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特許7274605個々の微生物の光学的調査のための流体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】個々の微生物の光学的調査のための流体装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G01N15/14 A
G01N15/14 C
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021560897
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 ES2019070270
(87)【国際公開番号】W WO2020212628
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】514093305
【氏名又は名称】フンダシオ インスティテュート デ サイエンセズ フォトニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】509135441
【氏名又は名称】インスティテューシオ カタラーナ デ レサーカ イ エストゥーディス アバンキャッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】プルネリ、 バレリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョフレ、 マルク
(72)【発明者】
【氏名】マルチネス コルデロ、 ペドロ アントニオ
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0256561(US,A1)
【文献】国際公開第2018/223132(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/073064(WO,A1)
【文献】特表2016-512336(JP,A)
【文献】特開2003-254891(JP,A)
【文献】特開平05-296914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物のサンプルの個々のメンバーからの光学放射を検出するための装置であって、
前記サンプルの個々のメンバーに対して第1の方向に光を放射するように構成される光源、及び前記第1の方向とは反対の第2の方向に放射され、かつ前記光源によって放射された前記光によって励起された前記個々のメンバーからの光学放射を第1の視野内で検出するように構成される検出装置を含む光学装置と、
前記微生物のサンプルを貯蔵するように構成される貯蔵タンク、及び前記貯蔵タンク内の前記微生物のサンプルを循環させるように構成されるポンプ装置含む流体装置と
を備え、前記光学放射が検出される所与の時間に個々のメンバーの1つのみが前記検出装置の前記視野内に存在するように、前記サンプルの個々のメンバーのフローを可能にするように構成される毛管チャネルが前記貯蔵タンク内に配置される、装置。
【請求項2】
前記ポンプ装置は、循環ポンプである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポンプ装置は、前記フローの圧力変動を生成するように構成され、記圧力変動は、圧力が再び変化する前に流体が定常状態に到達する時間よりも短い期間、又はその付近の時間内に前記フローの速度分布を変化させる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
検出された光学放射のパラメータを抽出するためのデータ処理装置及びアルゴリズムをさらに備え、抽出されたパラメータの同時分析により、人工知能アルゴリズムよって、前記装置の動作の制御パラメータを調整して、偽陽性係数を減少させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記人工知能アルゴリズムは、機械学習アルゴリズムである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記検出装置は、前記貯蔵タンクに貯蔵されている前記微生物のサンプルの一部から前記第2の方向に放射される他の光学放射を、前記第1の視野とは異なりかつ前記第1の視野より大きい第2の視野で検出するようにさらに構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記光学装置は、前記光源から放射された光を前記毛管チャネルの特定の領域に集束するように構成及び配置される第1のレンズと、記貯蔵タンクの中央領域において、前記毛管チャネルとは異なる前記貯蔵タンクの微生物から放射された光を集束するように構成及び配置される第2のレンズとをさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記光学装置は、パルス振幅変調蛍光測定又は高速反復率パルス振幅変調蛍光測定を行うように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記光学装置は、前記光学放射を前記検出装置の検出面に向けて誘導するように配置される顕微鏡対物レンズをさらに備える、請求項1~のいずれか1に記載の装置。
【請求項10】
前記ポンプ装置の動作を制御するように構成される制御手段をさらに備え、前記毛管チャネルを通る前記個々のメンバーのフローが、前記サンプルの単一のメンバーのみが前記第1の視野内にある間の生物学的特徴の検出を可能にするように、a)前記毛管チャネルの幾何学的形状及び寸法が選択され、かつb)前記制御手段は、前記ポンプ装置の動作を制御するように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記サンプルに所定投与量の粘弾性ポリマーを供給するように構成される手段をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記微生物は、葉緑体含み、
前記検出装置に接続され、かつ前記検出装置によって提供されたデータに基づいて前記葉緑体の光化学系IIの効率を決定するように構成されるデータ処理手段をさらに備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
微生物のサンプルの個々の微生物からの光学放射を検出する方法であって、
微生物のサンプルを調製するステップと、
単一の微生物のみが所与の時間に毛管チャネルの中央部分に存在するように、前記毛管チャネルを通る前記微生物のサンプルの一部を誘導するステップであって、前記毛管チャネルを通る前記微生物のサンプルの一部を誘導することは、ポンプ装置によって前記微生物のサンプルの前記一部を移動させることを含むステップと、
前記単一の微生物からの光学放射を励起するために、前記所与の時間に前記毛管チャネルの前記中央部分のみに励起光を第1の方向に放射するステップと、
検出装置によって励起された光学放射を検出するステップであって、前記光学放射は、前記第1の方向とは反対の第2の方向に検出されるステップと
前記微生物のサンプルを貯蔵タンクに貯蔵するステップであって、前記貯蔵タンクは、前記毛管チャネルを含み、かつ前記ポンプ装置に動作可能に接続されているステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記励起光は、パルス変調方式放射される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記パルス変調方式は、パルス振幅変調方式である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物のサンプルを調製することは、前記貯蔵タンクに貯蔵する前の前記サンプルに、又は前記貯蔵タンクに貯蔵された前記サンプルに合成ポリマー粉末を添加することを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
複数の微生物を含む部分である前記微生物のサンプルの一部からの他の光学放射を励起するために、前記毛管チャネルが配置されていない前記貯蔵タンクの一部別の励起光を前記第1の方向に放射するステップと、
前記微生物のサンプルの一部において励起された他の光学放射を検出するステップと
をさらに含む、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記貯蔵タンクの一部は、前記貯蔵タンクの中央部分である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポンプ装置は、前記毛管チャネルを通る前記微生物のサンプルの一部のパルスフローを生成するように動作し、パルスは、力が再び変化する前に流体が定常状態に到達する時間よりも短い期間又はその付近の時間内に前記フローの速度分布を変化させる、請求項1318のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記毛管チャネルを通って流れる前記微生物のサンプルの一部のフローに対する臨界ウォームスリー数が1より大きい、請求項1319のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記微生物は、葉緑体を含み、
前記検出装置によって提供されるデータに基づいて、前記葉緑体の光化学系IIの効率を決定するステップをさらに含む、請求項1320のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法のステップは、請求項1~12のいずれか1項に記載の装置によって実行される、請求項1321のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル、特に、サンプルの個々のメンバーからの光学放射の検出を可能にする流動微生物を集束するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物の検出と分析は様々な技術分野で重要である。パルス振幅変調(PAM)蛍光光度計、フローサイトメータ及び光学顕微鏡技術は、生物学的微生物(微細藻類、細菌等)の分析のための蛍光標識と組み合わせて広く使用されている。しかしながら、上述の特定の技術は、測定可能な相補的生物学的パラメータのサブセットの正確な読み取りを提供するに過ぎない。例えば、フローサイトメータは、現在の生物の信頼できる計数及び生存率読み取りを提供し、PAM蛍光光度計は、正確な反応曲線、光合成作用及び生物学的ストレスレベルを提供する。光学顕微鏡は、上記のパラメータの広い範囲を測定することを可能にするが、非常に低濃度の微生物を含むサンプルを分析するためには用途が限られてしまう。それらは、全サンプル体積と比較して分析される視野が小さいため、定性的であまり代表できでない分析しか提供しない。さらに、光学顕微鏡法は実験室での研究には適しているが、現場での測定には適していない。例えば、光学顕微鏡は、工業プラントにおいて、並びに環境中の水、食品及び飲料の品質試験の文脈においては、用途が限られている。このため、上記の装置が提供するパラメータの範囲を定量的かつ代表的に分析して測定することが可能な技術が求められている。さらに、同時に、現場測定のための携帯型ソリューションが必要である。
【0003】
さらに、PAM蛍光光度計における微生物の懸濁液の使用は、高濃度のサンプルを読み取り及び/又は処理しながら、均質なサンプルを維持するという問題を引き起こす。濃度は、数微生物/mlから10微生物/mlまで変化し得る。一方で、測定によって得られた結果の精度は、原理的に、比較的高濃度の微生物によって影響され得る。他方で、低濃度の微生物では、比較的大きな(直径10μm以上の)微生物が急速に堆積するため、測定が困難である。いくつかのPAM蛍光光度計は、エミッタ検出器容積内にある間、キュベット内でサンプルを撹拌するためのオプションの付属品と共に市販されている。撹拌手段は、蛍光測定の時間経過中に細胞が懸濁液から沈降することを防止するために役立ち得る。しかしながら、光信号に対してマスキング効果を生じる高濃度サンプルを測定する際の複雑さは、この方法では解決されない。
【0004】
PAMアプローチは、蛍光収率を修正するために、3000から10000ミリモル光子m-2-1の光パルスを使用する。高速反復率(FRR)PAMは、420000ミリモル光子m-2-1の短いが強い光フラッシュ中に生じる蛍光放射の変化を測定する。PAM及びFRR PAM蛍光光度計の両方を使用して、蛍光生物学的パラメータの範囲を決定し得る。
【0005】
リアルタイムで異なる光パルスから生じる蛍光レベルを測定することにより、詳細な光化学の活性測定が可能である。光子から吸収されたエネルギーは、光化学、蛍光、熱又は他のエンドポイントに伝達され得る。したがって、光化学が高い場合、蛍光は低くなる。例えば、Fは、全ての反応中心が開いている場合(主に光化学)の暗所での蛍光収率を示し、Fは、全ての反応中心が閉じている場合(主に蛍光)の蛍光収率を示し、(F-F)/Fは、光合成プロセスにおいてエネルギーが使用される吸収光子の割合として定義され得る光化学系IIの効率を示す。
【0006】
微生物が毛細管チャネル内を流れるとき、チャネルはその寸法と形状に関して適切に設計されなければならない。特に、流動特性は、シース・フロー集束によってさらに制御し得る。粘性流体の境界層効果は境界層シースフローと比較的独立した比較的理想的な中心フローを生じる。毛管チャネル内の慣性粒子集束は、チャネル寸法、チャネル形状、及び毛管チャネルを通る流量の適切な選択によって達成し得る。
【0007】
それぞれニュートン流体と非ニュートン流体を用いた慣性及び弾性慣性マイクロ流体は、毛管チャネルと細胞集束の中心においてさらに効率的な単一粒子フローを提供することが可能であり、これは、処理量を犠牲にして、毛管における最適感度と精度を保証する。慣性マイクロ流体による集束は、レイノルズ数が約Re=1-100のときに流体中に存在するせん断揚力と壁相互作用力の間のバランスに依存する。弾性慣性マイクロ流体は、中程度の低流体速度でのみ直線チャネルの中心にさらなる単一流集束を提供し得る。
【0008】
弾性慣性マイクロ流体は、生物学的又は合成ポリマー粉末を含む添加剤によって調製し得る。例えば、500ppmのポリエチレンオキシド(PEO)溶液を使用して、粒子をチャネルの中心で単一流に集束させることができる(存在している隣接する粒子を流動させることなく、粒子が順々に流動する)。原理的には、集束は、流速、レイノルズ数及び粒子サイズとチャンネル直径の比に依存する特定の条件下で達成される。PEO濃度を増加させると、毛管チャネルにおける比較的高い圧力降下のために、わずかに集束が改善され、流速がさらに減少する。
【0009】
さらに、データ分析のための機械人工知能法を、上記の装置によって提供される検出された信号に適用し得る。このアルゴリズムは、教師なし、強化、及び教師あり学習技術であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、サンプル、特に、微生物のサンプルの個々のメンバーからの光学放射を検出するために、特定の領域に流れる微生物を集束させることを可能にし、これは上記の問題を緩和し、特に、微生物を含むサンプルからの複数の生物学的パラメータを正確かつ定量的に測定及び分析することを可能にする携帯型装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、サンプルの個々のメンバーからの光学的(例えば、蛍光、散乱)放射(光学信号)の検出のために微生物のフローを集束させる装置を提供することによって、上記の問題に対処する(ただし、個々のメンバーからの蛍光及び/又は散乱放射の検出だけに限定されない)。本装置は、サンプルの個々のメンバー(微生物)に対して第1の方向に光を発するように構成される光源と、第1の方向とは反対の第2の方向に放射され、かつ光源から放射された光によって励起された個々のメンバー(微生物)からの光学放射(光信号)を検出するように構成される検出装置とを含む光学装置を備える。さらに、本装置は、微生物のサンプルを貯蔵するように構成される貯蔵リザーバ/タンクと、貯蔵タンク内の微生物のサンプルを循環させるように構成されるポンプ装置、例えば、循環ポンプとを含む流体装置を備える。ポンプ装置は、圧力が再び変化する前に流体が定常状態に到達するであろう時間よりも短い期間又はその付近の時間に、フローの速度分布を変化させるフローの圧力変動を生成するように構成され得る(圧力変動/パルスの態様の詳細については後述する)。換言すれば、ポンプ装置は、毛管チャネルを通る微生物のサンプルの一部のパルスフローを生成するように構成され得る。
【0012】
光信号放射を検出する所与の時間に検出装置の第1の視野に個々のメンバーの1つのみが存在するように、毛管チャネルが、サンプルの個々のメンバーのフローを可能にするように構成される貯蔵タンク内に配置される。視野は、励起光が放射される毛管チャネルの特定の部分に対応する。視野のサイズは、サンプルの典型的な微生物の直径の2倍未満であり得る。毛管チャネルは、第1の方向に垂直な方向に延在し得る。媒体中の懸濁粒子は、少なくとも1つの約100μm以下の断面寸法及び約10mm以上の縦方向寸法を有し得る毛管チャネルに沿って流動させることができる。
【0013】
例えば、励起光は、毛管チャネルの縦軸の周りに位置し、かつこの縦軸の方向に十分に限定された小さな励起領域に集束され、それによって単一の微生物のみが所与の時間にその領域に存在し得る。この目的のために、光学装置は、光源によって放射された光を毛管チャネル内に位置する小さな励起領域上に集束させるように構成及び配置されるいくつかのコリメーション光学系を有し得る。検出装置によって提供されるデータを分析するデータ処理手段が設けられてもよい。検出された蛍光事象及び散乱事象は、固有の蛍光散乱特徴を示す事象の集団のみを適切に計数して、他の事象を廃棄するために、後処理において相関させることができ、このようにして、例えば、気泡、破片又は類似の人工物によって生成される偽陽性計数を大幅に減少させることができる。このように特定された装置は、サンプルの個々の微生物からの複数の生物学的パラメータを正確に測定及び分析することを可能にする。
【0014】
装置は、検出された光学放射のパラメータを抽出するためのデータ処理装置及びアルゴリズムを含んでもよく、抽出されたパラメータの同時分析は、装置の動作の任意の制御パラメータ、例えば、圧力変動、流量等を調整することを可能にする。
【0015】
一実施形態によれば、検出装置は、貯蔵タンクに貯蔵された微生物のサンプルの一部から第3の方向に放射された光学放射を、第1の視野とは異なる第2の視野で検出するようにさらに構成される。第2の視野は、第1の視野よりも大きく、第1の視野によってカバーされる領域とは異なる貯蔵タンク内の領域、特に中央領域をカバーする。この実施形態では、異なる視野を達成するためにいくつかの光学系が提供される。例えば、本装置の光学装置は、光源によって放射された光を毛管チャネル内に集束させるように構成及び配置される第1のレンズと、光源によって放射された光を、毛管チャネルとは異なる貯蔵タンクの領域、特に貯蔵タンクの中央領域に集束させるように構成及び配置される第2のレンズとを備えてもよい。
【0016】
光学装置は、光ビームを連続的に放射するように、又は光パルスを放射するように構成され得る。特に、光学装置は、例えば、数百MHzの周波数までPAM蛍光測定又はFRR PAM蛍光測定を行うように構成され得る。したがって、検出装置は、DCから数百MHzまでの帯域幅を有するように構成され得る。
【0017】
高感度を達成するために、検出装置に顕微鏡対物レンズを設けてもよい。したがって、装置の光学装置は、検出されるべき光信号放射を検出装置の検出面に向けて誘導するように構成及び配置される顕微鏡対物レンズ又は他のコリメーション光学系をさらに備えてもよい。
【0018】
個々の微生物が毛管チャネル内の視野を通過する間の生物学的特徴の検出を可能にするために、毛管チャネルを通る個々の微生物のフローを適切に制御し得る。さらに、毛管チャネルの幾何学的形状及び寸法は、サンプルの個々のメンバーの1つが毛管チャネル内の第1の視野/励起領域にある間に、毛管チャネルを通る個々のメンバーのフローが、生物学的特徴の検出を可能にするように選択し得る。
【0019】
循環ポンプ又は任意の他の追加のポンプ装置は、特に、フロー速度分布によって課される定常状態慣性力による毛管の中心線からの微生物の後の拡散を最小化する毛管チャネル内の流体力学的速度分布の操作を可能にするパルスフローを有するように、変調方式及び能動的補正で、流量制御を可能にする。一実施形態では、フロー装置は、流体ポンプ又は流体ポンプの組み合わせ、例えば、双方向PID制御蠕動ポンプ及びマイクロドーズ双方向ポンプを備えてもよい。
【0020】
パルス圧力により調和振動する流速が生じる。物理的観点から、流体フローは粘性抵抗と慣性の両方を経験し、後者は脈動によるものである。これは、粘性抵抗のみが存在する定常状態のポアズイユ放物線速度分布とは対照的である。
【0021】
無次元ウオマスリー数
【0022】
【数1】
【0023】
は、駆動圧力の瞬時変化に応答して流体が定常状態に到達する慣性緩和時間として解釈されてもよく、ここでhはチャンネルの関連する水力高さ、ωは振動の角周波数、νは動粘性係数である。臨界ウオマスリー数は、αc=α/γによって与えられ、ここでγは2.4048に等しい一次ベッセル関数の1乗根であり、αは圧力振動の変化率に応答して流体緩和時間を測定する。αc<1の場合、流体は常に、圧力の変化が起こる前に定常状態に到達し、流体のフローは準定常である。αc>1の場合、流体は圧力が変化する前に定常状態に到達せず、慣性が重要になる。αc>1の場合、圧力勾配が反転しても、フローには依然として反対方向に作用する慣性がある。結果として、圧力勾配によって慣性の方向が変わるまでには、しばらく時間がかかる。これにより、流体運動と圧力勾配との間に位相シフトが生じる。しかしながら、閉込め壁では、非滑り境界条件は、壁に近い流体要素が閉込めの中心の流体要素より小さい位相シフトを有するように、対応して低い慣性で非常に低い速度を強制する。αが約5以上では、壁に近いフローと中心のフローとの間に完全なπ位相シフトが観察され、「流体スキン効果」又は環状領域を形成する。この領域の幅は、運動量の拡散係数と特性時間ω-1から求められ得る運動量拡散長λによって、
【0024】
【数2】
【0025】
と与えられる。この環状領域における放物線状速度分布は、αc>1の場合、ここでのフローが準静的のままであるという概念を支持する。一実施形態によれば、毛管チャネルを通って流れる微生物のサンプルの一部のフローに対する臨界ウォームスリー数は1より大きい。
【0026】
さらに、毛管チャネル手段を通る微生物のフローに作用する弾性力は、粘弾性ポリマーを添加することによってさらに制御され得る。したがって、本装置の流体装置は、流体装置の貯蔵タンクに貯蔵された又は供給されたサンプルに、所定投与量の粘弾性ポリマーを供給するように構成される手段を備えてもよい。
【0027】
光源は、コヒーレントレーザ光、例えば、レーザダイオード又はインコヒーレント光、例えば、LEDを含み得る。あるいは、光源は、何らかの他の装置を含んでもよい。適切な励起波長を提供するために、光源としてLED装置が使用される場合、光源と貯蔵タンクとの間に励起フィルタが配置されてもよい。光学装置の検出装置は、例えば、高感度光電子増倍管検出器、APD、光子計数器(例えば、多画素光子計数器)、又は相補型金属酸化物半導体、CMOS、sCMOS、eeCMOS、イメージセンサ装置、又はCCDセンサ装置であってもよい。光学装置は、検出装置によって提供されるデータを処理するためのプログラム可能なデータ処理手段をさらに備えてもよい。
【0028】
特定の実施形態によれば、微生物は葉緑体を含み、本装置は、検出装置に接続され、かつ光源及び検出装置の励起によって提供されるデータに基づいて葉緑体の光化学系IIの効率を決定するように構成されるデータ処理手段を備える。本発明の装置は、サイトメータとして、特に、クロロフィル活性を調査又は分析するための装置として機能し得る。
【0029】
さらに、微生物のサンプルの個々のメンバーからの光学的(例えば、蛍光又は散乱)放射(光信号)を検出する方法を提供する。この方法は、微生物のサンプルを調製するステップと、単一の微生物のみが所与の時間に毛管チャネルの中央部分(特に、毛管チャネルの縦軸の中心)に存在するように、毛管チャネルを通る微生物のサンプルの一部を誘導するステップと、単一の微生物からの光学放射を励起するために、所与の時間に毛管チャネルの中央部分のみに励起光を第1の方向に放射するステップと、励起された光学放射を検出装置によって検出するステップであって、励起された光学放射は、所与の時間に単一の微生物によって第1の方向と反対の第2の方向に放射されるステップとを含む。励起光は、例えば、PAM光源によって、パルス変調方式、特に、パルス振幅変調方式で放射され得る。中央領域は、所与の時間に1つより多くの微生物がその領域内に存在することができないように、全ての寸法が決定され得る。
【0030】
微生物のサンプルは、貯蔵タンク内に貯蔵されてもよく、この貯蔵タンクは、毛管チャネルを備えており、ポンプ装置、例えば、循環ポンプに動作可能に接続されており、微生物のサンプルを調製することは、貯蔵タンク内に貯蔵する前のサンプルに又は貯蔵タンク内に貯蔵されたサンプルに合成ポリマー粉末を添加することを含み得る。
【0031】
一実施形態によれば、この方法は、個々の微生物が毛管チャネル内の第1の視野を順々に通過する間の生物学的特徴の検出に限定されるものではなく、(タンクの照射部分に位置する)微生物のサンプルの一部からの別の光信号放射を励起するために毛管チャネルが配置されていない貯蔵タンクの一部、特に中央部分に別の励起光を第1の方向に放射することを含む。この部分は複数の微生物を含んでいる。また、この実施形態によれば、方法は、検出手段によって、微生物のサンプルの一部に励起された他の光学放射を検出するステップを含み、その部分に励起された他の光学放射を第1の方向と反対の第2の方向に放射させる。
【0032】
本発明の方法の上記の実施形態は、葉緑体の調査に使用されてもよく、検出装置によって提供されるデータに基づいて、葉緑体の光化学系IIの効率を決定することを含み得る。
【0033】
一実施形態によれば、ポンプ装置は、毛管チャネルを通る微生物のサンプルの一部のパルスフローを生成するように動作する。
【0034】
さらに、一実施形態によれば、毛管チャネルを通る微生物のサンプルの一部のフローに対する臨界ウォームスリー数は1より大きい。
【0035】
本発明の方法の上述の実施形態は、上述の本発明の装置の実施形態の1つによって実行し得る。本発明の方法及び本発明の装置の上記の実施形態の全てにおいて、検出されたデータは、人工知能アルゴリズム(例えば、機械学習技術)によって処理し得る。後処理は、(検出器内で取得された蛍光及び散乱事象からの)光信号を分析し、(事象の振幅及び持続時間に基づいて)それらを光学的特徴に翻訳し、モデルの訓練を生成及び実行し、獲得された信号を特徴づけて、標的微生物集団のモデルと一致させ、サンプル中の(標的微生物の異なる)偽人工物の特徴からそれらを区別し、偽信号集団を廃棄し、偽陽性計数を最小化することを可能にすることを目的としている。上述の方法のステップは、上述の実施形態の1つによる装置によって実行し得る。
【0036】
図面を参照して本発明の追加の特徴及び利点を説明する。本明細書では、本発明の好ましい実施形態を説明することを意図して添付の図面を参照する。このような実施形態は、本発明の全範囲を表すものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の例示的な実施形態による、流動する粒子を集束し、サンプルの個々のメンバーを光学的に調査ためのシステムを概略的に示す図である。
図2】2つの異なるパルスフロー条件に対する流体フロー速度分布の図解である。
図3】液体溶液中の異なるサイズのポリスチレン微小球粒子の検出の実験値(検出電圧のピーク値のヒストグラム)を示すグラフの集合である。バーは発生頻度を示す。
図4】本発明の一実施形態による、微生物のサンプルの個々のメンバーからの光学放射を検出する方法を示す。
図5】光源及び検出装置を含む光学装置を備え、サンプル貯蔵タンクを含む流体装置をさらに備える装置を概略的に示しており、ここで、毛管チャネルが本発明の実施形態に従って形成される。
図6】本発明の一実施形態による方法による光化学系II活性の調査を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、サンプルの個々のメンバーからの光学放射(光信号)を正確に検出するために微生物を集束することを可能にする装置を提供する。図1は、パルス駆動圧力(図1の110参照)を有するそのような装置100及び光照射/検出装置120の実施形態を示す。パルスレジームを使用して流体力学的集束を達成するためには、 αは、1より大きくなければならず、チャネル内の乱流の発生を大幅に回避するために、脈動の少なくとも1つの周期がチャネル内を伝搬しなければならない。パルスの周期Tは、パルス周波数で除算された線形フロー速度に等しい。
【0039】
例えば、装置100では、チャネル102の長さは約50mmであり、正方形断面の寸法は75μmである。速度0.1メートル/秒、パルス周波数10Hzの線形液体フロー110を適用し得る。この場合、ウォームスリー数は4.85であり、臨界ウォームスリーは約2.02であり、伝播する脈動の周期は10mmである。さらに、毛管チャネルへの入口104は、毛管チャネルへの乱流遷移を減少させることを可能にする円錐形を有し得る。
【0040】
適用されたフロー圧力110は、Aで示されるベースライン圧力レベルで流体が正の総輸送量を有することを可能にする。所与のパルス周波数で、負のレベルBで示される方向に圧力が急速に反転する。しかしながら、全圧力サイクルにわたって、正の流体フロー運動量が維持される。
【0041】
生成されたフロー速度分布106は放物線状ではなく、毛管チャネル内のフロー速度分布102の中心に窪みが形成される。速度分布については、以下でさらに説明する。毛管チャネルの中心に微生物の単一のフローが流れており、これは光学的技術によって微生物を個々に検出することを可能にする。特に、光学装置120は、狭い照射及び検出スポット122を生成する手段を有する。
【0042】
したがって、毛管チャネルにおける振動的又はパルス状のフローレジーム(層流であり、非圧縮性であると推定される)は、微生物をチャネル毛管の中心に集束させることを可能にする。
【0043】
特に、図2において、物理的流動現象は、最初に、α=1である非集束微生物レジーム200について説明される。チャネル内の圧力差によって駆動される非滑り境界条件を有する液体の軸方向速度分布が、符号202で示されている。速度分布202は、ポアズイユ放物線を表している。圧力の変化が起こる前に、流体は常に定常状態に到達する。速度分布により、粒子はチャネルの中心の半高さ断面の約0.6倍の位置に配置される。次に、図2において、α=2.5である集束微生物レジーム210についての物理的観察が示される。速度分布に及ぼす慣性の影響は、ポアズイユ放物線212からの偏差によってα>1で明瞭に観測される。準定常環状領域の幅を与える拡散長
【0044】
【数3】
【0045】
(υは流体速度を示し、ωはパルス周波数を示す)が示されている。流体は、圧力が変化して慣性が重要になる前には定常状態に到達しない。放物線からの速度分布の偏差により、粒子をチャネルの中心の周りに集束させることが可能になる。
【0046】
説明のために、図3は、実験的に測定され、電圧ヒストグラムの形で提示されたデータを示す。横軸(スケーリングは代表的ではない)は、検出された光パルスの高さの電圧ビンを表す。垂直軸は、最も可能性の高い電圧値が明確に識別されるように、発生の正規化された周波数を表す。参照符号310は、装置100を用いて得られたパルスフローレジームにおける50μm粒子ビーズのヒストグラムを示す。参照符号320は、非パルスフローレジームにおける50μm粒子ビーズのヒストグラムを示す。参照符号330は、装置100を用いて得られたパルスフローレジームにおける10μm粒子ビーズのヒストグラムを示す。参照符号340は、非パルスフローレジームにおける10μm粒子ビーズのヒストグラムを示す。参照符号350は、装置100を用いて得られたパルスフローレジームにおける2μm粒子ビーズのヒストグラムを示す。参照符号360は、非パルスフローレジームにおける2μm粒子ビーズのヒストグラムを示す。
【0047】
図4に示す装置400は、微生物Mを含むサンプルSを提供するための流体装置420及び光学装置410を含む。光学装置410は、例えば、レーザ装置を含む光源412を備える。一般に、光スペクトルの紫外域から赤外域までの波長は、それぞれの特定の用途に必要な励起波長に依存する。数mWの出力電力が選択されてもよい。
【0048】
光源412から第1の方向に放射された光は、レンズ414によりコリメーションされる。また、サンプルSに励起された蛍光放射を検出するために検出装置418が設けられている。検出装置418は、第1の方向とは反対の第2の方向に放射される蛍光放射又は散乱放射を検出するように配置されている。検出装置418は、高感度フォトダイオード(APD、光電子増倍管、多画素光子計数器)、CCDセンサ素子、イメージセンサ素子のいずれであってもよく、干渉フィルタ又は/及び吸収フィルタを備えていてもよい。
【0049】
サンプルSを提供する流体装置420は、円形又は正方形の断面の小さな管であり、プラスチック、ガラス、又は(UV光用)溶融石英材料を含んでもよく、チャネルの縦軸に沿って流体が流れることができるように設計され得る毛管チャネル424を含む。毛管チャネル424は、例えば、約100μmの関連する液圧高さを有し得る。
【0050】
循環ポンプ426の動作により、装置100と同様に動作し、サンプルSを試験するためのサンプルSの連続的又はパルス状のフローを提供し得る。なお、循環ポンプ426は、サンプル全体の一部又はサンプル全体に対して動作し得ることは言うまでもない。
【0051】
光学装置410のコリメーションレンズ414は、光学装置410の光源412から放射された光を毛管チャネル424、例えば、毛管チャネル424の中央部分に集束する。毛管チャネル424は、第1のコリメーションレンズ414の光軸に対して実質的に垂直な方向に延びていてもよい。中央部分は、光学装置410の検出装置418の(例えば、直径数ミクロンの)狭い視野に対応する。
【0052】
さらに、毛管チャネル424を通る微生物Mのフローは、視野内の所与の時間に検出された1つの微生物が、その微生物からの所望の生物学的特徴を検出装置418に検出させるために、視野内で十分に長く(例えば、数百μs)留まるように制御される(以下の説明も参照)。これにより、サンプルS中の微生物Mの濃度に関係なく、個々の微生物の生物学的特徴を検出することができ、検出装置418による検出結果から、何らかのデータ処理手段によって、複数のパラメータを導出し得る。微生物からの蛍光放射は実際の生物学的活力に依存する。特に、パラメータの例は、反応曲線、光合成作用及び生物学的ストレスレベルを含む。
【0053】
装置400の光学装置410は、例えば、数百MHzの周波数までPAM蛍光測定又はFRR PMA蛍光測定を行うように構成され得る。この構成において、装置400は、特に光合成の調査に適している。例えば、植物プランクトンの葉緑素から生じる蛍光収量を調べることによって、葉緑素細胞の他の内部過程に関係する多くの特性を決定し得る。葉緑素細胞(葉緑体)の光合成に関するPAM蛍光測定研究の文脈において、検出装置418は、2つのレベルの光、すなわち、低レベルと高レベルに関する情報を収集し得る。
【0054】
図5は、本発明の一実施形態による、微生物のサンプルの個々のメンバーからの光学放射を検出する装置を示す。複数の微生物を含むサンプルを調製し、リザーバ510に保存する。サンプルの調製は、そのリザーバ内で部分的に行ってもよい。微生物のサンプルの調製は、例えば、濃縮フィルタ及び、例えば、酸、凝集剤等を含む適切な化学物質によって、生サンプルを濾過及び/又は精製することを含み得る。高分子膜を有する使い捨て限外濾過装置の形態の粒子濃縮器は、サンプルを調製するために生物学的生サンプルの濃縮及び/又は精製に使用され得る。
【0055】
調製されたサンプルの一部は、リザーバ内に形成された毛管チャネル520に供給される。毛管チャネル520の一部には、毛管チャネル520に向けて励起光を発する光源(例えば、レーザ)からの光530が第1の方向に照射される。励起光は、例えば、レンズを含むいくつかのコリメーション光学系によって、毛管チャネル520の一部に集束される。
【0056】
励起光は、光源によって照射される毛管チャネル520の励起領域に存在する微生物からの光学放射を引き起こす(その自己蛍光特性のおかげで、又は蛍光色素を有する試薬で標識されているため)。毛管チャネル520及び毛管チャネルを通るフローは、複数の微生物のうちの単一の微生物のみが、所定の検出時間に光源によって照射される毛管チャネル520の部分、すなわち、励起領域に存在するように設計される。所定の検出時に、単一の微生物の励起光学放射(光信号)が検出装置540によって検出される。光学放射は、いくつかのコリメーション光学系、例えば、顕微鏡対物レンズを介して検出し得る。検出装置540で検出された光学放射は、励起光の第1の放射方向とは反対の第2の方向に放射される。次いで、検出された光学放射から生物学的パラメータを導出し得る。
【0057】
既に述べたように、調製されたサンプルの一部は、リザーバ510内に形成された毛管チャネル520に供給される。毛管チャネル520を通るフローは、検出装置540の所定の時間に光源によって照射される毛管チャネル520の部分に複数の微生物のうちの単一の微生物のみが存在するように制御されるべきである。加えて、このフローは、微生物からの意味のある生物学的特徴の検出を可能にするのに十分に遅いものでなければならない。このようなフローを達成するために、循環ポンプは、サンプルの一部を毛管チャネル520に供給するために適切に動作するように制御される。
【0058】
特に、測定は、PAM技術に基づいて行うことができる。例えば、クロロフィル細胞の光合成の調査は、このような動作で行うことができる。この文脈において、図6は、検出された生物学的特徴の2つの場合についてのPAM測定による光学的調査の例示的な時間シーケンスを示しており、それぞれ、Fは、全ての反応中心が開いている場合(主に光化学)の暗所での蛍光収量であり、Fは、全ての反応中心が閉じている場合(主に蛍光)の蛍光収量に対応する。
【0059】
図5に示す装置500の動作において、変調励起光(ポンプ波)は、検出装置の視野に対応する毛管チャネルの(図6の中央列に示される)標的部分/励起領域にある特定の単一の微生物(クロロフィル細胞)に放射され得る(図6の左列を参照)。F及びFが交互するポンププローブシーケンスが、図6の両方の行(左列)に示されている。図示の例では、全光学プローブシーケンスは、約500μsの持続時間を有してもよく、照射と同時に生物学的特徴を観察するために必要な検出時間も約500μsである。さらに、プローブ光学ビームの直径及び視野は約50μmである。毛管チャネルを通る個々の微生物の線形流速は、例えば、0.1m/sに適切に調整し得る。粘弾性ポリマーを使用することにより、流体中で毛細管チャネルの中心に微生物を集束させることができる。
【0060】
微生物(クロロフィル細胞)の励起蛍光放射から検出される応答/生物学的特徴を図6の右列に示す。生きた生物が検出された場合、光化学効率ΦII=1を示す特徴が観察され(図6の上段)、一方、死んだ生物が検出された場合、光化学効率ΦII=0(FとFのレベルが等しい)を示す特徴が観察される(図6の下段)。サンプル中に存在する生物は、それらが検出装置の毛管チャネル/視野の上記の部分を通過するときに、個々に計数し得る。
【0061】
前述の全ての実施形態は、制限として意図されるものではなく、本発明の特徴及び利点を示す例としての役割を持つ。上述の特徴のいくつか又は全ては、異なる方法で組み合わせることもできることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6