(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】硬化コンクリート中においてアルカリ凝集反応を低減するか又は回避するための方法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/42 20060101AFI20230509BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C04B24/42 Z
C04B28/02
(21)【出願番号】P 2021557143
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2019057790
(87)【国際公開番号】W WO2020192916
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタンイェーク,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイヒ,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】イェルショー,ペーター
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-005348(JP,A)
【文献】特開2009-132921(JP,A)
【文献】特開平06-305803(JP,A)
【文献】特開平02-307879(JP,A)
【文献】特開2011-132106(JP,A)
【文献】特開2018-052774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化したコンクリートにおけるアルカリ-シリカ反応(=ASR)を低減するか又は回避するための、コンクリート混合物が製造されそして処理されてその後硬化される方法であって、
コンクリート混合物は、(A)アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含み、
ここで、(B)は、以下から選択される
●少なくとも1つの式(1)のシラン(B1):
R
aR
1Si(OR
2)
3-a (1)、
ここで、
Rは、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
R
1は、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
基R
2は、同一であっても異なっていてもよく、かつ、各々、水素原子又は一価の炭化水素基であり、
aは、0又は1である;及び/又は
●少なくとも1つの式(2)のシロキサン(B2)含有単位を含む:
R
3
bR
4
c(OR
5)
dSiO
(4-b-c-d)/2 (2)、
ここで、
基R
3は、同一であっても異なっていてもよく、各々、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された脂肪族炭化水素基、又は、1~3の炭素原子を有しかつ2単位の式(2)を架橋する、二価の任意選択的に置換された脂肪族炭化水素基であり、
基R
4は、同一であっても異なっていてもよく、各々、水素原子又は一価の任意選択的に置換された炭化水素基であり、
基R
5は、同一であっても異なっていてもよく、各々、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された芳香族又は脂肪族炭化水素基であり、
bは、0、1、2又は3であり、
cは、0、1、2又は3であり、そして
dは、0又は1である、
但し、b+c+dの合計が3以下でありかつ式(2)の単位の少なくとも40%においてb+dの合計が0又は1であるという条件である;
ここで、(B)が、少なくとも1つの式(1)のシラン(B1)及び少なくとも1つの式(2)のシロキサン(B2)を含む水性調製物であり、
凝集物(A)のアルカリ感受性は、硬化したコンクリート混合物からなる、3%強度のNaCl溶液中で保存した3つの試験標本の
、下記表1に示す工程A-1~A-5及び10回反復した工程B-1~B4の後に測定した平均膨潤を用いて
、試験方法A(3%強度のNaCl溶液を用いた方法)によって決定され、
【表1】
そして、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる3つの試験標本の平均膨潤は、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.1mm/mである、方法。
【請求項2】
アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の試験標本の平均膨潤は、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.2mm/mである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の試験標本の平均膨潤は、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.3mm/mである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
硬化したコンクリートにおけるアルカリ-シリカ反応(=ASR)を低減するか又は回避するための、コンクリート混合物が製造されそして処理されてその後硬化される方法であって、
コンクリート混合物は、(A)アルカリ感受性凝集物、及び(B)少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含み、
ここで、(B)は、以下から選択される:
●少なくとも1つの式(1)のシラン(B1):
R
aR
1Si(OR
2)
3-a (1)、
ここで、
Rは、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
R
1は、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
基R
2は、同一であっても異なっていてもよく、各々、水素原子又は一価の炭化水素基であり、及び
aは、0又は1である;及び/又は
●少なくとも1つの式(2)のシロキサン(B2)含有単位を含む:
R
3
b(R
4O)
cR
5
dSiO
(4-b-c-d)/2 (2)、
ここで、
基R
3は、同一であっても異なっていてもよく、各々、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された脂肪族炭化水素基、又は、1~3の炭素原子を有しかつ2単位の式(2)を架橋する、二価の任意選択的に置換された、脂肪族炭化水素基であり、
基R
4は、同一であっても異なっていてもよく、各々、水素原子又は一価の任意選択的に置換された炭化水素基であり、
基R
5は、同一であっても異なっていてもよく、各々、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された芳香族又は脂肪族炭化水素基であり、
bは、0、1、2又は3であり、
cは、0、1、2又は3であり、
dは、0又は1であり、
但し、b+c+dの合計が3以下でありかつ式(2)の単位の少なくとも40%においてb+dの合計が0又は1であるという条件である;
ここで、(B)が、少なくとも1つの式(1)のシラン(B1)及び少なくとも1つの式(2)のシロキサン(B2)を含む水性調製物であり、
凝集物(A)のアルカリ感受性は、硬化したコンクリート混合物からなる、10%強度のNaCl溶液中で保存した3つの試験標本の
、下記表2に示す工程A-1~A-5及び10回反復した工程B-1~B4の後に測定した平均膨潤を用いて
、試験方法B(10%強度のNaCl溶液を用いた方法)によって決定され、
【表2】
そして、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる3つの試験標本の平均膨潤は、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.2mm/mである、方法。
【請求項5】
アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の試験標本の平均膨潤が、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.3mm/mである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の試験標本の平均膨潤が、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.4mm/mである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも20%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも30%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも40%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Bによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも20%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Bによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも30%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Bによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも40%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤及び試験方法Bによって決定された平均膨潤の両方が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも20%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤及び試験方法Bによって決定された平均膨潤の両方が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも少なくとも30%低くなるような量で、成分(B)が使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化する前のコンクリート組成物への有機ケイ素化合物の添加によるコンクリートの大量疎水化によって、硬化したコンクリートにおいてアルカリーシリカ反応を低減するか又は回避するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、セメント、凝集物(自然に洗浄したかもしくは粉砕した砂利、粉砕した石及び/又は砂)、水及びコンクリート付加物の混合物からなる。以下の文章において、凝集物という語は、砂利、粉砕した石及び/又は砂の同意語として使用される。
【0003】
アルカリ-シリカ反応(=ASR)という用語は、コンクリート建造物中又はコンクリート成分内で、望ましくない条件下で起こり得る破壊的反応をいう。これは特に、コンクリート部分が水及び/又は塩水溶液と頻繁に接触する場合に起こる。この場合、OHイオンとの反応から生じるゲルが、コンクリート中に存在する反応性凝集物(A)(例えば砂利又は砂粒)の境界及び内部(孔)に形成される。さらに水が浸入した場合、次いで、ゲルが膨潤し、そして凝集物(A)の未反応の表面又は内部の初期の体積よりも大きな体積を占める。この膨張は、通常、ひびをもたらし、後にこのコンクリート部分の破壊をもたらす。特に致命的な膨潤挙動は、高いアルカリ含量又は高い含量の不定形微小構造組成のいずれかを有する凝集物(A)によって示される。
【0004】
ASRによって起こる膨張は、好適な試験装置によって測定されてもよい。この膨張が一定の値を超える場合、このコンクリートは、ASR感受性コンクリートを呼ばれる。このようなコンクリートが、例えば、道路又は自動車道路の建造物、空港の交通圏、トンネル建造物内及びパイプのために使用される場合、10~20年以内に、アルカリ-シリカ反応によるすさまじい被害が予想され、極端な場合、交通面の完全な取り換えすら必要となり得る。他方で、この試験装置において全く膨張を示さないか比較的わずかな膨張しか示さないコンクリートは、道路建造物において使用され得る。
【0005】
したがって、原則として、ASRは、コンクリートの製造における正しい凝集物の選択によって(すなわち、正しい砂利、砂、などの選択によって)、回避され得る。しかし、問題は、コンクリート製造のために必要な凝集物は、どこでも同じ品質で手に入るわけではないということである。高すぎる含量のアルカリ金属イオン及び/又は構造の不定形組成を有する場合、これらは反応性であるとみなされ、ASRの危険がある。
【0006】
正確な、十分に無反応性等級の砂及び/又は砂利が入手できない場所では、これらは、時には数百km離れていることもある場所から、輸送しなくてはならない。コンクリート製造において使用される大量の砂及び砂利の観点から、この輸送の必要性は、付随するエネルギー消費、環境汚染及び、最後に述べるが軽んずべからざる点として関連する費用ゆえに、今のところ未解決の問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アルカリ-シリカ反応によって影響を受ける用途、例えば、道路及び自動車道路建造物の用途に使用できない種類の及び/又は砂利の使用を可能にすることが、本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化したコンクリートにおけるアルカリ-シリカ反応(=ASR)を低減するか又は回避するための、コンクリート混合物が製造されそして処理されてその後硬化される方法を提供し、このコンクリート混合物は、(A)アルカリ感受性凝集物及び(B)少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含み、
ここで、(B)は、以下から選択される:
少なくとも1つの式(1)のシラン(B1):
RaR1Si(OR2)3-a (1)、
ここで、
Rは、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
R1は、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
基R2は、同一であっても異なっていてもよく、かつ、各々、水素原子又は一価の炭化水素基であり、
aは、0又は1である;及び/又は
少なくとも1つの式(2)のシロキサン(B2)含有単位:
R3
bR4
c(OR5)dSiO(4-b-c-d)/2 (2)、
ここで、
基R3は、同一であっても異なっていてもよく、各々、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された脂肪族炭化水素基、又は、1~3の炭素原子を有しかつ2単位の式(2)を架橋する、二価の任意選択的に置換された脂肪族炭化水素基であり、
基R4は、同一であっても異なっていてもよく、各々、水素原子又は一価の任意選択的に置換された炭化水素基であり、
基R5は、同一であっても異なっていてもよく、各々、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された芳香族又は脂肪族炭化水素基であり、
bは、0、1、2又は3であり、
cは、0、1、2又は3であり、そして
dは、0又は1である、
但し、b+c+dの合計が3以下でありかつ式(2)の単位の少なくとも40%においてb+dの合計が0又は1であるという条件である;
ここで、凝集物(A)のアルカリ感受性は、硬化したコンクリート混合物からなる、3%強度のNaCl溶液中で保存した3つの試験標本の平均膨潤を用いて、説明において示した試験方法A(3%強度のNaCl溶液を用いた方法)によって決定され、そして、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる3つの試験標本の平均膨潤は、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.1mm/mである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】比較例1ならびに実施例1a及び1bのコンクリート試験標本の平均膨張を示す。
【
図2】比較例1ならびに実施例1a及び1bのコンクリート試験標本の平均膨張を示す。
【
図3】比較例2ならびに実施例2a及び2bのコンクリート試験標本の平均膨張を示す。
【
図4】比較例2ならびに実施例2a及び2bのコンクリート試験標本の平均膨張を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法の好ましい実施形態において、コンクリートは、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤が、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.2mm/mであるほどに非常にアルカリ感受性であるコンクリートをもたらす、アルカリ感受性凝集物(A)を含む。
【0011】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、コンクリートは、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤が、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.3mm/mであるほどに非常にアルカリ感受性であるコンクリートをもたらす、アルカリ感受性凝集物(A)を含む。
【0012】
本発明はさらに、硬化したコンクリートにおけるアルカリ-シリカ反応(=ASR)を低減するか又は回避するための、コンクリート混合物が製造されそして処理されてその後硬化される方法を提供し、このコンクリート混合物は、
(A)アルカリ感受性凝集物、及び
(B)少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含み、
ここで、(B)は、
少なくとも1つの式(1)のシラン(B1)から選択される:
RaR1Si(OR2)3-a (1)、
ここで、
Rは、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
R1は、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した炭化水素基であり、
基R2は、同一であっても異なっていてもよく、かつ、各々、水素原子又は一価の炭化水素基であり、及び
aは、0又は1である;
及び/又は
少なくとも1つの式(2)のシロキサン(B2)含有単位を含む:
R3
b(R4O)cR5
dSiO(4-b-c-d)/2 (2)、
ここで、
基R3は、同一であっても異なっていてもよく、各々、1~3の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された脂肪族炭化水素基、又は、1~3の炭素原子を有しかつ2単位の式(2)を架橋する、二価の任意選択的に置換された、脂肪族炭化水素基であり、
基R4は、同一であっても異なっていてもよく、各々、水素原子又は一価の任意選択的に置換された炭化水素基であり、
基R5は、同一であっても異なっていてもよく、各々、4~22の炭素原子を有する、一価のSiC結合した任意選択的に置換された芳香族又は脂肪族炭化水素基であり、
bは、0、1、2又は3であり、
cは、0、1、2又は3であり、
dは、0又は1であり、
但し、b+c+dの合計が3以下でありかつ式(2)の単位の少なくとも40%においてb+dの合計が0又は1であるという条件である;
ここで、凝集物(A)のアルカリ感受性は、硬化したコンクリート混合物からなる、10%強度のNaCl溶液中で保存した3つの試験標本の平均膨潤を用いて、説明において示した試験方法B(10%強度のNaCl溶液を用いた方法)によって決定され、そして、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる3つの試験標本の平均膨潤は、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.2mm/mである。
【0013】
本発明の方法の好ましい実施形態において、コンクリートは、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる試験標本の、試験方法Bによって決定された平均膨潤が、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.3mm/mであるほどに非常にアルカリ感受性であるコンクリートをもたらす、アルカリ感受性凝集物(A)を含む。
【0014】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、コンクリートは、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤が、168日(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に少なくとも0.4mm/mであるほどに非常にアルカリ感受性であるコンクリートをもたらす、アルカリ感受性凝集物(A)を含む。
【0015】
(B)を水性調製物として用いることが、好ましい。(B)を、少なくとも1つの式(1)のシラン(B1)及び少なくとも1つの式(2)のシロキサン(B2)を含む水性調製物としてもちいることが、特に好ましい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも、少なくとも20%低く、好ましくは少なくとも30%低く、特に好ましくは少なくとも40%低く、より好ましくは少なくとも50%低く、そして非常に好ましくは少なくとも70%低くなるような量で、成分(B)が、使用される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Bによって決定された平均膨潤が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも、少なくとも20%低く、好ましくは少なくとも30%低く、特に好ましくは少なくとも40%低く、より好ましくは少なくとも50%低く、そして非常に好ましくは少なくとも70%低くなるような量で、成分(B)が、使用される。
【0018】
非常に好ましい実施形態において、168日の保存期間(工程A-1~A-5及び10回反復した工程(B-1~B4))後に、アルカリ感受性凝集物(A)及び(B)を含む硬化したコンクリート混合物からなる試験標本の、試験方法Aによって決定された平均膨潤及び試験方法Bによって決定された平均膨潤の両方が、アルカリ感受性凝集物(A)を含むが(B)を含まない硬化したコンクリート混合物(=参照標本)の平均膨潤よりも、各々の場合において少なくとも20%低く、好ましくは少なくとも30%低く、特に好ましくは少なくとも40%低く、より好ましくは少なくとも50%低く、そして非常に好ましくは少なくとも70%低くなるような量で、成分(B)が、使用される。
【0019】
本発明は、本発明による有機ケイ素化合物(B)が、ASRの範囲及び結果を有意に低減することができるという、驚くべき発見に基づく。このことは、その使用がアルカリ安定性の不十分なコンクリートを生じる場合であっても、例えば、地元で入手可能な種類の砂利を、道路建造物において使用することを、可能にする。この方法で、遠く離れた地域、時には数百kmも離れている地域からの、砂利のための高い輸送費用は、避けることができる。比較的長距離にわたる砂利の輸送は、高いエネルギー消費をも伴うが、本発明の方法は、CO2排出を低減することに有意に寄与することもでき、したがって、環境に寄与することができる。
【0020】
基Rの例は、アルキル基類、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル基類及びアルケニル基類、例えばビニル、1-プロペニル及び2-プロペニル基である。
【0021】
基Rは、好ましくは、メチル基である。
【0022】
基R1の例は、アルキル基類、例えばヘキシル基類、例えばn-ヘキシル基;ヘプチル基類、例えばn-ヘプチル基;オクチル基類、例えばn-オクチル基及びイソオクチル基類、例えば2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基類、例えばn-ノニル基;デシル基類、例えばn-デシル基;ドデシル基類、例えばn-ドデシル基;テトラデシル基類、例えばn-テトラデシル基;ヘキサデシル基類、例えばn-ヘキサデシル基;オクタデシル基類、例えばn-オクタデシル基;シクロアルキル基類、例えばシクロヘキシル、シクロヘプチル及びメチルシクロヘキシル基類である。
【0023】
基R1は、好ましくは6~16の炭素原子を有するアルキル基類、特に好ましくは8~12の炭素原子を有するアルキル基類、詳細にはn-オクチル又はイソオクチル基である。
【0024】
基R2は、好ましくは1~4の炭素原子を有するアルキル基類、特に好ましくはメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピル基である。
【0025】
シラン(B1)の例は、ヘキシルシラン類、例えばn-ヘキシルトリメトキシシラン類、n-ヘキシルトリエトキシシラン類、シクロヘキシルトリメトキシシラン類、シクロヘキシルトリエトキシシラン類、n-ヘキシルメチルジメトキシシラン又はn-ヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルシラン類例えばn-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリブトキシシラン、2,2,4-トリメチルペンチルトリメトキシシラン、2,2,4-トリメチルペンチルトリエトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-テトラデシルトリメトキシシラン、n-テトラデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン及びオクタデシルトリエトキシシランである。
【0026】
シラン(B1)は、好ましくはn-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、2,2,4-トリメチルペンチルトリメトキシシラン、2,2,4-トリメチルペンチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、特に好ましくはn-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、2,2,4-トリメチルペンチルトリメトキシシラン及び2,2,4-トリメチルペンチルトリエトキシシランである。
【0027】
基R5の例は、ビニル基、アリル基、アルキル基類、例えば1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、シクロペンチル;ヘキシル基類、例えばn-ヘキシル又はシクロヘキシル基;ヘプチル基類、例えばn-ヘプチル基;オクチル基類、例えばn-オクチル基及びイソオクチル基類、例えば2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基類、例えばn-ノニル基;デシル基類、例えばn-デシル基;ドデシル基類、例えばn-ドデシル基;テトラデシル基類、例えばn-テトラデシル基;ヘキサデシル基類、例えばn-ヘキサデシル基;オクタデシル基類、例えばn-オクタデシル基;式H2N(CH2)3-、H2N(CH2)2NH(CH2)3-又はH2N(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3-のアミノ基含有基類;アリール基類、例えばフェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基;又はアルカリール基類、例えばo-、m-、p-トリル基類、;キシリル基類、及びエチルフェニル基類、;及びアラルキル基類、例えばベンジル基及びα-及びβ-フェニルエチル基類である。
【0028】
基R5は、好ましくはアルキル基類、例えば1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、シクロペンチル;ヘキシル基類、例えばn-ヘキシル又はシクロヘキシル基;ヘプチル基類、例えばn-ヘプチル基;オクチル基類、例えばn-オクチル基及びイソ-オクチル基類、例えば2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基類、例えばn-ノニル基;デシル基類、例えばn-デシル基;ドデシル基類、例えばn-ドデシル基;テトラデシル基類、例えばn-テトラデシル基;ヘキサデシル基類、例えばn-ヘキサデシル基又はaフェニル基である。
【0029】
基R5は、特に好ましくはn-オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基;n-ヘキサデシル基又はフェニル基である。
【0030】
基R4の例は、アルキル基類、例えばメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピル基である。
【0031】
基R4は、好ましくはメチル基である。
【0032】
基R3は、好ましくは1~3の炭素原子を有するアルキル基類、特に好ましくはメチル又はエチル基である。
【0033】
式(2)の単位からなるシロキサン(B2)を用い、b+dの合計が、式(2)の単位の40%において0又は1であることが、望ましい。
【0034】
本発明によって使用されるシロキサン(B2)は、公知の任意の直鎖状、環状又は分枝鎖状のシロキサンであってもよい。
【0035】
成分(B2)は、特に好ましくは反復する式(2)の単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂(B2a)を含み、但し、全ての反復する式(2)の単位の少なくとも30%において、b+dが1の値を有し、また、全ての反復する式(2)の単位の100%において、1の値を有してもよい。
【0036】
同様に、全ての反復する式(2)の単位にわたって平均化したb+dが、0.9~1.6の値を有することが特に好ましく、この反復する式(2)の単位について、b=1であることと組み合わせてd=0であり、b=0であることと組み合わせてd=1であり、そしてb=2であることと組み合わせてd=0であることが、特に好ましい値である。
【0037】
同様に、全ての反復する一般式(2)の単位にわたって平均化したcが、0.1~1.8の平均値を有することが、特に好ましい。
【0038】
同様に、全ての反復する式(2)の単位にわたって平均化した全ての単位-OR4の10mol%以下において、単位-OR4がヒドロキシ基であることが、特に好ましい。
【0039】
オルガノポリシロキサン樹脂(B2a)は、個体であっても又は液体であってもよい。オルガノポリシロキサン樹脂(B2a)は、好ましくは液体であり、そして25℃及び周囲大気圧、すなわち900~1100hPaにて、1000~400000mPasの粘度を有する。ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるこれらの樹脂の重量平均分子量は、好ましくは200~200000g/mol、詳細には1000~20000g/molである。
【0040】
本発明の目的のための、ペースト様ではない液体の粘度は、Schott製の粘度計AVS(Ubbelohde粘度計;粘土測定の詳細な説明は、DIN 51562、第1部において見出され得る)を用いて、25℃にさせた後に、決定される。
【0041】
数平均モル質量Mnは、本発明の目的のために、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の手段によって、ポリスチレン標準に対し、THF中、60℃、流速1.2ml/分にて、100μlの注入容積を用いたWaters Corp.USA製のカラムセットStyragel HR3-HR4-HR5-HR5上で、RI(屈折率)検出器を用いて、決定される。
【0042】
本発明のさらに好ましい実施形態において、成分(B2)は、ポリジメチルシロキサン(B2b)を含む。
【0043】
ポリジメチルシロキサン(B2b)は、分枝鎖状であっても、又は非分枝鎖状であってもよい。これらは、好ましくは非分枝鎖状である。ポリジメチルシロキサン(B2b)は、好ましくは、式-Si(CH3)3又は-Si(CH3)2OHの末端基を有する。
【0044】
ポリジメチルシロキサン(B2b)は、液体であり、かつ、25℃及び周囲大気圧、すなわち900~1100hPaにおいて、1000~1000000mPasの粘度を有する。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定される、樹脂の重量平均分子量は、好ましくは、1000~2000000g/mol、詳細には、2000~1000000g/molである。
【0045】
本発明によって使用される組成物は、成分(B2)を、各々の場合で成分(B1)の100重量部に基づいて、好ましくは5~400重量部、特に好ましくは20~2000重量部、より好ましくは40~100重量部の量で、含む。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、成分(B)は、水性分散液(DisB)の形態でコンクリート混合物に加えられる。このような分散液は、成分(B)に加えて、好適な乳化剤(C)、水(D)及び任意選択的にさらなる付加物(E)を、含む。
【0047】
乳化剤(C)として、シロキサン分散液の製造のためにやはり従来使用されてきた、全ての乳化剤を用いることができる。乳化剤(E)として、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性及び両性の界面活性剤又はそれらの混合物を使用することができる。代替として、乳化特性を有する重合体化合物、例えばポリビニルアルコール類、詳細には75~95%の加水分解度を有するポリビニルアルコール類もまた、使用され得る。
【0048】
任意選択的に使用される成分(C)は、好ましくは、非イオン性乳化剤又は非イオン形成性(nonionogenic)乳化剤とイオン性乳化剤との混合物を、含む。
【0049】
本発明によって使用される非イオン性乳化剤(C)の例は、ソルビタン脂肪酸エステル類、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル類、エトキシル化脂肪酸類、10~20の炭素原子を有するエトキシル化直鎖状又は分枝鎖状アルコール、エトキシル化アルキルフェノール類、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル類、グリセロールエステル類及びアルキルポリグリコシド類である。
【0050】
非イオン性乳化剤(C)は、好ましくはソルビタン脂肪酸エステル類、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル類、エトキシル化脂肪酸類、10~20の炭素原子を有するエトキシル化直鎖状もしくは分枝鎖状アルコール又はエトキシル化トリグリセリド類である。
【0051】
エトキシル化アルキルフェノール類は、環境に優しくないことが公知であるので、本発明によって使用される組成物は、好ましくは、エトキシル化アルキルフェノール類を何ら含まない。
【0052】
非イオン性乳化剤が成分(C)として使用される場合、これらは、1種類の非イオン形成性(nonionogenic)乳化剤しか含まなくてもよく、又は複数の非イオン形成性(nonionogenic)乳化剤の混合物を含んでもよい。12以上の、詳細には14以上のHLBを有する少なくとも1つの非イオン性乳化剤(C)が、好ましい。
【0053】
好ましくは、少なくとも1つの乳化剤が12以上のHLBを有する非イオン形成性(nonionogenic)乳化剤の混合物が、成分(C)として使用される。ここで、12以上のHLBを有する乳化剤(C)の乳化剤混合物(C)中の割合は、好ましくは、少なくとも30重量%である。
【0054】
HLBは、乳化剤の親水性基と疎水性基との間の平衡を表す。HLB及びそれを決定するための方法の定義は、周知であり、かつ、例えば、Journal of Colloid and Interface Science 298(2006)441-450及びそこに挙げられた引用文献に記載される。
【0055】
陰イオン性乳化剤(C)として、例えば、スルホン酸アルキル類、硫酸アルキル類及びリン酸アルキル類を、使用することができる。
【0056】
陽イオン性乳化剤(C)の例は、少なくとも10の炭素原子を有する少なくとも1つの置換された又は置換されていない炭化水素基を担う全ての公知の第四級アンモニウム化合物であり、例えば、ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロリド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリドである。
【0057】
陽イオン性乳化剤が成分(C)として使用される場合、アリールトリメチルアンモニウム又はアルキルトリメチルアンモニウム塩類、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド又はセチルトリメチルアンモニウムクロリド、特に好ましくはベンジルトリアルキルアンモニウム塩類、詳細にはトリメチルベンジルアンモニウムクロリド又はトリメチルベンジルアンモニウムメトスルフェートが、好ましい。
【0058】
さらなる例は、少なくとも10の炭素原子を有する少なくとも1つの置換された又は置換されていない炭化水素基を担う全ての公知の第四級イミダゾリニウム化合物であり、例えば、1-メチル-2-ステアリル-3-ステアリルアミドエチルイミダゾリニウムメトスルフェート、1-メチル-2-ノルステアリル-3-ステアリルアミドエチルイミダゾリニウムメトスルフェート、1-メチル-2-オレイル-3-オレイルアミドエチルイミダゾリウムメトスルフェート、1-メチル-2-ステアリル-3-メチルイミダゾリウムメトスルフェート、1-メチル-2-ベヘニル-3-メチルイミダゾリウムメトスルフェート及び1-メチル-2-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムメトスルフェートである。
【0059】
成分(C)が、分散液(DisB)を製造するために使用される場合、使用される量は、それぞれの場合において成分(B)の100重量部に基づいて、好ましくは0.1~15重量部、特に好ましくは0.3~8重量部である。分散液(DisB)は、好ましくは、乳化剤(C)を含む。
【0060】
成分(D)として使用される水は、任意の種類の水であってよく、例えば、雨水、地下水、泉の水、川の水及び海水などの天然水、又は脱イオン水、蒸留水又は(多回)再蒸留水、水道水もしくは鉱水などの化学水であってもよい。
【0061】
分散液(DisB)は、水(D)を、それぞれの場合において組成物の総量に基づいて、好ましくは10~90重量%、特に好ましくは20~80重量%の量で含む。本発明の方法において、30~70重量%の含量の水(D)を含む高い希釈率の組成物が、特に好ましい。
【0062】
さらに、コンクリートに加えられた分散液(DisB)は、さらなる付加物(E)を含んでもよい。これらは、水性分散液中で従来使用されてきた全ての付加物であってよく、例えば、殺生物剤及び/又は他の保存剤、(B1)及び(B2)とは異なる有機ケイ素化合物、増粘剤、pHを調整するための物質、芳香剤、染料、色素、例えば酸化鉄、アルコール類及び/又は不凍剤、例えばグリコール類及びグリコールエーテル類であってもよい。
【0063】
任意選択的に使用され得る増粘剤(E)の例は、ポリアクリル酸、ポリアクリレート類、セルロースエーテル類、例えばカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガムなどの天然ゴム及びポリウレタン類である。
【0064】
任意選択的に使用され得る有機ケイ素化合物(E)の例は、テトラエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン及びアミノプロピルメチルジメトキシシランである。
【0065】
任意選択的に使用され得るpH(E)を調整するための物質の例は、アミノシラン類であり、ならびにまた、例えばモノエタノールアミンなどのアミン類又はアルカリ金属水酸化物類である。長期間にわたってpHの恒常性を確実にするために必要である場合、それぞれの場合で所望のpHに基づき遊離酸と組み合わせて、酢酸の塩類、リン酸の塩類、クエン酸の塩類などの緩衝系を使用することができる。
【0066】
好ましい実施形態において、コンクリートに加えられた分散液(DisB)は、好ましくは0.00001~1重量%、特に好ましくは0.0001~0.5重量%の量で、エタノール及び/又はメタノールを、成分(E)として含む。上述の量のアルコールは、通常、本発明によって使用される組成物の製造において、及び/又はこの組成物保存の間に、形成される。
【0067】
分散液(DisB)は、好ましくは、以下を含む分散液である:
(B1)式(1)のシラン及び/又は
(B2)式(2)の単位からなるシリコーン樹脂
(C)乳化剤
(D)水及び
任意選択的に(E)さらなる付加物。
【0068】
分散液(DisB)は、好ましくは、成分(A)~(F)及びそれらの反応生成物の他に、何ら成分を含まない。
【0069】
本発明によって使用される上述の成分は、それぞれの場合において、このような成分のうちの1種類であってもよく、又は少なくとも2種類のそれぞれの成分の混合物であってもよい。
【0070】
分散液(DisB)は、好ましくはエマルジョン又は懸濁液であり、特に好ましくはエマルジョンである。
【0071】
分散液(DisB)の製造は、それ自体公知である方法によって実施され得る。これらは、通常、好ましくは1~50℃の温度で、全ての構成成分を任意の順序で単純に撹拌し、任意選択的にその後均質化することによって、製造される。
【0072】
分散液(DisB)は、好ましくは0.01~90重量%、特に好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%の、固形含量、すなわち不揮発性の化合物(例えば、ASTM D 5095に準拠して測定される)の割合を、有する。
【0073】
分散液(DisB)は、それぞれの場合において25℃にて上述の試験方法で測定して、好ましくは0.5~10000mm2/s、詳細には1~1000mm2/sの粘度(ペースト様ではない液体の粘度)を有する。
【0074】
代表的なコンクリート調合物は、1立方メートルあたり400kgのセメントを含み、したがって、0~70容量%の粒子径2~22mm、好ましくは2~16mmの砂利又は粉砕した石、ならびに30~100容量%の砂を含む(100%が砂である場合、この調合物は、漆喰と呼ばれる)。水対セメントの比は、代表的に、0.45である。水-セメント値は、0.3~0.7の範囲内であってもよい。砂及び砂利又は粉砕した石が、微小構造の不定形の構成成分を含む場合、これらは反応性の、すなわち、アルカリ感受性の、凝集物(A)である。
【0075】
アルカリ感受性砂利(A)の例は、流紋岩又は硬砂岩である。さらなる反応性の凝集物は、以下の群の鉱物からもたらされる:珪質粘土、石英安山岩、斑岩、凝灰岩、粘板岩、シルト岩、オパール、黒曜石、クリストバル石、リンケイ石、玉髄、安山岩、千枚岩、粘板岩、片麻岩、片麻岩花崗岩、砂石、ラタイト合成ガラス、火山ガラス、燧石、潜晶質及び加圧されたもしくは変性した石英、チャート、ドロマイト含有石灰岩又は花崗岩。
【0076】
成分(B)は、エマルジョンの固形含量に基づき、かつ、コンクリートのセメントに基づいて、0.01~0.5重量%、好ましくは0.1~0.3重量%の割合で加えられる。添加の時点は、水の添加の前であっても後であってもよい。
【0077】
試験方法A(3%強度のNaCl水溶液を用いる方法)
75mm×75mm×280mmの寸法を有する3つのコンクリート角柱が、表1に示されるように試験標本として製造されそして保存される。膨潤は、10回の周期=計168日間後、すなわち工程A-1~A-5及び10回反復した工程B-1~B4の後に、3つの試験標本の280mm縁の膨潤の測定からの平均値[mm/m]に対応する。
【0078】
膨潤に続き、各周期の後に測定が連続的に実施される。長期間研究が望まれる場合、それは、周期の数を増やすことで可能となる。
【0079】
【0080】
試験方法B(10%強度のNaCl水溶液を用いる方法)
75mm×75mm×280mmの寸法を有する3つのコンクリート角柱が、表2に示されるように試験標本として製造されそして保存される。膨潤は、10回の周期=計168日間後、すなわち工程A-1~A-5及び10回反復した工程B-1~B4の後に、3つの試験標本の280mm縁の膨潤の測定からの平均値[mm/m]に対応する。
【0081】
膨潤に続き、各周期の後に測定が連続的に実施される。長期間研究が望まれる場合、それは、周期の数を増やすことで可能となる。
【0082】
【0083】
本発明は、反応性凝集物、例えば、上述の反応性凝集物、及びまた、低費用で地元にて入手可能な反応性の種類の砂が、コンクリートもしくはレンダー(render)において使用され得、反応性の種類の砂であるにもかかわらずASR安定性のコンクリートもしくはレンダー(render)をもたらすという、利点を有する。
【0084】
本発明のさらなる利点は、コンクリート及び漆喰調合物への付加物の単純かつ安価な添加である。
【0085】
本発明のさらなる利点は、ASRの可能性に起因してより短い寿命を有し得たビル、空港における交通圏、トンネル建造物、パイプ、道路、橋及び建設工事において、その使用が、寿命の延長を一般にもたらすことである。
【0086】
以下の実施例は、本発明を実施例中に開示される内容に制限することなく、本発明の原則的な実施を記載する。
【0087】
以下の実施例において、全ての部及び百分率は、反対の指示がない限り、重量による。反対の指示がない限り、以下の実施例は、周囲大気圧すなわち約1000hPa、及び室温すなわち約20℃、又は反応物を室温にてさらなる加熱もしくは冷却を用いずに合わせた際に確立された温度にて、実施される。
【実施例】
【0088】
製造実施例1:シラン(B1)及びシロキサン(B2)を含有する分散液の製造
38.4gの水、38.4gの乳化剤(POE(16)イソトリデシルエーテル、名称Arlypon(R)IT 16の下でBASFAG、D-Ludwigshafenから入手可能である)を、2リットルビーカーに入れ、ローター-ステーターホモジナイザー(Ultra-Turrax T50、IKA-Werke GmbH 6 Co.KG、D-Staufen)を0.5分間4000rpmにて用いて、4.3gのN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Geniosil(R)GF 91の名称の下でWacker Chemie AG、D-Burghausenから入手可能である)と混合する。100gの2,2,4-トリメチルペンチルトリエトキシシラン(SILRES(R)BS 1701の名称の下でWacker Chemie AG、D-Burghausenから入手可能である)を、その後添加し、この混合物を、2分間4000rpmにて混合して、ゲル様ペーストを形成する。
【0089】
4000rpmにて混合を続けながら、10gの水及び122.4gの式(CH3)0.7(2,2,4-トリメチルペンチル)0.3Si(OCH3)1.3O0.85の約800g/molの平均分子量及び約17mm2/sの粘度を有するオルガノポリシロキサンをその後2分間以内で交互に加えて、ペースト様の濃度の混合物を維持する。最後に、4000rpmにて混合を続けながら、25gの水及び389.6gの2,2,4-トリメチルペンチルトリエトキシシランを、交互に3分間以内で加え、同様に、ペースト様の濃度の混合物を維持する。混合物を、その後、さらに5分間、4000rpmで混合する。
【0090】
4000rpmにて混合を続けながら、次いで、467.8gの水を、交互に5分間以内で加え、液体エマルジョンを形成する。最後に、1.1gの99%強度の酢酸、2.64gの第1保存剤(「Acticide MV」、Thor GmbH、D-Speyerから入手可能)及び0.36gの第2保存剤(MIT 10、同様に、Thor GmbH、D-Speyerから入手可能)を加え、0.5分間にわたり4000rpmで撹拌する。
【0091】
建築材料及び試験方法
コンクリート組成物及び試験標本
コンクリート組成物を、表3及び表4に示す。比較例1(C-Ex.1)及び実施例1aならびに1b(Ex.1a及びEx.1b)の作製は、それぞれの疎水化剤の添加を除いては、同一である。同じことを、比較例2(C-Ex.2)ならびに実施例2a及び2b(Ex.2a及びEx.2b)のコンクリートに適用する。モデル実験において使用されていない空気孔の形成を除き、全ての作製は、general circular Strassenbau No.04/2013に準拠して、粗い岩の粒子の大きさの画分のWSベーシック試験のために使用される、標準組成物「Oberbeton(0/8)」に対応する。
【0092】
【0093】
【0094】
コンクリートの製造を、以下の混合方法で実施した:
1.乾燥成分の混合(約10秒間)
2.水の添加
3.付加物の添加(実施例1a、1b、2a及び2bのみ)
4.2分間にわたる混合
【0095】
以下の試験標本を、各々のコンクリートから鋼の型内にて製造し、振とう台の上で圧縮した。
外からのアルカリの導入を伴う試験方法及びBによる、60℃コンクリート試験のための6つの角柱(75mm×75mm×280mm)。
圧縮強度及びかさ密度の試験のための150mmの長さの縁を持つ、3つの試験標本。
【0096】
製造後、試験標本を型に残し、湿った布で覆い、20±2℃にて24±1時間保存した。型を外した後、試験標本を、意図する試験方法によって、さらなる期間にわたり保存した。
【0097】
試験方法
生コンクリート試験
DIN EN12350-6に準拠する生コンクリートかさ密度を、混合の約10分間後に測定した。
DIN EN 12350-4に準拠する締固め度及びDIN EN 12350-5に準拠するスランプフローを、混合の約30分間後に測定した。
【0098】
硬化コンクリート試験
DIN EN 12390-3に準拠するコンクリート組成物の圧縮強度の試験はエッジ長150mmの3つの試験標本に対して、28日後に行った。硬化コンクリートかさ密度を、DIN EN 12390-7に準拠して測定した。試験標本は、DIN EN 12390-2の国家による付属書に準拠して(水の中で7日間、次いで、制御した大気室において20±2℃及び65±5%RH)、保存した。
【0099】
外からのアルカリの供給を伴う60℃コンクリート試験(ASR性能試験)
アルカリ-シリカ反応に対する3つのコンクリートの耐性は、外からのアルカリの供給を伴う60℃コンクリート試験を加えた試験方法A又は試験方法Bによって試験した。
【0100】
3つのコンクリート試験標本(75mm×75mm×280mmの寸法を有する角柱)を、それぞれの場合において、試験方法A又は試験方法Bによって、表5に示されるように保存した。試験方法Aによって、試験標本を、工程B-2において3%強度のNaCl水溶液中で保存し、試験方法Bの場合には、ここで10%強度のNaCl溶液を用いる。
【0101】
試験標本の膨張を、28日後に測定し(工程A-5)、また、各試験周期(工程B-4)後にも測定した。工程B-1~B-4あたりの曝露を、各コンクリートにつき14回繰り返した。
【0102】
道路建造物のために好適なコンクリートは、10回反復した工程B-1~B-4(10試験周期)後に、試験方法Aによって、0.3mm/m未満の膨張を有さなければならない。試験方法Bの場合、膨張は、0.5mm/m以下でなければならない。
【0103】
【0104】
生コンクリート特性
生コンクリートの特性を、表6に示す。
【0105】
【0106】
硬化コンクリート特性
コンクリートの圧縮強度fc及びかさ密度Dを、表7に示す。
【0107】
【0108】
外からのアルカリ供給を伴う60℃コンクリート試験
粉砕した硬砂岩(比較例1、実施例1a及び1b)を含むコンクリート
試験方法Aによる、すなわち、3%強度のNaCl溶液による外からのアルカリ供給を伴う60℃コンクリート試験の間の、比較例1ならびに実施例1a及び1bのコンクリート試験標本の平均膨張を、
図1に示す。比較例1由来のコンクリートの場合、0.53mm/mの平均値に至るまでの膨張における連続的な増大を、14試験周期後に観察した。10周期後、膨張は、0.39mm/mであった。実施例1a及び1bに由来するコンクリートは、最大≦0.10mm/mまでの有意に低い膨張(10周期後、それぞれ0.04及び0.05)を有した。
【0109】
試験方法Bによる、すなわち、10%強度のNaCl溶液による外からのアルカリ供給を伴う60℃コンクリート試験の間の、比較例1ならびに実施例1a及び1bのコンクリート試験標本の平均膨張を、
図2に示す。比較例1由来のコンクリートは、14試験周期後に最も高い膨張値を有し、2.72mm/mの平均値に達した。10周期後、膨張は、1.97mm/mであった。実施例1aに由来するコンクリートの場合、10試験周期後、0.94mm/mの膨張値を、及び14周期後に1.53mm/mの値を測定した。実施例1bに由来するコンクリートの場合、10周期後の値は、0.34mm/mであり、及び14周期後は、0.54mm/mであった。
【0110】
粉砕した硬砂岩(比較例2、実施例2a及び2b)を含むコンクリート
試験方法Aによる、すなわち、3%強度のNaCl溶液による外からのアルカリ供給を伴う60℃コンクリート試験の間の、比較例2ならびに実施例2a及び2bのコンクリート試験標本の平均膨張を、
図3に示す。比較例2由来のコンクリートの場合、10試験周期後に0.24mm/mまで、及び14周期後に0.28m/mまでの、膨張値における連続的な増大を見出した。実施例2a及び2b由来のコンクリートの膨張値は、試験期間全体にわたり、0近くに留まった。
【0111】
試験方法Bによる、すなわち、10%強度のNaCl溶液による外からのアルカリ供給を伴う60℃コンクリート試験の間の、比較例2ならびに実施例2a及び2bのコンクリート試験標本の平均膨張を、
図4に示す。比較例2のコンクリートの場合、膨張における連続的な実質的に直線状の増大が、試験の全機関にわたって見出され、10試験周期後に0.42mm/mの値に、14周期後に最大の0.59mm/mの値に達した。最初の6試験周期の期間にわたる実施例2aのコンクリートについての膨張の増大は、比較例2のコンクリートについてよりも有意に低い。しかし、次いで、より高い膨張の増大が観察され、10試験周期後に0.29mm/mの膨張値に達し、及び14周期後に0.52mm/mの膨張値に達した。実施例2bのコンクリートの膨張は、14試験周期の期間全体にわたり、0近くに留まった。