(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20230509BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230509BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 303
G03G21/00 386
(21)【出願番号】P 2022024783
(22)【出願日】2022-02-21
(62)【分割の表示】P 2018017982の分割
【原出願日】2018-02-05
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】三文字 美憲
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-055700(JP,A)
【文献】特開2012-103649(JP,A)
【文献】特開2012-189680(JP,A)
【文献】特開2007-057863(JP,A)
【文献】特開2017-058655(JP,A)
【文献】特開2016-114816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に転写する現像剤を保持する像担持体と、
前記像担持体との間に前記用紙を通過させる転写位置を形成する転写部材と、
前記転写位置において前記像担持体から前記用紙へ現像剤を転写するための転写電界を印加する転写チャージャと、
前記転写位置における
前記転写部材と用紙が通過する位置とを含む区間の電圧値を計測する電圧検知器と、
湿度を検出する湿度センサと、
前記転写チャージャを定電流制御として前記像担持体に形成した転写調整用のパターンを転写した用紙が前記転写位置
に用紙がある場合の第1の電圧値と前記転写位置に用紙が無い場合の第2の電圧値とを前記電圧検知器で計測し、
前記第1の電圧値と前記第2の電圧値との差が前記湿度センサが検知する湿度に応じた許容範囲に入るように前記転写チャージャを制御するための設定値を調整するプロセッサと、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記転写調整用のパターンは、使用する用紙幅に対し、所定幅でベタ帯と白地帯とを所定間隔で形成したパターンであり、
前記プロセッサは、用紙の白地帯とベタ帯とで計測した電圧値の中央値と用紙が無い場合の電圧値との差が前記
湿度センサが検知する湿度に応じた許容範囲に
入るように前記転写チャージャを制御するための設定値に補正する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記
第1の電圧値と前記第2の電圧値との差が前記許容範囲の範囲外である場合に転写調整の実施を推奨するメッセージを表示器に表示し、転写調整の実行が指示された場合に前記転写チャージャを制御するための設定値を調整することを実行する、
請求項1または2の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、像担持体から転写ローラなどの転写部材を用いてトナー像を用紙に転写する転写制御としては、定電圧制御と定電流制御とが知られている。定電圧制御では、転写部材の環境抵抗変動で、過大抵抗による転写電流不足や過小抵抗による異常放電等の問題が生じることがある。また、定電流制御では、像担持体と転写部材とが接する箇所からの漏れ電流によって電流不足による転写不良が発生することがある。これらの問題を解決するため、転写位置に用紙が存在しない状態で検知した転写部材の抵抗値に応じて適正な転写電流が得られるような電圧を印加する方式がある。この方式では、用紙の種類ごとに予め設定した用紙の抵抗値に応じて出力を補正する。
【0003】
しかしながら、予め設定した用紙の抵抗値(設定値)はあくまで推定値であるため、実際の用紙の抵抗値が設定値よりも大きく異なることがありうる。用紙の抵抗値が設定値と異なると、転写制御において実際の出力とのアンマッチが生じるため、転写電流の不足または過多となって不具合が生じる可能性がある。従来の画像形成装置では、転写制御の設定をサービスマンが手動で実施する必要があり、用紙の抵抗値などの設定をユーザ自身で変更するのが困難であるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するために、簡単に転写制御の調整を行うことができ、良好な転写制御を実現できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、画像形成装置は、像担持体と転写部材と転写チャージャと湿度センサと電圧検知器とプロセッサとを有する。像担持体は、用紙に転写する現像剤を保持する。転写部材は、像担持体との間に前記用紙を通過させる転写位置を形成する。転写チャージャは、前記転写位置において前記像担持体から前記用紙へ現像剤を転写するための転写電界を印加する。電圧検知器は、前記転写位置における前記転写部材と用紙が通過する位置とを含む区間の電圧値を計測する。湿度センサは、湿度を検出する。プロセッサは、前記転写チャージャを定電流制御として前記像担持体に形成した転写調整用のパターンを転写した用紙が前記転写位置に用紙がある場合の第1の電圧値と前記転写位置に用紙が無い場合の第2の電圧値とを前記電圧検知器で計測し、前記第1の電圧値と前記第2の電圧値との差が前記湿度センサが検知する湿度に応じた許容範囲に入るように前記転写チャージャを制御するための設定値を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るデジタル複合機の構成例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るデジタル複合機における制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るデジタル複合機による印刷処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係るデジタル複合機が設定する普通紙に対する抵抗値(電圧値)の許容範囲の例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るデジタル複合機が用紙の抵抗値を計測するための用紙に形成する転写調整用のパターンの印刷例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら各実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る画像形成装置としてのデジタル複合機(MFP)1の構成を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、デジタル複合機1は、プリンタ2、スキャナ3およびシステム制御部4を有する。
プリンタ2は、記録媒体としての用紙に画像を印刷する。実施形態に係るデジタル複合機1のプリンタ2は、電子写真方式により画像を形成するプリンタである。スキャナ3は、原稿の画像を読取る装置である。スキャナ3は、原稿の画像を光学的に読み取って画像データに変換する。
【0009】
システム制御部4は、デジタル複合機1における各部を制御する。システム制御部4は、プロセッサがプログラムを実行することにより各種の処理を実現するように構成する。たとえば、原稿の画像を用紙にコピーする場合、システム制御部4は、スキャナ3で原稿の画像を読取り、プリンタ2で原稿の画像を用紙に印刷する。また、デジタル複合機1は、
図1には図示しない操作パネル5(
図2参照)を有する。操作パネル5は、案内を表示したり操作指示を入力したりするためのユーザインターフェースである。
【0010】
以下、プリンタ2の構成について説明する。
図2に示すように、プリンタ2は、露光装置11、感光体ドラム(像担持体)12、転写ローラ(転写部材)13、定着装置14および搬送系15などを有する。露光装置11は、像担持体としての感光体ドラム12上に潜像を形成する。たとえば、露光装置11は、レーザ光を発光する発光器およびレーザ光で感光体ドラム12上を走査するためのポリゴンミラー等を含む光学系などを有する。
【0011】
感光体ドラム12は、トナー像が形成される像担持体である。たとえば、感光体ドラム12は、回転自在に設けられた円筒状のドラムである。感光体ドラム12は、露光装置11からのレーザ光によって周面上に静電潜像が形成される。すなわち、露光装置11は、画像データに応じて発光するレーザ光で感光体ドラム12周面上を走査する。これにより、感光体ドラム12の周面上には所望の画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0012】
感光体ドラム12の近傍には、帯電チャージャ21、現像器22、剥離部24、クリーナ25、除電器26などが設けられる。実施形態において、感光体ドラム12、帯電チャージャ21、現像器22、剥離部24、クリーナ25および除電器26は、画像形成部(画像形成機構)20を構成するものとする。
【0013】
帯電チャージャ21は、感光体ドラム12の周面を所定の電荷に帯電させる。帯電チャージャ21は、感光体ドラム12の周面において帯電させた領域に露光装置11からのレーザ光が照射されるように配置される。つまり、感光体ドラム12の周面は、帯電チャージャ21が帯電した領域に露光装置11からのレーザ光が照射されて静電潜像が形成される。現像器22は、感光体ドラム12周面上に形成された静電潜像に現像剤としてのトナーを供給して現像する。これにより、感光体ドラム12の周面上には、トナー像が形成される。
【0014】
感光体ドラム12と転写ローラ13とは、感光体ドラム12の周面上のトナーを用紙Pに転写する転写位置を形成する。感光体ドラム12は、転写ローラ13とともに回転して転写位置に用紙Pを通過させる。感光体ドラム12の周面のトナーは、後述する転写ローラ13と感光体ドラム12の周面との間(転写位置)を通過する用紙Pに転写される。
【0015】
剥離部24は、転写位置を通過した後の用紙Pを感光体ドラム12から分離させる。剥離部24は、剥離チャージャおよび剥離爪などで構成する。クリーナ25は、感光体ドラム12の周面に残留したトナーを清掃する。除電器26は、感光体ドラム12の周面を除電する。感光体ドラム12の周面は、クリーナ25および除電器26によって残留したトナーが除去されて除電された状態で帯電チャージャ21に対向する位置に至る。
【0016】
転写ローラ13は、感光体ドラム12の周面と対向する位置に回転自在に設ける。転写ローラ13は、感光体ドラム12の周面と接する位置において用紙Pにトナーを転写する転写位置を形成する。転写ローラ13は、感光体ドラム12の周面との間に転写電界を形成する転写チャージャ13aを有する。転写チャージャ13aは、定電流制御または定電圧制御で転写位置における転写電界を制御する。転写ローラ13と感光体ドラム12の周面との間(転写位置)を通過する用紙Pは、転写電界によって感光体ドラム12の周面からトナーが転写される。
【0017】
また、プリンタ2は、転写制御に用いるセンサとして、電圧検知器61(
図2参照)および温湿度センサ62(
図2参照)などを有する。電圧検知器61は、転写位置における電圧値を検知する。温湿度センサ62は、機体の使用環境としての温度および湿度を検知する。たとえば、転写チャージャ13aが定電流制御である場合、電圧検知器61が検知する電圧値は転写位置における抵抗値を示す値となる。また、プリンタ2は、転写チャージャ13aが定電圧制御である場合に転写位置における電流値を検知する電流検知器を設けても良い。
【0018】
また、搬送系15は、プリンタ2内において、カセット31から転写位置を通って定着装置14へ至る搬送路において用紙Pを搬送する。プリンタ2は、用紙Pを収納するカセット31を有する。カセット31の近傍には、給紙ローラ32および分離ローラ33が設けられる。給紙ローラ32および分離ローラ33は、カセット31から用紙Pを1枚ずつ取り出し、搬送系15が構成する搬送路へ送り出す。搬送系15は、多数の給紙ローラおよび搬送ベルトなどにより構成する。搬送系15は、給紙ローラ32および分離ローラ33によりカセット31から取り出した用紙Pをレジストローラ34へ搬送する。
【0019】
レジストローラ34は、感光体ドラム12と転写ローラ13とが対向する転写位置の手前にある。レジストローラ34は、用紙Pの傾きを補正しつつ、転写位置へ用紙Pを供給する。また、用紙Pの搬送方向において、レジストローラ34の手前には、用紙Pの到達を検出するアライニング前センサ35がある。レジストローラ34は、アライニング前センサ35が検知した用紙Pの先端と感光体ドラム12の周面上に形成したトナー像の先端とが整合するタイミングで用紙Pを転写位置へ送り出す。また、レジストローラ34は、感光体ドラム12周面の移動速度と同じ速度で用紙Pを転写位置へ供給する。
【0020】
転写位置において、感光体ドラム12の周面に形成されたトナー像(現像剤像)は、転写チャージャ13aの作用によって用紙P上に転写される。トナー像が転写された用紙Pは、剥離部24により感光体ドラム12の周面から剥離される。感光体ドラム12の周面から剥離された用紙Pは、搬送系15の一部を構成する搬送ガイドを介して定着装置14へ搬送される。定着装置14は、トナー像が転写された用紙Pに熱を与えてトナーを用紙Pに定着させる定着処理を行う。定着装置14により定着処理された用紙Pは、排紙ローラ36により排紙トレイ37へ排出される。
【0021】
次に、デジタル複合機1における制御系の構成例について説明する。
図2は、デジタル複合機1における制御系の構成例を示すブロック図である。
デジタル複合機1において、システム制御部4は、インターフェースを介して、プリンタ2、スキャナ3および操作パネル5などの各部に接続される。これにより、システム制御部4は、プリンタ2、スキャナ3および操作パネル5などの各部を統括的に制御する。
【0022】
図2に示すように、システム制御部4は、プロセッサ41、メモリ42、インターフェース(I/F)43および通信部44などを有する。
プロセッサ41は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ41は、メモリ42が記憶するプログラムを実行することにより各種の処理を実現する。プロセッサ41は、内部インターフェースを介して、プリンタ2内の各部、スキャナ3、および、操作パネル5などに接続される。プロセッサ41は、プログラムを実行することにより、各部を制御する。
【0023】
メモリ42は、プログラムメモリ、ワークメモリ、データメモリなどを含む。プログラムメモリは、プロセッサ41が実行するプログラムを記憶するメモリである。プログラムメモリは、たとえば、ROM、NVM、HDD、SSDなどの不揮発性のメモリで構成する。ワークメモリは、作業用のデータなどを格納するメモリである。ワークメモリは、たとえば、RAMなどの書換え可能なメモリで構成する。データメモリは、各種のデータを保持するメモリである。データメモリは、たとえば、HDD、SSDなどの書換え可能な不揮発性メモリで構成する。
【0024】
インターフェース43は、デジタル複合機1内の各部に接続するためのインターフェースである。たとえば、システム制御部4のプロセッサ41は、インターフェース43を介して各部に接続する。
通信部44は、外部装置と通信するための通信インターフェースである。たとえば、通信部44は、ネットワークに接続するためのLANインターフェースなどのネットワークインターフェースである。また、通信部44は、無線通信用のインターフェースを含でも良い。また、通信部44は、外部装置とシリアルに通信するシリアルインタフェースなどであっても良い。
【0025】
また、操作パネル5は、表示部51および操作部52を有する。たとえば、操作パネル5は、タッチパネル付きのディスプレイおよび操作ボタンなどを有する。システム制御部4は、表示部51に表示する案内やGUI(Graphical User Interface)などを制御する。また、システム制御部4は、操作パネル5の操作部としてのGUIあるいは操作ボタンなどによってユーザが入力した情報を取得する。
【0026】
また、システム制御部4は、プリンタ2内の各部に接続される。
図2に示す構成例において、システム制御部4は、プリンタ2は、露光装置11、画像形成部20、転写機構60、定着装置14、搬送系15、電圧検知器61、温湿度センサ62などの各部に接続される。システム制御部4は、露光装置11、画像形成部20、転写機構60、定着装置14、搬送系15などの各部を制御してプリンタ2の動作を制御する。
【0027】
システム制御部4は、搬送系15における搬送ローラなどを駆動する駆動モータを制御することにより用紙の搬送を制御する。たとえば、また、システム制御部4は、レジストローラ23を回転させるレジストモータを制御することによって、転写位置への用紙Pの搬送を制御する。
【0028】
システム制御部4は、画像形成部20内の各部(感光体ドラム12、帯電チャージャ21、現像器22、剥離部24、クリーナ25、除電器26)の動作を制御することによりトナー像を形成する制御を行う。たとえば、システム制御部4は、印刷する画像に応じて露光装置11を制御することにより帯電チャージャ21で帯電させた感光体ドラム12の周面に潜像を形成する。システム制御部4は、現像器22によって感光体ドラム12の周面に形成した潜像を現像してトナー像を形成する。すなわち、システム制御部4は、各画像形成部20と露光装置11とを連携して制御することにより、トナー像を感光体ドラム12の周面に形成する。
【0029】
また、システム制御部4は、転写ローラ13と感光体ドラム12とを回転させるとともに、転写チャージャ13aによって転写位置にバイアスを印加する。システム制御部4は、転写チャージャ13aを定電圧制御または定電流制御によって転写位置に形成する転写電界を制御する。システム制御部4は、転写チャージャ13aに定電圧電源または定電流電源の何れかを選択的に接続することにより定電圧制御または定電流制御を切替えるようにしても良い。たとえば、定電圧制御する場合、システム制御部4は、用紙の抵抗値に応じて決定する電圧値のバイアスを転写チャージャ13aにより転写位置に印加する。通常の印刷処理において、システム制御部4は、予め設定した各種の用紙(たとえば、普通紙など)の抵抗値から選択された用紙の抵抗値を推定して転写位置に印加する電圧値を決定する。
【0030】
また、システム制御部4は、感光体ドラム12周面のトナー像の位置に応じてレジストローラ34を動作させて用紙Pを転写位置へ供給する。用紙Pは、バイアス電圧が印加された転写位置を通過する際に感光体ドラム12からトナーが転写される。システム制御部4は、転写位置を通過した用紙(トナーが転写された用紙)Pをさらに定着装置14へ供給する。
【0031】
システム制御部4は、定着装置14を制御する。たとえば、システム制御部4は、温度センサによって定着部材(定着ローラ、定着ベルトなど)の温度を監視して定着部材を定着温度に制御する。システム制御部4は、定着部材を定着温度に制御しつつ、ローラなどで用紙Pを加圧状態で加熱することによりトナーを用紙Pに定着させる。また、システム制御部4は、排紙ローラ36を回転させて定着装置14で定着処理した用紙Pを排紙トレイ37へ放出する。
【0032】
次に、上記のように構成されるデジタル複合機1における転写制御を含む印刷処理について説明する。
図3は、実施形態に係るデジタル複合機1における転写制御を含む印刷処理を説明するためのフローチャートである。
システム制御部4は、デジタル複合機1本体の電源がオンされると、各部を起動させて印刷要求待ちの状態となる。印刷要求待ち状態において、システム制御部4は、操作パネル5または通信部54に接続された外部装置からの印刷要求に応じて印刷処理を開始する(ACT11)。たとえば、ユーザは、操作パネル5の操作部52を用いて用紙選択などを含む印刷設定を指示してコピーまたは印刷の開始を指示する。システム制御部4は、ユーザが指示する印刷設定での印刷処理を開始する。
【0033】
印刷処理を開始すると、システム制御部4は、印刷設定と印刷する画像とに基づいて印刷処理する用紙に対して抵抗値を検知するか否かを判断する(ACT12)。印刷処理する用紙に対しては、所定の検知範囲にトナーが転写されていない場合に当該検知範囲で抵抗値を検知するものとする。つまり、システム制御部4は、印刷処理する用紙の検知範囲にトナーが転写されるか否かによって抵抗値の検知の可否を判断する。たとえば、用紙における抵抗値の検知範囲は、用紙の搬送方向における先端部、又は、後端部の所定範囲(たとえば、先端又は後端から12mm程度の範囲)とする。システム制御部4は、用紙の検知範囲にトナーが転写されない場合、当該検知範囲において用紙の抵抗値を示す値としての電圧値を検知可と判断する。
【0034】
用紙の抵抗値が検知可であると判断した場合(ACT12、YES)、システム制御部4は、用紙の検知範囲が転写位置を通過する間、転写チャージャ13aを定電流制御として電圧検知器61で電圧値を計測する(ACT13)。ここで、定電流制御として出力する電流値は、印刷する用紙の幅および種類などに応じて予め設定される一定値であるものとする。
【0035】
定電流制御で一定値の電流を出力すると、電圧検知器61が検知する電圧値は、オームの法則などから算出可能な抵抗値を示す値となる。電圧検知器61は、転写位置における電圧値を計測する。実際には、電圧検知器61は、転写位置の電圧値として、転写ローラと用紙とを含む区間の電圧を検知する。
【0036】
この場合、用紙が転写位置に存在すれば、電圧検知器61が検知する電圧値は、用紙にかかる電圧値と転写ローラ等の用紙以外の部材にかかる電圧値とを加算した値となる。また、用紙が転写位置に存在しなければ、電圧検知器61が検知する電圧値は、転写ローラ等の用紙以外の部材にかかる電圧値(抵抗値)となる。従って、用紙の抵抗値を示す電圧値Cは、用紙が転写位置に存在しない場合に測定した電圧値Bと用紙が転写位置に存在する場合に測定した電圧値Aとの差(A-B)により算出できる。
【0037】
用紙の抵抗値を示す電圧値を計測すると、システム制御部4は、測定した電圧値(抵抗値を示す値)が許容範囲内の値であるかを判断する(ACT14)。システム制御部4は、メモリ42に保存する許容範囲を示すテーブルを記憶する。プロセッサ41は、メモリ42に保存するテーブルに基づいて測定した電圧値が許容範囲であるか否かを判断する。ここで、用紙の抵抗値は、湿度によって変動するため、テーブルでは、湿度ごとの許容範囲を示す値を記憶する。
【0038】
図4は、許容範囲を示すテーブルの例を示す図である。
図4に示す例では、湿度に応じた電圧値の許容範囲を示す。許容範囲としては、各湿度に応じて電圧値の上限値と下限値とが示される。これにより、システム制御部4は、温湿度センサ62が検知する湿度と電圧検知器61が検知する電圧値とに基づいて用紙の抵抗値が許容範囲内であるかを判断できる。
【0039】
計測した電圧値が許容範囲外であると判断した場合(ACT14、YES)、システム制御部4は、転写制御の調整(以下、転写調整とも称する)を推奨する案内を報知する(ACT15)。システム制御部4は、転写調整を促すメッセージを操作パネル5の表示部51に表示する。また、システム制御部4は、転写調整を促すメッセージと共に、転写調整を実行するか否かを指示するタッチパネルで選択可能なボタンを表示部51に表示しても良い。これにより、ユーザは、用紙の抵抗値が許容範囲外となった場合に、転写調整を行うか否かをユーザ自身が指示することができる。
【0040】
転写調整を実行することが指示された場合(ACT16、YES)、システム制御部4は、転写調整を実施する用紙の選択指示を要求する(ACT17)。たとえば、システム制御部4は、用紙のサイズと種類をユーザに選択させる案内を表示部51に表示する。このような案内などに応じて、ユーザは、転写調整を実施する用紙のサイズと種類とを操作部52を用いて指定する。また、ユーザは、用紙のサイズと種類とが設定されているカセットを指定しても良い。
【0041】
ユーザが用紙を指示すると、システム制御部4は、ユーザによる転写調整の開始の指示に応じて転写調整を開始する(ACT18)。転写調整を開始すると、システム制御部4は、画像形成部20により転写調整用のパターンのトナー像を形成する(ACT19)。また、システム制御部4は、搬送系15によりカセットから1枚の用紙を取り出して転写位置へ搬送する。システム制御部4は、画像形成部20が形成する転写調整用のパターンのトナー像を定電流制御で用紙に転写する(ACT20)。
【0042】
ここで、転写制御用のパターンは、用紙においてトナーが転写された領域とトナーが転写されていない領域とにおける用紙の抵抗を検知するパターンである。
図5は、転写制御用のパターンを用紙に転写した例を示す図である。
図5に示す転写制御用のパターンは、使用する用紙幅に対し、所定幅(例えば90%以上の幅)で複数のベタ帯(トナーの濃度が最大の領域)を所定間隔で形成したパターンである。たとえば、用紙幅が297mmのA4サイズの用紙に対しては、3本のベタ帯(267mm×20mm)を20mm間隔(ドナーが転写されない白地帯)で形成するパターンあっても良い。画像形成部20が形成する転写制御用のパターンは、定電流制御される転写位置で用紙に転写される。
【0043】
転写制御用のパターンを用紙に転写する場合、システム制御部4は、電圧検知器61が計測する電圧値をモニタする(ACT21)。システム制御部4は、白地帯の部分とベタ帯の部分とを含む転写制御用のパターンが転写された用紙の電圧値(抵抗値)を計測する。この場合、定電流制御されているため、電圧検知器61は、転写制御用のパターンが転写された用紙の抵抗値を示す電圧値を計測することとなる。また、転写制御用のパターンは白地帯の部分とベタ帯の部分とを含むため、電圧検知器61は、用紙の白地帯の部分の電圧値とベタ帯の部分の電圧値とを計測する。
【0044】
システム制御部4は、転写制御用のパターンを転写した用紙の抵抗値を示す値(電圧値)が許容範囲内となるように転写制御の設定値を調整(補正)する(ACT22)。たとえば、システム制御部4は、転写位置に転写制御用のパターンを転写した用紙がある場合の電圧値と用紙が無い場合の電圧値との差が許容範囲に収まるように転写制御の設定値を補正する。具体例として、システム制御部4は、用紙の白地帯とベタ帯で計測した電圧値の中央値と用紙が無い場合の電圧値との差が
図4に示すような許容範囲に収まる設定値に補正する。これにより、ユーザの指示に応じて用紙の抵抗に合わせた転写制御の設定値の調整を行える。
【0045】
転写調整が完了すると、システム制御部4は、調整終了を報知し(ACT23)、転写調整を終了する。たとえば、システム制御部4は、操作パネル5の表示部51に転写調整が終了したことを示す旨の案内を表示する(ACT23)。転写調整が終了すると、システム制御部4は、調整された設定値を用いて印刷処理を継続して実行する(ACT24)。また、印刷処理中において用紙の抵抗値が検知不可である場合(ACT12、NO)、用紙の抵抗を示す値が許容範囲である場合(ACT14、NO)、ユーザによる転写調整の指示が無い場合(ACT16、NO)、システム制御部4は、印刷処理を継続して実行する(ACT24)。
【0046】
上記のような印刷処理によれば、実際に使用する用紙に合わせた転写制御の設定値(予め推定した用紙の抵抗値に応じた設定値)に対する調整がユーザ自身の指示に応じて実施できる。たとえば、使用する用紙の変更に伴って印刷画像の濃度が濃い又は薄いなどの不具合が発生した際に、ユーザによる指示に応じて転写制御の設定値を補正できる。この結果として、サービスマンによる調整が不要となり、サービスマンによる調整を待つためのマシンダウンタイムを削減できる。
【0047】
なお、上述した例では、印刷中に転写調整を推奨する案内があった場合に、転写調整の実行をユーザが指示できるものとした。ただし、上述した転写調整は、任意のタイミングでユーザが実行を指示できるものしても良い。たとえば、デジタル複合機1が待機中に操作パネル5の操作部52で転写調整の実行をユーザが指示できるようにしても良い。任意のタイミングで転写調整の実行できる場合、システム制御部は、ユーザの指示に応じて上記ACT17-23の処理を実施するようにすれば良い。
【0048】
上記のように、実施形態に係る画像形成装置は、印刷処理する用紙の検知範囲にトナーが転写されない場合、当該検知範囲が転写位置を通過するときに定電流制御で電圧値をモニタする。画像形成装置は、湿度などの機体使用環境の情報を加味して、定電流制御でモニタした用紙の抵抗値を示す電圧値が許容範囲外であれば、転写調整を推奨する案内を行う。これにより、実施形態によれば、実際に使用する用紙が設定値に合っていない場合に、ユーザに対して転写制御の調整を促すことができる。
【0049】
また、実施形態に係る画像形成装置は、ユーザが転写調整を指示すると、転写調整用のパターンのトナー像を定電流制御で用紙に転写して電圧値をモニタする。画像形成装置は、転写調整用のパターンを転写した用紙の抵抗値を示す電圧値に基づいて転写制御の設定値を補正する。これにより、ドナーが転写された領域とトナーが転写されていない領域における用紙の抵抗値を考慮して、当該用紙に応じた転写制御の設定値の補正ができる。
【0050】
以上によって、実施形態によれば、転写制御の設定値をユーザに指示に応じて補正することで、高抵抗な用紙や低抵抗な用紙が使用された場合にも転写制御の設定値を適正な補正することができる。この結果、実施形態に係る画像形成装置は、様々な抵抗の用紙に対し、転写の不具合を防止することができ、ユーザ使用の用紙毎に良好な画像の維持が可能となる。
【0051】
なお、上述の実施形態では、デジタル複合機のプリンタが感光体ドラムからトナー像を用紙に転写する構成を備えるものについて説明した。ただし、上記実施形態は、これに限らず、感光体ドラム上に形成したトナー像を中間転写体としての転写ベルトを介して用紙に転写するものにも適用できる。また、上述の実施形態では、トナー像を形成する画像形成部が1つであるプリンタについて説明したが、複数の画像形成部を有するプリンタにも適用できる。たとえば、上記実施形態は、カラーを構成する各色のトナーでトナー像を形成する複数の画像形成部を有するカラープリンタにも適用できる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載した内容を付記する。
[1]
用紙に転写する現像剤を保持する像担持体と、
前記像担持体との間に前記用紙を通過させる転写位置を形成する転写部材と、
前記転写位置において前記像担持体から前記用紙へ現像剤を転写するための転写電界を印加する転写チャージャと、
前記転写位置を通過する用紙の抵抗値を示す値を計測する検知器と、
前記検知器が計測する値に対する許容範囲を示す情報を記憶するメモリと、
前記検知器が計測する値が前記メモリに記憶する許容範囲の範囲外である場合、転写調整の実施を推奨するメッセージを表示器に表示するプロセッサと、
を有する画像形成装置。
[2]
前記検知器は、電圧値を計測する電圧検知器であり、
前記プロセッサは、前記用紙の端部における検知範囲に前記現像剤が転写されない場合に、前記転写チャージャを定電流制御として前記検知範囲における電圧値を前記電圧検知器で計測し、前記電圧検知器が計測する電圧値が前記メモリに記憶する許容範囲の範囲外であれば転写調整の実施を推奨するメッセージを表示器に表示する、
[1]に記載の画像形成装置。
[3]
さらに、湿度センサを有し、
前記メモリは、湿度に応じた許容範囲を示す情報を記憶し、
前記プロセッサは、前記検知器が計測する値と前記湿度センサが検知する湿度とに基づいて前記メモリに記憶する許容範囲の範囲外である場合、転写調整の実施を推奨するメッセージを表示器に表示する、
[1]または[2]の何れかに記載の画像形成装置。
[4]
用紙に転写する現像剤を保持する像担持体と、
前記像担持体との間に前記用紙を通過させる転写位置を形成する転写部材と、
前記転写位置において前記像担持体から前記用紙へ現像剤を転写するための転写電界を印加する転写チャージャと、
前記転写位置を通過する用紙の抵抗値を示す値を計測する検知器と、
前記像担持体に形成した転写調整用のパターンを用紙に転写し、前記パターンを転写した用紙に対して前記検知器が計測する値に基づいて前記転写チャージャを制御するための設定値を調整するプロセッサと、
を有する画像形成装置。
[5]
前記検知器は、電圧値を計測する電圧検知器であり、
前記プロセッサは、前記転写チャージャを定電流制御として前記パターンを転写した用紙が前記転写位置を通過するときの電圧値を前記電圧検知器で計測し、前記電圧検知器が計測する電圧値に基づいて前記転写チャージャを制御するための設定値を調整する、
[4]に記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0053】
1…デジタル複合機(画像形成装置)、2…プリンタ、4…システム制御部、5…操作パネル、12…感光体ドラム(像担持体)、13…転写ローラ(転写部材)、13a…転写チャージャ、14…定着装置、41…プロセッサ、42…メモリ、51…表示部(表示器)、52…操作部、61…電圧検知器(検知器)、62…温湿度センサ(湿度センサ)。