(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ヒートシール積層体及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20230509BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20230509BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B29/00
B65D65/46
(21)【出願番号】P 2022065632
(22)【出願日】2022-04-12
【審査請求日】2023-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000147
【氏名又は名称】伊藤忠商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595155439
【氏名又は名称】伊藤忠プラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】石原 爾
(72)【発明者】
【氏名】高畑 智明
(72)【発明者】
【氏名】門脇 亮
(72)【発明者】
【氏名】杉 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】和泉 敦
(72)【発明者】
【氏名】谷本 光紀
(72)【発明者】
【氏名】森中 直紀
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-64652(JP,A)
【文献】特開2008-222915(JP,A)
【文献】特表2016-531050(JP,A)
【文献】特開2001-40321(JP,A)
【文献】特開2002-88309(JP,A)
【文献】特表2021-507982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0003376(US,A1)
【文献】国際公開第2007/110200(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/202750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-65/46
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材とヒートシール層とを有し、
前記ヒートシール層が、カゼイン樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の全質量中の水分量が、7~20質量%である、包装材用積層体。
【請求項2】
前記カゼイン樹脂のガラス転移温度が、40~80℃である、請求項1に記載の包装材用積層体。
【請求項3】
前記カゼイン樹脂の変性温度が、80~130℃である、請求項1に記載の包装材用積層体。
【請求項4】
前記ヒートシール層の塗工量が、4~12g/m
2である、請求項1に記載の包装材用積層体。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の包装材用積層体を用いた、包装材。
【請求項6】
請求項5に記載の包装材と、食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種を含む包装体とを含み、
前記包装体が、前記包装材により包装されている、包装体。
【請求項7】
前記食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種が、固形状である、請求項6に記載の包装体。
【請求項8】
前記食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種が、調味料、サプリメント、又は粉末スープである、請求項6に記載の包装体。
【請求項9】
食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種を含む包装体を、請求項5に記載の包装材であって袋の形状を有する包装材に入れること、及び
前記袋の形状を有する包装材の開口部をヒートシールすること
を含む、包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートシール積層体、包装材、包装体、及び包装体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装体には装飾又は表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、意匠性、美粧性、及び高級感などの印刷品質のでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上における価値は大きい。
【0003】
包装分野では、紙基材、各種プラスチックフィルム基材等の基材に対し、ヒートシール剤をコーティングしてヒートシール層を設けた包装材が広く利用されている。環境対応及びカーボンニュートラルの面から、バイオマス由来のヒートシール剤が望まれており、技術開発がなされている。
【0004】
バイオマス由来のヒートシール剤として、例えば、卵白タンパク質、尿素、多価アルコール、及び水性媒体を含有するヒートシール性コート剤が挙げられる(特許文献1)。しかしながら、ヒートシール性、耐ブロッキング性、及び残留溶剤量に課題がある。
【0005】
バイオマス由来のヒートシール剤を用いた包装材で、ヒートシール性、耐ブロッキング性、及び残留溶剤量を満たす包装材はまだ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、環境負荷を低減し、さらにヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好であり、残留溶剤量が少ないヒートシール積層体及び包装体を提供することを課題とする。本発明の他の実施形態は、環境負荷を低減でき、さらに十分な実用性を有する包装材及び包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材用積層体を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
本発明の実施形態を以下に挙げる。本発明は以下の実施形態に限定されない。
(1) 紙基材とヒートシール層とを有し、
前記ヒートシール層が、カゼイン樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の全質量中の水分量が、7~20質量%である、包装材用積層体。
(2) 前記カゼイン樹脂のガラス転移温度が、40~80℃である、上記(1)に記載の包装材用積層体。
(3) 前記カゼイン樹脂の変性温度が、80~130℃である、上記(1)又は(2)に記載の包装材用積層体。
(4) 前記ヒートシール層の塗工量が、4~12g/m2である、上記(1)~(3)いずれか記載の包装材用積層体。
(5) 上記(1)~(4)いずれか記載の包装材用積層体を用いた、包装材。
(6) 上記(5)に記載の包装材と、食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種を含む包装体とを含み、
前記包装体が、前記包装材により包装されている、包装体。
(7) 前記食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種が、固形状である、上記(6)に記載の包装体。
(8) 前記食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種が、調味料、サプリメント、又は粉末スープである、上記(7)に記載の包装体。
(9) 食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種を含む包装体を、上記(5)に記載の包装材であって袋の形状を有する包装材に入れること、及び
前記袋の形状を有する包装材の開口部をヒートシールすること
を含む、包装体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態により、環境負荷を低減し、さらにヒートシール性、耐ブロッキング性、及び残留溶剤量が良好なヒートシール積層体及び包装体を提供することが可能となった。本発明の他の実施形態により、環境負荷を低減でき、さらに十分な実用性を有する包装材及び包装体を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態における例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0012】
なお、以下の説明において「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0013】
<包装材用積層体>
本発明の実施形態において、包装材用積層体は、紙基材とヒートシール層とを有する。ヒートシール層は、カゼイン樹脂を含み、かつ、ヒートシール層の全質量中の水分量は、7~20質量%である。
【0014】
本発明の実施形態である包装材用積層体は、環境負荷を低減でき、さらにヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好であり、残留溶剤量が少ない積層体である。本発明の実施形態である包装材用積層体は、食品に接触させることが可能であるため、食品用及び食品添加物用の包装体に好ましく使用できる。
【0015】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、カゼイン樹脂を含む。カゼイン樹脂は、カゼイン、カゼイネート、カゼインとカゼイネートの反応物、及びこれらの混合物を少なくとも含有する。カゼイン樹脂は、少なくともカゼインを含有することが好ましい。カゼイン樹脂は、水性樹脂であってよい。
【0016】
カゼイン樹脂としては、例えば、牛乳中に含まれるタンパク質などがある。カゼイン樹脂は、例えば、牛乳に酸を加えるか(酸カゼイン)又は加圧するか(加圧カゼイン)により沈殿させて得られる。カゼイン樹脂は、α-カゼイン、β-カゼイン、及びκ-カゼインの混合物であってよい。
【0017】
カゼイネートとは、カゼインを含む塩である。例えば、カゼインの対イオンは、カルシウム、カリウム、アンモニウム、ナトリウム、及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む。カゼイネートは、例えば、カゼインと、カルシウム、カリウム、アンモニウム、ナトリウム、及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種とを含むカゼインの塩である。
【0018】
カゼイン樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましい。カゼイン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることが可能である。例えば、測定器としては、GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-401などが挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製 Shodex OHpak LB-805などが挙げられる。検出器としては、例えば、RI(示差屈折計)などが挙げられ、カラム温度は20~50℃であることが好ましい。溶離液としては0.1規定のNaNO3水溶液が挙げられ、流速は0.2~5.0mL/分で行うことができる。
【0019】
カゼイン樹脂のガラス転移温度は、40~80℃が好ましく、50~70℃がより好ましく、55℃~65℃が更に好ましい。ガラス転移温度が40℃以上の場合は、ヒートシール時のヒートシール層の流動によるヒートシール層膜厚の減少を抑制できるため、ヒートシール性が良好となると考察される。ガラス転移温度が80℃以下の場合は、低温でのヒートシール性が良好となると考察される。
【0020】
ガラス転移温度は、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により行うことができる。熱重量・示差熱同時測定においては、例えば、窒素雰囲気下、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度1℃/分の条件において、ベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度とできる。測定装置として、例えば、島津製作所社製DTG-60Aが挙げられる。
【0021】
カゼイン樹脂の変性温度は、80~130℃が好ましく、90~120℃がより好ましく、100~110℃が更に好ましい。変性温度が80~130℃の場合は、ヒートシール時に、カゼイン樹脂の適度な変性が起こることでヒートシール性が良好となる。
【0022】
カゼイン樹脂は、ヒートシール層に含まれる樹脂の全質量中、固形分で50質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。50質量%以上の場合は、ヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好となる。カゼイン樹脂の含有量の上限は特に限定されず、例えば、カゼイン樹脂は、ヒートシール層に含まれる樹脂の全質量中、固形分で100質量%以下、99.9質量%以下、又は98質量%以下含まれる。
【0023】
ヒートシール層は、カゼイン樹脂以外のその他樹脂を含有することができる。ヒートシール層がその他樹脂を含有する場合、その他樹脂の含有量は、ヒートシール層に含まれる樹脂の全質量中、固形分で50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましい。特に好ましくは10質量%未満である。その他樹脂は、特に限定されないが、水性アクリル樹脂、水性スチレンアクリル樹脂、水性スチレンマレイン酸樹脂、水性ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。ヒートシール層は、例えば、カゼイン樹脂と水性ウレタン樹脂とを含有する。
【0024】
ヒートシール層は、水を含有してよい。ヒートシール層の水分量は、ヒートシール層の全質量中、7~20質量%であり、8~16質量%であることが好ましく、10~14質量%であることがより好ましい。水分量が7質量%以上の場合、ヒートシール層の柔軟性が良好となると推察され、優れたヒートシール強度を得ることができると考えられる。20質量%以下の場合は、ヒートシール層表面のタックが低下するため、良好なブロッキング性を得ることができ、かつ、ヒートシール層中の水性媒体量が低下するため、ヒートシール剤が有機溶剤を含有する場合に、残留溶剤の含有量を低減することができる。ただしこれら考察は、本発明を限定するものではない。
【0025】
ヒートシール層の水分量は電気抵抗式法で測定できる。ヒートシール層の表面に、電極を押し当て電気を流し、電気抵抗値から含水水分量を算出し測定する。具体的にはJISP8127:2010に準拠した測定方法である。測定には、例えば、ケツト化学研究所社製 HK-300シリーズが使用でき、センサーはグリップセンサー、導体ゴムセンサー、及び定圧センサーから選択することできる。
【0026】
ヒートシール層の塗工量は、4~12g/m2が好ましく、4~8g/m2が更に好ましい。塗工量が前記範囲内である場合、優れたヒートシール強度及び耐ブロッキング性を得ることができ、かつ、ヒートシール剤が有機溶剤を含有する場合に、残留溶剤の含有量を低減することができる。
【0027】
ヒートシール層が含有し得る有機溶剤としては、後述のアルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等が挙げられる。ヒートシール層に含まれる有機溶剤量は、好ましくは30mg/m2未満であり、より好ましくは10mg/m2未満であり、更に好ましくは3mg/m2未満である。有機溶剤量は、実施例に記載の残留溶剤量の評価方法に従って測定できる。
【0028】
水分量及び塗工量調節する方法として、例えば、塗工に使用するヒートシール剤の固形分濃度、塗工速度、乾燥条件等を変化させる方法が挙げられる。ヒートシール剤を印刷により塗工する場合、具体的には、印刷速度、版の版深、印刷重ね回数、印刷されたヒートシール剤の乾燥温度等を変えることによって水分量及び塗工量を調節することができる。
【0029】
ヒートシール層は保湿剤を含有してよい。本発明の実施形態において、保湿剤としては、例えば、尿素、プロピレングリコール、グリセリン、ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミド、スクワラン、アミノ酸、ブチレンクリコール、ジブロピレングリコール、ワセリン、果糖、マンノース、ガラクトース、アラビノース、及びショ糖が挙げられる。好ましくは尿素、プロピレングリコール、及びグリセリンであり、特に好ましくは尿素である。ヒートシール剤が尿素を含む場合、ヒートシール層において適性範囲内の水分量をより保つことができるため、良好なヒートシール強度が得られる。
【0030】
ヒートシール層が保湿剤を含有する場合、保湿剤の含有量は、ヒートシール層の全質量中に固形分で0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。0.1質量%以上であると、ヒートシール層の水分量保持力が向上し、20質量%以下であると、良好なヒートシール性と耐ブロッキング性を得ることができる。
【0031】
本発明の実施形態において、ヒートシール層は、従来公知の添加剤を適宜含むことができる。添加剤としては、例えば、体質顔料、無機系微粒子、レベリング剤、離型剤、再溶解性向上剤、増膜助剤、消泡剤、中和剤等が挙げられる。
【0032】
(ヒートシール剤)
本発明の実施形態において、ヒートシール層は、ヒートシール剤を用いて形成することができる。ヒートシール剤は、カゼイン樹脂を少なくとも含み、水性媒体を更に含むことが好ましい。ヒートシール剤は、その他樹脂を含んでもよい。さらに、ヒートシール剤は、保湿剤、添加剤、又はこれらの両方を含むことができる。カゼイン樹脂、その他樹脂、保湿剤、及び添加剤については、上述したとおりである。
【0033】
本発明の実施形態において、ヒートシール剤は水性媒体を含むことが好ましい。水性媒体は、例えば、水を主成分(ヒートシール剤の保存安定性と乾燥性の観点から、全媒体中40質量%以上が好ましい。)とし、水以外にも必要に応じて水性有機溶剤を含んでよい。具体的には、ヒートシール層を印刷によって形成する場合、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じてアルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等を含むことができる。
【0034】
アルコール系有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、ターシャリブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、が挙げられる。グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール、等が挙げられる。中でもアルコール系有機溶剤が好ましく、イソプロパノールがより好ましい。
【0035】
ヒートシール剤の貯蔵安定性、増粘、及び乾燥性の観点から、水以外の水性有機溶剤の含有量はヒートシール剤の全質量中に、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
ヒートシール剤は、好ましくは消泡剤を含有する。消泡剤として変性シリコーンオイル等の公知の消泡剤を使用できる。消泡剤の含有量は、ヒートシール剤の全質量中、0.001~1%質量%であることが好ましく、0.005~0.1質量%であることがより好ましい。ヒートシール剤は、pHの調整のため、好ましくは中和剤を含有する。中和剤として公知の酸又は塩基を使用でき、揮発性の中和剤であることが好ましい。中和剤の含有量は、ヒートシール剤の全質量中、0.01~2質量%であることが好ましく、0.1~1%質量%であることがより好ましい。添加剤の合計の含有量は、ヒートシール剤の全質量中、例えば0.001~5質量%である。
【0037】
ヒートシール剤のpHは、7~10が好ましく、より好ましくは7~9、特に好ましくは7~8である。pHが前記範囲の場合、ヒートシール剤の粘度が良好となる。pHは、JIS K0802:1986に準拠した測定方法により測定できる。pH測定には、例えば、横河電機社製パーソナルpHメーターPH71を使用できる。
【0038】
ヒートシール剤中の固形分の含有量は、10~30質量%とすることが好ましく、より好ましくは15~25質量%である。固形分が前記範囲である場合、塗布量と耐ブロッキング性の両立が可能となりやすい。ヒートシール剤は、印刷時に希釈して使用することができ、希釈後のヒートシール剤中の固形分の含有量は、10~30質量%とすることが好ましく、より好ましくは15~25質量%である。
【0039】
本発明の実施形態において、ヒートシール剤は、公知の方法で製造することができる。例えば、容器内に、樹脂及び水、必要に応じて、水性有機溶剤、添加剤等を添加した後、羽根つき撹拌装置を用いて均一に撹拌混合することで製造することができる。羽根つき撹拌装置は、従来公知のものを用いることができ、例えば、プロペラ翼等を備えたベッセル等のバッチ式混合装置や、インラインミキサー等の連続式混合装置が挙げられる。
【0040】
(紙基材)
本発明の実施形態において、ヒートシール剤を用いて紙基材上にヒートシール層を形成して、包装材用積層体とすることができる。なお、紙基材は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、アート紙、コート紙、キャスト紙、クラフト紙、上質紙、中質紙、新聞用紙、ユポ紙、等から選ばれる紙基材であることが好ましい。
【0041】
(紙基材とヒートシール層とを有する包装材用積層体)
紙基材とヒートシール層とを有する包装材用積層体の製造方法としては、例えば、基材上に、直接又は他の任意の層を介して、ヒートシール剤をグラビア印刷又はフレキソ印刷で印刷してヒートシール層を形成する方法が挙げられる。ヒートシール剤は、印刷時に必要に応じて水及び必要に応じて水性有機溶剤からなる希釈溶剤で適宜希釈し、印刷することができる。
【0042】
(グラビア印刷)
グラビア印刷においては、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻又は腐蝕及びレーザーにて凹部を各色で作成できる。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては80~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1~100μmが好ましい。
【0043】
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットは、グラビア版及びドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、印刷インキとしてのヒートシール剤に対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0044】
ヒートシール層の塗工量及び水分量を調整する観点から、好ましい印刷条件は次のとおりである。印刷速度は、20~100m/分が好ましく、より好ましくは20~80m/分であり、特に好ましくは20~60m/分である。印刷速度が前記範囲である場合、良好な塗膜形状及びオーブン乾燥ユニット中での滞在時間の両立が可能となる。オーブン乾燥ユニットの温度は、80℃~120℃が好ましい。温度が前記範囲である場合、水性媒体の蒸発速度及び基材の熱変性抑制の両立が可能となる。版の版深は、20~80μmが好ましく、より好ましくは40~80μmである。版深が前記範囲内である場合、良好な塗膜形状及び塗布量の両立が可能となる。印刷重ね回数は1~7回が好ましく、より好ましくは1~5回であり、特に好ましくは1~3回である。印刷重ね回数が前記範囲内である場合、塗膜形状が良好となる。
【0045】
(フレキソ印刷)
フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版又はダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーン線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0046】
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキとしてのヒートシール剤の供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式等を挙げることができ、適宜の印刷機を使用することができる。
【0047】
(包装材用積層体の層構成)
紙基材上にヒートシール層を有する包装材用積層体の層構成として、例えば、以下が挙げられる。ヒートシール層は、更にアンカーコート層(アンカー層)、被覆層(OP層)及びインキ層を任意に組み合わることが可能である。ヒートシール層は紙基材上に、紙基材に直接接して形成されていても、又は、他の層を介して形成されていてもよい。
積層体の構成は例えば、
基材/ヒートシール層
基材/アンカー層/ヒートシール層
インキ層/基材/ヒートシール層
インキ層/基材/アンカー層/ヒートシール層
OP層/インキ層/基材/ヒートシール層
OP層/インキ層/基材/アンカー層/ヒートシール層
OP層/基材/ヒートシール層
OP層/基材/アンカー層/ヒートシール層
OP層/基材/インキ層/ヒートシール層
OP層/基材/インキ層/アンカー層/ヒートシール層
OP層/アンカー層/基材/アンカー層/ヒートシール層
OP層/アンカー層/基材/ヒートシール層
などを好適に挙げることができる。
【0048】
OP層としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ニトロセルロース系樹脂などを使用した被覆剤を、アンカー層としてはポリ乳酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂などを使用したアンカー剤を好適に用いることができる。また、インキ層としてはポリ乳酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂などを使用したグラビアインキ、フレキソインキその他の印刷インキを用いることができる。
【0049】
<包装材>
包装材用積層体は、様々な用途に応じて後加工され、食品など商品の包装、とりわけ紙器用に好適に使用される。例えば、包装材用積層体を所定のサイズにカットし、ヒートシール層同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールし、袋の形状を有する包装材を製造することができる。ヒートシールの温度としては、カゼイン樹脂の変性温度以上であることが好ましく、例えば、100~220℃であることが好ましく、140~180℃であることがより好ましい。ヒートシール圧力としては、例えば、1~2kg/cm2とできる。1枚の包装材用積層体を折り曲げて縁をヒートシールしてもよいし、2枚以上の包装材用積層体をヒートシールしてもよい。包装材は、好ましくは袋の形状を有する包装袋である。包装袋は、中身を包装した後、全ての開口部をヒートシールして使用してもよい。包装袋は、食品、医薬品等の分野における包装袋として幅広く利用することができる。
【0050】
<包装体>
本発明の実施形態において、包装体(以下、「包装体A1」という場合がある。)、は、前記実施形態の包装材と、食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種を含む包装体(以下、「包装体a」という場合がある。)とを含む。包装体A1において、包装体aは、前記実施形態の包装材により包装されている。包装体A1は、1個又は2個以上の包装体aを含み、例えば5~20個の包装体aを含む。
【0051】
包装体aは、包装材(以下、「包装材a」という場合がある。)と、包装材aにより包装された食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種とを含む。包装材aにより包装された食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種は、1食分若しくは1回の使用量であっても、又は、複数食分若しくは複数回の使用量であってもよい。
【0052】
包装材aとして、食品及び食品添加物を包装するために使用される公知の包装材を使用できる。包装材aの材料として、例えば、紙(上質紙、クラフト紙、グラシン紙等)、プラスチックフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等のフィルム、これらのアルミニウム蒸着フィルム、積層フィルム等)等が挙げられる。包装体Aは、レールファスナー、シール等の付いた袋、ジッパー付きパウチ等の開封後に再密封が可能な包装体;ヒートシールされた袋等の開封後に再密封できない包装体であってよい。
【0053】
食品及び食品添加物は、固形状であることが好ましい。固形状は、粉末状、粒状、顆粒状、キューブ状、又はブロック状等であってよい。食品及び食品添加物からなる群から選択される少なくとも1種の例として、調味料、サプリメント、粉末スープ、フリーズドライ食品、又は粉末飲料等が挙げられる。好ましくは、調味料、サプリメント、又は粉末スープである。粉末スープ及び粉末飲料は、それぞれ、水、牛乳等の液体に溶解又は分散させることによって飲食用のスープ及び飲料が得られる。
【0054】
調味料の例として、和風料理、洋風料理、中華風料理等の各種料理に使用する汁又はスープに対して、鰹節、コンブ、シイタケ、煮干、鶏肉、牛肉等の香り及び味を付与する風味調味料;水等に溶かすだけで、各種料理における汁又はスープとして使用できる調味料;サトウキビ、テンサイ、サトウカエデ、オウギヤシ、スイートソルガム等を原料とする砂糖;アスパルテーム、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン等の甘味料などが挙げられる。粉末スープは、コーンポタージュ、きのこポタージュ、かぼちゃポタージュ、オニオンコンソメ、チキンコンソメ等のスープ用の粉末食品であってよい。サプリメントは、例えば、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、DHA、コラーゲン等を含有する。
【0055】
<包装体の製造方法>
本発明の実施形態において、包装体(以下、「包装材A2」という場合がある。)の製造方法は、包装体aを、前記実施形態の包装材であって袋の形状を有する包装材に入れること、及び、前記袋の形状を有する包装材の開口部をヒートシールすること、を少なくとも含む。袋の形状を有する包装材には、1個又は2個以上の包装体aを入れることができ、例えば5~20個の包装体aを入れる。包装体aを入れた後、包装材の開口部の一部又は全てをヒートシールすればよい。
【0056】
ヒートシールの温度及び圧力は、包装袋を作製するときの温度及び圧力と同程度であってよい。ヒートシールの温度は、例えば、100~220℃であることが好ましく、140~180℃であることがより好ましい。ヒートシール圧力は、例えば、1~2kg/cm2とできる。包装体の製造方法は、任意の工程を更に有してよい。例えば、包装体の製造方法は、包装体A2に印字すること、包装体A2を検査すること等を含む。製造した包装体A2を更に箱詰めしてもよい。
【0057】
本発明の実施形態である製造方法によれば、作業性が向上するために、短時間で多くの包装体A2を効率よく製造することができる。効率が向上する理由は、包装材の内面にカゼイン樹脂を含むヒートシール層が形成されていることにより、包装材の内面の滑り性が向上しているためであると推測される。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。また、「NV.」とは不揮発性分の質量%を表す。
【0059】
<参考合成例1>
(水性ポリウレタン樹脂PU1の合成)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールの縮合物であるポリエステルポリオールを227.0部、PEG(数平均分子量2000のポリエチレングリコール)9.6部、2,2-ジメチロールプロパン酸(DMPA)30.1部、及びメチルエチルケトン(MEK)250部を混合、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(IPDI)90.6部を1時間かけて滴下し、80℃で4時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、末端イソシアネートプレポリマー溶液を得た。得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液に対し、2-アミノエチルエタノールアミン(AEA)2.7部及びイソプロパノール(IPA)150部を混合したものを室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、10%アンモニア水38.1部及びイオン交換水801.4部を溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、消泡剤0.5部を更に添加してMEK及びIPAを減圧留去した後、水を加えて固形分調整を行い、固形分30%、重量平均分子量38,000の水性ポリウレタン樹脂PU1溶液を得た。
【0060】
<製造例1>
(ヒートシール剤HS1の製造)
カゼイン樹脂-1(NV.100%、ガラス転移温度60℃、変性温度105℃)20.0部、水69.5部、IPA10.0部、ポリジメチルシロキサン(NV.100%)0.01部、及び10%アンモニア水0.49部を羽根つき撹拌混合器で混合し、ヒートシール剤HS1を得た。
【0061】
<製造例2~5及び比較製造例1>
(ヒートシール剤HS2~6の製造)
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は製造例1と同様の方法でヒートシール剤HS2~HS6を得た。なお、カゼイン樹脂-2(BASF社製、Luron Binder U)は、NV.100%、ガラス転移温度50℃、変性温度95℃の樹脂である。
【0062】
【0063】
<実施例1>
(積層体P1の製造)
製造例1で得られたヒートシール剤HS1を水で希釈し、ザーンカップ#4(離合社製)25度で25秒になるよう調整した。次に、上質紙(日本製紙子株式会社製 基材幅125mm、米坪64g/m2)に対し、版深60μmの腐蝕版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度40m/分、オーブン乾燥ユニット温度100℃の条件下で、希釈したヒートシール剤を2度重ね印刷し、積層体P1を得た。
【0064】
<実施例2~12及び比較例1~3>
(積層体P2~15の製造)
表2に記載したヒートシール剤及びヒートシール剤の印刷条件を使用した以外は、製造例1と同様の方法で、積層体P2~15を得た。
【0065】
<塗工量評価方法>
積層体を100mm角の大きさに切り出して質量Aを計測した。次に、上質紙を100mm角の大きさに切り出して質量Bを計測し、以下の計算式を用いて、塗工量を算出した。
(質量A-質量B)×100=塗工量(g/m2)
【0066】
<水分量評価方法>
得られた包装材用積層体のヒートシール層に、水分計(ケツト化学研究所製、型番:HK-300-2、導電ゴムセンサー)の電極部を押し当て、水分量を計測した。
【0067】
<積層体の評価>
実施例1~12及び比較例1~3で得られた積層体P1~15について、以下に記載の評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
(ヒートシール性評価方法)
前記積層体を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士が重なるように折り曲げ、以下の装置及び条件でヒートシールし、シールされていない両端部を小型引張試験機に固定し、ヒートシール強度を評価した。
(ヒートシール条件)
装置:テスター産業株式会社製 ヒートシールテスター
シール幅:折り曲げ部より10mm
ヒーター温度:160℃
シール圧力:2kg/cm2
シール時間:1sec
(ヒートシール強度測定)
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)
試験片幅:15mm
剥離モード:90°剥離
引張速度:300mm/min
A.ヒートシール強度が3.0N以上である。
B.ヒートシール強度が2.5N以上、3.0N未満である。
C.ヒートシール強度が1.0N以上、2.5N未満である。
D.ヒートシール強度が1.0N未満である。
【0069】
(耐ブロッキング性評価方法)
積層体を4cm角に2枚切り出し、1枚の積層体のヒートシール層面と、もう1枚の積層体の紙基材面を完全に重ね、温度40℃、湿度80%RH、荷重:100N/cm2の環境下で圧着した。24時間静置した後、重ねた2つの積層体を剥離し、ヒートシール層と接していた紙基材面の状態から、下記基準にて耐ブロッキング性を評価した。
A.紙基材面へのヒートシール層の転移量が0面積%である。
B.紙基材面へのヒートシール層の転移量が0面積%超、10面積%未満である。
C.紙基材面へのヒートシール層の転移量が10面積%以上、30面積%未満である。
D.紙基材面へのヒートシール層の転移量が30面積%以上である。
【0070】
(残留溶剤量評価方法)
積層体を、50mm×10mmで10枚切り出し、すぐにヘッドスペースバイアル瓶(Agilent社製、75.5mm×23mm)に入れ、密栓した状態で80℃、30分加熱した後、マイクロシリンジで一定量の溶剤蒸気を取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶剤量を定量した。残留溶剤量の単位は、mg/m2で表示する。評価結果の判定値は次のとおりである。
A.残留量溶剤が3mg/m2未満である。
B.残留量溶剤が3mg/m2以上、10mg/m2未満である。
C.残留量溶剤が10mg/m2以上、30mg/m2未満である。
D.残留量溶剤が30mg/m2以上である。
【0071】
【0072】
本発明により、環境負荷を低減でき、さらにヒートシール性、耐ブロッキング性、及び残留溶剤量が良好なヒートシール積層体を提供することができた。
【0073】
<実施例13>
(包装体B1の製造)
実施例1で得られた積層体P1により作製され、幅方向に沿って開口部を有する包装袋(幅110mm×長さ180mm)と、内部に甘味料を含む包装体(幅10.5mm×長さ113mm、スリムアップシュガー(R)(味の素株式会社製))を用意した。包装袋B1の開口部に手作業により包装体20個を入れ、開口部をインパルスシーラー(富士インパルス株式会社製)を用いて温度180℃でヒートシールし、ヒートシールされた開口部付近に印字機(富士インパルス株式会社製)により印字を施し、包装体B1を作製した。
【0074】
<比較例4>
(包装体B2の製造)
包装袋を片面に合成樹脂コーティング層を有する紙基材により作製された包装袋に代えた以外は実施例13と同様の方法で、包装袋B2を作製した。
【0075】
<包装体の評価>
実施例13及び比較例4で得られた包装体B1及びB2について、以下に記載の評価を行った。結果を表3に示す。
【0076】
(作業性の評価方法)
上記の製造方法に従い包装体を連続して製造し、1分間に製造した包装体の個数により作業性を評価した。評価結果の判定値は次のとおりである。
A.包装体の個数が15個以上である。
B.包装体の個数が14個未満である。
【0077】
(流通適性の評価方法)
包装体10個を中箱(コートボール紙製、幅110mm×高さ135mm×奥行178mm)に詰め、さらに、中箱4箱を外箱に詰め、外箱を用いて流通適性を評価した。評価の判定基準は次のとおりである。
(流通強度評価)
外箱3個を用い、JIS Z 0232「包装貨物-振動試験方法」、及び、JIS Z 0200「包装貨物-性能試験方法一般通則 レベルIII:落下」に相当する振動及び落下試験を実施した。試験後に包装体の外観を目視で観察した。
(実輸送評価)
外箱3個をトラックにより約60kmの区間にわたって輸送した。輸送後に包装体の外観を目視で観察した。
A.流通強度評価及び実輸送評価において、印字の擦れ及び包装体の破れがない。
B.流通強度評価又は実輸送評価において、印字の擦れ又は包装体の破れがある。
【0078】
【0079】
本発明により、環境負荷を低減でき、さらに十分な実用性を有する包装材及び包装体を提供することができた。
【要約】
【課題】環境負荷を低減し、さらにヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好であり、残留溶剤量が少ないヒートシール積層体及び包装体を提供すること。
【解決手段】紙基材とヒートシール層とを有し、前記ヒートシール層が、カゼイン樹脂を含み、かつ、前記ヒートシール層の全質量中の水分量が、7~20質量%である、包装材用積層体。
【選択図】なし