(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】非加熱型香味吸引器
(51)【国際特許分類】
A24B 15/167 20200101AFI20230509BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20230509BHJP
A24F 40/10 20200101ALI20230509BHJP
【FI】
A24B15/167
A24F40/40
A24F40/10
(21)【出願番号】P 2021542698
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030155
(87)【国際公開番号】W WO2021039343
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2019158166
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】永松 祐輔
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0216237(US,A1)
【文献】特開2018-078902(JP,A)
【文献】特表2018-504927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/167
A24F 40/40
A24F 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸トリグリセライドと、乳化剤と、水を主成分とするエアロゾル源とを含む霧化用液体、
前記霧化用液体を貯蔵するための液体貯蔵部、および
前記霧化用液体を霧化する霧化部を備
え、
前記脂肪酸トリグリセライドが、脂肪酸に由来する脂肪族基であって炭素数が6以上である脂肪族基を有する、
非加熱型香味吸引器。
【請求項2】
前記霧化用液体における前記脂肪酸トリグリセライドの濃度が10重量%以下である、請求項1に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項3】
前記エアロゾル源が、当該エアロゾル源中に80重量%以上の水を含む、請求項1または2に記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項4】
前記霧化用液体が、当該液体中に70重量%以上の水を含む、請求項1~3のいずれかに記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項5】
前記霧化用液体が香料をさらに含む、請求項1~
4のいずれかに記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項6】
前記霧化部が振動による霧化機構を備える、請求項1~
5のいずれかに記載の非加熱型香味吸引器。
【請求項7】
脂肪酸トリグリセライドと、乳化剤と、水を主成分とするエアロゾル源とを含
み、
前記脂肪酸トリグリセライドが、脂肪酸に由来する脂肪族基であって炭素数が6以上である脂肪族基を有する、
非加熱型香味吸引器用の霧化用液体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非加熱型香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
非燃焼型香味吸引器においては、エアロゾル源として、グリセリン、プロピレングリコール、または水が使用される。例えば、特許文献1にはグリセリンを含む液体材料を加熱する電子式シガレットが開示されている。また、特許文献2には水と脂肪酸トリグリセライドと香料を内包するカプセルを備える非燃焼型香味吸引器が開示されている。使用者は当該カプセルを破壊してカプセル内の香気を吸引する。この場合、脂肪酸トリグリセライドは香料の希釈剤として機能する。この他、脂肪酸トリグリセライドを含む液体材料として、特許文献3には水と脂肪酸トリグリセライドと乳化剤を含む消化管平滑筋蠕動抑制剤が開示されているが、香味吸引にかかる示唆は一切ない。
【0003】
ところで、非燃焼型香味吸引器の使用時において、可視煙の視認性が高く、かつ当該可視煙の視認性が高い状態が持続する(持続性が高い)と使用者は高い満足度を得る傾向にある。よって、可視煙の視認性が高く、かつその高い状態を維持できる非燃焼型香味吸引器が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-078902号公報
【文献】米国特許出願2017/064995号明細書
【文献】特許4526120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱型香味吸引器においては、安定したエアロゾルを得るという観点からグリセリンやプロピレングリコールを主成分とするエアロゾル源が用いられている。一方、超音波振動等の振動を利用する非加熱型香味吸引器においては、エアロゾル発生効率の観点からエアロゾル源は低粘度である必要があり、水を主成分とするエアロゾル源が使用されている。しかし、発明者らは水を主成分とするエアロゾル源を用いた場合、グリセリンやプロピレングリコールを主成分とするエアロゾル源を用いた場合と比較して可視煙の視認性が低く、かつ当該可視煙の持続時間が短いので、使用者が十分な満足度を得られない可能性があることを見出した。かかる事情を鑑み、本発明は、視認性が高く、かつ視認性が高い状態が長く持続する可視煙を形成可能な非加熱型香味吸引器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、水を主成分とするエアロゾル源と脂肪酸トリグリセライドと乳化剤とを含む霧化用液体を用いることで前記課題を解決することを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
(態様1)
脂肪酸トリグリセライドと、乳化剤と、水を主成分とするエアロゾル源とを含む霧化用液体、
前記霧化用液体を貯蔵するための液体貯蔵部、および
前記霧化用液体を霧化する霧化部を備える、
非加熱型香味吸引器。
(態様2)
前記霧化用液体における前記脂肪酸トリグリセライドの濃度が10重量%以下である、態様1に記載の非加熱型香味吸引器。
(態様3)
前記エアロゾル源が、当該エアロゾル源中に80重量%以上の水を含む、態様1または2に記載の非加熱型香味吸引器。
(態様4)
前記霧化用液体が、当該液体中に70重量%以上の水を含む、態様1~3のいずれかに記載の非加熱型香味吸引器。
(態様5)
前記脂肪酸トリグリセライドが、脂肪酸に由来する脂肪族基であって炭素数が6以上である脂肪族基を有する、態様1~4のいずれかに記載の非加熱型香味吸引器。
(態様6)
前記霧化用液体が香料をさらに含む、態様1~5のいずれかに記載の非加熱型香味吸引器。
(態様7)
前記霧化部が振動による霧化機構を備える、態様1~6のいずれかに記載の非加熱型香味吸引器。
(態様8)
脂肪酸トリグリセライドと、乳化剤と、水を主成分とするエアロゾル源とを含む、非加熱型香味吸引器用の霧化用液体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、視認性が高く、かつ視認性が高い状態が長く持続する可視煙を形成可能な非加熱型香味吸引器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明で用いる霧化用液体およびその霧化物の概要を示す図
【
図2】本発明の非加熱型香味吸引器の一態様を示す図
【
図3】霧化部の天面カバーと底面カバーの間に配置される部材を説明する図
【
図4】霧化部と液体貯蔵部との接続関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0010】
1.霧化用液体
(1)脂肪酸トリグリセライド
脂肪酸トリグリセライドとはグリセリン中の3つのヒドロキシ基に脂肪酸がエステル結合している化合物であり、下記式で表される。
【0011】
【0012】
R1~R3は脂肪酸に由来する脂肪族基であり、その炭素数は限定されない。しかしながら、R1~R3の少なくとも1つは炭素数6以上の基であることが好ましく、R1~R3の少なくとも2つは炭素数6以上の基であることが好ましく、R1~R3のすべてが炭素数6以上の基であることがより好ましい。当該炭素数の上限は限定されないが好ましくは12以下である。炭素数が大きくなりすぎると、液体における分散安定性が低下する。この観点から、脂肪酸トリグリセライドの3つの脂肪族基の炭素数は前記範囲であることが好ましい。R1~R3のすべてが炭素数6以上の基である脂肪酸トリグリセライドを、中鎖脂肪酸トリグリセライドともいう。また、中鎖脂肪酸トリグリセライドは喫煙時に使用者が味や香りを感じないという特徴を有する。
【0013】
霧化用液体中の脂肪酸トリグリセライド濃度は限定されないが、脂肪酸トリグリセリドの濃度が高すぎると液の粘度が増加するため、超音波振動等の振動を利用する非加熱型香味吸引器においては、霧化量が低下するという問題が生じる。これらの観点から、霧化用液体中の前記濃度の上限は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。当該濃度の下限は限定されないが、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。
【0014】
(2)乳化剤
乳化剤は、霧化用液体中の水と、疎水性物質である脂肪酸トリグリセライドに親和性を有する。乳化剤としては公知のものを使用でき、例えばアニオン系界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルエーテルカルボン酸塩)、カチオン系界面活性剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、両性界面活性剤(例えば、レシチン)、または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、サポニン)等を用いることができる。霧化用液体中の乳化剤濃度は限定されないが、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。当該濃度の下限は限定されないが、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上である。
【0015】
(3)エアロゾル源
本発明では、水を主成分とするエアロゾル源を用いる。水が主成分であるとはエアロゾル源中に水を70重量%以上含むことをいう。水は、全エアロゾル源に対して80重量%以上であることが好ましい。水以外のエアロゾル源としては、例えば、グリセリンやプロピレングリコールが挙げられる。これらの量は、エアロゾル源中、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。あるいは、エアロゾル源は水のみで構成されていてもよい。また、霧化用液体中、水は70重量%以上を占めることが好ましい。水は不純物を含まないことが好ましいので、イオン交換水等を用いることができる。
【0016】
(4)他の成分
本発明で用いる霧化用液体は当該分野で公知の香料を含むことができる。当該香料としては限定されないが、メンソールなどが挙げられる。その量は公知の量とすることができるが、霧化用液体中、好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。当該濃度の下限は限定されず、他の成分(香料)は含まなくてもよい。また、本発明で用いる霧化用液体は一態様においてニコチンを含まない。
【0017】
(5)メカニズム
上記霧化用液体が可視煙の視認性および可視煙の視認性が高い状態の持続時間を長くすることができるメカニズムは限定されないが、次のように推察される。まず、
図1に示すように、霧化用液体1は、水を主成分とするエアロゾル源2の中に、蒸気圧が低い疎水性物質(脂肪酸トリグリセライド)の油滴4が微分散した構造を有すると考えられる。乳化剤6によってこの油滴は安定して存在する。次に霧化用液体が霧化されて、粒子1’が集合してなる霧化物が形成される。一態様において粒子1’の直径は0.1~10μm、粒子1’中に存在する油滴4の直径は0.01~1μmである。粒子1’において油滴4が核となって周りの前記エアロゾル源2が蒸発することを抑制する。さらに前記エアロゾル源2が蒸発した後も油滴4のみは蒸気圧が低いため蒸発せずにその場に留まるので、可視煙の視認性が高くなり、かつその高い状態の持続時間が長くなると考えられる。
【0018】
2.非加熱型香味吸引器
非加熱型香味吸引器は、少なくとも前記霧化用液体を貯蔵する液体貯蔵部と、霧化用液体を霧化する霧化部を備える、霧化用液体中に含まれる香味成分を吸入可能とする装置である。したがって、前記液体貯蔵部に前記霧化用液体が充填された状態で使用に供される。非加熱型香味吸引器は、吸入を容易にするためのマウスピースを有することが好ましい。霧化部は霧化用液体に振動を印加できる振動発生機構を備えることができる。振動発生機構を備える霧化部は霧化効率が高いので好ましい。当該霧化部は加熱機構を備えないことが好ましい。加熱機構を備えない霧化部を備えることによって加熱に適さない香味成分も吸入可能となる。加熱機構とは、それ単独で霧化用液体を霧化できる機構である。例えば振動発生機構によって振動を与えられた液体の温度が上昇することがあるが、この場合の振動発生機構は加熱機構には該当しない。
【0019】
また、当該霧化部は補助的な加熱機構を備えていてもよい。「補助的な加熱機構」とは、霧化用液体を加熱できるが、それ単独では霧化用液体を霧化できない加熱機構をいう。補助的な加熱機構は、例えば、霧化用液体をその沸点まで加熱しない加熱機構である。
【0020】
図2に非加熱型香味吸引器の一態様を示す。図中、1000は非加熱型香味吸引器、1001Dはマウスピース、1100は霧化部、1200Aおよび1200Bは液体貯蔵部、1202はハウジング、1102および1104は開口部、1106は霧化部の天面カバー、1107は霧化部の底面カバー、1004はビスである。液体貯蔵部1200Aおよび1200Bはハウジング1202に設けられた収容部に収容され、その天面に、霧化部1100およびマウスピース1001Dがこの順にビス1004を用いて接続される。
図2に示すように、霧化部1100は、霧化部の天面カバー1106および霧化部の底面カバー1107によって覆われている。
図3は、霧化部1100において、霧化部の天面カバー1106と霧化部の底面カバー1107の間に配置される部材を説明する図である。
図3に示すように、霧化部1100は、PCBボード1109と、櫛形電極対1033を備えた圧電素子基板1031と、一対のガイド壁1711A、1711Bとを有する。図示されていないが、これら部材の上方にはトップカバーが、下方にはベース部材等が配置されてもよい。さらに、これらの部材とトップカバーとの間には、必要に応じてセンサやシール部材が配置されていてもよい。
図4は、霧化部と液体貯蔵部との接続関係を説明する図である。当該図では簡略化するために、液体貯蔵部1200Aのみを示すが、実際には液体貯蔵部1200Bも霧化部1100に接続される。
図4に示すように、液体貯蔵部1200Aの天面に設けられた液体排出部が、貫通孔1713Aと連通するように液体貯蔵部1200Aと霧化部1100は接続される。
図5は、
図3に示した霧化部1100の一部を抜粋して示す拡大図である。具体的には、
図5では、
図3に示した霧化部1100のうち、PCBボード1109と、櫛形電極対1033を備えた圧電素子基板1031と、ガイド壁1711Aと、シール部材1111と、センサ1070と、を示している。
【0021】
霧化部1100は、櫛形電極対1033を備えた圧電素子基板1031を有し、櫛形電極対1033に高周波で電圧を印加することによって生じる表面弾性波(SAW)によって液体を霧化するように構成される。表面弾性波によって液体貯蔵部1200Aおよび1200B内の霧化用液体が霧化され、その霧化物はマウスピースに到達する。
【0022】
圧電素子基板1031は、櫛形電極対1033に高周波数(共振周波数)で電圧を印加することによって生じるSAWによって液体を霧化するように構成される。
【0023】
圧電素子基板1031は、電圧の印加によって伸縮する圧電体を含む。圧電体としては、石英、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウムなどのセラミックなどによって構成される既知の圧電体を用いることができる。
【0024】
櫛形電極対1033は、ハウジング1202の中に備えられた電源(図示せず)と電気的に接続され、電力が供給される。例えば、櫛形電極対1033は、金メッキが施された金属などによって構成される。
【0025】
圧電素子基板1031は、互いに対向する一対のエッジ1031Aおよび1031Bを有する。ガイド壁1711Aは、圧電素子基板1031のエッジ1031A側に設けられ、ガイド壁1711Bは、エッジ1031B側に設けられる。ガイド壁1711A、1711Bは、それぞれ、上面と下面との間に延びる貫通孔1713A、1713Bを有する。また、ガイド壁1711A、1711Bは、それぞれ、貫通孔1713A、1713Bと連通する凹部1714A、1714Bを有する。
図4に示すように、ガイド壁1711A、1711Bの下面には、それぞれ液体貯蔵部1200A、1200Bが接続される。液体貯蔵部1200Aおよび1200Bから、シリンジポンプ(図示せず)によって供給される霧化用液体は、それぞれ、貫通孔1713A、1713Bを下方から上方に向かって通過し、凹部1714A、1714Bに達する。凹部1714A、1714Bに達した液体は、圧電素子基板1031のエッジ1031A、1031Bに到達し、櫛形電極対1033のエネルギーにより霧化される。即ち、シリンジポンプは、霧化用液体を圧電素子基板1031のエッジ1031A、1031Bに供給するように構成される。
【0026】
このような非加熱型香味吸引器は、例えばPCT/JP2019/015377に開示されている。また、図では液体貯蔵部が二つある態様を示したが、液体貯蔵部は1つであってもよい。
【0027】
図2に示したものの他に、非加熱型香味吸引器として、例えば超音波振動を利用した振動発生機構を有する霧化部を備えるものも使用できる。このような霧化部は、超音波式ネブライザー(例えばオムロン社製NE-U17、NE-U22)などに使用されている。
【0028】
また、非加熱型香味吸引器として、ノズルを用いた霧化部を備えるものも使用できる。当該霧化部は、液体貯蔵部、圧縮空気を吐出するノズル、および当該ノズルに隣接して設けられ前記霧化用液体保持部に連通している吸水管を備え、圧縮空気がノズルから吐出される際にノズル部と吸水管の間に生じる圧力差によって霧化用液体を霧化する。このような霧化部は、コンプレッサー式ネブライザーなどに使用されている。
【0029】
本発明の非加熱型香味吸引器は、霧化部以外の部分に加熱機構を備えていてもよい。例えば
図2の香味吸引器においては、液体貯蔵部1200A、1200Bの周囲に液を加熱するための加熱機構を設けてもよく、あるいはマウスピース1001Dの流路に加熱機構を設けてもよい。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
中鎖脂肪酸トリグリセライドとして花王株式会社製ココナード(登録商標)MT(C8/C10酸トリグリセライド)5g、乳化剤(花王社製エマゾールS-120V)5g、水490gを混合し、ホモジナイザー(エーテックジャパン社 Dostormix B DMM)で乳化した。得られた液を高圧ホモジナイザー(NIRO SOAVI社 PANDA plus 2000)を用いて50MPaの圧力にてさらに乳化し、霧化用液体を得た。
【0031】
図6に示すような装置を準備した。図中、200はネブライザー(メッシュ式ネブライザーNE-U22(オムロン株式会社製))、202はレーザー源、204は受光部、206は透明なチャンバー(5cm×5cm×24cm)、208はチューブである。ネブライザー200の液体充填部に前記霧化用液体を充填し、霧化して煙を発生させた。当該煙をチャンバーの上方から55ml/2secの速度で2秒間吸引した。吸引開始時(0秒経過後)からチャンバー底面から8.5cmの位置にレーザーを照射し、5秒経過後の、チャンバー206中央部の光透過率を測定した。光透過性はレーザー源202と受光部204を備えるMalvern社製Spraytecを用いて評価した。ただし煙が存在しないチャンバーの光透過率を100%とした。結果を表1に示す。光透過率が低いほど、可視煙の視認性が高いことを示す。また、吸引開始時(0秒経過後)から30秒経過後まで光透過率を連続して測定し、30秒経過後までのうち85%以下の光透過率であった時間長さの合計(T)を記録した。結果を表1に示す。
【0032】
[実施例2]
中鎖脂肪酸トリグリセライドの濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じ方法で評価を実施した。
【0033】
[実施例3]
中鎖脂肪酸トリグリセライドとして、花王株式会社製ココナード(登録商標)RK(C8酸トリグリセライド)を用いた以外は、実施例2と同じ方法で評価を行った。
【0034】
[実施例4]
中鎖脂肪酸トリグリセライドとして、花王株式会社製MT-N(C8/C10酸トリグリセライド)を用いた以外は、実施例2と同じ方法で評価を行った。
【0035】
[実施例5]
中鎖脂肪酸トリグリセライドとして、花王株式会社製ココナード(登録商標)ML(C8/C10/C12酸トリグリセライド)を用いた以外は、実施例2と同じ方法で評価を行った。
【0036】
[比較例1]
脂肪酸トリグリセライドを用いずに霧化用液体の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じ方法で評価を実施した。
【0037】
[比較例2]
表1に示す組成の霧化用液体を調製した。市販されている、リフィルタイプの加熱型電子たばこを準備した。当該製品の香味液体を、本例で調製した霧化用液体に入れ替え、
図6に示す装置において、ネブライザー200の代わりに当該比較用加熱型電子たばこを配置した。5Wの条件で加熱し可視煙を発生させ、実施例1と同じ方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
比較例1と2の結果から、水を主成分とするエアロゾル源を用いる非加熱型香味吸引器は、プロピレングリコール等の高粘度のエアロゾル源を用いる加熱型香味吸引器に比べて、可視煙の視認性および持続性が低いことが明らかである。しかし、実施例に示すように、脂肪酸トリグリセライドと、乳化剤と、水を主成分とするエアロゾル源とを含む霧化用液体を用いる本発明の非加熱型香味吸引器は、可視煙の視認性および持続性が大幅に改善されることが明らかである。特に、実施例2~5の比較から、脂肪酸に由来する脂肪族基の炭素数が長くなると可視煙の視認性および持続性がさらに高まることが明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 霧化用液体
1’ 粒子
2 エアロゾル源
4 油滴
6 乳化剤
200 ネブライザー
202 レーザー源
204 受光部
206 透明なチャンバー
208 チューブ
1000 非加熱型香味吸引器
1001D マウスピース
1004 ビス
1033 櫛形電極対
1031 圧電素子基板
1031A、B エッジ
1100 霧化部
1102、1104 開口部
1106 霧化部の天面カバー
1107 霧化部の底面カバー
1109 PCBボード
1111 シール部材
1200 A、B 液体貯蔵部
1202 ハウジング
1711A、B ガイド壁
1070 センサ
1713A、B 貫通孔
1714A、B 凹部