(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】銅端子とアルミ導線との継手及びその超音波溶接方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/62 20060101AFI20230510BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20230510BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20230510BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H01R4/62 A
B23K20/10
H01R4/02 C
H01R43/02 B
(21)【出願番号】P 2020517254
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 CN2018089927
(87)【国際公開番号】W WO2018223954
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】201710415044.4
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519428937
【氏名又は名称】吉林省中▲イン▼高科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】JILIN ZHONG YING HIGH TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1801, Unit 1, Building 13, Wanlonglishuiwan (One) Chaofan Street, High-Tech Development Zone, Changchun, Jilin 130000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王超
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165618(JP,A)
【文献】特開2015-141784(JP,A)
【文献】特開2015-176860(JP,A)
【文献】特開2015-220144(JP,A)
【文献】特開2007-012329(JP,A)
【文献】特表2016-517156(JP,A)
【文献】特開2013-105648(JP,A)
【文献】特開2014-187014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/62
H01R 43/02
H01R 4/02
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅端子とアルミ導線との継手であって、前記銅端子がコネクタと、コネクタに接続された機能部品とを含み、前記アルミ導線のコアが銅端子のコネクタに接続される前記銅端子とアルミ導線との継手において、
前記アルミ導線のコアが間隔金属層を介して銅端子のコネクタに接続され、
前記間隔金属層の材質の電極電位が銅とアルミとの電極電位の間にあり、前記間隔金属層の材質がカドミウム
、コバルトのうちの一
つであることを特徴とする銅端子とアルミ導線との継手。
【請求項2】
前記銅端子は扁平端子、開口端子、円筒端子、または中実銅導線の一端であり、
好ましくは、前記アルミ導線は中実のアルミ導線または多芯のアルミ導線であることを特徴とする請求項1に記載の銅端子とアルミ導線との継手。
【請求項3】
前記アルミ導線コアの材質はアルミまたはアルミ合金であり、前記銅端子の材質は銅または銅合金であることを特徴とする請求項1に記載の銅端子とアルミ導線との継手。
【請求項4】
前記銅端子とアルミ導線との継手は溶接領域を有し、継手の溶接領域の面積が少なくともアルミ導線と銅端子との重畳領域の面積の1%であり、好ましくは、継手の溶接領域の面積が少なくともアルミ導線と銅端子との重畳領域の面積の10%であることを特徴とする請求項1に記載の銅端子とアルミ導線との継手。
【請求項5】
前記間隔金属層の厚さが3μm~5000μmであり、好ましくは、前記間隔金属層の厚さが5μm~1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の銅端子とアルミ導線との継手。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかのい1項に記載の銅端子とアルミ導線との継手を製造する超音波溶接方法であって、前記溶接方法は以下のステップを含み、即ち、
1)電気メッキ、電磁溶接、アーク式溶射または圧接の方式で、間隔金属層を溶接対象である銅端子またはアルミ導線における少なくとも溶接領域が含まれる位置に固定し、好ましくは、電気メッキの方式で、間隔金属層を溶接対象である銅端子またはアルミ導線における少なくとも溶接領域が含まれる位置に固定し、
2)銅端子をアルミ導線に接合し、超音波溶接機器の金型または治具に固定し、
3)超音波溶接機器を起動させ、超音波溶接機器の振動エネルギを超音波金型または治具に伝達し溶接することで、銅端子とアルミ導線が高速で摩擦し、発熱し溶融し、圧力の作用で溶接を完成しており、
前記間隔金属層の材質の電極電位が銅とアルミとの電極電位の間にあり、前記間隔金属層の材質がカドミウム
、コバルトのうちの一
つであることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記超音波機器溶接の振幅が0~100%であり、前記超音波機器の溶接ヘッドの圧力が0.5KN~30KNであり、
好ましくは、前記超音波機器の溶接振幅が30~100%であり、前記超音波機器の溶接ヘッドの圧力が3KN~20KNであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記超音波機器の周波数が5KHZ~40KHZであり、前記超音波機器の電力が2KW~20KWであり、
好ましくは、前記超音波機器の周波数が15KHZ~25KHZであり、前記超音波機器の電力が5KW~15KWであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハーネス分野に属して、具体的には、ハーネスにおける銅端子とアルミ導線とを接続するための継手及びその超音波溶接の方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
銅は優れた導電性、熱伝導、可塑性を有するから大幅に適用される。ただし、銅資源が不足し、銅のコストが高い。そのため、人類は銅の代替品を探して、コストを低減させる。アルミの値段が比較的に低く、同じように優れた導電性、熱伝導及び可塑性加工性を有するため、アルミを銅に差し替えることは現在の主な発展傾向であるが、アルミのある性能は銅より劣って、多数の部材にとって、完全にアルミを銅に差し替えることができないから、アルミ部材と銅部材との間の継手を溶接するという状況がある。例えば、アルミ類材料からなる導線をケーブルとして使用し、このようなケーブルをいろんな電気装置における銅端子に接続し、または銅ケーブルとが互いに接続される場合に、銅とアルミとの接触端で溶接を介して接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アルミと銅との接続導電に対して、解決されていない二つの技術問題があり、即ち、1)アルミが活性金属であるから、乾燥の空気で、アルミの表面にはすぐに厚さが約50オングストローム(1オングストローム=0.1nm)である緻密な酸化膜が形成され、アルミがさらに酸化されていないが、その同時に、アルミ導線の導電性能を大幅に低減させる。2)銅とアルミとが異なる元素であり、銅の金属不活性がアルミより大きく、銅とアルミとの間の電極電位差が1.9997Vであり、この二つの金属が接続し通電すると、電気化学反応が生じることで、アルミ線がだんだん酸化され、アルミ線の機械強度と導電性を低減させる。
【0004】
従来技術において、ハーネスの端子と導線の継手との製造方式は主に、圧着、伝統の超音波溶接及び超音波ろう付けなどがある。
【0005】
従来のハーネスの通常の接続技術において、端子と導線との接続方式は主に圧着であり、即ち、導線のコアを端子のコネクタに入れて、端子圧着金型によって、機械方式で端子と導線を圧着する。ただし、銅端子とアルミ導線というような組み合わせに対して、伝統の圧着方法は、アルミ導線と銅端子とが時間の経過とともに、電気化学反応が発生することを解決し得ないから、銅端子とアルミ導線との継手の力学性能及び電気性能の低下を招致する。従って、銅端子とアルミ導線との継手の接続に対して、圧着方法は工業生産に適用されることが困難である。
【0006】
伝統の超音波溶接において、溶接対象である金属表面の酸化膜またはコーティングの、溶接品質に対する影響が小さく、溶接には外部熱源が付加されていなく、鋳放しナゲットまたは脆性金属間化合物が生じることがないから、銅端子とアルミ導線との継手の製造の好適な溶接方式である。ただし、超音波溶接を直接的に利用すれば、銅とアルミとが直接的に接触し、両者の電極電位差が大きく、時間の経過とともに、銅端子とアルミ導線との間には電気化学腐食が生じて、これによって、抵抗が増加し、電位降下が大きくなり、力学性能が減低し、継手の寿命を減低させる。そのため、特許CN102216021Bは銅端子とアルミ導線の間を切り離すためのシール剤を採用して、そして、超音波溶接の方法を利用して、銅とアルミとの間に発生する電気化学腐食を軽減するが、シール剤の存在のため、銅とアルミとの間の溶接が不十分になり、継手の力学性能の低減を招致すると同時に、シール剤の導電性が悪く、継手の導電性能に影響するから、銅端子とアルミ導線との継手の力学性能及び電気性能はいずれも使用の性能要求と使用安定性に対する要求を満たしていなく。その同時に、該特許は主に扁平状の端子に対処し、端子と導線との継手がハーネスにおいて、ほとんど非扁平状の端子を応用するから、特許CN102216021Bは大きい応用制約がある。
【0007】
超音波ろう付けは主に超音波の振動によって、溶接基体の表面の酸化膜を潰してから、ろう付けという方式で二つの基体を結合する。銅端子とアルミ導線を接続し、継手を製造する場合に、超音波ろう付けが有する著しい問題のため、それが銅端子とアルミ導線との継手の工業製造に適用されることができない。具体的には、超音波ろう付けの半田は溶接継目を埋め難く、銅端子とアルミ導線との間に埋められねい不規則の隙間を形成しやすい。このような隙間は、全部破壊試験のみで検査されるから、各々継手が安定に電気性能と力学性能の要求を満たすように保証することができない。従って、超音波ろう付けで銅端子とアルミ導線との継手を製造する方法は大量の工業生産に適用されることができない。
【0008】
以上のように、従来技術において、ハーネスに適用される多種の形状の銅端子とアルミ導線との継手の力学性能及び電気性能の要求を満たす、銅端子とアルミ導線との継手を製造し得る溶接方式がない。従って、低コストの、ハーネスの使用要求を満たす銅端子とアルミ導線との継手、及びその製造方法を必要とする。
【0009】
本発明は銅端子とアルミ導線との継手及びその超音波溶接方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明はさらに、銅端子とアルミ導線との間の電極電位差を減少させる継手及びその超音波溶接方法を提供することを目的として、該構成及び溶接方法は銅端子とアルミ導線との継手の電気化学腐食を減少させまたは避けて、継手の寿命を著しく向上させる。
【0011】
本発明はさらに、銅端子とアルミ導線との継手の力学性能を効果的に向上させる構成及びその溶接方法を提供することを目的として、従来技術に比べると、銅端子とアルミ導線との継手の、塩水噴霧の実験後の引抜き力を少なくとも20%向上させる。
【0012】
本発明はさらに、効果的にコストを低減させる銅端子とアルミ導線との継手及びその溶接方法を提供することを目的として、コストを著しく低減させる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前記目的は以下の技術手段を介して実現され、即ち、
本発明は銅端子とアルミ導線との継手を提供し、前記銅端子がコネクタと、コネクタに接続された機能部品とを含み、前記アルミ導線のコアが銅端子のコネクタに接続される前記銅端子とアルミ導線との継手において、前記アルミ導線のコアが間隔金属層を介して銅端子のコネクタに接続されることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記銅端子は扁平端子、開口端子、円筒端子、または中実銅導線の一端である。前記銅端子にはコネクタ、及びコネクタに接続された機能部品が含まれる。前記コネクタは銅端子とアルミ導線とを接続するための部材であり;扁平銅端子のコネクタが扁平状であり、開口端子のコネクタが翼状であり、円筒端子のコネクタが円筒状であり、前記機能部品は銅端子と電気装置とが接続された固定領域であり、ケーブルの末端の装着固定、及び銅端子と電気装置との電気接続を実現するための主な領域である。中実銅導線のコネクタと機能部品とが構成で相違点がなく、ただコネクタがアルミ導線に接続され、機能部品が電気装置または他の端子に接続される。
【0015】
本発明において、前記アルミ導線は中実アルミ導線または多芯アルミ導線である。
【0016】
本発明において、前記アルミ導線コアの材質はアルミまたはアルミ合金であり、前記銅端子の材質は銅または銅合金である。
【0017】
本発明において、前記的銅端子とアルミ導線との継手は溶接領域を有し、前記溶接領域の面積が少なくとも前記アルミ導線と銅端子との重畳領域の面積の1%であり、好ましくは、前記アルミ導線と銅端子との溶接領域の面積が少なくとも前記アルミ導線と銅端子との重畳領域の面積の10%である。
【0018】
本発明において、前記間隔金属層の厚さは3μm~5000μmである。好適な実施形態として、間隔金属層の厚さは5μm~1000μmの間にある。間隔金属層の厚さは3μmより小さいと、超音波溶接する場合に、銅端子とアルミ導線とが摩擦し、間隔金属層が銅端子とアルミ導線によって破壊される恐れがあり、そのため、銅とアルミとが接触することによって、間隔金属層が二つの金属を間隔するという作用を果たしていなく、間隔金属層の厚さが5000μmより大きいと、ほとんどの間隔金属層の材質の導電性が銅金属とアルミ金属より劣るから、厚さが大きいと、溶接継手の電位降下の上昇を招致し、また、間隔金属層の用量が大きくなり、コストが増加するが、性能が明らかに向上していない。一般的には、電気メッキ、アーク式溶射の方式で間隔金属層を固定する場合に、間隔金属層の厚さが3μm~1000μmに達して、電磁溶接または圧接の方式を採用すれば、間隔金属層の厚さが1000μm~5000μmに達するから、本発明の間隔金属層は3μm~5000μmである厚さの範囲内に配置される。
【0019】
本発明において、前記間隔金属層の材質の電極電位が銅とアルミとの電極電位の間にあり、あるいは銅またはアルミの電極電位に等しく、好適な実施形態として、本発明において、間隔金属層の材質はニッケル、カドミウム、ジルコニウム、クロム、マンガン、アルミ、錫、チタン、亜鉛、コバルトのうちの一つまたはその組み合わせから選択され、より好ましくはアルミ、ニッケル及び亜鉛のうちの一つまたはその組み合わせである。
【0020】
電極電位が銅とアルミとの電極電位の間(等しいという状況を含む)にある金属を本発明の間隔金属層とする以外、金または銀、あるいはその組み合わせも間隔金属層としてもよく、なぜならば、金、銀の導電性が優れて、且つ化学的性質が安定であるから。
【0021】
以上に記載の間隔金属層の材質の組み合わせは、間隔金属層の材質が合金からなることと、多層被覆という形式で間隔金属層を形成することと、物理または化学方法で異なる金属材質を混合して異なる金属成分の間隔金属層を形成することを含む。
【0022】
本発明はさらに銅端子とアルミ導線との継手の超音波溶接方法を提供し、具体的には、以下のステップを有し、
1)電気メッキ、電磁溶接、アーク式溶射または圧接の方式で、間隔金属層を溶接対象である銅端子またはアルミ導線における少なくとも溶接領域が含まれる位置に固定し、好ましくは、電気メッキの方式で、間隔金属層を溶接対象である銅端子またはアルミ導線における少なくとも溶接領域が含まれる位置に固定し、
2)前記銅端子をアルミ導線に接合し、超音波溶接機器の金型または治具に固定し、
3)超音波溶接機器を起動させ、超音波溶接機器の振動エネルギを超音波金型または治具に伝達し溶接することで、銅端子とアルミ導線が高速で摩擦し、発熱し溶融し、圧力の作用で溶接を完成する。
【0023】
本発明は間隔金属層を銅端子またはアルミ導線に付着する場合に、電気メッキ、電磁溶接、アーク式溶射、圧接または間隔金属層を安定にそのうちの一つの母材に固定するための他の従来技術を採用すればよい。
【0024】
前記電気メッキ方法のステップは以下の通り、即ち、1、メッキ層金属が陽極にあり、2、メッキ対象である物質が陰極にあり、3、陰極陽極がメッキ層の金属の陽イオンからなる電解液に接続され、4、直流電の電源が入ると、陽極の金属が酸化され(電子を喪失する)、溶液における陽イオンが陰極で(電子を得る)原子に還元され、メッキ対象である物質の表層に蓄積される。
【0025】
前記電磁溶接の方法のステップは以下の通り、即ち、:1、溶接対象である二つの金属を積み上げ、2、電磁溶接機器が溶接領域で高圧力磁場を形成することで、二つの金属が電磁力の推進で原子エネルギーレベルでの衝突を発生させ、二つの金属を溶接する。
【0026】
前記アーク式溶射の方法は、間隔金属層をアーク領域に搬送し霧化し、圧縮ガスの作用で高速にワーク表面に溶射し、アーク式溶射層を形成する。
【0027】
前記的圧接のステップは以下の通り、即ち、1、圧接対象である二つの金属を積み上げ、2、メッキ対象である表面を十分に拡散させ、原子間の結合を実現するように、圧力を付与し、3、金属の異なり、及び圧力源の異なりに応じて、温度を増える方法で溶接効果を向上させ、溶接時間を短くする。
【0028】
好適な方式として、電気メッキの方法を採用する。1、電気メッキの技術が比較的に成熟し、加工コストと時間コストから見れば、優勢があり、2、電気メッキのメッキ層が一般には薄いから、間隔金属層の用量とコストから見れば、優勢があり;3、電気メッキされた銅端子またはアルミ導線の、耐塩水噴霧の腐食及び耐酸とアルカリの腐食の能力が大幅に向上し、継手の寿命を延ばす。4、試験を介して確認するように、電気メッキの方法を利用すれば、最終に取得された継手の引抜き力及び電位降下が著しい優勢を有する。
【0029】
本発明に記載の継手の製造方法のステップ1)において、アルミ導線の外層には絶縁層が付着される場合に、固定する前に、まずアルミ導線の溶接端の絶縁層を剥離する。
【0030】
本発明に記載の継手の製造方法において、超音波溶接機器の超音波の周波数が5KHZ~40KHZであり、溶接領域の断面積の異なりに応じて、超音波溶接機器の電力が2KW~20KWに配置され、超音波溶接機器の溶接ヘッドの圧力が0.5KN~30KNに配置され、超音波溶接機器の振幅が0~100%という範囲で調節され、好適な実施形態として、超音波溶接機器の超音波の周波数が15KHZ~25KHZであり、超音波溶接機器の電力が5KW~15KWであり、超音波溶接機器の振幅が30~100%であり、超音波機器の溶接ヘッドの圧力が3KN~20KNである。
【0031】
本発明において、固体の超音波溶接を利用するため、溶接温度が高すぎて、脆性金属間化合物を生成するという問題が存在していない。本発明が採用した間隔金属層の材質は、例えば亜鉛、ニッケルまたはアルミのうちの一つまたはその組み合わせであり、まず電気メッキ、電磁溶接、アーク式溶射または圧接の方式で間隔金属層を母材に固定してから、超音波溶接を行って、銅とアルミとの間の電気化学腐食を防止し、且つ溶接過程で他の半田及びろう材を必要としていないことを目的とする。
【0032】
従来の研究において、銅とアルミとの超音波溶接に間隔金属層を追加することへの紹介がなく、大量の実験とテストを経て、間隔金属層を追加した後、銅端子とアルミ導線との継手の力学性能及び電気性能を保証した上に、銅端子とアルミ導線との継手の耐電気化学腐食及び耐金属腐食の性能を大幅に向上させ、寿命を著しく向上させる。
【0033】
本発明による有益な効果は以下の通り、即ち、
1.本発明の銅端子のコネクタとアルミ導線のコアとの間には間隔金属層が含まれ、大量の実験とテストを介して、間隔金属層の存在は、銅端子とアルミ導線との継手の力学性能及び電気性能を保証した上に、継手の耐電気化学腐食及び耐金属腐食の性能も大幅に向上する。
【0034】
2.本発明の溶接方法は超音波ろう付けに比べると、加熱を必要とせず、銅とアルミとの間には脆性金属が生じることがなく、溶接継目の強度と可塑性の低減、さらに格子の腐食の問題が発生していなく、その同時に、ろう材の使用を必要とせず、溶接継手を腐食させていない。
【0035】
3.伝統の超音波が直接的に異種金属を溶接する方法に比べると、電極電位の差が大きい金属が直接的に溶接され、銅とアルミとの間には電気化学反応が存在するため、水と空気との作用で、電極電位が低い金属が電子を喪失し、金属の腐食を招致し、銅とアルミとの継手の寿命を低減させる。アルミ導線のコアが間隔金属層を介して銅端子のコネクタに接続され、金属の間の電気化学反応を大幅に低減させ、金属の腐食を減少させ、寿命を少なくとも50%延ばす。
【0036】
4.いずれも金属の間の溶接のため、発明特許CN102216021Bの、シール剤の溶接による力学性能の低減という欠点を避け、銅端子とアルミ導線との継手の、塩水噴霧の実験後の引抜き力を少なくとも20%向上させる。
【0037】
5.従来技術に比べると、本発明により提供された銅端子とアルミ導線との継手及びその超音波溶接方法は全自動機器、治具を利用して生産し、生産効率を向上させ、人工を減少させ、生産の安定性を向上させ、生産コストを著しく低減させる。
【0038】
6.溶接過程において、半田、フラックス及び保護ガスなどを追加していなく、加工を完成した後、再処理を必要とせず、廃棄物、バリがなくて、コストを節約し、汚染を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例1の銅端子とアルミ導線との継手の模式図である。
【
図2】多芯アルミ導線と扁平銅端子との継手である。
【
図3】中実アルミ導線と扁平銅端子との継手である。
【
図5】本発明の実施例2の銅端子とアルミ導線との継手の模式図である。
【
図10】本発明の実施例3の銅端子とアルミ導線との継手の模式図である。
【
図11】多芯アルミ導線と円筒銅端子との継手である。
【
図12】中実アルミ導線と円筒銅端子との継手である。
【
図13】本発明の実施例4の銅端子とアルミ導線との継手の模式図である。
【
図14】多芯アルミ導線と扁平銅導線との継手である。
【
図15】中実アルミ導線と扁平銅導線との継手である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下は具体的な実施例を介して本発明の技術案をさらに説明し、具体的な実施例は本発明の保護範囲に対する限定ではない。他人が本発明の理念に応じてなされたいくつかの非本質的な補正及び調整は相変わらず本発明の保護範囲に属している。
【0041】
本発明において、前記「溶接領域」は、超音波機器の溶接ヘッドが銅端子とアルミ導線を溶接する領域を指す。
【0042】
本発明において、前記「アルミ導線のコアが間隔金属層を介して銅端子のコネクタに接続され/繋がる」ことは、直接接続または間接接続がいずれも本発明の保護範囲内に含まれるように理解される。直接接続は、コネクタとアルミ導線のコアとの間が間隔金属層のみを介して接続され、間接接続は、コネクタとアルミ導線のコアとの間が、間隔金属層以外、さらに他の非金属材質の構成、例えばグラフェン層または他の成分からなる構成を有する。
【0043】
実施例1 銅端子とアルミ導線との継手及びその超音波溶接的方法
図1に示される銅端子とアルミ導線との継手は、該銅端子1が扁平銅端子であり、銅端子1がコネクタ11と機能部品12を含み、前記アルミ導線2がコア21及び絶縁層22を含み、アルミ導線が多芯アルミ導線(
図1A)または中実アルミ導線(
図1B)である。アルミ導線2のコアが銅端子1のコネクタ11に接続され、アルミ導線のコアと銅端子のコネクタとの間には間隔金属層3が含まれる。
【0044】
該継手の具体的な溶接ステップは以下の通り、即ち、
1)銅端子に対して溶接領域で間隔金属層(本実施例において、ニッケルである)を電気メッキし、間隔金属層の厚さが8μmである。
2)銅端子を超音波溶接機器の金型に入れて、アルミ導線を超音波溶接機器の金型を入れて、銅端子に積み上げられ、
3)超音波溶接機器を起動させ、溶接ヘッドが三つの金属を圧密してから、振動溶接を始める。前記超音波の周波数が20KHZであり、超音波溶接機器の電力が5KWであり、溶接振幅が80%であり、超音波溶接ヘッドの圧力が4.5KNである。
【0045】
実施例2 銅端子とアルミ導線との継手及びその超音波溶接的方法
図2に示される銅端子とアルミ導線との継手は、該銅端子1が開口端子であり、銅端子1がコネクタ11と機能部品12を含み、前記アルミ導線2がコア21及び絶縁層22を含み、アルミ導線は多芯アルミ導線(
図2B)または中実アルミ導線(
図2C)である。アルミ導線2のコア21が銅端子1のコネクタ11に接続され、アルミ導線のコアと銅端子のコネクタとの間にはさらに間隔金属層3が含まれる。
【0046】
該継手の具体的な溶接ステップは以下の通り、即ち、
1)銅端子に対して溶接領域で間隔金属層(本実施例において、亜鉛である)を電気メッキし、間隔金属層の厚さが5μmである。
2)銅端子を圧着金型に入れて、アルミ導線のコアを銅端子の開口に入れて、圧着機を起動させ、アルミ導線を銅端子に圧着させることで、銅端子の開口がアルミ導線の溶接部分を覆って、
3)ステップ2)の圧着された三つの金属を超音波溶接金型に入れて、
4)超音波溶接機を起動させ、溶接ヘッドが三つの金属を圧密させてから、振動溶接を始める。前記超音波の周波数が20KHZであり、超音波溶接機器の電力が9KWであり、溶接振幅が90%であり、超音波溶接ヘッドの圧力が15KNである。
【0047】
実施例3 銅端子とアルミ導線との継手及びその超音波溶接的方法
図3に示される銅端子とアルミ導線との継手は、該銅端子1が円筒端子であり、銅端子1がコネクタ11と機能部品12を含み、前記アルミ導線2がコア21及び絶縁層22を含み、アルミ導線が多芯アルミ導線(
図3A)または中実アルミ導線(
図3B)である。アルミ導線2のコア21が銅端子1のコネクタ11に接続され、アルミ導線のコアと銅端子のコネクタとの間にはさらに間隔金属層3が含まれる。
【0048】
該継手の具体的な溶接ステップは以下の通り、即ち、
1)銅端子に対して溶接領域で間隔金属層(本実施例において、銀である)を電気メッキし、間隔金属層の厚さが10μmである。
2)アルミ導線のコア溶接領域を銅端子的の円筒に挿入し、
3)ステップ2)で取得された挿入接続後の三つの金属を超音波溶接機の金型に入れて、
4)超音波溶接機を起動させ、溶接ヘッドが三つの金属を圧密させてから、振動溶接を始める。前記超音波の周波数が25KHZであり、超音波溶接機器の電力が7.5KWであり、溶接振幅が100%であり、超音波溶接ヘッドの圧力が10KNである。
【0049】
実施例4 中実銅導線とアルミ導線との継手及びその超音波溶接方法
図4に示される銅端子とアルミ導線との継手は、該銅端子1が中実銅導線である。前記中実銅導線1がコネクタ11と、機能部品12とを含み、前記アルミ導線2がコア21及び絶縁層22を含み、アルミ導線が多芯アルミ導線(
図4A)または中実アルミ導線(
図4B)である。アルミ導線2のコア21が中実銅導線11に接続され、アルミ導線のコアと中実銅導線のコネクタとの間にはさらに間隔金属層3が含まれる。
【0050】
銅端子が扁平の中実導線であり、アルミ導線が中実のアルミ導線または多芯のアルミ導線であり、具体的な溶接ステップは以下の通り、即ち、
1)銅端子に対して溶接領域で間隔金属層(本実施例において、アルミである)を電気メッキし、間隔金属層の厚さが6μmである。
2)銅端子を超音波溶接機の金型に入れて、アルミ導線を超音波溶接機の金型に入れて、中実銅導線に積み上げられ、
3)超音波溶接機を起動させ、溶接ヘッドが三つの金属を圧密させてから、振動溶接を始める。前記超音波の周波数が15KHZであり、溶接の振幅が80%であり、超音波溶接機器の電力が12KWであり、超音波溶接ヘッドの圧力が20KNである。
【0051】
実施例5 異なる間隔層の、溶接継手の性能に対する影響
50セットの同じ材質と構成である銅端子とアルミ導線を採用し、同じ超音波溶接機及び治具、及び実施例1のような同じ溶接パラメータ、メッキ層の厚さ(8μm)と溶接方法を利用し、そのうち、10セットにはいかなる間隔層が含まれず、10セットに対して間隔金属層としてニッケル(Ni)が採用され、10セットに対して間隔金属層として亜鉛(Zn)が採用され、10セットに対してプライマとしてニッケル(Ni)が採用され、表面に亜鉛(Zn)をメッキし、残りの10セットに対して間隔層として防腐導電シール剤が採用され、溶接を完成した後、溶接継手の腐食前と腐食後の力学性能及び電気性能をそれぞれ対比する。
【表1】
【表2】
【0052】
テーブル1とテーブル2から分かるように、Niメッキ層、Znメッキ層、あるいは複合メッキ層の構成を利用すれば、引抜き力と電圧降下の性能がいずれもシール剤を利用した構成より優れて、そして、24時間の塩水噴霧の実験を経た後、Niメッキ層、Znメッキ層、あるいは複合メッキ層を利用した構成の引抜き力と電圧降下の性能の低減の幅がいずれもシール剤を利用した構成より遥かに小さい。
【0053】
同じように、テーブル1とテーブル2から分かるように、メッキ層のない溶接構成は、溶接初期で、引抜き力と電圧降下の性能がNiメッキ層、Znメッキ層、あるいは複合メッキ層を利用した構成の性能に近いが、塩水噴霧の実験を経た後、銅とアルミとの間には空気、水と塩水噴霧の作用で、電気化学腐食及び金属腐食が生じるから、引抜き力と電圧降下の性能が大幅に低減し、銅端子とアルミ導線との継手の電気と力学性能を保証し得ない。
【0054】
実施例6 異なる間隔金属層の固定方式の、溶接継手の性能に対する影響
40セットの同じ材質と構成である銅端子とアルミ導線を採用し、同じ超音波溶接機及び治具、同じ間隔金属層Zn、同じ間隔金属層の厚さを利用し、そのうち、10セットに対して圧接方式で間隔金属層Znを在銅端子に固定し、10セットに対して、電磁溶接の方式で間隔金属層を銅端子に固定し、10セットに対して電気メッキの方式で間隔金属層であるZn層を銅端子に固定し、残りの10セットに対してアーク式溶射の方式で間隔金属層であるZnを銅端子に固定し、銅端子とアルミ導線を溶接し、溶接を完成した後、それぞれ銅端子とアルミ導線との継手の腐食前と腐食后の力学性能及び電気性能をテストし対比する。
【0055】
塩水噴霧腐食、電位降下、及び引抜き力のテスト結果はテーブル3及びテーブル4を参照すればよい。
【表3】
【表4】
【0056】
テーブル3とテーブル4から分かるように、異なる溶接方法において、溶接を完成した後、力学性能と電気性能について、電気メッキの効果が最も優れて、電磁溶接とアーク式溶射がこれに次いて、圧接の効果が比較的に悪く、四つの間隔金属層の厚さが同様である場合に、電気メッキ形式での銅端子とアルミ導線との継手の性能が比較的に突出する。そして、電気メッキ技術が成熟し、加工コスト及び時間から見れば、優勢がある。
【0057】
実施例7 異なる溶接領域の面積の、溶接継手の性能に対する影響
120セットの同じ材質と構成でる銅端子とアルミ導線を採用し、12組に分けて、各組ごとに10セットがあり、同じ超音波溶接機及び治具、同じ間隔金属層Zn、同じ間隔金属層の厚さを利用して、同じアルミ導線と銅端子との重畳領域の面積で、異なる溶接領域の面積で溶接し、異なる溶接面積の、前記アルミ導線と銅端子との重畳領域の面積に占める比例の、超音波溶接継手の電気と力学性能に対する影響を対比する。
【0058】
以下のテーブル5のデータから分かるように、溶接面積の前記アルミ導線と銅端子との重畳領域の面積に占める比例が大きいほど、相応的な溶接継手の電圧降下の性能及び引抜き力の性能がよく、比例が1%より小さいと、継手の電気性能及び力学性能が明らかに低下するから、前記継手の溶接領域の面積は少なくとも前記アルミ導線と銅端子との重畳領域の面積の1%であり、好ましくは、前記継手の溶接領域の面積は少なくとも前記アルミ導線と銅端子との重畳領域の面積の10%である。
【表5】
【0059】
実施例8 異なる遷移金属層の厚さの、溶接継手の性能に対する影響
実施例3と同じ材質及び構成である150セットの銅端子とアルミ導線を採用して、15組に分けて、各組ごとに10セットがあり、それぞれ銅端子で電気メッキの方式で1μm~1000μmである異なる厚さの亜鉛メッキ層をメッキし、間隔金属層として、圧接の方式で1000μm~6000μmである異なる厚さの亜鉛を固定し、そして同じ超音波溶接機器及び治具によって、アルミ導線を銅端子に溶接し、溶接後の銅とアルミとの継手の引抜き力及び電位降下をテストする。
【0060】
以下のテーブル6とテーブル7のデータから分かるように、メッキ層の厚さが5000μmを超えて、及び3μmより小さいと、銅端子とアルミ導線との継手の力学性能及び電気性が明らかに低下するから、間隔金属層の厚さが3μm~5000μmであるように配置され、その同時に、好ましくは、間隔金属層の厚さが5μm~1000μmである場合に、銅端子とアルミ導線との継手の力学性能及び電気性能が優れる。
【表6】
【表7】
【符号の説明】
【0061】
1 ・・・銅端子
11 ・・・コネクタ
12 ・・・機能部品
2 ・・・アルミ導線
21 ・・・コア
22 ・・・絶縁層
3 ・・・間隔金属層