(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】給餌装置
(51)【国際特許分類】
A01K 5/01 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
A01K5/01 Z
(21)【出願番号】P 2021142910
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000187714
【氏名又は名称】松下工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】松下 行利
(72)【発明者】
【氏名】倉地 辰盛
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3169869(JP,U)
【文献】特開2017-131184(JP,A)
【文献】武蔵野水族館:ヤドクガエル用「自動エサやり機」の制作と実演,2015年05月03日,http://milet.blogspot.com/2015/05/blog-post_3.html
【文献】武蔵野水族館:2代目「エサやりくん」(ヤドクガエル),2015年05月23日,http://milet.blogspot.com/2015/05/blog-post_23.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
餌皿に載せた固形餌を振動させながらペットに与えるための給餌装置であって、
餌皿と、
前記餌皿を振動させる振動モータと
を備え、
前記餌皿は、上面に環状溝を備えることを特徴とする給餌装置。
【請求項2】
前記環状溝は、断面が底側ほど幅の狭い形状をなす請求項1に記載の給餌装置。
【請求項3】
前記餌皿を周方向に回動可能に支持する支持台を有する請求項1に記載の給餌装置。
【請求項4】
前記餌皿は前記支持台の上面に載置されており、
前記餌皿の下面、及び前記支持台上面の一方に設けられる円形穴からなる係合用凹部に前記餌皿の下面、及び前記支持台上面の他方に設けられる係合用凸部を嵌入することにより、前記餌皿を周方向に回動可能に支持する請求項3に記載の給餌装置。
【請求項5】
前記係合用凸部が角柱状をなす請求項4に記載の給餌装置。
【請求項6】
前記餌皿は、下面周縁の環状平面部に磁石、又は磁性体を有し、
前記支持台は、上面周縁に前記磁石に吸着する磁石若しくは磁性体、又は前記磁性体に吸着する磁石を有する請求項3に記載の給餌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カエル等、動く生餌しか食べないペットに対し、固形餌を動かして生餌に見せかけながら給餌を行うための給餌装置に関し、特に固形餌を載置する餌皿を振動させることにより固形餌を動かす給餌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カエルや爬虫類等のいわゆるエキゾチックアニマルが、そのコレクション性の高さから、多くのファンを獲得し、ペットショップ等で広く販売されている。かかるエキゾチックアニマルは、一般に、人工の固形餌、冷凍コオロギなどを、ピンセットでつまんで給餌されている。
【0003】
ところが、ヤドクガエルや小型カエル類は、生きた小バエや白アリ、コオロギ等、生餌しか食べないため、コオロギやハエ等の生餌の飼育から始めなければならず、かかる飼育に過大な手間や費用が掛かるという問題があった。
【0004】
特に、ヤドクガエルは、生餌として与える課題として、エサが小さすぎる為、孵化したての、コオロギや、ショウジョウバエなどの小さいサイズの餌の安定的な確保の難しさ、その為ショウジョウバエの繁殖培地などを使用して、餌の自家繁殖など餌の飼育や確保の難しさと手間が課題であった。その為、女性や、子供に敬遠されるという問題があり、また、ヤドクガエルは冬眠しないため、冬場の生餌の調達が非常に困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、人工の固形餌を動かすことにより、該固形餌を生餌に見せかけてカエルに与える給餌装置が各種提案されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0006】
例えば、 特許文献1では、ワイヤー等の弾性体の一端に乾燥したミミズ等からなる餌を付着させ、該弾性体の他端の持ち手を給餌者が手に持って揺することにより餌を動かす給餌器具が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、人工飼料を丸めた資料の表面に鉄粉等の磁性粉を付着させた餌を容器の外側に設けた磁石により動かすようにした給餌器具が提案されている。
【0008】
これに対し非特許文献1では、餌皿を振動モータで振動させることにより固形の餌を振動させて生きているように見せかける給餌装置が提案されている。特許文献1、特許文献2に係る給餌装置では、人が手で餌を動かさなくてはならないのに対し、非特許文献1の給餌装置では、餌は振動モータにより振動するため、給餌者は、餌皿に餌を載置するだけで済むという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実用新案登録第3169869号公報
【文献】特開2017-131184号公開公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】「武蔵野水族館のホームページの2015年5月3日、及び同年5月23日のページ」令和3年8月11日検索 https://mliet.blogspot.com/2015/05/blog-post_3.html、及びhttps://mliet.blogspot.com/2015/05/blog-post_23.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、非特許文献1の給餌装置では、餌が餌皿の低い所に集まってしまうため、十分に餌を動かせないという問題が有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、餌皿の低い所に餌が集まっても餌が十分に運動する給餌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた発明は、餌皿に載せた固形餌を振動させながらペットに与えるための給餌装置であって、餌皿と、前記餌皿を振動させる振動モータとを備え、前記餌皿は、上面に環状溝を備えることを特徴とする。
【0013】
かかる環状溝に適宜の量の固形餌を入れ、振動モータにより餌皿を振動させると、固形餌は、振動しながら環状溝の低い所に集まって集団を作る。しばらくすると、この振動する固形餌の集団から、周方向の一端側にある固形餌が該集団を離脱して、環状溝を一定方向に周回する。周回を終えた固形餌が該集団の他端側に合体すると、その分一端側の固形餌が該集団から分離して一定方向に回動する。固形餌が、その場で振動するだけでなく、環状溝を周回するので、ペットは固形餌を生餌と間違えて食いつきやすい。
【0014】
前記環状溝は、断面が底側ほど幅の狭い形状をなすことが好ましい。こうすることで、環状溝の幅方向に移動しようとする固形餌を環状溝の底に集めることができるので、固形餌をよりスムーズに環状溝に沿って周回させることができる。
【0015】
本発明の給餌装置は、前記餌皿を周方向に回動可能に支持する支持台を有することが好ましい。こうすることで、餌皿自体を振動により周方向に回動させることができる。
【0016】
前記餌皿は前記支持台の上面に載置されており、前記餌皿の下面、及び前記支持台上面の一方に設けられる円形穴からなる係合用凹部に前記餌皿の下面、及び前記支持台上面の他方に設けられる係合用凸部を嵌入することにより、前記餌皿を周方向に回動可能に支持することが好ましい。こうすることで、簡易な構造で餌皿を支持台により回動可能に支持することができる。
【0017】
前記係合用凸部は角柱状をなすことが好ましい。こうすることで、係合用凹部の内側面と係合用凸部の外側面の接触面積を減らして、当該内側面と外側面の間の摩擦を低減できるので、餌皿を支持台に対しスムーズに回転させることができる。
【0018】
本発明の給餌装置が、餌皿を周方向に回動可能に支持する支持台を有する場合において、前記餌皿が、下面周縁の環状平面部に磁石、又は磁性体を有し、前記支持台が、上面周縁に前記磁石に吸着する磁石若しくは磁性体、又は前記磁性体に吸着する磁石を有することが好ましい。周方向について任意の位置で支持台に載置した餌皿は、振動モータの振動により周方向に回動するが、このように磁石や磁性体を設けることで、その磁力で餌皿の回動を停止させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の給餌装置によれば、固形餌を十分に動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る給餌装置の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0022】
図1は、本発明の一の実施形態に係る給餌装置100を示している。給餌装置100は、固形餌Aを載置する餌皿1と、餌皿1を支持する支持台2と、支持台2を介して餌皿1を振動させる振動モータ3(
図5、
図6参照)とを主に備えている。給餌装置100は、餌皿1に載置した固形餌Aを振動させることにより、固形餌Aを生餌に見せかけて、ヤドクガエルやイモリ等の生餌しか食べないペットに与えるために用いられる。
【0023】
餌皿1は、円盤状をなし、上面11に円形の環状溝12と、上面11の中心に設けられる円錐台状の山部13とを備えている。上面11は、全体が餌皿1の厚み方向に窪む湾曲面からなり、その中心に山部13を設けることで、山部13の周囲に環状溝12が形成されている。
【0024】
餌皿1の材質としては、特に限定されず、金属、木材、樹脂等公知の材料を適宜に用いることができるが、樹脂により一体成型されることが好ましく、ジュラコン(登録商標)等のポリアセタールコポリマーや、シリコン樹脂等の硬質樹脂であることが特に好ましい。
【0025】
環状溝12は、
図5に示すように、断面における幅が底側程狭くなるよう設けられている。図示の例では、環状溝12は、下方に窪む円弧状をなしているが断面が倒台形や、逆三角形状であってもよい。
【0026】
山部13は、周面が内側へ括れる成層火山状をなし、頂上に円形の凹部13aを備えている。
【0027】
餌皿1の下面15には、
図4に示すように、周縁に沿って環状平面部16が設けられ、中心部に扁平円柱状の係合用凹部17が設けられている。環状平面部16には、係合用凹部17を挟んで径方向に対向する一対の円盤状の永久磁石4,4が埋設されている。餌皿1の側面14には、径方向に対向して鉛直方向に延びる凹条からなる一対の目印線14a,14aが設けられている。永久磁石4,4には、ネオジウム磁石、フェライト磁石その他の公知の磁石を任意に用いることができる。
尚、後述する磁性体5の代わりに磁石を用いる場合は、磁石4の代わりに鉄等の磁性体を用いてもよい。
【0028】
支持台2は、
図2に示すように、支持台本体21と支持台底部22とを備えている。支持台本体21は、下方に開口した有蓋円筒状(
図5参照)をなし、平面状の上面211の中央に扁平角柱状(
図2の例では、角丸の正四角柱)からなる係合用凸部212を備えている。係合用凸部212は、係合用凹部17に嵌合した際に、上面212bは係合用凹部17の天面17aに当接せず、4つの角部212a,212a,…と係合用凹部17の側壁17bとの間にも隙間が生じるよう設けられている(
図6参照)。ただし、4つの角部212a,212a,…の一部、又は全部を係合用凹部17の側壁17bに当接するようにしてもよい。
【0029】
支持台本体21の側面には、目印線14a,14aと同様の一対の目印線21a,21aと、振動モータ3の導線を挿通する導線孔21bが設けられている。
【0030】
また、支持台本体21の上面211の裏面211a中央には、振動モータ3が円環凸条21c内に嵌入固定され、一対の磁性金属製の鉄等の円盤からなる磁性体5,5が径方向に対向して、円環凸条21d,21d内に嵌入されている。支持台本体21の側壁213内面の下端には、支持台底部22の嵌合用部221を嵌入する嵌合用凹部214を備えている。支持台本体21は、天然、又は人工のゴム材から全体が一体成型されている。尚、磁性体5の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0031】
振動モータ3は、円盤状をなし、円環凸条21cの内側の円柱状の凹部に嵌入され、接着剤により固定されている。振動モータのリード線31は、支持台本体21の側壁213に設けられた導線孔21bを通って電源ボックス、及びACアダプターを介してコンセント(共に不図示)に接続されている。
【0032】
給餌装置100を用いて、ヤドクガエル等のペットに給餌を行う際には、予めペットを飼育している飼育用の水槽等に給餌装置100を設置しておく。給餌を行う際には、餌皿1を支持台2から取り外し、人口の固形餌Aを餌皿1の環状溝12に適宜の量だけ載せ、支持台2の係合用凸部212を餌皿1の係合用凹部17に嵌入するようにして、餌皿1を支持台2上に載置する。この状態で電源ボックスの電源スイッチをONにすると、振動モータ3が振動を開始し、支持台本体21を介して餌皿1を振動させる。すると餌皿1は、その振動により周方向に回転し、目印線14aが目印線21aに一致するまで回転すると、磁石4が磁性金属からなる磁性体5に引き付けられて停止する。固形餌Aはこの餌皿1の回転によって動いて見えるため、ペットは固形餌Aを生餌と勘違いして固形餌Aに食いつく。
【0033】
餌皿1の停止後、環状溝12の低い所に集まった固形餌Aの集団の周方向の一端から、固形餌Aの一部が離脱し、環状溝12に沿って一定方向に周回する。環状溝12を1周した固形餌Aは、低い所に集まった餌の集団の他端側に合流する。すると、一端側の固形餌Aがやや持ち上がり、また別の固形餌Aが当該固形餌の集団の一端側から離脱して一定方向に周回する。このようにして、固形餌Aは順次周回を繰り返す。このように運動する固形餌Aを見たペットは、固形餌Aを生餌と錯覚して固形餌Aに食いつく。
【0034】
餌皿1の係合用凹部17は円形穴であるのに対し、支持台本体21の係合用凸部212は角柱状であり、係合用凹部17の側壁17bは係合用凸部212と、その角部212aでのみ当接し、係合用凸部212の上面212bは、係合用凹部17の天面17aに接触しないため、餌皿1は、支持台本体21に対しスムーズに回動する。
【0035】
以上、本発明の給餌装置は、上述した実施形態に限らず、例えば、環状孔は、底側の幅が狭くなってなくともよい。餌皿は支持台に対し回動可能にでなくともよいし、下面に磁石や磁性体を備えなくともよい。係合用凸部は、正四角柱に限らず、円柱であってもよく、三角柱や五角柱、六角柱等公知の角柱を適宜に採用できる。
【符号の説明】
【0036】
100 給餌装置
1 餌皿
12 環状溝
11 餌皿の上面
15 餌皿の下面
17 係合用凹部
2 支持台
211 支持台上面
212 係合用凸部
3 振動モータ
A 固形餌
4 磁石
5 磁性体