(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】支持機構並びにこの支持機構を備えた支持装置
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20230510BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
F16C11/04 B
F16C11/04 R
F16C11/04 V
H04N5/64 581E
(21)【出願番号】P 2019051860
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 文昭
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-132173(JP,A)
【文献】特開2019-058531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に各種機器を取り付けた支持アームを取付要素に対して水平方向へ揺動可能に支持する支持装置の支持機構であって、前記取付要素側と前記支持アームの間にスイベルトルクヒンジを用い、このスイベルトルクヒンジのヒンジシャフトに前記支持アームへ取り付けられるブラケット部材を回転可能に取り付け、前記ヒンジシャフトと前記ブラケット部材の間に当該ブラケット部材へフリクショントルクを創出させるフリクショントルク発生機構を設け、前記支持アームに前記ブラケット部材に対し離間対向させて保持機構を設け、この保持機構に前記ヒンジシャフトの先端側を軸支させたことを特徴とする、各種機器の支持装置の支持機構。
【請求項2】
前記保持機構で前記ヒンジシャフトを軸支するに当たり、前記保持機構に筒状のブッシュ部材を取り付け、このブッシュ部材に前記ヒンジシャフトの先端側を軸支させることを特徴とする、請求項1に記載の各種機器の支持装置の支持機構。
【請求項3】
前記スイベルトルクヒンジは、前記各種機器の取付台に取り付けたとところの取付要素を構成する昇降装置の支柱に対し上下方向へスライド調節可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の各種機器の支持装置の支持機構。
【請求項4】
前記支持アームの先端には、上下左右に首を振る構造のユニバーサルジョイントヒンジが取り付けられ、このユニバーサルジョイントヒンジを介して各種機器が取り付けられていることを特徴とする、
請求項1に記載の支持装置。
【請求項5】
前記支持アームは、複数個組み合わされており、その連結箇所ごとに請求項1乃至3のいずれか1項に記載の支持機構が用いられていることを特徴とする、支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニター用のディスプレイや電話機、その他の事務機器等の各種機器を、スイベルトルクヒンジを用いて取付台や壁などの取付要素に対して片持ち式に保持して水平方向へ移移動させ、任意の位置で停止保持させる際に用いて好適な支持機構並びにこの支持機構を用いた支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モニター用のディスプレイや事務機器等の各種機器を、仕事机のような取付台に対して支持アームを用いて水平方向や前後方向さらには上下方向にスライドさせて任意の位置で保持させる支持装置の支持機構としては、下記特許文献1に示したものが公知である。この特許文献1に記載された支持装置の支持機構は、取付台側と支持アーム或は支持アーム同士をスイベルトルクヒンジで連結したもので、フリクショントルク発生機構を有しないことから、支持アームの先端に取り付けた各種機器の停止位置が安定せず、時間の経過とともに外部から加えられる振動や揺れにより、動いてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、フリクショントルク発生機構を有する支持装置のスイベルトルクヒンジが考えられたが、アーム部材を介してフリクション機構に加えられる荷重が片側に偏ってしまうことから、初期トルク値が変動してしまい、安定した各種機器の停止状態や揺動力が変動してしまうという問題が生じた。つまり、
図11に示すように、支持アーム21に取り付けられるブラケット部材20aに設けられた軸受孔20cに、ヒンジシャフト23を挿通させ、ヒンジシャフト23の端部に締付ナット22が取り付けられ、取付プレート20aと締付ナット22の間にヒンジシャフト23を挿通させたスプリングワッシャー24などから成るフリクショントルク発生機構25が設けられスイベルトルクヒンジ20は、支持アーム21がディスプレイ側に垂れ下がると、それに伴い取付プレート20aもディスプレイ側に垂れ下がり、取付プレート20aと締付ナット22の間のフリクショントルク発生機構25に偏った荷重かかり、使用開始後においてフリクショントルク発生機構25により創出されるフリクショントルクが変動してしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、スプリングワッシャーやフリクションワッシャーなどを用いたフリクショントルク発生機構を備えたスイベルトルクヒンジを用いても、使用開始後においてフリクショントルクが極力変動しないように成した支持機構並びにこの支持機構を用いた支持装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願請求項1発明は、先端側に各種機器を取り付けた支持アームを取付要素に対して水平方向へ揺動可能に支持する支持装置の支持機構であって、前記取付要素側と前記支持アームの間にスイベルトルクヒンジを用い、このスイベルトルクヒンジのヒンジシャフトに前記支持アームへ取り付けられるブラケット部材を回転可能に取り付け、前記ヒンジシャフトと前記ブラケット部材の間に当該ブラケット部材へフリクショントルクを創出させるフリクショントルク発生機構を設け、前記支持アームに前記ブラケット部材に対し離間対向させて保持機構を設け、この保持機構に前記ヒンジシャフトの先端側を軸支させたことを特徴とする。
【0007】
次に、本願請求項2発明に係る支持機構は、前記保持機構に前記ヒンジシャフトを軸支するに当たり、前記保持機構に筒状のブッシュ部材を取り付け、このブッシュ部材に前記ヒンジシャフトの先端側を軸支させることを特徴とする。
【0008】
次に、本願請求項3発明に係る支持機構は、前記スイベルトルクヒンジは、前記各種機器の取付台に取り付けた昇降装置の支柱に対し上下方向へスライド調節可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
次に、本願請求項4発明に係る支持装置は、前記支持アームの先端には、上下左右に首を振る構造のユニバーサルジョイントヒンジが取り付けられ、このユニバーサルジョイントヒンジを介して各種機器が取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
そして、本願請求項5発明に係る支持装置は、前記支持アームが、複数個組み合わされており、その連結箇所ごとに請求項1乃至3のいずれか1項に記載の支持機構が用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成したので、請求項1発明に係る支持機構によれば、取付要素に支持されて使用される各種機器を水平方向の任意の位置で安定的に停止保持させることのできる上に、使用開始後においてもそのフリクショントルク発生機構のフリクショントルクが低下することを可及的に防止できる。
【0012】
請求項2発明に係る支持機構によれば、ヒンジシャフトに筒状のブッシュ部材を取り付けられていることにより、支持部とヒンジシャフトの軸支部の間の摩耗を抑えて、異音を発生することを防止し、支持機構の製品寿命を延ばすことができる。
【0013】
請求項3発明に係る支持機構によれば、スイベルトルクヒンジが取付台に取付けた取付要素の昇降装置によって、支柱に対し上下方向へスライド調節可能に取り付けられていることにより、各種機器を上下方向の任意の位置で安定的に停止保持させることができる。
【0014】
請求項4発明によれば、上下左右に首を振る機構を備えるユニバーサルジョイントヒンジを用いることにより、各種機器の設置位置や角度を任意に調節でき利便性が増す支持装置を提供できるものである。
【0015】
そして、請求項5発明によれば、支持アームが複数個組み合わされていることにより、各種機器を前後方向の任意の位置で安定的に停止保持させることができ、支持アームを複数組み合わせても、永年使用の後においてもその機能が低下することを可及的に防止できる支持装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る支持装置の使用例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る支持機構の要部の分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る支持機構のスイベルトルクヒンジの斜視図である。
【
図4】本発明に係る支持機構のスイベルトルクヒンジの分解斜視図である。
【
図5】本発明に係る支持装置の取付要素の1例である昇降装置の側面図である。
【
図6】本発明に係る支持機構の取付部材を示し、(a)はその斜視図、(b)は平面図、(c)はA-A線断面図、(d)は底面図である。
【
図7】本発明に係る支持機構の第1支持アームを示し、(a)はその斜視図、(b)は平面図、(c)はB-B線断面図、(d)は底面図である。
【
図8】本発明に係る支持装置の第2支持アームを示し、(a)はその斜視図、(b)は平面図、(c)はC-C線断面図、(d)は底面図である。
【
図9】本発明に係る支持機構の要部の一部拡大断面図である。
【
図10】本発明に係る支持装置の要部の断面図である。
【
図11】比較例の支持装置の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る各種機器を片持ち式で支持する支持アームの支持機構並びにこの支持機構を用いた支持装置の一実施形態について説明する。
【0018】
図1~
図10はこの実施形態に係るモニター用ディスプレイなどの各種機器16を各種機器の支持機構4並びにこの支持機構4を用いた支持装置1を示す図である。支持装置1は、
図1に示すように、取付台である仕事机30上に各種機器16の一例としてのディスプレイを取り付けて、ディスプレイ16を仕事机30上の任意の位置に移動停止させるためのものである。ディスプレイ16は、液晶テレビ、プラズマテレビなどから成るモニター用の据え置き型のものであるが、このものに限定されず、タブレットPC(Personal Computer)、ノートPC、固定電話機、その他の取付台、その他の取付要素に支持されて使用される様々な機器が該当する。したがって、この理由により、以下の説明では各種機器をディスプレイ16として説明するが、請求項では各種機器と記載する。
【0019】
また、支持機構は、図示した支持装置1が支持アームを2本用いており、二つの支持機構をいるものであることから、支持機構を第1支持機構Aと第2支持機構Bに分けて説明すると共に、支持アームは第1支持アーム5と第2支持アーム11というように分けて説明するが、支持機構は第1支持機構Aと第2支持機構B共に同じ構成であり、支持アームは第1支持アーム5と第2支持アーム11共に同じ支持機構を採用していることから、請求項では単に支持機構と支持アームというように記載する。また、第1保持機構cと第2保持機構dも、それが第1支持アーム5に設けられるか、第2支持アーム11に設けられるかの相違があるのみで、その構成は同じであるので、請求項では単に保持機構と記載する。
【0020】
支持装置1は、実施例のものは、
図1及び
図2に示したように、支持台である仕事机30の天板30aに、締付ネジ2cを介し取り付けられている取付要素の一例である昇降装置2と、この昇降装置2を構成する支柱3に上下方向へスライド調節可能に取り付けられた第1支持機構Aを介して水平方向へフリクション回動可能に取り付けられた第1支持アーム5と、この第1支持アーム5の先端側に同じく第2支持機構Bを介して水平方向へフリクション回動可能に取り付けられた第2支持アーム11と、この第2支持アーム11の自由端側に取り付けられディスプレイ16を保持するユニバーサルジョイントヒンジ15とで構成されている。以下、上記したような支持装置1の構成を順を追って説明するが、第1支持機構Aを仕事机30の上に直に取り付けたり、部屋の壁部に直に取り付けられる場合もある。したがって、本明細書では、昇降装置2を取付要素の一例として説明する。
【0021】
また、支持装置1にしても、支持アームが単数のものもあり、ユニバーサルジョイントヒンジ15にしても、これを用いないものもある。したがって、支持装置1は実施例のものに限定されない。さらに、第1支持機構Aと第2支持機構Bは、取付要素の部分が異なるのみで、後は同じ構造であることから、第2支持機構Bについては説明を省略する場合がある。従って、本願明細書と特許請求の範囲では、単に支持機構という場合がある。
【0022】
支持装置1を構成する取付要素としての昇降装置2は、実施例のものは、
図1と
図5に示したように、仕事机30の天板30aを挟む断面コの字形状を呈した固定部材2aと、この固定部材2aの下片部2bに取り付けられ固定部材2aを天板30aへ固定する締付ネジ2cと、固定部材2aの上片部2d上に取り付けたパイプ状の支柱3から成る。
【0023】
第1支持機構Aは、スイベルトルクヒンジ6と、このスイベルトルクヒンジ6のヒンジシャフトの上端部を保持するために第1支持アーム5に設けられた第1保持機構cとで構成されている。
【0024】
第1スイベルトルクヒンジ6は、昇降装置2の支柱3に上下方向へスライド可能に取り付けられた取付部材4と、この取付部材4の上方へ向けて回転を規制されて取り付けられたヒンジシャフト6aと、このヒンジシャフト6aに回転可能に取り付けられたところの第1支持アーム5へ取り付けられるブラケット部材8と、このブラケット部材8と第1ヒンジシャフト6aの間に設けられた第1フリクショントルク発生機構9と、で構成されている。
【0025】
第1保持機構cは、スイベルトルクヒンジ6のヒンジシャフト6aの先端部に上方へ突出させて同芯状に設けた軸支部6hと、この軸支部6hを軸支するために第1ブラケット部材8に対して離間対向させて第1支持アーム5の基部側に延設させた保持部5rとで構成されている。保持部5rに設けた取付穴5cに円筒状のブッシュ部材7が挿入固定され、このブッシュ部材7に設けた軸受孔7aにヒンジシャフト6aの軸支部6hを軸支する構成であるが、このブッシュ部材7は省略して単なる軸受孔としてもよい。軸支部6hは実施例のものは断面円形状であるが、これを変形軸とし、これを軸受部に対して回転可能に軸受けさせたブッシュ部材に回転を規制させて軸受けさせる構成であってもよい。
【0026】
第1フリクショントルク発生機構9は、ヒンジシャフト6aの中径部6eに回転可能に取り付けたブラケット部材8と、ヒンジシャフト6aの大径部6bとの間にそれぞれ軸方向へ設けた円形挿通孔9gと9hに中径部6eを挿通させ、一方はヒンジシャフト6aに、他方はブラケット部材8に係合させつつ重ねて合わせて設けた一対の第1フリクションワッシャー9a及び第2フリクションワッシャー9bと、同じく円形軸部6aをその軸心部軸方向に設けた円形挿通孔9iを挿通させてブラケット部材8の上面側に当該ブラケット部材8に係合されて設けた第3フリクションワッシャー9cと、この第3フリクションワッシャー9cの上面側にヒンジシャフト6aの第2変形軸部6fをその軸心部軸方向に設けた変形挿通孔9jを挿通係合させて設けた第4フリクションワッシャー9dと、この第4フリクションワッシャー9dの上面側にその軸心部軸方向に設けた円形挿通孔9kを第2変形軸部6fに挿通させて設けたスプリングワッシャー9eと、このスプリングワッシャー9eの上面側にその軸心部軸方向に設けた変形挿通孔9mを第2変形軸部6fに挿通係合させて設けた押えワッシャー9fと、この押えワッシャー9fの上面側に配置され、ヒンジシャフト6aの第2変形軸部6fに設けた雄ネジ部6gにネジ着された締付ナット10とで構成されている。
【0027】
尚、第1フリクションワッシャー9aには、その外周に一対の係止片9n、9nが下向きに設けられ、この係止片9n、9nをヒンジシャフト6aの大径部6bに設けた係合凹部6d,6dと係合させ、第2フリクションワッシャー9bには、その外周に一対の係止片9o、9oが上向きに設けられ、この係止片9o、9oをブラケット部材8に設けた係合凹部8d、8dと係合させている。さらに、第3フリクションワッシャー9cにはその外周に下向きに係止片9p、9pが設けられ、この係止片9p、9pはブラケット部材8に設けた係止凹部8d、8dと係合している。実施例では第2フリクションワッシャー9bの係止片9o、9oと第3フリクションワッシャー9cの係止片9p、9pとはブラケット部材8に設けた係止凹部8d、8dを共有している。さらに、第1フリクションワッシャー9aから第4フリクションワッシャー9dには、その各面部に潤滑油を保持させる複数のオイル保持部9s、9s・9t、9t・9u、9u・9v、9vが設けられている。
【0028】
以上の説明から明らかなように、実施例に係る第1フリクショントルク発生機構9は、第1フリクションワッシャー9aがヒンジシャフト6aに固定され、第2フリクションワッシャー9bと第3フリクションワッシャー9cがブラケット部材8に固定されており、さらに第4フリクションワッシャー9dはヒンジシャフト6aに固定されていることから、締付ナット10を所定のトルクで締め付けると、ブラケット部材8を水平方向へ回転させる際に、第1フリクションワッシャー9aと第2フリクションワッシャー9bの間と、第3フリクションワッシャー9cと第4フリクションワッシャー9dの間にフリクショントルクが発生することになる。
【0029】
尚、この第1フリクショントルク発生機構9の構成は一例であって、実施例のものに限定されない。それは、様々なフリクションワッシャー、スプリングワッシャー及びその他のワッシャー等の公知或は新規な組み合わせが考えられる。
【0030】
次に、第1支持アーム5の先端側には、第2支持アーム11が第2支持機構Bを介して水平方向へ回転可能に取り付けられている。第2支持アーム11の先端側にはユニバーサルジョイントヒンジ15介して、例えばモニターテレビなどのディスプレイ16が上下左右に振り可能に取り付けられている。
【0031】
次に、各部材の構成につきさらに詳しく説明する。まず、取付部材4は、平面異形長円形状を呈したもので、その一端側に形成された挿通孔4aに支柱3が弛挿されており、挿通孔4aからは外部に向けて割り溝4bが設けられ、この割り溝4bに直交する方向に設けた雌ネジ孔4cに締付ネジ4dがネジ着されている。取付部材4には、とくに
図6に示されたように、一端から他端に向けて、挿通孔4a、空洞部4e、変形取付孔4fの順に形成されている。変形取付孔4fは、第1支持アーム5と対向する側の面で第1スイベルトルクヒンジ6を構成するヒンジシャフト6aの第1変形部6cの断面形状と略同形状に形成されており、第1変形軸部6cが変形取付孔4fに回動不能に挿入されている。この変形取付孔4fの下側には仕切壁4gを介して挿入穴4hが設けられ、仕切壁4gに設けたネジ挿通孔4hを介して互いに連通しており、ネジ挿通孔4iを介して挿入された締付ネジ17を、ヒンジシャフト6aの第1変形軸部6cに設けた雌ネジ孔6iへネジ着させることにより、ヒンジシャフト6aは取付部材4に固着されている。
【0032】
第1ブラケット部材8は、とくに
図3と
図4に示したように、平板部8aと、この平板部8aの両側に向けられた両側板部8b、8bと、平板部8aに設けられたところのヒンジシャフト6aの中径部6eを挿通させる挿通孔8cと、この挿通孔8cを挟んで平板部8aに設けた係止凹部8d、8dと、平板部8aから両側板部8b、8bにかけて設けられた係合孔8f、8fと、取付孔8e、8e、8eから成り、この取付孔8e、8e、8eを介して取付ネジ17、17、17で、
図9に示したように、第1支持アーム5の下側に固着されている。
【0033】
ブッシュ部材7は筒状のもので、第1支持アーム5にブラケット部材8に対して離間対向させて設けた保持部5rに設けた取付穴5cへ圧入されて取り付けられている。このブッシュ部材7としては、例えばオイレス工業株式会社製のドライメットブッシュ(品番:70B-0705)を用いることが好ましい。
【0034】
次に、第1支持アーム5について説明する。第1支持アーム5は、その固定端から自由端5sに向けて、第1空洞部5aと隔壁5eにより第1空洞部5aと隔離された第2空洞部5fと変形取付孔5gとが設けられている。取付部材4と対向する側の面に、第1空洞部5aと第2空洞部5fが設けられ、変形取付孔5gの仕切壁5tを介して挿入穴5uが設けられ、また、仕切壁5tにネジ挿通孔5vが設けられている。
【0035】
この第1空洞部5a内に第1スイベルトルクヒンジ6の主要部が収納されている。具体的には、第1空洞部5a内には、第1スイベルトルクヒンジ6を構成するヒンジシャフト6aの中径部6eの一部が収容される収容部5bと、ブッシュ部材7が取り付けられた軸支部6hが回転可能に軸支される保持部5rが形成されている。そして、保持部5rに設けた取付穴5cに取り付けたブッシュ部材7の挿通孔7aにヒンジシャフト6aの軸支部6hが回転可能に挿入された上で、平板部8aが固定ビス17で第1空洞部5a内で第1支持アーム5に固着されている。一方、とくに
図2と
図10に示されたように、第1支持アーム5の変形取付孔5gには、第2スイベルトルクヒンジ12のヒンジシャフト12aの変形軸部12cが挿入係合されて、固定ビス17により第1支持アーム5の先端側に固着されている。
【0036】
第1空洞部5aは、その開口部が第1蓋部材5kにより被蓋される。第1蓋部材5kには、ブラケット部材8に設けられた係合孔8f,8fに挿入される一対の係止片5m,5mが設けられている。第2空洞部5fは、その開口部が第2蓋部材5nにより被蓋される。第2蓋部材5nには、第2空洞部5f内に設けられた係止片5h,5hと係合する一対の係止片5p,5pが設けられている。
【0037】
次に、第2支持アーム11の第2支持機構Bについて説明する。この第2支持機構Bは、第2支持アーム11を水平方向へ揺動可能に支持し、スイベルトルクヒンジ12の取付要素となるものが第1支持アーム5となっている点で相違しているが、スイベルトルクヒンジ12のヒンジシャフトの12aの変形軸部12cが第1支持アーム5の自由端5s側に設けた変形取付孔5gに挿入固定され、ヒンジシャフト12の軸支部12hが第2支持アーム12の保持部12rに設けた取付孔12cに取り付けたブッシュ部材7に回転可能に挿入されている。その他の構成は第1支持機構Aと構成が同じであるので、詳しい説明を省略する。また、第2保持機構dにしても、それが第2支持アーム11に設けられる点を除いて第1保持機構cと同じ構成なので詳しい説明を省略する。
【0038】
図1と
図2及び
図8に示したように、第2支持機構Bの第2支持アーム11は、第1支持アーム5の変形取付孔5gの代わりにユニバーサルジョイントヒンジ15を取り付けるために取付手段11gを有するが、その他の構成は第1支持アーム5と同様である。具体的には、第2支持アーム11は、その第1支持アーム5に対する連結端側から自由端側に向けて、第1空洞部11aと隔壁11eにより第1空洞部11aと隔離された第2空洞部11fと取付手段11gとが設けられている。第1支持アーム5と対向する側の面に、第1空洞部11aと第2空洞部11fが設けられ、連結端側には保持部11rが設けられている。ている。
【0039】
第1空洞部11a内には、第2スイベルトルクヒンジ12を収容する収容部11bと、ブッシュ部材7が取り付けられた軸支部12hがブッシュ部材7を介して回転可能に軸支される取付穴11cが形成されている。そして、ブッシュ部材7にヒンジシャフト12aの軸支部12hが挿入された上で平板部13aが固定ビス17で第1空洞部11a内で第2支持アーム11に固着されている。一方、取付手段11gには、ユニバーサルジョイントヒンジ15が取付ビス17により固着され、ユニバーサルジョイントヒンジ15によりディスプレイ16が保持されている。
【0040】
第1空洞部11aは、その開口部が第1蓋部材11kにより被蓋される。第1蓋部材11kには、第2ブラケット部材13に設けられた係合孔13f,13fに挿入される一対の係止片11m,11mが設けられている。第2空洞部11fは、その開口部が第2蓋部材11nにより被蓋される。第2蓋部材11nには、第2空洞部5f内に設けられた一対の係止片11h,11hと係合する一対の係止片11p,11pが設けられている。
【0041】
以上のように、本願発明は、第1支持アーム5と第2支持アーム11に対応して2個の第1支持機構Aと第2支持機構Bが設けられているが、上述したように、本発明はこれに限定されない。例えば、1個の支持アームに対応して1個の支持機構を備えることもでき、3個の支持アームに対応して3個の支持機構を備えることもできる。
【0042】
次に、本実施形態に係る支持装置1の作用を説明する。ディスプレイ16は、昇降装置2の支柱3に対する取付部材4の取付位置を調節することにより、上下方向の位置が調整され、締付ネジ4dによりその位置が保持される。さらに、ディスプレイ16は、第1支持アーム5の固定端が第1支持機構Aを介して取付部材4に取付けられ、第2支持アーム11の固定端が第2支持機構Bを介して第1支持アーム5に取付けられていることにより、水平方向及び前後方向の位置が調整される。そして、第1スイベルトルクヒンジ6の第1フリクショントルク発生機構9と第2スイベルトルクヒンジ12の第2フリクショントルク発生機構14によりフリクショントルクが創出され、ディスプレイ16の水平方向の位置が任意の位置で停止保持される。
【0043】
このディスプレイ16の水平方向の位置や前後方向の位置を変えたいときには、第1フリクショントルク発生機構9と第2フリクショントルク発生機構14により創出されているフリクショントルクより大きな力をディスプレイ16に作用させて、ディスプレイ16が所望の位置になったら、その移動を停止すると、第1スイベルトルクヒンジ6と第2スイベルトルクヒンジ12により発生しているフリクショントルクによりディスプレイ16がその位置に停止保持される。
【0044】
このようにディスプレイ16が第1支持アーム5と第2支持アーム11によって停止保持されている状態において、まず、第1支持アーム5がディスプレイ16及び第2支持アーム11により生じる落下モーメントにより、ディスプレイ16側に垂れ下がろうとする。しかし、第1スイベルトルクヒンジ6が、ブラケット部材8だけでなく、第1支持アーム5の保持部5rに設けた取付穴5cへ挿入させたブッシュ部材7が介在した状態で軸支部6hが挿入されているヒンジシャフト6aでその落下モーメントを受け止めることにより、第1支持アーム5がディスプレイ16側に垂れ下がるのを抑えることができる。さらに支持アーム5にかかる偏荷重が第1保持機構cにより、ヒンジシャフト6aの軸周りに均等に荷重されることになることから、第1フリクショントルク発生機構9を構成するフリクションワッシャー9a~9dやスプリングワッシャー9eに偏荷重が加わることを防止できる。これによりフリクショントルク発生機構によるフリクショントルクの初期設定が経時的に変化することを有効に防止できるものである。
【0045】
つまり、
図11に示す比較例のスイベルトルクヒンジ20ように、支持アーム21に取り付けたブラケット部材26のみで、図示してないディスプレイのような各種機器の落下モーメントを受け止めようとすると、支持アーム21が各種機器側に垂れ下がり易く、支持アーム21が各種機器側に垂れ下がると、それに伴いブラケット部材26も垂れ下がり、ブラケット部材26と締付ナット22の間のクショントルク発生機構25に偏った荷重かかり、使用開始後においてフリクショントルク発生機構25により創出されるフリクショントルクが変動してしまう。その結果、フリクショントルク発生機構25の初期設定トルク値が時間の経過とともに変化してしまうが、本発明によればこのよう不都合を極めて有効に防止することができるものである。このような問題は、図示してない第2支持アームを支持する第2支持機構Bの場合も同じである。その他、
図11において、指示記号23ものは取付部材であり、支持記号3のものは取付要素を構成する昇降装置の支柱である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、以上のように構成したので、モニターテレビのようなディスプレイを始めとする各種機器を取付要素に対して水平方向へ移動させ、任意の位置で安定停止保持させることができる上に、使用開始後においてフリクショントルクに経時的変化が生じてしまうのを極めて有効に防止できる支持機構並びにこの支持機構を用いた支持装置を提供することができるものである。
【符号の説明】
【0047】
A 第1支持機構
B 第2支持機構
c 第1保持機構
d 第2保持機構
1 支持装置
2 昇降装置(取付要素)
3 支柱
4 取付部材
5 第1支持アーム
5a 第1空洞部
6 第1スイベルトルクヒンジ
6a ヒンジシャフト
6h 軸支部
7 ブッシュ部材
7a 挿通孔
8 ブラケット部材
8f 係合孔
9 第1フリクショントルク発生機構
11 第2支持アーム
12 第2スイベルトルクヒンジ
12a ヒンジシャフト
13 ブラケット部材
14 第2フリクショントルク発生機構
15 ユニバーサルジョイントヒンジ
16 ディスプレイ
20 スイベルトルクヒンジ
20a 取付部材
21 支持アーム
23 ヒンジシャフト
25 フリクショントルク発生機構
26 ブラケット部材