(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】歯科用組成物中の二官能性及び多官能性共開始剤
(51)【国際特許分類】
A61K 6/30 20200101AFI20230509BHJP
A61K 6/71 20200101ALI20230509BHJP
A61K 6/884 20200101ALI20230509BHJP
A61K 6/54 20200101ALI20230509BHJP
A61K 6/90 20200101ALI20230509BHJP
A61K 6/61 20200101ALI20230509BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20230509BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230509BHJP
C08F 4/28 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K6/30
A61K6/71
A61K6/884
A61K6/54
A61K6/90
A61K6/61
A61K6/60
C08F2/50
C08F4/28
(21)【出願番号】P 2021526346
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2019081241
(87)【国際公開番号】W WO2020099518
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502289695
【氏名又は名称】デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クレー,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】エルスナー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ジラト,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】レン,カロリーネ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-243009(JP,A)
【文献】特開平07-179408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
A61K6/00-6/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合性モノマーと、
(b)
(b-1)増感剤又は酸化還元開始剤系の酸化剤及び
(b-2)下記式(Ia)又は(Ib):
NC-Ar(R
1)
n-NR
2aR
3a
(Ia)
A-Q’-NR
4-C(O)X
2Ar(R
1)
n-NR
2bR
3b
(Ib)
で示される共開始剤を含む開始剤系と、を含み、
式(Ia)又は(Ib)中、
Aは、
水素原子、又は
-NR
4-C(O)X
2Ar(R
1)
n-NR
2bR
3b
であり、
Q’は、脂肪族炭化水素基又はポリオキシアルキレン基であり、これらは、2~12個の炭素原子を有し、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能であり、ヒドロキシ基から選択される基により置換されていることができ、
R
4は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-6シクロアルキル基又はアリル基であり、
X
2は、単結合、-NR
4-、-O-又は-S-を表わすことができ、但し、R
4は前記の定義と同じであり、
Arは、(n+2)価の芳香族炭化水素基であり、
R
1は、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基、シアノ基、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表わし、
nは、0又は1~4の整数であり、
R
2a及びR
3aは、それらが結合している窒素原子と共に環基を形成し、その環は下記式(III):
>NAr(R
1)
nCN
(III)
で示される基をさらに含有し、
式(III)中、Ar、R
1、及びnは、上記定義されたとおりであり、
R
2b及びR
3bは、同じか又は異なることができ、
独立して、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基、若しくはアリル基を表わし、
ただし、式(Ib)で示される化合物において、Aが水素原子の場合、重合性モノマーと共重合可能な少なくとも1つの重合性炭素-炭素二重結合を含有し、
R
1、R
4、R
2b、R
3b、X
2、Ar、又はnがそれぞれ2つ以上存在する場合、互いに同じでも、異なっていてもよい、歯科用組成物。
【請求項2】
式(Ia)又は(Ib)で示される共開始剤が、炭素-炭素二重結合を有する重合性基を含有する化合物である、請求項1記載の歯科用組成物。
【請求項3】
共開始剤が、式(Ia)で表わされるか、又は
式(Ib)で表わされ、かつAが、-NR
4-C(O)X
2Ar(R
1)
n-NR
2bR
3bである、請求項1記載の歯科用組成物。
【請求項4】
共開始剤の重合性基が、(メタ)アクリラート基及び(メタ)アクリルアミド基から選択される、請求項1~3いずれか一項記載の歯科用組成物。
【請求項5】
共開始剤が式(Ia)で表わされる、請求項1~
3のいずれか一項記載の歯科用組成物。
【請求項6】
共開始剤が式(Ib)で表わされる、請求項1~
3のいずれか一項記載の歯科用組成物。
【請求項7】
R
2bとR
3bが、同じか又は異なることができ、独立して、C
1-6アルキル基を表わす、請求項6に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
式(Ia)が下記式(Q1)で表わされる、請求項5に記載の歯科用組成物。
【化1】
【請求項9】
式(Ib)が下記式で表わされる、請求項6に記載の歯科用組成物。
【化2】
【請求項10】
Arが、o-又はp-フェニレン基である、請求項1~7のいずれか一項記載の歯科用組成物。
【請求項11】
増感剤が、アシルシリル基もしくはアシルゲルミル基を有する化合物又はアルファジケトン
である、請求項1~10のいずれか一項記載の歯科用組成物。
【請求項12】
溶媒及び/又は粒状充填材をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載の歯科用組成物。
【請求項13】
歯科用接着剤、歯科用シーラー、歯科用コンポジット、樹脂変性歯科用セメント及び歯科用印象材から選択される、請求項1~12のいずれか一項記載の歯科用組成物。
【請求項14】
請求項13記載の歯科用組成物を製造するための、請求項1記載の式(Ia)又は(Ib)で示される共開始剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、増感剤又は酸化剤と、歯科用組成物の重合中に架橋部位として機能する特定の共開始剤との組み合わせを含有する特定の重合開始剤系を含む、歯科用組成物に関する。また、本発明は、架橋した歯科用組成物の製造のための特定の共開始剤の使用に関する。
【0002】
発明の背景
フリーラジカル重合性樹脂を含有する硬化性歯科用組成物は公知であり、一般的には、重合性モノマー、架橋剤及び開始剤系を含む。開始剤系は、光開始剤系、酸化還元開始剤系又は二重硬化性開始剤系であることができる。
【0003】
光開始剤系は、共開始剤との組み合わせで増感剤を含有する。第三級アミンとの組み合わせでのカンファーキノンが、歯科用光開始剤系として使用されることが多い。
【0004】
酸化還元開始剤系は、酸化剤及び還元剤を必須成分として含有する。芳香族第三アミン、アスコルビン酸及びチオ尿素誘導体が、歯科用組成物中の還元剤として使用されることが多い。
【0005】
二重硬化性開始剤系は、光開始剤系と酸化還元開始剤系とを組み合わせる。
【0006】
ラジカル開始剤系は、歯科用組成物において有用であるために、特定の要件を満たす必要がある。例えば、歯科用開始剤系は、歯科用組成物に包含される時には、混和性であり、貯蔵安定性である必要があり、同時に、有用な直接歯科用修復物を提供するために活性化される時には、高い変換率、良好な硬化速度及び硬化深さを含む高い重合効率を提供する必要がある。
【0007】
歯科用開始剤系では、芳香族アミンが、安定性及び活性の理由で、好ましい共開始剤であることが多い。例えば、エチル-4-ジメチルアミノベンゾアート(DMABE)は、歯科用組成物において一般的な共開始剤である。さらに、US第10,058,487号には、直接歯修復物用の改善された歯科用材料の調製に使用することができる特定の第三級アミンが開示されている。
【0008】
WO第2015/124559号には、少なくとも1つのジアルキルアミン基及び少なくとも1つの更なる基が直接結合しているベンゼン環を有する第三級芳香族アミンの使用が開示されており、他の基は、i.少なくとも2つのオキシエチレン及び/又はオキシプロピレン単位を有する少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を含有するカルボン酸エステル基と、ii.重合性歯科用材料中の共開始剤としてのアミド基から選択される。
【0009】
しかしながら、歯科用組成物中の共開始剤として使用するための第三級アミンが、特に芳香族アミン化合物の場合には、毒物学的懸念を生じる場合がある硬化組成物から浸出する場合がある。
【0010】
発明の概要
本発明の課題は、重合性モノマー及び第三級芳香族アミン共開始剤を含む開始剤系を含む歯科用組成物を提供することであり、この組成物は、良好な貯蔵安定性及び高い変換率、良好な硬化速度及び硬化深さを含む高い重合効率を提供し、この組成物では、第三級芳香族アミンの浸出の問題が大幅に減少し、好ましくはこの問題がない。
【0011】
さらに、本発明の課題は、歯科用組成物の製造のための、特定の共開始剤の使用を提供することである。
【0012】
本発明は、
(a)重合性モノマーと、
(b)
(b-1)増感剤又は酸化還元開始剤系の酸化剤及び
(b-2)下記式(I):
Q-X
(I)
[式中、
Qは、シアノ基又は基A-Q’-:
(式中、
Aは、水素原子、更なる基X又は重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する重合性基であり、
Q’は、脂肪族炭化水素基又はポリオキシアルキレン基であり、これらは、2~12個の炭素原子を有し、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能であり、好ましくは、ヒドロキシ基から選択される基により置換されていることができる)
であり、
Xは、2つ以上のXが存在する場合、同じか又は異なることができ、独立して、Qがシアノ基である場合、下記式(IIa)で示される基又はQが基A-Q’-である場合、下記式(IIb):
-Ar(R1)n-NR2R3
(IIa)
-X1C(O)X2Ar(R1)n-NR2R3
(IIb)
(式中、
X1及びX2は、同じか又は異なることができ、独立して、単結合、-NR4-、-O-又は-S-を表わすことができ、ここで、R4は、水素原子、C1-6アルキレン基、C3-6シクロアルキレン基又はアリル基であり、
Arは、(n+2)価の芳香族炭化水素基であり、
R1は、2つ以上のR1が存在する場合、同じか又は異なることができ、独立して、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表わし、
nは、0又は1~4の整数であり、
R2及びR3は、同じか又は異なることができ、独立して、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基、アリル基を表わし又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC3-6飽和炭素環基を形成しており又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、下記式(III)
>NAr(R1)nX2C(O)X1Q
(III)
(式中、Ar、R1、n、X1、X2及びQは、独立して、上記定義されたとおりである)
で示される基を、環にさらに含有する環基を形成している)
で示される基を表わす]
で示される共開始剤を含む開始剤系とを含み、
ただし、式(I)で示される化合物は、重合性モノマーと共重合可能な少なくとも1つの重合性炭素-炭素二重結合並びに/又はX及び式(III)で示される基から選択される少なくとも2つの基を含有するという条件である、歯科用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、歯科用組成物の製造のための、式(I)で示される共開始剤の使用も提供する。
【0014】
本発明は、式(I)で示される共開始剤化合物(b-2)を含む歯科用組成物が高い変換率、良好な硬化速度及び硬化深さを含む改善された重合効率を提供し、第三級芳香族アミンの浸出問題を生じないという認識に基づいている。本発明によれば、式(I)で示される化合物は、歯科用組成物の硬化反応中に、鎖延長剤として機能するか又は架橋部位としてポリマーネットワーク中に一体化され、その結果、芳香族アミンの浸出が排除されると同時に、高い重合効率及び貯蔵安定性が提供される。
【0015】
本発明の式(I)で示される共開始剤化合物(b-2)は、少なくとも2つのポリマー鎖の重合を開始すること又はポリマー鎖の重合を開始し、重合性炭素-炭素二重結合を有する共重合性化合物の重合に加わることのいずれかにより、架橋剤として機能するように適合される。したがって、式(I)で示される化合物は、重合反応を開始することにより又は共重合性モノマーとの共重合により、ポリマーネットワークに組み込まれるであろう。したがって、浸出の問題が回避される。さらに、本発明の歯科用組成物は、歯科用組成物に包含される時には、良好な貯蔵安定性を提供するが、同時に、活性化される時には、高い変換率、良好な硬化速度及び硬化深さを含む高い重合効率を提供する。
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
「重合」又は「重合性」という用語は、多くのより小さな分子、例えば、ラジカル重合性モノマーの形態にあるモノマー、オリゴマー又はポリマーの共有結合により組み合わさって、より大きな分子、すなわち、高分子又はポリマーを形成することに関する。モノマーを組み合わせて、一般に架橋ポリマーと呼ばれる直鎖高分子又は三次元高分子を形成することができる。
【0017】
本明細書で使用する場合、モノマー(a)に関連して「ラジカル重合性」という用語は、ラジカル重合可能な任意のモノマーを意味する。典型的には、モノマー(a)は、重合可能な二重結合、好ましくは、1つ以上の炭素-炭素二重結合によりラジカル重合可能である。重合性二重結合の例は、ビニル、共役ビニル、アリル、アクリル、メタクリル及びスチリルを含む。より好ましくは、重合可能な二重結合は、アクリル、メタクリル及びスチリルからなる群より選択される。アクリル及びメタクリルは、(メタ)アクリロイル又は(メタ)アクリルアミドであることができる。最も好ましくは、モノマー(a)について、重合可能な二重結合は、アクリル又はメタクリルである。
【0018】
「開始剤系」という用語は、(b-1)増感剤又は酸化還元開始剤系の還元剤を酸化可能な酸化剤と、共開始剤(b-2)とを含み、例えば、熱エネルギーにより又は光化学反応もしくは酸化還元プロセスにおける光への暴露及び/もしくは1つ以上の更なる化合物との相互作用により活性化された場合にフリーラジカルを形成することにより、重合性モノマーの重合が開始される任意の系を意味する。「開始剤系」という用語は、任意の光開始剤系又は酸化還元開始剤系(b-1)及び(b-2)を指す。
【0019】
開始剤系は、光開始剤系であることができる。ここで、本明細書で使用する場合、「光開始剤系」という用語は、増感剤(b-1)及び共増感剤(b-2)並びに場合により、1つ以上の更なる開始剤化合物からなる系に関する。ここで、増感剤、共開始剤及び他の更なる開始剤化合物は、400~800nmの範囲の波長を有する光で照射された場合に、単独又は組み合わせで、フリーラジカルを生成可能である。
【0020】
代替的には、開始剤系は、酸化還元開始剤系であることができる。本明細書で使用する場合、「酸化還元開始剤系」という用語は、(b-1)酸化還元開始剤系の還元剤を酸化可能な酸化剤と、(b-2)還元剤として機能する共開始剤と、場合により、触媒、例えば、金属塩との組み合わせを含む系を意味する。酸化還元開始剤系は、ラジカルが形成される酸化還元反応を提供する。これらのラジカルは、ラジカル重合性モノマーの重合を開始する。典型的には、酸化還元開始剤系は、酸化還元開始剤系を、酸化剤及び還元剤の少なくとも部分的な溶解を提供する水及び/又は有機溶媒と接触させることにより活性化され、すなわち、酸化還元反応が開始される。任意の触媒は、酸化還元反応、このため、ラジカル重合性モノマーの重合を促進するために加えることができる。
【0021】
「共開始剤」という用語は、別の分子に化学変化を生じさせ、それにより重合が開始される分子を指す。
【0022】
「増感剤」という用語は、光化学プロセスにおいて別の分子、例えば、共開始剤に化学変化を生じる分子を指す。好ましくは、開始剤系は、400~800nmの範囲の吸収極大を有する増感剤を含む。
【0023】
「硬化」という用語は、官能性重合性モノマー、例えば、モノマー、オリゴマー又はポリマーのポリマーネットワーク、好ましくは、架橋ポリマーネットワークへの重合を意味する。
【0024】
「硬化性」という用語は、(共)重合性モノマー、オリゴマー及び重合性ポリマーが重合される場合に、開始時にラジカル重合するであろう歯科用組成物を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「ペルオキシド」という用語は、式Rx-O-O-Ry(式中、Rx及びRyは、それぞれ独立して、任意の適切な有機基又は無機基を指す)で示される化合物を意味する。例えば、「有機ペルオキシド」は、1つの有機基Rx又はRyがアシル基であるペルオキシエステル、例えば、tert-ブチルペルオキシベンゾアートを含むことができる。アシル基は、本件では、ペルオキソ部分(-O-O-)が結合されている、カルボニル基(-(C=O)-)を有する有機基である。さらに、「有機ペルオキシド」は、有機残基Rx及びRyの両方がアシル基を表わすジアシルペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド、有機残基Rx及びRyの両方がアルキル残基であるジアルキルペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド並びに有機残基Rx及びRyの両方がカルボニルオキシアルキル基を表わすペルオキシジカーボナート、例えば、ジイソプロピルペルオキシジカーボナートも含むことができる。例えば、「無機ペルオキシド」は、過硫酸カリウム又はペルオキシ二硫酸カリウムを含むことができる。
【0026】
本明細書で使用する場合、「ヒドロペルオキシド」という用語は、式Rx-O-O-H(式中、Rxは、任意の有機基を指す)で示される化合物を意味する。例えば、「有機ヒドロペルオキシド」は、有機基Rxがアシル基であるペルオキシ酸、例えば、ペルオキシ安息香酸を含むことができる。
【0027】
「重合促進剤」という用語は、酸化還元開始剤系の反応性を向上させることができる任意の物質を意味する。重合促進剤の例は、スルフィン酸、スルフィナート、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、アルデヒド、チオ尿素化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、ハロゲン化合物及びチオール化合物を含む。
【0028】
本発明は、歯科用組成物に関する。歯科用組成物は、口腔内で使用される歯科用材料であることができる。好ましくは、本発明の歯科用組成物は、歯科用接着剤組成物、歯科用接着剤、歯科用プライマー、歯科用印象材、歯科用浸透剤、歯科用脱感作組成物、歯髄キャッピング組成物、歯科用コンポジット、歯科用セメント、歯科用ガラスアノマーセメント、歯科用樹脂変性歯科用セメント、歯科用シーラー、ピット及びフィッシャーシーラント、むき出しの歯頸用のシール及び保護組成物並びに歯科用歯根管シーラー組成物から選択される。
【0029】
好ましくは、歯科用組成物は、歯科用接着剤、歯科用シーラー、歯科用コンポジット、樹脂変性歯科用セメント及び歯科用印象材から選択される。
【0030】
重合性モノマー(a)
本発明の歯科用組成物は、(a)重合性モノマーを含む。歯科用組成物は、1つ以上の重合性モノマー(a)を含むことができる。
【0031】
重合性モノマー(a)は、ラジカル重合性モノマー、オリゴマー又はポリマーであり、そのラジカル重合性基に関して特に制限されない。重合性モノマー(a)は、1つ以上のラジカル重合性基を有することができる。少なくとも1つのラジカル重合性基は、例えば、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合であることができ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基又はアリル基から選択することができる。
【0032】
モノマーの形態にある重合性モノマー(a)に適した例は、(メタ)アクリラート、アクリル酸又はメタクリル酸のアミド、ウレタンアクリラート又はメタクリラート及びポリオールアクリラート又はメタクリラートからなる群より選択することができる。
【0033】
(メタ)アクリラートは、好ましくは、下記式(A)、(B)及び(C):
【化1】
[式中、
R
20、R
*
20、R
**
20、R
***
20は、独立して、水素原子、-COOM、直鎖C
1-18又は分枝鎖C
3-18アルキル基(C
3-6シクロアルキル基、C
6-14アリールもしくはC
3-14ヘテロアリール基、-COOM、-PO
3M、-O-PO
3M
2又は-SO
3M
*により置換されている場合がある)、C
3~C
18シクロアルキル基(C
1-16アルキル基、C
6-14アリールもしくはC
3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)又はC
5~C
18アリールもしくはC
3~C
18ヘテロアリール基、-COOM、-PO
3M、-O-PO
3M
2もしくは-SO
3M
*を表わし、
R
21は、水素原子、直鎖C
1-18もしくは分枝鎖C
3-18アルキル基又はC
2~C
18アルケニル基(C
3-6シクロアルキル基、C
6-14アリールもしくはC
3-14ヘテロアリール基、-COOM、-PO
3M、-O-PO
3M
2もしくは-SO
3M
*により置換されている場合がある)、C
3~C
18シクロアルキル基(C
1-16アルキル基、C
6-14アリールもしくはC
3-14ヘテロアリール基、-COOM、-PO
3M、-O-PO
3M
2もしくは-SO
3M
*により置換されている場合がある)又はC
5~C
18アリールもしくはC
3~C
18ヘテロアリール基を表わし、
R
22は、1~45個の炭素原子を有する二価の有機残基を表わし、ここで、二価の有機残基は、1~7個のC
3-12シクロアルキレン基、1~7個のC
6-14アリーレン基、1~7個のカルボニル基、1~7個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-)、1~7個のアミド基(-(C=O)-NH-又は-NH-(C=O)-)又は1~7個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)のうちの少なくとも1つ並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1~14個のヘテロ原子を含有することができ、この二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C
6-14アリール基、-COOM、-PO
3M、-O-PO
3M
2又は-SO
3M
*からなる群より選択される1つ以上の置換基により置換されている場合があり、好ましくは、R
22は、1つ以上の-OH基により置換されている場合があるC
1~C
18アルキレン基又はC
2~C
18アルケニレン基であり、このアルキレン基又はアルケニレン基は、1~4個のC
6-10アリーレン基、1~4個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)のうちの少なくとも1つ及び1~8個の酸素原子を含有することができ、
R
23は、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換C
2~C
18炭化水素基、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換環状C
3~C
18炭化水素基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換C
4~C
18アリールもしくはヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換C
5~C
18アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換C
7~C
30アラルキル基又は二価もしくは多価の置換もしくは非置換C
2~C
45モノ-、ジ-もしくはポリエーテル残基(1~14個の酸素原子を有する)を表わし、
mは、好ましくは、1~10の範囲の整数であり、
ここで、R
20、R
*
20、R
**
20、R
***
20、R
21及びR
22のいずれか1つのMは、互いに独立しており、それぞれ、水素原子又は金属原子を表わし、
R
20、R
*
20、R
**
20、R
***
20、R
21及びR
22のいずれか1つのM
*は、互いに独立しており、それぞれ、金属原子を表わす]
で示される化合物から選択することができる。
【0034】
R20、R*
20、R**
20及びR***
20について、直鎖C1-18又は分岐鎖C3-18アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチル又はヘキシルであることができる。R21及びR*
21について、C1-18アルキル基又はC2-18アルケニル基は、例えば、エタ(エン)イル、n-プロパ(エン)イル、i-プロパ(エン)イル、n-ブタ(エン)イル、イソブタ(エン)イル、tert-ブタ(エン)イル、sec-ブタ(エン)イル、ペンタ(エン)イル又はヘキサ(エン)イルであることができる。
【0035】
R20、R*
20、R**
20、R***
20及びR21について、アリール基は、例えば、フェニル基又はナフチル基であることができ、C3-14ヘテロアリール基は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含有することができる。
【0036】
R22について、「二価の有機残基が、・・・のうちの少なくとも1つを含有することができる」という表現は、二価の有機残基に含有される場合がある基が共有結合により二価の有機残基に組み込まれることを意味する。例えば、BisGMAでは、フェニルの形態にある2つのアリール基及び酸素の形態にある2つのヘテロ原子が、R22の二価の有機残基に組み込まれている。あるいは、更なる例として、UDMAでは、2つのウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)が、R22の二価の有機残基に組み込まれている。
【0037】
式(B)において、破線の結合は、R20及びR***
20がCOに対して(Z)又は(E)配置にある場合があることを示す。
【0038】
好ましくは、式(A)、(B)及び(C)において、R20、R*
20、R**
20及びR***
20は、独立して、水素原子、直鎖C1-16又は分枝鎖C3-16アルキル基(C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C3~C6シクロアルキル基(C1-16アルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基を表わす。より好ましくは、式(B)において、R20、R*
20、R**
20及びR***
20は、独立して、水素原子、直鎖C1-8又は分枝鎖C3-8アルキル基(C4-6シクロアルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C4-6シクロアルキル基(C1-6アルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)又はC6-10アリール基を表わす。さらにより好ましくは、R20、R*
20、R**
20及びR***
20は、独立して、水素原子、直鎖C1-4又は分枝鎖C3もしくはC4アルキル基(シクロヘキシル基もしくはフェニル基により置換されている場合がある)又はシクロヘキシル基(C1-4アルキル基により置換されている場合がある)を表わす。最も好ましくは、R20、R*
20、R**
20及びR***
20は、独立して、水素原子又は直鎖C1-4又は分枝鎖C3もしくはC4アルキル基を表わす。
【0039】
好ましくは、式(A)において、R21は、水素原子、直鎖C1-16もしくは分岐鎖C3-16アルキル基又はC2-16アルケニル基(C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C3-6シクロアルキル基(C1-16アルキル基、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C6-14アリール又はC3-14ヘテロアリール基を表わす。より好ましくは、R21は、水素原子、直鎖C1-10もしくは分岐鎖C3-10アルキル基又はC2-10アルケニル基(C4-6シクロアルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)、C4-6シクロアルキル基(C1-6アルキル基、C6-10アリール又はC4-10ヘテロアリール基により置換されている場合がある)又はC6-10アリール基を表わす。さらにより好ましくは、R21は、水素原子、直鎖C1-10もしくは分岐鎖C3-10アルキル基又は直鎖C2-10もしくは分岐鎖C3-10アルケニル基(シクロヘキシル基又はフェニル基により置換されている場合がある)又はシクロヘキシル基(C1-4アルキル基により置換されている場合がある)を表わす。さらにより好ましくは、R21は、非置換C1-10アルキル基又はC2-10アルケニル基、さらにより好ましくは、非置換C2-6アルキル基又はC3-6アルケニル基、最も好ましくは、エチル基又はアリル基を表わす。
【0040】
式(A)、(B)及び(C)で示される(メタ)アクリラート化合物は、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、エチルメタクリラート、プロピルアクリラート、プロピルメタクリラート、イソプロピルアクリラート、イソプロピルメタクリラート、2-ヒドロキシエチルアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、テトラヒドロフルフリルアクリラート、テトラヒドロフルフリルメタクリラート、グリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート、ビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(「ビス-GMA」、CAS-No.1565-94-2)、4,4,6,16(又は4,6,6,16)-テトラメチル-10,15-ジオキソ-11,14-ジオキサ-2,9-ジアザヘプタデカ-16-エン酸、2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エチルエステル(CAS no.72869-86-4)_(UDMA)、グリセロールモノ-及びジアクリラート、例えば、1,3-グリセロールジメタクリラート(GDM)、グリセロールモノ-及びジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート(ここで、エチレンオキシド繰り返し単位数は、2~30で変動する)、ポリエチレングリコールジメタクリラート(ここで、エチレンオキシド繰り返し単位数は、2~30で変動する)、特に、トリエチレングリコールジメタクリラート(「TEGDMA」)、ネオペンチルグリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラアクリラート並びにペンタエリスリトール及びジペンタエリトリトールのメタクリラート、1,3-ブタンジオールジアクリラート、1,3-ブタンジオールジメタクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサンチレンジカルバマート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサエチレンジカルバマート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバマート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’ビス(4-アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシ-フェニル)]プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-アクリルオキシ-フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリラート]プロパン及び2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリラート]プロパンからなる群より選択することができる。
【0041】
最も好ましくは、式(B)で示される化合物は、
【化2】
からなる群より選択される。
【0042】
特に好ましいモノ-又はビス-又は(メタ)アクリルアミド及びポリ[(メタ)アクリルアミド]は、下記式(D)、(E)及び(F):
【化3】
[式中、
R
24、R
*
24、R
**
24、R
***
24は、式(A)、(B)及び(C)について上記定義されたR
20、R
*
20、R
**
20、R
***
20と同じ意味を有し、R
25、R
*
25は、独立して、式(A)について上記定義されたR
21と同じ意味を有する残基を表わし、R
27及びm’は、式(C)について上記定義されたR
23及びmと同じ意味を有する]
を有する。
【0043】
式(E)において、R26は、1~45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換有機残基を表わし、ここで、前記有機残基は、1~7個のC3-12シクロアルキレン基、1~7個のC6-14アリーレン基、1~7個のカルボニル基、1~7個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))、1~7個のアミド基(-(C=O)-NH-又は-NH-(C=O)-)、1~7個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)のうちの少なくとも1つ並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1~14個のヘテロ原子を含有することができ、ここで、二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6-14アリール基、-COOM、-PO3M、-O-PO3M2又は-SO3M*からなる群より選択される1つ以上の置換基により置換されている場合がある。好ましくは、R26は、C1~C18アルキレン基又はC2~C18アルケニレン基であり、ここで、アルキレン基又はアルケニレン基は、1~4個のC6-10アリーレン基及びC3-8シクロアルキレン基、1~4個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)のうちの少なくとも1つ並びに1~8個の酸素原子又は窒素原子を含有することができる。
【0044】
R26について、「二価の有機残基は、・・・のうちの少なくとも1つを含有することができる」という表現は、式(B)で示される化合物のR22について上記定義されたのと類似する意味を有する。
【0045】
式(D)、(E)、(F)において、破線の結合は、R24及びR***
24がCOに対して(Z)又は(E)配置にある場合があることを示す。
【0046】
式(D)で示される化合物において、R25及びR25
*は、R25及びR25
*がC-C結合により連結している環又はエーテル基、チオエーテル基、アミン基及びアミド基からなる群より選択された官能基を共同して形成することができる。
【0047】
式(D)、(E)、(F)の好ましいメタクリルアミドは、下記式:
【化4】
を有する。
【0048】
式(D)、(E)、(F)の好ましいアクリルアミドは、下記式:
【化5】
を有する。
【0049】
ビス-(メタ)アクリルアミド:
構造式
【化6】
を有するN,N’-ジアリル-1,4-ビスアクリルアミド-(2E)-ブタ-2-エン(BAABE)及び
構造式
【化7】
を有するN,N’-ジエチル-1,3-ビスアクリルアミド-プロパン(BADEP)
が最も好ましい。
【0050】
また、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を有する重合性モノマー(a)は、少なくとも1つのラジカル重合性二重結合を有する重合性モノマーを含有するリン酸エステル基から選択することもできる。好ましくは、このような重合性モノマーを含有するリン酸エステル基は、下記式(G):
【化8】
[式中、
部分Yは、それぞれ独立して、水素原子又は下記式(Y
*)、(Y
**)又は(Y
***):
【化9】
[式中、
Z
1は、COOR
α、COSR
s、CON(R
α)
2、CONR
αR
s又はCONHR
αであり、ここで、R
α及びR
sは、独立して、水素原子、C
3-8シクロアルキル基により場合により置換されていているC
1-18アルキル基、場合により置換されているC
3-8シクロアルキル基、場合により置換されているC
4-18アリールもしくはヘテロアリール基、場合により置換されているC
5-18アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリール基又は場合により置換されているC
7-30アラルキル基を表わし、ここで、1つのR
α及び1つのR
s残基は、それらが結合している隣接する窒素原子と共に、5~7員の複素環を形成することができ、同複素環は、更なる窒素原子又は酸素原子を含有することができ、ここで、場合により置換されている基は、1~5個のC
1-5アルキル基により置換されていることができ、
R
■及びR
●は、独立して、水素原子、場合により置換されているC
1-18アルキル基、場合により置換されているC
3-18シクロアルキル基、場合により置換されているC
5-18アリール又はヘテロアリール基、場合により置換されているC
5-18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、場合により置換されているC
7-30アラルキル基を表わし、ここで、場合により置換されている基は、1~5個のC
1-5アルキル基により置換されていることができ、
L
*は、(a+b)価の有機残基(式中、bは、式(G)におけるYが丸括弧内にある場合、1である)を表わし、2~45個の炭素原子並びに場合により、ヘテロ原子、例えば、酸素、窒素及び硫黄原子を含有し、該炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子並びに芳香族炭素原子から選択されるa+b個の炭素原子を含み、a+b個の炭素原子はそれぞれ、ホスファート又は式(Y
*)、(Y
**)及び(Y
***)のいずれか1つで示される部分を連結し、aは、1~10、好ましくは、1~5の整数であり、bは、1~10、好ましくは、1~5の整数であり、ただし、少なくとも1つのYは、水素原子ではないという条件である]
で示される部分を表わす]
を有する。このような化合物(ここで、Y=Y
*)の調製は、EP第1548021号から公知である。
【0051】
さらに、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を有する重合性化合物(a)は、下記式(H):
【化10】
[式中、
部分Y
1は、下記式(Y
1
**)又は(Y
1
***):
【化11】
[
Z
2は、独立して、Z
1について定義されたものと同じ意味を有し、
R
□及びR
○は、独立して、R
■及びR
●について定義されたものと同じ意味を有し、
L
1は、(c+d)価の有機残基を表わし、2~45個の炭素原子並びに場合により、ヘテロ原子、例えば、酸素、窒素及び硫黄を含有し、該炭素原子は、第一級及び第二級脂肪族炭素原子、第二級脂環式炭素原子並びに芳香族炭素原子から選択されるc+d個の炭素原子を含み、c+d個の炭素原子はそれぞれ、ホスホナート又は式(Y
1
*)、(Y
1
**)及び(Y
1
***)のいずれか1つで示される部分を連結し、
c及びdは、独立して、1~10の整数を表わす]
で示される部分を表わす]
で示される重合性酸性化合物を含有するホスホン酸基から選択することもできる。
【0052】
式(G’)で示される化合物から、下記式:
【化12】
[式中、
Z
1は、上記のように定義され、L
*は、場合により置換されているアルキレン基であり、より好ましくは、Z
1は、メチルであり、L
*は、C
4~C
16アルキレン基であり、さらにより好ましくは、L
*は、C
8~C
12アルキレン基である]
が特に好ましい。
【0053】
さらに、1つ以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する重合性モノマー(a)は、EP第2705827号及び同第2727576号に開示されている加水分解安定多官能性重合性モノマーから選択することができる。
【0054】
特に好ましい重合性モノマー(a)は、式(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)で示される化合物、より好ましくは、式(D)、(E)、(F)で示される化合物、最も好ましくは、式(E)で示される化合物から選択される。
【0055】
ポリマーの形態にある重合性モノマー(a)は、好ましくは、重合性多酸性ポリマーから選択される。
【0056】
「重合性多酸性ポリマー」という用語に関して使用する場合、「重合性」という用語は、付加重合において共有結合により結合可能なポリマーを意味する。「重合性多酸性ポリマー」は、歯科用組成物を硬化させる際に、架橋剤及び例えば、重合性(炭素-炭素)二重結合を有するモノマーと結合して、グラフトポリマー及び/又は架橋ポリマーを形成することができる。
【0057】
「重合性多酸性ポリマー」という用語に関して使用する場合、「多酸性」という用語は、ポリマーが反応性ガラスとのセメント反応に関与することができる複数の酸性基、好ましくは、カルボン酸基を有することを意味する。カルボン酸基は、好ましくは、骨格中に存在し、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はイタコン酸から得られる。追加の酸性度は、式(V)で示される基におけるカルボン酸基及び式(VI)で示される任意の繰り返し単位におけるカルボン酸基により導入することができる。
【0058】
特に好ましい重合性多酸性ポリマーは、下記式(IV):
【化13】
[式中、
R
5は、下記式(V):
【化14】
で示される基を表わす]
で示される繰り返し単位を有する。
【0059】
式(V)及び(IX)において、ギザギザの結合は、R7がカルボニル基に対してcis又はtrans配置にある場合があることを示す。さらに、式(V)において、ギザギザ線への結合は、式(IV)で示される繰り返し単位のアミド部分の窒素へのR5の結合を示す。式(VII)において、ギザギザ線への結合は、式(VII)で示される繰り返し単位のアミド部分の窒素へのR11の結合を示す。
【0060】
式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーは水溶性であり、セメント反応において粒状ガラスと反応性である。ここで、重合性多酸性ポリマーは、ポリマー骨格と、1つ以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する加水分解安定ペンダント基R5とを有する。
【0061】
式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーの重合性ペンダント基R5は、ラジカル重合性二重結合を有するモノマーと反応することができ、それにより、グラフトポリマーが形成される。グラフト化された側鎖は、セメント反応に関与することができる更なるカルボン酸基を含有し、それにより、硬化した組成物の強度をさらに向上させることができる。
【0062】
式(V)において、Aoは、さらに置換されていることができる芳香族基である。芳香族基は、特に限定されず、任意の有機芳香族基、すなわち、π電子の数が4f+2(ここで、fは、ゼロ又は任意の正の整数である)に等しい環状部分であることができる。好ましくは、Aoは、アレーン又はヘテロアレーンから得られる。アレーンは、単環式又は多環式芳香族炭化水素である。ヘテロアレーンは、芳香族系に特徴的な連続π電子系及びヒュッケル則に対応する多数の面外π電子(4f+2)を維持するような方法に、1つ以上のメチン(-C=)及び/又はビニレン(-CH=CH-)基をそれぞれ三価又は二価のヘテロ原子で置き換えることにより、アレーンから形式的に得られる複素環化合物である。
【0063】
o+eが2である場合、Aoは、好ましくは、1つ以上の置換基によりさらに置換されていることができるC6-14アレーントリイル又はC3-14ヘテロアレーントリイル基である。o+eが3である場合、Aoは、好ましくは、1つ以上の更なる置換基によりさらに置換されていることができるC6-14アレーンテトライル又はC3-14ヘテロアレーンテトライル基である。o+eが4である場合、Aoは、好ましくは、1つ以上の更なる置換基によりさらに置換されていることができるC6-14アレーンペンタイル又はC3-14ヘテロアレーンペンタイル基である。ついで、o+eが5である場合、Aoは、好ましくは、1つ以上の更なる置換基によりさらに置換されていることができるC6-14アレーンヘキサイル又はC3-14ヘテロアレーンヘキサイル基である。
【0064】
更なる置換基は、直鎖又は分岐鎖C1~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖C1~C10アルケニル基、-COOM、-PO3M、-O-PO3M2及び-SO3Mからなる群より選択される。ここで、Mは、水素原子又は金属原子を表わす。より好ましくは、Aoは、C6-10アレーントリイル又はC3-9ヘテロアレーントリイル基であり、これらは、直鎖又は分枝鎖C1~C4アルキル基及び直鎖又は分枝鎖C1~C4アルケニル基から選択される1つ以上の更なる置換基により置換されていることができる。さらにより好ましくは、Aoは、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基、トルエントリイル基、キシレントリイル基及びスチレントリイル基から選択され、ヘテロアリール基は、ピリジントリイル基である。なお、さらにより好ましくは、Aoは、ベンゼントリイル基である。最も好ましくは、Aoは、ヒドロキシル基がメチレン基連結R5に対してパラ位で式(V)に存在するベンゼントリイル基である。
【0065】
式(V)において、R6及びR7は、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子又はカルボン酸基により置換されていることができるC1-6アルキル基を表わす。好ましくは、R6及びR7は、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子又はC1-3アルキル基を表わす。より好ましくは、R6は、水素原子又はメチル基を表わし、R7は、水素原子を表わす。最も好ましくは、R6及びR7は両方とも、水素原子を表わす。
【0066】
式(V)において、R8は、アリール基を活性化する電子供与基を表わす。したがって、各R8は、Ao基の環原子に直接結合している。R8は、ハロゲン原子又は-OH、-ORd、-NReH、-NReRf、-SH及びSRgから選択される基であることができる。ここで、Rd、Re、Rf、Rg及びRgは、C1-6アルキル基を表わす。好ましくは、R8は、ヒドロキシル基である。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることができる。oが、2である場合、R8は、両方ともOHであることはできない。
【0067】
式(V)において、eの値に応じて、1つ以上のR9が存在することができる。2つ以上のR9が存在する場合、R9は、同じか又は異なることができる。R9は、水素原子、カルボン酸基、COORa基、CONHRb基又はCONRc
2基を表わす。Ra、Rb及びRcは、C1-6アルキル基を表わす。好ましい実施態様によれば、R9は、水素原子を表わす。
【0068】
式(V)において、oは、1又は2の整数である。好ましくは、oは、1である。式(V)において、eは、1~4の整数である。好ましくは、eは、1又は2の整数である。式(V)において、o+eは、好ましくは、5以下、より好ましくは、4以下、特に、3である。
【0069】
式(V)において、Aoは、フェニル基であるのが好ましい。具体的には、R
5は、好ましくは、下記式(V’):
【化15】
[式中、R
6、R
7及びeは、上記定義されたとおりである]
で示される基を表わす。
【0070】
R
5は、下記式(V’’
a)又は(V’’
b):
【化16】
で示される基であるのが特に好ましい。
【0071】
さらに、式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーは、下記式(VI):
【化17】
で示される酸性繰り返し単位をさらに含むのが好ましい。
【0072】
式(VI)において、R10は、水素原子又はカルボン酸基により置換されていることができるC1-6アルキル基を表わす。好ましくは、R10は、水素原子又はカルボン酸基により置換されていることができるC1-3アルキル基を表わし、より好ましくは、R10は、水素原子又はメチル基を表わす。最も好ましくは、R10は、水素原子を表わす。
【0073】
式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーにおいて、式(VI)で示される繰り返し単位と式(IV)で示される繰り返し単位とのモル比([式(VI)]/[式(IV)])は、好ましくは、1000:1~1:1、より好ましくは、100:1~5:1、最も好ましくは、50:1~10:1の範囲にある。
【0074】
式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーは、好ましくは、10,000~250,000、より好ましくは、20,000~150,000、最も好ましくは、30,000~100,000の範囲にある分子量Mwを有する。
【0075】
式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーは、加水分解安定性であり、これは、50℃の温度で保存した場合、pH2.5で1か月以内に加水分解する基を含有しないことを意味する。
【0076】
特に好ましい実施態様によれば、重合性多酸性ポリマーは、下記式(IV):
【化18】
[式中、R
5は、下記式(V’):
【化19】
[式中、
R
6及びR
7は、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子又はC
1-4アルキル基を表わし、好ましくは、R
6は、水素原子又はメチル基であり、R
7は、水素原子であり、
eは、1~3の整数であり、好ましくは、nは、1又は2の整数である]
で示される基を表わす]
で示される繰り返し単位を有する。ここで、重合性多酸性ポリマーは、下記式(VI):
【化20】
[式中、R
10は、水素原子又はC
1-4アルキル基を表わし、好ましくは、R
10は、水素原子又はメチル基を表わす]
で示される酸性繰り返し単位をさらに含む。ここで、式(VI)で示される繰り返し単位と式(IV)で示される繰り返し単位とのモル比([式(VI)]/[式(IV)])は、100:1~5:1、好ましくは、50:1~10:1の範囲にあり、分子量M
wは、20,000~150,000、好ましくは、30,000~100,000の範囲にある。
【0077】
式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーを製造するための方法は、下記式(VII):
【化21】
[式中、R
11は、下記式(VIII):
【化22】
[式中、
Aoは、さらに置換されていることができる芳香族基であり、
R
8は、ハロゲン原子又は-OH、-OR
d、-NR
eH、-NR
eR
f、-SH及び-SR
gから選択される基を表わし、ここで、R
d、R
e、R
f、R
g及びR
gは、C
1-6アルキル基を表わし、
oは、1又は2の整数であり、ただし、oが、2である場合、R
8は両方とも、OHであることができないという条件である]
で示される基を表わす]
で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを、下記式(IX)
【化23】
[式中、
X
*は、離脱基であり、
R
9、R
6及びR
7は、同じか又は異なることができ、独立して、水素原子又はカルボン酸基により置換されていることができるC
1-6アルキル基を表わす]
で示される化合物と反応させることを含む。
【0078】
式(IX)で示される化合物において、脱離基X*は、好ましくは、求電子芳香族置換によるC-C結合形成を受けやすい脱離基である。より好ましくは、脱離基X*は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヒドロキシル基からなる群より選択される。最も好ましくは、脱離基X*は、ヒドロキシル基である。
【0079】
式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーと式(IX)で示される化合物とのポリマー類似反応についての反応条件は、特に限定されない。
【0080】
好ましくは、この反応は、溶媒の存在下で行われる。より好ましくは、溶媒は、水である。
【0081】
式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(IX)で示される化合物と反応させるための反応温度は、特に限定されない。好ましくは、この反応は、20~90℃の温度で行われる。最も好ましくは、反応温度は、40~80℃の範囲にある。
【0082】
式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(IX)で示される化合物と反応させるための反応時間は、特に限定されない。好ましくは、反応時間は、1~72時間、最も好ましくは、12~50時間の範囲にある。
【0083】
式(IX)で示される化合物に対する式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーのモル比は、特に限定されない。好ましくは、式(IX)で示される化合物に対する式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーのモル比は、1:5~1:1000、より好ましくは、1:100~1:800、最も好ましくは、1:300~1:700である。
【0084】
式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーと式(IX)で示される化合物との反応は、触媒、好ましくは、有機酸又は無機酸の形態にある触媒の存在下で行うことができる。より好ましくは、触媒は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、シュウ酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される。最も好ましくは、触媒は、塩酸又はシュウ酸である。触媒の量は、式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマー及び式(IX)で示される化合物のモル量に基づいて、0.01~100mol%、好ましくは、10~90mol%、より好ましくは、30~80mol%から選択することができる。
【0085】
式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーの形態にある反応生成物のR5における式(V)で示される基の数eは、式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(IX)で示される化合物と反応させるための反応条件を適切に選択することにより設定することができる。例えば、e=1とする場合には、触媒として、シュウ酸を適用することができ、反応温度は、好ましくは、60~80℃の範囲内にある。e=2とするには、触媒として、塩酸を適用することができ、反応温度は、好ましくは、35~55℃の範囲内にある。
【0086】
式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを式(IX)で示される化合物と反応させることにより得られる反応生成物は、定法に従って精製することができる。好ましくは、式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーの形態にある反応生成物を反応混合物から分離し、水に対する透析により精製し、より好ましくは、透析を2000g/molまでの分子量を有する分子のサイズ排除により行う。透析による精製又は周知のポリマー化学的精製法、例えば、沈殿、液-液抽出による。式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーは、高い収率及び純度の両方で得られる。
【0087】
特に好ましい実施態様によれば、式(IV)で示される繰り返し単位を有する重合性多酸性ポリマーを製造するための方法は、下記式(VII):
【化24】
[式中、R
11は、下記式(VIIIa):
【化25】
で示される基を表わす]
で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーを、下記式(VIa)
【化26】
[式中、X
*は、ヒドロキシル基であり、R
6は、水素原子又はメチル基、好ましくは、水素原子であり、R
7は、水素原子である]
で示される化合物と、溶媒としての水中において、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、シュウ酸及びp-トルエンスルホン酸からなる群より選択される触媒(好ましくは、触媒は、塩酸又はシュウ酸である)の存在下で反応させることを含む。ここで、触媒の量は、式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマー及び式(IXa)で示される化合物のモル量に基づいて、10~90mol%、好ましくは、30~80mol%から選択することができ、ここで、反応温度は、40~80℃の範囲にあり、式(IXa)で示される化合物に対する式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーのモル比は、1:100~1:800、好ましくは、1:300~1:700である。
【0088】
式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーの形態にある出発物質は、下記式(VII):
【化27】
[式中、Ao
1は、式(V)について上記定義されたAoと同様に芳香族基である]
で表わされるモノマーを重合させることにより提供することができる。代替的には、芳香族基の置換パターンは、所望のコポリマーに適合させることができる。
【0089】
好ましくは、式(VII)で示される繰り返し単位を有する多酸性ポリマーの形態にある出発物質は、式(VII)及び(VI)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体コポリマーである。同コポリマーは、下記式(X):
【化28】
[式中、Ao
1は、上記定義された芳香族基である]
で表わされるモノマーを、下記式(XI)
【化29】
[式中、R
10は、式(VI)について上記されたように定義される]
で表わされるモノマーと共重合させることにより得ることができる。
【0090】
式(X)で表わされるモノマーに場合により含まれる及び/又は式(XI)で表わされるモノマーに場合により含まれるカルボン酸基は、場合により保護されていることができる。
【0091】
場合により保護されているカルボン酸基の保護基は、有機化学(参照.P.G.M. Wuts and T.W. Greene, Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Edition, John Wiley and Sons Inc., 2007)の当業者に公知のカルボキシル保護基である限り、特に限定されない。好ましくは、カルボキシル保護基は、トリアルキルシリル基、アルキル基及びアリールアルキル基から選択される。より好ましくは、カルボキシル保護基は、アルキル基又はアリールアルキル基から選択される。最も好ましくは、カルボキシル保護基は、tert-ブチル基及びベンジル基から選択される。好ましい一実施態様では、カルボキシル保護基は、tert-ブチル基である。
【0092】
場合により保護されているカルボン酸基は、式(X)で表わされるモノマーの重合又は共重合の前に、これらと同時に又はこれらに続けて脱保護することができる。
【0093】
場合により保護されているカルボン酸基の脱保護のための条件は、使用される保護基に応じて選択される。好ましくは、保護されているカルボン酸基は、水素化分解又は酸もしくは塩基による処理により脱保護される。
【0094】
場合により保護されているカルボン酸基の脱保護が、式(X)で表わされるモノマーの重合又は共重合と同時に行われる場合、脱保護条件及び重合又は共重合のための条件は、両反応が効率的に進行することができるように選択されなければならないことが、当業者により理解されるであろう。
【0095】
式(X)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させるための反応条件は、特に限定されない。したがって、溶媒の存在下又は非存在下で反応を行うことができる。好ましくは、この反応を溶媒の存在下で行う。適切な溶媒は、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンの群から選択することができる。好ましくは、溶媒は、ジオキサンである。
【0096】
式(X)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させるための反応温度は、特に限定されない。好ましくは、この反応を-10℃~溶媒の沸点の温度で行う。より好ましくは、反応温度は、0~110℃、さらにより好ましくは、40~100℃、最も好ましくは、60~90℃の範囲にある。
【0097】
式(X)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させるための反応時間は、特に限定されない。好ましくは、反応時間は、10分~48時間、より好ましくは、1時間~36時間、さらに好ましくは、2~24時間、最も好ましくは、3~12時間の範囲にある。
【0098】
式(X)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させるための反応を、好ましくは、重合開始剤の存在下で行う。好ましくは、重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド及び4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)から選択される。最も好ましくは、重合開始剤は、AIBNである。重合開始剤の量は、特に限定されない。適切には、該量は、モノマーの総量に基づいて、0.001~5mol%の範囲にある。
【0099】
式(X)で表わされるモノマーと式(XI)で表わされるモノマーとを共重合させるための反応を、好ましくは、式(X)で表わされるモノマー及び式(XI)で表わされるモノマーを1000:1~1:1、より好ましくは、100:1~5:1、最も好ましくは、50:1~10:1の範囲にあるモル比([式(X)]/[式(XI)])で提供することにより行う。
【0100】
式(VII)及び(VI)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体コポリマーにおいて、式(VI)で示される繰り返し単位及び式(VII)で示される繰り返し単位のモル比([式(VI)]/[式(VII)])は、好ましくは、1000:1~1:1、より好ましくは、100:1~5:1、最も好ましくは、50:1~10:1の範囲にある。
【0101】
式(X)で表わされるモノマーを重合させ又は共重合させることにより得られる反応生成物を沈殿及びろ過又は凍結乾燥、好ましくは、沈殿及びろ過により単離することができる。この反応生成物を定法に従って精製することができる。驚くべきことに、この反応生成物は、この反応生成物を単に、好ましくは、2回溶解させ、沈殿させることにより、高い収率及び純度の両方で得ることができることが見出された。したがって、この反応生成物の入念な精製を省くことができる。例えば、粗製の反応生成物を適切な有機溶媒、例えば、ジオキサン中に溶解させ、適切な有機溶媒、例えば、アセトニトリルを加えることにより沈殿させることができる。
【0102】
式(VII)及び(VI)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体コポリマーは、統計コポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー又はそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、アクリル酸誘導体コポリマーは、統計コポリマーである。
【0103】
好ましくは、式(VII)及び(VI)で示される繰り返し単位を有するアクリル酸誘導体コポリマーにおいて、R
11は、下記式(V’):
【化30】
[式中、R
10は、水素原子を表わす]
で示される基を表わす。
【0104】
式(X)で表わされるモノマーは、下記式(XII)
【化31】
[式中、Zaは、脱離基である]
で示される化合物を、式(XIII)
Ao
2-OH
(XIII)
[式中、Ao
2は、式(V)について上記定義された芳香族基である]
で示される化合物と反応させることにより調製することができる。
【0105】
好ましくは、式(XII)で示される化合物の脱離基Zaは、求電子芳香族置換によるC-C結合形成を受けやすい脱離基である。より好ましくは、脱離基Zaは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヒドロキシル基からなる群より選択される。最も好ましくは、脱離基Zaは、ヒドロキシル基である。
【0106】
式(XII)で示される化合物を式(XII)で示される化合物と反応させるための反応条件は、特に限定されない。
【0107】
該反応を溶媒の非存在下又は存在下で、好ましくは、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、好ましくは、アセトン、THF、酢酸エチル、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンからなる群より選択される。最も好ましくは、溶媒は、アセトンである。
【0108】
式(XII)で示される化合物を式(XIII)で示される化合物と反応させるための反応温度は、特に限定されない。好ましくは、該反応を-10~70℃の温度で行う。より好ましくは、反応温度は、10~60℃、最も好ましくは、30~50℃の範囲にある。
【0109】
式(XII)で示される化合物と式(XIII)で示される化合物との反応を触媒の存在下で、好ましくは、有機酸又は無機酸の形態にある触媒の存在下で行うことができる。より好ましくは、触媒は、無機ルイス酸、すなわち、無機電子受容体である。さらにより好ましくは、触媒は、AlCl3、BF3、FeCl3、FeCl2、FeBr3、FeBr2、FeSO4、Fe2(SO4)3、ZnCl2、ZnBr2、ZnSO4からなる群より選択される。さらにより好ましくは、触媒は、AlCl3、BF3及びFeCl3からなる群より選択される。最も好ましくは、触媒は、AlCl3である。触媒の量は、式(XII)で示される化合物のモル量に基づいて、0.01~150mol%、好ましくは、30~130mol%、より好ましくは、60~120mol%、最も好ましくは、90~110mol%から選択することができる。
【0110】
さらに、式(XII)で示される化合物を式(XIII)で示される化合物と反応させる場合、式(XII)で示される化合物の重合及び/又は自動酸化を抑制する酸化防止剤を加えることができる。好ましくは、酸化防止剤は、3,5-ジ-tert-4-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、4-tert-ブチルカテコール、フェノチオアジン、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)及びヒドロキシトルエンからなる群より選択される。最も好ましくは、酸化防止剤は、フェノチオアジンである。酸化防止剤の量は、式(XII)で示される化合物の総重量に基づいて、0.001~2%、好ましくは、0.02~0.5%から選択することができる。
【0111】
式(XII)で示される化合物と式(XIII)で示される化合物との反応は、特に限定されない。好ましくは、反応時間は、10分~48時間、より好ましくは、1時間~36時間、最も好ましくは、2~24時間の範囲にある。
【0112】
式(XII)で示される化合物を式(XIII)で示される化合物と反応させることにより得られる生成物を有機溶媒、好ましくは、クロロホルム又はジクロロメタンで抽出することにより、粗製の反応混合物から単離することができる。この生成物を定法に従って、好ましくは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0113】
(b-1)及び(b-2)を含む開始剤系(b)
増感剤又は酸化還元開始剤系の還元剤を酸化可能な酸化剤(b-1)
増感剤(b-1)
開始剤系(b)は、増感剤(b-1)を含む光開始剤系であることができる。
【0114】
適切な増感剤(b-1)は、約400nm~約520nm(好ましくは約450nm~約500nm)の範囲内の光を吸収するモノケトン及びジケトンである。特に適切な化合物は、約400nm~約520nm(さらにより好ましくは約450~約500nm)の範囲内に幾らかの光吸収を有するアルファジケトンを含む。例は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6-テトラメチルシクロ-ヘキサンジオン、フェナントラキノン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン及び他の1-アリール-2-アルキル-1,2-エタンジオン及び環状アルファジケトンを含む。
【0115】
さらに、適切な増感剤は、EP第3231413号及び同第3153150号に開示されているような下記式(XIV)
【化32】
で示される化合物である。
【0116】
式(XIV)で示される化合物において、Mは、Ge又はSiである。
【0117】
さらに、式(III)で示されるにおいて、R12、R13及びR14は、同じか又は異なることができ、独立して、有機基を表わすことができる。好ましくは、R12及びR13は、それぞれ独立して、置換又は非置換ヒドロカルビル又はヒドロカルビルカルボニル基を表わし、R14は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表わす。ヒドロカルビル基は、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基又はアリール基であることができる。アルキル基は、直鎖C1-20又は分岐鎖C3-20アルキル基、典型的には、直鎖C1-8又は分岐鎖C3-8アルキル基であることができる。C1-16アルキル基についての例は、1~6個の炭素原子、好ましくは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル及びn-ヘキシルを含むことができる。シクロアルキル基は、C3-20シクロアルキル基、典型的には、C3-8シクロアルキル基であることができる。シクロアルキル基の例は、3~6個の炭素原子を有するもの、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含むことができる。
【0118】
シクロアルキルアルキル基は、4~20個の炭素原子を有することができ、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基と、3~14個の炭素原子を有するシクロアルキル基との組み合わせを含むことができる。シクロアルキルアルキル(-)基の例は、例えば、メチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロプロピル、エチルシクロブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロプロピル、プロピルシクロブチル、プロピルシクロペンチル、プロピルシクロヘキシル等を含むことができる。アリールアルキル基は、C7-20アリールアルキル基、典型的には、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基と、6~10個の炭素原子を有するアリール基との組み合わせであることができる。アリールアルキル基の具体例は、ベンジル基又はフェニルエチル基である。アリール基は、6~10個の炭素原子を有するアリール基を含むことができる。アリール基の例は、フェニル及びナフチルである。
【0119】
R12及びR13のヒドロカルビルカルボニル基は、有機残基Rorgが上記定義されたヒドロカルビル残基であるアシル基(Rorg-(C=O)-)を表わす。
【0120】
式(XIV)で示される化合物は、1つ又は2つのヒドロカルビルカルボニル基を含有することができる、すなわち、R12及びR13のいずれか一方が、ヒドロカルビルカルボニル基であるか又はR12及びR13の両方が、ヒドロカルビルカルボニル基である。好ましくは、式(XIV)で示される化合物は、1つのヒドロカルビルカルボニル基を含有する。好ましくは、ヒドロカルビルカルボニル基は、アリールカルボニル基、より好ましくは、ベンゾイル基である。好ましくは、R12及びR13は、独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、C1-4アルコキシ基及び-NRxRy基(式中、Rx及びRyは、それぞれ独立して、C1-4アルキル基を表わす)から選択される1~3個の置換基により場合により置換されていていることができる直鎖C1-6又は分岐鎖C3-6アルキル基及びフェニル又はベンゾイル基からなる群より選択され、R14は、直鎖もしくは分岐鎖C3-6アルキル基又はフェニル基である。最も好ましくは、R12及びR13は、独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、C1-4アルコキシ基及び-NRxRy基(式中、Rx及びRyは、それぞれ独立して、C1-4アルキル基を表わす)からなる群より選択される1つの置換基により場合により置換されていていることができる直鎖C1-4又は分岐鎖C3もしくはC4アルキル基及びフェニル又はベンゾイル基から選択され、R14は、直鎖C1-4又は分岐鎖C3もしくはC4アルキル基である。
【0121】
さらに、式(XIV)で示される化合物において、R15は、水素原子、有機基又は有機金属基を表わし、ただし、R15が、水素原子である場合、開始剤系は、300~600nmの範囲にある光吸収極大を有する増感剤化合物をさらに含む。
【0122】
第1の好ましい実施態様によれば、R
15は、下記式(XV):
【化33】
[式中、
R
16は、
(i)下記式(XVI):
【化34】
[式中、M、R
3、R
4及びR
5は、式(XIV)について上記定義されたのと同じ意味を有し、ここで、式(XIV)で示される化合物は、対称又は非対称であることができる]
で示される基であるか又は
(ii)下記式(XVII):
【化35】
[式中、
X
*は、R
18は、単結合、酸素原子又は基NR
18(式中、R
18は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表わす)を表わし、
R
17は、置換又は非置換ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表わす]
で示される基であるか又は
(iii)Mが、Siである場合、R
16は、置換又は非置換ヒドロカルビル基であることができる]
で示される基を表わす。
【0123】
式(XVII)のR17が、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基である場合、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルカルボニル基はそれぞれ、R12、R13及びR14について定義されたのと同じ意味を有し、それらから独立して選択される。
【0124】
式(VII)において、R18は,R14について定義されたものと同じ意味を有し、それらから独立して選択される。
【0125】
第2の好ましい実施態様によれば、R15は、水素原子を表わす。したがって、開始剤系は、更なる増感剤化合物をさらに含む。更なる増感剤化合物は、好ましくは、300~500nmの範囲にある光吸収極大を有するアルファ-ジケトン増感剤化合物である。アルファ-ジケトン増感剤は、可視光を吸収可能であり、式(XIV)で示される水素供与化合物と光励起錯体を形成可能である。アルファ-ジケトン増感剤化合物は、カンファーキノン、1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジオン(ベンジル)、1,2-シクロヘキサンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ヘプタンジオン、3,4-ヘプタンジオン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6-テトラメチルシクロヘキサンジオン、3,3,7,7-テトラメチル-1,2-シクロヘプタンジオン、3,3,8,8-テトラメチル-1,2-シクロオクタンジオン、3,3、18,18-テトラメチル-1,2-シクロオクタンジオン、ジピバロイル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3-ブタンジオン、2,3-オクタンジオン、4,5-オクタンジオン及び1-フェニル-1,2-プロパンジオンから選択することができる。カンファーキノンは、最も好ましいアルファ-ジケトン増感剤である。好ましい実施態様によれば、重合性マトリックスは、0.05~5mol%の量でアルファ-ジケトン増感剤を含有する。
【0126】
好ましくは、式(XIV)で示される化合物において、Mは、Siである。
【0127】
例えば、R
16が式(XVII)を有し、対称である式(XIV)で示される化合物は、下記構造式:
【化36】
を有することができる。
【0128】
例えば、式(XIV)(式中、R
16は、式(XVII)で示される基を表わし、ここで、X
*は、結合、酸素原子又はNR
18基であり、R
17は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表わす)で示される化合物は、下記構造式:
【化37】
を有することができる。
【0129】
例えば、式(XIV)(式中、R
16は、式(XVII)で示される基を表わし、ここで、R
17は、トリヒドロカルビルシリル基を表わす)で示される化合物は、下記構造式:
【化38】
を有する。
【0130】
例えば、式(XIV)(式中、Mは、Siであり、R
16は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表わす)で示される化合物は、下記構造式:
【化39】
を有することができる。
【0131】
好ましくは、式(XIV)で示される化合物は、
【化40】
[式中、式(XIV)(式中、M=Si)で示される化合物が特に好ましい]
からなる群より選択される。
【0132】
より好ましくは、式(XIV)で示される化合物は、
【化41】
[式中、M=Siであるのが特に好ましい]
からなる群より選択される。
【0133】
最も好ましくは、式(XIV)で示される化合物は、tert-ブチル(tert-ブチルジメチルシリル)グリオキシラート)(DKSi)である。
【0134】
また、適切な光開始剤系は、典型的には、約380nm~約1200nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキシドも含むことができる。約380nm~約450nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤の例は、アシル及びビスアシルホスフィンオキシド、例えば、US第4,298,738号、同第4,324,744号及び同第4,385,109号及びEP第0173567号に記載されているものを含む。アシルホスフィンオキシドの具体例は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホナート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドを含む。約380nm超~約450nmの波長範囲で照射した場合、フリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量比25:75の混合物(IRGACURE 1700)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量比1:1の混合物(DAROCUR 4265)及びエチル 2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィナート(LUCIRIN LR8893X)を含む。典型的には、ホスフィンオキシド開始剤は、組成物の総重量に基づいて、触媒有効量、例えば、0.1重量%~5.0重量%で組成物に存在する。
【0135】
特に、増感剤は、アシルシリル-もしくはアシルゲルミル基を有する化合物又はアルファジケトン、好ましくは、カンファーキノンである。
【0136】
酸化還元開始剤系が可能な酸化剤(b-1)
開始剤系(b)は、酸化還元開始剤系であることができる。したがって、開始剤系は、酸化還元開始剤系の還元剤を酸化可能な酸化剤(b-1)を含む。酸化還元開始剤系の還元剤を酸化可能な酸化剤は、好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドである。
【0137】
好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドは、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾアート、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキシル)カーボナート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチル-ヘキサノアート及びペルオキシ二硫酸カリウムから選択される。より好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドは、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾアート及びペルオキシ二硫酸カリウムから選択される。最も好ましくは、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドは、ペルオキシ二硫酸カリウムである。
【0138】
場合により、酸化還元開始剤系は、1つ以上の無機触媒及び/又は有機重合促進剤を含む。
【0139】
好ましくは、触媒は、金属塩、より好ましくは、遷移金属塩である。さらにより好ましくは、触媒は、V、Fe、Cu、Ti、Mn、Ni及びZnの遷移金属塩である。最も好ましくは、触媒は、Fe又はCuの遷移金属塩である。四価及び/又は五価のバナジウム化合物が好ましく、酸化バナジウム(IV)、バナジル(IV)アセチルアセトナート、バナジル(IV)オキサラート、バナジル(IV)サルファート、オキソビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)バナジウム(IV)、ビス(マルトラト)オキソバナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、メタバナジウム酸ナトリウム(V)及びメタバナジウム酸アンモニウム(V)を含む。銅化合物の例は、アセチルアセトン酸銅、酢酸銅(II)、オレイン酸銅、塩化銅(II)及び臭化銅(II)を含む。
【0140】
好ましくは、重合促進剤は、スルフィン酸、スルフィナート、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、アルデヒド、チオ尿素化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、ハロゲン化合物及びチオール化合物から選択される。
【0141】
重合促進剤として使用することができるスルフィン酸及びスルフィナートの例は、p-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム及び2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムを含む。これらの中でも、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム及び2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
【0142】
重合促進剤として使用することができる亜硫酸塩や亜硫酸水素塩の例は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素カリウムを含む。
【0143】
重合促進剤として使用することができるアルデヒドの例は、テレフタルアルデヒド及びベンズアルデヒド誘導体、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-メチルオキシベンズアルデヒド、p-エチルオキシベンズアルデヒド及びp-n-オクチルオキシベンズアルデヒドを含む。
【0144】
重合促進剤として使用することができるチオ尿素化合物の例は、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジ-n-プロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ-n-プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ-n-プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素、3,3-ジメチルエチレンチオ尿素及び4,4-ジメチル-2-イミダゾリンチオンを含む。
【0145】
重合促進剤の含量は、本発明の歯科用重合性組成物全体に対して、好ましくは、0.01~5重量%、より好ましくは、0.05~3重量%である。
【0146】
共開始剤(b-2)
本発明の共開始剤(b-2)は、下記式(I):
Q-X
(I)
[式中、
Qは、シアノ基又は基A-Q’-:
(式中、
Aは、水素原子、更なる基X又は重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する重合性基であり、
Q’は、脂肪族炭化水素基又はポリオキシアルキレン基であり、これらは、2~12個の炭素原子を有し、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能であり、好ましくは、ヒドロキシ基から選択される基により置換されていることができる)
であり、
Xは、2つ以上のXが存在する場合、同じか又は異なることができ、独立して、Qがシアノ基である場合、下記式(IIa)で示される基又はQが基A-Q’-である場合、下記式(IIb):
-Ar(R1)n-NR2R3
(IIa)
-X1C(O)X2Ar(R1)n-NR2R3
(IIb)
(式中、
X1及びX2は、同じか又は異なることができ、独立して、単結合、-NR4-、-O-又は-S-を表わすことができ、ここで、R4は、水素原子、C1-6アルキレン基、C3-6シクロアルキレン基又はアリル基であり、
Arは、(n+2)価の芳香族炭化水素基であり、
R1は、2つ以上のR1が存在する場合、同じか又は異なることができ、独立して、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子又はニトロ基を表わし、
nは、0又は1~4の整数であり、
R2及びR3は、同じか又は異なることができ、独立して、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基、アリル基を表わし又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC3-6飽和炭素環基を形成しており又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、下記式(III)
>NAr(R1)nX2C(O)X1Q
(III)
(式中、Ar、R1、n、X1、X2、X1及びQは、独立して、上記定義されたとおりである)
で示される基を、環にさらに含有する環基を形成している)
で示される基を表わす]
で示される共開始剤である。ただし、式(I)で示される化合物は、重合性モノマーと共重合可能な少なくとも1つの重合性炭素-炭素二重結合並びに/又はX及び式(III)で示される基から選択される少なくとも2つの基を含有するという条件である、
【0147】
式(I)において、Qは、シアノ基又は基A-Q’-である。Qが、シアノ基である場合には、Xは、式(IIa)で示される基である。Qが、基A-Q’である場合には、Xは、式(IIb)で示される基である。
【0148】
Qがシアノ基である好ましい実施態様では、本発明の式(I)で示される共開始剤(b-2)は、下記式(Q1):
【化42】
で示される化合物である。
【0149】
部分Aは、水素原子、更なる基X又は重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する重合性基であることができる。好ましくは、部分Aは、更なる基X又は重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する重合性基である。より好ましくは、Aは、重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する重合性基である。
【0150】
Aが重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する重合性基である特定の実施態様では、炭素-炭素二重結合を有する重合性基は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基又はアリル(メタ)アクリルアミド基、より好ましくは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基又はアリル(メタ)アクリルアミド基であることができる。
【0151】
Q’は、二価の脂肪族炭化水素基又はポリオキシアルキレン基であり、これらの基は、2~12個の炭素原子を有することができ、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能であり、ヒドロキシ基から選択される基により置換することができ、好ましくは、Q’は、脂肪族炭化水素基であり、これは、2~12個の炭素原子を有することができ、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能であり、ヒドロキシ基から選択される基により置換することができる。
【0152】
好ましい実施態様では、Q’は、ポリオキシアルキレン基であり、これは、2~12個の炭素原子を有することができ、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能であり、ヒドロキシ基から選択される基により置換されていることができる。好ましくは、Q’は、4~12個の炭素原子を有することができるポリオキシアルキレン基であり、より好ましくは、Q’は、6~10個の炭素原子を有することができるポリオキシアルキレン基である。さらにより好ましくは、Q’は、10個の炭素原子を有するポリオキシアルキレン基である。
【0153】
好ましくは、Q’は、ポリオキシアルキレン基であり、これは、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能である。より好ましくは、Q’は、重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有さないポリオキシアルキレン基である。さらにより好ましくは、Q’は、炭素-炭素二重結合を有さないポリオキシアルキレン基である。好ましくは、Q’は、ヒドロキシ基から選択される最大4つの基により置換されていることができるポリオキシアルキレン基であり、より好ましくは、Q’は、ヒドロキシ基から選択される最大2つの基で置換されているポリオキシアルキレン基である。
【0154】
別の好ましい実施態様では、Q’は、重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する最大2つの重合性基を有するポリオキシアルキレンであり、ここで、重合性基は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基又はアリル(メタ)アクリルアミド基、より好ましくは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基又はアリル(メタ)アクリルアミド基である。
【0155】
特に好ましい実施態様では、Q’は、下記式:
【化43】
を有するポリオキシアルキレン基である。
【0156】
特に好ましい実施態様では、Q’は、脂肪族炭化水素基であり、これは、2~12個の炭素原子を有することができ、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能であり、ヒドロキシ基から選択される基により置換することができる。好ましくは、Q’は、脂肪族炭化水素基であり、これは、2~12個の炭素原子、より好ましくは、2~8個の炭素原子、さらにより好ましくは、2~4個の炭素原子、最も好ましくは、2つの炭素原子を有することができる。
【0157】
好ましくは、Q’は、脂肪族炭化水素基であり、これは、最大2つの炭素-炭素二重結合及び/又は炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有することができ、これらは、重合性モノマーと共重合可能である。より好ましくは、Q’は、炭素-炭素二重結合を有さず、重合性モノマーと共重合可能である最大2つの炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有する脂肪族炭化水素基であり、さらにより好ましくは、Q’は、炭素-炭素二重結合を有さず、炭素-炭素二重結合を有する重合性基を有さない脂肪族炭化水素基である。好ましくは、Q’は、ヒドロキシ基から選択される最大4つの基により置換されていることができる脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、Q’は、ヒドロキシ基から選択される最大2つの基により置換されていることができる脂肪族炭化水素基であり、さらにより好ましくは、Q’は、ヒドロキシ基から選択される基により置換されていない脂肪族炭化水素基である。
【0158】
別の好ましい実施態様では、Q’は、重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有する最大2つの重合可能な基を有する脂肪族炭化水素基であり、ここで、重合性基は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基又はアリル(メタ)アクリルアミド基、より好ましくは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基又はアリル(メタ)アクリルアミド基、さらにより好ましくは、(メタ)アクリロイル基である。
【0159】
特に好ましい実施態様では、Q’は、下記式:
【化44】
のうちの1つを有する脂肪族炭化水素基である。
【0160】
式(I)において、Xは、2つ以上のXが存在する場合、同じか又は異なることができ、独立して、下記式(IIa)又は(IIb):
-Ar(R1)n-NR2R3
(IIa)
-X1C(O)X2Ar(R1)n-NR2R3
(IIb)
[式中、
X1及びX2は、同じか又は異なることができ、独立して、-NR4-、-O-又は-S-を表わし、ここで、R4は、水素原子、C1-6アルキレン基、C3-6シクロアルキレン基又はアリル基であり、
Arは、(n+2)価の芳香族炭化水素基であり、
R1は、2つ以上のR1が存在する場合、同じか又は異なることができ、独立して、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基を表わし、
nは、0又は1~4の整数であり、
R2及びR3は、同じか又は異なることができ、独立して、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基、アリル基を表わし又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC3-6飽和炭素環基を形成しており又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、下記式(III)
>NAr(R1)nX2C(O)X1Q
(III)
(式中、Ar、R1、n、X2、X1及びQは、独立して、上記定義されたとおりである)
で示される基を、環にさらに含有する環基を形成している]
で示される基を表わす。
【0161】
好ましくは、式(IIa)又は(IIb)において、Arは、o-、p-又はm-フェニレン基、より好ましくは、o-又はp-フェニレン基、さらにより好ましくは、p-フェニレン基であることができる。
【0162】
式(IIa)又は(IIb)において、R1は、2つ以上のR1が存在する場合、同じか又は異なることができる。R1は、独立して、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子及びニトロ基を表わす。好ましくは、R1は、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基、C1-6アルキル基又はハロゲン原子である。より好ましくは、R1は、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基又はハロゲン原子である。
【0163】
好ましい実施態様では、R1は、重合性モノマーと共重合可能な重合性炭素-炭素二重結合を有する一価の置換基であり、ここで、重合性基は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基又はアリル(メタ)アクリルアミド基、より好ましくは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基又はアリル(メタ)アクリルアミド基、さらにより好ましくは、(メタ)アクリロイル基である。
【0164】
式(IIa)又は(IIb)において、nは、0又は1~4の整数であり、好ましくは、nは、0又は1~2の整数であり、より好ましくは、nは、0又は1であり、さらにより好ましくは、nは、0である。
【0165】
式(IIa)又は(IIb)において、R2及びR3は、同じか又は異なることができ、独立して、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基、アリル基を表わし又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC3-6飽和炭素環基を形成しており又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、式(III)で示される基を環にさらに含有する環基を形成しており、好ましくは、R2及びR3は、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基を表わし又はR2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、式(III)で示される基を環にさらに含有する環基を形成しており、より好ましくは、R2又はR3は、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基を表わす。
【0166】
特に好ましい実施態様では、R2及びR3は、同じか又は異なることができ、独立して、1~8個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基、好ましくは、1~4個の炭素原子、より好ましくは、1~2個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基を表わし、最も好ましくは、R2及びR3は、メチル基を表わす。
【0167】
特定の実施態様では、R
2及びR
3は、それらが結合している窒素原子と共に、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC
3-6飽和炭素環基、好ましくは、酸素原子及び硫黄原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC
4飽和炭素環基を形成している。好ましくは、R
2及びR
3は、それらが結合する窒素原子と共に、酸素原子から選択されるヘテロ原子、より好ましくは酸素原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC
3-6飽和炭素環基、より好ましくは、酸素原子から選択されるヘテロ原子を含有することができるC
4飽和炭素環基を形成している。特に好ましくは、R
2及びR
3は、それらが結合している窒素原子と共に、下記式:
【化45】
で示される部分を形成している。
【0168】
好ましい実施態様では、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子と共に、式(III)(式中、Ar、R1、n、X1、X2及びQは、独立して、上で定義されたとおりである)で示される基を環にさらに含有する環基を形成している。
【0169】
式(IIb)において、X2及びX1は、同じか又は異なることができ、独立して、単結合、-NR4-、-O-又はS-を表すことができ、ここで、R4は、水素原子、C1-6アルキレン基、C3-6シクロアルキレン基又はアリル基である。好ましくは、X2及びX1は、独立して、単結合、-NR4-又は-O-を表わし、ここで、R4は、水素原子、C1-6アルキレン基、C3-6シクロアルキレン基又はアリル基であり、より好ましくは、X2及びX1は、独立して、単結合、-NR4-又は-O-を表わし、ここで、R4は、水素原子又はアリル基である。さらにより好ましくは、X2及びX1は、独立して、単結合、-NR4-又は-O-を表わし、ここで、R4は、アリル基である。特定の実施態様によれば、X2及びX1の一方は、-O-であり、他方は、単結合又は-NR4-である。好ましくは、X2及びX1は、同時に単結合ではない。好ましくは、X2は、単結合である。
【0170】
本発明の式(I)で示される共開始剤(b-2)は、重合性モノマーと共重合可能な少なくとも1つの重合性炭素-炭素二重結合並びに/又はX及び式(III)で示される基から選択される少なくとも2つの基を含有する化合物である。
【0171】
好ましい実施態様では、式(I)で示される共開始剤(b-2)は、炭素-炭素二重結合を有する重合性基を含有する化合物である。別の実施態様では、式(I)で示される共開始剤(b-2)は、X及び式(III)で示される基から選択される少なくとも2つの基を含有する化合物である。
【0172】
好ましい実施態様では、式(I)で示される共開始剤(b-2)は、(メタ)アクリラート基及び(メタ)アクリルアミド基から選択される1つ以上の重合性基を有する化合物である。
【0173】
好ましい実施態様では、式(I)で示される共開始剤(b-2)は、R2及びR3が同じか又は異なることができ、独立して、C1-6アルキル基を表わす化合物である。
【0174】
好ましい実施態様では、式(I)で示される共開始剤(b-2)は、R2及びR3がメチル基を表わす化合物である。
【0175】
好ましい実施態様では、式(I)で示される共開始剤(b-2)は、R2及びR3が、それらが結合している窒素原子と共に、式(III)で示される基を環にさらに含有する環基を形成している化合物である。ここで、式(IIa)又は(IIb)及び(III)で示される基におけるAr、R1、n、X1、X2及びQは同じである。
【0176】
好ましい実施態様では、式(I)で示される共開始剤(b-2)は、Arがo-又はp-フェニレン基である化合物である。
【0177】
式(I)で示される共開始剤(b-2)の好ましいクラスは、下記式(I-A)~(I-H):
【化46】
で示される化合物に関する。
【0178】
式(I-A)~(I-H)において、R30は、A-Q’-X1C(O)X2-であり、ここで、A、Q’、X1及びX2は、上記定義されたとおりであり;X3は、X1/X2について定義されたとおりであり、R1、R2及びR3は、上記定義されたとおりであり;Lは、脂肪族炭化水素基又はポリオキシアルキレン基であり、これらは、2~12個の炭素原子を有し、最大2個の重合性モノマーと共重合可能な炭素-炭素二重結合を有することができ、e及びfは、独立して、0又は1~4の整数である。
【0179】
本発明の特に好ましい特定の共開始剤(b-2)は、式:
【化47】
で示される化合物である。
【0180】
更なる任意の成分
本発明の歯科用組成物は、上記成分に加えて、追加の任意成分を含むことができる。
【0181】
例えば、本発明の歯科用組成物は、水又は当技術分野において公知の任意の溶媒を含むことができる。
【0182】
本発明の歯科用組成物は、好ましくは、該組成物の総重量に基づいて、5~20重量% 水を含むことができる。
【0183】
場合により、歯科用組成物は、安定剤及び/又は顔料をさらに含むことができる。
【0184】
歯科用組成物は、1種以上の粒状充填材をさらに含むことができる。
【0185】
粒状充填材は、当技術分野において公知の歯科用充填材であることができる。好ましくは、歯科用充填材は、粒状ガラス充填材及び放射線不透過性充填材から選択される。より好ましくは、歯科用充填材は、放射線不透過性充填材から選択される。
【0186】
「粒状ガラス充填材」という用語は、熱溶融プロセスによりガラスに変換され、種々のプロセスにより粉砕された、主に金属酸化物の固体混合物を指す。ガラスは、粒子状にある。さらに、粒状ガラス充填材は、例えば、シラン化又は酸処理により表面改質することができる。
【0187】
好ましくは、粒状ガラス充填材は球形である。
【0188】
歯科用充填材について、ガラス成分は、「不活性ガラス」、「反応性ガラス」及び「フッ化物放出ガラス」から選択することができる。
【0189】
「不活性ガラス」という用語は、セメント反応において酸性基を含有するポリマーと反応し得ないガラスを指す。不活性ガラスは、例えば、the Journal of Dental Research June 1979, pages 1607-1619又はより近年では、US第4814362号、同第5318929号、同第5360770号及びUS第2004/0079258号に記載されている。具体的には、US第2004/0079258号から、強塩基性酸化物、例えば、CaO、BaO、SrO、MgO、ZnO、Na2O、K2O、Li2O等が弱塩基性酸化物、例えば、スカンジウム又はランタニド系列の酸化物に置き換えられている不活性ガラスが公知である。
【0190】
「反応性ガラス」という用語は、セメント反応において酸性基を含有するポリマーと反応し得るガラスを指す。ガラスは、粒子状である。本発明の目的で、任意の従来の反応性歯科用ガラスを使用することができる。粒状反応性ガラスの具体例は、カルシウムアルミノシリカートガラス、カルシウムアルミノフルオロシリカートガラス、カルシウムアルミノフルオロボロシリカートガラス、ストロンチウムアルミノシリカートガラス、ストロンチウムアルミノフルオロシリカートガラス、ストロンチウムアルミノフルオロボロシリカートガラスから選択される。適切な反応ガラスは、金属酸化物、例えば、酸化亜鉛及び/もしくは酸化マグネシウムの形態にあることができ並びに/又は例えば、US第3,655,605号、同第3,814,717号、同第4,143,018号、同第4,209,434号、同第4,360,605号及び同第4,376,835号に記載されているようなイオン浸出性ガラスの形態にあることができる。
【0191】
「フッ化物放出ガラス」という用語は、フッ化物を放出可能なガラスを指す。フッ化物放出能力は、フッ化物を含有するガラス無機粒子を形成するための酸化物の混合物に加えることにより提供することができる。ただし、ガラスが、フッ化物放出性、好ましくは、持続的なフッ化物放出性を有するという条件である。このような無機粒子は、フッ化ナトリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム及びカルシウム含有フルオロアルミノシリカートガラスからなる群より選択することができる。
【0192】
好ましくは、粒状ガラス充填材は、上記定義された反応性ガラス又はフッ化物放出ガラス、より好ましくは、反応性ガラスである。
【0193】
より好ましくは、粒状ガラス充填材は、以下:
1)20~45重量% シリカ、
2)20~40重量% アルミナ、
3)20~40重量% 酸化ストロンチウム、
4)1~10重量% P2O5及び
5)3~25重量% フッ化物
を含む反応性粒状ガラス充填材である。
【0194】
本発明の硬化性二剤組成物は、該組成物の総重量に基づいて、好ましくは、20~90重量%、より好ましくは、30~80重量% 粒状ガラス充填材を含む。
【0195】
粒状ガラス充填材は、通常、例えば、電子顕微鏡により又はMALVERN Mastersizer SもしくはMALVERN Mastersizer 3000装置により具体化されるような従来のレーザー回折粒子サイズ測定法を使用することにより測定された場合、0.005~100μm、好ましくは、0.01~40μm、より好ましくは、0.05~20μm、最も好ましくは、0.1~3μmの平均粒径を有する。
【0196】
粒状ガラス充填材は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)粒径分布を有することができる。ここで、多峰性粒状ガラス充填材は、異なる平均粒径を有する2つ以上の微粒子画分の混合物を表わす。
【0197】
好ましくは、粒状充填材は、放射線不透過性充填材である。
【0198】
適切な放射線不透過性粒状充填材は、タングステン、ビスマス、ストロンチウム、バリウム、タンタル、セリウム、スズ、ジルコニウム、イッテルビウム及びイットリウムを含む群の元素を含有する充填材から選択することができる。
【0199】
放射線不透過性粒状充填材は、通常、例えば、電子顕微鏡により又はMALVERN Mastersizer SもしくはMALVERN Mastersizer 2000装置により具体化されるような従来のレーザー回折粒子サイズ測定法を使用することにより測定された場合、0.005~100μm、好ましくは0.01~40μmの平均粒径を有する。放射線不透過性粒状反応性ガラスは、異なる平均粒径を有する2つ以上の放射線不透過性微粒子画分の混合物を表わす多峰性放射線不透過性粒状反応性ガラスであることができる。また、放射線不透過性粒状反応性ガラスは、異なる化学組成の粒子の混合物であることもできる。特に、放射線不透過性粒状反応性材料と放射線不透過性粒状非反応性材料との混合物を使用可能である。
【0200】
本発明の歯科用組成物は、該組成物全体の重量に基づいて、好ましくは、1~80重量%、より好ましくは、40~70重量% 放射線不透過性粒状充填材を含む。
【0201】
特定の実施態様では、歯科用組成物が、光開始剤系を含む組成物であり及び/又は歯科用組成物が、歯科用印象材である場合、該組成物は、好ましくは、例えば、電子顕微鏡により又はMALVERN Mastersizer SもしくはMALVERN Mastersizer 2000装置により具体化されるような従来のレーザー回折粒子サイズ測定法を使用することにより測定された場合、好ましくは、0.05~5μmの範囲にある平均粒径を有する粒状充填材をさらに含むことができる。粒状充填材は、異なる平均粒径を有する2つ以上の微粒子画分の混合物を表わす多峰性粒状充填材であることができる。また、粒状反応性充填材は、異なる化学組成の粒子の混合物であることもできる。歯科用組成物は、歯科用組成物の総重量に基づいて、10~60重量%、より好ましくは、20~50重量% 充填材を含む。充填材の具体的な種類は、特に限定されない。したがって、任意の毒性学的に許容され得る無機充填材、特に、疎水性充填材、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、無機塩、金属酸化物及びガラスを使用することができる。充填材は、異なる充填材、例えば、結晶型を含む二酸化シリコーン、特に、粒状石英、非晶質二酸化ケイ素、特に、珪藻土及びシラン化ヒュームドシリカの混合物であることができる。
【0202】
未硬化組成物の粘度及びチキソトロピー性並びに硬化組成物の物理的性質は、充填材のサイズ及び表面積を変化させることにより制御することができる。
【0203】
充填材は、1種以上のシラン化剤で表面処理されていることができる。好ましいシラン化剤は、少なくとも1つの重合可能な二重結合及び水で容易に加水分解する少なくとも1つの基を有するものを含む。このようなシラン化剤の例は、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルジメトキシ-モノクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメチルシラン、3-メタクリルオキシプロピルモノクロロジメチルシラン及びこれらの混合物を含む。
【0204】
好ましい充填材は、ヒュームドシリカ、石英、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、珪藻土、ケイ酸ジルコニウム、モントモリロナイト、例えば、ベントナイト、のような分子ふるいを含むゼオライト、例えば、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、金属酸化物粉末、例えば、酸化アルミニウムもしくは酸化亜鉛又はそれらの混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、プラスター及びガラス粉末である。
【0205】
実施例
ここから、本発明を下記実施例によりさらに説明するものとする。
【0206】
実施例1-MAB 2-121-1
【化48】
4-ジメチルアミノベンゾイルクロリド(10.00g、0.0545)を酢酸エチル 25mlに懸濁させ、4℃に冷却した。ジアリルアミン(6.35g、0.065モル)を酢酸エチル 25ml及びトリエチルアミン(5.51g、0.0545モル)に溶解させ、撹拌しながら酸クロリドに添加した。後者を完全に加えた後、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応終了後、さらに、酢酸エチル 300mlをこの反応混合物に加え、希重炭酸ナトリウムで抽出した。有機相をMgSO
4で乾燥させ、酢酸エチルをロータリーエバポレーターにより除去した。粗生成物をMTBEに分散させ、冷蔵庫で1時間冷却し、ろ過し、最後に氷冷エタノールで洗浄した。乾燥後、4.19gを得た(収率32%)。
1H-NMR [ppm]: (300 MHz, CDCl
3): δ 7.40 (m, 2H, H 3), 6.66 (m, 2H, H 2), 5.82 (m, 2H, H 5), 5.20 - 5.18 (m, 4H, H 6a/b), 4.01 (s, 4H, H 4), 2.98 (s, 6H, H 1)
【0207】
実施例2-MAB 2-124-1
【化49】
4-ジメチルアミノベンゾイルクロリド(10.00g、0.0545)を酢酸エチル 25mlに懸濁させた。エチレンジアミン(1.47g、0.025モル)を酢酸エチル 25ml及びトリエチルアミン(5.51g、0.0545モル)に溶解させ、撹拌しながら酸クロリドに加えた。後者を完全に加えた後、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応完了後、粗生成物を氷冷エタノール中で沈殿させ、ろ過し、最後に真空乾燥させた。乾燥後、5.87gを得た(収率31.5%)。
1H-NMR [ppm]: (300 MHz, CDCl
3): δ 7.74 (m, 2H, H 3), 7.06 (sb, 2H, H 4), 6.67 (m, 2H, H 2), 3.65 (t, 4H, H 5), 2.98 (m, 4H, H 1)
【0208】
実施例3-MAB 2-127-1
【化50】
4-ジメチルアミノベンゾイルクロリド(10.00g、0.0545)を酢酸エチル 25mlに懸濁させた。アリルアミン(3.73g、0.065モル)を酢酸エチル 25ml及びトリエチルアミン(5.51g、0.0545モル)に溶解させ、撹拌しながら酸クロリドに加えた。反応終了後、さらに、酢酸エチル 300mlをこの反応混合物に加え、希重炭酸ナトリウムで抽出した。有機相をMgSO
4で乾燥させ、酢酸エチルをロータリーエバポレーターにより除去した。粗生成物をエタノール中に分散させ、冷蔵庫で1時間冷却し、ろ過し、最後に氷冷エタノールで洗浄した。乾燥後、4.95gを得た(収率44.5%)。
1H-NMR [ppm]: (300 MHz, CDCl
3): δ 7.69 (m, 2H, H 3), 6.64 (m, 2H, H 2), 6.16 (sb, 1H, H 4), 5.94 (m, 1H, H 6), 5.26 - 5.13 (m, 2H, H 7a/b), 4.06 (t, 2H, H 5), 3.00 (s, 6H, H 1)
【0209】
実施例4-MS1580(比較例)
ポリマーtBDA
【化51】
塩化アルミニウム(2.26g、0.0169mol)を少量ずつ、アセトン 70mlに溶解させたN-ヒドロキシエチルアクリルアミド(1.71g、0.0169mol)の撹拌溶液に加えた。得られた白色懸濁液に、アセトン 10mlに溶解させた4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン(2.00g、0.0113mol)を加えた。この反応混合物を24時間還流した。その後、2N NaOH 70mlをこの反応混合物に加え、粗生成物をジクロロメタンで2回抽出した。回収した有機層をNa
2SO
4で乾燥させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/2-メチルペンタン 1:1)により予備精製した。油状の残留物をフリーザー(-30℃)に入れ、これにより、生成物を結晶化させた。後者を油状の残留物から分離し、2-メチルペンタンで洗浄し、その後、乾燥させた。
1H-NMR [ppm]: (300 MHz, CDCl
3): δ 7.29 (m, 2H, H 2-3), 7.1 (m, 1H, H 4), 7.04 (sb, 1H, H 7), 6.24 (m, 1H, H 8), 6.11 (m, 1H, H 9a), 5.61 (m, 1H, H 9b), 4.64 (d, 2H, H 6), 2.69 (s, 6H, H 1), 1.28 (s, 9H, H 5)
【0210】
光活性化組成物
Bis-GMA(70)/TGDMA(30)の混合物に、0.5% CQ及び0.6% アミンを加え、均一に混合した。組成及びDSC 7(Perkin Elmer)により測定された重合エンタルピーを表1にまとめる。
【0211】
【0212】
光DSC測定
キセノンランプ(OSRAM XBO 450 W/1)を備えた光DSC装置(Perkin Elmer製のDSC 7)を使用して、種々の配合物の重合エンタルピーを37℃で測定した。
【0213】
歯科用接着剤の配合
略語
Me2-DPI:ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート
DMABN:4-(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル
DMADA:4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジ-2-プロペン-1-イル-ベンズアミド
DMAEA:4-ジメチルアミノ-N-[2-[(4-ジメチルアミノベンゾイル)アミノ]エチル]ベンズアミド
【0214】
【0215】
調製
表1の成分の記載された量を遮光ガラス容器中で一緒に加え、一晩撹拌した。
【0216】
試験:せん断結合強度(SBS)
実施例5及び6並びに比較例7のせん断結合強度をDIN EN ISO 29022に従って、抜いたヒト臼歯を使用して測定した。
【0217】
【0218】
歯科用RMGIの配合
略語
tBDA:4-tert-ブチル-N,N-ジメチルアニリン
MS 1580-ポリマーtBDA:
【化52】
NapTS:p-トルエンスルフィン酸ナトリウム
KPS:過硫酸カリウム
CQ:カンファーキノン
【0219】
【0220】
調製
本発明の実施例8及び比較例9の水性歯科用ガラスアイオノマー組成物を、それぞれ合計100重量%になる表2に列記された成分の液体及び粉末組成を形成し、両方の部分を示された粉末/液体(P/L)比で混合することにより調製した。
【0221】
試験
[曲げ強度/E-モジュラス]
得られた実施例8及び比較例9の歯科用ガラスアイオノマー組成物を、試験標本の作製のために、サイズ(25±2)mm×(2.0±0.1)mm×(2.0±0.1)mmを有するステンレス鋼型に充填した。このようにして得られた歯科用ガラスアイノマー組成物を、歯科用硬化光で硬化させた(光硬化型、LC)。得られた硬化歯科用ガラスアイオノマー組成物について、曲げ強度をISO 9917-2に従って測定した。
【0222】
[硬化時間]
作業時間:粉末とガラスとを示されたP/L比で混合し始めてから、特性に悪影響を及ぼすことなく材料を操作可能である間の期間
【0223】
【0224】
歯科用コンポジットの配合
略語
Me2-DPI:ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート
DMABE:4-(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル
DMADA:4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジ-2-プロペン-1-イル-ベンズアミド
DMAEA:4-ジメチルアミノ-N-[2-[(4-ジメチルアミノベンゾイル)アミノ]エチル]ベンズアミド
【0225】
【0226】
調製
液体系を最終的に22:78の比でガラス組成物と混合した。
【0227】
表1の成分の記載された量を遮光プラスチック容器中に一緒にした。続けて、各容器をSpeedMixer DAC 600-2 VAC-P(Hauschild)に入れ、2500rpmで2分間を2回、1000rpm/100mbarで1分間を1回で混合した。その後、22重量% 表1の液体組成物を78重量% 複合ガラス充填材組成物と混合し、SpeedMixer中で、再度2500rpmで2分間を2回及び1000rpm/100mbarで1分間を1回で混合することにより、このコンポジットを調製した。
【0228】
試験
曲げ強度(FS)、硬化深さ(DoC)及び周囲光に対する感度をISO 4049:2009ガイドラインに記載されている手順に従って測定した。
【0229】