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特許7274646血液悪性疾患を処置するための低用量抗体に基づく方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】血液悪性疾患を処置するための低用量抗体に基づく方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20230509BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20230509BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 103/40 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K31/7068
A61K39/395 T ZMD
A61K47/55
A61K51/10 100
A61P35/02
A61K103:40
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022070702
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2020046439の分割
【原出願日】2017-05-25
(65)【公開番号】P2022090047
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】62/342,568
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517405552
【氏名又は名称】アクティニウム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドラガン シシック
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】Pharmaceuticals, 2015, Vol.8, p.321-336
【文献】Phase I trial of targeted alpha-particle therapy with actinium-225(225Ac)-lintuzumab and low-dose cy,Blood, Dec. 2016, Vol.128, No.22, p.4050
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61K 31/7068
A61K 39/395
A61K 47/55
A61K 51/10
A61P 35/02
A61K 103/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験体の再発および/または難治性の急性骨髄性白血病を処置するための組成物であって、前記組成物が、 225 Ac標識HuM195を含み、前記被験体が200芽球/μl未満の末梢芽球負荷を有すると判断されており、前記組成物が、最大で4.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195の用量で静脈内投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、2×0.5μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、2×1.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、2×1.5μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、または2×2.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195の用量で投与されることを特徴とし、画分は1週間おきに投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、1×0.5μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、1×1.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、1×2.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、1×3.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、または1×4.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195の用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記被験体の200芽球/μl未満の末梢芽球負荷が医学的に誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記被験体が、集中化学療法による処置に不適格である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ヒト被験体の再発および/または難治性の急性骨髄性白血病を処置するための組成物であって、前記組成物が、 225 Ac標識HuM195を含み、前記被験体が200芽球/μlまたはそれ以上の末梢芽球負荷を有すると判断されており、その後前記被験体の末梢芽球負荷が200芽球/μl未満まで医学的に低下させられ、前記組成物が、前記被験体の末梢芽球負荷が200芽球/μl未満の間に、最大で4.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195の用量で静脈内投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項7】
前記組成物が、2×0.5μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、2×1.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、2×1.5μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、または2×2.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195の用量で投与されることを特徴とし、画分は1週間おきに投与される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、1×0.5μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、1×1.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、1×2.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、1×3.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195、または1×4.0μCi/kgの 225 Ac標識HuM195の用量で投与されることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記被験体の200芽球/μlまたはそれ以上の末梢芽球負荷が、50芽球/μlまたはそれ未満まで医学的に低下させられる、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記被験体が、集中化学療法による処置に不適格である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、1クール(course)の低用量のシタラビンが前記被験体に投与された後に、前記被験体に投与するためのものである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、1クール(course)の低用量のシタラビンが前記被験体に投与された後に、前記被験体に投与するためのものである、請求項6記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2016年5月27日に出願された米国仮出願第62/342,568号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
この出願全体を通して、種々の刊行物が引用される。これらの刊行物の開示は、参照により本明細書において本出願に組み込まれて、本発明が属する分野の水準をより充分に記載するものである。
【0003】
本発明は、血液悪性疾患関連抗原を標的化する有効な薬剤(毒素コンジュゲート抗体など)を低用量で使用して、血液悪性疾患を患っている被験体を処置することに関し、ここで被験体は低い末梢がん性細胞負荷を有する。
【背景技術】
【0004】
細胞毒性剤コンジュゲート抗体は、近年、急性骨髄性白血病(「AML」)などの血液悪性疾患を処置するための有望なツールとなっている。特に興味深いものとして、225-アクチニウム(225Ac)などのα放射性同位体のような有効な細胞毒性剤を有するがん細胞特異的抗体の治療用コンジュゲートがある。
【0005】
しかし、有効な細胞毒性剤で標識されたモノクローナル抗体の用量を、臨床試験で確立された最大耐量を超えて安全に漸増することはできない。この安全性に基づく投薬制約により、抗体コンジュゲートの用量を飽和レベルまで漸増することが妨げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、これらのコンジュゲートに対して、治療的に有効であるためには十分高いが、毒性を回避するには十分低い用量でこれらを投与することによって、AMLおよび他の血液がんを処置するのに満たされていないニーズが存在する。また、患者の年齢、併存症および疾患の重症度とは無関係な様式で、このバランスを達成するのにも満たされていないニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、血液悪性疾患を患っている被験体を処置するための方法であって、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤を被験体に投与するステップを含み、被験体が低い末梢がん性細胞負荷を有する、方法を提供する。
【0008】
本発明は、血液悪性疾患を患っており、高い末梢がん性細胞負荷を有する被験体を処置するための方法であって、(i)被験体の末梢がん性細胞負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)被験体の末梢がん性細胞負荷がまだ低い間に、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤を被験体に投与するステップとを含む、方法も提供する。
【0009】
本発明は、急性骨髄性白血病を患っているヒト被験体を処置するための方法であって、α放射性同位体で標識された抗CD33抗体を被験体に投与するステップを含み、(i)被験体が低い末梢芽球負荷を有し、(ii)抗体が亜飽和用量で投与される、方法をさらに提供する。
【0010】
本発明は、急性骨髄性白血病を患っており、高い末梢芽球負荷を有するヒト被験体を処置するための方法であって、(i)被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)被験体の末梢芽球負荷がまだ低い間に、α放射性同位体で標識された抗CD33抗体を被験体に投与するステップとを含み、抗体が亜飽和用量で投与される、方法をまたさらに提供する。
【0011】
本発明は、急性骨髄性白血病を患っているヒト被験体を処置するための方法であって、225Ac標識HuM195を被験体に静脈内投与するステップを含み、(i)被験体が低い末梢芽球負荷を有し、(ii)225Ac標識HuM195が亜飽和用量で投与される、方法をまたさらに提供する。
【0012】
最後に、本発明は、急性骨髄性白血病を患っており、高い末梢芽球負荷を有するヒト被験体を処置するための方法であって、(i)被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)被験体の末梢芽球負荷がまだ低い間に、225Ac標識HuM195を被験体に静脈内投与するステップとを含み、225Ac標識HuM195が亜飽和用量で投与される、方法を提供する。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
血液悪性疾患を患っている被験体を処置するための方法であって、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤を前記被験体に投与するステップを含み、前記被験体が低い末梢がん性細胞負荷を有する、方法。
(項目2)
前記被験体がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記血液悪性疾患が急性骨髄性白血病である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記薬剤が亜飽和用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記薬剤が静脈内に投与される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記抗原を標的化する薬剤が、細胞毒性剤で標識された抗CD33抗体である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記がん性細胞が白血病芽球であり、前記被験体の低い末梢がん性細胞負荷が医学的に誘導される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記被験体の低い末梢がん性細胞負荷が薬学的に誘導される、項目7に記載の方法。
(項目9)
血液悪性疾患を患っており、高い末梢がん性細胞負荷を有する被験体を処置するための方法であって、(i)前記被験体の末梢がん性細胞負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)前記被験体の末梢がん性細胞負荷がまだ低い間に、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤を前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
(項目10)
前記被験体がヒトである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記血液悪性疾患が急性骨髄性白血病である、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記抗原を標的化する薬剤が亜飽和用量で投与される、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記抗原を標的化する薬剤が静脈内に投与される、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記抗原を標的化する薬剤が、細胞毒性剤で標識された抗CD33抗体である、項目9に記載の方法。
(項目15)
前記被験体の末梢がん性細胞負荷を医学的に低下させるステップが、前記被験体の末梢がん性細胞負荷を薬学的に低下させるステップを含む、項目9に記載の方法。
(項目16)
急性骨髄性白血病を患っているヒト被験体を処置するための方法であって、α放射性同位体で標識された抗CD33抗体を前記被験体に投与するステップを含み、(i)前記被験体が低い末梢芽球負荷を有し、(ii)前記抗体が亜飽和用量で投与される、方法。
(項目17)
前記被験体の低い末梢芽球負荷が医学的に誘導される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記被験体の低い末梢芽球負荷が薬学的に誘導される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記抗体が静脈内に投与される、項目16に記載の方法。
(項目20)
急性骨髄性白血病を患っており、高い末梢芽球負荷を有するヒト被験体を処置するための方法であって、(i)前記被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)前記被験体の末梢芽球負荷がまだ低い間に、α放射性同位体で標識された抗CD33抗体を前記被験体に投与するステップとを含み、前記抗体が亜飽和用量で投与される、方法。
(項目21)
前記被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップが、前記被験体の末梢芽球負荷を薬学的に低下させるステップを含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記抗体が静脈内に投与される、項目20に記載の方法。
(項目23)
急性骨髄性白血病を患っているヒト被験体を処置するための方法であって、225Ac標識HuM195を前記被験体に静脈内投与するステップを含み、(i)前記被験体が低い末梢芽球負荷を有し、(ii)前記225Ac標識HuM195が亜飽和用量で投与される、方法。
(項目24)
前記被験体の低い末梢芽球負荷が医学的に誘導される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記被験体の低い末梢芽球負荷が薬学的に誘導される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記225Ac標識HuM195が静脈内に投与される、項目23に記載の方法。
(項目27)
急性骨髄性白血病を患っており、高い末梢芽球負荷を有するヒト被験体を処置するための方法であって、(i)前記被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)前記被験体の末梢芽球負荷がまだ低い間に、225Ac標識HuM195を前記被験体に静脈内投与するステップとを含み、前記225Ac標識HuM195が亜飽和用量で投与される、方法。
(項目28)
前記被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップが、前記被験体の末梢芽球負荷を薬学的に低下させるステップを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記225Ac標識HuM195が静脈内に投与される、項目27に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この図は、HuM195の発現プラスミドの模式図を示す。HuM195のヒト化VLおよびVHエクソンはXbaI部位によって挟まれている。VLエクソンは、哺乳動物発現ベクターpVkに、VHエクソンはpVg1に挿入された(Coら、J. Immunol. 148巻:1149~1154頁、1992年)。
【0014】
図2】この図は、XbaI部位とBamHI部位との間にpVkでクローニングされたHuM195軽鎖の全配列を示す。ヌクレオチド番号は、プラスミドpVk-HuM195におけるその位置を示す。VLおよびCKエクソンは1文字コードで翻訳され、点は翻訳終止コドンを示す。成熟軽鎖は、二重下線を付したアスパラギン酸(D)で始まる。イントロン配列はイタリック体である。ポリAシグナルには下線を付している。
【0015】
図3-1】この図は、XbaI部位とBamHI部位との間にpVg1でクローニングされたHuM195重鎖の全配列を示す。ヌクレオチド番号は、プラスミドpVg1-HuM195におけるその位置を示す。VH、CH1、H、CH2およびCH3エクソンは1文字コードで翻訳され、点は翻訳終止コドンを示す。成熟重鎖は、二重下線を付したグルタミン(Q)で始まる。イントロン配列はイタリック体である。ポリAシグナルには下線を付している。
図3-2】この図は、XbaI部位とBamHI部位との間にpVg1でクローニングされたHuM195重鎖の全配列を示す。ヌクレオチド番号は、プラスミドpVg1-HuM195におけるその位置を示す。VH、CH1、H、CH2およびCH3エクソンは1文字コードで翻訳され、点は翻訳終止コドンを示す。成熟重鎖は、二重下線を付したグルタミン(Q)で始まる。イントロン配列はイタリック体である。ポリAシグナルには下線を付している。
【0016】
図4】この図は、225Ac-リンツズマブ(225Ac-HuM195)の構造を示す。
【0017】
図5】この図は、225Ac-HuM195生成のフローチャートを示す。
【0018】
図6】この図は、AMLの225Ac-リンツズマブ(225Ac-HuM195)による処置の投薬プロトコルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、AMLなどの血液悪性疾患を患っている被験体を処置するための驚くほど効果的な方法を提供する。これらの方法は、CD33などの血液悪性疾患関連抗原を標的化するα放射性同位体とコンジュゲートした抗体などの有効な薬剤を使用する。処置されている被験体は、低い末梢がん性細胞負荷を有し、理想的には、亜飽和用量の薬剤のみが被験体を処置するために必要とされる。
【0020】
定義
本出願では、以下に示す意味を有するある特定の用語が使用される。
【0021】
本明細書で使用する場合、薬剤に関して、「投与する」は、任意の公知の方法により、薬剤を被験体の身体に送達することを意味する。具体的な投与方式として、限定するものではないが、静脈内、経口、舌下、経皮、皮下、腹腔内、髄腔内および腫瘍内投与が挙げられる。
【0022】
さらに、本発明では、使用される種々の抗体および他の抗原を標的化する薬剤(antigen-targeting agent)は、1種または複数の日常的に使用される薬学的に許容される担体を使用して製剤化することができる。このような担体は当業者に周知である。例えば、注射用薬物送達系は、液剤、懸濁剤、ゲル剤、マイクロスフェアおよびポリマー注射剤を含み、溶解度変更剤(solubility-altering agent)(例えば、エタノール、プロピレングリコールおよびスクロース)およびポリマー(例えば、ポリカプリラクトン(polycaprylactone)およびPLGA)などの賦形剤を含むことができる。移植可能な系は、ロッドおよびディスクを含み、PLGAおよびポリカプリラクトンなどの賦形剤を含有することができる。
【0023】
本明細書で使用する場合、血液悪性疾患関連抗原を標的化する「薬剤」は、このような目的に対して有用である任意のタイプの化合物または組成物でありうる。薬剤のタイプとして、限定するものではないが、抗体、他のタンパク質ベースの薬物、ペプチド、核酸、炭水化物および小分子薬物が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」として、限定するものではないが、(a)2つの重鎖と2つの軽鎖を含み、抗原を認識する免疫グロブリン分子、(b)ポリクローナルおよびモノクローナル免疫グロブリン分子、(c)その一価および二価の断片、ならびに(d)その二重特異性形態が挙げられる。免疫グロブリン分子は、これらに限定されないが、IgA、分泌性IgA、IgGおよびIgMを含む、一般的に公知のクラスのいずれかに由来してよい。IgGサブクラスもまた、当業者に周知であり、これらに限定されないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が挙げられる。抗体は、天然に存在するものと天然に存在しないものの両方であってよい。さらに、抗体として、キメラ抗体、完全な合成抗体、単鎖抗体、およびその断片が挙げられる。抗体は、ヒト、ヒト化または非ヒト抗体であってよい。
【0025】
本明細書で使用する場合、「抗CD33抗体」は、CD33のいずれかの利用可能なエピトープに結合する抗体である。一実施形態では、抗CD33抗体は、抗体HuM195に認識されるエピトープに結合する。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「負荷」は、がん性細胞に関連して使用される場合、量を意味する。よって、がん性細胞「負荷」は、がん性細胞の量を意味する。がん性細胞は、AMLの場合の「骨髄芽球負荷」などの、その起源とする組織(すなわち、疾患の原発部位)に関する負荷を有する。がん性細胞はまた、AMLの場合の血液、肝臓および脾臓における芽球負荷などの、起源とする組織以外の1種または複数の組織に関する負荷を有する。用語「末梢負荷」はこのような細胞に関する。AMLの場合の芽球などの、がん性細胞の末梢負荷は、様々な転帰を有する様々な方法で測定することができる。例えば、AMLの場合では、「末梢芽球負荷」は、骨髄の外側の総芽球集団、または血液、脾臓および肝臓を合わせた総芽球集団、または単に単位体積当たりの細胞で測定される血液の芽球集団として測定することができる。骨髄を起源とするAMLおよび他のがんに関連して本明細書で使用される場合、他に記述されていなければ、用語「末梢がん性細胞負荷」(例えば、末梢芽球負荷)は、単位体積当たりの細胞で測定される血液のがん性細胞集団(例えば、1μl当たりの細胞数)を指す。この血液をベースとする測定値は、例えば、脾臓および肝臓での負荷のより扱いにくい測定値に対する有用な代用物である。
【0027】
本明細書では、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤(例えば、抗体)を最大安全用量で被験体に投与した際に、薬剤が、疾患の原発部位においてその標的抗原の90%超に結合するのに十分な量でその部位に到達しない場合、被験体の末梢がん性細胞負荷は「高い」。逆に、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤(例えば、抗体)を最大安全用量で被験体に投与した際に、薬剤が、疾患の原発部位においてその標的抗原の90%超に結合するのに十分な量でその部位に到達する場合、被験体の末梢がん性細胞負荷は「低い」。AMLの場合では、低い末梢芽球負荷の例は、1μl当たり1,000個またはそれ未満の芽球、1μl当たり500個またはそれ未満の芽球、1μl当たり400個またはそれ未満の芽球、1μl当たり300個またはそれ未満の芽球、1μl当たり200個またはそれ未満の芽球、1μl当たり100個またはそれ未満の芽球、および1μl当たり50個またはそれ未満の芽球をもたらすものである。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「細胞毒性剤」として、限定するものではないが、放射性核種、タンパク質ベースの毒素、非タンパク質ベースの毒素、および化学療法剤が挙げられる。放射性核種として、例えば、α放射性同位体(すなわち、225Ac、213Biおよび213Poなどのα放射性同位体)、ベータ線放射性同位体(例えば、90Y)、およびガンマ線放射性同位体(例えば、137Cs(その崩壊産物である137Baを介してガンマ線を放射する))が挙げられる。タンパク質ベースの毒素として、限定するものではないが、リシンおよびその毒性部分、ならびにボツリヌス毒素およびその毒性部分が挙げられる。細胞毒性剤を抗体に付着させる(すなわち、抗体を細胞毒性剤で「標識する」)ための方法は周知である。
【0029】
「血液悪性疾患」は、血液がんとしても公知であり、骨髄などの血液形成組織または免疫系の他の細胞を起源とするがんである。血液悪性疾患として、限定するものではないが、白血病(AML、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性混合系統白血病(acute mixed lineage leukemia)、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、大顆粒リンパ球性白血病など)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性障害(真性多血症(polycitermia vera)、本態性血小板増加症、原発性骨髄線維症および慢性骨髄性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびMGUSならびに類似する障害が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「血液悪性疾患関連抗原」は、例えば、その特定の悪性疾患に関連するがん細胞の表面に、排他的にまたは優勢に見られるタンパク質および/または炭水化物マーカーでありうる。血液悪性疾患関連抗原の例として、限定するものではないが、CD20、CD33、CD38、CD45、CD52、CD123およびCD319が挙げられる。
【0031】
抗体「HuM195」(リンツズマブとしても公知)は、それを作製する方法も同様に公知である。同様に、HuM195を225Acで標識する方法も公知である。これらの方法は、例えば、Scheinbergらの米国特許第6,683,162号に例示されている。この情報は、以下の実施例および図面でも例示されている。
【0032】
低い末梢がん性細胞負荷は、そうするための任意の公知の方法を使用して「医学的に誘導され」うる。これらの方法として、例えば、(1日当たり10~70mg/kgのヒドロキシウレアの経口投与などによる)薬学的誘導、および脾臓除去が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」として、限定するものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、ラットおよびマウスなどの哺乳動物が挙げられる。被験体がヒトである場合、被験体はいずれの年齢であってもよい。例えば、被験体は、60歳もしくはそれより高い年齢、65歳もしくはそれより高い年齢、70歳もしくはそれより高い年齢、75歳もしくはそれより高い年齢、80歳もしくはそれより高い年齢、85歳もしくはそれより高い年齢、または90歳もしくはそれより高い年齢であってよい。AMLを患っているヒト被験体では、被験体の骨髄芽球負荷は、例えば、5%を超え、10%を超え、20%を超え、30%を超え、40%を超え、50%を超え、60%を超え、70%を超え、80%を超え、または90%を超えうる。さらなる例として、AMLを患っているヒト被験体では、被験体は、新たに診断され、または再発しおよび/もしくは難治性であるか、または寛解状態にありうる。
【0034】
本明細書で使用する場合、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤の「亜飽和用量」は、標的抗原の存在よりも少ない標的抗原結合部位(例えば、Fab)を被験体の身体に導入する用量である。例として、抗CD33抗体では、亜飽和用量は、CD33分子の存在よりも少ないCD33結合部位を被験体の身体に導入する用量である。一実施形態では、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤の亜飽和用量は、標的抗原結合部位 対 標的抗原の比が9:10またはそれ未満である用量である。別の実施形態では、標的抗原結合部位 対 標的抗原の比は、1:2もしくはそれ未満、1:5もしくはそれ未満、1:10もしくはそれ未満、1:20もしくはそれ未満、または1:100もしくはそれ未満である。
【0035】
α放射性同位体または他の細胞毒性剤で標識された抗体などの薬剤では、被験体に投与される薬物の大部分は、典型的には、標識されていない抗体からなり、少数部分が標識された抗体である。したがって、一実施形態では、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤の亜飽和用量は、全(すなわち、標識されたおよび標識されていない)標的抗原結合部位
対 標的抗原の比が9:10またはそれ未満である(また、1:2もしくはそれ未満、1:5もしくはそれ未満、1:10もしくはそれ未満、1:20もしくはそれ未満、または1:100もしくはそれ未満でありうる)用量である。別の実施形態では、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤の亜飽和用量は、標識された標的抗原結合部位 対 標的抗原の比が9:10またはそれ未満である(また、1:2もしくはそれ未満、1:5もしくはそれ未満、1:10もしくはそれ未満、1:20もしくはそれ未満、または1:100もしくはそれ未満でありうる)用量である。
【0036】
この発明と関連して使用される亜飽和用量として、例えば、単回投与、および2回またはそれより多い投与(すなわち、画分)が挙げられる。各用量において投与される量は、例えば、放射線(例えば、μCi/kg)または重量(例えば、mg/kgまたはmg/m)で測定することができる。AMLを処置するための225Ac-HuM195(「アクチマブ(Actimab)-A」としても公知)の場合では、投薬レジメンとして、限定するものではないが、以下が挙げられる:(i)2×0.5μCi/kg、2×1.0μCi/kg、2×1.5μCi/kg、または2×2.0μCi/kg、ここで、画分は、1週間おきに投与される;(ii)1×0.5μCi/kg、1×1.0μCi/kg、1×2.0μCi/kg、1×3.0μCi/kg、または1×4.0μCi/kg;(iii)1×15~20μg/kg(標識された0.03~0.06μg/kg);および(iv)被験体当たりおよそ2mg未満または2mg(被験体当たりおよそ0.04mgの標識された抗体)。
【0037】
本明細書で使用する場合、障害を患っている被験体を「処置すること」として、限定するものではないが、(i)障害の進行を遅延させること、停止させることもしくは逆転させること、(ii)障害の症状の進行を遅延させること、停止させることもしくは逆転させること、(iii)障害の再発の可能性を低減すること、および/または(iv)障害の症状が再発する可能性を低減することが挙げられる。好ましい実施形態では、障害を患っている被験体を処置することは、(i)障害の進行を、理想的には、障害を取り除く点まで逆転させること、および/または(ii)障害の症状の進行を、理想的には、症状を取り除く点まで逆転させること、および/または(iii)再発の可能性を低減させるかまたは取り除くこと(すなわち、AMLに対する寛解後療法の一般的な目的であり、理想的には、残っている白血病細胞をすべて破壊させる地固め(consolidation))を意味する。
【0038】
AMLの処置など、血液悪性疾患の処置は、いくつかの臨床エンドポイントに従って測定することができる。これらとして、限定するものではないが、生存期間(数週、数カ月または数年の生存期間の改善、例えば、1カ月、2カ月またはそれより長い追加の生存期間など)、および応答状態(完全寛解(CR)、ほぼ完全寛解(nCR)、非常に良好な部分寛解(VGPR)および部分寛解(PR)など)が挙げられる。
【0039】
一実施形態では、AMLの処置などの血液悪性疾患の処置は、寛解について測定することができる。ここでは、以下の非限定例が含まれる。(1)形態学的な完全寛解(「CR」):ANC≧1,000/mcl、血小板数≧100,000/mcl、5%未満の骨髄芽球、アウエル小体なし、骨髄外疾患のエビデンスなし。(骨髄細胞充実性、ヘモグロビン濃度に対する要件はなし)。(2)血球数の回復が不完全な形態学的な完全寛解(「CRi」):ANCが<1,000/mclおよび/または血小板数が<100,000/mclである以外はCRと同じ。(3)部分寛解(PR):ANC≧1,000/mcl、血小板数>100,000/mcl、および骨髄穿刺芽球のパーセンテージが5~25%まで少なくとも50%低下、または持続するアウエル小体を有する骨髄芽球が5%未満。これらの基準などは公知であり、例えば、SWOG Oncology Research Professional (ORP) Manual I巻、11A章、Leukemia(2014年)に記載されている。
【0040】
発明の実施形態
本発明は、血液悪性疾患を患っている被験体を処置するための第1の方法であって、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤を被験体に投与するステップを含み、被験体が低い末梢がん性細胞負荷を有する、方法を提供する。
【0041】
第1の方法の一実施形態では、被験体の低い末梢がん性細胞負荷は、ヒドロキシウレアのような医薬品を投与することなどにより、医学的に誘導される。あるいは、被験体の低い末梢がん性細胞負荷は、天然に存在しうる。
【0042】
本発明は、血液悪性疾患を患っており、高い末梢がん性細胞負荷を有する被験体を処置するための第2の方法であって、(i)被験体の末梢がん性細胞負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)被験体の末梢がん性細胞負荷がまだ低い間に、血液悪性疾患関連抗原を標的化する薬剤を被験体に投与するステップとを含む、方法も提供する。
【0043】
好ましくは、これらの方法では、被験体はヒトである。これらの方法の一実施形態では、血液悪性疾患は、急性骨髄性白血病であり、がん性細胞は白血病芽球である。
【0044】
抗原を標的化する薬剤は、好ましくは、亜飽和用量で投与され、静脈内または別の経路を介して投与することができる。この薬剤は、例えば、細胞毒性剤(例えば、225Acのようなα放射性同位体)で標識された抗CD33抗体でありうる。
【0045】
本発明は、急性骨髄性白血病を患っているヒト被験体を処置するための第3の方法であって、α放射性同位体で標識された抗CD33抗体を被験体に投与するステップを含み、(i)被験体が低い末梢芽球負荷を有し、(ii)抗体が亜飽和用量で投与される、方法をさらに提供する。
【0046】
一実施形態では、被験体の低い末梢芽球負荷は医学的に誘導され、好ましくは、(例えば、ヒドロキシウレアを投与することにより)薬学的に誘導される。あるいは、被験体の低い末梢芽球負荷は、天然に存在しうる。
【0047】
本発明は、急性骨髄性白血病を患っており、高い末梢芽球負荷を有するヒト被験体を処置するための第4の方法であって、(i)被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)被験体の末梢芽球負荷がまだ低い間に、α放射性同位体で標識された抗CD33抗体を被験体に投与するステップとを含み、抗体が亜飽和用量で投与される、方法をまたさらに提供する。
【0048】
好ましくは、被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップは、(例えば、ヒドロキシウレアを投与することにより)被験体の末梢芽球負荷を薬学的に低下させるステップを含む。抗体は、静脈内または別の経路を介して投与することができる。
【0049】
本発明は、急性骨髄性白血病を患っているヒト被験体を処置するための方法であって、225Ac標識HuM195を被験体に静脈内投与するステップを含み、(i)被験体が低い末梢芽球負荷を有し、(ii)225Ac標識HuM195が亜飽和用量で投与される、方法をまたさらに提供する。
【0050】
一実施形態では、被験体の低い末梢芽球負荷は医学的に誘導され、好ましくは、(例えば、ヒドロキシウレアを投与することにより)薬学的に誘導される。あるいは、被験体の低い末梢がん性細胞負荷は、天然に存在しうる。225Ac標識HuM195は、好ましくは、静脈内に投与される。
【0051】
最後に、本発明は、急性骨髄性白血病を患っており、高い末梢芽球負荷を有するヒト被験体を処置するための方法であって、(i)被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップと、(ii)被験体の末梢芽球負荷がまだ低い間に、225Ac標識HuM195を被験体に静脈内投与するステップとを含み、225Ac標識HuM195が亜飽和用量で投与される、方法を提供する。
【0052】
好ましくは、被験体の末梢芽球負荷を医学的に低下させるステップは、(例えば、ヒドロキシウレアを投与することにより)被験体の末梢芽球負荷を薬学的に低下させるステップを含む。また、225Ac標識HuM195は、好ましくは、静脈内に投与される。
【0053】
本発明は、以下に続く実施例を参照することにより、よりよく理解されるが、当業者は、詳述された具体的実施例は、その後に続く特許請求の範囲においてより充分に記載されている本発明の例証に過ぎないことを容易に理解するであろう。
【実施例
【0054】
(実施例1 225Ac-リンツズマブ(225Ac-HuM195)の構造)
225Ac-リンツズマブは3つの重要な構成成分を含む;ヒト化モノクローナル抗体HuM195(一般名、リンツズマブ)、α放射性同位体225Ac、および二官能性キレート 2-(p-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(p-SCN-Bn-DOTA)。図4に示すように、HuM195は、225Acに結合し、抗体のリジン残基を介してIgGに共有結合する二官能性キレート p-SCN-Bn-DOTAを使用して放射標識される。
【0055】
(実施例2 p-SCN-Bn-DOTA)
DOTA、2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-四酢酸(MacrocyclicsアイテムコードB205-GMP)は、米国特許第4,923,985号に十分に記載されている多重ステップの有機合成によって合成する。
【0056】
(実施例3 225Ac-リンツズマブ(225Ac-HuM195)の調製)
225Ac-リンツズマブを調製する手順は、Michael R. McDevitt、「Design and synthesis of 225Ac radioimmunopharmaceuticals」、Applied Radiation and Isotope、57巻(2002年)、841~847頁に記載されている方法に基づく。この手順は、二官能性キレート、p-SCN-Bn-DOTAを放射性同位体225Acで放射標識すること、その後、放射標識されたp-SCN-Bn-DOTAを抗体(HuM195)に結合させることを含む。構築物225Ac-p-SCN-Bn-DOTA-HuM195を、10DGサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製し、1%のヒト血清アルブミン(HSA)を用いて溶出する。得られた薬物製品、Ac225-リンツズマブを、次いで、0.2μmの滅菌フィルターに通す。
【0057】
(実施例4 225Ac-リンツズマブ(225Ac-HuM195)の調製のためのプロセスフロー)
図5に示す手順は、すべての構成成分の正体、および、次に、製造に対する成分のQCリリースを確認することから始まる。225Acを、放射能レベルを確認するためにアッセイし、塩酸を用いて所望の放射能濃度に再構成する。凍結乾燥したp-SCNBn-DOTAのバイアルを、金属を含まない水を用いて、10mg/mLの濃度に再構成する。アクチニウム反応バイアルに、0.02mlのアスコルビン酸溶液(150mg/mL)と0.05mlの再構成したp-SCN-Bn-DOTAを添加し、2Mのテトラメチルアンモニウムアセテート(TMAA)を用いて、pHを5から5.5の間に調整する。次いで、混合物を55±4℃で30分間加熱する。
【0058】
225Ac-p-SCN-Bn-DOTAの標識効率を決定するために、反応混合物のアリコートを取り出し、Sephadex C25カチオン交換樹脂の1mlカラムに加える。0.9%の食塩溶液で、生成物を2~4mlの画分に溶出する。溶出する225Ac放射能の画分は、225Ac-p-SCN-Bn-DOTAであり、カラムに保持されている画分は、キレート化されていない非反応性225Acである。典型的には、標識効率は95%を超える。
【0059】
反応混合物に、0.22mlの事前に調製したDTPA中のHuM195(1mgのHuM195)と0.02mlのアスコルビン酸を添加する。DTPAを添加して、抗体の標識化と競合する可能性のあるあらゆる痕跡量の金属と結合させる。放射線防護剤としてアスコルビン酸を添加する。pHは、炭酸緩衝液を用いて、pH8.5~9まで調整する。混合物を37±3℃で30分間加熱する。最終生成物を、10DG樹脂を使用するサイズ排除クロマトグラフィーで精製し、1%のHSA 2mlで溶出する。典型的な反応収率は10%である。
【0060】
(実施例5 再発した難治性AML患者に対する第1相臨床試験におけるアクチマブ-A処置)
全ての年齢の再発した難治性成人AML患者が、この単一処置群治験に登録された。処置は、以下の表1に示す漸増用量で投与するアクチマブ-Aの単回注入からなった。
【表1】
【0061】
各コホートを3名の患者に対して計画した。3名の患者がいずれも用量規制毒性(DLT)を経験しない場合に用量漸増を進めた。3名の患者の内の1名がDLTを経験した場合、コホートは追加の3名の患者で拡大した。いずれもDLTを経験しなかった場合、用量漸増を続けた。6名の患者の内の2名がDLTを経験した場合、用量レベルを低下させた。合計20名の患者を処置し、循環芽球数を含むそのベースライン特性を集めた。循環芽球数は、18名の患者について利用可能であった。処置後、主に、患者の赤色骨髄における全細胞のパーセンテージとして芽球を含む、抗白血病効果を含め、安全性と有効性について患者を追跡した。
【0062】
(実施例6 新たに診断されたAML患者の第1/2相治験におけるアクチマブ-A処置)
アクチマブ-A第1/2相多施設治験の第1相の部分では、集中化学療法レジメンによる処置に対して不適格である、新たに診断された年配のAML患者を1クール(course)の低用量のシタラビンと、その後の以下の表2の通りの漸増分割用量(2画分)のアクチマブ-Aによって処置した。患者の疾患がアクチマブ-A処置後に進行しなかった場合、かつ患者がその他の点では適格なままであった場合、さらに最大11回の低用量のシタラビン処置サイクルを投与することとした。
【表2】
【0063】
各コホートは3名の患者を登録するよう計画した。3名の患者がいずれも用量規制毒性(「DLT」)を経験しなかった場合に用量漸増を進めた。3名の患者のうちの1名がDLTを経験した場合、コホートは追加の3名の患者で拡大した。いずれもDLTを経験しなかった場合、用量漸増を続けた。6名の患者のうちの2名がDLTを経験した場合、用量レベルを低下させた。合計18名の患者を処置し、循環芽球数を含むそのベースライン特性を集めた。循環芽球数は、18名の患者すべてについて利用可能であった。処置後、主に、患者の赤色骨髄における全細胞のパーセンテージとして芽球を含む、抗白血病効果を含め、安全性と有効性について患者を追跡した。
【0064】
(実施例7 再発した難治性AML患者に対するアクチマブ-Aの第1相治験および年配の新たに診断されたAML患者に対する第1/2相治験における有効性転帰)
初期の抗白血病有効性は、複合完全奏効(「CRc」)を達成する関数として分析し、ここで、CRcは、5%以下の処置後の患者の骨髄芽球のパーセンテージを達成することとして定義する。参照された治験の両方における用量レベル当たりの応答率を以下の表3および4に示す。表3は、再発した難治性AML患者の第1相単回用量治験に対する有効性転帰を示す。
【表3】
【0065】
表4は、年配の新たに診断されたAML患者における第1相分割用量治験に対する有効性転帰を示す。
【表4】
【0066】
(実施例8 新たに診断されたAML患者に対するアクチマブ-Aの第1/2相治験の一般的に使用されるリスク因子による有効性分析)
【0067】
新たに診断されたAMLにおいて応答する可能性を決定する予後因子として使用される、いくつかの一般的に使用される測定基準が存在する。最も一般的に使用される予後因子は、年齢、細胞遺伝学および先行する血液疾患の存在(最も多いのは骨髄異形成症候群(MDS、この場合には、AMLは続発性AML(「sAML」)と称される)である。これらの因子は、年配の新たに診断されたAMLの第1相治験の有効性転帰を分析するために適用した。これらの分析の結果を以下の表5に表す。
【表5】
【0068】
上記一般的に使用される予後因子のいずれも、応答転帰における統計的に有意な差と相関しないと結論づけた。
【0069】
(実施例9 AML患者に対するアクチマブ-Aの第1相および第1/2相臨床試験における有効性転帰と末梢芽球負荷の相関)
追加の分析を実施し、循環芽球の数が臨床転帰と強くかつ統計的に有意な相関を有することを驚くべきことに発見した。この発見は、両方の治験、すなわち、再発した/難治性の患者と新たに診断された患者の両方において観察された。1マイクロリットル当たり200個より少ない循環芽球数は応答と一致した。しかし、循環芽球数が1マイクロリットル当たり200個より多いかまたは200個であった際には、患者は応答しなかった。これらのデータを以下の表6に表す。
【表6】
【0070】
(実施例10 アクチマブ-A処置に先立って、末梢芽球状態に従って新たに診断されたAML患者および再発した/難治性のAML患者の応答)
【0071】
AML患者の応答転帰を、末梢血1マイクロリットル当たり200個未満の循環芽球を有する患者のみを選択することによって、参照された2つの治験における用量レベルで比較した。以下の表7~9にこれらの知見をまとめる。
【0072】
表7は、再発した難治性のAML患者に対する第1相治験の用量レベルによる末梢芽球数当たりの有効性転帰を示す。
【表7】
【0073】
表8は、新たに診断された年配のAML患者に対する第1/2相治験における用量レベルによる末梢芽球数当たりの有効性転帰を示す。
【表8】
【0074】
表9は、両方のAML治験における応答の統計分析を示す。
【表9】
【0075】
(実施例11 有意な白血病芽球細胞の死滅に基づくアクチマブ-Aの抗白血病効果)
臨床試験の早期段階では、抗白血病効果は、骨髄の白血病芽球負荷を50%以上低減する研究される療法の能力としての尺度であることが多い。この効果を有するアクチマブ-Aの能力を、末梢血1マイクロリットル当たり、200個以上の末梢芽球負荷を有する患者と、200個未満の末梢芽球負荷を有する患者とを比較することによって分析した。これらの分析の結果を以下の表10に表す。これらの結果は、38名の患者の分析を表し、ここで、データはそのうちの31名について利用可能であった。
【表10】
【化1】

【化2】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
【配列表】
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