IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシタット デ バレンシアの特許一覧

特許7274764抗菌剤として、および癌の処置において使用するための、ペプチドおよびその医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】抗菌剤として、および癌の処置において使用するための、ペプチドおよびその医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20230510BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230510BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230510BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
A61K9/107
A61K9/127
A61K9/14
A61K38/17
A61K45/00
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/42
A61P31/04
A61P31/10
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020533058
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 ES2018070824
(87)【国際公開番号】W WO2019122489
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】P201731455
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】516251923
【氏名又は名称】ユニバーシタット デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レアル ガルシア,マリア ドロレス
(72)【発明者】
【氏名】ラウセル セガッラ,カロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ロブレス,インマクラダ
(72)【発明者】
【氏名】ベニト ジャードン,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ロブレス フォート,アイダ
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】Developmental and Comparative Immunology,2015年02月12日,Vol. 50,pp. 139-145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列SEQ ID NO:1から成るペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドおよび少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項3】
前記担体が、脂質、ナノ乳剤、ポリマーミセル、SCKナノ粒子、リポソーム、ナノゲル、ヒドロゲル、リポプレックス、ポリプレックスからなる群から選択される、有機ナノ粒子;アルブミン、セルロース、キトサン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリグリコラート(PGA)、ポリ-(乳酸-グリコリド共重合体)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA);PHPMA)、およびデキストランからなる群から選択される、ポリマー;ポリエーテル-ヒドロキシルアミン(PEHAM)、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリエステルアミン、ポリプロピレンアミン、およびポリグリセロールからなる群から選択される、デンドリマー;カーボンナノチューブ、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)のナノファイバー、ポリエチレングリコール(PEG)のナノファイバー、キトサンのナノファイバー、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)のナノファイバー、ポリラクチド(PLA)のナノファイバー、ポリエチレンオキシドのナノファイバー、およびポリ-ε-カプロラクトン(PCL)のナノファイバーからなる群から選択される、ナノファイバー;および、金ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化白金ナノ粒子、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO-NPs)、ダイヤモンド・ベースのナノ粒子、およびQDナノ粒子、からなる群から選択される、無機ナノ粒子、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
さらに抗生剤を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗生剤が、フシジン酸、アルスフェナミン、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、エタンブトール、ホスホマイシン、フラゾリドン、イソニアジド、リンコマイシン、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、ピラジナミド、プラテンシマイシン、キヌプリスチン、リファンピシン、およびチニダゾールからなる群、または、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェネム、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、およびテトラサイクリンから選択される、抗生物質のクラスから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
薬剤の製造における、請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項7】
抗菌性薬剤の製造における、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、および真菌によって引き起こされる感染症の処置のための、抗菌性薬剤の製造における、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌であること、前記グラム陰性細菌が大腸菌であること、または、前記真菌が鵞口瘡カンジダであることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
癌の処置のための薬剤の製造における、請求項1に記載の配列SEQ ID NO:1から成るペプチドの使用。
【請求項11】
癌が、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、抗HER2耐療法性の乳癌、乳癌腫、乳腺腺癌、胃癌、胃腺癌、結腸癌、結腸腺癌、膵臓癌、膵臓腺癌、腎細胞癌、明細胞の腎細胞癌、卵巣癌、卵巣腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、肺癌、肺腺癌、非小赤血球の肺癌、小細胞肺癌、甲状腺癌、転移性乳頭甲状腺癌、甲状腺濾胞腺癌、膀胱癌、膀胱の移行上皮癌、前立腺細胞腫、中枢神経系グリア系譜癌(神経膠腫)、肉腫、線維肉腫、悪性の線維性組織球腫、ヒト・ユーイング肉腫、子宮内膜間質肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、胎児性癌、神経芽細胞腫、髄芽腫、網膜芽細胞腫、腎芽細胞腫、肝芽腫、血液癌、B細胞またはT細胞白血病、非ホジキンリンパ腫、B細胞またはT細胞非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、B細胞またはT細胞リンパ腫および多発性骨髄腫、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記処置は、化学療法剤による処置と組み合わせて、免疫療法剤による処置と組み合わせて、または放射線療法による処置と組み合わせて使用される、請求項10~11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記化学療法剤が、アナストロゾール、カペシタビン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、シスプラチン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エリブリン、フルベストラント、イミキモド、レトロゾール、パクリタキセル、ロミデプシン、トリシリビン、エキセメスタン、5-フルオロウラシル、およびゲムシタビンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記免疫療法剤が、ドヴィチニブ、イピリムマブ、ラパチニブ、マルゲツキシマブ、ネラチニブ、ニボルマブ、オラパリブ、パルボシクリブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ルキソリチニブ、トラスツズマブ、およびベリパリブからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
抗菌性薬剤としての使用のための、請求項2~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、および真菌によって引き起こされる感染症の処置における抗菌性薬剤としての使用のための、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記グラム陽性細菌は黄色ブドウ球菌であること、前記グラム陰性細菌は大腸菌であること、または前記真菌は鵞口瘡カンジダであることを特徴とする、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の配列SEQ ID NO:1から成るペプチドおよび少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含む、癌の処置において使用される医薬組成物。
【請求項19】
癌が、乳癌、抗HER2耐療法性の乳癌、トリプルネガティブ乳癌、乳癌腫、乳腺腺癌、胃癌、胃腺癌、結腸癌、結腸腺癌、膵臓癌、膵臓腺癌、腎細胞癌、明細胞の腎細胞癌、卵巣癌、卵巣腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、肺癌、肺腺癌、非小赤血球の肺癌、小細胞肺癌、甲状腺癌、転移性乳頭甲状腺癌、甲状腺濾胞腺癌、膀胱癌、膀胱の移行上皮癌、前立腺細胞腫、中枢神経系グリア系譜癌(神経膠腫)、肉腫、線維肉腫、悪性の線維性組織球腫、ヒト・ユーイング肉腫、子宮内膜間質肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、胎児性癌、神経芽細胞腫、髄芽腫、網膜芽細胞腫、腎芽細胞腫、肝芽腫、血液癌、B細胞またはT細胞白血病、非ホジキンリンパ腫、B細胞またはT細胞非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、B細胞またはT細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
化学療法剤を用いた処置との組み合わせ、免疫療法剤を用いた処置との組み合わせ、または放射線療法を用いた処置との組み合わせのための、請求項18または19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
担体が、脂質、ナノ乳剤、ポリマーミセル、SCKナノ粒子、リポソーム、ナノゲル、ヒドロゲル、リポプレックス、ポリプレックスからなる群から選択される、有機ナノ粒子;アルブミン、セルロース、キトサン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリグリコラート(PGA)、ポリ-(乳酸-グリコリド共重合体)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA);PHPMA)、およびデキストランからなる群から選択される、ポリマー;ポリエーテル-ヒドロキシルアミン(PEHAM)、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリエステルアミン、ポリプロピレンアミン、およびポリグリセロールからなる群から選択される、デンドリマー;カーボンナノチューブ、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)のナノファイバー、ポリエチレングリコール(PEG)のナノファイバー、キトサンのナノファイバー、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)のナノファイバー、ポリラクチド(PLA)のナノファイバー、ポリエチレンオキシドのナノファイバー、およびポリ-ε-カプロラクトン(PCL)のナノファイバーからなる群から選択される、ナノファイバー;および、金ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化白金ナノ粒子、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO-NPs)、ダイヤモンド・ベースのナノ粒子、およびQDナノ粒子、からなる群から選択される、無機ナノ粒子、からなる群から選択されることを特徴とする、請求項18から20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
化学療法剤または免疫療法剤をさらに含む、請求項18~21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記化学療法剤が、アナストロゾール、カペシタビン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、シスプラチン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エリブリン、フルベストラント、イミキモド、レトロゾール、パクリタキセル、ロミデプシン、トリシリビン、エキセメスタン、5-フルオロウラシル、およびゲムシタビンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記免疫療法剤が、ドヴィチニブ、イピリムマブ、ラパチニブ、マルゲツキシマブ、ネラチニブ、ニボルマブ、オラパリブ、パルボシクリブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ルキソリチニブ、トラスツズマブ、およびベリパリブからなる群から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陽性またはグラム陰性の細菌および真菌によって生じる感染症の処置において、抗菌剤として使用するための化合物および医薬組成物に関する。本発明は、さらに癌、具体的には乳癌の処置おいて使用される、化合物および医薬組成物に関する。開示された化合物は、コクヌストモドキ、トリボリウム・カスタネウム(Tribolium castaneum)のディフェンシン3から誘導したペプチドである。
【背景技術】
【0002】
抗菌性ペプチド(AMP)は、従来の抗生剤とは異なる作用機序をもつため、新しい抗生剤に対する有望な候補である。それらは、抗生剤抵抗性の発達を妨げるための優れた薬剤である。抗菌性ペプチドが細胞死を促進する割合は、抵抗性を発達させる可能性の減少に寄与する付加的な要素である。加えて、これらのペプチドは従来の抗生剤と共に、それらの治療活性を強化および改善しつつ、相乗的に作用することもできる。
【0003】
抗菌性ペプチドは、小さなサイズ、全体的に存在する正電荷、および、それらに対して両親媒性の特性を与える、疎水性の残基と親水性の残基との比率を持つ。疎水性とカチオンの性質の組み合わせは、それらが、一般的に脂質に富んだアニオンの表面をもつ微生物の細胞膜と静電気的に相互作用することを可能にする。
【0004】
これらのペプチドは、細菌から脊椎動物まで、また真菌、昆虫および植物も同様に、すべての生物の生得免疫の一部を形成するが、同じ程度までではない。無脊椎動物において、それらが免疫系の主要な防御ツールを構成する一方、脊椎動物において、それらはさらに、走化活性、炎症誘発性シグナル伝達、および治癒経過における補助を通じて適応免疫を調整する。
【0005】
トリボリウム・カスタネウム、すなわちコクヌストモドキは保存食糧への食害の原因である昆虫であり、および、発生生物学、進化、免疫、などの研究に対するモデル生物である。
【0006】
文献Contreras et al.,2015は、バチルス・チューリンゲンシス(Bt)に対する甲虫類トリボリウム・カスタネウム(Tc)のディフェンシンの断片の抗菌効果を開示する。この細菌の昆虫病原性の毒素Cry3AaおよびCry3Baが存在する状態で、昆虫の幼虫は、トリボリウム・カスタネウムのディフェンシン2およびディフェンシン3(TcDef2およびTcDef3)の発現を誘発する免疫反応を発達させる。前記文献は、TcDef3-pep、29のアミノ酸を備えたTcDef2のペプチド断片が、大腸菌、黄色ブドウ球菌および鵞口瘡カンジダに対する抗菌活性を持ち、特に著しいのは、黄色ブドウ球菌の感受性であることを開示している。ペプチドTcDef3-pepは、本発明のSEQ ID NO:2として特定された配列に相当する。
【0007】
文献Rajamuthiah et al., 2015は、黄色ブドウ球菌に対する活性を備えた抗菌性ペプチドを開示する。著者は、トリボリウム・カスタネウム(XM_968482、ペプチドのコードはXP_973575.3)から得られた抗菌活性を備えたペプチドを開示する。この論文の著者たちはディフェンシン1に言及するが、図1Aにおいて示されるアミノ酸配列はトリボリウム・カスタネウムのディフェンシン3に相当する。
【0008】
文献Tonk et al., 2015は、グラム陽性細菌に対するトリボリウム・カスタネウムのディフェンシンの抗菌活性を開示する。3つのディフェンシン(Def1、Def2およびDef3)はミクロコッカス・ルテウスおよびバチルス・チューリンゲンシスに対する活性を持ち、一方、Def1およびDef2のみが表皮ブドウ球菌に対する活性を持つ。著者たちは、黄色ブドウ球菌に対するディフェンシンの活性をテストして、この生体に対する抗菌活性の不足を認めた(上記文献における図2)。
【0009】
死亡率が最も高い5つのタイプの癌は、肺癌、肝臓癌、大腸癌、胃癌、および乳癌である。具体的には、乳癌はヨーロッパにおいて発生率が最も高く(458,718件、全体の13%)、および世界的は2番目に発生率が高く(170万件、ケース全体の12%)、死亡率に関してそれぞれ第3位および第5位の位置を占める。
【0010】
乳癌種は、組織学、分子マーカー、および機能的といった異なる分類システムへのニーズを生じさせる幅広い異質性を備えた新生物を示す。臨床の見地から最も広く用いられている分類は、分子マーカーに関連したものであり、それはエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびヒト上皮成長因子2(HER2)を含む。これらのマーカーの存在または不在に応じて、乳房の腫瘍は4つの基本的な亜型へ分類することができる:ER陽性またはPR陽性およびHER2陰性([ER+|PR+]HER2-)、ER陽性またはPR陽性およびHER2陽性([ER+|PR+]HER2+)、HER2陽性としても知られる、ER陽性およびPR陰性およびHER2陽性([ER-|PR-]HER2+)、および最後に、最悪の予後を伴う最も攻撃的な形態であるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)としても知られるER陰性およびPR陰性およびHER2陰性([ER-|PR-]HER2-)がある。
【0011】
乳癌の処置は、各被験体対して個別化されたマルチ・ディシプリナリー・アプローチを必要とし、それは手術、放射線療法、化学療法およびホルモン療法を併用する。トリプルネガティブ乳癌は、受容体の欠如によりホルモン療法に反応しないので、いくつかの付加的な問題を引き起こし、それは、他の乳房の腫瘍の4倍の転移リスクに関連し、および、再発のピーク・リスクは1年目および3年目の間で認められ、およびほとんどの死亡は最初の5年に起きる。化学療法はTNBCにおける結果を改善するただ一つの処置であるが、正常細胞に対するその高い細胞毒性および化学療法抵抗性の出現は、分子標的療法などの他の処置オプションについての研究へとつながっている。不運にも、これらの療法のほとんどは腫瘍細胞による抵抗性獲得に関連し、それは処置の効能を制限する。興味深い改善策としては、選択的に腫瘍細胞を死滅させるか、またはそれらの増殖を制限し、および、既知の抵抗性メカニズムによる影響を受けないトリプルネガティブ乳癌に対する新薬の開発であろう。
【発明の概要】
【0012】
抗菌活性を備えた生成物のコンテキストでは、当該技術分野における問題は、当該技術分野において記載されるトリボリウム・カスタネウムのディフェンシン3から誘導されたペプチドに対する抗菌活性が改善された、トリボリウム・カスタネウムのディフェンシン3から誘導した抗菌活性を備えたペプチドを見つけることである。
【0013】
本発明は、当該技術分野において記載されていないペプチドおよびその医薬組成物を提供して上記問題を解決する。この新しいペプチドおよびその医薬組成物には予期しない効果があり、および当該技術分野において開示された抗菌活性を備えたトリボリウム・カスタネウムのディフェンシン3から誘導した他のペプチドに対して、黄色ブドウ球菌に対する活性の増加が示される。
【0014】
SEQ ID NO:1の配列を備えたペプチドには、Contreras et al., 2015において開示されたペプチドTcDef3-pepと比較して各末端に付加的なアミノ酸、31のアミノ酸があり、り、このことが2つのペプチド間の構造の違いとなっている。
【0015】
Rajamuthiah et al., 2015に開示されたTca1と名付けられたペプチドは、黄色ブドウ球菌に対する活性を示すが、その配列はSEQ ID NO:1の31のアミノ酸の代わりに44のアミノ酸を持っている。
【0016】
癌に対する活性をもつ生成物のコンテキストでは、当該技術分野の問題は、癌の処置に使用するための有効な化合物の提供にある。
【0017】
本発明は、癌の処置に使用するのに有効な、配列SEQ ID NO:1を含むペプチドおよびその医薬組成物を提供して上記問題を解決する。癌の処置におけるこの新規用途は、当該技術分野において従来記載されていない。
【0018】
本明細書において、用語「PaSK」は、配列SEQ ID NO:1によって特定されるペプチドを指す。従って、本明細書において、用語および語句「PaSK」、「配列SEQ ID NO:1から成るペプチド」および「配列SEQ ID NO:1」は交換可能である。
【0019】
本明細書において、用語「TcDef3-pep」は、配列SEQ ID NO:2によって特定されるペプチドを指す。従って、本明細書において、用語および語句「TcDef3-pep」、「配列SEQ ID NO:2から成るペプチド」および「配列SEQ ID NO:2」は交換可能である。
【0020】
ペプチドおよびペプチドを含む医薬組成物
本発明は、配列SEQ ID NO:1から成るペプチドを提供する。
【0021】
一実施形態において、本発明は、配列SEQ ID NO:1および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤または担体から成る医薬組成物を提供する。
【0022】
一実施形態において、担体は、脂質、ナノエマルジョン、ポリマーミセル、SCKナノ粒子、リポソーム、ナノゲル、ヒドロゲル、リポプレックス、ポリプレックスからなる群から選択される、有機ナノ粒子;アルブミン、セルロース、キトサン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリグリコラート(PGA)、ポリ-(乳酸-グリコリド共重合体)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA);PHPMA)、およびデキストランからなる群から選択されるポリマー;ポリエーテル-ヒドロキシルアミン(PEHAM)、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリエステルアミン(polyesteramine)、ポリプロピレンアミン、およびポリグリセロールからなる群から選択される、デンドリマー;カーボンナノチューブ、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)のナノファイバー、ポリエチレングリコール(PEG)のナノファイバー、キトサンのナノファイバー、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)のナノファイバー、ポリラクチド(PLA)のナノファイバー;PHPMA)、ポリエチレンオキシドのナノファイバー、およびポリ-ε-カプロラクトン(PCL)のナノファイバーからなる群から選択される、ナノファイバー;および、金ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化白金ナノ粒子、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO-NPs)、ダイヤモンド・ベースのナノ粒子およびQDナノ粒子、からなる群から選択される、無機ナノ粒子、からなる群から選択される。
【0023】
本明細書において、用語「ナノエマルジョン」は、2種の相互不溶性液体と飛散した滴剤を安定させる乳化剤との不均質混合物を指す。
【0024】
本明細書において、用語「ポリマーミセル」は、水性媒体において自己構築する両親媒性のコポリマー鎖を指し、それは親水性の冠に囲まれた疎水性の核を示す。ポリマーミセルはポリイオン複合体(PIC)および高分子金属錯体ミセルを含む。
【0025】
頭字語「SCK」は「架橋性クネーデル様殻」を指す。本明細書において、用語「SCKナノ粒子」は、ポリマーミセルにおいて自己構築する両親媒性のコポリマー鎖を指し、そこでは外殻の中に選択的な架橋がある。
【0026】
本明細書において、用語「リポプレックス」は、核酸(DNA/RNA)とカチオン脂質によって形成される複合体を指し、ペグ化リポプレックスを含む。
【0027】
本明細書において、用語「ポリプレックス」は、核酸(DNA/RNA)およびポリマーによって形成される複合体を指し、ペグ化ポリプレックスを含む。
【0028】
本明細書において、用語「カーボンナノチューブ」は単層壁または多重壁を備えた円筒状のグラファイト・シートを指す。
【0029】
頭字語「SPIO-NP」は「超常磁性酸化鉄ナノ粒子」を指す。
【0030】
頭字語「QD」は「量子ドット」を指す。本明細書において、用語「QDナノ粒子」は、撮像において蛍光体として広く使用される、半導体の無機のナノ粒子を指す。
【0031】
一実施形態において、医薬組成物は、有効な量の配列SEQ ID NO:1からなるペプチドを含む。
【0032】
本発明のために、有効な量は、熟練した観察者によって認識されるように、被験体の状態において客観的に識別可能な改善を提供する化合物の量として定義され、および、その場合、上記被験体は上記量の化合物を含む医薬組成物により処置される。
【0033】
本発明の目的のために、薬学的に許容可能な賦形剤は、共溶媒、界面活性剤、油、湿潤剤、皮膚軟化剤、保存剤、安定剤、および抗酸化剤などの不活性成分であるが、これらに限定されない。例えば、上記賦形剤またはビヒクルは希釈剤でありえる。医薬組成物は、結晶質、粉末、粒状、圧縮された固体、液体、溶液、懸濁液、エリキシル、シロップ、エマルジョン、クリーム、ゲル、ドロップ、ミスト、蒸気、または砕かれた形態であり得る。従来の技術は医薬組成物を調製するために使用することができる。例えば、医薬組成物はカプセル、錠剤、丸剤、長方形の丸剤、ブリスタ、エンベロープ、注射器、カートリッジ、噴霧剤または他の包装容器において含むことができる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、単独で、または他の有効成分と組み合わせて投与することができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、処置が局所的か全身的かにより、および、処置する領域により、様々な方法で被験体に投与することができる。従って、例えば、本発明の医薬組成物は、被験体に対して、目、膣、直腸、鼻腔、口腔の経路で、および、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内、動脈内、リンパ管内、静脈内、脊髄腔内、眼内、頭蓋内、または気管内の経路で吸入により、または非経口的に、投与することができる。非経口投与は、使用される場合、一般的に注射によって実行される。注射のための溶液は、液体溶液または懸濁液、注射の前に溶解させる又は懸濁液に入れられるのに適した固体形態またはエマルジョンなどの様々な方法で調製することができる。非経口投与の他の形態は、持続的な投与量を得るために長時間放出システム、または徐放性システムを使用する。非経口投与のための調製は、水性または非水性の無菌液、懸濁液、およびエマルジョンを含み、緩衝液、希釈剤または他の添加物含み得る。非水溶媒の例は次のとおりである:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびエチルオレエートなどの注射のための有機エステル。水溶媒の例は、常水、生理食塩水および緩衝液を含む、水溶液、エマルジョンまたは懸濁液である。非経口のビヒクルの例は次のとおりである:塩化ナトリウム溶液、リンゲル液デキストロース、塩化ナトリウムおよびデキストロース、など。抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどの保存剤および他の添加物も存在し得る。局所投与のための製剤はクリーム剤、ローション剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、エアゾール剤、液体および粉末剤を含むことができる。特定の従来の医薬担体、水性基剤、油性基剤、増粘剤もまた必要とされ得る。経口投与のための組成物は粉末剤または果粒剤、水または非水性媒体のなかの懸濁液または、カプセル剤または錠剤を含み得る。粘稠化剤、芳香、賦形剤、乳化剤、分散剤などを含むことは望ましい場合がある。
【0036】
本発明の医薬組成物は一回の、または複数回の投与量において投与することができる。
【0037】
一実施形態において、医薬組成物は抗生剤も含む。
【0038】
一実施形態において、上記抗生剤は、フシジン酸、アルスフェナミン、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、エタンブトール、ホスホマイシン、フラゾリドン、イソニアジド、リンコマイシン、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、ピラジナミド、プラテンシマイシン、キヌプリスチン、リファンピシン、およびチニダゾールからなる群、または、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェネム、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライド、モノバクタム(monobactamics)、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、およびテトラサイクリンから選択される、抗生物質のクラスから選択される。
【0039】
薬剤および抗菌剤として使用される、ペプチドまたは医薬組成物
一実施形態において、本発明は、配列SEQ ID NO:1から成るペプチドまたは薬剤として使用される医薬組成物を提供する。
【0040】
一実施形態において、本発明は抗菌薬として使用するためのペプチドまたは医薬組成物に関する。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明は、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌および真菌によって生じる感染症の処置における抗菌薬として使用するための、SEQ ID NO:1から成るペプチド、または同じものを含む医薬組成物に関する。
【0042】
好ましい実施形態において、上記グラム陽性細菌は黄色ブドウ球菌である。
【0043】
好ましい実施形態において、上記グラム陰性細菌は大腸菌である。
【0044】
好ましい実施形態において、上記真菌は鵞口瘡カンジダである。
【0045】
癌の処置で使用される、ペプチドまたは医薬組成物
一実施形態において、本発明は、癌の処置において使用するための、配列SEQ ID NO:1を含むペプチド、または上記ペプチドおよび少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0046】
一実施形態において、医薬組成物は、配列SEQ ID NO:1を含む有効な量のペプチドを含む。
【0047】
薬学的に許容可能な賦形剤は:共溶媒、界面活性剤、油、湿潤剤、皮膚軟化剤、保存剤、安定剤、および抗酸化剤などの、しかし限定されない、不活性成分である。例えば、上記賦形剤またはビヒクルは希釈剤であり得る。医薬組成物は、結晶質、粉末、粒状、圧縮された固体、液体、溶液、懸濁液、エリキシル、シロップ、エマルジョン、クリーム、ゲル、ドロップ、ミスト、蒸気、または砕かれた形態であり得る。従来の技術は医薬組成物を調製するために使用することができる。例えば、医薬組成物は次のものに含まれ得る:カプセル剤、錠剤、丸剤、長方形の丸剤、ブリスタ、エンベロープ、注射器、カートリッジ、噴霧剤または他の容器。
【0048】
医薬組成物は、単独で、または他の有効成分と組み合わせて投与することができる。
【0049】
医薬組成物は、処置が局所的か全身的かにより、および、処置する領域により、様々な方法で被験体に投与することができる。従って、例えば、医薬組成物は、被験体に対して、目、膣、直腸、鼻腔、口腔の経路で、吸入により、または非経口的に、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内、動脈内、リンパ管内、静脈内、脊髄腔内、眼内、頭蓋内、または気管内の経路によって、投与することができる。非経口投与は、使用される場合、一般的に注射によって実行される。注射のための溶液は、液体溶液または懸濁液、注射の前に溶解させる又は懸濁液に入れられるのに適した固体形態またはエマルジョンなどの様々な方法で調製することができる。非経口投与の他の形態は、持続的な投与量を得るために長時間放出システム、または徐放性システムを使用する。非経口投与のために調製は水性か非水性の無菌液、懸濁液およびエマルジョンを含み、緩衝液、希釈液または他の添加物をまた内蔵することができる。非水溶媒の例は次のとおりである:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびエチルオレエートなどの注射のための有機エステル。水溶媒の例は、常水、生理食塩水および緩衝液を含む、水溶液、エマルジョンまたは懸濁液である。非経口のビヒクルの例は次のとおりである:塩化ナトリウム溶液、リンゲル液デキストロース、塩化ナトリウムおよびデキストロース、など。抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどの保存剤および他の添加物も存在し得る。局所投与のための製剤はクリーム剤、ローション剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、エアゾール剤、液体および粉末剤を含むことができる。特定の従来の医薬担体、水性基剤、油性基剤、増粘剤もまた必要とされ得る。経口投与のための組成物は粉末剤または果粒剤、水または非水性媒体の中の懸濁液、または、カプセル剤または錠剤を含み得る。粘稠化剤、芳香、賦形剤、乳化剤、分散剤などを含むことは望ましい場合がある。
【0050】
医薬品組成物は単一か複数回投与において投与することができる。
【0051】
ある具体的な実施形態において、本発明は、癌の処置において使用するための、配列SEQ ID NO:1からなるペプチド、またはペプチドおよび少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0052】
一実施形態において、癌は、乳癌、抗HER2耐療法性の乳癌、乳癌腫、乳腺腺癌、胃癌、胃腺癌、結腸癌、結腸腺癌、膵臓癌、膵臓腺癌、腎細胞癌、明細胞の腎細胞癌、卵巣癌、卵巣腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、肺癌、肺腺癌、非小赤血球の肺癌、小細胞肺癌、甲状腺癌、転移性乳頭甲状腺癌、甲状腺濾胞腺癌、膀胱癌、膀胱の移行上皮癌、前立腺細胞腫、中枢神経系グリア系譜癌(神経膠腫)、肉腫、線維肉腫、悪性の線維性組織球腫、ヒト・ユーイング肉腫、子宮内膜間質肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、胎児性癌、神経芽細胞腫、髄芽腫、網膜芽細胞腫、腎芽細胞腫、肝芽腫、血液癌、B細胞またはT細胞白血病、非ホジキンリンパ腫、B細胞またはT細胞非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、B細胞またはT細胞リンパ腫および多発性骨髄腫、からなる群から選択される。
【0053】
好適な実施形態では、癌は乳癌である。
【0054】
さらに好適な実施形態では、乳癌は、化学療法抵抗性のトリプルネガティブ乳癌である。
【0055】
本発明のペプチドは、それらの固有の抗発癌活性を働かせることを可能にして、または、他の治療剤との相乗作用において、異種の腫瘍細胞に対して効率的に相互に作用し、および抵抗性の発達について他の治療剤よりも低い見込みをもたらす。
【0056】
一実施形態において、ペプチドまたは医薬組成物は、化学療法剤、免疫療法剤、または放射線療法を伴う処置と組み合わせて、癌を処置するために使用される。
【0057】
一実施形態において、上記化学療法剤は、以下からなる群から選択される:アナストロゾール、カペシタビン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、シスプラチン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エリブリン、フルベストラント、イミキモド、レトロゾール、パクリタキセル、ロミデプシン、トリシリビン、エキセメスタン、5-フルオロウラシル、およびゲムシタビン。
【0058】
一実施形態において、上記免疫療法剤は、以下からなる群から選択される:ドヴィチニブ(dovitinib)、イピリムマブ、ラパチニブ、マルゲツキシマブ(margetuximab)、ネラチニブ、ニボルマブ、オラパリブ、パルボシクリブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ルキソリチニブ、トラスツズマブおよびベリパリブ(veliparib)。
【0059】
癌の処置のために使用される医薬組成物の一実施形態において、前記担体は、脂質、ナノエマルジョン、ポリマーミセル、SCKナノ粒子、リポソーム、ナノゲル、ヒドロゲル、リポプレックス、ポリプレックスからなる群から選択される、有機ナノ粒子;アルブミン、セルロース、キトサン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリグリコラート(PGA)、ポリ-(乳酸-グリコリド共重合体)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(ポリ(HPMA);PHPMA)、およびデキストランからなる群から選択される、ポリマー;ポリエーテル-ヒドロキシルアミン(PEHAM)、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリエステルアミン(polyesteramine)、ポリプロピレンアミン、およびポリグリセロールからなる群から選択される、デンドリマー;カーボンナノチューブ、ポリ(d,1-ラクチド-グリコリド共重合体)(PLGA)のナノファイバー、ポリエチレングリコール(PEG)のナノファイバー、キトサンのナノファイバー、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)のナノファイバー、ポリラクチド(PLA)のナノファイバー;PHPMA)、ポリエチレンオキシドのナノファイバー、およびポリ-ε-カプロラクトン(PCL)のナノファイバーからなる群から選択される、ナノファイバー;および、金ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化白金ナノ粒子、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO-NPs)、ダイヤモンド・ベースのナノ粒子およびQDナノ粒子、からなる群から選択される、無機ナノ粒子、からなる群から選択される。

【0060】
一実施形態において、癌の処置のために使用される医薬組成物はさらに化学療法剤または免疫療法剤を含む。
【0061】
好ましい実施形態において、ペプチドおよび化学療法剤または免疫療法剤の組み合わせは、前記組み合わせの各メンバーの個別の投与と比較して、改良された癌の処置を達成する。
【0062】
一実施形態において、前記化学療法剤は以下のものからなる群から選択される:アナストロゾール、カペシタビン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、シスプラチン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エリブリン、フルベストラント、イミキモド、レトロゾール、パクリタキセル、ロミデプシン、トリシリビン、エキセメスタン、5-フルオロウラシル、およびゲムシタビン。
【0063】
一実施形態において、前記免疫療法剤は以下のものからなる群から選択される:ドヴィチニブ、イピリムマブ、ラパチニブ、マルゲツキシマブ、ネラチニブ、ニボルマブ、オラパリブ、パルボシクリブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ルキソリチニブ、トラスツズマブ、およびベリパリブ。
【0064】
実施例3および4の結果は、PaSK(配列SEQ ID NO:1からなるペプチド)が、腫瘍の成長および増殖を阻害して細胞周期の進行を制御し、トリプルネガティブ乳癌細胞のG1/S遷移に影響を与えることを示す。p53腫瘍抑制タンパク質は、一般的に遺伝毒性ストレスに応じて細胞周期の中断およびアポトーシスを媒介する。MDA-MB-231細胞はp53を非機能性にする特定の変異を内に有する。従って、p53に左右されないPaSKによるトリプルネガティブ乳癌細胞の成長および増殖の阻害は、p53がしばしば突然変異する乳房の腫瘍における治療用途にとってペプチドPaSKを重要なものたらしめている。
【0065】
定義
本明細書において、用語「癌」は、すべてのタイプの腫瘍形成性のおよび/または癌性の成長過程を包含し得る。いくつかの実施形態において、癌は、転移性の組織、または、悪性形質転換を伴う細胞、組織または器官と同様に、原発腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、癌は、癌のすべての病理組織学の、および侵襲性/重篤度などの段階を包含する。いくつかの実施形態において、癌は、再発癌および/または耐性癌を含む。用語「癌」および「腫瘍」は、同義語として用いることができる。
【0066】
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似している、および同等である方法および材料は、本発明の実施において使用され得る。
【0067】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「を含む(comprising)」、「を含む(that comprises)」およびそれらの変形は、非限定的な性質であって、および従って、他の技術的特徴を除外するものではない。
【0068】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、用語「からなる(consisting in)」または「からなる(that consists in)」は、特に生物学的配列に関する時、本発明の化合物が、正確な方法において、規定された配列によって特定された断片に限定されることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1A】ペプチドhBD-3、TcDef3-pepおよびPaSKの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性。陰性対照(A)および陽性対照hBD-3(B)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。ペプチドTcDef3-pep(C)およびPaSK(D)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。縦軸において、FITCはフルオレセインを指し、SYBRグリーンを組込んだ細胞を示す。横軸において、PerCP-Cy5.5-Aはペリジニン-クロロフィル・タンパク質を指し、ヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞に対応する。ウィンドウP2は生細胞を示し、および、P3は死細胞を示す。
図1B】ペプチドhBD-3、TcDef3-pepおよびPaSKの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性。陰性対照(A)および陽性対照hBD-3(B)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。ペプチドTcDef3-pep(C)およびPaSK(D)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。縦軸において、FITCはフルオレセインを指し、SYBRグリーンを組込んだ細胞を示す。横軸において、PerCP-Cy5.5-Aはペリジニン-クロロフィル・タンパク質を指し、ヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞に対応する。ウィンドウP2は生細胞を示し、および、P3は死細胞を示す。
図1C】ペプチドhBD-3、TcDef3-pepおよびPaSKの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性。陰性対照(A)および陽性対照hBD-3(B)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。ペプチドTcDef3-pep(C)およびPaSK(D)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。縦軸において、FITCはフルオレセインを指し、SYBRグリーンを組込んだ細胞を示す。横軸において、PerCP-Cy5.5-Aはペリジニン-クロロフィル・タンパク質を指し、ヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞に対応する。ウィンドウP2は生細胞を示し、および、P3は死細胞を示す。
図1D】ペプチドhBD-3、TcDef3-pepおよびPaSKの黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性。陰性対照(A)および陽性対照hBD-3(B)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。ペプチドTcDef3-pep(C)およびPaSK(D)のフローサイトメーター・ウィンドウにおいて得られた蛍光グラフ。縦軸において、FITCはフルオレセインを指し、SYBRグリーンを組込んだ細胞を示す。横軸において、PerCP-Cy5.5-Aはペリジニン-クロロフィル・タンパク質を指し、ヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞に対応する。ウィンドウP2は生細胞を示し、および、P3は死細胞を示す。
図2】ペプチドhBD-3、TcDef3-pepおよびPaSKの間における、黄色ブドウ球菌に対する細胞毒性の比較。活性は2つの複製において25μg/mLの濃度で測定された。示されているのは、陰性対照(対照)、陽性対照hBD-3、TcDef3-pepおよびPaSKの活性である。グラフは、対応する標準偏差を備えた2つの複製に対する平均値を示す。
図3】黄色ブドウ球菌に対するペプチドTcDef3-pepおよびPaSKの抗菌活性。点は、対応する標準偏差を備えた2つの複製の平均値を表わす。ペプチドTcDef3-pepに関するデータはContreras et al., 2015から得た。
図4】走査電子顕微鏡法によって得られた、黄色ブドウ球菌においてペプチドによって生じた損傷の画像。ペプチドにより処置されなかった細胞(A-B)、および、hBD-3(C-D)、TcDef3-pep(E-F)およびPaSK(G-H)により、25μg/mLの濃度で1時間処置された細胞が示される。実線の矢印は、細胞膜における破裂および膨張を示す。破線の矢印は細胞質破片を示す。目盛りを表わす数は、3μm(A)、2μm(B)、4μm(C)、2μm(D)、4μm(E)、500nm(F)、2μm(G)および2μm(H)である。
図5A】走査電子顕微鏡法によって得られた、25μg/mLの濃度のTcDef3-pep(A)およびPaSK(B)により1時間処置された黄色ブドウ球菌の細胞によって生成されたバイオフィルムの画像。目盛りにおいて表わされた数は、1μm(A、上の画像)、2μm(A、中央の画像)、4μm(A、下の画像)、4μm(B、上の画像)、2μm(中央の画像)および3μm(下の画像)である。
図5B】走査電子顕微鏡法によって得られた、25μg/mLの濃度のTcDef3-pep(A)およびPaSK(B)により1時間処置された黄色ブドウ球菌の細胞によって生成されたバイオフィルムの画像。目盛りにおいて表わされた数は、1μm(A、上の画像)、2μm(A、中央の画像)、4μm(A、下の画像)、4μm(B、上の画像)、2μm(中央の画像)および3μm(下の画像)である。
図6】透過型電子顕微鏡によって得られた、黄色ブドウ球菌においてペプチドによって生じた損傷の画像。ペプチドにより処置されなかった細胞(A-B)、および、hBD-3(C-D)、TcDef3-pep(E-F)およびPaSK(G-H)により、25μg/mLの濃度で1時間処置された細胞が示される。細胞質および細胞壁破片(6)、ペプチドグリカン(peptidoglycane)の奇形、細胞膜剥離および菲薄化(4)、細胞溶解(5)、細胞質空胞化(7)、分裂中隔の奇形(8)およびペプチドPaSKにより処置された細胞(9)においてのみ現われる高電子密度の構造が示される。目盛りを表わす数は、200nm(A)、100nm(B)、600nm(C)、200nm(D)、400nm(E)、200nm(F)、600nm(G)および200nm(H)である。
図7】透過型電子顕微鏡法によって得られた、25μg/mLの濃度にあるペプチドTcDef3-pep(A)およびPaSK(B)により1時間処置された黄色ブドウ球菌の細胞によって生成されたバイオフィルムの画像である。目盛りを表わす数は、400nm(A、左)、400nm(A、右)、400nm(B、左)400nm(B、右)である。
図8】MTS試験による、2つの細胞株、1つはヒト(MDA‐MB‐231)および1つはマウス(4T1)のトリプルネガティブ乳癌細胞、および正常なマウスの乳房上皮細胞(HC‐11)の株における、ペプチドPaSKの細胞毒性効果の測定。結果は、0.5%のウシ胎児血清で24時間インキュベートした場合が示される。ペプチドPaSKは、3つの事例において、およそ200μM(700μg/mL)の濃度で約50%の細胞死を引き起こす。
図9】ペプチドPaSKは、ヒトのトリプルネガティブ乳癌細胞(MDA‐MB‐231)における細胞増殖を阻害する。細胞はOregon Greenを用いてインキュベートされた。細胞増殖分析は、Oregon Green蛍光体でマークされた腫瘍細胞に対してフローサイトメトリーによって実行された。非増殖の対照(黒色の領域を備えたピーク)、ペプチドで処置されない細胞(白色の領域を備えたピーク)および50μM(200μg/mL)のペプチドPaSKで処置された細胞(灰色の領域を備えたピーク)の結果が示される。
図10】MDA-MB-231腫瘍細胞に対するペプチドPaSKの細胞毒性活性。フローサイトメーターにおいて得られた生細胞および死細胞のグラフ、対照(A)およびPaSKで処置(B)。縦軸において、SSC-A(側方散乱)は、選択された集団における細胞の粒状度を指す。横軸において、PerCP-Cy5.5-Aはペリジニン-クロロフィル・タンパク質を指し、ヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞に対応する。活性は2つの複製において200μg/mL濃度のPaSKで測定された。2つの複製の平均値およびそれらに対応する標準偏差を示す生存率のグラフ(C)。
図11A】MDA-MB-231腫瘍細胞に対するペプチドPaSKの抗増殖活性。ソフトウェアModFit LTを使用した細胞周期進行の分析、(A)対照、(B)PaSK(100μg/mL)。細胞分布は2つの複製において細胞周期の異なる段階について検出された。(C)2つの複製の平均値およびそれらの対応する標準偏差を示す、細胞周期の各段階において観測された細胞のパーセンテージのグラフである。星印は処置の間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定, p ≦ 0.05)。(D)ペプチドPaSKの作用によって影響を受けた段階を示す細胞周期の模式図である。
図11B】MDA-MB-231腫瘍細胞に対するペプチドPaSKの抗増殖活性。ソフトウェアModFit LTを使用した細胞周期進行の分析、(A)対照、(B)PaSK(100μg/mL)。細胞分布は2つの複製において細胞周期の異なる段階について検出された。(C)2つの複製の平均値およびそれらの対応する標準偏差を示す、細胞周期の各段階において観測された細胞のパーセンテージのグラフである。星印は処置の間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定, p ≦ 0.05)。(D)ペプチドPaSKの作用によって影響を受けた段階を示す細胞周期の模式図である。
図11C】MDA-MB-231腫瘍細胞に対するペプチドPaSKの抗増殖活性。ソフトウェアModFit LTを使用した細胞周期進行の分析、(A)対照、(B)PaSK(100μg/mL)。細胞分布は2つの複製において細胞周期の異なる段階について検出された。(C)2つの複製の平均値およびそれらの対応する標準偏差を示す、細胞周期の各段階において観測された細胞のパーセンテージのグラフである。星印は処置の間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定, p ≦ 0.05)。(D)ペプチドPaSKの作用によって影響を受けた段階を示す細胞周期の模式図である。
図11D】MDA-MB-231腫瘍細胞に対するペプチドPaSKの抗増殖活性。ソフトウェアModFit LTを使用した細胞周期進行の分析、(A)対照、(B)PaSK(100μg/mL)。細胞分布は2つの複製において細胞周期の異なる段階について検出された。(C)2つの複製の平均値およびそれらの対応する標準偏差を示す、細胞周期の各段階において観測された細胞のパーセンテージのグラフである。星印は処置の間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定, p ≦ 0.05)。(D)ペプチドPaSKの作用によって影響を受けた段階を示す細胞周期の模式図である。
図12】ソフトウェアMarker View 1.3を用いた、対照および処置の複製のディファレンシャル・プロテオーム解析において得られた、タンパク質の定量的測度の判別分析。8つのサンプルが分析された(対照(サンプルC1-C4)の4つの複製、およびPaSK(サンプルP1-P4)を用いた処置の4つの複製)。
図13】分子の機能によるディファレンシャルなタンパク質のクラスターを示す。処置/対照比における、存在度が減少したタンパク質のクラスター(A)。分子の機能による特異タンパク質のクラスターを示す。存在度が増加したタンパク質のクラスター(B)。Uniprot(http://www.uniprot.org)において実行された。
図14】走査電子顕微鏡法によって得られた、MDA-MB-231腫瘍細胞においてPaSKによって生じた損傷の画像。ペプチドPaSKで処置されなかった細胞(A-B)、および100μg/mLの濃度にあるPaSKで72時間処置された細胞(D-F)が示される。処置されていない細胞における細胞膜(1)およびその膨脹(5)が示される。PaSKで処置された細胞の細胞膜(2)および陥入および隆起(3)が示される。目盛りにおいて表わされた数は、10μm(A)、5μm(B)、10μm(C)、50μm(D)、10μm(E)および10μm(F)である。
図15】透過型電子顕微鏡法によって得られた、MDA-MB-231腫瘍細胞においてPaSKによって生じた損傷の画像。ペプチドPaSKで処置されなかった細胞(A-B)、および100μg/mLの濃度にあるPaSKで72時間処置された細胞(D-F)が示される。処置されていない細胞における細胞膜(1)およびその膨脹(5)が示される。PaSKで処置された細胞の細胞膜(2)、陥入および隆起(3)および細胞膜破裂および細胞質破片を伴う小胞(4)が示される。目盛りにおいて表わされた数は、2μm(A)、2μm(B)、2μm(C)、2μm(D)、1μm(E)、2μm(F)である。
図16A】MDA-MB-231細胞における、ペプチドPaSKとドキソルビシン、パクリタキセル、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルの併用療法の細胞毒性効果を示す。100μg/mLの濃度にあるPaSKと様々な化学療法剤とを組み合わせた、72時間の処置後にMTS試験によって得られた細胞の生存率のグラフ。A) ドキソルビシン(0.10、0.25、0.50、1、および2μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。B) パクリタキセル(0.0001、0.001、0.01、1、10、100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。C) シスプラチン(5、10、20、30、40、50、65、および100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。D) 5-フルオロウラシル(2、8、20、40、80、400、1000μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。星印は、処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05および**p≦ 0.01)。
図16B】MDA-MB-231細胞における、ペプチドPaSKとドキソルビシン、パクリタキセル、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルの併用療法の細胞毒性効果を示す。100μg/mLの濃度にあるPaSKと様々な化学療法剤とを組み合わせた、72時間の処置後にMTS試験によって得られた細胞の生存率のグラフ。A) ドキソルビシン(0.10、0.25、0.50、1、および2μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。B) パクリタキセル(0.0001、0.001、0.01、1、10、100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。C) シスプラチン(5、10、20、30、40、50、65、および100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。D) 5-フルオロウラシル(2、8、20、40、80、400、1000μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。星印は、処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05および**p≦ 0.01)。
図16C】MDA-MB-231細胞における、ペプチドPaSKとドキソルビシン、パクリタキセル、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルの併用療法の細胞毒性効果を示す。100μg/mLの濃度にあるPaSKと様々な化学療法剤とを組み合わせた、72時間の処置後にMTS試験によって得られた細胞の生存率のグラフ。A) ドキソルビシン(0.10、0.25、0.50、1、および2μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。B) パクリタキセル(0.0001、0.001、0.01、1、10、100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。C) シスプラチン(5、10、20、30、40、50、65、および100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。D) 5-フルオロウラシル(2、8、20、40、80、400、1000μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。星印は、処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05および**p≦ 0.01)。
図16D】MDA-MB-231細胞における、ペプチドPaSKとドキソルビシン、パクリタキセル、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルの併用療法の細胞毒性効果を示す。100μg/mLの濃度にあるPaSKと様々な化学療法剤とを組み合わせた、72時間の処置後にMTS試験によって得られた細胞の生存率のグラフ。A) ドキソルビシン(0.10、0.25、0.50、1、および2μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。B) パクリタキセル(0.0001、0.001、0.01、1、10、100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。C) シスプラチン(5、10、20、30、40、50、65、および100μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。D) 5-フルオロウラシル(2、8、20、40、80、400、1000μM)との組み合わせ:対応する標準偏差を伴う4つの複製の平均値。星印は、処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05および**p≦ 0.01)。
図17A】PaSKとドキソルビシンおよびシスプラチン、およびその両方との組み合わせにより処置されたMDA-MB-231細胞のEC50の比較を示す。A) ドキソルビシンによる処置の、およびドキソルビシンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。B) パクリタキセルによる処置の、およびパクリタキセルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。C) シスプラチンによる処置の、およびシスプラチンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。D) 5-フルオロウラシルによる処置の、および5-フルオロウラシルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。星印は、EC50における処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05 **p≦0.01)。EC50はオンライン・ソフトウェアhttps://www.aatbio.comで得た。
図17B】PaSKとドキソルビシンおよびシスプラチン、およびその両方との組み合わせにより処置されたMDA-MB-231細胞のEC50の比較を示す。A) ドキソルビシンによる処置の、およびドキソルビシンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。B) パクリタキセルによる処置の、およびパクリタキセルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。C) シスプラチンによる処置の、およびシスプラチンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。D) 5-フルオロウラシルによる処置の、および5-フルオロウラシルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。星印は、EC50における処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05 **p≦0.01)。EC50はオンライン・ソフトウェアhttps://www.aatbio.comで得た。
図17C】PaSKとドキソルビシンおよびシスプラチン、およびその両方との組み合わせにより処置されたMDA-MB-231細胞のEC50の比較を示す。A) ドキソルビシンによる処置の、およびドキソルビシンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。B) パクリタキセルによる処置の、およびパクリタキセルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。C) シスプラチンによる処置の、およびシスプラチンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。D) 5-フルオロウラシルによる処置の、および5-フルオロウラシルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。星印は、EC50における処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05 **p≦0.01)。EC50はオンライン・ソフトウェアhttps://www.aatbio.comで得た。
図17D】PaSKとドキソルビシンおよびシスプラチン、およびその両方との組み合わせにより処置されたMDA-MB-231細胞のEC50の比較を示す。A) ドキソルビシンによる処置の、およびドキソルビシンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。B) パクリタキセルによる処置の、およびパクリタキセルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。C) シスプラチンによる処置の、およびシスプラチンとPaSKを組み合わせた処置のEC50。D) 5-フルオロウラシルによる処置の、および5-フルオロウラシルとPaSKを組み合わせた処置のEC50。対応する標準偏差を伴う3つの複製の平均値。星印は、EC50における処置間の統計的有意差を示す(スチューデントのt検定、p≦0.05 **p≦0.01)。EC50はオンライン・ソフトウェアhttps://www.aatbio.comで得た。
【発明を実施するための形態】
【0070】
材料と方法
使用されたペプチド
この研究において使用された合成ペプチドは、トリボリウム・カスタネウムのディフェンシン3の断片、TcDef3-pepおよびPaSK、およびヒト・ディフェンシンhBD-3(PeptaNova)であった。
【0071】
黄色ブドウ球菌亜種の菌株
使用された菌株は、スペインの標準培養収集(CECT)に供託され、公に入手可能な黄色ブドウ球菌亜種のCECT 4013であった。
【0072】
ヒト乳腺腫瘍細胞株MDA-MB-231
米国培養菌保存施設(ATCC)に供託され、公に入手可能な細胞株であり、ATCC(登録商標)HTB-26(商標)として特定されている、ヒト乳腺腫瘍細胞株MDA-MB-231が使用された。細胞は、ウシ胎児血清10%、ペニシリンとストレプトマイシン1%、およびファンギゾン0.1%を補足され、5%のCOを含んでいる雰囲気において37℃で維持された75cmフラスコにおいて培養された。
【0073】
サンプルの調製
MDA-MB-231細胞は、6ウェルのディッシュにおいて、ウェルにつき5×10細胞の密度で培養され、そこに200μLまたは400μLのPaSK(終濃度100μg/mLおよび200μg/mL)が加えられ、または対応する対照に同じ体積の培地(ペプチドを希釈するために使用される溶媒)が加えられた。細胞は37℃で72時間インキュベートされた。
【0074】
黄色ブドウ球菌細胞に対するフローサイトメトリー
液体培地LB(ペプトン1%、酵母抽出物0.5%およびNaCl 1%)において37℃で夜通し培養された黄色ブドウ球菌の細胞を撹拌することから始め、アリコートは新しい液媒において得られ、フローサイトメーターにおける検出に最適な600nm(OD600)で0.5の光学密度に達するまで成長することを許された。アリコートは、5×10 cfu/100μLの濃度黄色ブドウ球菌で調整し、10、15、20および25μg/mLのPaSK、25μg/mLのTcDef3-pepおよびHO(陰性対照)、ペプチドを希釈するため溶媒を加えた。混合物は8時間37℃でインキュベートされ、すべての細胞を染色する蛍光色素SYBRグリーン(Invitrogen)(HOの中の25μLのSYBRグリーン25X溶液)、および、死細胞を染色するヨウ化プロピジウム(Sigma)(10μLのヨウ化プロピジウム1mg/mL)でマークされた。最後に、ペプチドによって生じた細胞死は、the Central Services for Research Support of the University of Valenciaの細胞培養およびフローサイトメトリー・セクションからの装置BD Facs Verse(Becton Dickinson)を用い、フローサイトメトリーによって分析された。実験は繰り返し行われた。
【0075】
フローサイトメーターは細胞がひとつずつ針を通るように強いて液体の細線を生成し、およびレーザー光線(使用される装置における488nmのアルゴン発光レーザー)が細胞とどのように相互作用するかを、入射光が逸れる具合、および蛍光が励起された蛍光色素によって放出される具合に応じて、検知する。結果は、分析プログラムBD Facs suite v1.0.5.3841(Becton Dickinson)で得られたグラフとして提示される。第1に、細胞の事象をすべて見つけるために、パラメーターFSC(前方散乱)およびSSC(側方散乱)を用いて対照グラフが得られる。これらのパラメーターはセルサイズと粒状度をそれぞれ提供する。その後、細胞をサンプルの中に存在するかもしれない他の粒子と区別するために、パラメーターSSCおよびFITC(SYBRグリーンを含んでいる細胞を示す蛍光パラメーター)を用いて第2のグラフが得られる。最後に、SYBRグリーンによってのみ染色された細胞をヨウ化プロピジウムで染色されたもの、つまり死滅したとみなされるものから見分けるために、蛍光パラメーターFITCおよびPerCPCy5.5(ヨウ化プロピジウムで染色された細胞を示す)を用いて第3のグラフが得られる。
【0076】
ヒト乳腺腫瘍細胞MDA-MB-231のためのフローサイトメトリー
細胞の生存率を評価するために、細胞株MDA-MB-231の細胞は、蛍光色素ヨウ化プロピジウム(PI)1 mg/mL(Sigma-Aldrich)の1:1000稀釈液0.5μLを用いてインキュベートされ、それにより死細胞は染色された。
【0077】
細胞株分析のために、CycleTEST(商標)PLUS DNA Reagent Kit (Sigma-Aldrich)が使用された。2回の洗浄がクエン酸塩緩衝液(クエン酸ナトリウム、サッカロースおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含む)を使用して行われ、各サンプルが300xgで5分間遠心分離機にかけられ、最後の1回の洗浄が行なわれ、それにおいて細胞の数が5×10まで調整され、および400xgで5分間遠心分離機にかけられ、そして、その後、250μLの溶液A(スペルミン・テトラヒドロクロリドを伴う洗浄性の緩衝液においてトリプシンを含む)、200μLの溶液B(スペルミン・テトラヒドロクロリドを伴うクエン酸塩の安定化緩衝液において、トリプシンとリボヌクレアーゼAの阻害剤を含む)および200μLの溶液C(PIおよびスペルミン・テトラヒドロクロリドを伴う安定化緩衝液を含む)を加え、各溶液を追加する間に10分間隔で室温で放置し、濾過する前に、残りの1つを保冷された暗所において濾過した。ペプチドによって生じた細胞死および細胞の細胞周期の段階の分析は、装置BD Facs Verse(Becton Dickinson)を用いて実行された。細胞周期モデリングはソフトウェアModfit LT,version3.3.11を用いて実行された。実験は繰り返し行われた。
【0078】
MTS法
細胞の生存率を、MTS法により判定した。10%のCOで湿らされた雰囲気にて37℃で96ウェルのプレートにおいて5×10細胞/ウェルの密度になるまで培養されたMDA-MB-231細胞は、24時間異なる濃度のペプチドPaSKを用いてインキュベートされた。その後、溶液MTS/PMS(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾール/フェナジンメトサルフェート)20μLが、各ウェルに加えられ、および、暗所において2時間インキュベートした後に、490nmの吸収率がプレート・リーダに読み込まれた。細胞の数の減少率は化学式(1- E/C)×100に従って計算され、式中、Eはペプチドを用いて処置された細胞の吸収率、およびCが対照細胞のサンプルの吸収率である。
【0079】
黄色ブドウ球菌細胞の走査電子顕微鏡法
細胞はフローサイトメトリー手法に対する場合と同様に調製され、同じアリコートおよび同じ処置が実行された。サンプルを37℃で1時間インキュベートした。細菌は4℃で2時間、Karnosky(2.5%のパラホルムアルデヒドおよび0.5のグルタルアルデヒド)を用いて固定された。洗浄(上澄みを遠心分離機にかけて除去)した後、それらはさらに2時間2%の四酸化オスミウムを用いて固定され、再び洗浄され、および0.2μmフィルターでろ過された。その後、細胞は段階づけられた一連のエタノール(30°、50°、70°、90°、100°)の中で各段階において10分間脱水された。臨界点乾燥を行なうために、エタノールは液体COと取り替えられ、温度は蒸発を速めるために上げられ、および、圧力は細菌の正確な形を保存するためにゆっくり下げられた。最後に、金パラジウムで2分間シェーディングが実行され、装置FEG-SEM HITACHI S4800において10kvで結果を観測した。
【0080】
ヒト乳腺腫瘍細胞MDA-MB-231の走査電子顕微鏡法
対照または100μg/mLのPaSKで処置されたMDA-MB-231細胞は、「サンプルの調製」セクションにおいて示されたように調製された。細胞は4℃で2時間、Karnosky(2.5%のパラホルムアルデヒドおよび0.5%のグルタルアルデヒド)を用いて固定された。洗浄(上澄みを遠心分離機にかけて除去)した後、それらはさらに2時間2%の四酸化オスミウムを用いて固定され、再び洗浄され、および0.2μmフィルターでろ過された。その後、細胞は段階づけられた一連のエタノール(30°、50°、70°、90°、100°)の中で各段階において10分間脱水された。臨界点乾燥を行なうために、エタノールは液体COと取り替えられ、温度は蒸発を速めるために上げられ、および、圧力は細胞の正確な形を保存するためにゆっくり下げられた。最後に、金パラジウムで2分間シェーディングが実行され、装置FEG-SEM HITACHI S4800において10kvにて結果を観測した。
【0081】
黄色ブドウ球菌細胞およびヒト乳腺腫瘍細胞MDA-MB-231の透過型電子顕微鏡法
サンプルは、一連の段階づけられたエタノールでの脱水を除き、走査電子顕微鏡法に対する場合と同様に調製され、そこで90°の段階のみが達成された。その後、サンプルは4つの工程において樹脂に含まれていた:エタノール96°-樹脂LR-White2:1(20時間)、エタノール100°-樹脂2:1(20時間)、エタノール100°-樹脂1:2(20時間)および100%の樹脂(60℃で24時間)。サンプルが樹脂に含められた後、ブロックは装置Leica UC6 Ultracutt Microtomeにおける60nmの極薄の切片のために調製された。最後に、その切片が鉛でコントラストをつけられ、および、結果は装置TEM JEOL-JEM1010において70kVで観測された。
【実施例
【0082】
実施例1.黄色ブドウ球菌に対するペプチドPaSKの抗菌活性の分析
この実施例において、ペプチドPaSKの抗菌活性はペプチドTcDef3-pepの抗菌活性と比較された。黄色ブドウ球菌に対するペプチドTcDef3-pepの抗菌活性はContreras et al.,2015において記載されている。
【0083】
ペプチドPaSKの抗菌活性はフローサイトメトリーによって測定された。上記手法は、細胞の光散乱および生細胞と死細胞を区別するための蛍光色素の使用に基づく。すべての細胞は蛍光色素SYBRグリーンに対して透過性がある一方で、ヨウ化プロピジウムは細胞に入り込むために細菌の細胞膜が破損されること必要とするため、死細胞だけがヨウ化プロピジウムに対して透過性がある。従って、これらの2つの蛍光色素の使用は、死細胞の内部のヨウ化プロピジウムの増加から細胞の生存率の減少を定量して、生細胞を測定する方法を提供する。
【0084】
25μg/mLのペプチドTcDef3-pepおよびPaSKで黄色ブドウ球菌の菌株CECT 4013の細胞をインキュベートした後、死細胞のパーセンテージは測定された。陽性対照として、同じ濃度のヒト・ディフェンシンhBD-3が使用された。それは黄色ブドウ球菌を含むいくつかのタイプの微生物に対する抗菌活性を持っている。図1A-Dはフローサイトメーターのウィンドウにおいて得られた蛍光に対応するグラフを示す。ウィンドウP2は生細胞を示し、および、ウィンドウP3は死細胞を示す。
【0085】
図2は、各ペプチドによる処置および対照細胞について分析された、2つの複製の死細胞のパーセンテージおよび標準偏差(SD)を示す。hBD-3およびTcDef3-pepの細胞毒性はそれぞれ約70%および55%だった。しかしながら、ペプチドPaSKは、ほぼ100%の細胞死パーセンテージを出した。死亡率は、両側スチューデントのt検定により統計的に有意であることが判明し、3つのペプチドにおいて陰性対照に対して、および、ペプチドPaSKにおいてはTcDef3-pepおよびhBD-3に対しても、p≦0.05であった(図2)。
【0086】
より低い濃度(10、15および20μg/mL)にあるペプチドPaSKの抗菌活性も、先の実験と同じ条件において、分析された。図3は、前記濃度における細胞死のパーセンテージを示す。10μg/mLの濃度では、ペプチドTcDef3-pepが9.2%の死亡率を示しているが(Contreras et al.,2015)、ペプチドPaSKが既に100%に近い細胞毒性を示していることが見て取れよう。
【0087】
実施例2.黄色ブドウ球菌の形態に対するペプチドTcDef3-pepおよびPaSKの効果
走査型電子顕微鏡法
走査電子顕微鏡法は、ペプチドによって生じた細菌の細胞膜に対する損傷を見るために使用される高解像度画像を提供する。黄色ブドウ球菌CECT 4013の細胞は25μg/mLの濃度にあるペプチドhBD-3、TcDef3-pepおよびPaSKにより1時間処置され、および走査電子顕微鏡法を使用して分析された(図4)。処置なしの細胞において、完全な細胞膜を有する、黄色ブドウ球菌の典型的な環状および均質な形態が観察され、一方、処置された細胞において、様々なタイプの形態上の変化を見ることができる。hBD-3を用いて処置された細胞の画像は、細胞膜の構造的な損傷および溶解(実線の矢印)、さらに細胞質内容物の顕著な放出(破線の矢印)も示す。ペプチドTcDef3を用いて処置された細胞において、細菌の細胞膜における隆起(実線の矢印)およびいくらかの細胞質破片(破線の矢印)が観察されたが、hBD-3による処置におけるより小さい範囲であった。最後に、ペプチドPaSKを用いて処置された細胞は、細胞膜の不規則な形態(実線の矢印)および完全な細胞崩壊、続いて起こる細胞質破片の放出(破線の矢印)を示す。この処置によって、黄色ブドウ球菌の細胞よりも小さな円形の構造が観察される。
【0088】
走査電子顕微鏡法によって得られた、ペプチドにより処置された細胞の画像は、細菌においてバイオフィルムの形成を示す(図5)。hBD-3により処置されたサンプル(陽性対照)およびHOを維持するサンプル(陰性対照)が、同じ培地で成長し、バイオフィルムを形成しなかったので、エキソポリサッカライドの形成はその培地の栄養または他の特徴の不足によって生じた可能性はないものとして切り捨てられた(図4)。
【0089】
透過型電子顕微鏡法
透過型電子顕微鏡法は、細菌の内部でペプチドによって生じた超微細構造の損傷を見るために使用される高解像度画像を提供する。黄色ブドウ球菌CECT 4013の細胞は25μg/mLの濃度で、ペプチドhBD-3、TcDef3-pep、およびPaSKにより1時間処置され、および透過型電子顕微鏡法を使用して分析された(図6)。処置なしの細胞において、完全な細胞質細胞膜(3)、および、黄色ブドウ球菌のようなグラム陽性細菌に典型的なペプチドグリカン壁(2)、さらに奇形なしの分裂中隔(1)が観察され、一方、処置された細胞において、異なるタイプの変化が観察された。hBD-3により処置された細胞の画像は、奇形(4)および細胞膜の溶解(5)、さらには細胞質内容物の顕著な放出、分離した細胞壁の残遺物(6)および細胞質の空胞化(7)を示す。ペプチドTcDef3-pepにより処置された細胞は、細菌細胞膜の奇形および隆起(4)、いくらかの細胞質破片、および分離した細胞壁の残遺物(6)を示す。最後に、ペプチドPaSKにより処置された細胞は、細胞膜の分離、奇形、および菲薄化(4)、細胞質破片の逸脱(6)、および分裂中隔の奇形および阻害(8)を示す。小サイズの円形構造が観察される(9)。これらの構造は、細胞とは異なる電子密度を示し、および、細胞質膜およびペプチドグリカン壁を欠く。ペプチドにより処置された細胞によって形成されたバイオフィルムも、透過型電子顕微鏡法によって得られた画像において観察され(図7)、および、それはヒト・ディフェンシンhBD-3により処置された細胞においては観察されなかった(図6)。
【0090】
実施例3.ペプチドPaSKの細胞毒性および抗増殖活性の分析
ペプチドPaSKの細胞毒性効果は、2つの細胞株、1つはヒト(MDA‐MB‐231)および1つはマウス(4T1)のトリプルネガティブ乳癌細胞、および正常なマウスの乳房上皮細胞(HC‐11)において研究された。この目的のために、細胞の生存率MTSアッセイは、溶解可能な有色の生成物を形成するために、生きている細胞において減少させられるテトラゾリウムから誘導した化合物を使用することによって実行された。
【0091】
ウシ胎児血清が抗菌性ペプチドの活性に影響することが記載されているように、様々な濃度(5μg/mLから700μg/mL)のペプチドが、異なる時間(3時間、24時間および48時間)、および検定における異なる濃度(0.5%および10%)のウシ胎児血清の存在下においてテストされた。得られた結果は、0.5%の検定および24時間インキュベーションにおけるウシ胎児血清濃度について、ペプチドPaSKは、2つの細胞株における、研究されているトリプルネガティブ癌細胞、さらに正常な乳房上皮細胞の株において、その3つの事例において、用量依存的な細胞毒性活性を呈し、およそ200μM(700μg/mL)の濃度で約50%の細胞において死率を引き起こすことを示した(図8)。これらのデータは、ペプチドPaSKが高濃度で哺乳動物細胞における細胞毒性活性を呈することを確証する。しかしながら、100μM(400μg/mL)前後のペプチド濃度において、PaSKはヒト・トリプルネガティブ乳癌細胞(MDA‐MB‐231)に対してより著しく高い細胞毒性を生じた。
【0092】
細胞増殖分析は、蛍光体Oregon Greenによりマークされ、続いて濃度50μM(200μg/mL)のペプチドPaSK、または対照としてのHOで処置された腫瘍細胞に対するフローサイトメトリーによって実行された。この分析は、組み合わせられた治療のアプローチにおけるPaSKの使用を探究することを可能にした。腫瘍の成長および扶養を阻害するのが目的の治療剤、および被験体の癌の処置における免疫反応を促すことができる薬剤を組み合わせた使用は、癌治療に細胞毒性薬のみを使用することに関連する2つの主な問題(非特異性の毒性および抵抗性の出現)のインパクトを減少させるために、細胞毒性薬にのみ依存する従来のアプローチに対する別の選択肢となる治療のアプローチである。
【0093】
試薬Oregon Greenは、細胞の遊離したアミン基に共有結合で結合され、各細胞分裂における娘細胞中に同じ均質の蛍光を与えて分配される。細胞の蛍光強度が各細胞分裂によりほぼ半減するため、ペプチドによる処置の後および処置されていない対照細胞における最終蛍光強度は、細胞の最初の蛍光強度と比較され、どれだけの細胞分裂周期が各ケースに生じたかについての情報を提供する。図9は、得られた結果を示す。ペプチドPaSKにより処置された細胞は、処置されていない細胞より大きな蛍光強度を見せ、ペプチドがヒト・トリプルネガティブ乳癌細胞の増殖を抑制することを示す。
【0094】
実施例4.ペプチドPaSKの細胞毒性および抗増殖活性の分析
この実施例において、ペプチドPaSKの細胞毒性および抗増殖活性はフローサイトメトリーによって評価され、細胞の生存率の分析および細胞周期の分析が実行される。200μg/mL(細胞の生存率実験)および100μg/mL(細胞周期の分析)のPaSKによる腫瘍細胞MDA-MB-231の処置の後、生細胞のパーセンテージ、さらに増殖が止められた細胞周期の段階が測定された。
【0095】
図10Aおよび図10Bは、フローサイトメトリーから得られ、グラフにおいて示された、ヨウ化プロピジウム(PI)の蛍光の観点から、細胞の生存率に対応するグラフを示す(領域P3は死細胞に対応する)。対照実験(図10A)において、細胞生存率98%が得られた一方、PaSKによる処置(図10B)において、細胞生存率は93%であった。
【0096】
図10Cは、PaSKによる処置および対照細胞について分析された、2つの複製の生存細胞のパーセンテージおよび標準偏差(SD)を示す。200μg/mLの濃度のペプチドPaSKにおけるMDA-MB-231細胞の細胞死率は約5%であり、対照に対して統計的に有意であった。
【0097】
図11Aおよび図11Bは、フローサイトメトリーによりヨウ化プロピジウムの蛍光を検出して得られた、細胞周期の各段階で見つかった細胞分布のグラフを示す。対照細胞については、およびPaSKにより処置された細胞において、以下の分布が観察された:それぞれ、G1期(統一)において52.0%および57.9%、S期において40.0%および33.2%、およびG2期において8.0%および9.0%。
【0098】
図11Cは、細胞周期のG1、SおよびG2各段階における細胞のパーセンテージを示し、およびPaSKによる処置および対照細胞について分析された2つの複製の標準偏差(SD)を示す。細胞周期の各段階において、両側スチューデントのt検定において使用された、ペプチドにより処置された細胞と対照細胞との間に統計的有意差があったかどうかを確かめるため、比較がなされた。図11Dは、ペプチドPaSKの作用によって影響を受けた細胞周期の段階を示す模式図である。
【0099】
ペプチドPaSKは、処置された細胞がS期細胞のパーセンテージにおける統計的に有意な減少、およびG1期における増加を呈するように、後者は統計的有意差を欠くものの、抗増殖活性を示す(図11Cおよび図11D)。
【0100】
実施例5.ペプチドPaSKにより処置されたトリプルネガティブ乳癌細胞のディファレンシャル・プロテオーム解析
ディファレンシャル・プロテオーム解析は、ペプチドがトリプルネガティブ乳癌細胞MDA-MB-231に対する抗増殖活性を働かせる分子のメカニズムを細胞を死滅させずに究明するために、SWATHによって実行された。
【0101】
8つのサンプル(対照の4つの複製、およびPaSKによる処置の4つの複製)が分析され、合計1,571のタンパク質(FDR 1%)を同定した。定量的データにより、判別分析は、ソフトウェアMarker View 1.3を使用して行なわれ、対照の複製および処置の複製について、2つの明白に見分けられる群を得た(図12)。
【0102】
スチューデントのt検定(p≦0.05)が2つの条件(対照と処置)について行なわれ、および、合計1,571の定量されたタンパク質(FDR 1%)のうち31は差別的に示された。これらのうち、処置において、対照に比較して、24は存在度を減少させ、および、7は増加させた(表1において、それぞれ網掛けなし、および、網掛けあり)。
【0103】
【表1-1】
【0104】
【表1-2】
【0105】
加えて、ディファレンシャルなタンパク質はUniprotの機能的なクラスターへグループ化され、そこでクラスターは、処置/対照比において存在度が減少したタンパク質と増加したタンパク質の両方について記述的な方法で示された。図13は、分子の機能別の分布を示す。存在度が減少したタンパク質の中で、大多数の機能は、結合タンパク質(91.7%)、触媒活性を示すもの(33.3%)、構造的分子活性を有するもの(16.7%)、分子機能レギュレーター(12.5%)、および、最後に転写コアクチベーター、輸送体および翻訳開始因子(4.2%)に対応する(図13A)。他方、存在度が増加したタンパク質の中で、大多数は、また結合タンパク質(85.7%)であり、触媒活性を備えたもの(71.4%)、抗酸化活性および酵素調節活性を備えたもの、それぞれ(28.6%)、および、最後に、電子伝達活性を備えたもの(14.3%)である(図13B)。
【0106】
ディファレンシャル・プロテオーム解析の結果は、ペプチドPaSKが細胞内の標的に作用することを確証する。統計的に有意な特異な発現を伴う31のタンパク質のうち、24は、ペプチドにより処置されたMDA-MB-231細胞において、それらの発現を減少させ、および、7は増加させた(表1)。これらは腫瘍形成性の能力を伴うタンパク質であり、そのうちいくらかは様々なタイプの腫瘍細胞において過剰発現すると記載されており、および、それらは例えば、小胞の転位に、情報伝達およびアポトーシス、代謝経路の変化に、DNA修復、転写または転写後調節および翻訳過程、細胞接着と転移に関連する能動性、および酸化ストレスに対する反応に、関係する。
【0107】
細胞周期の調節に関して、その発現がPaSKにより処置された細胞において減少した24のタンパク質のうち、真核生物の翻訳開始因子3B(EIF3B)、リボソームタンパク質S13およびL5(それぞれRPS13およびRPSL5)、およびLa関連タンパク質1(LARP1)が目立つ。EIF3は、サブユニット40Sに関連する、いくつかの真核生物の形質導入翻訳開始因子間の相互作用のネットワークを組織するタンパク質複合体であり、翻訳に関係する様々な反応に参加する。それにはまた、ポリシストロニックmRNAの翻訳を再開すること、およびタンパク質合成を制御するキナーゼ・タンパク質に対する受容体として働くことなどの、他の制御的機能がある。EIF3Bの発現の下向き調節がG0期/G1期の細胞の蓄積を引き起こし、S期の腫瘍細胞の数を著しく減らすことが示されており、EIF3Bが、より低い細胞成長率に帰結するDNA複製の阻害に関連づけられること示唆している。
【0108】
リボソームタンパク質S13およびL5は、リボソームのサブユニット40Sおよび60Sの一部をそれぞれ形成する。細胞周期の1G期からS期まで胃癌細胞のRPS13の過剰発現が成長と転移を促進することは従来記載されており、一方、前記細胞において、RPS13がG1期に下向き調節される時、G1期に止められた細胞の数が増加する。RPL5の損失がリボソームとタンパク質合成の生物発生を妨害することが記載されている。この欠損は、結果的に細胞周期の全面的休止をもたらさないが、強くその進行を阻害する。従って、EIF3BおよびRPL5の両方の減少は、p53から独立して細胞周期のための標定点を生じさせるだろう。これらの結果は、実施例4におけるペプチドPaSKの抗増殖活性の分析において得られたものに一致し、それは、S期にあるMDA-MB-231細胞における重大な減少を示し(図11C)、MDA-MB-231細胞は上に示されるような突然変異した非機能性のp53遺伝子を持つことからp53と無関係の細胞周期の制御を示唆している。
【0109】
ペプチドPaSKで処置された細胞において存在度が増加したタンパク質の3つは、グルタチオン・ペルオキシダーゼ1(GPX1)、チオレドキシン還元酵素1(TXNRD1)および硫化物:キノン・オキシドレダクターゼ(SQRDL)である。3つのタンパク質は、酸化ストレスに対する反応に関与し、および腫瘍細胞において一般的に過剰発現する。酸化からの保護が生存遺伝子を活性化し、およびアポトーシスを阻害するため、前記タンパク質の過剰発現は、ペプチドPaSKの抗発癌活性に対するMDA-MB-231細胞の反応であり得る。
【0110】
実施例6.トリプルネガティブ乳癌細胞の形態に対するペプチドPaSKの影響
走査電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡の両方は高解像度イメージを提供し、それらは腫瘍細胞の細胞膜および細胞内部における、ペプチドPaSKによって生じた形態上の、および超微細構造の変化を見るために使用された。MDA-MB-231細胞は濃度100μg/mLのペプチドPaSKで72時間処置され、走査型電子顕微鏡法(図14)および透過型電子顕微鏡法(図15)を使用して分析された。画像は、ペプチドPaSKがMDA-MB-231腫瘍細胞において重大な形態的変化を誘発したことを示す。処置されていない細胞の走査型電子顕微鏡法および透過型電子顕微鏡法の両方は、連続的で完全な細胞膜、およびヒト細胞に典型的な絨毛を伴う円弧形状を示す(1)。しかしながら、PaSKにより処置された細胞において、絨毛が分解して崩壊する構造をなすように見える、不規則な細胞膜が観察された(2)。さらに、細胞膜の非常に顕著な陥入(3)および完全な破損が観察され、それはいくつかの場合において再び円形化し、細胞質の残留物で小胞を形成した(4)。処置されていない細胞は細胞膜膨脹のように見えるものを示したが、細胞膜は、処置された細胞におけるように寸断されるのではなく、連続的である(5)。これらの結果は、ペプチドPaSKが膜分解性(membranolitic)の作用機序を持っていることを明らかにする。
【0111】
実施例7.トリプルネガティブ乳癌細胞における、ペプチドPaSKと化学療法剤による併用処置の細胞毒性の分析
この実施例において、MDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌細胞が96ウェルのプレート上にウェルごとに7.5×10の細胞の密度で播種され、50μLのDMEM/F-12培地が10%ウシ胎児血清で補足され、および、細胞接着を促進するため、5%のCOを含んだ雰囲気において37℃で24時間インキュベートされた。血清プロテアーゼによるペプチドの分解を制限するために、化学療法剤またはPaSKとの組み合わせによる処置は、5%のウシ胎児血清を伴って1つのウェル当たり100μLの全容積で実行された。細胞は37℃で72時間インキュベートされた。
【0112】
MTS検定については、10μLのMTS溶液のが、各ウェルに加えられ、37℃で3時間インキュベートされた。490nmの吸収率は装置Perkin Elmer Wallac 1420 Victor2Microplate Readerで測定された。
【0113】
ペプチドPaSKで処置された、および処置されなかったMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌細胞に対するディファレンシャル・プロテオーム解析は、タンパク質UROD、ASNA1、TM9SF4およびLARP1における著しい減少を明らかにした。前記タンパク質の発現の減少が様々な化学療法剤に対する腫瘍細胞の感応性を増加させることは当該技術分野において記載されている。PaSKがMDA-MB-231細胞を化学療法剤に対して敏感にするかどうかを判断するために、濃度100μg/mLのペプチドPaSK(そこにおいてペプチド自体は3%から10%の統計的に有意な細胞毒性を持っている)と、ドキソルビシン(0.10、0.25、0.50、1および2μM)、パクリタキセル(0.0001、0.001、0.01、1、10、100μM)、シスプラチン(5、10、20、30、40、50、65および100μM)および5-フルオロウラシル(2、8、20、40、80、400、1000μM)といった様々な濃度の化学療法剤との併用処置について、MTSの比色定量の手法によって細胞の生存率を分析し、細胞毒性が分析された。
【0114】
図16Aは、ドキソルビシンと、ドキソルビシンとPaSKの組み合わせにより細胞を処置した後に分析された4つの複製について得られた細胞生存率のパーセンテージと標準偏差(SD)を示す。テストされたすべてのドキソルビシンの濃度について、ドキソルビシンだけによる処置の細胞に対比して、ドキソルビシンとPaSKを組み合わせた処置の細胞毒性に統計的に有意な増加が観察された。
【0115】
図16Bは、パクリタキセルおよびパクリタキセルとPaSKの組み合わせによって細胞を処置した後に分析された4つの複製について得られた細胞生存率のパーセンテージと標準偏差(SD)を示す。この場合、パクリタキセル濃度が0.001μMだった時、細胞毒性における統計的有意差はパクリタキセルだけによる処置に対してパクリタキセルとPaSKの併用処置についてのみ観察された。
【0116】
図16Cは、シスプラチンおよびシスプラチンとPaSKの組み合わせにより細胞を処置した後に分析された3つの複製について得られた細胞生存率のパーセンテージと標準偏差(SD)を示す。テストされたすべてのシスプラチン濃度について、シスプラチンだけによる処置の細胞に対比して、シスプラチンとPaSKを組み合わせた処置の細胞毒性に統計的に有意な増加が観察された。
【0117】
図16Dは、5-フルオロウラシルおよび5-フルオロウラシルとPaSKの組み合わせによって細胞を処置した後に分析された4つの複製について得られた細胞生存率のパーセンテージと標準偏差(SD)を示す。この場合、5-フルオロウラシルの3つの濃度(8、20および40μM)について、5-フルオロウラシルだけによる処置に対比して、5-フルオロウラシルとPaSKを組み合わせた処置において、細胞毒性における統計的有意差は観察された。
【0118】
図17Aにおいて、ドキソルビシンによる処置についてEC50 = 0.407±0.033μMが観察され、一方、PaSKと組み合わせたドキソルビシンによる処置についてはEC50 = 0.077±0.026μMが観察された。分析された3つの複製の平均値は、標準偏差(SD)と同様に示され、ドキソルビシンとPaSKを組み合わせた処置について、EC50における減少が、ドキソルビシンのみによる処置と対比して、統計的に有意であることを結論づけている。
【0119】
図17Bにおいて、パクリタキセルによる処置についてEC50 = 0.008±0.005μMが観察され、一方、PaSKと組み合わせたパクリタキセルによる処置についてはEC50 = 0.003±0.002μMが観察されたことが示される。分析された3つの複製の平均値は、標準偏差(SD)と同様に示され、パクリタキセルとPaSKを組み合わせた処置について、EC50における減少が、パクリタキセルのみによる処置と対比して、統計的に有意であることを結論づけている。
【0120】
図17Cにおいて、シスプラチンによる処置についてEC50 = 168.16±53.89μMが観察され、一方、PaSKと組み合わせたシスプラチンによる処置についてはEC50 = 22.50±4.29μMが観察されたことが示される。分析された3つの複製の平均値は、標準偏差(SD)と同様に示され、シスプラチンとPaSKを組み合わせた処置について、EC50における減少が、シスプラチンのみによる処理と対比して、統計的に有意であることを結論づけている。
【0121】
最後に、図17Dにおいて、5-フルオロウラシルによる処理についてEC50 = 25.34±4.33 μMが観察され、一方、PaSKと組み合わせた5-フルオロウラシルによる処理についてはEC50 = 12.22±2.72μMが観察されたことが示される。分析された3つの複製の平均値は、標準偏差(SD)と同様に示され、5-フルオロウラシルとPaSKを組み合わせた処置について、EC50における減少が、5-フルオロウラシルのみによる処理と対比して、統計的に有意であることを結論づけている。
【0122】
配列表フリーテキスト
SEQ ID NO:1
トリボリウム・カスタネウム ディフェンシン3;断片 PaSK
SEQ ID NO:2
トリボリウム・カスタネウム ディフェンシン3;断片 TcDef3-pep
【0123】
参考文献
- Contreras, E., Benito-Jardon, M., Lopez-Galiano, M. J., Real, M. D. and Rausell, C. (2015). Tribolium castaneum immune defense genes are differentially expressed in response to Bacillus thuringiensis toxins sharing common receptor molecules and exhibiting disparate toxicity. Developmental and Comparative Immunology. 50, 139-145.
- Rajamuthiah, R. et al. (2015). A defensin from the model beetle Tribolium castaneum acts synergistically with telavacin and daptomycin against multidrug resistant Staphylococcus aureus. PLOS One. 10(6):1-14.
- Tonk, M. et al. (2015). Tribolium castaneum defensins are primarily active against Gram-positive bacteria. J Invertebrate Pathol. 132: 208-215.
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5-1】
図5-2】
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
【配列表】
0007274764000001.app