Koffに戻ったときに解放イベントを発行してもよい。他のアプローチについては後述する。KonがKoffに等しくなる場合があってもよいが、KonとKoffとは等しくないことが好ましい。図9を参照すると、好ましくは、二次位置Kon48は、一次位置Kzero44の近くにあるように選択される。同様に、二次位置Koff47は、二次位置Konの近くにあるように選択される。
【0123】
いくつかの実施形態では、各センサの二次位置Koff46は、一次位置Kmax43の近くにあるように選択される。そのような配置により、センサの位置を利用して、解放イベントの発行に先立って表現イベントを発行することが可能である。KoffとKzero間におけるセンサの測定位置Koは、センサの押下範囲49に対応する、キャリブレーション後の表現値Kexp=100%×(Ko-Kzero)/(Koff-Kzero)の算出に利用し得る。
【0124】
図12の処理例は、システムの実施態様における各センサに用いてもよい。このシステムにおいて、センサの測定位置Koが一次位置Kmax、KzeroおよびKminにより、それゆえに二次位置KonおよびKoffによりキャリブレーションされている場合、当該測定位置Koを用いて、ドラムヘッド/ドラムセンサについての打撃イベント、解放イベント、表現イベントおよび圧力イベントを発行してもよい。
【0125】
ドラムヘッド上のセンサの二次位置KonおよびKoffを一次位置KmaxおよびKzeroから導出することで、単純な数値計算によって二次位置を容易に修正することができ、その結果、応答を変更可能であるという点で特に有利である。その上、そのような修正は、ドラムセット内の個々のセンサ/ドラムヘッドごとに異ならせることができるため、ドラムヘッド/ドラムセットに対するいかなる機械的変更も必要とすることなく、広範囲の応答が可能となる。
【0126】
さらなる制御を提供するために、打撃イベントに関する速度情報と、任意選択で、解放イベントに関連する情報も送信することができる。この速度情報は、センサ押下の2つの既知のポイント間の時間差を測定することにより、または逆に2つの既知の時点における押下の変化を測定することによって判定可能である。
【0127】
実施態様では、センサの速度(速さおよび方向)は、平均化、フィルタリング、または類似の方法を用いて、複数の時点におけるセンサの複数の位置から判定される。一例を以下に詳しく記載する。速度を算出する方法は、他の方法と比較していくつかの利点を有する。すなわち、2点測定方法に使われるような線形速度プロファイルを想定せず、ドラムヘッド/ドラムセンサの押下範囲全体にわたる速度の変化を検出可能であるため、速度の測定値はドラムヘッド/ドラムセンサの真の速度をよりよく表し、応答がより一貫したものとなる。また、より多くの統計的に有効なデータ点が使われるので、高分解能および高精度の速度を判定することができる。ドラムヘッド/ドラムセンサの将来の位置の予測の算出が可能となり、例えば、ドラムヘッド/ドラムセンサの位置が二次位置KonおよびKoffと等しくなる将来の時間を推定することが可能となるため、対応する物理イベントより前に予め打撃イベントまたは解放イベントを発行することが可能となる。したがって、レイテンシーを補償する。
【0128】
フィルタリング手順の一例は、以下の通りである。
deltaV=deltaPos(すなわち、固定の時間ステップ間の位置の変化)
alpha=k*abs(deltaV)
【0129】
フィルタリング係数alphaは、deltaVの大きさに依存し、alphaは、オーバーフロー/アンダーフローを回避するために検知可能値に限定される。
速度=alpha*last_velocity+deltaV*(1-alpha)
【0130】
この方法は、デジタル領域において実行してもよく、高速で動くドラムヘッドに対する時間応答を大幅に損なうことなく、フィルタリングにより分解能を改善可能である。このフィルタリングは非常に低速で動くドラムヘッドにとって特に重要である。フィルタリングおよび/または最大許容速度値の修正を用いて、例えば硬めまたは柔らかめの応答を付与することができる。
【0131】
こうした方法の上記のような利点を説明するべく、図10は、センサのキャリブレーション後の位置51およびセンサのキャリブレーション後の速度52を示す。ここで、センサの押下は、センサの押下開始から7ms以内に一次ポイントKzero44に達する。図10のプロットは、微分された位置から直接算出された速度に近似する。しかし、位置がゆっくりと動くと、速度フィルタリングはより重くなるので、速度が少し遅れる。上記のような方法によれば、ドラムヘッド/ドラムセンサの速度に関して有用な情報を得ることができる。
【0132】
図13および図14を参照する。これらの図は、ドラムヘッド/ドラムセンサからの過渡応答の例と、トリガイベントの生成に用いる手順とを示す。
【0133】
信号処理技術の一例では、第1に、位置信号が一次閾値70を越えると、過渡応答を検出する。一次閾値は、ノイズ信号を排除するように選択されてもよい。第2に、折返し点73の検出によって過渡応答を検出してもよい。ドラム上の打撃強度は、トリガイベントのパラメータとして送信されてもよい。強度は、一次閾値と折返し点との間の72における位置センサの最大速度と、折返し点における位置と一次閾値における位置との差として算出された位置センサの最大変位と、のうちの1つまたは組み合わせから算出されてもよい。
【0134】
任意選択で、トリガイベントに対する応答を修正するためにモジュレーションイベントが生成されてもよい。モジュレーションイベントの制御パラメータは、一次閾値70と折返し点73との間にある二次閾値75を決定し、折返し点から、位置が二次閾値77を越える時点までの期間76を測定することによって算出されてもよい。
【0135】
実施態様では、偽トリガリングを回避するために、位置センサ出力信号が一次閾値70を越えるまで、さらなる過渡応答は許容されない。いくつかの実施態様では、過渡応答を検出するために用いる一次閾値が、偽トリガリングの防止に用いる一次閾値と異なるように、ヒステリシスが適用されてもよい。
【0136】
ノイズや低周波振動を除去するために、位置センサの出力にハイパスフィルタをかけると有利である。典型的なハイパスフィルタは、20Hz~300Hzのカットオフ周波数を有してもよい。
【0137】
図15は、複数のドラムヘッド(ドラムパッド)の各々またはドラムセット/ドラムキットについて複数のセンサを駆動するように構成された、時分割多重化コントローラの一例を示す。図示されているように、各ドラムヘッド(ドラムパッド)79は、ドラムヘッド(ドラムパッド)内で多重化される複数のセンサを備える。図示されているように、システムは、多重化されたセンサの各セットを各々が有する複数のドラムヘッドを駆動するために使用され得る。
【0138】
上述の技術は、安価に製造可能であるうえ、応答時間が非常に速く、例えば1ms未満であり得るので、有利であり得る。本発明の別の態様を、以下の節に記載する。
【0139】
1.電子ドラムパッドの検知システム。検知システムは、複数のドラムセンサを備えてもよい。各センサは、例えばセンサの移動部に搭載するための受動共振回路、および例えば基準位置に搭載するために能動共振回路を備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起するように構成される。検知システムは、共振周波数のRF駆動信号を用いて能動共振回路を駆動するための少なくとも1のセンサドライバをさらに備えてもよい。当該センサドライバは、複数のセンサ間で共有してもよい。実施態様では、検知システムは、同時に駆動されたセンサが少なくとも(k-1)個のセンサによって(物理的に)分離されるように駆動信号を多重化する、1以上のマルチプレクサおよび/またはデマルチプレクサ等の多重化システムをさらに備えてもよい。ここで(k-1)は、1以上の整数である。したがって、実施態様では、あるセンサは、隣のセンサと同時には(または少なくともk個のセンサだけ離れたセンサと同時には)駆動されない。検知システムは、駆動されたセンサからRF信号のレベルを検出するための、少なくとも1の検出器、例えば読出し回路および/またはマイクロプロセッサをさらに備えてもよい。これは、電子ドラムパッドに関連付けられたセンサの位置および/または速度を検知するために用いられてもよい。少なくとも1の検出器は、能動共振回路および受動共振回路の相対的な位置により、能動共振回路における共振RF信号の変動を検出してもよく、RF信号のレベルをピーク検出してもよい。
【0140】
2.駆動されていない複数のセンサに対応する複数の能動共振回路を減衰させるように構成される、節1に記載の検知システム。
【0141】
3.少なくとも能動共振回路は、逆向きの巻線をもつ1または複数のコイルを備え、特に、逆向きの巻線は、互いを打ち消す逆向きの磁場を生成するよう構成される、節1または節2に記載の検知システム。
【0142】
4.能動共振回路は、横方向に隣り合う一対のパンケーキコイルを備える、節1、節2または節3に記載の検知システム。
【0143】
5.RF信号の検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムをさらに備え、温度補償システムは、複数の能動共振回路のうちの少なくとも1に共振外駆動信号を印加し、少なくとも1の検出器からの共振外駆動信号のレベルを測定し、共振外駆動信号のレベルに応じてRF信号の検出されたレベルを補償するように構成される、節1から節4のいずれかに記載の検知システム。
【0144】
6.多重化システムは、複数のセンサのうちの1つが、複数のタイムスロットのセットの各々において駆動されるように、駆動信号を多重化するように構成され、温度補償システムは、複数のタイムスロットのセットへの追加タイムスロットの期間中に共振外駆動信号を印加するように構成される、節5に記載の検知システム。
【0145】
7.各センサは、圧力検知のために、受動共振回路および能動共振回路の一方または両方の動きを制限するための変形可能素子をさらに備える、節1から節6のいずれかに記載の検知システム。
【0146】
8.電子ドラムパッドのための複数のセンサのセット。ドラムパッドは、複数のセンサを有する。複数のセンサのセットは、検知システムの一部であってもよい。各センサは、センサの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えば電子ドラムの一部における固定の基準位置に搭載するための能動共振回路とを備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサは検出器をさらに備えてもよく、能動共振回路および受動共振回路の相対的位置により能動共振回路における共振信号の変動を検出することで、センサの位置および/または速度を検出する検出部をさらに備えてもよい。検出器は複数のセンサ間で共有してもよい。いくつかの実施態様では、変動は、共振信号における信号の振幅の変動であってもよい。複数のセンサのセットは、電子ドラムパッドの複数のセンサを検知するために搭載される場合、同じ共振周波数を有するセンサが非隣接となるように配置された、2以上の異なる共振周波数を有するセンサを備えてもよい。
【0147】
9.第1の共振周波数を有する複数のセンサは、第2の異なる共振周波数を有する複数のセンサとインターリーブされる、節8に記載の検知システム。
【0148】
10.隣接するセンサが異なる時点において選択されるように、複数のセンサのセットうちの複数のセンサの選択を制御する多重化システムおよび/またはコントローラをさらに備える、節8または節9に記載の検知システム。
【0149】
11.多重化システム/コントローラは、さらに、複数の非選択センサの複数の能動共振回路を減衰させるように構成される、節1から節7および節10のいずれかに記載の検知システム。
【0150】
12.多重化システム/コントローラは、センサの動作を時分割多重するように構成され、各共振周波数が複数のセンサのセットを画定し、時分割多重は、複数のn個のタイムスロットを画定し、各グループの連続するセンサには連続するタイムスロットが割り当てられる、節10または節11に記載の検知システム。
【0151】
13.N個の共振周波数および複数のセンサのN個のグループがあり、複数のセンサの複数のグループのうちの複数のセンサは電子ドラムパッド上でインターリーブされる、節12に記載の検知システム。
【0152】
14.多重化システム/コントローラは、同じグループ内で同じタイムスロットにおいてアクティブ化される複数のセンサが、当該複数のセンサの間に(n×N)-1個のセンサを有するように構成される、節13に記載の検知システム。
【0153】
15.各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、押下されたセンサが解放位置と押下位置との間を動くときの一連の時間間隔にわたるセンサの動きを判定するように構成されたプロセッサをさらに備え、特に、各センサの動きは、センサが解放位置と押下位置との間を動くときのセンサの位置および速度を含む、先行する節のいずれかに記載の検知システム。
【0154】
16.プロセッサは、各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、センサが押下位置と解放位置との間を動くときの、センサの速度を、センサの速度に応じてフィルタリングされた、連続する時間間隔で判定されるセンサの位置の変化から判定するように構成される、節15に記載の検知システム。
【0155】
17.RF信号/共振信号のレベル/変動を処理して、各センサについてセンサ押圧イベントおよびセンサ解放イベントを判定するように接続されたプロセッサをさらに備える、先行する節のいずれかに記載の検知システム。
【0156】
18.プロセッサは、さらに、少なくとも3つの異なるセンサ位置、第1に、オフ位置、第2に、オン位置、および第3に、アフタータッチ位置を区別するように構成され、アフタータッチ位置は、オン位置を超える位置であり、押下の後でセンサに印加される追加圧力に対応する、節15から節17のいずれか一に記載の検知システム。
【0157】
19.電子ドラムパッドの複数のセンサの並びに対応する並びで複数のセンサの複数の能動共振回路を支持する基板をさらに備える、先行する節のいずれかに記載の検知システム。
【0158】
20.先行する節のいずれかに記載の検知システムを備える、電子ドラムパッド。
【0159】
21.節19に記載の検知システムまたは節20に記載の電子ドラムパッドを備えるアフタータッチ電子ドラムパッドであって、各センサは、アフタータッチ位置が、変形可能エンドストップによって画定されるエンドストップ位置を超えるセンサの移動に対応するように変形可能エンドストップを有し、センサについてのアフタータッチ位置を特定することにより、アフタータッチが可能となる、アフタータッチ電子ドラムパッド。
【0160】
22.電子ドラムパッドの、複数のセンサの位置を検知する方法。この方法は、例えば、センサの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えば、固定の基準位置、例えばコンピュータドラムの一部に搭載するための能動共振回路とを備えるセンサを各センサに設けてもよい。いくつかの実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサは、能動共振回路および受動共振回路の相対的位置により、能動共振回路における共振信号の変動を検出し、センサの位置および/または速度を検出する検出器をさらに備えてもよい。検出器は共有されてもよい。当該方法は、さらに、同一の共振周波数を有するセンサが非隣接となるように、2以上の異なる共振周波数で動作するセンサを配置してもよい。追加的にまたは代替的に、当該方法は、さらに、少なくとも能動共振回路の1または複数のコイルを、また、任意に選択した場合には受動共振回路についての1または複数のコイルも、逆向きの巻線を有するように構成することによって、センサ間の干渉を低減してもよい。
【0161】
23.さらに、少なくとも3つの異なるセンサ位置、第1に、オフ位置、第2に、オン位置、および第3に、アフタータッチ位置を区別することによって、アフタータッチを提供し、アフタータッチ位置はオン位置を超える位置であり、エンドストップ位置を超えるセンサの押下および移動の後でセンサに印加される追加圧力に対応する、節22に記載の方法。
【0162】
24.電子ドラムパッドの応答を周期的に補償する方法。ドラムパッドの各センサは、能動共振回路、受動同調共振回路および検出器を備えてもよい。当該方法は、第1の時刻tに検出された、センサからの初期出力信号Ot0を記憶部から読み出してもよい。tにおいて、能動共振回路は、能動共振回路の共振周波数を下回る周波数で駆動される。当該方法は、さらに、複数のセンサの少なくとも1について、tよりも後の時刻に、センサの後期出力信号Ot1を定期的に検出してもよい。当該方法は次に、調整値として、例えば、センサの初期出力信号とセンサの後期出力信号との差を算出してもよい。当該方法は次に、調整値を用いてセンサの動作出力をさらに調整することによって、ドラムパッドの応答を補償してもよい。動作出力は、能動共振回路の共振周波数で能動共振回路が駆動されている際のセンサからの出力であってよい。当該方法は、さらに、時分割多重化アドレス方式に従ってセンサを作動させてもよい。そして当該方法は、時分割多重化アドレス方式において、センサが非動作中である「予備」タイムスロットを検出に用いてもよい。
【0163】
25.さらに、時分割多重化アドレス方式に従ってセンサを作動させ、時分割多重化アドレス方式のタイムスロットのうち、センサが検出非動作中のタイムスロットを用いる、節24に記載の方法。
【0164】
26.電子ドラムパッド用の複数のセンサのセット。ドラムパッドは、複数のセンサを有する。複数のセンサのセットは、検知システムの一部であってもよい。各センサは、センサの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えばドラムの一部における固定の基準位置に搭載するための能動共振回路とを備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサは、能動共振回路と受動共振回路との相対的位置により能動共振回路における共振信号の変動を検出することで、センサの位置および/または速度を検出する検出器をさらに備えてもよい。検出器を複数のセンサ間で共有してもよい。変動は、いくつかの実施態様では、共振信号における信号の振幅の変動であってよい。複数のセンサのセットは、ドラムパッドの複数のセンサを検知するために搭載される場合、同じ共振周波数を有するセンサが非隣接となるように配置された、2以上の異なる共振周波数を有するセンサを備えてもよい。
【0165】
上述した技術は、電子ドラムパッド用のセンサにおいて圧力を検知するために採用されてもよく、センサは、受動共振回路および能動共振回路の一方または両方の下方および/または間に、変形可能な素子として例えばブロックまたはゴムの層をさらに備える。
【0166】
疑いなく、多くの他の効果的な代替手段に当業者は思い至るであろう。本発明は、記載した実施態様には限定されず、本明細書に添付の請求項の趣旨および範囲内において、当業者にとって明らかな修正を包含することが理解されよう。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15