(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】競技用ゴールの取付装置
(51)【国際特許分類】
A63B 63/04 20060101AFI20230510BHJP
A63B 63/00 20060101ALI20230510BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A63B63/04
A63B63/00 C
A63B69/00 508
A63B69/00 509
(21)【出願番号】P 2019197171
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391042656
【氏名又は名称】株式会社ルイ▲高▼
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(72)【発明者】
【氏名】上野 孝志
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】特許第3016202(JP,B1)
【文献】特開2002-360753(JP,A)
【文献】特開2017-099741(JP,A)
【文献】特開2006-000386(JP,A)
【文献】特開2019-178585(JP,A)
【文献】米国特許第6808463(US,B1)
【文献】中国実用新案第207575708(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-0931506(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 61/00-65/12
69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のゴールポストおよび該ゴールポスト間に連結されるクロスバーを有する競技用ゴールを、地中に埋設された一対の埋設管内に各ゴールポストの下端側部分をそれぞれ嵌挿して支持することにより、所定の位置に取り付ける競技用ゴールの取付装置であって、
各埋設管の内周面に固定された支持ブロックと、
各ゴールポストの下端側部分の外周面に固定された固定ブロックと、
各ゴールポストの下端側部分における前記固定ブロックの下方に配置され、当該ゴールポストの下端側部分の外周面に沿って前記ゴールポストの軸方向に移動可能な移動ブロックと、
前記固定ブロックと前記移動ブロックとを連結すると共に、前記移動ブロックを移動させることで前記固定ブロックと前記移動ブロックとの間隔を変更可能な連結部と、
を含み、
前記移動ブロックの下端面が前記支持ブロックの上端面に当接することによって前記一対のゴールポストを支持すると共に、前記連結部による前記固定ブロックと前記移動ブロックとの前記間隔の変更によって地表に対する前記クロスバーの高さを調整する、
競技用ゴールの取付装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記移動ブロックの下端面が前記支持ブロックの上端面に当接した状態で上方からアクセスして前記移動ブロックを前記ゴールポストの軸方向に移動させる操作が可能に構成されている、請求項1に記載の競技用ゴールの取付装置。
【請求項3】
前記固定ブロックは、上端面と下端面との間を前記ゴールポストの軸方向に貫通するボルト挿通孔を有し、
前記移動ブロックは、上端面から前記ゴールポストの軸方向に形成されたねじ孔を有し、
前記連結部は、前記固定ブロックの前記ボルト挿通孔に挿通される高さ調整用ボルトを有し、該高さ調整用ボルトのねじ部を前記移動ブロックの前記ねじ孔にねじ込むことで前記固定ブロックと前記移動ブロックとを連結すると共に、前記高さ調整用ボルトのねじ込み量が調節されることで前記固定ブロックと前記移動ブロックとの前記間隔を変更する、
請求項1または2に記載の競技用ゴールの取付装置。
【請求項4】
前記支持ブロックの上端面は、前記埋設管の外側から中心側に向かって下向きに傾斜するテーパ面に形成されており、
前記移動ブロックの下端面は、前記ゴールポストの外側から中心側に向かって下向きに傾斜し、前記支持ブロックの上端面と同一の傾斜角を有するテーパ面に形成されている、
請求項1~3のいずれか1つに記載の競技用ゴールの取付装置。
【請求項5】
前記固定ブロックの上端面は、前記ゴールポストの中心側から外側に向かって下向きに傾斜するテーパ面に形成されている、請求項1~4のいずれか1つに記載の競技用ゴールの取付装置。
【請求項6】
前記競技用ゴールの設置時に前記固定ブロックの上端面に取り付けられ、前記クロスバーの高さ調整時または前記競技用ゴールの撤去時に前記固定ブロックの上端面から取り外される押さえブロックをさらに含み、
前記押さえブロックの下端面は、前記ゴールポストの中心側から外側に向かって下向きに傾斜し、前記固定ブロックの上端面と同一の傾斜角を有するテーパ面に形成されている、
請求項5に記載の競技用ゴールの取付装置。
【請求項7】
前記固定ブロックは、前記ゴールポストの下端側部分の外周面への固定位置が前記ゴールポストの軸方向に可変である、請求項1~6のいずれか1つに記載の競技用ゴールの取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競技用ゴールを所定の位置に取り付けるための取付装置に関し、特に、クロスバーの高さ調整が可能な競技用ゴールの取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サッカーゴールなどの競技用ゴールには埋込式と移動式の2種類があり、公式試合ではゴールの位置が固定された埋込式の競技用ゴールを用いることが必要とされる。この埋込式の競技用ゴールでは、グラウンドレベル(地表レベル)の変化に応じてゴールの高さ調整が必要となる。例えば、天然芝グラウンドの場合、芝生の育成のために目砂(目土)が撒かれるため、グラウンドレベルが徐々に上昇する。このグラウンドレベルの上昇に合わせて、埋込式の競技用ゴールのクロスバーの高さ調整を行い、地表に対するクロスバーの高さを一定(サッカーゴールの場合2.44m)にする必要がある。
【0003】
埋込式の競技用ゴールについて、例えば特許文献1には、地中に固定された埋設管内にゴールポストの下端部を嵌挿して支持することにより、競技用ゴールを所定の位置に取り付けるための取付装置が開示されている。この取付装置には、ゴールポストの下端部の埋設管への挿入深さを調節することでクロスバーの高さを調節するようにした高さ調節機構が埋設管の内側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1による競技用ゴールの取付装置では、競技用ゴールを所定の位置に取り付けた後にクロスバーの高さを調節しようとした場合、埋設管の内側に位置する高さ調節機構にアクセスするために、埋設管内からゴールポストの下端部の一部または全部を抜き出すことが必要であった。サッカーゴールなどのような大型の競技用ゴールでは、埋設管内からゴールポストを抜き出すために人手を要するので、限られた人員によってクロスバーの高さ調節を行うのは簡単なことではなく、高さ調節機構の利便性の向上が求められていた。
【0006】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、クロスバーの高さ調整を簡便に行うことのできる競技用ゴールの取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様は、一対のゴールポストおよび該ゴールポスト間に連結されるクロスバーを有する競技用ゴールを、地中に埋設された一対の埋設管内に各ゴールポストの下端側部分をそれぞれ嵌挿して支持することにより、所定の位置に取り付ける競技用ゴールの取付装置を提供する。この取付装置は、各埋設管の内周面に固定された支持ブロックと、各ゴールポストの下端側部分の外周面に固定された固定ブロックと、各ゴールポストの下端側部分における前記固定ブロックの下方に配置され、当該ゴールポストの下端側部分の外周面に沿って前記ゴールポストの軸方向に移動可能な移動ブロックと、前記固定ブロックと前記移動ブロックとを連結すると共に、前記移動ブロックを移動させることで前記固定ブロックと前記移動ブロックとの間隔を変更可能な連結部と、を含み、前記移動ブロックの下端面が前記支持ブロックの上端面に当接することによって前記一対のゴールポストを支持すると共に、前記連結部による前記固定ブロックと前記移動ブロックとの前記間隔の変更によって地表に対する前記クロスバーの高さを調整する。
【発明の効果】
【0008】
上記のような本発明の一態様によれば、各ゴールポストに固定された固定ブロックに連結部を介して連結された移動ブロックが、連結部によって当該ゴールポストの軸方向に移動されることで、固定ブロックと移動ブロックとの間隔が変更されて、地表に対するクロスバーの高さ調整が行われる。このような連結部による固定ブロックと移動ブロックの間隔の変更は、埋設管内にゴールポストの下端側部分を嵌挿させた状態で実施可能であるので、クロスバーの高さ調整を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による取付装置を用いて取り付けられたサッカーゴールの概略構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図2】
図1(B)の破線で囲んだ領域Aを拡大して示した図である。
【
図3】上記実施形態における埋設管および支持ブロックの具体的な構成例を示し、(A)は平面図、(B)は部分断面側面図である。
【
図4】上記実施形態における固定ブロックの具体的な構成例を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図5】上記実施形態における移動ブロックの具体的な構成例を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図6】上記実施形態においてゴールポスト側に取り付けられる各ブロックの状態を示し、(A)は横断面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図7】上記実施形態における押さえブロックの具体的な構成例を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図8】上記実施形態におけるサッカーゴールの設置時の具体的な作業内容を説明するための図である。
【
図9】上記実施形態におけるクロスバーの高さ調整時の具体的な作業内容を説明するための図である。
【
図10】上記実施形態におけるサッカーゴールの撤去時の具体的な作業内容を説明するための図である。
【
図11】上記実施形態において撤去時に使用される抜き治具の構成例を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図12】上記実施形態において撤去時に埋設管に被せられる蓋の構成例を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による取付装置を用いて所定の位置に取り付けられた埋込式のサッカーゴールの概略構成を示しており、(A)は正面図、(B)は側面図である。また、
図2は、
図1(B)の破線で囲んだ領域Aを拡大して示した図である。
【0011】
図1および
図2において、競技用ゴールとしての埋込式のサッカーゴール1は、一対のゴールポスト11と、各ゴールポスト11間に連結される1本のクロスバー12と、を有する。一対のゴールポスト11は、
図1(A)で左右に互いに平行に配置されており、一方のゴールポスト11の内側と他方のゴールポスト11の内側との間の距離Wが、規定に従って7.32mとなるように構成されている。各ゴールポスト11の下端側部分の外周面には、後述する取付装置2の固定ブロック23がそれぞれ取り付けられている。また、各ゴールポスト11の下端側部分における固定ブロック23の取付位置よりも下方には、ヒンジ11A(
図2)がそれぞれ設けられている。各ゴールポスト11は、ヒンジ11Aより上の部分11Bがヒンジ11Aより下の部分11Cに対して折り曲げ可能となっている。
【0012】
クロスバー12は、一対のゴールポスト11の上端部の間に連結されて左右方向に延びている(
図1(A))。図中の一点鎖線で示すグラウンドレベル(地表レベル)GLからクロスバー12の下端までの高さHは、前述したようなグラウンドレベルGLの変化に応じてクロスバー12の高さ調整を行うことで、規定に従って2.44mとなるように管理される。クロスバー12の高さ調整は、後述する連結部25の高さ調整用ボルト25Aを操作するなどして行われる。各ゴールポスト11およびクロスバー12には、図示を省略したゴールネットの前端縁がネットスティック13(
図1(B))を利用して連結可能である。
【0013】
上記のようなサッカーゴール1をグラウンド上の所定の位置に取り付ける(設置する)ための取付装置2は、例えば、一対の埋設管21と、一対の支持ブロック22と、一対の固定ブロック23と、一対の移動ブロック24と、一対の連結部25と、を含む。
【0014】
各埋設管21は、地中に設けられたコンクリート製の基礎31および砕石32を介して、地中にそれぞれ埋設されている。各埋設管21内には、各ゴールポスト11の下端側部分がそれぞれ嵌挿される。各埋設管21の内周面には、各支持ブロック22がそれぞれ固定されている。
【0015】
各固定ブロック23は、各ゴールポスト11の下端側部分の外周面にそれぞれ固定されている。本実施形態では、各ゴールポスト11の下端側部分の外周面への各固定ブロック23の固定位置が、各ゴールポスト11の軸方向にそれぞれ可変となっている。各ゴールポスト11の下端側部分における各固定ブロック23の下方には、各移動ブロック24がそれぞれ配置されている。各移動ブロック24は、各ゴールポスト11の下端側部分の外周面に沿って各ゴールポスト11の軸方向にそれぞれ移動可能である。
【0016】
各連結部25は、各固定ブロック23と各移動ブロック24とをそれぞれ連結する。各連結部25は、各ゴールポスト11の下端側部分の外周面に沿って軸方向に各移動ブロック24を移動させることで、固定ブロック23と移動ブロック24との間隔S(
図2)を変更可能にしている。各連結部25は、ここでは例えば、高さ調整用ボルト25A、ダブルナット25Bおよび2枚の座金25Cからそれぞれ構成されている。
【0017】
なお、
図1および
図2において、埋設管21、基礎31および砕石32については、埋設管21内の構成が分かるように、ゴールポスト11の中心軸を通る平面で切断した断面により図示されている。また、
図1に示した土除け33は、サッカーゴール1の設置時に各埋設管21の上方を覆うことでグラウンドの土などが埋設管21内に入るのを防ぐためのものである。
【0018】
次に、上記取付装置2における各構成要素の具体的な構成例について説明する。
図3は、埋設管21および支持ブロック22の具体的な構成例を示しており、(A)は平面図、(B)は部分断面側面図である。
図3に示す構成例において、埋設管21は、ゴールライン上に配置される。この埋設管21は、内周面のアウトフィールド側の最奥部分を外方に突出させることで、その内側に凹部21Aが形成されている。凹部21Aには、支持ブロック22が嵌め込まれる。埋設管21の内周面の凹部21Aを除いた部分には、周方向に一定距離を隔ててリブ21Bが形成されている。埋設管21内に嵌挿されたゴールポスト11の下端側部分の外周面は、埋設管21の内周面にリブ21Bを介して当接する。
【0019】
支持ブロック22は、複数本(ここでは3本)のボルト41により埋設管21の内周面の凹部21Aに位置する部分に固定される。支持ブロック22の上端面は、埋設管21の外側から中心側に向かって下向きに傾斜するテーパ面に形成されている(
図3(B))。また、埋設管21の下端には、底蓋21Cが溶接等により固定されている。底蓋21Cまたは埋設管21の下端部には、ここでは図示を省略した水抜き孔が設けられている。埋設管21内に浸入する水は、上記水抜き孔および砕石32に設けられた水抜きパイプ32A(
図1)を通して地中に排水される。
【0020】
図4は、固定ブロック23の具体的な構成例を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。また、
図5は、移動ブロック24の具体的な構成例を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。さらに、
図6は、ゴールポスト11側に取り付けられる各ブロックの状態を示しており、(A)は横断面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【0021】
図4~
図6において、固定ブロック23は、その上端面がテーパ面に形成されている(
図4)。このテーパ面は、固定ブロック23がゴールポスト11に取り付けられたときに、ゴールポスト11の中心側から外側に向かって下向きに傾斜するように構成されている(
図6)。また、固定ブロック23は、上端面および下端面の間をゴールポスト11の軸方向に貫通するボルト挿通孔23A(
図4)を有する。このボルト挿通孔23Aには、連結部25の高さ調整用ボルト25A(
図6)が挿通される。ボルト挿通孔23Aは、高さ調整用ボルト25Aの形状に対応した通し穴23A
1およびザグリ穴23A
2から構成されている。
【0022】
さらに、固定ブロック23は、上端面のボルト挿通孔23Aとは異なる位置にねじ穴23B(
図4)を有する。このねじ穴23Bは、サッカーゴール1の設置時に、ボルト46により押さえブロック26を取り付けるためのものである(
図6)。押さえブロック26は、例えば
図7の(A)平面図および(B)正面図に示すように、その下端面が前述した固定ブロック23の上端面と同様なテーパ面に形成されている。すなわち、押さえブロック26の下端のテーパ面は、ゴールポスト11の中心側から外側に向かって下向きに傾斜し、当該傾斜角が固定ブロック23上端のテーパ面の傾斜角と同一となるように構成されている。この押さえブロック26には、上端面および下端面の間を貫通する長孔状のボルト挿通孔26Aが形成されている。
【0023】
加えて、固定ブロック23は、対向する側面(
図4(B)において左側面および右側面)の間を貫通する2つのボルト挿通孔23Cを有する。各ボルト挿通孔23Cには、固定ブロック23をゴールポスト11に固定するためのボルト42(
図6(C))がそれぞれ挿通される。各ボルト挿通孔23Cは、ボルト42の形状に対応した通し穴23C
1およびザグリ穴23C
2からそれぞれ構成されている。各ボルト挿通孔23Cに挿通されたボルト42は、ゴールポスト11の締結部11D(
図6(A))に嵌め込まれたナットプレート43のねじ孔にねじ込まれる。ゴールポスト11の締結部11Dは、前述した埋設管21の凹部21Aに対向するゴールポスト11の部分の内側に突出して形成されておりコ字状の横断面を有する。また、ゴールポスト11には、締結部11Dに面した円筒壁部分に軸方向に沿って溝11E(
図6(C))が形成されている。
【0024】
上記のような構成の固定ブロック23は、次のようにしてゴールポスト11に固定される。まず、ゴールポスト11の溝11Eが形成された円筒壁部分の外周面に固定ブロック23が接合される。そして、固定ブロック23の各ボルト挿通孔23Cにボルト42がそれぞれ通され、該各ボルト42のねじ部がゴールポスト11の溝11Eを貫通し、ナットプレート43の対応するねじ孔にねじ込まれる。このとき、固定ブロック23とナットプレート43は、各ボルト42の締結力によってゴールポスト11を押さえ付けるので、固定ブロック23はゴールポスト11にしっかりと固定される。また、各ボルト42の締結を緩めると、固定ブロック23はナットプレート43と共に溝11Eに沿って軸方向に移動可能となる。したがって、ゴールポスト11に対する固定ブロック23の軸方向の取付位置を調節して各ボルト42を締結することにより、固定ブロック23を軸方向の所望の位置に固定することができる。
【0025】
移動ブロック24は、上端面および下端面の間をゴールポスト11の軸方向に貫通するねじ孔24A(
図5)を有する。このねじ孔24Aには、固定ブロック23のボルト挿通孔23Aに挿通された高さ調整用ボルト25A(
図6)がねじ込まれる。移動ブロック24の下端面はテーパ面に形成されている。このテーパ面は、移動ブロック24が固定ブロック23に連結されたときに、ゴールポスト11の外側から中心側に向かって下向きに傾斜し、当該傾斜角が支持ブロック22の上端面の傾斜角と同一となるように構成されている。
【0026】
また、移動ブロック24は、対向する側面(
図5(B)において左側面および右側面)の間を貫通する2つのボルト挿通孔24Bを有する。各ボルト挿通孔24Bには、移動ブロック24をゴールポスト11の溝11Eに沿って案内するためのボルト44(
図6(C))がそれぞれ挿通される。各ボルト挿通孔24Bは、ボルト44の形状に対応した通し穴24B
1およびザグリ穴24B
2から構成されている。各ボルト挿通孔24Bに挿通されたボルト44は、ゴールポスト11の締結部11D(
図6(A))に嵌め込まれたナットプレート45(
図6(B))のねじ孔にねじ込まれる。
【0027】
上記のような構成の移動ブロック24は、次のようにして固定ブロック23に連結される。まず、ゴールポスト11の溝11Eが形成された円筒壁部分の外周面に移動ブロック24が接合される。そして、移動ブロック24の各ボルト挿通孔24Bにボルト44がそれぞれ通され、該各ボルト44のねじ部がゴールポスト11の溝11Eを貫通し、ナットプレート45の対応するねじ孔にねじ込まれる。このとき、各ボルト44は緩めた状態、すなわち、移動ブロック24とナットプレート45が各ボルト44の締結力によってゴールポスト11を押さえ付けることがないようする。これにより、移動ブロック24は、ナットプレート45と共に溝11Eに沿って案内され、ゴールポスト11の軸方向に移動自由な状態とされる。
【0028】
ゴールポスト11の軸方向に移動自由な状態で移動ブロック24がゴールポスト11に装着されると、連結部25の高さ調整用ボルト25Aが、ゴールポスト11に固定された固定ブロック23のボルト挿通孔23Aに通される。そして、該高さ調整用ボルト25Aのねじ部に、連結部25の1枚目の座金25C、ダブルナット25Bおよび2枚目の座金25Cが順に取り付けられる。ここでは、高さ調整用ボルト25Aとして、例えば六角穴付きボルト(半ねじ)を使用する。この六角穴付きボルトは、円筒部(頭部とねじ部の間でねじの切ってない部分)の全長が、固定ブロック23の通し穴23A1の深さよりも長くなっている。1枚目の座金25Cおよびダブルナット25Bは六角穴付きボルトのねじ部の付け根(ねじ頭)部分に取り付けられ、2枚目の座金25Cはダブルナット25Bの下方に位置するねじ部に通される。ダブルナット25Bおよび2枚の座金25Cが取り付けられた高さ調整用ボルト25Aは、固定ブロック23の通し穴23A1の中でボルト軸を中心にして自由に回転させることが可能である。
【0029】
高さ調整用ボルト25Aのねじ部にダブルナット25Bおよび2枚の座金25Cが取り付けられると、高さ調整用ボルト25Aのねじ先が、ゴールポスト11の溝11Eに沿って移動自由に装着された移動ブロック24のねじ孔24Aにねじ込まれる。これにより、固定ブロック23と移動ブロック24とが高さ調整用ボルト25Aを介して連結される。また、移動ブロック24のねじ孔24Aへの高さ調整用ボルト25Aのねじ込み量を増やすと、固定ブロック23に対して移動ブロック24が引き寄せられ、ねじ込み量を減らすと、固定ブロック23に対して移動ブロック24が引き離される。つまり、高さ調整用ボルト25Aのねじ込み量を調節することで、固定ブロック23と移動ブロック24との間隔S(
図6(C))が変更可能になっている。
【0030】
次に、本実施形態の取付装置2によるサッカーゴール1の設置時、高さ調整時および撤去時の具体的な作業内容について説明する。
サッカーゴール1をグラウンド上の所定の位置に設置する場合、作業者は、まずサッカーゴール1を前方に倒した状態に置く。そして、
図8(A)に示すように、各ゴールポスト11のヒンジ11Aを略90度に折り曲げた状態にして、各々のヒンジ11Aより下の部分11Cを各埋設管21内にそれぞれ嵌挿する。このとき、左右のゴールポスト11について、固定ブロック23の軸方向の固定位置を揃えると共に、移動ブロック24のねじ孔24Aへの高さ調整用ボルト25Aのねじ込み量が同じになるように調節しておく。また、各ゴールポスト11に固定された固定ブロック23のねじ穴23Bに押さえブロック26をボルト46でそれぞれ仮止しておく。
【0031】
各ゴールポスト11のヒンジ11Aより下の部分11Cが各埋設管21内にそれぞれ挿入されると、作業者は、ヒンジ11Aを中心に各ゴールポスト11を引き起こしてサッカーゴール1を立てた状態にする。これにより、
図8(B)に示すように、各ゴールポスト11のヒンジ11Aより上の部分11Bとヒンジ11Aより下の部分11Cとが真っ直ぐな状態になり、各ゴールポスト11の下端側部分が各埋設管21内にさらに深く嵌挿される。そして、各ゴールポスト11の移動ブロック24の下端面が、各埋設管21に固定された支持ブロック22の上端面にそれぞれ突き当たり、連結部25の高さ調整用ボルト25Aのねじ部に取り付けられたダブルナット25Bが1枚目の座金25Cを介して固定ブロック23の下端面に当接するようになる。これにより、各ゴールポスト11は、固定ブロック23、連結部25および移動ブロック24を介して、各埋設管21に固定された支持ブロック22によりそれぞれ支持されるようになる。
【0032】
このとき、支持ブロック22と移動ブロック24との接合面が、埋設管21およびゴールポスト11の外側から中心側に向かって下向きに同一の傾斜角で傾斜するテーパ面に形成されていることにより、移動ブロック24には径方向の中心を向く分力が発生する。この分力によって、各ゴールポスト11の外周面は、埋設管21の支持ブロック22が固定されている側とは反対側の内周面にリブ21Bを介して押し付けられる。これにより、取付装置2は、各ゴールポスト11をがたつきなく安定に支持することができる。また、各ゴールポスト11は、各埋設管21の周方向に一定距離を隔てて設けられたリブ21Bを介して各埋設管21の内周面に当接しており、各リブ21Bの間には隙間が形成されている。この隙間は、グラウンド上から各埋設管21内に浸入した土や水を逃がすと共に、各ゴールポスト11と各埋設管21との接触面積を小さくすることで各埋設管21内への各ゴールポスト11の挿抜を容易にしている。
【0033】
各ゴールポスト11が各支持ブロック22により支持されると、作業者は、六角レンチ47等を用いてボルト46を締め付けることで、固定ブロック23のねじ穴23Bに仮止めされていた押さえブロック26を固定ブロック23に固定する。このとき、固定ブロック23と押さえブロック26との接合面がゴールポスト11の中心側から外側に向かって下向きに同一の傾斜角で傾斜するテーパ面に形成されていることにより、押さえブロック26には径方向の外側を向く分力が発生する。押さえブロック26には長孔状のボルト挿通孔26Aが設けてあるので、上記分力により押さえブロック26は埋設管21の支持ブロック22が固定されている側に押し付けられるようになる。これにより、各ゴールポスト11の支持状態を一層安定したものにできる。押さえブロック26の固定が終わると、作業者は、必要に応じて各埋設管21の上方を土除け33(
図1)で覆ってサッカーゴール1の設置を完了する。
【0034】
上記のようにしてグラウンド上の所定の位置に設置されたサッカーゴール1について、グラウンドレベルの変化に応じてゴールの高さ調整が必要となった場合、作業者は、各埋設管21上方の土除け33を取り除いた後に、六角レンチ47を用いてボルト46および押さえブロック26を固定ブロック23から取り外す。そして、例えば
図9に示すように、サッカーゴール1を設置した(立てた)状態のままで、六角レンチ47を用いて連結部25の高さ調整用ボルト25Aを回すことにより、グラウンドレベル(地表レベル)GLに対するクロスバー12の高さHを調整する。
【0035】
具体的に、高さ調整用ボルト25Aをねじ込む方向に回す、すなわち、移動ブロック24のねじ孔24Aへの高さ調整用ボルト25Aのねじ込み量を増やすようにすると、固定ブロック23に対して移動ブロック24が引き寄せられ、固定ブロック23と移動ブロック24との間隔Sが短くなる。このとき、支持ブロック22と移動ブロック24とは接合したままの状態にあるので、上記間隔Sが短くなることによって、グラウンドレベルGLからクロスバー12までの高さHは調整前よりも低くなる。一方、高さ調整用ボルト25Aを緩める方向に回す、すなわち、移動ブロック24のねじ孔24Aへの高さ調整用ボルト25Aのねじ込み量を減らすようにすると、固定ブロック23に対して移動ブロック24が引き離され、固定ブロック23と移動ブロック24との間隔Sが長くなる。これにより、グラウンドレベルGLからクロスバー12までの高さHは調整前よりも高くなる。高さ調整用ボルト25Aによるクロスバー12の高さ調整の範囲は、高さ調整用ボルト25Aのねじ部の長さに基づいて決まり、ここでは例えば±15mmの範囲の高さ調整が可能になっている。
【0036】
したがって、作業者は、グラウンドレベルGLの変化に応じて、各ゴールポスト11に対応した高さ調整用ボルト25Aを適切に回し、固定ブロック23と移動ブロック24との間隔Sをそれぞれ変更することによって、地表に対するクロスバー12の高さH(サッカーゴール1の高さ)を規定に従う2.44mに調整することができる。このような高さ調整用ボルト25Aによるクロスバー12の高さ調整作業は、サッカーゴール1を立てた状態、すなわち、移動ブロック24の下端面が支持ブロック22の上端面に当接した状態で、上方から高さ調整用ボルト25Aにアクセスして移動ブロック24をゴールポスト11の軸方向に移動させる操作が可能であるので、従来のように各埋設管21内から各ゴールポスト11の下端側部分の一部または全部を抜き出す必要がない。よって、高さ調整用ボルト25Aによるクロスバー12の高さ調整作業を一人若しくは二人で行うことが可能であり、サッカーゴール1の高さを最小限の人員で容易に管理することができる。
【0037】
また、固定ブロック23の上端面が、ゴールポストの中心側から外側に向かって下向きに傾斜するテーパ面に形成されているので、サッカーゴール1を立てた状態のままであっても、作業者がアウトフィールド側から埋設管21内を覗き込んだときに、高さ調整用ボルト25Aの位置を容易かつ確実に視認することが可能である。さらに、サッカーゴール1を立てた状態では、高さ調整用ボルト25Aのねじ頭に取り付けられたダブルナット25Bが座金25Cを介して固定ブロック23の下端面に当接した状態にある。このような状態で高さ調整用ボルト25Aを回そうとした場合、高さ調整用ボルト25Aの回転を妨げる摩擦力が働くことになるが、ダブルナット25Bと固定ブロック23の間に座金25Cが介在することで上記摩擦力が軽減される。よって、作業者は高さ調整用ボルト25Aを比較的小さな力で回すことが可能である。
【0038】
加えて、本実施形態の取付装置2では、高さ調整用ボルト25Aによるクロスバー12の高さ調整範囲を超えてグラウンドレベルGLが変化した場合、各ゴールポスト11への固定ブロック23の固定位置を軸方向に変更することよって、より広い範囲の高さ調整を行うことができる。この場合、作業者は、各埋設管21内から各ゴールポスト11の下端側部分をヒンジ11A付近までそれぞれ抜き出し、各々のヒンジ11Aを折り曲げてサッカーゴール1を前方に倒しておく。そして、各埋設管21の外に抜き出された各ゴールポスト11の下端側部分に固定ブロック23を固定している各ボルト42をそれぞれ緩め、グラウンドレベルGLの変化に応じて固定ブロック23を軸方向に移動させる。各々の固定ブロック23の新たな位置が決まると各ボルト42を締め直して固定する。また、固定ブロック23の固定位置の変更に応じて連結部25の高さ調整用ボルト25Aのねじ込み量も適宜変更しておく。
【0039】
各固定ブロック23の固定位置の変更等が終わると、サッカーゴール1を立てた状態に戻して、各埋設管21内に各ゴールポスト11の下端側部分を再び嵌挿する。これにより、高さ調整用ボルト25Aによるクロスバー12の高さ調整範囲を超えたグラウンドレベルGLの変化にも対応することができる。本実施形態の取付装置2では、固定ブロック23の固定位置の変更によって例えば約80mmの範囲の高さ調整が可能であり、前述した高さ調整用ボルト25Aによる調整と組み合わせて、約80±15mmの広い範囲でクロスバー12の高さ調整を実施することが可能である。
【0040】
上記のようにしてグラウンド上の所定の位置に設置され、かつ、規定の高さに調整されたサッカーゴール1を撤去する場合、作業者は、例えば
図10に示すように、各埋設管21上方の土除け33を取り除き、六角レンチ47を用いてボルト46を緩める。そして、ボルト46の頭部と押さえブロック26との間に抜き治具48を装着してボルト46を再度締め込む。抜き治具48は、例えば
図11の(A)平面図および(B)正面図に示すように、厚さ一定の矩形ブロックにボルト46を通すための半円溝48Aが設けられている。このような抜き治具48の装着により、各ゴールポスト11の下端側部分を各埋設管21から引き抜くことができるようになる。各ゴールポスト11の下端側部分がヒンジ11A付近まで引き抜かれると、サッカーゴール1を前方に倒した後に、各ゴールポスト11のヒンジ11Aより下の部分11Cを各埋設管21からそれぞれ引き抜く。そして、各埋設管21の上端開口部に、例えば
図12の(A)平面図および(B)正面図に示すような蓋49を被せて、サッカーゴール1の撤去を完了する。
【0041】
なお、上述した実施形態では、競技用ゴールとしてサッカーゴール1の一例を示したが、競技用ゴールはサッカーゴールに限定されるものではなく、例えばラグビーゴールなどの様々な埋込式の競技用ゴールへの応用が可能である。また、連結部25について、高さ調整用ボルト25A、ダブルナット25Bおよび2枚の座金25Cを使用する一例を示したが、連結部25の構成はこれに限定されるものではなく、固定ブロック23と移動ブロック24とを連結すると共に、移動ブロック24を移動させることで固定ブロック23と移動ブロック24との間隔を変更可能な任意の連結機構を適用することができる。
【0042】
さらに、上述した実施形態では、固定ブロック23について、ゴールポスト11への固定位置を軸方向に可変とする一例を示したが、クロスバー12の高さ調整として要求される範囲が、高さ調整用ボルト25Aによる調整の範囲内で足りている場合には、ゴールポスト11の下端側部分の外周面の所定位置に固定ブロック23を固定するようにしても構わない。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態およびその変形例について幾つか説明したが、本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…サッカーゴール、2…取付装置、11…ゴールポスト、12…クロスバー、21…埋設管、22…支持ブロック、23…固定ブロック、23A…ボルト挿通孔、24…移動ブロック、24A…ねじ孔、25…連結部、25A…高さ調整用ボルト、26…押さえブロック、H…高さ、S…間隔