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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】植物エクソソームの大量生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/04 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
C12N5/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021578083
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 KR2020004906
(87)【国際公開番号】W WO2021002571
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0079490
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512293921
【氏名又は名称】インダストリー-ユニバーシティー コーペレイション ファンデーション ハンヤン ユニバーシティー エリカ キャンパス
(73)【特許権者】
【識別番号】517146460
【氏名又は名称】株式会社エキソステムテック
【氏名又は名称原語表記】EXOSTEMTECH CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジ-スク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン-チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン-カン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/026203(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/035880(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106083863(CN,A)
【文献】国際公開第2019/035057(WO,A2)
【文献】特表2018-531932(JP,A)
【文献】特表2018-530546(JP,A)
【文献】国際公開第2019/060719(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/004738(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/203260(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/062973(WO,A1)
【文献】特表2018-528971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離を行う段階と、
接線流濾過を行う段階と、
高純度の植物エクソソーム抽出物を収得する段階と、
を含む、植物エクソソーム抽出方法であって、
前記遠心分離は、10,000~50,000×g速度の遠心分離及び100,000~600,000×g速度の超遠心分離を含み、
前記高純度の植物エクソソーム抽出物は、抽出物1mLの単位体積当り10 ~10 12 個の粒子数の濃度で植物エクソソームを含み、且つ、液胞を含まない抽出物である、植物エクソソーム抽出方法。
【請求項2】
前記接線流濾過は、中空繊維TFF及び膜TFFからなる群より選択される一つ以上である、請求項1に記載の植物エクソソーム抽出方法。
【請求項3】
前記接線流濾過は、分子量カットオフが100,000Da~500,000DaであるTFFフィルターを使用する、請求項1または2に記載の植物エクソソーム抽出方法。
【請求項4】
前記方法は、前記遠心分離段階の以前に原料植物を破砕する段階をさらに含む、請求項1からのうちいずれか一項に記載の植物エクソソーム抽出方法。
【請求項5】
前記原料植物は、果肉、果皮、種子、茎、葉、根及び花からなる群より選択される一つ以上を含む、請求項に記載の植物エクソソーム抽出方法。
【請求項6】
前記植物エクソソームは、50~200nmの直径を有する、請求項1からのうちいずれか一項に記載の植物エクソソーム抽出方法。
【請求項7】
前記高純度の植物エクソソーム抽出物は、抽出物1mLの単位体積当り1×10 ~1×10 11 個の粒子数の濃度で植物エクソソームを含む、請求項1からのうちいずれか一項に記載の植物エクソソーム抽出方法。
【請求項8】
前記方法は、植物エクソソームの大量生産のためのものである請求項1からのうちいずれか一項に記載の植物エクソソーム抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月2日付出願の韓国特許出願第10-2019-0079490号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、硬い果肉または果皮を有する植物を含む原料植物からエクソソーム(exosomes)を抽出する方法に関し、より詳しくは、医薬品及び商用化製品など関連産業に有用に使用できるように原料植物から高純度植物エクソソームを大量生産する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エクソソームは、多様な細胞から分泌されるナノサイズの微小小胞体であって、タンパク質、脂質、mRNA及びmiRNAを含み、内分泌系に作用して細胞間コミュニケーションの重要な媒介体の役割をすると報告されている。このような役割は、従来の幹細胞治療剤の問題点である生着率及び免疫原性を克服可能な新たな治療剤として注目されている。
【0004】
近年の研究によれば、食用植物から分離したエクソソームは、哺乳類細胞から分泌されるエクソソームに比べて毒性や免疫原性がなく、体内安定性及び生体適合性が非常に高いと知られている。また、哺乳類細胞から分離したエクソソームは約20%のコレステロールを含む一方、食用植物エクソソームはコレステロールを含まないことが報告されている。特に、動物の組織または細胞培養液と比べて、原料植物は多量で得られるという長所がある。
【0005】
由来植物によってはエクソソームの内部に多様なタンパク質が含まれているが、現在まで植物エクソソームに関するタンパク質は殆ど知られておらず、哺乳類細胞エクソソームに比べて特性を確定するのに制限がある。研究では殆ど植物エクソソームの特性をエクソソームの大きさ又は形態で確認しており、植物エクソソームを抽出するためには適切な大きさを選別してエクソソームのみを抽出する方法が必要である。
【0006】
従来技術の場合、ショ糖密度勾配(sucrose gradient)を用いた密度勾配超遠心分離方法で植物エクソソームの抽出を試みたが、このような方式はエクソソームの商用化のための生産工程には活用し難い。また、分離された細胞外小胞体を濾過して濾過フィルターの気孔よりも小さい物質を得る方式があるが、これは多量の植物搾汁物からエクソソームを抽出するとき、フィルター気孔に不純物またはエクソソームが吸着及び蓄積されて濾過効率が急激に低下し、長期間エクソソーム抽出に非常に不利である。
【0007】
本明細書の全体にわたって多数の文献が参照され、その引用が示されている。引用された文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として援用されることで、本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高純度の植物エクソソームを抽出するための方法として遠心分離法とTFFを用いた大量生産工程を提示する。本発明によって、高純度植物エクソソームの精製と生産性を効果的に向上させた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来の抽出法を補完して効果的に高純度の植物エクソソームを大量抽出することができる方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、原料植物から高純度のエクソソームを均一な粒子の大きさ及び分布で大量抽出する方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、柔らかい果肉または搾汁物に限られた従来技術の方法と異なって、硬い果皮、茎、種子、及びワカメ、海苔などの海洋植物群を含めて原料植物の制限なく植物エクソソームを抽出する方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、植物由来エクソソームを医療用及び商用化製品のGMP生産に適し、工程のスケールアップ(scale-up)が容易な抽出方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、遠心分離を行う段階と、限外濾過として接線流濾過(tangential-flow filtration、TFF)を行う段階と、を含む、植物エクソソーム抽出方法を提供することである。
【0015】
本発明で使われる用語「植物エクソソーム」とは、植物から抽出した50~200nm程度の大きさを有するエクソソームまたはエクソソーム類似細胞外小胞体を総称する。
【0016】
植物由来エクソソームは、哺乳類細胞から分泌されるエクソソームに比べて、低い毒性と免疫原性を有し、コレステロールの含量が非常に少なくて体内安定性及び生体適合性が非常に高いと知られている。さらに、植物から由来した抗酸化成分またはタンパク質成分によって、植物由来エクソソームは傷の治療及び肌再生などに効能があると知られている。
【0017】
従来、生物体からエクソソームを分離するための多様な方法として、遠心分離、超遠心分離、密度勾配遠心分離、クロマトグラフィー、濾過、限外濾過、接線流濾過、ポリマー基盤沈澱、総エクソソーム抽出キット及び免疫親和性分離法などが開発されている。しかし、このような従来技術の場合、エクソソーム抽出方法が動物、限定的に哺乳類由来細胞または生物学的溶液(牛乳など)からエクソソームを抽出する方法に限定されている。動物由来細胞と異なって、植物由来細胞からはエクソソームと類似する液胞が見つけられるため、これを除去するための方法が提案されているが、殆どが実験室水準の容量に限られている。
【0018】
本発明では、従来知られたエクソソーム分離方法のうち、特に超遠心分離と限外濾過としての接線流濾過とを組み合わせることで、液胞など不純物による汚染及び純度の低下を防止し、高純度の植物エクソソームを大量で収得可能な植物由来エクソソームの抽出方法を提供する。従来知られたエクソソーム分離方法のうち、上記の組合せではない他の任意の二つの方法の組合せでは、液胞が除去された植物エクソソームを収得し難く、特に高純度の植物エクソソームを均一に大量で収得することができない。
【0019】
植物由来エクソソームは、30~500nmの均一な大きさ分布を有し、望ましくは50~200nmの均一な大きさ分布を有し得る。
【0020】
本発明の他の一態様は、植物エクソソームの少量生産に限られた従来の密度勾配遠心分離方法に代替して、遠心分離及びTFF方法を用いた植物エクソソームの大量生産方法を提供する。
【0021】
本発明で使われる遠心分離法は、固体と固体を囲む液体との間の密度差を用いる分離方法であって、固体の沈澱(sedimentation)を遠心力を用いて加速する方法を意味する。遠心分離は、工程を継続的に繰り返すことができ、多くの量を短時間で処理することができ、滅菌状態で操業し易いという長所がある。本発明の遠心分離方法は、分画遠心分離(differential centrifugation)、密度勾配遠心分離またはこれらの組合せであり得るが、これらに制限されることはない。
【0022】
本発明で使われる前記遠心分離方法は、低速遠心分離(low-speed centrifugation)、高速遠心分離(high-speed centrifugation)、超遠心分離(ultracentrifugation、以下、「UC」と略して示すことがある)、及びこれらの組合せから選択し得るが、望ましくは超遠心分離(ultracentrifugation)を含み得る。低速遠心分離は、6,000rpm(6,000×g)以下の速度で行われ、主に細胞や核などのように沈澱し易い試料の遠心分離に用いられ得る。高速遠心分離は最高速度が20,000~25,000rpm(60,000×g)程度であり、超遠心分離は最高速度が40,000~80,000rpm(600,000×g)程度である遠心分離法を意味する。
【0023】
従来、超遠心分離は、収率が低くて分離過程でエクソソームに損傷を与えると知られたため、エクソソームの大量抽出には使用できず、実験室水準の分離のみが可能であった。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、動物エクソソームと異なって、植物エクソソームは超遠心分離を通じてエクソソームの損傷なしに生産性を効果的に向上させることができ、エクソソームの大量生産工程に適用可能であることを見出した。一具現例において、本発明の遠心分離は、(a)1,000~3,000×g速度の遠心分離条件で10~30分間遠心分離した後上澄み液を得る過程、(b)10,000~50,000×g速度の超遠心分離条件で60分~2時間超遠心分離して液胞を除去する過程、及び(c)100,000~150,000×g速度の超遠心分離条件で60分~2時間超遠心分離してエクソソームが含まれたペレットを得る過程を含んで行われ得る。
【0024】
また、本発明の方法は、接線流濾過(tangential-flow filtration、TFF)を行う段階を含むことを特徴とする。本発明で使われる接線流濾過法は、溶液が濾過膜の直角方向に流れながら溶液内に存在する小さい不純物を濾過し、大きいエクソソームを分離する濾過方式である。従来の濾過方式に比べて、濾過フィルターの気孔にエクソソームが吸着するかまたは膜気孔が詰まることを最小化することができ、それによって工程のスケールアップ(process scale-up)及びGMP工程への応用が容易である。
【0025】
TFFにおいて、供給溶液の速い流動は、膜または中空糸の表面を「掃き取りながら」濃度分極(空隙表面の製品濃度)を減少させる作用をする。また、TFF法は、空隙を塞ぎ得る汚染物質の増加を防止する。このような迅速なクロスフローは圧力を低下させるが、それによって膜または中空糸の空隙よりも小さい供給溶液及び溶解分子のうち一部がフィルターを通過するように力を受けることができる。空隙を通過した溶液を濾過液または透過液と称するが、空隙よりも大きい分子または粒子は供給溶液に残って効果的に濃縮される。望ましい具現例において、本発明のTFFは限外濾過システムであり、上記のようにTFF方法を行った結果、遠心分離された抽出液が1/10~1/100の体積まで効率的に濃縮されるようになる。限外濾過とは、微細濾過(microfiltration、以下、「MF」と略して示すことがある)と逆浸透との中間領域に位置するものであって、膜細孔と溶質との大きさの差によって特定物質を分離する方法である。限外濾過膜は、膜によって90%以上の排除度を示す溶質の最小分子量として定義される分画分子量(molecular weight cutoff、MWCO)をもってその分離性能を現し得る。
【0026】
本発明で使われる前記接線流濾過は、限外濾過が可能な中空繊維(hollow fiber)TFF及び膜(membrane)TFFからなる群より選択される一つ以上であり得、望ましくは分子量カットオフ(Molecular weight cutoff;MWCO)が100,000Da~500,000DaであるTFFフィルターを使用するものであり得る。
【0027】
また、本発明の方法は、前記遠心分離及びTFF段階の以前に原料植物を破砕する段階をさらに含んでもよい。この場合、機械物理的な粉砕過程を通じて、柔らかい果肉に限られた原料植物の範囲を果皮などを含む硬い植物まで拡張させることができる。したがって、本発明の方法で使われる原料植物は、果肉、果皮、種子、茎、葉、根及び花からなる群より選択される一つ以上を含み得る。
【0028】
前記原料植物を破砕する過程は、原料植物とバッファー溶液とを重量比で1:1~1:10で混合した混合物を機械的粉砕する過程を含み得、バッファー溶液としては、リン酸緩衝食塩水(Phosphate-buffered saline;PBS)、トリス緩衝食塩水(tris-buffered saline(TBS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)-緩衝食塩水(HBS)、蒸留水、培養培地、注射用水などを一種以上含むものを使用し得るが、これらに制限されることはない。
【0029】
前記原料植物を粉砕する過程は、10~1,000rpmの速度で回転する刃によって機械的に植物混合物を粉砕することで行われ得る。
【0030】
このような本発明の方法によって得られた抽出物は、1mLの単位体積当り10~1012個の粒子数の濃度で植物エクソソームを含むものであり得る。
【0031】
上述したような本発明の方法は、植物エクソソームの大量生産(large-scale production)に適し、時間当り原料植物1mL以上、10mL以上、100mL以上、1L以上、10L以上または100L以上の大量処理が可能であるという長所がある。
【発明の効果】
【0032】
本発明の方法は、液胞が除去された高純度のエクソソームを均一に収得することができる方法を提供する。特に、大量の植物原料を一遍に処理可能な遠心分離とTFFを用いて、大量の原料植物から高純度の植物エクソソームを抽出することができる。これは、実験室水準にとどまった従来の植物エクソソーム抽出工程を改善し、容易に大量生産可能な工程を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一具現例による植物由来エクソソームの抽出方法を示した工程模式図である。
図2】実施例1によるアロエ皮由来エクソソームの形態分析(TEM)結果である。
図3】実施例1によるアロエ皮由来エクソソームの特性分析(NTA)結果である。
図4】UC過程を省略してTFFのみを行って得られた結果物と、UCとTFFとを組み合わせて得られた結果物とを比べたTEM写真である。
図5】実施例1によるアロエ皮由来エクソソームの特性分析(DLS)結果である。
図6】実施例2によるニンニク由来エクソソームの形態分析(TEM)結果である。
図7】実施例2によるニンニク由来エクソソームの特性分析(NTA)結果である。
図8】実施例3によるワカメ皮由来エクソソームの形態分析(TEM)結果である。
図9】実施例3によるワカメ皮由来エクソソームの特性分析(NTA)結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではないということは、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者にとって自明であろう。
【実施例
【0035】
1.アロエ皮由来エクソソームの抽出
(1)抽出方法
実施例1(UC+TFF)
アロエ皮由来エクソソームをUC及びTFFを用いて抽出した。具体的には、アロエ皮とリン酸緩衝食塩水(PBS)とを1:2(w/w)でミキサーに入れた後、十分に粉砕した。その後、1,000×gで10分間遠心分離して生成された上澄み液を2000×gで20分間さらに遠心分離し、上澄み液を集めた。上澄み液を3,000×gで30分間遠心分離した後、10,000×gで60分間遠心分離した。10,000×g後の上澄み液をUCを用いて4℃、100,000×gで70分間超遠心分離した。
【0036】
UCの後、残ったペレットを懸濁させ、接線流濾過(TFF)システムを通じて懸濁液からエクソソームを抽出した。具体的には、TFFシステム内の100~500kDaのカットオフ値を有する多重フィルターの表面でフィルターの気孔よりも小さいその他の不純物粒子を除去し、アロエ皮由来エクソソームを含む溶液を濃縮した。このようにして抽出したエクソソームは、実験で使用するまで-70℃以下で冷凍保管した。
【0037】
比較例1(MF+TFF)
アロエ皮由来エクソソームを微細濾過(microfiltration)及びTFFを用いて抽出した。具体的には、アロエ皮とリン酸緩衝食塩水(PBS)とを1:2(w/w)でミキサーに入れた後、十分に粉砕した。その後、粒子大きさの分布が均一であって純度の高いエクソソームを収得するため、トレハロースを2重量%添加した。トレハロースを添加した後、0.22μmフィルターで濾過して細胞の残骸、老廃物及び巨大粒子などの不純物を除去した。
【0038】
上記のような濾過過程を経た後、限外濾過として接線流濾過(TFF)システムを通じてエクソソームを抽出した。具体的には、TFFシステム内の100~500kDaのカットオフ値を有する多重フィルターの表面でフィルターの気孔よりも小さいその他の不純物粒子を除去し、アロエ皮由来エクソソームを含む溶液を濃縮した。このようにして抽出したエクソソームは、実験で使用するまで-70℃以下で冷凍保管した。
【0039】
(2)エクソソームの特性評価
アロエ皮由来エクソソームは、以下の方法によってエクソソームの特性を評価した。エクソソームの模様を確認するため、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用し、正確な微細粒子の大きさを確認するため、動的光散乱光度計(DLS)を使用した。抽出したエクソソームの単位体積当りの粒子数は、ナノ粒子追跡分析(NTA)を通じて確認した。
【0040】
実験の結果、実施例1において、10,000×g遠心分離後の上澄み液を微細濾過(気孔サイズ0.1~1.0μm)して比較的に粒子の大きさが大きい固形物質を濾過した後は、エクソソームと液胞とが混在された混合物が得られ、10,000×g遠心分離後の上澄み液にはエクソソームと液胞とが混合されていることが確認された。実施例1において、100,000×g超遠心分離まで行った後に収集したペレットには、エクソソームだけでなく、タンパク質、核酸のような不純物が多量で混合されていることが確認された。また、実施例1において、限外濾過であるTFFまで行ってエクソソームを抽出した結果、1mLの単位体積当り1×10~1×1011個の高純度のエクソソームが抽出された。抽出されたアロエ皮由来エクソソームは、200nm以下の球状の微細構造を有することが確認され(図2)、ナノ粒子追跡分析(NTA)を通じて1mLの単位体積当り1×10~1×1011個のエクソソーム濃度が確認された(図3)。
【0041】
一方、比較例1の方法によって抽出したアロエ皮由来抽出物中には、エクソソームと類似する液胞が混入されていることが観察され、MF及びTFF方法によっては植物抽出物に含有された液胞を除去し難いということが確認された。すなわち、アロエ皮からエクソソームを抽出する過程で超高速遠心分離(UC)過程を省略してTFFのみを行う場合、エクソソーム以外の液胞を含む不純物(図4の矢印)が含まれることが明確に確認され、このような不純物は植物エクソソームの効能を低下させる原因になる。
【0042】
2.ニンニク由来エクソソームの抽出
(1)抽出方法
実施例2(UC+TFF)
ニンニク由来エクソソームをUC及びTFFを用いて抽出した。具体的には、皮を除去したニンニクとリン酸緩衝食塩水(PBS)とを1:2(w/w)でミキサーに入れた後、十分に粉砕した。その後、1,000×gで10分間遠心分離して生成された上澄み液を2,000×gで20分間さらに遠心分離し、上澄み液を集めた。上澄み液を3,000×gで30分間遠心分離した後、10,000×gで60分間遠心分離した。10,000×g後の上澄み液をUCを用いて4℃、100,000×gで70分間超遠心分離した。UCの後、残ったペレットを懸濁させ、限外濾過(TFF)システムを通じてエクソソームを抽出した。具体的には、TFFシステム内の100~500kDaのカットオフ値を有する多重フィルターの表面でフィルターの気孔よりも小さいその他の不純物粒子を除去し、ニンニク由来エクソソームを含む溶液を濃縮した。このようにして抽出したエクソソームは、実験で使用するまで-70℃以下で冷凍保管した。
【0043】
比較例2(UC+S-DGUC)
ニンニク由来エクソソームをUC及びショ糖密度勾配超遠心分離(Sucrose-Density Gradient Ultracentrifugation;S-DGUC)を用いて抽出した。具体的には、皮を除去したニンニクとリン酸緩衝食塩水(PBS)とを1:2(w/w)でミキサーに入れた後、十分に粉砕した。その後、1,000×gで10分間遠心分離して生成された上澄み液を2,000×gで20分間さらに遠心分離し、上澄み液を集めた。上澄み液を3,000×gで30分間遠心分離した後、10,000×gで60分間遠心分離した。10,000×g後の上澄み液をUCを用いて4℃、100,000×gで70分間超遠心分離した。
UCの後、残ったペレットを懸濁させ、ショ糖密度勾配超遠心分離(S-DGUC)をさらに行った。具体的には、超遠心分離用遠心分離チューブに密度勾配を有するショ糖溶液を入れた。ショ糖溶液は、それぞれ90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%溶液を製造して124℃で15分間滅菌した後、超遠心分離用チューブに90%~30%の層を有するように慎重に入れた。このように用意した超遠心分離用ショ糖密度勾配チューブの最上端に前記エクソソームを含む懸濁液を慎重に添加した後、超遠心分離用遠心分離機を用いて4℃、200,000×gで4時間に亘って超遠心分離した。その後、チューブの上端から1mlずつ分画を取って、密度を測定してエクソソームに該当する分画を収得し、ショ糖を分離するために洗浄した。
【0044】
(2)エクソソームの特性評価
実験の結果、実施例2で抽出されたニンニク由来エクソソームは、透過型電子顕微鏡(TEM)を通じて200nm以下の球状の微細構造を有することが確認され(図6)、ナノ粒子追跡分析(NTA)を通じて抽出したエクソソームの単位体積当りの粒子数を確認した結果、1mLの単位体積当り1×1010~1×1012個のエクソソーム濃度が確認された(図7)。
【0045】
比較例2の方法によって抽出したニンニク由来エクソソームも透過型電子顕微鏡(TEM)を通じて200nm以下の球状の微細構造を有することが観察された。しかし、高純度エクソソームを抽出するためにはショ糖を分離するための洗浄過程をさらに必要とし、時間当りエクソソームの生産量が実施例2の生産量の100分の1にも及ばなかった。したがって、比較例2の方法はエクソソーム商用化のための大量生産工程には活用し難いことが確認された。
【0046】
3.ワカメ由来エクソソームの抽出
(1)抽出方法
実施例3(UC+TFF)
ワカメ由来エクソソームをUC及びTFFを用いて抽出した。具体的には、水分を除去したワカメとリン酸緩衝食塩水(PBS)とを1:2(w/w)でミキサーに入れた後、十分に粉砕した。その後、1,000×gで10分間遠心分離して生成された上澄み液を2,000×gで20分間さらに遠心分離し、上澄み液を集めた。上澄み液を3,000×gで30分間遠心分離した後、10,000×gで60分間遠心分離した。10,000×g後の上澄み液をUCを用いて4℃、100,000×gで70分間超遠心分離した。
【0047】
UCの後、残ったペレットを懸濁させ、限外濾過(TFF)システムを通じて懸濁液からエクソソームを抽出した。具体的には、TFFシステム内の100~500kDaのカットオフ値を有する多重フィルターの表面でフィルターの気孔よりも小さいその他の不純物粒子を除去し、ワカメ由来エクソソームを含む溶液を濃縮した。このようにして抽出したエクソソームは、実験で使用するまで-70℃以下で冷凍保管した。
【0048】
比較例3(SEC+TFF)
サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography;SEC)は、エクソソームの損傷または特性変化なく、エクソソームを分離可能な有用な方法として知られている。そこで、ワカメ由来エクソソームをSEC及びTFFを用いて抽出した。具体的には、SECによるエクソソームの分離は、Boing et al(Single-step isolation of extracellular vesicles by size-exclusion chromatography、J Extracell Vesicles、2014:1-11)に記載された方法によって行った。20mLのシリンジ(BD PlasticpakTM、San Jose、CA)にセファロース(登録商標)CL-2B(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、USA)12mLを積層し、PBSで洗浄し、平衡させた。2mLの試料をカラムにローディングし、溶出緩衝液としてPBSを使用して分画を収集した。
【0049】
収集した分画から限外濾過(TFF)システムを通じてエクソソームを抽出した。具体的には、TFFシステム内の100~500kDaのカットオフ値を有する多重フィルターの表面でフィルターの気孔よりも小さいその他の不純物粒子を除去し、ワカメ由来エクソソームを含む溶液を濃縮した。このようにして抽出したエクソソームは、実験で使用するまで-70℃以下で冷凍保管した。
【0050】
(2)エクソソームの特性評価
実施例3で抽出されたワカメ由来エクソソームは、透過型電子顕微鏡(TEM)を通じて200nm以下の球状の微細構造を有することが確認され(図8)、ナノ粒子追跡分析(NTA)を通じて抽出したエクソソームの単位体積当りの粒子数を確認した結果、1mLの単位体積当り1×10~1×1011個のエクソソーム濃度を有することが確認された(図9)。
【0051】
一方、比較例3の方法によって抽出したワカメ由来抽出物中には、エクソソームと類似する液胞が混入されていることが観察され、SEC及びTFF方法によっては植物抽出物に含有された液胞を除去し難いということが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9