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  • 特許-高含量のジルコニアを有する耐火性製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】高含量のジルコニアを有する耐火性製品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/484 20060101AFI20230509BHJP
   C03B 5/43 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C04B35/484
C03B5/43
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021546330
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2020053472
(87)【国際公開番号】W WO2020165170
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】1901334
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】カボディ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ベスパ,ピエリック ファビアン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514254(JP,A)
【文献】特開2015-040144(JP,A)
【文献】特開2010-260782(JP,A)
【文献】特表2007-517754(JP,A)
【文献】特開2016-074563(JP,A)
【文献】特表2009-527454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/484
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物に基づく重量パーセンテージとして、合計100%に対して、
ZrO: 100%までの残部
HfO : <5%
SiO: 8.1%~12.0%
: 0.20%~0.90%
NaO+KO: 0.40%~0.80%
Al: 0.3%~2.0%
: <2.0%
Fe+TiO: <0.6%
他の種: <1.5%
を含む、溶融鋳造された耐火性製品。
【請求項2】
83.0%<ZrO+HfO<92.0%;及び/又は
8.4%<SiO<11.5%;及び/又は
0.25%<B<0.75%;及び/又は
0.45%<NaO+KO<0.75%;及び/又は
0.6%< Al<1.9%;及び/又は
0.5%<Y<1.9%;及び/又は
Fe+TiO<0.4%;及び/又は
他の種<1.2%
である、請求項1に記載の耐火性製品。
【請求項3】
84.0%<ZrO+HfO<90.0%;及び/又は
8.8%<SiO<11.0%;及び/又は
0.40%<B<0.70%;及び/又は
NaO+KO<0.65%;及び/又は
0.8%< Al<1.7%;及び/又は
0.7%<Y<1.7%;及び/又は
Fe+TiO<0.3%;及び/又は
他の種<1.0%
である、請求項2に記載の耐火性製品。
【請求項4】
85.0%<ZrO+HfO<90.0%;及び/又は
9.1%<SiO<10.8%;及び/又は
<0.60%;及び/又は
0.9%< Al;及び/又は
1.0%<Y<1.6%;及び/又は
Fe+TiO<0.2%;及び/又は
ZrOHfO 、SiO、Y、B、Al、NaO、KO、TiO及びFe以外の他の種<0.5%
である、請求項3に記載の耐火性製品。
【請求項5】
酸化物に基づく重量パーセンテージとして、
SiO: 8.5%~11.0%
: 0.30%~0.80%
NaO+KO: 0.40%~0.70%
Al: 0.6%~2.0%
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の耐火性製品。
【請求項6】
酸化物に基づく重量パーセンテージとして、
SiO: 8.5%~10.8%
: 0.30%~0.70%
NaO+KO: 0.40%~0.70%
Al: 1.0%~1.8%
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の耐火性製品。
【請求項7】
酸化物に基づく重量パーセンテージとして、
SiO: 9.1%~11.0%
: 0.30%~0.70%
NaO+KO: 0.40%~0.70%
Al: 1.1%~1.8%
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の耐火性製品。
【請求項8】
CaO+MgO+BaO+SrO<0.60%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の耐火性製品。
【請求項9】
ブロックの形態を有し、ブロックの全ての寸法が10mm超である、請求項1~7のいずれか1項に記載の耐火性製品。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の耐火性製品で作られたブロックを含むガラス融解炉。
【請求項11】
前記ブロックが上部構造内に配置されている、請求項10に記載のガラス融解炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ジルコニア含量を有する溶融された耐火性製品に、及びそのような製品を含むガラス融解炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス融解炉は一般的に、それらの性質に応じて様々な位置に置かれた、非常に多数の耐火性製品を含む。該炉の各部品について、選択される該製品は、該ガラスを使用出来なくする欠陥(それは生産歩留まりを低減する恐れがある)を生じず、該炉に満足な耐用年数を与えるのに十分に長い時間、耐性のある製品である。
【0003】
図1は、ガラス融解炉10の横断面の半分を模式的に表す。特には、タンク12、金属構造14及び上部構造16が識別可能である。
【0004】
溶融ガラスを含むことを企図された該タンク12は、垂直側壁22及び底部24を備えている。該側壁22は慣用的に、上縁25までの該タンクの高さ全体にわたって延在する側面タンクブロックからなる。
【0005】
該上部構造16は慣用的に、その基部に、それを介して該上部構造16が該金属構造上に置かれる中間層18、該中間層上に置かれた側壁26、及びクラウン28を備えている。バーナー(示されていない)は、該側壁26に置かれ、及び交互に動作する。該中間層18は、タックストーン(tuckstone)20を備えており、好ましくはタックストーンからなる。
【0006】
該上部構造の部品は、様々な熱機械応力、第一に、該炉の内側(約1500℃の温度で)と、冷やされた外側(一般的に、空気を吹き込むことによって冷やすことにより、周囲温度に近い温度で)との間の高い熱勾配、に付される。この熱勾配は、その熱膨張に比例して材料の歪みを結果として生じ、それ故に、これが応力(この歪み及び該材料の弾性率の積)を生じる。これらの部品はまた、該炉の冷却システム又はバーナーシステムの異常により、熱衝撃を受ける。従って、該上部構造部品は、非常に高い熱機械応力がかかるにもかかわらず、亀裂に耐えなければならない。
【0007】
該上部構造はまた、該炉の腐食性煙霧及び凝集物による腐食に耐えなければならない。
【0008】
これらの応力に耐える為に、該上部構造は、耐火性製品から作成されたブロックからなる。
【0009】
耐火性製品の中でも、溶融されたブロックと焼結されたブロックとに区別される。
【0010】
焼結されたブロックとは異なり、溶融されたブロックは通常、結晶グレインを結合する粒間ガラス相を含む。それ故に、焼結されたブロック及び溶融されたブロックに直面する問題、並びにそれらを解決する為に採用される技術的解決法は、一般的に異なる。それ故に、焼結されたブロックを製造する為に開発された組成物は、先験的に、溶融されたブロックを製造する為にそのまま使用されることができず、逆もまた同様である。
【0011】
溶融されたブロックはしばしば、「電気溶融された」又は「溶融鋳造された」ブロックと云われ、電気アーク炉内で好適な原材料の混合物を融解することによって、又は任意の他の好適な技術によって得られる。次に、該融解された材料は、慣用的に鋳型内で鋳造され、次に固化される。一般的に、得られた製品は、次に、破砕することなしに周囲温度に戻す為に、制御された冷却サイクルを受ける。この操作は、当業者によって「アニーリング」と云われる。
【0012】
現在、該上部構造を形成する為に、溶融されたブロック、特に30%~45%のジルコニアを含むアルミナ-ジルコニア-シリカタイプ(AZS(alumina-zirconia-silica type)と略される)の製品、が、主に使用されている。
【0013】
その上、一般的に80重量%超、又は85重量%超、のジルコニアを含む、非常に高いジルコニア含量(VHZC)を有する溶融されたブロックが知られている。該溶融されたブロックは、それらの非常に高い耐腐食性、及び製造されたガラスを着色せず、及び該ガラスに欠陥を生じないそれらの能力についてよく知られている。
【0014】
欧州特許出願公開第403387号明細書は、重量パーセンテージとして、4%~5%のSiO、約1%のAl、0.3%の酸化ナトリウム、及び0.05%未満のPを含む、高ジルコニア含量を有する溶融鋳造された製品を記載する。
【0015】
仏国特許出願公開第2701022号明細書は、重量パーセンテージとして、0.05%~1.0%のP及び0.05%~1.0%の酸化ホウ素Bを含む、高ジルコニア含量を有する溶融鋳造された製品を記載する。
【0016】
仏国特許出願公開第2723583号明細書は、重量パーセンテージとして、3%~8%のSiO、0.1%~2.0%のAl、0.05%~3.0%の酸化ホウ素B、0.05%~3%のBaO+SrO+MgO、0.05%~0.6%のNaO+KO及び0.3%未満のFe+TiOを含む、高ジルコニア含量を有する溶融鋳造された製品を記載する。
【0017】
SEFPRO社によって製造され、販売されている、非常に高いジルコニア含量を有する溶融されたブロック、例えばER 1195、は、今日、ガラス融解炉において広く使用されている。しかしながら、それらの高コスト及びそれらの性質は、特にタンクの最も応力を受ける帯域における、ガラスと接触する該ブロック上に本質的に集中するそれらの使用を、制限しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ガラス融解炉の上部構造における使用の為に耐火性製品を好適にする、耐腐食性及び機械的応力の下での破壊強度を有する耐火性製品についての必要性がある。
【0019】
本発明は、この必要性を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、酸化物に基づく重量パーセンテージとして、合計100%に対して、
ZrO: 100%までの残部
HfO : <5%
SiO: 8.1%~12.0%
: 0.20%~0.90%
NaO+KO: 0.40%~0.80%
Al: 0.3%~2.0%
: <2.0%
Fe+TiO: <0.6%
他の種: <1.5%
を含む、溶融鋳造された耐火性製品を提供する。
【0021】
発明の詳細な説明の残りの部分においてより詳細に見られる通り、そのような組成物は、ガラス融解炉の上部構造の環境において、溶融された製品に著しい機械的性能をもたらす。試験はまた、低浸出を実証している。それ故に、本発明に従う製品は、上部構造における使用の為に完全に好適である。
【0022】
本発明に従う製品はまた、それが下記の特定の実施態様に従う場合、及びこれらの任意的な特徴が上記特定の実施形態と適合性がない場合を包含する、以下の任意的な特徴の1つ以上を有しうる:
該製品の全多孔度が、10%未満、又はさらには5%未満、であること、
好ましくは、該酸化物が、該製品の重量の90%超、95%超、99%超、又はさらには実質的に100%、であること、
ZrO+HfOの重量含量が、92.0%未満、若しくはさらには90.0%未満、若しくはさらには89.0%未満、及び/又は83.0%超、若しくはさらには84.0%超、若しくは85.0%超、であること、
SiOの重量含量が、8.4%超、若しくはさらには8.5%超、若しくはさらには8.6%超、若しくはさらには8.8%超、若しくはさらには9.1%超、及び/又は11.5%未満、若しくはさらには11.0%未満、若しくはさらには10.8%未満、若しくはさらには10.6%未満、であること、
酸化ホウ素B、酸化ナトリウムNaO及び酸化カリウムKOの重量含量の合計が、0.65%超、若しくはさらには0.70%超、若しくはさらには0.75%超、及び/又は1.20%未満、若しくはさらには1.10%未満、若しくはさらには1.00%未満、であること、
酸化ホウ素Bの重量含量が、0.25%超、若しくはさらには0.30%超、若しくはさらには0.35%超、若しくはさらには0.40%超、及び/又は0.85%未満、0.80%未満、0.75%未満、0.70%未満、0.60%未満、若しくはさらには0.55%未満、であること、
酸化ナトリウムNaO及び酸化カリウムKOの重量含量の合計が、0.45%超、及び/又は0.75%未満、0.65%未満、であること、
NaOの重量含量が、0.40%超、若しくはさらには0.45%超、若しくはさらには0.50%超、及び/又は0.80%未満、若しくはさらには0.70%未満、若しくはさらには0.60%未満、であること、
Oが、不純物として存在するか、又はNaOを部分的に置き換え、KOの重量含量が、0.70%未満、又はさらには0.60%未満、又はさらには0.50%未満、又はさらには0.40%未満、又はさらには0.30%未満、であること、
Alの重量含量が、1.9%未満、若しくはさらには1.8%未満、若しくは1.7%未満、及び/又は0.5%超、若しくはさらには0.6%超、若しくはさらには0.7%超、若しくはさらには0.9%超、1.0%超、若しくはさらには1.1%超、若しくはさらには1.2%超、であること、
の重量含量が、0.5%超、若しくはさらには0.7%超、若しくはさらには0.9%超、若しくはさらには1.0%超、若しくはさらには1.1%超、及び/又は1.9%未満、若しくはさらには1.8%未満、若しくはさらには1.7%未満、若しくはさらには1.6%未満、であること、
酸化鉄及び酸化チタンFe+TiOの重量含量の合計が、0.4%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、であること、
「他の種」の総重量含量が、1.2%未満、又はさらには1.0%未満、又はさらには0.6%未満、又はさらには0.5%未満、又はさらには0.4%未満、であること、
該「他の種」が、不純物だけからなること、
任意の該「他の種」の重量含量が、0.40%未満、又はさらには0.30%未満、又はさらには0.20%未満、であること、
酸化カルシウムCaO、酸化バリウムBaO、酸化ストロンチウムSrO及び酸化マグネシウムMgOの重量含量の合計が、0.60%未満、0.50%未満、0.40%未満、又はさらには0.30%未満、であること、
CaOの重量含量が、0.60%未満、又はさらには0.40%未満、又はさらには0.30%未満、であること、
BaOの重量含量が、0.60%未満、又はさらには0.40%未満、又はさらには0.30%未満、0.20%未満、0.10%未満、0.05%未満、又は実質的に0、であること、
SrOの重量含量が、0.60%未満、又はさらには0.40%未満、又はさらには0.30%未満、0.20%未満、0.10%未満、0.05%未満、又は実質的に0、であること、
MgOの重量含量が、0.60%未満、又はさらには0.40%未満、又はさらには0.30%未満、であること、
Taの重量含量が、0.20%未満、0.10%未満、0.05%未満、又は実質的に0、であること、
Nbの重量含量が、0.20%未満、0.10%未満、0.05%未満、又は実質的に0、であること。
【0023】
一つの特定の実施態様に従うと、本発明は、酸化物に基づく重量パーセンテージとして、
SiO: 8.5%~11.0%
: 0.30%~0.80%
NaO+KO: 0.40%~0.70%
Al: 0.6%~2.0%
を含む、溶融鋳造された耐火性製品を提供する。
【0024】
一つの特定の実施態様に従うと、本発明は、酸化物に基づく重量パーセンテージとして、
SiO: 8.5%~10.8%
: 0.30%~0.70%
NaO+KO: 0.40%~0.70%
Al: 1.0%~1.8%
を含む、溶融鋳造された耐火性製品を提供する。
【0025】
一つの特定の実施態様に従うと、本発明は、酸化物に基づく重量パーセンテージとして、
SiO: 9.1%~11.0%
: 0.30%~0.70%
NaO+KO: 0.40%~0.70%
Al: 1.1%~1.8%
を含む、溶融鋳造された耐火性製品を提供する。
【0026】
本発明はまた、本発明に従う耐火性製品を製造する方法であって、
a.原材料を混合して、原料を形成すること、
b.融解された材料が得られるまで、上記原料を融解すること、
c.上記融解された材料を鋳造し、冷却によって固化させて、該耐火性製品を得ること
の連続工程を含む方法に関し、
ここで、この方法は、上記耐火性製品が本発明に従うように、上記原材料が選択されるという点で、注目すべきである。
【0027】
好ましくは、最小限の含量が必要とされる酸化物、又はこれらの酸化物の前駆体は、体系的且つ系統的に添加される。好ましくは、他の酸化物の供給源における、不純物として存在する場合のこれらの酸化物の含量が考慮される。
【0028】
好ましくは、上記冷却は、制御され、好ましくは、1時間当たり20℃未満の速度で、好ましくは1時間当たり約10℃の速度で、行われるように制御される。
【0029】
本発明はまた、本発明に従う耐火性製品を含むガラス融解炉に、又は特に融解されたガラスと接触させられることが企図されない領域、特に上部構造における、特にクラウンにおける、本発明に従う方法に従って製造される若しくは製造されることができる耐火性製品に関する。
【0030】
定義
製品は慣用的に、該製品が、融解された材料が得られるまで原料の融解を実行する方法によって得られる場合に、「溶融される」とされ、次に冷却によってこの材料を固化する。
【0031】
ブロックは、その全ての寸法が10mm超、好ましくは50mm超、好ましくは100mm超、であり、層とは異なり、成型操作及び鋳型からの除去を含む方法によって得られる物体である。ブロックは例えば、一般的な平行六面体形状又はその使用に適合された具体的形状を有しうる。
【0032】
他に言及されない限り、本発明に従う製品における酸化物の全ての含量は、酸化物に基づく重量パーセンテージである。金属元素の酸化物の重量含量は、該産業の通例の慣習に従って、最も安定な酸化物の形態で表されるこの元素の全含量に関する。
【0033】
HfOは、ZrOから化学的に解離されることができない。しかしながら、本発明に従うと、HfOは、該原料に意図的に添加されない。それ故に、HfOは、ごく微量の酸化ハフニウムを示し、この酸化物は常に、酸化ジルコニウム源に一般的に5%未満、一般的に2%未満の含量で、自然に存在する。本発明に従うブロックにおいて、HfOの重量含量は、5%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、である。分かりやすくする為に、酸化ジルコニウムの全含量及び微量の酸化ハフニウムを、「ZrO」又は「ZrO+HfO」によって区別なしに示すことが可能である。それ故に、HfOは、該「他の種」には包含されない。
【0034】
語「不純物」は、原材料と共に導入されるか、又はこれらの構成物との反応から生じる不可避の構成物を意味すると理解される。該不純物は、必須の構成物ではなく、単に許容されるに過ぎない。例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、オキシカーバイド、炭窒化物、並びに鉄、チタン、バナジウム及びクロム金属種の群に属する化合物は、不純物である。
【0035】
本発明の他の特色及び利点は、以下の発明の詳細な説明を読み、前文に記載されている添付の図である図1を検証することによって、より明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ガラス融解炉の断面の半分を模式的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に従う溶融鋳造された製品において、ZrOの高含量は、該製品が、ガラスの質にとって有害な欠陥を生じることなく高い耐腐食要件を満たすことを可能にする。
【0038】
本発明に従う製品に存在する酸化ハフニウム、すなわちHfOは、ZrO源に自然に存在する酸化ハフニウムである。それ故に、本発明に従う製品におけるその含量は、5%未満、一般的に2%未満、である。
【0039】
SiOの存在は、特に、ジルコニア骨格の変形に有効に対応することができる粒間ガラス相の形成を可能にする。他方では、SiOの添加は、この添加がジルコニア含量を犠牲にして行われ、そしてそれ故に該耐腐食性にとって有害になりうるので、12%を超えるべきではない。
【0040】
Alの存在は、安定なガラス相の形成にとって、及び鋳型内での融解された材料の良好な鋳造可能性にとって、特に有用である。しかしながら、Alの添加は、重量含量が高すぎると、特に酸化ホウ素の存在下でガラス相の不安定性を生じうる(ムライト結晶の形成)ので、制限されるべきである。
【0041】
及びNaO+KOが同時に存在することは、該製品の実現可能性を改善することを可能にする。Bは、該製品におけるジルコンの形成に対して都合の悪い効果を有しており、それによって、熱サイクルに対する耐性に対して有害効果をもたらしうる。それ故に、酸化ホウ素Bの重量含量は、依然として制限されるべきである。
【0042】
NaO+KOの重量含量は好ましくは、該原材料の、特に酸化ホウ素の、蒸発散(fly-off)を制限する為に制限される。本発明に従う製品において、該酸化物、すなわちNaO及びKOは、類似の効果を有すると考えられる。
【0043】
一つの実施態様において、NaOの含量及びKOの含量の少なくとも一方は、0.30%超、好ましくは0.35%超、好ましくは0.40%超、である。
【0044】
一つの特定の実施態様に従うと、
SiO: 8.5%~10.8%
: 0.30%~0.70%
Al: 1.0%~1.8%
であり、NaOの含量及びKOの含量の少なくとも一方は、0.30%超、好ましくは0.35%超、好ましくは0.40%超、である。
【0045】
酸化イットリウムYの重量含量は、良好な実現可能性を保持する為に制限されるべきである。
【0046】
本発明に従うと、Fe+TiOの重量含量は、0.50%未満、好ましくは0.30%未満、である。好ましくは、Pの重量含量は、0.05%未満である。具体的には、これらの酸化物は有害であり、それらの含量は、該原材料と共に不純物として導入される微量に制限されるべきである。
【0047】
「他の種」は、先に列挙されていない酸化物種、すなわちZrOHfO 、SiO、Y、B、Al、NaO、KO、TiO及びFe以外の種である。一つの実施態様において、該「他の種」は、その存在が特には望ましくなく且つ一般的に該原材料において不純物として存在する種に限定される。
【0048】
好ましくは、本発明に従う製品は、ブロックの形態である。
【0049】
本発明に従う製品の全多孔度(privacy)は、15%未満、又はさらには10%未満、又はさらには5%未満、又はさらには2%未満、又はさらには1%未満、である。
【0050】
本発明に従う製品は、慣用的に、下記の工程a.~c.に従って製造されうる:
a.原材料を混合して、原料を形成すること、
b.融解された材料が得られるまで、上記原料を融解すること、
c.冷却によって上記融解された材料を固化して、本発明に従う耐火性製品を得ること。
【0051】
工程a.において、該原材料は、最終製品における酸化物の含量を保証するように選択される。
【0052】
工程b.において、該融解は好ましくは、還元を生じない相対的に長い電気アーク及び該製品の再酸化を促進する混合の、組み合わされた作用を用いることによって行われる。
【0053】
金属のような外観の団塊の形成を最小限に抑える為に及び最終製品における裂け目又は亀裂の形成を防止する為に、上記融解を酸化条件下で実施することが好ましい。
【0054】
好ましくは、仏国特許出願公開第1208577号明細書、並びにその追加特許公開第75893号明細書及び第82310号明細書に記載されている、該長いアークを用いる融解方法が使用される。
【0055】
この方法は、電気アーク炉を使用すること、ここで、該原料と、この原料から離れた少なくとも1つの電極との間からアークが放電する、並びにアークの還元作用が最小限に抑えられるように該アークの長さを調整すると同時に、該アーク自体の作用によって、又は融解浴に酸化ガス(例えば、空気又は酸素)をスパージすることによって若しくは代替的には、酸素、例えば過酸化物又は硝酸塩を発する物質を該浴に添加することによって、上記浴を混合することによって該浴の上に酸化雰囲気を維持すること、からなる。
【0056】
工程c.において、該冷却は好ましくは、1時間当たり20℃未満の速度で、好ましくは1時間当たり約10℃の速度で、行われる。
【0057】
ガラス融解炉における適用を企図されたジルコニアベースの融解された製品を製造する為の任意の慣用的な方法が使用され得、該原料の組成は、本発明に従う製品の組成に従う組成を有する製品を得ることを可能にする。
【0058】
本発明に従う製品において、ZrOは、実質的に全体的に(典型的に、その重量の95%超について)、ジルコニアの形態であり、SiO及びAlは、実質的に全体的に(典型的に、それらの重量の95%超について)、ガラス相である。
【0059】
実施例
下記の非限定的な例は、本発明を例示する目的の為に与えられる。
【0060】
これらの実施例において、下記の原材料が使用された:
平均で99%のZrO+HfOを含むジルコニアQ1、
平均で33%のSiO及び66%のZrO+HfOを含むジルコンサンド(zircon sand)、
平均で99%のSiOを含む「Sable BE01 Bedouin」(BE01 Bedouinサンド)シリカ、
平均で98%のBを含む酸化ホウ素、
NaO源として平均で99.5%のNaCOを含む炭酸ナトリウム、
平均で99%のAlを含むAC34タイプのアルミナ、
平均で99%のYを含む酸化イットリウム。
【0061】
該製品は、慣用的なアーク炉融解方法に従って調製され、次に鋳造されて、996mm×203mm×800mmと測定されるブロックを得た。
【0062】
得られた製品の化学的分析が表1に記載されており、重量パーセンテージで与えられる平均的な化学的分析である。
【0063】
熱機械応力に対する耐性
上部構造のブロックが受ける熱機械応力に耐える製品の能力を研究する為に、本発明者等は、MOR/MOE比を熱衝撃耐性につなげるKingeryの理論及び破裂のエネルギーを熱衝撃耐性につなげるHasselmanの理論を使用した。更に、線形弾性力学において、熱機械応力の程度は、破裂弾性率(MOR:modulus of rupture)と弾性率(MOE:modulus of elasticity)との比に関連する。この比は、破裂のエネルギーと同様に、最大化されるべきであり、従って、該製品は、熱機械源の亀裂に対して耐性である。該製品は、1000℃に置かれ、それは、該ブロックのコアにおける温度に実質的に相当する。
【0064】
MOR測定
破裂弾性率(MOR)は、2つの下方支持体の間の距離を120mmに設定された3点曲げアセンブリに置かれた、150×25×15mmの寸法を有する試料について、空気中1000℃で測定された最大応力であり、該試料の長さに沿って中間にある上方支持体を提供するパンチの降下速度は、0.5mm/分に等しい。MORの値は、3回の連続測定から生じる平均である。
【0065】
MOE測定
MOEを測定する為に、MORについて記載されているものと同じアセンブリ、及び試料の偏りの変位をモニタリングし、MOE、すなわち応力とこの応力によって引き起こされた弾性歪みとの比を決定する為の変位センサが使用される。
【0066】
破裂エネルギー測定
破裂エネルギーは、2つの下方支持体の間の距離が120mmであり、2つの上方支持体の間の距離が40mmである、4点曲げアセンブリに置かれた、150×25×25mmの寸法を有し、その中央に60°の角度及び25mmのベースを有する三角形ノッチを有する試料に対して、空気中1000℃で測定される。該上方支持体の降下速度は、20μm/分に等しい。
【0067】
耐腐食性測定
耐腐食性(CR:corrosion resistance)は、50%のガラスカレット、15%のシリカ、5%のドロマイト及び30%の炭酸ナトリウムからなる粉末を、1450℃の炉内で回転させられる(6rpm)110×100×30mmの寸法を有する4つの試料にわたって、1時間当たり180グラムの速度で合計20キログラム噴霧することによって測定される。腐食した体積は、3D走査によって測定され、この体積は、初期体積と関連付けられる。
【0068】
浸出測定
浸出(REx:resistance to exudation)に対する耐性は、空気中、100×100×20mmの寸法を有する試料において測定される。該試料は、1時間当たり100℃の速度で1550℃にされ、次に1550℃で6時間保持されるサイクルを受ける。RExは、該試料の初期体積に対して、2つのサイクルの後に該試料から抜け出したシリケート相(該試料上に見出される(該試料の体積の増大)、又はるつぼの底部に見出される)の体積パーセンテージである。該試料は、タンクの内部に曝露された該ブロックの表面上の温度に実質的に相当する1550℃に置かれる。
【0069】
実施例1及び実施例2はそれぞれ、慣用的なAZS製品及び高ジルコニア含量を有する慣用的な製品に相当する。
【0070】
残部は、ZrO+HfOの含量及び不純物(その含量は、これらの実施例において常に0.5%未満である)に相当する。
【0071】
【表1】
【0072】
該試験は、比較例製品2に対して、本発明に従う製品3及び製品4が、熱機械応力に対する改善された耐性及びより高い破裂エネルギーを有することを示す。
【0073】
本発明に従う製品の浸出度は、優れている。
【0074】
それ故に、明らかである通り、本発明は、ガラス融解炉の上部構造の環境において著しい機械的性能を有し、及びまた、操作時の浸出が少ない製品を提供する。
【0075】
当然のことながら、本発明は、単に例として提供される、記載され提示される実施態様に限定されない。
図1