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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230509BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230509BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
E02F9/20 C
E02F3/43 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022550188
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002885
(87)【国際公開番号】W WO2022162795
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中野 寿身
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049623(WO,A1)
【文献】特開2014-122510(JP,A)
【文献】特開平4-366236(JP,A)
【文献】特許第5947477(JP,B1)
【文献】特開2018-80510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/20
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、
前記走行体に旋回自在に取り付けられる旋回体と、
前記旋回体に揺動自在に取り付けられるとともにブーム、アーム及びバケットを有する作業フロントと、
前記ブームと前記アームと前記バケットをそれぞれ駆動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータを操作する操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、
前記作業フロントの姿勢と前記旋回体の姿勢をそれぞれ検出する姿勢検出装置と、
施工目標面を設定し、設定した前記施工目標面と前記バケットの距離を目標面距離として演算する目標面管理装置と、
前記操作量と前記作業フロントの姿勢と前記目標面距離に基づいて前記バケットが前記施工目標面に沿って掘削するように前記アクチュエータの目標動作速度を演算し、前記アクチュエータへの動作指令値を生成する駆動制御装置と、
前記動作指令値に基づいて前記アクチュエータを駆動させる駆動装置と、
を備える油圧ショベルにおいて、
前記駆動制御装置は、前記目標面距離に基づいて前記油圧ショベルがジャッキアップする際の目標ジャッキアップ速度を決定し、決定した前記目標ジャッキアップ速度に基づいて前記目標動作速度を補正することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
前記アクチュエータの負荷を検出する負荷検出装置を更に備え、
前記駆動制御装置は、前記負荷検出装置で検出した結果に基づいて前記作業フロントが掘削する場所の土壌硬さを判定し、前記土壌硬さと、前記目標ジャッキアップ速度に基づいて演算した補正速度とに基づいて前記目標動作速度を補正し、補正した前記目標動作速度に基づいて前記動作指令値を生成する請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項3】
前記駆動制御装置は、前記目標面距離が小さいほど前記目標ジャッキアップ速度を小さく決定する請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項4】
前記目標面管理装置は、前記バケットの底面と前記施工目標面がなす角度をバケット対目標面角度として演算し、
前記駆動制御装置は、前記バケット対目標面角度が小さいほど前記目標ジャッキアップ速度を大きく決定する請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項5】
前記駆動制御装置は、前記作業フロントの姿勢に基づいて前記バケットと前記走行体の距離をバケット対走行体距離として演算し、演算した前記バケット対走行体距離が大きいほど前記目標ジャッキアップ速度を大きく決定する請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項6】
前記駆動制御装置は、前記姿勢検出装置で検出した結果に基づいて走行体傾斜角度を演算し、演算した前記走行体傾斜角度が大きいほど前記目標ジャッキアップ速度を小さく決定する請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項7】
前記駆動制御装置は、前記姿勢検出装置で検出した結果に基づいて前記走行体の進行方向を基準とした前記旋回体と前記走行体の相対角度を旋回体相対角度として演算し、演算した前記旋回体相対角度が大きいほど前記目標ジャッキアップ速度を小さく決定する請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項8】
前記駆動制御装置は、前記補正速度が前記操作量に相当するオペレータ要求速度を超えないように前記目標動作速度を補正する請求項2に記載の油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事、建設工事、土木工事、浚渫工事等に使用される油圧ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事、建設工事、土木工事、浚渫工事等に使用される油圧ショベルとして、動力系により走行する走行体の上部に旋回体を旋回自在に取り付けると共に、旋回体に多関節型の作業フロントを上下方向に揺動自在に取り付け、作業フロントを構成する各フロント部材をシリンダで駆動するものが知られている。作業フロントは、例えばブーム、アーム、バケット等から構成されている。この種の油圧ショベルには、稼働可能な領域を設けてその範囲内で作業フロントを半自動的に動作させる、いわゆるマシンコントロール機能を有するものがある。マシンコントロールでは、オペレータが施工目標面を設定し、ブーム操作をすると施工目標面にバケットが侵入しないように施工目標面とバケットの距離に応じてブームの動作速度が制限されてブームが減速停止し、またアーム操作をすると施工目標面に沿うようにブームやバケットを半自動的に動作させることができる。
【0003】
ところで、オペレータが油圧ショベルを用いて硬い土壌を掘削するときは、走行体後部と作業フロントが支点となって走行体前部が浮上った状態、いわゆるジャッキアップを行う(詳細は後述する)。油圧ショベルがジャッキアップするときに作業フロントの掘削力は最大となるため、オペレータは掘削する土壌の硬さ、施工目標面とバケットの距離、及び油圧ショベルのジャッキアップの状態を総合的に判断して操作レバーの操作量を微調整することで、硬い土壌を効率良く且つ精度良く掘削する。
【0004】
特許文献1には、マシンコントロールを用いて精度良く掘削するために施工目標面とバケットの距離を時間積分し、ブーム動作速度を補正する技術が開示されている。これによって、掘削する土壌が硬く且つ施工目標面とバケットの距離が離れている状態が続く場合には、バケットが施工目標面に近づくようにブームの動作速度が補正される。このとき、バケットに働く掘削反力が油圧ショベルの最大掘削力を超えると油圧ショベルはジャッキアップする。すなわち、特許文献1の技術によれば、施工目標面とバケットの距離が離れる状態が継続するとブームの動作速度が補正され、油圧ショベルは徐々にジャッキアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5947477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マシンコントロールを用いた掘削作業では、オペレータが手動で通常の掘削作業を行う時と同じように油圧ショベルが素早くジャッキアップできることが操作性および作業性の観点から必要である。また、上述したように、マシンコントロールを用いた掘削作業では、施工目標面にバケットが侵入しないように精度良く作業フロントを制御する必要がある。そこで、掘削の精度を維持したまま、オペレータの操作性と作業性を良好にすべく油圧ショベルがジャッキアップする速さを制御する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ブームの動作速度は施工目標面とバケットの距離が離れた状態が継続された時間が長いほど補正量が大きくなるため、油圧ショベルはゆっくりとジャッキアップする。すなわち、施工目標面とバケットの距離が離れた状態である程度の時間を継続しておかないと所定のジャッキアップ速度に達することができない。このため、施工目標面付近において素早いジャッキアップを行うことができない。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みて、施工目標面付近において素早いジャッキアップを行うことができる油圧ショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る油圧ショベルは、走行可能な走行体と、前記走行体に旋回自在に取り付けられる旋回体と、前記旋回体に揺動自在に取り付けられるとともにブーム、アーム及びバケットを有する作業フロントと、前記ブームと前記アームと前記バケットをそれぞれ駆動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを操作する操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、前記作業フロントの姿勢と前記旋回体の姿勢をそれぞれ検出する姿勢検出装置と、施工目標面を設定し、設定した前記施工目標面と前記バケットの距離を目標面距離として演算する目標面管理装置と、前記操作量と前記作業フロントの姿勢と前記目標面距離に基づいて前記バケットが前記施工目標面に沿って掘削するように前記アクチュエータの目標動作速度を演算し、前記アクチュエータへの動作指令値を生成する駆動制御装置と、前記動作指令値に基づいて前記アクチュエータを駆動させる駆動装置と、を備える油圧ショベルにおいて、前記駆動制御装置は、前記目標面距離に基づいて前記油圧ショベルがジャッキアップする際の目標ジャッキアップ速度を決定し、決定した前記目標ジャッキアップ速度に基づいて前記目標動作速度を補正することを特徴としている。
【0010】
本発明に係る油圧ショベルでは、駆動制御装置は、目標面距離に基づいて油圧ショベルがジャッキアップする際の目標ジャッキアップ速度を決定し、決定した目標ジャッキアップ速度に基づいて目標動作速度を補正するので、施工目標面付近において素早いジャッキアップを行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、施工目標面付近において素早いジャッキアップを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。
図2】油圧ショベルの制御システムの構成を示す図である。
図3】油圧ショベルの駆動制御装置の構成を示す図である。
図4】実施形態に係る油圧ショベルのジャッキアップ状態を示す側面図である。
図5】油圧ショベルの駆動制御装置の制御ロジックを示す図である。
図6】ブームシリンダ制限速度と目標面距離の関係を示す図である。
図7】目標面距離に基づいて目標ジャッキアップ速度を決定するテーブルを示す図である。
図8】バケット対目標面角度に基づいて目標ジャッキアップ速度を決定するテーブルを示す図である。
図9】バケット対走行体距離に基づいて目標ジャッキアップ速度を決定するテーブルを示す図である。
図10】走行体傾斜角度に基づいて目標ジャッキアップ速度を決定するテーブルを示す図である。
図11】旋回体相対角度に基づいて目標ジャッキアップ速度を決定するテーブルを示す図である。
図12A】掘削動作を行ったときの走行体傾斜角度の時間変化を示す図である。
図12B】掘削動作を行ったときのブーム速度指令値の時間変化を示す図である。
図13】要求速度に基づいて駆動指令値を決定するテーブルを示す図である。
図14】駆動制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る油圧ショベルの実施形態について説明する。以下の説明では、上下、左右、前後の方向及び位置は、油圧ショベルの通常の使用状態、すなわち油圧ショベルの走行体が地面に接地する状態を基準にする。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る油圧ショベル1は、動力系により走行する走行体4と、走行体4に対して左右方向に旋回自在に取り付けられた旋回体3と、旋回体3に取り付けられた作業フロント2とを備えている。走行体4及び旋回体3は、例えばそれぞれ油圧アクチュエータによって駆動されている。
【0015】
<作業フロントについて>
作業フロント2は、旋回体3に対して上下方向に揺動自在に構成されている。この作業フロント2は、旋回体3に連結されたブーム20と、ブーム20に連結されたアーム21と、アーム21に連結されたバケット22と、両端がそれぞれブーム20と旋回体3に連結されたブームシリンダ20Aと、両端がそれぞれアーム21とブーム20に連結されたアームシリンダ21Aと、第1リンク22Bと、第2リンク22Cと、両端がそれぞれ第2リンク22Cとアーム21に連結されたバケットシリンダ22Aとを備えている。これらの部材はそれぞれ連結部分を中心に上下方向に揺動するように構成されている。
【0016】
ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22Aは、請求の範囲に記載の「アクチュエータ」に相当するものであり、例えばそれぞれ油圧アクチュエータからなり、伸縮によりそれぞれブーム20、アーム21、バケット22を駆動させることができる。なお、バケット22は、グラップル、ブレーカ、リッパ、マグネット等の図示しない作業具に任意に交換可能である。
【0017】
ブーム20にはブーム20の姿勢を検出するためのブームIMU(Inertial Measurement Unit)センサ20S、アーム21にはアーム21の姿勢を検出するためのアームIMUセンサ21Sがそれぞれ内蔵されている。また、第2リンク22Cには、バケット22の姿勢を検出するためのバケットIMUセンサ22Sが内蔵されている。ブームIMUセンサ20S、アームIMUセンサ21S及びバケットIMUセンサ22Sは、それぞれ角速度センサと加速度センサによって構成されている。
【0018】
また、ブームシリンダ20Aには、シリンダ圧センサとして、ブームボトム圧センサ20BPとブームロッド圧センサ20RPとが取り付けられている。
【0019】
<旋回体について>
旋回体3は、旋回体IMUセンサ30S、メインフレーム31、運転室32、操作量検出装置33、駆動制御装置34、駆動装置35、原動装置36、旋回角度センサ37、及び目標面管理装置100を備えている。メインフレーム31は、旋回体3の基礎部分であり、走行体4に対して旋回自在に取り付けられている。旋回体IMUセンサ30S、運転室32、駆動制御装置34、駆動装置35及び原動装置36は、メインフレーム31の上方に配置されている。旋回体IMUセンサ30Sは、角速度センサと加速度センサから構成されており、旋回体3の地面に対する傾きを検出する。旋回角度センサ37は、例えばポテンショメータであり、旋回体3と走行体4の相対角度を検出できるように取り付けられている。
【0020】
操作量検出装置33は、運転室32の内部に設けられており、2本の操作レバー(操作装置)33A,33Bとそれらが倒された量を検出する操作入力量センサ33C(図2参照)によって構成されている。操作入力量センサ33Cは、オペレータが操作レバー33A,33Bを倒す量(すなわち、操作レバーの操作量R)を検出することで、オペレータが作業フロント2に要求する要求速度をそれぞれ電気信号に変換することができるように構成されている。なお、操作レバー33A,33Bは、油圧パイロット方式によるものであっても良い。
【0021】
駆動装置35は、電磁制御弁35Aと方向切替弁35Bによって構成され(図2参照)、駆動制御装置34から指示された制御指令値に従って、電磁制御弁35Aと方向切替弁35Bを駆動させることにより、油圧アクチュエータであるブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22Aを動作させる。
【0022】
原動装置36は、エンジン36Aと油圧ポンプ36Bによって構成され(図2参照)、油圧ショベル1の運転に必要な油圧を動力として発生させる。目標面管理装置100は、目標面管理コントローラにより構成されている。
【0023】
<走行体について>
一方、走行体4は、トラックフレーム40、フロントアイドラ41、スプロケット43、及び履帯45を備えている。フロントアイドラ41及びスプロケット43は、それぞれトラックフレーム40に配置され、履帯45はそれらの部材を介してトラックフレーム40を周回できるように配置されている。オペレータは、操作レバー33A,33Bを操作することによりスプロケット43の回転速度を調整し、履帯45を介して油圧ショベル1を走行させることができる。走行体4は、履帯45を備えたものに限定されることなく、走行輪や脚を備えたものであっても良い。
【0024】
以下、図2を参照して油圧ショベル1の制御システムについて説明する。油圧ショベル1の制御システムは、主に、操作量検出装置33と、姿勢検出装置38、負荷検出装置39、目標面管理装置100、駆動装置35、駆動制御装置34、及び原動装置36によって構成されている。そして、操作量検出装置33、姿勢検出装置38、負荷検出装置39、及び目標面管理装置100は、それぞれ駆動制御装置34と電気的に接続されている。
【0025】
<操作量検出装置について>
油圧ショベルでは、一般に操作レバーが倒された量(すなわち、操作レバーの操作量R)が大きくなると、各シリンダの動作速度が速くなるように設定されている。オペレータは、操作レバーを倒す量を変更することにより、各シリンダの動作速度を変更して油圧ショベルを動作させる。操作量検出装置33は、上述したように、操作レバー33A,33Bと操作入力量センサ33Cにより構成されている。操作入力量センサ33Cは、操作レバー33A,33Bの操作量Rを電気的に検出するためのブーム操作入力量センサ、アーム操作入力量センサ、及びバケット操作入力量センサを有する。このようにすることで、オペレータが要求するブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22Aの要求速度をそれぞれ検出することができる。なお、操作量Rを検出するためのセンサは、操作レバーが倒された量を直接検出するものに限らず、操作パイロット圧を検出する方式であっても良い。
【0026】
<姿勢検出装置について>
姿勢検出装置38は、旋回体IMUセンサ30S、ブームIMUセンサ20S、アームIMUセンサ21S、バケットIMUセンサ22S及び旋回角度センサ37によって構成されている。これらのIMUセンサは、それぞれ角速度センサ及び加速度センサを有するので、それぞれのセンサ位置での角速度及び加速度の信号を取得することができる。ブーム20、アーム21、バケット22、ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22A、第1リンク22B、第2リンク22C、及び旋回体3がそれぞれ揺動できるように取り付けられているので、姿勢検出装置38は機械的なリンク関係からブーム20、アーム21、バケット22、及び旋回体3の姿勢を検出することができる。
【0027】
なお、ここで示した姿勢の検出方法は、一例であり、作業フロント2の各部の相対角度を直接計測するものや、ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22Aのストロークを検出して油圧ショベル1の各部の姿勢を検出しても良い。旋回角度センサ37は、上述したようにポテンショメータであり、旋回体3に対する走行体4の相対角度を検出する。なお、旋回角度センサ37は、旋回角度を計測できるものあれば良く、ポテンショメータ以外の計測装置であっても良い。
【0028】
<負荷検出装置について>
負荷検出装置39は、シリンダ圧センサとしてのブームボトム圧センサ20BPとブームロッド圧センサ20RPによって構成されており、これらのセンサを介してブームシリンダ20Aへの負荷(すなわち、ブームシリンダ20Aにかかる圧力)を検出する。なお、負荷の検出方法は、これに限らず、ロードセルなどを用いても良い。
【0029】
<目標面管理装置について>
目標面管理装置100は、図4に示すように、施工目標面を設定するとともに、傾斜角度演算部820(後述する)で演算した走行体傾斜角度θpとフロント姿勢検出部830(後述する)で検出した作業フロント2の姿勢とに基づいて、設定した施工目標面とバケット22の距離(以下、目標面距離dという)を演算し、演算した結果を駆動制御装置34に出力する。本実施形態では、目標面管理装置100は、設定した施工目標面とバケット22の最短距離を演算し、演算した結果を駆動制御装置34に出力する。また、この目標面管理装置100は、傾斜角度演算部820で演算した走行体傾斜角度θp及びフロント姿勢検出部830で検出した作業フロント2の姿勢に基づいて、バケット22の底面と施工目標面がなす角度θb(以下、バケット対目標面角度θbという)を演算する。なお、施工目標面は、オペレータが直接入力して設定しても良いし、予め作成した設計図面等を入力し設定しても良い。
【0030】
<駆動装置について>
駆動装置35は、上述したように、電磁制御弁35Aと方向切替弁35Bによって構成され、駆動制御装置34から指令された制御指令値に従って、油圧ショベル1の各部を駆動する油圧アクチュエータに供給される圧油の量を制御する。より具体的には、駆動制御装置34から出力された制御電流は、電磁制御弁35Aによってパイロット圧に変換され、パイロット圧によって方向切替弁35Bのスプールが駆動される。そして、方向切替弁35Bによって流量が調整された作動油は、油圧ショベル1の各部を駆動する油圧アクチュエータに供給され、各可動部を駆動する。例えば、駆動装置35は、原動装置36から供給される作動油の流量と方向を調整し、ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22A、旋回体3、走行体4をそれぞれ駆動させる油圧アクチュエータを駆動する。
【0031】
<原動装置について>
原動装置36は、上述したようにエンジン36Aと油圧ポンプ36Bによって構成され、ブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、バケットシリンダ22A及び旋回体3と走行体4を駆動させる油圧アクチュエータを駆動するために必要な圧油を生成する。なお、原動装置36は、この構成に限らず、電動ポンプなどの他の動力源を用いても良い。
【0032】
<駆動制御装置について>
駆動制御装置34は、例えば駆動制御用コントローラにより構成されており、操作量検出装置33、姿勢検出装置38、負荷検出装置39、及び目標面管理装置100からの信号を処理し、駆動装置35に動作指令を出力する。
【0033】
図3は油圧ショベルの駆動制御装置の構成を示す図である。図3に示すように、駆動制御装置34は、主に、目標動作速度演算部710、動作指令値生成部720、駆動指令部730、シリンダ負荷演算部810、旋回角度演算部840、傾斜角度演算部820、フロント姿勢検出部830、土壌硬さ判定部910、目標ジャッキアップ速度決定部920、及び目標動作速度補正部930を備えている。
【0034】
目標動作速度演算部710は、操作入力量センサ33Cで検出した操作レバー33A,33Bの操作量R、目標面管理装置100で演算した目標面距離d、及びフロント姿勢検出部830で検出した作業フロント2の姿勢に基づいて、バケット22が施工目標面に沿って動作するようにブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、及びバケットシリンダ22Aの少なくとも一つの目標動作速度Vtを演算する。
【0035】
目標動作速度Vtの具体的な演算方法については、既に周知された方法を用いることができる。例えば特開2018-080510号公報に記載されるように、目標動作速度演算部710は、バケット爪先が施工目標面に沿って動くようにバケット爪先の動作方向と速度を決めて、その速度になるようにブーム、アーム及びバケットの目標動作速度を演算して決める。
【0036】
動作指令値生成部720は、目標動作速度演算部710で演算した目標動作速度Vtに基づき、予め定められたテーブルデータを用いてシリンダを動作させるのに必要な駆動指令値Piを生成する。更に、動作指令値生成部720は、目標動作速度補正部930から出力された補正速度Vcに基づいて、駆動指令値Piを生成する。なお、ここでの駆動指令値は、請求の範囲に記載の「動作指令値」に相当するものである。
【0037】
駆動指令部730は、動作指令値生成部720が生成した駆動指令値Piに基づいて、電磁制御弁35Aの駆動に必要な制御電流Iを生成する。
【0038】
シリンダ負荷演算部810は、ブームシリンダ20Aに取り付けられたブームボトム圧センサ20BPとブームロッド圧センサ20RPの検出結果に基づいて、シリンダの負荷(すなわち、ブームボトム側負荷P及びブームロッド側負荷P)を演算する。
【0039】
旋回角度演算部840は、旋回角度センサ37で検出した信号を基に旋回体3と走行体4の相対角度(以下、旋回体相対角度θsという)を演算する。旋回体相対角度θsは、走行体4の進行方向を基準とする。走行体4の進行方向は、図1及び図4においては紙面の左側を指す。
【0040】
傾斜角度演算部820は、旋回体3に取り付けられた旋回体IMUセンサ30Sから得られる加速度信号と角速度信号に基づいて旋回体3の傾斜角度を演算する。本実施形態では、旋回体3の傾斜角度と走行体4の傾斜角度が同一であるため、演算で得られた旋回体3の傾斜角度を走行体4の傾斜角度(以下、走行体傾斜角度θpという)とする。
【0041】
フロント姿勢検出部830は、ブームIMUセンサ20S、アームIMUセンサ21S、バケットIMUセンサ22Sから得られる加速度信号及び角速度信号に基づいて、ブーム20、アーム21、バケット22の姿勢をそれぞれ検出する。
【0042】
土壌硬さ判定部910は、作業フロント2が掘削する場所の土壌硬さを判定する。土壌硬さの判定として、土壌硬さHを用いた手法と、ブームシリンダ20Aの推力Fを用いた手法とが挙げられる。土壌硬さHを用いた手法では、土壌硬さ判定部910は、まずフロント姿勢検出部830とシリンダ負荷演算部810の結果、すなわちフロント姿勢とブームシリンダの負荷とに基づいて、作業フロント2が掘削を行っている土壌の硬さを土壌硬さHとして演算する。次に、土壌硬さ判定部910は、演算した土壌硬さHを予め定められた硬さ閾値と比較することで土壌硬さを判定する。例えば演算した土壌硬さHが硬さ閾値よりも大きい場合、土壌硬さ判定部910は土壌が硬いと判定する。なお、硬さ閾値は、例えば各土壌の硬さの経験値に基づいて決定されている。
【0043】
一方、ブームシリンダ20Aの推力Fを用いた手法では、土壌硬さ判定部910は、まず下記式(1)に基づいてブームシリンダ20Aの推力Fを求める。式(1)中のSがブームボトム側受圧面積、Pがブームボトム側負荷、Sがブームロッド側受圧面積、Pがブームロッド側負荷である。
F=S×P-S×P (1)
次に、土壌硬さ判定部910は、作業フロント2の姿勢に応じた閾値を決定しておき、式(1)で求めたブームシリンダ20Aの推力Fをその閾値と比較することで土壌硬さを判定する。例えばブームシリンダ20Aの推力がその閾値よりも大きいときは、土壌が硬いと判定される。なお、この場合の閾値は、作業フロント2の重量から計算した値によって決定されても良く、実際に油圧ショベル1をジャッキアップした実験値を用いて決定されても良い。
【0044】
目標ジャッキアップ速度決定部920は、目標面管理装置100で演算した目標面距離d及びバケット対目標面角度θbと、バケット対走行体距離dbと、傾斜角度演算部820で演算した走行体傾斜角度θpと、旋回角度演算部840で演算した旋回体相対角度θsに基づいて、走行体4がジャッキアップするときの目標ジャッキアップ速度ωを演算して決定する。なお、図4に示すように、目標面距離dは施工目標面とバケット22の最短距離であり、バケット対目標面角度θbはバケット22の底面と施工目標面のなす角度である。バケット対走行体距離dbは、油圧ショベル1の進行方向においてバケット22と走行体4の距離であり、目標ジャッキアップ速度決定部920によって演算される。
【0045】
<ジャッキアップについて>
ここで、図4を基に油圧ショベル1のジャッキアップについて説明する。図4に示すように、ジャッキアップとは、走行体4の後部とバケット22とがそれぞれ地面に接地し、走行体4の前部が空中に浮きがっている状態をいう。このとき、走行体4の底面と地面がなす角度をジャッキアップ角度αという。ジャッキアップ角度αが零の場合は走行体4の底面全体が地面に接地している状態である。そして、ジャッキアップ速度とは、ジャッキアップ角度αの時間変化であり、走行体4と地面の接点を中心とした走行体4の角速度を示す。
【0046】
ところで、旋回体3は走行体4に対して旋回可能であるため、作業姿勢によっては旋回体3と走行体4の向きが図示と逆方向や横方向になることがある。この場合も走行体4の地面との接地点と、地面となす角度をジャッキアップ角度αと呼ぶ。一般的に、走行体4は進行方向に長く、進行方向に直交する横方向の幅は小さくなっている。このため、アーム21の姿勢を変えないままブーム20を一定の動作速度で下げ動作を行うと、走行体4が旋回体3に対して横方向にあるとき、走行体4が地面と接する点とバケット22の距離が小さくなるので、走行体4が旋回体3に対して進行方向にあるときと比べてジャッキアップ速度が速くなる。
【0047】
<目標ジャッキアップ速度>
以下、目標ジャッキアップ速度の決定方法について図5図13を用いて説明する。図5に示すように目標ジャッキアップ速度ωは、目標面距離d、バケット対目標面角度θb、バケット対走行体距離db、走行体傾斜角度θp、旋回体相対角度θsにそれぞれ基づいて決定される目標ジャッキアップ速度テーブルの最小値を選択することによって決定される。油圧ショベル1がジャッキアップする速度は、作業フロント2の姿勢によって異なるので、目標ジャッキアップ速度となるように作業フロント2の姿勢に応じて、例えばブームシリンダ20Aの速度を演算する。演算方法については単純な幾何学演算であるので、その詳細説明を省略する。
【0048】
図5に示すように、演算したブームシリンダ20Aの目標動作速度は、オペレータが要求する速度R’を超えないように最小値が選択され、補正速度Vcとして出力される。例えば、土壌硬さ判定部910によって土壌硬さが硬いと判定されたときは、目標動作速度演算部710によって演算された目標動作速度Vtに代わって、補正速度Vcが選択され、駆動指令値変換テーブルに基づいて駆動指令値Piが演算される。
【0049】
通常のマシンコントロールにおいてバケット22を施工目標面に近づけた場合、目標面距離dに対するブームシリンダ20Aの制限速度は、図6の点線で示したようになる(すなわち、目標ジャッキアップ速度を指示しない例)。これに対して、本実施形態の制御を行った場合、図6の実線で示すようになる(すなわち、目標ジャッキアップ速度を指示した例)。図6から分かるように、目標ジャッキアップ速度を指示しない例では、点線の傾斜が比較的に緩やかであるので、ブームシリンダ20Aの制限速度が緩和されておらず、ブーム下げ動作は比較的に遅い。一方、目標ジャッキアップ速度を指示した例では、実線の傾斜率が比較的に急であり、ブームシリンダ20Aの制限速度が短時間で大きくなる。このため、施工目標面に近い場合でのブームシリンダ20Aの制限速度が緩和されて素早いブーム下げ動作が可能になり、油圧ショベル1を短時間でジャッキアップすることができる。
【0050】
図7図11には、それぞれ目標面距離d、バケット対目標面角度θb、バケット対走行体距離db、走行体傾斜角度θp、旋回体相対角度θsに基づいて、目標ジャッキアップ速度ωを決定するテーブルの例を示す。これらのテーブルの値は説明の都合上、線形関数で表記されているが、2次関数などであっても良く、その形式と値は実験値や設計思想に基づいて決定すれば良い。
【0051】
本実施形態において、目標ジャッキアップ速度決定部920は、目標面距離dが小さいほど目標ジャッキアップ速度ωを小さく決定することが好ましい(図7参照)。このように目標面距離dが小さいほど目標ジャッキアップ速度ωを小さく決定すれば、バケット22が施工目標面に向かってゆっくり(例えば、施工目標面を掘り過ぎないように制限された速度で)動作するので、施工目標面の掘り過ぎを防止することができる。
【0052】
加えて、目標ジャッキアップ速度決定部920は、バケット対目標面角度θbが小さいほど目標ジャッキアップ速度ωを大きく決定することが好ましい(図8参照)。バケット対目標面角度θbが小さいときは施工目標面を掘り過ぎることがないので、目標ジャッキアップ速度ωを大きく決定することで素早いジャッキアップを行うことができる。
【0053】
また、目標ジャッキアップ速度決定部920は、バケット対走行体距離dbが大きいほど目標ジャッキアップ速度ωを大きく決定することが好ましい(図9参照)。バケット対走行体距離dbが大きいときは、掘り始めのときであり、目標ジャッキアップ速度ωを大きく決定することで素早いジャッキアップを行うことができる。換言すれば、目標面距離dが小さいときは掘削が終わるときであり、従って素早いジャッキアップを行う必要がない。しかも、バケットが近くにあるときは、同じジャッキアップ速度でも重量バランスの関係でバケット22の掘削力が大きくなるので、施工目標面を掘り過ぎる可能性が高くなる。このような掘り過ぎを防止する観点から、バケット対走行体距離dbが小さいときに目標ジャッキアップ速度ωを小さく決定する必要がある。
【0054】
また、目標ジャッキアップ速度決定部920は、走行体傾斜角度θpが大きいほど目標ジャッキアップ速度ωを小さく決定することが好ましい(図10参照)。走行体傾斜角度θpが大きいときは、油圧ショベル1が不安定になりやすく、素早いジャッキアップを行うとオペレータに不安感を与えやすいので、ゆっくりジャッキアップを行うことで良好な操作性を確保することができる。
【0055】
また、目標ジャッキアップ速度決定部920は、旋回体相対角度θsが大きいほど目標ジャッキアップ速度ωを小さく決定することが好ましい(図11参照)。旋回体相対角度θsが大きいときは、走行体4に対して作業フロント2が横向きのときであり、従って油圧ショベル1が不安定になりやすく、素早いジャッキアップを行うとオペレータに不安感を与えやすいので、ゆっくりジャッキアップを行うことで良好な操作性を確保することができる。
【0056】
また、図12Aには、目標ジャッキアップ速度ωを指示した場合と指示しない場合の走行体傾斜角度θpの時間変化の例をそれぞれ実線と点線で示す。図12Aに示すように、目標ジャッキアップ速度ωを指示した場合、開始時刻をtとすると、時刻tまでに油圧ショベル1のジャッキアップが完了する。一方で、目標ジャッキアップ速度ωを指示しない場合は、時刻tより遅い時刻tにジャッキアップが完了する。よって、目標ジャッキアップ速度ωを指示した場合は、走行体傾斜角度θpの時間変化は急速であり、目標ジャッキアップ速度ωを指示しない場合と比較して短時間でジャッキアップ動作ができる。
【0057】
図12Bには、目標ジャッキアップ速度ωを指示した場合と指示しない場合のブーム速度指令値の時間変化の例をそれぞれ実線と点線で示す。図12Bから、目標ジャッキアップ速度ωを指示した場合、開始時刻をtとすると、時刻tの直後にブーム速度指令値が急激に大きくなり、油圧ショベル1のジャッキアップが完了する時刻tにブーム速度指令値が零になる。一方で、目標ジャッキアップ速度ωを指示しない場合は、時刻tから少しずつブーム速度指令値が大きくなり、油圧ショベル1のジャッキアップが完了する時刻tにブーム速度指令値が零になる。よって、目標ジャッキアップ速度ωを指示した場合は、目標ジャッキアップ速度ωを指示しない場合と比較してブーム速度指令値が急激に大きくできるため、短時間でジャッキアップ動作ができる。なお、図13には、要求速度(例えば、補正速度Vc)に基づいてブームを駆動させるための駆動指令値に変換するテーブルの一例を示す。このとき、動作指令値生成部720は、図13に示す変換テーブルを参照し補正速度Vcに基づいて駆動指令値Piを生成する。
【0058】
一方、目標動作速度補正部930は、目標ジャッキアップ速度決定部920で決定した走行体4の目標ジャッキアップ速度ωとなるように、フロント姿勢とオペレータの操作量Rに基づいてブームシリンダ20Aの補正速度Vcを演算する。補正速度Vcの演算方法については、既に周知された方法を用いることができる。更に、目標動作速度補正部930は、演算した結果を動作指令値生成部720に出力する。
【0059】
以下、図14を基に駆動制御装置34の制御処理を説明する。まず、ステップS110では、走行体傾斜角度θpの演算が行われる。このとき、傾斜角度演算部820は、旋回体3に取り付けられた旋回体IMUセンサ30Sから得られる加速度信号と角速度信号に基づいて旋回体3の傾斜角度を演算し、演算した旋回体3の傾斜角度を走行体傾斜角度θpとする。
【0060】
ステップS110に続くステップS120では、フロント姿勢の検出が行われる。このとき、フロント姿勢検出部830は、ブームIMUセンサ20S、アームIMUセンサ21S、バケットIMUセンサ22Sから得られる加速度信号及び角速度信号に基づいて、作業フロント2のブーム20、アーム21及びバケット22の姿勢をそれぞれ検出する。これによって、フロント姿勢が検出される。
【0061】
ステップS120に続くステップS130では、ブーム20、アーム21及びバケット22の目標動作速度Vtの演算が行われる。このとき、目標動作速度演算部710は、ステップS120で検出したフロント姿勢に、操作入力量センサ33Cで検出した操作レバー33A,33Bの操作量R、目標面管理装置100で演算した目標面距離dに基づいて、バケット22が施工目標面に沿って動作するようにブームシリンダ20A、アームシリンダ21A、及びバケットシリンダ22Aの少なくとも一つの目標動作速度Vtを演算する。例えば、目標動作速度演算部710は、施工目標面より掘り過ぎないようにフロント姿勢、目標面距離d、操作レバー33A,33Bの操作量Rに基づきブームシリンダ20Aの目標動作速度Vtを演算する。
【0062】
ステップS130に続くステップS140では、バケット対目標面角度θbの演算が行われる。このとき、目標面管理装置100は、バケット22の底面と施工目標面がなす角度を演算する。
【0063】
ステップS140に続くステップS150では、バケット対走行体距離dbの演算が行われる。このとき、目標ジャッキアップ速度決定部920は、ステップS120で検出した作業フロントの姿勢に基づいて、バケット対走行体距離dbを演算する。
【0064】
ステップS150に続くステップS160では、旋回体相対角度θsの演算が行われる。このとき、旋回角度演算部840は、旋回角度センサ37で検出した信号に基づいて旋回体相対角度θsを演算する。
【0065】
ステップS160に続くステップS170では、目標ジャッキアップ速度ωの演算が行われる。このとき、目標ジャッキアップ速度決定部920は、ステップS110で演算した走行体傾斜角度θp、ステップS140で演算したバケット対目標面角度θb、ステップS150で演算したバケット対走行体距離db、及びステップS160で演算した旋回体相対角度θsに、目標面距離dを加えて、これらに基づいて走行体4がジャッキアップするときの目標ジャッキアップ速度ωを演算して決定する。
【0066】
ステップS170に続くステップS180では、ブームの補正速度の演算が行われる。このとき、目標動作速度補正部930は、ステップS170で演算した目標ジャッキアップ速度ωになるように、フロント姿勢とオペレータの操作量Rに基づいてブームシリンダ20Aの補正速度Vcを演算する。
【0067】
ステップS180に続くステップS190では、土壌硬さ判定部910は、上述の式(1)に基づいてブームシリンダ20Aの推力Fを演算する。
【0068】
ステップS190に続くステップS200では、土壌硬さ判定部910は、算出したブームシリンダ20Aの推力を予め定められた閾値と比較することで、土壌が硬いか否かを判定する。そして、算出したブームシリンダ20Aの推力が閾値以下の場合、土壌が硬くないと判定される。従って、駆動制御装置34は、目標動作速度を補正しないことにする(ステップS210参照)。ステップS210では、駆動制御装置34は、例えばステップS130で演算したブームシリンダ20Aの目標動作速度Vtをそのまま採用する。そして、ステップS210が終わると、制御処理はステップS250に進み、動作指令値生成部720は目標動作速度Vtに基づいて駆動指令値Piを生成する。
【0069】
一方、ステップS200において推力が閾値より大きいと判定された場合、土壌が硬いと判定され、制御処理はステップS220に進む。
【0070】
ステップS220では、駆動制御装置34は、操作レバー33A,33Bの操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’がステップS180で演算したブームシリンダ20Aの補正速度Vcより大きいか否かを判定する。なお、操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’は目標動作速度演算部710によって演算される。そして、操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’がブームシリンダ20Aの補正速度Vcより大きくないと判定した場合、駆動制御装置34は、目標動作速度を操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’と等しくなるように該目標動作速度を補正する(ステップS230参照)。ステップS230が終わると、制御処理はステップS250に進み、動作指令値生成部720は補正された目標動作速度(すなわち、操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’)に基づいて駆動指令値Piを生成する。
【0071】
一方、ステップS220において操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’がステップS180で演算したブームシリンダ20Aの補正速度Vcより大きいと判定した場合、駆動制御装置34は、目標動作速度を制限せずに該目標動作速度を補正する(ステップS240参照)。このとき、駆動制御装置34は、ステップS180で演算したブームシリンダ20Aの補正速度Vcをブームシリンダ20Aの目標動作速度とするように、該目標動作速度を補正する。ステップS240に続くステップS250では、駆動指令値の生成が行われる。このとき、動作指令値生成部720は、補正された目標動作速度(すなわち、ステップS180で演算したブームシリンダ20Aの補正速度Vc)に基づいて駆動指令値Piを生成する。
【0072】
ステップS250に続くステップS260では、制御電流の生成が行われる。このとき、駆動指令部730は、ステップS250で生成した駆動指令値Piに基づいて、電磁制御弁35Aの駆動に必要な制御電流Iを生成する。これによって、一連の制御処理が終了する。
【0073】
本実施形態に係る油圧ショベル1では、目標ジャッキアップ速度決定部920は目標面距離d、バケット対目標面角度θb、バケット対走行体距離db、走行体傾斜角度θp及び旋回体相対角度θsに基づいて、走行体4がジャッキアップするときの目標ジャッキアップ速度ωを演算して決定し、目標動作速度補正部930は走行体4の目標ジャッキアップ速度ωとなるようにブームシリンダ20Aの補正速度Vcを演算する。このため、ジャッキアップが必要な硬い土壌を掘削するときは施工目標面付近でのブーム動作速度の制限値によらずに目標動作速度を補正することができる。従って、油圧ショベルがジャッキアップする速度を任意に設定できるので、施工目標面付近において素早いジャッキアップを行うことができる。また、ジャッキアップが必要ない柔らかい土壌を掘削するときに油圧ショベル1がジャッキアップする速度を零、すなわちジャッキアップを行うためのブームシリンダ20Aの動作速度の補正を制限できるので、施工目標面の掘り過ぎを防止することができる。
【0074】
加えて、土壌硬さ判定部910によって土壌硬さが硬いと判定されたときに、動作指令値生成部720は目標動作速度補正部930で補正した目標動作速度(すなわち、補正速度Vc)に基づいて駆動指令値を生成する。
【0075】
更に、目標動作速度補正部930は、目標ジャッキアップ速度ωに基づいて演算した補正速度が目標動作速度演算部710で演算した操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’を超えないように目標動作速度を補正する。オペレータによる操作レバーの操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’よりも速くジャッキアップすると、オペレータに不安感を与えやすいため、操作量Rに相当するオペレータ要求速度R’を超えないようにジャッキアップすることで操作性を更に高めることができる。その結果、施工目標面付近において素早いジャッキアップを実現できるとともに、掘削の精度、オペレータの操作性及び作業性を高めることができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0077】
1 油圧ショベル
2 作業フロント
3 旋回体
4 走行体
20 ブーム
20BP ブームボトム圧センサ
20RP ブームロッド圧センサ
20S ブームIMUセンサ
21 アーム
21S アームIMUセンサ
22 バケット
22S バケットIMUセンサ
30S 旋回体IMUセンサ
33 操作量検出装置
33A,33B 操作レバー(操作装置)
33C 操作入力量センサ
34 駆動制御装置
35 駆動装置
35A 電磁制御弁
37 旋回角度センサ
38 姿勢検出装置
39 負荷検出装置
100 目標面管理装置
710 目標動作速度演算部
720 動作指令値生成部
730 駆動指令部
810 シリンダ負荷演算部
820 傾斜角度演算部
830 フロント姿勢検出部
840 旋回角度演算部
910 土壌硬さ判定部
920 目標ジャッキアップ速度決定部
930 目標動作速度補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14