(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】量子ビットのクロストーク分析方法、装置、コンピュータ機器及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 10/70 20220101AFI20230509BHJP
【FI】
G06N10/70
(21)【出願番号】P 2022513589
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 CN2021114409
(87)【国際公開番号】W WO2022151737
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】202110061593.2
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 玉琴
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲勝▼誉
【審査官】児玉 崇晶
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111814362(CN,A)
【文献】Abdullah Ash- Saki, Mahabubul Alam, Swaroop Ghosh,Experimental Characterization, Modeling, and Analysis of Crosstalk in a Quantum Computer,IEEE Transactions on Quantum Engineering,IEEE,2020年10月06日,Vol.1, 2020
【文献】大倉 康寛、 ミカル ハイドゥシェク、 ロドニー バンミーター,複数量子回路並列実行のためのクロストークを考慮したNISQコンパイラ,情報処理学会研究報告 量子ソフトウェア(QS),2020年10月16日,Vol. 2020-QS-1 No.2,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末により実行される量子ビットのクロストーク分析方法であって、前記方法は、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1固有スペクトル、前記第2固有スペクトル及び前記第3固有スペクトルに基づき、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定するステップと、を含むことを特徴とする量子ビットのクロストーク分析方法。
【請求項2】
順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得する前記ステップは、
前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にある、ステップと、
前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはウェイト状態にある、ステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得する前記ステップは、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数を獲得するステップであって、前記共同の信号関数中には量子準備誤差及び量子測定誤差を表すパラメータが含まれる、ステップと、
前記共同の信号関数に対して解析を行って、第3固有スペクトルを獲得するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1固有スペクトル、前記第2固有スペクトル及び前記第3固有スペクトルに基づき、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定する前記ステップは、
前記第1固有スペクトルと前記第2固有スペクトルとの間のテンソル積を計算するステップと、
前記第3固有スペクトルと前記テンソル積との間の差値に基づき、固有スペクトルの不可分度を決定するステップと、
前記不可分度を前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度として決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法はさらに、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットがいずれも純粋なデフェージングのノイズ環境にあるときに、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの第1環境ノイズモデルを決定するステップと、
量子ビット結合方式を取得するステップと、
前記量子ビット結合方式、前記第1環境ノイズモデル及び前記クロストーク強度に基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の結合クロストーク強度を決定するステップであって、前記結合クロストーク強度は時間に伴って変化して震動減衰し、且つ準備誤差及び測定誤差を含まない、ステップと、を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法はさらに、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットがいずれも純粋なデフェージングのノイズ環境にあるときに、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの第1環境ノイズモデルを決定するステップと、
量子ビット間のノイズ関連方式を取得するステップと、
前記ノイズ関連方式、前記第1環境ノイズモデル及び前記クロストーク強度に基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の関連クロストーク強度を決定するステップであって、前記関連クロストーク強度は時間に伴って変化して減衰し、且つ準備誤差及び測定誤差を含まない、ステップと、を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得する前記ステップは、
前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にある、ステップと、
前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはターゲットゲート制御の処理状態にあるステップと、を含み、
前記方法はさらに、前記第1固有スペクトル及び前記第2固有スペクトルに基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態、及び前記第1量子ビットと第2量子ビットとの間の組み合わせの量子状態はいずれもidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われ、前記identityゲートは前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートであることを特徴とする請求項1~4、及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
端末により実行される量子ビットのクロストーク分析方法であって、前記方法は、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にある、ステップと、
前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある、ステップと、
前記第1固有スペクトル及び前記第2固有スペクトルに基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定するステップと、を含むことを特徴とする量子ビットのクロストーク分析方法。
【請求項10】
前記方法はさらに、
もし前記第1量子ビットが純粋なデフェージングのノイズ環境にあるなら、前記第1量子ビットの第2環境ノイズモデルを決定するステップと、
前記第2環境ノイズモデル及び前記クロストーク強度に基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度の前記ノイズ環境中での変化量を決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態はいずれもidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われ、前記identityゲートは前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートであることを特徴とする請求項9~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
量子ビットのクロストーク分析装置であって、前記装置は、決定モジュールと、第1トモグラフィモジュールと、第2トモグラフィモジュールと、計算モジュールと、を含み、
前記決定モジュールは、分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定することに用いられ、
前記第1トモグラフィモジュールは、順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得することに用いられ、
前記第2トモグラフィモジュールは、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得することに用いられ、
前記計算モジュールは、前記第1固有スペクトル、前記第2固有スペクトル及び前記第3固有スペクトルに基づき、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定することに用いられることを特徴とする量子ビットのクロストーク分析装置。
【請求項13】
前記第1トモグラフィモジュールはさらに、
前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得することであって、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にある、ことと、
前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得することであって、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはウェイト状態にある、ことと、に用いられることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2トモグラフィモジュールはさらに、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数を獲得することであって、前記共同の信号関数中には量子準備誤差及び量子測定誤差を表すパラメータが含まれる、ことと、
前記共同の信号関数に対して解析を行って、第3固有スペクトルを獲得することと、に用いられることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記計算モジュールはさらに、
前記第1固有スペクトルと前記第2固有スペクトルとの間のテンソル積を計算することと、
前記第3固有スペクトルと前記テンソル積との間の差値に基づき、固有スペクトルの不可分度を決定することと、
前記不可分度を前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度として決定することと、に用いられることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項16】
量子ビットのクロストーク分析装置であって、前記装置は、決定モジュールと、第1トモグラフィモジュールと、第2トモグラフィモジュールと、計算モジュールと、を含み、
前記決定モジュールは、分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定することに用いられ、
前記第1トモグラフィモジュールは、前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得することに用いられ、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にあり、
前記第2トモグラフィモジュールは、前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得することに用いられ、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にあり、
前記計算モジュールは、前記第1固有スペクトル及び前記第2固有スペクトルに基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定することに用いられることを特徴とする量子ビットのクロストーク分析装置。
【請求項17】
前記決定モジュールはさらに、もし前記第1量子ビットが純粋なデフェージングのノイズ環境にあるなら、前記第1量子ビットの第2環境ノイズモデルを決定することに用いられ、
前記計算モジュールはさらに、前記第2環境ノイズモデル及び前記クロストーク強度に基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度の前記ノイズ環境中での変化量を決定することに用いられることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態はいずれもidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われ、前記identityゲートは前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートであることを特徴とする請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
メモリと、プロセッサとを含み、前記メモリにコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ機器であって、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを実行するときに、請求項1~11のいずれか一項に記載の方
法を実施することを特徴とするコンピュータ機器。
【請求項20】
コンピュータプログラムであって、
プロセッサが前記コンピュータプログラム
を実行
するときに、請求項1~11のいずれか一項に記載の方
法を実施することを特徴とするコンピュータ
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は量子コンピューティングの技術分野に関し、特に量子ビットのクロストーク分析方法、装置、コンピュータ機器及び記憶媒体に関する。
【0002】
本願は、2021年1月18日に中国特許庁に提出された、出願番号が第2021100615932号、発明の名称が「量子ビットのクロストーク分析方法、装置、コンピュータ機器及び記憶媒体」である中国特許出願の優先権を主張し、その全部の内容は引用によって本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
量子コンピューティングは大量のデータを迅速で効率的に処理するという長所を有するため、量子コンピューティングはますます多くのユーザから人気を集めるようになっている。量子ビットに対応する量子状態は0と1とのリニア重ね合わせ状態であり、量子ビットが操作された後、量子ビットに対応する量子状態に変更が発生し、量子製品(たとえば量子チップ)において量子製品が実行された後の、量子ビットの上記量子状態が、すなわち量子製品の実行結果となるよう具体化される。
【0004】
しかし、量子製品は量子ノイズの干渉を受けやすく、量子製品の性能に深刻な影響を与える。従って量子ビット間のノイズクロストークに対して分析を行うことは極めて重要である。伝統的な量子ビットクロストークの分析手段では、量子ビットに対してノイズプロセス付きの様々なクリフォード(Clifford)ゲートを印加することによって2つのサブシステム間のエラー率を分析し出し、該エラー率は量子ビットのクロストークを描写するというものである。ランダム化基準テストがすべてのタイプのゲートノイズと様々な環境ノイズとの平均結果を具体化するため、分析されたクロストークは量子製品の作製及び最適化には応用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の様々な実施例に基づいて、量子ビットのクロストーク分析方法、装置、コンピュータ機器及び記憶媒体を提供している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
量子ビットのクロストーク分析方法であって、端末により実行され、前記方法は、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1固有スペクトル、前記第2固有スペクトル及び前記第3固有スペクトルに基づき、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定するステップと、を含む。
【0007】
量子ビットのクロストーク分析装置であって、前記装置は、決定モジュールと、第1トモグラフィモジュールと、第2トモグラフィモジュールと、計算モジュールと、を含み、
前記決定モジュールは、分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定することに用いられ、
前記第1トモグラフィモジュールは、順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得することに用いられ、
前記第2トモグラフィモジュールは、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得することに用いられ、
前記計算モジュールは、前記第1固有スペクトル、前記第2固有スペクトル及び前記第3固有スペクトルに基づき、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定することに用いられる。
【0008】
コンピュータ機器であって、メモリと、プロセッサとを含み、前記メモリにコンピュータプログラムが記憶されており、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを実行するときに、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1固有スペクトル、前記第2固有スペクトル及び前記第3固有スペクトルに基づき、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定するステップと、を実現する。
【0009】
コンピュータ可読記憶媒体であって、それにコンピュータプログラムが記憶されており、前記コンピュータプログラムがプロセッサに実行されるときに、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
順に前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、前記第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び前記第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、前記第1量子ビット及び前記第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得するステップと、
前記第1固有スペクトル、前記第2固有スペクトル及び前記第3固有スペクトルに基づき、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定するステップと、を実現する。
【0010】
コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムはコンピュータ命令を含み、前記コンピュータ命令はコンピュータ可読記憶媒体中に記憶され、コンピュータ機器のプロセッサは前記コンピュータ可読記憶媒体から前記コンピュータ命令を読み取り且つ実行するときに、前記コンピュータ機器に上記量子ビットのクロストーク分析方法のステップを実行させる。
【0011】
量子ビットのクロストーク分析方法であって、端末により実行され、前記方法は、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にある、ステップと、
前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある、ステップと、
前記第1固有スペクトル及び前記第2固有スペクトルに基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定するステップと、を含む。
【0012】
量子ビットのクロストーク分析装置であって、前記装置は、決定モジュールと、第1トモグラフィモジュールと、第2トモグラフィモジュールと、計算モジュールと、を含み、
前記決定モジュールは、分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定することに用いられ、
前記第1トモグラフィモジュールは、前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得することに用いられ、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にあり、
前記第2トモグラフィモジュールは、前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得することに用いられ、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にあり、
前記計算モジュールは、前記第1固有スペクトル及び前記第2固有スペクトルに基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定することに用いられる。
【0013】
コンピュータ機器であって、メモリと、プロセッサとを含み、前記メモリにコンピュータプログラムが記憶されており、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを実行するときに、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にある、ステップと、
前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある、ステップと、
前記第1固有スペクトル及び前記第2固有スペクトルに基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定するステップと、を実現する。
【0014】
コンピュータ可読記憶媒体であって、それにコンピュータプログラムが記憶されており、前記コンピュータプログラムがプロセッサに実行されるときに、
分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定するステップと、
前記第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第2量子ビットはウェイト状態にある、ステップと、
前記第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた前記第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得するステップであって、前記第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、前記第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある、ステップと、
前記第1固有スペクトル及び前記第2固有スペクトルに基づいて、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定するステップと、を実現する。
【0015】
コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムはコンピュータ命令を含み、前記コンピュータ命令はコンピュータ可読記憶媒体中に記憶され、コンピュータ機器のプロセッサは前記コンピュータ可読記憶媒体から前記コンピュータ命令を読み取り且つ実行するときに、前記コンピュータ機器に上記量子ビットのクロストーク分析方法のステップを実行させる。
【0016】
本願の1つ又は複数の実施例の細部は以下の図面及び記述において提示される。本願の他の特徴及び利点は明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0017】
ここに説明される図面は本願に対する更なる理解を提供するために用いられ、本願の一部を構成し、本願の模式的な実施例及びその説明は本願を解釈することに用いられるが、本願に対する不適切な限定を構成しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】1つの実施例における量子ビットのクロストーク分析方法の応用環境図である。
【
図1b】1つの実施例における量子ビットのクロストーク分析方法のフロー模式図である。
【
図2】1つの実施例におけるidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィの模式図である。
【
図3】1つの実施例における結合クロストーク強度が時間に伴って変化する曲線模式図である。
【
図4】1つの実施例における関連クロストーク強度が時間に伴って変化する曲線模式図である。
【
図5】1つの実施例における伝送線のクロストーク強度を計算するステップのフロー模式図である。
【
図6】別の実施例におけるidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィの模式図である。
【
図7】1つの実施例における伝送線のクロストーク強度が時間に伴って変化する曲線模式図である。
【
図8】別の実施例における量子ビットのクロストーク分析方法のフロー模式図である。
【
図9】別の実施例におけるidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィによって結合クロストーク強度を獲得する模式図である。
【
図10】1つの実施例における実験テストの結合クロストーク強度が時間に伴って変化する曲線模式図である。
【
図11】1つの実施例における超伝導量子チップ中における5つの量子ビットの模式図である。
【
図12】1つの実施例における5つの量子ビットに対して量子プロセストモグラフィを行って得られた結合クロストーク強度が時間に伴って変化する模式図である。
【
図13】1つの実施例における5つの量子ビットに対して量子プロセストモグラフィを行って得られた伝送線のクロストーク強度が時間に伴って変化する模式図である。
【
図14】1つの実施例における量子ビットのクロストーク分析装置の構造ブロック図である。
【
図15】別の実施例における量子ビットのクロストーク分析装置の構造ブロック図である。
【
図16】別の実施例における量子ビットのクロストーク分析装置の構造ブロック図である。
【
図17】1つの実施例におけるコンピュータ機器の内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願の目的、技術的手段及び利点をより明確かつ明瞭にするために、以下、図面及び実施例と併せて、本願に対して更に詳細な説明を行う。理解されるべきであるように、ここに記述される具体的な実施例は単に本願を解釈することに用いられるものであるが、本願を限定することに用いられるものではない。
【0020】
説明する必要があるものとして、本発明の明細書、特許請求の範囲及び上記図面中の用語「第1」、及び「第2」等は類似する対象を区別することに用いられるものであり、特定の順序又は先後の順序を記述することに用いられることを要するものではない。理解されるべきであるように、このように使用されるデータは適当な状況下で交換でき、それによって、ここに記述される本発明の実施例はここに図示又は記述されるそれらのもの以外の順序でも実施できる。
【0021】
本願に対して詳細な解説を行う前に、まず略語及び重要な用語に対して説明を行う。
【0022】
量子コンピューティング(量子計算):量子ロジックに基づき計算を行う計算方式である。
【0023】
量子ビット:量子情報を記録するために用いられるユニットであり、量子コンピューティングの基本的なユニットである。量子コンピューティングは0及び1を同時に計算でき、システムは0と1とのリニア重ね合わせ状態の|ψ>=α|0>+β|1>にあってもよく、ここではα及びβはシステムの0及び1上での確率振幅を代表し、1つの複素数であり、そのモジュラスの平方は0及び1にある確率を代表する。
【0024】
量子ノイズプロセス:量子製品と環境とが相互に作用するか、又は制御自体が不完全であるため、量子情報の汚染プロセスを引き起こす。
【0025】
量子ビットのクロストークノイズ:量子製品上のビット情報が相互に干渉し、不完全な独立により形成される干渉ノイズである。たとえば、マイクロ波制御線の間のクロストーク、量子ビットが同一の環境にあるために生じた関連ノイズ、及び量子ビット間の直接結合である。量子ビットのクロストークノイズは量子製品(たとえば量子チップ)の規模をかなりの程度制限する。
【0026】
TPCP動力学マッピング:トレース保存及び完全正の動力学マッピングを指し、具体的には、トレース保存とは動力学進化のプロセス中で量子状態密度演算子のトレースが変わらないことを指し、完全正とは、密度演算子が非負であれば、動力学マッピングが密度演算子に作用する任意の部分が非負を維持することになることを指す。
【0027】
動力学減結合:デコヒーレンスを抑制する一種の効果的なやり方であり、主に特定の時点で(たとえば一定の周波数で)継続的に反転するパルスを印加することによって、量子ビットと環境との相互結合を効果的に抑制し、それによりデコヒーレンスを抑制する。
【0028】
本願が提供する量子ビットのクロストーク分析方法は、
図1aに示される応用環境において応用できる。ここで、端末102とサーバ104との間はネットワークによって通信を行う。該量子ビットのクロストーク分析方法は端末102に応用でき、具体的には以下のとおりである。端末102は分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定し、順に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得し、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、第1量子ビット及び第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得し、第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づき、第1量子ビットと第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定する。その後、クロストーク強度を表示する。
【0029】
該量子ビットのクロストーク分析方法はサーバ104に応用でき、具体的には以下のとおりである。サーバ104は分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定し、順に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得し、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、第1量子ビット及び第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得し、第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づき、第1量子ビットと第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定する。その後、クロストーク強度を端末102に表示する。
【0030】
ここで、端末102はqiskitエミュレータがインストールされている様々なコンピュータ及びノートパソコン等であってもよい。サーバ104は独立するサーバ又は複数のサーバからなるサーバクラスターを用いて実現されてもよく、該サーバ104にもqiskitエミュレータがインストールされてもよい。
【0031】
1つの実施例では、
図1bに示すように、量子ビットのクロストーク分析方法を提供しており、該方法は
図1中の端末又はサーバに応用できる。該方法が端末に応用されることを例として説明を行い、以下のステップを含む。
【0032】
S102:分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定する。
【0033】
ここで、端末は量子電子回路又は量子チップが集積された電子機器、たとえば量子コンピュータであってもよく、又は該端末は独立する量子チップ、たとえば超伝導量子チップであってもよい。第1量子ビット及び第2量子ビットは、分析待ちの、異なる量子情報を含む2つの量子ビットであってもよい。
【0034】
量子チップについて、量子ビットの数量はnであってもよく、ここでnは2よりも大きく、たとえば72量子ビットであり、量子ビットの数が多いほど、その計算能力は強くなる。1つの実施例では、端末は複数の量子ビット中から分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定できる。
【0035】
S104:順に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得する。
【0036】
ここで、固有スペクトルとは量子の進化プロセスにおいて形成される動力学マッピング固有スペクトルを指してもよい。スペクトル量子プロセストモグラフィは、複数種の異なる量子ビットの量子状態を利用してある1つの未知の量子プロセス、たとえば量子チャネル又は量子ゲートに入力を行い、それと相互に作用した後に出力された量子状態を測定してから、入力と出力との間の関係により該量子プロセスを推定することであってもよい。
【0037】
上記の量子状態とは量子がある状態を指してもよく、たとえば0、1及び0と1とのリニア重ね合わせ状態の|ψ>=α|0>+β|1>であってもよく、ここで、α及びβは量子ビットが0及び1である時の確率振幅を代表し、α及びβはそれぞれ複素数であり、そのモジュラスの平方|α|2及び|β|2は0及び1にある確率を代表する。
【0038】
1つの実施例では、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態はいずれもidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われ、該identityゲートは第1量子ビット及び第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。
【0039】
S104について、具体的に、端末はidentityゲートに基づき、同じ時刻に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行ってもよく、異なる時刻に順に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行ってもよい。ここで、異なる時刻にスペクトル量子プロセストモグラフィを行うプロセスにおいて、第1量子ビットに対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うときに、第2量子ビットはウェイトを維持し、第2量子ビットに対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うときに、第1量子ビットはウェイトを維持する。
【0040】
1つの実施例では、第1量子ビットのスペクトル量子プロセストモグラフィのステップは具体的に、端末がidentityゲートに基づき、第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得するステップを含んでもよく、ここで、第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第2量子ビットはウェイト状態にある。
【0041】
例を挙げると、第1量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィを行う際に、量子状態準備時に1つの準備エラーNprepTPCP動力学マッピングを経て、identityゲートを通ってk回作用することを考慮する。量子状態を測定するときに1つの測定誤差NmeasTPCP動力学マッピングを経る。先ず、1シリーズの信号関数{g0(0),…g0(k)}を構成する。
【0042】
【0043】
【0044】
ここで、Pμはパウリ行列を表し、Nmeasは測定誤差を表し、Nprepは準備誤差を表し、Λは動力学マッピングの固有スペクトルを表し、identityゲートがk回作用して形成されるものであり、[数2]は超演算子演算を表す。
【0045】
先ず、パウリ行列のある1つの固有基底で量子ビットの初期状態を準備する。その後、k回の量子ゲート進化、すなわちidentityゲート自由進化を経て、続いて選択したパウリ演算子下で測定し、用いられないパウリ行列及び固有基底について、前のステップを繰り返し、最後に、上記信号関数の特殊な形式に対して、行列束法を導入してこのグループの信号関数を解析してもよく、それにより準備誤差及び測定誤差がない動力学マッピング固有スペクトルΛ={1,λ0,x,λ0,y,λ0,z}を獲得する。
【0046】
1つの実施例では、第2量子ビットのスペクトル量子プロセストモグラフィのステップは具体的に、端末が第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得するステップを含んでもよく、ここで、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはウェイト状態にある。ここで、第2量子ビットに対応するスペクトル量子プロセストモグラフィの具体的なステップについて、上記第1量子ビットに対応するスペクトル量子プロセストモグラフィを参考できる。
【0047】
たとえば、
図2に示すように、
図2中の図(a)はidentityゲートに基づき第1量子ビットq0の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うものであり、第1量子ビットq0の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うプロセスにおいて、第2量子ビットq1はウェイトを維持する。
図2中の図(b)はidentityゲートに基づき第2量子ビットq1の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うものであり、第2量子ビットq1の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うプロセスにおいて、第1量子ビットq0はウェイトを維持する。ここで、Xは準備のプロセスを表し、Iは自由進化プロセスを表し、すなわちidentityゲートによって自由進化プロセスを行い、H及びMは各異なる方向上の測定を表し、cは測定線を表す。
【0048】
S106:第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、第1量子ビット及び第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得する。
【0049】
1つの実施例では、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の組み合わせの量子状態はいずれもidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われ、identityゲートは第1量子ビット及び第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。
【0050】
具体的に、端末は第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、第1量子ビット及び第2量子ビットの共同の信号関数を獲得し、ここで、共同の信号関数においては量子準備誤差及び量子測定誤差を表すパラメータが含まれ、共同の信号関数に対して解析を行って、第3固有スペクトルを獲得する。
【0051】
第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行うプロセスにおいてに、第1量子ビット及び第2量子ビット各自の準備誤差及び測定誤差を取得し、取得した準備誤差及び測定誤差、並びに量子ゲート進化及びパウリ行列に基づき第1量子ビット及び第2量子ビットの共同の信号関数を構成する。その後、共同の信号関数に対して解析を行って、第3固有スペクトルを獲得する。
【0052】
たとえば、
図2中の図(c)に示すように、
図2中の図(c)はidentityゲートに基づき第1量子ビットq0及び量子ビットq1の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うものである。端末はidentityゲートに基づき第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1にそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行い、それにより第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1の共同の信号関数g
01(0),…,g
01(K)を獲得できる。
【0053】
【0054】
ここで、N’meas及びN’prepはそれぞれ測定誤差及び準備誤差を表し、Λ’は第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1にidentityゲートを印加する時に形成される固有スペクトルを表す。
【0055】
先ず、パウリ行列のある1つの固有基底で量子ビットの初期状態を準備する。その後、k回の量子ゲート進化、すなわちidentityゲート自由進化を経て、続いて選択したパウリ演算子下で測定し、用いられないパウリ行列及び固有基底について、前のステップを繰り返し、最後に、上記信号関数の特殊な形式に対して、行列束法を導入してこのグループの信号関数を解析してもよく、それにより準備誤差及び測定誤差がない動力学マッピング固有スペクトルΛ={1,λix,λiy,λiz,…,λzx,λzy,λzz}を獲得する。
【0056】
S108:第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づき、第1量子ビットと第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定する。
【0057】
ここで、クロストークとは結合クロストーク及び関連クロストーク等を指してもよく、対応するクロストーク強度とは結合クロストークの強度及び/又は関連クロストークの強度を指してもよい。
【0058】
第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1に直接結合又は関連ノイズタイプのクロストークがないと仮定するときに、第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1の動力学マッピングεABと各自のシングルビット動力学マッピングεA、εBとは以下[数4]を満たし、ここで、以下[数5]はテンソル積演算を表す。従って、第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1の固有スペクトルΛABと各自の固有スペクトルΛA、ΛBとの間は、以下[数6]という関係を満たす。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1に直接結合及び関連ノイズタイプのクロストークが存在する。従って第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1の固有スペクトルの不可分性の程度が[数7]であると算出でき、該不可分性の程度ΔΛは第1量子ビットq0と第2量子ビットq1との間のクロストークの強度と密接に関係する。
【0063】
【0064】
従って、端末は第1固有スペクトルと第2固有スペクトルとの間のテンソル積を計算でき、第3固有スペクトルとテンソル積との間の差値に基づき、固有スペクトルの不可分度を決定し、不可分度を第1量子ビットと第2量子ビットとの間のクロストーク強度として決定し、それによりクロストーク強度は[数8]である。
【0065】
【0066】
たとえば、もし第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルがn×nの行列であるなら、クロストーク強度は以下[数9]であり、ここで、nは2よりも大きい正整数であり、iiは行列の対角要素を表すことに用いられる。
【0067】
【0068】
上記実施例では、先ず順に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得する。その後、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、該組み合わせに対応する信号関数の第3固有スペクトルを獲得する。第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルの間の不可分性の程度が量子ビット間のクロストーク強度と密接に関係するため、第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づいて量子ビット間のクロストーク強度を獲得できる。そして、該クロストーク強度はすべてのタイプのゲートノイズと様々な環境ノイズとの平均結果ではなく、量子製品の作製及び最適化のプロセスにおいて応用でき、量子製品の作製及び最適化のために詳細な指導を行うことができる。また、固有スペクトルは一般的な量子ノイズチャネルについて情報損失を生じ、ランダム基準テストが分極解消チャネルのみに対して情報損失を生じることとは相対的である。従って第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づいて得られたクロストーク強度は、より普遍性を有し、該クロストーク強度に基づき量子製品の作製及び最適化に対して詳細な指導を行うことにより有利である。
【0069】
1つの実施例では、量子ビット間の直接結合クロストーク分析について、そのステップは具体的に、第1量子ビット及び第2量子ビットがいずれも純粋なデフェージングのノイズ環境にあるときに、端末が第1量子ビット及び第2量子ビットの第1環境ノイズモデルを決定するステップと、量子ビット結合方式を取得し、量子ビット結合方式、第1環境ノイズモデル及びクロストーク強度に基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の結合クロストーク強度を決定するステップと、を含んでもよく、結合クロストーク強度は時間に伴って変化して震動減衰し、且つ準備誤差及び測定誤差を含まない。
【0070】
独立する第1量子ビット及び第2量子ビットである以下[数10]について、第1量子ビット及び第2量子ビットがいずれも独立する純粋なデフェージングのノイズ環境にあると仮定する。従って第1量子ビット及び第2量子ビットの第1環境ノイズモデルである以下[数11]を得ることができ、ここで、f1(t)及びf2(t)はそれぞれ第1量子ビット及び第2量子ビット各自があるノイズ環境と対応するノイズ関数を表し、以下[数12]、及び以下[数13]はそれぞれ第1量子ビット及び第2量子ビットに対応するパウリ行列を表す。超伝導量子チップ上の量子ビットの結合が一定の形式を有することを考慮し、従って第1量子ビットと第2量子ビットとの間の量子ビット結合方式である以下[数14]を決定でき、ここで、ωZZは結合強度である。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
上記の環境ノイズモデルについて、解析によって結合クロストーク強度の時間に伴う変化を得ることができ、その変化は以下[数15]の関係を有する。
【0077】
【0078】
ここで、上記のΔΛ(t)は結合クロストーク強度であり、マルコフの純粋なデフェージング量子チャネルである以下[数16]を仮定し、
図3はω
1=ω
2=0、ω=0.1、p=0.02の時の結果を示す。結合クロストーク強度は時間に伴って振動減衰することが分かり、ここで、2ωt
1=2πである。
【0079】
【0080】
上記実施例では、特定クロストークタイプのクロストーク強度すなわち結合クロストーク強度を描写することによって、該結合クロストーク強度が準備誤差及び測定誤差を含まないものであるため、それにより、該結合クロストーク強度を利用して量子製品の作製及び最適化を指導して、作製又は最適化された量子製品が結合クロストークの影響を受けることを回避し、量子製品の性能を向上させることができる。
【0081】
1つの実施例では、量子ビット間の関連クロストーク分析について、そのステップは具体的に、第1量子ビット及び第2量子ビットがいずれも純粋なデフェージングのノイズ環境にあるときに、端末が第1量子ビット及び第2量子ビットの第1環境ノイズモデルを決定するステップと、量子ビット間のノイズ関連方式を取得し、ノイズ関連方式、第1環境ノイズモデル及びクロストーク強度に基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の関連クロストーク強度を決定するステップと、を含んでもよく、関連クロストーク強度は時間に伴って変化して減衰し、且つ準備誤差及び測定誤差を含まない。
【0082】
独立する第1量子ビット及び第2量子ビットである以下[数17]について、第1量子ビット及び第2量子ビットがいずれも独立する純粋なデフェージングのノイズ環境にあると仮定する。従って第1量子ビット及び第2量子ビットの第1環境ノイズモデル[数18]を得ることができ、ここで、f1(t)及びf2(t)はそれぞれ第1量子ビット及び第2量子ビット各自があるノイズ環境と対応するノイズ関数を表し、以下[数19]、及び[数20]はそれぞれ第1量子ビット及び第2量子ビットに対応するパウリ行列を表す。超伝導量子チップ上の量子ビットの間にノイズ関連が存在することを考慮し、それにより量子ビット間のノイズ関連方式、すなわちC12(t)=<f1(t)f2(t)>を獲得できる。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
以上の環境ノイズモデルについて、解析によって関連クロストーク強度の時間に伴う変化を得ることができ、その変化は以下[数21]の関係を有する。
【0088】
【0089】
ここで、上記のΔΛ(t)は関連クロストーク強度であり、マルコフの純粋なデコヒーレンス量子チャネルである以下[数22]の関連ノイズを仮定する。
図4に示すように、
図4はω
1=0.3、ω
2=0.1、p
1=p
2=p=0.01、p
c=0.01の時の結果を示し、関連クロストーク強度は時間に伴って減衰することが分かる。
【0090】
【0091】
上記実施例では、特定クロストークタイプのクロストーク強度すなわち関連クロストーク強度を描写することによって、該関連クロストーク強度が準備誤差及び測定誤差を含まないものであるため、それにより、該関連クロストーク強度を利用して量子製品の作製及び最適化を指導して、作製又は最適化された量子製品が関連クロストークの影響を受けることを回避し、量子製品の性能を向上させることができる。
【0092】
1つの実施例では、
図5に示すように、S104は具体的には以下のステップを含んでもよい。
【0093】
S502:第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得する。
【0094】
ここで、第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第2量子ビットはウェイト状態にある。
【0095】
具体的に、端末は第1量子ビットの量子状態に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、ここで、該identityゲートは第1量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。そして、第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第2量子ビットはウェイト状態にあり、それにより第1量子ビットに対応する信号関数を獲得し、該第1量子ビットに対応する信号関数を解析し、第1固有スペクトルを獲得する。第1量子ビットに対応する量子状態のスペクトル量子プロセストモグラフィのステップについて、上記実施例中のS104を参考できる。
【0096】
S504:第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得する。
【0097】
ここで、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはターゲットゲート制御の処理状態にある。
【0098】
具体的に、端末は第2量子ビットの量子状態に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、ここで、該identityゲートは第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。そして、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはターゲットゲート制御の処理状態にあり、それにより第2量子ビットに対応する信号関数を獲得し、該第2量子ビットに対応する信号関数を解析し、第2固有スペクトルを獲得する。該第2固有スペクトルはターゲットゲート制御で生じた伝送回路のクロストークを帯び、従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られた伝送線のクロストーク強度はより的確なものとなり、量子製品の作製及び最適化のプロセスにおいて詳細な指導を行うにあたり有利である。第2量子ビットに対応する量子状態のスペクトル量子プロセストモグラフィのステップについて、上記実施例中のS104を参考できる。
【0099】
ここで、上記のターゲットゲート制御は、アダマールゲート(Hadamard gate)、パウリ-Xゲート(Pauli-X gate)、パウリ-Yゲート(Pauli-Y gate)、パウリ-Zゲート(Pauli-Z gate)、位相シフトゲート(Phase shift gates)、交換ゲート(Swap gate)、制御ゲート(Controlled gates)、ユニバーサル量子ゲート及びToffoliゲート(Toffoli gate)のうちのいずれか一種であってもよい。
【0100】
S506:第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定する。
【0101】
ターゲットゲート制御の印加が量子ビット間の結合周波数と比較して十分に速いときに、量子ビット間の結合による量子ビットq0の変更は無視でき、そのため、伝送線の直接クロストーク強度を比較的明確に反映できる。
【0102】
たとえば、
図6に示すように、
図6中の図(a)は第1量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをするものであり、シリーズの信号関数g
0(0),…,g
0(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトルを{1,λ
x,λ
y,λ
z}として計算する。
図6中の図(b)は第2量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをするものであり、シリーズの信号関数g
1(0),…,g
1(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトルを{1,λ
x’,λ
y’,λ
z’}として計算する。
【0103】
第1量子ビットq0及び第2量子ビットq1に伝送線のクロストークがないと、取られる2グループのシングルビット動力学マッピングεA、εBはεA=εBを満たす。従って、動力学マッピング固有スペクトルから構成されるマッピングはΛA=ΛBを満たし、これから、もし第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルがいずれもn×nの行列であるなら、伝送線のクロストーク強度を以下[数23]として定義できる。
【0104】
【0105】
ここで、nは2よりも大きい正整数であり、iiは行列の対角要素を表すことに用いられる。
【0106】
1つの実施例では、もし第1量子ビットが純粋なデフェージングのノイズ環境にあるなら、端末は第1量子ビットの第2環境ノイズモデルを決定し、第2環境ノイズモデル及びクロストーク強度に基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度のノイズ環境中での変化量を決定する。
【0107】
第1量子ビットq0が純粋なデコヒーレンスのノイズ環境にあることを考慮する。
【0108】
【0109】
第2量子ビットq1に対してターゲットゲート制御(該ターゲットゲート制御をXゲートとする)を同期して印加するときに、伝送線のクロストークのため、第1量子ビットq0はX方向の比較的小さな回転を感じ、以下[数25]である回転角度の増加に伴って、伝送線のクロストーク強度は
図7に示される。
【0110】
【0111】
上記実施例では、第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィプロセスにおいて、第2量子ビットはウェイト状態にあり、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトルを獲得し、第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィを行うプロセスにおいて、第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある。それにより第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得する。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られた伝送線のクロストーク強度はより的確なものとなり、量子製品の作製及び最適化のプロセスにおいて詳細な指導を行うにあたり有利である。また、固有スペクトルは一般的な量子ノイズチャネルについて情報損失を生じ、ランダム基準テストが分極解消チャネルのみに対して情報損失を生じることとは相対的である。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られたクロストーク強度は、より普遍性を有し、該伝送クロストーク強度に基づき量子製品の作製及び最適化に対して詳細な指導を行うことにより有利である。
【0112】
1つの実施例では、
図8に示すように、別の量子ビットのクロストーク分析方法を提供しており、該方法が端末に応用されることを例として説明を行い、以下のステップを含む。
【0113】
S802:分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定する。
【0114】
ここで、端末は量子電子回路又は量子チップが集積された電子機器、たとえば量子コンピュータであってもよく、又は該端末は独立する量子チップ、たとえば超伝導量子チップであってもよい。第1量子ビット及び第2量子ビットは、分析待ちの、異なる量子情報を含む2つの量子ビットであってもよい。
【0115】
量子チップについて、量子ビットの数量はnであってもよく、ここでnは2よりも大きく、たとえば72量子ビットであり、量子ビットの数が多いほど、その計算能力は強くなる。1つの実施例では、端末は複数の量子ビット中から分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定できる。
【0116】
S804:第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得する。
【0117】
ここで、第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第2量子ビットはウェイト状態にある。固有スペクトルとは量子の進化プロセスにおいて形成される動力学マッピング固有スペクトルを指してもよい。スペクトル量子プロセストモグラフィは、複数種の異なる量子ビットの量子状態を利用してある1つの未知の量子プロセス、たとえば量子チャネル又は量子ゲートに入力を行い、それと相互に作用した後に出力された量子状態を測定してから、入力と出力との間の関係により該量子プロセスを推定することであってもよい。
【0118】
上記の量子状態とは量子がある状態を指してもよく、たとえば0、1及び0と1とのリニア重ね合わせ状態の|ψ>=α|0>+β|1>であってもよく、ここで、α及びβは量子ビットが0及び1である時の確率振幅を代表し、α及びβはそれぞれ複素数であり、そのモジュラスの平方|α|2及び|β|2は0及び1にある確率を代表する。
【0119】
上記第1量子ビットの量子状態はidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるものである。該identityゲートは第1量子ビット及び第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。
【0120】
例を挙げると、第1量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィを行う際に、量子状態準備時に1つの準備エラーNprepTPCP動力学マッピングを経ることを考慮する。identityゲートを通ってk回作用する。量子状態を測定するときには、1つの測定誤差NmeasTPCP動力学マッピングを経る。先ず、1シリーズの信号関数{g0(0),…g0(k)}を構成する。
【0121】
【0122】
【0123】
ここで、Pμはパウリ行列を表し、Nmeasは測定誤差を表し、Nprepは準備誤差を表し、Λは動力学マッピングの固有スペクトルを表し、identityゲートがk回作用して形成されるものであり、[数27]は超演算子演算を表す。
【0124】
先ず、パウリ行列のある1つの固有基底で量子ビットの初期状態を準備する。その後、k回の量子ゲート進化、すなわちidentityゲート自由進化を経て、続いて選択したパウリ演算子下で測定し、用いられないパウリ行列及び固有基底について、前のステップを繰り返す。最後に、上記信号関数の特殊な形式に対して、行列束法を導入してこのグループの信号関数を解析してもよく、それにより準備誤差及び測定誤差がない動力学マッピング固有スペクトルΛ={1,λ0,x,λ0,y,λ0,z}を獲得する。
【0125】
S806:第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得する。
【0126】
ここで、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある。第2量子ビットの量子状態はidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるものである。
【0127】
具体的に、端末は第2量子ビットの量子状態に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィを行う。ここで、該identityゲートは第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。そして、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはターゲットゲート制御の処理状態にある。それにより第2量子ビットに対応する信号関数を獲得し、該第2量子ビットに対応する信号関数を解析し、第2固有スペクトルを獲得する。第2量子ビットに対応する量子状態のスペクトル量子プロセストモグラフィのステップについて、上記実施例中のS104を参考できる。ここで、上記のターゲットゲート制御は、アダマールゲート(Hadamard gate)、パウリ-Xゲート(Pauli-X gate)、パウリ-Yゲート(Pauli-Y gate)、パウリ-Zゲート(Pauli-Z gate)、位相シフトゲート(Phase shift gates)、交換ゲート(Swap gate)、制御ゲート(Controlled gates)、ユニバーサル量子ゲート及びToffoliゲート(Toffoli gate)のうちのいずれか一種であってもよい。
【0128】
S808:第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定する。
【0129】
ターゲットゲート制御の印加が量子ビット間の結合周波数と比較して十分に速いときに、量子ビット間の結合による量子ビットq0の変更は無視でき、そのため、伝送線の直接クロストーク強度を比較的明確に反映できる。伝送線のクロストーク強度の具体的な計算プロセスについて上記実施例中のS506を参考できる。
【0130】
1つの実施例では、もし第1量子ビットが純粋なデフェージングのノイズ環境にあるなら、端末は第1量子ビットの第2環境ノイズモデルを決定し、第2環境ノイズモデル及びクロストーク強度に基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度のノイズ環境中での変化量を決定する。
【0131】
たとえば、
図6に示すように、
図6中の図(a)はidentityゲートに基づき第1量子ビットq0の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うものであり、シリーズの信号関数g
0(0),…,g
0(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトルを{1,λ
x,λ
y,λ
z}として計算する。ここで、第1量子ビットq0の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うプロセスにおいて、第2量子ビットq1はウェイトを維持する。
図6中の図(b)はidentityゲートに基づき第2量子ビットq1の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うものであり、シリーズの信号関数g
1(0),…,g
1(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトルを{1,λ
x’,λ
y’,λ
z’}として計算する。ここで、第2量子ビットq1の量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行うプロセスにおいて、第1量子ビットq0はターゲットゲート制御の処理状態にありウェイトを維持する。図中のXは準備のプロセスを表し、Iは自由進化プロセスを表し、すなわちidentityゲートによって自由進化プロセスを行い、H及びMは各異なる方向上の測定を表し、cは測定線を表す。
【0132】
上記実施例では、第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィプロセスにおいて、第2量子ビットはウェイト状態にあり、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトルを獲得し、第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィを行うプロセスにおいて、第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある。それにより第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得し、該第2固有スペクトルはターゲットゲート制御で生じた伝送回路のクロストークを帯びる。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られた伝送線のクロストーク強度はより的確なものとなり、量子製品の作製及び最適化のプロセスにおいて詳細な指導を行うにあたり有利である。また、固有スペクトルは一般的な量子ノイズチャネルについて情報損失を生じ、ランダム基準テストが分極解消チャネルのみに対して情報損失を生じることとは相対的である。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られたクロストーク強度は、より普遍性を有し、該伝送クロストーク強度に基づき量子製品の作製及び最適化に対して詳細な指導を行うにあたりより有利である。
【0133】
1つの例として、上記量子ビットのクロストーク分析方法の応用は量子製品及び技術の発展に対して促進作用を果たすことができる。たとえば、量子コンピュータ、量子秘密通信、量子インターネット及び量子計量器等の技術/製品は、量子ノイズの干渉を受けやすく、製品性能に対する影響は非常に深刻であり、その実用化を阻害する最も大きな障害である。量子ノイズの性質を了解することは、これらの技術/製品の発展に対して極めて重要であり、そして、量子チップ技術の継続的な発展に伴って、単一ビットのノイズ分析を除いて、量子ビット間のノイズクロストーク分析は極めて重要である。次に、量子ビット間のノイズクロストーク分析に対して解説を行う。具体的には以下のとおりである。
【0134】
(一)同期スペクトル量子プロセストモグラフィ
【0135】
(1)実験手段
【0136】
本実施例において同期スペクトル量子プロセストモグラフィを提示して量子ビットの直接結合クロストーク及び関連ノイズクロストークを研究し、identityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィを使用する。
【0137】
1)identityゲートは量子回路上において「ウェイト」に相当し、いかなる真のゲート操作でもなく、それにより伝統的なランダム基準テストに使用されるCliffordゲートと比較して、量子回路の操作複雑度を大幅に簡略化させる。
【0138】
2)余計なゲート操作を導入しないため、この時に描写するチップ中のクロストークノイズは環境ノイズ及び量子ビット間の特有結合だけであり、ゲート操作による誤差を排除し、クロストークノイズの本源分析をより明晰にする。
【0139】
3)スペクトル量子プロセストモグラフィに基づき、一方では、量子プロセストモグラフィと比較して、必要な量子状態の準備及び測定の複雑度を低下させ、他方では、量子状態の準備誤差及び測定誤差を自動的に除去し、結果をより正確にすることができる。
【0140】
ここで、同期スペクトル量子プロセストモグラフィの実験手段について、具体的には以下のとおりである。
【0141】
第1に、研究しようとする2つの量子ビット(すなわち量子ビットq0及び量子ビットq1)を決定する。
第2に、量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、同時に量子ビットq1はウェイトを維持し、これは
図2中の図(a)に示される通りである。
第3に、量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、同時に量子ビットq0はウェイトを維持し、これは
図2中の図(b)に示される通りである。
第4に、量子ビットq0及び量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、これは
図2中の図(c)に示される通りである。
【0142】
(2)データ処理
【0143】
図2中の図(a)について、量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、シリーズの信号関数g
0(0),…,g
0(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトル{1,λ
0,x,λ
0,y,λ
0,z}を計算する。
図2中の図(b)について、量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、シリーズの信号関数g
1(0),…,g
1(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトル{1,λ
1,x,λ
1,y,λ
1,z}を計算する。
図2中の図(c)について、量子ビットq0及び量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、シリーズの信号関数g
01(0),…,g
01(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトル{1,λ
ix,λ
iy,λ
iz,…,λ
zx,λ
zy,λ
zz}を計算する。
【0144】
もし量子ビットq0及び量子ビットq1の間に直接結合又は関連ノイズタイプのクロストークがないなら、該2つの量子ビットの動力学マッピングε
ABと各自のシングルビット動力学マッピングε
A、ε
Bとは、
以下[数28]を満たし、
同時に、その動力学マッピング固有スペクトルから構成されるマッピングは、
以下[数29]を満たす。
【数28】
【数29】
【0145】
これから分かるように、動力学マッピング固有スペクトルの不可分性の程度と、以下[数30]の2つの量子ビットの間のクロストークの強度と密接に関係する。指摘する必要があるものとして、動力学マッピング固有スペクトルはパウリチャネルのみについて完全な記述であり、一般的な量子ノイズチャネルについて情報の損失を生じるが、ランダム基準テストが分極解消チャネル(パウリチャネルの一種)のみに対することと比較して使用範囲がより広い。従って、クロストーク強度を以下[数31]のように定義する。
【0146】
【0147】
【0148】
ここで、nは動力学マッピング固有スペクトルΛABという行列の次元数であり、iiは該行列の対角要素を表し、ここで、iはn以下の正整数である。
【0149】
(3)同期スペクトル量子プロセストモグラフィに基づく結合クロストーク分析
【0150】
2つの独立する量子ビットである以下[数32]について、量子ビットが独立する純粋なデフェージングのノイズ環境にあると仮定すると、該量子ビットq0及び量子ビットq1の環境ノイズモデルは以下[数33]のとおりである。
【0151】
【0152】
【0153】
過去の研究に基づいて、超伝導量子チップ上の量子ビットの結合が以下[数34]の形式を有することを考慮する。
【0154】
【0155】
ここで、ωZZは結合強度である。以上の環境ノイズモデルについて、解析してそのクロストーク強度の時間に伴う変化を得ることができ、該変化は以下[数35]の関係を有する。
【0156】
【0157】
ここで、上記のΔΛ(t)は結合クロストーク強度であり、マルコフの純粋なデフェージング量子チャネルである以下[数36]を仮定し、
図3はω
1=ω
2=0、ω=0.1、p=0.02の時の結果を示し、結合クロストーク強度は時間に伴って振動減衰することが分かり、ここで、2ωt
1=2πである。
【0158】
【0159】
(4)同期スペクトル量子プロセストモグラフィに基づく量子ビットの間の関連ノイズ分析
【0160】
2つの独立する量子ビットである以下[数37]について、量子ビットが純粋なデフェージングのノイズ環境にあると仮定し、該量子ビットq0及び量子ビットq1の環境ノイズモデルは以下[数38]のとおりである。
【0161】
【0162】
【0163】
超伝導量子チップ上の量子ビット間にノイズ関連が存在することを考慮する。
【0164】
C12(t)=<f1(t)f2(t)>
【0165】
以上のノイズモデルについて、解析してそのクロストーク強度が時間に伴って以下を満たすことを得ることができる。
【0166】
【0167】
ここで、上記のΔΛ(t)は関連クロストーク強度であり、マルコフの純粋なデフェージング量子チャネル[数40]の関連ノイズを仮定する。
図4に示すように、
図4はω
1=0.3、ω
2=0.1、p
1=p
2=p=0.01、p
c=0.01の時の結果を示し、関連クロストーク強度は時間に伴って減衰することが分かる。
【0168】
【0169】
指摘する必要がある点として、従来の超伝導量子チップにおいて、量子ビットの距離が比較的遠いため、同一ノイズ源にある(ノイズ関連を有する)可能性が比較的小さく、動力学マッピング固有スペクトルの不可分性の程度は量子ビット間の直接結合を反映できると推定する。幅広い量子チップについて、量子ビット間の伝送線のクロストークが無視できるときに、動力学減結合を採用して、更にノイズ関連の情報を取り除き、動力学マッピング固有スペクトルの不可分性の程度が量子ビット間の直接結合を集中的に具体化するようにすることができる。
【0170】
(二)スペクトル量子プロセストモグラフィに基づき量子ビット間の伝送線のクロストークを描写する
【0171】
(1)実験手段
【0172】
本実施例においてスペクトル量子プロセストモグラフィを用いて量子ビット間の伝送線のクロストークを研究することを提示し、identityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィから得られる動力学マッピング固有スペクトルを参照として、特定のゲートで生じた伝送線のクロストークを分析する。
【0173】
1)特定のゲートについてのクロストーク分析によって結果をより的確なものとなるようにする。
【0174】
2)スペクトル量子プロセストモグラフィを使用すると、一方では、量子プロセストモグラフィと比較して、必要な量子状態の準備及び測定の複雑度を低下させ、他方では、量子状態の準備誤差及び測定誤差を自動的に除去し、結果をより正確にすることができる。
【0175】
ここで、スペクトル量子プロセストモグラフィで伝送線のクロストークを分析する実験手段について、具体的には以下のとおりである。
【0176】
先ず、研究しようとする2つの量子ビットq0及び量子ビットq1を決定し、ここで、量子ビットq0はターゲットビットであり、量子ビットq1は操作ビットであり、
その次に、量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、同時に量子ビットq1はウェイトを維持し(identityゲート)、これは
図6中の図(a)に示される通りである。
最後に、量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、同時に量子ビットq0に研究されるゲート制御(たとえば、Xゲート)を同期して印加し、これは
図6中の図(b)に示される通りである。
【0177】
(2)データ処理
【0178】
図6中の図(a)について、量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、シリーズの信号関数g
0(0),…,g
0(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトル{1,λ
x,λ
y,λ
z}を計算する。
図6中の図(b)について、量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、シリーズの信号関数g
1(0),…,g
1(K)を獲得し、その動力学マッピング固有スペクトル{1,λ
x’,λ
y’,λ
z’}を計算する。
【0179】
もし量子ビットq0及び量子ビットq1に伝送線のクロストークがないなら、得られる2グループのシングルビット動力学マッピングεA、εBは、
εA=εBを満たし、
同時に、その動力学マッピング固有スペクトルから構成されるマッピングは、
ΛA=ΛBを満たし、
これから、伝送線のクロストーク強度を、以下[数41]として定義できる。
【0180】
【0181】
(3)スペクトル量子プロセストモグラフィに基づき量子ビット間の伝送線のクロストーク分析を描写する
【0182】
量子ビットq0が純粋なデコヒーレンスのノイズ環境にあることを考慮する。
【0183】
【0184】
量子ビットq1に対してXゲートを同期して印加するときに、伝送線のクロストークのため、量子ビットq0はX方向の比較的小さな回転を感じる。以下[数43]である回転角度の増加に伴って、クロストーク強度は
図7に示される。
【0185】
【0186】
更に指摘するように、ゲートの印加が量子ビット間の結合周波数と比較して十分に速いときに、量子ビット間の結合による量子ビットq0の変更は無視でき、そのため、伝送線の直接クロストーク強度を比較的明確に反映できる。
【0187】
(三)結果分析
【0188】
(1)同期スペクトル量子プロセストモグラフィで量子ビット直接結合を分析することを理論的にシミュレートする
【0189】
qiskitエミュレータによって、量子ビットの間の直接結合を分析することをシミュレートし、
図9に示される量子電子回路を採用する。ZZゲートは量子ビット間の直接結合に対応し、Iゲートは自由進化を代表し、純粋なデフェージングノイズを含む。まず、量子ビットq0に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、同時に量子ビットq1はウェイトを維持し、それから、量子ビットq1に対してidentityゲートに基づくスペクトル量子プロセストモグラフィをし、同時に量子ビットq0はウェイトを維持し、最後に量子ビットq0及び量子ビットq1に対してidentityゲートに基づく同期スペクトル量子プロセストモグラフィをする。
【0190】
上記方式によって各自の量子状態の準備誤差及び測定誤差を除去した動力学マッピング固有スペクトルを得た後、以下[数44]に基づいて求めたクロストーク強度の時間に伴う変化はその前に理論的に予期されるものと一致することは、
図3及び
図10に参照され得る。ここで、
図3は理論的に予期される結合クロストーク強度であり、
図10は実際のクロストーク強度である。
【0191】
【0192】
(2)量子チップについての同期スペクトル量子プロセストモグラフィの分析
【0193】
超伝導量子チップ「ibmq_vigo」について、
図11に示すように、該超伝導量子チップは5(0-4)つの量子ビットを含む。それぞれ0-1、0-2、0-3、0-4、1-2、1-3、1-4、2-3、2-4及び3-4の2つずつの量子ビット間に対して同期スペクトル量子プロセストモグラフィを行う。0-1、1-2、1-3及び3-4を例とすると、異なる程度の量子ビットの直接結合が存在することを見出したが、1-4間には明らかな量子ビット結合がない。
【0194】
(3)量子チップについての動力学マッピング固有スペクトルに基づく伝送線のクロストーク分析
【0195】
IBM超伝導量子チップ「ibmq_vigo」に対して、仮定をする。
【0196】
量子ビットq0に対してXゲートを連続的に印加することによる量子ビットq1に対する影響を研究する。
【0197】
図13に示すように、該図は量子ビットq0にXゲートが連続的に印加される前後における、量子ビットq1の動力学固有スペクトルの変化を示す。丸はq1の自由進化であり、黒いブロックはq0にXゲートが連続的に印加された後の進化結果である。たとえば「0-4」は量子ビット4上に印加されるゲートによる量子ビット0に対する影響を表す。
図13から、量子ビット間の伝送線のクロストークが比較的大きいことが分かる。
【0198】
上記実施例におけるスペクトル量子プロセストモグラフィに基づく量子ビット間のクロストークノイズの描写によって、量子状態の準備誤差及び測定誤差を含まないマイクロ波制御線の間のクロストーク、量子状態の準備誤差及び測定誤差を含まない量子ビットが同一の環境にあるため生じた関連ノイズ、及び量子状態の準備誤差及び測定誤差を含まない量子ビット間の直接結合というクロストークノイズを分析し出すことができる。従って、以下の技術的効果を有することができる。
【0199】
(1)量子ビットクロストークの具体的なモードを明確に分析することは、かなりの程度で、人々が量子ハードウェアの作製においてチップの性能を更に的確に向上させることに寄与し、
(2)同期ランダム基準テスト及び関連ランダム基準テストに基づく既存の量子ビットクロストークノイズの校正方法に繋がることができ、
(3)同期スペクトル量子プロセストモグラフィの方法において自由進化ゲートのみを使用し、複雑な操作を別途印加せず、実験を簡単で容易に行うようにする。
【0200】
理解されるべきであるように、
図1、5、及び8のフローチャート中の各々のステップは矢印の指示に応じて順に表示されるが、これらのステップは必ずしも矢印が指示する順序に応じて順に実行されない。本明細書において明瞭な説明がない限り、これらのステップの実行は厳密な順序制限がなく、これらのステップは他の順序で実行されてもよい。そして、
図1、5、及び8中の少なくとも一部のステップは複数のステップ又は複数の段階を含んでもよく、これらのステップ又は段階は必ずしも同一時刻に実行して完了されず、異なる時刻に実行されてもよい。これらのステップ又は段階の実行順序も必ずしも順に行われず、他のステップ又は他のステップ中のステップ又は段階の少なくとも一部と順番又は交互に実行されてもよい。
【0201】
1つの実施例では、
図14に示すように、量子ビットのクロストーク分析装置を提供しており、該装置はソフトウェアモジュール又はハードウェアモジュール、又は両者の組み合わせを採用してコンピュータ機器の一部となるようにしてもよく、該装置は具体的に、決定モジュール1402と、第1トモグラフィモジュール1404と、第2トモグラフィモジュール1406と、計算モジュール1408とを含み、ここで、
決定モジュール1402は、分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定することに用いられ、
第1トモグラフィモジュール1404は、順に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得することに用いられ、
第2トモグラフィモジュール1406は、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、第1量子ビット及び第2量子ビットの共同の信号関数の第3固有スペクトルを獲得することに用いられ、
計算モジュール1408は、第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づき、第1量子ビットと第2量子ビットとの間のクロストーク強度を決定することに用いられる。
【0202】
そのうちの1つの実施例では、第1トモグラフィモジュール1404はさらに、
第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得することであって、ここで、第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第2量子ビットはウェイト状態にある、ことと、
第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得することであって、ここで、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはウェイト状態にある、ことと、に用いられる。
【0203】
そのうちの1つの実施例では、第2トモグラフィモジュール1406はさらに、
第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、第1量子ビット及び第2量子ビットの共同の信号関数を獲得することであって、共同の信号関数中には量子準備誤差及び量子測定誤差を表すパラメータが含まれる、ことと、
共同の信号関数に対して解析を行って、第3固有スペクトルを獲得することと、に用いられる。
【0204】
そのうちの1つの実施例では、計算モジュール1408はさらに、
第1固有スペクトルと第2固有スペクトルとの間のテンソル積を計算することと、
第3固有スペクトルとテンソル積との間の差値に基づき、固有スペクトルの不可分度を決定することと、
不可分度を第1量子ビットと第2量子ビットとの間のクロストーク強度として決定することと、に用いられる。
【0205】
そのうちの1つの実施例では、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態、及び第1量子ビットと第2量子ビットとの間の組み合わせの量子状態はいずれもidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われ、identityゲートは第1量子ビット及び第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。
【0206】
上記実施例では、先ず順に第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行って、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトル、及び第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得する。その後、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを同期して行って、該組み合わせに対応する信号関数の第3固有スペクトルを獲得し、第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルの間の不可分性の程度が量子ビット間のクロストーク強度と密接に関係するため、第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づいて量子ビット間のクロストーク強度を獲得できる。そして、該クロストーク強度はすべてのタイプのゲートノイズと様々な環境ノイズとの平均結果ではなく、量子製品の作製及び最適化のプロセスにおいて応用でき、量子製品の作製及び最適化のために詳細な指導を行うことができる。また、固有スペクトルは一般的な量子ノイズチャネルについて情報損失を生じ、ランダム基準テストが分極解消チャネルのみに対して情報損失を生じることとは相対的である。従って第1固有スペクトル、第2固有スペクトル及び第3固有スペクトルに基づいて得られたクロストーク強度は、より普遍性を有し、該クロストーク強度に基づいて量子製品の作製及び最適化に対して詳細な指導を行うことができる点でより有利である。
【0207】
そのうちの1つの実施例では、
図15に示すように、装置はさらに決定モジュール1402と、第1取得モジュール1410と、を含み、
上記決定モジュール1402はさらに、第1量子ビット及び第2量子ビットがいずれも純粋なデフェージングのノイズ環境にあるときに、第1量子ビット及び第2量子ビットの第1環境ノイズモデルを決定することに用いられ、
上記第1取得モジュール1410は、量子ビット結合方式を取得することに用いられ、
上記決定モジュール1402はさらに、量子ビット結合方式、第1環境ノイズモデル及びクロストーク強度に基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の結合クロストーク強度を決定することに用いられ、結合クロストーク強度は時間に伴って変化して震動減衰し、且つ準備誤差及び測定誤差を含まない。
【0208】
上記実施例では、特定クロストークタイプのクロストーク強度すなわち結合クロストーク強度を描写することによって、該結合クロストーク強度が準備誤差及び測定誤差を含まないものである。それにより、該結合クロストーク強度を利用して量子製品の作製及び最適化を指導して、作製又は最適化された量子製品が結合クロストークの影響を受けることを回避し、量子製品の性能を向上させることができる。
【0209】
そのうちの1つの実施例では、
図15に示すように、装置はさらに、決定モジュール1402と、第2取得モジュール1412と、を含み、
上記決定モジュール1402はさらに、第1量子ビット及び第2量子ビットがいずれも純粋なデフェージングのノイズ環境にあるときに、第1量子ビット及び第2量子ビットの第1環境ノイズモデルを決定することに用いられ、
上記第2取得モジュール1412は、量子ビット間のノイズ関連方式を取得することに用いられ、
上記決定モジュール1402はさらに、ノイズ関連方式、第1環境ノイズモデル及びクロストーク強度に基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の関連クロストーク強度を決定することに用いられ、関連クロストーク強度は時間に伴って変化して減衰し、且つ準備誤差及び測定誤差を含まない。
【0210】
上記実施例では、特定クロストークタイプのクロストーク強度すなわち関連クロストーク強度を描写することによって、該関連クロストーク強度が準備誤差及び測定誤差を含まないものである。そのため、該関連クロストーク強度を利用して量子製品の作製及び最適化を指導して、作製又は最適化された量子製品が関連クロストークの影響を受けることを回避し、量子製品の性能を向上させることができる。
【0211】
そのうちの1つの実施例では、第1トモグラフィモジュール1404はさらに、第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得することであって、ここで、第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第2量子ビットはウェイト状態にある、ことと、第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得することであって、ここで、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはターゲットゲート制御の処理状態にある、ことと、に用いられ、
計算モジュール1408はさらに、第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定することに用いられる。
【0212】
上記実施例では、第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィプロセスにおいて、第2量子ビットはウェイト状態にあり、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトルを獲得し、第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィを行うプロセスにおいて、第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある。それにより第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得する。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られた伝送線のクロストーク強度はより的確なものとなり、量子製品の作製及び最適化のプロセスにおいて詳細な指導を行うにあたり有利である。また、固有スペクトルは一般的な量子ノイズチャネルについて情報損失を生じ、ランダム基準テストが分極解消チャネルのみに対して情報損失を生じることとは相対的である。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られたクロストーク強度は、より普遍性を有し、該伝送クロストーク強度に基づき量子製品の作製及び最適化に対して詳細な指導を行うことにより有利である。
【0213】
1つの実施例では、
図16に示すように、量子ビットのクロストーク分析装置を提供しており、該装置はソフトウェアモジュール又はハードウェアモジュール、又は両者の組み合わせを採用してコンピュータ機器の一部となるようにしてもよく、該装置は具体的に、決定モジュール1602と、第1トモグラフィモジュール1604と、第2トモグラフィモジュール1606と、計算モジュール1608とを含み、ここで、
決定モジュール1602は、分析待ちの第1量子ビット及び第2量子ビットを決定することに用いられ、
第1トモグラフィモジュール1604は、第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第1量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第1固有スペクトルを獲得することに用いられ、ここで、第1量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第2量子ビットはウェイト状態にあり、
第2トモグラフィモジュール1606は、第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィから得られた第2量子ビットに対応する信号関数に対して解析を行って、第2固有スペクトルを獲得することに用いられ、ここで、第2量子ビットの量子状態はスペクトル量子プロセストモグラフィが行われるときに、第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にあり、
計算モジュール1608は、第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度を決定することに用いられる。
【0214】
そのうちの1つの実施例では、決定モジュール1602はさらに、もし第1量子ビットが純粋なデフェージングのノイズ環境にあるなら、第1量子ビットの第2環境ノイズモデルを決定することに用いられ、
計算モジュール1608はさらに、第2環境ノイズモデル及びクロストーク強度に基づいて、第1量子ビットと第2量子ビットとの間の伝送線のクロストーク強度のノイズ環境中での変化量を決定することに用いられる。
【0215】
そのうちの1つの実施例では、第1量子ビット及び第2量子ビットにそれぞれ対応する量子状態はいずれもidentityゲートに基づきスペクトル量子プロセストモグラフィが行われ、identityゲートは第1量子ビット及び第2量子ビットがある量子回路上に対して真の操作をしない自由進化ゲートである。
【0216】
上記実施例では、第1量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィプロセスにおいて、第2量子ビットはウェイト状態にあり、第1量子ビットに対応する信号関数の第1固有スペクトルを獲得し、第2量子ビットの量子状態に対してスペクトル量子プロセストモグラフィを行い、且つトモグラフィを行うプロセスにおいて、第1量子ビットはターゲットゲート制御に基づく処理状態にある。それにより第2量子ビットに対応する信号関数の第2固有スペクトルを獲得し、該第2固有スペクトルはターゲットゲート制御で生じた伝送回路のクロストークを帯びる。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られた伝送線のクロストーク強度はより的確なものとなり、量子製品の作製及び最適化のプロセスにおいて詳細な指導を行うことができる点で有利である。また、固有スペクトルは一般的な量子ノイズチャネルについて情報損失を生じ、ランダム基準テストが分極解消チャネルのみに対して情報損失を生じることとは相対的である。従って第1固有スペクトル及び第2固有スペクトルに基づいて得られたクロストーク強度は、より普遍性を有し、該伝送クロストーク強度に基づき量子製品の作製及び最適化に対して詳細な指導を行うことができる点でより有利である。
【0217】
量子ビットのクロストーク分析装置の具体的な限定に関しては、上記の文章中において量子ビットのクロストーク分析方法についての限定を参照できるため、ここで詳述しない。上記量子ビットのクロストーク分析装置中の各々モジュールの全部又は部分は、ソフトウェア、ハードウェア及びその組み合わせによって実現できる。上記各モジュールは、ハードウェア形式でコンピュータ機器中のプロセッサ中に埋め込まれ又はそれから独立するようにしてもよく、ソフトウェア形式でコンピュータ機器中のメモリ中に記憶されてもよく、それによってプロセッサは以上の各々モジュールに対応する操作を呼び出して実行する。
【0218】
1つの実施例では、コンピュータ機器を提供しており、該コンピュータ機器は端末又はサーバであってもよく、コンピュータ機器が端末であることを例として説明を行うと、該端末の内部構造図は
図17に示されてもよい。該コンピュータ機器はシステムバスによって接続されるプロセッサ、メモリ、通信インタフェース、表示スクリーン及び入力装置を含む。ここで、該コンピュータ機器のプロセッサは計算及び制御能力を提供することに用いられる。該コンピュータ機器のメモリは不揮発性記憶媒体、及び内部メモリを含む。該不揮発性記憶媒体にオペレーティングシステム及びコンピュータプログラムが記憶されている。該内部メモリは不揮発性記憶媒体中のオペレーティングシステム及びコンピュータプログラムの実行のために環境を提供する。該コンピュータ機器の通信インタフェースは外部の端末と有線又は無線方式の通信を行うことに用いられ、無線方式はWIFI、オペレータネットワーク、NFC(近距離無線通信)又はその他技術によって実現できる。該コンピュータプログラムはプロセッサに実行されるときに、一種の量子ビットのクロストーク分析方法を実現する。該コンピュータ機器の表示スクリーンは液晶表示スクリーン又は電子インク表示スクリーンであってもよく、該コンピュータ機器の入力装置は表示スクリーン上に被覆されるタッチ層であってもよく、コンピュータ機器のケーシング上に設置される押しボタン、トラックボール又はタッチ制御パッドであってもよく、さらに外付けのキーボード、タッチ制御パッド又はマウス等であってもよい。
【0219】
当業者であれば理解できるように、
図17において示される構造は、単に本願の手段と関係する部分の構造のブロック図であり、本願の手段がそれに応用されるコンピュータ機器に対する限定を構成せず、具体的なコンピュータ機器は図において示されるものよりも多い又は少ない部材を含んでもよく、又はある部材を組み合わせ、又は異なる部材配置を有する。
【0220】
1つの実施例では、さらにコンピュータ機器を提供しており、メモリと、プロセッサとを含み、メモリにおいてコンピュータプログラムが記憶されており、該プロセッサはコンピュータプログラムを実行するときに、上記各方法実施例中のステップを実現する。
【0221】
1つの実施例では、コンピュータ可読記憶媒体を提供しており、コンピュータプログラムが記憶されており、該コンピュータプログラムがプロセッサに実行されるときに、上記各方法実施例中のステップを実現する。
【0222】
1つの実施例では、コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムを提供しており、該コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムはコンピュータ命令を含み、該コンピュータ命令はコンピュータ可読記憶媒体中に記憶される。コンピュータ機器のプロセッサはコンピュータ可読記憶媒体から該コンピュータ命令を読み取り、プロセッサは該コンピュータ命令を実行し、該コンピュータ機器に上記各方法実施例中のステップを実行させる。
【0223】
当業者であれば理解できるように、上記実施例の方法中の全部又は一部のフローを実現することは、コンピュータプログラムによって関係するハードウェアに命令を出すことにより完了でき、上記のコンピュータプログラムは1つの不揮発性コンピュータリーダブル記憶媒体中に記憶されてもよく、該コンピュータプログラムが実行されるときに、上記各方法の実施例のフローを含んでもよい。ここで、本願に提供される各実施例において使用される、メモリ、記憶、データベース又は他の媒体に対するいかなる引用も、いずれも不揮発性及び揮発性メモリのうちの少なくとも一種を含んでもよい。不揮発性メモリは読み出し専用メモリ(Read-Only Memory、ROM)、磁気テープ、フロッピーディスク、フラッシュメモリ又は光メモリ等を含んでもよい。揮発性メモリはランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)又は外部キャッシュメモリを含んでもよい。局限ではなく説明とすると、RAMは複数種の形式のもの、たとえば静的ランダムアクセスメモリ(Static Random Access Memory、SRAM)又は動的ランダムアクセスメモリ(Dynamic Random Access Memory、DRAM)等であってもよい。
【0224】
以上の実施例の各技術的特徴は任意の組み合わせを行うことができ、記述を簡潔にするために、上記実施例中の各々の技術的特徴のすべての可能な組み合わせに対してともに記述を行っておらず、しかし、これらの技術的特徴の組み合わせは矛盾が存在しない限り、ともに本明細書に記載の範囲と見なされるべきである。
【0225】
上記の実施例は本願のいくつかの実施形態のみを表現し、その記述は比較的具体的で詳細である。従って発明の特許範囲に対する制限として理解されるようにしてはならない。指摘すべきであるように、当業者にとって、本願の発想から逸脱しない前提下で、さらに若干の変形及び改良をすることができ、これらはともに本願の保護範囲に属する。従って、本願特許の保護範囲は添付の請求項に準じるべきである。
【符号の説明】
【0226】
102 端末
104 サーバ
1402 決定モジュール
1404 第1トモグラフィモジュール
1406 第2トモグラフィモジュール
1408 計算モジュール
1410 第1取得モジュール
1412 第2取得モジュール
1602 決定モジュール
1604 第1トモグラフィモジュール
1606 第2トモグラフィモジュール
1608 計算モジュール