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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】取水除塵器、及び小水力発電システム
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/04 20060101AFI20230510BHJP
   E02B 5/08 20060101ALI20230510BHJP
   E02B 9/00 20060101ALI20230510BHJP
   F03B 11/08 20060101ALI20230510BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20230510BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
E02B9/04 E
E02B5/08 101A
E02B9/00 Z
F03B11/08
B01D23/02 B
B01D35/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019115249
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021001469
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】519226171
【氏名又は名称】iNE開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 義時
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】五十鈴川 明
(72)【発明者】
【氏名】下平 文隆
(72)【発明者】
【氏名】好村 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】浜田 稔
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169066(JP,A)
【文献】特開平06-007613(JP,A)
【文献】特許第5149485(JP,B2)
【文献】実開昭61-181899(JP,U)
【文献】特開平08-074232(JP,A)
【文献】特開2002-173957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/04
E02B 5/08
E02B 9/00
F03B 11/08
B01D 29/00
B01D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流の方向に延在する複数の上棒状部材を有する上フィルタと、
前記上フィルタの下方に設けられており、前記水流の方向と直交する水平方向に延在しており、上方に向かって凸形状の曲面を有する複数の下棒状部材を有する下フィルタと、
を有し、
前記下棒状部材の断面が弧を有しており、前記弧の両端を結ぶ直線は前記水流の方向に対して前記水流の方向の下流に向かうにつれて上方に向かって傾いていることを特徴とする取水除塵器。
【請求項2】
前記上棒状部材は、断面がV字形状であることを特徴とする、
請求項1に記載の取水除塵器。
【請求項3】
前記水平方向において延伸している軸部をさらに有し、
前記軸部は、前記上棒状部材の前記水流の下流側の端部を前記下フィルタに対して移動可能にすることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の取水除塵器。
【請求項4】
前記上棒状部材の前記水流の下流側の端部が前記下フィルタに対して移動可能な状態で前記上棒状部材を前記軸部に接続する接続部と、
前記軸部及び前記接続部における前記軸部と接している領域を上方から覆うカバーと、
をさらに有することを特徴とする、
請求項に記載の取水除塵器。
【請求項5】
前記複数の上棒状部材の前記水流の上流側において、前記水流の方向に延在しており、流れの乱れを抑制した前記水流を流す板状部材をさらに有することを特徴とする、
請求項1からのいずれか一項に記載の取水除塵器。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の取水除塵器と、
前記取水除塵器によって取水及び異物が除去された水を利用して発電する発電機と、
を有することを特徴とする小水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水除塵器、及び小水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水力発電システムには取水除塵器が用いられている。特許文献1には、マイクロ水力発電システムにおける水力発電機への取水に際し、水力発電機へ供給される水に混入した小石、砂、落ち葉、ごみ等を除去する塵芥除去装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5149485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水力発電機に供給される水に混入した異物を除去するためにフィルタの目を小さくすることにより、異物を除去し易くなる。しかしながら、フィルタの目を小さくすると、取水効率が低下するという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、取水効率の低下を抑制しつつ異物を除去し易い取水除塵器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、水流の方向に延在する複数の上棒状部材を有する上フィルタと、前記上フィルタの下方に設けられており、前記水流の方向と直交する水平方向に延在しており、上方に向かって凸形状の曲面を有する複数の下棒状部材を有する下フィルタと、を有することを特徴とする取水除塵器を提供する。
【0007】
また、前記下棒状部材の断面が弧を有しており、前記弧の両端を結ぶ直線は前記水流の方向に対して前記水流の方向の下流に向かうにつれて上方に向かって傾いていてもよい。また、前記上棒状部材は、断面がV字形状であってもよい。
【0008】
また、前記水平方向において延伸している軸部をさらに有し、前記軸部は、前記上棒状部材の前記水流の下流側の端部を前記下フィルタに対して移動可能にしてもよい。また、前記上棒状部材の前記水流の下流側の端部が前記下フィルタに対して移動可能な状態で前記上棒状部材を前記軸部に接続する接続部と、前記軸部及び前記接続部における前記軸部と接している領域を上方から覆うカバーと、をさらに有していてもよい。
【0009】
また、前記複数の上棒状部材の前記水流の上流側において、前記水流の方向に延在しており、流れの乱れを抑制した前記水流を流す板状部材をさらに有していてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、上記のいずれかに記載の取水除塵器と、前記取水除塵器によって取水及び異物が除去された水を利用して発電する発電機と、を有することを特徴とする小水力発電システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取水除塵器において、取水効率の低下を抑制しつつ異物を除去し易くなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る取水除塵器を有する小水力発電システムの構成を示す。
図2】第1の実施形態に係る取水除塵器を構成する部材が分離された状態を示す。
図3】上フィルタの構造を示す。
図4】上棒状部材の拡大図である。
図5】上棒状部材、軸部、及び接続部の拡大図である。
図6】下フィルタの構造を示す。
図7】下棒状部材の拡大断面図である。
図8】変形例としての上棒状部材を示す。
図9】第2の実施形態に係る取水除塵器を有する小水力発電システムの構成を示す。
図10】第2の実施形態に係る取水除塵器の構造を示す。
図11】変形例としての取水除塵器を有する小水力発電システムの構成を示す。
図12】変形例としての整流板の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
[小水力発電システムRの構成]
図1は、第1の実施形態に係る取水除塵器Sを有する小水力発電システムRの構成を示す図である。図1(a)は、小水力発電システムRを上方から見た状態を示す図である。図1(b)は、小水力発電システムRを側方から見た状態を示す図である。
【0014】
小水力発電システムRは、水力を利用して発電する。小水力発電システムRは、第1水路Aを流れる水を利用して発電する。第1水路Aは、異物Xを含む水を流す水路である。第1水路Aは、例えば河川又は人工水路を含む。異物Xは、例えば、落ち葉、ごみ、小石、小枝、木ノ葉、草、藻を含む。第1水路Aには異物Xを含む水が流れている。
【0015】
小水力発電システムRは、取水器T、取水除塵器S、第2水路U、及び発電機Vを有する。取水器Tは、上方に開口部を有する箱形状の容器である。取水器Tは、第1水路Aに設けられている。具体的には、取水器Tは、例えば第1水路Aの底に設けられている。取水器Tは、第1水路Aを流れる異物Xを含む水から取水除塵器Sによって異物Xが除去された水を貯留し、当該貯留した水を第2水路Uに流す。
【0016】
取水除塵器Sは、第1水路Aを流れる異物Xを含む水の一部を取水すると共に除塵する。取水除塵器Sは、第1水路Aを流れる異物Xを含む水を発電機Vで利用するために、異物Xを除去すると共に取水効率を高くすることが望まれる。取水効率は、取水除塵器Sの上方を流れる異物Xを含む水の量に対する取水除塵器Sによって発電機Vで利用するために取水された水の量の割合である。
【0017】
取水除塵器Sは、取水器Tに設けられている。具体的には、取水除塵機Sは、例えば取水器Tの上方に形成されている開口部に設けられている。第1水路Aを流れる異物Xを含む水は、取水除塵器Sの上方を流れる。異物Xを含む水が、取水除塵器Sの上方を流れることで、異物Xが除去された水は取水除塵器Sの下方に向かって流れる。具体的には、異物Xを含む水が、取水除塵器Sの上方を流れることで、取水除塵機Sの上方を流れる異物Xを含む水のうち、異物X及び一部の水は上流から下流に向かって流れると共に異物Xが除去された水は取水除塵器Sの下方に向かって流れる。取水除塵器Sの下方に向かって流れる異物Xが除去された水は、取水器Tに溜められる。取水除塵器Sの詳細は後述する。
【0018】
第2水路Uは、取水除塵器Sによって取水及び除塵し、取水器Tに溜められた水を流す水路である。第2水路Uは、例えば人口水路である。第2水路Uは、取水除塵器Sによって異物Xが除去された水を流す。第2水路Uの一端は、例えば、取水器Tの下方に設けられており、第2水路Uの他端は、発電機Vの付近に設けられている。取水除塵器Sによって異物Xが除去された水は、第2水路Uを流れて、発電機Vに流入する。発電機Vは、第2水路Uから流出した水を利用して発電する。発電機Vは、例えば、第2水路Uの他端付近に設けられている。
【0019】
[取水除塵器Sの構造]
図2は、第1の実施形態に係る取水除塵器Sを構成する部材が分離された状態を示す図である。図3は、上フィルタ2の構造を示す図である。図4は、上棒状部材21の拡大図である。図5は、上棒状部材21、軸部4、及び接続部5の拡大図である。図6は、下フィルタ3の構造を示す図である。図7は、下棒状部材31の拡大断面図である。図7(a)は、下棒状部材31の拡大断面図である。図7(b)は、比較例としての下棒状部材31aの拡大断面図である。
【0020】
取水除塵器Sは、枠部1、上フィルタ2、下フィルタ3、軸部4、接続部5、及びカバー6を有する。枠部1は、取水除塵器Sの外側の枠部である。枠部1は、前枠部11、左側枠部12、右側枠部13、及び後枠部14を有する。前枠部11は、取水除塵器Sの前方の枠部である。前枠部11は、取水除塵器Sの幅方向において延在している板状の部材である。前枠部11の左端は、左側枠部12の上面における前端に締結部材によって固定されている。前枠部11の右端は、右側枠部13の上面における前端に締結部材によって固定されている。
【0021】
左側枠部12は、取水除塵器Sの幅方向における左側方の枠部である。左側枠部12は、取水除塵器Sの前後方向において延伸している。左側枠部12は、複数の穴を有する。複数の穴は、後述する下フィルタ3の下棒状部材31の左端を固定するための締結部材、及び後述する軸部4の左端を固定するための締結部材が挿入されている穴である。
【0022】
右側枠部13は、取水除塵器Sの幅方向における右側方の枠部である。右側枠部13は、取水除塵器Sの前後方向において延伸している。右側枠部13は、複数の穴を有する。複数の穴は、後述する下フィルタ3の下棒状部材31の右端を固定するための締結部材、及び後述する軸部4の右端を固定するための締結部材が挿入されている穴である。
【0023】
後枠部14は、取水除塵器Sの後方の枠部である。後枠部14は、取水除塵器Sの幅方向において延伸している。後枠部14の左端は、左側枠部12の後端に締結部材によって固定されている。後枠部14の右端は、右側枠部13の後端に締結部材によって固定されている。
【0024】
上フィルタ2は、異物Xを含む水から異物Xを除去すると共に水に含まれる泡を除去する。上フィルタ2は、複数の上棒状部材21を有する。上棒状部材21は、水流の方向に延在する。上棒状部材21は、後述する軸部4によって支持されている。
【0025】
隣接する複数の上棒状部材21の間には、第1の空間が形成されている。上フィルタ2は、例えば、異物Xを含む水から、異物Xのうち、少なくとも第1の空間の幅よりも大きい異物Xを除去する。水流は、例えば、異物Xのうち、少なくとも第1の空間の幅よりも大きい異物Xを、水と共に複数の上棒状部材21の上方を水流における上流から下流に向かって流す。その結果、一部の異物Xが除去された水が上フィルタ2の下方に流れる。
【0026】
上フィルタ2は、このように水流の方向に延在する複数の上棒状部材21を有することで、上棒状部材21の長手方向に水が流れ易くなるとともに、第1の空間の幅よりも大きな部分がある異物Xが取水器Tに向けて落下することを妨げることができる。
【0027】
図4に示すように、上棒状部材21は、例えば、断面が下に凸のV字形状である。取水除塵器Sは、このような上棒状部材21を有する上フィルタ2を有することで、上棒状部材21の上方を流れる水に含まれる異物Xを上棒状部材21のV字の溝に沿って下流側に流すことができる。よって、取水除塵器Sは、このような上棒状部材21を有する上フィルタ2を有することで、さらに異物Xが取水器Tに落下しづらくなる。
【0028】
下フィルタ3は、異物Xを含む水から異物Xを除去する。下フィルタ3は、上フィルタ2の下方に設けられている。下フィルタ3は、複数の下棒状部材31を有する。下棒状部材31は、左側枠部12と右側枠部13との間に固定されている。具体的には、下棒状部材31の左端は、左側枠部12に形成されている穴に挿入した締結部材によって左側枠部12に固定されている。下棒状部材31の右端は、右側枠部13に形成されている穴に挿入した締結部材によって右側枠部13に固定されている。
【0029】
隣接する複数の下棒状部材31の間には、第2の空間が形成されている。下フィルタ3は、例えば、異物Xのうち、少なくとも第2の空間の幅よりも大きい異物Xを除去する。水流は、例えば、異物Xのうち、少なくとも第2の空間の幅よりも大きい異物Xを、水と共に複数の下棒状部材31の上方を水流における上流から下流に向かって流す。その結果、一部の異物Xが除去された水が下フィルタ3の下方に流れる。下フィルタ3は、例えば、上フィルタ2で除去しづらい異物Xを除去するようにしてもよい。第1の空間及び第2の空間は、発電機Vにより許容される異物Xのサイズであり、発電機Vの機種に依存する。
【0030】
下棒状部材31は、水流の方向と直交する水平方向に延在しており、上方に向かって凸形状の曲面を有する。すなわち、下棒状部材31の断面は、上方に向かって凸形状の弧を有する。取水除塵器Sは、このような下棒状部材31を有することで、上流から下流に向かって流れる水を下棒状部材31に衝突させることで水流を減速させる。そして、水は、コアンダ効果と重力によって効果的に下方に導かれる。よって、取水除塵器Sは、このような下棒状部材31を有することで取水効率を向上させることができる。また、取水除塵器Sにおいては、このように上方に向かって凸形状の曲面を有する下棒状部材31を有することで、異物Xを含む水を下棒状部材31の表面に沿って流れ易くし、下棒状部材31に異物Xが引掛りづらくすることができる。
【0031】
以上のとおり、取水除塵器Sが、このように下フィルタ3の上方に設けられており、複数の上棒状部材21が水流の方向に延在している上フィルタ2を有することで、水に含まれる異物Xが、上棒状部材21の上方で上流から下流に向かって流れ易くなる。また、取水除塵器Sが、水流の方向と直交する水平方向において延在しており、上方に向かって凸形状の曲面を有する複数の下棒状部材31を含む下フィルタ3を有することで、取水効率が向上すると共に異物Xが引掛りづらくなる。これらの結果、取水除塵器Sは、取水効率の低下を抑制しつつ異物を除去し易くすることができる。
【0032】
図7(a)に示すように、取水除塵器Sにおいては、下棒状部材31の断面が弧を有しており、弧の両端を結ぶ直線が水流の方向に対して水流の方向の下流に向かうにつれて上方に向かって傾いている。図7(b)に示すように、比較例としての下棒状部材31aは、下棒状部材31と比べて、下棒状部材31aの断面が弧を有しているものの、弧の両端を結ぶ直線が水流の方向において延伸している点で異なる。
【0033】
図7(b)に示す下棒状部材31aが設けられている場合、複数の下棒状部材31aの間に形成されている第2の空間における異物Xの大きさよりも幅が小さい位置と、下棒状部材31aの上端との間の、取水除塵器Sの高さ方向における距離が大きくなってしまう。
【0034】
よって、このような下棒状部材31aが設けられている場合、水に含まれる異物Xは、複数の下棒状部材31aの間に形成されている第2の空間における深い領域に入り込んでしまい易い。複数の下棒状部材31aの間に形成されている第2の空間における深い領域に入り込んだ異物Xは、当該第2の空間から流出しづらい。この結果、このような下棒状部材31aが設けられている場合、異物Xが下フィルタ3に溜まり易い。
【0035】
これに対して、取水除塵器Sにおいては、図7(a)に示すように、下棒状部材31の断面が弧を有しており、弧の両端を結ぶ直線が水流の方向に対して水流の方向の下流に向かうにつれて上方に向かって傾いている。取水除塵器Sは、このような下棒状部材31を有することで、下棒状部材31aが設けられている場合と比べて、複数の下棒状部材31の間に形成されている第2の空間における異物Xの大きさよりも幅が小さい位置と、下棒状部材31の上端との間の、取水除塵器Sの高さ方向における距離を小さくすることができる。
【0036】
よって、複数の下棒状部材31の間に形成されている第2の空間に入り込んだ異物Xは、水で押されることで第2の空間から流出し易い。この結果、取水除塵器Sは、このような下棒状部材31が設けられている下フィルタ3を有することで、異物Xが下フィルタ3に溜まりにくい。
【0037】
図2に示すように、軸部4は、水流の方向と直交する水平方向において延伸している。図5に示すように、軸部4は、例えば円柱形状である。軸部4は、上棒状部材21の水流の下流側の端部を下フィルタ3に対して移動可能にする。具体的には、軸部4は、上棒状部材21の水流の下流側の端部が下フィルタ3に対して移動可能な状態で、上棒状部材21を支持している。軸部4は、左側枠部12と右側枠部13との間に固定されている。具体的には、軸部4の左端は、左側枠部12に形成されている穴に挿入した締結部材によって左側枠部12に固定されている。軸部4の右端は、右側枠部13に形成されている穴に挿入した締結部材によって右側枠部13に固定されている。
【0038】
接続部5は、上棒状部材21を軸部4に対して回転可能に接続する。具体的には、接続部5は、上棒状部材21の水流の下流側の端部が下フィルタ3に対して移動可能な状態で上棒状部材21を軸部4に接続する。接続部5は、上棒状部材21の水流の上流側の端部に設けられている。接続部5の下端には、凹部51が形成されている。凹部51には、軸部4が挿入されている。接続部5と上棒状部材21は、軸部4を支点に、重力バランスを有する。すなわち、接続部5と上棒状部材21は、軸部4を支点に長手方向における両側の力のモーメントが釣り合っていることで、取水除塵器Sの上方に水が流れていない状態では、取水除塵器Sの高さ方向と直交する水平方向において延在している。
【0039】
取水除塵器Sは、このような軸部4を有することで、上棒状部材21の下流側の端部を下フィルタ3に対して移動可能にする。よって、取水除塵器Sは、このように上棒状部材21の下流側の端部を下フィルタ3に対して固定せずに開放し、移動可能とすることで、上フィルタ2と下フィルタ3との間に入った異物Xを下流に向かって排出させ易くなる。
【0040】
具体的には、例えば、上フィルタ2の複数の上棒状部材21の間に形成されている第1の空間を下方に向かって通過した異物Xと、当該通過した異物Xに衝突した水流とが上棒状部材21に衝突することで、取水除塵器Sの高さ方向と直交する水平方向において延在している上棒状部材21の水流の下流側の端部が上方に向かって押されて、下フィルタ3に対して上方に向かって跳ね上がる。そして、上棒状部材21の水流の下流側の端部が、下フィルタ3に対して上方に向かって跳ね上がることで、異物Xが上フィルタ2の下方から上方に移動する。この結果、取水除塵器Sにおいては、上フィルタ2から異物Xが通過したとしても、異物Xが上フィルタ2と下フィルタ3との間に留まりにくくなる。
【0041】
図2に示すように、カバー6は、軸部4及び接続部5における軸部4と接している領域を上方から覆う。カバー6は、開閉可能な状態で設けられている。具体的には、カバー6は、カバー6の後枠部14側の端部とは反対側の端部が、軸部4及び接続部5における軸部4と接している領域に対して移動可能な状態で、後枠部14に接続されている。より具体的には、カバー6の後枠部14側の端部は、例えばヒンジを介して後枠部14に接続されている。
【0042】
図2においては、取水除塵器Sの幅方向においてカバー6が2枚設けられているが、カバー6の数は任意である。例えば、取水除塵器Sの幅方向において1枚のカバー6が設けられていてもよい。取水除塵器Sは、このようなカバー6を有することで、水に含まれる異物Xが、軸部4に巻き付いたり、接続部5に引っ掛かったりするのを防ぐことができる。
【0043】
[変形例1]
図8は、変形例としての上棒状部材21bを示す図である。
上棒状部材21bは、上棒状部材21と比べて、断面が長方形状である点で異なる。上棒状部材21bは、平坦な面が上方に向くように設けられている。また、上棒状部材21bの表面は、親水性部材であるアルマイトにより加工されていてもよい。取水除塵器Sは、このような上棒状部材21bを有する上フィルタ2を有することで、上棒状部材21bの上方において異物Xを含む水を流し易くする。
【0044】
[変形例2]
上記実施形態においては、取水除塵器Sを構成する各部材同士は、締結部材によって固定されている構造を示したが、これに限定されない。取水除塵器Sを構成する各部材同士は、その他固定手段、例えば、隙間部材、嵌め、軽圧入部材によって固定されていてもよい。
【0045】
[第1の実施の形態に係る取水除塵器Sによる効果]
本実施の形態に係る取水除塵器Sは、水流の方向に延在する複数の上棒状部材21を有する上フィルタ2と、上フィルタ2の下方に設けられており、水流の方向と直交する水平方向に延在しており、上方に向かって凸形状の曲面を有する複数の下棒状部材31を有する下フィルタ3と、を有する。
【0046】
よって、第1の実施形態に係る取水除塵器Sが、このように下フィルタ3の上方に設けられており、複数の上棒状部材21が水流の方向に延在している上フィルタ2を有することで、水に含まれる異物Xが、上棒状部材21の上方で上流から下流に向かって流れ易くなる。また、取水除塵器Sが、水流の方向と直交する水平方向において延在しており、上方に向かって凸形状の曲面を有する下棒状部材31を含む下フィルタ3を有することで、取水効率が向上すると共に異物Xが引掛りづらくなる。また、取水除塵器Sは、上フィルタ2と下フィルタ3との間に入り込んだ異物Xを排出することができる。これらの結果、取水除塵器Sは、異物Xを除去し易くし、取水効率を向上させることができる。
【0047】
<第2の実施形態>
図9は、第2の実施形態に係る取水除塵器Saを有する小水力発電システムRaの構成を示す図である。図9(a)は、小水力発電システムRaを上方から見た状態を示す図である。図9(b)は、小水力発電システムRaを側方から見た状態を示す図である。図10は、第2の実施形態に係る取水除塵器Saの構造を示す図である。なお、図10においては、2本の上棒状部材21が取り外された状態が示されている。図10に示すように、上棒状部材21の下方には、下棒状部材31が設けられている。
【0048】
小水力発電システムRaは、小水力発電システムRと比べて、取水除塵器Sの代わりに、取水除塵器Saを有する点で異なる。取水除塵器Saは、取水除塵機Sと比べて、整流板7a、及び土台8aを有する点で異なる。整流板7aは、水流を整流するための部材である。整流板7aは、水流に乱れが生じている場合でも、上棒状部材21が延伸している方向に平行な水流に整えることができる。整流板7aは、複数の上棒状部材21の水流の上流側に設けられている。整流板7aの詳細は後述する。土台8aは、枠部1と整流板7aを固定するための部材である。枠部1及び整流板7aは、土台8aの上面に固定されている。
【0049】
整流板7aは、平板部71a、及び板状部材72aを有する。平板部71aは、平坦な上面を有し、取水除塵機Saの高さ方向と直交する水平方向において延在している。平板部71aの上面は、例えば、取水除塵機Saの高さ方向において、複数の上棒状部材21の上面と同じ高さに位置するが、平板部71aの上面は、複数の上棒状部材21の上面よりも上方に位置していてもよい。板状部材72aは、水流の方向に延在している。板状部材72aは、流れの乱れを抑制した水流を流す。流れの乱れは、例えば、流れの速度又は圧力が不規則に変動している状態を含む。
【0050】
流れの乱れを有する水流は、整流板7aにおいて、板状部材72aに沿って流れることで、流れの乱れが抑制され、板状部材72aが延伸している向きに流れ易くなる。図10に示すように、板状部材72aは、例えば、水流の方向と直交する水平方向において、4本設けられているが、板状部材72aの数は任意である。
【0051】
取水除塵機Saは、このように整流板7aを有することで、上フィルタ2の上方の水流の流れの乱れを抑制し、上フィルタ2の上方の水流を上棒状部材21が延伸している向きと平行な向きに流れるように整流することができる。よって、取水除塵機Saは、例えば、水流中に泡が生じづらくなることで、取水効率が向上すると共に、異物Xを除去し易くなる。
【0052】
[変形例]
図11は、変形例としての取水除塵器Sbを有する小水力発電システムRbの構成を示す図である。図11(a)は、小水力発電システムRbを上方から見た状態を示す図である。図11(b)は、小水力発電システムRbを側方から見た状態を示す図である。図12は、変形例としての整流板7bの構造を示す図である。図12(a)は、整流板7bの構造を示す図である。図12(b)は、整流板7b及び上フィルタ2を側方から見た構造を示す図である。
【0053】
上記第2の実施形態においては、整流板7aは、取水除塵器Saの高さ方向と直交する水平方向において延在している例を示したが、これに限定されない。整流板7bは、水流の上流側から下流側に向かうにつれて、取水除塵器Sbの高さ方向において、上方から下方に向かって延伸していてもよい。
【0054】
図12(a)に示すように、整流板7bは、平板部71b、及び板状部材72bを有する。平板部71bは、水流の上流側から下流側に向かうにつれて、取水除塵器Sbの高さ方向において、上方から下方に向かって延伸している。板状部材72bは、板状部材72aと同様の構造を有する。整流板7bは、このように水流の上流側から下流側に向かうにつれて、取水除塵器Sbの高さ方向において、上方から下方に向かうように傾斜していることで、整流板7bの上方を上流側から下流側に向かって流れる水流を加速させることができる。よって、取水除塵器Sbは、取水除塵器Sbの上方を流れる水流の速度を向上させることができる。この結果、取水除塵器Sbは、さらに取水効率が向上すると共に、異物Xを除去し易くなる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0056】
A・・・第1水路
R、Ra、Rb・・・小水力発電システム
T・・・取水器
U・・・第2水路
V・・・発電機
X・・・異物
S、Sa、Sb・・・取水除塵器
1・・・枠部
11・・・前枠部
12・・・左側枠部
13・・・右側枠部
14・・・後枠部
2・・・上フィルタ
21、21b・・・上棒状部材
3・・・下フィルタ
31、31a・・・下棒状部材
4・・・軸部
5・・・接続部
51・・・凹部
6・・・カバー
7a、7b・・・整流板
71a、71b・・・平板部
72a、72b・・・板状部材
8a・・・土台
図1
図2
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図10
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図12